477: 2013/08/07(水) 18:33:09 ID:AaZQV6gA

479: 2013/08/09(金) 13:39:25 ID:5DHIGNrQ

 ~ハンジによるヱレン連行の7日前(=リヴァイによるエレン拉致から17日前)~



みかん箱「ヱレンが眼鏡の分隊長に連れてかれちゃったよ」

みかん箱「オレ、全く出番が回って来ないんだけど?」

みかん箱「何か忘れられてるっぽくない? どういうことなの?」

みかん箱「あ、オレの言葉遣いが一定じゃないのは、元がいろーんな雑誌だったからだ。決して設定ミスではない」

みかん箱「え? そのわりにボキャブラリーが貧困だって? やかましいわ!!」
進撃の巨人マガジン15周年号 (講談社 MOOK)
480: 2013/08/09(金) 13:40:31 ID:5DHIGNrQ

 トントン…トントコトントン…トントン

サシャ「今晩は、エレン。って、あれっ?」

みかん箱「来てくれたんだ、サシャ。いらっしゃい。でも、ヱレンなら居ないよ」

サシャ「エレン、どうしたんでしょうねえ。今日はまだ来てませんねぇ」

みかん箱「来ないんじゃなくて、連れてかれちゃったんだってば」

481: 2013/08/09(金) 13:42:49 ID:5DHIGNrQ

サシャ「…今日はもう来ないのかな?」

みかん箱「ごめんなサシャ。ヱレンはいつ戻るのかさえ判らないんだ」

サシャ「残念ですね。とりあえず、水だけ置いて帰りますか」

サシャ「おやすみなさい、みかりん箱ちゃん」

みかん箱「サシャは優しいねぇ。ちゃんとオレにも声をかけてくれるんだから」

482: 2013/08/09(金) 13:43:56 ID:5DHIGNrQ

 * 翌日(6日前)


ジョシー「うーん、いつもなら手近にあるのに、探し始めると見つからないなあ」

みかん箱「ん? 誰かの声が…」

 ガサゴソ…ガチャッ キィ…

ジョシー「あ、あったあった! こんなところに」キャピッ

みかん箱「ちょ、何でオレを畳むんだよ!」

483: 2013/08/09(金) 13:45:57 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「って、おい! そっちは男子寮じゃないか」

ジョシー「ジャーン! ダンボール見つけたけど、要る?」

ジャン「おう、サンキュ。助かったぜ」

みかん箱「向かった先があろうことかジャンのとこ! 何でジャンだよ? ありえないジャン!」

みかん箱「ジャンのヤツ、とうとうミカサ姐さんの持ち物に手を出しやがって!」

484: 2013/08/09(金) 13:47:08 ID:5DHIGNrQ

ジョシー「良かったあ。また何かあったら…私で良かったら言ってね///」

ジャン「お? お、おう。ありがとな」

ジョシー「えへへ/// またねっ」パタパタパタ

みかん箱「んん? どうも思ってたのと様子が違う?」

みかん箱「どうやら、さっきのジョシーはジャンの事が好きらしいな。ジャンのためにオレを見つけ出したってわけか」

485: 2013/08/09(金) 13:48:00 ID:5DHIGNrQ

ジャン「フフフン、フフーン♪」

みかん箱「ジャンのヤツ、鼻歌なんか歌いやがって。機嫌良いな」

みかん箱「って、おいこら! 何勝手にオレん中にガラクタ詰めてやがんだよ!」

みかん箱「オレのスマートな体型が崩れるだろ! ったく!」

ジャン「フフーン、フフフフーン♪」ガサゴソ

486: 2013/08/09(金) 13:50:33 ID:5DHIGNrQ

 * その翌日(5日前)


ジャン「これで大方は片付いたかな?」キョロッ

ジャン「ちっくしょ重てぇ!」

みかん箱「おいジャン! オレ持ち上げてどこ行くんだよ?」

ライナー「えらく大荷物だな? ジャン」

487: 2013/08/09(金) 13:51:26 ID:5DHIGNrQ

ジャン「ああ、これ? UMA騒ぎで壊れた備品とか汚れちまったモンとかな」

ライナー「そんなにあったか。お互い大変だったよな」

ジャン「おう。さっさと片付けねぇとな。じゃ、お先ー」スタスタ

みかん箱「おい、ここ焼却炉じゃん! 何でオレごと棄てやがる!?」

みかん箱「ジャンってば、おいっ! オレを置いて行くなぁあああ!」

488: 2013/08/09(金) 13:53:28 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「ありえねえ! 焼却炉だぞ? 今まさに目の前で轟々と火ィ吹いてんのよ? 地獄の熱さよ!?」

ミーナ「よいしょっと。まだ火は入ってるね。間に合ったあ」

みかん箱「ミーナ!? ミーナ! 助けてくれ!」

ミーナ「あちゃ~ゴミで一杯だよ。…ん? あれっ!?」

ミーナ「この箱…見覚えが……ミカサのじゃない?」ズズズ ザザッ

489: 2013/08/09(金) 13:56:10 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「た、助かったぁ! マジで氏ぬかと思ったぜ」

ミーナ「やっぱり間違いないわ。私の字だもん」

みかん箱「みかんの文字はミーナの直筆だからな。オレの事を覚えていてくれてありがとう」

ミーナ「変ね…ミカサがこの箱を捨てる筈ないわ」

みかん箱「さすがにミーナはミカサ姐さんの事情に明るい」

ミーナ「きっと何か手違いがあったんだ…回収しておこう」スタスタスタ

みかん箱「ミカサ姐さんの部屋まで運んでくれた! ミーナ、この恩は忘れないよ!」

490: 2013/08/09(金) 13:57:34 ID:5DHIGNrQ

 * そのまた翌日(4日前)


サシャ「おはようございます! 不燃物回収の時間です」

みかん箱「おお! おはようサシャ。部屋で会うなんて初めてだね」

サシャ「あれ? 皆さんもうお出掛けですか。ではゴミはナシって事で失礼しまーす」

サシャ「あれれっ? ここにあるのは…エレンお気に入りの箱ではありませんか」

みかん箱「エレンじゃなくてヱレンなんだけどな」

491: 2013/08/09(金) 13:58:47 ID:5DHIGNrQ

サシャ「道理で昨晩は見ないと思いました」

みかん箱「昨晩も物置部屋覗いたんだ…」

サシャ「どうしたんでしょう? ミカサが回収したのでしょうか?」

サシャ「でも、エレンはこの箱を気に入ってましたよね…」

サシャ「箱がないとエレンはあの物置まで来てくれなくなるかもしれません…」

492: 2013/08/09(金) 13:59:37 ID:5DHIGNrQ

サシャ「……戻しておきましょう」

みかん箱「そうきたか」

みかん箱「堂々と持ち出すんだね…サシャ…」

サシャ「ふふっ///」スタスタ

サシャ「おっと。今クリスタと擦れ違ったぞ? サシャ」

493: 2013/08/09(金) 14:01:12 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「気にしてないね…バッチリ見られてしまったのに」

みかん箱「まずい予感」

サシャ「はい、あなたの定位置ですよー。エレンが来たらよろしく言っといて下さいね」

みかん箱「はい。って何で了承してんだオレー!!」

 パタン…パタパタパタ…

494: 2013/08/09(金) 14:02:20 ID:5DHIGNrQ

 ガチャッ!

クリスタ「……これが例の…」

みかん箱「案の定、来たね。クリスタ」

みかん箱「例の、って何? 何か不穏な感じがするんですケド」

クリスタ「ハンナの言ってる事が正しければ、この箱からエレンのそっくりさんが出てくるんだよね?」

みかん箱「はあ!? どうしてそう思った!?」

495: 2013/08/09(金) 14:03:07 ID:5DHIGNrQ

クリスタ「方法は大体分かってるから、後は実行あるのみね」スタタタッ

みかん箱「あのー、変な誤解があるようだけど?」

みかん箱「今度はクリスタに攫われた。抵抗出来ない我が身が恨めしい」

みかん箱「ベッドの下に追いやられてしまった。暗いよ狭いよ怖いよう」

クリスタ「明日は私だけのエレンが手に入る。うふっ/// うふふふっ///」

496: 2013/08/09(金) 14:04:27 ID:5DHIGNrQ

ユミル「おっ、クリスタ、ゴキゲンだなあ。何か良い事あったのかあ?」

クリスタ「えへっ/// な・い・し・ょ」

ユミル「そう言わずに教えなよ。擽りの刑にしてやるぞォ?」

 いちゃこらいちゃこら…しばらくお待ちください。

みかん箱「オレ、クリスタが分かんねぇ…」

497: 2013/08/09(金) 14:05:19 ID:5DHIGNrQ

 * 翌日(3日前)


みかん箱「どういう経緯でクリスタが誤解したのか一晩考えたんだが…分からない」

みかん箱「まあ…クリスタにスリスリサワサワされるのは嫌いじゃない、ってか役得?かもだけど」

クリスタ「うーん、どうやったらエレンが出て来るんだろ…?」

ユミル「おいクリスタ。お前さっきから何してんだ?」

クリスタ「ユ、ユミル! いつからそこに?」

498: 2013/08/09(金) 14:06:12 ID:5DHIGNrQ

ユミル「いいから答えな。事と次第によっちゃあ…」

クリスタ「こ、この箱を撫でるとエレンが出て来るのっっっ!」

ユミル「…ハァ? クリスタ、どこで頭を打った?」

クリスタ「頭なんて打ってないよ! 違うのっ!」

クリスタ「ハンナがミカサが黒魔術を使ってるの見たって言ってたから!」

499: 2013/08/09(金) 14:07:40 ID:5DHIGNrQ

ユミル「やっぱりおかしい。今すぐ医務室行くぞ」グイグイ

クリスタ「本当なのっ! もうっ! ワケを話すから聞いてよ!!」

 ぺちゃらくちゃら ぺちゃらくちゃら …30分経過

ユミル「悪いが信じられないね」

ユミル「あたしも長いこと世の中を見て来たけど、そんな話は聞いた事がない」

500: 2013/08/09(金) 14:08:31 ID:5DHIGNrQ

クリスタ「でも、ミカサは東洋人の生き残りだっていうし…」

クリスタ「東洋の神秘って、そんな事も可能にしちゃいそうじゃない?」

ユミル「だから! そんなの有り得ないって! 夢見過ぎだ」

ユミル「まったく! こんなもんがあるから!」ゲシッ

みかん箱「痛ぇ! 蹴られた!」

501: 2013/08/09(金) 14:09:24 ID:5DHIGNrQ

クリスタ「だ、駄目ぇ! それはミカサのものだから壊しちゃダメ!」

ユミル「うっ…そ、そうだった」

ユミル「いくらあたしでもミカサを敵に回すのはちょっと…(冷や汗)」

ユミル「こいつはミカサに返す。あたしが直接渡すからな。いいな?クリスタ」

クリスタ「う、うん……」モジモジ

502: 2013/08/09(金) 14:11:07 ID:5DHIGNrQ

ユミル「じゃあ、それまで隠しておくから。部屋出てろ」

クリスタ「わかった……」トボトボ

みかん箱「で、考えあぐねた末に隠した場所が天井裏かよ」

みかん箱「なあ? ユミルがオレの事これきり忘れちまったらどうなるんだ?」

みかん箱「年末の大掃除までこのままか?」

503: 2013/08/09(金) 14:13:01 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「このままここでカビ生やして朽ちて腐っていく…なんて事はないだろうな?」

みかん箱「……………」

みかん箱「おーい! 誰かあ! おおおーい!」

 ガタッ…ゴソゴソ…カタン…コツ…コツ…ギシッ

みかん箱「本当に誰か来た!? 捨てる神あれば拾う神あり。月夜半分闇夜半分」

みかん箱「思わず世を儚んだが…有難う神様!」

504: 2013/08/09(金) 14:14:48 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「暗くて誰か判らないけど…どちら様?」

アニ「ここなら誰も来ない。さ、話を聞かせてもらおうかね」

みかん箱「へ? 誰かと思ったらアニ!? しかも激おこ?」

ベルトルト「いや、本当に僕達には身に覚えが無いんだよ」

ライナー「本当なんだ、アニ。信じてくれ」

505: 2013/08/09(金) 14:15:20 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「相手はベルトルトとライナー兄貴!?」

みかん箱「何故かアニが激おこプンプン丸だよ。一体どうなってる?」

アニ「ハッ! UMAを見た後で誰があんたらの言い訳を信じるとでも?」

みかん箱「UMA? これは予想外の単語が出て来たぞ」

アニ「どう見てもアイツらはあんた達2人のミニチュアだった」

506: 2013/08/09(金) 14:17:52 ID:5DHIGNrQ

アニ「さっさと吐いたらどうなんだい?」

アニ「私に内密であんな作戦を仕掛けた理由は?」

ベルトルト「だから! 本当に僕達は関与してないんだ」

ベルトルト「UMAが僕達にそっくりだった理由も解らない! 何も知らないんだ!」

ベルトルト「第一、僕達があんな作戦をあんなタイミングで実行すると思うかい?」

507: 2013/08/09(金) 14:19:18 ID:5DHIGNrQ

ベルトルト「事がここまで進んでいるのに、そんな無駄な事をする訳がない」

ライナー「そうだぞ!? 俺達は遊んでるんじゃないんだ」

アニ「ふん、どうだかね」

みかん箱「い、今、もの凄い事を耳にしたような…」

みかん箱「UMAが2人の…?」

508: 2013/08/09(金) 14:20:34 ID:5DHIGNrQ

ライナー「ハッ! そ、そうだ、ミカサの仕業じゃないのか!?」

アニ「ミカサ? どうしてここにミカサの名前が出てくるの」

みかん箱「アニがムカ着火ファイヤー・モードになった」

ライナー「そりゃお前、ミカサはエレンを造ったらしいから…それで」

ベルトルト「ええっ!? 何それ!?」

509: 2013/08/09(金) 14:21:50 ID:5DHIGNrQ

アニ「どういうこと?」

ライナー「いや、お前に呼び出されてこの場所まで這って来る間に、下の部屋からクリスタとユミルの会話が聞こえてきてな…」

アニ「この危急時にデバガメとは情けない奴!」ゲシッ

ライナー「ぐぁ!」プシュー

みかん箱「うっわ、アニの踵落としが炸裂!」

みかん箱「しゃがみ込んだ姿勢からでも繰り出せるとかどんだけだよ」

510: 2013/08/09(金) 14:24:20 ID:5DHIGNrQ

ベルトルト「うわあ! ライナー! しっかり!」

アニ「いいから、その話、もっと詳しく話しな」ゲシッ

みかん箱「アニがカム着火インフェルノーォォォオオウ・モードに!」

 かくかくしかじか …30分後

ライナー「それで…それに、それ以来ミカサの姿を見ないし…」

511: 2013/08/09(金) 14:25:56 ID:5DHIGNrQ

ベルトルト「た、確かに…」

アニ「………」

ベルトルト「あ、アニ…?」コワゴワ

アニ「ライナー…それって、この箱の事かい?」チラッ

みかん箱「!!」ビクッ

512: 2013/08/09(金) 14:27:28 ID:5DHIGNrQ

ライナー「あ、ああ、そうだ。それだ」ビクビク

アニ「 」ニチッ

みかん箱「!! 激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム!」

アニ「わかった。もういいよ」スチャッ

ベルトルト「……(ホッ)じゃあ僕達への疑いは晴れたんだね」

ライナー「……(ホッ)なら、もう帰ってもいいよな?」

アニ「あぁ…」ガッ

みかん箱「アニ! 爪! 爪が食い込んでるぅぅぅ!」

513: 2013/08/09(金) 14:28:54 ID:5DHIGNrQ

アニ「……そうだ」クルッ

ライベル「「!」」ビクッ

アニ「悪かったわね」フフフ…

ライベル「「!!」」ゾゾゾゾォ

 ガタン…シュルッ…カツッ…ン

アニ「……」スタスタスタ

みかん箱「アニ、オレを拾ってくれたのはいいけど…」

514: 2013/08/09(金) 14:30:06 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「な、何もしない、よな? な?」

みかん箱「アニ…どこまで行くの? 黙ってないで何か言ってくれよ」

アニ「…どう言って切り出せばいいかな?」

みかん箱「え?」

アニ「脅すのは得策じゃないし…かと言って煽てるのは苦手だし…」ザリッ

515: 2013/08/09(金) 14:32:54 ID:5DHIGNrQ

みかん箱「ここは…倉庫? 今晩は倉庫に置き去りにされるワケ?」

アニ「何とかハンナに話を訊かないとね」スタスタスタ



クリスタ「っもうユミルったら。何も取り上げなくてもいいじゃない」

クリスタ「こうなったら何とかみかん箱を取り戻して…」

クリスタ「ハンナに詳しい遣り方を訊こう。うん、そうしよう」

516: 2013/08/09(金) 14:35:09 ID:5DHIGNrQ

 * 翌日(2日前)


 ガラッ …ガサゴソ

キース「おお、あったぞ。使えそうな箱が」

みかん箱「…はよ…ざいます…」

みかん箱「うぅ、考え過ぎて頭痛い。寝不足気味で朝日が眩しい」

キース「少し大きいが、まあいい。何しろ上申書100部は嵩張るからな」スタスタ

517: 2013/08/09(金) 14:36:48 ID:5DHIGNrQ

キース「…余裕を見てもう100部刷るべきだったかも…」

みかん箱「…ん? …キース教官? 何の話ですか?」ハッ

みかん箱「あっ! ここ、教官室じゃないか!? これはマズイ!」

キース「搬入までに各兵団宛てに仕分けもしないと…」トン

みかん箱「まさかオレ…内地に送られるんじゃないよな!?」

518: 2013/08/09(金) 14:37:54 ID:5DHIGNrQ

 * 同時刻


ミーナ「ない」

サシャ「ない…」

ユミル「ない!」

クリスタ「ない!?」

アニ「ない!!」


「「「「「「ここにあったはずなのに!?」」」」」」

524: 2013/08/16(金) 19:35:32 ID:WrRcJft.

     * その日の午後


アニ(こうなったら急いでハンナに話を訊いた方がいいね)

アニ(ハンナがこっそり出掛けようとしてる!)

アニ(こっちは倉庫がある……そうか、フランツとの逢い引きかな)コソコソ

アニ(思わず後をつけちまったけど…どうしよう? 2人が出て来るまで待つか…)

アニ(いやちょっと待って。あれは…クリスタ?)

525: 2013/08/16(金) 19:37:07 ID:WrRcJft.

アニ(どうしてクリスタがこんなところをウロウロしてるの?)

アニ(まさか! 同じような目的で!?)

アニ(となるとマズイな。こっちが先手を打たなきゃ)

アニ(いっそ中に入る? クリスタなら入って来ないだろうけど、ハンナ達のイチャイチャを見せつけられるのもねぇ…)

アニ(クリスタが入り口に座り込んだ? あれは長期戦も辞さないって構えだ)

アニ(いよいよマズイなあ)

アニ(仕方ない。中で機会を待とう)スルスルッ

526: 2013/08/16(金) 19:38:04 ID:WrRcJft.

アニ(そういや、資材専用の倉庫って滅多に入らないから覚えてなかったけど)

アニ(もっと暗いのかと思ってたら、そうでもないね)キョロッ

アニ(ああ、採光用に天窓があるんだ)

アニ(ハンナとフランツに見つからないよう、もう少し奥に行って隠れよう)

アニ(それにしても仲のよろしいこって。どうせなら例の話にならないかなぁ)ぼー…


 ガンッ …ギュィイイン…ゴォォオン…

527: 2013/08/16(金) 19:38:48 ID:WrRcJft.

アニ(! び、びっくりした! 何? 今の?)

アニ(近くで何かのモーターが回り出した音みたいだけど…)

アニ(ビクッってなった時に、どっかにぶつけて掌に裂傷が)ピリピリピリ

アニ(ま、いいけどさ。こんなもん、すぐ治るし)

アニ(いや、ここで蒸気が出たら…2人に気付かれてもヤバイ)キョロキョロ

528: 2013/08/16(金) 19:42:14 ID:WrRcJft.

アニ(あ、この缶樽の中身ってアルカン? ついてる!)

 パカッ …ネチョ…… ポタッ

アニ(しまった、滴った血が中に入っちゃった)アセアセ

アニ(何とか掬い取らないと、誰かが此処に侵入したってバレたら余計な詮索が入る)

 ヌチャッ… …ネチョ… ニュルン …プルルッ

アニ(!! こ、これは…っ!!)

529: 2013/08/16(金) 19:43:08 ID:WrRcJft.

アニ(そっか。こんな簡単な事だったんだ…)

アニ(あっだめだめだめ! 私じゃない! 私じゃだめ!)

アニ(私がもう一人出来たって…)

アニ(欲しいのはエレン。エレンなんだ!)

アニ(エレンの、あの真っ直ぐな目が、私だけを見てくれたら!)

530: 2013/08/16(金) 19:43:55 ID:WrRcJft.

アニ(そうさ。あいつはいつだって真っ直ぐで…)

アニ(…父さんでさえ私を見ようとしなかった)

アニ(同郷のヤツでさえ私と目を合わせようとしない)

アニ(正体を隠しているんだから当然とはいえ、同期の皆は私を見てはいない)

アニ(本当の私がこんな深みに居るって事に誰一人気付きもしない)

アニ(そう思ってたのに…)

531: 2013/08/16(金) 19:44:37 ID:WrRcJft.

アニ(エレンは違った。エレンだけが違った)

アニ(どうして惹かれずにいられるだろう、あの瞳に、あの純粋な心に)

アニ(あの目は澄み切っていて、鏡のように覗き込んだ私の全てを映すけれど…)

アニ(同時に、息苦しさも胸の痛みも総て吸い込んで、無垢だった頃の自分を見せてくれる)

アニ(その無垢な自分をエレンもまた見ててくれる…そんな気がして……)

532: 2013/08/16(金) 19:45:22 ID:WrRcJft.

アニ(錯覚かもしれない。勘違いかもしれない。儚い期待なんだろうけれど)

アニ(綺麗な私を見せてくれるあの目にもっと映していて欲しいんだ)

アニ(嗤われるだろう。嘲られるだろう。こんな執着)

アニ(それでもいい! それでも私は…っ!)

