421: 2014/06/11(水) 12:35:49.55 ID:L9AmRcih0


前回:提督「つれづれなるままに」【その4】

【艦Core】

※タイトル通り
※ネタ


「提督!新しい兵装の開発に成功したわ!今までにない画期的なものなの!」

「慌ててどうした夕張……待て、新兵装、だと?」

「ええ、まあ兵装というよりは、移動補助ユニットといったほうが正確かしら?」

「移動補助?話が見えない、詳しい説明を」

「えっと、現状、私たち艦隊の移動は海流の劇的な変化や羅針盤の不調等のトラブルで思うように行かないじゃない?」

「たしかにな。特に敵本陣の前でそれがあると、作戦が一気に崩壊する…忌々しい」

「そこで、このユニットの出番です!!」

「このユニットは、敵本陣に対し超高速で接近、その懐に入り込むことでこちらの損害を最小限に抑えつつ…」

「かつ、敵に反撃の余地を与えないまま奇襲し、作戦完遂をすることをコンセプトに作られています」

「ほう…コンセプト自体は非常に素晴らしいな、続けろ」


「はい、コレは艦娘の艤装の上からさらに装着し、背部に取り付ける形で運用します」

「簡単に言ってしまえば、「空中移動用の超大型ロケットブースター」なの」

「…何だと?いま、何と?」


「え、「空中移動用の超大型ロケットブースター」?」


「……まあ、最後まで聞こう…」

「では…、これを使用した際の速度は、艤装が重い戦艦クラスでも時速2000キロを超え…」

「艤装が比較的軽い駆逐艦クラスでは、計算上4000キロも夢じゃないと「待て」…」

「あ、ノット換算のほうがわかりやすかったですよね、失礼し「違う、そうじゃない」」

「色々指摘したいところはあるが、そもそも、そんな速度で艦娘たちは大丈夫なのか」
海の画集 -「艦これ」公式イラスト集-

422: 2014/06/11(水) 12:38:56.14 ID:L9AmRcih0

「はい、榛名は大丈夫でした……うん、あれは大丈夫だったんだ、多分…。沈んでないし…」

「改良の余地は、そりゃ、ちょっとは、ちょーっとは、あったけど…」


(榛名で、試したのか…さっき会ったときやけに目が虚ろだったのは…そういう…)

(…あとで間宮にでも連れて行ってやろう…)


「…まあ、一応の安全性はあると、そう考えていいんだな?」

「ええ、そこは心配しないで…ただ…」

「ただ?」

「…運用コストがかなりかかるのと、基本使い捨て前提だから、開発コストも馬鹿にならないってこと、かな…」

「…一応聞こう、具体的には…?」

「……ユニット一機につき、燃料、鋼材が7000に、ボーキサイトが4500くらい…かな…?」

「…大型艦建造の間違いではなく、あくまで、開発なのだな?」

「まあ、大型艦建造ドックを一部使わせてもらってるけど、開発…よ?」

「あ、でも弾薬はほとんど使用しないの!たったの10で「却下だ」」



「ええー、かっこいいじゃない!空を舞う艦娘、繰り広げられる砲撃戦!」

「ダメだ、運用・開発コストがシャレにならない、資材が枯渇する」

「せっかく、「ヴァンガードオーバーブースト」って名前まで付けたのにな…」











「……待てよ…夕張、お前、さっき榛名で試した…そう、言ったな?」

「あ…」

「つまり、それだけ資材が吹き飛んだと、しかも使い捨てだから物も残ってないと…」

「そういう、認識で、いいんだな?」

「は、はい…」






「お前には、今から山程説教がある……楽しみだな…夕張ぃ…」

「…ご、ごめん、なさい…許して………ひぃ!」


425: 2014/06/11(水) 18:08:11.67 ID:L9AmRcih0

【今夜はあなたと二人っきりで】

(…こうやって、ゆっくりと酒を飲むのは久しぶりだな…)

(いい、月だ…)

「…あれ、提督さん?こんな夜中になんで、眠くないの?」

「…瑞鶴?お前こそなぜここに?」

「え、ちょっとお手洗……わ、私がここにいる理由なんか、どうだっていじゃない!」

「なんとなく起きて、その、人の気配がしたから…気になっただけです!」

「…それで、こんな夜中に縁側で、一人で何を……お酒と、お漬物?」

「ああ、ちょっとな」

「え、ずるっ…あ、これ、十四代、龍の落とし子?!」

「知っているのか?」

「う、うん。ていうか、これ、高いやつじゃない?」

「それなりに値は張るな。鳳翔のつてで、個人的に購入した奴だが…」

「…」

「…一人で飲むのも飽きてきた、一緒に飲んでくれないか?」

「え、いいの!?」

「そんな物欲しそうな目で見られても、な」

「なっ、そんな目で見てません!ちょっと、なに笑ってるの?!」

426: 2014/06/11(水) 18:11:18.80 ID:L9AmRcih0

「…こういうとき、何て言えばいいのか…」

「特に乾杯するものもない、普通に飲めばいい。そんな、堅苦しく考えるな」

「そう?じゃあ、頂きます………あ、おいしい…」

「だろう?たまにしか飲めない分、飲むときくらい良いものをと思ってな」

「ふふ…、こんなの千歳や隼鷹あたりにばれたら大変だね」

「…やめてくれ、想像したら、頭が痛くなってきた」

「これは、私と瑞鶴だけの秘密だ、口外を禁ずる…いいな?」

「あ、私と、提督さんだけの秘密?…なんか、いいかも……うーん、でも、条件があります」

「なんだ?」

「またこうやって飲むときは、私を誘ってほしい、かな?」

「…次の作戦行動に支障が出ない範囲でな」

「やった♪」


427: 2014/06/11(水) 18:19:26.15 ID:L9AmRcih0

(…なんか、いい夜だな)

