19: 2014/06/18(水) 21:30:58.27 ID:uFrkF4c+0
艦娘(本当に子供だった頃、新しい自転車を買ってもらった翌日)

艦娘(早くも自転車を壊した。急な坂道をブレーキ無しで駆け下りて、速度を出しすぎて転倒したからだ)

艦娘(その頃から私はスピードの魔翌力に執り付かれていたのだろう)

艦娘(早い事って最高だ。だから私は早いことに拘っていた)

艦娘(そんな事もあったのだろうか。なんだって早かった。足も早いし、勉強だって早い)

艦娘(そう、その勉強の早さのお陰か、飛び級に飛び級を重ねた)

艦娘(だから同年代の友達なんていなかったし、ずっと年上のクラスメイト達とも馴染めなかった)

艦娘(でも早いことだけを考えていた私はそんな事を気にしなくて、早い事だけに拘っていた)

艦娘(そんな私の元へ、一つの苦難がやってきた)

艦娘「しゅう…しょく?」

艦娘(飛び級しすぎて10代の前半にも関わらず、大学まで卒業しかかった私に就職の波が押し寄せてきた)

艦娘(かといって、いくら天才児いえども所詮は子供。経験も無ければ体力がある筈も無い。何より、私は早い事が好きなだけ)

艦娘(だから早いことに拘りたい私は、エンジン開発なんかしてみたい、と希望を出して就職活動を始めた)

艦娘(私にとっての、苦難の日々の始まりだった)

レースチームの整備員「腕前見て欲しいって言われて、持ってこられたエンジンなんだけどね」

艦娘「自信作です」

レースチームの整備員「ぶっちゃけさあ、燃費が酷いんだよねぇ」

艦娘「……」

レースチームの整備員「確かに早いよ。最高速度もいい。加速力だって確かにすごい」

レースチームの整備員「だけどさ、これ、うちのレースチームで使おうにもさ、燃料タンクを3倍にしないといけないのよね」

レースチームの整備員「今さ、燃料の輸入もだいぶ軍優先になってきてるからさ、燃料の規定とかも決まってるのね。うん」

艦娘「じゃ、じゃあ…」

レースチームの整備員「うん。そういうことだから。もう少し勉強しなよ。うん」
Model Graphix ARCHIVES 艦隊これくしょん 「艦これ」2
20: 2014/06/18(水) 21:32:38.09 ID:uFrkF4c+0
艦娘(見事に落とされたのは悔しくて、新しいエンジンを造りながら、別の企業の門戸を叩いた)

艦娘「どうでしょうか」

エンジン開発者「このエンジンは出来損ないだ。使えないよ」

艦娘「ええっ! まだ見ただけですよ!?」

エンジン開発者「なにって、君……。どう見てもパワー重視にしか見えない造り方だよ。その分燃料を使うだろう?」

艦娘「で、でもパワーが必要な車だって……」

エンジン開発者「ああ、確かにあるとも。だけどそれは限られた用途だ。これはその規格にあっていない」

エンジン開発者「なによりこれだけパワーがあれば、それを制御するまでに人はどれだけの練習を要すると思うんだい?」

艦娘「………」

艦娘(話にならなかった。その日は泣きながら帰って、もう一度次のエンジンを造った)

艦娘(ならばその限られた用途で生きる他は無かった。そしてもう一つ、軍に燃料が優先されるというのならば)

艦娘(その制限が無い軍用車両向けに走ることにしたのだ)

陸軍の開発者「新型のジープやトラック向けのエンジン、ですか」

艦娘「はい。これだけのパワーがあれば、どんな不整地でも走りぬく事が出来ます」

陸軍の開発者「問題はこれが使えるかどうか、という事だよ」

艦娘「…何故です?」

陸軍の開発者「我が国の国土は車が入っていけないような場所ならばヘリを使う。時には人力も使う」

陸軍の開発者「それに…トラックやジープは新型を納入したばかりだ。次の更新は未定なのだよ」

艦娘「……」

陸軍の開発者「データを見せてもらったが…現行の新型よりも燃費も良くない。シーレーンがズタズタにされている以上、燃料も難しい」

艦娘(敵は海から来ている。それで燃料が無いという大事な事を、私は失念していた)

