1: 2009/05/28(木) 17:49:34.14 ID:ZjMHyAou0
ここは現実の世界、夢の世界、はたまたnのフィールド内かもしれない。
1つだけ分かっている事は、翠星石は今その訳の分からない場所にいる事。

状況を飲み込めないまま1人でポツンと立っていると、人の姿や他の動物の姿を模した物が続々と集まってきた。
段々とその数は増え、やがて新入りである翠星石は人形達に囲まれた。

「なッ! 何ですかお前達は・・・・・・!」

仮に翠星石を囲んでいる人形達を敵と仮定すれば、今の状況は多勢に無勢。
一斉に襲われたら勝算などない、ゆえに翠星石の声は少し震えていた。

だが翠星石の心配は杞憂に過ぎなかった。
やがて、人形達は興味を失ったように翠星石から離れていった。

4: 2009/05/28(木) 17:52:25.37 ID:ZjMHyAou0
翠星石はまばらになった人形の輪を見て驚いた。
人数が減ったため、1人1人の顔がよく見えるようになったために気付けたのだろう。

「そ、蒼星石・・・・・・それにチビ苺まで・・・・・・」

翠星石の目から自然に涙が零れた。
無理もない、翠星石の記憶によれば彼女達はアリスゲームに敗れているのだから。
それにも関わらず、2度と会えないはずの知り合いが翠星石の前に立っている。

「・・・・・・翠星石、君も来てしまったんだね」

「うゆ・・・・・・悲しいの」

だが彼女達は翠星石を歓迎しなかった。

6: 2009/05/28(木) 17:56:14.19 ID:ZjMHyAou0
翠星石は戸惑った。
彼女達は自分との再会を一緒に喜ぶ、という先入観を持ってしまったために。

「蒼星石・・・・・・雛苺、どうしたですぅ?」

蒼星石と雛苺はお互いに顔を見合わせて何かを確認するかのように頷いた。

「翠星石、ここでは自分の名前なんて意味がないんだ」

「・・・・・・今に翠星石も自分の名前を思い出せなくなっちゃうの」

「そ、蒼星石・・・・・・?」

翠星石が自分の双子の妹である蒼星石の名前を呼ぶと、2人共反応した。
彼女達はどちらが"蒼星石"でどちらが"雛苺"かを区別出来ていなかった。

7: 2009/05/28(木) 18:01:02.09 ID:ZjMHyAou0
「どうして翠星石が自分の名前を忘れないといけねえですぅ?」

「それにお前たちは翠星石の名前を覚えてやがるですぅ!」

翠星石の口からは疑問が溢れ出るかのように言葉が続いた。
周りを見渡すと、残っている人形は翠星石を含めた3人だけだった。

「・・・・・・壊れた物はいつかは忘れ去られる運命にあるんだ」

蒼星石がゆっくりと翠星石を諭そうとする。
だが当然翠星石は納得出来なかった。

「翠星石、1番最初に自分の事を忘れ去るのは自分自身なの」

8: 2009/05/28(木) 18:05:02.29 ID:ZjMHyAou0
「君は、まだここに来て時間が経っていないから分からないと思う」

「・・・・・・私も最初は全然信じられなかったの」

雛苺が自分の事を"ヒナ"じゃなく"私"と呼んでいた。
些細な変化だが、今の話を翠星石が信じるには十分だった。

「・・・・・・ここはどこですぅ?」

質問をしながらも、翠星石の中では大体の予想は付いていた。

「この場所に名前なんてない、この場所には何もない」

「・・・・・・たった1つだけ希望が用意されているけど」

10: 2009/05/28(木) 18:10:02.00 ID:ZjMHyAou0
その時、翠星石達のいる場所からあまり離れていない場所が光った。
蒼星石も雛苺もその光を見てようやく微笑んだ。

「翠星石、あれが希望だよ」

「あれって・・・・・・」

翠星石には見覚えがあった、というよりその場にいる人全員があの光を知っていた。
あの光に包まれて翠星石はこの場所にやってきたのだから。

「あの光が運んでくるのはジャンクだけじゃない」

いつの間にか、さっきまで翠星石を囲んでいたであろう人形達が例の光を囲んでいた。
その輪に混ざろうと蒼星石も雛苺も歩き出した。
もちろん、事情がよく分からない翠星石もついていった。

11: 2009/05/28(木) 18:16:14.01 ID:ZjMHyAou0
輪に混ざりながら蒼星石は説明を続けた。
だが、さっきまで翠星石を観察するように見ていた目は光の方を見つめていた。

「どんなに壊れた人形も修理をすれば大抵は直る、僕たちの誰かが完全に修理された時にもあの光は現れる」

つまりあの光は扉。
ジャンクをこの場所へ誘い、修理されたら元の世界へと戻される。

「・・・・・・つまり今の翠星石達は魂みたいなものって訳ですか」

やがて光が消えるとその場所には犬の姿をした人形が倒れていた。
さっきの翠星石の時と同様に、集まった人形達は興味を失い再びどこかへ消えていった。
勿論、蒼星石も雛苺も例外じゃない。