(こうして提督さんと二人っきりで、月を見ながら、おいしいお酒におつまみがあって…)

(特に会話はないけれど…全然嫌じゃないっていうか、むしろ心地いいというか…)

(こんなとき「月が綺麗ですね」なんて言われちゃったら、もう、ね…)

(ま、提督さんのことだから…そんなの、ない…か……?)

(ん…今日、出撃したし…疲れてるのかな…)

(なんだか…ねむ…い…)




「瑞鶴?…寝かけてるな……危なっかしい…」


(いくらここの最高責任者とはいえ、夜中に瑞鶴の部屋に入るのも……)

(仕方ない…私の部屋に運ぶか……よっと…)

(…しかし、こうして抱えると、こんな細い体で、よくやってくれる)

(いつも、ありがとう、瑞鶴…)








(まったく、近くに私室があってよかった…軽いとはいえ、抱え続けるのは面倒だ…)

(布団に…寝か…せ、て…)



(……酒でほのかに上気した頬、濡れた唇、少しはだけた寝間着……柔らかな、肢体…)

(…この場には、誰も……)


















「んっ…提督、さん…」





(!!…今、何を考えた?……何を、しようとした?………色情魔か、私は!!)

(久しぶりに飲んだからか…大分、酔っているな……クソっ……)



「……今日は…月が、綺麗だな……瑞鶴…」




432: 2014/06/12(木) 01:32:35.68 ID:CxuHWmO/0

【陽だまりにて】

「…」

「…んー……すんすん…ん?…」

「匂いを嗅ぐな、千代田…」

「いや、なんだか、提督の膝枕って何だか落ちつくんだよね…」

「なんでだろって思って、匂いかなって?」

「思っても嗅ぐな…犬か、お前は…」

「えー、ダメだった?」

「むしろ、なぜいいと思った。お前は、私が膝枕されたら千歳の匂いを嗅いでいいとでも?」

「えっ!?それはダメ!!千歳お姉の膝枕ってだけでも許せないのに、そのうえ匂いなんて!」

「っていうか、女性の匂い嗅ぎたいとか、変O!!」

「…ついさっきの自分の行動を思い出せ」

「え?ああ、あれはいいの。提督が千歳お姉に膝枕してもらった罰でもあるんだから」

「…………そうか…」

433: 2014/06/12(木) 01:37:44.25 ID:CxuHWmO/0

「…ねえ提督?」

「何だ?」

「んー」

「頭を擦り付けてどうした?」

「んんー!!」

「?」

「もう、頭撫でてってば!」

「口で言え…」

「そう言いつつも、ちゃんと撫でてくれるの嬉しいな…痛い!」

「調子に乗るな」

「うぅー、おでこにペシッって…酷い!」

「罰としてもう30分膝枕延長なんだから!」

「執務が残っているんだがな」

「今日片づける書類そんなにないし、大丈夫!」

「それに、優秀な秘書艦が隣に居ないと仕事が捗らないし、ね?」

「優秀な秘書艦?……ああ、先週の千歳のことか」

「千歳お姉は優秀だけど…今週の秘書艦が誰か忘れていませんかー?」

「記憶にないな…」

「…一時間に延長します」

「流石に長くないか?」

「いいんです!むしろ、休んであげてるんですから!」

「…光栄だよ」



「ね、提督?」

「何だ、千代田?」

「平和だね…」

「そうだな」

「こんな時が、ずっと続くといいね」

「ああ…」



437: 2014/06/12(木) 17:43:44.57 ID:7s5EM1qcO

【これからも、いつ何処までも】

「提督、提督?…何処に居るんだろう…」

「もうそろそろ休憩終わりにして、午後の執務をしないと…あ…」

(居た。もう…縁側で一休みとか言って、ゆっくりしす、ぎ…あれ?寝てる…のかな?)

(ふふ、船なんか漕いじゃって…危なっかしいですよ?)

(仕方ない…頭を、こう…よし、こんな感じかな?)