アニ「エレン……エレン……」

533: 2013/08/16(金) 19:46:51 ID:WrRcJft.

??「…アニ……」

アニ「…エレンが……」

??「……?」

アニ「エレンは…もっと…こんなで……」

??「こう?」

アニ「うん」

534: 2013/08/16(金) 19:47:40 ID:WrRcJft.

??「こんな?」

アニ「そう。だいぶ似てきた」

??「どう?」

アニ「うん。凄く良い」

??「私はずっとこのまま?」

535: 2013/08/16(金) 19:49:17 ID:WrRcJft.

アニ「私、じゃないでしょ? いつも俺って言ってるじゃない」

エレニ「俺はずっとこのままで?」

アニ「うん」

エレニ「いいよ。それがアニの希みなら」

アニ「! エレン!!」

536: 2013/08/16(金) 19:51:24 ID:WrRcJft.

   * 倉庫・ロフト


アニ「あんたはさ、黒髪じゃないんだね」

エレニ「そりゃあ俺の基はアニだからな」ナデナデ

アニ「そっか…元が私だから…」

エレニ「エレンが造りたければエレンの血を手に入れないと」ナデナデ

アニ「……そ……う……なんだ……」ウトウト

537: 2013/08/16(金) 19:52:28 ID:WrRcJft.

エレニ「エレンを連れて来ようか?」ジッ

アニ「……エレン…を……造…る………」

エレニ「そうだよ。連れて来ようね」ナデナデナデ

アニ「………」zzz…

エレニ「私だけのエレンを造るために」フッ

538: 2013/08/16(金) 19:54:33 ID:WrRcJft.

 ~ エレン拉致から9日前 ~


ミカサ「おはよう、エレン」

アルミン「おはよう」

エレン「おう、おはようミカサ、アルミン」

エレン「しばらく振りに会った気がするぞ」

ミカサ「ちゃんとご飯は食べてた? 訓練中に怪我しなかった? 睡眠は十分取っていた?」

エレン「やめろって、ミカサ」

539: 2013/08/16(金) 19:55:18 ID:WrRcJft.

エレン「お前、相変わらずだな」クスッ

ミカサ(エレンが微笑った!)ピク

アルミン「ミカサ」クイクイ

ミカサ「(そうだった) エレン、今夜は当直の教官は居ない。私が代理を務める事になった」

エレン「え、そうなのか?」

540: 2013/08/16(金) 19:56:30 ID:WrRcJft.

ミカサ「そうなの。それでエレンにも手伝って欲しい」

アルミン「僕とマルコも任に就くんだ」

エレン「すると俺も含めて4人か。いいぞ」

ミカサ「ありがとう、エレン」パアッ

サシャ(さっきまでみかん箱が何処にあるのか訊いてきたミカサとは別人のようです)ヒソヒソ

ミーナ(焼却炉の傍で見つけたと言った途端、縊り殺されるかと思った)ヒソヒソ

541: 2013/08/16(金) 19:58:00 ID:WrRcJft.

ジョシー(どうしよう。あの箱がミカサのだったと聞いたのはジャンに手渡した後だったのよ)ガクガク

ジョシー(代わりに別の箱を置いといたのも私だけど…ミカサに正直に話すべき? でも氏にたくない)ブルブル

ユミル(今ならミカサの機嫌は良さそうだが…謝っても許して貰えるかどうか…)ゲッソリ

クリスタ(やっぱり私のせいよね…みかん箱を失くしたってミカサに言ったら…反応が怖いっっっ)ウルウル

アニ「おはよ」

ライナー(いつも仏頂面のアニが2日連続で機嫌が良いなんて怪し過ぎる)

ベルトルト(あれから一転してあの調子だ。これは何かある)

542: 2013/08/16(金) 19:59:20 ID:WrRcJft.

ライナー(変と言えばクリスタもだ。思い詰めた顔をして…)チラチラ

ライナー(…可愛いじゃねぇか。結婚しよ)ムフッ

クリスタ(それにしても…ハンナがエレンの作り方を忘れていたなんて…ショック!)

クリスタ(こうなったら何としてもみかん箱をゲットしてやる!)

クリスタ(最初の方法で何度でもやってみよう)

クリスタ(そうよ。やってみなきゃわからないんだ!)

クリスタ(とにかく今はミカサに謝って、みかん箱探すの手伝うって言わないと)

クリスタ(私が自由に動くためにはこれしかない)グッ

543: 2013/08/16(金) 20:00:49 ID:WrRcJft.

ミーナ(アニとクリスタの表情が対照的…どういうこと?)

サシャ(クリスタとアニの様子が…あれは何か悪い事を企んでいる顔です)

アニ(それにしても…ハンナに訊くまでもなかったのはラッキーだった)

アニ(近くにあったアルカン樽が私の疑問に全て答えてくれた)

アニ(こうなれば後は何とかエレンの血液をゲットするだけ…)

アニ(何とか対人格闘訓練の時にエレンと組まないと)

アニ(エレンに怪我させるのは心が痛むけど、擦り傷程度ならいつもの事だし…)

アニ(後はもう一人のエレンが手伝ってくれる)ポッ

544: 2013/08/16(金) 20:14:11 ID:WrRcJft.

   …午後…

サシャ「エレンがミカサに独占された一日でした」ガックリ

ミーナ「やっぱりミカサには敵わないのかな…」ポツリ…

ユミル「まさかミカサが許してくれるとはね…正直になるのもたまには良いってか」ホッ

クリスタ「ミカサに断られてしまった…まさか気付かれてるの!?」

ジョシー「い、いいい命拾いをしたっっっ!!」ドキドキドキドキ

ジャン「マルコの奴、いつの間に。ミカサと夜警当番なんて羨まし過ぎる!(涙目)」

アニ「結局、一緒に訓練するどころか、エレンに話し掛ける事さえ出来なかった……」ボーゼン

545: 2013/08/16(金) 20:15:41 ID:WrRcJft.

   * 宿直用コテージ


エレン「へぇ…宿舎の当直室とは違って、こっちはバカでかいなあ」

アルミン「元はこの地方の豪族の別荘だったそうだからね」

エレン「アルミンは何でも詳しいなあ。博学なところとか尊敬するぞ」

アルミン「い、いや、たまたま知ってただけだよ(苦笑)」

マルコ「そろそろ配置に着かないと」

546: 2013/08/16(金) 20:17:05 ID:WrRcJft.

ミカサ「エレン、合言葉は覚えた?」

エレン「えっと…『ソイレントグリーンは人間だ』だっけ。ってかコレって何?」

ミカサ「ただの合言葉。意味は無い。有るけど無い」

アルミン「ほ、ほら、合言葉なんだから、誰もが思いつくような言葉じゃダメだからね」

マルコ「そうそう。山、川とか、フラッシュ、サンダーなんて誰だって想像できるからね」ハハハ

547: 2013/08/16(金) 20:17:50 ID:WrRcJft.

エレン「なるほど。確かにその通りだな」

ミカサ「私のは『雄鶏は皆を起こそうと夜明けに鳴く。だが梟はまだ夜であると知っている』」

アルミン「僕の合言葉は『狐がうろつき主人は眠る。これが我々だ』だよ」

マルコ「僕のは『月曜日か!月曜日のバタースカッチプディングは最悪なんだ』だね」

エレン「…長くないか?」

548: 2013/08/16(金) 20:18:29 ID:WrRcJft.

アルミン「いいんだよ長い方が。声を聞き間違える事もないだろう?」

エレン「そうか、そこまで考えての合言葉だったんだ」

アルミン「じゃあ、もういいね。配置に着こう」

ミカサ「エレン」

エレン「何だよ?」

ミカサ「これ」つ

549: 2013/08/16(金) 20:19:27 ID:WrRcJft.

エレン「何だこれ? 本か? ここで勉強してろって?」

ミカサ「よく見て」

エレン「著者…!! ミカサ、これ何処で?」

ミカサ「ハンジ分隊長から(ヱレン経由で)回ってきた。エレンが持っていていいって」

エレン「ミカサ…もしかして、お前、この本の為に調査兵団の手伝いをやってたのか?」

550: 2013/08/16(金) 20:20:04 ID:WrRcJft.

ミカサ「ううん、違う。でも、これはエレンの元に来るべくして来た本。大事にして」

エレン「あ…ありがとう! ミカサ」グッ

ミカサ(エレンにハグされた! エレンにぎゅってハグされた///)ポッ

ミカサ(ヱレン、ハンジさん、ありがとう!)

ミカサ(この恩は必ず! 末代まで祝ってやる!)

551: 2013/08/16(金) 20:21:13 ID:WrRcJft.

ミカサ「では私はもう行く。本は時間までこの部屋でゆっくり読んでいるといい」

エレン「おう。じゃ、また後でな」

 …パタン…

ミカサ「さて。この部屋の鎧戸を下ろせば…」

 ポチ …シュウウゥゥゥ… …シュウゥゥ… …シュゥ… カタン カタン カタン カタン カタン

ミカサ「用意は整った。後は迎え討つのみ!」スラッ チャキッ

552: 2013/08/16(金) 20:22:30 ID:WrRcJft.

   *

エレン「ん? 何か妙な音と振動が…?」

エレン「あれ? ドアが開かないぞ?」ガチャガチャ

エレン「外からしか開かないのか? そんなわけねぇか」

エレン「外の音がプッツリ聞こえなくなったけど、あいつら大丈夫か?」

エレン「……まっいいや。交代時間になりゃ気付くだろ。今は本の方が気になるしな」

   *

553: 2013/08/16(金) 20:24:44 ID:WrRcJft.

マルコ「あいつ…ヲイナーは、来るかな?」

アルミン「たぶん、直ぐに」

ミカサ「エレンは予定通り中央の部屋に」

アルミン「お疲れ。もっと何か訊かれると思ったけど、案外素直に従ってくれたね」

ミカサ「本を渡して来たので、そちらに気を取られている」

マルコ「外壁の方の鎧戸は?」

ミカサ「ヲイナーが侵入したのを確認してからアルミンが下ろして」

554: 2013/08/16(金) 20:26:16 ID:WrRcJft.

マルコ「後でハンジさんも駆け付けるって言ってたけど」

ミカサ「鎧戸が下りていた場合はそのまま外の見張りに立ってくれる」

ミカサ「マルコは勝手口へ回って待機して」

ミカサ「私は中央の部屋の護りを固める」

ミカサ「異常に気付いたらお互い口笛で知らせ合う」

アルミン「了解」スチャッ

マルコ「了解だ」ジャキッ

ミカサ「では宜しく」

555: 2013/08/16(金) 20:28:05 ID:WrRcJft.

    …数分が経過…

アルミン(締め切ってるせいかな? 何だか蒸し暑い)

マルコ(まずい。緊張して手が震えてきた)

 …カタン…

マルコ(! き、きき来た!?)

ハンジ「マルコ! マールーコ! 開けておくれ!」ドンドンドン

マルコ「な、何だ、ハンジさんか」フーッ

ハンジ「やれやれ。間に合った」ニパー

556: 2013/08/16(金) 20:29:50 ID:WrRcJft.

マルコ「馬を飛ばして来たんですか?」キョロキョロ

ハンジ「ああ。繋ぐ手間が惜しくてね。早く入れてよ」ギュウギュウ

マルコ「駄目ですよ、馬は繋いでおかないと」グイグイ

 ガターン Piiiiーーー!!

マルコ「口笛!? しまった!」

557: 2013/08/16(金) 20:30:59 ID:WrRcJft.

ハンジ「うおっ!?」

 ガシャーン! ガシャーン! ガシャーン!

ハンジ「鎧戸がっ!!」

マルコ「行きます! すいません分隊長!」ダダダダ

ハンジ「くそっ!! 一歩遅かったか」

ハンジ「いや、侵入経路を探ればどっちから来たのか判る! 足跡を見つけよう」ザザッ

558: 2013/08/16(金) 20:33:15 ID:WrRcJft.

マルコ「アルミン!」ダダダッ

アルミン「……ぅ…う………」クラッ

マルコ「しっかりしろ、アルミン! 奴は!?」

アルミン「あ、あいつ…切りつけたのに刃が素通りした…っ!」

アルミン「僕は投げ飛ばされて…このザマだ…クソッ!」

アルミン「行ってくれ、マルコ! 僕に構うな。エレンを守るんだ!」

マルコ「わかった!」バッ

マルコ「外にハンジさんが来てる。出来れば指示を仰ぐんだ」ダンッ

559: 2013/08/16(金) 20:38:55 ID:WrRcJft.

   *

エレン「何だ? また振動を感じるが…これじゃ本も読めねえ」

エレン「夜だから巨人の襲撃ってわけではなさそうだし…地震か?」

エレン「…さっきから…俺の目の錯覚か? このテーブル浮いてないか?」

エレン「え…? いや違った…テーブルの脚が伸びてる?」

 ギギギ …ガシャン… カチッ

エレン「はぁ? 何だこりゃあ!? 俺の背丈より高くなっちまったぞ?」

560: 2013/08/16(金) 20:40:44 ID:WrRcJft.

エレン「どうなってんだ?」ヒョイ

エレン「テーブルってぇより、でかい箱みたいだな…」

 カチリ! シュウゥゥ…

エレン「えっ!? テーブルの下に潜った途端にまた動き出した!」

エレン「ゆ、床がっ! テーブルが俺ごとめり込んでく!!」

エレン「やっべぇ! 早くこっから出ないと!!」

561: 2013/08/16(金) 20:43:21 ID:WrRcJft.

 シュゥゥウ…ウィィィイイイ…ィィイン

エレン「ダメか。くそっ。一体どこまで降りるんだ?」ガンガン

 ポーン! ガーッ

エレン「?? こ…れ…? ここどこだ?」

エレン「まさか…地下か!?」

562: 2013/08/16(金) 20:44:24 ID:WrRcJft.

   *

ミカサ「くっ…! こちらの刃は素通りするのに、こいつの攻撃は当たる!」ビュッ

ミカサ「なぜ!?」ガキン

エレニ「なぜだろうな?」クスクス

ミカサ「エレンの顔で嗤うな!」ビュンビュン

エレニ「おっと。危ないじゃないか、ミカサ。俺を頃すつもりか?」

ミカサ「黙れ!」ブン

563: 2013/08/16(金) 20:45:54 ID:WrRcJft.

エレニ「お前の相手ももう飽きたぞ。ここを通してもらう」シュルン

ミカサ「ま、待て!!」バッ

マルコ「ミカサ!」ダダダダ

ミカサ「行かせない! 行かせるものか!」ザクッ ザクッ

マルコ「な、何だ? そいつ…まるで融けた蝋燭みたいに隙間から中へ…っ!!」

ミカサ「切っても突いてもダメージを与えられない! どうすれば!?」

マルコ「エレン! 逃げろ! 聞こえてるか? エレーン!」バンバン

564: 2013/08/16(金) 20:48:22 ID:WrRcJft.

ミカサ「だめ。たぶん、中には聞こえない」

ミカサ「でも、鎧戸が下りている限りヲイナーにはエレンを連れ出す事は不可能」

ミカサ「なので、あいつが出て来るところを狙う」ギン

アルミン「ミカサ! マルコ!」タタタ

ミカサ「アルミン! 怪我を!?」

アルミン「大丈夫。それより奴は?」

マルコ「中だ」

ミカサ「ごめんなさい。阻止出来なかった」

アルミン「! じゃあ…奴は今、エレンと対峙してるのか」

565: 2013/08/16(金) 20:49:57 ID:WrRcJft.

マルコ「アルミン、ハンジさんは何て?」

アルミン「それが、どうも近くに居ないみたいなんだ。連絡は取れなかった」

マルコ「そうか…」

マルコ「もしかしたら、ヲイナーの製造者が近くに来ていないか確認してるのかもね」

アルミン「かもしれない。どちらにせよ今は僕らだけでこの場を切り抜けなきゃ」

ミカサ「エレン……無事でいて……」ギュッ

566: 2013/08/16(金) 20:57:42 ID:WrRcJft.

マルコ「…ねぇ、鎧戸を上げて、僕達も突入した方が良くないか?」

マルコ「当初の予定だと、エレンとヲイナーは遭わせないようにする筈だったけど、それはもう崩れちゃったし…」

アルミン「そうだけど…エレンが倒しちゃう可能性も無くはない…どうだろう…どうしよう」

ミカサ「アレは切りつけても刺しても平気そうだった。なまじかな手段で対抗出来るとは思えなぃ…」

アルミン「ミカサ! 弱気になってどうするんだ! エレンを信じようよ」

マルコ「そ、そうだ。エレンは対人格闘術に秀でてる。もしかしたら…!」

ミカサ「でも…アレがエレンと同じなら…そんな筈はないけど…万一、エレンと同じなら…」

567: 2013/08/16(金) 20:59:01 ID:WrRcJft.

アルミン「自分と同等以上の相手とならエレンはやり慣れてる。やられっ放しはないだろう」

マルコ「じゃ、じゃあ、このまま何もしないで待つのか?」

アルミン「目的はあくまでもヲイナーの捕獲だ。奴を逃がさない事が重要なんだ」ブルブル

マルコ「……鎧戸が下りている限り、エレンが敵の手に落ちる事はない、か…」

マルコ(でも、これじゃ蛇の生頃しと一緒だ。奴にあんな特質があったばかりに…)

マルコ(…特質? 体を自在に変形させられる特質……半液体のような……)

568: 2013/08/16(金) 21:03:34 ID:WrRcJft.

アルミン「ねえ…ここに樽か何か、密閉出来る容器はあったっけ?」

マルコ「同じ事を思いついたみたいだね」ニッ

ミカサ「樽? なら、台所の奥に半地下への入口がある。そこの貯蔵庫に酒樽があったけど…」

マルコ「僕がそいつを取って来るよ」スクッ

アルミン「お願いするよ。僕はこの部屋の周りを点検して他に隙間がないかどうか確かめておく」

ミカサ「わかった」

569: 2013/08/16(金) 21:06:01 ID:WrRcJft.

   *


エレニ「……いない」

エレニ「騙された? 罠だったの?」

エレニ「いや、エレンがこのコテージに入るのは確かに見た」

エレニ「って事は、どっかに抜け道があるのか…」

エレニ「どこ? どこかにそれらしいものは……」キョロキョロ

 ウィィイイイン……

エレニ「何? 何の音? どこから?」

エレニ「床!?」

エレニ「床がスライドして箱が現れた!?」

570: 2013/08/16(金) 21:08:16 ID:WrRcJft.

ハンジ「まだ居てくれて良かったよ」

エレニ「誰だ!?」

ハンジ「調査兵団分隊長、ハンジ・ゾエだ。宜しくお見知りおきを頼むよ」

ハンジ「で、あんたは?」

エレニ「エレンはどこ?」

ハンジ「やれやれ、礼儀がなってないね。こっちは名乗ったんだ、そっちも名乗ってもらおうか」

ハンジ「それとも名前はまだ無いのかな? あんたの創造主は何て呼んでる?」

571: 2013/08/16(金) 21:11:55 ID:WrRcJft.

エレニ「名前ならある。けど、あんたに名乗ってやる気はないよ」

ハンジ「じゃあ当然、あんたを造った人間の名前も教えちゃくれないんだろうね」スチャッ

エレニ「当然、な」スッ

ハンジ(あの構え…! なるほど…手強そうだ)

エレニ「エレンの居場所はその下か。退きな」

ハンジ「大人しく捕まってくれりゃいいと思ってたんだけど、やっぱりそうはいかないか」

ハンジ「ミカサの造ったヱレンは良い子なのに、あんたはどっか捻くれてるようだね」

エレニ「!」カッ

572: 2013/08/16(金) 21:12:53 ID:WrRcJft.

エレニ「それで挑発してるつもりか? 俺の性格がどうでもあんたには関係ないだろ」

ハンジ「私はただ、あんたらには製作者の気質が反映されるのかと思ってね」

ハンジ「見たとこ、ヱレンと同じで、あんたも見た目はエレンそっくりだが、性格がだいぶ違う」

ハンジ「答えてくれないかな? それはエレンにもある性格の一部かい? それとも製作者の影響?」

エレニ「それを知ってどうする?」

ハンジ「単に興味があるから、なんだけど…」

ハンジ「答えるとマズイ? それって製作者が特定されるからか?」

573: 2013/08/16(金) 21:14:16 ID:WrRcJft.

ハンジ「まあ、見た目だけでもある程度は推測出来るけど。例えば…」

ハンジ「あんたは金髪だけど、それは元になっている製作者が金髪だから、とか?」

エレニ「もう黙れ!」ブン

ハンジ「おっと!」ガキッ

ハンジ「ふんっ!」ビュッ

エレニ「無駄だ」ニュルッ

ハンジ「そうか、あんたはエレンから造られたんじゃないんだね?」

574: 2013/08/16(金) 21:15:30 ID:WrRcJft.

ハンジ「その外見は自由に形を変えられる。あんたはエレンに化けてるだけなんだ」

エレニ「フッ。だから?」

ハンジ「そこまでの執念が……哀れだと思ってね」

エレニ「!!」ギロッ

ハンジ「!?」

 ビュルッ ズズズズ…

ハンジ「逃げるのか? 待て!!」

575: 2013/08/16(金) 21:17:05 ID:WrRcJft.

ハンジ「しまった! 下へ向かわれては…っ!」

 ガコン! ガガガガ

ハンジ「鎧戸が? 外から開けたのか!?」

ミカサ「エレン!」バッ

ハンジ「ミカサ?」

ミカサ「ハンジさん!? どうして此処に? エレンは!?」

ハンジ「エレンは厩だ! 今、ヲイナーが後を追って行った!」

576: 2013/08/16(金) 21:18:40 ID:WrRcJft.

アルミン「エレンが厩に? どういうこと!?」

ハンジ「それは後だ!後! って、イタタタ」

マルコ「あっすみません!ってハンジさん!? いつの間に!?」

ハンジ「何だいその樽は? 早く退けて!」

ミカサ「先に行きます!」タタタタ

アルミン「僕もっ!」ダダッ

ハンジ「皆、説明するから走りながら聞くんだ」タッ

577: 2013/08/16(金) 21:27:27 ID:WrRcJft.

ハンジ「ヲイナーの侵入経路を割り出そうと足跡を探しているうちにエレンと出遭した」

ハンジ「エレンが言うには、部屋の床下に在った秘密の脱出口が厩舎に繋がっていたんだ」

ハンジ「エレンにはそのまま厩舎に居るよう指示して、私はその通路を逆行してあの部屋に辿り着いた」

ハンジ「部屋にはヲイナーが居たが、逃げられちまってこのザマだ。今ヤツは同じ通路を辿ってエレンの下に向かっている」

ハンジ「マズイことに、エレンはそれを知らない」

ミカサ「ヲイナーの体は流動性がある。捕まえるのは困難を極める」

ハンジ「ああ、私も見たよ…。目の前で氷が溶けるように床下に逃げ込むところをね」

578: 2013/08/16(金) 21:29:12 ID:WrRcJft.

ハンジ「だが立体機動装置を付けているわけじゃない。飛んで逃げられはしない」

アルミン「ヲイナーの製作者が近くまで来ているって事はないでしょうか?」

アルミン「逃走を援助されたら…僕らには打つ手がありません!」

ハンジ「おそらく…それはない」

ハンジ「君達には言ってなかったが…宿舎と周辺は昨日からずっと部下に見張らせている」

ハンジ「誰かが出入りしたら知らせが来る。知らせが無いって事は誰にも動きが無いって事だ」

ハンジ「ヲイナーの動きは見逃したようだが、あんなものが居るのは想定外だったからね」

579: 2013/08/16(金) 21:31:15 ID:WrRcJft.

マルコ「見えてきた!」

ミカサ「!」ダッ

ミカサ「エレン!」ダン

ミカサ「エレン!?」ヘナヘナ

ハンジ「どうした!?」バン

ミカサ「…気を失っているだけ。怪我もしてはいない」ホッ

580: 2013/08/16(金) 21:32:54 ID:WrRcJft.

ハンジ「ヲイナーはっ!? いない!?」

マルコ「クリア!」

アルミン「こっちもクリアです。ヲイナーは居ません」

ハンジ「エレンに気付かず逃げたのか? それともサンプルを採るだけに留めたのか…」

ヱレン「サンプルは採られていません。エレンは俺が気絶させたんです」

ハンジ「その声、ヱレン!? どこ!?」

ヱレン「ここです。今下りますから」スタッ

581: 2013/08/16(金) 21:36:22 ID:WrRcJft.

ハンジ「梁の上に…呆れた。ずっと居たのかい?」

ヱレン「ええ、まあ」モジモジ

ハンジ「何してんの!? あんたは!! 留守番してろって言ったよね!?」ガミガミ

ヱレン「すみません。手が足りないかと思ったので…」シュン

ハンジ「……いい。この話は後にしよう。ヲイナーを見たかい?」

ヱレン「見ました。けど、接触は避けるべきだと判断して、敢えて追い駆けませんでした」

ハンジ「いや、それでいい。冷静で良い判断だったよ」

マルコ「ま、待って! 確認したい!」

アルミン「マルコ?」

582: 2013/08/16(金) 21:37:30 ID:WrRcJft.

マルコ「ヱレン……今日は『月曜日か!』?」

ヱレン「『月曜日のバタースカッチプディングは最悪なんだ』」ニッ

マルコ「よ、良かった! 間違いなくヱレンだ」ペタン

マルコ「あいつ…ヲイナーが君そっくりだったから、僕…」ウルッ

ミカサ「ヲイナーは金髪。間違えるのがどうかしている」ムッ

マルコ「フードを被ってたらそれも分からないじゃないか(涙目)」

アルミン「そうだ…髪を染められたら見分けるのは難しくなるのに、どうしてそうしなかったんだ?」

ハンジ「!」

583: 2013/08/16(金) 21:39:01 ID:WrRcJft.

ヱレン「可塑体の材料は染色が不可能な物質という事でしょうか?」

ハンジ「うーん…不可能って言うより、精製の過程で漂白された物質なのかも…」

アルミン「そうだとすると、ヲイナーの髪の色はヲイナートのせいではなく漂白剤の影響なのかもしれないと?」

マルコ「だとしたら、基になった人物の特定は難しくなるね」

ハンジ「どうしても思考の行き着く先はヲイナー捕獲の後になるか…厄介だな」フゥ…

584: 2013/08/16(金) 21:40:05 ID:WrRcJft.

ハンジ「結果は惨敗だったが、この失敗を踏まえて次の作戦を練るしかない」

マルコ「次………」

ハンジ「次のチャンスは…ケーゲル大会の日だ。必ず仕留めるよ!」

アルミン「流動体を捕まえる案があるんです。聞いて貰えますか?」

ミカサ「ハンジさん、エレンをコテージに戻さないと。ベッドに寝かせてあげたいの」クイクイ

585: 2013/08/16(金) 21:41:36 ID:WrRcJft.

ハンジ「あ? ああ、そうだね。ごめんごめん」ハハッ

ハンジ「よし。では今日は解散。明日また集合しよう」

ハンジ「…っと、そうだ。ヱレン、勝手にラボを抜け出した罰は与えるからね!」メッ

ハンジ「ったく。ヱレンは良い子だと思ってたのに。帰ったらお仕置きだ」ブツブツ

ヱレン「は、はは…」(思わず後退り)

586: 2013/08/16(金) 21:44:11 ID:WrRcJft.

     流石にこの時間は重い。書き込めません。

     今日はここまでにします。m(_ _)m

587: 2013/08/21(水) 19:17:01 ID:FGDHKUAI

 ~リヴァイ兵長によるエレン拉致から7日前(=ケーゲル大会の日)~


 * 遊戯場前

ライナー「ちょっと早く来過ぎたな」

ベルトルト「全く知らないゲームをやるのって緊張するね」

ライナー「だな。女子(特にクリスタ)の前で恥は掻きたくないぜ」

ユンゲ「おーい、ライナー兄ちゃーん、ベルトルト兄ちゃーん」

シュヴェスター「こんにちは」

588: 2013/08/21(水) 19:17:48 ID:FGDHKUAI

ライナー「おう、お前達か。元気にしてたか?」

ユンゲ「うん! 兄ちゃん達は?」

ベルトルト「ああ、元気だよ」

シュヴェスター「ベルトルト兄ちゃん、遊んでー」

ベルトルト「あ…ごめん、今日は訓練兵団の皆と約束があるんだ」

シュヴェスター「ええ~? つまんなーい」プゥ

ベルトルト「ごめんね。また今度遊ぼう?」

589: 2013/08/21(水) 19:18:36 ID:FGDHKUAI

ユンゲ「訓練兵団の皆って、ここで?」

ライナー「おう。今日はケーゲルで誰が一番かを決めるんだ」

ユンゲ「すげえ!」

シュヴェスター「かっこいー!」

コニー「コラコラ、そこの2人。幼児に手を出したらダメだろ」

590: 2013/08/21(水) 19:19:12 ID:FGDHKUAI

ライナー「コニーか。お前なあ、現れるなり人聞きの悪い事言うなよ」

ベルトルト「そ、そうだよ。誤解されるじゃないか」ドギマギ

サシャ「あー挙動不審(笑)。おまわりさん、こいつです」

ライナー「こ、こらサシャ! ふざけるなって」

ミーナ「えーなになに? やだーソッチに走っちゃったの?」

ライナー「お前らな…」

591: 2013/08/21(水) 19:20:24 ID:FGDHKUAI

アルミン「ミ、ミカサ? 何冷静にレクチャーしてるのかな? ハハ、ハ」

ジャン「いいか?このミカサはな、俺らの中では一番強い兵士なんだぞ」

ユンゲ「すっげー! 姉ちゃんてすげぇんだな!!」

シュヴェスター「お姉ちゃんも兵士?」

クリスタ「そうよ」

シュヴェスター「きれー…」

ユミル「おっまだ小さいのに良くわかってるじゃないか。お前中々見どころがあるぞ」

マルコ「うん、この幼さで大した審美眼の持ち主だね」

592: 2013/08/21(水) 19:21:44 ID:FGDHKUAI

 >>592 間違えちゃった(涙)
 
 正しくは ↓

593: 2013/08/21(水) 19:22:25 ID:FGDHKUAI

ミカサ「不審な人物が寄って来たら先ず鳩尾に頭突き、そして金的を」

アルミン「ミ、ミカサ? 何冷静にレクチャーしてるのかな? ハハ、ハ」

ジャン「いいか?このミカサはな、俺らの中では一番強い兵士なんだぞ」

ユンゲ「すっげー! 姉ちゃんてすげぇんだな!!」

シュヴェスター「お姉ちゃんも兵士?」

クリスタ「そうよ」

シュヴェスター「きれー…」

ユミル「おっまだ小さいのに良くわかってるじゃないか。お前中々見どころがあるぞ」

マルコ「うん、この幼さで大した審美眼の持ち主だね」

594: 2013/08/21(水) 19:23:35 ID:FGDHKUAI

ユンゲ「こっちのお姉ちゃん達も美人ー」

アルミン「ぼ、坊や。僕は男だよ(涙目)」

エレン「ぷっ」

アルミン「エーレーン~? 何がおかしいのかな~?」ムス

シュヴェスター「あたし、こっちのお姉ちゃんのが美人だと思う」

エレン「は? …えっ? 俺のことか!?」

アニ「ぷっ。…ぅ…くっくっく」

アルミン「ブーメラン来たあ! 僕を笑ったバチが当ったね」

595: 2013/08/21(水) 19:24:42 ID:FGDHKUAI

ジャン「よく見るんだ幼女よ。この氏にいそ…猫目小僧のどこが美人なのかにゃあ?」ヒクッ

ミカサ「貴女!」ドン!

ジャン「おわっ!」デングリガエリ

ミカサ「貴女は素晴らしい感性の持ち主」お手々ギュ

ミカサ「どうかそのまま、周囲に流されず育って欲しい」

エレン「ちょっ、そこは間違いを是正しろよっ」

596: 2013/08/21(水) 19:26:25 ID:FGDHKUAI

ミカサ「世の中、強いものが正義。美しさこそが正義」

ミカサ「エレンは成績5位、あっち(ジャン)は6位。どちらが正しいか。判るわね?」

ユンゲ「エレン」

シュヴェスター「エレーン」

ミカサ「貴方たちはとても賢い」ナデナデ

サシャ「これが洗脳というものですか」

ミーナ「まあね、エレンもアルミンも見ようによっては女性に見えなくもないというか…」

597: 2013/08/21(水) 19:27:22 ID:FGDHKUAI

ミーナ「ロンTワンピにレギンスのミカサと白シャツにスキニーのエレン…」

ミーナ「こうして並んでるところを見ると、若干エレンの方が細いし小さい…」

ミーナ「パッと見、着こなしも…ハッ!?」

ミーナ(何てこと! 何気に同配色で長さも一緒! これは狙ったペアルック!?)

ミーナ(しまった!)←花柄フリルのツーピース

アニ(やられた!)←カシュクール・イン・ノースリーヴとレースのプリーツスカート

サシャ(皆さんお洒落ですねぇ)←ミリタリ調シャツとボックスプリーツキュロット

クリスタ「ま、あ…いいんじゃないかな?」←チュニックブラウスにショートパンツ

ユミル「(腹を抱えて悶絶中)」←ジャージ部魂、違った、カットソーとジーンズ

598: 2013/08/21(水) 19:28:45 ID:FGDHKUAI

     ※因みにヤロー共はTシャツにジーンズかチノパン。ごく普通。

     ※綺麗なお姉さんに「その服は何て言うんですか?」と訊き回った俺はどう見ても獣の巨人でしたorz

599: 2013/08/21(水) 19:29:57 ID:FGDHKUAI

エレン「なぁ、勘弁してくれ」

マルコ「はは。まあまあ」

マルコ「そろそろ中に入ろうよ。往来でこんな大勢が騒いでると近所迷惑だ」

ジャン「おう、そうだな。じゃ行くか」

ライナー「じゃあな、お前達。また今度遊んでやっから」

ユンゲ「うん! 兄ちゃん勝てよー」

シュヴェスター「がんばってねー!」

ベルトルト「うん。ありがとう」

600: 2013/08/21(水) 19:31:19 ID:FGDHKUAI

マルコ「随分と慕われてたようだけど、よく遊んでるの?」

ライナー「ああ、前にちょっとな」

ベルトルト「あの子たち、遊び場が無くて…」

ベルトルト「でもまだ小さいから遠くへは行けないだろ?」

ベルトルト「だから、瓦礫の山なんかで遊んでるのを見て、つい…」

ライナー「ベルトルトと2人でちっとばかり瓦礫を片付けて遊び場を作ってやったんだよ」

マルコ「それは良い事したね」

601: 2013/08/21(水) 19:32:59 ID:FGDHKUAI

ライナー「あいつら調査兵団に憧れててよ。俺達が兵士だってわかると、凄い凄いって感激してたな」

ベルトルト「う、うん…」

ライナー「一緒に調査兵団ごっことかしてな。結構楽しかったぜ」ニカッ

マルコ「そうなんだ。子供好きなんだねぇ」ニコニコ

マルコ「あ、意外だって意味じゃないよ? 面倒見がいいねって言いたかったんだ」

ライナー「わーかってるって。ハハハ」

602: 2013/08/21(水) 19:34:41 ID:FGDHKUAI

ミカサ「今日はヲイナー捕獲のチャンスだったかもしれないのに」ヒソヒソ

ミカサ「こんな事をしていていいのかしら?」

アルミン「仕方ないよ。ハンジさんにどうしても外せない用が出来たんだから」

ミカサ「それなら私たちだけでやればいい。違う?」

アルミン「それは無理だよ。僕らは失敗したばかりじゃないか」ヒソヒソ

アルミン「コテージの完璧な防御すら破って来るような相手なんだ。もっと厳密な作戦を立てないと」

アルミン「ハンジさんもきっとそう判断したんだよ」

603: 2013/08/21(水) 19:35:51 ID:FGDHKUAI

アルミン「それに、この調子だとマルコ1人じゃサンプル採取も大変そうだと思わない? 僕達が手伝わないと」

ミカサ「……そうね。わかった」

エレン「おーい、ミカサ!」

ミカサ「何? エレン」ビュッ

アルミン「……時々、ミカサって瞬間移動するよね」

マルコ「ははは。そうだねえ」

604: 2013/08/21(水) 19:38:11 ID:FGDHKUAI

 * 遊戯場内


アルミン「じゃあ皆、ゲームを始める前に注意事項があるから聞いて」

アルミン「フロア内はレンタルのシューズに履き替える事。土足厳禁だよ」

アルミン「僕とマルコが受付をやるからサイズを言ってくれ」

マルコ「シューズと一緒に参加賞のミニナプキンを渡すから汗を掻いたらこれを使ってね」

マルコ「使い終わったナプキンは包装の袋に入れて、散らかさないように」

マルコ「ゴミは僕が後で回収するね」

605: 2013/08/21(水) 19:39:13 ID:FGDHKUAI

アルミン「次にケーゲルのルールを説明する。(~説明中~)以上だ」

アルミン「何か質問は? 無いなら進めるよ」

マルコ「今回は参加者が多いので、最初は4人1組のチーム戦だ。4人が交代で1投ずつ投げる」

マルコ「最終的に2チームが残ったら、そこから1対1のトーナメント戦になる」

マルコ「それじゃあ、チームを作った者から順番に登録を済ませてくれ」

 ワイワイ ガヤガヤ ザワザワ ドヨドヨ…

ジャン「4人か、誰と組むかな。俺とマルコと…」

606: 2013/08/21(水) 19:40:32 ID:FGDHKUAI

ミカサ「ジャン、私とアルミンを貴方のチームに加えて欲しい」

ジャン「えっ!? どどどどうした? お前はてっきりエレンとチームを組むとばかり」

ミカサ「エレンは自分の班の人達とチームを組んでしまった」

ジャン「そ、そそ、そうか」

ミカサ「私と組むのがイヤなら他を当たる」

ジャン「めめめ滅相もありません! かか歓迎するぜっ!」

ジャン(やった! なんてツイてる日だ!)コオドリ

ミカサ(要は私とエレンが最後まで勝ち残ればいいだけ。2人でケーゲルを制す。これだわ)

607: 2013/08/21(水) 19:41:40 ID:FGDHKUAI

ミーナ「あっズルイ! ミカサとジャンとマルコ、成績上位者3人と知将アルミンのチームなんて」

アニ(ミーナの誘いを断れなかった。よりによって後の2名がフランツとハンナだなんて…)

クリスタ(私とユミルとサシャとコニー。こっちだって成績上位3人が同じチーム)

クリスタ(ううん、実質ユミルも上位と同じくらいの実力の持ち主なのに…)

クリスタ(何でだろう? 勝てる気がしない…)

ユミル「まーた何やら考え込んでやがるな? ちっとは力抜いて楽しめっての」

ユミル「あたしは楽しむぞぉ! こんなバカ騒ぎ、滅多に出来るこっちゃないんだから」

サシャ「お腹が空きました。コッペパンを要求します」ボー…

ユミル「ほら、こいつみたいに自然体で行け自然体で」

クリスタ「う、うん」

608: 2013/08/21(水) 19:47:44 ID:FGDHKUAI

コニー「なんだよ、靴のサイズ合わねえぞ? 子供用ならある? ふざけんなー!」

ユミル「…あいつには気負いも衒いも無いな…ただのバカだ」

クリスタ「だ、だめだよ、そんなこと言っちゃ」

エレン「よう。1回戦、俺達と当たるのはお前らだってな?」

サシャ「エレン達とですか!」

クリスタ「(やったぁ!) よ、よろしくねっ」

ユミル「まっお手柔らかに頼むよ」

609: 2013/08/21(水) 19:49:36 ID:FGDHKUAI

エレン「あ、そうだ。サシャ、これ食べてくれ」つ

サシャ「蒸しパァン! いいんですか? でも、どうして?」

エレン「えっと…水をくれた?お礼? 朝市で買ったからまだ温いぞ」

エレン(昨日、上着のポケットから「水をくれたサシャにお礼を」って書いたメモが出てきた)

エレン(いつ書いたのか分からねえけど、あれは俺の字だったし)←本当はヱレンが書いた

エレン(そんな覚えは無いんだけど…世話になったもんはちゃんと返さねえとな)

サシャ「ああ! 水の。えっ? でも…」

610: 2013/08/21(水) 19:50:47 ID:FGDHKUAI

エレン「それじゃダメか? (食い物以外の方が良かったのか?)」ジッ

サシャ(あ、そうか、約束した事を覚えてるか確認してるんですね)

サシャ「いいえ、これでいいです。有難くいただきます!」ニコニコ

エレン「そうか。よかった(ホッ)」ニコッ

サシャ(あ、安心した顔だ。やっぱりそうだったんや)ニコッ

611: 2013/08/21(水) 19:52:10 ID:FGDHKUAI

クリスタ(目の前で繰り広げられているこの光景は何? 何なの?)

ミーナ(サシャが何歩もリードしているですって? 冗談じゃないわ)

アニ(どういう事よこれ? たかが水でエレンを釣れるなら私だってやってやる)

ミカサ「サシャは少々馴れ馴れし過ぎ。ズタズタに削いでやる」ボコッ バキッ ゴトッゴトゴトッ

アルミン「うわっケーゲルの球がっ! 一瞬で粉砕された!」アワワワ

612: 2013/08/21(水) 19:53:20 ID:FGDHKUAI

ジャン「み、見なかったフリ見なかったフリ」ガクガク

マルコ(お、同じくスルーの方向で)ブルブル

マルコ「で、では、幹事の僕から開催の言葉を」

マルコ「これより訓練兵団104期生による第一回ケーゲル大会開催を宣言します!」

全員「「「 う お お お お!!!」」」

613: 2013/08/21(水) 20:06:20 ID:FGDHKUAI

支配人「コラー! レーンを走っちゃいかん!」

支配人「球は転がすように投げるんじゃー! ドッヂボールじゃないんだぞ!?」

支配人「だから球は離せ! 頭からピンに突っ込むんじゃない!」

支配人「どうやったら隣の隣の隣のレーンに球が行くんだよ? 常識ねえのか貴様ら!」

支配人「一度に9つも球を投げるな! 詰まっちまっただろーが!!」

支配人「待て! それは私の頭だ! 離せ!離しやがれ!! ぎゃあああ!」



支配人「もうやだ、こいつら。辞めてやるこんな職場(号泣)」

614: 2013/08/21(水) 20:28:32 ID:FGDHKUAI

   完全にまるまる1章飛ばしてましたorz

   何やってんだろ? まだ熱中症が治ってないのかもですorz

   本来なら>>586と>>588の間に入るだったもの ↓


大会の2日前になります。

615: 2013/08/21(水) 20:29:14 ID:FGDHKUAI

   * ハンジのラボ


ハンジ「さて、と。お仕置きの前に話しておかなきゃね」カタン

ハンジ「ヱレン、さっきは何で嘘を吐いたんだい?」

ヱレン「どの嘘の事でしょうか?」

ハンジ(どの、だって? 幾つも嘘を重ねてたのか!?)

