299: 2014/09/16(火) 22:42:06.83 ID:WWh2ut0Bo


前回:泣き虫雪風と釣り人提督【その14】
最初から:泣き虫雪風と釣り人提督

――― 3-5実装記念 Last Dance ―――

あらすじ:ランボー 怒りのほっぽちゃん


AL海域、ほっぽAL泊地

北方「……来ない」

護衛要塞「散々来るなと言っておいてそれは酷いんじゃないですかね」

北方「うっさい、たこ焼き」

たこ焼き「いや貴女までたこ焼き扱いしないでくださいよ!?」

ザザー『あっ制空権取られましたうわー連撃いたいーゴボゴボ』

北方「艦載機積んでるのに何故こない! 烈風置いてけ!!」

たこ焼き「水上爆撃機じゃないd」

北方「しゃらっぷ、たこ焼き!!」

たこ焼き(理不尽だー!)


AL海域、北方増援主力部隊

フラル「えぇっ、道中の制空権取られてるって?」

フラタ「うん、そういうわけで貴女はその駆逐艦ごとお払い箱ね」

フラル「そんなぁ」

フラタ「ついては南側にフラヌを用意しました」

フラル「何隻?」

フラタ「一隻」

フラル「あいつ制空権取るの苦手でしょ?」

フラタ「さすがに瑞雲とやらに遅れはとらないでしょ。まぁ見てなさい」


雪風「敵にフラヌがいます!」

利根「困ったのぅ。晴嵐ではどうしようもない」

提督『敵陣形は?』

雪風「輪形陣です!」

提督『じゃあどうでもいいな』


艦娘戦闘中……


ヴェル「無駄だね」

フラヌ「制空権とったのに何故」ゴボゴボ

フラリ「火力が、火力がちょこっと足りないのかしら」ズブズブ
海の画集 -「艦これ」公式イラスト集-
300: 2014/09/16(火) 22:44:44.70 ID:WWh2ut0Bo
後二級「敵艦隊来ます、航巡1、駆逐5!」

フラタ「敵被害状況は?」

後二級「小破1のみです!」

フラル「私のときは中破2は出てたけど?」

フラタ「ナンデ!?」


*輪形陣だと火力や雷装が下がるため、最後の雷撃が怖くない上、連撃されてもあまり通らなかったりするのだ!!