(頭を動かしても反応がない…そんなに、眠いんですね…お疲れ様です…)






「…いつも、私達のために、ありがとうございます、提督…」

「思えば、提督とは結構長く居ますね。もう1年以上、でしょうか…」

「初めは、色々ご迷惑をお掛けしました」

「正規空母だから仕方ないとはいえ、資材もたくさん使わせちゃいましたね、ごめんなさい」

「…なのに、思う様な戦果も出せず、私、なんでここに居るんだろうって…」

「なにが一航戦だって、ただのお荷物じゃないかって、そう、思ってました」

「…そのことで、提督と喧嘩をしたこともありましたね…」

「…でも、提督は自分の作戦立案や運用法が悪いって、お前のせいじゃないって、そう言い続けてくれました…」




「…っ…嬉しかった…」




「…私が今こうして胸を張って、提督の下、第一艦隊旗艦をやれているのも、全部、提督のおかげです…」

「本当に、今までありがとうございました…」

「そしてこれからも、できれば、あなたの下で戦いたいです」

「……この戦いが終わった後も、私は…なんて、気が、早過ぎますかね?」

「提督、提督?…私は、赤城は、あなたのことをお慕い申し上げております」

「…上官に抱く感情として過ぎたものなのは、理解しています」

「ですから、私を選んでくれなくても、構いません」

「…ですが、ですが…できれば、これからも…ずっと…」

「あなたのおそばに、居たいです…」

「…我儘で、卑怯ですよね…寝ているあなたに、こんな…」

438: 2014/06/12(木) 17:48:35.12 ID:7s5EM1qcO











「…ありがとう、赤城。お前の気持ちは、とても嬉しいよ」

「…あっ、お、起きてらっしゃったんですか?!」

「赤城…」

「は、はい」

「…こんな不甲斐ない私でも、お前は着いて来てくれるか?」

「この先、ずっと…」

「この戦いが、終わった後も、ずっと…」

「…あ…っ…はいっ……お願い、します…」

「…泣かせる気は、なかったんだがな…」

「だって、こんなっ…ず、狡いです、いきなり、こんな…」

「赤城…」

「…はい」

「これからも、よろしく頼む」

「はい……」




いつまでも、何処までも…一緒に…



458: 2014/06/13(金) 18:34:29.00 ID:gBapBGtH0

【口ではそう言いつつも】

(最近、ネタが…ない。いえ、別に書かなくても何の支障もないのですが…)

(ただそれだと「青葉」の名が泣く…我、青葉、筆を執らずして何とする…)

(でも、先立つものがなければ筆が進まないのもまた事実)

(深海棲艦との戦い…は、正直書いても、実体験に勝る物はないし…)

(事件、事故にしたって、それこそみんな知ってるし…恋愛関係…、恋愛、したいですよねぇ)

(うーん、なにか、なにか面白いもの…)

(鎮守の皆さんが興味をもって、かつ、読んで面白いと思うネタ……あ!そうだ!!)






「というわけで、明日一日、独占取材を行いたいんですが、よろしいですか?」

「……話が見えないが、どうせロクなことならないだろう。却下だ」

「えぇー、お願いします。それに、鎮守府の皆さんに提督のことを知ってもらう、いい機会ですよ?」

「普段知らない提督の素顔を知り、親しみをもってもらうことで芽生える、美しい信頼関係!」

「固い信頼関係の下団結したわが艦隊は、敵をバッタバッタとなぎ倒し、破竹の勢いで勝利をものに!」

「どうです、興味「ないな」…えぇー」

「信頼関係が重要なのはもっともだが、それはもうすでにある。…少なくとも、私はそう考えている」

「それに、最悪、こちらの指示に従うだけの上下関係があればいい。私たちは、あくまで軍なのだからな」

「下手な情など、かえって、作戦行動に支障をきたすだけだ」

「…なにか、異論は?」

「……イエ、ナンニモ アリマセン」


(さすが提督、にべもないですね…フフ、怖い…)

(でも、ここであきらめるわけにはいきません!幸い明日は提督も休暇だったはず…)



(青葉、強行取材、しちゃいます!)

459: 2014/06/13(金) 18:40:29.70 ID:gBapBGtH0
(ふふ、この青葉、取材のためなら早起きしても眠くありません!…ふぁああ、っといけないいけない)

(提督の私室はここですね…ちょっと覗かせてもらいますよー…あれ?居ない?)

(え、こんな朝早くからいったいどこに!?まさか、鎮守府の誰かと朝帰りコースですか!)

(とにかく探してみましょう)


(とはいえ、いったいどこに…ん、何でしょうこの音……弓道場?)

(…あ、居た!提督、弓道に嗜みがあったんですね。知らなかった…)

(そういえば空母や軽空母の方々は、配属されてからかなり早い段階で提督と親しげになっていましたが…)

(なるほど、そういうことだったんですね)




(朝食の時間ですね。まあ、いつものことながらみなさん食堂好きですね、人が多い多い)

(青葉も、この食堂、美味しくて好きですけど。さて、提督はっと…)

(あー、駆逐艦の子たちが周りに、何でしょう、子沢山、隠れ子煩悩なお父さんって感じですね)

(物言いはちょっときついとこありますが、なんだかんだやさしいところありますからねえ)

(この前、遠征帰りの駆逐艦たちが暑さでばててるのを見て、アイスとジュース、鳳翔さんを通して差入れてましたし)

(まあ、鳳翔さんも鳳翔さんで、そのことこっそり教えちゃいましたからね)

(…満潮も、見てないで素直に入ればいいのに…雷なんて、おお、もう…これは…)



(さて朝食も終わりこれからが本番!普段見せない休暇時だけの素顔、青葉、暴いちゃいます!)

(ってあれ、どこに行くかと思いきや…資料閲覧室…ですか?執務ないのに?)

