269: 2009/02/16(月) 13:47:12 ID:MMRaxERG
「坂本さんっ…」
呼び止めてしまったのは、きっと怖くなったから。ドアに向かっていく後ろ姿を見たら、ああ、これから
私はひとりになるんだって、急にそんなことが浮かんでしまって、扶桑からブリタニアまでのあいだ、
ずっとお母さんみたいに面倒をみてくれた坂本さんが行ってしまうのは、ひどく心細かったのだ。
「どうした、宮藤」
この見知らぬ土地で唯一知っている、均整のとれた凛々しい顔立ちの人がこちらをむくと、それだけで私はほっと
してしまう。けれど、心にもやがかかったような、息のつまる気持ちまでは完全に消えなかった。
――もういないんだって知っていたはずなのに、ひょっとしたらと思っていて。そしてきっとまだ、私は。
(行かないで下さい…)
喉まで出かかっているその言葉をすごく、すごく言いたいのに、こんな自分勝手な言葉は言えるはずもなくて、
不自然に呼び止めたまま私は唇をふるわせることしかできない。
「なんでも…ないです」
そう言って目を伏せると、どうしよう、涙まで浮かびそうになってしまって、でも泣くのだけは絶対に嫌だった。
だって、これからこの場所で、ウィッチとしてみんなを守れるようにならないといけないのに、ひとりが寂しい
からって泣いてちゃ話にならないんだ。
「あの、明日からよろしくお願いします」
沈んでいきそうだった気持ちを振り切るように、笑顔を作っておじぎをする。顔をあげれば、坂本さんも笑って
くれていて、ああよろしく、そう言ってくれるはずだった。それなのに。そこにいた坂本さんはちっとも
笑顔なんかじゃなくて、じっと重い表情でこちらのほうを見ていた。不安が一気に私を飲み込んでいった。
「宮藤」
びく、と肩が震えた。怒られる。反射的にそう思って、ついぎゅっと目を閉じた。こつこつと足音が近づいてきて、
私はもうすっかり泣きそうだった。どうして。変なこと言っちゃったのかな。優しかった人が急に分からなく
なって、心が裂けそうだった。けれど。
「そんな顔をするんじゃない」
それは自分のよく知っているあたたかな声で、目を開けると思ったとおりの柔らかい笑顔があった。
「ここの連中は、まぁ、規則を守らんやつもいるが、優しいやつらばかりだ。それに、」
坂本さんは少しかがみ、目線を合わせて、
「私もいる。だから、心配するな」そう言って私の肩にふれてくれた。そのぬくもりに私はさっきとは別の
涙が溢れそうになってしまう。
「坂本さん…」
ありがとうございます。そう伝えたかったけれど、胸がじんとしてしまってそれ以上なにも言えなかった。
それに、何も言うなって坂本さんの目が言ってくれていた気がしたから。だから私はしばらく、いつまでも
安心を与えてくれそうなその瞳をずっとみつめていた。
そうしていつしか少しづつ、けれど確実にふたりの距離はせばまっていた。
呼び止めてしまったのは、きっと怖くなったから。ドアに向かっていく後ろ姿を見たら、ああ、これから
私はひとりになるんだって、急にそんなことが浮かんでしまって、扶桑からブリタニアまでのあいだ、
ずっとお母さんみたいに面倒をみてくれた坂本さんが行ってしまうのは、ひどく心細かったのだ。
「どうした、宮藤」
この見知らぬ土地で唯一知っている、均整のとれた凛々しい顔立ちの人がこちらをむくと、それだけで私はほっと
してしまう。けれど、心にもやがかかったような、息のつまる気持ちまでは完全に消えなかった。
――もういないんだって知っていたはずなのに、ひょっとしたらと思っていて。そしてきっとまだ、私は。
(行かないで下さい…)
喉まで出かかっているその言葉をすごく、すごく言いたいのに、こんな自分勝手な言葉は言えるはずもなくて、
不自然に呼び止めたまま私は唇をふるわせることしかできない。
「なんでも…ないです」
そう言って目を伏せると、どうしよう、涙まで浮かびそうになってしまって、でも泣くのだけは絶対に嫌だった。
だって、これからこの場所で、ウィッチとしてみんなを守れるようにならないといけないのに、ひとりが寂しい
からって泣いてちゃ話にならないんだ。
「あの、明日からよろしくお願いします」
沈んでいきそうだった気持ちを振り切るように、笑顔を作っておじぎをする。顔をあげれば、坂本さんも笑って
くれていて、ああよろしく、そう言ってくれるはずだった。それなのに。そこにいた坂本さんはちっとも
笑顔なんかじゃなくて、じっと重い表情でこちらのほうを見ていた。不安が一気に私を飲み込んでいった。
「宮藤」
びく、と肩が震えた。怒られる。反射的にそう思って、ついぎゅっと目を閉じた。こつこつと足音が近づいてきて、
私はもうすっかり泣きそうだった。どうして。変なこと言っちゃったのかな。優しかった人が急に分からなく
なって、心が裂けそうだった。けれど。
「そんな顔をするんじゃない」
それは自分のよく知っているあたたかな声で、目を開けると思ったとおりの柔らかい笑顔があった。
「ここの連中は、まぁ、規則を守らんやつもいるが、優しいやつらばかりだ。それに、」
坂本さんは少しかがみ、目線を合わせて、
「私もいる。だから、心配するな」そう言って私の肩にふれてくれた。そのぬくもりに私はさっきとは別の
涙が溢れそうになってしまう。
「坂本さん…」
ありがとうございます。そう伝えたかったけれど、胸がじんとしてしまってそれ以上なにも言えなかった。
それに、何も言うなって坂本さんの目が言ってくれていた気がしたから。だから私はしばらく、いつまでも
安心を与えてくれそうなその瞳をずっとみつめていた。
そうしていつしか少しづつ、けれど確実にふたりの距離はせばまっていた。
270: 2009/02/16(月) 13:48:39 ID:MMRaxERG
「嫌か…?」
気が付いたときには嘘みたいに近くでそのとろけてしまいそうなほどの甘い囁きを聞いていて、答えをひとつ
しか持ち合わせていない私は首を横に振ってそれを示した。艶やかな唇が私との間隔をゼロにした瞬間、まるで
身も心も全部盗られてしまった気がした。
あのとき。坂本さんはインカムを付けただけだったけれど、一瞬、私はもしかしてこんな風にされるんじゃないか
って思った。でも、今思うのは、そうしてくれてもよかったのになってこと。だって、こんなにも心の落ち着く
ことって、ないよ。
「もっと…」
離れていこうとする坂本さんを引き止めて、何度も唇をふれさせた。それに応えてくれるようにあたたかな手が
私のからだをよせて、もっともっとふれていたくなる。けれど、どうしてかだんだんと頭がくらくらしてきて、
いやだ、もっと坂本さんと一緒になっていたいのに、がくりと足が崩れてしまうとそれもあたわなかった。
大丈夫かと優しく支えてくれた坂本さんに私はうなずいて返す。
「どうやらこちらのほうも相性はいいらしい」
坂本さんは微笑を浮かべながらそう言って、ベッドのほうまで抱えてくれた。
「それじゃあ、今日はもう休め。それと言っておくが、私は訓練では厳しいからな」
惚けてしまった頭で半分聞いて、それから今度こそ本当に部屋をあとにする背中を見送った。けれどもう寂しさや
心細さなんて感じない。
「おやすみ」
そんな最後の一雫が落とされると私の心はいっぱいに満たされて、この見知らぬ土地でひとりになったと
いうのになぜだか笑みばかり浮かんでくるのだ。
からだが覚えている柔らかな感触に包まれながら、私はゆっくりと目を閉じた。
「おやすみなさい、坂本さん」
------
あのインカムのシーンは芳佳の何かがはじけた瞬間だとおもうのです。
そのあと空で頬も寄せちゃうし。もっさんまじ天然ジゴロ。
もっさんが本気になれば501隊全攻略とか可能な気がしてなりません。
誰かそういうゲームつくってください。お読みいただいた方ありがとうございました。
気が付いたときには嘘みたいに近くでそのとろけてしまいそうなほどの甘い囁きを聞いていて、答えをひとつ
しか持ち合わせていない私は首を横に振ってそれを示した。艶やかな唇が私との間隔をゼロにした瞬間、まるで
身も心も全部盗られてしまった気がした。
あのとき。坂本さんはインカムを付けただけだったけれど、一瞬、私はもしかしてこんな風にされるんじゃないか
って思った。でも、今思うのは、そうしてくれてもよかったのになってこと。だって、こんなにも心の落ち着く
ことって、ないよ。
「もっと…」
離れていこうとする坂本さんを引き止めて、何度も唇をふれさせた。それに応えてくれるようにあたたかな手が
私のからだをよせて、もっともっとふれていたくなる。けれど、どうしてかだんだんと頭がくらくらしてきて、
いやだ、もっと坂本さんと一緒になっていたいのに、がくりと足が崩れてしまうとそれもあたわなかった。
大丈夫かと優しく支えてくれた坂本さんに私はうなずいて返す。
「どうやらこちらのほうも相性はいいらしい」
坂本さんは微笑を浮かべながらそう言って、ベッドのほうまで抱えてくれた。
「それじゃあ、今日はもう休め。それと言っておくが、私は訓練では厳しいからな」
惚けてしまった頭で半分聞いて、それから今度こそ本当に部屋をあとにする背中を見送った。けれどもう寂しさや
心細さなんて感じない。
「おやすみ」
そんな最後の一雫が落とされると私の心はいっぱいに満たされて、この見知らぬ土地でひとりになったと
いうのになぜだか笑みばかり浮かんでくるのだ。
からだが覚えている柔らかな感触に包まれながら、私はゆっくりと目を閉じた。
「おやすみなさい、坂本さん」
------
あのインカムのシーンは芳佳の何かがはじけた瞬間だとおもうのです。
そのあと空で頬も寄せちゃうし。もっさんまじ天然ジゴロ。
もっさんが本気になれば501隊全攻略とか可能な気がしてなりません。
誰かそういうゲームつくってください。お読みいただいた方ありがとうございました。
271: 2009/02/16(月) 14:58:59 ID:Oc5yQQ2i
もっさんジゴロSSは大好物です、GJ!!!
インカムのシーンも含め2話は凄い好きだな。あれがハマるきっかけだった気がする。
もっさんが501全員攻略する話とかまじ見てみたい。
インカムのシーンも含め2話は凄い好きだな。あれがハマるきっかけだった気がする。
もっさんが501全員攻略する話とかまじ見てみたい。
272: 2009/02/16(月) 16:34:26 ID:gibyFwpb
ゲームのおまけでもっさんが501全員攻略します
みたいな
みたいな
273: 2009/02/16(月) 16:37:43 ID:/YdTVIcL
もっさんが攻略できなそうなのはヘルマくらいか?
274: 2009/02/16(月) 17:14:31 ID:Ut0vANwX
レ「バルクホルン大尉殿と違うタイプではありますけれど、坂本少佐殿は
なんと男らしいのでありましょうか……」
というふうな感じで惚れるのではと妄想している
俺は男だが、自分が可愛い女の子だったらもっさんに抱かれたいと思ってるぜ
なんと男らしいのでありましょうか……」
というふうな感じで惚れるのではと妄想している
俺は男だが、自分が可愛い女の子だったらもっさんに抱かれたいと思ってるぜ
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