73: 2014/07/06(日) 22:12:00.12 ID:nuIy2SP40
艦娘(私の始まりの記憶は、沈んだ船の姿)
艦娘(幼い私は救命ボートに乗って漂っていて、父の姿も母の姿も無い、海の暗闇の中での孤独)
艦娘(その当時はよく解っていなかっただろう。だが、私の乗っていた船は深海棲艦に沈められた、という事は今、はっきりと解る)
艦娘(救命ボートにあった食料もすぐに尽きて、私は飢えに晒された)
艦娘(魚をどうにか捕まえようとして棒っきれを海に突っ込んで、渇きを癒す為に雨に顔を出して)
艦娘(だけど、その中で私は思い知らされた。はっきりと思い知らされた)
艦娘(孤独である事の恐怖、そして目に見えようと目に見えまいと、人は一人では生きてゆけない)
艦娘(顔も覚えていないけれど家族を失い、孤独を思い知らされた私は痛んだ)
艦娘(数ヶ月の時を経て、救助された。奇跡の生還、ではなかった)
艦娘(幼い私にはよく解らなかったが、多くの客船がその襲撃事件で沈んだ事、そして客船が私の父か母が関わっていて、その賠償が家に行ったのだ)
艦娘(数少ない生き残りの私に降りかかった批難と、全ての喪失。保険金も、家も、何もかも奪われて一人になってしまった)
艦娘(そして、生きる為に私は町を彷徨った)
艦娘「……おなか、すいた……」
市民A「ん? おい、アレ…」
市民B「ああ、あの事故の生き残りか。保険金山ほど降りただろうなあ」
市民A「いいね、ちょっと金を貰おうか。おい、そこの!」
艦娘「!?」ビクッ
市民A「君確かさー、あの事故の生き残りでしょ? お金たくさん貰ったんじゃねーの?」
市民B「そ、少し貸してくれないかなー? ほら、俺も家族氏んじゃってさぁ、金無いんだよねぇ」
艦娘「…ありません」
市民A「あ?」
艦娘「お金、ありません」
市民B「ねぇじゃねぇよ! いいから出せ!」ガッ
艦娘「うっ!?」
艦娘(理不尽な暴力と、罵倒。来る日も来る日も、どこを彷徨っても、同じ事の繰り返しだった)
艦娘(幼い私は救命ボートに乗って漂っていて、父の姿も母の姿も無い、海の暗闇の中での孤独)
艦娘(その当時はよく解っていなかっただろう。だが、私の乗っていた船は深海棲艦に沈められた、という事は今、はっきりと解る)
艦娘(救命ボートにあった食料もすぐに尽きて、私は飢えに晒された)
艦娘(魚をどうにか捕まえようとして棒っきれを海に突っ込んで、渇きを癒す為に雨に顔を出して)
艦娘(だけど、その中で私は思い知らされた。はっきりと思い知らされた)
艦娘(孤独である事の恐怖、そして目に見えようと目に見えまいと、人は一人では生きてゆけない)
艦娘(顔も覚えていないけれど家族を失い、孤独を思い知らされた私は痛んだ)
艦娘(数ヶ月の時を経て、救助された。奇跡の生還、ではなかった)
艦娘(幼い私にはよく解らなかったが、多くの客船がその襲撃事件で沈んだ事、そして客船が私の父か母が関わっていて、その賠償が家に行ったのだ)
艦娘(数少ない生き残りの私に降りかかった批難と、全ての喪失。保険金も、家も、何もかも奪われて一人になってしまった)
艦娘(そして、生きる為に私は町を彷徨った)
艦娘「……おなか、すいた……」
市民A「ん? おい、アレ…」
市民B「ああ、あの事故の生き残りか。保険金山ほど降りただろうなあ」
市民A「いいね、ちょっと金を貰おうか。おい、そこの!」
艦娘「!?」ビクッ
市民A「君確かさー、あの事故の生き残りでしょ? お金たくさん貰ったんじゃねーの?」
市民B「そ、少し貸してくれないかなー? ほら、俺も家族氏んじゃってさぁ、金無いんだよねぇ」
艦娘「…ありません」
市民A「あ?」