(あれは総図に航洋図に、海流図、潮流図などなど…え?まさか…コレって…)

(海戦術書に、あれは、敵深海棲艦の記録ファイルですね…うわあ…)

(これ完全に次の作戦立案じゃないですか…え?今日、提督は休暇のはずでは…)

(あ…霧島さんと何か話してますね…後でインタビューしてみましょう!)


「霧島さん!」

「あら、青葉じゃない?どうしたの?」

「いえ、先ほど、提督と何を話してたのか、少し取材をですね…」

「え、ああ、別に、艦隊の皆の様子とか、兵装の整備はちゃんとしてあるかとか…」

「なにか不平不満は挙がってないかとか…そんなことくらいね」

「他には?」

「うーん、特に何も?」

「ああ、そうですか……あ、霧島さんありがとうございました」

「ええ、それじゃ」


(…その後も、ずっと資料閲覧室にこもりきり…昼食はまあいろんな人とそれなりの会話…)

(少し縁側で休憩して、鎮守府の周りを散歩して…また籠って…)

(つまらない…特にこれと言って、何もない。というか、今日提督は本当に休暇何ですか?)

(いつもより恰好がラフなだけで、やることはほとんど変わらないし、艦隊の指揮をしないくらいですか?)

(こうなったら、直接!!)



460: 2014/06/13(金) 18:43:46.00 ID:gBapBGtH0

「…流石に、目が疲れた…今日はこれくらいにして」

「提督ー、ちょっと取材、よろしいですか?」

「……お前も、物好きだな」

「きょーしゅくです!」

「まあ、いい、なにが聞きたい?」

「おお、素直に答えてくれるとは…では早速…」


「今日一日、ここに籠りきりのご様子でしたが、今日、提督は休暇なのでは?」

「休暇だが?」

「…え、だって、この机に広がってるのどう考えたって…」

「休暇をどう使おうが私の勝手だ」

「それは、そうなんですけど…こう肩の力を抜いてというか…何か別のことしないんですか?」

「…そうだな…私の作戦指揮にミスがあれば、それで被害を被るのはお前たちだ」

「私は戦場に出れず、安全な場所から偉そうに指示することしかできないからな…」

「なら、作戦指揮だけでもせめて、と、そう考えてるだけだ」


「…なるほど…そういうことでしたか。ふーん…そうでしたかぁ」

「なんだ、いきなりニヤニヤと…薄気味悪い…」

「ちょ、薄気味悪いとは失礼な!」

「じゃなくて、提督、昨日はあんなこと言ってたのになんだかんだ私達のこと考えてるんですね」

「もしかして、これがツンデレというやつですか!!」

「…くだらない事を言うなよ青葉……」

「そうだな、今度の通商破壊作戦、本来なら4隻でやるはずだったが…」

「お前の実力なら、単騎でも行けそうだな?」

「え、いや、それは、ご遠慮したいですね…はい…」

「あ、も、もう取材は結構ですので!失礼しました!」



(…うーん、結局、今日一日通してわかったことは、提督が仕事人間なだけってことで…)

(つまらないですね、ネタとしては、インパクトに欠けます…)

(でも、なんだかんだ言って、提督はやっぱり私達の提督でした。信頼できる、いい上官でしたね。)


(ま、今日はそのことが再確認できただけでも良しとしましょうか!)


(これからも、艦隊の指揮、おまかせしますよ、提督?)

468: 2014/06/14(土) 01:28:09.53 ID:weIK9hoP0

【蜂蜜色の月】

「ゴーヤ!ねえゴーヤ!すごいの、今日すごいのね!」

「え、何がなのぉ?もうゴーヤ眠いからお休みの時間…でち」

「いいから屋上行くのー!」

「えー、ちょっと、イク、ひっぱらないでぇ」




「さあ、見るといいのね!」

「あ、満月!綺麗だね。でも、何が凄いの?」

「今日は、満月と、ハニームーンと、13日の金曜日が重なる日、これって数十年に一度の出来事らしいのね!」

「おおー、数十年に一度!すごい!」

「でも、13日の金曜日は確かホラー映画がもとだったのは覚えてるんだけど…」

「ハニームーンって、何?」




「えっ…ご、ゴーヤってばおりこうさんじゃないのね!…ハニームーンっていうのは、えーっと…」

「あ、あの、ハニーっていうくらいだから、そ、そう!月の表面が甘くなる日なの!」

「本当に!おいしそうだなー。でも、確かにお月様がはちみつ色してるね。とっても綺麗でち!」

「うん…綺麗なのね…」

「…いつか、行ってみたいなぁ」

「行ってみたい、のね…」



472: 2014/06/14(土) 14:41:44.43 ID:weIK9hoP0

【彼女の疑惑】

「提督、提督よ!おるか!礼を言いに来たぞ!」

「利根か、どうした。…なるほど、それがお前の改二か」

「うむ、提督の働きが認められたおかげで、こうして吾輩もついに改二!礼を言うぞ、提督」

「言葉は嬉しいが、それはお前の努力の成果だ。私はただ手助けをしたに過ぎないよ」

「ふふ、また謙遜を。まあ、そんなところもお主らしいがの」

「そうじゃ、どうせなら、改二になった吾輩をもっと見てくれ!」

「吾輩のこの姿は、お主と吾輩の今までの証だからな!」





(子供らしくはしゃいで、本当に嬉しそうだ。艦娘としての実力が上に評価されたこともだろうが…)

