1: 2012/04/10(火) 21:43:00.77 ID:vV3M0aJ50
(孤独のグルメの原型は留めていません。ただ女の子がご飯を食べるだけです)



『富山県八森 大室家の撫子特製水炊き』


向日葵「じゃ、櫻子また明日。私買い物してから帰りますわ」

櫻子「おー」


櫻子「おーさむっ……」

まったく……今日は散々な日だ。

朝は少し寝坊してしまい、そこまで食べられなかったから給食を楽しみにしていたのだが……

櫻子「なんなんだよ……キャロットオムレツって……」

まさかメインディッシュが食べられない日がくるとは……
ゆるゆり、

5: 2012/04/10(火) 21:49:49.16 ID:vV3M0aJ50
櫻子(おまけにミルクロールも小さくなった気がする。日本は不況だから仕方ないのかもしれないけど……私たちの給食ぐらいまともにしてよね!)


櫻子(その後も数学で先生に指されて答えられないし……もういや!)


櫻子「うう……風が骨身にしみるぅ~」

こんな日はとっとと帰って、うまいものをたらふく食って早く寝るに限る。

櫻子(今日の当番は……ねーちゃんか)

7: 2012/04/10(火) 21:53:37.27 ID:vV3M0aJ50
――――――

ガチャ

櫻子「ただいまー」

撫子「ああ、おかえり」

なんだ……? コンロの前で腕を組んで……何かを煮込んでいる?

櫻子「な、なにしてんの?」

撫子「…………ん」


撫子「私、いつも言ってるよね。上手にダシさえとれれば、どんなものでも大抵うまくなるって」

櫻子「う、うん……」

撫子「限界まで旨味を引き出したものって、どこまでうまくなるんだろうね」

櫻子(ん……このにおい……!)

櫻子「ま、まさか……今日のご飯は……」

9: 2012/04/10(火) 21:57:17.23 ID:vV3M0aJ50
撫子「その通り……ふっ!」

煮込まれた鍋から取り出したそれは……鶏ガラ!


撫子「今夜は水炊きだよ」ニヤッ

櫻子「うぉっしゃーきたあ!!」グッ


櫻子「あっ! てことは……ご飯は!?」

撫子「開けんじゃないよ? タイミングは図ってる……一番いいときに混ぜるさ」

櫻子「さ、さすが………」

撫子「久しぶりにね。やっぱり食べるなら良いもん食べなきゃ。ほら、この鶏肉も使うんだ」


櫻子「きょ、今日給食あんま食べなくてよかったー!!」

撫子「そんなに?」

櫻子「ねーちゃんの水炊きなら当然!」

12: 2012/04/10(火) 22:02:02.82 ID:vV3M0aJ50
ガチャ

花子「ただいまー……ん、この匂い!」ハッ

撫子「アンタ鼻良すぎるだろ」

櫻子「花子だけにね」

花子「やったー水炊きー!」

撫子「まだまだ、もうちょいかかるかな……風呂入ってきちゃっていいよ」

櫻子「私先入る!」

花子「は!? 花子のが先だし!」

撫子「一緒に入れば?」

櫻子・花子「「やだ!!」」

13: 2012/04/10(火) 22:05:36.53 ID:vV3M0aJ50
ザーッ……


櫻子「あれは……いつだっけ」

櫻子(ねーちゃんが最初に水炊きを作ったとき……)

櫻子(確か当番制にして……少し経った頃)

櫻子(料理のマンガで覚えたとか言って……)

櫻子(いきなりあんな美味いの作ったときは、びっくりしたな)フフフ

櫻子(今日はやっぱり良い日!)キュッ

14: 2012/04/10(火) 22:09:31.95 ID:vV3M0aJ50
――――――

櫻子「お、遅れました!」

撫子「うむ」

花子「早くしろし!」


櫻子「…………」

撫子「…………」

花子「…………」


撫子「……開けます」

櫻子「お願いします!」

15: 2012/04/10(火) 22:13:15.44 ID:vV3M0aJ50
ほわっ

櫻子「わっ、わぁっ……!!」

花子「きたぁ……!!」

撫子「冬だからね……白菜を多めに、いつも通りシンプルを追求しました」

櫻子「ご飯は!?」

撫子「見てきな……完璧だよ」フッ


櫻子「…………!」

この固さ……まさしく水炊き用!

18: 2012/04/10(火) 22:17:19.72 ID:vV3M0aJ50
櫻子「よ、よそるー!」

撫子「だめ。私がよそる。アンタ人参よけるんだもん」

櫻子「うぅ……こんなにうまそうなのに人参なんて……」

撫子「大丈夫。私のはおいしいから。……はい」


いただきまーす!

櫻子(まずは……白菜いかせてもらいます)

はむっ

櫻子「うん! これこれ!」

撫子「やっぱり鶏だね……この味が一番だ」

花子「あ、あったかい……///」

撫子「冬は鍋だねー」

21: 2012/04/10(火) 22:24:23.35 ID:vV3M0aJ50
櫻子(この甘みは……鶏と白菜が合わさったときにしか出ないやつだよね……)

櫻子「うー染みるぅ……!」


花子「鶏肉がすごい……!」

櫻子(どれどれ鶏肉……)

ほふっ

櫻子「んー!」

櫻子(ほろほろじゃないですかぁ……///)

櫻子(で、でもまだまだ! ご飯投入まで全部は食べちゃだめだよね……)

23: 2012/04/10(火) 22:28:14.16 ID:vV3M0aJ50
撫子「櫻子」

櫻子「うっ……」ギクッ

撫子「……食べてみな? 美味しいから」

花子「いい年して人参食べられないってやばいし……」

櫻子「だめなんだよ……前に変なやつ食べてから、もうそれっきりダメ」

撫子「これは、おいしいやつだから」

櫻子「…………」

撫子「小さく切ったし、な? ほら……」


櫻子(こ、今回だけ……ちょっとだけ……)

25: 2012/04/10(火) 22:35:30.61 ID:vV3M0aJ50
ぱくっ

櫻子「…………」もむもむ

撫子「大丈夫でしょ?」

櫻子(あれ? 全然……大丈夫……)

櫻子(むしろ……この甘みは……!)


花子「そもそも人参ってあんまり強い味しないし。嫌いになる方が珍しいというか。これで櫻子ももう普通に人参食べられるね」

櫻子「こっ、これが大丈夫なだけ! 他のやつは絶対ダメなの!」

撫子「……ま、ちょっとずつ直してきゃいいか」


櫻子(に、人参なんて……ほんとにこれだけなんだから……)

櫻子「………くそー、うまい……」ぱくっ

櫻子「ハンバーグとかについてくるやつ! あれは論外だから! あれはマジでダメ!」

花子「どうでもいいし……」

26: 2012/04/10(火) 22:40:23.77 ID:vV3M0aJ50


花子「ね、ねーちゃんそろそろ……」

櫻子「行こう!」

撫子「……そうだね」スクッ


櫻子(うちの水炊きは……これがなくちゃだめ……)

櫻子(具を少し残してからの、ご飯投入!)


櫻子「花子!」

花子「まかせろし!」カチッ

ボッ……

撫子「火オッケー、いれるよー」

櫻子(雑炊まではいかない……ただ、一煮立ちは必要!)

27: 2012/04/10(火) 22:44:49.81 ID:vV3M0aJ50
ぐっぐっ……

櫻子「よし! よそろう!」

櫻子(こいつを待ってた……)

櫻子(野菜の甘み、鶏の旨味……)

櫻子(全てを吸ったこいつを……!)


すっ


櫻子「…………!!!」

29: 2012/04/10(火) 22:50:31.23 ID:vV3M0aJ50
撫子「……懐かしい………」

花子「あの時の……!」

櫻子「…………」


これだ。

これが食べたかったんだ。

これが、うちの、

お姉ちゃんの味なんだ。


櫻子「うまぁい!!」

30: 2012/04/10(火) 22:55:49.17 ID:vV3M0aJ50
櫻子(……今度は、いつやるのかな)するする

櫻子(ずっと食べてても、飽きない気がする)


櫻子「ん? これは……」

撫子「七味唐辛子だよ。 いれてみな? 合うよ」

櫻子(どれどれ……)ぱっ


するする……

櫻子「……うん、確かに」

櫻子(辛すぎなくていいな。いい七味なんじゃない?)

櫻子(ほどよい辛さというか……黒胡麻とかいいかも。あー、あったまる)

31: 2012/04/10(火) 22:59:03.12 ID:vV3M0aJ50
花子「こっちは?」コトッ

撫子「それは柚入りなんだってさ。善光寺の七味らしいよ」

櫻子「ぜんこうじ??」

撫子「長野だかどっかのお寺で……まあよくわかんないや。結構有名らしいけどね」

櫻子「ちょっと使ってみますか……」さっ


櫻子「おっ……」

櫻子(うん……いい。いいねこれ)

櫻子(ゆずの香り全部が邪魔をするわけじゃない。このスープによく合うよ)


櫻子(うまい……うまい……)

32: 2012/04/10(火) 23:02:58.84 ID:vV3M0aJ50
――――――

スッカラカン

撫子「……食ったなー」

花子「幸せ……」

櫻子「んー………」

櫻子(この暖かさは……冬だから感じられるやつだよ……)


花子「お風呂はいるしー」

撫子「櫻子、食べてすぐ横になるんじゃないよ」

櫻子「…………」

33: 2012/04/10(火) 23:08:09.22 ID:vV3M0aJ50
撫子「櫻子?」

櫻子「…………」

撫子「嘘でしょ? 寝てんの?」

櫻子(ふっ……寝たふり……)

撫子「こんなとこで……全く」


ひょいっ

櫻子(おう♪)

撫子「重いな……食いすぎだろこいつ」

櫻子(重いとか言うな)

35: 2012/04/10(火) 23:12:42.84 ID:vV3M0aJ50
ぽすん

櫻子「…………」

櫻子(あー、明日の用意とかなんにもしてないけど……)

櫻子(明日のことは、明日やろうか……)


櫻子「zzz…………」


~第二部 fin~

38: 2012/04/10(火) 23:26:11.11 ID:vV3M0aJ50
第二部finと書いたのはこの後も少し続けようと思ったのですが
明日も講義あるし今確実に寝落ちする勢いなのでまた明日の夜にします

引用: 櫻子「続・孤独のグルメ」