28: 2013/09/16(月) 17:02:28 ID:YvawR4lo
ゲーム屋
男「いらっしゃいませー」

河童「……あ、あの…その…ゲーム下さい…」

男(夏なのにマスクにニット帽って…変わった子供だなぁ)

男「ゲームのタイトルは?」

河童「? …たいとる?」

男「ああ、名前のことだよ」

河童「名前……」

河童「……分かんない」

男「? 見たことがあるだけってこと?」

河童「うん、友達が持ってるの…」

河童「……買えないの?」ウルッ

男「そ、そっか、それじゃあ一緒に探してあげるよ」

30: 2013/09/16(月) 17:10:47 ID:YvawR4lo
男「えーと、ハード…ゲーム機が何か分かる?」

河童「分かんない」

男「形とかは?」

河童「長方形」

男「PSPかな?コレ?」

河童「…違う」

男「VITAかな?」

河童「違う」

男「えーっと、ゲームボーイは…今の子供が知ってるわけないか…」

河童「! それ!」

31: 2013/09/16(月) 17:21:00 ID:YvawR4lo
男「おぉ…今の子供がゲームボーイを欲しがるとは……少し感動した」

河童「これで遊べる…!」ギュッ

男(そんなに嬉しいもんかねぇ、まあ子供の頃の俺にとってはゲーム屋は宝島だったからな、今の子供もソコは一緒か)

男「それじゃあ次はソフトだね、覚えてる?」

河童「えっとね、不思議な動物と一緒に旅をするの」

男(アバウトだけど…ゲームボーイで不思議な動物との旅と言ったらやっぱり……)

男「もしかしてポケモン?」

河童「うん!そう!ぽけもん!」

33: 2013/09/16(月) 17:31:45 ID:YvawR4lo
男「ちょっと待ってて」サラサラ

河童「何描いてるの?」

男「ゲームボーイのポケモンって大きく分けて二つあるからさ、間違った方を選ばないように登場ポケモンを少々……」サラサラ

男「出来た、どう?見覚えある?」

河童「この亀は見たことある気がする…」

男「て事は赤・緑か」

河童「お兄さん絵が上手だね」

男「ははっ、子供の頃は絵ばっかり描いてたからね、それじゃあソフトを持ってくるよ」

34: 2013/09/16(月) 17:40:42 ID:YvawR4lo
男(しかし、何で今時赤・緑なんだろう?子供の間で流行ってるのかな?)ガサゴソ

男(しかもあの子…ポケモンを知らないとは……帰国子女か何かか?)スタスタ

男「持ってきた…よ……?」

河童「きゅ~」グッタリ

男「えっ!?ええぇ!?だ、大丈夫!?そりゃ真夏にそんな格好でエアコンもついてないボロゲーム屋にいたら……」グイッ ポロッ

河童「帽子……!」ハッ

男「さ、皿…?」

35: 2013/09/16(月) 19:25:09 ID:YvawR4lo
男「……」

河童「み、水を…」

男「……み、水が欲しいのか!?少し待ってろ!!」ダッ



河童「……」ゴクゴクッ

男(クチバシ……)

河童「プハッー、ありがとう」

男「お、おう…」ジロッー

河童「…ぼ、ぼくが何なのか分かる…?」

男「河童…ですか?」

河童「う…うん、そうだよ河童だよ」

37: 2013/09/16(月) 19:40:53 ID:YvawR4lo
男「河童なんて初めて見たよ…」

河童「……そっか、初めてか…」

男「なんだ…その…河童の間でもゲームは流行ってるのか?」

河童「ううん、河童の世界は水の中だからね」

男「でも友達が持ってるって…」

河童「それは…それはね…ぼくの友達は人間なんだ」

38: 2013/09/16(月) 19:48:06 ID:YvawR4lo
河童「とっても良い子でね、河童のぼくとも遊んでくれたんだ」

河童「その子は重い病気でね、他の子みたいに外で走り回ったりはできなかったんだ」

河童「だから友達がいなかった、その子にとってぼくが初めての友達だったんだ、ぼくにとってもだけど」

河童「一緒に歌を唄ったり、宝物を見せ合ったり、絵を描いたり、ゲームをしたり……本当に本当に楽しかったね」

河童「ねぇ?お兄さん?」

男「えっ?」

39: 2013/09/16(月) 19:55:21 ID:YvawR4lo
男(この子は…なにを言ってるんだ??あれ?意識が……)