(何より、新しい服装になったことが嬉しいようだな。利根も、口調は古風だが年頃の女性ということか)


(…上着は、今までのより、より洋風なアレンジだが、軍服らしく少しカッチリとしているな)

(赤いリボンタイが、女性らしいアクセントになっている)


(それに対しスカートは…スカート、は……これ…は…)

(チャイナドレスのようなもの、と言えばいいのか?…スリットがかなり深い…)

(…気のせいか?腰骨が、見えた気が、いや、見間違いじゃない…)

(まさか…いや、利根に限って、そんな…)

(コレは、指摘すべき、か…?)

(……大勢の前で指摘されて騒ぎになるより、二人きりの今言ったほうが利根のため…か?)

473: 2014/06/14(土) 14:45:27.61 ID:weIK9hoP0

「利根」

「おお、なんじゃ提督?」

「その服装、とてもよく似あってるぞ」

「うむ、そうじゃろうそうじゃろう?でもな、何も服装だけではない、艦娘としての能力も格段に上がっておる!」

「何より誇れるのが、重巡航巡の中でもトップクラスの索敵能力と打たれ強さかの?」


(…確かに改装設計図にはそうあった…、服装を見る限り、にわかに信じがたいが…)

(これが、回避性能ならまだわかる…装甲と耐久性?冗談だろう?)


「む?どうかしたのか提督…そ、その、見てくれとは言ったが…」

「そんなに熱い眼差しでじっくり見られると…吾輩も…ちと、恥ずかしい…」

「ああ、すまない。ところで利根、その、一つ、質問がある…」

「何じゃ提督?」

「…少々スカート部分のスリットが深いように思えるんだが、その、利根は、気にならないのか?」

「これか?足が動かしやすくてとてもいいと思っているが…変かの?」

「いや、変ではない。利根が気にしないのであれば、それでいい」

「…引っかかる言い方をするの?本音を話してくれ…吾輩とお主の仲ではないか…」

「隠し事は、して欲しくない…」

「………、そう、だな。…では、単刀直入に聞こう」



「下着は、はいていないのか?」




474: 2014/06/14(土) 14:49:53.15 ID:weIK9hoP0

「なっ、な、何をいきなり!そ、そんな、破廉恥な!」

「それに、吾輩は痴女ではない!下着くらいはいておる!断じて違うのじゃ!」

「いや、スリットから腰骨が見えていたからな…」

「そ、そこまで言うならいいじゃろう!証拠を見せてくれる!……うぅ…」

「いったい何を…っ…」


(…恥辱にまみれた、涙目の利根が、スカートをゆっくりたくし上げて…いや待て、この状況…)




(誰かに見られようものなら「ご主人様ー?頼まれた資料をお持ち……えっ?」……まあ、そうなる、な)



「…とりあえず、落ち着いてくれ、やましいことは、一切、ない。断言する。」

「そうだな、まずは………弁解を…させてくれ…」


479: 2014/06/15(日) 03:03:00.80 ID:CNSgQAXH0

【狼の矜持】

「十門の主砲は、伊達じゃないのよ!!」

(流石足柄姉さん、気迫が違うなあ…演習にも全力で、かっこいい…あ!)

「足柄姉さん!左舷、攻撃来てます!避けて!」

「え?…んにゃー!?」

「ね、ねえさーん!!」



(ちっくしょう、無傷で行けると思ったのに…最後の最後で、あんな失態…)

「足柄姉さん、大丈夫?」

「え?ああ、羽黒か…ええ、大丈夫よ。ごめんなさい、心配かけちゃって」

「あ、ううん、そんな……ねえ、足柄姉さん、体調でも悪いの?」

「普段ならあんな攻撃、避けられたのに…」

「あ…えっと、ちょっとよそ見しちゃって、あははは…」

「もう!演習だからよかったものの…気をつけてくださいね?」

「ええ、ありがとう羽黒」



(…そう、ここ最近、動きのキレが悪い。移動にしても、回避にしても、なにかもたつく)

(原因は…多分これ。ええ、わかってる。でも、見たくないわ…この瞬間は、一番嫌い!…でも…)

(ええい、足柄!何をちんたらやっているの!勇気を出して、いざ!!)



「きゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」



(……ああ…なんてこと、そんな、じょ、冗談じゃないわ…)

(この私が、餓えた狼とも称されたこの私が…)

([ピー]kgも体重が増えてるなんて!!)

(そういえば最近普段の食事以外にも鳳翔さんのところで酒を飲んでおつまみ食べて…)

(極め付けは間宮さんの甘味!!……食べ過ぎね…明らかに原因はこれだわ…)

(明日から…ダイエット…しよう…)


480: 2014/06/15(日) 03:07:16.83 ID:CNSgQAXH0



「さて、と、ダイエットの基本は適度な食事に適切な運動。運動といえば、走り込みよね」

(朝食までのあいだ、鎮守府周辺をとにかく走りまくってやるんだから!)

