65: 2014/07/06(日) 21:48:52.54 ID:nuIy2SP40
艦娘(海に囲まれた島国であるこの国の人にとって、海は身近で糧をもたらしてくれる場所)
艦娘(漁港のある町で、漁師の家に生まれた私は毎日のように海に行っていた)
艦娘(裕福とは言えない家庭の、大家族の長女として生まれた為か、少しでも家計の足しと、弟妹達の遊び場探し、という事で)
艦娘(だけど、今だから告白しよう。その頃の私は、海が大嫌いだった)
艦娘(具体的に言うと、裕福ではない家の、長女であるという事に不満を持っていた。いつも面倒見をさせられて、手伝いばかりさせられて)
艦娘(決して表に出ないその不満は、いつもいつも溜まっていた。表に出せなかった。だけど本当は思っていたのだ、外に出たいと)
艦娘(私だけを見て欲しいという願いは、叶えられるものじゃないのだから)
艦娘(成長を続けていった、ある日の事だった)
女子生徒A「あー、そろそろ進路決めないと」
女子生徒B「あたしは、□×高校に行こうと思うんだけど」
女子生徒A「私は○△か◎◎高校かな。艦娘はどうするの?」
艦娘「そっか、高校かぁ……行くとしたら、××高かな…」
女子生徒B「えー!? だって、あそこのド底辺じゃん。学費殆どかからないけど」
女子生徒A「艦娘は成績いいじゃん。推薦で◎◎は行けるんじゃない? あそこ、奨学金だけじゃなくて学校からも補助出るし」
女子生徒B「うんうん、艦娘の成績なら行ける。ちょっとこっから遠いけど…」
女子生徒A「でも電車で一時間ぐらいだし、大学への進学率も高いし」
艦娘「うん…あそこ、制服も綺麗だものね」
艦娘(本音を言えば、◎◎高校に行きたいと思うのだ。学費という問題さえ乗り越えられれば)
職員室
艦娘「先生、あの進路の事で」
先生「ああ、艦娘はまだ進路出してないな。なんだ?」
艦娘「あの、私の成績で◎◎高校は進めるでしょうか?」
先生「充分過ぎる程だ。むしろ推薦で行けるだろう。うちの学校にも推薦枠がある」
先生「ついでにあそこは奨学金制度も充実している。ほら、これを持ち帰るといい」
艦娘「ありがとうございます。両親に確認してみます」
艦娘(漁港のある町で、漁師の家に生まれた私は毎日のように海に行っていた)
艦娘(裕福とは言えない家庭の、大家族の長女として生まれた為か、少しでも家計の足しと、弟妹達の遊び場探し、という事で)
艦娘(だけど、今だから告白しよう。その頃の私は、海が大嫌いだった)
艦娘(具体的に言うと、裕福ではない家の、長女であるという事に不満を持っていた。いつも面倒見をさせられて、手伝いばかりさせられて)
艦娘(決して表に出ないその不満は、いつもいつも溜まっていた。表に出せなかった。だけど本当は思っていたのだ、外に出たいと)
艦娘(私だけを見て欲しいという願いは、叶えられるものじゃないのだから)
艦娘(成長を続けていった、ある日の事だった)
女子生徒A「あー、そろそろ進路決めないと」
女子生徒B「あたしは、□×高校に行こうと思うんだけど」
女子生徒A「私は○△か◎◎高校かな。艦娘はどうするの?」
艦娘「そっか、高校かぁ……行くとしたら、××高かな…」
女子生徒B「えー!? だって、あそこのド底辺じゃん。学費殆どかからないけど」
女子生徒A「艦娘は成績いいじゃん。推薦で◎◎は行けるんじゃない? あそこ、奨学金だけじゃなくて学校からも補助出るし」
女子生徒B「うんうん、艦娘の成績なら行ける。ちょっとこっから遠いけど…」
女子生徒A「でも電車で一時間ぐらいだし、大学への進学率も高いし」
艦娘「うん…あそこ、制服も綺麗だものね」
艦娘(本音を言えば、◎◎高校に行きたいと思うのだ。学費という問題さえ乗り越えられれば)
職員室
艦娘「先生、あの進路の事で」
先生「ああ、艦娘はまだ進路出してないな。なんだ?」
艦娘「あの、私の成績で◎◎高校は進めるでしょうか?」
先生「充分過ぎる程だ。むしろ推薦で行けるだろう。うちの学校にも推薦枠がある」
先生「ついでにあそこは奨学金制度も充実している。ほら、これを持ち帰るといい」
艦娘「ありがとうございます。両親に確認してみます」
66: 2014/07/06(日) 21:51:02.31 ID:nuIy2SP40
帰宅
艦娘「…ただいま」
艦娘「…お父さんとお母さんが、帰ってきてる?」
父「最近不漁が増えてな」
母「隣町とか、別の組合の人も皆そう言ってる」
父「なんだろうなぁ、”しんかいせんかん”のせいなのかなあ?」
母「どっか対策もしてくれればいいんだけどねぇ。結局割りを食うのは私達なんだから」
父「ああ…。まったく、いつもいつも酷い目にあってばっかじゃ」
母「私はパートに出るわね」
父「ああ。まあ、家の事は艦娘も大きくなってるから大丈夫だろう。俺も漁に出る時間長くなるだろうが」
母「そうそう、艦娘もいるから大丈夫よ」
艦娘「……」
父「ああ、お帰り。どうした?」
母「あら、帰ってたの?」
艦娘「…ただいま」
パラリ
父「なんか落ちたぞ。ん、進路決定か…」
母「……は? ◎◎高校?」
父「いかんいかん、あそこは遠い上に学費が高いだろう!」
艦娘「しょ、奨学金が出るから。学費に関しては、多分大丈夫だろうって。私の成績なら」
母「中学校の成績が良くても、高校がどうなるかわからないでしょ。途中で成績悪くなって奨学金取り消しになったらどうするの」
艦娘「そうしないように勉強頑張って――――」
父「家の事はどうするんだ。最近、魚が獲れなくてな。母さん、働きに行こうと思ってるんだ。その間に他の子の面倒を見てもらいたい」
母「おまけに通学時間がかかるでしょ。それで勉強するって言っても…本当にその間、下の子たちどうするの?」
艦娘「……」
父「まあ、勉強は後でも出来るし、学が無くたってなんとかなるときはなんとかなある。他の子が大きくなるまで、少し勉強はお休みして―――」
母「正直な話、今高校に通わせるほどの余裕がうちには―――」
艦娘(今まで育ててくれた、そして仕事で支えてくれて、尊敬していた父と母)
艦娘(だけど、私の中でたまりきっていた不満は、今まで溜められ続けていた不満が、今、爆発した)
艦娘「…ただいま」
艦娘「…お父さんとお母さんが、帰ってきてる?」
父「最近不漁が増えてな」
母「隣町とか、別の組合の人も皆そう言ってる」
父「なんだろうなぁ、”しんかいせんかん”のせいなのかなあ?」
母「どっか対策もしてくれればいいんだけどねぇ。結局割りを食うのは私達なんだから」
父「ああ…。まったく、いつもいつも酷い目にあってばっかじゃ」
母「私はパートに出るわね」
父「ああ。まあ、家の事は艦娘も大きくなってるから大丈夫だろう。俺も漁に出る時間長くなるだろうが」
母「そうそう、艦娘もいるから大丈夫よ」
艦娘「……」
父「ああ、お帰り。どうした?」
母「あら、帰ってたの?」
艦娘「…ただいま」
パラリ
父「なんか落ちたぞ。ん、進路決定か…」
母「……は? ◎◎高校?」
父「いかんいかん、あそこは遠い上に学費が高いだろう!」
艦娘「しょ、奨学金が出るから。学費に関しては、多分大丈夫だろうって。私の成績なら」
母「中学校の成績が良くても、高校がどうなるかわからないでしょ。途中で成績悪くなって奨学金取り消しになったらどうするの」
艦娘「そうしないように勉強頑張って――――」
父「家の事はどうするんだ。最近、魚が獲れなくてな。母さん、働きに行こうと思ってるんだ。その間に他の子の面倒を見てもらいたい」
母「おまけに通学時間がかかるでしょ。それで勉強するって言っても…本当にその間、下の子たちどうするの?」
艦娘「……」
父「まあ、勉強は後でも出来るし、学が無くたってなんとかなるときはなんとかなある。他の子が大きくなるまで、少し勉強はお休みして―――」
母「正直な話、今高校に通わせるほどの余裕がうちには―――」
艦娘(今まで育ててくれた、そして仕事で支えてくれて、尊敬していた父と母)
艦娘(だけど、私の中でたまりきっていた不満は、今まで溜められ続けていた不満が、今、爆発した)
67: 2014/07/06(日) 21:53:22.13 ID:nuIy2SP40
艦娘「お願い!」土下座
艦娘「私は、◎◎高校に行きたい! 頑張るから、どうあっても頑張るし、絶対に成績落としたりしないで、家の事も頑張って何とかするから!」
父「だから遠い学校行っちまったら、家の事なんてできねぇだろ。いいか、まだあんなに」
母「受験どうするの! 勉強しないといけなかったら、他の事なにも出来ないでしょ!」
艦娘「頑張る! 絶対、頑張るから! 今日から始めてでも頑張るから!」
艦娘(それは私の一世一代の訴えだった)
艦娘(少しでも、私の意志で決めた事をやりたい。そういう思いで叫んだ)
艦娘(でも父も母も、首を縦に振ろうとしなかった。だからあ私は訴え続けた)
艦娘(そして両親はしぶしぶ、条件を出した。受験の費用も自分で出す事。進学したら交通費も自分持ち、そして少しでも家にお金を入れる事、家事を疎かにしないこと)
艦娘(その頃の私の生活を聞いたら、他の皆は「無理しすぎだ」と窘めるだろう。オリョクルも真っ青なフル稼働だった)
艦娘(文字通り、嵐のような日々が始まった。受験の費用と、後の交通費を少しでも稼ぐ為に、早朝に新聞配達のアルバイトを始めた)
艦娘(早朝に終わる仕事だから家に戻ってすぐに弟と妹の世話と家事をこなし、学校に行って、夕方に戻ってきたらやはり家事と幼い子の面倒を見て)
艦娘(そんな間にいつ勉強をするかというと、夜だ。夜遅くまで勉強して、また早朝に起きる。無茶な生活リズムだった)
艦娘(全てを疎かにしない。そう言った私は、全てをこなした。必氏にこなし続けた。……どれだけ疲れてても、どれだけ無茶でも)
女子生徒A「艦娘、大丈夫?」
艦娘「え?」
女子生徒B「うん、体育休んだほうがいいよ」
艦娘「大丈夫、休んだら推薦の為の単位が…」
女子生徒A「……無理、しないでね」
女子生徒B[せめて家事ぐらい誰か手伝えばいいのに」
艦娘「ああ、そうか。次、体育か…着替えなきゃ……」ノロノロ
女子生徒A「ポカリ飲みなよ。少しは元気出るから」
艦娘「あ、ありがとう…」
女子生徒B「…ねぇここんところさあ、艦娘の隈が無い日が無いんだけど」
女子生徒A「大丈夫かな、本当に…」
艦娘「私は、◎◎高校に行きたい! 頑張るから、どうあっても頑張るし、絶対に成績落としたりしないで、家の事も頑張って何とかするから!」
父「だから遠い学校行っちまったら、家の事なんてできねぇだろ。いいか、まだあんなに」
母「受験どうするの! 勉強しないといけなかったら、他の事なにも出来ないでしょ!」
艦娘「頑張る! 絶対、頑張るから! 今日から始めてでも頑張るから!」
艦娘(それは私の一世一代の訴えだった)
艦娘(少しでも、私の意志で決めた事をやりたい。そういう思いで叫んだ)
艦娘(でも父も母も、首を縦に振ろうとしなかった。だからあ私は訴え続けた)
艦娘(そして両親はしぶしぶ、条件を出した。受験の費用も自分で出す事。進学したら交通費も自分持ち、そして少しでも家にお金を入れる事、家事を疎かにしないこと)
艦娘(その頃の私の生活を聞いたら、他の皆は「無理しすぎだ」と窘めるだろう。オリョクルも真っ青なフル稼働だった)
艦娘(文字通り、嵐のような日々が始まった。受験の費用と、後の交通費を少しでも稼ぐ為に、早朝に新聞配達のアルバイトを始めた)
艦娘(早朝に終わる仕事だから家に戻ってすぐに弟と妹の世話と家事をこなし、学校に行って、夕方に戻ってきたらやはり家事と幼い子の面倒を見て)
艦娘(そんな間にいつ勉強をするかというと、夜だ。夜遅くまで勉強して、また早朝に起きる。無茶な生活リズムだった)
艦娘(全てを疎かにしない。そう言った私は、全てをこなした。必氏にこなし続けた。……どれだけ疲れてても、どれだけ無茶でも)
女子生徒A「艦娘、大丈夫?」
艦娘「え?」
女子生徒B「うん、体育休んだほうがいいよ」
艦娘「大丈夫、休んだら推薦の為の単位が…」
女子生徒A「……無理、しないでね」
女子生徒B[せめて家事ぐらい誰か手伝えばいいのに」
艦娘「ああ、そうか。次、体育か…着替えなきゃ……」ノロノロ
女子生徒A「ポカリ飲みなよ。少しは元気出るから」
艦娘「あ、ありがとう…」
女子生徒B「…ねぇここんところさあ、艦娘の隈が無い日が無いんだけど」
女子生徒A「大丈夫かな、本当に…」
68: 2014/07/06(日) 21:55:21.58 ID:nuIy2SP40
艦娘(そしてその体育の日に、悲劇は起こった)
体育教師「えー、今日の体育は校外に出てマラソンでス★」
生徒's「「「「「えぇー!」」」」」
体育教師「文句を言ってはいけまセン★」
体育教師「皆さん、駆け足★」
ゾロゾロ
艦娘「ハァ…ハァ…」
体育教師「艦娘さん、遅れてマス。もっと早く走りなサイ★」
艦娘「は、はい……」
艦娘(涼しくなって来た秋のはずなのに、いつも以上に汗が酷かった)
艦娘(ガクガクになっていく、力が抜けていく足はやがて動きが緩慢になり、意識も朦朧となってきていた)
艦娘「……」バタン
艦娘(遂に過労で、私はその場に倒れて動けなくなってしまった)
???「…!? 大丈夫ですか! 日射病かしら、すぐに木陰に運びますからね!」
???「酷い熱……もし、もし!? すぐに救急車を」
艦娘(救急車、という単語を聞いて私はすぐに意識が戻った。お金を使っちゃいけない、入院するわけにもいかない)
艦娘(だから大丈夫です、少し休めば良くなりますという言葉を紡ごうとして、私は目を開いた)
???「! 意識が戻って…わかりますか?」
艦娘「だいじょ―――――ウボェォッ!?」ドボッ
艦娘(目を疑う出来事だった。吐瀉物の中に混じる、赤い塊)
艦娘(なんなのこれ、という思いと―――氏んじゃう、とかそういう思いが渦巻いて)
???「血が…すぐに医者に!」
艦娘(再び意識を失った私は、彼女が呼んだ救急車によって運ばれた)
艦娘(診断結果は過労と、胃に穴が開く病。ストレスで免疫が低下している上に体力が低下したせいで重症化したのだという)
艦娘(それからはもう滅茶苦茶だった)
医者「どうしてこんなになるまでこの子を放っておいたんだ!」
体育教師「えー、今日の体育は校外に出てマラソンでス★」
生徒's「「「「「えぇー!」」」」」
体育教師「文句を言ってはいけまセン★」
体育教師「皆さん、駆け足★」
ゾロゾロ
艦娘「ハァ…ハァ…」
体育教師「艦娘さん、遅れてマス。もっと早く走りなサイ★」
艦娘「は、はい……」
艦娘(涼しくなって来た秋のはずなのに、いつも以上に汗が酷かった)
艦娘(ガクガクになっていく、力が抜けていく足はやがて動きが緩慢になり、意識も朦朧となってきていた)
艦娘「……」バタン
艦娘(遂に過労で、私はその場に倒れて動けなくなってしまった)
???「…!? 大丈夫ですか! 日射病かしら、すぐに木陰に運びますからね!」
???「酷い熱……もし、もし!? すぐに救急車を」
艦娘(救急車、という単語を聞いて私はすぐに意識が戻った。お金を使っちゃいけない、入院するわけにもいかない)
艦娘(だから大丈夫です、少し休めば良くなりますという言葉を紡ごうとして、私は目を開いた)
???「! 意識が戻って…わかりますか?」
艦娘「だいじょ―――――ウボェォッ!?」ドボッ
艦娘(目を疑う出来事だった。吐瀉物の中に混じる、赤い塊)
艦娘(なんなのこれ、という思いと―――氏んじゃう、とかそういう思いが渦巻いて)
???「血が…すぐに医者に!」
艦娘(再び意識を失った私は、彼女が呼んだ救急車によって運ばれた)
艦娘(診断結果は過労と、胃に穴が開く病。ストレスで免疫が低下している上に体力が低下したせいで重症化したのだという)
艦娘(それからはもう滅茶苦茶だった)
医者「どうしてこんなになるまでこの子を放っておいたんだ!」
69: 2014/07/06(日) 21:57:27.70 ID:nuIy2SP40
艦娘(お医者さんが両親に激怒した。とても十代の子供にさせる生活じゃない、と)
艦娘(絶対安静が言い渡された。だけど私は、心の中で頭を抱えていた)
艦娘(入院の費用。遅れる授業。足りない出席日数)
艦娘(もう、全てが終わってしまった)
医者「助けてくれた人がいなければ、危ない所だったよ。ああ、いや。人じゃないかも、な」
艦娘(お医者さんは親切で、塞ぎこんでいた私に色んな話を振ってくれた)
医者「ほら、見てご覧。この新聞なんだが」
新聞『護国の盾たる艦娘 休暇中に女学生救助』
新聞『深海棲艦の脅威から国を守る艦娘が休暇中に、急病に倒れた女学生を救助した』
新聞『実に美談である』
艦娘(深海棲艦とは単語では知っていた。だが、まだこの頃は別世界の話だと思っていた)
艦娘「……」
艦娘(私は、この艦娘に手紙を書いてみた。助けてくれたお礼と、深海棲艦と戦っている事についての激励だけの、短い手紙)
艦娘(そして手紙を出した後に退院した私は、学校を休学し、家事だけに専念する日々を送った。もう次に進めないと感じたせいだろう、学びたいという意志が消えた)
艦娘(そして手紙を出した事も忘れた、ある日の事だった)
???「ごめんください」
艦娘「はい…」
鳳翔「私は、海軍鎮守府所属の艦娘、鳳翔といいます」
艦娘「…あの時、私を助けてくれた…?」
鳳翔「はい。お手紙、ありがとうございました」
艦娘「………」
鳳翔「…あまり、元気にはなられてないようですね」
艦娘「ええ……」
艦娘「行きたい学校に、行けなくて」
艦娘「貧乏で、大家族だから、弟とか妹の面倒を見ないと行けなくて。でも、進学とかしたくて…」
鳳翔「あんなになるまで、頑張っていたんですね」
艦娘「そうですね。頑張っていました。でも、もう終わっちゃいました」
艦娘「…あんなに辛かったのに、不思議なんです。いざ、終わっちゃうと…目的を果たせずに終わっちゃうと、そっちの方が辛いんです」
艦娘「おかしいのですよね。あの頃と今じゃ、あの頃の方が疲れ果ててたのに。今じゃ、酷く疲れはしないけど…何も…」
艦娘(絶対安静が言い渡された。だけど私は、心の中で頭を抱えていた)
艦娘(入院の費用。遅れる授業。足りない出席日数)
艦娘(もう、全てが終わってしまった)
医者「助けてくれた人がいなければ、危ない所だったよ。ああ、いや。人じゃないかも、な」
艦娘(お医者さんは親切で、塞ぎこんでいた私に色んな話を振ってくれた)
医者「ほら、見てご覧。この新聞なんだが」
新聞『護国の盾たる艦娘 休暇中に女学生救助』
新聞『深海棲艦の脅威から国を守る艦娘が休暇中に、急病に倒れた女学生を救助した』
新聞『実に美談である』
艦娘(深海棲艦とは単語では知っていた。だが、まだこの頃は別世界の話だと思っていた)
艦娘「……」
艦娘(私は、この艦娘に手紙を書いてみた。助けてくれたお礼と、深海棲艦と戦っている事についての激励だけの、短い手紙)
艦娘(そして手紙を出した後に退院した私は、学校を休学し、家事だけに専念する日々を送った。もう次に進めないと感じたせいだろう、学びたいという意志が消えた)
艦娘(そして手紙を出した事も忘れた、ある日の事だった)
???「ごめんください」
艦娘「はい…」
鳳翔「私は、海軍鎮守府所属の艦娘、鳳翔といいます」
艦娘「…あの時、私を助けてくれた…?」
鳳翔「はい。お手紙、ありがとうございました」
艦娘「………」
鳳翔「…あまり、元気にはなられてないようですね」
艦娘「ええ……」
艦娘「行きたい学校に、行けなくて」
艦娘「貧乏で、大家族だから、弟とか妹の面倒を見ないと行けなくて。でも、進学とかしたくて…」
鳳翔「あんなになるまで、頑張っていたんですね」
艦娘「そうですね。頑張っていました。でも、もう終わっちゃいました」
艦娘「…あんなに辛かったのに、不思議なんです。いざ、終わっちゃうと…目的を果たせずに終わっちゃうと、そっちの方が辛いんです」
艦娘「おかしいのですよね。あの頃と今じゃ、あの頃の方が疲れ果ててたのに。今じゃ、酷く疲れはしないけど…何も…」
70: 2014/07/06(日) 21:59:21.78 ID:nuIy2SP40
鳳翔「艦娘に似ていますね」
艦娘「…え?」
鳳翔「私は長く艦娘をやってるんですけど…私よりも若い子達が、色々な理由で艦娘をやめていきます。でも」
鳳翔「命をかけて戦っている。だけど、皆それぞれ艦娘になったのにも、理由があるんです。そして、その理由を、果たせないまま辞めていくとき、辛そうなんです」
艦娘「……理由」
鳳翔「なんにでも、理由はあるんです。始めるのも、終わるのも」
艦娘「…あの」
鳳翔「はい」
艦娘「鳳翔さんは、なんで艦娘に?」
鳳翔「………ごめんなさい。恥ずかしい理由なので…」
艦娘「……」
艦娘「じゃあ、その理由って」
鳳翔「はい」
艦娘「鳳翔さんの意志ですか? それとも、誰かの意志なんですか?」
鳳翔「私の意志です」
艦娘(その言葉は、凛として響いた)
艦娘(母親のような暖かさを持つその人が、凛として残したその言葉が)
艦娘(私の中で、一つの火を付けようとしていた)
艦娘(始める理由があれば、終わってしまう理由がある)
艦娘(だから私は…自分の意志でそれを決めた)
艦娘(殆ど知らない深海棲艦を倒す、という理由でなければ)
艦娘(明確に戦わなければいけない、という理由でもない)
艦娘(強いて言うならば)
鎮守府
艦娘「艦娘になりたくてここに来ました」
艦娘「理由ですか? 理由は、私は、私の意志で、誰かを助けたい。そして、家族を支えたい。それが理由です」
艦娘(私は、家族に仕送りを約束して、反対を押し切りながら艦娘になった)
艦娘「…え?」
鳳翔「私は長く艦娘をやってるんですけど…私よりも若い子達が、色々な理由で艦娘をやめていきます。でも」
鳳翔「命をかけて戦っている。だけど、皆それぞれ艦娘になったのにも、理由があるんです。そして、その理由を、果たせないまま辞めていくとき、辛そうなんです」
艦娘「……理由」
鳳翔「なんにでも、理由はあるんです。始めるのも、終わるのも」
艦娘「…あの」
鳳翔「はい」
艦娘「鳳翔さんは、なんで艦娘に?」
鳳翔「………ごめんなさい。恥ずかしい理由なので…」
艦娘「……」
艦娘「じゃあ、その理由って」
鳳翔「はい」
艦娘「鳳翔さんの意志ですか? それとも、誰かの意志なんですか?」
鳳翔「私の意志です」
艦娘(その言葉は、凛として響いた)
艦娘(母親のような暖かさを持つその人が、凛として残したその言葉が)
艦娘(私の中で、一つの火を付けようとしていた)
艦娘(始める理由があれば、終わってしまう理由がある)
艦娘(だから私は…自分の意志でそれを決めた)
艦娘(殆ど知らない深海棲艦を倒す、という理由でなければ)
艦娘(明確に戦わなければいけない、という理由でもない)
艦娘(強いて言うならば)
鎮守府
艦娘「艦娘になりたくてここに来ました」
艦娘「理由ですか? 理由は、私は、私の意志で、誰かを助けたい。そして、家族を支えたい。それが理由です」
艦娘(私は、家族に仕送りを約束して、反対を押し切りながら艦娘になった)
71: 2014/07/06(日) 22:01:58.67 ID:nuIy2SP40
鎮守府 食堂
伊58「もうオリョクルはいやでち。血を吐きそうでち」
天龍「ほう。配属されてからガキ共のお守りと遠征しかしてない俺に一言」
伊58「変わって下さい」
天龍「奇遇だな、俺もそう思う」
北上「主に燃費と回避の理由でそれ無理だから諦めろー」
川内「そうそう、ずっと夜戦させてくれない私に一言!」
天龍「『かわうち』うるさい」
川内「『せんだい』だよ!」
龍田「天龍ちゃん喧嘩はダメよー」
大鯨「そ、そうですよ。仲良くしないと…」
川内「あー、わかったわかったって」
伊58「大鯨さんはすごいでち」
伊58「誰にでも優しくて、あったかくて、包んでくれるみたいでち」
大鯨「みんなが元気にいてくれるのが、一番だから」
鳳翔「でも無茶はいけませんよ。前みたいに倒れたりしないように気をつけて、ね」
大鯨「大丈夫ですよ」
大鯨(そう、大丈夫だ。あの時は一人だったけれど)
大鯨「鳳翔さんだって、間宮さんだって、皆もいますから」
大鯨(無茶をする前に、皆助けてくれる。だから私も、皆が無茶をしそうなときに助けに行く)
大鯨(私自身の意志で)
伊58「もうオリョクルはいやでち。血を吐きそうでち」
天龍「ほう。配属されてからガキ共のお守りと遠征しかしてない俺に一言」
伊58「変わって下さい」
天龍「奇遇だな、俺もそう思う」
北上「主に燃費と回避の理由でそれ無理だから諦めろー」
川内「そうそう、ずっと夜戦させてくれない私に一言!」
天龍「『かわうち』うるさい」
川内「『せんだい』だよ!」
龍田「天龍ちゃん喧嘩はダメよー」
大鯨「そ、そうですよ。仲良くしないと…」
川内「あー、わかったわかったって」
伊58「大鯨さんはすごいでち」
伊58「誰にでも優しくて、あったかくて、包んでくれるみたいでち」
大鯨「みんなが元気にいてくれるのが、一番だから」
鳳翔「でも無茶はいけませんよ。前みたいに倒れたりしないように気をつけて、ね」
大鯨「大丈夫ですよ」
大鯨(そう、大丈夫だ。あの時は一人だったけれど)
大鯨「鳳翔さんだって、間宮さんだって、皆もいますから」
大鯨(無茶をする前に、皆助けてくれる。だから私も、皆が無茶をしそうなときに助けに行く)
大鯨(私自身の意志で)
72: 2014/07/06(日) 22:06:12.84 ID:nuIy2SP40
5話目投下。
大鯨って、なんか大家族のお姉ちゃんみたいな感じで母性溢れてるよね
大鯨って、なんか大家族のお姉ちゃんみたいな感じで母性溢れてるよね
引用: 艦娘「艦娘になった理由」
コメント
コメント一覧 (1)
Z3「毎年夏場にマイクロビキニ着せられるわ機雷とまぐわされるわも大概だと思いますが」
esusokuhou
が
しました
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります