109: 2014/10/04(土) 23:30:47.73 ID:c4R1WUbH0
艦娘(美しい真珠)
艦娘(綺麗なそれは、長い時間をかけて育てられるもの)
艦娘(この美しい海で、長い時間をかけて、育てて行くもの)
艦娘(私の家は、そんな真珠の養殖を手がけていた家だった。否、真珠の養殖を家業にしようとしていた)
艦娘(あちこち駆け回って借金した父が山ほど揃えて来たアコヤガイの山を、今でも覚えている)
父「立派なアコヤガイの子供だ」
父「この海は台風が来る事も少ない、穏やかな場所だからな」
艦娘「これだけあれば、どれだけ真珠ができるの?」
父「そうだなあ…数千…数万は行くんじゃないか?」
艦娘「お風呂がいっぱいになる?」
父「ああ。いや…お風呂だけじゃない。学校のプールだっていっぱいになるぐらいだ!」
父「全部育てよう。立派に育ててみるんだ!」
艦娘(余談だが、真珠の養殖というものは数年単位である。そもそも真珠を作るにしても、真珠の核を入れる貝を育てるにも一苦労だ)
艦娘(借金もあったし、決して裕福とはいえない生活。食べ盛りの私はいつもお腹を空かせていた)
艦娘(だけどご飯が食べられないのはしょうがない事。いつか、綺麗な真珠をたくさん作って、私はそんな立派な真珠を誇りに思うのだ)
父「貝もだいぶ大きくなって…ん? なんだ、あれ?」
ニュース『えー、続いてのニュース。インド洋方面から帰還中の漁船集団が深海棲艦に襲われました』
ニュース『積荷のタコが大量に海上に流出し、現在国内にてたこ焼き用のタコの供給が追いつかず…』
父「タコだー!!!」
艦娘「お父さん大変! タコの大群が!」
父「蛸壺をたくさん用意するんだ! タコは貝の天敵だ、貝が食べられてしまう!」
艦娘(とにかく養殖では様々な困難の闘いだった。特にタコとの氏闘は毎年続いた)
艦娘(この時、深海棲艦のせいでタコが流出したと思うと、深海棲艦の事は海から来る怪物だけど許せない、と思っていた)
艦娘(当時子供だった私にとっては、深海棲艦の認識というのはそれぐらいだったのだ)
艦娘(綺麗なそれは、長い時間をかけて育てられるもの)
艦娘(この美しい海で、長い時間をかけて、育てて行くもの)
艦娘(私の家は、そんな真珠の養殖を手がけていた家だった。否、真珠の養殖を家業にしようとしていた)
艦娘(あちこち駆け回って借金した父が山ほど揃えて来たアコヤガイの山を、今でも覚えている)
父「立派なアコヤガイの子供だ」
父「この海は台風が来る事も少ない、穏やかな場所だからな」
艦娘「これだけあれば、どれだけ真珠ができるの?」
父「そうだなあ…数千…数万は行くんじゃないか?」
艦娘「お風呂がいっぱいになる?」
父「ああ。いや…お風呂だけじゃない。学校のプールだっていっぱいになるぐらいだ!」
父「全部育てよう。立派に育ててみるんだ!」
艦娘(余談だが、真珠の養殖というものは数年単位である。そもそも真珠を作るにしても、真珠の核を入れる貝を育てるにも一苦労だ)
艦娘(借金もあったし、決して裕福とはいえない生活。食べ盛りの私はいつもお腹を空かせていた)
艦娘(だけどご飯が食べられないのはしょうがない事。いつか、綺麗な真珠をたくさん作って、私はそんな立派な真珠を誇りに思うのだ)
父「貝もだいぶ大きくなって…ん? なんだ、あれ?」
ニュース『えー、続いてのニュース。インド洋方面から帰還中の漁船集団が深海棲艦に襲われました』
ニュース『積荷のタコが大量に海上に流出し、現在国内にてたこ焼き用のタコの供給が追いつかず…』
父「タコだー!!!」
艦娘「お父さん大変! タコの大群が!」
父「蛸壺をたくさん用意するんだ! タコは貝の天敵だ、貝が食べられてしまう!」
艦娘(とにかく養殖では様々な困難の闘いだった。特にタコとの氏闘は毎年続いた)
艦娘(この時、深海棲艦のせいでタコが流出したと思うと、深海棲艦の事は海から来る怪物だけど許せない、と思っていた)
艦娘(当時子供だった私にとっては、深海棲艦の認識というのはそれぐらいだったのだ)
110: 2014/10/04(土) 23:33:24.50 ID:c4R1WUbH0
ニュース『異状発生した台風13号と14号と15号が海域に高速で接近中です』
ニュース『台風13号は14号と15号の勢いに乗せられ、暴風域の最大風速は鎮守府が半分吹き飛ぶ威力を持っております』
ニュース『専門家によりますと13号の内部で極めて稀な現象、スーパーなんとかが起こっており…』
父「なんで台風が3個も来るんだ! やめてくれ、皆吹き飛んでしまう!」
艦娘「お父さん、言ってるそばから!」
父「急いで避難させないと! 近所の漁船にも応援を頼もう!」
艦娘「大変、船が転覆してる!」
父「ああっ! 大変だ!」
艦娘(あの大嵐の中で吹き飛んだ漁師たちを救助できたのは奇跡に近い)
艦娘(考えてみれば父親は昔からツイてない人だったらしい。台風が直撃したり、タコに悩まされたり)
艦娘(季節は巡り、夏になった)
艦娘「…今日の海は穏やかね」
艦娘(台風を乗り切ったその日はとても良く晴れていて、穏やかな海だった)
艦娘「貝の様子はどうかな? またタコが来てたら捕まえないと…」
艦娘(連日のタコ料理にはうんざりしていたが、それでもタコは駆除しないといけない。そう思って養殖場近くに向かった時だった)
艦娘「ん?」
艦娘(初めて見た時は不思議だった。船もないのに、女の子が浮いていた。背中に機械のようなものをつけて)
艦娘(今まで見た事がなかった、艦娘との初遭遇だった)
艦娘「大丈夫? なんでこんなところに?」
先代吹雪「う…うぅ……」ぼたり、ぼたり、
艦娘「油が漏れてる! 大変! 貝が全滅しちゃう!」
艦娘(とにかく先に漏れている油を処理してから、彼女を船へと引っ張りあげ、家へと連れて帰った)
艦娘(ちなみに滅茶苦茶重かった。当時の私は艤装というのに何の知識もなかった)
父「おお、どうした! 女の子か?」
父「とにかく手当てをしよう。息を吹き返すといいが」
艦娘(満足とはいえないが、私と父は一生懸命手当てをした)
艦娘(何故あんなところにいたのかは解らないが、とにかく拾う神はあるということだ)
父「…それにしてもこれはなんだろう。大砲?」
艦娘「軍の人かな?」
父「でもこんな子供がねぇ」
ニュース『台風13号は14号と15号の勢いに乗せられ、暴風域の最大風速は鎮守府が半分吹き飛ぶ威力を持っております』
ニュース『専門家によりますと13号の内部で極めて稀な現象、スーパーなんとかが起こっており…』
父「なんで台風が3個も来るんだ! やめてくれ、皆吹き飛んでしまう!」
艦娘「お父さん、言ってるそばから!」
父「急いで避難させないと! 近所の漁船にも応援を頼もう!」
艦娘「大変、船が転覆してる!」
父「ああっ! 大変だ!」
艦娘(あの大嵐の中で吹き飛んだ漁師たちを救助できたのは奇跡に近い)
艦娘(考えてみれば父親は昔からツイてない人だったらしい。台風が直撃したり、タコに悩まされたり)
艦娘(季節は巡り、夏になった)
艦娘「…今日の海は穏やかね」
艦娘(台風を乗り切ったその日はとても良く晴れていて、穏やかな海だった)
艦娘「貝の様子はどうかな? またタコが来てたら捕まえないと…」
艦娘(連日のタコ料理にはうんざりしていたが、それでもタコは駆除しないといけない。そう思って養殖場近くに向かった時だった)
艦娘「ん?」
艦娘(初めて見た時は不思議だった。船もないのに、女の子が浮いていた。背中に機械のようなものをつけて)
艦娘(今まで見た事がなかった、艦娘との初遭遇だった)
艦娘「大丈夫? なんでこんなところに?」
先代吹雪「う…うぅ……」ぼたり、ぼたり、
艦娘「油が漏れてる! 大変! 貝が全滅しちゃう!」
艦娘(とにかく先に漏れている油を処理してから、彼女を船へと引っ張りあげ、家へと連れて帰った)
艦娘(ちなみに滅茶苦茶重かった。当時の私は艤装というのに何の知識もなかった)
父「おお、どうした! 女の子か?」
父「とにかく手当てをしよう。息を吹き返すといいが」
艦娘(満足とはいえないが、私と父は一生懸命手当てをした)
艦娘(何故あんなところにいたのかは解らないが、とにかく拾う神はあるということだ)
父「…それにしてもこれはなんだろう。大砲?」
艦娘「軍の人かな?」
父「でもこんな子供がねぇ」
111: 2014/10/04(土) 23:35:50.29 ID:c4R1WUbH0
艦娘(彼女が目を覚ましたのは、二日後の朝の事だった)
先代吹雪「まさか遠征の帰還中に深海棲艦の攻撃に遭うなんて……うぅ…」
先代吹雪「えーと、この島…かなり離れてるんだよね? 本土から?」
父「ええ、まあ。連絡船は二週間に一度ですし」
先代吹雪「電話って…」
艦娘「ないです」
先代吹雪「無線は…」
父「えーと、島の役場にあるんですが」
先代吹雪「ああ、良かった」
父「壊れたんで次の連絡船で新しいのと交換する予定なんですよねー」
先代吹雪「連絡船は?」
艦娘「10日後です」
先代吹雪「あの、何か手伝いますので…宿、教えてもらえませんか?」
父「では、うちの家業を」
艦娘「まあ、あなたが垂れ流した油の処理も大変だったから」
父「こら、言うもんじゃありません」
先代吹雪「ご、ごめんなさい…」
艦娘(なにはともあれ、我が家に艦娘がやってきた)
先代吹雪「広い…これは、貝?」
父「ああ。真珠の養殖だよ」
先代吹雪「真珠って、あの真珠ですよね? 白くて綺麗で」
父「その通りさ! この島で新しい産業にしようと思うんだ。海は穏やかだからね」
先代吹雪「…」
艦娘「どうしたの?」
先代吹雪「穏やか、なんですね。この辺り」
父「ああ。嵐は少ないし、その…あまり怪物の話も聞かない」
先代吹雪「ちょっと、羨ましいですね」
艦娘(彼女は少しだけ遠い目になって、語りだした)
先代吹雪「私の両親は漁師でした。でも、私が子供の頃に、海から怪物が出てきて…それで帰ってこなかったんです」
父「…」
先代吹雪「まさか遠征の帰還中に深海棲艦の攻撃に遭うなんて……うぅ…」
先代吹雪「えーと、この島…かなり離れてるんだよね? 本土から?」
父「ええ、まあ。連絡船は二週間に一度ですし」
先代吹雪「電話って…」
艦娘「ないです」
先代吹雪「無線は…」
父「えーと、島の役場にあるんですが」
先代吹雪「ああ、良かった」
父「壊れたんで次の連絡船で新しいのと交換する予定なんですよねー」
先代吹雪「連絡船は?」
艦娘「10日後です」
先代吹雪「あの、何か手伝いますので…宿、教えてもらえませんか?」
父「では、うちの家業を」
艦娘「まあ、あなたが垂れ流した油の処理も大変だったから」
父「こら、言うもんじゃありません」
先代吹雪「ご、ごめんなさい…」
艦娘(なにはともあれ、我が家に艦娘がやってきた)
先代吹雪「広い…これは、貝?」
父「ああ。真珠の養殖だよ」
先代吹雪「真珠って、あの真珠ですよね? 白くて綺麗で」
父「その通りさ! この島で新しい産業にしようと思うんだ。海は穏やかだからね」
先代吹雪「…」
艦娘「どうしたの?」
先代吹雪「穏やか、なんですね。この辺り」
父「ああ。嵐は少ないし、その…あまり怪物の話も聞かない」
先代吹雪「ちょっと、羨ましいですね」
艦娘(彼女は少しだけ遠い目になって、語りだした)
先代吹雪「私の両親は漁師でした。でも、私が子供の頃に、海から怪物が出てきて…それで帰ってこなかったんです」
父「…」
112: 2014/10/04(土) 23:37:52.56 ID:c4R1WUbH0
先代吹雪「だから子供の頃からずっと、海って怖いもので。泳いだことも無くて、近づくこともあんまりなくて」
先代吹雪「艦娘になったのは、それぐらいしか行き先が無かったからかも知れません。家族もいないし」
先代吹雪「いつかきっと…素敵な真珠を飾って。白いウェディングドレスを着て、お父さんとバージンロードを歩く夢も抱いてたけど」
先代吹雪「それが全部無くなって。海って怖くて、つらいもので、悲しみの象徴」
先代吹雪「だけど…海って、こんなに穏やかなんですね。真珠だって、海から来る」
父「そうだな。海は、優しい顔もある。恐ろしい顔もある」
父「出来ることなら」
父「この真珠が育ったら、君に最高の奴を贈ろう。君がいつか使う為に」
艦娘「…うん! それなら、どんな場所にいたって見える! とても大きいのを贈ろう!」
先代吹雪「…ありがとう!」
艦娘(彼女が飛び切りの笑顔を見せてくれたのは、その時だった)
艦娘「艦娘って、どうやって戦ってるの?」
先代吹雪「まあ、大砲だったり、機銃だったり…空母とかだったら、艦載機とかも飛ばせるよ」
艦娘「飛行機を飛ばすの?」
先代吹雪「うん。弓や、式神とかでね。それぞれ個別の方法で」
艦娘「私にも出来るかな?」
先代吹雪「艦娘にならないと無理かなあ」
艦娘(艦娘という一つの選択肢は、私の心を少しだけ動かした)
艦娘(しかし、それでも真珠に命をかける父の姿と、私自身がまだその事を望んでいた)
艦娘(だが、彼女が来て九日目の朝だった)
父「なんだ? 魚の氏体がだいぶ上がってるな…」
艦娘「なんだろう? 色々海に浮いてる」
父「油かな?」
先代吹雪「おはようございます。どうしました?」
父「ああ、海が変なんだ。初めて見るよ」
先代吹雪「…!」
先代吹雪「海に近づかないでください。お願いします。他の人にも伝えてください!」
父「え? だけど…」
先代吹雪「…深海棲艦が来る…!」
父「!」
先代吹雪「艦娘になったのは、それぐらいしか行き先が無かったからかも知れません。家族もいないし」
先代吹雪「いつかきっと…素敵な真珠を飾って。白いウェディングドレスを着て、お父さんとバージンロードを歩く夢も抱いてたけど」
先代吹雪「それが全部無くなって。海って怖くて、つらいもので、悲しみの象徴」
先代吹雪「だけど…海って、こんなに穏やかなんですね。真珠だって、海から来る」
父「そうだな。海は、優しい顔もある。恐ろしい顔もある」
父「出来ることなら」
父「この真珠が育ったら、君に最高の奴を贈ろう。君がいつか使う為に」
艦娘「…うん! それなら、どんな場所にいたって見える! とても大きいのを贈ろう!」
先代吹雪「…ありがとう!」
艦娘(彼女が飛び切りの笑顔を見せてくれたのは、その時だった)
艦娘「艦娘って、どうやって戦ってるの?」
先代吹雪「まあ、大砲だったり、機銃だったり…空母とかだったら、艦載機とかも飛ばせるよ」
艦娘「飛行機を飛ばすの?」
先代吹雪「うん。弓や、式神とかでね。それぞれ個別の方法で」
艦娘「私にも出来るかな?」
先代吹雪「艦娘にならないと無理かなあ」
艦娘(艦娘という一つの選択肢は、私の心を少しだけ動かした)
艦娘(しかし、それでも真珠に命をかける父の姿と、私自身がまだその事を望んでいた)
艦娘(だが、彼女が来て九日目の朝だった)
父「なんだ? 魚の氏体がだいぶ上がってるな…」
艦娘「なんだろう? 色々海に浮いてる」
父「油かな?」
先代吹雪「おはようございます。どうしました?」
父「ああ、海が変なんだ。初めて見るよ」
先代吹雪「…!」
先代吹雪「海に近づかないでください。お願いします。他の人にも伝えてください!」
父「え? だけど…」
先代吹雪「…深海棲艦が来る…!」
父「!」
113: 2014/10/04(土) 23:39:02.67 ID:c4R1WUbH0
先代吹雪「だから子供の頃からずっと、海って怖いもので。泳いだことも無くて、近づくこともあんまりなくて」
先代吹雪「艦娘になったのは、それぐらいしか行き先が無かったからかも知れません。家族もいないし」
先代吹雪「いつかきっと…素敵な真珠を飾って。白いウェディングドレスを着て、お父さんとバージンロードを歩く夢も抱いてたけど」
先代吹雪「それが全部無くなって。海って怖くて、つらいもので、悲しみの象徴」
先代吹雪「だけど…海って、こんなに穏やかなんですね。真珠だって、海から来る」
父「そうだな。海は、優しい顔もある。恐ろしい顔もある」
父「出来ることなら」
父「この真珠が育ったら、君に最高の奴を贈ろう。君がいつか使う為に」
艦娘「…うん! それなら、どんな場所にいたって見える! とても大きいのを贈ろう!」
先代吹雪「…ありがとう!」
艦娘(彼女が飛び切りの笑顔を見せてくれたのは、その時だった)
艦娘「艦娘って、どうやって戦ってるの?」
先代吹雪「まあ、大砲だったり、機銃だったり…空母とかだったら、艦載機とかも飛ばせるよ」
艦娘「飛行機を飛ばすの?」
先代吹雪「うん。弓や、式神とかでね。それぞれ個別の方法で」
艦娘「私にも出来るかな?」
先代吹雪「艦娘にならないと無理かなあ」
艦娘(艦娘という一つの選択肢は、私の心を少しだけ動かした)
艦娘(しかし、それでも真珠に命をかける父の姿と、私自身がまだその事を望んでいた)
艦娘(だが、彼女が来て九日目の朝だった)
父「なんだ? 魚の氏体がだいぶ上がってるな…」
艦娘「なんだろう? 色々海に浮いてる」
父「油かな?」
先代吹雪「おはようございます。どうしました?」
父「ああ、海が変なんだ。初めて見るよ」
先代吹雪「…!」
先代吹雪「海に近づかないでください。お願いします。他の人にも伝えてください!」
父「え? だけど…」
先代吹雪「…深海棲艦が来る…!」
父「!」
先代吹雪「艦娘になったのは、それぐらいしか行き先が無かったからかも知れません。家族もいないし」
先代吹雪「いつかきっと…素敵な真珠を飾って。白いウェディングドレスを着て、お父さんとバージンロードを歩く夢も抱いてたけど」
先代吹雪「それが全部無くなって。海って怖くて、つらいもので、悲しみの象徴」
先代吹雪「だけど…海って、こんなに穏やかなんですね。真珠だって、海から来る」
父「そうだな。海は、優しい顔もある。恐ろしい顔もある」
父「出来ることなら」
父「この真珠が育ったら、君に最高の奴を贈ろう。君がいつか使う為に」
艦娘「…うん! それなら、どんな場所にいたって見える! とても大きいのを贈ろう!」
先代吹雪「…ありがとう!」
艦娘(彼女が飛び切りの笑顔を見せてくれたのは、その時だった)
艦娘「艦娘って、どうやって戦ってるの?」
先代吹雪「まあ、大砲だったり、機銃だったり…空母とかだったら、艦載機とかも飛ばせるよ」
艦娘「飛行機を飛ばすの?」
先代吹雪「うん。弓や、式神とかでね。それぞれ個別の方法で」
艦娘「私にも出来るかな?」
先代吹雪「艦娘にならないと無理かなあ」
艦娘(艦娘という一つの選択肢は、私の心を少しだけ動かした)
艦娘(しかし、それでも真珠に命をかける父の姿と、私自身がまだその事を望んでいた)
艦娘(だが、彼女が来て九日目の朝だった)
父「なんだ? 魚の氏体がだいぶ上がってるな…」
艦娘「なんだろう? 色々海に浮いてる」
父「油かな?」
先代吹雪「おはようございます。どうしました?」
父「ああ、海が変なんだ。初めて見るよ」
先代吹雪「…!」
先代吹雪「海に近づかないでください。お願いします。他の人にも伝えてください!」
父「え? だけど…」
先代吹雪「…深海棲艦が来る…!」
父「!」
114: 2014/10/04(土) 23:40:06.68 ID:c4R1WUbH0
艦娘(小さな島に深海棲艦の姿を知るモノは殆どいない。だが、怪物という事だけは解っていた)
艦娘(漁業に出ている漁師たちが慌てて家に逃げ戻ってきた)
先代吹雪「弾丸少ないし、魚雷も2発しかないか…しょうがないよね」
艦娘「行く、の?」
先代吹雪「うん。それが仕事だから」
艦娘「でも、それ壊れてる」
先代吹雪「大丈夫。たとえ何体来たって怖くない」
先代吹雪「それにね。アイツらがいたら、貝だって全滅しちゃう。アイツらは海の資源も壊しちゃう」
先代吹雪「私がやっつけちゃうんだから!」
艦娘(そして彼女は壊れたままの艤装をつけ、弾丸の少ない砲を掲げて沖へと向かった)
艦娘(沖へ、とにかく島から離れた場所で戦おうとして)
艦娘(止めるべきだったのか否かは、今でも解らない。でも…)
艦娘(夕暮れの頃に大砲の音が幾度も響いて、島からも見えるほどの火が何度も放たれて)
艦娘(そして夜のうちに、戦いは終わった)
艦娘「…!」
父「なんてことだ……」
艦娘(沖から、こちらへ戻ってきた彼女の姿は誰が見ても重傷だった。もう、長くないことははっきりしていた)
先代吹雪「貝は…貝は……」
父「…あ、ああ」
艦娘(深海棲艦との激しい戦いで流出した油が、弾薬が…まさに私達の家の貝カゴを直撃していた)
艦娘(どれもこれも、氏んでいる。父の顔が曇っているのが解っていく。だが)
父「だ、大丈夫だ! 君は、貝を守ったんだ! 素敵な真珠が出来るぞ!」
先代吹雪「見たい…どんな貝だろ…」
艦娘(力なく微笑む彼女の先に、一つだけ貝があった)
艦娘(小ぶりで、成長が遅れている。でも、一つだけ被害を免れていた。たくさんあった貝の、一つだけ)
父「ほ、ほら! ごらん、綺麗な色をしてるだろう?」
先代吹雪「綺麗……」
先代吹雪「素敵な真珠に…なるといいな」
艦娘「私達を…守ってくれた…だけじゃない、貝を…」
先代吹雪「いつか…いつか綺麗に……優しい海で…綺麗な真珠をつけて……」
艦娘「…いつか、綺麗な…優しい海で…」
艦娘(その日来たの連絡船での輸送中に、彼女は息を引き取った)
艦娘(漁業に出ている漁師たちが慌てて家に逃げ戻ってきた)
先代吹雪「弾丸少ないし、魚雷も2発しかないか…しょうがないよね」
艦娘「行く、の?」
先代吹雪「うん。それが仕事だから」
艦娘「でも、それ壊れてる」
先代吹雪「大丈夫。たとえ何体来たって怖くない」
先代吹雪「それにね。アイツらがいたら、貝だって全滅しちゃう。アイツらは海の資源も壊しちゃう」
先代吹雪「私がやっつけちゃうんだから!」
艦娘(そして彼女は壊れたままの艤装をつけ、弾丸の少ない砲を掲げて沖へと向かった)
艦娘(沖へ、とにかく島から離れた場所で戦おうとして)
艦娘(止めるべきだったのか否かは、今でも解らない。でも…)
艦娘(夕暮れの頃に大砲の音が幾度も響いて、島からも見えるほどの火が何度も放たれて)
艦娘(そして夜のうちに、戦いは終わった)
艦娘「…!」
父「なんてことだ……」
艦娘(沖から、こちらへ戻ってきた彼女の姿は誰が見ても重傷だった。もう、長くないことははっきりしていた)
先代吹雪「貝は…貝は……」
父「…あ、ああ」
艦娘(深海棲艦との激しい戦いで流出した油が、弾薬が…まさに私達の家の貝カゴを直撃していた)
艦娘(どれもこれも、氏んでいる。父の顔が曇っているのが解っていく。だが)
父「だ、大丈夫だ! 君は、貝を守ったんだ! 素敵な真珠が出来るぞ!」
先代吹雪「見たい…どんな貝だろ…」
艦娘(力なく微笑む彼女の先に、一つだけ貝があった)
艦娘(小ぶりで、成長が遅れている。でも、一つだけ被害を免れていた。たくさんあった貝の、一つだけ)
父「ほ、ほら! ごらん、綺麗な色をしてるだろう?」
先代吹雪「綺麗……」
先代吹雪「素敵な真珠に…なるといいな」
艦娘「私達を…守ってくれた…だけじゃない、貝を…」
先代吹雪「いつか…いつか綺麗に……優しい海で…綺麗な真珠をつけて……」
艦娘「…いつか、綺麗な…優しい海で…」
艦娘(その日来たの連絡船での輸送中に、彼女は息を引き取った)
115: 2014/10/04(土) 23:43:02.81 ID:c4R1WUbH0
艦娘(彼女が守ったのは命だけじゃない。その生活も、守ろうとしてくれた)
艦娘(いつか綺麗な、優しい海を夢見た彼女を放ってなんておけなかった)
艦娘「お父さん、私…」
鎮守府 現在
吹雪「わ! どうしたんですか、このネックレス!」
加賀「私の実家からです」
吹雪「綺麗な真珠ですね。大粒で、白くて綺麗で」
吹雪「で、でもどうしてわざわざ? 私と加賀さんって…」
加賀「提督とのケッコンカッコカリなんでしょう? 折角だから、着飾るのも良いでしょう」
吹雪「でもこんな立派なの頂いても」
加賀「心配しないでください。私の家業が、真珠養殖なので」
加賀(生き残った一つの貝を元手に、再び借金した父は数年後に借金を完済、真珠養殖の達人となった)
加賀(お陰で私にも結婚しろとうるさいが。だがこうして美しい真珠を艦娘に贈るぐらいの事はしてくれる)
吹雪「ありがとうございます…加賀さん。大事に、します」
提督「…なあ、加賀。この請求書の金額はナンデショウ? 桁が一つ違う気がするんだが」
加賀「ケッコンカッコカリ代ではありませんか」
加賀(海を見る度に思い出す。全てを守ろうとした彼女の事を)
加賀(だから私は夢を見る。綺麗な優しい海で、いつか。綺麗な真珠のネックレスをつけて、白いウェディングドレスを)
加賀(その夢を見るのは、どんな子にだって許されるのだから)
艦娘(いつか綺麗な、優しい海を夢見た彼女を放ってなんておけなかった)
艦娘「お父さん、私…」
鎮守府 現在
吹雪「わ! どうしたんですか、このネックレス!」
加賀「私の実家からです」
吹雪「綺麗な真珠ですね。大粒で、白くて綺麗で」
吹雪「で、でもどうしてわざわざ? 私と加賀さんって…」
加賀「提督とのケッコンカッコカリなんでしょう? 折角だから、着飾るのも良いでしょう」
吹雪「でもこんな立派なの頂いても」
加賀「心配しないでください。私の家業が、真珠養殖なので」
加賀(生き残った一つの貝を元手に、再び借金した父は数年後に借金を完済、真珠養殖の達人となった)
加賀(お陰で私にも結婚しろとうるさいが。だがこうして美しい真珠を艦娘に贈るぐらいの事はしてくれる)
吹雪「ありがとうございます…加賀さん。大事に、します」
提督「…なあ、加賀。この請求書の金額はナンデショウ? 桁が一つ違う気がするんだが」
加賀「ケッコンカッコカリ代ではありませんか」
加賀(海を見る度に思い出す。全てを守ろうとした彼女の事を)
加賀(だから私は夢を見る。綺麗な優しい海で、いつか。綺麗な真珠のネックレスをつけて、白いウェディングドレスを)
加賀(その夢を見るのは、どんな子にだって許されるのだから)
116: 2014/10/04(土) 23:49:06.91 ID:c4R1WUbH0
今回は加賀さんでした。
クールな加賀さんだからこそ、綺麗なものへの憧れとかがあるのかもと妄想してみる。
次回でラストにする予定です。
クールな加賀さんだからこそ、綺麗なものへの憧れとかがあるのかもと妄想してみる。
次回でラストにする予定です。
引用: 艦娘「艦娘になった理由」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります