102: 2015/04/28(火) 21:26:15.30 ID:dsAwmA2fo


前回:泣き虫雪風と釣り人提督【その22】
最初から:泣き虫雪風と釣り人提督

――― 甲板ニーソ(今回の話とはあまり関係ない) ―――

祥鳳「軽空母、祥鳳です」

提督「変わった弓だな」

祥鳳「えぇ、これ飛行甲板も兼ねてるんですよ」

提督「ほほう」

祥鳳「発着艦シークエンス、ご覧になります?」

提督「そうだな」


~~~~~~


屋外演習場。イ級を模した標的艦が航行している。

祥鳳は矢羽が艦載機となった矢を慎重に番える。

祥鳳「では……攻撃隊、発艦してください!」

ビィン、と弦が鳴り、飛び出した矢が複数の艦攻となり編隊を組む。そのまま低空飛行で標的に接近し、模擬魚雷を投下する。

命中した証である金属の衝突音を背に、編隊が戻ってくる。弓の甲板部分を水面と平行に構え、着艦に備える。

祥鳳「おかえりなさい」

着艦するそばから回収し、全機回収したところで再び矢に戻す。

祥鳳「いかがでしたか、提督?」

提督「弓が飛行甲板兼ねてるのはわかったが……矢が複数の艦載機になったり戻ったりするのは謎いなぁ」

祥鳳「式神形式よりはオカルトじゃないと思うんですけど」

提督「俺にとってはどっちも謎いよ」
海の画集 -「艦これ」公式イラスト集-
107: 2015/05/01(金) 22:33:13.92 ID:kRPoklNFo
――― ユーちゃん育成訓練 ―――

ユー「ドイツ海軍所属、潜水艦U-511です。ユーとお呼びください」

提督「よろしくな。ふーむ、最初から二段改装あるのか……龍鳳改みたいなもんかな」

ユー「何をすればよろしいでしょうか……?」

提督「そうだな。潜水艦寮に伊58というピンク髪の潜水艦娘がいるからいろいろ教えてもらって練度向上に努めるといい」

ユー「はい」

~~~~~~

潜水艦寮。

ゴーヤ「提督から聞いたよ、新しい仲間が来るって! よろしくでち!」

ユー「よろしく……」

ゴーヤ「ビッシビシいくよ! ユーを旗艦にしてオリョクルでち!」

ユー「うん、頑張る」


~~~~~~

南西海域、オリョール海

ユー「敵艦隊発見です。ふぉいあー!」ドーン

ゴーヤ「なかなかやるでち」

はち「……ユー、小破してから全然中破しないね」

しおい「んぐぅっ、やられた……」

イク「先輩としての威厳が崩れてくのね……」


~~~~~~

ろー「ろーちゃんです! はい!」

提督「日に焼けたな……」

ろー「オリョールの訓練、長かったですって!」

提督「しかもスク水になってる」

ろー「小破のまま使ってたらなんか駄目になっちゃったから新しいのもらいました!」

提督「いいのかそれで……」

ろー「はい!」

111: 2015/05/03(日) 22:33:45.49 ID:Mi4znL/ao
鎮守府、執務室。提督の目の前には一人の少女。

「お前が来たということは、ついに作戦準備が整ったか」

「ええ。あとは貴方が指示をだすだけです」

「……そうか。では」

机の受話器を取り、ダイアルを回す。鎮守府全体への放送である。

『全艦娘に告ぐ。本日一〇〇〇より、第十一号作戦を発令する。繰り返す。本日一〇〇〇より、第十一号作戦を発令する』

一呼吸おき、言葉を続ける。

『この作戦は西方にまたぞろ湧いてきた深海棲艦を押し返し、シーレーンを奪い返し、ヨーロッパへの海路を打通するものである』


『暁の水平線に勝利を刻めぃ!!』

112: 2015/05/03(日) 22:40:13.07 ID:Mi4znL/ao


2015 Spring Event:11th Operation of Western Sea Episode 1 ~ カレー洋強襲偵察!! ~


西方海域、カレー洋。

「さて、まずは敵情の強行偵察か……。雪風、島風に、川内三姉妹に、夕立。彼女たちならやってくれるだろう」

提督はぷかぷか丸から出撃する雪風たちを見送りながら呟く。

その後ろから声をかける猫吊るし。

「そうそう、一つ言い忘れてました」

「なんだよ」

「トラックでやったアレですが、リチャージしておきました」

「ほう」

「勿論それ相応の代償はいりますが」

「艦娘の命か?」

提督の言葉にため息を付いて首を振る猫吊るし。

「全く、暴力的でいけませんね貴方は」

「もしそうだったら断るところだった」

「海域突破したらプレゼントする予定の装備ですよ装備」

「具体的には?」

「この試製51cm連装砲が」

どこからか51cm砲をドン、と取り出す猫吊るし。物理質量はだいぶ重かったはずだが。

「試製46cm連装砲になります」

「……あれ、それウチになくね?」

「ないですね。更に弱めると試製35.6cmになる上……まぁいっか」

「51cmはあるから46cmくれ。よこせ」

「はいはい。でも渡すのはクリアしてからですよ」

そう言って猫吊るしは連装砲の上に載り、詠唱を始めた。

113: 2015/05/03(日) 22:41:52.92 ID:Mi4znL/ao
カレー洋、深海東洋艦隊警戒部隊主力艦隊

「全く……私がここのフラグシップだってこと判ってんのかね」

そこにはうんざり顔のリ級改がいた。理由は言うまでもない。

「さーて、強行偵察の連中はこの軽巡棲鬼ちゃんがバッシバシ沈めちゃうからねー」

テンションの高い軽巡棲鬼である。

一応リ級改の随伴艦だということになっているが、相手は鬼姫クラスである。強くは出られない。

(あー、もう。神様いるならあいつをいっぺん目の前から消してください)

そう思っていた矢先、東のほうからまばゆい光が!

(何だアレ)

次の瞬間、その光は軽巡棲鬼に直撃し、彼女をベーグル湾の方までふっ飛ばした!!

(……サンキュー神様!!)

だが、その感謝をすぐさま後悔することになる。


「今の光、なんだったんでしょうね?」

「ちょうど行き先に着弾してたっぽい?」

「まぁまぁいけば分かるって」


「げっ、艦娘……オレンジの服の軽巡は危険度の高いヤツで……駆逐は……ヤバイの上から三隻じゃん」

なんだかんだで軽巡棲鬼は戦闘では頼りになる。だが、彼女は先ほどどっか遠くの方まで吹っ飛んだ。

そこに精鋭の水雷戦隊が突撃してくる。つまるところ、氏。


「やっせんーやっせんー♪」

「姉さん、あくまで偵察ですよ?」

「別に倒してしまっても構わないんでしょ? 夜戦で」


リ級改だったものが、残骸となって波の上を漂うことになるのはその会話の数分後のことであった……。

114: 2015/05/03(日) 22:44:17.72 ID:Mi4znL/ao
次回予告!

「カレー洋の敵情視察、完了しました!」

陣容の把握……!!

「艦隊決戦か……胸が熱いな」

ついにあの艦娘が出撃……!!

「またお前か!!」

復讐に燃える深海棲艦……!!


次回、11th Operation of Western Sea Episode 2 ~ 第二次カレー洋作戦!! ~

118: 2015/05/07(木) 22:41:29.20 ID:l5YUXByno
鎮守府、戦艦娘寮、長門型の部屋。

「また大規模作戦の時期か……」

「そうね」

机に伏せっている長門と、向かいでその様子を見つめる陸奥。

「こういうときは大体金剛型が出るからな……。出撃しなければビッグセブンの力を振るうことも出来ない」

「月に一度南方海域に出てるじゃない」

「あれでは物足りない。連合艦隊を組んでその旗艦としてだな……」

「はいはい」

と、適当に雑談しているところに通信音が入る。

「どうやら強行偵察が終わったようだな」

「カレー洋だっけ? 一度制圧されたところを盛り返してくるのは珍しいわよね」

『……により、敵情の把握に成功した。我々はこれより連合艦隊を以って敵艦隊先鋒を挫き、叩き潰し、リランカより東の制海権を確保する』

「連合艦隊か……」

『以下呼ばれた者は工廠に集合し、出撃準備をすること』

長門は短くため息をつく。

「どうせ第一艦隊は金剛姉妹だろう」

だが。

『第一艦隊旗艦、長門』

「……!?」

反射的に長門の身体が跳ね上がる。

「あらあら」

『随伴艦は陸奥、扶桑、山城、摩耶、加賀……』

「い、今確かに私の名前が呼ばれたな!?」

「えぇ。久々の出撃ね」

『第二艦隊旗艦雪風、随伴艦は神通、島風、北上、大井、木曾……』

「よし、戦艦長門、出撃する!!」

もはや自信を喪いだらけ切っていた者の姿はなく、戦艦長門の姿がそこにあった。

119: 2015/05/07(木) 22:42:06.96 ID:l5YUXByno


11th Operation of Western Sea Episode 2 ~ 第二次カレー洋作戦!! ~



「カレー洋の敵情視察、完了しました!」

工廠に集まるは先ほどの強行偵察部隊。島風が手早く机上に地図を広げる。

「……これ南方海域のだぞ。その隣のヤツだ」

「おうっ!?」

改めて広げなおし、四方に重石を置く。

「カレー洋のポータルがここですね。ここにヲ級の改、こちらにル級の改……」

テキパキとコマを配置しながら説明していく神通。川内は近くの椅子に腰掛け既に睡眠状態である。

「……そして敵主力の旗艦は、装甲空母姫です」

「またお前か!!」

リランカ島の東、そこに鬼を象ったコマが置かれる。

「……装甲空母姫とかいつ以来だろうな。ま、大したことあるまい」

「普通の船舶にとっては十分脅威ですよ」

「ま、そのために艦娘がいるんだ」

なんてことはない、という顔をして柱に掛けてある鎮守府内放送用の通信機を取る。

『鎮守府内全艦娘に告ぐ。我々は強行偵察部隊により、敵情の把握に成功した。我々は……』

120: 2015/05/07(木) 22:43:03.50 ID:l5YUXByno
西方海域、カレー洋。海の上を12隻の艦娘が突き進む。

出遭った艦隊はことごとく航空攻撃からの甲標的による雷撃で半壊、長門型と扶桑型の砲撃で撃滅。

「ビッグセブンの力、侮るなよ」

その言葉に違わず、長門の放った徹甲弾はル級改のバイタルパートを正確に捉え、轟沈せしめた。

「主砲、副砲、撃てーっ!」

他の戦艦も負けじと続く。

「鎧袖一触ね……」

青い袴の正規空母が呟く。

「でもなぁ、こんなんじゃアタシ達の出番ないんじゃないか?」

「そんなことないわ。機銃を構えなさい」

摩耶の愚痴から程なく、空の向こうに黒い点が見えてくる。

「そうだな、防空巡洋艦摩耶さまの腕の見せ所だな!」

装備している機銃と砲門を空に向ける。同じくして加賀も弓を引く。

放たれた矢は烈風となり、その戦闘機の名の如く、激しく敵艦載機を翻弄する。

防空網を抜けた数少ない艦載機も、天地のひっくり返った雨の如き機銃と砲の嵐に晒される。

「ざっとこんなもんだ!」

121: 2015/05/07(木) 22:44:19.91 ID:l5YUXByno
カレー洋最深部。装甲空母姫率いる敵艦隊を残すのみ。

「艦隊決戦か……胸が熱いな」

自艦隊12隻に対し、敵艦隊はわずか6隻。もはや数の暴力でしかない。

アウトレンジからの航空戦、雷撃による漸減、そして水上打撃部隊と水雷戦隊による決戦。まさに理想的といって良い戦闘である。

護衛艦である駆逐と軽巡は加賀の艦攻と北上達の雷撃で始末され、残るはヲ級、タ級、そして装甲空母姫のみ。

だが、戦意を失った様子はない。砲を構え、残り少ない艦載機を収容し、一矢報いようと目を光らせる。

(私たちも、一歩違えばあのようになっていたのかもしれないな。いや、実際大和たちは……)

「どうしたの、姉さん。難しい顔して」

「いや、なんでもないさ」

陸奥の心配そうな声が長門の思考を断つ。軽くかぶりを振って、砲を構えなおす。扶桑姉妹の砲撃が空母と戦艦を一撃で沈めていく。

(提督も言っていたな、『昔は昔、今は今』と。雪風に向けての言葉だったが、私たち皆に共通することだ。加古にとらわれては前に進めない)

観測機の情報により微修正が行なわれる。装甲空母姫が砲を接近する長門に向ける。

「……全主砲、斉射、撃てーっ!!」

長門の艤装が火を噴くのと、装甲空母姫の砲撃が放たれたのはほぼ同時だった。


一瞬の後。鉄塊の砕ける音と爆音。

「ふっ……効かぬわ」

長門の拳から鉄の破片がボロボロとこぼれる。姫の砲弾を打ち砕いたのだ。

その視線の先は、爆炎を上げて沈み逝く深海棲艦の姿があった。

122: 2015/05/07(木) 22:45:59.43 ID:l5YUXByno
次回予告!

「通商破壊ね……任せて!!」

通商破壊のプロ……!!

「あれが敵の補給線……」

糧道を断つは勝利への近道……!!

「何故ここまで吹っ飛ばされた……」

復讐に燃える深海棲艦……!!(再度)


次回、11th Operation of Western Sea Episode 3 ~ ベーグル湾通商破壊戦!! ~

127: 2015/05/08(金) 22:50:48.01 ID:/a6nM5c6o
鎮守府、執務室。先の連合艦隊の活躍により、敵前線を押し返すことに成功した。

提督は一人、偵察や資料の情報を元にコマが配置された地図と睨めっこしている。

「次はリランカ島か……」

「その前に」

ひょっこり顔を出す猫吊るし。遠慮がないのはいつものことだ。

「なんだよ」

「敵は豊富な物資を以ってがっちりリランカを支配下に置いてます」

そう言いながらリランカ南岸のコマを指差す。

「いつものことだろ。あそこは連中のリスポーン地点だから住人は西側に避難してるし」

制圧すれば復活地点から遠く離れなくなり被害が激減するとはいえ、近寄ればやはり危ないのは変わらない。

「今回の作戦、リランカ島を長期的に抑える必要があります」

「MIのときみたいにまた拠点作るのか」

「そういうことです。で、まず敵の補給線をぶった切ります」

リランカから北東の艦隊群を指し示す。その海域にはベーグル湾と記されている。

「ここにワ級が大量に集まっています。ここを滅茶苦茶にすれば敵戦力は殺がれ、陽動も兼ねる事になるでしょう」

「なるほどな、一理ある。具体的な資料はあるか?」

「もちろん、ここに」

猫吊るしの渡したベーグル湾付近の資料を捲り、メモ紙に艦娘の名を記していく。

「……よし、出撃するか」

128: 2015/05/08(金) 22:52:23.06 ID:/a6nM5c6o


11th Operation of Western Sea Episode 3 ~ ベーグル湾通商破壊戦!! ~



西方海域、ベーグル湾。

ビスマルクを先頭に、重巡那智、足柄、航巡利根、筑摩、軽空母隼鷹の艦隊が広大な海原を往く。

その後方から提督はぷかぷか丸に乗って追う。

「ビスマルク、やる気高すぎてから回りしないといいが」

~~~~~~

ブリーフィング時、最も士気が高かったのはビスマルクだった。

「通商破壊ね……任せて!!」

「結構乗り気だな」

「ティルピッツも魚雷載せて通商破壊戦に携わったと聞くし、このビスマルクに出来ないはずないじゃない!」

~~~~~~

前衛の艦隊を手早く撃退し、次の敵艦隊に差し掛かる。

「電探に感あり。軽巡クラスだけどこれは……」

「軽巡棲鬼じゃな」

ビスマルクの言を利根が引き継ぐ。

シニョンは解け、服もぼろきれを引っ掛けたような状態になっている。

「何か怒ってますね」

「元からじゃん? ま、気づく前に一発お見舞いしてやろうぜぇ。モノども、かかれぇ!!」

隼鷹の巻物甲板から次々と艦載機が飛び出す。後を追うように利根と筑摩も瑞雲を飛ばす。

「ここに鬼級とかこの補給線、よほど重要らしいわね!」

艦載機の離脱後、間髪入れずビスマルクが主砲を叩き込む。

「逆に言えば、ここが奴らの急所だってことだ!」

「この戦い、絶対勝って見せるわよ!!」

那智と足柄もあとに続く。

そうこうするうちに敵随伴艦は全て沈み、艤装部分をボコボコにされた軽巡棲鬼が撤退していく。

「追撃するか?」

「いいえ、本来の目的は補給線の断絶。ここで弾を無駄使いすることはないわ。行きましょう」

「了解だ」

129: 2015/05/08(金) 22:53:26.41 ID:/a6nM5c6o
更に先に進むと、いるわいるわワ級の大群。護衛艦より輸送艦の方が多いぐらいである。

「あれが敵の補給線……。あいつら、自衛用の砲を備えてるエリートやフラグシップばかりね」

「さすがに普通の船だと危ないでしょうね。でも私たちなら勝てるわ!」

瑞雲を飛ばして索敵していた利根が眉をひそめる。

「空母はおらんが……あやつら、輸送艦の陰にフラタをひそめとるのぅ。皆反撃には気をつけるんじゃぞ」

「ふっ、そのぐらい無くてはやりがいがない」

各々残弾を確認し、戦闘準備を整える。

「いつでもいけます。姉さんも大丈夫?」

「もちろんじゃ!」

「頭上はアタシに任せな!」

「それじゃ、いくわよ……Feuer!!」

ビスマルクの主砲発射を合図に、獲物を見つけた狼の如く、艦娘たちは勢いよく敵陣に飛び込んだ。

130: 2015/05/08(金) 22:54:28.43 ID:/a6nM5c6o
ベーグル湾某所。ボロボロになった軽巡棲鬼は西の空を眺めている。

「何故ここまで吹っ飛ばされた……」

状況を把握し、臨時に護衛艦隊の旗艦になったところで巡洋艦たちの無慈悲な奇襲。護衛の任を果たすこともできず無様に撤退。

視線の先にはいくつもの黒い煙。

自分たちの守ろうとしたものがどうなったか、想像に難くない。

ギリリ、と歯軋りをしても状況は変わらない。

目を瞑って息を吸い、精神を落ち着ける。

「……まぁいい。我々も進歩しているのだ。水鬼様達なら……」

そう呟くと、海の底にゆっくりと、深く深く沈んでいった。

131: 2015/05/08(金) 22:55:41.83 ID:/a6nM5c6o
次回予告!

「これが艦隊司令部施設……」

連合艦隊旗艦の喜び……!!

「これ西にいく意味あるの?」
「いいドロップあるかもしれませんよ?」

究極の決断……!!

「四月(ハル)の喧嘩(イクサ)……開始(ハジ)めてみるか……!?」

凶悪な面構え……!!


次回、11th Operation of Western Sea Episode 4 ~ 決戦!リランカ島攻略作戦!! ~

135: 2015/05/12(火) 22:48:02.69 ID:TBhbV+jXo
西方海域、ぷかぷか丸改二甲板。

「ベーグル湾は抑えたわ。あとは現地の方で補給しながら哨戒ってところね」

「了解。リランカ制圧したら一報入れるんで後処理済ませてこっちに合流してくれ」

「わかったわ。じゃ、頑張りなさいよ」

「そっちもな」

ビスマルクとの通信を終え、一息つく提督。そこに長門が通りがかる。

「提督、艦隊の準備は九分通り終わったぞ」

「うむ。カレー洋に引き続き、長門が第一艦隊旗艦だったな。これを持て」

提督が取り出したのは一枚のカード。

「これが艦隊司令部施設……」

艦隊の指揮権を切り替え、護衛退避を可能とする画期的装備。艤装のスロットに差込み、満足げに頷く長門。

「よしよし。あの頃を思い出すよ」

「さて、リランカ島を落としに行きますか……!!」

136: 2015/05/12(火) 22:50:56.04 ID:TBhbV+jXo


11th Operation of Western Sea Episode 4 ~ 決戦!リランカ島攻略作戦!! ~


リランカ島沖。

長門を旗艦とし、陸奥、摩耶、赤城、蒼龍、飛龍と続く第一艦隊、

雪風を旗艦とし、神通、島風、鳥海、金剛、羽黒が並ぶ第二艦隊。

皆一線級の練度を持つ艦娘たち。万全の体制でこの海戦に臨む。

「そういえば、加賀はどうしたんだ?」

「次の作戦を見据えて待機中だそうです」

摩耶の疑問に赤城が答える。

「そうそう、敵泊地に精鋭で切り込むとか」

どこで小耳に挟んだのか、飛龍が訳知り顔で呟く。

「あぁ、それで……」

「おしゃべりはそこまでだ。敵艦隊が近い。第一、第二艦隊対空戦闘用意」

長門の号令により、空母艦娘は弓を取り、他の艦は砲を空に向ける。

弓なり音とともに無数の烈風が飛び出し、敵艦載機を迎え撃たんと青空を駆け抜けていった。

137: 2015/05/12(火) 22:53:17.21 ID:TBhbV+jXo
『――各艦、戦闘に支障はないか?』

「第一艦隊、全員問題なし、だ」

「第二艦隊も問題ありません!」

機動部隊を軸とする敵艦隊を突破し、リランカ島に近づく一行。そこは、初めて西方に来たときとは全く違う様相を呈していた。

深海棲艦の勢力圏下では馴染み深い赤黒い空。そして、港湾部に女王然として佇む、巨大な艤装を背負った深海棲艦。

『あれが……港湾水鬼!!』

『四月(ハル)の喧嘩(イクサ)……開始(ハジ)めてみるか……!?』

無線に割り込む音声。自らの艤装や護衛要塞から次々と艦載機を繰り出す。

「全艦、突撃! 敵艦載機に気をつけろ!」

「摩耶さまの力、思い知れッ!!」

交錯する艦載機、乱れ飛ぶ弾幕。

「Phew、第一波は凌げまし……!!」

一息付く金剛。だが、息付く暇も有らばこそ。響く砲撃音に、反射的に己の身を艤装で庇う。

直後、着弾。彼女の艤装の左半分がボロボロに砕ける。

「……Shit!! テートクに貰った大切な装備が!」

もし庇っていなかったら、自分の身体がこうなるところであったろう。

「金剛さん、大丈夫ですか!?」

「ちょーっとHeavyなの貰っただけネ! まだ平気デース!」

ここで萎縮しては士気に関わる。強いて己を奮い立たせる。

「全艦雷撃用意、雷撃後装備換装し、第一艦隊の攻撃後再突入します!」

次々と上がる火柱。駆逐と要塞があらかた片付いた証拠である。

138: 2015/05/12(火) 22:55:13.64 ID:TBhbV+jXo
「全主砲、斉射、てーっ!!」

雪風たちが反転すると同時、長門率いる第一艦隊の砲撃が始まった。先ほどよりも大きな水柱が次々立ち上る。

『すこしは"殺"るのか……"愉"しいなぁ……』

「装備換装、急い……きゃぁっ!?」

港湾水鬼の主砲が赤城を水面に叩き付ける。

「こっ、こんなところで……」

フラフラになりながら立ち上がるも、甲板が中ほどからぽっきりへし折れている。

「第二次攻撃隊、発艦! 赤城の攻撃隊は私か蒼龍の所に着艦して!」

「ごめんなさい……」

「後は私たちに任せて!」

即座に二航戦の二人がカバーに入る。

「ル級も仕留めたわ。後はあのデカブツだけ!」

「第二艦隊、換装完了しました!」

雪風からの通信。つまりは突撃準備完了の合図。

「よし、第一艦隊砲撃止め! 後は頼むぞ、雪風……!」

139: 2015/05/12(火) 22:57:03.88 ID:TBhbV+jXo
「砲雷撃戦、続行します!!」

雪風、島風、そして神通が構えているのはいつもの砲ではない。 

WG42、対地攻撃用ロケットランチャー。艦娘用にスケールダウンしてはいるものの、軽量級の艦娘でも陸上の相手にダメージを叩き出す事のできる数少ない兵器である。

次々と港湾水鬼の艤装に着弾し、爆発していく。港湾水鬼は悶え苦しみながらもまだ稼動している砲で撃ち返す。

「!! 雪風ちゃん、危ないっ!」

雪風に向かう砲弾に島風が割り込む。着弾の衝撃で二人して海面にたたきつけられる。

「島風ちゃん!?」

「私なら平気……だって早いもん……」

その一言を最後に気を失う。よく見ると背中の魚雷発射管がひしゃげている。連装砲ちゃん達も主がダウンしたことで機能不全に陥っている。

「あとは鳥海さんたちに任せましょう!」

神通の声がかかる。二人で島風と連装砲ちゃん達を曳航し、後の三人と交代する。

「お疲れ様、後は任せて! 鳥海、突撃します!」

最大戦速で鳥海が横切る。その後を羽黒と金剛が追う。


港湾水鬼の20インチ砲が軋み音を上げながら照準を鳥海に合わせようとするが、

「計算通りです!」

鳥海の砲撃が、それをへし折る。そのまま真正面から突っ込む。

「主砲、斉射……」

鳥海の砲門が港湾水鬼を狙う。港湾水鬼は巨大な両腕を交差させ、衝撃に備える。

だが、パシャリという水音のみ。衝撃は来ない。そっと腕を開く。

140: 2015/05/12(火) 22:58:21.03 ID:TBhbV+jXo
高雄型重巡洋艦四番艦、鳥海。勢いよく跳躍し、水鬼の上を取っていた。

その全主砲は港湾水鬼の開いた腕の中、胴と頭のあるバイタルパートを向いていた。

「……てーっ!!」

射撃の反動できりもみ回転しながら着水。爆発大炎上する港湾水鬼。

金剛と羽黒が追いつく頃にはあらかた焼け落ちていた。

「Oh, 私たちが出るまでも有りませんでしたネ」

「でも、戦いは続くんですよね……」

羽黒の呟きに鳥海が頷く。

「ええ。でも今回はおしまい。司令官さんに連絡を入れて、臨時泊地を作りましょう」

144: 2015/05/14(木) 22:47:53.59 ID:qrcOJWTMo
西方海域、臨時ポータル出口。

既に送り出した通商破壊艦隊、主力連合艦隊のほかにもう一艦隊、そこに待機していた。

「ん……リランカの制圧完了したみたいだよ」

「よし、いよいよ私たちの出番か」

最上が受けた電文に、武蔵が頷く。後ろには三隈、霧島、加賀、そして呂500。

「リランカ南西の環礁に泊地が建設されているという話でしたね」

と、霧島が言う。

「うん。まずは回遊している敵艦隊を突破し、リランカ島にて先行した主力艦隊と合流。三式弾を受けとった後環礁に行き敵泊地を叩くよ」

地図を広げて航海ルートを指差しブリーフィングする最上。

「そういえば、提督は何故彼女を入れたのかしら……」

加賀が目を向けた先には、潜水艦娘の呂500。近くに敵影は無いため、浮上して航行している。

「提督にお尋ねになればよいのでは?」

「そうね。向こうに着いたら訊いてみましょう」

三隈の意見に頷く加賀。

「じゃあみんな、出撃するよ!」

145: 2015/05/14(木) 22:48:44.11 ID:qrcOJWTMo


11th Operation of Western Sea Episode 5 ~ アンズ環礁泊地攻撃作戦! ~


リランカ島、臨時泊地。先行した艦娘たちが何やら物々しい基地らしきものを建造していた。

そして提督もヘルメットをかぶり、指揮を取っていた。

「提督、旗艦最上および旗下五名、泊地攻略部隊ただいま到着しました」

「おう、お疲れ様。ここはまだ建築中だからな、装備の換装はぷかぷか丸で行ってくれ」

「了解!」

最上と入れ替わりに加賀が来る。

「今回の作戦、陸上基地相手ですが何故潜水艦の子を?」

「ろーちゃんのことか」

加賀の問いに顎を掻きながら言葉を続ける。

「あの基地の近く、水雷戦隊が待ち構えてるらしくてな。敵の目を逸らすための言わば囮だ」

「危なくはありませんか?」

「なぁに、オリョールなどで鍛えた練度の見せどころだ。それに……」

「それに?」

ニヤリと意味深な笑みを浮かべる提督。

「ま、見てれば分かるさ」

146: 2015/05/14(木) 22:49:57.26 ID:qrcOJWTMo
戦艦・航巡の三式弾の搭載を終え、再度出撃する泊地攻略艦隊。彼女らの目の前に立ち塞がるは……。

「例の煙幕ですわね」

暗夜煙幕。通常、深海棲艦の撤退時に使われるが稀に広域に渡って張り巡らされているときがある。

「もがみん、どうします?」

だが最上が口を開くより早く、行動するものがいた。

「ろーちゃんにお任せ、ですって!」

言うが早いか、どぶんと水面下に潜り、煙幕の中に突入していった。

「あぁ、もう! 追いかけるよ! 衝突には気をつけて!」

最上たちも後を追う。


煙幕とは便宜上の呼び名で、実際のところ光の殆ど通らないドーム内に近い。闇夜の如き暗さは撤退や奇襲に最適である。

そのため、慎重に行動する必要があるが今回は違った。爆雷の発射音と爆発音が次々と聞こえてくる。

「敵艦隊、電探に捕捉。対潜攻撃に集中してこちらに気づいてないようです」

「囮ってこのことだったのね……」

「それより早く片付けないと。ろーちゃんが危ないよ」

潜水艦に気を取られていた深海棲艦達は突然の砲撃になす術も無く撃沈された。

「全艦撃沈、っと。ろーちゃんは……」

「がるるー」

「うわっ!?」

最上の後ろにひょっこり浮上する呂500。

「ろーちゃんは無事ですって!」

「ならいいけど……」

何事も無かったかのように航行を再開する呂500。だがその水着の背中部分は少し黒く焦げていた……。

147: 2015/05/14(木) 22:51:40.70 ID:qrcOJWTMo
アンズ環礁、敵秘匿泊地。

護衛と思しきル級改が睨みを利かせ、護衛要塞が哨戒し、輸送艦が物資を運んでくる。

その中央に居座る、巨大な艤装をつけた深海棲艦。

「あれが泊地水鬼……」

「データによるとその装甲は硬く、大口径主砲による砲撃すら弾くとか」

霧島の分析に、武蔵は腿につけた弾を引き抜いて砲に装填する。

「だから、この三式弾があるんだろう?」

「補給艦はろーちゃんに任せて!」

手を振り、水面下に潜る呂500。

「もがみん、準備できましたわ」

「こちらも発艦準備出来てるわ」

二人が航空戦の準備を終えるのを見て、最上もカタパルトに瑞雲を載せる。

「よし、発艦後突撃し、敵護衛艦隊と交戦、可能な限り近づいてあの泊地水鬼を討つよ! 発艦準備!」

飛行甲板を構え、瑞雲を射出。同時に加賀が艦載機を次々と繰り出す。

敵も襲撃に気づいたらしく、艦載機が迎撃しに来る。

「全艦、突撃! 爆撃に注意して!」

148: 2015/05/14(木) 22:52:48.95 ID:qrcOJWTMo
敵の戦闘機は少なく、制空権は艦娘の側にあった。輸送艦は呂500の魚雷に次々と襲われ、泊地水鬼と護衛要塞の目はそちらにひきつけられた。

一方、最上たちの前に立ちはだかるル級改。駆逐を盾に、砲撃を寄せ付けない。

「全く、これは厄介だな」

数の不利をものともせず、致命打にならないよう弾を防ぎ、反撃してくる。

「あぁっ、くまりんこのお洋服が……!」

「三隈!」

更に追い討ちをかけようとするル級。だがその隙を逃すほど甘くは無い。

「隙ありだッ!」

「主砲、斉射! 撃てーっ!」

戦艦二人の砲撃を喰らい、爆発炎上して沈んでいく。

「護衛要塞と輸送艦も大方片付きました」

加賀の報告が入る。残すは泊地水鬼のみ。

149: 2015/05/14(木) 22:54:18.90 ID:qrcOJWTMo
「もう、飛べないの……飛べないのよ……わかる? ねぇ……?」

泊地水鬼の嘆きが環礁に響く。

「鬼や姫クラスの深海棲艦は思いのたけを呟くというが、今回は訳がわからないな……泊地が飛ぶわけなかろうに」

「確かにね。飛ばせない、ならわかるんだけど」

突入に備え、砲と弾の最終確認をしながら雑談する武蔵と最上。

「三隈さんは加賀さんに預けて、私たちで突入しましょう」

霧島からの意見具申に頷く最上。

「ここでもがみんと別れるだなんて……三隈、残念ですわ……」

「大破してるし、仕方ないよ」

「三隈の分まで頑張ってくださいな」

「もちろんさ!」

最上は振り返って速度を上げ環礁内に突入、霧島と武蔵も後に続く。

150: 2015/05/14(木) 22:56:32.03 ID:qrcOJWTMo
「フフッ…痛い……痛いわ…ウッフフフフフフ……」

降り注ぐ三式弾の雨霰。だが、痛い痛いという割にはそこまで艤装へのダメージが少ないように見える。

「見た目以上に硬いな……もっと近づくか?」

「霧島の分析ではバイタルパートに直接撃ちこむ必要がありそうです」

「よし、近づこう。衝突と敵の砲撃には気をつけて!」

接近しながら更に撃ちこむ三人。

泊地水鬼の下部艤装が大きく顎を開く。

「今だッ!」

最上の連装砲から放たれた三式弾が艤装の中に飛び込み、大爆発を起こす。

「よし!」

「やりましたね!」

勝ちを確信する最上と霧島。だが、武蔵は違った。

「……いや、まだだ!!」

艤装は丸ごと吹っ飛んだものの、肉体部分はまだまるまる残っていた。

「だから…何度来ても……同じなのよ……」

全砲門からの一斉射。

「ぐぅ!?」

「うあぁっ!?」

最上と霧島を立て続けに吹き飛ばす。

「ちっ、何てヤツだ……!」

武蔵は振り返り、フラフラになりながら立ち上がる最上に告げる。

「最上、霧島をつれて離脱しろ」

「武蔵さん、何を……!?」

「単騎駆けでアイツを討ち取る」

「さすがに一人じゃ……!」

「私を誰だと思ってるんだ? 大和型戦艦、その改良二番艦武蔵だ。あとはこの武蔵に任せろ」

「……わかりました。でも無茶して沈まないでくださいよ!」

151: 2015/05/14(木) 23:00:21.77 ID:qrcOJWTMo
最大戦速で泊地水鬼に接近する。次々と放たれる砲弾。

あるときは旋回し、あるときは艤装で弾き飛ばし、ある時は拳で打ち砕く。

「そうだ、いいぞ。どんどん撃って来い!! 私はここだ!」

右肩の単装砲を武蔵に向け左肩の砲門とともに斉射する。響く轟音。上がる水柱。だが。

「戦艦が、簡単に沈むか!」

機関一杯、更に加速する。そして右腰につけた連装砲―――試製51cm連装砲―――を腕に装着しなおす。

「もう飛べないと言っていたな? なら私が飛ばしてやろう!!」

その勢いのまま、泊地水鬼の体を連装砲で真っ直ぐに殴り、腕を振り上げた。。宙を舞う白い身体。

「また……あの空に……」

「撃ち方……始めッ!!」

泊地水鬼の言葉はそれ以上続くことはなかった。武蔵の砲撃が彼女を破壊せしめたからである。

「空、か……」

見上げれば赤黒い空。まだこの海域に深海棲艦が残っている証拠。

「もうひと踏ん張りだな……」

152: 2015/05/14(木) 23:02:03.93 ID:qrcOJWTMo
次回予告!

「甲種勲章なんていらないのだが」
「これを見ても同じことが言えますか?」

人類の意地……!!

「今度こそ沈めてあげるわ……」
「沈むわけには行きません!」

雪風の真の力……!!

「忌々しいガラクタどもめ……!」
「火の塊となって沈んでしまえ……!」

最悪のコンビ!!


11th Operation of Western Sea Episode 6 ~ 西方打通最終決戦!! ステビア海を越えて! ~

157: 2015/05/18(月) 23:01:29.31 ID:K4fjJDNRo
西方海域、リランカ島。

「これでポータルの準備もよし、と」

アンズ環礁への攻撃完了後間もなく。臨時の泊地は完成し、鎮守府とのポータルも繋がった。

「へぇ、短期間で結構なものができてるじゃない」

通商破壊作戦後、合流したビスマルクが建物を見て感心する。

「なぁに、中は簡素なもんだ。作戦終了後は撤退するしな」

「ふぅん? ところでもう一戦あるんでしょう?」

「あぁ、そうだ。ビスマルクも作戦に参加することになるからな。準備しておけ」

「腕が鳴るわね!」

いそいそと真新しい建物に入っていくビスマルク。

入れ替わるように現れるは猫吊るし。彼女の方を向くことなく、提督は口を開く。

「偵察の情報によると、例の戦艦水鬼が敵の総旗艦らしいな」

「えぇ。倒せたら甲種勲章あげますよ」

「甲種勲章なんていらないのだが」

「これを見ても同じことが言えますか?」

り向くと、どこから取り出したのか猫吊るしが大型電探を掲げている。

「FuMOレーダー……!」

最強の対空電探。あれば重巡洋艦クラスの戦力の向上が見込まれる。

「今回私のパワーをちょっと使ってこれ作っちゃいました。弱体化させるとなるとこれもおじゃんですねぇ」

「ぐっ……!! 茨の道を歩ませるつもりか……!」

「あなたたちならそこまで苦労することもないでしょう? それに」

「それに?」

「私に頼り過ぎたら、私がいなくなったとき苦労するのはあなたたちですよ?」

ギリ、と歯を食いしばる。

「……いいだろう。お前の力に頼らずともヤツらを撃滅せしめる艦隊になったこと、証明してやる!」

158: 2015/05/18(月) 23:03:28.81 ID:K4fjJDNRo


11th Operation of Western Sea Episode 6 ~ 西方打通最終決戦!! ステビア海を越えて! ~


リランカ臨時泊地、埠頭。

「第一艦隊旗艦に隼鷹、随伴は大和、武蔵、長門、ビスマルク、千代田。第二艦隊旗艦に雪風、随伴は神通、島風、妙高、北上、大井。この12名で連合艦隊を組む」

「質問だ」

「長門か。何だ?」

「何故我々戦艦ではなく隼鷹が旗艦なんだ?」

「艦隊司令部によって徹甲弾を積む枠をとられたくないからな。これからブリーフィングに入るがナメプで勝てる相手ではない」

提督は手を振り合図を送る。間もなく大淀が地図を貼り付けたホワイトボードを運んでくる。

「アンズ環礁の秘匿泊地に打撃を与えたことにより、敵の主力をステビア海に誘引することに成功した」

リランカの西、カスガダマから北にあたる海域に敵を示す赤いコマをいくつも貼り付ける。

「なすべきことは単純明快だ。この敵艦隊旗艦を撃滅し、制海権を奪取する。ここを越えればスエズを抜けてヨーロッパまでのシーレーンが確保できる」

同時に中東への海路も拓け、タンカーの輸送も容易になる、と付け足しながら地図の北側に向けて矢印を引く。

「偵察隊によると敵艦隊に空母棲姫やあの戦艦水鬼の姿も確認されているという。これが決戦となるだろう。暁の水平線に勝利を刻めぃ!!」

159: 2015/05/18(月) 23:04:29.22 ID:K4fjJDNRo
西方海域、ステビア海。

「敵艦撃沈確認、っと」

「肩慣らしにもなりませんね」

敵前衛艦隊はハイパーズの雷撃と戦艦の砲撃により、なす術もなくひき潰された。

「ん、雪風から通信だ。……っとこちら隼鷹。どうした?」

「暗夜煙幕が広域に張られています。第二艦隊で突入後、安全を確保します」

「了解。無理すんなよー」

「しばらく待機か……」

武蔵が残念そうに呟く。

「まぁ、奇襲されたら危ないもんね」

と、千代田。カラクリ箱の烈風の調整に余念がない。

160: 2015/05/18(月) 23:05:12.27 ID:K4fjJDNRo
暗夜煙幕内。神通の飛ばした夜偵をもうひとつの目として慎重に航行する。

「……! 敵艦隊発見です!」

夜偵からの通信に神通は一瞬息を飲んだ。

「あれは、戦艦棲姫……! こちらに向かってきます!」

「迎撃します、雪風に続いてください!」

闇の中とはいえ、広い海の上。隠れる場所などない。即座に交戦の判断を下す。

かすかな光の中でも浮かび上がる特徴的艤装の影。

「今度こそ沈めてあげるわ……」

戦艦棲姫は全砲門を雪風に向け、斉射。

「沈むわけには行きません!」

ドウ、と轟音とともに水柱が盛大に上がる。だが、雪風は着弾点より更に先に進んでいた。

身体をひねり、魚雷を海面に発射しながら更に接近。戦艦棲姫も副砲で牽制をかけるが照準が追いつかない。

「この程度の魚雷で……!」

「油断大敵、次発装填済みです!」

再度の発射。更にばら撒かれる魚雷。

「くっ、回避を……!!」

「捕捉済みです!」

水面を蹴り、雪風が飛び上がる。その右手には53cm艦首酸素魚雷。

雪風の投げつけたその魚雷は過たず戦艦棲姫に直撃し、先に発射した魚雷ともども大爆発を起こした。

着水し、残心。轟沈していくさまを確認する。

「……敵艦、撃沈です。神通さん、残敵は?」

「姫の撃沈により、混乱をきたしています。こちらで片付けますので第一艦隊に連絡をお願いします。あと……」

「?」

「強くなりましたね。二水戦旗艦として、誇りに思います」

「あ、ありがとうございます!」

「でも気を抜いてはいけませんよ。敵はまだまだいますから」

「はい!」

161: 2015/05/18(月) 23:05:54.86 ID:K4fjJDNRo
暗闇を抜けると、そこには空母棲姫率いる機動艦隊と戦艦水鬼率いる精鋭の水上打撃部隊。

対するは精鋭の水雷戦隊を前衛に置き、大和型を主軸とした連合艦隊。

まさに連合艦隊同士の決戦といった様相である。

「全く、大した歓迎だ」

「このぐらい来なければ手応えがないというものだ」

敵陣容に怯むことなく、ポキポキと指を鳴らす武蔵と長門。

近づくにつれ、深海棲艦の威圧が増す。並大抵の人や艦娘ならその空気だけで腰を抜かして動けなくなり氏を待つだけとなるだろう。

「忌々しいガラクタどもめ……!」

「火の塊となって沈んでしまえ……!」

だが今更ここで尻尾を巻いて逃げ出すものはない。

「……よし、第一、第二艦隊、対空砲火準備用意!」

各々空に向けて射角を取る。遠くの空から白い飛翔物体が見えてくる。

「千代田、出し惜しみは無しだ! 艦上戦闘鬼烈風、全機発艦!」

「了解よ!」

隼鷹が巻物を広げ式神を飛ばせば、千代田はカラクリ箱を全開にし中の艦載機を次々と空に放り上げる。

交錯する緑の翼と白き獣。空中では恐るべきドッグファイトが繰り広げられている。

「よーっし、上は抑えた! あとはあいつ等だけど……」

その時、提督から通信が入る。

『一発でかいの行くぜ! その隙に切り込めぃ!!』

『こちら支援艦隊旗艦翔鶴、支援攻撃いきます!』

敵前衛部隊に襲い掛かる砲火の嵐。水柱に混ざり爆炎が上る。

「よし、全艦隊突撃ぃ! ヒャッハー!!」

162: 2015/05/18(月) 23:06:39.90 ID:K4fjJDNRo
鬼・姫クラスは巨大な艤装を装備しているが、見た目と裏腹に動作は機敏である。戦艦の砲弾の雨の中でも狙いをつけさせない。

当たったとしてもその装甲は量産型の深海棲艦の比ではない。

「ちっ、一式でもバイタルパートに至らないか」

武蔵の放った一射。戦艦水鬼に直撃すると思われたが、巨大な拳で弾を粉砕した。指が少し焼け焦げたがその程度である。

「まずは敵の手数を減らしましょう」

大和が狙うはル級の改。46cm三連装砲の斉射を浴び、大きくよろめく。

「……そこっ!!」

間髪いれず追撃を叩き込み、戦艦を水底へ返す。長門とビスマルクもヲ級に狙いを定め、次々と沈めていく。

前衛の艦隊は第二艦隊と交戦中。だが、数の不利をものともせず、大和たちと渡り合う。

「ぐっ……敵艦隊もなかなかやるな……!」

戦艦水鬼の一撃に艤装を半分吹っ飛ばされる長門。

「大丈夫!?」

「あ、あぁ。致命傷ではないが……大和が吹っ飛ぶのも頷ける威力だな」

それを見て煙幕を張りながら撤退していく戦艦水鬼達。

「だが向こうのダメージも小さくないようだ」

戦艦水鬼の腕にはいくつもの着弾の痕。空母棲姫の艤装も少なからぬ損傷を受けている。

ここで逃せば再び体勢を立て直して戻ってくるだろう。泥沼の戦いである。

「あとは雪風たちの仕事だね」

艦載機を着艦させながら、隼鷹は無線を繋ぐ。

「第二艦隊各位、残敵を追撃、掃討だ! 逃すんじゃないよ!!」

「了解です! 砲雷撃戦、続行します!!」

163: 2015/05/18(月) 23:07:27.91 ID:K4fjJDNRo
闇に紛れて進む二つの影。その背後から強烈な光が差す。

「敵艦、発見しました!」

雪風の持つ探照灯が二隻の姿をくっきりと浮かび上がらせる。

「忌々しい……!!」

光源に向かって放たれる20インチ砲。轟音とともに光が消える。

「やったか……」

呟く戦艦水鬼。だが、その言葉を口に出した直後聞こえた言葉によってその思いを打ち消される。

「おっそーい!」

砲撃と同時に雪風はサーチライトを閉じ、島風と一緒に戦艦水鬼の懐まで飛び込んだのだ!

「行くよ、島風ちゃん!」

「任せて!」

二手に別れ、水鬼の腕に飛び乗り更に跳躍。艤装の二つの顔面目掛け魚雷をぶちまける!!

「GYAAAAAAAAAAAAAAA!!」

悶え苦しむ艤装。空母棲姫から引き離される。

空母棲姫は振り向くことなく進む。だが。

「夜偵、空母棲姫を捉えました」

「神通さん、足止めをお願い出来ますか?」

神通が頷くと同時に加速する妙高。夜偵の情報と熟練の見張妖精。闇の中でも迷うことなく目標に向かって突き進む。

後ろからの砲撃音。フレンドリーファイアを恐れぬ一見無謀とも思える乱射。だが、その弾道は空母棲姫の進路を的確に阻む。

「もう、降参してください!」

真後ろから聞こえる声。思わず振り向く空母棲姫。彼女が最後に見たものは、迷彩艤装の重巡洋艦と雷巡と見紛う数の数多の魚雷だった。

164: 2015/05/18(月) 23:08:04.19 ID:K4fjJDNRo
最後の足掻きとばかり暴れまわる戦艦水鬼。がむしゃらに振り回される拳に当たれば致命傷は免れ得ない。

そんな怪物と対峙するは白い服の重雷装巡洋艦二人。

「さて決めちゃいますか。大井っち、準備はいい?」

「えぇ、北上さん!」

言うや否や、互いの右手を繋ぎ、ぐるぐる回転し始める。速度が最高潮に達したその時、その手が離れ、大井が怪物の頭上を取る。

北上はその勢いのまま四肢に装備した魚雷を次々と放ち、大井も雨霰と魚雷を降らす。次々と爆発する魚雷。

全弾撃ち尽くした二人は砲を構える。北上は海面で、大井は空中で。

「ギッタギタにしてあげましょうか!」

「海の藻屑となりなさいな!」

着弾、大爆発。大井の宣言通り、戦艦水鬼は海の藻屑と消え去った。

165: 2015/05/18(月) 23:08:48.74 ID:K4fjJDNRo
次回予告!

「そういうわけで地中海まで打通できたよ!」
「ボンジョルノ! リットリオです!」

新たな戦力……!

「あれ、ローマが先に着てると思ったのですが」
「知らんぞ」

新たな難題……!

「かもです!」
「かもかも?」

新たなカモ……!


11th Operation of Western Final Episode ~ 地中海からの刺客!! ~

「ちょっと私のことは!?」
「多分出るよ、多分」

169: 2015/05/21(木) 22:38:27.88 ID:Jz7dONkfo
ぷかぷか丸改二。その舳先で提督は待っていた。艦娘が勝つ瞬間を。

遠くから響く轟音。程なくして空気が変わる。重苦しさは失せ、赤い空と黒い雲は青と白に変わる。

程なく入る無線。

『しれぇ、敵艦隊主力、撃滅しました!』

「よし、皆よくやった。残敵に注意し、帰投せよ」

無線を切る。そして周囲に誰もいないことを確認し、手を打ち合わせガッツポーズをとる。

「オラッシャァァァァァ!! 見たか猫吊るしめ! これが俺たちのチカラってやつよ!!」

「あなたの力じゃないでしょう」

後ろから冷や水を浴びせるが如き声。当の猫吊るしである。さっきまで影も形もなかったはずだが。

「まぁ、それはそうだがどっから出やがったこのストーカー紛い」

「あなたが呼べばいつでも来られる位置に」

「やっぱりストーカーじゃねーか!!」

170: 2015/05/21(木) 22:41:33.22 ID:Jz7dONkfo


11th Operation of Western Sea Final Episode ~ 地中海からの刺客!! ~


「そういうわけでステビア海の制海権を抑え、スエズ経由で地中海まで打通できました」

「これで交易も盛んになるか」

「それだけじゃないですよ」

そう言って意味深な笑みを浮かべる猫吊るし。

「どういうことだ?」

提督の疑問に返事をすることなく猫吊るしは緊急脱出用の救命艇に乗り込み、そのまま着水。モーターをフル回転させ、フルスピードで北に突っ走りだした。

「ちょっとイタリアいってきまーす」

という声を残して。

「……まぁ、ここからイタリアならだいぶかかるだろう。しばらくヤツの顔を見なくて済むなら清々するな」

ちょうど艦娘たちが入れ違いに戻ってくるのが見える。

「さ、リランカに戻って戦勝パーティーだ!」

171: 2015/05/21(木) 22:43:45.36 ID:Jz7dONkfo
リランカ島、臨時泊地。

埠頭には見慣れない少女が三人と、見慣れた顔が一つあった。

「おかえりー。遅かったね」

見慣れた顔は、そう、先ほど別れたばかりの猫吊るしだった。

「おかしいでしょ!? 何でお前がここにいるの!? イタリア行ったんじゃなかったの!?」

「イタリアへのポータルがないとは言ってないです」

「そーかいそーかいファッキン。で、何しにいったんだよ」

「まぁまぁその前に。新しい艦娘を紹介しますね」

猫吊るしが目を向けたほうには着物を着崩した黒髪の少女、あの二式大艇を軽々と持ち上げる明緑色の服を着た少女、
そして、いかにも色合いと艤装の形状からイタリアの戦艦と言わんばかりの栗毛の少女。

「雲龍型航空母艦、三番艦、葛城よ!」

「水上機母艦、秋津洲よ!」

「ボンジョルノ! ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦二番艦、リットリオです!」

「雲龍型の三番艦や秋津洲は聞いたことがあるからいいとしてヴィットリオ……ヴェネト?」

聞きなれないクラス。猫吊るしがドヤ顔で付け足す。

「大戦中のイタリアの主力戦艦ですね。海上打通の成功と引き換えにイタリア政府に艦娘設計許可貰って建造したわけですよ」

はた、と何か気づいたかのようにきょときょと左右を見回すリットリオ。

「ん、どうした?」

「えぇ、妹のローマが先に来てるはずなんですが」

「姉妹艦なら同じような艤装・服装してるはずだよな。帰投時には見当たらなかったが」

「まだステビア海を彷徨ってるのかしら。あんまり大きな声では言えないけど私たち遠洋航海向きじゃないし……」

そこまで聞いて提督は頭を抱える。

「探せというのか……」

そんな提督の袖を引っ張る猫吊るし。

「ん、なんだよ」

「探しに行くならついでにアンズ環礁の泊地の再建邪魔してください。あとろ号とかまだ残ってましたよね」

「全く、新人育成に艦娘探しに任務の消化に……あぁもう、休む暇もありゃしない!!」

172: 2015/05/21(木) 22:45:41.68 ID:Jz7dONkfo
しばらく後。提督たちは再びステビア海に来ていた。

「通商破壊部隊をベーグル湾に、秋津洲と軽空母数隻をキス島に。後はローマの捜索か……」

アンズ環礁近辺。規模は小さいものの、深海棲艦の回遊が見られる。

「全く、泊地水鬼がまた復活してやがる」

護衛の駆逐の合間をワ級が行き交い、再建の準備を整えている。

「あんまり交戦したくはないんだよなぁ」

「遠くから補給艦を狙うのはどうでしょう?」

意見を具申するリットリオ。

「そうだな、空母で爆撃すれば邪魔できるだろう。葛城、初仕事いけるか?」

「まっかせて! 航空母艦葛城、出撃するわ!」

「戦艦リットリオ、抜錨します!」

「えっ、おい、ちょっと?」

提督が止めるより早く、リットリオも水面に降り立ち、葛城に続いていった。


葛城が式紙を取り付けた矢を飛ばすと矢は烈風と流星改となり、編隊を組んで泊地へ飛んでいった。

リットリオも主砲斉射の準備に入る。

「38cmスケールの砲で届くわきゃねーだろ? 超長射程の大和砲ならともかく」

ぶつくさ言いながら遠眼鏡で泊地の方を見やる。葛城の流星改がワ級に雷撃を叩き込み、烈風が泊地水鬼の艦載機を追い回す。

「よしよし。……だがいくつか逃したか」

直後、戦艦の主砲発射音。そして、逃げていた補給船に大穴が開き、轟沈する。

音の出所を見ると、砲口から煙を吐くリットリオの姿。

「えぇ? あの距離でも届くの……? イタリア艦半端ねぇな……」

173: 2015/05/21(木) 22:48:28.33 ID:Jz7dONkfo
更に先に進むと、ル級とにらみ合っている、リットリオによく似た艤装をつけた一人の少女がいた。

「……んん? あれがローマか?」

よく見ると他にも深海棲艦が見受けられる。程なくして始まる砲撃戦。

「あれじゃ多勢に無勢だ。葛城、リットリオ、出撃だ!」

言うより早く、リットリオはぷかぷか丸から飛び出していた。

「ローマ、待っててね!」

続けて葛城も着物を翻し、水面に飛び降りる。すぐさま艦載機を飛ばし、リットリオを追う。

背後からの奇襲は想定外だったらしく、敵陣はあっさり崩れた。艦隊旗艦と思しきル級は後ろの敵を確認した隙に、ローマに一撃を浴びせられて海の底送りとなった。


ぷかぷか丸船内。一通り補給と修理を済ませた後、改めて挨拶をする。

「ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦四番艦、ローマです、よろしく。何? あまりジロジロ見ないでくださいね」

「……いや、何であんなところに? ポータルがあるならリランカまですぐだろ」

「目障りな爆撃機を沖に見つけて追いかけてたんだけど、見失った上に流されたのよ」

「爆撃機? ……あぁ泊地水鬼のか?」

「多分そうね。まぁ、姉さんたちと一緒に助けに来てくれたことは感謝するわ。Grazie」

「あ、あぁ。これからよろしくな」

174: 2015/05/21(木) 22:50:10.97 ID:Jz7dONkfo
リランカに戻ると、ビスマルクたち七人の艦娘が埠頭で待っていた。……七人? 今七人といったか?

ビスマルク、利根、筑摩、足柄、那智、隼鷹、そして夕雲型の制服を着た、おどおどした艦娘。確かに七人だ。

「新しい艦娘を見つけたというのか……!!」

「夕雲型駆逐艦、六番艦の高波です。あ、あの……頑張ります! ホントかもです!」

そう言ってぺこりと頭を下げる高波。

「ふふん、お帰りなさいアトミラール。私のこと、褒めてもいいのよ?」

ドヤ顔で胸を張るビスマルク。

「よくやったよくやった。ところでろ号」

その言葉に胸をそらしたままピシリ、と身体を硬直させる。

「8割だからあと1回か2回は行く必要があるな」

ビスマルクの代わりに答える那智。

「すまんが残り消化してきてくれ。そうしたら鎮守府戻って戦勝パーティーだ」

「了解だ。ほら行くぞビスマルク」

「ちょ、ちょっと待って艤装のアーム部分無理に引っ張らないであ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

後に残されるは提督と高波の二人のみ。

「……なんだか大変そうかも、です」

「まぁそのうち慣れるさ」

175: 2015/05/21(木) 22:52:31.40 ID:Jz7dONkfo
そして、大戦は終結し、日常へ回帰する。再び深海棲艦の活動が活発になったときのために、練度を上げ、資材を貯め、装備を調えるのだ。

鎮守府、執務室。

「この椅子に座るのも久方ぶりだな……」

「しれぇ、資料お持ちしました」

「ん、ありがと」

雪風から資料を受け取る。

「また新しい遠征か……よし、高波と秋津洲を送るか。他に送るのは……」

「了解しました!」

雪風に手早く指示を伝え、退室するのを見送る。

「さて、次に連中が湧くのはどこになるやら」

窓越しに海を見やる。穏やかな海。だが深海棲艦は神出鬼没。提督と艦娘の戦いはまだまだ終わらない……。


11th Operation of Western Sea ~~ The End ~~

179: 2015/05/22(金) 22:36:52.76 ID:mBxiBVSXo
――― 悲しい物語だぜ ―――

雲龍「新しい機体は、やっぱり昂るわね」

天城「烈風……眩しい翼……あっ、自分の艦載機なのに、見惚れちゃいました!」

葛城「そっかそっか、これが流星改ね。……んでもってこれが烈風……いいじゃない!」

提督「姉妹揃って艦載機好き過ぎだろ……」

葛城「私たち、前世じゃ艦載機飛ばすことなんてなかったんだから。空母なのによ?」

提督「それもそうか」

葛城「だからこういうの憧れだったのよねぇ」

~~~~~~

キス島沖。いつもの場所

葛城「敵発見っ! 全高射砲は……ちっ違う、回せー! 攻撃隊、直掩隊、発艦準備!」

提督「艦載機飛ばすより先に高角砲に手が伸びてるじゃねーか!!」

葛城「いや、ほら、つい癖で」

187: 2015/05/25(月) 22:32:38.24 ID:RI9iPKmHo
――― はしより重いものはメソッド ―――

提督「秋津洲は水上機母艦なのか……」

秋津洲「そう、大型飛行艇の運用支援や、洋上補給のために建造された、飛行艇母艦!」

提督「とりあえず甲標的つけてキス島沖に」

秋津洲「甲標的母艦じゃないから装備できないかも」

提督「ええー。じゃあ大発載せて遠征に」

秋津洲「大艇ちゃんより重いもの持ったことないから大発とかは無理かもー」

提督「……」

~~~~~~

数日前

提督「これが二式大艇か……。なんか大型爆撃機を落としたとか言う逸話があるとかなんとかかんとか」

千歳「提督、物凄く嫌な予感がするのですが」

提督「たしか水上機母艦に積むんだったな。装備しようか」

千歳「え、でもこの大きさはちょっと」

提督「大丈夫大丈夫、鳳翔さんでも烈風とか積めるし」ドサッ

千歳「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」グシャリ

提督「あるぇー?」


この後千代田に脛を蹴られた。脚部艤装つきで。

~~~~~~

提督「重い軽いで言うなら二式大艇の方が重いだろオラッ!!」

秋津洲「無理なものは無理かもー!!」

191: 2015/05/26(火) 22:46:19.73 ID:Kug7iIH/o
――― 危ないのはどっちだ ―――

ある日の昼下がり。鎮守府近くの警備任務からの帰途中。

春雨「あれ? あんなところに夕立姉さんが。危なくないですか?」

春雨が指差す先には背部艤装のみを付けた夕立。

村雨「あぁ、いつものアレね。春雨はアレ見るの確か初めてよね?」

春雨「?」

春雨が疑問に思っていると夕立からやや離れたところに深海棲艦が浮上する。駆逐イ級だ。

春雨「! 夕立姉さん、危ない!!」

春雨の叫びとイ級の砲撃はほぼ同時だった。

夕立のいたところに水柱が立つ。だが、水柱の中に夕立の姿は無い。

夕立「さぁ、素敵なパーティーしましょ?」

彼女は既にイ級の背後に回っていた。そして殴る蹴るの暴行を加えていく。

春雨「うわぁ……」

村雨「砲撃だけでなく近接格闘も取り入れるべきって提督の案で始まったんだけど……夕立はちょっとやりすぎかなーって気も……」

そうこうしているうちにイ級は海の藻屑と成り果てていた。

~~~~~~

鎮守府、埠頭。

白露「白露いっちばーん! ……あれ、村雨と春雨は?」

195: 2015/05/27(水) 22:21:58.51 ID:LGV2+ZDWo
――― 中破時限定 ―――

鎮守府近海の深海棲艦掃討をしていた頃の話。

朧「艦隊、戻りました……」

提督「中破か。まぁしょうがない。戻ってドックに……ん?」

朧「どうしたんですか?」

提督「太ももやふくらはぎにヒトデがついてるぞ」

朧「これはつけてるんです」

提督「何でだよ」

朧「これで傷口塞いでるんです。絆創膏みたいなものだから無闇にはがしたりしないでくださいね?」

提督「あ、あぁなるほど。じゃ、早くドックいってこい」

朧「はい。失礼します」


提督「……あれ吸血ヒトデだったりしない?」

196: 2015/05/27(水) 22:23:08.59 ID:LGV2+ZDWo

199: 2015/05/27(水) 23:16:38.83 ID:Exqo9YQ5O
おつです
ここで安価取れたの初めてww

引用: 【艦これ】泣き虫雪風と釣り人提督 Part3