ハンジ「……全部。理由を話してもらおうかな」ピキピキ

616: 2013/08/21(水) 20:29:48 ID:FGDHKUAI

ハンジ「ヲイナーを見ていながら後は追わなかったというのは嘘なんだろう?」

ヱレン「嘘じゃありませんよ」

ハンジ「……本当に?」

ヱレン「はい」

ハンジ「どうして?」

ヱレン「え? ミカサやハンジさんが居ながら取り逃がした相手でしょう?」パチクリ

ヱレン「碌に訓練もしてない俺が敵うワケないじゃないですか」

617: 2013/08/21(水) 20:30:46 ID:FGDHKUAI

ハンジ「あんた、そんな殊勝な玉だっけ?」

ヱレン「ひどいなあ」クスクスクス

ヱレン「確かに殊勝な性分ではないですけどね」

ハンジ「なら、嘘ってのは?」

ヱレン「その前に言った事ですね。接触はしました」

ハンジ「話したのか!? ヲイナーと!?」

ヱレン「まあ…二言三言……」

618: 2013/08/21(水) 20:31:24 ID:FGDHKUAI

ハンジ「な」

ヱレン「内容なら言えません」

ハンジ「っはあっ!?」

ハンジ「何を考えているんだ! ヱレン! あんたはっ」

ヱレン「ゲーム」

ハンジ「は?」

ヱレン「ゲームを持ち掛けてみました。あっちは承諾してくれました」

ハンジ「な、何を勝手な!」

619: 2013/08/21(水) 20:32:03 ID:FGDHKUAI

ヱレン「ハンジさん……」

ヱレン「ヲイナーはもう長くない」

ハンジ「わ、判るの!? どうして!?」

ヱレン「それは…ただ判ったとしか」

ハンジ「……ヱレンがまた嘘を吐いていても私には分からない。なのに、そう言うのか?」

ヱレン「ハンジさんにはもう嘘は吐きませんよ。今だって直ぐバレたじゃないですか」

ハンジ「どうだか…」フゥ

620: 2013/08/21(水) 20:32:51 ID:FGDHKUAI

ハンジ「それなら、後どんな嘘を吐いたのか言ってごらん」

ヱレン「それだけですよ。それひとつきりです」

ヱレン「本当ですよ。だって俺、ハンジさん好きですから」

ヱレン「嫌われたくないですから、もう嘘は言いません」

ヱレン「構って欲しくて、つい、どの嘘の事でしょう、なんて言って気を引いたりして…」

ヱレン「俺ってバカですよね」シュン

ハンジ「……ヱレンって……」

ヱレン「はい?」

ハンジ「いや、いい」

621: 2013/08/21(水) 20:33:49 ID:FGDHKUAI

ハンジ「それで? ゲームって何をするんだ?」

ヱレン「かくれんぼです」ニコッ

ヱレン「明後日のケーゲル大会で皆が留守の時に、俺とあいつだけでやります」

ハンジ「そんな無茶苦茶な!」ガタッ

ヱレン「ハンジさんにはジャッジとしてその場に居て欲しいんです。駄目ですか?」

ハンジ「えっ? 私も行っていいの?」

ヱレン「当たり前じゃないですか」キョトン

ハンジ「えっ? そうなの!? あー、何だぁ、そうなんだあ!」ワクトキ

622: 2013/08/21(水) 20:34:41 ID:FGDHKUAI

ヱレン「はい。その代り、明後日の作戦は中止して貰えませんか?」

ヱレン「ミカサとアルミンとマルコをケーゲル大会に行かせてやって下さい」

ハンジ「ヱレン、まさか3人を遊ばせてやりたいから、こんな馬鹿な事を企んだの?」

ヱレン「まぁ…そういう打算が全く無いとは言い切れませんけど」クス

ヱレン「あの3人が居たら、俺の勝算が狂うんです」

ハンジ「勝算? ヲイナーを捕まえる勝算があるの!?」

ヱレン「はい。ありますよ。でなきゃこんなゲームを仕掛けたりしません」ニコ

623: 2013/08/21(水) 20:36:29 ID:FGDHKUAI

ハンジ「どんな!?」ガバッ

ヱレン「今は言えませんんん離してぇ服が破けちゃううう」

ハンジ「ばっ// 急に艶っぽい声を出すんじゃないよ!」ドキドキ

ハンジ「あー焦った。って何で私が焦るんだ」

ヱレン「ねぇハンジさん、いいでしょ? いいって言って下さいよぅ」

ハンジ「こら! 色仕掛けとかまだ早いぞ?」

ヱレン「色仕掛け?」キョトン

ハンジ「……あーいや、いい。何でもない」ピラピラ

ハンジ(穢れた大人の歪んだ視点で見てました。すまぬ)ガクッ

624: 2013/08/21(水) 20:38:39 ID:FGDHKUAI

ハンジもういいよ。わかったから…条件を呑むよ」

ヱレン「やった!」ニコニコニン

ヱレン「ありがとうハンジさん!」

ハンジ(私としたことが…いつの間にか絆されちゃったのかねぇ)

ヱレン「じゃあ早くして下さい。あ、あんまり痛いのはちょっと…」

ハンジ「へ? 何の話?」

625: 2013/08/21(水) 20:39:42 ID:FGDHKUAI

ヱレン「お仕置き。…するんでしょう?」オズオズ

ハンジ(うは! サド心を擽られ…って違う違う)ブンブン

ハンジ「コホン。いや、あれは冗談だよ」

ハンジ「日付も変わったし、もう休んでいいよ」

ヱレン「え、いいんですか? ラッキーv」

ハンジ(私も甘くなったもんだ…)

626: 2013/08/21(水) 20:40:38 ID:FGDHKUAI

ハンジ「ヱレン、最後に一つだけ訊くけどさ…本当はエレンに逢いに行ったんじゃないの?」

ヱレン「そうです。エレンの顔を見て、俺、自分が何を欲しがっていたのかやっと解りました」

ヱレン「ハンジさんの言う通りだったんです、俺はエレンに期待していた…」

ヱレン「俺の存在を否定しないで欲しい。俺を認めて欲しいんだって」

ヱレン「その上で、一緒に居る事を許して欲しい、ついでに家族と認めて欲しい」

ヱレン「俺が持つ総ての欲を受け入れて欲しい、って思ってたんだと…解りました」

627: 2013/08/21(水) 20:41:33 ID:FGDHKUAI

ヱレン「解ってただけじゃない、受け入れるよう迫る心算だった事にも気付かされました」

ヱレン「エレンと俺は同じなんだから、俺を拒絶するのは自分を拒絶する事なんだって」

ヱレン「おかしいですよね、そんな理論武装をすれば思い通りになるなんて考えてた…」

ヱレン「俺が暴走しそうだって事、ハンジさんには初めから判ってたんですよね?」

ヱレン「だから…俺を止めたんでしょう?」

ハンジ「ああ。そうだ」

628: 2013/08/21(水) 20:44:07 ID:FGDHKUAI

ヱレン「エレンは俺を受け入れない?」

ハンジ「そうじゃない」

ハンジ「多分さ、多分だけど、エレンはヱレンを受け入れるだろうよ」

ハンジ「問題は、ヱレンはエレンに拒絶されたら生きていけないと思い込んでる事にある」

ハンジ「逆説的に聞こえるかもしれないが…」

ハンジ「独りに耐えられない人間は誰とも生きていけないんだよ…ヱレン」

ヱレン「……ハンジさん、も…?」

ハンジ「そうさ。誰もが皆ね」

ヱレン「…そう、なんだ……」

629: 2013/08/21(水) 20:47:21 ID:FGDHKUAI

ハンジ「そうそう。ま、泣くんじゃないよ」

ヱレン「泣いてませんよ」クスッ

ハンジ「そこは泣くところなんだよ」

ヱレン「そうなんだ」クスクス

ヱレン「では、お先に休ませて戴きますね。分隊長、おやすみなさい」

ハンジ「ああ、おやすみ」

 …パタン…

ハンジ(ふぅ、子守って大変。でも不思議と悪い気はしないんだよね。うん)

630: 2013/08/21(水) 20:51:25 ID:FGDHKUAI


 * ヱレンの部屋


ヱレン「そこ(天井裏)に居るんだろう?」

ヱレン「つけて来たのは知ってる」

ヱレン「今の遣り取りは聴いてたよな?」

ヱレン「こういう次第だ。明日、楽しみにしてろよ」



エレニ「……そっちこそ約束を忘れるなよ」

632: 2013/08/23(金) 18:22:31 ID:xF5It6TA

 * ケーゲル大会の日の同時刻 訓練兵団宿舎敷地内


ハンジ「ここはグラウンドのド真ん中じゃないか」

ハンジ「こんな人目につく場所にヲイナーが来るって?」

ヱレン「ええ、もう来てますよ。 だろ?」

エレニ「チッ。流石に目敏いね」ニュルン

エレニ「それより、何だよヲイナーって? 勝手に変な名前付けてんじゃねぇよ」

633: 2013/08/23(金) 18:23:14 ID:xF5It6TA

ハンジ「そりゃ、あんたが名乗らなかったからさ」

ハンジ「ヲイナーってのはあんたに付けた名前じゃなくて」

ヱレン「ハンジさん、話の腰を折って悪いんですが、それ長くなるでしょ」

ヱレン「その話はこいつを捕えてからにしましょう」

エレニ「ハッ! 随分と強気に出たもんだ」

634: 2013/08/23(金) 18:23:57 ID:xF5It6TA

ハンジ「ヱレン、本当に大丈夫かい?」

ヱレン「はい。俺を信用して下さい」

エレニ「分隊長殿。あんたは唯のジャッジなんだよな?」ジロ

エレニ「なのに御丁寧に立体機動まで付けて…」

エレニ「本当は2人がかりで俺を挟み討ちにしようってんじゃないのか?」

635: 2013/08/23(金) 18:28:28 ID:xF5It6TA

ヱレン「いや、ハンジさんは手は出さない。ゲーム中は建物の屋根に登ってて貰う」

ハンジ「信用してもらうしかないね」

エレニ「信用、ね。どうでもいいさ。早く始めようじゃないか、下らないゲームを」

ヱレン「ハンジさん、お願いします」ペコッ

ハンジ「…わかったよ」プシュッ ガキン シュルルル

636: 2013/08/23(金) 18:29:23 ID:xF5It6TA

ハンジ「こっちはオーケーだ」

エレニ「そうだ。あんたに一つ言いたい事があったんだ」

エレニ「この間の、あの体たらくは何だったんだい?」

エレニ「飼い猫みたいに甘えちゃってさ。とてもじゃないが聞いてられなかったよ」

エレニ「ハンジっていったっけ? 随分と気を許しているみたいだけど、あんなのが好み?」

637: 2013/08/23(金) 18:30:45 ID:xF5It6TA

ヱレン「え? だって世話になってるし、善い人だし、結構美人だし」

ヱレン「何ていうか…姉さんみたいだろ?」

エレニ「ママみたいって言わなかった分だけマシかね…」ボソ

ヱレン「すまん、よく聴こえなかった。何だって?」

エレニ「砂吐きそうだって言ったの!」

638: 2013/08/23(金) 18:33:13 ID:xF5It6TA

ヱレン「お前、砂で出来てないだろ? 何言ってんだ?」

エレニ「………(つ、疲れる)」

ハンジ「いーいぃ? 私の合図でゲーム開始だからねー!」

ハンジ「3つ数えて腕を振り下ろしたらそれが合図だよー!」

エレニ「まぁ、あんた達が何を企もうと問題ないさ」

639: 2013/08/23(金) 18:34:10 ID:xF5It6TA

エレニ「私には特別な能力があるからね。捕まえられる訳がない」

エレニ「全くの無駄だったね」ニヤリ

ハンジ「行くよー?」

ヱレン「お前さ…」

ハンジ「3」

640: 2013/08/23(金) 18:35:07 ID:xF5It6TA

ヱレン「唇渇いてるぞ」

ハンジ「2」

エレニ「それが?」

ハンジ「1」

ヱレン「剥がれ落ちてる」

641: 2013/08/23(金) 18:36:47 ID:xF5It6TA

ハンジ「始め!」ブン

エレニ「え!?」バッ

ヱレン「良かったよ、自覚が有ってくれてさ」

エレニ「な、何言ってんだい!?」

ヱレン「そうなった原因は、お前の言うその特別な能力を繰り返し使ったせいだぞ」

642: 2013/08/23(金) 18:40:23 ID:xF5It6TA

ヱレン「だから『落ちる』んだ、アポトーシスってやつだ」

エレニ「まさか、あんたも?」

ヱレン「いや、おれには流動化の能力は無いし、そんな症状も今のところは出てないが…」

ヱレン「原因には心当りがある。知りたくないか?」

ハンジ「…? 合図が伝わらなかったのかな?」

643: 2013/08/23(金) 18:42:54 ID:xF5It6TA

ハンジ「どうして2人共つっ立ってるの?」

ヱレン「お前にその気があるなら、一緒に解決策を見つけてやらない事もないが…」

ヱレン「どうする? まだ逃げるか?」

エレニ「正気かい? あんたには何の得も無いだろ?」

ヱレン「俺さ、動くか動かないかを損得で決めた事は一度も無いんだけどな」

644: 2013/08/23(金) 18:44:40 ID:xF5It6TA

ハンジ「何を話し込んでるんだ? この期に及んで…説得してるのか?」

エレニ「じゃあ何の為に…」

ヱレン「俺がバカだからだろうな」

エレニ「私を上手く言い包めようってんだろ。バカバカしい。そんな手に乗るもんか」

ヱレン「違うって。まあ聞けよ。一つ思い付いてるのは…(耳打ち中)…」

645: 2013/08/23(金) 18:45:22 ID:xF5It6TA

エレニ「何を酔狂な。分かってんの? 氏ぬんだよ!?」

ヱレン「うーん…いや大丈夫だろ。たぶん」

エレニ「ばっ、バカか!? あんた」

ハンジ「ヲイナーに逃げる素振りが無い…どうなってる?」

ヱレン「それよりも大事な事があるんじゃないのか?」

646: 2013/08/23(金) 18:46:10 ID:xF5It6TA

エレニ「何の事だよ?」

ヱレン「アニの件だよ。追及されたら困るよな?」

エレニ「うっ。気付いてたのか…」

ヱレン「そりゃあ、あれだけ所作振る舞いが似てりゃ気付くって」

ヱレン「俺もエレンには執着してるからな。わかるんだ」

647: 2013/08/23(金) 18:47:14 ID:xF5It6TA

ヱレン「お前もアニの傍に居たいだろうけど、このままじゃアニを押し潰すぞ?」

ヱレン「だからさ…離れた方が、きっと楽になるんだよ」

エレニ「あんたの下につけって?」

ヱレン「いいだろ」ニッ

ヱレン「来いよ」

648: 2013/08/23(金) 18:49:14 ID:xF5It6TA

ハンジ「どうする? 声を掛けるか?…逃げられるか」

ヱレン「こっちに来いよ」ズイッ

ハンジ「いや、ヱレンが動いた。もう少し待とう」

エレニ「………でも…」

ヱレン「迷うな。来い」

649: 2013/08/23(金) 18:53:29 ID:xF5It6TA

エレニ「……………わかった」

エレニ「 降 参 だ !!」アームズライズ

ヱレン「そんじゃタッチ、っと。ハンジさーん、俺、勝っちゃいましたー。もう降りて来て下さーい」ニコニコ

ハンジ「……えっ!?」ズルッ

ハンジ「どうなってるのおぉぉおおお!?」

650: 2013/08/26(月) 16:13:52 ID:QQl6agL.

 * ハンジのラボ


ハンジ「今度こそ全部話してもらうよ」ドサッ

ヱレン「今後、ミカサ達を巻き込まないと約束してくれるなら話します。104期生を調べる事も止めて下さい」

ハンジ「そいつは勝手過ぎないか?」ギロッ

ヱレン「ダメなら俺もこいつもハンジさんの前から消えます」

ハンジ「答えはノーだ。私にはあんた達の話を検証する手段がない」

ヱレン「信じてもらうしかありません。信じられないのなら、初めから話しても無駄です」

ヱレン「聞くか聞かないか、今ここで選んで下さい」

ハンジ「…ハァ…わかった。聞かせてもらおう」

651: 2013/08/26(月) 16:15:47 ID:QQl6agL.

ヱレン「以前、ハンジさんは疑問点を4つ挙げましたよね? その内の幾つかにお答え出来る…と思います」

ヱレン「先ず最初に俺達が生まれる条件から話します」

ハンジ「条件?」

ヱレン「はい。ハンジさんの調査には抜けていた要素です」

ヱレン「それは光と音です」

ハンジ「光と音?」

ヱレン「光は言うに及ばずですが、音はもっと重要なファクターです」

ヱレン「細胞を賦活化するためにヲイナートが必要とするのは7.5Hzの振動波です」

ヱレン「偶然にもこれは脳のα波と同じ周波数ですが、その共振周波数が探知出来れば証明される筈です」

652: 2013/08/26(月) 16:17:36 ID:QQl6agL.

ハンジ「どうやって確かめればいいのさ? そんなの」

ヱレン「俺の場合は難しいかもしれませんね」

ヱレン「覚えてますか? 俺の生まれた日の2日後は稀に見る嵐だったこと」

ヱレン「気象記録では、俺の生まれたその日に壁外では嵐が発生してました」

ヱレン「恐らく、嵐が近付いていたために空気振動が超低周波を作り出していたんだと思います」

ヱレン「ですが、こいつの場合は倉庫が鍵です」

653: 2013/08/26(月) 16:18:40 ID:QQl6agL.

ハンジ「あんたは資材倉庫で生まれたんだっけ?」

エレニ「はい…」

ハンジ「超低周波なんて普通の人間の耳には聴こえないけど…何か気付いた事は?」

エレニ「その時、何かのモーター音は聴こえてましたけど…」

ハンジ「そうか。可聴域の音だから関係あるかどうかは判らないけど、一応何の音だか後で調べてみよう」

ヱレン「そうだ。超低周波が出ている方向を検知する方法を思い付きました」

ヱレン「倉庫には食糧庫用の予備の酵母が積んであります。その酵母の出芽を観察してみたら良いかと」

654: 2013/08/26(月) 16:20:54 ID:QQl6agL.

ヱレン「他のどの生物にも共通して言える事ですが、共振周波数に影響されないものはありません」

ヱレン「特に酵母の場合、特定の周波数に反応して胞子の成長に偏向が生じるんです」

ハンジ「磁石に引き寄せられる砂鉄みたいにかい?」

ヱレン「そうです」

ヱレン「他の微生物とは違い、酵母は光合成能を持たないので光の干渉は考慮に入れる必要がありません」

ハンジ「養分となる有機物への胞子の伸長を除外すれば周波数の発生源が特定出来るな」フム

ハンジ「ヱレンの言う通りなら、実験で検証出来るだろうけど…」

ハンジ「問題は、現在、超低周波を任意に発生させる技術が無いって事だね」

ヱレン「開発部の尻を叩いてやることですね」

ハンジ「そりゃいい」アハハ

655: 2013/08/26(月) 16:21:52 ID:QQl6agL.

エレニ「……ヱレン、あんたって何者?」

ヱレン「どういう意味だ?」

エレニ「今の話、俺にはさっぱりなんだけど…」

ハンジ「そうか。そうだなあ…譬えるなら…」

ハンジ「お母さんのお腹の中の赤ちゃんが覚醒するには、お母さんの心音が聴こえていないとダメですよーってこと」

ヱレン「大雑把だなあ」

ハンジ「そう外れちゃいまい?」フフ

656: 2013/08/26(月) 16:24:41 ID:QQl6agL.

ハンジ「本来のエレンは名医の御令息だからね」

ハンジ「ヱレンは兵士として訓練に参加する事が出来なかった分、御父上を見習って医学や科学を勉強してたもんね」

ヱレン「科学に関してはハンジさんという良い師匠に恵まれていたお陰です」

ハンジ「師匠! …何て甘美な響き…///」ムハー

ヱレン「俺が何者かはさておいて。お前がアルカンで造られたのは判ったよ」

ハンジ「そうなのかい!?」

エレニ「ええ、まあ…」

657: 2013/08/26(月) 16:26:46 ID:QQl6agL.

ヱレン「倉庫に備蓄されている物質で大量にあって粘度を持った分散質で漂白剤が使われていて可燃性の物と言ったら、答えはアルカンしかないじゃないか」

エレニ「漂白剤?」

ヱレン「俺に化けるのに髪の色を変えなかったのは漂白剤のせいで染色出来なかったからだろ」

エレニ「そうだけど」

ヱレン「倉庫にある他の物質、例えば灯油なんかだと簡単に色づけ出来るんだよ」

ハンジ「待って。一つずつ確認させてよ!」

ハンジ「何で大量にある物だって思うの?」

ヱレン「一人分の体積に相当する量が無くなってたら騒ぎになるでしょ? 大量にあるからまだ誰も気付いてないんですよ」

ハンジ「粘度は解るが、分散質というのは?」

ヱレン「こいつの流動化能力は、そもそも素材が分散質だったからで、獲得能力のはずはないんです」

658: 2013/08/26(月) 16:28:56 ID:QQl6agL.

ヱレン「俺の素材となった粘土にも、粘度があり可塑性に富んでいましたが、流動性はありません。つまり素材の質が能力を決定したんです」

ヱレン「同じく、ガスや灯油ではゲル化出来ないし、ナパームやセメントではゾル化出来ないんです」

ヱレン「ゲル化とゾル化を繰り返す、これをチキントロピーと言いますが、それが出来るのは、両方の特徴を持ったコロイドであるアルカンしか有り得ないんですよ」

ハンジ「可燃性を条件に入れたのは?」

ヱレン「マルコがカンテラを振り回した時、怯んだ様子を見せたって言ってたから…」

ヱレン「さっきの話で言うと、こいつが仮に洗剤のような不燃性の高いコロイドで出来ていたら、火や熱を恐れる必要は無いわけで」

ヱレン「流動体化して逃げる事も出来たのに、それをやらなかったのは、カンテラの熱で一時的に体が融解したからじゃないのか?」

エレニ「そうだ。その通り…」

659: 2013/08/26(月) 16:29:53 ID:QQl6agL.

ヱレン「自分の意志で行うチキソトロピーとは違い、熱融解によるゾル化は一種の細胞破壊です」

ヱレン「熱で分子間の間隙が拡がるとヲイナートも分断されたんでしょう」

ヱレン「冷えて分子間の架橋が繋がるまで自己修復が出来なかった筈だ」

エレニ「た、確かに」

ハンジ「なるほど」

660: 2013/08/26(月) 16:32:44 ID:QQl6agL.

ヱレン「ですが……」

ヱレン「こいつの、その特殊な能力のせいで、こいつは氏にかけてます」

ハンジ「えっ!? どういうこと!?」

ヱレン「ハンジさんも父さんの論文を読んだでしょう?」

ヱレン「人の細胞の核にはクロモソームがあり、その末端小粒は細胞分裂の度に短くなる。その現象こそが細胞老化だと」

ハンジ「御父上は他ならぬ王の命で禁断の研究をなさっていたと思える節があったが…」

ヱレン「そう、末端小粒を合成する酵素があれば細胞は増殖を繰り返す、と記されていましたね」

661: 2013/08/26(月) 16:36:58 ID:QQl6agL.

