1: 2013/10/30(水) 21:27:55 ID:71j5jSnU
その日、彼は眉根を寄せ、
ひたすらに押し黙っていた。
何処の誰から見ても、
明らかに不機嫌そうな顔をしていたように思う。
それは彼の上官、まぁつまるところ、我が兵団の団長殿から、
“人類の英雄”は今回の作戦で直接の戦闘には参加せず、
目立った行動を控えるように、との命を受けたからだ。
――もちろん、機嫌を損ねる気持ちは分かる。
仲間が命を賭して戦おうとしているさなか、
自分だけが何もせずじっと耐えていなければならないというのは
心臓を捧げた兵士として、もどかしいことこの上ない。
2: 2013/10/30(水) 21:29:58 ID:71j5jSnU
だが、脚に負った怪我を治さなければ
どうにもしようがない、ということも事実。
つまり、本人の希望がどうあるにせよ、
命令通りにしているしか無いのだ。
そんな複雑に織り交ざった感情が彼の面様から顕著に見てとれ、
他の者などは見ぬ振りをし、なるべく近づかないようにしていた。
丁度、作戦を実行に移すための準備云々で
誰にもそれほどの余裕が無かっただけなのかもしれないが。
とにかく、彼はその日一人で、
どうにも気が塞いでいるように見えたので
作戦準備完了の報告がてら、彼の部屋を訪れることにした。
3: 2013/10/30(水) 21:31:48 ID:71j5jSnU
※リヴァハンです
主に2人が喋ってるだけの短い話
タイトルは進撃サントラから
ネタバレは特にありませんが原作に寄った話です
4: 2013/10/30(水) 21:33:51 ID:71j5jSnU
「何か用か」
「不本意そうな顔してるね」
「……何の話だ」
「英雄って呼ばれることにだよ」
「…………」
「前は英雄といえば調査兵団そのものを指す言葉だったけど…」
「今では、貴方を指す代名詞だ」
「………」
5: 2013/10/30(水) 21:35:18 ID:71j5jSnU
「………英雄なら、」
「うん?」
「……こんなところで、引きこもってることなんて無いだろう」
「あはは、まぁ英雄だって怪我もするさ」
「………」
「ショックだった?まさかエルヴィンに言われるなんてーって」
「………そんなんじゃねぇよ」
「へぇ?」
6: 2013/10/30(水) 21:36:36 ID:71j5jSnU
「誰が持ち上げようと…俺は権力を持った王政の人間でも無ければ、巨人でも無い」
「人一人で出来る事なんて限られてるし、まして、氏んだ仲間が帰るわけでも無いだろう」
「…ま、確かにね」
「…………だから、それについては気乗りしねぇだけだ」
「ふーん」
「……じゃあ、重いのかな?」
「…重い?」
「うん」
7: 2013/10/30(水) 21:37:39 ID:71j5jSnU
「貴方は、民衆からの期待も希望も、氏んでいった仲間達が託していった願いも」
「全てを背負い込もうとするでしょう」
「………」
「重圧に押しつぶされてしまわないか心配だよ」
「………」
「…だからね、貴方が怪我してちょっとほっとしてるんだ」
「はぁ?」
「きっとエルヴィンもそうだと思うよ」
8: 2013/10/30(水) 21:39:29 ID:71j5jSnU
「そりゃあ、人類の進撃には痛手だけどさ」
「貴方には少し……休息が必要だと思うから」
「………心臓を捧げた兵士とは思えねぇ発言だな」
「あはは、口外禁止だからね」
「………」
「まっそんなわけだから、大人しくじっとしていてくれ」
「………どうだろうな」
「っちょ、ほんと勘弁してよ!?」
9: 2013/10/30(水) 21:40:38 ID:71j5jSnU
「…なら、見張っておけ」
「……私分隊長だから、リヴァイのことだけ見てらんないんだけど?」
「…だったら、可能になるよう知恵を絞れ」
「無茶言うなぁ…」
「………」
「……もしかして、一人になるのが寂しいの?」
「…………馬鹿言え」
「ブフッ」
10: 2013/10/30(水) 21:44:00 ID:71j5jSnU
「…………あ、そうだ」
「何だ」
「じゃあ私が、貴方の英雄になってあげるよ!」
「はぁ?」
「貴方が辛い時は、出来うる限りで傍にいよう」
「絶望の底にいたら、救い出して、希望の光を見せよう」
「……」
「唯一無二の貴方の、英雄にさ」
11: 2013/10/30(水) 21:48:31 ID:71j5jSnU
「どうかな?」
「………告白か?」
「ブフオォ」
「…汚ぇな、唾飛ばすんじゃねぇよ」
「ゲホッゴホッ……そんなんじゃねーっつーの」
「…ほう、そうか?」
「言っておくけど、貴方とどうこうなるつもりはないからね」
「……」
12: 2013/10/30(水) 21:50:18 ID:71j5jSnU
「なに~期待させちゃった?」
「……別に」
「分かってるでしょ」
「私達に選択肢なんて、無い」
「………」
「…今は、心臓を捧げて」
「自分達に出来る事をやるだけだよ」
「……あぁ」
13: 2013/10/30(水) 21:51:26 ID:71j5jSnU
「…ねぇリヴァイ」
「何だ」
「いつか…」
「いつの日か、さ」
「巨人が居なくなって、平和になって」
「その時まで……生きていられたら」
「……」
「私だけの英雄になってよ」
14: 2013/10/30(水) 21:53:03 ID:71j5jSnU
「………告白か?」
「うん」
「……チッ」
「舌打ち!?」
「…………不本意だが、」
「その時は要求を飲んでやる」
「あっはは、かわいくねー」
.
15: 2013/10/30(水) 21:54:33 ID:71j5jSnU
「そろそろ時間かな」
「そうだな」
「…必ず、女型を捕えてみせるよ」
「………あぁ、頼む」
――じゃあ、行ってくる。
終わり
16: 2013/10/30(水) 21:57:35 ID:71j5jSnU
ものすごく短くてあれですが、以上で終わりとなります
今朝The Reluctant Heroesを聴いていて思いついたものを形にしてみました
目を通してくださった方がいるか分かりませんが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました
今朝The Reluctant Heroesを聴いていて思いついたものを形にしてみました
目を通してくださった方がいるか分かりませんが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました
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