1: 2009/05/17(日) 22:56:31.71 ID:wNNnpiNt0
長い間引き篭もっていると、本当に色々な事が起きる。
恐らく、学校に通っていると経験できないような事まで。

「ジュン、紅茶を淹れて頂戴」

この偉そうな紅い人形に命令されるのもその1つだろう。
だが、真紅のお陰で自分の部屋からは出る事が出来るようになった。

「はいはい、今淹れるよ」

「ジュン、"はい"は1回でいいのよ」

口うるさいのがたまに傷だけど。
グッドスマイルカンパニー ねんどろいど ローゼンメイデン 翠星石 ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア G12642
3: 2009/05/17(日) 22:58:39.17 ID:wNNnpiNt0
「やいチビ人間、スコーンを焼いてやったですからありがたーく頂きやがれですぅ!」

「ジュン登りなのー!」

我が家には今3体のローゼンメイデンがいる。
全7体の伝説の人形が3体、といえばその凄さが分かるかもしれない。

どうして僕が選ばれたのかは今はまだ分からない。

正直うるさいけれど、僕はこの生活が気に入っていた。
だから、姉ちゃんには言えなかった。

心配性の姉ちゃんなら間違いなく両親に相談してしまう。
"生きた人形"の存在がばれてしまったら平穏な生活を送れなくなってしまう。

4: 2009/05/17(日) 23:00:20.38 ID:wNNnpiNt0
「おい、そろそろ僕の部屋に行くぞ」

紅茶を飲みながら人形劇を見ている真紅、雛苺とそれを追いかけている翠星石を呼び戻す。
理由は簡単、そろそろ姉ちゃんが帰ってくるから。

「・・・・・・今1番いい所なのに」

真紅が名残惜しそうにリモコンのスイッチを押す。
小さい子の楽しみを奪っているようで心が痛かった。

「我慢してくれ、お前達の存在がばれる訳にはいかないんだ」

渋々真紅が立ち上がり、僕の隣に来る。

「早く行きましょう、見つかってしまうわ」

6: 2009/05/17(日) 23:02:34.71 ID:wNNnpiNt0
1人部屋に所狭しと3つの鞄が並んでいる。
真紅達が来るまでは必要としていなかったスペースだ。

「ねぇジュン、どうしてのりにヒナ達の事がばれたらいけないの?」

純粋に分かっていないのだろう、自分達の存在がどれだけ異質なものかを。

「雛苺、お前は今の生活が楽しいだろ?」

「うんッ! とっても楽しいの!」

思わず目を瞑りたくなるような笑顔で返事が返ってくる。

「そっか、なら我慢してくれ」

今こいつらを失う事は、僕の唯一の話し相手を失うことになる。
もう1人だけの生活には戻りたくない。


おかしいな、もっと書いたと思ったのに書き溜めが無くなった

8: 2009/05/17(日) 23:05:52.54 ID:wNNnpiNt0
やがて『ただいまー』と言う声が聞こえてくる。
そのまま僕の部屋に足音が近づいてきて、僕の部屋の前で止まる。

「ジュン君、ただいま」

扉越しに姉ちゃんの声が聞こえる。

「・・・・・・何の用だよ」

「ジュン君、また一緒にご飯を食べよ・・・・・・?」

力のない、無気力な声が頭に響く。

「嫌、絶対嫌だ」

「そっか・・・・・・、また気が向いたらお姉ちゃんとお話しよ? 紅茶好きなんでしょ? 今日買ってきたから」

11: 2009/05/17(日) 23:10:30.54 ID:wNNnpiNt0
階段を降りる足音が聞こえると、それまで息を潜めていた3人が僕の所に来る。
全員が僕の目を覗き込んでいた。

「ジュン、どうして実の姉とも会わないの?」

「チビ人間、のりはお前の事を心配しているですぅ」

「ヒナはのりとも一緒に遊びたいの」

やはり、このままでは限界が近いだろう。
一緒な家で生活している以上、ばれる日が必ず来るだろう。

「・・・・・・腹を割って話してみるか」

僕自身、姉ちゃんと一緒に色々話したかった。
それまで姉ちゃんに掛けた迷惑を考えるとどうしてもそんな事は出来ない。
キッカケが欲しい、丁度いい機会だ。

12: 2009/05/17(日) 23:13:10.36 ID:wNNnpiNt0
キィ・・・・・・とドアが開く音が響いた。
ドアが重い、さっきまではただの木製のドアだったのにまるで鉄のよう。

「真紅、僕と一緒についてきてくれ」

コクン、と真紅が頷く。
残りの2人には待機してもらう。

「ジュン、頑張るの」

雛苺の期待の篭ったエールのためにも、必ず成功させなければならない。

「それじゃ、行くぞ」

13: 2009/05/17(日) 23:16:39.52 ID:wNNnpiNt0
真紅を抱きかかえながらゆっくりと階段を降りた。
足音を立てないように。

ゆっくりとリビングの扉を開けると、姉ちゃんが振り向いた。

「ジュン君、出てきたんだぁ・・・・・・」

嗚咽を押し頃しているようなかすれた小さな声が僕の心に突き刺さる。
だが、まだ目的は達成していない。

「姉ちゃん、こいつを見てくれ 真紅って言うんだ」

真紅を床に降ろしながら言う。

「わ、私は一体何を見ればいいのかな?」

14: 2009/05/17(日) 23:22:19.63 ID:wNNnpiNt0
「ほら、姉ちゃんの目の前にいる紅い人形だよ」

いくら説明しても、姉ちゃんの視線は真紅の視線と重ならなかった。
もしかして見えていないのか?

「ジュン君・・・・・・」

やがて姉が僕を見ながら哀れむような顔をする。

「冗談だよ、今ネットで"人をおちょくる1000の方法"見てたから試してただけ」

半信半疑、といった所だろう。
ずっと僕の顔を覗いている。

「そう・・・・・・なんだ」

18: 2009/05/17(日) 23:29:03.63 ID:wNNnpiNt0
真紅を抱きかかえ、自分の部屋に急ぎ足で戻る。
「また一緒にお喋りしましょ・・・・・・?」と言う姉ちゃんの声を背に。

「真紅、どういう事か分かるか?」

「ごめんなさい、分からないわ」

真紅が「今までこんな事は無かった」と小さく呟いた。

部屋には結果を待っている翠星石と雛苺がいる。
何て伝えればいい・・・・・・?

「・・・・・・有りのままに伝えればいいわ」

指輪を通してなのか、僕の口から声が漏れていたのかは知らないが真紅が答えた。

20: 2009/05/17(日) 23:33:01.42 ID:wNNnpiNt0
「成る程、翠星石達の姿も多分見えないって訳ですか」

翠星石がうんうん頷きながら納得する。
雛苺は少し寂しそうな顔をして「のりとも遊びたかったの」と言った。

「まぁ、今度から隠れる必要が無くなっただけでも良しとしよう」

精一杯のフォローのつもりだけど、空気は沈んでいた。
だが真紅は僕の意向に気が付いたのか、合いの手を入れてくれた。

「そうね、今度からくんくんを生で全部見る事が出来るわ」

「生放送じゃないんだけどな」

合わせるかのように翠星石も雛苺も言う。

「これでチビ人間の部屋に拘束されなくて済むですぅ」

「ジュンの部屋より広いリビングでずーっと遊べるの!」

22: 2009/05/17(日) 23:42:29.73 ID:wNNnpiNt0
翌日から、僕たちは自分の部屋に隠れる事はしなかった。
最初の姉ちゃんの驚いた顔がとても印象的だった。

「僕がリビングにいるくらいで泣くなよ」

「だって・・・・・・、ようやく家族になれた気がしたんだもん・・・・・・」

僕が姉ちゃんを落ち着かせようと背中をさすっている姿を、人形達は笑って見ていた。

「なんだよ、悪いか」

「べーつに悪くねえですぅ ちゃんと姉を大事にしろですぅ」

他の2人も同じような事を言う。
姉ちゃんはこの日、ずっと泣いていた。

24: 2009/05/17(日) 23:48:06.33 ID:wNNnpiNt0
さらに翌日、姉ちゃんが帰ってくる時間が早くなった。
何故か寂しそうな表情だったが、僕の顔を見ると明るくなってくれた。

「ジュン君、今日は何を食べたい?」

「特に食べたいものはない」

そういえばローゼンメイデン達は何も食べないけど大丈夫なのだろうか。
燃費が良すぎる気がする、特に雛苺。

紅茶を淹れても結局僕が飲んでいるし、翠星石のスコーンも僕しか食べない。

「お前らって何も食わないけど大丈夫なのか?」

「ええ、指輪を通して力を貰っているわ」

チラっと姉ちゃんを見ると、再び寂しそうな顔をしていた。

27: 2009/05/17(日) 23:55:34.79 ID:wNNnpiNt0
「あ、今日もスコーン食べてくれたんだ」

茶碗を洗いながら姉ちゃんが嬉しそうに言う。
まるで姉ちゃんが焼いたかのように。

「ああ、食べた」

姉ちゃんとの会話中、人形達はジーッと止まっていた。
普段が活発なだけに妙な違和感を感じた。

「よしッ! 今から夕食を作るわ」

気合の入った声が台所から聞こえてくる。

「期待してね、ジュン君」

30: 2009/05/18(月) 00:02:40.30 ID:4PMTnuk80
やがていい匂いがリビングにまで広がってきた。
この匂いは・・・・・・

「今日の夕食は花丸ハンバーグ、美味しくできたわよ」

ご機嫌に料理を食卓に運ぶ姉ちゃん。
その進行方向には雛苺がいた。

「雛苺ッ あぶな――」

我が目を疑った。
姉ちゃんの足を雛苺は確かに接触したはず。

なのに、2人とも何の変化もなしに行動を続けていた。

いや、僕は確かに見た。
姉ちゃんの足が雛苺をすり抜けたのを。

32: 2009/05/18(月) 00:08:29.05 ID:4PMTnuk80
姉ちゃんがまたあの目をしている。

「ジュン君、雛苺って何なの?」

いや、哀れむ目じゃない。
視界に何も入っていない、遠くを見つめるような冷たい目。

「いや、テレビの話だよ・・・・・・」

フッといつもの姉に戻った。
今のは何だったんだ・・・・・・?

「ジュン君、熱いうちに食べよ?」

33: 2009/05/18(月) 00:13:27.24 ID:4PMTnuk80
食事中、ずーっと姉ちゃんの観察をしていた。
何かあるだろう、と期待をしながら。

「どう、おいしい?」

「ん、ああ・・・・・・ おいしい」

ニコっと微笑む。
いつもの姉ちゃんみたいに。

「そう、口に合うんなら良かったわ」

食事中、姉ちゃんがボロを出すことは無かった。

35: 2009/05/18(月) 00:20:53.90 ID:4PMTnuk80
再び姉ちゃんが食器を洗う。
僕はずーっとその姿を見る。

「ん、ジュン君どうしたの?」

「い、いや・・・・・・何でもない」

不審に思われてはいけない。
一体あの目が何なのかを突き止めないと。

ボーッとテレビを見ていると真紅が近づいてきた。

「ジュン、あなたはのりが怖いのね」

36: 2009/05/18(月) 00:24:30.74 ID:4PMTnuk80
真紅がピョンとソファに飛び乗り、僕の隣に座る。

「ああ、怖いよ」

ローゼンメイデン達はいつも僕の心を察してくれる。
指輪の力なのだろうが。

「じゃあ対処しないといけないわ」

「どうやって・・・・・・?」

まるで自分の心と対話をしている気分だった。
相手が全て僕の事情を知っているような。

「決まっているでしょ?」

37: 2009/05/18(月) 00:28:02.35 ID:4PMTnuk80
真紅と会話しているとき、背中には刺さるような視線を感じていた。
振り向きたくても振り向けなかった。

「ジュン、今すぐ自分の部屋に逃げなさい」

真紅に言われる前に僕は駆け出していた。

その時に見えた姉ちゃんは、またあの目をしていた。

自分の部屋に戻り勢いよくドアを閉めると、既にローゼンメイデンが3体揃っていた。
いつの間に真紅に抜かれたのだろうか。

「こ、このままじゃ僕・・・・・・」

「ええ、殺されてしまうかもしれないわ」

「お前の姉は狂っているですぅ・・・・・・」

38: 2009/05/18(月) 00:31:47.84 ID:4PMTnuk80
数日後、世間は僕に注目していた。
"殺人鬼"だなんて酷い言われようだな。

僕は自分の命を守っただけだ そうだろ、真紅?

「ええ、あれは正当防衛よ」

ああするしかなかったよな、翠星石?

「自分の命には代えられねえですぅ」

ああ、僕は悪くないよな、雛苺?

41: 2009/05/18(月) 00:35:01.14 ID:4PMTnuk80
「ジュン、お前は狂っているの」

その声は、最後の良心だった。

fin

オチry>>1ry
あるマンガを読んでいて思いついた。
オチだけ考えて中身が上手く書けなかったような印象
本当は誰も氏なないendが良かったけど思い浮かばなかった。
質問あれば答えますけど

お目汚しごめす
今日は駄作ばっかり書いてる気がするんだぜ

42: 2009/05/18(月) 00:35:14.84 ID:yQoxVywl0
なんぞこの展開

引用: ジュン「ああするしかなかったよな、翠星石?」