1: 2009/04/16(木) 00:04:52.38 ID:YH45HYB10

6: 2009/04/16(木) 00:13:15.48 ID:YH45HYB10
転校生「ククク……よもや温泉あがり直後に卓球勝負を挑まれるとは思うまい」
在校生「イベントに乗っかるのは不本意だが、受けて立とう」
転校生「莫迦な、中国式ペンだとぉ!?」
在校生「ふははは、卓球王国中国の技、見せてやろう!」
転校生「貴様ぁ……日本人としての魂を売り渡したか!」
在校生「ふん! 俺が魂はたわわに実ったふたつのみぞ!」
転校生「何たる恥辱! 何たる恥辱!」
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)

10: 2009/04/16(木) 00:23:15.63 ID:YH45HYB10
転校生「ククク……よもやあの雄大なりし滝が一瞬で消えるとは思うまい」
在校生「鏡と空気による光線の屈曲か」
転校生「莫迦な、タネを見破っただとぉ!?」
在校生「ふははは、空間マジックの基本中の基本よ!」
転校生「私が練り込んだ苦労はどうしてくれる……もはや堪忍できぬ!」
在校生「ふん! 俺が求めしは美麗なる景色ぞ!」
転校生「何たる放置! 何たる放置!」

11: 2009/04/16(木) 00:28:22.00 ID:YH45HYB10
転校生「ああ、楽しかった……」
在校生「お疲れ」
転校生「なんのなんの、この程度。私はまだまだいけるぞ!」
在校生「じゃあ、校庭まで戻ってもう一度バスに」
転校生「もう行きたくないわ!」
在校生「……ま、お疲れ」
転校生「貴様こそ、疲れたのではないか? 何やら足元がおぼつかないようすだが」
在校生「ご冗談を、このくらいで疲れるほどやわではないぞ!」

15: 2009/04/16(木) 00:31:48.38 ID:YH45HYB10
らいは笑った。
俺も笑った。

実はちょっと疲れてる。
見て回るのももちろん、やることも多かったからしかたがないけれど。

でも、その笑顔が見れるなら俺は――



「ところで――そろそろ、答えを聞かせてはくれないか?」



――ぎしり、と固まった。

17: 2009/04/16(木) 00:35:28.83 ID:YH45HYB10
反則だ!

と、そう思った。
ここ二日ほど何も聞かないでおいて、別れ際のこのタイミングで、なんて。

――逃げる?

休日が明けたらどうする。

――聞かなかったことにする?

重複する帰り道は短いとはいえ、まだ距離がある。

――じゃあ、どうする?

どうしよう。

どうしよう。どうしよう。どうしよう。



――いっそ、応える?

23: 2009/04/16(木) 00:39:50.27 ID:YH45HYB10
それは……わからない。

このまま惰性で続けていても変わらないのではないか。
こちらからの働きかけこそが変化を生むのではないか。

――断る?

それだけは、ない。

――はぐらかしてはぐらかしきれるのか?





残りは、どれくらいある?





『残り』は?
『残り』は?
『残り』だと?
莫迦じゃないのか、俺は!

28: 2009/04/16(木) 00:45:12.90 ID:YH45HYB10
「なっ!?」

ごん、と鈍い音が電柱を伝った。
二度、三度、がんがんと――殴りつけた。

「何をしているんだ、貴様は!?」

らいが俺の腕をつかみ、止めにかかる。

「ごめん、俺、莫迦だった」



答えなんて決まっていたのに。










「――こちらこそ、よろしくお願いします」

俺は、手を差し出した。

33: 2009/04/16(木) 00:51:24.01 ID:YH45HYB10
反応は劇的だった。

呆けた顔を一瞬見せたかと思うと、次の刹那には目を見開いて驚愕し、
助けを求めるように左右をおろおろと見回して、意を決したようにぎゅっと目をつむる、
深呼吸をひとつ、間を空けすぎないようにだろうかすべての動作が大慌てで、