ヱレン「通常、人の末端小粒は複製の度に目盛が短くなるわけだけど、エレンの末端小粒はその長さに制限が無い。…としたら?」

ハンジ「細胞の不氏化!?」

ヱレン「そこまで目論んでいたかどうか…でも兎に角、驚異的な再生能力は有しているでしょう」

ヱレン「俺も生まれながらにその再生能力を持っている。エレンと同じだから。でも、こいつは…」

ハンジ「チキソトロピーを繰り返したせいで、その酵素が失われてしまったってこと?」

ヱレン「いいえ、もっと深刻です。恐らくは酵素が形質転換してしまった」

ヱレン「元々細胞が有していたプログラミングによって起こる細胞氏が加速してるんです。このままチキソトロピーを繰り返せば早晩氏ぬ事になります」

662: 2013/08/26(月) 16:44:54 ID:QQl6agL.

ハンジ「アポトーシスか! そりゃあ……」

エレニ「……覚悟はしてたよ。俺にはそれが報いだってね…」

ヱレン「助けるって言っただろ? 信じたから付いて来たんじゃないのか?」

ハンジ「で、でも、どうやって…?」

ヱレン「UMAが…」

ハンジ「? 何で今その話に飛ぶの?」

ヱレン「UMAがエレンに引き寄せられたのは、生き延びる為だったんじゃないかな?と思うんです」

ヱレン「エレンニウムは不氏の妙薬、そう捉えて考えてみたら色々と符合しませんか?」

ヱレン「ハンジさんも言ってたでしょ? 何故、他の可塑体はエレンに執着するのか?って」

ハンジ「氏期が近い事を察したUMAが本能的に再生への手掛りとしてエレンニウムを補充する為に襲っていたと?」

663: 2013/08/26(月) 16:49:48 ID:QQl6agL.

ハンジ「ん? ちょっと待って。…それじゃクリスタって娘が襲われてたのも彼女が酵素を持ってるから?」

エレニ「いえ、それは違う、…と思います」オドオド

ハンジ「何か知ってるの?」

エレニ「い、いえ…クリスタは単に…好かれてただけ…のような…」ボソボソ

エレニ「ほ、ほら、エレンだけは噛まれたりとかは無かったっていうか…」ドギマギ

エレニ「UMAはエレンの近くに居る人間を追い払おうとして…るように見えました」ソワソワ

ハンジ「…あんたもエレンに固執してた?」

エレニ「正直言って……はい」

ハンジ「それは、好きだから、じゃなくて?」

エレニ「あ…ぅ……」

ハンジ「それは自覚が無いって事か…」

664: 2013/08/26(月) 16:52:46 ID:QQl6agL.

ハンジ「つまり? ヱレンはこの子にエレンニウムを補給する事でアポトーシスを食い止められる、って言いたいワケね」

ヱレン「ご明察」ニコッ

ハンジ「どうやって? エレンから分けて貰うのかい?」

ヱレン「それが理想ですけど」

ヱレン「他にどうしようもなけりゃ、俺とこいつが融合して再分裂すれば良いんじゃないですか?」

ハンジ「はああ!? 何それ!?」ガターン

ハンジ「おおおお怒るよっ!? 幾ら何でもそりゃ無茶苦茶じゃないかっ! 正気の沙汰じゃないっ!!」バーン

ハンジ「あんたもっ! そんなんで納得して付いて来たってのか!?」ギッ

665: 2013/08/26(月) 16:53:48 ID:QQl6agL.

エレニ「ち、違うっ! わた、俺はあんたにそれを止めて欲しくて!!」アタフタ

ハンジ「………何だ、そうなの。ふーん」ストン

ハンジ「わかった。じゃあ早速エレンを拉致しようか」ケロッ

ヱレン「ですね」ニコニコ

エレニ「は!?」

ハンジ「ミカサ達を巻き込まないでやるには…」

ヱレン「んー…勘付かれないようにしないと、ですね」

エレニ「ちょ、ちょっと!?」

666: 2013/08/26(月) 16:55:16 ID:QQl6agL.

ハンジ「何時がいいかな?」ワクワク

ヱレン「何処でやるかが重要でしょ?」テカテカ

エレニ「こ、このマッドサイエンティストども! 少しは罪悪感とか持てよっっっ!!」

ハンジ・ヱレン「「え~?」」

エレニ「え~?じゃないっ! ハモるな!」ゼーハーゼーハー

667: 2013/08/26(月) 17:01:15 ID:QQl6agL.

 ~ 数日後 ~


ミカサ「ヱレンには会えない?」

ハンジ「今は衰弱がひどくて面会はちょっと無理だね。悪いけど…」

ハンジ(ごめんねミカサ。体調が思わしくないのはもう一人の方なんだけど、ヱレンとの約束で皆を巻き込めなくなっちゃったんだよ)

ミカサ「私が遊んでいた間にヱレンは体調を崩した。ヲイナーの行方も判らないまま。これではエレンに申し訳が立たない」涙ポロポロ

アルミン「泣かないでよ、ミカサ」オロオロ

マルコ「もしかしたら、だけどさ、ヲイナーはUMAと同じでもう消滅したのかもしれないよ?」

アルミン「そう言えば、あれきり姿を見せないし…その可能性はなくもないね」

668: 2013/08/26(月) 17:03:41 ID:QQl6agL.

ハンジ(この子たちがそう思っててくれれば、こちらには好都合だけど…)

ハンジ「ヲイナーの件はこちらで引き続き調査を行うよ。皆はエレンの警護に専念しておいてくれ(と言うしかない)」

ハンジ「で? エレンも倒れたってのはどういう事なの?」

ミカサ「以前からグリシャおじさんの事を思い出そうとすると頭痛がするって。時にはその痛みで気を失ってしまう事も…」

ハンジ「そんな持病があったの? どうしてコテージで倒れていたのかな?」

アルミン「ヲイナー捕獲作戦で逃げる時、おじさんの本をコテージの何処かに落としたらしくて、コテージを探し回っている時にキース教官に見つかったらしいです」

アルミン「その時、エレンがコテージの見取り図を書いたメモを持っていて、筆跡から僕が書いたものだとバレて、夜警の任に就いていた僕達も呼び出しを…」ショボン

669: 2013/08/26(月) 17:06:11 ID:QQl6agL.

ハンジ「それで、キースは何て?」

アルミン「エレンの体調が治ってから然るべき処罰を下すそうです」

ハンジ「ふーむ」

ミカサ「私達に内緒で事を進めるなんて。ヱレンもヱレンなら、エレンもエレン」

ミカサ「一人で勝手な行動をとって私を置いて行こうとする」グスングスン

アルミン「まあ、それがエレンだしね。僕らは付いて行くしかないよ」

670: 2013/08/26(月) 17:07:05 ID:QQl6agL.

マルコ「ヱレンの体調が悪い時に、エレンまで倒れたんだもの。心配だよね…」

マルコ「でも、教官室に呼ばれたお陰で、みかん箱の在処も判ったし」

ハンジ「キースが何処でみかん箱を手に入れたのか気になるけど、彼が何も気付いていないのなら…」

ハンジ「みかん箱ごとエレンを引き取るチャンスなのかもね」

ハンジ「まあ任せてよ。キースは私が説得してみせるからさ」ニッ

671: 2013/08/26(月) 17:10:02 ID:QQl6agL.

 ~ リヴァイによるエレン拉致の前日 ~


ハンジ「具合はどうだい?」

ヱレン「あまり…良くありません」

ハンジ「これまでのところ準備は万端だが…急がないとマズイね」

エレニ「…ハァ…もう、いいよ。ハァハァ…私はもう…助からないんだろ? …ハァ」

ハンジ「何言ってんの。諦めちゃ駄目だよ!」

672: 2013/08/26(月) 17:10:41 ID:QQl6agL.

ヱレン「そうだぞ? 明日の夜にはきっと治ってるさ」

エレニ(こうして最期を看取ってくれる人が居るだけで、私は幸せだね)

エレニ(アニ、あんたも幸せになってくれると良いけど…)

エレニ(あんたへの天罰は、私が全部引き受けるからさ)

エレニ「…そうだね……」

673: 2013/08/26(月) 17:11:19 ID:QQl6agL.

ハンジ「少し眠っておいで。ね? 明日に備えなきゃ」

ハンジ「エレンを連れて来るのは無理だとしても、みかん箱を回収出来れば良いんだから。楽勝だよ」

エレニ「…はい」

ヱレン「安心しろ。俺が傍に居るから、目を瞑っても大丈夫だぞ」

エレニ「うん」

674: 2013/08/26(月) 17:14:10 ID:QQl6agL.

 ※ こうしてプロローグが展開されたのでした まる



     今日はここまでです。

     読んで頂いている方へ。いつも有難うございます。

676: 2013/08/30(金) 20:06:33 ID:ZEPvAb/o

 ~ リヴァイによるエレン拉致の当日 ~


ヱレン「ハンジさんも出掛けて行った。今なら邪魔は入らない」

エレニ「ふぅん。じゃあ今はあんたと2人きりなんだ」

ヱレン「気分はどうだ?」

エレニ「辛くないって言ったら嘘になるかな」

ヱレン「そうか…」

677: 2013/08/30(金) 20:08:11 ID:ZEPvAb/o

ヱレン「じゃあ、今、氏ぬ代りにもう少しだけ苦痛を味わえと言ったら…怨むよな?」

エレニ「そういう言い方嫌いだね。まるで生きる事が苦痛みたいだ」

ヱレン「…かもな」

エレニ「あんたには苦痛でしかないの? 嘘だろ」

ヱレン「氏なないってのは時間を支配するようなもんだ」

ヱレン「寂しさと孤独はまったく無関係だとハンジさんは言ったが…」

ヱレン「時間を支配するのは罰を受けたようなものだ。苦痛だけが降りかかってくる」

ヱレン「考えてもみろ。エレンもアニも存在しない世界を」

ヱレン「知っている人間が誰一人存在しなくなった世界を想像出来るか?」

ヱレン「ずっと遠くまで過ぎ去った世界で独りだぞ? 耐えられるか? そんなの」

678: 2013/08/30(金) 20:11:20 ID:ZEPvAb/o

エレニ「どうしちゃったの? あんたさ…病んでるよ。らしくない」

ヱレン「俺は永遠を捨て去りたい。お前にも永遠を諦めてもらう」

エレニ「昨日言ってた事、本気だったんだ…?」

ヱレン「お前が嫌なら…仕方がない」

エレニ「どうだろうね? 私ばかりが得するってのは…」

ヱレン「そうじゃないさ。俺は生まれ変わるんだ。お前も」

エレニ「私が私じゃなくなって、あんたがあんたじゃなくなる…それを生まれ変わるって言うの? 知らなかったよ」

679: 2013/08/30(金) 20:12:39 ID:ZEPvAb/o

エレニ「エレンを待てないのかい? それか、アニに打ち明けるとか…」

ヱレン「そして、どうする? エレンかアニを俺達の事情に巻き込んで、それから?」

ヱレン「助けて貰う代りに罪を背負わせるのか。それでお前は平気か?」

エレニ「そんな事は……」

ヱレン「お願い、だ…一生に一度の」

エレニ「…(溜め息)…わかったよ。乗ろうじゃないか、その話」

ヱレン「すまん」

エレニ「違うでしょ?」

ヱレン「…ありがとう」

エレニ「うん」

680: 2013/08/30(金) 20:13:35 ID:ZEPvAb/o

エレニ「どうすればいい?」

ヱレン「俺が手を噛む。お前は変身能力で傷口から侵入してくればいい」

ヱレン「完全に同化してしまわないよう注意してくれ。再分化の為には意識の個別化は必要だから」

エレニ「その後は?」

ヱレン「エレンニウムがお前の細胞を取り込んで再生させ始める」

ヱレン「同時にお前の情報を一部引き取って、俺の細胞の末端小粒にプログラミングを施す」

681: 2013/08/30(金) 20:16:25 ID:ZEPvAb/o

エレニ「ちょっと疑問なんだけど…そんな事が自由に出来るの?」

ヱレン「出来る。解るんだ。『彼らの記憶が教えてくれる』から」

エレニ「は!?」

ヱレン「俺と同化すれば解るよ。さあ」

エレニ「決心したんだものね。わかった、やるよ」コク

ヱレン「いいか? やるぞ」ガリッ

ヱレン「お前に再生の蘇りを、俺に永遠からの脱却を」

エレニ「…」

 ニュウッ シュルシュルシュル …ドクン…ドクン…ドクン…

682: 2013/08/30(金) 20:17:52 ID:ZEPvAb/o

エレニ「…ぁ」

エレニ「わかる…自分が生き返っていくのが…」

エレニ(…気持ちいい…何なの?これ)

エレニ(これ…まるで、してるみたい///)

ヱレン(なあ、おい、思考だだ漏れなんだけど///)

エレニ(ええっ!? ちょっと! 覗かないでよっっっ!!)

ヱレン(無理言うなよっ! 融け合ってんだぞ? 彼我の境目なんて曖昧になってる)

エレニ(心と意と体の一体化がこれほどのものだとは…)

ヱレン(元々総ての生きものは一つの細胞だったって説があったな)

683: 2013/08/30(金) 20:21:29 ID:ZEPvAb/o

エレニ(わかる、その情報はもっと先にある…待って、『彼ら』にアクセスしてみる)

エレニ(これかな? 共通祖先説とか原始生命体説とかって言われてる生命起源説ね)

ヱレン(でも、その理論は完全じゃない)

エレニ(これだけの情報量を一体どうやって?)

エレニ(もっと奥を探れば…)

ヱレン(それ以上は知らない方が良い)

 …プツン…

エレニ「どうして!? …あ」

ヱレン「治療完了。お疲れ」ニコッ

エレニ「いつの間に…」

ヱレン「始めてから2時間以上経ってるって」

エレニ「えっ嘘っ!?」

684: 2013/08/30(金) 20:22:50 ID:ZEPvAb/o

ヱレン「てか、退いて。重い」

エレニ「いい、いつの間に!?」アワワワ

ヱレン「お前が倒れて来るから受け止めたんだけど」ポリ

エレニ「受け止められなかったって? 私はそんなに重くないよっ!」ゲシッ

ヱレン「ってぇ!」

エレニ「あっごめん!」

ヱレン「すっかり良くなったな」クスッ

エレニ「えっ? ああ、うん。元通りさ」

ヱレン「元通りじゃない。変身能力は無くなったはず」

エレニ「そんなもの、どうだっていいさ。気にしないで」

ヱレン「そうか?」

エレニ「くどい!」

685: 2013/08/30(金) 20:24:23 ID:ZEPvAb/o

エレニ「それより鏡! 鏡!」キョロキョロ

エレニ「ああ良かった、顔はエレンのまんまだわ」

ヱレン「その悪人顔だと苦労するぞ? アニの方が良かったのに」

エレニ「いいの! 私はこっちのが気に入ってんのよ」フフッ

ヱレン「…さいですか。(うーん、複雑な心境だ)」

ヱレン「あのさぁ…それでだな…」

エレニ「判ってる。言わなくてもいいよ」

ヱレン「治ったばかりで悪いな」

エレニ「融合してた時にあんたの考えはなぞれたからね。異論は無いよ」

686: 2013/08/30(金) 20:25:30 ID:ZEPvAb/o

ヱレン「これは試練の始まりだぞ? ここで下りてもいいんだ」

エレニ「あんたっていつも自分で言い出しておきながら引き止めようとするんだね」クスクス

エレニ「大丈夫さ、私はそんなに弱くない。余計な心配だね」

ヱレン「そうか…」

エレニ「そうだよ」

エレニ(私とヱレン、2人の関係が2人しか知らない理由でずっと続くんだ)

エレニ(これ以上の幸せってないよ)

エレニ「じゃあね。暫くの間お別れだ」

687: 2013/08/30(金) 20:29:41 ID:ZEPvAb/o

ヱレン「また逢える日を待ってるよ、“エレニ”」

エレニ「あはは、残念でした」ニッコリ

エレニ「生まれ変わったのよ、私は。もうその名前は使わない」

エレニ「じゃあね!」スッ

 …パタン…

ヱレン「最後の最後で最高の笑顔を見せやがって」

ヱレン「ごめんな。……ごめん」ポタッ

ヱレン「? 俺…泣いてるのか?」ポロポロッ

ヱレに「そうか、エレニ、お前…俺に涙を、泣ける能力を分けてくれたんだな」

688: 2013/08/30(金) 20:31:44 ID:ZEPvAb/o

 × ヱレに「そうか、エレニ、お前…俺に涙を、泣ける能力を分けてくれたんだな」

 ○ ヱレン「そうか、エレニ、お前…俺に涙を、泣ける能力を分けてくれたんだな」



     誤字で台無しだよorz

689: 2013/08/30(金) 20:43:06 ID:ZEPvAb/o

 * 訓練兵団宿舎内


クリスタ(あ、また。ミカサとアルミンがこっそり会ってる)

クリスタ(何を話してるんだろ。よく聴こえない)イライラ

クリスタ(ユミルは夢だとか勘違いだとか言うけど…)

クリスタ(やっぱり、ミカサがエレンを作ったってハンナが言ってたのは本当なのよ)

クリスタ(ミカサが話すエレンの様子と実際のエレンの行動とが噛み合わないもの)

690: 2013/08/30(金) 20:45:18 ID:ZEPvAb/o

アニ(クリスタ…ずっと聞き耳立ててるね。ミカサの話が気になるってところか)

アニ(やっぱり、クリスタも色々と勘付いてるんだ)

アニ(あの夜以来、私のエレン(エレニ)が帰って来ない…)

アニ(もしかしたら、ミカサに、もう……かも)

アニ(いやだ! そんなの考えたくない)ブンブン

691: 2013/08/30(金) 20:47:29 ID:ZEPvAb/o

ハンジ「アルミンッ! いるかい!?」ドドドドド

クリスタ(!? あの人、誰?)

アニ(あの様子、只事じゃないね)

ミカサ「まさかエレンに何か!?」

クリスタ(エレン!? 今、エレンって言った!)

クリスタ(ミカサが言ってるのはもう一人のエレンのことよね?)

アニ(エレン!? どっちのことだろ?)

アニ(やっぱり私のエレン(エレニ)は、あの人に捕まってるってこと?)

692: 2013/08/30(金) 20:49:31 ID:ZEPvAb/o

ハンジ「……盗まれたっ!」

クリスタ(何のことだかわからないけど、何か大変なことが起きてる?)

クリスタ(盗まれた…って、もしかして、みかん箱のこと!?)

アニ(エレンが盗まれた? それとももう一人のエレン(エレニ)の方?)

アニ(いや、待て、落ちつけ私。盗まれたって言い方はおかしいよ)

ハンジ「我々以外にも秘密に気付いた者が居るんだ!」

クリスタ「!!」ドキッ

クリスタ(ば、ばれた!? ばれちゃった!?)ヘナヘナ

アニ(それとも私のエレン(エレニ)がみかん箱を盗んだ? という事は、私の元に帰って来る?)

アニ(なら、こうしちゃいられない。迎えに行かなきゃ!)サササッ

クリスタ(え~ん、どうしよう? どうすればいいの?ユミル…)

クリスタ(ハッ! そうよ、ユミル! ユミルに相談しよう!!)ダッ

693: 2013/08/30(金) 20:50:31 ID:ZEPvAb/o

ハンジ「…場所を変えよう。付いて来てくれ」

アルミン「直ぐにマルコを呼んで来ます!」タッ

ミカサ「ハンジさん…2人分の気配が」ヒソヒソ

ハンジ「そのようだね。(上手いこと罠に掛かってくれるといいけど)」ヒソヒソ

ハンジ(さて、どうしたものか…)

ハンジ(みかん箱を目の前で奪われた時は、思わず怒りに目が眩んだが…)

ハンジ(何だろう? 何か引っ掛かる…)

694: 2013/08/30(金) 20:52:34 ID:ZEPvAb/o

 * 少し時間を遡って…ハンジのラボ兼私室


ハンジ「ヱレン、みかん箱が…こ、これは!?」

ヱレン「ハンジさん……」グスッ

ハンジ「ど、どうしたのっ!?」

ハンジ「このシーツにべっとり付いてるのは…アルカン? これ、まさかっ!?」

ヱレン「いっちゃいました。ついさっき……」

ハンジ「逝っちゃっ(絶句)……そう。思い返せば気の毒な子だったね…」ナデ…

ヱレン「……………(ごめんなさい、ハンジさん)」

695: 2013/08/30(金) 20:54:17 ID:ZEPvAb/o

ハンジ「ヱレン、そんなに気を落とさないで。って言っても今は難しいだろうけど」

ヱレン「いえ、大丈夫です」

ハンジ「こんな時に何だけど…みかん箱がまた奪われた…」

ヱレン「え?」

ハンジ「面目無い…」

ヱレン「エレンは!?」

ハンジ「無事だ。今はリヴァイの家だろう」

ヱレン「みかん箱を奪った相手は? 見ましたか?」

ハンジ「いや。フードで顔を隠してた上、この暗さだ。判らなかったよ」

ハンジ「だが、恐らくこの子の創造主だと思う」

ヱレン「では、直ぐにでも追い掛ければ…(上手く逃げてくれたんだ)」

696: 2013/08/30(金) 20:56:45 ID:ZEPvAb/o

ハンジ「敵さんは立体機動を装備してて追い掛ける事も儘ならなかった」

ハンジ「今から捜索するのでは遅きに失した。これは痛いね」ハァ…

ヱレン「いえ、今からでも捜索しましょう」

ヱレン「こいつの時と同じ精製方しか知らないなら、場所は限られています」

ハンジ「アルカンの貯蔵場所か。それならそう多くはないな」

ヱレン「警備兵の目を逃れようと思えば行くべき場所は一箇所だけです」

ヱレン「訓練兵団の倉庫の見張りは常駐制ではなく巡回制です。いつでも入り込めます」

ハンジ「犯人が巣穴に戻るって?」

697: 2013/08/30(金) 21:01:42 ID:ZEPvAb/o

ヱレン「はい。訓練兵の身分では。不意打ちで点呼されたらどうしようもないですからね」

ハンジ「そうか、そうだったね。訓練兵の方が時間的制約が有るんだった」

ハンジ「よし。それなら今から出動だ」スクッ

ハンジ「こんな事になったんだ、ヱレンとの約束は白紙に戻すが異論は無いだろうね?」

ハンジ「手が足りないんだ、ミカサ達の協力を仰ぐ」

ヱレン「はい。構いません」

ハンジ「じゃあ行って来る!」バッ

ハンジ「ああ、そうそう、今度勝手に出歩いたら巨人の餌にするからね! わかったね?」

ヱレン「は、はは…わかってます(苦笑)」

698: 2013/09/04(水) 18:55:56 ID:C/o2MiMo

 *


ヱレン「ここまでは何とか計画通りに事が運んでるみたいだな」

ヱレン「あとはエレニ次第だが……さて」

ヱレン「やきもきしててもしょうがない。後片付けでもやって時間潰そう」

 …お掃除タイム… という名の証拠隠滅タイム

リヴァイ「おい、ハンジ! てめえ、これはどういうこった?」バーン

ヱレン「!?」ドキーン

699: 2013/09/04(水) 18:57:24 ID:C/o2MiMo

リヴァイ「何だこの注意書きは? なぁにが『これ猫だから。間違えないでね』だ」

リヴァイ「こりゃあ、てめえの字だろうが? 悪ふざけにも程度ってもんが…」ハタ

ヱレン「あ、あの…へいちょ…?」

リヴァイ「…てめえ、ベッドに居ねえと思ったら。何でこんなとこに居やがる?」ギロ

ヱレン「は? え?」

リヴァイ「大人しくしてやがったのは猫被ってやがったのか」

リヴァイ「相変わらず汚ねぇな、ここは。てめえもこんなとこで油売りやがって」ムス

ヱレン「はい? いえ? ええ?」

700: 2013/09/04(水) 18:58:18 ID:C/o2MiMo

リヴァイ「ガキは寝る時間だろうが。ケツひっ叩かれてえのか」イラッ

ヱレン「え? ちょっ?」

リヴァイ「オラ、帰るぞ」グイッ

ヱレン「へ?」

リヴァイ「そう言やぁハンジは何処だ?」

ヱレン「えっと…その…」

リヴァイ「チッ。居ねえもんは仕方ねえ。後でたっぷり説教してやる」

リヴァイ「大方…クソがなかなか出てこなくて困ってんだろうな」

ヱレン「ハハハ…(言いたい放題だよ、この人)」

701: 2013/09/04(水) 18:59:29 ID:C/o2MiMo

リヴァイ「てめえも夜更けにフラフラしてんじゃねえよ。今から反抗期か、ああ?」

ヱレン「ぃぇ…」

リヴァイ「これだから猫は嫌いなんだ。言う事は聞かねえし。餌は好き嫌いしやがるし」

ヱレン「ぁ…」

リヴァイ「風呂は嫌がるし。ドライヤーを怖がるし」

リヴァイ「気紛れで、我儘で、外に出たがる割には自力で帰って来れねえし」

リヴァイ「相手をしねえと拗ねるし。かと思えば、構ってるといきなり毛を逆立てるし」

リヴァイ「まったく。可愛げのねえ」ブツブツ

ヱレン「………」ポカーン

702: 2013/09/04(水) 19:02:05 ID:C/o2MiMo

ヱレン「(つまりは…この人、ただの猫好き?)プッ。ククッ、クスクスクス」

リヴァイ「てめえ…何笑ってやがる」

ヱレン「す、すいません兵長!」

リヴァイ「少し臭うな。あんなグロいとこに入り浸ってるからだ。帰ったら風呂入り直すぞ」

ヱレン(なるほど、兵長は潔癖症っと。メモメモ)

ヱレン(ってか、エレニの奴、仕事早過ぎだろ)

ヱレン(兵長の様子からすると、エレンって気に入られてたんだな)

703: 2013/09/04(水) 19:04:06 ID:C/o2MiMo

ヱレン(ハンジさんを介してエレンと入れ替わる計画だったのに、前倒しになっちゃったなあ)

ヱレン(ここで下手に逆らって兵長に俺の正体が知れるとマズイし、どうしたもんかなあ…)

リヴァイ「早くしろ! このグズが!」

ヱレン「兵長…。兵長って口悪いですよね」

 ボカッ

ヱレン「いってぇ~!」

リヴァイ「喜べ。しっかり躾け直してやる」ニヤリ☆

704: 2013/09/04(水) 19:04:55 ID:C/o2MiMo

 * 再び訓練兵団宿舎内


ユミル「エレンが居なくなったぁ? って、そりゃあたしらには関係ないだろ!」

クリスタ「ユミルってば声が大きいよ」

ミーナ「!」ピクリ

サシャ(今、エレンの名が出たようですが?)ピクピク

ミーナ「クリスタ、その話、詳しく聞かせて?」

サシャ「わ、私も聞きたいですっ」

クリスタ(ああん、もうっ! 内緒で話したかったのに、これじゃ台無しだよ)

705: 2013/09/04(水) 19:06:18 ID:C/o2MiMo

クリスタ「さっきミカサのところに…そ、そうだ!あれ調査兵団のハンジ分隊長だ!」

サシャ「ああ、ミカサたちが手伝いに行ってた人ですね」

ミーナ「そのハンジ分隊長が?」

クリスタ「それがすっごく慌てた様子で、ミカサのとこにエレンが居なくなったって知らせに来て…」

ユミル「いやいや、今日はアレだろ? 懲罰くらって街頭パフォーマンスの日だろ?」

ユミル「きっとどっかでサボってやがんのさ。はいお終い。寝よ寝よ」

ミーナ「違うわよ! 更なる精神鍛錬の為の課外訓練だって聞いたわ」

サシャ「え? 調査兵団の方々との懇親会に参加してるって聞いてましたけど?」

ジョシー「私が聞いたのと違う。働き詰めのミカサの代りに今日だけエレンが手伝いに行ったって…」

クリスタ「えっ? どうして皆の話が食い違ってるの?」

706: 2013/09/04(水) 19:08:57 ID:C/o2MiMo

クリスタ「変だよ…だってハンジ分隊長の話ぶりからすると、今までずっと一緒に居たみたいだったよ?」

クリスタ「それに、みかん箱が盗まれたって…」

ユミル「それホントか!?」ガシッ

クリスタ「う、うん。そう言ってた。秘密がどうの、って(涙目)」

ユミル(みかん箱ってそんな大事なもんだったのか? やばい!)

サシャ(秘密って、それ私とエレンとの約束の事でしょうか? エレンは窮地に陥ってると?)

ミーナ「あ! あれ! 今、窓の外通ったの、アルミンとマルコじゃない?」

サシャ「ホントですね。歩いてる方向からして兵舎の外へ向かっているようです」

707: 2013/09/04(水) 19:10:42 ID:C/o2MiMo

クリスタ「ほらっ、2人も捜しに行くんだよ。どうしよう?ユミルぅ」グスッ

ユミル「…あたしたちも捜しに行こう」バッ

コニー「俺も行くぜ」

サシャ「コニー? それにジャンまで? 皆さん、いつから聞いていたんですか?」

コニー「違ぇよ。俺はアルミンの様子が変だと思ってよ」

ジャン「俺はマルコの顔色が変わったのが気になってな…」

ミーナ「どっちにしろ盗み聞きには変わりないじゃない」

708: 2013/09/04(水) 19:12:32 ID:C/o2MiMo

クリスタ「ライナー、アルミンとマルコは何て話してたの?」

ライナー「お、おう(結婚しよ///) そうだな、確か…アルミンが箱が盗まれたとか言って…」

ジャン「マルコがエレンは?って訊ねて」

ライナー「アルミンがもう居なかった、って答えていた」

クリスタ「誘拐じゃないっ!! ねえ、それって誘拐されたんだよね!?」

一同「「「「「誘拐? エレンが誘拐された!?」」」」」ザワザワ

ベルトルト「い、いや、そうとは限らないんじゃ…」

ジャン「だよなあ。あんな氏に急ぎ野郎を誘拐してもな。ハハハ」

709: 2013/09/04(水) 19:13:55 ID:C/o2MiMo

ライナー「いや、わからんぞ? あいつは昔ミカサと一緒に人攫いに攫われそうになったらしい」

サシャ「何ですかそれ!? 決定的じゃないですか!」

一同「「「「「おい、やっぱり誘拐だってよ!」」」」」ドヨドヨ

ミーナ「私、捜しに行くっ! 私のエレ…班長は私が取り戻すわ!!」

一同「「「「「俺達も行くぞ!! エレンを取り返せ!!」」」」」

ベルトルト(この前のUMA狩りの時といい、大会の時といい、今といい、何なの?皆のこのノリ)

710: 2013/09/04(水) 19:17:42 ID:C/o2MiMo

ベルトルト(僕にはとても付いて行けそうにないや。正直、そんな義理も無いし)

ベルトルト(ライナー、冷静に。ここは断って)←必氏に目配せ

ライナー「よしっ! 行くぞベルトルトォ!!」

ベルトルト「ええっ!? 誰よりもノリノリ!?」

ミーナ「それでは各自捜索開始!」

一同「「「「「おおー!!」」」」」

711: 2013/09/04(水) 19:33:44 ID:C/o2MiMo

   *

アルミン「850年」

アルミン「行方不明のエレン・イェーガーを捜索するため、104期生がこの夜巻き起こした騒動は」

アルミン「あまりの狂騒ぶりから、後に『半月夜の餓狼事件』と名付けられ」

アルミン「一般市民の大顰蹙を買っ…」

アルミン「一般市民の間で永く語り継がれる事となった」



アルミン「…ねぇ……ちょっと、ゴリ押しが過ぎるんじゃない?」

ミカサ「いいの。皆がエレンの為にした事は善い事。永遠に記録に残すべき」

アルミン「………(皆、記憶から消し去りたいと思ってると思うけど…)」

アルミン「そ、そうだね(冷や汗)」

712: 2013/09/04(水) 19:42:48 ID:C/o2MiMo

   風呂敷たたむよ! もうちょっとで終わるよ!

   涼しくなったとたん風邪ひいたよ! だからどうだって話だね…


   皆様、くれぐれも御体お大事になさってください。

713: 2013/09/09(月) 14:00:03 ID:lcwRR13c

   急に忙しくなりました。あまり時間が取れませんorz

   ここって、どれ位で流れちゃうんでしょう?

   とりあえず保守がわりに「あらすじ」置いておきます。

714: 2013/09/09(月) 14:02:12 ID:lcwRR13c

☆ わかりやすい「ここまでのあらすじ」 ☆



ミカサ「みかん箱とエレン人形作ったった。命名ヱレン」

ヱレン「ミカサ乙」

アルミン「エレンとヱレンと僕は……ズッ友だょ……!!」

サシャ「実は私がヒロインらしいです」

ミーナ「リア充、爆発しろ!」

ハンジ「ひゃっほー! 新しいオモチャが手に入ったよ!」

クリスタ「こちらスネーク。みかん箱奪取に成功した。敵にはry」

ライナー「いたいけな少年と妹のために…」

ベルトルト「瓦礫を撤去した…」

少年と妹「調査兵団KAKKEEEEEE!!」「△!!」

715: 2013/09/09(月) 14:09:08 ID:lcwRR13c

UMA「可愛い女の子だと思った? 残念! 遊馬ちゃんでした!」

マルコ「遊馬に咬まれた結果がこれだよ!」

エレン「遊馬、駆逐したった」

ジャン「エレンをボウリング・デートに誘ってみる」

アニ「エレン製造方法ヒント、キター! これで勝つる!」

エレニ「ごめんアニ。あたしヱレン側に寝返るわwww」


 * 風呂敷たたむよ ←今ココ


エレン「プロローグと称したイジメ?勃発」

アルミン「僕は万能ではない設定だそうだよ」

みかん箱「ズッ友とは何だったのか?」

リヴァイ「汚い猫を見つけたので虐待することにした」

719: 2013/09/25(水) 14:54:48 ID:LSCCZ/BA

 >>717 楽しんでいただいたようで、なによりですw

 >>718、>>719 ありがとうございます!!


   永いこと書き込めなくて、すみませんでした。

   結末(オチ)はミエミエですが、どうかお付き合い下さい。

720: 2013/09/25(水) 14:56:23 ID:LSCCZ/BA

 ~~~ ケーゲル場の裏手 とある一室 ~~~


みかん箱「ようやくエレンさん経由でミカサ姐さんのとこに帰れると思ったのに」グス

エレニ「ふぅ、やれやれだよ」

みかん箱「ここどこだよ? ミカサ姐さぁあん!」

エレニ「(しげしげ)…ふぅん、これが…」ジッ

みかん箱「何だよ? 何見てんだよ?」

みかん箱「んん? あれ? ヱレン? エレン…さん…?」

みかん箱「じゃないよな? 何かが違う…えっと、なぜ金髪? イメチェン?」

エレニ「あんたが私らと同じ形態で生まれて来ていたら、話は早かったのにね」

みかん箱「はい?」

エレニ「今からあんたを人間にしてやるよ」

みかん箱「…へ!?」

721: 2013/09/25(水) 14:57:22 ID:LSCCZ/BA

エレニ「ヱレンの知識に拠れば、紙を漉いた時に紙力増強剤を混ぜてる筈なんだ」

みかん箱「ええまあ…そうですけど…。つーか、どうやって? 人間?」

エレニ「通常は増強剤には澱粉を使うそうだけど…」

エレニ「食糧になる澱粉をミカサが私用に使うはずないってヱレンは言ってたな」

みかん箱「ミカサ姐さんはそういうところキッチリしてますからね」

エレニ「だから、たぶん澱粉の代りに膠を使っただろうって」

エレニ「確かに、皮革加工の副産物である膠なら簡単に手に入るし、無くなっても誰もさほど気にしない」

みかん箱「すげえ。読み通りだよ」

エレニ「尤も、膠を更に精製して食料用ゼラチンも作ってるはずだけど…あんまり配給された事はないな…」

みかん箱「ゼリー美味しいってサシャが言ってたなあ」

エレニ「とにかくさ、その膠のお陰で、あんたの中のエレンニウムは今もカプセル様のゼラチン膜の中に保護されてるらしい」

エレニ「だから、エレンニウムさえ賦活化してやれば、人になるのは簡単だよ。ってさ」

722: 2013/09/25(水) 14:58:45 ID:LSCCZ/BA

エレニ「あと必要なのは超低周波の照射だけど」

エレニ「ヱレンの話だとケーゲル場の設備にはガスタービン・エンジンが採用されてる」

エレニ「そのせいで施設周辺には断続的に超低周波が発生してるんだって」

エレニ「UMA騒ぎもケーゲル場の建設後だから…やっぱり、そういうことなんだろうね」

みかん箱「一人で納得しちゃったよ。まあ、こっちも大人しく聞いてたけど」

みかん箱「それで…オレを人間にして…何をする、いや、させる気だよ?」

みかん箱「って、話が通じるわけないか。ま、いいや。人になったら訊いてみるか」

 …(再加工工程を詳しく書くと何故かグロいので割愛)…

エレニ「気分は、どう?」

みかん箱だったもの「存外に良いものだよ」

エレニ「じゃあ早速だけど、記憶の並列化を済ませよう」

エレニ「あんたもそのうち自然と覚醒するだろうけど、それを待っていられるほど時間を持て余しちゃいないのが現状でね」

エレニ「ヱレンでさえ覚醒には半月近くもかかったっていうし」

723: 2013/09/25(水) 15:00:00 ID:LSCCZ/BA

みかん箱だったもの「覚醒? 並列化? どうやって?」

エレニ「これ」

みかん箱だったもの「注射器? そのスピッツの中身は?」

エレニ「ヱレンの血だよ。あと抗凝血剤(ヘパリン)」

みかん箱だったもの「輸血すんの? 俺、注射怖いんだけど…」サーッ

エレニ「らしいねえ」ニヤッ

みかん箱だったもの「どうせなら俺を作る時に混ぜてくれりゃ良かったのに…(涙目)」

みかん箱「そうすりゃこんな手間かけずに済んだんじゃないか?」

エレニ「冗談でしょ。それで人間化に失敗したらヱレンの血が無駄になるじゃない」

みかん箱だったもの「………」

エレニ「これは<彼らの記憶>を自在に呼び覚ます為のトリガーなの」

エレニ「恐らく、ヱレンはエレンに使ってもらおうと作ったんじゃないかな?」

エレニ「生き延びてもらうために…」

724: 2013/09/25(水) 15:00:47 ID:LSCCZ/BA

みかん箱だったもの「そんな大事なものを何故俺に…?」

エレニ「さあね。自分で考えな」

エレニ「直ぐに効いてくると思うから、今はこれからやらなければいけない事を話すよ」

エレニ「ヱレンからあんたに頼みがあるんだ」

みかん箱だったもの「それ!聞きたいと思ってたんだ。何故オレを人型にしたのか」

エレニ「では単刀直入に。エレンの父親、グリシャ・イェーガー氏を捜して欲しいんだ」

みかん箱だったもの「父さ、いや、えぇっと、先生を?」

エレニ「うん。エレンは兵士になってお母さん、カルラさんの敵、人類の敵を駆逐する事を最優先にしてるから…」

エレニ「お父さんの事が気になっていても、じっくり捜している暇なんてない」

みかん箱だったもの「だよな」

エレニ「そういうわけで、あんたを作ったのは人手が欲しかったからだけど…」

エレニ「実のところ、私らがエレンの近くに居たんじゃ色々とまずいんだ」

725: 2013/09/25(水) 15:01:57 ID:LSCCZ/BA

エレニ「金髪のままの私はともかく、あんたとヱレンはエレンと同じ顔、同じ姿だからね」

エレニ「私たち3人はバラバラに行動すべきだって、ヱレンが」

みかん箱だったもの「うん、いいんじゃないか。もっともな話だ」

エレニ「エレンはこのまま調査兵団に入団するから…」

エレニ「主な活動拠点は当分の間ここウォール・ローゼとウォール・マリアの往復になる」

エレニ(アニの方は憲兵団に入って拠点をウォール・シーナに移すだろう)

エレニ(アニとは袂を分かった私は、シーナには近付けない。だから…)

エレニ「私は理由あってシーナを探索することができないの」

エレニ「そして…ヱレンは一足先に壁外に行くって言ってる」

みかん箱だったもの「壁外って…ウォール・マリアの外に?」

みかん箱だったもの「わざわざ巨人の活動領域へ行くって?」

みかん箱だったもの「そんな危険なことは俺にやらせてくれればいいのに」

726: 2013/09/25(水) 15:03:17 ID:LSCCZ/BA

エレニ「本当は…全部ヱレンが一人でやろうとしてたけど…」

エレニ「私を助けるために、ヱレンは寿命を削ってしまった」

エレニ「私も助けられたとはいえ…先はそう長くない」

エレニ「だから最も危険な領域の探索をヱレンが請け負う代りに、私はエレンとミカサを見守る使命を引き受けたの」

エレニ「あんたには…エレンとミカサのため…家族を今一度一緒にしてあげるために」

エレニ「捜して欲しいんだ、ウォール・シーナに潜入して、グリシャさんを!」

エレニ「ヱレンからの情報では、王立図書館の医学資料室に手掛りがあるって」

みかん箱だったもの「手掛り?」

エレニ「そこにグリシャさんの本があったそうなの」

エレニ「閉架式図書だから特別の手続きを経て専用ブースのみでしか閲覧できないらしいし、当然持ち出しも厳禁」

エレニ「そこまで厳重に保管してある初版本なの」

みかん箱だったもの「それを取ってくればいいのか?」

エレニ「違うよ。本自体はエレンも持ってる」

727: 2013/09/25(水) 15:04:36 ID:LSCCZ/BA

エレニ「重要なのは、王立図書館に収蔵された前後の経緯よ」

エレニ「誰が持ち込んだのか?とか、今までに閲覧したのは誰か?とか」

エレニ「その中からグリシャさんに繋がりそうな人を捜して、そこからグリシャさんの居所を追うの」

エレニ「ただし、藪を突いて蛇を出すって事もあるかも…」

エレニ「それでも、これがどれほど危険な捜査だとしても、やってもらうしかないわ」

みかん箱だったもの「なるほど。そいつはまた…重大な任務だな」

みかん箱だったもの「もちろん否も応もないさ。引き受けるよ」

みかん箱だったもの「ってより、息子としての当然の義務だな」

エレニ「ありがとう…っ!」

みかん箱だったもの「こっちこそ、恩義に報いる機会をくれてありがたい」

728: 2013/09/25(水) 15:05:56 ID:LSCCZ/BA

エレニ「そうだ。ヱレンからあんたに贈り物があるんだ」

エレン「あんたの名前さ。受け取って欲しい、って」



みかん箱だったもの「これ…記憶にある」

エレン「ヱレンによると」

みかん箱だったもの「わかってる。弟か妹が出来たら付けようね、って母さんが父さんに言ってた…」

エレニ(ああ…もう覚醒したんだ……)

みかん箱だったもの「でも、いいのかな? 俺が名乗っても…」

エレニ「いいんじゃない? あんたも家族なんだし」

みかん箱だったもの「その言葉、有難く受け取っとくよ」

エレニ「じゃあ、後は解るね」

みかん箱だったもの「おう」

エレニ「頼んだよ。時間がないから私はもう行くけど、くれぐれも気を付けてね」

みかん箱だったもの「お前こそな」

729: 2013/09/25(水) 15:08:40 ID:LSCCZ/BA

 ※ というわけで(?)みかん箱の人としての名前は既出の小噺の中にヒントがあります。

   遊びだし、もう話には関わってこないので、敢えて答えは書きません。あしからず。

730: 2013/09/25(水) 15:10:26 ID:LSCCZ/BA

 ~~~ リヴァイの家 ~~~


エレン「? 気のせいか? 何か音がしたような…」

 …コン コン…

エレニ「エレン?」

エレン「誰だお前? フードなんて被って…」

エレニ「名前? う~ん…」

エレニ「今はとりあえず、ソイレント・グリーンとでも名乗っておくよ」クスッ

エレン「はあ? どっかで聞いたような…って、合言葉か」

エレン「ん? 待てよ? ちょっと違う、ような…?」

エレニ「いいからさ、ここ開けてよ」

エレン「ちょ、おま、窓から入って来る気かよ」

731: 2013/09/25(水) 15:11:45 ID:LSCCZ/BA

エレニ「伝言があるんだ、早くしてよ」

エレン「何だよ?」

エレニ「君にあげた本の元の持ち主から伝言」

エレン「元の持ち主? それって誰だ?」

エレン「…(ハッ!) まさか親父か!?」

エレニ「ごめん、違うんだ」

エレニ「大事な事だから聞いて。これから起こる事について……」



エレニ「わかった?」

エレン「は? ぜんぜんわからんのだが?」

エレニ「今は仕方ないかもね。その内、思い当たるよ、きっと…」

732: 2013/09/25(水) 15:12:44 ID:LSCCZ/BA

エレン「いや、だから、ちょっと待て。何でケーゲル場を壊さないといけないんだ!?」

エレニ「すまないが長居は出来ないんだ」スッ

エレニ「あ、そうそう。伝言の内容と俺の事は他言無用にね」スタッ

エレン「待てって! おい!」バッ



エレニ(あらら。追い掛けて来ちゃった。どうしよ?)タタタ

エレン「待てよッ!」タタタタ

エレニ(ふふ。本物のエレンに追い掛けられるのも悪くないね)

エレン「待てって言ってるだろ! 説明しろ!」

エレニ(でも、顔を見られるわけにはいかないからね)

ミカサ「その声は!」タッタッタ

733: 2013/09/25(水) 15:13:45 ID:LSCCZ/BA

ミカサ「エレン!?」ザザッ

エレニ(! あちゃー、前からミカサが。兵長の家までエレンを迎えに来たのか)

エレニ(とりあえず路地に入って)ダッ

エレニ(塀を越えて逃げるしかないね)ヒョイッ

ミカサ「エレン!」

エレン「ミ、ミカサ!? 今、誰かと擦れ違わなかったか?」

ミカサ「いいえ?」

ミカサ「それより、エレン! 何か…ひどいことはされなかったの?」

エレン「ね…ねぇよ、そんなことは」シドロモドロ

エレン(全裸に剥かれて風呂に入れられたとか、あーんして食べさせてもらったとか)

エレン(普段のミカサ以上に甲斐甲斐しく面倒見てもらったなんて口を滑らせた日にゃ…)

エレン(兵長とミカサの両方にぬっ殺されるッ!)ゾワッ

734: 2013/09/25(水) 15:15:56 ID:LSCCZ/BA

ミカサ「エレン…顔色が良くない…やっぱり何か…」

エレン「そ、そんなことないって!」

エレン「それより、お前こそこんな所で何してんだよ?」

ミカサ「わ、私は…エレンがリヴァイ兵長に連れて行かれたと聞いて…」

ミカサ「皆が貴方を捜してちょっとした騒ぎになってしまった」

ミカサ「ので、エレンの訓練は中止になった」

エレン「あ、それで迎えに来てくれたのか。わざわざ悪かったな」

ミカサ「ううん。いいの…」

エレン「そんじゃ帰るとするか」

ミカサ「………」

エレン「ん? どうした?」

ミカサ(刺すような風……あの日も…こんな夜だった…)

735: 2013/09/25(水) 15:18:11 ID:LSCCZ/BA

ミカサ(あの時、エレンが助けに来てくれなかったら…)

ミカサ(今の私は存在さえしてない)

ミカサ(エレンがいなければ私は私じゃない)

ミカサ(もう大切なものを失いたくない!)