<あしがらさーん!!

(ん?この声…)

「あら、長良じゃない?こんな朝早くからなんで?」

「え?長良は、いつもこの時間は走り込みしてるんだ!足柄さんも?」

「ええ、その、えっと、戦場を駆けるには艤装もそうだけど己の足も重要かなって」

(まあ、嘘はついてないわ…嘘は…)

「じゃあ、足柄さんも一緒に走らない?一人より、一緒に走るほうが楽しいと思うな!」

「んー、そうね。一人で黙々とやるのもつまらないし、一緒に走りましょ?」

「うん!」



(…なんて、簡単に…言うんじゃ…なか、った…)

(なに、この子…早い!同じ「高速」艦なのに…どうして、こう差が開くの?)

(いいえ、そんなのわかりきってる。長良は「いつもこの時間は」と言っていた)

(私が惰眠をむさぼっている間、長良は人知れず努力して…こんなの、勝てっこない…)



「な、長良…ごめんなさい…私、もう、無理…!!」

「…え、足柄さん?どうしたの、もうばてちゃったの?」

「普段の足柄さんなら、戦闘中であっても足を止めることなんてないのに…どこか体でも悪い?」

「………違うの、体調自体は、いたって良好よ」

「ただ、ここ最近、慢心していたのね…」

「……体重が…増えちゃったの…それがこの様…」

「なにが「餓えた狼」よ…こんなの「肥え太った室内犬」じゃない…」

「足柄さん…」



「…私のことはおいて行っていいから、長良は、自分のことを…」

481: 2014/06/15(日) 03:10:22.46 ID:CNSgQAXH0






「…足柄さんの馬鹿!どうしてそこで諦めちゃうの!!」

「足柄さんの戦場へ馳せる思いは、その程度だったの?!」







「あ…」

「戦場が恋しいなら、勝利が欲しいなら、こんなところで諦めちゃだめ!」

「長良も、一緒に頑張るよ…だから、おいて行ってなんて、そんな、悲しいこと言わないで…」

「……そう…そうよね、こんなところで、あきらめちゃダメよね…ありがとう長良」

「私、あのままだと「犬」どころか牙すら抜けてたかもしれない…」

「…そうよ、私は「足柄」…戦場を駆ける「餓えた狼」、戦場こそが、私の魂の場所…」

「そのためなら…どんな苦しみだって、受け入れて見せる!」

「足柄さん!!」

「ええ、もう弱音は吐かない。一緒に、走ってくれる?あの暁の水平線の向こうまで!」

「うん、一緒に走ろう!!足柄さん!!」






翌日、筋肉痛で一歩も歩けない狼がいたらしいが、真偽のほどは不明

490: 2014/06/18(水) 21:37:39.91 ID:B2JP0n9N0

【柔らかスポンジ】

(なんだか、ここ最近、司令官が追い詰められている気がする…戦力が、とか、資材や物資が、とか、特別合同作戦が、とか)

(…うん、こんな時こそ、この秘書艦である雷様の出番!司令官、私に頼ってよ!)

「ねえ司令官?ちょっと頑張り過ぎじゃない、少しくらい休んだっていいのよ?」

「…ああ、少しな…」

「でも司令官…」

「そうか…」

「…ねえ!!私の話をちゃんと「うるさい雷!私は今っ…」…あ…ごめんな、さい…「…チッ」」

「…今日の秘書艦業務はここで切り上げて良い………怒鳴って、すまなかったな…」

「う、うん…」

(司令官…)



「ってことがあったの…」

「確かにここ最近の司令官さん、ちょっと怖いのです…」

「雷につい当たってしまうくらいなんだから、よっぽど心の余裕がないんだね」

「…何よ、司令官。いつも冷静でいることは軍人として当たり前って言ってるくせに、自分ができてないじゃない」

「私に頼って欲しいけど、そんな弱み見せる人じゃないし…」

「まあ、隠せてもいないけどね。さて、どうしようか…」

「どうしようかって、何よ?」

「何か司令官さんにしてあげるのです?」

「んー、余裕がないならその原因を取り除けば良いけど、残念ながらできそうにない」

「ならせめて、司令官に癒しをと思うけど、あの人が何で癒されるのか…」

「…美味しい料理とかどうかしら!カレーなら得意よ!」

「暁姉さんのカレーは、甘過ぎなのよね…」

「うっ…、そういえば司令官にもそう言われたわ…」

「私も、うーん、ロシア料理は作れるけど、正直そう言うのは鳳翔さんか間宮さんの方が上手だし…」

「なら、司令官さんに可愛い動物と触れ合ってもらうのです!電は近所の野良猫を眺めるだけで癒されるのです」

「でも、そんな時間司令官が作るかしら。今日隣で見てたけど、とても忙しそう…多分お昼ご飯も食べてないわ…」

「そうすると普段の何気ないひと時の中でどうにかするしか…」

「…司令官が日頃行うことで、私達が癒しを届けられそうな……あ、これなんかどうかな?」

「…………ええ!そ、そんなの、レ、レディーとして恥ずかしいわ…」

「ちょ、ちょっと勇気がいるのです。でも…」

「それって聞いたことあるわ!良いと思う。されて嫌な人はいないって愛宕さんも言ってたもの!」

「…決まり、だね。いい時間だし、もう行っちゃおうか?この時間なら司令官も…」

「えっ、も、もう?」

「善は急げだよ、暁姉さん」

「よし、第六駆逐隊、出撃よ!」

「なのです!」




491: 2014/06/18(水) 21:44:25.32 ID:B2JP0n9N0
(雷…怯えた顔をして居たな…当たり前か…)

(何が司令官だ、馬鹿馬鹿しい。部下に気遣われたあげく、八つ当たり…情けないな…私は)

(そろそろあがって…)


<司令官! 司令官さん!