艦娘戦闘中……


ツ級「あのクソ髪の長いの大破させたのに……」ブクブク

フラタ「あの痴女何であんなに夜戦火力高いのよ……」ゴボゴボ

島風「だって速いもん!」

提督「よーし、これでノルマ完了。帰るぞ皆」

鎮守府、執務室

猫吊「というわけでまた来月もやってくださいね」

提督「ふぁっく!!」


深海のどこか、深海棲艦の拠点

フラル「というわけでまた来月やりましょう」

ツ級「意味あるんですかね?」

フラル「大体あなたまだエリートにすらなってないでしょう。特訓よ特訓」

304: 2014/09/17(水) 22:40:09.18 ID:I3U7iE1/o
――― 摩耶といえば火垂るの墓なことですね? ―――

鎮守府、執務室。

摩耶「提督ー、先ほどの作戦結果の報告…書…」

提督「ん」ボーリボーリ ゴクッ

提督の口から明らかに何か硬いものを噛み砕いている音がする。

提督「あぁ、お疲れさん」

嚥下し、何事もなかったようにねぎらう提督。

摩耶「今何食ってたんだ?」

提督「あぁ、ドロップだよ。飴玉のほうな」

取り出したビンには『おはじき』と書かれていた。

提督はビンの蓋を開け、一粒取り出し口に放り込み噛み砕き始める。

摩耶「それドロップじゃなくておはじき……」

提督「ほれ、お前にもあげよう」

そう言って書類を受け取り代わりにビンの中身を握らせた。

提督「四粒あるから姉妹で分けるといい」ボリボリ

摩耶「……おはじき…じゃなさそうだな」

一粒口に含んでみる。甘味が口の中に広がる。どう見てもサクマドロップスです本当にありがとうございました。

摩耶「お、おう、ありがとな」


そそくさと退室する摩耶。飴を味わいながら寮に戻る途中でふと気づく。

摩耶「……つーか飴は舐めるもんであっていきなり噛み砕くのはおかしいだろ!?」

308: 2014/09/19(金) 22:06:41.02 ID:HO1cs5wbo
――― 去年はとても活躍してくれました ―――

重巡洋艦『愛宕』。艦娘としての彼女は明るく朗らかな性格で、とても優しそうに見える。

提督「が、まぁ実際、あのアイアンボトムサウンドでの闘いで、三回も敵将のトドメ刺してるんだよなぁ。泊地に、飛行場に、そして……」

~~~~~~

サーモン海最深部。

アイアンボトムサウンドの主と思われていた飛行場姫。だが真の敵は更に奥にいた。

戦艦棲姫。

その圧倒的耐久力と圧倒的火力は提督と艦娘達の心胆を心底寒がらせしめた。

更に、自然回復により資材を連続投入する短期決戦を余儀なくされていた。

だが、その戦いも決着が付こうとしていた。


提督「よし、あとはアイツだけだ。金剛たちが攻撃をひきつけてるおかげでハイパーズは無傷同然。後は愛宕もか」

北上『連撃準備おっけー』

大井『こちらも準備完了です』

愛宕『いつでもいけるわ、うふふ』

提督「戦艦棲姫が撃ったら体勢を立て直して逃げる前に仕留めろ。愛宕が撃って足止めしたら北上と大井で挟み撃ちでトドメだ」

愛宕『了解しましたぁ』


戦艦棲姫「沈みなさい……!」

比叡『お姉様に貰った大切な装備が……!!』

提督「よっし、突撃ぃ!!」


愛宕は離脱を試みる戦艦棲姫に回り込み、20.3cm連装砲を向ける。夾叉でもいい。数秒足止めすれば雷巡の二人が引導を渡すだろう。

愛宕『喰らいなさい!!』


愛宕の放った弾は、戦艦棲姫のバイタルパートを的確に直撃し、大爆発を引き起こした。

戦艦棲姫「いつか……静かな、そんな…」ゴボゴボ


北上「あ、あれ、えっと、沈んでる?」

愛宕「やりすぎちゃったかしら?」

大井「せっかく準備万端整えてたのに。残念ね」

~~~~~~

提督(あの頃からだなぁ。重巡強いと思えるようになったのは)

愛宕「あら、提督。どうしました? ぼーっとしちゃって」

提督「いや、なんでもねーよ」

313: 2014/09/22(月) 22:42:47.60 ID:yNGfcGSqo
――― 方言についてはおかしくても気にせんといてーな ―――

鎮守府、執務室。浦風は提督の前に立っていた。

提督は顎の下で腕を組み、眉を顰め浦風を睥睨している。

彼の背後には「威圧感」と大書された掛け軸が吊るされている。

提督「……浦風よ、何故呼ばれたかわかるか?」

浦風「いんや? うち何も悪いことしとらんよ?」

提督「それはそうだろうな。理由など伝えていないのだから」

浦風「それで、本題はなんやのん?」

その言葉に提督は顰めてた眉を戻し、組んでた手を広げる。

提督「よーするにアレだ。こう、なんつーか威圧感のある喋り方を教えて欲しいわけだ」

浦風「提督さんが言いたいんは広島弁のことやろうけど、そういう風に考えられんのは心外やね」

提督「そ、そうか」

浦風「それに……」

提督「それに?」

浦風の視線が下へ向く。提督の顔から、提督のひざの上に座って眠りこけている雪風へと。

浦風「幼子を乗せて喋っても威圧感も何もあらへんよ?」

提督「浦風のほうが雪風の妹じゃなかったか?」

浦風「外見的な問題やね」

317: 2014/09/24(水) 22:45:21.60 ID:DlN+pqvDo
――― 艦娘だから大丈夫なんであって普通の人間がやったら絶対手首ぽっきり逝く ―――

阿武隈「やる時はやるんだから!!」ドゥン、ドゥン

ロ級「ウボァー」


阿武隈「ただいま、提督!」

提督「あぁ、おかえり。……んー」

阿武隈「提督、どうしたの?」

提督「阿武隈……とすぐ上の姉二人もだが手首の辺りに砲塔あるだろ?」

阿武隈「うん」

提督「そんなところから撃ったら手首や腕がバッキバキに折れそうだと思うんだが」

阿武隈「あたしたちそんなに柔じゃないですよ。砲撃程度で腕折れてたら砲弾当たった時点で氏んじゃうし」

提督「まぁそれもそうか」

阿武隈「あと、あのいつも猫吊るしてる子が『戦闘前には妖精さんが載ってることを確認するように』って話してたんですけど」

提督「うん? まぁ大体装備から離れることはメンテ中以外ないってぐらいだから気にすることでもなさそうだが」

阿武隈「載ってなかったらどうなるのかな?」

提督「……撃てなかったりするんじゃないかな。ちょっと試してみるか」

そう言って提督は阿武隈の左手首の単装砲を小突き始めた。

提督「おーい、飴玉やるから起きろ」

のそのそと、眠たげな目をした妖精さんが這い出してくる。20.3cm連装砲担当の妖精である。

何故単装砲から20.3cm連装砲妖精が出てくるかはここでは省く。

飴玉に釣られた妖精を手元へひったくり、飴玉を口に突っ込む。

提督「よーし、ちょっと撃ってみてくれ。一応海の向こうのほうにな」

阿武隈「阿武隈、ご期待に応えます!」

提督「いや、そこまで気合入れなくても」

ドゥン!! と砲撃音が鳴る。だが、弾道がヘロヘロでまともに飛んでいない。阿武隈のほうを向く。

阿武隈「あ、わっ、とっ、へぶっ」

阿武隈は砲撃の反動でバランスを崩し、しりもちをついていた。

提督「大丈夫か?」

阿武隈「いたたぁ……なんかすっごく反動来ました……。左腕もなんかずきずきするし……」

提督「……気をつけろというわけだ。帰ったら風呂入って療養しとけ。あと妖精返しとく」

阿武隈「はぁい」

323: 2014/09/25(木) 22:21:31.03 ID:H81Zyecwo
――― 曙を使ったことない人はぜひ一度MVP取らせて「くそてーとく♪」を聞きましょう ―――

曙「特型駆逐艦、曙よ。って、こっち見んな! このクソ提督!」

提督「何で初対面でいきなり罵られなければならんのだ」

曙「ふん! そんなこともわからないからクソ提督なのよ!」

提督「初対面で何もかもわかったような口聞かれてもねぇ。大体お前はどうなんだよ。実は口だけでしたーとかないよな」

曙「私を試そうって言うの?」

提督「それが手っ取り早かろうな。ちょっと艦隊組んで出撃してもらおうじゃないか」

曙「ふふーん、言ったわね?」


艦娘出撃中……

なんだかんだで曙は普通に活躍し、MVPをとった。


曙「大勝利よ! 私に充分感謝しなさい、このクソてーとく♪」

提督「ん、あぁ、見てなかった」

曙「ちょっとどういうことよ! このクソ提督!!」

提督「こっち見んな、って言うから意図的にお前の頑張りから目を逸らしたんだが」

曙「そうやって揚げ足取ってるからクソ提督なのよ!! というかこっち見て話しなさいよ!」

提督「こっち見んなと言ったりこっち見ろとせわしないやっちゃあっ痛っばっ砲塔で殴んのやめあっあっ」

329: 2014/09/26(金) 22:13:18.91 ID:igfvdSXEo
――― 確かに戦艦に魚雷載せてる時期もあったけどまさかそんな ―――

鎮守府、執務室。

提督は大本営からの最新の資料を検めていた。

提督「ほっほーん、ビスマルクのDrei来たか。練度について不足はないだろうし改装設計図もすぐ用意できる」

内容を音読しながら資料を捲っていく。

提督「魚雷発射管が装備できて新型の水偵と主砲を持ってく……ん? 魚雷?」

本来有り得ない単語に資料を捲っていた手を止める。

提督「魚雷!? 魚雷だと!? 徹甲弾の間違いではないのか!?」

なお、しばらく前から高速戦艦にも徹甲弾の装備は可能になっている。

提督「しかしこれは大きな変化だぞ……」

駆逐艦や巡洋艦は砲のほかに魚雷を持つ。砲撃と比べ弾速が遅いため、近距離での戦闘にしか使えないが威力は高い。

特に砲撃と雷撃を織り交ぜての白兵戦を行なう夜戦では雷装の有無が破壊力に直結する。

戦艦は夜戦においては強大な火力で雷装のなさをカバーするが重巡・雷巡には一歩劣る。

その戦艦に雷装が載るとしたら……!?

提督「これは速攻で試すしかないな!!」


艦娘改装中……


提督「あれ、改装前より服が黒くなってね?」

ビス「こっちの染料で染めなおしたからね」

333: 2014/09/27(土) 16:11:08.71 ID:i45A0YLzo
――― 前世のことをくよくよしたって始まらない! ―――

提督「……>>332、だそうだが?」

青葉「ま、まぁその頃の青葉は一介の艦艇でしたし」

そっぽを向いて口笛を吹こうとしているが音が出ていない。

提督「秋雲然り、夕立然り、乗員の行動・記憶も船魂、ひいては艦娘の自己形成に関わるという。青葉もまた然りだったな」

青葉「いや、まぁその……ちょっと用事思い出しましたー!!」

提督「あっ、逃げた」


その後、青葉におごってもらったということで単純に喜んでたりどういう風の吹き回しだろう、と不可解な顔をしてたりする艦娘たちの姿が見られたという

337: 2014/09/29(月) 22:26:40.68 ID:guGtQU7/o
――― オリョクルから解放された伊号潜水艦を待ち受けていたのは更なる地獄だった ―――
中部海域。先の作戦で消耗したところに更なる楔を打ち込み、制海権拡大を図る。

猫吊「ま、そういう作戦です。そして第一の作戦が……」

提督「潜水艦作戦ねぇ……」

ドヤ顔している猫吊るしを片目に見ながら受話器を取り上げ、全館放送で呼びかける。

提督『以下の伊号潜水艦は埠頭に集合のこと。イムヤ、ゴーヤ、イク、はち、しおい。繰り返す……』


ゴーヤ「またオリョクルでちね」

はち「あそこの揚陸部隊を撃退するのは大事だってわかるけど……」

イク「同じ敵ばっかりで飽きちゃうのね!」

提督「と、思うだろ?」

イムヤ「わっ、びっくりさせないでよ!?」

しおい「いきなり後ろから現れるなんて、ねぇ」

提督「そんな変質者を見るような目をすんな。これ、返してやらんぞ?」

しおい「あっ、晴嵐!!」

提督が取り出したるは2機の水上爆撃機、試製晴嵐。

イムヤ「いったいどういう風の吹き回しなの?」

提督「あぁ、簡単な話だ。新しい海域に行くんだよ」

五人「!!」

提督「その第一歩として敵の哨戒線を潜水艦で叩きのめす、というわけだ。各人いっそうの努力を期待する!」


中部海域。島々からは遠く、深海棲艦が現れて以来、人類が長いこと舳先を進ませられなかった場所。

そこにいる相手も、一筋縄ではいかない相手であった。


ゴーヤ「こんなの聞いてないでち」

爆雷を喰らって黒焦げになっているゴーヤがぶつくさ文句を言う。

提督「俺もここは初めて見る海域だしな」

イムヤ「哨戒線突破して敵回遊中の空母入り艦隊に打撃を与えるだけって話だったけど対潜警戒厳しいじゃない」

提督「まぁ俺にはどうしようもないんで何とかして抜けてくれ」

イク「無茶振りなのね……」

艦娘戦闘中……

提督「よーし、敵の回航中空母艦隊に打撃を与えた。作戦成功だ」

イク「でもヲ級は残ってるのね……」

提督「随伴艦の補充に戻ってる間に次の海域へのポータルを設置する手筈だ。問題ない」

しおい「わーん、晴嵐さん全部落とされたー!!」

提督「ほら、泣くな。帰ったら補充するから」


鎮守府、執務室

提督「さーて潜水任務は達成できたかな」

もちろん達成できていなかった。

猫吊「あそこの空母と随伴艦全部沈めてくださいね。3回」

提督「ザッケンナコラー!!」

水上艦を入れてもいいという情報が入ったのはその後の話であった……

341: 2014/09/30(火) 22:49:03.58 ID:+UHtwQxno
――― 「とってもとっても高性能」という台詞は実在します ―――

鎮守府、執務室。

阿賀野「午後3時です。スヤスヤスヤァ……」

提督「まだ昼間だってのに普通に寝やがったぞこいつ」

通信用黒電話を取り上げ、ダイアルを回す。通話先は阿賀野型一号室。

能代『はい、こちら能代です』

提督「こちら提督。なんか阿賀野と茶会の約束でもしてるんじゃないか?」

能代『えぇ、そうです。阿賀野姉どこ行ったのかしら』

提督「執務室で寝てるぞ。あっ、眠ったまま椅子から転がって布団に潜り込みやがった。器用だなこいつというか靴ぐらい脱げよ」

能代『あぁ、もう阿賀野姉ったら。迎えにいきますんで』

提督「いや、起こしてそっち行かせるから」

能代『多分私が来るまでに起こすのは無理だと思いますので待っててください』ガチャ

提督「あっ、切られた」

布団のほうを見る。阿賀野は枕に頭を乗せて布団をかぶって完全に睡眠体勢である。

阿賀野「Zzz」

提督「しかし俺に起こせないとかナメられたモンだな?」

阿賀野の頬をつまんで捻る。やわらかい。反応なし。

阿賀野「スヤァ……」

耳たぶをぐいぐい引っ張る。反応なし。

阿賀野「んーむにゅ……」

提督「さすがに暴力振るったり乳もんだり【検閲】したりするのはないよな。起きたり見られたりしたときコトだし」

ぶつくさ言いながら家具の中から金属で出来た箱を持ってきて阿賀野の耳元に置く。

提督「そーれっと」

そこらにあった棒でガンガン箱を打ち鳴らす。

グワングワンうるさい音が出るが阿賀野は意に介さない。

提督「ええ~?」

能代「だから無理だといったでしょう、提督」

いつの間にか後ろに能代がいた。

提督「来てたのか」

能代「阿賀野姉起こしますんですみませんがちょっと部屋出ててください」

提督「ここ俺の部屋なんだが」

能代「ちょっと他人には見せられないので」

なんだかんだで締め出される。直後、ドン、という鈍い音。

扉が開くと阿賀野が能代に肩を借りて出てくるところだった。

阿賀野「う~、その起こし方はやめてっていってるじゃな~い」

能代「だって普通の起こし方じゃ起きてくれないから」

阿賀野「え~?」

能代「あ、提督! 私たちはこれで失礼します!」

提督「お、おう」

どうやって起こしたんだ……。そんな疑問を喉元で飲み込む提督であった。

348: 2014/10/01(水) 22:39:50.62 ID:mjQEtS86o
――― 表の顔と裏の顔 ―――

大鯨「今晩のおかずは、フーカデンビーフですよぉ」

イムヤ「わーい!」

大鯨。元が潜水母艦であることから、潜水艦娘達に慕われている。

だが、彼女にはそんな潜水艦娘達には見せられぬ裏の顔があった。


鎮守府近海。定期的にシーレーンを脅かす潜水艦が湧いてくる海域。

「航空母艦、龍鳳。抜錨します!」

九七式艦攻、三式指揮連絡機、カ号観測機が緑色の和服を着た少女の弓から次々と放たれる。

爆弾が、爆雷が、深海棲艦の頭上に降り注ぐ。

龍鳳「……敵カ級、撃沈確認しました。敵残存艦なしです」

提督「よっしゃ、次の地点へ行こうか」

そう、龍鳳は対潜専門軽空母として闘っているのだった。


龍鳳「ふぅ。活躍できるのはうれしいけどあの子達にはこの姿はちょっと見せられませんね」

提督「まぁ慕ってる相手がサブマリンキラーとかちょっとヒくかも知れないしなぁ……」

龍鳳「ええ。ですから内緒にしといてくださいね?」

提督「軽空母改装されてることは知ってるはずだが」

龍鳳「対潜してることがばれなければ大丈夫です」


実のところ鎮守府近海に出撃している時点でバレているのだが特に関係が壊れるとかないようなので提督は気にしないことにした。

354: 2014/10/02(木) 22:42:13.37 ID:mi9EgzXjo
――― そういえばここ三ヶ月演習以外でつかってなかったてへぺろ ―――

鎮守府、埠頭。出撃前の艦娘は大体ここに集合する。

先頭に立つは大口径主砲を載せた艤装を持つ、金髪碧眼の艦娘。ビスマルクである。

ビス「また演習? 今日の演習は終わったはずでしょ? それにいつもと面子が違うし」

提督「ククク……そう、演習は終わった。すなわち、実戦だ」

ビス「!!」

提督「それも……中部海域の最前線! MS諸島だ!! Dreiの力、見せてもらうぞ!!」

ビス「艦隊戦か……腕が鳴るわね!!」


MS諸島。ここを足がかりに中部海域の制海権を奪取、確保する。それに先立って、敵攻略部隊を撃退するのが今回の作戦である。

艦隊もビスマルクを筆頭に、雪風・島風、利根・筑摩、加賀と海流を見越した上での全力構成である。

ビス「あれが目標のワ級フラグシップ……」

加賀「随伴はヲ級フラグシップ、ツ級エリート、ニ級後期2……そして……」

旗艦を護衛するように立ちはだかり、青い焔を灯した目で海原を睥睨する深海棲艦。

雪風「ル級フラグシップの……改、です!!」

やや震える声で雪風がその名を告げる。

その強さを論じることそのものが馬鹿馬鹿しい強さのレ級を除けば、汎用深海棲艦――つまりは姫・鬼クラスでない――最強の艦、ル級改。
輸送艦の護衛に躊躇いもなく戦艦を投入する。襲えば割に合わぬしっぺ返しを食らわせてくる。これが深海棲艦の強さの一つと指摘する識者もいるらしい。

だが、ビスマルクは怖気付くことはない。

ビス「私の初陣の〆としてはちょうどいい相手ね。さぁ、かかってらっしゃい!」

挑発されたル級が突っ込んでくる。次の瞬間、ル級の上半身が丸ごと消え失せていた。
下半身は慣性に従いしばらく進んだ後、海面に倒れ伏し、そのまま沈んでいった。

提督「ル級改を……一撃、だと……!?」

浮き足立つ敵随伴艦。そんな相手を艦娘達は着実に沈めて行く。残るはワ級とニ級一隻ずつのみ。

加賀『ワ級含む敵、撤退していきます。提督に意見具申。追撃許可を』

提督「よーし、やっちまえー!!」


ビス「逃がさないわよ……甘く見ないで! Feuer!!」

ビスマルクの放った砲弾は、ワ級の位置から大きく逸れ、ニ級への至近弾としかならなかった。

ビス「あ、あれ、おかしいわね……」

提督「魚雷を使え魚雷を!」

ビス「でもこれ装填とか難しいのよ!? そもそも実戦で使うの初めてだし!!」

などとやっている間にワ級は利根が沈めていた。


ビス「えっ私MVPじゃないの!? そんな!?」

提督「残念ながら利根だな……」

355: 2014/10/02(木) 22:43:27.81 ID:mi9EgzXjo
――― 長女としての威厳 ―――

睦月「睦月をもっともっと褒めるが良いぞ! 褒めて伸びるタイプにゃし~。えへへへへ……」

提督「よしよし。しかし、アレだな……」

睦月「アレってなんですか?」

提督「睦月型思い返してみたがどうも長女に見えん」

睦月「ええっ!?」

提督「色気振りまきまくってるのもあるが如月のほうが上に見える」

睦月「むー、如月ちゃんは確かに大人っぽいですけど……」

提督「長姉なんだしもうちょっと姉らしい威厳のある振る舞いを……」

ふと、提督の脳裏に艦娘達の声がよぎった。

??「ちょっと脚の筋肉がつきすぎちゃって……」
??「フフ、怖いか?」
??「とってもとっても高性能~」
??「クマー」
??「はーやーくーやーせーんー!!」

提督「……いやなんでもない忘れて」

睦月「??」

365: 2014/10/03(金) 22:22:20.40 ID:Hg8wzMBbo
――― 修理施設あと一個欲しいけどそもそも泊地修理ほとんど使ってないんだよなぁ ―――

工作艦、明石。当鎮守府においてはドックと工廠は彼女の管轄である。あとアイテム屋も。

また、明石自身の艤装を使用することにより、他の艦娘の艤装も修理が出来る。画期的!!

明石「でも修理機能使うには旗艦バッジ必要なんですよね……」

提督「何でこんなしち面倒くさい仕様なのやら。第一艦隊は常に出撃に備える必要があるし他三艦隊は遠征に回してるしで修理の余裕がない」

明石「しかも大量にバケツ溜め込んでましたよね」

提督「泊地修理にしても待つことには違いないからなぁ……。バケツぶっ掛けたほうがはやいっていうね」

明石「それに……この泊地修理、まだ100%の力発揮できてないんですよ」

提督「ほぅ?」

明石「もう一つ、泊地修理施設があれば!! 100%の力を発揮できるんです!」

提督「でもなぁ。結局同時修理できる艦が増えるだけで早くなる訳じゃないんだろう?」

明石「並べ替えの手間とか省けますよ!」

提督「明石のドロップのある場所、難度高い海域だしそもそも取れるとは限らないしなぁ」

明石「五隻同時ですよ! それだけの価値はありますって!」

提督「そもそも泊地修理しないしなぁ」

明石「私にも活躍の場くださいよー! これを機会と思ってー!」

370: 2014/10/06(月) 22:25:52.40 ID:hVE/FRydo
――― え? 彩樹艦の改二!? まじで!? ―――

鎮守府、執務室。提督は大本営からの最新の資料を検めていた。

提督「次の改二は……日本駆逐艦で、初めて次発装填装置を載せて、秋生まれ、秋戦没のネームシップか……」

書類片手に大日本帝国海軍の資料を開く。

提督「朝潮……3月没だから違う。陽炎と夕雲は初めて載せたというには新しすぎる。
   白露も生没ともに秋ではない。睦月と吹雪、暁はそもそも次発装填装置が出る前、綾波はもうやった……」

本を捲る手が止まる。そのページは、初春型一番艦、初春。

提督「日本駆逐艦ネームシップ。生まれは竣工日として9月末、没日は11月半ば、どちらも秋。そして資料には初めて次発装填装置を載せたとある」

バン、と本を閉じる。既に手は演習・出撃の予定表にかかっている。

提督「よーし、練り直しだ!! あと改二については当日まで内緒にしとこう」


今日の演習出撃表

旗艦:初春 随伴艦:……

初春(妾の遠征予定中止と演習・出撃予定……いよいよ改二かのぅ)

睦月(改二かにゃ?)
吹雪「」
綾波(改二でしょうか)
暁(れ、レディはあわてないんだから!)
白露(改二かぁ。いいなぁ)
朝潮(改二ですね)
陽炎(改二ね、きっと)
夕雲(改二でしょうね)
島風(私の改二おっそーい!)
レーベ(Dreiまだかなぁ)

どう見てもバレバレです本当にありがとうございました。

371: 2014/10/06(月) 22:27:09.86 ID:hVE/FRydo
――― 24時間戦えますか ―――

若葉「24時間寝なくても大丈夫」

提督「バブル期のリーマンじゃねーんだからさー」

若葉「本当だ」

提督「大体の艦娘は人並みに眠ってるぞ?」

若葉「大丈夫だ」


遠征は深夜に行なわれることもある。遠征先で休息を取ってから帰港することも珍しいことではない。


阿武隈「みんな、出発するよー」

若葉「そうか」


旗艦の阿武隈が休憩終了を告げる。その間若葉は哨戒を行なっていた。

子日「ふわぁ……今日も若葉寝てなかったね」

初春「まぁの。あやつは頑張り屋じゃからの。でも全く眠ってないわけではないぞ。ほれ」

初春が扇子で若葉を指す。普通に航行しているようだがよく見ると片目を瞑っている。

初春「特に異常がないときはあのように半分眠ってるのじゃ。イルカからヒントを得たとか言ってたのぅ」

子日「寝ぼけてるようなものでしょ? 大丈夫かなぁ」

初春「大丈夫じゃ。ほれ、見てみぃ」

初霜が若葉に近づくと、微かに軌道変化して間合いを取った。

初春「脳が眠っていても身体が反応しとる」

子日「……そうなのかなぁ?」


実のところ、昔ぶつかったことによるトラウマから条件反射で距離をとっているのだが気づくものはいなかった。

376: 2014/10/07(火) 22:37:45.70 ID:NwWDy/cYo
――― 17時の時報参照 ―――

週明けのオリョール海。幾多ものワ級やヲ級やヌ級、その他随伴艦が次々と沈む。つまりはオリョクルである。

提督「……で、何でお前まで付いてきてるんだよ秋雲」

秋雲「いや、だって何か空母が沈むところ無性に描きたくなることがあってねぇ。い号消化中なら最適じゃん?」

そう言いながら秋雲は素早く筆を走らせる。魚雷の直撃から轟沈まで一分とかからないが、既にあたりをつけて細部の描写に入っている。

提督「なんつーか、こう、ネクロフィリアじみてないか?」

秋雲「ま~、前世の記憶が、こう訴えかけて来るんだよねぇ。それに……」

左舷を振り向くと潜水艦娘が帰投してきたところである。

イク「敵旗艦鹵獲してきたの!」

どさり、と甲板に置かれるヲ級の身体。手早く吊るされる。

提督「よーし、今日のドロップは何かなー」ザクッ

秋雲「傍目スタイルいいねーちゃんの身体に手ぇ突っ込んで中身抜き取るほうがインモラルだと思うよ?」

提督「仕方ないじゃんなんか強い艦はヒトガタとるし!」

381: 2014/10/08(水) 22:54:47.59 ID:JJA5nnmqo
――― メンタルモデル形式だったら身体の鍛え方が機関動作反応に如実に影響するとかあるのかね ―――

長良「今日の走り込み、終わりました!」

提督「走りこむのはいいんだが、それって航行に関係あんの? スィーって滑ってくだろ?」

長良「むしろそうだからこそ足腰を鍛えるのが大事です!」

提督「そうには見えないが」

長良「スキーやスケートでも足腰しっかりしてないと大変なことになるんですから!」

提督「ふーむ、そう言われるとそうかもしれないな」

長良「でしょう?」

提督「……待てよ。お前ら艦船だろ。何で山や氷上のスポーツについて知ってるんだよ」

長良「ほら、船魂って乗船してた人々の記憶とかもあるから」

提督「うーむ、納得いくようないかないような……」

387: 2014/10/09(木) 22:32:59.64 ID:q1fTJrDQo
――― 間宮や伊良湖も明石みたいに出撃していい頃だと思う ―――

間宮食堂。もともと提督の家の台所だったところを大幅に改築した、艦娘の胃袋を掴む鎮守府随一の重要拠点である。

なお、鳳翔さんの店は空母寮にて開かれている。

この食堂、着任艦娘の数に比例するように順次拡張されている。つまりは、規模が大きくなるということであり。

間宮「この鎮守府も大きくなりましたねぇ」

提督「そうだな。駆逐・軽巡で回してた頃が懐かしい」

間宮「それで、私と私の妖精さんたちでは手が足りなくなってきたので……」

提督「なんか艦娘を数名手伝いに回して欲しいとか?」

間宮「いえ、猫吊るしさんから新しい娘を喚んでいただきまして」

提督「いつの間に……」

伊良湖「給糧艦、伊良湖です! 得意料理はモナカです」

提督「これで跡継ぎが出来たわけでついに間宮も実戦投入されるわけか」

間宮「て、提督、ただの給糧艦に何を期待してるんですか!?」

提督「じゃあ伊良湖が」

伊良湖「私も非戦闘艦ですって」

提督「まるゆや明石も頑張ってるじゃないか。給糧艦だって頑張ればナントカなるはず」

間宮「なーりーまーせーんー!」

393: 2014/10/12(日) 20:36:20.98 ID:wJJc/onQo
――― 訓練に関しては鬼よ ―――

神通。川内型三姉妹次女。夜になるとハイテンションになる姉と昼間からテンションの高い妹に挟まれてることもあって落ち着いた印象がある。

提督「……だが、第二水雷戦隊に所属してた駆逐艦娘に話を聞くとそのような評判は一切聞かれないのだが」

神通「そうですね……私達の訓練の様子、ご覧になります?」

提督「そうだな。見てみよう」


室内演習場。遮光カーテンを引き、照明を落とせば昼でも夜戦さながらの演習が出来る鎮守府屈指の施設。

一方には神通、もう一方には山城が向かい合っている。

神通「こちらは準備完了です」

山城「はぁ……演習場の前歩いてたら訓練に駆り出された上例の訓練……不幸だわ……」

        チキンレース
長波「おー、血饉零擦やるのかー」

提督「知っているのか長……いやいやチキンレースぐらい俺だって分かるよ!?」

長波「えー、そこは乗るところだろ?」

雪風「では行きますよ……さん、にぃ、いち、ごー!!」


雪風の合図とともに双方探照灯点灯、互いに光を浴びせながら全速力で突っ込んでいく。

ものすごい勢いで縮まる二人の距離。そしてぶつかる寸前! 互いに面舵を切りつつペイント弾による至近からの砲撃!!


神通「……カタパルトに掠ってしまいましたね」

山城「砲塔二基に左腰直撃……はぁ、不幸だわ……」

互いに被害状況を確認する。直撃弾を三発浴びた山城に対し、カス当たりのみの神通。

神通「山城さん、今回はどうもありがとうございました」

山城「あ、いえ、こちらこそ」

神通は山城に一礼した後、駆逐艦娘のほうに振り向き、

神通「では皆さんもやってみましょう。慣れれば簡単ですよ」

そう言いながらペイント弾を再装填する。つまりは神通とやりあうということである。

長波「一番槍は避けたいなぁ……」

神通「希望者がいないようなので……長波さん、やりましょうか」

長波「ひっ」

そう言うとすっと長波を引っさらっていく。

提督「すさまじいなぁ……」

神通「提督も挑戦してみます?」

提督「遠慮しとく。そもそも水面走れないし」

神通「それは残念です……」

394: 2014/10/12(日) 20:39:11.15 ID:wJJc/onQo
さ、サボってたわけじゃないよ!? 3-5任務とか消化するのに苦戦してただけで

小ネタ艦娘とか安価下既出さらに下

395: 2014/10/12(日) 20:46:44.91 ID:LGp3jXRqO
ビスマルク

396: 2014/10/12(日) 20:53:54.13 ID:wJJc/onQo
ビスマルク了解ー

これで戦艦も消化終了か……シャルンホルストはよ

397: 2014/10/12(日) 21:32:26.05 ID:0tELDs/Jo
乙です

次回:泣き虫雪風と釣り人提督【その16】


引用: 【艦これ】泣き虫雪風と釣り人提督 Part2