891: 2010/07/03(土) 16:56:27.80 ID:bZ9K1AAO
「今日のお夕飯は、何がよろしいでございましょうか?」
イギリス清教の女子寮、その食堂の中でオルソラが不思議なほど丁寧な言葉遣いで尋ねた。
今この場にいるのは、本日の食事当番であるオルソラと、ちゃっかり摘まみ食いしにきたアンジェレネの二人だけである。
「それじゃ、あの、チョコパフェとかプリンとか食べたいです、シスター・オルソラ!」
それと、いちごのケーキとか! とアンジェレネは、オルソラが聞いた「夕飯」という言葉の意味がわかっていないのか、それとも聞いていないのか、自分が食べたいモノをひたすら提示していく。
それはもう、嬉しそうに。
「ふむふむ。それでは、今日のお夕飯は甘味尽くしに――」
「やめてください、シスター・オルソラ」
と、オルソラの言葉は、いつの間にか現れた何者かに遮られ、
ぱああ、と甘味尽くしの喜びを体で表現しようとしていたアンジェレネは、その何者かにほっぺたを引っ張られていた。
892: 2010/07/03(土) 16:59:23.36 ID:bZ9K1AAO
「ひ、ひはい! ひはいれす! はらひれくらはい!」
アンジェレネは、今にも泣きそうな顔で突然現れた敵に訴えかける。
その表情に敵は観念したのか長い息を吐くと、
「……シスター・アンジェレネ。あなたは、私達の食事をそのようなメニューにするつもりだったのですか。それと、いつも言ってるように、修道女らしい食事を心がけなさい! わかりましたか!?」
さらにほっぺたを引っ張る力を強めていく。
当然、ただでさえ泣き出しそうだったアンジェレネの顔から、みるみる
生気が抜けていく。
「ほら! 聞いてるんですか!?」
「あ、あのー、ルチアさん? そろそろ離してあげないと、アンジェレネさんが……」
ん? とオルソラの言葉に、敵――ルチアは右手をみる。
目線を下に下に運んでいくと、そこには梅干しのように真っ赤に腫れ上がったアンジェレネの顔が!
「ッ!?」
あわてて手を離すが、アンジェレネは未だにぐったりしており、生気は感じられない。
あるのは、もの悲しげに揺れている金髪三つ編み頭だけである。
そんなアンジェレネを見て、オルソラは普段見られないような顔をしていた。
893: 2010/07/03(土) 17:00:57.03 ID:bZ9K1AAO
いつもはこう「あらあらにこにこ」といった感じなのに、今は「あわあわいそいそ」といった感じである。
そんなオルソラとは対照的に、この災いを引き起こした張本人であるルチアは、やけに平然としていた。
「あのー、どうしてルチアさんはそんなに平然としていらっしゃるのでございましょうか」
当然の疑問。
だが、ルチアはこれまた平然と、
「この子はまだまだ修行中の身、甘やかしてはいけません」
母親か、と言いたくなるような台詞を放った。
ルチアからしてみれば、それが完璧な答えなのだろうが、それがオルソラにとってそうなのかと言われればそうじゃないに決まっている。
依然、心配そうな顔をしていた。
ルチアは、流石にオルソラの心配そうな顔を見たくないのか、
はあ、仕方ありませんね。と、修道服の袖口から歯みがき粉のようなチューブを取りだし、
ぐったりしたままのアンジェレネの顔前に近づけていくと、
「シスター・アンジェレネ。もし起きたらこれをあげましょう」
と言いきる前にアンジェレネの顔が跳ね上がり、チューブを奪おうとする。
ルチアはその動きを読んでいたのか、器用に手を捌きながらオルソラの方を見て、
ね、簡単でしょう?
オルソラは、一瞬驚いたような顔をつくるが、すぐにいつものにこにこ顔に戻り、
「ところで、今日のお夕飯はどうしましょうか」
894: 2010/07/03(土) 17:03:14.65 ID:bZ9K1AAO
おしまーい
ルチアかわいいよルチア
なんだかんだでオチがないけど、そこはほら、妄想してね!
ルチアかわいいよルチア
なんだかんだでオチがないけど、そこはほら、妄想してね!
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