499: 2014/11/07(金) 22:27:47.22 ID:m8V16osmo


前回:泣き虫雪風と釣り人提督【その16】
最初から:泣き虫雪風と釣り人提督

――― 見てるだけ ―――

これはAL/MI作戦終了後間もなくの話。鎮守府、執務室。

提督「……?」

雪風「どうしました、しれぇ?」

提督「いや、なんか視線を感じてな」

雪風「んー、窓の外見ても誰もいませんよ?」

提督「うーむ、初風か?」

雪風「初風お姉ちゃんは遠征中です」

提督「となると、青葉か? ちょっと回り探ってくるか」

雪風「雪風もお供いたします!」


??「フフ……」


鎮守府、埠頭。


提督「……おかしい。やはり誰かに見張られている気がする」

雪風「電探使ってみますね!」

Ping...Ping...Ping...

雪風「9時方向に多数の反応があります!!」

提督「工廠じゃん。修理中の艤装やカードにせず保管してる装備に反応してるだけだろ」

雪風「むー……」


??「フフッ……」
海の画集 -「艦これ」公式イラスト集-
500: 2014/11/07(金) 22:29:00.58 ID:m8V16osmo
重巡艦娘寮、青葉型の部屋前


提督「青葉ァ!!」

衣笠「提督? 青葉がまた何か?」

提督「いや、なんかさっきからずっと視線を感じてな。青葉じゃないかと思ったんだが」

衣笠「青葉なら印刷所行ってると思うけど」

提督「じゃあいったい誰が……」


??「フフフ……」


駆逐艦娘寮。夕雲型の部屋前

提督「そういやもう一人しそうなのに心当たりあった」

雪風「しれぇの気のせいでは……?」

提督「巻雲も俺のこと監視してたはずだ」ガチャ

夕雲「あら提督、何か御用?」

そこには夕雲と……

巻雲「んふふ……夕雲姉さまぁ……Zzz」

絶賛お昼寝中の巻雲の姿があった。

提督「巻雲でもない、だと……!?」

雪風「かくかくしかじか」

夕雲「まるまるうまうま、というわけね。ちょっとそこで待ってて」

夕雲は得心したように頷くと、提督と雪風の横をすり抜け、部屋を出て行った。

提督「……あれ、さっきまであった視線が感じなくなった」

夕雲は程なく戻ってきた。早霜をつれて。

夕雲「きっとこの子の視線を感じてたのね」

早霜「私はこうして…いつも見てるだけ。見ています…いつでも……いつまでも」

提督「なにそれこわい、というか俺も雪風も全然見つけられなかったんだけど」

雪風「うー、しれぇは渡しません!」

早霜「安心して。見てるだけだから……」

提督「いやそれはそれでこわい」

505: 2014/11/10(月) 22:33:50.28 ID:umkOcQwOo
――― 備蓄の準備は出来てるか? ―――

鎮守府、執務室。海軍史に疎い提督は、たまに艦娘を呼んで作戦の概要などを聞いたりする。
70年以上前の話なのであいまいな部分とかもあったりするが何も情報がないよりは参考になるのだ。

敷波「アタシ呼び出すなんてどうしたのさ、司令官?」

提督「猫吊るしからの情報で近々渾作戦とやらをやるということになってな。話を聞こうと思ったわけだ」

敷波「さっき春雨呼んでなかった?」

提督「呼んで話を聞いてたはいいんだが途中で泣き出してな」

敷波「そりゃそうでしょうよ、渾作戦中に沈んだんだから……」

提督「うむ、彼女には悪いことをした」

敷波「まったく……」

提督「で、作戦の概要は聞いたんだが誰が参加したかなー、って」

敷波「そんなの聞いてどうすんのさ」

提督「もしかしたらこの作戦にゆかりのある艦娘が出るかもしれないかなーと思って」

敷波「未着任のだと浦波が来たらうれしいけどさー……前回思い出してみてよ」

提督「早霜と清霜だな……清霜は結局見つからなかったけど」

敷波「うん。だからさー、あんまり期待しちゃいけないと思うんだ」

提督「うーむ、それもそうか」


執務室前、廊下。

舞風「野分……野分ぃ……」

その隣で舞風は瀕氏!!

野分も第三次渾作戦に出撃予定だったのだ!!

511: 2014/11/11(火) 22:31:06.89 ID:yAqtPzORo
――― 二度とダメコン無しの大破進軍なんてしないよ! ―――

鎮守府、艦娘寮広間。

提督が最近入ってきた駆逐艦娘に、北方海域の話をしていた。

北方海域。そこには深海棲艦の大規模な泊地が存在した。

そこはフラグシップクラスのル級を複数配備するほどの一大泊地であった。

ここを叩かず南方に進めば日本の北半分を取られかねないほどに。

提督「あの日の出来事は忘れたことはない……」

~~~~~~

北方海域の攻略を困難にする要因は二つ。一つは類を見ない強力な敵艦隊。いま一つは荒れ狂う海流。

羅針盤が泊地から外れた方向を指すのはもはや日常茶飯事と言ってもいい。

提督たちはこの二つに存分に苦しめられていた。

提督「敵の攻撃で一人は大破し、もし大破なければ航路を逸れる。クソ黄色野郎どもめ……」

精鋭を投入しても状況が変わることはなかった。まだ大和型もなく、観測射撃の技術も未習得の頃の話である。


そんなある日……。

北上『敵艦隊撃滅したよ。こちらの被害は……加賀さん大破。戻ります?』

提督「……」

遅々として進まない北方泊地攻略。提督の頭の中では恐るべき考えが渦巻いていた。

提督(北回りルート。ここで進めば敵泊地に確実に到達する)

提督(加賀は近代化改修用に保管したのがいる。このまま進めて沈めた場合、烈風と流星改2つと彩雲とここまでの練度を失うことになる)

提督(……あとは皆からの信頼か)

提督「……進撃、だ」

北上『うぇ!? 提督、正気!?』

いつもマイペースな北上もこのときばかりは冷静さを失っていた。

提督「あぁ。敵泊地を、落とせ」

北上『正気とは思えないよ。加賀さんはどうなのさ』

加賀『……提督が、そう仰るのなら』

通信機を介しているため表情はわからないが、その声は心なしか震えていた気がする。

提督「これは俺の決断だ。いくら恨んでも構わん。……だが、全力は尽くせ。生き延び、敵を屠る事に」

加賀『わかりました』

512: 2014/11/11(火) 22:32:02.74 ID:yAqtPzORo
提督「……そして北上たちはヲ級フラグシップ率いる泊地の敵艦隊に突入したわけだ」

浜風「その後はどうなったんですか?」

提督「加賀がどうなったか……。本当に、知りたいか?」

谷風「やっぱり、爆撃か何かを受けて……うぅ恐ろしいねぇ」

浦風「まぁ提督さんの顔見ればオチは見えとるけぇ、はよ話しぃや」

提督「へいへい。じゃあそのときの証人を呼びますか。おーい、加賀ー」

加賀「はい」

谷風「ふぁぁ、お化けー!!」

加賀「頭にきました」

提督「いや、まぁ落ち着け」

加賀「結論から言えば、戦闘開始から終了まで一発たりとてこっちに弾も魚雷も来ませんでした」

浜風「それはすごいです……」

浦風「やっぱり生き残ったんじゃのぉ」

提督「あの時は遠くで見ててもひやひやしたぞ」

加賀「……もしかしたら雪風のおかげだったのかもしれませんね」

提督「?」

加賀「出航前に『雪風がいなくてもしれぇのこと守れるよう幸運の女神のキスをあげます!』って頬に」

提督「あいつ、そんなことしてたのか……」

加賀「ええ」

提督「まぁこんなことがあったからもうダメコン無しでの大破進軍はしないことにした、ってわけさ」

加賀「でもダメコン載せての突貫は容赦なくやるようになりましたよね」

提督「それは、まぁ、その」

516: 2014/11/12(水) 22:41:38.44 ID:HtsgqYINo
――― やはり怒っているのでは? 提督は訝しんだ ―――

弥生着任直後あたりの話。

弥生「初めまして、弥生、着任……」

提督「これで睦月型もあと3名か。……表情がすぐれないが、なんか気分でも悪いのか?」

弥生「あ、気を使わないでくれていい…です」

提督「そうか……まぁ調子悪かったら言えよ」

弥生「はい……」

