785: 2014/05/16(金) 22:46:38.63 ID:bbDXOTl8o


前回:泣き虫雪風と釣り人提督【その9】
最初から:泣き虫雪風と釣り人提督

――義姉さん――

提督「陽炎よ。ふと思ったんだが」

陽炎「何かしら?」

提督「俺は雪風とケッコンしたわけだ。カッコカリだが」

陽炎「そうね」

提督「で、陽炎は雪風の姉に当たるわけだ。不知火、黒潮、初風もだが」

陽炎「他にもいるけどね」

提督「……俺はお前たちのことを義姉さんと呼ぶべきなのかなー、と思ってな。大体陽炎型19人もいるんだから最終的に18人も姉妹が出来ちまうぜ」

陽炎「いつもと同じでいいんじゃない?」

提督「それもそうだな、おねえちゃん」

陽炎「」ガシッギリギリ

提督「ひぎゃぁぁぁ人の関節はそっちの方に曲がるようには出来てないのぉぉぉぉ!?」
海の画集 -「艦これ」公式イラスト集-

791: 2014/05/19(月) 21:36:11.45 ID:xJj1QY7eo
――姉さまより先――

鎮守府工廠。それは艦娘の建造、近代化改修、装備の開発および換装、艦娘の解体などを一手に執り行う元倉庫である。

提督「まるゆ改も増えたなぁ。点呼ー」

まるゆ「1」「2」「3」「4」「5!」

提督「よしよし、ちゃんと揃っているな。これで近代化改修ができる」

山城「…ついにこの日がきたのですね」

提督「そうだ、まるゆを近代化改修に使う日が山城お前いつからそこに」

山城「先ほどまるゆちゃんを召集してたのでもしかしたらと思って」

提督「そうだな。まるゆを近代化改修に使うことによって運が増大する。理屈はわからんが『運』貨筒を持っているからだろ多分」

山城「嗚呼、これで姉さまも不幸から解放されるのですね……!」

提督「いくぞ……近代化改修オラーッ!!!」


まるゆたちは光の珠となり、医療用じみたベッドの上で眠っている艦娘に吸い込まれていった。


山城「……って扶桑姉さまじゃなくて」


対象は、雪風であった。


山城「何で雪風ちゃんなんですか!? もう十分幸運じゃないですか!?」

提督「何かまだまだ伸びる余地あるらしいし」

山城「姉様が不幸なままじゃないですかー!!」

提督「航戦になって姉妹ともども二桁になったろ!! あやまれ! 陸奥と大鳳にあやまれ!」

ワーワーギャーギャー

雪風「Zzz...」

795: 2014/05/22(木) 22:54:01.26 ID:ZJLx0fXio
――例の本のヲ級が存外可愛い――

鎮守府、執務室。書類仕事が一区切り付いたのか伸びをする提督。

提督「んがぎぎぎ……。まぁ午前中の仕事はこんなところでよかろ。飯でも食いに行くか」


食堂

【本日休業 間宮】

提督「……そういや休暇申請出してたな。確かに認印を押した記憶があるな。……コンビニにでも行ってなんか買うか」

熊野「あら、ごきげんよう提督」

提督「よう。今からコンビニ行くんだが、サンドイッチでも買ってこようか? モノのついでだ」

熊野「そうですわね……。折角ですしわたくしもご一緒いたしますわ」

提督「ほう?」

熊野「提督にわたくしの好みがわかりまして?」

提督「わからんだろうな。カツサンドでも買おうかと思ったんだが」

熊野「足柄さんなら喜ぶでしょうけどね」


鎮守府近くのファ○マ


提督「ステーキ弁当があるな……」

熊野「野菜とかも摂らないと健康によろしくなくてよ?」

提督「知らんなぁゲヘヘ。あとは適当に食いたいもん籠に入れておきゃこっちで会計するぜ」

熊野「わかりましたわ」


提督「これお願いしまー……」

提督は最後まで言い切ることが出来なかった。

原因は店員の容貌だ。青白い肌。青く輝く目。金色のオーラ。

ヲ級「ヲッ」

あからさまに深海棲艦なのだ!!

提督(なんでや! なんでコンビニのバイトしてるんや!! というかいつもは普通に日本語喋ってただろ!!)

ヲ級(らっしゃっせー)

提督(こいつ、脳内に直接……!!)

ヲ級(お弁当あたたたためますか?)

提督(「た」が多いよ! 暖めます。あとファ○チキください)

ヲ級(うぃ↑ーっす)


提督「……」

熊野「提督、どうしましたの? 釈然としない顔をして」

提督「……いや、なんでもない」

804: 2014/05/24(土) 16:17:00.93 ID:cIN7qMuJo
――龍驤の改二が来るとは思わなかった――

提督「龍驤、グッドニュースだ」

龍驤「なんや?」

提督「龍驤の改二が実装されたそうだ。二航戦やちとちよよりビッグになれるぞ」

龍驤「ほんまに!? 嘘じゃあらへんやろな!?」

提督「マジでマジで。だがレベルが足らんからまずは修行だー!!」

龍驤「やったでー!!」


艦娘レベリング中……


提督「改造完了っと」

龍驤「……たしかに強うなった気はするけど……ビッグになってへんやん!!」

提督「ちとちよを超える火力、二航戦を超える最大搭載スロ。ビッグになってるぜ」

龍驤「胸のこととちゃうん!? 改二になったら胸が大きゅうなるんやろ!?」

提督「北上や木曾の胸がでかくなったという話は寡聞にして聞かんな」

龍驤「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛……」

809: 2014/05/26(月) 20:55:51.08 ID:iPF+cAyro
――しおい着任直後辺りの話――

しおい「提督、ごきげんよう」

提督「おう、鎮守府にも慣れたか」

しおい「はい。でも……」

提督「どうした?」

しおい「なんだか……監視されてるような感じがして」

提督「それはちょっと問題だな。一応あのふぁっきん猫吊るし曰く部外者立ち入り禁止だからそこいらのストーカーとは思えないが」

しおい「特に晴嵐取り出したときに強く感じます」

提督「んー、ちょっと晴嵐取り出してみて」

しおい「あ、はい」 ヴィィィンガコン


??「アレがあれば航空戦艦の時代が……」
??「伊勢、日向には負けたくないの……」
??「アレがあれば姉様も喜んでくれるはず……」


提督「……」

しおい「やっぱり何か視線感じるなぁ……」

提督「あー、そうだな。この件については解決策を打つことにするからしばらく晴嵐はしまっとけ。戦艦寮行ってくる」

しおい「よろしくお願いします」


このあと(伊勢以外の航戦を)無茶苦茶説教した。

814: 2014/05/29(木) 22:24:46.23 ID:JpH2iTJ9o
――弾薬の減らない海上護衛――

提督「えーと、第三艦隊は大潮を下げて五月雨に入ってもらう。他の面子は引き続きで、海上護衛任務だ」

五月雨「はい、護衛任務はお任せください!」

提督「……ところで一つ気になってることがあるんだが」

五月雨「なんでしょうか?」

提督「海上護衛だってのに何で弾減らないの? いや弾薬丸儲けだからありがたいけどさー」

五月雨「そこまで深海棲艦が出ることもないですし、使った分は依頼側から出してもらえるので」

提督「太っ腹だなぁ。艦娘用の弾薬を用意できるとかどこの誰なのやら」

五月雨「遠征任務の書類とかに書いてあるのでは?」

提督「依頼元はまちまちなんだよなぁ。……大本営とやらの差し金か?」

五月雨「でも物資輸送で助かってる人いることは間違いないはずですし!」

提督「だといいけどなぁ」

819: 2014/05/30(金) 21:03:44.00 ID:XUeu2DKLo
――由良の髪留めをご確認のうえ、この話をお読みください――

南西海域、バシー海

提督「よーし輸送艦をバシバシ沈めるぞー。バシーだけに」

由良「長良型軽巡、由良、出撃します」

提督「ボケたんだしちったぁ突っ込んでくれよ……」


提督「よーし敵は戦艦主導の輸送船団だ。ル級の砲撃には気をつけろー!」

由良「てーっ!!」

ドコンボコン

提督「……ひーふーみー…いつもより敵が少ないな?」

提督が海面に目を凝らすと、そこには駆逐艦の黒い影!!

その向く先にはル級と対峙している由良!!

提督「由良! 左舷後方から来るぞ!!」


BLAMN!!


発砲音。由良はル級との交戦を続けている。

駆逐艦が外したのか? いや、砲撃をまともに浴びて沈みかけている。

他の艦娘がフォローに入ったのか? いや、そのような様子はない。

もう一度由良を見る。髪留めから硝煙が立ち上っている。


提督「……あれ、実弾入りだったのかよ。というかあの大きさで駆逐艦一発とかどんだけだよ」


艦娘ってすごい。そう思った提督であった。

825: 2014/06/04(水) 06:15:14.32 ID:ZJDLnyOio
――部屋割り――

鎮守府、執務室

提督「うーん、ここ最近陽炎型増えすぎぃ。前は雪風と島風一緒にして陽炎と不知火、黒潮と舞風、秋雲は確実に夜更かしするんで一人部屋にしてたんだが…」

提督「雪風はケッコンして俺と一緒に寝るようになったし、この春で一挙に三人も増えたからなぁ。その上未着任が二人もいるし」

提督「というわけで天津風は島風と同室にしようかと思うのだが。いとこ同士だろ?」

天津風「私としては同じ隊だった初風と一緒のほうがいいんだけど……」

島風「……」

提督「ほれほれ、ドアの向こうから島風が見てるぞ」

天津風「ど、どっちかというと島風とは友達みたいなもんだし……」

島風「……」グスッ

提督「まぁ本人の意見は大体尊重するが……どうするね?」

天津風「うぅ……。ものすごく断りづらい……」


結局島風と相部屋にしたそうです

830: 2014/06/08(日) 20:30:00.93 ID:MnrCCtAso

6月某日、飛龍、第二改装さる

飛龍「よしっ、これなら一航戦にも負けませんねっ!」

提督「負けないというか火力が高すぎぃ。64ってなにこれ」

飛龍「どぉお?」

提督「スロットも配分よし。艦載機は……九九艦爆に零式艦戦21に九七艦攻? 破棄破」

飛龍「ちょっと待ってください!!」

提督「え?」

飛龍「この子たちは練度が違うんですよ」

提督「練度と言われてもなぁ。結局艦載機の性能がモノを言うだろ?」

飛龍「それは、まぁ最新鋭のに比べると威力とかは物足りないかもしれませんが、妖精さんの訓練の結果、精度が上がったので同程度なら負けませんよ!」

提督「なら最新鋭のに載せればよくね?」

飛龍「今扱ってる機体に慣れすぎちゃって他のには乗れないんですよね……。流星とか烈風とかは扱いが難しいですし」

提督「ままならんな……」

友永妖精「でも天山とかには載ってみたいかも」

提督「……天山なんて数カ月前にスクラップ処分したっきりだぞ」

飛龍「また開発すればいいんですよ!!」

提督「じゃあしばらく開発は任せようか」

飛龍「了解です!」


その後


提督「出ない、出ない……(マグロ目)」

飛龍「天山が、出ない……(マグロ目)」

834: 2014/06/10(火) 22:47:02.18 ID:oW9Vsiy1o
――おとなって――

鎮守府、食堂

そこは給糧艦・間宮が支配する領域……というわけでもない。

さまざまな艦娘のさまざまなニーズに対応するためファミレスのようなオーダー形式をとっているのだ。

総料理長間宮を筆頭に彼女の直属の配下の妖精さんたちが、オーダーを取ったり料理を作ったり配膳したりしているのだ!!


それはさておき。艦娘たちだっておなかは空くのです。

食堂に入る少女の一団。暁、ヴェールヌイこと響、雷、電の四人。第六駆逐隊なのです。


雷「お腹空いたわねー」

暁「まずは席を取りましょ」

響「といってもこの時間は混んでるね」

電「司令官さんのところが空いているのです」

電が指差す先には六人用の席に一人で座ってメニューを見ている提督の姿。

暁「司令官さん、その……」

提督「相席か。別に構わんよ」

最後まで言わせず返事をする提督。

暁「むぅー……」

不満げな顔をしながらもちゃっかり提督の隣に座る。

他の三人もおのおの席に付く。

響「雪風と一緒じゃないなんて珍しいね」

提督「あぁ。早めに昼食取らせて珊瑚海出撃のための準備させてる。ほれ、メニューだ」

雷「司令官はもう決めたの?」

提督「まぁな」

言いながら隣の暁と向かいの三人にメニューを渡す。

響「私はボルシチセットにしようかな」

雷「私はミートソーススパゲティにしようっと!」

電「電はカルボナーラにするのです!!」

暁「う゛~……」

顔をしかめ悩む暁。見なくてもわかる。お子様ランチを選ぶか長姉としてのプライドをとるか悩んでいるのだ。

暁「……!!」

そんな暁の目に飛び込む『日替わり大人定食』の文字!!

836: 2014/06/10(火) 22:47:53.39 ID:oW9Vsiy1o
逸る気持ちを抑え、あくまで冷静に。

暁「暁はこの、大人定食にするわ」

提督「よし、全員決まったな。おーだー」

妖精「はーい」

あまった水偵や瑞雲を有効活用してすばやいオーダーを実現している。どこから発着しているかは考えないことにする。

提督「ボルシチセットと、ミートソースと、カルボナーラと」

妖精「うんうん」


提督「大人定食とお子様ランチと鶏のから揚げ」


暁「!?」

響(ほぅ)

雷(?)

電(司令官さん……?)

837: 2014/06/10(火) 22:48:41.64 ID:oW9Vsiy1o
何かを悟った響。何か違和感があった気がした雷。どういうことかと訝る電。そして……

暁「ちょ、ちょっとどういうことよ!? 暁はお子様ランチなんて頼んでないわ!」

提督に食って掛かる暁。

提督「大人定食だろ? ちゃんと頼んだではないか」

暁「そーよ! ……えっ?」

提督「なんら問題はない」


万事OKという顔で珊瑚海の海域図を取り出して何かを検討する提督。

そうこうしているうちに料理が出来上がり、配膳される。


暁以外「いただきます(なのです)」

提督「どうした、暁。食わないのか?」

提督は目の前のお子様ランチには目もくれず、レモンを片手で絞ってから揚げにかけながら暁に問う。

その暁の目の前には、大人定食――子供には辛いぜ麻婆丼&野菜たっぷり青椒肉絲――が盛られている。

もちろん提督は内容を知っていた。

暁「い……いただき、ます」

暁はちら、と青椒肉絲に目をやる。

青椒とは要するにししとうとかピーマンのことである。しかるに野菜たっぷり。苦味に敏感な子供には辛いものがある。

挑む前から敗北が見える試合に挑んではならない。いつぞや司令官がそんな話をしていた。

提督「ん? 食わないのか?」

から揚げを齧りながら素知らぬ顔で聞いてくる。

暁「た、食べるし」

麻婆丼に目をやる。

『子供には辛いぜ』と銘打ってはいてもそこまで辛くないかもしれない。豆腐とかご飯とかあるし。

暁(大丈夫、暁はもう大人のレディなんだから!)

意を決してレンゲを握り、一掬いして口に放り込む。

838: 2014/06/10(火) 22:53:09.81 ID:oW9Vsiy1o
意識が飛んだ。気づいたときにはいつの間にか渡されたコップの水を無我夢中で飲み干していた。

暁「―――っ! はぁ……!! はぁ……!!」

提督「……お子様ランチと交換するか?」

暁「――!!」

恐るべき誘惑。だがここで乗ってしまっては自分は子供のまま……。

だが、司令官は更に言葉を続ける。

提督「無理だと思ったら引くのも、紳士淑女のたしなみだぜ」

暁「……交換するわ」

提督「よしよし。立派なレディだ」

暁「と、当然よ!」

他の三人の表情を見る。

響(やっぱりね)

雷(ここまで見越して……!)

電(スゴイのです!)

これがオトナの対応というものだ。

ドヤ顔しながら麻婆丼を一口。

提督(辛っ!! これめっちゃ辛ッ!!)

―――――――――――――

雪風「しれぇ、唇腫れてません?」

提督「ひうめひがからふてな(昼飯が辛くてな)」

846: 2014/06/11(水) 21:48:19.81 ID:UZeXsnj+o
――うおっ、まぶし!――

提督「古鷹か……」

古鷹「はい」

提督「その左目は戦闘の古傷か何かか」

古鷹「いえこれはサーチライトなんですが……」ペカー

提督「あんま光量ないな」

古鷹「前世で壊されたせいかこのぐらいしか光出ないんですよね」ペカー

提督「やっぱ古傷じゃねーか!!」

古鷹「オンオフは自在ななので問題ありません」ペカー

提督「いやそういう問題じゃなくてだな……。待てよ。探照灯装備したらどうなるんだ?」

古鷹「ちょっとつけてみましょうか」ガチャ

古鷹が探照灯を装備した瞬間!!

\ ペ カ ー /

古鷹の左目から溢れる光が提督に直撃したのだ!!

提督「ぐわぁぁぁぁぁ!! 目が! 目がぁぁぁぁぁ!!」

古鷹「てっ、提督、大丈夫ですか!?」

提督「」ビクンビクン


この後、古鷹のサーチライトはオン・オフ方式からアナログ調整方式になったとか。妖精さんのちからってすげー。

853: 2014/06/12(木) 22:31:38.85 ID:TFySJc3jo
――フフ怖――

鎮守府、工廠

雪風「新しい仲間が進水しました!」

提督「どぉれ、見に行くとするか」

天龍「俺の名は天龍。フフフ、怖いか?」

提督「全然怖くな…」

雪風「」(じわっ

提督「ん?」

雪風「うわぁぁぁぁぁん!!」

提督「お゙ゔっ!?」

天龍「へっ?」

雪風「じれ゙ぇ゙~!!」(ギュムム

提督「……な~かした~なーかしたーてーいとーくに言ってやろ~」

天龍「なっ、おい、ちょっと待てって」

提督「って俺が提督だったわ。さーてどうしてくれようk」


風切り音。直後、壁に何か重いものが突き刺さる音。

提督の頬を掠めるように飛んできたのは、龍田の薙刀だった。


龍田「雪風ちゃんを泣かせた上天龍ちゃんを困らせる悪い提督はどこかしらぁ~」

提督「おいちょっと待て後半はともかく前半は濡れ衣だ」

龍田「天龍ちゃんの件については認めるのね~?」

提督(あ、やべ)

提督は察した。気が済むまで許すつもりがないであろうことを。

提督「……三十六計逃げるに如かず!!」(ダッ

龍田「逃がさないわよ~」(ダッ

雪風を振り払い、遁走する提督。薙刀を引き抜き即座に追いかける龍田。

残される二人。

雪風「ぐしゅ、ぐしゅ……」

天龍「……まぁ、なんだ、その。軽い冗談だ。だから泣きやめ。な?」

雪風「ぐすっ……はい……」

天龍「よしよし。……何か調子狂うなぁ……」

857: 2014/06/13(金) 22:50:40.32 ID:GV4Xss8Fo
――一番割を食ったのは天龍型と五十鈴改二だと思う――

木曾「水上機? 要らないねぇ」

常々そんな台詞を口にしていた木曾は、雷巡になる道を選んだ。霧の艦隊が来る前の話である。

提督「過剰とも言える酸素魚雷の数を抑え、従来の欠点であった対空を強化か。姉よりマイルドになったな」

木曾「せっかくの魚雷もボロボロになってちゃ意味がない。そうだろ?」

提督「まぁ最近は航空機の脅威が酷くなってきてるからな。飛行場姫とかいたし」


そして、春。水偵の機能が向上し、観測射撃が可能となった。


提督「……なぁ、木曾よ。カタパルト取っ払って甲標的積んだこと、後悔してないか?」

木曾「あぁ。自分で選んだことだしな。だが……」

演習場で観測射撃の訓練を行う球磨と多摩を見やる。

水偵に乗っている妖精からデータを受け取り、リアルタイムに反映して行う連続射撃は、
巡洋艦・戦艦娘の砲撃の威力と精度を大幅に向上させた。

木曾「だが、羨ましくなることもある」

提督「まぁ雷巡は敵の懐に飛び込んでからが本番だからな。だろ?」

木曾「ふふ、そうだな」

863: 2014/06/17(火) 22:44:56.12 ID:NMbOY1wso
――駆逐艦総選挙・その裏側――

日も暮れた鎮守府。その演習場から出てくる男が一人。提督である。

提督「スカッとした!! さーて腹ごなしも終わったし仕事に戻るか」

そんな提督が自室に戻る途中、艦娘寮のほうからウィーンガシャ、ウィーンガシャという奇怪な音が聞こえてきた。

提督「んん? あそこらへんは確か軽巡寮だったよな。夕張がまたなんかやってんのか?」

軽巡寮で騒音があり、生物的音声だったら川内、機械的な音だったら夕張と相場が決まっている。

提督「ちょいと様子を見に行くか……」

864: 2014/06/17(火) 22:45:47.71 ID:NMbOY1wso
音の出所は軽巡寮談話室。夕張がノートパソコンでなにやら作業をしており、
川内型の三姉妹がなにやら内職じみたことをしている。

提督「騒音があったという通報がなかったけどなんか聞こえてきたんで様子を見に来たぞ」

夕張「提督、こんばんは。よかったら作業手伝ってもらえます?」

夕張が顔をあげて答える。彼女の後ろのプリンタが騒々しい音を立てながら次々と紙を吐き出す。

提督「藪から棒に何言ってるんだ。そもそも何をしてるかすら聞いてないぞ」

川内「駆逐艦総選挙をちょっとね」

提督「ますます訳がわからん」

那珂「ほら、この前アイドルグループの総選挙があったじゃないですか」

提督「あったな」

那珂「それで那珂ちゃん達もやろうかなと思ったんだけどこの艦隊でアイドルなの那珂ちゃんだけだし~」

提督「それがどう駆逐艦とつながるんだ」

那珂「せかさないせかさない。それで、水雷戦隊も一種のアイドルグループみたいなものだよねって話になって」

神通「これでいこうと言う事になりました。人数的にも50人ぐらいいますしね」

提督「で、今内職じみて紙を束ねてるのが……なんだ?」

神通「投票用紙です」

提督「どれどれ」

差し出された紙を受け取る。ずらりと並ぶ駆逐艦娘の名前。

提督「多いなぁ」

神通「提督も投票なさいますか? 一人持ち点五点で重複もOKです」

提督「じゃあ雪風に五点」

神通「では雪風ちゃんの名前の横に点数を書いて投票箱に入れてくださいな」

那珂「あっ、ずっるーい! 夕立ちゃんに入れてもらおうかなーと思ったのに」

川内「それがありなら綾波ちゃんに入れてよ!」

提督「というかコナかけんのありなの?」

那珂「だって……」

川内「ねぇ?」

提督「それに何しようと俺の票が雪風以外に揺らぐことはないぞ」

そう言いながら提督は投票箱に票を放り込む。

那珂「だよねー……」

865: 2014/06/17(火) 22:48:08.22 ID:NMbOY1wso
提督「まぁ鎮守府内でやるなら実際五点は大きかろうな。150人いるかどうかだし」

夕張「あぁ、それなんですけど」

提督「ん?」

夕張「この鎮守府や各海域近辺在住のかたがたにも投票してもらうことになってます」

提督「そりゃまたグローバルだな。というか艦娘の存在堂々と公表していいのか?」

疑問に思う提督の問いに、天井から逆さに現れる少女の声。

猫吊「一般の人には普通の女の子にしか思われてませんし、許可は出してますよ」

提督「なんでそこにいるんだよというかこれお前の差し金かよ」

猫吊「いえ、彼女たちの発案ですが問題があったら無かった事にするまでなので」

提督「何それ怖い」

866: 2014/06/17(火) 22:52:01.65 ID:NMbOY1wso
開票日

提督「様子見に来たぞオラッ」

軽巡寮の談話室に入ると必氏に票を数えている軽巡たちが目に入る。PCを使って総集計している夕張以外だいたい目が氏んでる。

夕張「あっ、提督。予想以上に票が集まっちゃったんで手伝ってもらえますか?」

提督「グローバルすぎたんだろ。自分たちでなんとかしなさい」

夕張「むー」

提督「途中経過を見に来たんだが」

夕張「あんまり大差付かないんですよねー」

そうぼやきながら夕張が手元のノートパソコンを操作する。画面上に棒グラフがうにょーんと生成される。

提督「どんぐりの背比べだな。曙とかが低くないのがむしろ疑問」

夕張「それはまぁ、提督以外に強く当たってませんからね。地域別にするとちょっと面白いんですよね」

夕張がキー入力すると別の種類の棒グラフが伸びた。あからさまに伸びの激しいものが一つ。

提督「なんだこれ……睦月型の……南方海域票?」

夕張「何か人気なんですよね。もしかしてロrげふげふ」

提督「毎日東京急行送ってるからじゃね」

夕張「……そういえばそうでしたね」

提督「じゃ、集計作業頑張ってくれ。あとで皆にアイスを奢ろう」

夕張「あれ、結果に興味はないんですか?」

提督「まぁねー。えこひいきで見てしまいそうだし」

夕張「既に雪風ちゃんがいるじゃないですか」

提督「だから、だよ」

言いながら部屋を去る提督。

夕張「全く、提督ってば変わった人ですね……」


結局一週間ぐらいやいのやいのと騒いでそれでおしまいだったらしい。

872: 2014/06/18(水) 23:00:24.59 ID:cu4+DKdEo
――実はよく見ると涙目なんですよねあれ――

これはまだ、オリョールクルージングが本格的に流行する前の話……

提督「よーしワ級とその取り巻きが来たぞー。やっちまえーウィーピピー!!」

バシーに現れる深海棲艦の輸送船団はリ級やル級とその随伴艦が補給艦たる輸送ワ級を警護している。

こういう不埒な輩を始末することにより、南西海域の安全を確保するのである。

提督「ル級の砲撃来るぞ!! ……不知火のほう!!」

不知火「!!」

響く衝撃音。上がる爆煙。

提督「大丈夫か!?」

返事より先に爆煙の中から砲撃音。

不知火「不知火を、怒らせたわね……!」

艤装と服が多少ボロボロになりながらも、不敵な笑みを浮かべ、闘志を失わない艦娘の姿がそこにあった。


戦闘終了後……

不知火「作戦が終了しました」

提督「よーし皆お疲れ様ー」

ぷかぷか丸で艦娘達を出迎える提督。戻ってきた不知火の目尻に涙がうっすら見える

提督「……ん、不知火、泣いてるのか?」

不知火「!! ……目にゴミが入っただけです」

提督「そうか」

そう言って後ろを向く提督。不知火が素早く涙をぬぐうのを横目で確認しながら。

提督「……不知火」

不知火「なんでしょう? 不知火に落ち度でも?」

提督「大変だったろう。船室のふかふかベッドでゆっくり休め」

不知火「…じっとしてるのは性に合わないのですが」

提督「休むのも仕事のうちだ。あと泣きたいときは泣いてもいいんだぜ。雪風にもそう言ってる」

不知火「泣いてません」

提督「まぁ泣きたい時の話だ。あんま気にするこたぁねぇ」

不知火「……失礼します」


このあと船室のひとつからぐずる声が聞こえたような気がした

876: 2014/06/20(金) 22:57:49.76 ID:3oPBDkP/o
――物欲センサーは無慈悲なドロップの女王――

鎮守府、工廠。艦娘を建造したり引っこ抜いた雫(ドロップ)を艦娘にしたりする場所である。

浜風「駆逐艦浜風です。これより貴艦隊所属となります」

提督「あ、あぁ、うん。よろしく」

浜風「……どうしましたか?」

提督「いや、まぁ。なんでもない。雪風は執務室にいると思うから後で顔見せてあげてくれ」

浜風「……? 姉妹からは新しい艦娘が来るたびテンション上がってると聞いてたけど……」

利根「それは我輩が説明しよう!!」

浜風「いったい提督に何が……?」

利根「それはのぅ……」

***

沖ノ島沖出撃前

提督「うえっへっへっへ捕鯨じゃ、捕鯨じゃぁぁぁぁあ!!」

奇声をあげながら銛をぶんぶん振り回す提督。あからさまに狂人なのだ!!

提督「#$%&なんざ知ったことかオラWryyyyyyyyyyyyyy!!」

羽黒「あの……司令官……今日の作戦は……」

提督「これから沖ノ島沖へ行って捕鯨を行う!! 利根姉妹、妙高姉妹ならそれが出来る!! あの憎きフラタに目に物見せてやれウィーピピー!!」

妙高「提督、大丈夫なんでしょうか……」

那智「暴れっぷりがまるで酒を呑ませた時のようだな。あの時は無言だったが」

利根「少なくとも喋ってる間はまだ大丈夫じゃ。黙りこくると恐ろしいことになるからのぅ」

足柄「ともかく、勝利を求めてるってことよね!!」

***

なんだかんだで主力撃滅

足柄「大勝利ッ!! 提督、首級持ってきたわ!!」

フラタ「」

提督「よーしよくやったぁって首切れてないのに首級なのかぁ~!? まぁドロップは大体心臓の辺りだからなぁ~!!」(ドブチャ

銛でフラタの胸を刺し貫く。素早く引き抜き、穿った穴に手を突っ込む。引き抜いた手には握り拳大の結晶が掴まれている。

提督「んん? これは……初めての手触り!! 大鯨かなぁ~ぐひゃひゃひゃ!! ものども、全力で帰投じゃぁぁぁぁ!!」

***

利根「……というわけじゃ」

浜風「何か申し訳ないような……」

利根「とはいえお主を探すために200回以上バシーに出撃してたしの。一晩落ち着けば大丈夫じゃろ」

浜風「そういうものでしょうか」

利根「あと、雪風に会うときは予備の服を持っておいたほうが良いぞ」

浜風「??」


浜風が利根のアドバイスの意味を知るのは雪風に会って自室で涙に濡れたセーラー服を洗濯する事になってからであった。

877: 2014/06/20(金) 22:59:15.38 ID:3oPBDkP/o
――へいる・とぅ・しぇーど・おぶ・ぷらずま・いんだすとりある――

鎮守府、工廠。ここでは艦娘の建造や装備の開発のみならず、艦娘の解体および装備の破棄も行われている。

艦娘や彼女たちの装備が多すぎると霊的な何かがヤバイので適宜減らす必要があるのだ。閑話休題。

提督「……んぁ?」

工廠に入った提督は何かがおかしいことに気づいた。解体専用装置『ぷらずまちゃん』(>>370参照)が増えているのだ。

しかも片方は機械らしくない。元となった電に酷似している。

提督「猫吊るしがまたなんかやったのか? 2つもいらねーよ」

ぶつくさ言いながら近づくとそれ……いや、彼女は動き出した。

ぷら「ナ゛ス゛は゛嫌゛い゛な゛の゛て゛す゛!!」

提督「を゙ゔっ!?」

ぷら「何見てるんですかぷらずまはタダじゃないのです見世物代払うのです」

提督「見世物なのは認めるのかよ」

ぷら「もらえるものはもらうのです」

提督「おい猫吊るし」

猫吊「どうかしましたか?」

提督「こいつ何なんだよ」

ぷら「こいつとは失礼極まりないですね。ぷらずまという名前があるのです」

猫吊「ほらちゃんとぷらずまって名乗ってるじゃないですか」

提督「WhoじゃねーよWhatだよ」

猫吊「鬼畜艦1番艦ぷらずまですよ。電の邪心をベースに、
   故障してない利根のカタパルト、調子の良い陸奥の第三砲塔、RJの胸部装甲、扶桑姉妹の幸運などなどを混ぜて大型建造で余った資材で作成しました」

提督「どこの北欧神話だよっつーかあるなら邪心以外は彼女たちに渡そうよ!?」

猫吊「でも材料が材料なだけに強いですよ」

提督「嘘くせぇ。ステータスも見た目電と変わらないっぽいし」

ぷら「ぷらずまの本気を見るのです!!」

878: 2014/06/20(金) 22:59:54.33 ID:3oPBDkP/o
南西諸島海域、カムラン半島

提督「来たのはいいけどさぁ。こいつだけで大丈夫なの?」

猫吊「繰り返しますが他の艦娘を連れてくるのは絶対罷りなりません。たとえ雪風だとしても。特に深雪は視界に入れることすら厳禁です」

提督「だからこいつだけなんだが何でダメなんだよ」

猫吊「見ればわかります」

提督「ということで単機出撃だがいけるかぷらずま?」

ぷら「お前の命令を聞く義理はないのです」

提督「おい猫吊るし」

猫吊「どうかしましたか?」

提督「思いっきり出撃拒否りやがったぞ!! 曙のほうが素直なレベルじゃねーか!!」

~~~

曙「くしゅん!」

潮「曙ちゃん、大丈夫?」

曙「あのクソ提督が変な噂したに違いないわ」

潮「多分違うと思うけど……」


~~~

猫吊「大丈夫です。問題ありません」

提督「いや有りまくりだろ!!」

猫吊「あっ、敵艦隊接近してます」

提督「お前も曲がりなりにも艦娘だr……いねぇ」

ぷらずまはどこかと見回すと艦同士が衝突したような破砕音。深海棲艦が煙を上げながら沈んでいく。

沈む艦隊の中央に立っているのは……ぷらずま!!

提督「砲撃音すら聞こえなかったが」

猫吊「そりゃ体当たりは砲撃じゃないですからね」

提督「第二陣来たぞ。ル級込みだ」

敵陣営を確認した直後、またも衝突音。先ほどまで我が物顔で進んでいたル級が沈みかけている。

ぷら「沈んだ船も出来れば助けたいのです。でも沈めなければ助けられませんよね」

ぷらずまは沈みかけた(というか自分で沈めた)ル級の襟首を引っ掴み、持ち上げる。

提督「どこぞの冥宮のシャーマニックじゃねーんだからよー…」

ぷら「助けた船も出来れば沈めたいのです」

そういった直後、ル級を海面に叩きつけ、更に踵落としを脳天に喰らわせた。

ぷら「沈むほうが悪いのです」ニヤニヤ

提督「」

猫吊「魅力的でしょう?」

提督「いやなんか絶対間違ってる」


不条理さに眩暈を起こした提督は、帰投後、雪風に後の処理を任せ早々に寝込んだ。


翌日、ぷらずまはどこにも見当たらなかった。

猫吊るし曰く、「どっかいっちゃいました」との事だが追及する気は失せていた。

879: 2014/06/20(金) 23:01:16.00 ID:3oPBDkP/o
というわけで浜風来ました


881: 2014/06/21(土) 00:11:50.40 ID:0OaxRDYUo

引用: 【艦これ】泣き虫雪風と釣り人提督