「………?……なっ!お前たちここを何処だと、なぜここに!?」

「ここ?司令官用のお風呂だけど?」

「あ、暁と一緒に入れるのよ!ありがたく思いなさい!」

「司令官、私がお背中お流ししますわ…なんてね。身体洗うのは私に任せてよ!」

「気持ちは有難いが、しかし…」

「……司令官、疲れてるんでしょ?…さっき、ちょっと怖かったもの…」

「だから、ちょっとはリラックスさせてあげたいなって…」

「…司令官さん……」

(そう言うことか…、もう既に一通り洗い終わってはいるが…)

(好意はとてもありがたい…お互いタオルは巻いているし…まあ、いい、だろう)

「…前は流さなくて良いからな」

「「「「はいっ」なのです!」」」」


「司令官さーん、何処か痒いところはないですかー?」

「いや、ないよ。頭を洗うのが上手だな、電」

「ありがとうございます、なのです」


「ねえ司令官、肩凝ってたら言ってね、一緒にやっちゃうから」

「その声は、雷か?…後ろには電がいるはずだが?」

「膝立ちで洗うから大丈夫。それより…」

「ああ、頼む」

「うんうん、もーっと私に頼っていいのよ?」

「…雷…」

「なぁに?司令官?」

「さっきは、すまなかった」

「ううん、気にしてないわ。誰だって辛い時はあるもの!」

「…ありがとう…………ん?」

「どうしたの?司令官?」

「さっきから背中に当たってる感触が……お前、何で洗っている?」

「いや、響も、暁もだが…二人は私の腕を一体何で…」

「え?そんなの、ねぇ、気づいてるんでしょ?」

「あ、あの、レディーはこうするものだって聞いたから!」




「私たち、自分の身体で洗ってるのよ?」

「ちなみに、電もタオルは外したのです。流石に、洗うのは手で、ですけど…」

492: 2014/06/18(水) 21:49:03.73 ID:B2JP0n9N0

「な、お前たち!流石にそれは!」

「きゃっ!司令官さん、急に動くと危ないのです」

「そうだよ司令官?両隣に私と暁姉さんもいるって忘れないでね?」

「…っ…大体、発案者は誰だ?」

「あ、愛宕さんが、こう言うことしてあげると喜ぶって言ってたって、雷から聞いたの…」

「そうなのか、雷?」

「…?…そうよ?」

(……そうか、あいつはそんなに単騎出撃がお望みか…、今度そうしてやろう…)

「気持ち良くないかい?」

「そういう問題では!」

「もう、とにかく私たちに任せてよ!ね?」

「洗い終わるまで目を開けちゃいけないのです」




(なんだ…これは、新手の拷問か?こんな、幼女をはべらせて、こんな、まるで風俗の様な…)

「んっ、なんだか…暑くなってきちゃったかしら…」

「へ、変な感じ…ううん、これも一人前の…」

「ふふっ、どうかな司令官。こう言うのも、んんっ、いいでしょ?」

「三人とも、どうしたのです?」

(落ち着け、冷静になるんだ。この子らは完全な善意、いや、響が若干怪しいが…)

(ともかく、電が洗い終わるまで、それまでの辛抱…下手な気など起こすなよ…)

「電…もうそろそろ、いいんじゃないか?」

「…あっ、そうですね。あらかた洗い終わったのです!」

「そうか…」

(助かった…)











「洗い流したら、リンスで、そのあと、トリートメントなのです!」

(…おい、嘘だろう…じょ、冗談じゃ…)

497: 2014/06/19(木) 02:23:21.45 ID:s/ziuria0

【麝香の匂いに包まれて】

※>>388の続き

「第二艦隊旗艦、如月。遠征任務終了の報告に参りました」

「入っていいぞ」

「失礼します。…司令官、こちらが今回の遠征のレポートになります」

「ありがとう」

「…では」

「如月…」

「………何か、不備でもありましたか?」

「いや、一見して何処にもないが…」

「なら、一体何のようですか?」

「司令官と如月の間に、職務以外の、何があるんですか?」

「…職務上の話以外何ないなら、如月は司令官と話すことなどありません」

「あなたは上官で如月はその部下。それ以上でも、それ以下でもない」

「そう、それだけなの…」

「如月、あのことについて「嫌!!聞きたくない!!」」

「如月のことを弄んだうえに!忘れろって言ったくせに!!」

「せっかく忘れかけたのに!もう何もないんだって、そう、思えそうだったのに!」

「なのに、何?忘れかけたと思ったら、またその話を繰り返すの?司令官が忘れろって言ったんじゃない!!」

「あの時から、司令官と如月の間には、仕事以外の何もないの!何も!!」

「だから、司令官と話すことなんか……何も、無いのよ!!!!」


「……もう嫌…やめてよ…これ以上、如月の心を掻き乱さないで…これ以上…お願いだから…」


「…如月、許してくれとは言わない。ただ、話がしたい」

「だから!「もし!!…少しでも私の話を聞いてくれるのであれば、今日の夜、あの場所で待ってる…」…何、それ…」

「今言えるのは、ここまでだ。お互い、今日はまだやるべきことがある」

「だが…できれば、私の話を聞いて欲しい…………お願いだ」

「………失礼、します」





(一方的に突き放して…今度は話を聞いてくれって、そんなの、勝手すぎるわ…)