陸軍の開発者「だが腕前はいいようだ。どうだろう、整備兵として働かないか?」

艦娘(疲れ果てていた。もう、疲れ果てていたのだ)

艦娘(私はそれに頷いて、陸軍の整備兵として働き始めた)

21: 2014/06/18(水) 21:34:28.72 ID:uFrkF4c+0
艦娘(今も時々思い出すが、その頃の私はエンジン開発が出来ない悔しいという思いと、規格にあわさせられて自由に出来ない辛いという思いに挟まれた)

艦娘(悔しい、辛い、という思いが渦巻いていた頃、ふと近くを通り過ぎる子供を見た)

艦娘(友達もいる、楽しそうな同年代の女の子。好きな事をして、楽しい事をして)

艦娘(それがとても羨ましかった。自分は友達も行き先も無くて、やりたいこともできないのに)

艦娘(そんなある日の出来事だった)

整備兵A「なに? うちの輸送船が海軍の鎮守府に?」

整備兵B「物資輸送とか、航空隊の整備要員を乗せたいんだと」

整備兵A「けっ! ちゃんと輸送されてるかどうかも心配だぜ。こっちには全然資源がこねぇんだから」

整備兵B「ああ。だから送るのはアイツだ。何度も攻撃受けて、殆ど役にも立たないあいつだよ」

整備兵A「ああ、あきつ丸か」

艦娘「……」

整備兵B「未だに倉庫の奥で膝でも抱えてるんだろ」

艦娘(整備兵として長く勤務していたが、そのあきつ丸なる存在を見た事が無かった)

艦娘(そして私は、倉庫の奥で膝を抱える一人の少女を見つけた)

あきつ丸「どなたでしょうか」

艦娘「整備兵よ」

あきつ丸「私に何か用ですか」

艦娘(初めて見た彼女は、想像を絶するほどボロボロだった)

艦娘(知識として、艦娘という存在を知っていたが、見るのは初めてだった。厳密には違う系統だが)

艦娘「あなたが海軍の鎮守府に貸し出されるらしいわ」

あきつ丸「そうでありますか。ここではお役御免という事でありますか」

艦娘「……酷いわね。このまま貸し出しても、向こうで働けないわよ」

あきつ丸「仕方ないであります。私は役立たずであります」

艦娘「役立たずって」

あきつ丸「燃料喰いで航空機も乗せられず、ついでに装甲も薄いであります」

あきつ丸「限界まで荷物を積んで輸送船としての任を果たそうにも、戦う術もあまり無いであります」

22: 2014/06/18(水) 21:36:38.84 ID:uFrkF4c+0
艦娘(淡々と語る彼女に、どこか虚しさを感じた)

艦娘(艦娘として生まれても、役に立てなければ意味が無い。彼女はそう思っていた)

艦娘「………陸軍がどう言ったかは知らないけれど、海軍ではどういわれるかまだ解らないでしょ」

艦娘(だから私はこう答えた。彼女は無表情のままそう言葉を綴る彼女を内緒で工廠まで引っ張る事にした)

あきつ丸「なにをするでありますか」

艦娘「海軍に送り出すにしても、そのまんまじゃ大恥かくだけよ。満足に性能も出せないでしょう」

あきつ丸「しかし……」

艦娘「あっちで役に立つか立たないかは、あっちが決めることよ。ここで決まってることじゃない」

艦娘(命令違反を承知で、私はあきつ丸を勝手に修理し、あまつさえ勝手に改造まで行った)

艦娘(少なくない鋼材が使われ、ついでにボーキサイトと弾薬までちょろまかして)

艦娘(もともと数日しか期限の無い、しかも他人の目を盗んでの突貫作業)

艦娘(エンジン開発とは程遠いそれが何故か楽しくなっていた。そう、何かを作る事そのものが楽しかったのだ、と私は気付いたのだ)

艦娘(エンジン開発が一番わかりやすかっただけなのかも知れない)

艦娘(調子に乗った私は装備の開発まで行い、彼女に載せた。役に立つか立たないかは向こうが決める、とあきつ丸もこの頃には理解したようだった)

艦娘(受け取りに来た海軍の関係者は何度もお礼を行ってあきつ丸と共に行った。そして、当然のように私の行為はバレた)

艦娘(貴重な資源を無断借用した、しかも海軍に送り出す船を陸軍の資源で治しちゃったものだから大変だ)