~~~~~~

弥生「……」

提督「……やっぱり不機嫌なようにしか見えない」

睦月「弥生ちゃんはいつもあんな感じですよ?」

如月「そうそう」

提督「でもなぁ」

望月「本人に聞けばいいんじゃね?」

提督「それも一理あるな」

~~~~~~

提督「……弥生、怒ってるのか?」

弥生「え…? 弥生、怒ってなんかないですよ?」

提督「本当に?」

弥生「だから、怒ってないんですって……」

提督「……うーむ、本人はそういうけど腑に落ちぬ」

~~~~~~

所変わってキス島周辺海域。

弥生「いっ、たっ……!」

睦月「弥生ちゃん、大丈夫!?」

弥生「やってくれたね……怒ってなんかないよ、怒ってなんか……」


提督(……やっぱり怒ってるんじゃ……?)

528: 2014/11/13(木) 22:54:27.61 ID:CJCHMIg9o
鎮守府、執務室。部屋にはただ二人。一人は提督、もう一人は猫吊るしである。

「……ついに来たか。渾作戦」

「ええ。これが最新情報です」

猫吊るしから受け取った書類に素早く目を通す。作戦は三段階に分かれると言う。

「ふむ、なるほど……。第二次攻略で秋月か……。第三次で海外の重巡かな」

「さぁ、どうでしょうね?」

「ふん、言を濁しやがって……」

特に表情を変えることなく応答する猫吊るし。

「第一次と第二次は同じ艦娘戦力の投入も可能……おい」

「はい、なんでしょう?」

「第三次はどうなんだ」

提督の詰問も猫吊るしの表情を変える事はなかった。だが……

「おい、あからさまにそっぽ向くな。おい」

少女はしぶしぶと言った感じで提督のほうに向き直る。手にした猫をぐるぐる振り回しながら。

「……答える気はないようだな」

「これ以上、追求しますか?」

「やめとくよ」

彼女が猫を振り回し始めるのは警告である。次はお前がこうなる番だ、という。

一度警告を無視して締め上げようとしたところ、自分が振り回されていた。その後ベッドで目覚めるところまでの記憶が丸ごと吹き飛んだ。

「……まぁともかく、やるしかない」

「続報は追ってお知らせしますね」


Kantai Collection 2014 Autumn Event コンカー・ザ・コンクエスト


近日公開未定!!

534: 2014/11/15(土) 21:57:22.31 ID:EKL7oAvwo
大規模作戦において、情報収集は何よりも大切である。

「対空の強化、ねぇ……」

資料をめくる。猫吊るしが適宜積み上げていく資料は読んでも読んでも追っつかないので適当に飛ばし読みをしていく。

「ふむ……新規実装は秋月にプリンツ・オイゲンに、朝雲に……野分」

その名を呟いた直後、執務室のドアがぶっ壊れそうな勢いで開いた!

そう、舞風である。

「提督、今なんて言いました?」

「秋月」

「もうちょっと後」

「プリンツ・オイゲン」

「後」

「朝雲」

「その次」

「野分」

「来るんですか!? 本当に来るんですか!?」

「えーと、資料によると、渾作戦で誘引された機動部隊を殲滅した暁に、とのことだが」

「提督、やりましょう! 是非やりましょう!! 完遂しましょう! 暁の水平線に勝利を刻み込みましょう!!」

舞風はそう叫ぶと赤い靴を履いたカーレンのごとく踊り狂いながら執務室を後にした。

「お、おう」

提督の返事は執務室に虚しくこだました。


かくして、渾作戦は幕を開けたのだった。

539: 2014/11/17(月) 22:48:07.67 ID:QwhBInwCo
次回予告!!

