1: 2024/10/13(日) 22:08:04 ID:???00
エマ「……何を送ってくれたのかな?」ゴソゴソ

エマ「わぁ、チーズセットだぁ……!」ベリッ

エマ「ヤギ、ゴルゴンゾーラ、そして……」

スッ

エマ「デュバレーの一番いいラクレットチーズ!!」

エマ「Grazie mamma!さっそくカセットコンロで」

エマ「……寮の部屋だとにおいがこもるから、同好会の部室で焼こう♪」タッタッ

エマ「果林ちゃーん、いる~?」コンコン

6: 2024/10/13(日) 22:21:46 ID:???00
部室

エマ「衣装とかにおいが付きそうなものは全部片付けたよ~」

果林「エマ……本当にやるつもりなの?」

エマ「やるよ~果林ちゃんもこの前クサヤを焼いて、みんなで食べたでしょ?」

果林「ええ」

果林「あのあとランジュがとってもくさい缶詰を開けて、大惨事になったじゃない?」

エマ「うん!あれは軽いテロだった……でもシュールストレミング美味しかったね。バゲットにのせて食べたらボーノだったよ」

果林「でも、ちょっとした騒ぎになって……」

エマ「えへへ、栞子ちゃんにいっぱい怒られちゃったね~」

果林「だったら──」

エマ「──果林ちゃん」

エマ「美味しいものには、リスクが伴うんだよ?」

9: 2024/10/13(日) 22:40:23 ID:???00
エマ「栞子ちゃんに叱られちゃうことを恐れていたら、美食の高みにたどり着けなくなっちゃうよ?」

果林「でも……」

エマ「クサヤを焼いたとき、強烈なにおいを我慢して食べたあとの感動を私に教えてくれたのは果林ちゃんでしょ」

果林「それは、まあ……確かに」

エマ「常に最高のパフォーマンスと高みを目指す果林ちゃんに、クサヤのお礼としてスイスで最高級のラクレットチーズ、食べて欲しいの」

エマ「スイスのチーズ料理で大切な友達の心をぽかぽかにしてあげたいんだぁ~」

果林「エマ……」

果林「わかったわ。私も八丈島の女よ、覚悟をきめたわ」

エマ「果林ちゃん、ありがとう……!」ダキッ

エマ「じゃあ、さっそくラクレットの準備しよ~」スッ

10: 2024/10/13(日) 22:55:24 ID:???00
エマ「テーブルにコンロを置いて、うえに大きめの鉄板をのせる……よいしょっと」

ガチッ

エマ「鉄板にミニフライパンを4つセット」スッスッ

果林「4つ……?」

エマ「ミアちゃんとランジュちゃんも誘ったんだぁ~」

エマ「ついでにラクレットにあう具材を持ってくるようにお願いしたの」

果林「あら、準備がいいのね」

エマ「うん♪」ルンルン

果林「ところでエマ」

エマ「なーに?」

果林「この鉄板でつくるラクレットってどういう料理なの?教えてくれない?」

エマ「わかった。教えてあげるね」

38: 2024/10/16(水) 20:15:21 ID:???00
>>11
エマ「ラクレットはね、フランス語で削るって意味だよ」

エマ「スイスの山間部でミルクから作られる固めのチーズのことで……中の水分をしっかり抜いて、何度も表面に塩水をしみこませてじっくり熟成させたのがラクレットに使えるの」