「あ、あの――うれしい、です」

俺の右手を両手で包み込むように握り、そっとらい自身の胸元へ寄せた。


それを最後に、彼女はくちゃくちゃになって泣き始めた。


どうフォローしたらいいのか迷うくらいの勢いで。


子供のようにあんあんと高く。


そんなに思い詰めさせて、ごめん。

謝ったら、声の大きさは倍になった。

36: 2009/04/16(木) 00:53:57.98 ID:YH45HYB10
だから――


























――意味がわからなかった。

44: 2009/04/16(木) 00:58:48.12 ID:YH45HYB10
クラクションをひとつ。

振り返ると乗用車があった。

スピードは明らかに出しすぎで。

思考は瞬間に白く白く塗りつぶされた。


漂白――



まさかそんなお話じゃあるまいし
あるわけがないそのタイミングで
ウソダ誰がナイ仕組んだマサカ


ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

59: 2009/04/16(木) 01:06:10.70 ID:YH45HYB10
「――だから、大丈夫だといっているだろう」

らいが背中でわめいた。

「まったく、大げさに騒ぎよって。ほら、降ろせ!」

ぽかぽかと肩をたたかれた。

「……歩けないだろ?」
「こんなのただのかすり傷にすぎぬ!」
「……ごめん」

俺は、謝った。



「捻挫のひとつやふたつ、命に比べれば軽すぎるわ!」

ぽか、とらいは一発だけ俺の頭をはたいた。

63: 2009/04/16(木) 01:10:52.48 ID:YH45HYB10
「ほら、着いたぞ」

あまり来たくはなかった場所。
らいの実家。
それなりに大きく古い家は、そこにあるだけで威圧をしているようだった。

「貴様は、心配性すぎる。――おとうさま、ただいま帰りましたぞ」

インターホンにらいが呼びかけた。


十秒ほどで戸が開き、しっかりした体つきの中年男が現れた。

66: 2009/04/16(木) 01:15:25.34 ID:YH45HYB10
「おお、おかえり、らいや」
「うむ、ただいまであるぞ、おとうさま」

親子はにこやかに会話をし、



――父は部外者を締め出すべく、そのまま戸を閉めた。

「ちょ、ちょっと待つのだ、おとうさま!」
「どうしたんだい?」

ああ、このまま締め出してくれたらどれほどかいいことなんだろうけれどな。

「やつは恩人だ、礼をせねばならん!」
「礼?」

「私がこの程度のケガで済んだのはやつのおかげなのだから!」

72: 2009/04/16(木) 01:20:06.11 ID:YH45HYB10
殴られた。

頬が熱い。
ぐわんぐわんに頭が揺れている。

「この野郎が……娘に会うなといったはずだ!」

襟首をつかまれ、起こされて、もう一発。

手加減はない、全力の一撃だろう。

「おとうさま!? な、何をするのだ! やつは恩人だと――」
「うるさい黙れっ! この薄汚い莫迦野郎は! 莫迦野郎は!」

がつん、とさらに一発。

塀に後頭部からぶつかった。

76: 2009/04/16(木) 01:26:32.47 ID:YH45HYB10
「おとうさま! やめてください、おとうさま!」
「うるさい! うるさいうるさいうるさいっ!」