「雲龍……入れといてなんだが、メンツから外す」
「えっ」

「未確認の敵艦を発見! 巡洋艦クラスです!」
「……お供のフラ戦のほうが強そうじゃね?」

「別にすごく硬いとかもなかった」
「まぁ新型とはいえ重巡ですしね」

コンカー・ザ・コンクエスト 第一話「重巡リ級改の二の舞いってレベルじゃねーぞ」

現象が発生しなければ明日投下します

542: 2014/11/18(火) 22:39:09.28 ID:iKSM3+jJo
「朝起きたらぷかぷか丸が戦艦みたくでかくなってた件」

「ふふふ、これぞ水上打撃連合艦隊用艦娘移送母艦、ぷかぷか丸Drei!!」

装いを新たにしたぷかぷか丸を前に唖然としている提督に猫吊るしはドヤ顔で説明した。

「しかし連合艦隊ねぇ。んじゃ空母を二人入れて」

「ダメです。正規空母は複数不可です」

「めんどっちぃ制限だなぁ。じゃあこれは?」

「ダメ」

「うー」

543: 2014/11/18(火) 22:40:51.54 ID:iKSM3+jJo


コンカー・ザ・コンクエスト 第一話「重巡リ級改の二の舞いってレベルじゃねーぞ」


「主力艦隊担当、伊勢、日向、最上、三隈、羽黒、雲龍。護衛艦隊担当、大淀、初春、夕立、時雨、綾波、木曾」

ずらりと並ぶ12人の艦娘。

「そうか……航空火力艦の時代か……もが「初っ端から結構戦力出してるけど別働隊は大丈夫なの?」

扶桑から預かった瑞雲12型を手に浮かれている日向を遮るように伊勢が質問する。

「問題ない。AL/MIで部隊を三つに分けようが作戦を遂行できるほどに練度があるし、あの頃より更に向上している」

「むしろ第二艦隊のほうが心配じゃな。改二艦をこんなに出して大丈夫かや?」

「第二次作戦を見据えての構成だ。第一次作戦完了後、引き続き任務に当たってもらう。というかそっちが本番だな」


南西方面海域。

威風堂々と突き進む連合艦隊と、その後を追うぷかぷか丸。

「そもそも最初から12隻でいけるなら行けってもんだよなぁ」

「二艦隊同時運用ってのも大変なんですよ。羅針盤が荒れ狂いますし。今回だってミッドウェーで培ったノウハウをですね」

『敵艦隊発見、交戦開始します!』

猫吊るしのくだくだしい説明を遮るように大淀からの通信が入る。

「……ん? あれ? 主力艦隊から攻撃してないか? 前は護衛艦隊からだった気がするんだが」

「水上打撃艦隊は主力がまず交戦して戦力を削ることで、切り札である護衛艦隊の夜戦火力を護持する方式なんです」

「ふーん。しかし、敵弱いな?」

「まぁ向こうも哨戒に最新鋭を回す余裕はないんでしょう」

暢気に会話する提督と猫吊るし。

だが、敵艦はほとんど金色に輝くフラグシップであり、光ってない艦は手足が生えている。

もしここに新人の提督がいれば吐瀉物を撒き散らしたのち失禁は免れ得ないであろう。

このような状況下でも平常心を保っていられるのは一年以上に及ぶ最前線への出撃の賜物である。

544: 2014/11/18(火) 22:44:09.85 ID:iKSM3+jJo
深海棲艦、南方前衛主力艦隊。ネ級を初めとした水上打撃艦隊が手薬煉を引いて待っていた。

「艦娘達が来るって? いい度胸じゃん。ツ級の反省を生かしていきなりEliteでロールアウトしたネ級の力、見せてやろうじゃん!」

「偵察機より報告。敵艦隊接近中だ。戦闘準備指示を」

タ級が簡潔に報告する。ネ級の合図で単縦陣を取り、交戦体制にうつる。

「お、来た来た。賑やかな艦隊だねぇ……って倍ぐらいいるんd」

ネ級の言葉はそこで途切れた。どこからともなく飛んできた砲弾に首から上を吹き飛ばされたのだ。

「ク、クセモノダー!!」

タ級が急いで指揮を引き継ぐ。二番艦はリ級だが彼女には明らかに荷が重い。

だが、多勢に無勢。しかも木曾から放たれた魚雷がタ級を狙っていた。

545: 2014/11/18(火) 22:47:03.41 ID:iKSM3+jJo
「……あれ、帰投命令なんか出したか?」

ふと気が付くと艦娘たちがぷかぷか丸に帰投していた。

「なんか敵がいなくなっちゃったから」

「えー……。戦力ゲージどうなってる?」

伊勢の報告に半ば呆れながら猫吊るしに確認する。

「あ、ちゃんと減ってますね。1/4くらい」

「気づかないうちに沈めてたの?」

「艦載機を放って挨拶代わりに砲撃したら何か旗艦らしきヤツが沈んでてな。音的には重巡洋艦だったな。リ改あたりだろう」

提督の問いに日向が肩をすくめる。

「……今度はちゃんと確認しような?」

「まぁ、そうなるな」


「しっかし……四戦すると消費多いなぁ。三戦でいけないかな?」

ルートを確認しながら提督がぼやく。

「空母なしで軽巡いれると三戦でいけますよ」

提督のぼやきに速攻反応する猫吊るし。

「それを先に言え」

「今入った新情報です」

「まぁいい。神通を投入するか」

546: 2014/11/18(火) 22:48:17.47 ID:iKSM3+jJo
「雲龍……入れといてなんだが、メンツから外す」

「えっ」

「なんか空母入れないほうが羅針盤が安定するらしくてな」

「せっかくの本格的な実戦だったのに……」

「すまんな……まぁ後々活躍する機会もあるかもしれないし」

もちろんそういうことはなかった。なかったのだ……。


艦娘進撃中……


『未確認の敵艦を発見! 巡洋艦クラス!』

伊勢が報告する。提督も望遠鏡で艦影を確認する。リ級とは別の、赤く光る深海棲艦。

「……お供のフラ戦のほうが強そうじゃね?」


新しいからといって大したこともなく、至近弾すら来ることもなく敵艦が次々と沈んでいった。

「別にすごく硬いとかもなかった」

『新型とはいえ重巡ですしね』

三隈が鹵獲したネ級を甲板にどさりと下ろしながら、このぐらいどうと言うことはない、と言った感じで返事する。

とはいえエリタが装甲88、エリネが装甲89なので実際のところ下手な戦艦より硬い。慣れと言うのは恐ろしいものである。

なお、鹵獲されたネ級は雫だけ取り出されて解体されました。雫の中身は金剛型だったので回収に回されました。

547: 2014/11/18(火) 22:49:22.37 ID:iKSM3+jJo
次回予告!!

「駆逐のみで行くんだろう? 俺は詳しいんだ」
「軽巡使えますよ」

「夜戦……だと……」
「でも敵構成大したことないっぽい」

「あれ、春雨? こんなところで何を……」
「やらせは……しないよ!!」

いったいどうなってしまうのか!?

コンカー・ザ・コンクエスト 第二話「船尾の喪失=両太ももより下切断」

有害なツ級……

554: 2014/11/19(水) 22:53:53.91 ID:97gbqRrio
「第二次渾作戦……。かつて駆逐艦のみで行われたと言う……」

資料を閉じ、提督は猫吊るしを見据える。

「つまり、駆逐のみで行くんだろう? 俺は詳しいんだ。知能指数が高いからわかるんだ」

「軽巡使えますよ」

びしり、と指を突きつける提督に対し、猫吊るしは何言ってんだテメェという感情を込めながら返事をする。

「あ、そうなの? じゃ、遠慮なく大淀と神通出そう」

「どうぞご自由に」



コンカー・ザ・コンクエスト 第二話「船尾の喪失=両太ももより下切断」



555: 2014/11/19(水) 22:55:12.63 ID:97gbqRrio
「というわけで第一次に引き続いて、大淀、神通、初春、夕立、時雨、綾波の六名で突破してもらおう」

大淀以外は改二、大淀はもともと強いので戦力に不足なし。

「今度こそ活躍出来るっぽい?」

「もちろんだ」

「第一次では残党狩りぐらいだったしね。それも滅多に残らないし」

「いや、ホント第一艦隊だけで大体済んでたしなぁ」

先の海戦では、木曾を除く護衛艦隊は暇を持て余していた。つまりはここが活躍するチャンスと言うことである。

「潜水艦もいるらしいが……まぁエリカ程度だし対潜装備については別にいいか」


そんなこんなで出撃する提督ご一行。

「東ルートか……」

『敵艦隊発見! ツ級を旗艦とする軽巡艦隊です!』

「さくっとたたんでしまいましょ」


艦娘戦闘中……


「よーし、雷撃かまして離脱だ」

ツ級を残して雷撃をかます艦娘たち。だが、ツ級も最後っ屁とばかりに魚雷を放っていた。

KABOOOOM!!

『まっ…まだ…戦える…はずです……!』

ツ級は狙い過たず綾波を大破させた。そして溶鉱炉に沈み行く某ターミネーターの如く、巨大な手の親指を立てながら沈んでいった。

「いや戦えないよ撤退撤退ー!」

556: 2014/11/19(水) 22:56:34.12 ID:97gbqRrio
修理と補充を行ない再挑戦、今度は北ルート。

『敵艦隊発見! リ級Eliteを旗艦とする重巡艦隊です!』

「敵弾には注意しろー」

などと言ってるそばから砲弾の当たる音。

『もぉ~、ばかぁ~! これじゃあ戦えないっぽいぃ!?』

「……中破か。夕立だし大丈夫大丈夫。後期駆逐ぐらいなら当たれば沈む。進もう」

『うー……』

割とこの辺ドライである。

『夕立ちゃん、こういうときは戦いにくいって言うんですよ』

神通がアドバイスするがそういう問題でもない。艦娘とはいえ痛いものは痛いのだ。


『夜戦煙幕を確認しました。夜偵発艦、探照灯起動』

「夜戦……だと……」

夜戦煙幕。日中でも暗所を作り出す深海棲艦の秘密兵器。撤退時に使用したり、要所の待ち伏せに使用したりと活用範囲は広い。

南方海域での大規模な煙幕に対抗するために、対夜戦装備もいくつか開発された。その一つ、探照灯の光が夜闇を切り裂く。

照らされるは見覚えのある敵艦。

『でも敵構成大したことないっぽい』

夕立の指摘どおり、夜戦がそれほど強くないとされる相手ばかりである。

重い一撃の打てない相手など夜戦で本領発揮する水雷戦隊の敵ではない。

「不意打ち用ではなく、何かを隠したかった……? この先に何が……?」

そして提督と艦娘たちは目標地点へ舳先を向ける。

557: 2014/11/19(水) 22:58:18.26 ID:97gbqRrio
「ここの嚮導艦隊を撃滅するのが目標だが……何かいたか?」

『……電探に感あり……あれは……?』

時雨が何かを発見したが言いよどむ。

「どうした、時雨?」

『あっちの岩陰に一隻。でも、何で春雨が……?』

確かに岩陰に特徴的な丸い帽子と束ねた長い髪のシルエット。腰から下は海面下に沈んでいるように見える

「春雨? 遠征に出てるはずだが」

『たしか、南西海域への遠征だったっぽい?』

『はぐれて動けなくなったのかな? ちょっと確認してみるよ』

「よし、大淀および他の艦は奇襲に備え時雨をバックアップせよ」

『了解です』

時雨がゆっくりと、春雨らしき艦に接近する。

『……春雨じゃ、ない!?』

時雨が気づくのと同時、

「やらせは……しないよ!!」

ザバァ、と全身を現す。春雨に似た深海棲艦はヒトの腿より下が存在しなかった。代わりに異形の艤装が取り付いている。

水面下に伏せていたのか他の深海棲艦も次々と浮上する。バックアップに回った艦娘ごと囲む格好である。

『くっ、囲まれました!』

「うん、様子がおかしいとは思った」

提督は納得したように頷くと、一つの命令を下した。

「航空支援部隊、やれ」

上空から降り注ぐ流星・彗星の群れ。艦娘達を取り囲んでいた敵艦を次々と撃沈していった。

「備えあれば憂いなし、だ。蒼龍、戦果はどうだ?」

『敵陣、半壊です。残りは水雷戦隊の皆さんにお任せします。ただ……』

「ただ?」

『あの敵旗艦と思しき艦、流星改の魚雷の直撃に耐えてました。ただの駆逐じゃなさそうです』

「だろうな。ヤツを仕留めれば勝ちだろう」

558: 2014/11/19(水) 22:59:08.67 ID:97gbqRrio
時雨たちは残った艦と交戦を開始していた。

「春雨ちゃんの姿に化けて出て来たっぽい!?」

「そうか……ここは春雨が沈んだ海。彼女の負の感情をより集めて作ったのかも……」

「いつだったか雪風ちゃん攫ってやろうとしたように?」

「かもね。こんなの量産されたら相当不味いことになるよ……!」

夕立と時雨は右へ、左へ砲弾や魚雷をかわしながら自分たちの妹に似た深海棲艦、駆逐棲姫に肉薄する。

岩場の先、洞穴の奥へ誘いこむように駆逐棲姫は引っ込んでいった。

「……これは僕たちが決着をつけるべき相手だ。いくよ、夕立。大淀さん、探照灯を」

「っぽい!」

「気をつけてね」

探照灯が奥に逃げ込んだ駆逐棲姫を照らし出す。一直線に突撃する二人。

「敵、魚雷を構えてるっぽい!」

「壁際までよける?」

「……夕立に任せて!」

そう言うと夕立は更に速度を上げ、庇うように時雨の前に出た。

「時雨ちゃん!」

「うん!」

その直後、夕立に魚雷が着弾し、大爆発を起こした。駆逐棲姫の口角が嗜虐的に歪む。

爆炎が晴れるとそこには水面に倒れる夕立。時雨の姿は、ない。不審に思い、首を傾げる。

559: 2014/11/19(水) 23:00:00.05 ID:97gbqRrio


「残念だったね」


彼女が声のした方……上を向くと、時雨のハンドキャノン二門が狙いを定めている。

時雨は夕立を飛び越え、上空から奇襲を行ったのだ!!

二発の発射音。脚部の艤装を完全に破壊された駆逐棲姫は浮力を失い、沈んでいく。


「……体を撃ちぬけなかったあたり、僕もまだまだ甘いね…」

そうつぶやくと時雨は、夕立に肩を貸し、ゆっくり洞窟の出口に進み始めた。

「夕立、大丈夫かい?」

「さすがに氏んじゃうかと思ったっぽい……」

「戦闘は終わった。帰ろう」

「……うん!」

560: 2014/11/19(水) 23:00:38.02 ID:97gbqRrio
次回予告!!

「またあきつ丸か」
「何か不満なのでありますか?」

「今の、北上さんは見てた!?」
「北上さんは鎮守府で憩ってます」

「何度でも沈めてあげる……」
「それはこっちのセリフだよ何度出張るつもりだよふぁっきん」

渾作戦に決着を!!

コンカー・ザ・コンクエスト 第三話「決戦! 水上打撃連合艦隊!!」

雪風の出番……

566: 2014/11/20(木) 22:40:44.50 ID:IcL9s8k4o
「史実では中断された第三次渾作戦……」

「えぇ、敵の水上打撃部隊を完膚なきまでに叩き潰してください」

「そもそも本来そういう作戦だったか?」

「こういうのはノリですよノリ」

「それに猫吊るしよ、本来こういうブリーフィングはお前じゃなくて大淀がやるべき仕事なのでは?」

「大淀さんなら出撃してるから私が代理に決まってるじゃないですか」


コンカー・ザ・コンクエスト 第三話「決戦! 水上打撃連合艦隊!!」



567: 2014/11/20(木) 22:41:33.42 ID:IcL9s8k4o
鎮守府、執務室。猫吊るしによる提督へのブリーフィングが行なわれていた。

「と、いうわけでまだ東から直行するルートは把握できてませんが、強襲揚陸艦を用意し、

 雷巡1以下その他もろもろの条件を満たせば安定して敵主力地点に到達できます」

「ふーん。で、敵の総旗艦は? また未確認の新型か?」

「毎度お馴染み戦艦棲姫です」

「馴染みになりたくねーよばかあほふぁっきん!!」

「私に言っても仕方ないじゃないですか」

「まぁ面子を選定しようか」


提督選定中……


「というわけで、主力にあきつ丸、ビスマルク、陸奥、利根、筑摩、大鳳、護衛艦隊に川内、潮、響、島風、雪風、大井」

「雪風、いつでも出撃できます!」

艦首魚雷と五連装酸素魚雷を装備した雪風はまさに鬼神。万一逃しても後詰めの大井が仕留める構成である。

他の艦娘も装備を整え、最終確認を行なっている。

「長門姉さんが面子から外されてて拗ねてたけどいいのかしら。それになんで私なの?」

陸奥が疑問を呈する。

「そろそろ例の指輪使えるからだよ。加賀じゃなくて大鳳採用したのも同じ理由だ」

「そろそろとはいえ、まだまだ遠いけどね」

なお、長門には既に指輪を渡してある。

568: 2014/11/20(木) 22:45:39.01 ID:IcL9s8k4o
MI作戦に引き続き採用されたあきつ丸は驚きの表情をしていた。

「また、自分が作戦に参加を……!?」

「自分で選んでおいてなんだが、またあきつ丸か……」

「何か不満なのでありますか?」

「今回別に島に上陸するわけでもないのに何であきつ丸で羅針盤が固定できるのか腑に落ちねーんだよ!!」

「海軍のことは自分にはよくわからないであります……」

「まぁなんにせよ、制空抑えるには役立つからな。ほれ烈風3セットだ」

「ありがたい、のであります!」


そんなこんなで出撃。

「今の、北上さんは見てた!?」

「ハイパー北上さまは鎮守府で憩ってます」

などとなんかこじらせる一幕もあったが海流も荒れることなくあっという間に戦艦棲姫率いる艦隊に遭遇。

「へぇ……あれが噂の戦艦棲姫?」

帰還した偵察機をしまいながらビスマルクが呟く。

「そういやビスマルクは相対したことはなかったっけな」

「大和たちに出番持ってかれちゃったしね」

「ま、今回は損耗もない上、連合艦隊だ。数の暴力、思い知らせてやれ。全艦、抜錨!!」

569: 2014/11/20(木) 22:46:12.78 ID:IcL9s8k4o
『敵旗艦から通信、であります!』

接敵早々、あきつ丸から通信が入る。

「大した事いってないだろうがなんだって?」

『今つなぐであります』

程なくして、ノイズでざらついた音声が無線から聞こえてくる。

『何度でも、沈めてあげる……』

「それはこっちのセリフだよ何度出張るつもりだよふぁっきん」

やはりたいしたことではなかった。


艦娘戦闘中……


『敵艦、五隻撃沈、一隻小破! あとは水雷戦隊の皆に任せるわ!』

主力艦隊の猛攻で残るは戦艦棲姫のみとなっていた。

「支援抜きでこれとか去年より楽だな……」

などとブツブツぼやいていると、

『さぁ、私と夜戦しよ!!』

「おい川内、何言ってるんだ。まだ昼だぞ」

『だいじょーぶだいじょーぶ、煙幕張るまでは多分生き残るから』

「いや出来れば雷撃で仕留めて欲しいが」

提督の望みも空しく、大破状態で追撃戦に突入。

『いやったぁぁぁぁぁぁ!! 待ちに待った夜戦だぁぁぁぁぁぁ!!』

戦闘区域から遠く離れた、提督のいるぷかぷか丸にまで響く鈍い打撃音。何があったかは推して知るべしである。

「……戦艦棲姫も落としたし、これで終わりかな」


「雪風の出番、ありませんでした……」

「もっと酸素魚雷撃ちたかった……」

570: 2014/11/20(木) 22:49:38.08 ID:IcL9s8k4o
次回予告!!

休む間もなく襲い掛かる新たなる敵!!

「機動部隊の迎撃を行なってもらいます」
「はいぃ?」
「というかこれがこの作戦の本来の目的ですし」

帰ってきた空母棲姫!

「またアイツかよ。いい加減にしろよ」
「だけど今回は、コレがあります!!」

ハイパーズすら驚愕する硬さ!

「んん? アレに耐えちゃうの?」
「ならもう1セット当てるまでよ!」

空母水鬼の恐怖……


コンカー・ザ・コンクエスト 第四話「最終決戦! 機動部隊を粉砕せよ!!」


雷巡たちの甲標的が敵僚艦を粉砕する……!!

「いやいや、敵旗艦粉砕しようよ」

575: 2014/11/21(金) 22:38:48.46 ID:5VsiVfQbo
――― 朝雲のデザインは好きだが次の機会を待とう ―――

渾作戦も終わり、掘りの面子を選定するため、艦娘寮へ様子を見に来た提督。

提督「うーん、やはり改でFuMO持ってくるオイゲンは確定として秋月も育てておきたい……野分はどうするか」

掘りの対象も決めなければならない。無為にだらだらやるのは資材の無駄である。

提督「清霜つれてくれば早霜も少しは大人しくなるかな……明石からも修理施設ねだられてるし」

朝潮「司令官!」

提督「朝潮じゃないか、どうした?」

朝潮「私たちの妹が新たに艦娘になったそうですね!」

提督「朝雲のことだな」

朝潮「いつ着任予定でしょうか!?」

提督「その件だが……あー、ちょっと待っててくれ」

朝潮「司令官が待てと言うなら、この朝潮、いつまででも待つ覚悟です!!」

提督「秋月は対空高いからなぁ。さっさと改にして溜まった五十鈴消化させるか……ブツブツ」


しばらく後、執務室。

提督「んー? E地点で明石? 本当かなぁ」

などと資料を調べているところにドアをバン、と開けて入ってくる闖入者。

満潮「司令官! 朝潮に何言ったのよ!!」

提督「何、って朝雲についてはちょっと待てと言ったんだが」

満潮「待機命令ととっちゃってずっと直立不動で立ちっぱなしよ!! 誤解解いて来てよ! 全く、融通利かないんだから……」

提督「えぇ……どうしてこうなった……」

満潮「ほら、早く!」

提督「いやいや歩けるから。押すなって」

この後ナントカ誤解を解いた。満潮には再度怒られた。

580: 2014/11/25(火) 22:51:07.57 ID:AK0HIRwko
「はー終わった終わった。渾作戦は第三次までだからな。野分とかを迎えてとりあえず一区切りだな」

戦艦棲姫を撃破し、母港に戻った提督たち。今までの氏闘からすればあっけなさ過ぎるがつまりは成長していると言うことなのだろう。

……12隻による数の暴力だと言うことからは目をそむけて。

「はー、どっこいしょ。後は新型重巡虐t……げふんげふん解体して清霜とか探すかな?」

執務室の定位置に着席して資料を取り上げる提督。だが。

「何言ってるんですか。現実から目を逸らさないでください」

さっきまで影も形もなかったはずの少女。猫吊るし。

「敵水上打撃部隊を完膚なきまでに叩きのめしただろ」

「資料に書いてあったでしょう? 機動部隊もありますよ。というわけで機動部隊の迎撃を行なってもらいます」

「はぃぃ? 誤植かなんかじゃなかったの?」

「というかこれがこの作戦の本来の目的ですし。うまい事釣り出せましたね」

唖然とする提督をよそに猫吊るしは丸めた海図を開く。

「ここ、渾作戦完了に伴いポータルを設置しました。そして敵はパラオ方面からこう、来てます」

そう言いながら凸字状の駒を配置していく。

「そしてこれ。敵総旗艦は新型の空母戦力ですね。コレ、この機動部隊を叩き潰してもらいます」

「まったく、ゆっくり休めると思ったのにまた出撃か……」

「どうせ新たな艦娘探しに出る予定だったんでしょう?」

「まぁな」

「じゃ、いいじゃないですか。資材も大量にあるんでしょう? それに……」

猫吊るしが言葉を切ると同時、金髪の陽炎型駆逐艦娘が窓から飛び込んできた。

「提督ー!!」

そのまま胸倉に掴みかかり、高速で前後に揺さぶる。

「野分を、野分を見捨てるんですか!? ねぇ提督!?」

その艦娘の名は舞風。渾作戦開始から野分中毒症状が急速に悪化してきている。もはや限界一歩手前なのだ!!

そこに猫吊るしが追い討ちを掛ける。

「あなたの義妹がこんなに苦しんでると言うのに、見捨てるのですか?」

「俺の、方が、苦痛、なんだ、が、やめ、とめて」

後頭部に扶桑型の艦橋と見紛うたんこぶの山を生成しながら提督が息も絶え絶え返事をする。

「はいはい、そんなところ野分に見られたら笑われちゃいますよ」

「……はっ!? 提督、大丈夫!?」

猫吊るしの一言で我に返る舞風。提督も後頭部をさすりながらゆっくりと起き上がる。

「……大丈夫じゃないが、まぁいいや。俺の後頭部のためにもその新型とやらをさっさと潰そう」

581: 2014/11/25(火) 22:53:06.21 ID:AK0HIRwko


コンカー・ザ・コンクエスト 第四話「最終決戦! 機動部隊を粉砕せよ!!」



鎮守府、埠頭。

「さてと、海域情報もだいぶ詳しく入ってるし、コレを前提に可能な限り最強の戦力を送り込む」

第一艦隊に大和&武蔵、加賀に大鳳、神通に利根。第二艦隊に大淀、島風、雪風、そして雷巡の3人。

この鎮守府でも屈指の布陣である。

「ほへぇ、大和さんたちの上にあたしたち雷巡全員とか豪勢なもんだねぇ」

錚々たる陣容を見て北上が呟く。

「さすがにこの火力なら何者であろうとも夜戦までやって沈まないと言うことはまずないだろう」

「火力と言えば追加の五連酸素魚雷は? 副砲でいいの?」

「艦首と五連は雪風に積んでるし、まぁ雷巡3人なら連撃でも大丈夫だろう」

そんなこんなでぷかぷか丸の前。

「さて、準備も出来たし連合艦隊・機動部隊結成!」

提督が一声挙げるとぷかぷか丸がロボットアニメか戦隊モノの如く大仰な音を立てながら空母に変形した。夏に乗り込んだぷかぷか丸改二である。

「……つーか変形する必要とかあんの? 内装的にはほとんど変わらないし」

提督のぼやきは誰にも聞きとめられることはなかった。

582: 2014/11/25(火) 22:54:08.39 ID:AK0HIRwko
パラオ沖。

面子が面子である。加賀・大鳳の航空攻撃からの雷巡トリオの雷撃で交戦開始前から敵は半壊、全員の攻撃が終了する頃には残らず海の底に還していく。

だが、海流の合流点。そこには見覚えのある艦影が艦娘たちを待ち受けていた。

『しれぇ、あれは……』

「なっばっそんな」

驚愕し、打ち震える雪風と提督。

『空母棲姫……また出張って来たか!』

「またアイツかよ。いい加減にしろよ!」

武蔵が敵艦を特定する。それと同時に次々と放たれる、白い球体が牙を剥いたかのごとき艦載機。

『だけど今回は、コレがあります!』

大和が取り出したるは徹甲弾。それも一式徹甲弾。今まで使用していた九一式徹甲弾より精度も威力も上回る。

『護衛艦隊は敵の数を減らせ! 後は私たちが決める!』

武蔵の檄に応えるように護衛艦隊が突撃する。砲撃で牽制し、雷撃距離ぎりぎりから魚雷を叩き込んでいく。

『雷撃完了! 砲撃に備え離脱してください!』

大淀の指示で反転する艦娘たち。敵艦隊は既に空母棲姫を残すのみとなっている。だが敵の第三次攻撃隊が来るのは時間の問題である。

『全砲門、開けッ!!』

それを阻止するように、武蔵の一斉射撃が、徹甲弾が、空母棲姫の発艦口を叩き潰す。

『全主砲、薙ぎ払え!』

大和の追い討ちが、空母棲姫のバイタルパートを貫き、海の底へ叩き落した。

「敵艦隊、殲滅確認。各艦、全速前進!」

583: 2014/11/25(火) 22:55:55.12 ID:AK0HIRwko
『敵艦発見。ヲ級改が2隻、タ級フラ1、後期駆逐2、そして旗艦が……アンノウン。報告にあった最新の空母型深海棲艦と思われます!』

「あれが猫吊るしの言ってたヤツか……。追加資料によると空母水鬼と言うらしい。全艦、敵艦隊を粉砕し、暁の水平線に勝利を刻め!!」


艦娘戦闘中……


『夜戦煙幕確認。残敵、ヲ級2と空母水鬼。提督、追撃しますか?』

「オフコース!! 叩き潰せぃ!!」

二隻のヲ級には島風と木曾、大淀と雪風がそれぞれ狙いを定める。そして空母水鬼には大井・北上。

「……勝ったな」

余裕を持って暗視用スコープから戦況を確認する。ヲ級に関しては特に問題ない。

『ギッタギタにしてあげましょうかねぇ』

至近距離からの雷撃と砲撃のコンビネーション。だが、しかし。

『んん? アレに耐えちゃうの? 嘘でしょ?』

大したダメージを食らった様子もなく、悠然と航行を続ける空母水鬼。

『ならもう1セット当てるまでよ!』

続く大井の砲撃にすら耐え切って戦闘海域から離脱する。

「なんて硬さだ……全艦帰投。補充後、再度決戦を挑む」

584: 2014/11/25(火) 22:57:10.15 ID:AK0HIRwko
補修と補給を終えて再度の空母水鬼。

『敵艦隊……さっきと違います! ヲ級が装甲空母姫に!』

大淀の悲鳴にも似た報告。だが加賀は冷静だった。

『大淀さん、落ち着いて。敵艦載機は丸いヤツ?』

『……いえ、いつものヤツが混ざっています』

『どうやらまだ全艦配備できるほど手が回ってないみたいね』

その報告を確認し、烈風改、続けて烈風と流星改を空に放つ。大鳳と利根も加賀のあとを追うように艦載機を射出する。

ヲ級改のときより明らかに制空状況がいい。

更に追い討ちを掛けるように敵艦隊に支援砲撃が叩き込まれる。

「よし、姫の片方小破、タ級中破、駆逐撃沈ってところか?」


味方の意気は上がったが敵もさるもの。空母水鬼の艦載機が大井を中破せしめる。

「大井、大丈夫か?」

『北上さんが見てるのに、ここで一抜けなんて冗談じゃないわ!』

585: 2014/11/25(火) 22:58:04.47 ID:AK0HIRwko
庇う艦もなくなった今、大和型の砲撃は空母水鬼の艤装をごりごりと削り取っていく。だがまだ、沈まない。

そして日が暮れ行く。闇があたりを包み込む。

「……水雷戦隊、突撃ィ!」

提督の号令の下、六隻の艦娘が空母水鬼を追撃する。

大淀の探照灯が空母水鬼を照らし出し、夜偵が着弾地点を割り出す。

そこに突進するは島風と雪風。更に雷巡の3人が追う。

空母水鬼はデコイの如く残る艦載機をばら撒き、追撃を阻止しようとする。

探照灯の光の中を真っ正直に突き進む雪風。当然そこに艦載機の攻撃が集中する。

『雪風は……沈みません!!』

後ろをちらりと振り向き、追撃者が足を止めるのを確認した空母水鬼。だが……


『おっそーいー!』


暗がりから飛び出す島風。前に回りこんで振り向いた隙に敵の艤装に飛び乗ったのだ!

『五連装酸素魚雷、いっちゃってー!!』

至近距離から放たれた酸素魚雷は空母水鬼本体に直撃、大爆発とともに水底へ沈んでいった……。

586: 2014/11/25(火) 22:59:18.76 ID:AK0HIRwko
次回予告!!

「今回の作戦どうだった?」
「ま、当然か」
「当然の結果だ」
「作戦が悪いのよ……」
「なんでや大井!!」

行われる総括!!

「おらっ清霜出せ!!」
「私持ってない……」

理不尽な脅迫!!

「もう明石は1-5でいいかな……」
「次の改二は重巡です」
「はい消えた! 1-5行く選択肢消えたよ!!」

提督の戦いは終わらない……!!

次回、コンカー・ザ・コンクエスト最終回!!「オワラナイ ウタゲノ オワリ」

明石と朝雲は犠牲になったのだ……古鷹改二の、その犠牲にな……

590: 2014/11/26(水) 22:35:10.33 ID:CTTn8X+eo
――― 世の中は理不尽で出来ている ―――

渾作戦が終了し、鎮守府も日常へ回帰しようとしていた。

すなわち、資材の貯蓄と練度の向上である。

プリ「ふぉいあー! ふぉいあー!!」

最優先で練度向上が行なわれていたのは新規着任した重巡洋艦、プリンツ・オイゲンである。

提督「コレでようやく改造か……長かった……」

プリ「ツェルベルス作戦時の艤装です。どうでしょう、似合います~?」

提督「あぁ。とてもいいぞ」

プリ「それにこの60口径の主砲、そしてFuMO25レーダー! すごいでしょう?」

提督「実に素晴らしい。と言うわけでコレをこうして……」

提督が指を鳴らすと工廠の妖精がいっせいに動き出し、武装を解除してしまった。

プリ「わ、何、何!?」

提督「こうじゃ!」

突然のことに戸惑ってるプリンツ・オイゲンには普通の20.3cm砲と21号電探と改造前から使ってたAr196が取り付けられ、某科学力が世界一なところの装備一式は……。

古鷹「やったね!」

そう、古鷹に取り付けられていた。

提督「重巡の火力を上げてMVPとるためには仕方のないことなのだ……改二も近いし」

プリ「ふぇぇ」

595: 2014/11/28(金) 22:52:03.31 ID:YCaWXKSAo
一連の作戦は成功を収めた。深海棲艦の水上打撃部隊および新型機動部隊は海中に没した。

英雄たちが母艦に戻ってくる。

ひょこっ、と左舷から兎の耳を模した黒いリボンを覗かせる。

そのままぴょん、と甲板上に飛び乗ったのは島風である。

「島風、戻りました!」

「雪風、帰投しましたぁ……」

大破してボロボロになった雪風を背負っている。いつも背負っている五連装酸素魚雷の発射管は連装砲ちゃんたちが運搬している。

「おかえり、よく頑張ったな」

ねぎらいの言葉をかけ、提督は雪風を抱き上げる。

「はふぅ……」

雪風も安心したかのように力を抜いてしな垂れかかる。

「とりあえず帰港するまでドックでゆっくりお休み」

「雪風ばっかりずっるーい! 私もー!」

「おぼふ」

突然提督の背中に飛び掛る島風。おんぶにだっこ状態である。

「あばばばばばば」

奇声を発しながら船内備え付けドックへふらふらと進んでいく……。

「おっそーいー!」

596: 2014/11/28(金) 22:55:46.19 ID:YCaWXKSAo


コンカー・ザ・コンクエスト 最終話「オワラナイ ウタゲノ オワリ」



ぷかぷか丸改二、作戦室。補給と応急手当を終え、連合艦隊の一同が集っている。……一人を除き。

雪風ではない。雪風は提督の膝の上に座って寝息を立てている。

「島風ちゃんがいないようですが……」

「甲板とか走り回ってるんじゃね。ここでうだうだやらせても彼女にとってはストレスにしかならんだろ」

大和の疑問に提督が答える。

「いいのでしょうか……? 彼女があの空母水鬼を仕留めたのでは?」

「いいんだよ。あいつぁ誰それを仕留めたとかそういうのより走り回るほうが好きなんだし」

「提督がそう仰るなら……」

提督はうむ、と頷く。

「ともあれ、皆の働きにより今回の作戦も無事完了することが出来た。残党連中がまだ残ってるだろうがしばらくは大人しくなるだろう」

雪風の頭を撫でながら続ける。

「……ぶっちゃけ今回の作戦どうだったよ? この中の大半は夏の作戦にも参加してたと思うが」

途中で面倒くさくなったのか口調を崩す。

「当然の結果だ」

「当然の勝利じゃ」

「ま、当然か」

などと余裕ありありの意見の中、むくれるものが一人。

「作戦が悪いのよ……」

「なんでや大井!?」

「まぁまぁ提督」

反応を予期してたのか宥める北上。

「せっかく大一番の作戦に出たのに活躍できなくてちょーっと機嫌が悪くなってるんだ。ね、大井っち?」

「え、えぇ。ごめんなさいね」

「そういやそうだな……」

鉄底海峡ではハイパーズの前の愛宕が戦艦棲姫を沈め、ピーコック島攻略では雷巡の出番はなく、本土迎撃戦では大井の出番はなかった。

今回も空母水鬼に止めを刺したのは島風である。……無論、大井が役に立ってないかというとそんなことはなく、雷撃でタ級を仕留めるなど活躍していた。

「ともあれ、皆の力あってこその勝利だ。帰ったら間宮さんに豪勢な料理作ってもらおう。勝ったのだしドンチャン騒ぎしても罰は当たるまいて」


その夜は大層なお祭り騒ぎとなった。

597: 2014/11/28(金) 22:58:01.99 ID:YCaWXKSAo
一夜明け……

鎮守府、埠頭。第一次の編成に近いが、軽空母がいたり、新規に着任したプリンツ・オイゲンや秋月などが参加していたりする。

「コレより残党狩りを行なう。ネ級Eliteを反復撃沈。その過程で清霜や明石を見つけ出す。何か質問は? はい時雨」

「明石さんは着任しているのでは?」

「正確には初期装備の修理施設のためなんだよなぁ……。せがまれてるんだよなぁ」

遠い目をする提督。

「まぁ明石はそこまで優先度は高くない。清霜を探そう。さもないと早霜に呪われる気がする」



艦娘戦闘中……



「ほら、ネ級だ」

日向が鹵獲したネ級を甲板にどさりと下ろす。

「うーん、吊り上げよう」

人型の深海棲艦の解体時はだいたい吊り上げてから腹を割く。もはやルーチンワークである。

「おらっ、清霜出せ!」

「いや、私持ってない……」

「問答無用!」

腹を包丁で割き、腕を突っ込み、引き抜く。その間、ジャスト3秒!!

「……うん、ダメ。改修に回そう」

「まぁ、そうなるな」

といったことを繰り返すこと二十数回……

「ウボァ」

「……んん? 感触が……違う? これは、清霜!?」

凄くいい笑顔を浮かべながらネ級の腹から『雫』を引っこ抜く。

そんな提督の後ろから陰鬱な声が。

「来て、しまったのね……ふふふふふ」

「!? 早霜、いつの間に!?」

「清霜を探すと聞いて……密かに乗り込んでたの」

「密航者かよ! まぁ三ヶ月ほど遅れたがコレで安心だな」

「ふふ、ふふふふふふ……」

「いや、その含み笑い怖いよ!」

598: 2014/11/28(金) 23:00:29.90 ID:YCaWXKSAo
数日後。提督たちは戦艦棲姫を鹵獲していた。

ボロボロになった艤装を外され吊るされる戦艦棲姫を前に提督は一人ごちていた。

「満潮と扶桑たちにばれたのはまずかったなぁ……」

~~~~~~

ことはちょっと前に遡る。朝潮を待たせた後の話である。あの後提督は満潮に問い詰められていた。

「で、司令官。朝雲がいつ来るかの回答は?」

「面倒だからなー。またの機会にしようかと」

「はぁ? 意味わかんない」

などと言い争いをしていたところに扶桑姉妹が通りがかったのだ。

「朝雲ちゃんは西村艦隊の一員だったわね……」

「再会を先延ばしにする……不幸だわ……」

~~~~~~

「とまぁ圧力に負けたので朝雲を出せ。出せばカイシャクしてやる。出さなかったら海に捨ててもう一回鹵獲する」

「朝潮型とか持ってたらガチ口リ認定でしガハッ」

聞く耳持たず『雫』を取り出す。

「……まるゆじゃねーかガチ口リどころかガチペドじゃねーか」

「何が入ってるか私たちでもわからないんだからしょうがないでしょ!? ゲホッゴホッ」

さすがに姫クラスは『雫』を抜かれてもまだ息がある。

「うっせぇ。さっさともってこいオラッ」

ドボン、と戦艦棲姫の身体をクレーンから外して海中へ投棄。不法投棄であるが咎めるものはいない。

「……朝雲のためとはいえ、さすがに連続出撃してると疲れるわ」

「ブラック労働……不幸だわ……」

「おまえらなぁ……とはいえ、実際、戦艦棲姫は疲労が溜まった状態で勝てる相手でもないしな」

599: 2014/11/28(金) 23:01:40.84 ID:YCaWXKSAo
「足なんざ飾りとか言いたいのかこのホバーめいた脚部艤装は」

提督たちは戦艦棲姫攻略部隊を休ませ駆逐棲姫を鹵獲していた。

「……僕が鹵獲しておいてなんだけど、あまり酷いことはしないで欲しいな……。春雨に重なりそうだから」

「照らしてから思いっきり魚雷叩き込んでたお前が言うか? 夕立がやるより酷いことになってたぞ。ともかく甲板から降りてろ」

北上のものには及ばないものの、艦首魚雷と五連装酸素魚雷の合わせ技は駆逐棲姫の装甲程度ならやすやすと貫くのだ。

一方の駆逐棲姫は何事かブツブツと呟いていた

「月が……月がきれい……」

「現実逃避してんじゃねーぞ今は昼だオラッ朝雲出せ」

「朝雲は白露型じゃない……」

「うっせぇお前の元が何かなんて関係ねーんだよ!!」

理不尽なことを言いながら腹を割き手を突っ込む。傍から見ると猟奇的犯罪者である。

「……ん、んん!? 出た!? マジで!?」

掴んだ雫の違和感。それこそが当たりだと提督に告げていた。

600: 2014/11/28(金) 23:04:45.38 ID:YCaWXKSAo
鎮守府、工廠。

「どうも!夕雲型の最終艦、清霜です。到着遅れました、よろしくお願いです!」

「朝潮型駆逐艦、朝雲、着任したわ! 貴方が司令…かあ。ふうーん。ま、いいわ。私がやったげる!」

新たに着任した二人を前に提督は感慨深げに頷く。

「……これで、現存する全ての艦娘が着任したわけだ」

「提督、なんか忘れてませんか?」

後ろから声をかけるのは工作艦、明石。

「修理施設ねぇ……開発でナントカなんない?」

「なりません」

「大型建造で」

「出来ません」

けんもほろろの返事。

「仕方ない。鎮守府海域に出るうちに探すか……。最悪中部海域で掘ればいいし」

「吉報、待ってますよ!」


渾作戦は成功裏に終了を告げた。

次の戦いも勝てるかどうかはわからない。だが、艦娘との絆と、大量の資源と、要を押さえた情報があれば、なんとかなるだろう。

いつか全ての深海棲艦が駆逐されるその時まで、提督と艦娘たちは闘い続けるのだ……!!


2014年秋イベント編 コンカー・ザ・コンクエスト おわり

601: 2014/11/28(金) 23:05:47.78 ID:YCaWXKSAo
というわけで朝雲も確保出来ました。
うん、野分は次投下するから(震え声)

602: 2014/11/28(金) 23:26:30.57 ID:yaxKYBiio
乙です

次回:泣き虫雪風と釣り人提督【その18】


引用: 【艦これ】泣き虫雪風と釣り人提督 Part2