ミカサ(エレンにも二度と味わわせたくない!)

ミカサ(あんな…独りきりで…途方にくれて…寂しくて寂しくて…)

ミカサ(心が寒さで凍えそうになって……)

ミカサ(そう、あれは心を凍らせる)

ミカサ(そして凍りついた心ほど無為で残酷なものはない)

ミカサ「…(あんな思いはもういや。あんな…)…寒い……」

エレン「…」スッ

エレン「ちゃんとマフラー巻いておかないからだろ」シュル

エレン「ほら。これであったかいだろ?」

ミカサ「……あったかい…」

736: 2013/09/25(水) 15:20:30 ID:LSCCZ/BA

ミカサ「……」ジッ

エレン「なんだよ?」

ミカサ(エレンは変わらない。あの時から変わってない)

ミカサ(エレンはここにいる。私は……)

ミカサ(どうして私はエレンが遠くに行ってしまうと思ってしまうのだろう?)

ミカサ(エレンは目の前にいる。確かにいる)

ミカサ(なのになぜ希薄に感じるの? 陽炎のように消えると思うの?)

ミカサ(私はただ…ただこの美しさをずっと見ていたいだけなのに…)

ミカサ(ああ! そうか)

ミカサ(美しいものは短命だって知ってるからだ)

ミカサ(美しさの本質に寄り添う儚さがエレンの裡に見えるからだ)

エレン「ほら」クイッ

ミカサ「!」

737: 2013/09/25(水) 15:21:38 ID:LSCCZ/BA

ミカサ(エレンに袖を掴まれた! エレンから掴んできた!)

ミカサ(エレンはここに存在してる。なのに…)

ミカサ(私は何を考えてたの?)

ミカサ(私がエレンを守るんじゃなかったの?)

ミカサ(私にとってエレンは世界そのもの)

ミカサ(私は私の世界を守り抜くの。そう誓ったはず)

エレン「早く帰ろうぜ。オレ達の宿舎に」

ミカサ「…うん」

ミカサ「帰る…」



ミカサ(エレンと私の…世界に)



ミカサ(残酷な日常で綴られた美しい世界に)

738: 2013/09/25(水) 15:25:56 ID:LSCCZ/BA

   エレンさんがミカサを殴ろうとしたなんて、そんな事あるわけないじゃないですか。やだー。

   きっとね、あの時はケーゲル場を破壊しろって言葉を思い出しただけなんだよ…



   と、無理矢理こじつけてみますた。

739: 2013/09/25(水) 15:40:40 ID:LSCCZ/BA

 ~ おまけ・その後のエレニ ~


エレニ「あー、おなかがすいた」

エレニ「ガス欠だし、足も痛い。もう歩けない」

エレニ「こんな路地で座り込んでるの誰かに見られたら…」

エレニ「とは思うんだけど…おなかすいたあ」

 ぐぅ~ きゅるる…

エレニ「う、うわわ///」

エレニ「こんな恥ずかしい音聞かれたら…氏ねるわ」ガクッ

エレニ「ううん、聞いた奴ぶっ○せば良くね?」ピン!

エレニ「言ってる傍から話し声が! 誰か来た!」

740: 2013/09/25(水) 15:42:22 ID:LSCCZ/BA

 『立体機動装置つけた猫が、俺にブレード突きつけてきた』

   ※ 包丁猫のコピペ一部改変です。



エレニ「おかね ちょうだい」

グスタフ「お金? いくら?」

エレニ「さんぜんえん」

グスタフ「いいよ。はいどうぞ」

エレニ「固いのも欲しい」

グスタフ「小銭のこと? 全部持てるかな」

アンカ「何買うの?」

エレニ「携帯食糧。いっぱい買う」

アンカ「そっか。でもお店遠いよ? 一緒に行く?」

エレニ「…いく」

グスタフ「装備と刃は重いから置いておきなよ。後で取りに来ればいいから」

エレニ「うん」

741: 2013/09/25(水) 15:43:36 ID:LSCCZ/BA


グスタフ「食糧いっぱい買えてよかったね」

エレニ「…うん」

アンカ「重いでしょ? それずっと持って歩くの?」

エレニ「…重いの」

アンカ「家に置いておく? 好きなとき取りくればいいじゃん」

エレニ「…うん」



グスタフ「外寒いよ?帰るの?」

エレニ「・・・」

アンカ「泊まる?」

エレニ「・・・そうする」

742: 2013/09/25(水) 15:46:25 ID:LSCCZ/BA

 ~~~ 数日後 ~~~


アルミン「終息宣言? それは、もう全て片付いたという事でしょうか?」

ハンジ「うん。そうなるね」

ハンジ「あの後、みかん箱を抱えて宿舎の裏から逃走した犯人を空家に追い詰めたまでは良かったが…」

ハンジ「我々が突入した瞬間に閃光弾をぶっ放されるとは思いもしなかった」ムスッ

ヱレン(俺もエレニから話を聞いた時はヒヤヒヤしましたよ)

ヱレン(しかも、エレニを追ってアニまであの場に居たっていうんだから)

ヱレン(まあ、アニが閃光弾を撃ってくれたお陰で逃げられたそうだけど)

ハンジ「まさか犯人も含め、ドッペルゲンゲルが複数居たとはね」

743: 2013/09/25(水) 15:48:06 ID:LSCCZ/BA

ハンジ「調べによると、犯人2人の正体は訓練兵とは何の関係もない犯罪者だった事も判明した」

ヱレン(誘拐の手配犯を上手く誘い出して身代わりに仕立てたんだけどね)

ヱレン(それに関しては書類を放っておくようなルーズな仕事ぶりだったハンネスさんに礼を言わないとな)

ヱレン(以前ちらっと見た人相書きを覚えていて良かった)

ヱレン(ヲイナーと記憶を共有したのも今思えば僥倖だった)

ヱレン(ヲイナー、いや、アニが町で奴らを見掛けていなければ、こんな作戦は取れなかったからな)

ハンジ「何もかも、こちらの想像とは違い過ぎたよ」

ヱレン(つまり、ヲイナーと用意した案山子と乱入してきたアニは…)

ヱレン(ハンジさんから見ると犯人一味に見えて)

ヱレン(人攫いの賊にとっては自分達以外は全員兵士だと勘違いしたわけだ)

ハンジ「あの時、動転した犯人が火の点いた薪を振り回したりしなけりゃ!」

ハンジ「犯人を取り押さえ、ドッペルを捕獲してたんだ」クッ

744: 2013/09/25(水) 15:49:37 ID:LSCCZ/BA

ハンジ「何より私の大切な部下達を火災に巻き込んでくれてッ」ギリッ

ハンジ「誰も怪我しなかったものの、部下達には申し訳ない気持ちでいっぱいだ」ションボリ

マルコ「で、でも、主犯の2人は氏亡したんですよね?」

ミカサ「襲ってきたんだから、返り討ちに遭うのは当然」

ハンジ「詮方無し、さ。正当防衛の範囲内で処理されたよ」

ハンジ「ただし、団長からは予定外の行動をしたかどで大目玉を食らったけどね」

ヱレン「でも、ご無事で良かったです」ニコッ

ハンジ「みかん箱も燃えちゃったけどね…」シュン

ミカサ「それは残念だけど、命には代えられない」

ミカサ「ので、これで良かった。…です」

ハンジ「ごめんねえ」

ミカサ「騒ぎの種が無くなったと思えば。返ってすっきりしました」

745: 2013/09/25(水) 15:50:25 ID:LSCCZ/BA

マルコ「でも…その犯人達、ドッペルを作ってどうするつもりだったんだろう?」

ハンジ「人攫いや強盗を繰り返していた連中だから…さてね?」

ハンジ「売り飛ばすつもりだったのか、仲間として共に犯罪を重ねていたのか…もう誰にもわからない」

ハンジ「だが、どちらにせよ、恐らく素体となった被害者は此の世には居ないだろう」

ハンジ「ドッペルも、あれで絶滅したのだと思う…」

ヱレン「…」

ハンジ「………」チラッ

ハンジ(ヱレンが最期を看取った子も、名乗らなかったのは名前を付けて貰ってなかったからなんじゃ?と思える)

ハンジ(こんなことなら、私が付けてやれば良かったのかもねぇ…)ハァ…



ハンジ「結局、諸々の失敗は偏に私自身の疑心暗鬼に因るところが大きかったのさ」

ハンジ「策を弄し過ぎて、逆に振り回されてしまった」

アルミン「結果が判っていても正しい選択が出来たかどうかなんて分かりません」

アルミン「こうなるしかなかったんだ、と…僕は思います」

746: 2013/09/25(水) 15:53:00 ID:LSCCZ/BA

 *


ヱレン「じゃあ俺はこれでリヴァイ兵長の所へ帰るよ」

ミカサ「ヱレン、今からでもエレンに理由を話して逢う事だって出来る」

ミカサ「どうして一緒に来てくれないの?」

ヱレン「ん…まだ用が残ってるからな。それが済んだら、その時はな」

ヱレン(ごめん、ミカサ。俺、どんどん嘘が上達してるよな)

ハンジ「その用事って何?」

ヱレン「いや、それが…兵長が今度の壁外調査に俺を連れて行くって」

ヱレン(なんてな。嘘だけど。俺から連れて行ってくれるよう必氏に話を振ったんだ)

ヱレン(壁外へ出るチャンスを逃してなるかよ)

747: 2013/09/25(水) 15:54:53 ID:LSCCZ/BA

ハンジ(ははぁん。リヴァイったら…陥落したな?)

ハンジ(ヱレンに頼まれると…何というか…断れなくなるんだよね)

ハンジ(あざとイェーガー……恐ろしい子!)

アルミン「断れないの?」

ヱレン「冗談だろ。断ったりしたら何されるか。俺まだ氏にたかねぇぞ?」

マルコ「巨人の脅威より恐れられているリヴァイ兵長って一体…」gkbr

ハンジ「まっ、仕方ないさ。リヴァイが飽きるまで付き合ってやってよ」

ハンジ(と、話を合わせておいて。後で締め上げるからね。ヱレン)ニカッ

ヱレン(さすがハンジさん、気付いたな。さっさと兵長の部屋に逃げ込もうっと)

ヱレン「そういうわけだ。悪いけど、エレンの事は頼むよ」

ヱレン「ミカサ、アルミン、頼りにしてるぞ」

ミカサ・アルミン「「任せて」」

ヱレン「マルコも。憲兵団に行っても、こいつらの事、気にかけてくれると嬉しい」

マルコ「心配しないで。何があっても僕達は仲間だ」

748: 2013/09/25(水) 15:57:35 ID:LSCCZ/BA

 *


マルコ「…あの時、どうして気付かなかったんだろう?」

マルコ「よくよく思い返してみれば、あれは別れの挨拶じゃないか」

マルコ「ヱレン…君は何処に居るの?」

マルコ「エレンに逢うまで、君は氏んだりしないよね? 帰って来るよね?」

マルコ「エレンには助けが必要だよ」

マルコ(だって、あんな…あんなこと…)

マルコ(エレンが巨人になってしまったなんて…っ!)

マルコ(ヱレン、君は何か知っていたんだろ? 僕達に納得のいく説明が出来るだろう?)

マルコ(あぁ…ごめん。責めているわけじゃないんだ)

マルコ(ただ、さ…自分が情けなくて…。もっと早く全部気付いていれば…)



ジャン「…オイ」

ジャン「お前…マルコ……か……?」

749: 2013/09/25(水) 16:02:02 ID:LSCCZ/BA

   もう少しエンディングを付け足したら、後はエピローグを残すのみです。

   パソが熱暴走しそうなので、今日はここまで。

   お読みいただいて、ありがとうございます。

753: 2013/10/06(日) 02:15:57 ID:lX/vLg/E

 ~~~ トロスト区攻防戦の最中 ~~~


ダンスィ「み、皆さん、おお落ち着いてっ、ひ、避難をを…っ!」

ジャン「ばっかやろう! てめえが落ち着け!」

ジャン「パニック状態の避難民に落ち着けなんて言って聞き分けるわきゃねえだろ」

ジャン「氏にたくなきゃ走れー!! 門まで走れ!! 急げー!!」

ジョシー「ジャン、そんなふうに煽ったら怪我人が…。習った通り、静かに誘導した方が」

ジャン「仕方ねえだろ、こうなりゃ『なるべく多くを』避難させるしかねえ」

ジャン「静かに誘導なんて、一旦パニックになっちまったら何の効果もねえんだよ」

754: 2013/10/06(日) 02:17:08 ID:lX/vLg/E

シュヴェスター「うわあぁぁん! お兄ちゃーん、どこぉ?」

マルコ「ジャン、ここは任せるよ」

ジャン「お、おいっ!?」

マルコ「君、大丈夫かい?」

シュヴェスター「お兄ちゃんがどこにもいないのー」ヒック…ヒック…

マルコ「あれ? 君は確か、ケーゲル場の前で会った…」

ユンゲ「居た!」

シュヴェスター「お兄ちゃん!」ヒシッ

ユンゲ「手を離すなって言ったろ。ほら」

シュヴェスター「うん」ギュッ

755: 2013/10/06(日) 02:18:33 ID:lX/vLg/E

ライナー「見つかって良かったな」

ユンゲ「ありがとう、ライナー兄ちゃん。マルコ兄ちゃんも」

シュヴェスター「ありがとー」

ベルトルト「小さい子達だけで大通りを行くのは危ない」

ベルトルト「巨人が此処に到達する前に建物内を突っ切って裏道を行った方がいいかも」

マルコ「僕が送るよ」

ライナー「俺達も行こう」

アニ「……」

756: 2013/10/06(日) 02:21:14 ID:lX/vLg/E

ライナー「よし、ここを突っ切って行こう」

シュヴェスター「巨人、おいかけてくる?」

ユンゲ「大丈夫だよ。ライナー兄ちゃん達がやっつけてくれるさ」

ライナー「おう、任せろ」

シュヴェスター「まかせるのー」キャッキャ

ベルトルト「……」

アニ「……」

マルコ「君達、お父さんお母さんとは何時逸れたの?」

ユンゲ「はぐれたんじゃないよ。オレたち、二人で遊びに来てたんだ」

シュヴェスター「お砂場で遊んでたのー」

757: 2013/10/06(日) 02:22:24 ID:lX/vLg/E

マルコ「ああ、前に言ってた、ライナーとベルトルトが作ってくれた砂場の事かな?」

ユンゲ「うん。いつもそこで調査兵団ごっこをしてるんだ」

シュヴェスター「かっこいいのー」

マルコ「へぇ。調査兵団ごっこかぁ。勇ましいねえ」

ユンゲ「巨人を削いで倒すんだ! 手でガーッて壊すとスカッとするんだ」

マルコ「巨人をやっつけちゃうんだ? 強いんだねえ」クスクス

シュヴェスター「つよいのー」ニコニコ

シュヴェスター「お砂で巨人つくるのー。ガーッてこわすの。楽しいのー」

マルコ「そうか、砂で作った巨人を倒すんだ?」ニコニコ

マルコ「今までに何体くらい駆逐したのかな?」

ユンゲ「いっぱい! いーっぱい駆逐した!」

シュヴェスター「いっぱーい!」

758: 2013/10/06(日) 02:23:25 ID:lX/vLg/E

マルコ「凄いねえ。じゃあ階級は団長クラスかな?」

ユンゲ「オレ、兵士長がいい! リヴァイ兵長かっけーんだもん」

シュヴェスター「あたし、ぶんたちょー」

マルコ「分隊長のことかな? ハンジ分隊長に憧れ?」

マルコ「それは…やめておいた方がいいよ……」

シュヴェスター「?」

マルコ「あ、いや、気にしないで」

ユンゲ「ねえ、マルコ兄ちゃん…オレたち、あそこに戻れるかなあ?」

マルコ「! 戻れるよ!」

シュヴェスター「またお砂なくなっちゃうかなぁ?」

マルコ「無くならないよ。大丈夫だから」

シュヴェスター「前のはいなくなったのー。おいといたのに消えちゃったのー」ショボン

759: 2013/10/06(日) 02:24:44 ID:lX/vLg/E

マルコ「消えた? 砂の巨人が?」

シュヴェスター「うん。がんばって作ったのに、にげたー」

マルコ「逃げた? 砂? 砂が?」

ユンゲ「うん。だからそう言ってるじゃないか」

マルコ「…何体くらい作ってたの?」

シュヴェスター「んっとねぇ…さんじゅ?」

マルコ「…それ、どれくらいの大きさなの?」

ユンゲ「膝くらい。で、でも! 小さいけど巨人なんだぞ!」

マルコ「そ、そうだよね。小さくても巨人は巨人だ。…因みに、消えたのはいつ頃?」

ユンゲ「え? えっと…? 先月だったと思うけど…よく覚えてない」

マルコ「あ、いや、ごめんね。覚えてないか。そうだよね」

マルコ「大丈夫、新しい砂を入れれば、また遊べるよ」

760: 2013/10/06(日) 02:31:49 ID:lX/vLg/E

シュヴェスター「うん! 今度はライナーお兄ちゃんとベルベルお兄ちゃんもおケガしないでね」

マルコ「怪我? 二人は怪我してたの?」

シュヴェスター「うん。汗いっぱいかいて、ガレキどかしてくれたとき」

ユンゲ「瓦礫の破片で指切ってた。血が出てるのに砂を入れてくれたんだ」

マルコ「そう……」

ライナー「……」

ベルトルト「……」

アニ「……」

マルコ「! 待って。出口のところに人が…」



エレニ「おーい君達、親御さんが迎えに来てるよ」

エレニ「ほら、お子さんたちは無事ですよ」

761: 2013/10/06(日) 02:34:44 ID:lX/vLg/E

シュヴェスター「ママ! パパ!」

ユンゲ「うわあん! 会いたかったよお!」

ライナー「おお!良かったな、お前達。無事に避難しろよ」

エレニ「気をつけてお帰り」



マルコ「お前は……ヲイナー!? 生きて…? いや、何故此処に!?」

 ドシュッ

エレニ「!」

マルコ「ぐ…ふっ…」

アニ「ごめんなさい…」

マルコ「ア、アニ…なぜ…」

アニ「ごめんなさい…」

762: 2013/10/06(日) 02:36:11 ID:lX/vLg/E

ベルトルト「マルコ、気付いたんだろ? あの子達の話で気付いたんだよね?」

マルコ「ベ……ル………」

ベルトルト「UMAが僕達の分身だって…知られてしまったね」

ベルトルト「こうなったら…気の毒だとは思うけど」

ライナー「ああ、永久に口を閉ざしてもらうしかないな」

マルコ「そ、そうか…やっぱり君達は……」

マルコ「い、今迄だって、ヒントは沢山あったんだ」

マルコ「全てを見てきたのは僕だけだったんだ」

マルコ「エレンが巨人化した時に…真っ先に…僕が…僕こそが気付くべきだった」

マルコ「神出鬼没なこと、異常な再生能力、UMAが倒された後に氏体を残さないこと」

マルコ「巨人との共通点がこんなにあったのに…っ」

マルコ「特殊な体質の者が、即ち巨人化出来る人間の事だって」

マルコ「そして、その裏切り者が…エレンの近くに居て、人類の中に紛れてるって…っ!」

763: 2013/10/06(日) 02:36:59 ID:lX/vLg/E

エレニ「それ以上喋るんじゃない、マルコ」

マルコ「お前も…うっ」

エレニ「直ぐに手当てするから」

マルコ「な…に……?」

アニ「そう…やっぱり寝返ってたの」

マルコ「ね…寝返った?」

エレニ「アニ…」

ベルトルト「アニ、こいつは?」

アニ「あたしの……さ」

マルコ(アニが…こいつを造ったのか!)