十数年前

少年「河童くん、これ見て」

河童「何これ?」

少年「ゲームだよ、おとうさんが買ってくれたんだ」

河童「見たことない動物がいっぱいだねぇ」

少年「全部僕が集めたんだ」フフンッ

河童「すごいねぇ……あれ?でもここ埋まってないよ?」

少年「ああ、そこは同じゲームを持ってる人がいないと埋まらないんだって」

河童「へ~」

40: 2013/09/16(月) 20:00:46 ID:YvawR4lo
河童「それじゃあ、ぼくもそのゲームを買うよ」

少年「大丈夫?大人に見つかったら危なくない?」

河童「大丈夫、大丈夫、あと少ししたら変化の術を教えてもらえるから、そしたら一緒にどこへでも行けるようになるよ」ニコッ

少年「本当?約束だよ?」

河童「うん!約束さ!」

41: 2013/09/16(月) 20:08:30 ID:YvawR4lo



少年「河童くん……僕たちもうお別れかもしれない…」

河童「え!?どうして!?」

少年「お母さんやお父さん、先生の顔を見て、なんとなく分かったんだ…僕の命はもう長くないって……」

河童「そんな!元気になったら一緒に相撲するって約束だったじゃないか!?」

少年「ごめん…」

河童「山や川で今までの分いっぱい遊ぶんじゃないのか!?」

少年「…ごめん……」グッ

42: 2013/09/16(月) 20:16:06 ID:YvawR4lo
河童「一緒にゲームをするって約束したじゃないか!!?」ジワッ

少年「…僕だって……」グッ

少年「僕だって…!僕だってもっと生きたいよ!!やっと友達が出来たんだ!!約束だっていっぱいしたんだ!!!」ウルッ

少年「でも…でも……何で…」ポロッポロッ

河童「……」ポロッポロッ

うええぇぇぇん うええぇぇん うわああぁぁん

うえぇん… うわぁん…



43: 2013/09/16(月) 20:23:10 ID:YvawR4lo



男(……何だここは?真っ暗で…狭いや…)

河童「……」

男(河童?どうしてこんなところに……)

長老「…お前の行いは間違ってはいなかった、しかし許してくれ、掟なんだ」

河童「…はい」

長老「一族の秘薬を盗んだとは言え友を思う気持ちは皆理解している、ただ相手が人間であったのが……」

河童「人間にだっていい子はいるんです…」

長老「……あの子のお前に関する記憶は消しておいたぞ」

河童「……」

44: 2013/09/16(月) 20:34:07 ID:YvawR4lo
長老「…言い残す事は?」

河童「…その気になればあの子の秘薬の効果を消すこともできたんでしょう?」

長老「……」クルッ

男(おい!?こんな所に河童を残してどこへ行くんだ!?)

河童「…ありがとうございます、ぼくは友達を救えました」

男(息が苦しい……まさか閉じこめる気か!?止めろ!まだ子供だろ!?)

長老「……お前が目覚める頃にはあの悪習を無くしとくからな」

男(止めろ…!止めろ!!止めろ!!止めろぉ!!!)

河童「おやすみなさい……」

男「止めろおおおぉぉぉっ!!!」ガバッ

45: 2013/09/16(月) 20:41:52 ID:YvawR4lo
男「はっ!河童!?河童は!?」キョロキョロ

河童「……長老がね封印を解いた時に教えてくれたんだ…『記憶を消してはいない、封じただけだ』って…」

河童「ははっ……本当だったみたいだね…」ポロポロッ

男「…河童……」ダキッ

男「ありがとう……本当にありがとう……!」ポロッポロッ

うわああぁぁぁん うええぇぇぇん うわああぁぁぁん

うわぁん… うえぇん…



46: 2013/09/16(月) 20:54:35 ID:YvawR4lo
男『ゲーム屋から大の大人と子供の泣き声……田舎のボロゲーム屋でよかったと本当に思う』

男『河童の話しによると河童一族の人間に対する無差別な敵意もほとんど薄れてるみたいだ』

男『まあそれでも川でゴミを捨てる奴には容赦無いらしいが…まあ何が言いたいかというと自然は大切にってことだ』

河童「男くーん!あっそびっましょー!」

男「おー、いらっしゃいー」

河童「今日こそフーディンに勝ってみせるよ!」

男「いや、だからカイリキーじゃ無理だろ」


49: 2013/09/16(月) 22:28:01 ID:aScLV4so


えかった

引用: カッパ「人間の村でゲーム買おう」