艦娘「お金、ありません」
市民B「ねぇじゃねぇよ! いいから出せ!」ガッ
艦娘「うっ!?」
艦娘(理不尽な暴力と、罵倒。来る日も来る日も、どこを彷徨っても、同じ事の繰り返しだった)
74: 2014/07/06(日) 22:14:22.54 ID:nuIy2SP40
艦娘(一人では生きていけない事は解ってて、それでもどこでも疎外されて)
艦娘(いつしか、私は…)
艦娘(疲れ果てた私は、人気の少ない場所へとやってきて。そこで、眠りに就いた)
艦娘(眠りに就いたまま、穏やかに消えていけばいい。どこにいても、疎外されるのならば)
艦娘(一つの夢を見た)
艦娘(恐らく、全ての始まりだった。沈んだ船の夢を見た。船のオーナーである両親と、一等船室にいた私)
艦娘(不沈船と言われる程のその客船は頑丈で、ちょっとやそっとじゃ沈まない工夫が幾つもされていて)
艦娘(それだけでなく少しでも多くのサービスを提供する為に船で働く人たちも色々な方面のスペシャリストである事が自慢で)
艦娘(深海棲艦の襲撃で少しでも落ち込んだ人たちの元気を出してもらおうと、かなり大きい客船でありながら頑張れば手の届く値段でもなるという値段設定)
艦娘(夢の中で父は語っていた)
父『少しでも皆に元気になってもらおう』
父『深海棲艦のせいで職を失った人もいるが、彼らの仕事としてもこの計画は立派だ』
父『何隻も作って、世界中に輸出しよう。居住性に力を入れたから病院船としても使えるよ』
艦娘(父の夢だったそれは、この国の希望の象徴になる筈だった。そして私もこの船の事を、自慢に思っていた)
艦娘『お父さん、この船を見たら皆驚くかな?』
父『ああ、驚くさ! 深海棲艦と戦ってる軍人さんたちだって驚くだろう!』
艦娘『眺めもいいし、皆優しくて立派だよね!』
船長『オーナー。少しよろしいですか?』
父『どうしたんだい、船長?』
船長『近くの海域に艦娘が出ているようです。もしかしたら深海棲艦がいるかも知れません。……進路変更するべきか否か…いかがなさいますか?』
父『船長の判断に任せるよ。君達はスペシャリストだ』
船長『では、進路を変更させて頂きます』
父『深海棲艦がいるかも知れないのか。用心するにこした事は無い』
艦娘『深海棲艦はどうして、来るのかな?』
父『わからない…なんでだろうな』
父『ただ、一つわかる事は私達は彼らから身を守り、生活を守らなければいけないという事だな』
艦娘(深海棲艦が襲ってくる理由なんて、誰も知るはずは無かった。今までも、これからも)
艦娘(いつしか、私は…)
艦娘(疲れ果てた私は、人気の少ない場所へとやってきて。そこで、眠りに就いた)
艦娘(眠りに就いたまま、穏やかに消えていけばいい。どこにいても、疎外されるのならば)
艦娘(一つの夢を見た)
艦娘(恐らく、全ての始まりだった。沈んだ船の夢を見た。船のオーナーである両親と、一等船室にいた私)
艦娘(不沈船と言われる程のその客船は頑丈で、ちょっとやそっとじゃ沈まない工夫が幾つもされていて)
艦娘(それだけでなく少しでも多くのサービスを提供する為に船で働く人たちも色々な方面のスペシャリストである事が自慢で)
艦娘(深海棲艦の襲撃で少しでも落ち込んだ人たちの元気を出してもらおうと、かなり大きい客船でありながら頑張れば手の届く値段でもなるという値段設定)
艦娘(夢の中で父は語っていた)
父『少しでも皆に元気になってもらおう』
父『深海棲艦のせいで職を失った人もいるが、彼らの仕事としてもこの計画は立派だ』
父『何隻も作って、世界中に輸出しよう。居住性に力を入れたから病院船としても使えるよ』
艦娘(父の夢だったそれは、この国の希望の象徴になる筈だった。そして私もこの船の事を、自慢に思っていた)
艦娘『お父さん、この船を見たら皆驚くかな?』
父『ああ、驚くさ! 深海棲艦と戦ってる軍人さんたちだって驚くだろう!』
艦娘『眺めもいいし、皆優しくて立派だよね!』
船長『オーナー。少しよろしいですか?』
父『どうしたんだい、船長?』
船長『近くの海域に艦娘が出ているようです。もしかしたら深海棲艦がいるかも知れません。……進路変更するべきか否か…いかがなさいますか?』
父『船長の判断に任せるよ。君達はスペシャリストだ』
船長『では、進路を変更させて頂きます』
父『深海棲艦がいるかも知れないのか。用心するにこした事は無い』
艦娘『深海棲艦はどうして、来るのかな?』
父『わからない…なんでだろうな』
父『ただ、一つわかる事は私達は彼らから身を守り、生活を守らなければいけないという事だな』
艦娘(深海棲艦が襲ってくる理由なんて、誰も知るはずは無かった。今までも、これからも)
75: 2014/07/06(日) 22:16:22.70 ID:nuIy2SP40
船長『緊急です』
父『どうしたんだ?』
船長『たった今、通信士が受電したものです。艦娘が数隻ほど、燃料が不足して戻れないかも知れないと鎮守府とやり取りしていた…のを偶然傍受したと』
父『……予備の燃料タンクがあったな?』
船長『はい、充分に備えてあります。分けてもよい、という事ですね?』
父『ああ。折角だ、燃料を融通している間に食事でも用意してあげなさい』
艦娘(私が艦娘という存在を知ったのは、きっとこの時だ)
艦娘(客船は途中で進路を変更し、戦闘後であろう艦娘の艦隊へと出会うことが出来た)
艦娘(私よりも少しばかり年上ぐらいのお姉さん達―――そんな印象だった)
船長『本船へようこそ。燃料の予備がありますので、お使いください』
先代高翌雄『ありがとうございます。なんとお礼を申し上げたらよいか…』
先代満潮『豪華な船ね…随分かかってるんじゃない?』
父『ははは。確かにね。でも、少しでも皆を元気づけようと思っているよ』
先代満潮『……余裕があればね』
父『居住性と耐久性は自慢だよ。まあ、なるべく安い値段にしようと、ね』
先代満潮『ふぅん…』
艦娘(その子の態度に少しだけむっとした。まあ、自慢だったから無理も無い)
艦娘『こ、この船はお父さんの自慢で! みんなの希望なんだから!』
父『こらこら。彼女達は忙しいんだから』
先代高翌雄『こら、満潮! すいません、失礼を…』
父『いえいえ』
先代満潮『うー…』
艦娘(私は力強く彼女に語った。語り尽くすほどだった)
艦娘『この船はちょっとやそっとじゃ沈まないのよ! 隔壁だってたくさんあるし!』
艦娘『乗ってる人はどんな分野でもスペシャリストで、楽団もコックさんも、何もかも五本の指に入るぐらい!』
艦娘『居住性にだって優れてる。色んな人も乗せられるし、速度も早いのよ!』
先代満潮『そ、そう。すごいのね……』
艦娘『本当にすごいのよ。いいわ、いつかあなたを…いえ、あなた達を招待してあっと言わせてあげる』
先代満潮『その時は私もあんたを背中に乗せてあげるわ。艦娘のすごさを教えてあげるんだから!』
父『どうしたんだ?』
船長『たった今、通信士が受電したものです。艦娘が数隻ほど、燃料が不足して戻れないかも知れないと鎮守府とやり取りしていた…のを偶然傍受したと』
父『……予備の燃料タンクがあったな?』
船長『はい、充分に備えてあります。分けてもよい、という事ですね?』
父『ああ。折角だ、燃料を融通している間に食事でも用意してあげなさい』
艦娘(私が艦娘という存在を知ったのは、きっとこの時だ)
艦娘(客船は途中で進路を変更し、戦闘後であろう艦娘の艦隊へと出会うことが出来た)
艦娘(私よりも少しばかり年上ぐらいのお姉さん達―――そんな印象だった)
船長『本船へようこそ。燃料の予備がありますので、お使いください』
先代高翌雄『ありがとうございます。なんとお礼を申し上げたらよいか…』
先代満潮『豪華な船ね…随分かかってるんじゃない?』
父『ははは。確かにね。でも、少しでも皆を元気づけようと思っているよ』
先代満潮『……余裕があればね』
父『居住性と耐久性は自慢だよ。まあ、なるべく安い値段にしようと、ね』
先代満潮『ふぅん…』
艦娘(その子の態度に少しだけむっとした。まあ、自慢だったから無理も無い)
艦娘『こ、この船はお父さんの自慢で! みんなの希望なんだから!』
父『こらこら。彼女達は忙しいんだから』
先代高翌雄『こら、満潮! すいません、失礼を…』
父『いえいえ』
先代満潮『うー…』
艦娘(私は力強く彼女に語った。語り尽くすほどだった)
艦娘『この船はちょっとやそっとじゃ沈まないのよ! 隔壁だってたくさんあるし!』
艦娘『乗ってる人はどんな分野でもスペシャリストで、楽団もコックさんも、何もかも五本の指に入るぐらい!』
艦娘『居住性にだって優れてる。色んな人も乗せられるし、速度も早いのよ!』
先代満潮『そ、そう。すごいのね……』
艦娘『本当にすごいのよ。いいわ、いつかあなたを…いえ、あなた達を招待してあっと言わせてあげる』
先代満潮『その時は私もあんたを背中に乗せてあげるわ。艦娘のすごさを教えてあげるんだから!』
76: 2014/07/06(日) 22:19:38.06 ID:nuIy2SP40
艦娘(それは単なる自慢のしあいのようなもの。だけど、不思議とお互いに約束のようなものだと感じていた)
艦娘(絶対に、果たさなくては、いけない約束)
先代高翌雄『こら満潮はいつまで喧嘩してるの。あの、燃料ありがとうございました』
父『お構いなく』
先代高翌雄『いつか、お客として乗ってみたいと思います』
船長『良い航海を!』
先代満潮『またね! 約束したわよ!』
艦娘(長く手を振り続けていた。仲良しになった訳でも、友達になった訳でもない)
艦娘(だけど私は今の今まで忘れていた。いつか、彼女達をその船に招待するという約束を)
艦娘(それはもう叶わぬ夢…そして、約束すら果たせずに消えていくのも…)
艦娘(気が付くと、涙が溢れていた。声を押し頃して、空腹を抱えて、泣きながら消えようとしていた)
医務室
艦娘「……あれ?」
任務娘「目を醒まされたようですね。大丈夫ですか?」
艦娘「…ここは?」
任務娘「鎮守府の医務室です。鎮守府の敷地内で倒れていたんですよ? それにしても、こんな小さい子供がどうしてここに?」
ドラゴン提督「ホァッチャァ! 巡回の時間だコラァ!」
任務娘「提督、うるさいです」
ドラゴン提督「失礼。あー、君君、どうしてあんなところで倒れてたのかな? アチョー!」
艦娘(なお、この時に出会った提督だが、未だにバリバリ最強だ。つい先日司令部でカワラ三十枚割をしたらしい)
艦娘(そこで私は、身の上話を少しずつした。行き場所も無いという事も。そして……約束の事も)
ドラゴン提督「あの船の事は私も聞いた事がある」
ドラゴン提督「同型船が海軍の慰労艦として提供するという計画があったそうだが、あの船の沈没で船会社も潰れて立ち消えになった」
艦娘「…はい」
ドラゴン提督「辛かっただろうな。だが、今度はこちらの話もさせてほしい」
艦娘「…はい」
艦娘(そして彼は一人の艦娘を連れてきていた)
艦娘(絶対に、果たさなくては、いけない約束)
先代高翌雄『こら満潮はいつまで喧嘩してるの。あの、燃料ありがとうございました』
父『お構いなく』
先代高翌雄『いつか、お客として乗ってみたいと思います』
船長『良い航海を!』
先代満潮『またね! 約束したわよ!』
艦娘(長く手を振り続けていた。仲良しになった訳でも、友達になった訳でもない)
艦娘(だけど私は今の今まで忘れていた。いつか、彼女達をその船に招待するという約束を)
艦娘(それはもう叶わぬ夢…そして、約束すら果たせずに消えていくのも…)
艦娘(気が付くと、涙が溢れていた。声を押し頃して、空腹を抱えて、泣きながら消えようとしていた)
医務室
艦娘「……あれ?」
任務娘「目を醒まされたようですね。大丈夫ですか?」
艦娘「…ここは?」
任務娘「鎮守府の医務室です。鎮守府の敷地内で倒れていたんですよ? それにしても、こんな小さい子供がどうしてここに?」
ドラゴン提督「ホァッチャァ! 巡回の時間だコラァ!」
任務娘「提督、うるさいです」
ドラゴン提督「失礼。あー、君君、どうしてあんなところで倒れてたのかな? アチョー!」
艦娘(なお、この時に出会った提督だが、未だにバリバリ最強だ。つい先日司令部でカワラ三十枚割をしたらしい)
艦娘(そこで私は、身の上話を少しずつした。行き場所も無いという事も。そして……約束の事も)
ドラゴン提督「あの船の事は私も聞いた事がある」
ドラゴン提督「同型船が海軍の慰労艦として提供するという計画があったそうだが、あの船の沈没で船会社も潰れて立ち消えになった」
艦娘「…はい」
ドラゴン提督「辛かっただろうな。だが、今度はこちらの話もさせてほしい」
艦娘「…はい」
艦娘(そして彼は一人の艦娘を連れてきていた)
77: 2014/07/06(日) 22:21:59.13 ID:nuIy2SP40
ドラゴン提督「あの時の、だそうだ」
先代高翌雄「あなたは…! 覚えてます! あの時、満潮と…」
先代高翌雄「漂流して救助されたけれど、行方不明になったと聞いて…」
艦娘「……あの時。みんな招待するって、言ったけど…約束、守れなくて…」
艦娘「ごめんなさい…」
先代高翌雄「……あの時、私達は本当に燃料が尽きそうでした。あの通信と申し出は、本当に嬉しかったです」
先代高翌雄「満潮が一番喜んでいたんです。口は悪いけれど、別れた後、絶対に乗りに行くって言ってて……」
先代高翌雄「あの客船が撃沈されたと聞いて、すぐに駆け付けて。満潮はあなたの事を探してました」
艦娘「私を…?」
先代高翌雄「ええ。あなたが生きている事を確認しなきゃ嫌だって。あなたを氏なせないって。夜を徹して、何度も何度もあの海域に足を運んで」
先代高翌雄「それで…! あなたが発見される…一日前に……」
艦娘「どうなったんですか…」
先代高翌雄「無茶がたたって…疲労が溜まっていたところを襲われて……あの海域に沈みました」
艦娘「~~~~~~~~!!!」
艦娘(ある意味、一番のショックだった。私の事を、そこまで思ってくれていた人がいただなんて)
艦娘「……ごめんなさい…私……氏に場所を探そうとしてたんです……」
先代高翌雄「!」
艦娘「でも、でもぉ…そんなに、そんなに思ってくれてたなんてぇ…!」
艦娘「約束、守れないはずなのに。なんで、なんで…どうして…そこまで…!」
艦娘(大粒の涙をこぼして。私は声をあげて泣いた)
艦娘(何度も何度も謝罪の言葉を口にして、そしてありがとうという言葉も連呼して)
ドラゴン提督「行き場が無い、そうだな」
艦娘「…」こくり
ドラゴン提督「皆に元気になってもらいたいからこそ、華やかな…素晴らしいものだ」