エマ「で、その専用チーズを火であぶって溶かして、パンやジャガイモにかけて食べるスイス料理だよぉ~」

果林「そうなの……あら、私たちが知っているチーズフォンデュと似てない?溶かしチーズを具材につけて食べるんでしょ?」

エマ「ううん、ぜんぜん違うよ」フルフル

エマ「フォンデュは、普通のチーズに牛乳か白ワインを鍋に入れて作るんだ」

エマ「しかも割合が、チーズ4でワインと牛乳が6なの」

果林「意外ね……思ったよりチーズが少ないじゃない」

エマ「うん。で、ラクレットは溶かしたチーズだけを使うんだ」

エマ「ちょっとにおいが強いけど、チーズそのものを美味しく食べられる……」

エマ「チーズ好きにはたまらなくボーノな料理なんだぁ~」

13: 2024/10/13(日) 23:28:45 ID:???00
スッ

エマ「これがそのラクレットチーズだよ。しかも、スイス南部のバレー州の無殺菌ミルクを使った伝統的な方法で作られた最高品質の称号……ラクレット・デュ・バレー!」

果林「思ったより大きいわね。まるで茶色い皿を半分にしたみたい」

エマ「そうだね~」

果林「ちょっとにおいをかがせてもらえない?」

エマ「はい、どうぞ」スッ

果林「……」スンスン

果林「……あら?なんというか、ツンとした塩のにおいのなかにほんのり独特なにおい……」

果林「……すごいくさいってほどじゃないわ」

エマ「でも溶かすために焼いたとき、独特のにおいがするんだよ……特にデュバレーのは、ね」

果林「クサヤみたいに?」

エマ「うーん、さすがにクサヤほどくさくはないかな?世界第五位のくさい食べ物にラクレットチーズは勝てないよぉ……」シュン

果林「そ、そうなのね……喜んでいいのかちょっと複雑だわ……」

14: 2024/10/13(日) 23:37:56 ID:???00
エマ「本場は専用のグリルで切り口を温めて、チーズが溶けたら具材にかけて食べるんだけど……さすがに用意はできなかったから」スッ

ザッザッ

エマ「ナイフでこのチーズをスライスして、4つのミニフライパンに入れてコンロの熱で溶かすことにしたの」

果林「なるほどね」

エマ「均等にある程度切ったチーズをのせたら……点火~」カチッ

ボッ

エマ「あとはふたりが具材を持ってくるまで、チーズがぽかぽかして溶けていくのを見守ろう♪」

果林「それにしても……ここではあまり耳にしない料理ね、ラクレットって」

エマ「でも、アニメのアルプスの少女ハイジでハイジが暖炉でチーズをあぶって食べるシーンがあるよね?あれがラクレットなんだけどなぁ……」

果林「え、そうなの?名前が出てないからよくわからなかったわ」

エマ「アニメはあるのに日本の人って意外とスイスをよく知らないよね~」

エマ「秘密が多そうで近づきづらい国ってイメージがあるからかなー?スイス銀行にバチカン警備の傭兵部隊に……」

果林「誰の味方にもならない永世中立国、だっけ?」

エマ「そうそう!あっ、今日の果林ちゃん賢い!」

果林「そう?いつも私は賢いお姉さんよ、訂正なさい」ドヤッ

エマ「……あ、そうそう。お父さんが軍から帰ってきたとき、アサルトライフルと手榴弾を家にもってきたんだ」

エマ「弟たちと一緒に射撃や投擲の仕方を教わったな~あと組み立てとお手入れも!」ニコッ

果林「……本当にエマを怒らせないほうがいいわね」ボソッ

15: 2024/10/13(日) 23:46:17 ID:???00
トロ~

エマ「チーズが溶けてきたぁ~」

果林「溶けていく様子がなんだかちょっと楽し……ねぇエマ」

エマ「ん、なーに?」

果林「その、独特なにおいがしてきたわね……」ハナツマミ



「きゃあ!部室がなんかにおうわ!」

「WTF!?また変なにおいがしてるぞ!!」



ガラッ

エマ「あ、来た」

18: 2024/10/14(月) 09:47:33 ID:???00
ランジュ「呼ばれて初めてランジュが来たわよ!」

ランジュ「きゃあ!このにおい、まるで牛乳を浴びた彼方を拭いた雑巾みたいだわ!」

ミア「一体なんの……うぁ、くっさ……」

ミア「テネシーの田舎にある古いの牧場のにおいがするぞ!?」

エマ「あはは、面白い例えだね」

果林「どんなにおいか表現できなかったけど……そうね、確かに牧場という例えが近いかも?」

トロ~

ミア「このにおいは……チーズか?それ」

エマ「そうだよ~ラクレットチーズなんだ」

ランジュ「きゃあ!ランジュ知ってるわ!クセがあるけど、とっても好吃ラ」

ミア「……まあ、あのクサヤとかいう干物よりはマシか」スンスン

果林「こーら、マシとかいわないの。あれほど嫌がってたのに最後はクサヤチーズにハマってたじゃない?」フフッ

ミア「あ、あれは偶然美味しかっただけだから……!」

21: 2024/10/14(月) 11:14:47 ID:???00
エマ「ふたりとも、具材の用意は大丈夫かな?」

ランジュ「エマ、準備万端よ!」スッ

ランジュ「ソーセージ、厚切りベーコン、ロースハム……ブロッコリー、カリフラワー、ほうれん草にトマト」

ランジュ「そしてバゲットと食パン、ポテト!」

ミア「野菜はランジュの料理人にボイルしてもらったよ」

エマ「ありがと~!じゃあ、お肉は鉄板の端っこで焼こう」

エマ「まずは人数分のお肉を置いて~」ヒョイヒョイ

ジュー

ランジュ「きゃあ!部室でBBQよ!」

ミア「うーん、肉の焼けるにおいってやっぱりvery goodだね」

エマ「それじゃ、焼けるまでのあいだ……溶けたチーズをパンにかけて食べてみよう!」

果林「待ってたわ。お腹ペコペコで、少し楽しみだったの」

ミア「ふーん、果林でもペコペコという表現つかうんだぁ……?」チラッ

果林「なっ、なによ……悪い?」

エマ「ううん、可愛いよ~果林ちゃん」ニッコリ

果林「もうっ!エマ~」カアッ

23: 2024/10/14(月) 19:53:49 ID:???00
エマ「みんなお皿にパンをのせたー?」

果林「ええ」

エマ「じゃあ、それぞれミニフライパンの溶けてるチーズをお皿のパンにかけて」スッ

トロ~

ランジュ「きゃあ!トロトロでテカテカよ!!」

ミア「チーズフォンデュと違って粘りがあるな……」

エマ「なかなかお皿に落ちないときはフォークをつかってね~」スッ

ミア「ん、ありがと」

エマ「パンにかけたら、食べる前にあらびき黒コショウをかけるとボーノだよ!はい、ペッパーミル」

果林「かけてみるわ」ゴリゴリ

ミア「ボクも」ゴリゴリ

ランジュ「あら?エマはバゲットじゃないのね」

エマ「私は大好きな食パンの耳だよ~これとラクレットチーズがあうんだ~」

果林「それじゃ……」

4人「いただきまーす」

24: 2024/10/14(月) 20:09:06 ID:???00
果林「どうかしら……」パクッ

ミア「においは……」スンスン

ミア「コショウをふったからだいぶ落ち着いてるな」パクッ

ランジュ「……」モグモグ

3人「……」ゴクン

エマ「どうかな~?」ドキドキ

果林「濃厚なミルクの風味があって、日本のチーズにないうま味ね。パンと相性も良くて美味しいわ」

ミア「うん、Delicious.程よい塩加減で、チーズのにおいとコショウの香りがいいバランスだ」

ランジュ「きゃあ!とっても好吃よ」

ランジュ「口当たりがまろやかでコクがすごくて……ビュッフェで食べたときのより、はるかにこっちがいいわ!」

エマ「Grazie!美味しいっていってくれて、とっても嬉しいな。スイスの家族もきっと喜ぶよ~」パクッ

エマ「……」モグモグ

エマ「Delizioso~♪」

ランジュ「エマ!もっとチーズを溶かすわよ。次は肉と一緒に食べたいわ!」

エマ「うん!」

27: 2024/10/14(月) 21:40:24 ID:???00
エマ「ミニフライパンに切ったチーズを入れて。ついでに鉄板の端でジャガイモを置いて軽く焼き目をつけつつ……」

エマ「肉を裏返すよ~」スッ

ジュー

ランジュ「きゃあ!ベーコンの焼き色がとっても美味しそう!!」

ミア「wow.しっかり焦げ目のついたソーセージとチョリソー、絶対うまいぞ」

果林「チーズと肉のにおいがまざりあって、とても香ばしいわ」

果林「くさい食べ物だと思って身構えてたけど、食べたらとっても美味しいスイスのごちそうだったわね?」

エマ「うん!お肉と一緒に調理すると、同じ動物の脂だから良いにおいに変化するんだよ~」

トロ~

エマ「あ、チーズが溶けてきたね。それじゃ、みんなのお皿に肉を……」

ランジュ「まずはランジュからよ!」スッ

ミア「What're you talking about?ボクは三年生だぞ、日本にはネンコージョレツというルールがあるからボクが先なんだ」グイッ

ランジュ「なによぅ……まだ14歳じゃない!」プクー

果林「ふたりとも落ち着いて……まったくどっちも子供じゃない」ハァ

エマ「あはは。肉は逃げたりしないから、大丈夫だよぉ~」

29: 2024/10/15(火) 08:07:24 ID:???00
エマ「焼きあがった肉とポテト、野菜をのせて」ヒョイヒョイ

エマ「はい、どうぞ」

エマ「次は全体にかかるように、それぞれ溶けてきたチーズをかけて」

トロ~

ランジュ「きゃあ!とっても美味しそう!」キャハ

ミア「自分でかけるのがまた楽しいな」

果林「パーティーでこういう遊びがあると嬉しいわね」

エマ「ワンプレートラクレットチーズのせ、の出来上がり~」

果林「それじゃ……」

3人「いただきまーす」パクッ

ランジュ「……」モグモグ

ミア「……」モグモグ

果林「……」モグモグ

エマ「メインディッシュはどうかな~?」

31: 2024/10/15(火) 23:35:21 ID:???00
ミア「スパイシーなチョリソーと合うね。ポテトとの相性もNiceだ」

果林「とろけたチーズをまとったブロッコリーとほうれん草も合うわ……ホント、組み合わせが自由ね」

ランジュ「ベーコンもハムも……好吃ラ!」ガツガツ

ランジュ「……お代わりお願い!!」

エマ「うん♪まだまだあるからチーズ溶かすよ~」カチッ

ミア「それにしても……今回のくさい食べ物の食す集まりは、いつの間にかグルメを堪能するだけになったな……」ウデグミ

果林「まあいいじゃない。こういう平和なのも、ね?」

ランジュ「……あっ、そうよ!いいこと思いついたわ!」ガタッ

果林「あら、いきなり立ち上がって……」

ランジュ「ねえ、みんな。あとひとり誘って結成しない?」

エマ「なにを~?」

ランジュ「──名付けて、虹ヶ咲くさい食べ物同好会!」

3人「え~!?」

ランジュ「世界中のありとあらゆるくさい食べ物をメンバーで美味しく食べてみることを主旨に集まるの!」

ランジュ「いいと思わない?早速、申請するわ──」

栞子「却下します」スッ

4人「!?」

33: 2024/10/16(水) 08:00:30 ID:???00
ランジュ「し、栞子!?いつからここに」

栞子「つい先ほど。お昼をご一緒しようと寮を尋ねたらみなさんいらっしゃらないので、もしかしてと思ったら……」

栞子「やはり……またくさい食べ物、でしたね」ジーッ

ミア「こ、今回はそんなにくさくないだろ!?」

ランジュ「そうよ!またシュールストレミング開けたりしてないわ!」

栞子「ランジュ、悪びれてないあなたは反省文2枚です」

ランジュ「ラァ……!?」ガーン

ミア「今回は誰にも迷惑かけてないじゃないか。換気もしているぞ」ユビサシ

栞子「そういう問題ではありません。非公認の校内結社、裏同好会は生徒会の取締対象です」

栞子「ただちに解散を命じ──」

果林「あら、これは非公認の同好会活動ではないわよ?」

34: 2024/10/16(水) 08:01:53 ID:???00
果林「スクールアイドル同好会に所属するエマがスイスのチーズ料理を作ってくれて、それを偶然知ったスクールアイドル同好会の仲間が部室に集まって、偶然あった食材を持ち寄って昼食をとっている──これは健全なスクールアイドル同好会活動の一環じゃないかしら?」

栞子「それはそうですが……」

エマ「そうだよ。ただスイスから送ってもらった食材を食べているだけなんだ~」

ジュー

トロ~

エマ「!」

エマ「……そうだ。良かったら栞子ちゃんも食べてみない?」

栞子「エマさん!?なにをおっしゃって……」

エマ「だって今お昼でしょ?スイスのご飯、一緒に食べようよ~」パッパッ

エマ「お皿に焼いたお肉、お野菜とポテトにバゲットをのせて……」ヒョイヒョイ

エマ「テーブルに置くね」

ワンプレートランチ

栞子「……」ゴクリ

エマ「はい、栞子ちゃん、席について~」

35: 2024/10/16(水) 08:03:45 ID:???00
栞子「で、ですが生徒会長として……」

果林「そんな堅苦しいこといわないの。お昼ご飯なんだから」

ミア「生徒会長の前にボクたちのFriendだろ?ほら、座りなよ」トントン

栞子「はぁ……まあ」ストン

エマ「はい、栞子ちゃん。ミニフライパンを持って溶けたチーズをお皿の具にかけてね~」

栞子「これを、かけるんですね」ヒョイ

トロ~

栞子「わっ、とっても粘りがあるチーズですね……!」

果林「黒コショウを振ったら、においが落ち着くわ」

栞子「はい」ゴリゴリ

栞子「では……いただきます」パクッ

栞子「……美味しいです!」

ランジュ「きゃあ!栞子が美味しいと言ってくれたわ」

36: 2024/10/16(水) 08:08:06 ID:???00
栞子「……」モグモグ

4人「……」ニッコリ

栞子「!」

栞子「……まあ、その、同好会の設立は認可しません」カチャ

栞子「が、スクールアイドル同好会活動の一環でしたら、生徒会があれこれと口を挟む余地はないでしょう」

果林「よかったわ」

ランジュ「くさい食べ物をここで食べるのは認めてくれるのね!やったぁ!」

栞子「はしゃぎすぎです!」

エマ「よかったぁ~じゃあ、みんなにコレを食べてもらうことができるんだね」ゴソゴソ

果林「なにを探してるの?」

ミア「ラクレット以外に何かチーズがあったのかい」

エマ「うん、ラクレットじゃクサヤに勝てないと思って……スイスのお母さんにクサヤの話をしたら、お父さんがこれでクサヤに対抗しなさいってフランスで買ってきたんだ」スッ

エマ「今日のデザートに……ヨーロッパが誇るくさいチーズ、エポワスだよ!」

44: 2024/10/16(水) 22:44:24 ID:???00
ミア「エポワス……?」

栞子「どういったチーズなんですか?」

エマ「これはね、ラクレットと同じ熟成チーズで」ゴソゴソ

エマ「外側に塩水とブドウの蒸留酒を塗って、最低4週間かけて熟成させたんだぁ~」ゴソゴソ

エマ「においがとっても強くて……お皿にのせるね……えいっ」

パカッ

果林「……見た目は赤茶色で、小さなサイズのホールケーキみたいね」

ランジュ「ベイクドチーズケーキみたいで美味しそう!まずはランジュがにおいをかいでみるわ」ヒョイ

ランジュ「……」スンスン

4人「……」ドキドキ

ランジュ「……あら?クサヤみたいにくさくないわよ?」スンスン

ランジュ「もう少し鼻に近づけてみるわ……」スゥーッ

プーン

ランジュ「很臭ラァ……!」ガタッ

果林「ランジュが椅子から転げ落ちたわよ!!」

45: 2024/10/16(水) 22:49:36 ID:???00
ランジュ「あ、あぁ……」ヒクヒク

栞子「大丈夫ですかランジュ!?皆にちゃんと伝えるためにもう一回、かいでください」スッ

ランジュ「いやぁ……!」ブンブン

ミア「Demonだな……栞子」ヒキッ

栞子「では私が直接……」スンスン

プーン

栞子「……ゴフッ……!」

果林「いますごい声が出たわよ!?」

栞子「……すごいです、これは……!」

栞子「ダンスレッスンやライブ直後のせつ菜さんの足、しかも靴下とか生半可なものではなく……素足そのもののにおいですコレはっ!!」

栞子「まるで、という曖昧な比喩表現ではありません。まさにせつ菜さんが靴下を脱いだばかりの素足……とくに親指と人差し指の間のくぼみに鼻を直接くつけ、鼻孔を膨らませた瞬間に脳髄を突き抜ける凄まじい刺激臭です!」

ミア「ハッ、大げさだよ。いくら足くさ三大巨頭、A・ZU・NAのNAと同じなんて……」スンスン

プーン

ミア「ウ゛ォ゛エ゛!?」

50: 2024/10/17(木) 07:09:57 ID:???00
ミア「これが……これこそが……」

栞子「せつ菜さんの足のにおいですよね?」

ミア「いや、違う──」

ミア「これこそが、ベイビーちゃんのいう……歩夢の足のにおいなんだ!」

ランジュ「嘘よ!!」ガバッ

ランジュ「歩夢はいいにおいよ!!だって首筋や背中、手先は──」

ミア「確かに、歩夢はいいにおいだ。でも、そのことについてベイビーちゃんと議論を交えたとき、こういったんだ……」



侑「……歩夢は確かにいいにおいだよ?でも、前にひとりでダンスの自主練をスタジオで何時間もやったあと、訪ねてみたら歩夢が壁にもたれてうたた寝をしていたんだ」

侑「きっと、クールダウンの途中で寝ちゃったんだね、ライブが近かったから。ハードな練習で疲れていたんだよ。で、そのとき、歩夢の脇に脱いである靴下が目に入った──」

侑「そしてリラックスしてる歩夢を再び見ると、私の前に両足を伸ばしていたんだ……しかも、ピンクの爪をのせたつま先を斜め上に向けて、ね」

侑「歩夢の細部まで知る必要がある幼馴染としての義務感に突き動かされた私は……ミアちゃん、あとはわかるよね?」

侑「──例えるなら、熟成させたチーズのにおいだったよ。でも決して臭気じゃないんだ。そう、芳香、芳香だったんだ……」



ミア「……と、ね」

果林「相思相愛の幼馴染同士って深いのね……」シミジミ

54: 2024/10/17(木) 20:58:46 ID:???00
果林「どれ、私もかいでみるわ……」スンスン

プーン

果林「あ~、なるほどね。確かに足のにおいだわ」

果林「しかもツーンとくる足のにおいの、さらにくさい部分を凝縮した感じね。ふたりが例えに歩夢やせつ菜をあげるのも納得よ」

エマ「そうなのかな……?」スンスン

プーン

エマ「うーん、これは確かに」

エマ「クサヤのとき、そのにおいを濡れたしずくちゃんの靴下と表現したけど……エポワスはしずくちゃんの素足のにおいだ!」

ミア「ついにA・ZU・NAメンバーをコンプリートしたな……」

エマ「こうみるとクサヤもエポワスも同じにおいがするという共通点があるね!勉強になるよ~」

栞子「ちなみにフランスでは、このチーズのにおいをどう表現しているのですか?気になりますね……」

エマ「えっとね……」ペラッ

エマ「……神様の足のにおい、だって」

4人「!」

55: 2024/10/17(木) 21:01:53 ID:???00
ランジュ「えっと……よくわからないわ……」

果林「そもそも、神様の足ってくさいのかしら?」

ミア「ボクに振るなよ……」

果林「だって、そっちの国はクリスマスを祝うでしょ?」

ミア「Hah?神様の足のにおいとクリスマス関係ないだろ!日本だってクリスマスをやるじゃないか!!」

栞子「つまりキリストも仏も足がチーズくさいということですね」ポンッ

ミア「いやその理屈はおかしい」

ランジュ「そもそもチーズという先入観がなかったら、神だの仏だのの前にこんなくさいもの絶対食べようと思わないわ!」

果林「神様の足のにおいというからややこしくなるのよ?私たちの価値観で導き出すにおい評価は、A・ZU・NAの足においよ」

ミア「異論はないね。ステージの上で彼女たちは女神のように輝いているからな」ウンウン

ランジュ「無問題ラ!」

栞子「A・ZU・NAを女神とすると、A・ZU・NAランドはさながら旧約聖書のエデンの園ですね……快楽園という意味合いにおいて」ブツブツ

パン

エマ「ねえ、みんな!においについて結論が出たことろで、エポワス食べてみようよ~」

56: 2024/10/17(木) 22:05:42 ID:???00
栞子「そうですね。まず食べてみましょう」

エマ「まずナイフで半分切って、5人分にするね」サクッ

トロ~リ

ランジュ「きゃあ!中はカスタードクリームみたいにトロットロよ」

ミア「見た目は、な」

エマ「はい、みんなの皿に分けたよ。はい、フォーク」コトッ

果林「チーズくさい素足だと思うと……ちょっと抵抗感があるわね」カチャ

エマ「ちなみに、エポワスのにおいが無理な場合、外側の皮は食べずに中身を食べるといいんだって」

ミア「Ah,I see.においのもとは外側なのか」

ランジュ「それじゃ、食べるわよ……せーの!」

5人「いただきまーす」パクッ

モグモグ

57: 2024/10/17(木) 22:52:06 ID:???00
ランジュ「きゃあ!好吃ラ!」

果林「美味しいわね?」

ミア「……ツンと刺激がくる皮のしょっぱさと中身の濃厚な味が絶妙だな」

栞子「ラクレットも生乳のうま味が詰まってて十分美味しいですが、これはそれ以上です……!」

エマ「ボーノだね~あっ……」

エマ「次はパンと食べてみようよ!」

エマ「切ったエポワスをバゲットにのせて、上からハチミツをかけて……はい、どうぞ」

果林「これはデザートになるわね?」モグモグ

栞子「はい。そのままより美味しいです」モグモグ

エマ「やっぱりボーノだったよぉ」モグモグ

ミア「……」

ランジュ「どうしたの?」

58: 2024/10/17(木) 22:59:06 ID:???00
ミア「そうか!これだ!」ガタッ

果林「あら?いきなり立ち上がって……」

ミア「いま、曲のイメージの欠片が一気にボクの脳内に流れ込んできたんだ」

ランジュ「曲……?」

ミア「神のチーズ、くささを乗り越える勇気、A・ZU・NAランドは絢爛たるエデンの園、足のくさい女神たちの舞踏……!!」

ミア「~♪」

ミア「……このイメージはすごい、すごいぞ!すぐに書きとめないと!」

ミア「ボクは失礼するよ!エマ、チーズありがとう」ダッ

エマ「あっ、ミアちゃん!どこへ……」

バタン

栞子「行ってしまいました……」

果林「それじゃ、今回はこれでお開きね」

ランジュ「美味しかったわ!また誘ってちょうだい!」フリフリ

エマ「うん♪」


翌日、ミアは徹夜でつくった新曲をA・ZU・NAへ提供したが──

その曲はあまりにも、

「何を食ったらそんな曲を思いつくのか」
「音楽のピカソ」
「曲でツングースカ大爆発を表現している」

というほど独創的すぎたため、A・ZU・NA3人から難色を示された結果お蔵入りとなった……。


おわり

引用: エマ「スイスから荷物が届いたよ」