ベルトルト「アニ、どうするんだ?」

アニ「さあ? どうしようね?」

764: 2013/10/06(日) 02:39:01 ID:lX/vLg/E

エレニ「寝返ったのは事実だけど、それはアニ、お前の為だ」

アニ「最初の言い訳がそれかい?」フン

アニ「御為ごかしを言うにしても、もっと他に言うべき事があるんじゃないの?」

アニ「あんたは、あたしの好意を、愛情を踏み躙った!」

アニ「こんな処にノコノコ出て来て! 許してもらえるとでも思った?」

エレニ「いいや。そんな厚かましい事は考えてもいない」

アニ「だったら何!?」

エレニ「愛してるよ、アニ。それだけ言いたかった」

アニ「そんな言葉が免罪符になるとでも? 馬鹿にすんじゃないよ!」

エレニ「愛してる。お前が俺を憎み続けていようと、俺はお前を愛してる」

アニ「っ!!」

エレニ「だから…今は俺に自由をくれ」

765: 2013/10/06(日) 02:40:05 ID:lX/vLg/E

エレニ「何時とは確約出来ないが、必ずお前の元に戻って来るから」

アニ「ふざけないで!」

エレニ「アニ…」

アニ「ふざけるな! ふざけるな! ふざけるなあッ!!」

アニ「愛してるなら自由にしろ? そんなの、あたしが一番言いたかった!」

アニ「やりたくもない格闘術を強制されて! 聞きたくもない理想を聞かされ続けて!」

アニ「お父さんはあたし自身を見てくれる事なんて無かったじゃないの!」

アニ「あたしを女の子として見てくれなかったじゃない!」

アニ「エレン! あんたにはもっと労わって欲しかったのに、どうしてわかってくれないの!?」

アニ「優しさってものをはき違えてるから、こっちも間違った期待を持っちゃうのよ!」

エレニ「…アニ……」

アニ「………っ!」

766: 2013/10/06(日) 02:41:06 ID:lX/vLg/E

エレニ「でも…アニ……今だって仲間を、エレンを大切に思ってるだろ?」

エレニ「お父さんのことを切り捨てられなかったように」

エレニ「あいつの、そういう鈍いところも含めて、それでも慕う気持ちを否定できない、だろ?」

エレニ「人を…好きになるってそういうことだもの」

エレニ「思いを抱いているなら…同じ思いでいてほしいと期待するのは当たり前のことだ…」

アニ「だって……だって……」

エレニ「アニ…」

エレニ「エレンが復讐に駆られている姿を見て何を思う?」

エレニ「正義を追及する姿を…そして他の人たちが犠牲になっていく有様を見て…」

エレニ「あの光景は…残酷ではあるけれど…」

エレニ「残酷であるが故にとても美しいと思わないか?」

アニ「…思」

767: 2013/10/06(日) 02:43:11 ID:lX/vLg/E

ベルトルト「悪魔の囁きだな」

アニ「!」

ベルトルト「互いの思想が食い違っている事は残念だとは思うけれど」

ベルトルト「君がアニに造られたのなら、無駄だと解るはずだ」

ベルトルト「情に訴えかける君の遣り口では僕達の大義を払拭するほどの力はないよ」

ベルトルト「残念だったね」

エレニ「どうしても、か?」

ベルトルト「どうしたって僕達と彼等とでは分かり合えないさ」

ベルトルト「彼等は僕達にとっては異質の者達なのだから……君もね」

エレニ「!」

 ザシュッ …ドサッ… ゴロン

768: 2013/10/06(日) 02:48:45 ID:lX/vLg/E

アニ「___!!」

ベルトルト「アニ、君に断りを入れる前に君の持ち物を処分しちゃったけど…」

ベルトルト「別に構わないよね?」

アニ「……………」

ベルトルト「目は覚めたかな?」

アニ「……………」

ベルトルト「しっかりしてくれよ。僕達は故郷に帰るんだろう?」

アニ「……そう………だね………そう…だった………」

アニ「約束……したんだ……帰るって……………」

ベルトルト「そうだよ。帰るんだ」

ベルトルト「あれは…」チラッ

ベルトルト「悪い夢だ」

アニ「………夢…」

769: 2013/10/06(日) 02:55:22 ID:lX/vLg/E

ライナー「お、おいベルトルト、エ、エレンの首を切り落としちまって…どうするんだ!?」

ベルトルト「……ライナー、君もしっかりしてくれ。これはエレンじゃない」

ライナー「エレンじゃない?」

ベルトルト「そうだよ。ただの人形さ」

ライナー「そ、そうか? そうは見えんな」

ベルトルト「そうなんだよ。これはただの人形で、エレンじゃない」

ベルトルト「僕達の仲間でも同志でもない」

ライナー「……そうだった、かな?」

ライナー「…お前がそう言うんなら…そうなんだろうな」

ベルトルト「……………(溜息)」

770: 2013/10/06(日) 02:58:00 ID:lX/vLg/E

マルコ(こ、こいつら、元仲間まで手に掛けて!)

マルコ(……僕も逝くのかな。悔しいな)

ライナー「おい、こいつどうするんだ? このままにしておくとマズイだろ」

ベルトルト「燃やせばいい。いいね?アニ」

アニ「あたしは……早く此処を離れたい」



  シュッ… ボッ …パチッ パチパチパチ… ボウッ



ライナー「マルコはどうする? まだ息があるみたいだが」

ベルトルト「通りに放置したらいい。腹を空かせた巨人が見つけて食ってくれるさ」

771: 2013/10/06(日) 02:59:35 ID:lX/vLg/E

マルコ(外道どもめ。お前達みんなエレンに駆逐されちまえ)

マルコ(そうだ、エレンは大丈夫なのかな? ずっと巨人のままって事はないよね?)

マルコ(あのままだったとしても、ミカサなら付いて行きそうだけど)

マルコ(ハンジさんが何とかしてくれるかも。だといいな)

マルコ(ヱレン、君は答えを知っているのかい?)

マルコ(僕は自分が情けないよ。裏切り者を告発することすら叶わないなんて)

マルコ(ジャン、心残りがあるとすれば、君の事かな)

マルコ(ごめんね…僕は先に逝くけど……君は当分来なくていいからね)



 ズシーン ズシーン



    …ァアァアアァァ…

772: 2013/10/06(日) 03:00:30 ID:lX/vLg/E

ジャン「…マルコ…何があった?」

ジャン「だ…誰か……」

ジャン「…誰か…」

ジャン「コイツの最期を見た奴は…」



ジャン(なぁ…マルコ)

ジャン(もう…どれがお前の骨だか…わかんなくなったよ…)



ジャン「オレは決めたぞ」

ジャン「オレは…」

ジャン「……」



ジャン「オレは…調査兵団になる」

773: 2013/10/06(日) 03:02:36 ID:lX/vLg/E

 ~~~ 王立図書館 ヴァーレス・エンデ ~~~



みかん箱だったもの「図書館ってのは知識と記録の宝庫だよな」

みかん箱だったもの「考えようによっちゃあ、脳の外部拡張みたいなもんだ」

みかん箱だったもの「なあ?そう思わないか? こそこそ窺ってないで何とか言えよ」

リッター「閣下、あれが件の仔猫です」

ヘルツォーク「うむ。予定通りであるな」

リッター「はい。想像通りの愚か者めにございます」

フュルスト「警護の目を潜り幾度も忍び込めた辺り、そう愚かでもないようだが」

グラーフ「然り。ただ今回は此方が少しばかり上手を行けましたな」

774: 2013/10/06(日) 03:03:50 ID:lX/vLg/E

リッター「して、如何なさいますか?」

ヘルツォーク「なかなか可愛い顔をしておる。飼い馴らすのも一興よな」

みかん箱だったもの「勝手に人の進退を決めないでくれ」

リッター「閣下の御前である。控えよ!」

ヘルツォーク「構わぬ」

リッター「……」

みかん箱だったもの「お見受けしたところ、皆様貴族でいらっしゃるようですが…」

みかん箱だったもの「俺ひとりに仰々しいお出迎えをして頂いた訳は聞きたくないですね」

ヘルツォーク「ほっほ。面白いのう。聞きたくないとは」

みかん箱だったもの「そりゃあもう想像ついちゃってるんで」ニコッ

775: 2013/10/06(日) 03:06:03 ID:lX/vLg/E

ヘルツォーク「では何が聞きたい?」

みかん箱だったもの「本の閲覧者のリストが偽物なのは直ぐに判ったけど…」

ヘルツォーク「ほう?」

みかん箱だったもの「本物が存在するのか聞きたいね」

フュルスト「本物はある。が、お主は気にせずともよい」

みかん箱だったもの「…まぁ、これも予想通りの答えだな」

みかん箱だったもの「けど安心したよ。つまりはあんたらも親父の行方は知らないって事だよな」

ヘルツォーク「ふ。成程、賢しいのう」

  バン!


フライヘア「閣下! 其の者はエレン・イェーガーではございません」

ヘルツォーク「む?」

776: 2013/10/06(日) 03:07:15 ID:lX/vLg/E

フライヘア「本物のエレン・イェーガーはエルヴィン・スミスの策略により召喚不能に!」

フライヘア「審議会にてイェーガーの価値を説き、壁外調査に連れ出すもよう」

ヘルツォーク「ふむ。まあ、どちらでもよい」

フライヘア「閣下?」

ヘルツォーク「此の者が…あれは何と言ったかな?」

グラーフ「超低周波発生器の事でございますか?」

ヘルツォーク「うむ。その機械によって作られた記憶保持者には違いないのであろう?」

リッター「御意にございます」

ヘルツォーク「ならば重畳。必要なものさえ手に入ればよい」

777: 2013/10/06(日) 03:09:27 ID:lX/vLg/E

フュルスト「超低周波発生器が目立たぬよう隠れ蓑としてケーゲル場まで造らせましたからな」

ヘルツォーク「実以て。超低周波発生器を稼働させる為にガスタービン・エンジンの開発にどれほどの投資をしたことか」

みかん箱だったもの「それもこれも<彼らの記憶>を奪う為に? そりゃ御苦労なこって」

フュルスト「ふ。さても強気な仔猫めにございますな」

ヘルツォーク「そのようだ」

フュルスト「おぬし、もう少し真剣に自身の心配をしたらどうだ? おぬしの態度如何で此方も情けをかけてやれようほどに」

みかん箱だったもの「ふん。御親切に涙が出るね」

グラーフ「如何でしょう。直接<記憶>を取り出すか、グリシャを誘き寄せる餌にするか」

リッター「閣下の御心のままに」

ヘルツォーク「そうさな…。うむ。リッター、ぬしに任せる」

リッター「は」

778: 2013/10/06(日) 03:11:26 ID:lX/vLg/E

みかん箱だったもの「言っとくけど、俺もエレンと同じ超再生能力の持ち主なんだが?」

リッター「心配は要らぬぞ、スワンプマン」ニヤッ

みかん箱だったもの「よせよな。俺は入れ替り魔じゃねえっての」

リッター「ならばクローンと呼ぶか?」

リッター「プラナリアという生きものを知っているか?」

リッター「どこをどう切り刻んでも再生するという下等生物だ。…が、実は刺されるとあっけなく氏ぬそうだ」

リッター「おぬしは刺されても平気かな? 氏にはせずとも苦痛には変わりなかろうな」

みかん箱だったもの「ハッ! お前らはその下等生物にすら劣るよな」

リッター「虚勢を張るのも限度があるだろう? 逃げ場も無いしな」

みかん箱だったもの「チッ!(確かにその通りだが…腹立つなあ)」

リッター「大人しく<記憶>を渡せば命だけは取らずにおいてやろう」ズイッ

みかん箱だったもの「そのセリフ、悪党そのものって感じで笑えるね」ススッ

779: 2013/10/06(日) 03:12:43 ID:lX/vLg/E

フライヘア「強情な。逆らう気を失くさせてやりましょう」

フライヘア「先程掴んだ情報です。お前の同類は氏にました」

みかん箱だったもの「な!? 今何て!?」

フライヘア「エレニと呼ばれていたクローン体は或る者達の手に掛けられ、骸は燃えて無くなったと言ったのです」

みかん箱だったもの(エレニが…そんな…)

フライヘア「お前達の動向は全て我等に把握されているのです。許より逃げ隠れなど出来ませんよ」

みかん箱だったもの「……っ!」

みかん箱だったもの(エレン、ごめんな。どうやら俺はここまでのようだ)

みかん箱だったもの(エレニ、仇を取ってやれなくてすまない。許してくれ)

みかん箱だったもの(ヱレン、約束は当分果たせそうにないが…わかってくれるよな?)

みかん箱だったもの(エルヴィン団長がエレンを守ってくれてる間は、こいつらの思い通りになる訳にはいかない)

780: 2013/10/06(日) 03:14:20 ID:lX/vLg/E

フュルスト「あまり怖がらせるでない。見よ、仔猫が逆毛を立てておる(笑)」

みかん箱だったもの(…とすれば、残る手立ては一つ…)



 ピカッ! パァアアアアア ア ア ア!!



ヘルツォーク「な、何だ!?」

リッター「ぬ!」

フライヘア「閣下! 危のうございます! こちらへ!」

グラーフ「……ぬかったな。結晶化能力まで有していたとは…」

781: 2013/10/06(日) 03:15:03 ID:lX/vLg/E

フライヘア「これは…? 水晶でしょうか?」

リッター「刃が! ヒビひとつ入りません!」

フュルスト「……逃げられましたな」

ヘルツォーク「な、何とかせい!!」

フュルスト「無駄でしょう。報告には如何なる手段を以てしてもこの水晶は破壊不可能とありました」

グラーフ「こうなれば、何としてもエレン・イェーガー本人を王都に召喚すべきでしょう」

ヘルツォーク「何でもよい! 誰でも構わぬ! そち達に一任する!!」

ヘルツォーク「何としてでも余の前に生贄を差し出すのだ! わかったな!?」

全員「「「「「はッ!」」」」」

782: 2013/10/06(日) 03:16:23 ID:lX/vLg/E



みかん箱だった結晶体(晶面内を反射する光は凍りついた時間)

みかん箱だった結晶体(暫し時を止め、俺はエレンの招請の声を待とう…)





みかん箱だった結晶体(10年でも100年でも)

みかん箱だった結晶体(たとえ1万年が過ぎようとも…)



みかん箱だった結晶体(エレン、君を待ってる)

783: 2013/10/06(日) 03:19:01 ID:lX/vLg/E

   これにて 本編、終了。
  
   着地どころか墜落したもよう\(^o^)/

784: 2013/10/06(日) 03:25:36 ID:lX/vLg/E

 ~~~ エピローグ ① ~~~


 ※ プロローグで出した有名コピペ(改変済)の続きで、これもその改変です。

 ※ リヴァイ兵長はヱレンの事をエレンと呼びます。多分、兵長にとってはどうでもいい事なんですよ。



<兵長の日記>

汚い仔猫、もとい、エレンを見つけたので、虐待するため ハンジのラボから回収して来てから3日が過ぎた。

その間、ずっと薬品を体中に塗りたくり、俺の嫌いな白い飲み物を、たっぷりと飲ませた。

だいぶ効いているようだ、手足を伸ばして俺に腹を見せて『ン~~ン』と声を漏らすようになった。

覚悟しろよ!これからもこの攻撃は続けていくぜ。

785: 2013/10/06(日) 03:26:41 ID:lX/vLg/E

   *

乾燥した不味そうな塊が無くなったので、買いに行くことにする。

だが、コイツは逃げるタイミングを狙っていたのだろう、俺が部屋を出ようとするとダッシュをしてきた。

ドアのノブに手をかけると、足元に纏わり付いて離れない、更に頭を傾けて擦り付けてくる。

邪魔者にはお仕置きが必要だ、

俺は首根っこをヒョイとつまみ、ベッドに置いて顎の下をくすぐり続けた。

「何をする!止めろ」とでも言ってるのか『ひッ、ひゃうっ!』と鳴いてるが止めない。

それを10分程していると、グタッとして俺のベッドでダウンした、良い気味だ。

ダウン間際に最後の抵抗か?指を軽く噛みやがったが、俺様には全く効かないので好きにさせてやる。

786: 2013/10/06(日) 03:27:43 ID:lX/vLg/E

帰ってきて早速、円筒状の入れ物から取り出したネチョネチョした物体を食わせる。

余程、腹ペコだったのだろう、凄い勢いで食べ始める。

馬鹿なクソガキだ。アゴが弱くなるぞ、高級品で軟らかいからな。

そろそろ寝ようと、電気を消してベッドに入るとあろう事か、先にもぐりこんでいやがった。

追い出してやろうとしたが、体が温かい事に気付く。

最近寒くなってきたところだ、今日からは一緒に寝ることにしよう。

787: 2013/10/06(日) 03:28:37 ID:lX/vLg/E

   * *

壁外調査中、折り悪しく巨人どもと遭遇。

エレンのやつは果敢にも爪を立てて反撃してやがったが、

あっけなく転がされるだけに終わった。

何時間特訓してやったと思ってるんだ、グズめ。

が、耳から血を出していたので慌てて引き取に行った。

今度からは戦闘は避けろと教えこむことにする。

   * *

788: 2013/10/06(日) 03:29:19 ID:lX/vLg/E

たまにエレンより少し大きいくらいの専用ダンボール箱(檻付)に入れて馬車に乗せて振動攻撃

そして白衣を着たモブリット、ケイジの2名に押さえつけられ、

術衣のハンジに針を刺してもらう。この時の悲鳴にはさすがに耳を覆う。

ハンジに金を渡し、来月も来ると約束する。

789: 2013/10/06(日) 03:30:11 ID:lX/vLg/E

   *

元気がなくなったのでここぞとばかりハンジのラボ(診療室)へ何度も行く。

声もあまり出ないようだ。  

ある日か細い声で、一言「兵長…」と俺につぶやいた。

恨み言だろうか・・・

次の日静かに息を引き取った。



燃やしてもらい、呪文を唱える司祭にさらに攻撃してもらう。

今もなお。司祭の元に通う まだ私の攻撃は続いている・・・

790: 2013/10/06(日) 03:58:03 ID:lX/vLg/E

~~~ エピローグ ② ~~~


 ※ 第57回壁外調査・反撃前夜


ユミル「あ、あのさ…ミカサ…」

ミカサ「? なに?」

ユミル「その、ほら、あの…」

ミカサ「いつものユミルらしくない。言いたい事があるならハッキリ言って」

ユミル「あ、あの…前にあんたが作ってた箱のことなんだけど…」

ミカサ「それが?」

ユミル「あれ、失くしたの…実はあたしなんだ……」

ミカサ「?(何か行き違いがあるのは判る。けど、どうすればいいの?)」

791: 2013/10/06(日) 03:59:47 ID:lX/vLg/E

ユミル「本当にすまない! 悪いことしたって思ってんだ」

ミカサ「気にしないで」

ユミル「ゆ、許してくれるのか?」

ミカサ「許すも許さないもない。私達は仲間で友達。ので、本当に気にしないでいい」

ユミル「そ、そっか」

ミカサ「? ユミルがそんなに気に病んでいたとは知らなかった。気付かなくてごめんなさい」

ユミル「えっ? い、いいよ、そんな…謝ることなんてないよ」

ユミル「ほ、ほら、あたしってこれでも結構細かいトコ気にしちゃうんで」

ユミル「いい加減そういうトコ直したいなあ…って、そうじゃなくて」

ミカサ「?」

792: 2013/10/06(日) 04:01:35 ID:lX/vLg/E

ユミル「あ、あのさっ」

ユミル「よけりゃ…これ、貰って欲しいんだ…」

ミカサ「? これ? いたずら?」

ユミル「違ぇよ! い、いや、ま、そういう名前だけどさ」

ユミル「まあ見てなって。ほら、これをここに置くだろ? …すると、ほらな?」

ミカサ「か、可愛い…っ!」

ユミル「だろ。クリスタも欲しがってさぁ、結局あたしの分と3個も買っちまったよ」ニコニコ

ユミル「他にも色々あったけど、ミカサならやっぱコレかな?って」

ミカサ「あの時のエレンのよう。勿論エレンの方が圧倒的に可愛いけれど、みけねこも可愛い」

793: 2013/10/06(日) 04:02:43 ID:lX/vLg/E

ミカサ「これ、貰っていいの?」

ユミル「ああ。勿論だ。気に入ってくれたみたいでホッとしたわ」

ミカサ「ありがとう!」ヒシッ

ユミル「お、おう/// (何赤くなってんだあたし)」

エレン「あれ? ミカサが珍しい事やってると思ったら、相手はユミルか」

ユミル「んふ。愛しのミカサが自分以外の奴にひっついてんの見て嫉妬ですかあ?エレン君」ニヤニヤ

ミカサ(エレンがヤキモチを? ということは…///)ボー

エレン「はあ? どうなってんだ、お前ら?」

ユミル「まあまあ。ちゃんと返してやるよ。ほれ、受け取りな」ニヤニヤニヤ

794: 2013/10/06(日) 04:03:58 ID:lX/vLg/E

ミカサ「(ハッ!) エレン!!」キラキラ

エレン「お、おう!」ドキッ

ミカサ「見て! ユミルから貰ったの」

エレン「何だ? どれどれ…」



エレン「みかん箱…」

貯金箱「にゃぁ~ん♪」

795: 2013/10/06(日) 04:16:44 ID:lX/vLg/E


   ようやく終わりました。無駄に長くてすいませんでした。

   でも800手前で完成したよ! 行数変更して切り上げたけどw

   ホントは1000超えすると判ったんでエピソードを半分削ったんだorz


 
 ここまでお付き合い下さって有難うございました。

 支援いただいた方には本当に感謝しています。



   少しでも楽しんで戴けた事を願いつつ…

      さ、もっと面白いスレに行こうぜ☆

引用: エレン「みかん箱…」