翠星石だけが取り残されてしまった。


13: 2009/05/28(木) 18:30:46.98 ID:ZjMHyAou0
「ふふふふ・・・・・・後は真紅と金糸雀だけねぇ」

水銀燈が不敵に微笑む。
その足元には翠星石が転がっていた。

「もっとも、既にローザミスティカを3つ持っている私と真紅じゃ勝負にならないだろうけどぉ」

「それに・・・・・・私もいます」

動かない翠星石の体を興味深そうに見つめながら雪華綺晶も続けた。

「・・・・・・ジュン、今すぐにこの場を離れなさい」

完全に勝利に酔いしれている水銀燈には聞こえないように真紅はジュンに耳打ちをした。
「私も後から追いかける」、と真紅が言うとジュンは何も言わずに走り出した。

「・・・・・・ジュン、いい子ね」

14: 2009/05/28(木) 18:36:32.66 ID:ZjMHyAou0
再び蒼星石の言っていた"希望の光"が姿を現した。
そして、その周りを囲むように集まってくる人形達。

その中には蒼星石と雛苺もいた。

「そ、蒼星石ッ! チビ苺も! どこに行ってやがったですぅ!」

翠星石の叫び声に全く反応せずに2人は子供のように無邪気に微笑みながら光を見ていた。
やがて光が消えていくと、紅い人形が現れた。

興味を失った人形達はまた何処かへと消えていく。

「翠星石・・・・・・雛苺、それに蒼星石まで・・・・・・」

15: 2009/05/28(木) 18:42:06.29 ID:ZjMHyAou0
よろよろと真紅が歩み寄る。
目には涙を浮かべながら姉妹との再会を喜んでいた。

「・・・・・・真紅までここに来てしまうなんてね」

「うゆ・・・・・・、真紅も負けちゃったみたいなの」

やはり蒼星石と雛苺は再会を喜ばなかった。

「真紅ぅ・・・・・・会いたかったですぅ!」

「ええ、また貴女達に会えるなんて思ってもみなかったわ」

翠星石と真紅だけが再会を喜び合った

16: 2009/05/28(木) 18:47:37.21 ID:ZjMHyAou0
「そう・・・・・・、そういう事なのね」

翠星石が受けた説明をざっと真紅に伝えると、真紅は何かを納得した。
やがて慈悲に満ちた優しい眼を蒼星石に向ける。

「貴女の名前は蒼星石、蒼星石というの」

「蒼・・・・・星石・・・・・・」

次に雛苺の方を向く。

「貴女は雛苺よ 忘れないでね、雛苺」

「雛苺・・・・・・なの」


27: 2009/05/28(木) 23:39:13.75 ID:ZjMHyAou0
「ちょっと雪華綺晶、人間なんか捕まえてどうするのよ」

「人間には・・・・・・、私の糧になってもらいます・・・・・・」

「もうこの子は私達とは関係がないのよ? 関係のない人間を巻き込むなんてお父様にどう言い訳するつもりなの?」

決してジュンを思いやった発言では無かった。
アリスになるため、無関係の人間を巻き込む訳にはいかないから話しただけだった。

「神聖なアリスゲームに契約の指輪の壊れてしまった人間を巻き込む訳にはいかないわ」

「黒薔薇のお姉様は少し黙ってください・・・・・・、私の言うとおりにすればお姉様はローザミスティカを集められるから・・・・・・」

「私は貴女と手を組んだけど下僕になったつもりなんてないわ!」

この口論を少し離れたところで金糸雀は見ていた。
手にはヴァイオリンを持ち、いつでも戦える用意は出来ていた。

「よく分からないけどチャンスかしら・・・・・・ 真紅達の仇は絶対にカナが討ってみせるかしら!」

28: 2009/05/28(木) 23:45:16.69 ID:ZjMHyAou0
「攻撃のワルツを受けるかしらッ!」

金糸雀のヴァイオリンがnのフィールドに鳴り響いた。

不意打ちというのもあり、金糸雀の奇襲は成功した。
だが、決定打といえるほどのダメージは与えられなかった。

「今のはちょっとびっくりしたわぁ・・・・・・」

「でも・・・・・・、こちらから向かう手間が省けました」

直ぐに水銀燈と雪華綺晶は臨戦態勢に入った。

「まだまだ! 攻撃のワルツかしらッ!」

「庭師の鋏の切れ味を試してみるわぁ!」

「・・・・・・ッ!」

29: 2009/05/28(木) 23:49:07.33 ID:ZjMHyAou0
金糸雀の音波攻撃は水銀燈に、
水銀燈の庭師の鋏は雪華綺晶に、
雪華綺晶の白い茨は金糸雀に当たった。

「黒薔薇のお姉様・・・・・・、どうして・・・・・・」

「貴女さえ倒れれば私がアリス同然だと思ったのよ」

先ず、雪華綺晶が倒れた。
下半身と離れた上半身は水銀燈の方向を向いていた。

次に金糸雀が倒れた。
白い茨の中から黄色に輝くローザミスティカが飛び出した。

水銀燈はそのローザミスティカに手を伸ばそうとする。
だがその体は動かず、空中を漂う黄色の光に誘われるように4つのローザミスティカが飛び出す。

30: 2009/05/28(木) 23:52:16.19 ID:ZjMHyAou0
翠星石達の前に4つの光が現れた。
緑色の光、蒼色の光、赤色の光、桃色の光。

この光に人形達が集まってくる事は無かった。
希望の光は他人には見えない。

4人が顔を見合わせてそれぞれの光へと進んだ。

やがて光が消えると、そこに4人の姿は無かった。

fin
途中寝落ちした割には短いしつまらない話でごめん


31: 2009/05/28(木) 23:54:50.46 ID:BzifbjGaO
お疲れ!

引用: 翠星石「・・・・・・ここはどこですぅ?」