馬乗りになった中年男はさらに一発二発と痛撃を加えていく。

唇が切れた。
頬の中が切れた。
つばの味が血に染まっていた。

避ける気はなかった。
責められて当然だと思ったから。


「おとうさま! おとうさまっ! やめてください――『おじさん』!」


手が、止まった。

「え、あれ? 私……?」

らいが、自分でも自分の声が信じられないように口元に手を当てて、よろめいた。

「らい……娘や、どうして、どうしてだ! どうして、コイツなのだ!? コイツだけなのか!? どうして、父でないのだ!?」

肩をゆすぶられ、

「何、何なの? 怖いよ、やめて……やめてっ!」

らいは、父を突き飛ばした。

84: 2009/04/16(木) 01:31:57.88 ID:YH45HYB10
らいの父はがっくりとうなだれた。

気力のすべてを失ったように。



悪夢のようだった。


つい十分前まで、
つい一日前まで、
つい三日前まで、何もなかったのに。


――きっと何もかも失う。

俺はそう思った。
これはそういうことだ、と思った。


彼女の『大事なもの』はきっとどんどん少なくなって、

そして、何もなくなってしまうのだ、と。

131: 2009/04/16(木) 02:10:19.41 ID:YH45HYB10

ありふれた悲劇というやつだ。

世界にありふれた、というよりは、
物語にありふれた、というような。


あるところに女の子がやってきました。
その娘はとても可愛く、そして強くて、俺は簡単に惚れてしまいました。

可愛い、というのは見た目と物腰でしたが、
強い、というのは腕っ節や口調ではなく行動でした。


至極わかりやすい正義感。
悪いことを悪いといい、正すことにためらわない。
想うだけではなく、頭を働かせ、実行し、ときには大人たちさえも動かしました。

148: 2009/04/16(木) 02:21:03.64 ID:YH45HYB10
大の大人でさえ躊躇してしまうような、いろんな難しいこと。面倒くさいこと。やりたくないこと。
そういったことを恐れず、悩まず、まっすぐにぶつかっていく姿は子供心になんとも格好良かったのでした。

あるとき、俺――当時の僕が、ふとしたことに巻き込まれました。


一言でいえば、恐喝。

明らかにいいがかりとわかるそれで脅し、僕から金銭を奪い取ろうとする阿呆が現れたのでした。

数分違えば、たぶん僕自身が通報していたそんな事件。
しかし、通報をしたのは彼女でした。

157: 2009/04/16(木) 02:29:30.90 ID:YH45HYB10
その阿呆は、たまたまつついてはいけない場所のえらいひとの息子だった、とそれだけの話。


何も知らない僕は、彼女と会う約束をし、人生で初めてのデートに繰り出しました。

中学生のデートなんてたかが知れているけれども、目一杯めかしこんで、小遣いもお年玉も前借して懐を暖かくして、意気揚々と出かけたのです。


何かができたわけではありません。

運動は少しばかり、けれども成績は振るわず、彼女に合わせた会話もできない。
だから、そこで何かを言ったところで関係は悪い方にしか進まない、とそう思っていました。

168: 2009/04/16(木) 02:37:55.94 ID:YH45HYB10
何をどう間違ったのか、正しかったのか、デートの終盤。夜に差し掛かる辺り。
イルミネーションがきらめく街角で、彼女は僕を見上げて目を閉じていました。

どうすればいいのか。

まず、何を言うべきなのか。

そうではなく、行動で示すべきなのか。

あわてました。

あわてあわてておろおろと首を振りました。

踏み切れない僕に、彼女は目を開け、

「先に言葉で。それからがいいな」

にっこりと笑ったのでした。

180: 2009/04/16(木) 02:52:48.65 ID:YH45HYB10
「さあ、早くしとめるがよい! 私はここで貴様に首級をあげられるべく待っているぞ!」

そう彼女がいたずらっぽく、言った――そんな決定的瞬間をわざわざ狙うように、一台の乗用車が突進してきたのです。

もう、莫迦みたいな話。


けれども、その莫迦みたいな話には続きがある。

彼女は奇妙な記憶障害を抱えるようになった。

基準はわからない。
だが、『大事なもの』以外を一年ごとに失うように記憶から消し去ってしまうようになったのだ。


健忘には種類があり、順行性健忘と呼ばれる『今』が記憶できなくなる症状と、逆行性健忘と呼ばれる『過去』が記憶から失われる症状とにわけられる。
だが、彼女のように特定の期間ごとに奇妙なリセットがかかる症例などどこにもない。
あるとすれば、それこそ――


――お話の中だけなのだ。

188: 2009/04/16(木) 03:00:48.56 ID:YH45HYB10
中学の三年間、そして高校一年生の間。

彼女の行動パターンは同じだった。

忘れても忘れても、俺に出会い、そしてアタックを繰り返す。
どれほどか奇妙な行動で、結果ばかりを求めるように早急な――『お話のテンプレ』にみえることをし続けた。

『大事なもの』はどんどん少なくなり、世間は彼女の目に入らなくなった。
友人も消失し、教師もうっすらとしか姿が残らない。

――だって、そうじゃないか。

目の前でいつも漫画のような口調で莫迦騒ぎをされるんだ。
おもしろいか? おもしろいわけがない!


冗談はフィクションだから楽しいんだ。
それを現実に持ち込まれて、どうしろってんだ!

198: 2009/04/16(木) 03:08:55.94 ID:YH45HYB10
「何を……間違ったんだ?」

俺はがんばったつもりだ。

「なあ……」

勉強だってがんばった。
大学推薦だけに集中したといっているが、あれは嘘だ。
手段を問わなかったことは事実だけれど、必要な成績をとるための努力はし続けた。

「俺は……」

委員会活動だって、やりたくなかった。
早く帰りたいし、面倒だし、おもしろくもないし。
それでも必要だった。そうしなければならなかった。

「何を間違っていたんだ……」

すべて彼女のためだ!
フォローする時間を作るために!
各所に謝って少しでも印象を回復するために!

「教えてくれよ、らい!」

201: 2009/04/16(木) 03:11:55.83 ID:YH45HYB10
「わ、私が、貴様に何を教えろというのだ……?」

たすけてください。

「わからないよそんなこと!」

「じゃあ、どうしろというのだ!?」

たすけてください。

「しらないよそんなこと!」

「それでなぜ怒られねばならんのだ!」

たすけてください。


きみしか

たすけられるひとは

いないから

208: 2009/04/16(木) 03:17:26.99 ID:YH45HYB10
何かを間違っているというのなら、今が一番間違っている。

らいの胸倉をつかんで立たせ、おびえるのも構わず恫喝している。

たすけてください、たすけてください、と莫迦みたいに連呼している。


なんでらいに当たらなくちゃいけないんだ。
彼女は何も悪くないじゃないか。

なんでらいに救いを求めなくちゃならないんだ。
彼女はこんなにも腕も足も細いだろ。

なんでらいを責めなくちゃならないんだ。
彼女を今度こそ守ると誓ったのに。


なのに、なのに、なのに――


――どうして、あの瞬間から一歩も進めないんだ!

209: 2009/04/16(木) 03:20:17.66 ID:YH45HYB10
「もう疲れたんだよ……」

「な、何がどうしたというのだ、貴様?」

「なんで、『貴様』なんだよ。違うだろ、らい?」

「何がだ? 私が呼ぶときはいつも『貴様』だったではないか」

「違うんだよ! 違ったんだよ!」


そうじゃなかった。
直前までの彼女は違ったんだ。
柔らかい物腰と優しい口調で、いつだって笑ってた。
強かったけれども、美しかったけれども、それ以上に可愛らしかった。

だから――

220: 2009/04/16(木) 03:26:50.16 ID:YH45HYB10
らいが今どういう状況にあるかを知るのは、俺と彼女の父の他、かかりつけの医師や教師、クラスメイトがいる。

その中で、『今のらい』と向き合っているのは、たぶん俺と彼女の父だけ。

ああ、考えてしまった。

『残り』と。

『残り何ヶ月で彼女はまたリセットされて、なかったことになるんだろうか』と。

そんなこと望んでなかったはずなのに!


「俺は……君に何を言えばいいんだ……!」

226: 2009/04/16(木) 03:31:34.76 ID:YH45HYB10
彼女の父は『おじさん』とついに呼ばれた。

一瞬だけかもしれないが、彼女の中で『大事なもの』から外れてしまったのだ。

俺も彼女の父もたくさんのものを失った。

だけれども、彼女の父はもう失う権利さえなくそうとしている。

彼女の『大事なもの』が俺ひとりとなり、その俺さえもいなくなったら……?


どうすればいい。

何が間違いだった。

何をすれば、彼女は動き出す。


あの瞬間は、もういらないんだ!

235: 2009/04/16(木) 03:37:33.72 ID:YH45HYB10
『先に言葉で。それからがいいな』

『さあ、早くしとめるがよい! 私はここで貴様に首級をあげられるべく待っているぞ!』

この瞬間は、もういらない。



「らい」

「な、なんだ?」

「好きだ、愛している! それでも何が何でも俺は絶対にお前を離さない!」

「え? え? え?」



間違ってたら、いくらでもぶん殴られよう。



俺は――彼女の導きなしで、告白をし、キスをした。


それがあの瞬間の意味だった、と。
あの瞬間に彼女が望んだことだった、と思い込むことにして……。

239: 2009/04/16(木) 03:42:59.69 ID:YH45HYB10

転校生「ククク……よもやクリスマスケーキを家で焼けるものとは思うまい」
在校生「おー、うまいな、これ」
転校生「莫迦な、すでに味見中だとぉ!?」
在校生「ホイップクリームはもっと甘い方が好みかなー」
転校生「……そんなに甘くすると、スポンジの味がわからなくなっちゃうよ?」
在校生「そうかな?」
転校生「そういうものだよ。料理、できるようになったんでしょ?」

242: 2009/04/16(木) 03:45:15.34 ID:YH45HYB10
在校生「あはは……実は、弁当は全部買ってきたものです」
転校生「え?」
在校生「こう、詰め替え詰め替えごまかしごまかしやってきました!」
転校生「うわぁ……それ、いくらかかるの?」
在校生「小学校時代のお正月貯金に果てしなく感謝です」
転校生「も、もったいない……っ」

253: 2009/04/16(木) 03:52:59.42 ID:YH45HYB10

結果からいうと、まだぶん殴られていない。

あの晩のキスをきっかけに、彼女は少しずつ治り始めている。
急激に、ではないにしても十分驚くべきことらしい。

なんでも、かかりつけの医者がいうには、一過性健忘における障害は回復後にも障害中およびその直前の記憶を失わせたままにするのだという。
海馬への血流がどうのこうのと理由はあるようなのだが……まあ、安っぽい言葉で表せば『奇跡』なのだそうな。えらく適当な。
学会に持ち込むも、一笑に付されて「漫画の読みすぎ医師」のレッテルを貼られたとか貼られてないとかいう話も耳にした。どうでもいいが。

260: 2009/04/16(木) 03:57:14.33 ID:YH45HYB10
転校生「あ、そうだ」
在校生「ん? どうかしたの?」
転校生「えっと、おとうさまが『正月にでも彼を連れてきなさい。じっくりと話したいことがある』って」
在校生「……話し合いですむのかなぁ?」
転校生「あ、あはは……だ、大丈夫だよ! 別に悪いことなんてしてないんだから!」
在校生「んー……じゃあ、ぶん殴られないとダメだな」
転校生「えっ?」


在校生「……その、安物だけど、もらってくれないか?」

261: 2009/04/16(木) 03:58:45.75 ID:rBwbAVPa0
転校生「……」
在校生「い、いや、やっぱ急だよなっていうかそのあの、ホラ、クリスマスプレゼントクリスマスプレゼント!」

転校生「……クリスマスプレゼント、なの?」
在校生「うっ!」
転校生「大丈夫、私はどちらでもいいよ」
在校生「……待った」

転校生「はい」
在校生「今度は、自分だけの意思でいわせてくれ」
転校生「はいっ!」 

263: 2009/04/16(木) 04:05:04.59 ID:YH45HYB10
在校生「生活も安定していないし、俺もまだ十八に満たない若造で、頼りないところもあると思いますが……その……」
転校生「はい、ダメ。リテイク」
在校生「り、リテイクってお前……」
転校生「言葉数を多くして濁すなんてずるいよ。私ならいくらでもいえるもん。愛してます大好きです一生そばにいてください」
在校生「うわ、俺の台詞全部持ってかれた!?」

転校生「あはは、それじゃあよろしくね――だんな様♪」



~完~

265: 2009/04/16(木) 04:06:15.80 ID:cALX6BuP0

266: 2009/04/16(木) 04:06:44.85 ID:uyxpfXsz0
何たる乙! 何たる乙!

279: 2009/04/16(木) 04:13:24.70 ID:YH45HYB10
はい、クソコテです。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。

毎度奇妙なシチュエーションを用い、それを中二病的にすり合わせて落とす形式を好む駄文書きです。


これまで書いたもののうち、中編以上は大体全部そんな感じなので……まあ、好みでなかった場合は次回から逃げてくださいませ。すみません。



なお、『ご都合主義』で治ったかというと、実はそうじゃなかったり……。
余力が有り余っている方は、前スレでもうpしたブログにて
『飼い猫が唐突にしゃべりだした』シリーズ
『妹に胸がない』シリーズ
他いくつかが同一世界です。

まず絶望的に解けない謎だと思いますが、お暇がありすぎたら考えてみるのもおもしろい……かも……?

304: 2009/04/16(木) 04:56:54.79 ID:YH45HYB10
読む限りで簡単に解説すると、


空間は『○』で埋め尽くされてますよー
だから、粒子の運動は玉突き衝突ですよー
ってことは、運動中の粒子は実体のない波として存在しますよー
ぶつかったらそこで『●』として現れますよー

ってな話だ

305: 2009/04/16(木) 05:00:19.47 ID:YH45HYB10
>>303
別に問題はないはず

修学旅行の帰り道の話では、
本来行こうとしていたのは、それぞれの現在の住所であり、『転校生の実家』と『在校生の実家』ではないから

306: 2009/04/16(木) 05:04:47.26 ID:YH45HYB10
さて、ではそろそろ寝ます

夜遅く――というか、朝早くまでお付き合い本当にありがとうございました

最後に一言


「何たる感謝! 何たる感謝!」

307: 2009/04/16(木) 05:05:38.34 ID:cALX6BuP0
乙!

341: 2009/04/16(木) 11:12:43.43 ID:YH45HYB10
では、またしばらく。

スレもあまっているし、IFでもなんでも読みたいものがあればリクエストをいってくださいませ。
いくつか対応できるものをあとで書こうと思います。

474: 2009/04/16(木) 23:38:28.99 ID:YH45HYB10
転「ゆーきやこんこん、あーられやこんこ」
在「降っても降っても降っても降ってもまーだ降りやまず」
転「いーぬはよーろこーびにーわかーけまわり」
在「電車は埋まってやーくたーたずー」
転「五センチ積もると交通機関って麻痺するんだねぇ……」
在「首都圏は雪に弱すぎる」

481: 2009/04/16(木) 23:49:20.19 ID:YH45HYB10
転「でも、電車が動かなくていいこともあるよ」
在「?」
転「えいっ!」
在「わ」
転「……ね? こうやって抱きついてても、誰も止めに来れないの」
在「携帯電話も固定電話もひっきりなしに鳴り続けているけど……」
転「おとうさまなんて、しらなーい」
在「不良娘め」
転「ほほほ、もっとお言い、もっとお言い!」

488: 2009/04/16(木) 23:55:34.98 ID:YH45HYB10
転「んー……」
在「寒い?」
転「ちょっと」
在「じゃあ、エアコン強くする?」
転「うーん……毛布が一枚ほしいかも」
在「毛布?」
転「一緒に寝よー」
在「……どっちの意味で?」
転「そういうのは、聞いちゃいけないんだよ……」

492: 2009/04/17(金) 00:03:57.81 ID:jnC08NG90



転「へくしゅっ!」
在「あー、暑い暑い……でも、体離すと寒い寒い」
転「しゃ、シャワー借りるね?」
在「タオルはそっちにあるから」
転「はい」
在「体冷やさないようにな」
転「?」


転「裸ワイシャツにしようか裸Tシャツにしようか悩んでいたら、風邪を引きました……」
在「ああ、お約束どおり……」
転「へくちゅっ!」

501: 2009/04/17(金) 00:13:36.18 ID:jnC08NG90
転「ククク……よもやバレンタインチョコはカカオマスから作っているとは思うまい」
在「カカオの実から作れば手作りか……愚かな」
転「莫迦な、カカオの苗を育成中だとぉ!?」
在「でも、枯れた」
転「気候条件が違いすぎるからねぇ」

504: 2009/04/17(金) 00:20:56.92 ID:jnC08NG90
転「なんだかすごく久しぶりだなぁ……」
在「ふぇっきし!」
転「木々の下をのんびりとした気持ちで歩く……大したことじゃないのにね」
在「へぇっくし!」
転「桜の樹を見たのも何年ぶりだろう、すごくキレイだよ」
在「ぶぁぐじゅ!」
転「……帰る?」
在「おねがいじまず……へっくしょん!」

506: 2009/04/17(金) 00:26:26.92 ID:jnC08NG90
転「新入生のみんなー! 元気ですかー!」
在「はい、返事」
転「声が小さいぞー! ほら、もう一回ー!」
在「はい、もっと大きく」
転「よーし、それじゃあ始めるよー! 新入生歓迎会ー!」
在「はい、拍手」
転「みんな、おねーさんについて来ーい!」
在「はい、『姐御、一生ついていきます』」
転「君たちの命は預かったー! いざ、突貫ー!」


在「お疲れ」
転「き、緊張したよぉ」

510: 2009/04/17(金) 00:31:50.73 ID:jnC08NG90
転「ククク……よもや私が生徒会補欠選挙に出馬するとは思うまい」
在「まあ、そんな気はしてた」
転「莫迦な、専用たすきにプラカードだとぉ!?」
在「大したことはできないけど……応援はするよ」
転「……かなわないなぁ」

513: 2009/04/17(金) 00:37:43.31 ID:jnC08NG90
転「私は先生方やクラスメイトに迷惑をかけながら学校生活を送ってまいりました! ですが、だからこそ立候補すべきだと考えたのです!」
在「はい、拍手」
転「今、私ができることは小さく、また書記という立場も多くを実現するには難しいものでしょう! それでも、この時期に三年生である私が出馬する機会を与えられた、そのことに意味があると思います!」
在「はい、喝采」
転「誰かのために、そして自分の為に! 私は精一杯の仕事を成し遂げることをお約束いたします!」
在「はい、『姐御ー、おっOい何カップー?』」
転「きしゃー!」

514: 2009/04/17(金) 00:42:46.78 ID:jnC08NG90
転「あーあ、落選かぁ……」
在「まあ、しかたないよ。欠員補充とはいえ、三年生だったからね」
転「『私が当選すれば、修学旅行にハワイを選ばせてみせます』くらい、言っちゃえばよかったかなぁ……」
在「零泊一日の強行軍になりそうだ」
転「残念すぎる、私にもできることたくさんあったのに……」
在「でも、うれしそうじゃん?」
転「……うん」


在「あわてなくてもいいよ、ゆっくり行こう……」
転「そうだね……ありがとう……」

516: 2009/04/17(金) 00:47:06.39 ID:jnC08NG90
転「ねー……」
在「んー?」
転「夏休みだよー……」
在「んー」
転「遊びに行こうよー……」
在「んー……」
転「勉強と私、どっちが大事なのー……」
在「今推薦で受かっちゃった方が、いいでしょうに。ほら、らいも勉強勉強」
転「うぅ~……」

521: 2009/04/17(金) 00:53:31.66 ID:jnC08NG90
転「あ、ウォータスプラッシュワールドに立ち入り調査だって」
在「えええええっ!?」
転「な、何? どうしたの?」
在「ありえねえ! ありえねえっすよ先輩!」
転「先輩誰!?」
在「ちょ、調査期間は……?」
転「わからないけど……今日から一週間くらいだって」
在「うぁあああ、どういうことっすかどういうことっすか!」
転「何、何、何なの!?」


在「高かったぞ……。今のチケットは高かったぞー!」

525: 2009/04/17(金) 01:01:23.53 ID:jnC08NG90
転「まあまあ、新しいチケットだってそのうち交換してくれるよ」
在「とりなおしができるんならいいんだけど、予約一杯でもう今年は無理……」
転「なら、払い戻しはあるでしょ?」
在「夏に期待するイベントといえば、プールしかないよ!」
転「プールに行きたいの?」
在「行きたいの!」
転「み、水着の私が見たいの?」
在「見たいの!」
転「じゃあ、今日は水着デーということで」
在「え?」

530: 2009/04/17(金) 01:09:29.48 ID:jnC08NG90
在「……なんか、すごく変な感じ」
転「こういうのは楽しんじゃったもの勝ちだよ」
在「そうかなぁ……?」
転「そんなことよりも!」
在「ん?」
転「おニューの水着なのですが、感想を」
在「んー……」
転「……」
在「『おニュー』って何?」
転「そう来たか……」

534: 2009/04/17(金) 01:18:11.09 ID:jnC08NG90
転「ククク……よもやこんなこともあろうかと切れ目を入れた水着を持ってきていたとは思うまい」
在「ポ口リイベントを意図すれば、その先を読むのは容易ぞ」
転「莫迦な、隠していた予備水着だとぉ!?」
在「ふははは、表でやるにはひとの目が怖い、ならば確実に替えがあると思ったまでよ!」
転「貴様ぁ……このままトップレスでいろというのか!」
在「ふん! 俺が見たいのは朱に染まった愛らしき顔のみぞ!」
転「何たる恥辱! 何たる恥辱!」

541: 2009/04/17(金) 01:29:41.86 ID:jnC08NG90
転「紅葉狩りってあるよね」
在「紅葉を見に行くアレか」
転「紅葉鍋ってあるよね」
在「鹿だな」
転「鹿を狩るときはなんていうの?」
在「鹿狩りじゃないか?」
転「むぅ……」

543: 2009/04/17(金) 01:35:20.30 ID:jnC08NG90
在「なんであの親父は手が早いんだろうな……」
転「一撃目からクロスカウンターだったよね……?」
在「アレは攻撃する気配を感じとったから正当防衛です」
転「ほとんど同じことをおとうさまも主張していたのですが」
在「次のラウンドはぼっこぼこにしてくれる……ふふふ」
転「ええと……何しに来たんだっけ?」
在「新年の挨拶だが?」

547: 2009/04/17(金) 01:43:33.37 ID:jnC08NG90
転「私、合格おめでとうー」
在「自分で言ったよこのひと」
転「ばんざーいばんざーい」
在「そこまで大喜びすることかねぇ」
転「これで来年からも一緒だー、ばんざーい」
在「……」
転「え、え、何? ちょ、ちょっと待って、ここで? ここでするの!?」

550: 2009/04/17(金) 01:49:27.29 ID:jnC08NG90
転「ククク……よもや通りの角で待ち伏せしているとは思うまい」
在「やはり、この角だったか」
転「莫迦な、避けただとぉ!?」
在「ふははは、わざわざ先に家を出た時点で気付いておったわ!」
転「貴様の顔……覚えておくぞ!」
在「ふん! 俺がニヤついているのは君と一緒に登校できるからだけではないわ! 愛しているからであるぞ!」
転「何たる愛情! 何たる愛情!」


在「ま、今後ともよろしく」
転「こちらこそ」


後日談
~完~

554: 2009/04/17(金) 01:55:42.21 ID:jnC08NG90
まあ、そろそろこのネタで引っ張るのも限界でしょ?

だから、引き伸ばしはここまでにしたいな、というのが本音


さて、今日やる次回作の準備を始めるか……

573: 2009/04/17(金) 03:22:20.08 ID:jnC08NG90
ではまた

581: 2009/04/17(金) 06:42:24.38 ID:Ok3g3myN0
お疲れっした

647: 2009/04/17(金) 20:28:59.58 ID:jnC08NG90
書き溜めが……1レス分……だと……?

引用: 転校生「ククク……よもや通りの角で待ち伏せしていたとは思うまい」