ドラゴン提督「しかも一番下の等級。俺の給料でいけるな。くそ、乗りたかった」
ドラゴン提督「…君に一つ提案がある。人々の希望となる道を、だ」
艦娘「え…」
ドラゴン提督「海軍と契約して、艦娘になってくれないか?」
先代高翌雄「あなたは…! 覚えてます! あの時、満潮と…」
先代高翌雄「漂流して救助されたけれど、行方不明になったと聞いて…」
艦娘「……あの時。みんな招待するって、言ったけど…約束、守れなくて…」
艦娘「ごめんなさい…」
先代高翌雄「……あの時、私達は本当に燃料が尽きそうでした。あの通信と申し出は、本当に嬉しかったです」
先代高翌雄「満潮が一番喜んでいたんです。口は悪いけれど、別れた後、絶対に乗りに行くって言ってて……」
先代高翌雄「あの客船が撃沈されたと聞いて、すぐに駆け付けて。満潮はあなたの事を探してました」
艦娘「私を…?」
先代高翌雄「ええ。あなたが生きている事を確認しなきゃ嫌だって。あなたを氏なせないって。夜を徹して、何度も何度もあの海域に足を運んで」
先代高翌雄「それで…! あなたが発見される…一日前に……」
艦娘「どうなったんですか…」
先代高翌雄「無茶がたたって…疲労が溜まっていたところを襲われて……あの海域に沈みました」
艦娘「~~~~~~~~!!!」
艦娘(ある意味、一番のショックだった。私の事を、そこまで思ってくれていた人がいただなんて)
艦娘「……ごめんなさい…私……氏に場所を探そうとしてたんです……」
先代高翌雄「!」
艦娘「でも、でもぉ…そんなに、そんなに思ってくれてたなんてぇ…!」
艦娘「約束、守れないはずなのに。なんで、なんで…どうして…そこまで…!」
艦娘(大粒の涙をこぼして。私は声をあげて泣いた)
艦娘(何度も何度も謝罪の言葉を口にして、そしてありがとうという言葉も連呼して)
ドラゴン提督「行き場が無い、そうだな」
艦娘「…」こくり
ドラゴン提督「皆に元気になってもらいたいからこそ、華やかな…素晴らしいものだ」
ドラゴン提督「しかも一番下の等級。俺の給料でいけるな。くそ、乗りたかった」
ドラゴン提督「…君に一つ提案がある。人々の希望となる道を、だ」
艦娘「え…」
ドラゴン提督「海軍と契約して、艦娘になってくれないか?」
78: 2014/07/06(日) 22:23:48.45 ID:nuIy2SP40
ドラゴン提督「艦娘は深海棲艦と戦っている。人々の生活を守り、新たな未来を築く。その姿は、まさに希望」
ドラゴン提督「客船が皆を元気にするならば、艦娘は皆に勇気を与えてくれる。そんな存在だ」
ドラゴン提督「希望を誇りに思う君にこそ、なってもらいたいのだ! ホァッチャア!」
艦娘(行き先も無い、幼い私。一人では生きていく事も出来ない)
艦娘(だけど、その言葉は深く刺さった。勇気を与えてくれる、存在)
艦娘(私の為に無茶を承知で探してくれた艦娘。その献身的な姿にも、打たれた)
艦娘「お願いします…」
艦娘「私を…私を艦娘にしてください! みんなに勇気を与える存在であり、いつか元気を与える存在になるために!」
鎮守府 食堂
時雨「民間船舶が艦娘に燃料を分けてあげた…へぇ、いい美談だね」
涼風「優しい船もあるもんだな! 本当に、ありがてぇや」
時雨「幾ら軍人向けの広報新聞とはいえ、もう少し大きく取り上げてもいいんじゃないかなとは思うけど。ボクが思うに、この記事小さすぎだよ」
青葉「あー、それはですねー。そういう事例が何度かあったけど、その一番最初の話が美談に終わらなかったんですよー」
時雨「どういうことだい?」
青葉「それはですねー」
熊野「あらあら、何の話ですの?」
青葉「あ、熊野さん…えーと、この話はここまでという事で…」
熊野「ちょっと青葉さん? どうして私が着たら逃げますの?」
青葉「いやーまーそのー」
涼風「えーと、民間船舶が艦娘に燃料を分けたっつー話の最初の事例が美談で終わらなくて…」
熊野「ああ、それですのね」
青葉「あちゃー…」
熊野「別に秘密にするようなことでもないですわよ? まあ、それが美談じゃないのは事実ですけど」
時雨「え? そ、それって…その…」
熊野「ええ。当事者が言うのですから、間違いありませんわ。でも…」
熊野「あれがなければ、私は艦娘ではありませんでしたから」
熊野「……私の生存を信じて、探し続けてくれた、先の満潮さんの為にも、ね」
熊野(そう。決して美談で終わる話ではない。誇るべき話でもなんでもない)
熊野(だけど、私が生涯忘れてはならない出来事だ。そして…)
熊野(いつか平和になったら、その時こそ、あの約束を果たすときなのだ)
熊野(今度こそ、世界中の人たちを元気にするために)
ドラゴン提督「客船が皆を元気にするならば、艦娘は皆に勇気を与えてくれる。そんな存在だ」
ドラゴン提督「希望を誇りに思う君にこそ、なってもらいたいのだ! ホァッチャア!」
艦娘(行き先も無い、幼い私。一人では生きていく事も出来ない)
艦娘(だけど、その言葉は深く刺さった。勇気を与えてくれる、存在)
艦娘(私の為に無茶を承知で探してくれた艦娘。その献身的な姿にも、打たれた)
艦娘「お願いします…」
艦娘「私を…私を艦娘にしてください! みんなに勇気を与える存在であり、いつか元気を与える存在になるために!」
鎮守府 食堂
時雨「民間船舶が艦娘に燃料を分けてあげた…へぇ、いい美談だね」
涼風「優しい船もあるもんだな! 本当に、ありがてぇや」
時雨「幾ら軍人向けの広報新聞とはいえ、もう少し大きく取り上げてもいいんじゃないかなとは思うけど。ボクが思うに、この記事小さすぎだよ」
青葉「あー、それはですねー。そういう事例が何度かあったけど、その一番最初の話が美談に終わらなかったんですよー」
時雨「どういうことだい?」
青葉「それはですねー」
熊野「あらあら、何の話ですの?」
青葉「あ、熊野さん…えーと、この話はここまでという事で…」
熊野「ちょっと青葉さん? どうして私が着たら逃げますの?」
青葉「いやーまーそのー」
涼風「えーと、民間船舶が艦娘に燃料を分けたっつー話の最初の事例が美談で終わらなくて…」
熊野「ああ、それですのね」
青葉「あちゃー…」
熊野「別に秘密にするようなことでもないですわよ? まあ、それが美談じゃないのは事実ですけど」
時雨「え? そ、それって…その…」
熊野「ええ。当事者が言うのですから、間違いありませんわ。でも…」
熊野「あれがなければ、私は艦娘ではありませんでしたから」
熊野「……私の生存を信じて、探し続けてくれた、先の満潮さんの為にも、ね」
熊野(そう。決して美談で終わる話ではない。誇るべき話でもなんでもない)
熊野(だけど、私が生涯忘れてはならない出来事だ。そして…)
熊野(いつか平和になったら、その時こそ、あの約束を果たすときなのだ)
熊野(今度こそ、世界中の人たちを元気にするために)
79: 2014/07/06(日) 22:26:06.21 ID:nuIy2SP40
6話目、投下完了。
今回は案外イメージしやすかったかも知れない。
映画のタイタニックがもう17年前なんだよな…
今回は案外イメージしやすかったかも知れない。
映画のタイタニックがもう17年前なんだよな…
引用: 艦娘「艦娘になった理由」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります