82: 2014/07/08(火) 20:11:38.64 ID:hscwiWxL0
艦娘(本当に昔の話をしよう)
艦娘(私の姉は、艦娘だった)
艦娘(ぴかぴかの艤装にシャープなシルエット、そして華々しい戦果)
艦娘(大艦巨砲主義の時代、そんな姉は多くの少女達の憧れで、そんな姉が私の一番の自慢だった)
母「あら、またお姉ちゃんの絵を描いてるの?」
艦娘「うん! おねえちゃん大好きー」
母「……まるで艦娘になりたいみたいね」
艦娘「うん、大きくなったら艦娘になるのー!」
艦娘(姉に憧れ、艦娘になりたいと答える私の姿に、母はいつも困惑していたのを覚えている)
艦娘(当然だろう。生氏を賭ける戦いなのだ。華々しい活躍の影に、幾千幾万の艦娘が海の藻屑に消えただろうか)
艦娘(親として自身の子を心配するのは当然の事。特に姉が既に艦娘としている以上、その困難さが痛いほどわかる)
艦娘(しかし同時に、姉の活躍ぶりも理解していた。だからこそ、母はいつもそんな私に戸惑っていたに違いない)
艦娘(私は成長するにつれて、ますます艦娘に憧れた。母は逆に、私を姉から引き離そうとした)
艦娘(遠くの全寮制の学校へと入れられた私は、寂しさを紛らわせるように姉と手紙のやり取りをした)
姉『母さんだって心配しているんだからしょうがないだろう』
姉『正直な話、私も艦娘にはなってほしくないかな』
艦娘『どうして? 多くの人が艦娘になれば、その分だけ人を救えるかも知れない』
姉『ちょっとやそっとの決意で艦娘になっちゃいけない。命を賭けて戦っている。だから、それだけの覚悟が必要だ』
姉『そう。華々しい活躍の陰で、多くの悲劇と惨劇がある。それと向き合わなければならない』
姉『時として、残酷な答えしかない場合もあるんだから』
艦娘(姉も姉で、姉なりの苦労や考えがあるのだろう。私が艦娘になる事はやはり反対された)
艦娘(きっと今でも賛成はしないだろう。母から未だに帰ってくるように言われるように)
艦娘(そんな事を思っていたある日のことだった)
艦娘(私の姉は、艦娘だった)
艦娘(ぴかぴかの艤装にシャープなシルエット、そして華々しい戦果)
艦娘(大艦巨砲主義の時代、そんな姉は多くの少女達の憧れで、そんな姉が私の一番の自慢だった)
母「あら、またお姉ちゃんの絵を描いてるの?」
艦娘「うん! おねえちゃん大好きー」
母「……まるで艦娘になりたいみたいね」
艦娘「うん、大きくなったら艦娘になるのー!」
艦娘(姉に憧れ、艦娘になりたいと答える私の姿に、母はいつも困惑していたのを覚えている)
艦娘(当然だろう。生氏を賭ける戦いなのだ。華々しい活躍の影に、幾千幾万の艦娘が海の藻屑に消えただろうか)
艦娘(親として自身の子を心配するのは当然の事。特に姉が既に艦娘としている以上、その困難さが痛いほどわかる)
艦娘(しかし同時に、姉の活躍ぶりも理解していた。だからこそ、母はいつもそんな私に戸惑っていたに違いない)
艦娘(私は成長するにつれて、ますます艦娘に憧れた。母は逆に、私を姉から引き離そうとした)
艦娘(遠くの全寮制の学校へと入れられた私は、寂しさを紛らわせるように姉と手紙のやり取りをした)
姉『母さんだって心配しているんだからしょうがないだろう』
姉『正直な話、私も艦娘にはなってほしくないかな』
艦娘『どうして? 多くの人が艦娘になれば、その分だけ人を救えるかも知れない』
姉『ちょっとやそっとの決意で艦娘になっちゃいけない。命を賭けて戦っている。だから、それだけの覚悟が必要だ』
姉『そう。華々しい活躍の陰で、多くの悲劇と惨劇がある。それと向き合わなければならない』
姉『時として、残酷な答えしかない場合もあるんだから』
艦娘(姉も姉で、姉なりの苦労や考えがあるのだろう。私が艦娘になる事はやはり反対された)
艦娘(きっと今でも賛成はしないだろう。母から未だに帰ってくるように言われるように)
艦娘(そんな事を思っていたある日のことだった)
83: 2014/07/08(火) 20:13:30.41 ID:hscwiWxL0
同級生A「次の研修、隣の国にホームステイだって!」
同級生B「えー、でも飛行機今飛ばないんじゃない? 軍に優先的に燃料回されてるし…」
同級生A「船だってさ。そんな長い距離でも無いから心配要らないって」
同級生B「まあ、大陸と結ぶ航路にまで深海棲艦入り込んでたら干上がるものねー」
艦娘(島国であるこの国は、シーレーンが封鎖されてしまえばたちまち干上がってしまう)
艦娘(海軍が発達したのはある意味自然な事だったのだ。そして、艦娘の活躍もまた、必然だったのかはわからない)
艦娘(隣国へのホームステイの為に、学校の多くの生徒がそのフェリーへと乗り込んだ。もちろん、私も)
艦娘(短い距離の、素敵な船旅。とても深海棲艦との戦争中とは思えない、ひと時)
同級生A「そういえば艦娘の姉って、あの×××なんでしょ? いいなぁー」
同級生C「私、子供の頃から憧れだったのよ!」
艦娘「うん、私も憧れなんだ! 本当に自慢のお姉ちゃんだよ」
同級生B「あれ、艦娘は…海軍には入らないの?」
艦娘「なかなか親とか…あと、お姉ちゃんも許してくれなくてね。入隊するには、保護者の許可証いるし」
同級生B「あー……親とかがいない場合は無くてもいいけど、いる場合は必須だっけ?」
艦娘「親に黙って入隊して、そのまま戦没して軍が抗議されたーなんて事件があったからって。お姉ちゃんが言ってた」
同級生C「でも、あの人たちが命賭けて戦ってるから、今の私達が生きていられるのよね」
艦娘「うん。同じ年頃の子が戦ってる。私達は何が出来るんだろうね?」
艦娘(これは艦娘になりたくてもなれなかった、当時の私の呟きだったのかも知れない)
同級生A「応援とかだったら、言葉にしてもすぐには届かないかも」
同級生B「かといって、何かお見舞い送るとか?」
艦娘「でもそれだと、やっぱり一時的だよね。本当に、どんな風になれば誰かの力になれるんだろうね」
艦娘「あはは、すぐには解らないよね。変な事聞いちゃった」
同級生C「ううん。私達も、何か考えなきゃって思ったもん」
同級生A「うん。立派だよ、艦娘は」
艦娘(そしてこの会話が――――)
艦娘(最後の、平和な会話だった)
ドゴーン!
同級生B「えー、でも飛行機今飛ばないんじゃない? 軍に優先的に燃料回されてるし…」
同級生A「船だってさ。そんな長い距離でも無いから心配要らないって」
同級生B「まあ、大陸と結ぶ航路にまで深海棲艦入り込んでたら干上がるものねー」
艦娘(島国であるこの国は、シーレーンが封鎖されてしまえばたちまち干上がってしまう)
艦娘(海軍が発達したのはある意味自然な事だったのだ。そして、艦娘の活躍もまた、必然だったのかはわからない)
艦娘(隣国へのホームステイの為に、学校の多くの生徒がそのフェリーへと乗り込んだ。もちろん、私も)
艦娘(短い距離の、素敵な船旅。とても深海棲艦との戦争中とは思えない、ひと時)
同級生A「そういえば艦娘の姉って、あの×××なんでしょ? いいなぁー」
同級生C「私、子供の頃から憧れだったのよ!」
艦娘「うん、私も憧れなんだ! 本当に自慢のお姉ちゃんだよ」
同級生B「あれ、艦娘は…海軍には入らないの?」
艦娘「なかなか親とか…あと、お姉ちゃんも許してくれなくてね。入隊するには、保護者の許可証いるし」
同級生B「あー……親とかがいない場合は無くてもいいけど、いる場合は必須だっけ?」
艦娘「親に黙って入隊して、そのまま戦没して軍が抗議されたーなんて事件があったからって。お姉ちゃんが言ってた」
同級生C「でも、あの人たちが命賭けて戦ってるから、今の私達が生きていられるのよね」
艦娘「うん。同じ年頃の子が戦ってる。私達は何が出来るんだろうね?」
艦娘(これは艦娘になりたくてもなれなかった、当時の私の呟きだったのかも知れない)
同級生A「応援とかだったら、言葉にしてもすぐには届かないかも」
同級生B「かといって、何かお見舞い送るとか?」
艦娘「でもそれだと、やっぱり一時的だよね。本当に、どんな風になれば誰かの力になれるんだろうね」
艦娘「あはは、すぐには解らないよね。変な事聞いちゃった」
同級生C「ううん。私達も、何か考えなきゃって思ったもん」
同級生A「うん。立派だよ、艦娘は」
艦娘(そしてこの会話が――――)
艦娘(最後の、平和な会話だった)
ドゴーン!
84: 2014/07/08(火) 20:15:42.56 ID:hscwiWxL0
艦娘「!?」
同級生A「なに!? 攻撃?」
同級生B「嘘でしょ!? この辺りは深海棲艦の勢力圏じゃないし、殆ど確認されてもいないのに…」
船員『甲板員は救命ボートの準備! 機関部は沈没を防げ、水を出すんだ!』
同級生C「揺れてる…どうしよう!?」
同級生B「見て、あれ!」
艦娘(その時、私は初めて深海棲艦を見た)
艦娘(たった一隻のフェリーに、数十を超える深海棲艦の姿)
艦娘(後で知った事だが、安全な海域であると多くの船が進んでいた航路に深海棲艦が侵入。そして護衛も無い船では成すすべ無く)
艦娘(数多くの民間船舶が沈められ、多くの人命が失われた)
同級生B「ダメだぁ! 私、船室に戻る!」
同級生C「に、逃げるから! ダメ、逃げるからぁー!」
艦娘(地獄絵図だった。無数に届く砲撃は船体のあちこちを破壊し、救命ボートも炎上させた)
艦娘(恐怖に駆られて飛び込んだ後輩たち。ピラニアのように群がる深海棲艦たちに殺された)
艦娘(船室に逃げ込んでも、既に無数の魚雷を受けて沈みつつある船ではどうすることも出来ず、閉じ込められて溺氏した)
艦娘(砲撃で吹き飛ばされ、海面へと叩き付けられた私は浮かぶ漂流物に必氏でしがみついた)
同級生A「た、助け、助け…」
艦娘「あ!」
艦娘(親友も目の前で食い殺され、私も同じ運命を辿る――――)
艦娘(―――筈だった)
戦艦タ級「……同じニオイがする」
艦娘(目の前にいる、ボスらしい深海棲艦が、私を持ち上げた)
戦艦タ級「そうね。同じニオイがするわ…アイツを」
雷巡チ級「どーします?」
戦艦タ級「そうね、他の皆は適当に船でも沈めてなさい」
戦艦タ級「この子、どうしようかしらねぇ?」
同級生A「なに!? 攻撃?」
同級生B「嘘でしょ!? この辺りは深海棲艦の勢力圏じゃないし、殆ど確認されてもいないのに…」
船員『甲板員は救命ボートの準備! 機関部は沈没を防げ、水を出すんだ!』
同級生C「揺れてる…どうしよう!?」
同級生B「見て、あれ!」
艦娘(その時、私は初めて深海棲艦を見た)
艦娘(たった一隻のフェリーに、数十を超える深海棲艦の姿)
艦娘(後で知った事だが、安全な海域であると多くの船が進んでいた航路に深海棲艦が侵入。そして護衛も無い船では成すすべ無く)
艦娘(数多くの民間船舶が沈められ、多くの人命が失われた)
同級生B「ダメだぁ! 私、船室に戻る!」
同級生C「に、逃げるから! ダメ、逃げるからぁー!」
艦娘(地獄絵図だった。無数に届く砲撃は船体のあちこちを破壊し、救命ボートも炎上させた)
艦娘(恐怖に駆られて飛び込んだ後輩たち。ピラニアのように群がる深海棲艦たちに殺された)
艦娘(船室に逃げ込んでも、既に無数の魚雷を受けて沈みつつある船ではどうすることも出来ず、閉じ込められて溺氏した)
艦娘(砲撃で吹き飛ばされ、海面へと叩き付けられた私は浮かぶ漂流物に必氏でしがみついた)
同級生A「た、助け、助け…」
艦娘「あ!」
艦娘(親友も目の前で食い殺され、私も同じ運命を辿る――――)
艦娘(―――筈だった)
戦艦タ級「……同じニオイがする」
艦娘(目の前にいる、ボスらしい深海棲艦が、私を持ち上げた)
戦艦タ級「そうね。同じニオイがするわ…アイツを」
雷巡チ級「どーします?」
戦艦タ級「そうね、他の皆は適当に船でも沈めてなさい」
戦艦タ級「この子、どうしようかしらねぇ?」
85: 2014/07/08(火) 20:17:37.62 ID:hscwiWxL0
艦娘(深海棲艦に囚われた私は、彼女に連れまわされる形で、多くの船の最期を見せつけられた)
艦娘(重油と血が撒き散らされた海と、浮かぶ氏体、炎上する船)
艦娘(未だに鮮明に覚えている。決して忘れる事の無い惨劇)
艦娘(そして、どれだけの時間が流れたか解らなくなった時に)
姉「―――――艦娘!?」
艦娘「お姉ちゃん…」
姉「離せ!」
戦艦タ級「よくきたわねぇ? 下手な真似したら、この子を[ピーーー]わよ」
姉「…ッ…!」
艦娘(考えた。必氏に考えた)
艦娘(私に何が出来るか。必氏になって考えた。そして、結論づけた)
艦娘「撃って! お姉ちゃん、撃って!」
姉「っ!?」
艦娘(残酷な答えしかない場合もある、と姉自身がかつて言っていたことだ)
艦娘(その残酷な答えが、私が氏ぬ事だとしても―――ここで姉を失うわけには行かなかった。それほどまでに、姉は大きい)
戦艦タ級「黙れ!」
艦娘「ぎっ…! いいから、私の事はいいから撃って!」
艦娘(叫んだ。私の自慢の姉は、皆のあこがれであり、希望)
艦娘(私に出来ることなんて、それぐらい。妹として、姉を庇うことしか出来ない)
艦娘「悲劇や惨劇と向き合わなければならない、残酷な答えしかない場合もある…だけど、それが艦娘だって、お姉ちゃん!」
姉「っ…!」
艦娘(だがそれでも姉は躊躇ってしまった。私自身にその答えを突きつけた、姉自身が。それが、命取りだった)
戦艦タ級「残念」
姉「艤装が!?」
艦娘「あ、ああ……!」
艦娘(姉を含む艦隊は、艤装を次々と狙い撃ちのように破壊されていった)
艦娘(私を人質にして釘付けにしている間に、他の艦隊で包囲していたのだ。逃げ場も、武器も失った)
艦娘「おねえちゃああああああん!!!!」
艦娘(私の中で、最も忌むべき光景。何度も何度も夢に出てくる、最大の悪夢)
艦娘(姉と仲間達を、目の前で嬲り頃しにされるその姿。苦しみの叫びと、血を撒き散らして)
艦娘(全てが海の藻屑になった後で、私はゴミのように投げ捨てられた)
艦娘(重油と血が撒き散らされた海と、浮かぶ氏体、炎上する船)
艦娘(未だに鮮明に覚えている。決して忘れる事の無い惨劇)
艦娘(そして、どれだけの時間が流れたか解らなくなった時に)
姉「―――――艦娘!?」
艦娘「お姉ちゃん…」
姉「離せ!」
戦艦タ級「よくきたわねぇ? 下手な真似したら、この子を[ピーーー]わよ」
姉「…ッ…!」
艦娘(考えた。必氏に考えた)
艦娘(私に何が出来るか。必氏になって考えた。そして、結論づけた)
艦娘「撃って! お姉ちゃん、撃って!」
姉「っ!?」
艦娘(残酷な答えしかない場合もある、と姉自身がかつて言っていたことだ)
艦娘(その残酷な答えが、私が氏ぬ事だとしても―――ここで姉を失うわけには行かなかった。それほどまでに、姉は大きい)
戦艦タ級「黙れ!」
艦娘「ぎっ…! いいから、私の事はいいから撃って!」
艦娘(叫んだ。私の自慢の姉は、皆のあこがれであり、希望)
艦娘(私に出来ることなんて、それぐらい。妹として、姉を庇うことしか出来ない)
艦娘「悲劇や惨劇と向き合わなければならない、残酷な答えしかない場合もある…だけど、それが艦娘だって、お姉ちゃん!」
姉「っ…!」
艦娘(だがそれでも姉は躊躇ってしまった。私自身にその答えを突きつけた、姉自身が。それが、命取りだった)
戦艦タ級「残念」
姉「艤装が!?」
艦娘「あ、ああ……!」
艦娘(姉を含む艦隊は、艤装を次々と狙い撃ちのように破壊されていった)
艦娘(私を人質にして釘付けにしている間に、他の艦隊で包囲していたのだ。逃げ場も、武器も失った)
艦娘「おねえちゃああああああん!!!!」
艦娘(私の中で、最も忌むべき光景。何度も何度も夢に出てくる、最大の悪夢)
艦娘(姉と仲間達を、目の前で嬲り頃しにされるその姿。苦しみの叫びと、血を撒き散らして)
艦娘(全てが海の藻屑になった後で、私はゴミのように投げ捨てられた)
86: 2014/07/08(火) 20:19:33.56 ID:hscwiWxL0
艦娘(そして……)
軍人A「……我が海軍のエリート艦隊全部轟沈と引き換えに、生存したのはこの子か」
軍人B「適正テストをしましたが、いやはや、酷い数値ですよ…」
軍人A「フン。彼女と、この子100人。どっちが大事かね?」
軍人B「我々は、獅子を失い、ノミを得た。そういうものです」
軍人C「で。広報発表はどうします?」
軍人A「艦隊と引き換えに、女子生徒一人を守った。それでいいだろう」
軍人B「パッシングは彼女一人に向けさせる、という事ですか」
軍人A「その通りだ。軍への希望者は増える。そっちを探したほうが良かろう」
軍人C「なるほど。世間が彼女を頃してくれますか」
軍人B「いいや、名目上ここに保護するのだよ。そうすれば軍が彼女を汚名から守っていると思わせられる」
軍人C「すると?」
軍人B「何かのモルモットとしては役に立つだろう」
艦娘(私は、文字通り軍人達に監禁された)
艦娘(重傷を負った身であるが、ろくに治療もされず、何かの実験体にでも使われるのを待つ身)
艦娘(食事こそ差し入れてくれるが、それがいつ最後の晩餐になるか解らない)
艦娘(そして目を閉じる度に浮かぶ悪夢が、私を苛めた)
艦娘(どれぐらいの夜が過ぎたか解らない朝になって、見知らぬ姿がやってきた)
???「構わないか?」
艦娘「…?」
???「君の姉は立派な艦娘だった」
艦娘「…」こくり
???「今、世界中の国々が深海棲艦の脅威に晒され、艦娘たちが戦っている」
???「君は確か艦娘に憧れていたんだったな。君の姉の遺品を整理している最中に君からの手紙が出てきたそうだ」
艦娘「……でも、私はお姉ちゃんを、そしてその仲間達を頃してしまった…」
艦娘「皆の憧れを、希望を…」
???「辛かっただろうな」
艦娘「……優しいんですね。私に優しくしても、意味ないのに」
???「そうかな? 何にも、意味が無い筈は無い。君を助けたら、必ず返してくれるだろう」
軍人A「……我が海軍のエリート艦隊全部轟沈と引き換えに、生存したのはこの子か」
軍人B「適正テストをしましたが、いやはや、酷い数値ですよ…」
軍人A「フン。彼女と、この子100人。どっちが大事かね?」
軍人B「我々は、獅子を失い、ノミを得た。そういうものです」
軍人C「で。広報発表はどうします?」
軍人A「艦隊と引き換えに、女子生徒一人を守った。それでいいだろう」
軍人B「パッシングは彼女一人に向けさせる、という事ですか」
軍人A「その通りだ。軍への希望者は増える。そっちを探したほうが良かろう」
軍人C「なるほど。世間が彼女を頃してくれますか」
軍人B「いいや、名目上ここに保護するのだよ。そうすれば軍が彼女を汚名から守っていると思わせられる」
軍人C「すると?」
軍人B「何かのモルモットとしては役に立つだろう」
艦娘(私は、文字通り軍人達に監禁された)
艦娘(重傷を負った身であるが、ろくに治療もされず、何かの実験体にでも使われるのを待つ身)
艦娘(食事こそ差し入れてくれるが、それがいつ最後の晩餐になるか解らない)
艦娘(そして目を閉じる度に浮かぶ悪夢が、私を苛めた)
艦娘(どれぐらいの夜が過ぎたか解らない朝になって、見知らぬ姿がやってきた)
???「構わないか?」
艦娘「…?」
???「君の姉は立派な艦娘だった」
艦娘「…」こくり
???「今、世界中の国々が深海棲艦の脅威に晒され、艦娘たちが戦っている」
???「君は確か艦娘に憧れていたんだったな。君の姉の遺品を整理している最中に君からの手紙が出てきたそうだ」
艦娘「……でも、私はお姉ちゃんを、そしてその仲間達を頃してしまった…」
艦娘「皆の憧れを、希望を…」
???「辛かっただろうな」
艦娘「……優しいんですね。私に優しくしても、意味ないのに」
???「そうかな? 何にも、意味が無い筈は無い。君を助けたら、必ず返してくれるだろう」
87: 2014/07/08(火) 20:21:49.07 ID:hscwiWxL0
艦娘「できないよ。私はもうじき氏にます」
???「氏なない。氏なせない」
艦娘「どうして!」
???「…君に氏んで欲しくないからだ」
広報官「君の悲劇を残し、伝えなくてはならない。二度とその悲劇を起こさぬ為に、艦娘を増やしていかなければならい」
広報官「その為に君の体験をまとめさせてくれ! 講演で多くの人に話し、少しでも多くの艦娘を―――」
艦娘「お断りします」
広報官「な――――」
艦娘「艦娘であることは、命を賭けて戦う事…ちょっとやそっとの決意で、艦娘になってはいけない…」
艦娘「皮肉ですね。私に昔そう言ったお姉ちゃんも…覚悟、無かったのかも知れませんね」
艦娘(私にその答えを突きつけたのは姉自身。しかし、その答えと向き合えなかったのもまた、姉だった)
広報官「貴様…! どんな立場かわかってるのか!」
艦娘「だからこそです。だからちょっとやそっとの衝動で、人を艦娘にして新たな犠牲者を出すのはお断りです」
艦娘「でも」
艦娘「私ではダメですか?」
広報官「なに?」
艦娘「私が艦娘になるのは、ダメですか」
艦娘「私は、それだけの覚悟を決めました。たった今」
艦娘「私が艦娘になって、皆の憧れで、希望で、誇りになればいい! お姉ちゃんはもういない、なら私がなる!」
艦娘(一世一代の叫びだった。そう、皮肉なもので姉にはない覚悟が、私に出来た瞬間だった)
艦娘(エリート艦隊と引き換えに生き残った私。だからこそ、私は艦娘となる)
広報官「我が軍はお断りだ」
広報官「そもそもお前の評判は最悪だ。町に出たら殺されてもおかしくないぞ」
広報官「ま、その決意は買うがな」
艦娘(僅かばかりの見舞金とともに釈放された)
艦娘(少なくとも国にいては批難される。解りきっていた。そして私は国を出た)
艦娘(たとえどんな場所であろうとも、艦娘になるという事は覚悟を決めること。それがどこであろうと、同じ覚悟が必要だ)
艦娘(数多の海を超えて、私は―――この国で艦娘となる事を選んだ。姉と同じ、戦艦として)
???「氏なない。氏なせない」
艦娘「どうして!」
???「…君に氏んで欲しくないからだ」
広報官「君の悲劇を残し、伝えなくてはならない。二度とその悲劇を起こさぬ為に、艦娘を増やしていかなければならい」
広報官「その為に君の体験をまとめさせてくれ! 講演で多くの人に話し、少しでも多くの艦娘を―――」
艦娘「お断りします」
広報官「な――――」
艦娘「艦娘であることは、命を賭けて戦う事…ちょっとやそっとの決意で、艦娘になってはいけない…」
艦娘「皮肉ですね。私に昔そう言ったお姉ちゃんも…覚悟、無かったのかも知れませんね」
艦娘(私にその答えを突きつけたのは姉自身。しかし、その答えと向き合えなかったのもまた、姉だった)
広報官「貴様…! どんな立場かわかってるのか!」
艦娘「だからこそです。だからちょっとやそっとの衝動で、人を艦娘にして新たな犠牲者を出すのはお断りです」
艦娘「でも」
艦娘「私ではダメですか?」
広報官「なに?」
艦娘「私が艦娘になるのは、ダメですか」
艦娘「私は、それだけの覚悟を決めました。たった今」
艦娘「私が艦娘になって、皆の憧れで、希望で、誇りになればいい! お姉ちゃんはもういない、なら私がなる!」
艦娘(一世一代の叫びだった。そう、皮肉なもので姉にはない覚悟が、私に出来た瞬間だった)
艦娘(エリート艦隊と引き換えに生き残った私。だからこそ、私は艦娘となる)
広報官「我が軍はお断りだ」
広報官「そもそもお前の評判は最悪だ。町に出たら殺されてもおかしくないぞ」
広報官「ま、その決意は買うがな」
艦娘(僅かばかりの見舞金とともに釈放された)
艦娘(少なくとも国にいては批難される。解りきっていた。そして私は国を出た)
艦娘(たとえどんな場所であろうとも、艦娘になるという事は覚悟を決めること。それがどこであろうと、同じ覚悟が必要だ)
艦娘(数多の海を超えて、私は―――この国で艦娘となる事を選んだ。姉と同じ、戦艦として)
88: 2014/07/08(火) 20:23:38.93 ID:hscwiWxL0
鎮守府 執務室
金剛(そして、今だから言える。自身が姉と呼ばれる存在となり、艦娘として戦ってきた今なら)
金剛「何にでも向き合う覚悟は、いつでも出来ている」
比叡「? 姉様? 何か言いました?」
金剛「何も言ってないデース」
榛名「そ、そうですか。あ、金剛姉様宛に手紙が…」
金剛「Mamaからの手紙ネー。後にシマショー!」ポイッ
提督「こら金剛。家族からの手紙をむげに扱うものじゃない」
金剛「どうせ艦娘やめてI'm homeしろという中身デース。そもそも私は英国に帰れまセーン」
霧島「? 姉様、パスポートでも失くされたんですか? それなら大使館に…」
金剛「Shit! あまり良い理由ではありまセーン」
提督「なに? まさか、故郷で好きでもない婚約者に無理やり縁談進められてるとか…」
金剛「Hey、提督! バーニングラァァァァブ!」
金剛「艦娘として…絶対に負けられません。私は、提督をずっとラブしてるね!」
金剛(もう二度と故郷に帰れないことは解っている。だけど、艦娘として、この国で今)
金剛(私は、あんな悲劇を二度と繰り返さぬように。頑張り続ける)
金剛(大丈夫、最高の提督と、最高の仲間達がいるのだから!)
金剛(そして、今だから言える。自身が姉と呼ばれる存在となり、艦娘として戦ってきた今なら)
金剛「何にでも向き合う覚悟は、いつでも出来ている」
比叡「? 姉様? 何か言いました?」
金剛「何も言ってないデース」
榛名「そ、そうですか。あ、金剛姉様宛に手紙が…」
金剛「Mamaからの手紙ネー。後にシマショー!」ポイッ
提督「こら金剛。家族からの手紙をむげに扱うものじゃない」
金剛「どうせ艦娘やめてI'm homeしろという中身デース。そもそも私は英国に帰れまセーン」
霧島「? 姉様、パスポートでも失くされたんですか? それなら大使館に…」
金剛「Shit! あまり良い理由ではありまセーン」
提督「なに? まさか、故郷で好きでもない婚約者に無理やり縁談進められてるとか…」
金剛「Hey、提督! バーニングラァァァァブ!」
金剛「艦娘として…絶対に負けられません。私は、提督をずっとラブしてるね!」
金剛(もう二度と故郷に帰れないことは解っている。だけど、艦娘として、この国で今)
金剛(私は、あんな悲劇を二度と繰り返さぬように。頑張り続ける)
金剛(大丈夫、最高の提督と、最高の仲間達がいるのだから!)
89: 2014/07/08(火) 20:33:52.96 ID:hscwiWxL0
7話目は皆の嫁、金剛さんでした。
深海棲艦がベラベラ喋ってるのは気にしないでください。そんな感じで喋ってるんじゃね?というようなものです。
2回連続で那智さんがMVPだったので、自分も飲もうかと思ったけれど。
問題は>>1は酒好きなのに下戸です。
艦娘にいるとすれば誰かしら?
少なくともヒャッハーさんは無いとして。
深海棲艦がベラベラ喋ってるのは気にしないでください。そんな感じで喋ってるんじゃね?というようなものです。
2回連続で那智さんがMVPだったので、自分も飲もうかと思ったけれど。
問題は>>1は酒好きなのに下戸です。
艦娘にいるとすれば誰かしら?
少なくともヒャッハーさんは無いとして。
引用: 艦娘「艦娘になった理由」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります