608: 2014/04/04(金) 01:15:24.15 ID:NtpKUaako
609: 2014/04/04(金) 01:17:03.43 ID:NtpKUaako
イ級「敵艦発見!」
リ級「んん~、遠いな。このまま接近させて…ん?」
深海棲艦のアウトレンジから飛んでくる砲弾。
リ級「ちょ、ぜ、全艦回避k」
KABOOOOOM!!
提督「……」
Ping! Ping!
三式聴音探信儀が敵潜水艦の接近を告げる。
提督(5時方向…)
爆雷投射機に向かって踵を振り下ろす。勢いよく打ち出される爆雷。
カ級エリ「魚雷発射用意…ってなんだあr」
ドゥーン!!
提督「……」
重巡リ級「敵艦接近中! 駆逐艦…より小さい? とにかく一隻! 前線部隊…殲滅されました!!」
ル級エリ「殲滅!? 馬鹿いわないで頂戴!? なんで一隻でこの短時間に十数隻屠ってるのよ!?」
重巡リ級「ありえない距離からありえない精度でありえない威力の砲」
ぐしゃり。
リ級の頭があった場所を弾が通り過ぎていく。
ル級エリ「え?」
崩れ落ちるリ級の身体。
ル級エリ「え、あ、なに、なにが」
彼女が最期に見たものは
提督「砕け散れ」
46cm三連装砲を凌駕した砲の、その砲口だった。
リ級「んん~、遠いな。このまま接近させて…ん?」
深海棲艦のアウトレンジから飛んでくる砲弾。
リ級「ちょ、ぜ、全艦回避k」
KABOOOOOM!!
提督「……」
Ping! Ping!
三式聴音探信儀が敵潜水艦の接近を告げる。
提督(5時方向…)
爆雷投射機に向かって踵を振り下ろす。勢いよく打ち出される爆雷。
カ級エリ「魚雷発射用意…ってなんだあr」
ドゥーン!!
提督「……」
重巡リ級「敵艦接近中! 駆逐艦…より小さい? とにかく一隻! 前線部隊…殲滅されました!!」
ル級エリ「殲滅!? 馬鹿いわないで頂戴!? なんで一隻でこの短時間に十数隻屠ってるのよ!?」
重巡リ級「ありえない距離からありえない精度でありえない威力の砲」
ぐしゃり。
リ級の頭があった場所を弾が通り過ぎていく。
ル級エリ「え?」
崩れ落ちるリ級の身体。
ル級エリ「え、あ、なに、なにが」
彼女が最期に見たものは
提督「砕け散れ」
46cm三連装砲を凌駕した砲の、その砲口だった。
610: 2014/04/04(金) 01:19:38.02 ID:NtpKUaako
「ざっ、とこんなもんだ」
砲に弾を込めながら一人つぶやく。
「どうせあいつらは追ってくるだろう」
主機の回転数を限界いっぱいまで上げる。レバーが安全装置にあたり、カツンと音を立てる。
「だが、あいつらは追いつけない」
ぷかぷか丸は速度を上げ、サーモン海を突き進んでいく。
「皆には内緒で妖精さんたちに改造施してもらったからな。機関部まで手を入れてるとは思うまいて」
砲に弾を込めながら一人つぶやく。
「どうせあいつらは追ってくるだろう」
主機の回転数を限界いっぱいまで上げる。レバーが安全装置にあたり、カツンと音を立てる。
「だが、あいつらは追いつけない」
ぷかぷか丸は速度を上げ、サーモン海を突き進んでいく。
「皆には内緒で妖精さんたちに改造施してもらったからな。機関部まで手を入れてるとは思うまいて」
611: 2014/04/04(金) 01:20:40.69 ID:NtpKUaako
提督が去ったのちしばらくして、サーモン海近海。
陽炎の指揮下で編成された駆逐隊が、提督を探すため、海原を駆け抜ける。
隊は三つ。駆逐隊旗艦綾波、後詰め部隊旗艦赤城を中心とし、北ルート捜索を担当するあ号、
駆逐隊旗艦白露、後詰め部隊旗艦翔鶴を中心とし、南ルートを捜索するし号、
そして陽炎と後詰め旗艦加賀を中心とした中央ルート捜索担当のか号。
か号は船足の速い島風が斥候を務め、敵を警戒しながら進んでいく。
不知火「……島風より連絡。電探、ソナーともに感なし、目視も敵影一つたりとて見当たらずとのことです」
陽炎「さすがにもう敵の領海といっていいところなのに……。やけに静かじゃない?」
黒潮「うーん、他のルートの救援に向かったのかもしれんなぁ」
陽炎「最短距離の中央ルートをがら空きにして? 一応他の隊に確認とって見ましょうか。不知火、あ号に繋いで」
不知火「了解……繋がりました」
陽炎「こちらか号。北のほうの捜索はどう?」
綾波『哨戒中の敵艦隊一隊と交戦、全艦撃沈しました。司令官は見当たりません』
陽炎「こっちは司令官はおろか、哨戒中の艦隊すら見かけないわ。増援がくる様子は?」
綾波『今のところありませんね……』
陽炎「了解。こっちの警備が手薄だから、もしかしたら北か南に回ったのかもしれない。気をつけて」
綾波『了解しました』
ブツン、という音とともに通信が切られる。
陽炎「ということは南かしら。不知火、し号に繋いで」
不知火「既に繋いであります」
陽炎「ありがと」
時雨『こちらし号旗艦代理、時雨』
陽炎「あれ、白露は?」
時雨『姉さんなら一番先に見つけるんだから、って言って斥候に回っちゃった』
陽炎「えー……」
時雨『潜水艦隊を見つけて沈めたけど、提督は見つからないな……』
陽炎「こっちは敵艦隊どころかはぐれ艦すら見当たらないわ。増援には警戒して」
時雨『了解』
陽炎の指揮下で編成された駆逐隊が、提督を探すため、海原を駆け抜ける。
隊は三つ。駆逐隊旗艦綾波、後詰め部隊旗艦赤城を中心とし、北ルート捜索を担当するあ号、
駆逐隊旗艦白露、後詰め部隊旗艦翔鶴を中心とし、南ルートを捜索するし号、
そして陽炎と後詰め旗艦加賀を中心とした中央ルート捜索担当のか号。
か号は船足の速い島風が斥候を務め、敵を警戒しながら進んでいく。
不知火「……島風より連絡。電探、ソナーともに感なし、目視も敵影一つたりとて見当たらずとのことです」
陽炎「さすがにもう敵の領海といっていいところなのに……。やけに静かじゃない?」
黒潮「うーん、他のルートの救援に向かったのかもしれんなぁ」
陽炎「最短距離の中央ルートをがら空きにして? 一応他の隊に確認とって見ましょうか。不知火、あ号に繋いで」
不知火「了解……繋がりました」
陽炎「こちらか号。北のほうの捜索はどう?」
綾波『哨戒中の敵艦隊一隊と交戦、全艦撃沈しました。司令官は見当たりません』
陽炎「こっちは司令官はおろか、哨戒中の艦隊すら見かけないわ。増援がくる様子は?」
綾波『今のところありませんね……』
陽炎「了解。こっちの警備が手薄だから、もしかしたら北か南に回ったのかもしれない。気をつけて」
綾波『了解しました』
ブツン、という音とともに通信が切られる。
陽炎「ということは南かしら。不知火、し号に繋いで」
不知火「既に繋いであります」
陽炎「ありがと」
時雨『こちらし号旗艦代理、時雨』
陽炎「あれ、白露は?」
時雨『姉さんなら一番先に見つけるんだから、って言って斥候に回っちゃった』
陽炎「えー……」
時雨『潜水艦隊を見つけて沈めたけど、提督は見つからないな……』
陽炎「こっちは敵艦隊どころかはぐれ艦すら見当たらないわ。増援には警戒して」
時雨『了解』
612: 2014/04/04(金) 01:22:27.53 ID:NtpKUaako
陽炎「……うーん、追いついてもいい頃だと思うんだけど。まさか、沈められたりしてないわよね…」
最悪の状況を想像しかけたところで、後ろから声がかかる。
不知火「ん……後詰め部隊から通信が入りました」
陽炎「加賀さんから? 今出るわ」
加賀『こちら加賀。彩雲から提督を発見したとの打電が入ったわ』
陽炎「!? それで司令官は今どこに!?」
加賀『ルンバ沖を突破した、とのことよ』
陽炎「嘘!? いくらなんでも速過ぎるわ!?」
加賀『目算で40ノットぐらい出してるらしいわ』
陽炎「島風で追いつけるかどうかってとこじゃない!!」
加賀『それと、敵艦隊が見当たらない理由も判明したわ』
陽炎「敵の誘導、ってわけじゃなさそうよね」
加賀『どうも、提督自ら砲や魚雷を装備して撃沈してるらしいわ。それにぷかぷか丸に搭載した武装も使ってるみたい』
陽炎「もう司令一人でいいんじゃないかな」
加賀『ダメです。あんな無茶がいつまでも押し通るはずがありません。急いで合流する必要があります』
陽炎「言ってみただけよ。機関全速で向かったほうがいいわね」
加賀『えぇ。秋に使ったポータルを見つけたら開放しておいて』
陽炎「了解。他の隊は?」
加賀『し号もそちらに合流するわ。あ号は北から回り込みます』
陽炎「わかったわ」
陽炎「みんな、聞いたわね。道は司令官によって拓かれているわ。全艦、両舷全速!」
最悪の状況を想像しかけたところで、後ろから声がかかる。
不知火「ん……後詰め部隊から通信が入りました」
陽炎「加賀さんから? 今出るわ」
加賀『こちら加賀。彩雲から提督を発見したとの打電が入ったわ』
陽炎「!? それで司令官は今どこに!?」
加賀『ルンバ沖を突破した、とのことよ』
陽炎「嘘!? いくらなんでも速過ぎるわ!?」
加賀『目算で40ノットぐらい出してるらしいわ』
陽炎「島風で追いつけるかどうかってとこじゃない!!」
加賀『それと、敵艦隊が見当たらない理由も判明したわ』
陽炎「敵の誘導、ってわけじゃなさそうよね」
加賀『どうも、提督自ら砲や魚雷を装備して撃沈してるらしいわ。それにぷかぷか丸に搭載した武装も使ってるみたい』
陽炎「もう司令一人でいいんじゃないかな」
加賀『ダメです。あんな無茶がいつまでも押し通るはずがありません。急いで合流する必要があります』
陽炎「言ってみただけよ。機関全速で向かったほうがいいわね」
加賀『えぇ。秋に使ったポータルを見つけたら開放しておいて』
陽炎「了解。他の隊は?」
加賀『し号もそちらに合流するわ。あ号は北から回り込みます』
陽炎「わかったわ」
陽炎「みんな、聞いたわね。道は司令官によって拓かれているわ。全艦、両舷全速!」
613: 2014/04/04(金) 01:25:12.25 ID:NtpKUaako
深海棲艦、飛行場姫の泊地
「ふぅん、まさか武装してくるとはねぇ」
飛行場姫の偵察機から送られてくる映像を見ながら戦艦棲姫は一人ごちる。
「でも、まぐれ当たりは続かないわよ。アイツに繋いで」
「はいよ」
飛行場姫が備え付けの通信機をチューニングする。ほどなく、通信機から声が届く。
「こちら飛行場泊地。そちら聞こえる?」
「はーい、聞こえてるよー。前線が突破されたそうだねぇ」
通信機の先から聞こえるは深海棲艦らしからぬ明るい声。狂気に満ちた明るい声。
「えぇ。でも貴女ならあのくらい軽く捻り潰せるでしょう?」
「楽勝楽勝。無謀と蛮勇の代償、たっぷり払わせてあげなきゃねぇ。……おっと、哨戒部隊からヤツが海域に入ったとの知らせだ」
「あんまり早く沈めちゃダメよ? 彼女に現実をたっぷり理解させてあげて」
チン
「さて、第二幕の始まりよ」
「しれぇ…」
その様子を、雪風は震えて見ていることしか出来なかった。
「ふぅん、まさか武装してくるとはねぇ」
飛行場姫の偵察機から送られてくる映像を見ながら戦艦棲姫は一人ごちる。
「でも、まぐれ当たりは続かないわよ。アイツに繋いで」
「はいよ」
飛行場姫が備え付けの通信機をチューニングする。ほどなく、通信機から声が届く。
「こちら飛行場泊地。そちら聞こえる?」
「はーい、聞こえてるよー。前線が突破されたそうだねぇ」
通信機の先から聞こえるは深海棲艦らしからぬ明るい声。狂気に満ちた明るい声。
「えぇ。でも貴女ならあのくらい軽く捻り潰せるでしょう?」
「楽勝楽勝。無謀と蛮勇の代償、たっぷり払わせてあげなきゃねぇ。……おっと、哨戒部隊からヤツが海域に入ったとの知らせだ」
「あんまり早く沈めちゃダメよ? 彼女に現実をたっぷり理解させてあげて」
チン
「さて、第二幕の始まりよ」
「しれぇ…」
その様子を、雪風は震えて見ていることしか出来なかった。
614: 2014/04/04(金) 01:29:44.16 ID:NtpKUaako
>>611の注釈:5-4の中央ルートを陽炎たちが、北ルートを綾波たちが、南ルートを白露たちが担当している感じです
というわけで今日はここまで
というわけで今日はここまで
622: 2014/04/06(日) 01:12:57.63 ID:+d0ynYJeo
ルンバ沖海域。波も緩やかで、静かで平和な海と言っても差し支えない。
この静寂は殺戮――恐らくは提督によっての――によって生み出されたものであろうが。
陽炎「このペースだと、司令官はもうサンタクロース海域に突入してるかなぁ」
全速で進みながらひとりごちる陽炎。
不知火「……あら、加賀さんから通信」
陽炎「彩雲からの偵察報告かしら?」ガチャ
加賀『陽炎? サンタクロース諸島前のポータルを過ぎたら慎重に行動した方がいいわ。彩雲が厄介なものを見つけたから』
陽炎「厄介なものって……?」
加賀『大量の艦載機。それもヌ級やヲ級が使ってるいつものやつじゃない』
陽炎「それってまさか……」
加賀『えぇ。さらに悪いことに提督はそいつらがいる方向へ一直線に向かっている』
陽炎「それじゃ、なおさら急がなきゃ!!」
加賀『そうね。でも慌てて注意を疎かにしてはダメ』
陽炎「了解です。ミイラ取りがミイラになってはどうしようもないですし」
ガチャコ
陽炎「……こんなところまで出張ってくるなんて…!!」
焦りを覚えつつ、陽炎たちは進軍を再開する。
この静寂は殺戮――恐らくは提督によっての――によって生み出されたものであろうが。
陽炎「このペースだと、司令官はもうサンタクロース海域に突入してるかなぁ」
全速で進みながらひとりごちる陽炎。
不知火「……あら、加賀さんから通信」
陽炎「彩雲からの偵察報告かしら?」ガチャ
加賀『陽炎? サンタクロース諸島前のポータルを過ぎたら慎重に行動した方がいいわ。彩雲が厄介なものを見つけたから』
陽炎「厄介なものって……?」
加賀『大量の艦載機。それもヌ級やヲ級が使ってるいつものやつじゃない』
陽炎「それってまさか……」
加賀『えぇ。さらに悪いことに提督はそいつらがいる方向へ一直線に向かっている』
陽炎「それじゃ、なおさら急がなきゃ!!」
加賀『そうね。でも慌てて注意を疎かにしてはダメ』
陽炎「了解です。ミイラ取りがミイラになってはどうしようもないですし」
ガチャコ
陽炎「……こんなところまで出張ってくるなんて…!!」
焦りを覚えつつ、陽炎たちは進軍を再開する。
623: 2014/04/06(日) 01:14:27.53 ID:+d0ynYJeo
サンタクロース諸島。ぷかぷか丸は波を掻き分け進んでいく。
「……おかしい。敵の数が少ない」
敵地の真っ只中のはずなのに、妙に敵が少ない。
せいぜい、哨戒中の敵艦隊がまばらにいるくらいである。
「俺が来ていることは向こうも承知のはず。……まるで、別の危険があるから逃げ出したかのよう」
ブゥーン、と、空から響く風切り音。空を見やると雲霞の如く迫ってくる艦載機の群れ。
「あれは……飛び魚艦爆か!」
機関は既に全速、フル回転。軽くカタログスペックを超える40ノットは出ている。
「よかろう、隠し玉を見せてやる」
機関操作のハンドルについている安全装置を取り外す。
「機関、強速ならぬ狂速!! 之字運動開始!」
ゴウッ、と唸りを上げてぷかぷか丸が加速する。
「仰角最大! 三式弾斉射だオラッ!!」
艦載機の群れとすれ違い様に対空弾を発射する。
「これも追加だ! 噴進砲、一斉射!!」
弾は空中で弾け、艦爆の狙いを狂わせる。
だが、全てを落とせるわけもなく、いくつかはぷかぷか丸に着弾する。
「被害は大体船尾のほうか……加速してなかったら氏ねたな」
一息つく間もあらばこそ、雷跡が右舷を掠めるように通り過ぎていく。
魚雷が飛んできた先を見やるとそこには紅く輝く深海棲艦が一隻。
「あーあ、まさかさらに速くなるなんてねぇ。今ので沈むと思ったのに」
「やはり、お前か……戦艦レ級!!」
「くくく……。前線の艦隊をたった一隻で丸ごと殲滅したとか。実に沈め甲斐が有りそうだ」
「上等だ、その首へし折って手土産にしてやるか!!」
「……おかしい。敵の数が少ない」
敵地の真っ只中のはずなのに、妙に敵が少ない。
せいぜい、哨戒中の敵艦隊がまばらにいるくらいである。
「俺が来ていることは向こうも承知のはず。……まるで、別の危険があるから逃げ出したかのよう」
ブゥーン、と、空から響く風切り音。空を見やると雲霞の如く迫ってくる艦載機の群れ。
「あれは……飛び魚艦爆か!」
機関は既に全速、フル回転。軽くカタログスペックを超える40ノットは出ている。
「よかろう、隠し玉を見せてやる」
機関操作のハンドルについている安全装置を取り外す。
「機関、強速ならぬ狂速!! 之字運動開始!」
ゴウッ、と唸りを上げてぷかぷか丸が加速する。
「仰角最大! 三式弾斉射だオラッ!!」
艦載機の群れとすれ違い様に対空弾を発射する。
「これも追加だ! 噴進砲、一斉射!!」
弾は空中で弾け、艦爆の狙いを狂わせる。
だが、全てを落とせるわけもなく、いくつかはぷかぷか丸に着弾する。
「被害は大体船尾のほうか……加速してなかったら氏ねたな」
一息つく間もあらばこそ、雷跡が右舷を掠めるように通り過ぎていく。
魚雷が飛んできた先を見やるとそこには紅く輝く深海棲艦が一隻。
「あーあ、まさかさらに速くなるなんてねぇ。今ので沈むと思ったのに」
「やはり、お前か……戦艦レ級!!」
「くくく……。前線の艦隊をたった一隻で丸ごと殲滅したとか。実に沈め甲斐が有りそうだ」
「上等だ、その首へし折って手土産にしてやるか!!」
624: 2014/04/06(日) 01:17:21.82 ID:+d0ynYJeo
降り注ぐ砲弾、上がる水柱。柱の回廊を縫うようにぷかぷか丸は進んでいく。
(レ級は飛び魚艦爆と烏賊魚雷というインチキ兵器を持っているが、それゆえに電探を持つ枠がない。回避の目は十分にある)
「ほらほら、燃料切れまで踊り狂わせてやろうかぁ!?」
声の聞こえてくるほうに砲弾を撃ち込むも、振り回された尻尾に打ち落とされる。
「痒い痒い! その程度で首が落とせるもんか!」
(危険だが、やはり沈めるには至近での砲雷撃しかないか……)
通りすがりざまに魚雷を打ち込むものの、尻尾で海面を波立たせて起爆タイミングを狂わされる。
「はん、このまま尻尾巻いて逃げるかい?」
(放置したところで飛び魚と烏賊の群れに襲われるのがオチだ。日も沈む。夜戦で決着をつける!!)
「お前こそ今のうちに尻尾巻いて水底に沈め! そうすれば痛い目見たくて済むぜ!」
速度を調整し、レ級へ向けて回頭する。空に日の光はなく、闇が辺りを包み込む。
(レ級は飛び魚艦爆と烏賊魚雷というインチキ兵器を持っているが、それゆえに電探を持つ枠がない。回避の目は十分にある)
「ほらほら、燃料切れまで踊り狂わせてやろうかぁ!?」
声の聞こえてくるほうに砲弾を撃ち込むも、振り回された尻尾に打ち落とされる。
「痒い痒い! その程度で首が落とせるもんか!」
(危険だが、やはり沈めるには至近での砲雷撃しかないか……)
通りすがりざまに魚雷を打ち込むものの、尻尾で海面を波立たせて起爆タイミングを狂わされる。
「はん、このまま尻尾巻いて逃げるかい?」
(放置したところで飛び魚と烏賊の群れに襲われるのがオチだ。日も沈む。夜戦で決着をつける!!)
「お前こそ今のうちに尻尾巻いて水底に沈め! そうすれば痛い目見たくて済むぜ!」
速度を調整し、レ級へ向けて回頭する。空に日の光はなく、闇が辺りを包み込む。
625: 2014/04/06(日) 01:18:34.18 ID:+d0ynYJeo
「さて、最期に何か言っておくことはあるか?」
「そうだねぇ、冥土の土産にいいこと教えてあげようか」
「聞くだけ聞いてやろう。熨斗つけて突っ返してやるが」
「お前の大切なたぁいせつな雪風をさらったのはわ・た・し」
「そうか」
「あれ、反応淡白だねぇ?」
「ドタマと腹と胸に大穴開けるつもりだったのが全身ミンチにすることに変わったぐらいだ」ニタァ
「無理無理。その台詞こそ熨斗つけて返してあげるよ」ニヤァ
「さぁ、覚悟しやがれ!! 機関フル稼働!!」
加速するぷかぷか丸。負けじとレ級も高速で突っ込んでくる。
勝負は一瞬。
(速度、角度、出力よし! 距離…100…50、30、10、今!)
バチン! という音とともに光が闇を切り裂く。
「グアッ!? 目、目が!?」
探照灯の光は夜闇の中でもはっきりものを映し出すほどの輝度である。この光をまともに見たらどうなるか。ご覧の通りである。
「じゃ、約束どおりミンチな」
目がくらんで動けないレ級に向かって砲弾の雨と魚雷の嵐を叩き込む。止めとばかりに艦首魚雷も発射する。
残骸を除けば、もはやそこには戦艦レ級の姿はなかった。
「……これでしばらくは邪魔は出来まい」
この先にある海峡を見やる。
「鉄底海峡か……。夜に着いたのは幸いだな」
ぷかぷか丸の舳先をアイアンボトムサウンドに向け、さらに奥へ、奥へと進んでいく……。
「……あ、首もぎ取るの忘れてた」
「そうだねぇ、冥土の土産にいいこと教えてあげようか」
「聞くだけ聞いてやろう。熨斗つけて突っ返してやるが」
「お前の大切なたぁいせつな雪風をさらったのはわ・た・し」
「そうか」
「あれ、反応淡白だねぇ?」
「ドタマと腹と胸に大穴開けるつもりだったのが全身ミンチにすることに変わったぐらいだ」ニタァ
「無理無理。その台詞こそ熨斗つけて返してあげるよ」ニヤァ
「さぁ、覚悟しやがれ!! 機関フル稼働!!」
加速するぷかぷか丸。負けじとレ級も高速で突っ込んでくる。
勝負は一瞬。
(速度、角度、出力よし! 距離…100…50、30、10、今!)
バチン! という音とともに光が闇を切り裂く。
「グアッ!? 目、目が!?」
探照灯の光は夜闇の中でもはっきりものを映し出すほどの輝度である。この光をまともに見たらどうなるか。ご覧の通りである。
「じゃ、約束どおりミンチな」
目がくらんで動けないレ級に向かって砲弾の雨と魚雷の嵐を叩き込む。止めとばかりに艦首魚雷も発射する。
残骸を除けば、もはやそこには戦艦レ級の姿はなかった。
「……これでしばらくは邪魔は出来まい」
この先にある海峡を見やる。
「鉄底海峡か……。夜に着いたのは幸いだな」
ぷかぷか丸の舳先をアイアンボトムサウンドに向け、さらに奥へ、奥へと進んでいく……。
「……あ、首もぎ取るの忘れてた」
626: 2014/04/06(日) 01:21:21.70 ID:+d0ynYJeo
飛行場姫の泊地。
「レ級Eliteの撃沈確認……。冗談でしょう!?」
偵察からの報告に飛行場姫が驚きの声を上げる。
「あの子一人で一艦隊丸ごと相手に出来る強さよ? 何なのアレ!?」
戦艦棲姫が多少ヤケ気味に雪風に問いかけるが、
「しれぇ……やだ、しれぇがしんじゃうの、やぁ……」
虚ろな目をしてブツブツつぶやくばかり。
「すっかり出来上がってる。後はあいつの氏に様を見せるだけだけど出来上がりすぎてて情報が訊けそうにないわね」
「じゃあどうするの?」
「質でダメなら量で叩き潰す」
飛行場姫の問いにさらりと答える戦艦棲姫。
「私はこいつを連れて最深部へ行く。既に隊は集めてある。ここを通り抜けたら航空機でこっちまで追い立ててやれ」
「私が沈めてしまっても構わないんでしょう?」
「私にもお楽しみを残しておいてよ」
ハハッ、と笑いながら戦艦棲姫は背負っている艤装の右手で雪風を引っ掴み、飛行場を後にした。
空の向こうに広がる暗雲をみやり、一人ごちる。
「……ふん、明日は荒れ模様になりそうね」
「レ級Eliteの撃沈確認……。冗談でしょう!?」
偵察からの報告に飛行場姫が驚きの声を上げる。
「あの子一人で一艦隊丸ごと相手に出来る強さよ? 何なのアレ!?」
戦艦棲姫が多少ヤケ気味に雪風に問いかけるが、
「しれぇ……やだ、しれぇがしんじゃうの、やぁ……」
虚ろな目をしてブツブツつぶやくばかり。
「すっかり出来上がってる。後はあいつの氏に様を見せるだけだけど出来上がりすぎてて情報が訊けそうにないわね」
「じゃあどうするの?」
「質でダメなら量で叩き潰す」
飛行場姫の問いにさらりと答える戦艦棲姫。
「私はこいつを連れて最深部へ行く。既に隊は集めてある。ここを通り抜けたら航空機でこっちまで追い立ててやれ」
「私が沈めてしまっても構わないんでしょう?」
「私にもお楽しみを残しておいてよ」
ハハッ、と笑いながら戦艦棲姫は背負っている艤装の右手で雪風を引っ掴み、飛行場を後にした。
空の向こうに広がる暗雲をみやり、一人ごちる。
「……ふん、明日は荒れ模様になりそうね」
627: 2014/04/06(日) 01:23:49.42 ID:+d0ynYJeo
サーモン海、補給基地。日は既にとっぷりと暮れている。
急いで駆けつけたものの、ぷかぷか丸の残骸も、交戦中のレ級も見当たらなかった。
陽炎「とりあえずポータルオン、と」
駆動音とともに、転移装置が再び動き出す。
ガガーピー
不知火「鎮守府から通信です」
ガチャコ
陽炎「こちらか号隊旗艦陽炎」
大和『陽炎、お疲れ様。ポータルの接続を確認したわ。他の隊もそちらに合流するよう伝達してあるわ』
陽炎「了解です。これからの方針は?」
大和『今夜、金剛姉妹を筆頭に重巡・戦艦中心の編成でアイアンボトムサウンドを制圧するわ。飛行場姫もきっといるはず』
陽炎「あの量の艦載機で襲われたらひとたまりも有りませんからね…」
大和『制圧した後、最深部へ進撃します。あと、昼間の作戦に出た子は鎮守府に戻って休息をとってね。今日は一日お疲れ様』
ガチャ
陽炎「さて、皆聞いたわね。他の隊が来るまで待機、合流後撤収します。アイアンボトムサウンド制圧後、再度出撃の可能性があるので準備を怠らないように。以上!」
了解、の掛け声の後、三々五々休憩に移る。
陽炎「ふー……。まさかこんな奥地にまで行ってしまうなんて……」
暗くなった空を見やる。この先の運命を暗示するかのごとく、暗雲が空の向こうに見える。
陽炎(雪風、司令官……。無事でいてください!)
淀んだ雲に不安を覚え、二人の無事を祈らずにはいられなかった。
急いで駆けつけたものの、ぷかぷか丸の残骸も、交戦中のレ級も見当たらなかった。
陽炎「とりあえずポータルオン、と」
駆動音とともに、転移装置が再び動き出す。
ガガーピー
不知火「鎮守府から通信です」
ガチャコ
陽炎「こちらか号隊旗艦陽炎」
大和『陽炎、お疲れ様。ポータルの接続を確認したわ。他の隊もそちらに合流するよう伝達してあるわ』
陽炎「了解です。これからの方針は?」
大和『今夜、金剛姉妹を筆頭に重巡・戦艦中心の編成でアイアンボトムサウンドを制圧するわ。飛行場姫もきっといるはず』
陽炎「あの量の艦載機で襲われたらひとたまりも有りませんからね…」
大和『制圧した後、最深部へ進撃します。あと、昼間の作戦に出た子は鎮守府に戻って休息をとってね。今日は一日お疲れ様』
ガチャ
陽炎「さて、皆聞いたわね。他の隊が来るまで待機、合流後撤収します。アイアンボトムサウンド制圧後、再度出撃の可能性があるので準備を怠らないように。以上!」
了解、の掛け声の後、三々五々休憩に移る。
陽炎「ふー……。まさかこんな奥地にまで行ってしまうなんて……」
暗くなった空を見やる。この先の運命を暗示するかのごとく、暗雲が空の向こうに見える。
陽炎(雪風、司令官……。無事でいてください!)
淀んだ雲に不安を覚え、二人の無事を祈らずにはいられなかった。
634: 2014/04/08(火) 00:59:53.62 ID:PB+/SAt8o
「さて、アイアンボトムサウンド……またここに来ることになるとはな」
夜の海を進み行くぷかぷか丸。
「あの時も苦労したっけな」
右舷方向に舵を取る。目指す地点は唯一つ。
「……なぁ、飛行場姫!!」
無線で怒鳴りつけると、島に明かりが灯る。
ザザッ、という音ののちに返事が返ってくる。
『へぇ、わざわざ私のところに挨拶に来たんだ?』
「夜が明けたら絶対爆撃しにくるだろ」
『まぁそうだけど』
「だから、今夜のうちに叩き潰す。そのための準備もしてきたしな」
『へー、あの子を放置して?』
「アイツに手を出そうが出すまいがどちらにしろ皆頃し確定だからな」
『ふん、口車には乗らないのね。いいわ。"今は"まだ生きてるわ。ここにはいないけどね』
「それだけ聞けば十分だ。もう一度解体してやるから覚悟しろこの口リビXチ!!」
『駆逐艦娘嫁にした口リコンに言われたかないわ!!』
夜の海を進み行くぷかぷか丸。
「あの時も苦労したっけな」
右舷方向に舵を取る。目指す地点は唯一つ。
「……なぁ、飛行場姫!!」
無線で怒鳴りつけると、島に明かりが灯る。
ザザッ、という音ののちに返事が返ってくる。
『へぇ、わざわざ私のところに挨拶に来たんだ?』
「夜が明けたら絶対爆撃しにくるだろ」
『まぁそうだけど』
「だから、今夜のうちに叩き潰す。そのための準備もしてきたしな」
『へー、あの子を放置して?』
「アイツに手を出そうが出すまいがどちらにしろ皆頃し確定だからな」
『ふん、口車には乗らないのね。いいわ。"今は"まだ生きてるわ。ここにはいないけどね』
「それだけ聞けば十分だ。もう一度解体してやるから覚悟しろこの口リビXチ!!」
『駆逐艦娘嫁にした口リコンに言われたかないわ!!』
635: 2014/04/08(火) 01:00:53.38 ID:PB+/SAt8o
「右九〇回頭!」
飛行場姫は他の深海棲艦と違い、陸の上に居座っている。日が昇れば大量の艦載機で叩き潰しに来ることは明らか。
その前に殺らなければならない。さらに……。
『浮遊要塞、行きなさい!!』
上位の深海棲艦が使用する浮遊要塞。これらを捌かずして標的に近づくことは困難を極める。
「落ちろたこ焼きィ!!」
高空から来るものは主砲で、海面から来るものには魚雷で対応する。
だが、再装填の間を縫って砲撃を打ち込んでくることは避けられない。
『沈め沈めェ!!』
更に、姫本人からも砲撃が飛んでくる。
「ヤバッ!!」
とっさに左腕を上げて防御する。
ゴシャッ、という嫌な音が闇夜に響いた。
飛行場姫は他の深海棲艦と違い、陸の上に居座っている。日が昇れば大量の艦載機で叩き潰しに来ることは明らか。
その前に殺らなければならない。さらに……。
『浮遊要塞、行きなさい!!』
上位の深海棲艦が使用する浮遊要塞。これらを捌かずして標的に近づくことは困難を極める。
「落ちろたこ焼きィ!!」
高空から来るものは主砲で、海面から来るものには魚雷で対応する。
だが、再装填の間を縫って砲撃を打ち込んでくることは避けられない。
『沈め沈めェ!!』
更に、姫本人からも砲撃が飛んでくる。
「ヤバッ!!」
とっさに左腕を上げて防御する。
ゴシャッ、という嫌な音が闇夜に響いた。
636: 2014/04/08(火) 01:03:31.95 ID:PB+/SAt8o
「っ痛ぅ……あぶねぇ……魚雷全部打ち尽くしてなかったら左腕が無くなってたかもな。あと頭」
『悪運の強い奴め…』
砲弾によって大きく潰れた魚雷発射管を外して投げ捨てる。左腕も痛むが、とりあえずまだ動くことを確認する。
「やってくれるねぇ……。そんなお前のためにカクテルを用意してあるんだ。奢ってやるよ」
『……?』
最後の浮遊要塞を打ち落とし、速度を調整しながら舵を切る。
左舷に並べてあるのは燃料を入れ、布で栓をした瓶。
『貴様、何を……!!』
「カクテルはカクテルでもモロトフ・カクテルだがな!!」
岸のぎりぎりまで近寄る。物を投げれば届く距離。飛行場姫が砲を再調整しているが構うことなく次々と布に火をつける。
「九杯でいいな? まずひとーつ!!」
滑走路にぶち当たり割れた火炎瓶が燃え始める。
「ふたーつ! みっつ! よっつ! いつつ!」
火炎瓶を飛行場姫に向かって次々と投擲していく。
『あづっ!! 熱!! 焼ける!!』
流れ星の如く降り注ぐ火炎瓶が、割れては燃料を撒き散らす。
「むっつ! ななつ! やっつ! ここのつ!! そして……」
51cm三連装砲を構え、弾丸を装填する。
『や、やめ……』
弾は三式焼夷弾。飛行場姫のトラウマを抉る弾。
「十!!」
彼女の眼前で炸裂した焼夷弾は、既に燃料まみれとなっていたその体と艤装を悉く焼き尽くした。
「……さーて雪風、待ってろよー」
目指すはサーモン海最深部。
『悪運の強い奴め…』
砲弾によって大きく潰れた魚雷発射管を外して投げ捨てる。左腕も痛むが、とりあえずまだ動くことを確認する。
「やってくれるねぇ……。そんなお前のためにカクテルを用意してあるんだ。奢ってやるよ」
『……?』
最後の浮遊要塞を打ち落とし、速度を調整しながら舵を切る。
左舷に並べてあるのは燃料を入れ、布で栓をした瓶。
『貴様、何を……!!』
「カクテルはカクテルでもモロトフ・カクテルだがな!!」
岸のぎりぎりまで近寄る。物を投げれば届く距離。飛行場姫が砲を再調整しているが構うことなく次々と布に火をつける。
「九杯でいいな? まずひとーつ!!」
滑走路にぶち当たり割れた火炎瓶が燃え始める。
「ふたーつ! みっつ! よっつ! いつつ!」
火炎瓶を飛行場姫に向かって次々と投擲していく。
『あづっ!! 熱!! 焼ける!!』
流れ星の如く降り注ぐ火炎瓶が、割れては燃料を撒き散らす。
「むっつ! ななつ! やっつ! ここのつ!! そして……」
51cm三連装砲を構え、弾丸を装填する。
『や、やめ……』
弾は三式焼夷弾。飛行場姫のトラウマを抉る弾。
「十!!」
彼女の眼前で炸裂した焼夷弾は、既に燃料まみれとなっていたその体と艤装を悉く焼き尽くした。
「……さーて雪風、待ってろよー」
目指すはサーモン海最深部。
637: 2014/04/08(火) 01:05:16.76 ID:PB+/SAt8o
「まさか飛行場姫すら仕留めるなんて……」
飛行場姫からの通信が途絶えた。それはすなわち彼女の敗北を意味している。
「貴女の提督、やってくれるわねぇ……!」
戦艦棲姫は艤装の右手をギシ、と握り締める。だが、握られている雪風の反応は乏しい。
「……しれぇが……ゆきかぜのせいで……だめ…いや…」
「……まぁあいつが氏ぬまで生きてればなんでもいいわ。こっちに向かってくるようだし」
自分から離れて囲うように居並ぶ深海棲艦達を見やる。
「ここまで来れば後は袋小路、デッドエンドというやつよ。やられた仲間の分も含めて清算させてもらいましょうか!」
飛行場姫からの通信が途絶えた。それはすなわち彼女の敗北を意味している。
「貴女の提督、やってくれるわねぇ……!」
戦艦棲姫は艤装の右手をギシ、と握り締める。だが、握られている雪風の反応は乏しい。
「……しれぇが……ゆきかぜのせいで……だめ…いや…」
「……まぁあいつが氏ぬまで生きてればなんでもいいわ。こっちに向かってくるようだし」
自分から離れて囲うように居並ぶ深海棲艦達を見やる。
「ここまで来れば後は袋小路、デッドエンドというやつよ。やられた仲間の分も含めて清算させてもらいましょうか!」
638: 2014/04/08(火) 01:08:39.48 ID:PB+/SAt8o
提督が去ってしばらく後のアイアンボトムサウンド。
金剛「みんな、私についてきて! Follow me!!」
大和「この先が飛行場姫の拠点ですね……」
愛宕「えぇ、この先のはず…だけど……」
摩耶「あいつは白いから遠目でもわかるはずだけどな……電探にも感がないし」
衣笠「あのあたりのはずよね?」
衣笠が島の一つを指さす。
霧島「ちょっと危険ですが……探照灯をつけてみましょうか」パチン
探照灯をつけ、海岸沿いを照らす。そこには、黒く焼け焦げた遺体があった。
いったい誰のものかと、上陸して検分する。
摩耶「何だ、これ……」
大和「まさかこの子が……」
愛宕「この角、髪の長さ…焼け残った艤装……間違いないわ。飛行場姫よ」
霧島「瓶の破片が散ってますね……火炎瓶による攻撃でしょうか」
金剛「これを…テートクが……?」
衣笠「ってことは、もう先に進んじゃったんじゃない? ……ん、別働隊から最深部前ポータルを開放したとの連絡が来たわ」
大和「ちょっと繋ぎましょうか」
金剛「みんな、私についてきて! Follow me!!」
大和「この先が飛行場姫の拠点ですね……」
愛宕「えぇ、この先のはず…だけど……」
摩耶「あいつは白いから遠目でもわかるはずだけどな……電探にも感がないし」
衣笠「あのあたりのはずよね?」
衣笠が島の一つを指さす。
霧島「ちょっと危険ですが……探照灯をつけてみましょうか」パチン
探照灯をつけ、海岸沿いを照らす。そこには、黒く焼け焦げた遺体があった。
いったい誰のものかと、上陸して検分する。
摩耶「何だ、これ……」
大和「まさかこの子が……」
愛宕「この角、髪の長さ…焼け残った艤装……間違いないわ。飛行場姫よ」
霧島「瓶の破片が散ってますね……火炎瓶による攻撃でしょうか」
金剛「これを…テートクが……?」
衣笠「ってことは、もう先に進んじゃったんじゃない? ……ん、別働隊から最深部前ポータルを開放したとの連絡が来たわ」
大和「ちょっと繋ぎましょうか」
639: 2014/04/08(火) 01:14:27.01 ID:PB+/SAt8o
ガチャ、ザザー、チューン
武蔵「大和か。無線を繋いだって事は飛行場姫は撃破したのか」
大和「いえ、私たちが来たときには既に焼き尽くされてたわ」
武蔵「……やったのは、提督か」
大和「でしょうね。そっちの様子はどう?」
武蔵「利根が提督を発見した。だいぶスピードは落ちてるもののサーモン海の最深部へ進んでいる」
大和「じゃあ後は追いついて合流して、雪風を助け出すだけね」
武蔵「それは難しいだろうな。最深部は今嵐のまっただ中だ。それに……」
大和「それに?」
武蔵「ここまで艦が少ないということは逆に向こうに集結している可能性がある。……この状況を逆手に取るか」
大和「?」
武蔵「向こうは酷い悪天候だ。10m先すら見えるか怪しいぐらいに。奴らの後ろに回り込み奇襲をかける」
大和「なるほどね」
武蔵「正々堂々とは言い難いがこの状況でそんなことは言ってられまい」
大和「提督と雪風についてはどうするの?」
武蔵「わざわざ人質にとって呼びつけるぐらいだ。目的が何であれ、そうやすやすと頃しはすまい。
敵の混乱を狙って潜水艦娘を急行させる」
大和「だいぶ希望的観測が込み入ってるけど……他に良い手も思いつきそうにないし。いいわ、やりましょう」
武蔵「自分で言っておいてなんだが、ものすごく危険な作戦になるぜ」
大和「それに人数が必要になるけど……無理強いは出来ないわね」
武蔵「希望者だけで何とかするしかない。いったん鎮守府に戻って再編成だ」
大和「わかったわ。私たちも補給のためいったん戻ります」
プチュン
大和「皆さん、聞きましたね。一度鎮守府に戻って整備を行い、有志を募って再編成を行います。これより艦隊、帰投します!」
武蔵「大和か。無線を繋いだって事は飛行場姫は撃破したのか」
大和「いえ、私たちが来たときには既に焼き尽くされてたわ」
武蔵「……やったのは、提督か」
大和「でしょうね。そっちの様子はどう?」
武蔵「利根が提督を発見した。だいぶスピードは落ちてるもののサーモン海の最深部へ進んでいる」
大和「じゃあ後は追いついて合流して、雪風を助け出すだけね」
武蔵「それは難しいだろうな。最深部は今嵐のまっただ中だ。それに……」
大和「それに?」
武蔵「ここまで艦が少ないということは逆に向こうに集結している可能性がある。……この状況を逆手に取るか」
大和「?」
武蔵「向こうは酷い悪天候だ。10m先すら見えるか怪しいぐらいに。奴らの後ろに回り込み奇襲をかける」
大和「なるほどね」
武蔵「正々堂々とは言い難いがこの状況でそんなことは言ってられまい」
大和「提督と雪風についてはどうするの?」
武蔵「わざわざ人質にとって呼びつけるぐらいだ。目的が何であれ、そうやすやすと頃しはすまい。
敵の混乱を狙って潜水艦娘を急行させる」
大和「だいぶ希望的観測が込み入ってるけど……他に良い手も思いつきそうにないし。いいわ、やりましょう」
武蔵「自分で言っておいてなんだが、ものすごく危険な作戦になるぜ」
大和「それに人数が必要になるけど……無理強いは出来ないわね」
武蔵「希望者だけで何とかするしかない。いったん鎮守府に戻って再編成だ」
大和「わかったわ。私たちも補給のためいったん戻ります」
プチュン
大和「皆さん、聞きましたね。一度鎮守府に戻って整備を行い、有志を募って再編成を行います。これより艦隊、帰投します!」
644: 2014/04/11(金) 00:56:42.50 ID:KfckjE62o
「……朝、か」
提督が仮眠から目を覚ます。懐中時計を見やると6時を指している。
干し肉をとり、歯で無造作に引き裂き噛み締めながら甲板に出る。
「灰色の空、黒い雲。実におあつらえ向きの天気じゃないか」
ぽつり、ぽつり、と雨が降り出す。
「今日は荒れるぜ……」
激しくなる雨足。吹きすさぶ風。風に飛ばされないように帽子をきつくかぶり直す。
「鬼が出るか、蛇が出るか。まぁ出るのは姫だろうがな」
嵐の中、迷うことなくその中心部へ突き進んでいく……。
提督が仮眠から目を覚ます。懐中時計を見やると6時を指している。
干し肉をとり、歯で無造作に引き裂き噛み締めながら甲板に出る。
「灰色の空、黒い雲。実におあつらえ向きの天気じゃないか」
ぽつり、ぽつり、と雨が降り出す。
「今日は荒れるぜ……」
激しくなる雨足。吹きすさぶ風。風に飛ばされないように帽子をきつくかぶり直す。
「鬼が出るか、蛇が出るか。まぁ出るのは姫だろうがな」
嵐の中、迷うことなくその中心部へ突き進んでいく……。
645: 2014/04/11(金) 00:57:58.33 ID:KfckjE62o
鎮守府、港湾部。
百を超える艦娘が完全武装状態で集まっている。彼女らの前には巨大な白板。
白板にはサーモン海最深部と深海棲艦の予測位置、そしてぷかぷか丸の予想進路が描かれている。
「……ブリーフィングは以上です」
説明を終え、大和は手にしていた指示棒を縮める。
目を瞑り、言葉を続ける。
「嵐の中、深海棲艦の大部隊を包囲して奇襲する。この作戦は、とても危険なものとなるでしょう。
再び、深くて暗い海の底に沈む可能性は高いです。それでも、私は、大和は行きます。
無理強いはしません。言葉も要りません。私とともに、提督と雪風を助けに行く娘は残ってください」
そこまで言って言葉を切る。足音一つない静寂。
目を見開けばやる気に溢れた艦娘たち。
「全艦、抜錨!! 目標、サーモン海最深部!」
百を超える艦娘が完全武装状態で集まっている。彼女らの前には巨大な白板。
白板にはサーモン海最深部と深海棲艦の予測位置、そしてぷかぷか丸の予想進路が描かれている。
「……ブリーフィングは以上です」
説明を終え、大和は手にしていた指示棒を縮める。
目を瞑り、言葉を続ける。
「嵐の中、深海棲艦の大部隊を包囲して奇襲する。この作戦は、とても危険なものとなるでしょう。
再び、深くて暗い海の底に沈む可能性は高いです。それでも、私は、大和は行きます。
無理強いはしません。言葉も要りません。私とともに、提督と雪風を助けに行く娘は残ってください」
そこまで言って言葉を切る。足音一つない静寂。
目を見開けばやる気に溢れた艦娘たち。
「全艦、抜錨!! 目標、サーモン海最深部!」
646: 2014/04/11(金) 01:00:00.76 ID:KfckjE62o
サーモン海最深部、そこに彼女はいた。
嵐の只中でも一目でわかる艦影。思い出そうにも忘れられないその姿。
「戦艦棲姫!!」
無線で怒鳴りつけるように叫ぶ。
『いらっしゃい、テイトクさん。本当に一人で来るなんてねぇ。馬鹿なの? 狂人なの?』
ものすごい剣幕にもかかわらず余裕綽々の戦艦棲姫。
「一人で来いと言ったのはテメーらだろ。さぁ雪風を返してから痛い目見るか痛い目見てから雪風を返すか好きなほうを選びな。
うちの娘達を傷つけて雪風を攫った代償は高くつくぜ?」
『これを見てもそんな大口叩けるかしら?』
深海棲姫が巨大な生物じみた艤装の右手を掲げる。その手に握られているのは……
「雪風ッ!!」
「ぁ……しれぇ……?」
『それにね……うちの子たちが既にあなたを取り囲んでいるわ。下手に動けば命の保障はないわよ?』
悪天候の中、水平線に仄かに灯る赤色や金色の光。それが意味することはいまさら口に出すまでもない。
「ふん、交渉する気は無いようだな」
『先に暴力で解決する気しかない選択肢持ち出したあなたが言う台詞じゃないでしょ』
「……らしくねぇ、全くらしくねぇな」
『何が?』
「お前らの行動がだ。艦娘の鹵獲、脅迫状めいた電文、そして今もだ。
沈めようと思えば沈められる戦力を配置しているにもかかわらず、いまだ攻撃する様子がない」
『こっちも想定外よ。まさかたかが駆逐一隻のためにたった一人でここまで乗り込んでくるなんて。
しかもレ級ちゃんと飛行場姫を下して。面倒臭いッたらありゃしない』
「雪風は俺の大切な相棒だ。それ以上の言が必要か? それに質問の答えになってねぇ」
『あなたに言う義理があって?』
「是非とも聞きたいねぇ。わざわざここまで回りくどいことをする理由を」
『これから氏ぬというのに大した度胸ね』
「頃すというなら冥土の土産寄越せよ」
『いいわ、そのクソ度胸に免じて教えてあげるわ』
嵐の只中でも一目でわかる艦影。思い出そうにも忘れられないその姿。
「戦艦棲姫!!」
無線で怒鳴りつけるように叫ぶ。
『いらっしゃい、テイトクさん。本当に一人で来るなんてねぇ。馬鹿なの? 狂人なの?』
ものすごい剣幕にもかかわらず余裕綽々の戦艦棲姫。
「一人で来いと言ったのはテメーらだろ。さぁ雪風を返してから痛い目見るか痛い目見てから雪風を返すか好きなほうを選びな。
うちの娘達を傷つけて雪風を攫った代償は高くつくぜ?」
『これを見てもそんな大口叩けるかしら?』
深海棲姫が巨大な生物じみた艤装の右手を掲げる。その手に握られているのは……
「雪風ッ!!」
「ぁ……しれぇ……?」
『それにね……うちの子たちが既にあなたを取り囲んでいるわ。下手に動けば命の保障はないわよ?』
悪天候の中、水平線に仄かに灯る赤色や金色の光。それが意味することはいまさら口に出すまでもない。
「ふん、交渉する気は無いようだな」
『先に暴力で解決する気しかない選択肢持ち出したあなたが言う台詞じゃないでしょ』
「……らしくねぇ、全くらしくねぇな」
『何が?』
「お前らの行動がだ。艦娘の鹵獲、脅迫状めいた電文、そして今もだ。
沈めようと思えば沈められる戦力を配置しているにもかかわらず、いまだ攻撃する様子がない」
『こっちも想定外よ。まさかたかが駆逐一隻のためにたった一人でここまで乗り込んでくるなんて。
しかもレ級ちゃんと飛行場姫を下して。面倒臭いッたらありゃしない』
「雪風は俺の大切な相棒だ。それ以上の言が必要か? それに質問の答えになってねぇ」
『あなたに言う義理があって?』
「是非とも聞きたいねぇ。わざわざここまで回りくどいことをする理由を」
『これから氏ぬというのに大した度胸ね』
「頃すというなら冥土の土産寄越せよ」
『いいわ、そのクソ度胸に免じて教えてあげるわ』
647: 2014/04/11(金) 01:01:08.77 ID:KfckjE62o
サーモン海最深部周辺。
波は荒れ、雨は降り注ぐ。
大和「○七○○。全艦所定の位置に付いたかしら」
赤城が目を眇めて嵐の向こうにいる艦娘を見やる。
赤城「合図有りました。包囲できたようです」
大和「後はタイミングだけど……迂闊に動いたら二人が危険に晒されるし」
赤城「まさか戦艦棲姫が雪風ちゃんを捕まえてるなんて」
大和「さすがに戦艦棲姫ともなるとイムヤ達だけじゃ力不足……。雷巡の三人を送りたいけど」
赤城「姫・鬼クラスを片付ける役目が有りますからね」
そう言いながら無線に耳を済ませる。
赤城「無線からは提督と戦艦棲姫の会話が聞こえますね」
大和「何を話してるのかしら?」
赤城「途切れ途切れですからね……。どうも、提督を頃すことで雪風を絶望のどん底に叩き落して……あっ、いいところで聞こえなくなってしまいました」
大和「そこまで聞けば大体予測は付きます。いずれにせよ阻止しなければなりません」
波は荒れ、雨は降り注ぐ。
大和「○七○○。全艦所定の位置に付いたかしら」
赤城が目を眇めて嵐の向こうにいる艦娘を見やる。
赤城「合図有りました。包囲できたようです」
大和「後はタイミングだけど……迂闊に動いたら二人が危険に晒されるし」
赤城「まさか戦艦棲姫が雪風ちゃんを捕まえてるなんて」
大和「さすがに戦艦棲姫ともなるとイムヤ達だけじゃ力不足……。雷巡の三人を送りたいけど」
赤城「姫・鬼クラスを片付ける役目が有りますからね」
そう言いながら無線に耳を済ませる。
赤城「無線からは提督と戦艦棲姫の会話が聞こえますね」
大和「何を話してるのかしら?」
赤城「途切れ途切れですからね……。どうも、提督を頃すことで雪風を絶望のどん底に叩き落して……あっ、いいところで聞こえなくなってしまいました」
大和「そこまで聞けば大体予測は付きます。いずれにせよ阻止しなければなりません」
648: 2014/04/11(金) 01:04:09.75 ID:KfckjE62o
サーモン海、海中。潜行するは5人の伊号潜水艦娘。まるゆはついてこられそうにないのであきつ丸に預けてきた。
イムヤ「うわぁ……まさか戦艦棲姫だなんて。大穴開けるのは無理そう」
しおい「そうなの?」
ゴーヤ「本体の細さとは裏腹に装甲も耐久も冗談みたいに硬いでち」
イク「イクたちが魚雷撃ちつくしてもかすり傷程度で平然としてたの!」
しおい「そんな相手をどうやって……」
はち「私たちや水上打撃部隊で丸一日かけて削れるだけ削って、精鋭を送って撃沈。大変な一日だったわ」
ゴーヤ「……それにしても胸糞悪くなる話でち」
イムヤ「無線?」
ゴーヤ「うん、てーとくとアイツの会話」
イク「どんな話なの?」
ゴーヤ「えっと……」
イムヤ「うわぁ……まさか戦艦棲姫だなんて。大穴開けるのは無理そう」
しおい「そうなの?」
ゴーヤ「本体の細さとは裏腹に装甲も耐久も冗談みたいに硬いでち」
イク「イクたちが魚雷撃ちつくしてもかすり傷程度で平然としてたの!」
しおい「そんな相手をどうやって……」
はち「私たちや水上打撃部隊で丸一日かけて削れるだけ削って、精鋭を送って撃沈。大変な一日だったわ」
ゴーヤ「……それにしても胸糞悪くなる話でち」
イムヤ「無線?」
ゴーヤ「うん、てーとくとアイツの会話」
イク「どんな話なの?」
ゴーヤ「えっと……」
649: 2014/04/11(金) 01:05:49.90 ID:KfckjE62o
場面は海上に戻る。
「要は雪風の絶望を凝縮して深海棲艦するって事か! ハッ、確かに効果的かも知れんな! だがな……」
提督は左手親指で自分を指差す。
「俺はまだ生きてるぜ」
「し、れぇ……」
「もうちょっとの辛抱だ、雪風」
うめく雪風を励ますように声をかける。
『ここまで生きてるのがおかしかったけどあなたはもうすぐ氏ぬのよ。最期に言い遺すことはある?』
「わざわざ聞いてくれるのか。そーりゃ親切なこった」
『今生の別れの挨拶とかオススメよ?』
「そうだなぁ……よし」
無線装置のダイヤルをひねり、出力を最大まで上げる。
「全員に聞かせてやろうじゃないか。俺が、提督であることの証をよぉ……!!」
『さっさとして頂戴。言い終わったらこの主砲でぶち抜いてあげるから』
降りしきる雨の中、思いっきり、息を吸い込み、力の限り、吼え猛る!!
「要は雪風の絶望を凝縮して深海棲艦するって事か! ハッ、確かに効果的かも知れんな! だがな……」
提督は左手親指で自分を指差す。
「俺はまだ生きてるぜ」
「し、れぇ……」
「もうちょっとの辛抱だ、雪風」
うめく雪風を励ますように声をかける。
『ここまで生きてるのがおかしかったけどあなたはもうすぐ氏ぬのよ。最期に言い遺すことはある?』
「わざわざ聞いてくれるのか。そーりゃ親切なこった」
『今生の別れの挨拶とかオススメよ?』
「そうだなぁ……よし」
無線装置のダイヤルをひねり、出力を最大まで上げる。
「全員に聞かせてやろうじゃないか。俺が、提督であることの証をよぉ……!!」
『さっさとして頂戴。言い終わったらこの主砲でぶち抜いてあげるから』
降りしきる雨の中、思いっきり、息を吸い込み、力の限り、吼え猛る!!
650: 2014/04/11(金) 01:09:45.66 ID:KfckjE62o
『砲雷撃戦、用意! 撃てぇぇぇぇぇぇッ!!』
651: 2014/04/11(金) 01:11:21.03 ID:KfckjE62o
三百六十度、全方位。上がる爆炎、水飛沫。
『な、馬鹿な、いつの間に呼んだの!?』
「呼んじゃいねぇよ! 全員自分からこの地獄に突っ込みやがったんだ! 雪風のために!!」
更に無線に向けて叫ぶ。
カタッパシカラブッツブセ
『俺の心配はいらねぇ!! Destroy'em ALL!!』
『ならば、お前だけでも!!』
戦艦棲姫が16インチ砲を構える。提督も51cm三連装砲を構え……
カチッ、カチ、カチッ
「あ、弾切れだこれ」
次々打ち出される砲撃の音。
「やべ、回避しねぇと!!」
機関を再始動させ、舵をいっぱいに曲げる。
船底部から鋼鉄のひしゃげる嫌な音がする。
『アイアンボトムサウンドに……沈みなさい……!!』
「そうは行くかってんだ! 俺はお前らをオウフ」
ベキベキベキ。砲弾の嵐は、ぷかぷか丸の船底を破り、船体をへし折った。
傾く甲板に提督はバランスを崩し、
「やべ、落ちる落ちタワバッ」
転んだ拍子に頭を打ち、提督は裂けた船の間から暗く深い海へ、転げ落ちていった。
『な、馬鹿な、いつの間に呼んだの!?』
「呼んじゃいねぇよ! 全員自分からこの地獄に突っ込みやがったんだ! 雪風のために!!」
更に無線に向けて叫ぶ。
カタッパシカラブッツブセ
『俺の心配はいらねぇ!! Destroy'em ALL!!』
『ならば、お前だけでも!!』
戦艦棲姫が16インチ砲を構える。提督も51cm三連装砲を構え……
カチッ、カチ、カチッ
「あ、弾切れだこれ」
次々打ち出される砲撃の音。
「やべ、回避しねぇと!!」
機関を再始動させ、舵をいっぱいに曲げる。
船底部から鋼鉄のひしゃげる嫌な音がする。
『アイアンボトムサウンドに……沈みなさい……!!』
「そうは行くかってんだ! 俺はお前らをオウフ」
ベキベキベキ。砲弾の嵐は、ぷかぷか丸の船底を破り、船体をへし折った。
傾く甲板に提督はバランスを崩し、
「やべ、落ちる落ちタワバッ」
転んだ拍子に頭を打ち、提督は裂けた船の間から暗く深い海へ、転げ落ちていった。
652: 2014/04/11(金) 01:18:06.57 ID:KfckjE62o
今日はここまで
(中略)あんたが今ここで倒れたら、雪風や猫吊るしとの約束はどうなっちゃうの?
耐久はまだ残ってる。これを耐えれば、戦艦棲姫に勝てるんだから!
デュエルスタンバイ
次回、「提督氏す」 砲雷撃戦用意!
(中略)あんたが今ここで倒れたら、雪風や猫吊るしとの約束はどうなっちゃうの?
耐久はまだ残ってる。これを耐えれば、戦艦棲姫に勝てるんだから!
デュエルスタンバイ
次回、「提督氏す」 砲雷撃戦用意!
656: 2014/04/15(火) 22:45:31.33 ID:RPpXC1wWo
ここまでのあらすじ:戦艦棲姫「提督氏亡確認!!」
次回予告? 知らんなぁ?
投下します
次回予告? 知らんなぁ?
投下します
657: 2014/04/15(火) 22:46:23.06 ID:RPpXC1wWo
海中
イムヤ「!? 司令官が落ちた!?」
ゴーヤ「でも、さっきの会話からするとてーとくの次は雪風の番でち!」
しおい「あわわわ、どうしよう!?」
ゴーヤ「……全員で戦艦棲姫に魚雷斉射、その後すぐしおいはてーとくの救助に向かって! ゴーヤたちで出来るだけ時間を稼ぐでち!」
しおい「わかったわ!」
イク「魚雷発射準備OKなの!」
ゴーヤ「カウント、行くでち! さん、にぃ、いち…」
はち「ふぉいあー!!」
潜水艦娘5人による魚雷の一斉射。だがそれですら致命打にはなり得ないとわかっていた。
しおいは海の底へ潜り、ゴーヤたちは海の上へと浮上して行った。
しおい(早く、提督を引き上げないと……!!)
イムヤ「!? 司令官が落ちた!?」
ゴーヤ「でも、さっきの会話からするとてーとくの次は雪風の番でち!」
しおい「あわわわ、どうしよう!?」
ゴーヤ「……全員で戦艦棲姫に魚雷斉射、その後すぐしおいはてーとくの救助に向かって! ゴーヤたちで出来るだけ時間を稼ぐでち!」
しおい「わかったわ!」
イク「魚雷発射準備OKなの!」
ゴーヤ「カウント、行くでち! さん、にぃ、いち…」
はち「ふぉいあー!!」
潜水艦娘5人による魚雷の一斉射。だがそれですら致命打にはなり得ないとわかっていた。
しおいは海の底へ潜り、ゴーヤたちは海の上へと浮上して行った。
しおい(早く、提督を引き上げないと……!!)
658: 2014/04/15(火) 22:47:50.83 ID:RPpXC1wWo
海上
「ハハハ、あっけない!! 見なさい! これがお前の最愛の人の最期よ!」
捕らえている雪風にぷかぷか丸が沈み行く様をよく見えるように右腕を掲げ、戦艦棲姫は高らかに宣言する。
「し、しれぇ、しれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
雪風の悲痛な叫びは沈み行く船とともに掻き消されていく。
「しれぇが、ゆきかぜのせいで、氏んじゃっ……」
「さ、後はこの小娘を握りつぶせばおしま……ん?」
ドゥン、ドゥン、ドゥン、と次々と魚雷が戦艦棲姫に当たる。
「やらせはしないわ!」
次々と海面に出るイムヤ、ゴーヤ、イク、はち。
「てーとくは今しおいが助けに向かってるから、大丈夫でち!」
「提督も雪風もやらせはしない、なの!」
「20ミリ連装機銃が火を噴くわ!」
「煩い小バエどもね」
肩に担いだ主砲を海面に向け、威嚇とばかりに数発ぶっ放す。
「急速潜航!」
あっという間に海に潜り、次の魚雷を発射する。
「このぐらいの魚雷でどうにかできると思ってるのかしら」
「へぇ~。じゃあこれならどうかな?」
潜水艦娘のものよりはるかに強烈な魚雷が戦艦棲姫に炸裂する。
「ぐっ! お前は!」
戦艦棲姫が振り向いた先には、両の腕脚に酸素魚雷を大量に装填した艦娘。
「ハイパー北上さまだよー」
「ハハハ、あっけない!! 見なさい! これがお前の最愛の人の最期よ!」
捕らえている雪風にぷかぷか丸が沈み行く様をよく見えるように右腕を掲げ、戦艦棲姫は高らかに宣言する。
「し、しれぇ、しれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
雪風の悲痛な叫びは沈み行く船とともに掻き消されていく。
「しれぇが、ゆきかぜのせいで、氏んじゃっ……」
「さ、後はこの小娘を握りつぶせばおしま……ん?」
ドゥン、ドゥン、ドゥン、と次々と魚雷が戦艦棲姫に当たる。
「やらせはしないわ!」
次々と海面に出るイムヤ、ゴーヤ、イク、はち。
「てーとくは今しおいが助けに向かってるから、大丈夫でち!」
「提督も雪風もやらせはしない、なの!」
「20ミリ連装機銃が火を噴くわ!」
「煩い小バエどもね」
肩に担いだ主砲を海面に向け、威嚇とばかりに数発ぶっ放す。
「急速潜航!」
あっという間に海に潜り、次の魚雷を発射する。
「このぐらいの魚雷でどうにかできると思ってるのかしら」
「へぇ~。じゃあこれならどうかな?」
潜水艦娘のものよりはるかに強烈な魚雷が戦艦棲姫に炸裂する。
「ぐっ! お前は!」
戦艦棲姫が振り向いた先には、両の腕脚に酸素魚雷を大量に装填した艦娘。
「ハイパー北上さまだよー」
659: 2014/04/15(火) 22:49:31.38 ID:RPpXC1wWo
海中
提督を追って急速潜行するしおい。
(……いた、提督みーっけ)
だが、沈む速度は速く、距離もすぐに追いつけるようなものではない。
(急がないと、手遅れになっちゃう!)
全速を出すしおい。だが提督は無情にも沈み続ける。
そんな絶望的状況の中、しおいは見た。
ものすごい速さで垂直方向へ、提督のほうへ潜り行く何かを。
(もしかしてあれって……!)
提督を追って急速潜行するしおい。
(……いた、提督みーっけ)
だが、沈む速度は速く、距離もすぐに追いつけるようなものではない。
(急がないと、手遅れになっちゃう!)
全速を出すしおい。だが提督は無情にも沈み続ける。
そんな絶望的状況の中、しおいは見た。
ものすごい速さで垂直方向へ、提督のほうへ潜り行く何かを。
(もしかしてあれって……!)
660: 2014/04/15(火) 22:50:20.99 ID:RPpXC1wWo
提督は51cm三連装砲の重みに引かれ、どんどん沈んでいく。
(あぁ、やっちまったなぁ……)
薄れ行く意識の中、ぼんやりと思索を巡らす。
(まぁあいつらは皆来ているようだし負けはないだろう)
脳裏に浮かぶは艦娘達の顔。
(俺がいなくなっても何とかやっていけるだろうし)
(……おい)
(一つ心残りは……まぁ氏ぬからあってもなくても関係ないか)
(おい)
脳に直接響くドスの聞いた声。
(幻聴まで聞こえ始めたか。そろそろ俺の人生も終わ『返事しろよこのスットコドッコイがッ!!』
怒鳴り声とも言える意識の割り込みが、提督の意識を氏の淵から引き戻す。
(何だよ。海の底に沈んで氏に行く人間に何の用だよ)
(このキチOイボケナスビ。私は今二つのことで非常に怒ってる)
謎の声は罵声を浴びせながら怒りを露わにする。
(ひとつは、ぷかぷか丸を沈めたこと。二つ目は氏んで艦娘たちへの責任を放棄しようとしたこと。それもどちらも私の目の前で、だ!!)
(というかお前誰だよ。神かよ)
(そうとも、神だよ)
(あぁ、やっちまったなぁ……)
薄れ行く意識の中、ぼんやりと思索を巡らす。
(まぁあいつらは皆来ているようだし負けはないだろう)
脳裏に浮かぶは艦娘達の顔。
(俺がいなくなっても何とかやっていけるだろうし)
(……おい)
(一つ心残りは……まぁ氏ぬからあってもなくても関係ないか)
(おい)
脳に直接響くドスの聞いた声。
(幻聴まで聞こえ始めたか。そろそろ俺の人生も終わ『返事しろよこのスットコドッコイがッ!!』
怒鳴り声とも言える意識の割り込みが、提督の意識を氏の淵から引き戻す。
(何だよ。海の底に沈んで氏に行く人間に何の用だよ)
(このキチOイボケナスビ。私は今二つのことで非常に怒ってる)
謎の声は罵声を浴びせながら怒りを露わにする。
(ひとつは、ぷかぷか丸を沈めたこと。二つ目は氏んで艦娘たちへの責任を放棄しようとしたこと。それもどちらも私の目の前で、だ!!)
(というかお前誰だよ。神かよ)
(そうとも、神だよ)
661: 2014/04/15(火) 22:51:37.59 ID:RPpXC1wWo
『応急修理女神だよ!!』
662: 2014/04/15(火) 22:52:26.85 ID:RPpXC1wWo
(でもお前艦娘用だろ)
『女神ナメんな。提督引き上げてぷかぷか丸直すことぐらい造作もない!!』
(マジで)
『目を開けてみな』
目を開け仰ぎ見ると、そこにはまるでビデオの巻き戻しを行うように修復されていくぷかぷか丸と腕を組んで睨み付ける女神。
(うわぁ、すげぇ)
『おらっ、甲板に乗りな! 海面まで吹っ飛ばすよ!!』
返事を待たず、女神は提督の腕を捕まえぷかぷか丸の甲板に投げつける。海中なので痛くはないが。
(この深さから一気に上がったら潜水病かなんかで結局氏ぬんじゃねーの俺)
『私の加護がありゃ氏にはしないよ! うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!』
女神は船尾を掴み、その小さな体のどこから沸いてくるのかわからない力で船体を丸ごと持ち上げ始めた。
『弾と燃料はサービスしといたよ! 後は自分で何とかしな!!』
『女神ナメんな。提督引き上げてぷかぷか丸直すことぐらい造作もない!!』
(マジで)
『目を開けてみな』
目を開け仰ぎ見ると、そこにはまるでビデオの巻き戻しを行うように修復されていくぷかぷか丸と腕を組んで睨み付ける女神。
(うわぁ、すげぇ)
『おらっ、甲板に乗りな! 海面まで吹っ飛ばすよ!!』
返事を待たず、女神は提督の腕を捕まえぷかぷか丸の甲板に投げつける。海中なので痛くはないが。
(この深さから一気に上がったら潜水病かなんかで結局氏ぬんじゃねーの俺)
『私の加護がありゃ氏にはしないよ! うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!』
女神は船尾を掴み、その小さな体のどこから沸いてくるのかわからない力で船体を丸ごと持ち上げ始めた。
『弾と燃料はサービスしといたよ! 後は自分で何とかしな!!』
663: 2014/04/15(火) 22:53:19.13 ID:RPpXC1wWo
「全く、これはジリ貧だねぇ……」
戦艦棲姫の不意を付いたはいいものの、重雷装巡洋艦の魚雷ですら致命傷というほどではなかった。
「大井っちや木曾っちがいれば良かったんだけどまだ交戦中だし……」
雷巡トリオには姫・鬼クラスとの直接対決。北上は速攻で南方棲戦鬼を沈め、救援に駆けつけたのだが、この有様である。
体勢を立て直した戦艦棲姫は雪風を盾にとりながら反撃を開始した。
「ほらほら、下手に撃つとこの子が氏んじゃうわよ?」
雪風をぶら下げながら戦艦棲姫が挑発する。
万全な状態ならばまだしも、今の雪風は身も心もボロボロである。
彼女の言う通り、フレンドリーファイアが氏に繋がる可能性は極めて高い。
有効打を与えられないまま、至近弾でじわじわと削られていく。
潜水艦娘達の魚雷攻撃はあっさり凌がれ、必殺の酸素魚雷は雪風を盾に取られて打ち込めず、僚艦は皆外周で氏闘を繰り広げている。
いっそ密着して酸素魚雷を全部叩き込んでやろうかという捨て鉢戦法が北上の脳裏をよぎったその時……。
戦艦棲姫の不意を付いたはいいものの、重雷装巡洋艦の魚雷ですら致命傷というほどではなかった。
「大井っちや木曾っちがいれば良かったんだけどまだ交戦中だし……」
雷巡トリオには姫・鬼クラスとの直接対決。北上は速攻で南方棲戦鬼を沈め、救援に駆けつけたのだが、この有様である。
体勢を立て直した戦艦棲姫は雪風を盾にとりながら反撃を開始した。
「ほらほら、下手に撃つとこの子が氏んじゃうわよ?」
雪風をぶら下げながら戦艦棲姫が挑発する。
万全な状態ならばまだしも、今の雪風は身も心もボロボロである。
彼女の言う通り、フレンドリーファイアが氏に繋がる可能性は極めて高い。
有効打を与えられないまま、至近弾でじわじわと削られていく。
潜水艦娘達の魚雷攻撃はあっさり凌がれ、必殺の酸素魚雷は雪風を盾に取られて打ち込めず、僚艦は皆外周で氏闘を繰り広げている。
いっそ密着して酸素魚雷を全部叩き込んでやろうかという捨て鉢戦法が北上の脳裏をよぎったその時……。
664: 2014/04/15(火) 22:54:53.16 ID:RPpXC1wWo
轟ッ!!
そうとしか表現しようの無い音とともに、ぷかぷか丸は海面を飛び出し、空中に躍り出た。
その風圧は絶望の暗雲を散り散りに吹き飛ばし、
その船体は不安を丸ごとひき潰すかのように、勢い良く着水した。
舳先には提督が立っている。右腕には51cm三連装砲。左手には銛。
「地獄から舞い戻ってきてやったぜファッキン戦艦棲姫! あの程度で俺を殺せると思うなよ!!」
(戻ってこられたのは私のおかげでしょうが)
(その点は感謝するが今はハッタリ利かせた方がいいんだよ)
応急修理女神が直接脳内に茶々を入れてくる。
「ならばもう一度沈めるまでよ。それに……」
盾にするように雪風を掲げる。
「あなたの最愛の人を撃てr」
ドゥン
響く砲撃音。千切れ飛ぶ戦艦棲姫の右腕。
「そんな……!?」
吹き飛んだ右手は力を失い、雪風を手放す。
重力に引かれ落ちていく雪風。
「あら、よっと!!」
提督は、落ちてきたその華奢な体に腕を伸ばし、絡め取るように抱き寄せる。
「もう大丈夫だ、雪風!」
「しれぇ!!」
首に巻きつくように提督の体に抱きつく雪風。
「……ならば、諸共砕け散れぇ!!」
戦艦棲姫はそんな二人に16インチ砲で狙いを定め、発射した。
響く砲撃音。巻き上がる爆煙。そして、グシャリと言う音。
そうとしか表現しようの無い音とともに、ぷかぷか丸は海面を飛び出し、空中に躍り出た。
その風圧は絶望の暗雲を散り散りに吹き飛ばし、
その船体は不安を丸ごとひき潰すかのように、勢い良く着水した。
舳先には提督が立っている。右腕には51cm三連装砲。左手には銛。
「地獄から舞い戻ってきてやったぜファッキン戦艦棲姫! あの程度で俺を殺せると思うなよ!!」
(戻ってこられたのは私のおかげでしょうが)
(その点は感謝するが今はハッタリ利かせた方がいいんだよ)
応急修理女神が直接脳内に茶々を入れてくる。
「ならばもう一度沈めるまでよ。それに……」
盾にするように雪風を掲げる。
「あなたの最愛の人を撃てr」
ドゥン
響く砲撃音。千切れ飛ぶ戦艦棲姫の右腕。
「そんな……!?」
吹き飛んだ右手は力を失い、雪風を手放す。
重力に引かれ落ちていく雪風。
「あら、よっと!!」
提督は、落ちてきたその華奢な体に腕を伸ばし、絡め取るように抱き寄せる。
「もう大丈夫だ、雪風!」
「しれぇ!!」
首に巻きつくように提督の体に抱きつく雪風。
「……ならば、諸共砕け散れぇ!!」
戦艦棲姫はそんな二人に16インチ砲で狙いを定め、発射した。
響く砲撃音。巻き上がる爆煙。そして、グシャリと言う音。
665: 2014/04/15(火) 22:55:41.17 ID:RPpXC1wWo
音の出所は、戦艦棲姫の主砲。
「ば、馬鹿な!?」
煙が晴れる。そこには雪風を庇うように立ち、砲を向ける提督の姿。
51cm三連装砲で、戦艦棲姫の砲弾を相頃し、ぶち抜いたのだ。
「それが、最後の抵抗か?」
「くっ……!」
「周辺の戦いも大勢は決した。雪風も取り戻した。チェックメイトだ。だが……」
提督はそこで言葉を切り、雪風をそっと下ろす。そしてそっと耳打ちする。
「機関一杯、限界まで回してくれ」
雪風はこくり、とうなずくとレバーを握り。限界までスロットルをあげた。ぷかぷか丸が始動し始める。
再び戦艦棲姫のほうを向き、言葉を続ける。
「だが、テメェは俺が直々に手を下してやる。二度と海面に上がりたくなくなるぐらいの恐怖を刻み付けて海の底に沈めてやる!」
加速するぷかぷか丸。抵抗とばかりに戦艦棲姫は副砲を撃ちこんで来る。
「沈め、沈め、沈めぇぇぇぇ!!」
右手と砲を失ってバランスが崩れたせいかまともに当たらない。
提督は銛を構える。大物に狙いを定める漁師の目。その視線が戦艦棲姫の怒りの籠もった視線と交わった刹那。
飛び出した銛は、戦艦棲姫本体の右肩に突き刺さった。
「ば、馬鹿な!?」
煙が晴れる。そこには雪風を庇うように立ち、砲を向ける提督の姿。
51cm三連装砲で、戦艦棲姫の砲弾を相頃し、ぶち抜いたのだ。
「それが、最後の抵抗か?」
「くっ……!」
「周辺の戦いも大勢は決した。雪風も取り戻した。チェックメイトだ。だが……」
提督はそこで言葉を切り、雪風をそっと下ろす。そしてそっと耳打ちする。
「機関一杯、限界まで回してくれ」
雪風はこくり、とうなずくとレバーを握り。限界までスロットルをあげた。ぷかぷか丸が始動し始める。
再び戦艦棲姫のほうを向き、言葉を続ける。
「だが、テメェは俺が直々に手を下してやる。二度と海面に上がりたくなくなるぐらいの恐怖を刻み付けて海の底に沈めてやる!」
加速するぷかぷか丸。抵抗とばかりに戦艦棲姫は副砲を撃ちこんで来る。
「沈め、沈め、沈めぇぇぇぇ!!」
右手と砲を失ってバランスが崩れたせいかまともに当たらない。
提督は銛を構える。大物に狙いを定める漁師の目。その視線が戦艦棲姫の怒りの籠もった視線と交わった刹那。
飛び出した銛は、戦艦棲姫本体の右肩に突き刺さった。
666: 2014/04/15(火) 22:56:18.84 ID:RPpXC1wWo
「このぐらいどうってことはないわ!」
突き進むぷかぷか丸に叫び返す戦艦棲姫。だが返事は銛の下から聞こえてきた。
「そうだろうな。だがこれならどうかな?」
顔面に突きつけられる主砲。銛にぶら下がった提督が突き出したものだ。ちょうど胸と腹にも突き当たっている。
「テメェの敗因は三つ。一つは雪風を攫った事」
渾身のストレートを叩き込む直前のように腰を捻り軽く腕を引く。
「一つはうちの鎮守府に喧嘩を売った事」
51cm三連装砲のトリガーに指を掛ける。
「そしてもう一つは……」
「あ……あぁ……」
「この俺を怒らせた事だぁぁぁぁぁ!!」
砲身を刺し貫かんばかりに叩きつけると同時に、三門ぶんのトリガーを同時に引く!!
突き進むぷかぷか丸に叫び返す戦艦棲姫。だが返事は銛の下から聞こえてきた。
「そうだろうな。だがこれならどうかな?」
顔面に突きつけられる主砲。銛にぶら下がった提督が突き出したものだ。ちょうど胸と腹にも突き当たっている。
「テメェの敗因は三つ。一つは雪風を攫った事」
渾身のストレートを叩き込む直前のように腰を捻り軽く腕を引く。
「一つはうちの鎮守府に喧嘩を売った事」
51cm三連装砲のトリガーに指を掛ける。
「そしてもう一つは……」
「あ……あぁ……」
「この俺を怒らせた事だぁぁぁぁぁ!!」
砲身を刺し貫かんばかりに叩きつけると同時に、三門ぶんのトリガーを同時に引く!!
667: 2014/04/15(火) 22:57:15.65 ID:RPpXC1wWo
ところで、この世には物理法則というものがあります。
その一つが作用・反作用の法則です。
実物より小型化されているとはいえ、とてつもない破壊力を生みだす砲弾を放つ51cm三連装砲。
そのようなものを目標に密着した状態で、しかも三門同時に撃ったらどうなるでしょう?
その一つが作用・反作用の法則です。
実物より小型化されているとはいえ、とてつもない破壊力を生みだす砲弾を放つ51cm三連装砲。
そのようなものを目標に密着した状態で、しかも三門同時に撃ったらどうなるでしょう?
668: 2014/04/15(火) 22:58:56.10 ID:RPpXC1wWo
耳を劈くような轟音。尋常ならざる衝撃。覚えているのはそこまでだった。
がばり、と身を起こす。ざっと見渡すと白い布団、白い壁、白い天井、そして……
「し"れ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃに濡らした我が相棒、雪風。上から覆いかぶさるようにぎゅう、と抱きついてくる。二度と離すまいというかのように。
俺の胸に顔をうずめて泣き続ける。どうしたものかと思案していたら、戸が開く音がした。
「あ、司令官。お加減はいかがでしょうか? どこか痛むところとかありませんか?」
入ってきたのは看護帽をかぶった初霜。
「右腕から肩にかけてバッキバキに痛いが……あー、まー、大丈夫みたいだな」
痛みをこらえながら腕から指先まで動くことを確認する。
「本来なら右腕丸ごとなくなっててもおかしくないですよ!? 戦艦用主砲で密着して砲撃するなんて!」
「まぁこの通り俺の腕は無事だし。それよか俺と雪風助けに行ったせいで沈んだヤツはいるか?」
「戦艦棲姫の撃沈で敵は統制が取れなくなったんでこちらは大した被害は有りませんでした」
「なら何の問題もないな」
安堵のため息をつきながら左手で雪風を撫でる。
「こんな無茶は二度としないでくださいよ? ぷかぷか丸が轟沈したときは肝が冷えましたよ!?」
「大丈夫大丈夫。二度としないって。頭に血が上って怒り狂ってない限りは」
「それ可能性あるって事ですよね!?」
「だってさぁ……」
ぐすぐす泣く雪風を見ながら言葉を続ける。
「大好きな雪風や皆を傷つけられて何もしないでいられるほど温厚じゃないし?」
「だからって司令官が直接出向くのは無謀ですって! 生身の人間が砲弾にまともに当たったら氏んじゃいます!」」
「いいじゃん勝ったし」
「それに、司令官が氏んだら雪風ちゃんはもちろん、皆が悲しみますよ!!」
「それもそうだな」
軽くうなずき、雪風のほうに目をやる。
「でも大丈夫。俺は幸運の女神のキスを受けてるからな。なぁ雪風?」
「しれぇは、ゆきかぜがまもりますから……ぐしゅ」
「な?」
「『な?』じゃないですよ、まったくもう……」
呆れたようにジト目でにらむ初霜。
「大体よー、それ言ったらお前ら全員そうだよ。雁首揃えて全員出てきて。いそうな気配したから活用させてもらったけど」
「来てるの知ってたんですか!?」
初霜が目を丸くする。
「いんや、実際砲撃の音が聞こえるまでは確信はなかったけどな」
肩をすくめて続ける。
「全く、俺のために危険を顧みず全軍突撃とか、莫迦だよ莫迦。まぁ雪風のために単騎駆けする俺も似たようなもんだがな! あっはっは!!」
がばり、と身を起こす。ざっと見渡すと白い布団、白い壁、白い天井、そして……
「し"れ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃに濡らした我が相棒、雪風。上から覆いかぶさるようにぎゅう、と抱きついてくる。二度と離すまいというかのように。
俺の胸に顔をうずめて泣き続ける。どうしたものかと思案していたら、戸が開く音がした。
「あ、司令官。お加減はいかがでしょうか? どこか痛むところとかありませんか?」
入ってきたのは看護帽をかぶった初霜。
「右腕から肩にかけてバッキバキに痛いが……あー、まー、大丈夫みたいだな」
痛みをこらえながら腕から指先まで動くことを確認する。
「本来なら右腕丸ごとなくなっててもおかしくないですよ!? 戦艦用主砲で密着して砲撃するなんて!」
「まぁこの通り俺の腕は無事だし。それよか俺と雪風助けに行ったせいで沈んだヤツはいるか?」
「戦艦棲姫の撃沈で敵は統制が取れなくなったんでこちらは大した被害は有りませんでした」
「なら何の問題もないな」
安堵のため息をつきながら左手で雪風を撫でる。
「こんな無茶は二度としないでくださいよ? ぷかぷか丸が轟沈したときは肝が冷えましたよ!?」
「大丈夫大丈夫。二度としないって。頭に血が上って怒り狂ってない限りは」
「それ可能性あるって事ですよね!?」
「だってさぁ……」
ぐすぐす泣く雪風を見ながら言葉を続ける。
「大好きな雪風や皆を傷つけられて何もしないでいられるほど温厚じゃないし?」
「だからって司令官が直接出向くのは無謀ですって! 生身の人間が砲弾にまともに当たったら氏んじゃいます!」」
「いいじゃん勝ったし」
「それに、司令官が氏んだら雪風ちゃんはもちろん、皆が悲しみますよ!!」
「それもそうだな」
軽くうなずき、雪風のほうに目をやる。
「でも大丈夫。俺は幸運の女神のキスを受けてるからな。なぁ雪風?」
「しれぇは、ゆきかぜがまもりますから……ぐしゅ」
「な?」
「『な?』じゃないですよ、まったくもう……」
呆れたようにジト目でにらむ初霜。
「大体よー、それ言ったらお前ら全員そうだよ。雁首揃えて全員出てきて。いそうな気配したから活用させてもらったけど」
「来てるの知ってたんですか!?」
初霜が目を丸くする。
「いんや、実際砲撃の音が聞こえるまでは確信はなかったけどな」
肩をすくめて続ける。
「全く、俺のために危険を顧みず全軍突撃とか、莫迦だよ莫迦。まぁ雪風のために単騎駆けする俺も似たようなもんだがな! あっはっは!!」
669: 2014/04/15(火) 22:59:35.74 ID:RPpXC1wWo
突然、バン! と開く扉。飛んでくる艦載機。いや、帆船。そこから飛び出し、俺の顔面に向かって飛び蹴りを放つ妖精。
「バカハドッチダー!!」
「おおっと」
右腕でガード。割と痛む右腕でガード。体調が万全ならまだしも、この状況下では向う脛を思いっきり蹴られたのと変わりない衝撃。
「――――!!」
声にならないレベルの激痛。
「しれぇ!? しれぇぇぇ!?」
「私がいなかったら一回、いや二回は氏んでたんだからね……ってありゃ、やりすぎた?」
蹴った反動で軽やかに着地――俺の腹の辺りに――したのは応急修理女神。どうも想定外の反応だったらしい。いや怪我したほうの腕で庇う俺の責任もあるが。
「司令官は病み上がりなんでですからそういうのは治ってからにしてください」
治ってたらいいのかよ初霜よ。
「とりあえず説教は治ってからじっくりたっぷりするから早く治しなさいよ!!」
言うだけ言って女神はあっさり去ってしまった。
「行っちゃいましたね」
扉のほうを見ながら初霜がつぶやく。
「……あー、俺は寝るわ。うん。ほれ、雪風降りろ」
ぽふぽふと雪風を軽く叩くが、雪風は首をふるふると横に振り、より強く抱きついてきた。
「ゆきかぜは……しれぇから離れたくないです。離したくないです」
「お熱いですね、司令官」
「冷やかすな」
「お邪魔だと思いますのでごゆっくり」
そそくさと退室し、扉を閉める初霜。
「おいぃ!?」
部屋に残るは俺と、涙目でこっちを見つめる雪風。
「……ほれ、布団入れ」
腕の痛みをこらえながら雪風を布団でくるむ。抱きつく雪風の体が暖かい。
(まったく、ほっとけないヤツだよ、雪風は)
そんなことを考えつつ眠りに付く。治ったらいつも通りの生活が始まるだろう。
だがそのときまでひとまずは。おやすみなさい。
「バカハドッチダー!!」
「おおっと」
右腕でガード。割と痛む右腕でガード。体調が万全ならまだしも、この状況下では向う脛を思いっきり蹴られたのと変わりない衝撃。
「――――!!」
声にならないレベルの激痛。
「しれぇ!? しれぇぇぇ!?」
「私がいなかったら一回、いや二回は氏んでたんだからね……ってありゃ、やりすぎた?」
蹴った反動で軽やかに着地――俺の腹の辺りに――したのは応急修理女神。どうも想定外の反応だったらしい。いや怪我したほうの腕で庇う俺の責任もあるが。
「司令官は病み上がりなんでですからそういうのは治ってからにしてください」
治ってたらいいのかよ初霜よ。
「とりあえず説教は治ってからじっくりたっぷりするから早く治しなさいよ!!」
言うだけ言って女神はあっさり去ってしまった。
「行っちゃいましたね」
扉のほうを見ながら初霜がつぶやく。
「……あー、俺は寝るわ。うん。ほれ、雪風降りろ」
ぽふぽふと雪風を軽く叩くが、雪風は首をふるふると横に振り、より強く抱きついてきた。
「ゆきかぜは……しれぇから離れたくないです。離したくないです」
「お熱いですね、司令官」
「冷やかすな」
「お邪魔だと思いますのでごゆっくり」
そそくさと退室し、扉を閉める初霜。
「おいぃ!?」
部屋に残るは俺と、涙目でこっちを見つめる雪風。
「……ほれ、布団入れ」
腕の痛みをこらえながら雪風を布団でくるむ。抱きつく雪風の体が暖かい。
(まったく、ほっとけないヤツだよ、雪風は)
そんなことを考えつつ眠りに付く。治ったらいつも通りの生活が始まるだろう。
だがそのときまでひとまずは。おやすみなさい。
670: 2014/04/15(火) 23:01:32.08 ID:RPpXC1wWo
次回予告
島風「実は私ね、従姉妹に当たる子が一人だけいたの」
謎の新艦娘!
??「やっと私の出番ですね」
伏龍目覚める!!
提督「こ、これが水上偵察機の真の力…!!」
新しいシステム!!!
一体どうなってしまうのか!!! 春イベント編、予定は未定!!
島風「実は私ね、従姉妹に当たる子が一人だけいたの」
謎の新艦娘!
??「やっと私の出番ですね」
伏龍目覚める!!
提督「こ、これが水上偵察機の真の力…!!」
新しいシステム!!!
一体どうなってしまうのか!!! 春イベント編、予定は未定!!
671: 2014/04/16(水) 01:13:29.19 ID:zrCab25Lo
引用: 【艦これ】泣き虫雪風と釣り人提督
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