(本当に、勝手な人……でも……)

(今まで、あんな風に誰かにお願いしたこと、あったかしら…。あの、司令官が…)

(……………話を、したい、か)



(これで来なかったら……仕方ない。彼女の意思に反してまで、無理に…)

(これも、下らない考えに流された私の責任だ。傷つけて、すまなかった、如月…)

(でも…願わくば、どうか…どうか…)

(……………もう一度だけでいい、話が、したい)


498: 2014/06/19(木) 02:27:48.76 ID:s/ziuria0









「……………来て、くれたのか」


「……下らない言い訳だったら、司令官のこと、許さないんだから…」

「聞いてくれるだけありがたい。聞き終わったあとは、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

「…頃してくれても、構わない。私はそれだけお前を傷つけた…」

「前置きはいいの…それで、司令官は一体何を話すの?」





「そうだな…素直に言うと、私は今とても後悔している」

「後悔?」

「ああ、お前を傷つけたこと、手放したこと…この現状、全てに」

「…」

「あの後、お前を見かけるたびに、後悔ばかりが襲って来た。なぜ突き放したのかと、もっと方法があったはずだと…」

「書類の中に如月の名前が出て来る時にすら、そう思った。ずっと…気が気でなかった」

「…それは、なぜ?」



「如月のことを、愛しているからだ」


499: 2014/06/19(木) 02:30:04.15 ID:s/ziuria0






「え?何、それ…今更、そんな言葉……嘘……なら…なら、なんで忘れろなんて言ったの!」

「その言葉が本当なら、なんで如月のことを突き放したの!」

「…私たちは、軍人だ。ましてや上官と下官、下手な情に惑わされて、何かあってはならない」

「艦隊内部での依怙贔屓、要らぬ嫉妬、軋轢…そう言ったものを生み出したくなかった…」

「…そんなの、ケッコンカッコカリなんて、あんなものがある時点で分かりそうな話じゃない!」

「それだけなの?…軍が大事だから、如月のことはどうでもっ」

「違う!…それもある、が、何より、お前を戦場に出すことが怖くなった」

「失うことが怖くなった、ましてや、自分の作戦指揮にミスが原因だとしたら、私は、もう生きてゆけない」

「…愛してるが故に、傷つくのが、怖くなった」

「……だが、手放したら、もっと苦しくなった」

「…最低だと、自覚しているよ。結局、自分可愛さに如月を傷つけたことに変わりない」

「ただ、愛してるいう言葉に偽りはない、これだけは言いたかった」

「…」

「…なら…なら、あの時の言葉は、嘘じゃなかったのね?如月は、確かに、愛されてたのよね?」

「司令官に、あなたに愛されてたから…如月は…ここで、あなたに…」

「ああ、その時の言葉に偽りは無い。今も、何も変わらない」



500: 2014/06/19(木) 02:33:13.05 ID:s/ziuria0




「……ずっと、ずっと考えてた。どうして突き放されたんだろうって、如月が、何かしてしまったんじゃないかって」

「憐れみやうっとおしさから、仕方なくだったんじゃないかって、ただの体のいい女がわりだったんじゃないかって…」

「…でも、違うんですよね?お願い、もう一度、もう一度だけ言って?」




「如月、私は、お前を愛している。あの時も、今も、これからもな」









「司令官!!」

「…っ…すまなかった、如月。本当に、すまない…」

「嫌、嫌です。許さないんだから…ぐすっ………本当に…本当に、悲しかった…苦しかった!」

「ずっとずっと、好きだったのに!夢が叶ったって思ってたのに!」

「いきなり、忘れろなんて、そんなの、無理なのに、無理矢理押し込んで、自分を頃して…」

「辛かった、痛かった………」

「如月」

「今度は、信じていいんですよね?」

「ああ」

「途中でいやって言っても離さないんだから…」

「言うはずがない」

「…お願い司令官、もっと、もっと、痛くなるくらい、抱きしめて…」

「…」



(ああ、この香り…あなたの、私の好きな人の…もう絶対離さない、離させない…)

(ずっと、ずっと…おそばに…ずっと…)

(司令官…)

501: 2014/06/19(木) 02:36:31.33 ID:s/ziuria0
長々続けた如月シリーズも一応終わりです

ちょうど500、レスの半分も消化してるのか…すごいな…
はじめは150くらい行けばいいかなレベルだったのに…


提督「つれづれなるままに」【その6】

引用: 【艦これ】提督「つれづれなるままに」