艦娘(何日も及ぶ尋問、殴る蹴るの暴行も当たり前の数日が過ぎた後、軍法会議にかけられ、刑務所送りになった)

艦娘(幼い女の子が刑務所送りになるなんて奇妙かも知れないが、実際そうだったのだ。多くの大人に混じって、牢屋に入れられた)

艦娘(たった一度の衝動の結末が、牢屋送り)

艦娘(だけど、あきつ丸の改造が楽しかった、という事だけは覚えていた)

艦娘(こんな私の元に、転機が降って来たのはわずか数日後)

23: 2014/06/18(水) 21:38:30.01 ID:uFrkF4c+0
収監から数日後

看守「あー。お前に面会が来てるぞー」

海軍の開発者「どうも」

海軍の開発者「あきつ丸を改造して、ついでに装備も開発したとか! 陸軍の整備兵が? こんな子供が?」

海軍の関係者「うちで働かないかね?」

艦娘(同じ事の二の舞はゴメンだ、と私はその申し出を断った)

艦娘(ところが、彼は再びやってきた)

海軍の開発者「エンジン開発がしたいそうじゃないか? 艦娘の為の…タービンの開発者を探している」

海軍の開発者「とにかく早いものが欲しい」

艦娘「……!」

艦娘(あまりにも魅力的すぎる言葉だった)

艦娘「でも、私は…エンジンが作りたい…」

海軍の関係者「うむ。だが、君はまだ若い。勉強するという意味でも、タービンを作ってみてくれないか?」

海軍の開発者「君の家にあった、昔作ったエンジンを見せてもらった。あれを、船の為に活かしてくれないか?」

艦娘「………私は…」

艦娘(一筋の、光のように見えた)

艦娘「…お願いします…」

海軍の開発者「そうと決まれば早速出所だ!」

艦娘(そしてそのまま海軍の工廠へと連れられた。牢屋にいなくて済む、という思いと、早いものが作れる、という思いでいっぱいだった)

艦娘(何故新型タービンを欲していたのか。その理由は、到着してすぐわかった)

24: 2014/06/18(水) 21:40:29.22 ID:uFrkF4c+0
海軍工廠

先代島風「おっそーい! こんなタービンじゃおっそーいよ!」

艦娘「あの子は?」

海軍の開発者「ああ。新型タービンを載せるための、駆逐艦娘だよ。最新型のな」

艦娘「すると、私が作るのは…」

海軍の開発者「彼女の為のタービンだ。彼女が納得できるレベルを、な」

先代島風「なになに? なにこの小さいの」

海軍の開発者「君の新型タービンの開発担当だ」

先代島風「ふーん。かけっこ好き?」

艦娘「早いのは好きよ」

先代島風「そうなんだー。よろしくねー」

艦娘(そして私は彼女の為に新型タービン開発に全力を注ぐことになった)

艦娘(ある意味、私にとって深海棲艦と戦う以上の戦いだった)

先代島風「ちょっとこれどういうことー!」

艦娘「むしろこっちが聞きたいけど。どうしたの?」

先代島風「全然速くならない! 最高速度は確かに早いほうだけど、加速するのがおっそーい!」

艦娘「はあ? ただ単にパワーが溜まるまで時間がかかるでしょ、そういうものよ」

先代島風「深海棲艦は待ってくれないもーん! やり直しー!」がっしゃーん

艦娘「ああっ! じ、自信作になんてことを! なにをするきさまー!」

先代島風「へっへーんだ!」

艦娘「新型できたわよ!」

先代島風「ちょっ! これっ、重すぎ…風になれない!」

艦娘「加速性上げる為にちょっとパワーを求めたら大型になったのよねー。でも駆逐艦につめるサイズで…」

先代島風「こんなんじゃダメー! もっと軽いの!」がっしゃーん

艦娘「な、なにをするきさまー!」

25: 2014/06/18(水) 21:42:23.18 ID:uFrkF4c+0
艦娘(ほぼ毎日のように彼女と喧嘩をしていた。理由は全部タービンの事で、だ)

艦娘(でも、どこか嬉しかった。私の作るものが、必要とされてる。そして、全力でぶつかりあうことが)

艦娘(とても嬉しかった。私も彼女も、速さを求めていたから。その速さを求めるという点では、一緒だった)

先代島風「…ねぇ」

艦娘「なに?」

艦娘(そんなある日、彼女が神妙な顔で私を呼んだ)

先代島風「来週、大きな作戦があるの。それまでに、新しいのを造って」

艦娘「最高に早いのを?」

先代島風「うん」

艦娘(時間は残りわずか。そこで私は全力投入した)

艦娘(彼女に友情なようなものを感じていたのも、理由の一つだろう)

艦娘(徹夜が続いた。不眠不休の開発と、テストの繰り返し)

艦娘(そしてついに当日の朝になって、それは完成した)

先代島風「テストしてる暇なんてないよー! そのままいく!」

当時の提督「旗艦の無事を祈る!」

艦娘(見送った後は、祈るしか出来ない。私は工廠へと戻った)

艦娘(その時になって、私は信じられないものを見つけてしまった。冷却装置のパーツが、一個だけ残っていたのだ)

艦娘(取り付けたはずのそのパーツ。だが、早朝辺りに調整した時に外して、そのままにしてしまった)

艦娘(痛恨のミスだった。私はパーツを抱えて慌てて港に戻った。しかし、既に出航した後)

艦娘「提督!」

当時の提督「なにかな?」

艦娘(私はすぐにその事を白状した。包み隠さず、白状した)

艦娘(提督は全てを聞き終えた後、「わかった」とだけ答えて私に自室に戻るように言った)

艦娘(最後の最後で、私は台無しにした。針のむしろに座った気分だった)

26: 2014/06/18(水) 21:44:29.49 ID:uFrkF4c+0
艦娘(何時間もの時間が経った後、今度は入渠所が騒がしくなった。艦隊の帰投だった)

艦娘(そして、怒り心頭の駆逐艦娘が何人もやってきて、私を部屋から引きずり出した)

艦娘(最悪の事態が起こった事を悟った。冷却装置のパーツを忘れたタービンは、彼女にとって満足すぎる最高速度を出したまでは良かった)

艦娘(だが、最終的には耐え切れずに爆発してしまい、彼女は大破した。二度と艦娘としては復帰できないほど、酷いダメージだった)

先代島風「おっ! 来た来た!」

艦娘(彼女の前で、私は必氏に頭を下げた。パーツを忘れた事を、何度も何度も謝った)

先代島風「あー、そうだったのかー。だから熱かったんだ。だけど……」

先代島風「すごい速かったよ? あのレ級の動きに先回りできたんだ! 今まで、誰も追いつけなかったのにねー」

先代島風「すごく早くて、もう満足したよ。充分過ぎる程!」

艦娘(彼女は…笑っていた。私の新型タービンの凄さを、強く語り、自らの戦果を誇らしく思っていた)

艦娘「でも…でも、あんた…」

先代島風「ん? なに泣いてるの?」

艦娘「だって…だって…あたしが、あんなミスしなければ……」

先代島風「早いことに、命賭けてる」

先代島風「そしてそれに答えられた。それだけだよ。それに、今まで誰も追いつけなかったレ級を追い越せた。もう、満足だよ」

先代島風「これで作戦が失敗してたら怒ってたと思う。でも、作戦は成功したし、なによりも性能はすごかった! 怒ることなんてないよ」

艦娘「気にして…ないの? もう…艦娘には、なれないのに…?」

先代島風「充分過ぎる程、早いからね」

艦娘(涙がこぼれた。彼女は、早いことに命を賭けた、という意味を理解した)

艦娘(彼女は、本当に早いのが好きだったのだ。私と同じように)

27: 2014/06/18(水) 21:46:07.66 ID:uFrkF4c+0
艦娘(だから、私は…)

艦娘「いいわ」

艦娘(涙を拭って。少しでも彼女に報いようと。少しでも彼女に近づくことを、決めた)

艦娘「あたしは、それより先に行く」

先代島風「どゆこと?」

艦娘「もっと早い、速度を出してみせるわ―――あなたと同じ、艦娘として!」

艦娘(彼女は二度と艦娘として戻れなくなってしまった責任を取る為でもあった)

艦娘(彼女と同じフィールドで、それ以上に早い世界にたどり着くこと。それが私の艦娘になった理由)

艦娘(そして彼女以上の戦果を、私は挙げる。その為に、闘い続ける。艦娘として!)


現在 鎮守府

ディーラー「オーライ、オーライ…この余裕たっぷりのガレージなら入るね。まあ、これが入庫第1号なのかな?」

雷「わ、見てみて! すごい大きなバイク!」

響「新しくガレージが出来て、みんなの趣味のものを置いてもいいと通達が出たけど…いきなりこれはすごいな」

電「はわわわ、まるでおばけみたいなのです」

暁「きっと長門さんとか陸奥さんみたいな大人のレディーが乗るのよ!」

長門「いや? 私はこういうのには疎いが…確かに大きいな。ビッグ7に名を連ねそうだ」

陸奥「私のでも無いわ。大和にはそんな趣味なさそうだし…武蔵か、それとも伊勢とか?」

武蔵「私は違うぞ。大型二輪を持ってないしな。空母組みの誰かじゃないか?」

加賀「朝から騒がしいですね。何の騒ぎですか?」

島風「あれはすごい早いバイクなんだよー! 乗りたーい!」

天津風「ダメよ、勝手に触ろうとしちゃ! 確かに早そうだけど…」

加賀「バイクですか。誰のですか? 戦艦娘か、重巡の誰か?」

摩耶「そこでなんで俺を見るんだよ。俺じゃないって」

吹雪「え? 摩耶さんでもないって…じゃあ、こんな大型バイク、誰の?」

28: 2014/06/18(水) 21:46:52.98 ID:uFrkF4c+0
叢雲「私のよ」

武蔵「ふぁっ!?」

吹雪「へっ!?」

摩耶「え?」

叢雲「なに、おかしいかしら? ああ、どうもね」

ディーラー「一台確かに届けたよー」

叢雲「燃料は入ってるのよね?」

ディーラー「まあねー。そんなにたくさんは無いけど、ひとっ走りするにはいいかなー」

叢雲「ありがとう。カスタムパーツは別で届けてくれればいいわ」

ディーラー「…試運転するの?」

叢雲「まあね」

島風「いいなーいいなーわたしも乗りたいー」グイグイ

天津風「ちょっと島風やめなさい! 叢雲さん困ってるでしょ!」

雪風「そうですよ二人乗りは危ないですからー!」

叢雲「別にいいわよ」

天津風「へ?」

島風「やった!」

叢雲「でも、その格好じゃ危ないから長袖長ズボンに替えてきなさい。鳳翔さんにでも頼めば出してくれるでしょ」

島風「えー。このままの方が風を感じるもん」

叢雲「ダメよ。二人乗りは結構大変なの。さっさと行ってきなさい」

島風「はーい…」とたた

ディーラー「いつの時代の、早いのが一番は変わらないのかな?」

叢雲「……そうね。少なくとも、アンタの魂は、あの子にもあると思うわ」

ディーラー「ふふっ。確かに。でも、肝心の君は速度の方は…」

叢雲「ほっときなさいよ。そのうちこれを幾らでも改造してやるわ」

ディーラー「まあねー。パーツの調達は任せて」

29: 2014/06/18(水) 21:47:27.79 ID:uFrkF4c+0
摩耶「それにしてもすげーよなー。こんな大型バイク一度でいいから乗ってみたいってーか」

不知火「朝から騒がしい理由はこれですか。この鉄の塊は」

熊野「不知火さんは粗野ですわねぇ。こんな素敵なバイクそうそうお目にかかれませんわ」

不知火「そういうものでしょうか…あ」グラッ

ガターン!

摩耶「ギャー! 不知火が早くも下敷きにー!」

不知火「し、不知火に…なにか…落ち度でも…」

熊野「あわわわわ! は、早く助けませんと!」

叢雲「ちょっとアンタ達! アタシの新車になんて事してくれてんのよ! 酸素魚雷ぶち込むわよ!」

ギャーギャーワーワー

叢雲(まったく…でも)

叢雲(速度の世界は、いいものね)

島風「お待たせー!」

叢雲(少なくとも、速さの世界の中で命を賭けられるのは――――艦娘でも、あるのね)

30: 2014/06/18(水) 21:48:19.20 ID:uFrkF4c+0
第2話投下でごんす
夕張かと思ったと思うけど叢雲ちゃんは私の嫁です

さて、次は誰で書くか…

引用: 艦娘「艦娘になった理由」