1: 2013/10/22(火) 21:28:38 ID:yYK.D0p6
*人類が巨人に勝ってから数年後の設定です

2: 2013/10/22(火) 21:29:16 ID:yYK.D0p6


ジャン「よっ、アルミン」ガチャ

アルミン「ジャン、ひさしぶり」ニコ…

ジャン「お前のところの部下が、アルミンが1週間も仕事部屋に引きこもってるっつーから、立ち寄ってみたんだけど」

アルミン「それはありがとう…」

ジャン「なんかボロボロだな」

アルミン「満身創痍だよ」アハハ
進撃の巨人マガジン15周年号 (講談社 MOOK)
3: 2013/10/22(火) 21:29:59 ID:yYK.D0p6

ジャン「引きこもって、好きなことしてるくせに。仕事人間」スタスタ

アルミン「ジャンの顔見たら、おなかがすいたよ」グー

ジャン「カーテンくらい開けろよ。苔が生えちまう」シャッ

アルミン(…うわ)

ジャン「1週間ずっとカーテン閉めてたのかよ」ヤレヤレ

アルミン(…眩しすぎる)

4: 2013/10/22(火) 21:31:07 ID:yYK.D0p6
ジャン「アルミン?」

アルミン「明順応がうまくいかない…」クラ

ジャン「なんだか太陽の光が、やけに…白いな…」

アルミン「……うん…」

5: 2013/10/22(火) 21:32:05 ID:yYK.D0p6

ジャン「ずっと執筆してたのかよ」ヨイショ

アルミン「わわ、きみが今腰掛けた僕の机には大切なメモが」

ジャン「こんな紙切れ!!」クシャクシャ

アルミン「なにするんだよ!!」アセアセ

ジャン「こんなものいらない」ビリビリ

アルミン「理由のない破棄!?」涙目

6: 2013/10/22(火) 21:33:04 ID:yYK.D0p6

ジャン「今お前が書いているやつは随筆なんだから、メモなんていならいだろ」ポイ

アルミン「それでも構成は考えないと…」シュン

ジャン「ありのまま書けばいいじゃん」

アルミン「それはそうなんだけど」

ジャン「いつごろ完成しそうなんだ?」

アルミン「あと1ヶ月くらいは必要かな…」

7: 2013/10/22(火) 21:33:56 ID:yYK.D0p6
ジャン「…楽しみだな」

アルミン「………僕は…」

ジャン「なんだよ」

アルミン「僕は泣きそうだ」

ジャン「は?」


\コンコン/

8: 2013/10/22(火) 21:38:03 ID:yYK.D0p6


ジャン「はーい」

アルミン「なんでジャンが返事をするの…」

ジャン「いいじゃん」

アルミン「きっとミカサだよ」

ジャン「へ」

ミカサ「アルミン」ガチャ

9: 2013/10/22(火) 21:38:50 ID:yYK.D0p6

ジャン「…よ、よう、ミカサ」

ミカサ「ジャンも来ていたの」スタスタ

アルミン「僕のことを心配して来てくれたんだ」ニコ

ジャン「ち、げーし、そんなんじゃねえ」

ミカサ「…そう。ありがとう、ジャン」ニコ

ジャン「……別に」カア

アルミン「………」ニコニコ

10: 2013/10/22(火) 21:39:54 ID:yYK.D0p6
ジャン「くそっ」ポカッ

アルミン「いた!」

ミカサ「?」

アルミン「もう…。ミカサ、迎えに来てくれたんだよね?ありがとう」

ミカサ「いや、すぐに行く?」

アルミン「うん、もう向おう」スッ

ジャン「…どこに?」

アルミン「エレンのところだよ」ニコ

11: 2013/10/22(火) 21:40:51 ID:yYK.D0p6

ジャン「そうか…」チラ

ミカサ「…なにか?」ニコ…

ジャン「!」フイ

アルミン「ジャンも行くかい?」

ジャン「…いや、俺は待ってるよ」

アルミン「そう?」

ジャン「ああ。…そうだな、俺の部屋で待ってるから、帰ってきたら寄れよ」

アルミン「わかった」スタスタ

12: 2013/10/22(火) 21:41:33 ID:yYK.D0p6



アルミン「行ってくるね」ニコ

ミカサ「…また」

ジャン「ああ」


バタン


ジャン「………」

13: 2013/10/22(火) 21:42:37 ID:yYK.D0p6





ミカサ「相変わらず、この建物は白い」スタスタ

アルミン「病院は清潔感を現すために白を使うらしいよ」スタスタ

ミカサ「そう…」スタスタ

アルミン「でも」スタスタ

ミカサ「?」スタスタ

アルミン「白すぎて、…白すぎて、なんだか」

ミカサ「アルミン」スッ

アルミン「ミカサ」

ミカサ「私は平気」ニコ

アルミン「……うん。僕も」

14: 2013/10/22(火) 21:43:20 ID:yYK.D0p6



ハンジ「やあやあ、二人とも久しぶりだね!」

リヴァイ「………」

アルミン「お二方、ご無沙汰しています」ペコ

ミカサ「……」ペコ

ハンジ「いやー、いつの間にか偉くなっちゃって」

アルミン「そんなことないですよ」

ハンジ「そんなことあるよー、偉い偉いよー」

リヴァイ「おいクソメガネ。今はやることがあるだろ」ギロリ

ハンジ「はいはいはい。もー、重いよ重い、空気が重い苦しい」

15: 2013/10/22(火) 21:44:14 ID:yYK.D0p6

ミカサ「あの」

リヴァイ「なんだ」

ハンジ「なに?」

ミカサ「…今日はありがとうございます」

アルミン(……ミカサ)

ハンジ「いいえ、エレンは私たちにとっても大事な仲間、なんだよ」ニコ

リヴァイ「……部屋に入るぞ」

アルミン「はい」

16: 2013/10/22(火) 21:44:57 ID:yYK.D0p6





アルミン(…白い、エレンの寝顔)

ハンジ「このおっさんが少し無理してくれてね」

リヴァイ「あ?」ギロッ

ハンジ「安心して、エレンを連れ出していいよ」ニコッ

リヴァイ「…ちっ」

ハンジ「エレンを連れて行くのに、車椅子も借りたから」

アルミン「何からなにまで…ありがとうございます」

17: 2013/10/22(火) 21:46:09 ID:yYK.D0p6

リヴァイ「…エレン…か」スッ

ミカサ「……」

リヴァイ「おい、クソガキ。なにちんたら眠ってやがる」

ハンジ「…リヴァイ」

リヴァイ「ハナから終わりまで、本当に甘ったれた奴だ」

ハンジ「………」ポンポン

18: 2013/10/22(火) 21:47:02 ID:yYK.D0p6


アルミン(エレンの病室はいつも静かだ。

     白い壁、白い天井、白いベッド、白いカーテン…。

     覗くようにそそぐ太陽の白い日差しが、まるで、)



ミカサ「…エレン」ジワ



アルミン(僕たちを刺しているようだ)


,

19: 2013/10/22(火) 21:47:50 ID:yYK.D0p6


ミカサ「…エレン、起きないの?」ナデナデ


ミカサ「…………エレン…」ギュ


アルミン(握り返すことのない、エレンの…白い手)

20: 2013/10/22(火) 21:48:33 ID:yYK.D0p6






ハンジ「じゃあ、気をつけてね」

アルミン「ありがとうございます」

ミカサ「……」ペコ

リヴァイ「おい、お前ら」

アルミン「はい」

リヴァイ「帰って来いよ」ギロ

アルミン「……もちろん…」

ミカサ「…はい」

21: 2013/10/22(火) 21:49:46 ID:yYK.D0p6






ハンジ「行っちゃったね」

リヴァイ「夕方になる前に帰ってくるだろうが」

ハンジ「…予定ではね」

リヴァイ「おい」

ハンジ「いやいや、あの二人はきちんと帰ってくるよ。エレンを連れて逃走とかはないよ」

22: 2013/10/22(火) 21:50:26 ID:yYK.D0p6

ハンジ「そういう子たちだよ」

リヴァイ「………」

ハンジ「まあ昔、嫌気が差すほど、政府が上手く利用することのできた、あの3人のこととなれば」

リヴァイ「………」

ハンジ「多少のことがあっても、上は目を瞑ってくれるよ」

リヴァイ「クソだな」

ハンジ「なにがよ」

23: 2013/10/22(火) 21:51:34 ID:yYK.D0p6

リヴァイ「……そんなもののために、闘っていたんじゃない」

ハンジ「そうだよ。私たちはそんなことのために、闘っていたんじゃない。
    人の尊厳と自由を夢見て…けれど、結果としては政府の糧になるだけだった。
    わかってたけどね。わかってたけど…」

リヴァイ「……」フイ

ハンジ「少し静か過ぎる生活になっちゃったよね」

24: 2013/10/22(火) 21:52:38 ID:yYK.D0p6
リヴァイ「もう行くぞ、クソメガネ」スッ

ハンジ「うん、行くよ」

リヴァイ「………」

ハンジ「懐かしいね」

リヴァイ「……そうだな」

ハンジ「そりゃ、私たちも歳を取るわ」

リヴァイ(結局勝ったのは、闘うことを知らない奴らだ)

ハンジ「今日は、ひときわ…太陽がまぶしいね」

25: 2013/10/22(火) 21:53:22 ID:yYK.D0p6






ミカサ「エレン、風が気持ちいい」ガラガラ

アルミン「ミカサ、石があるよ。車椅子気をつけて」

ミカサ「わかった」ガラガラ

アルミン「懐かしいね、ここ」

ミカサ「よく3人で遊んだ」

アルミン「まだ咲いてるんだね…リンドウ」

ミカサ「…うん」

26: 2013/10/22(火) 21:54:11 ID:yYK.D0p6

アルミン(突き抜けるように青い空。
  
     刺すように痛い白い太陽。

     心地のよい風が、膝丈までよく伸びたリンドウを揺らす)



アルミン(鮮明に蘇る。
   
     今日までの親友のこと。

     出会った時からのこと、ずっと)



アルミン(思い出を、なぞる)

27: 2013/10/22(火) 21:55:10 ID:yYK.D0p6







ジャン「俺がアルミンの部屋にこもっててもしかたねーか」ボリボリ


ジャン(…もう二人は病院をでたかな。

    アルミンには、俺の部屋に来いって言っちゃったし、部屋に戻るか)ガタッ


ツルッ ドタンッ


ジャン「くっそ!!!なんだ!!!この紙切れは!!!俺を転ばせて…」

28: 2013/10/22(火) 21:55:54 ID:yYK.D0p6

ジャン「ん?“エレンの気持ちがわからなかった”…?」


ジャン(アルミンが今、書いている本か)


ジャン(気持ちがわからないも何も…エレンはお前ら二人を守りたかっただけだろ、いつだって)


ジャン「まったく」ガサガサ

29: 2013/10/22(火) 21:56:32 ID:yYK.D0p6

ジャン(ビリビリに破いたアルミンのメモを掻き集める。

    アルミンが今までに執筆したのは研究による本しかない。

    そんなあいつが、“エレンが決めたエレンの期限”を目前に、随筆を書き始めた)



ジャン「当時誰かが、アルミンは非情だって言ってたな」

ジャン「そうです、言ったのは俺です」アハハ

ジャン「はー」フリフリ

30: 2013/10/22(火) 21:57:49 ID:yYK.D0p6



ジャン(捨ててきたものに、情があるかないかなんて、本人にしかわからない。

    アルミンは、本を書く。

    捨ててきたものを、拾うように。

    忘れないように、とっておくために、誰かに覚えていてもらうために。

    アルミンの心の底に溜まる、“捨ててきたはず”のものが、湧き上がって活字に映る)

31: 2013/10/22(火) 21:58:28 ID:yYK.D0p6


ジャン「バーカ!」




ジャン(もう誰もいない。


    それでも…)

32: 2013/10/22(火) 21:59:12 ID:yYK.D0p6







アルミン(エレン。

     僕たちのしてきたことは正しかった。

     人類は勝ち、世界は踊る。
  
     色に満ちる、明るい街。

     壁より広い空、動物が群れをなす大地、太陽が沈む海)


アルミン(エレン…)


アルミン(どうやら、色んなものを捨てすぎた。

     足りないものが多すぎる。

     埋まらない穴を見つめることしかできない)

33: 2013/10/22(火) 22:00:16 ID:yYK.D0p6







ミカサ「…いってらっしゃい、エレン」ナデナデ




アルミン(君がいない僕は)



アルミン「…エレン」




,

34: 2013/10/22(火) 22:01:11 ID:yYK.D0p6








アルミン「…ミカサ」

ミカサ「そろそろ、帰ろう、アルミン」

アルミン「そうだね」

ミカサ「ジャンが待ってる」

アルミン「え?ミカサもジャンのところ行くの?」

ミカサ「?
    ジャンは待ってると言っていたはず」

アルミン「そうだけど…」

ミカサ「?」

アルミン(よかったね、ジャン)

35: 2013/10/22(火) 22:01:48 ID:yYK.D0p6

ミカサ「私たちは生きる」

アルミン「うん」

ミカサ「生きていける」

アルミン「うん」

ミカサ「アルミンを失いたくない」

アルミン「……僕もだよ、ミカサ」

36: 2013/10/22(火) 22:02:33 ID:yYK.D0p6

アルミン「書きたい本もまだあるしなあ」

ミカサ「アルミンは働きすぎ」

アルミン「鬼のミカサ教官にはかないません」

ミカサ「やめて」

アルミン「あはは」



ゴォォ


ミカサ「…風が」

アルミン「……戻ろうか」

ミカサ「ええ」

37: 2013/10/22(火) 22:03:22 ID:yYK.D0p6








,

38: 2013/10/22(火) 22:04:34 ID:yYK.D0p6


ジャン「“賞賛、畏怖、期待、憎悪…彼は色々なものと闘っていた。”


    “僕とミカサは彼の尊厳を守りたかった。”

    
    “ある日、彼の体が朽ちはじめる。限界が来たのだ。”」




アルミン(さようなら、エレン)




ジャン「“彼は特別に崇高な人間ではなかった。”


    
    “夢を見る、ごく普通の少年だった。”」



.

39: 2013/10/22(火) 22:05:27 ID:yYK.D0p6


アルミン「僕たちは、ここで生きてゆく」



.

40: 2013/10/22(火) 22:06:31 ID:yYK.D0p6


★ お わ り ★

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます

41: 2013/10/22(火) 22:09:56 ID:iKplQqL6

せつねえな

引用: アルミン「巨人の子」