78: 2009/02/23(月) 05:24:53 ID:9+7MXS/G
ルッキーニ視点のずっといっしょなお話。
短めです。
79: 2009/02/23(月) 05:26:07 ID:9+7MXS/G
シャーリーの部屋で本を読んでいると廊下から聞き慣れた足音が聞こえてきた。
この部屋の主、あたしの大好きなシャーリーのものにまちがいない。
けれどどことなく元気がなさそうな音だった。たぶん、気のせいじゃない。
あたしはシャーリーのことについてはいわゆるオーソリティなのだから。
扉が開いて現れた顔はやっぱりシャーリーのものだった。
「おかえり、シャーリー」
「んー……ただいま」
覇気のない声、下がった眉、丸まった背中、きわめつけに目は赤く充血している。
扶桑人の宮藤に言わせればまさに“ウサギさん”状態だった。
あたしの思ったとおり、シャーリーは油のきれた心のエンジンをフルスロットルで稼動させて突撃してきたみたいだった。
勝てない勝負とわかっていて、もしかしたらわからないフリをして、エイラに思いの丈をぶつけてきたのだと思う。
「はい、ホットチョコレートだよ」
「……うん、ありがと」
しおしおにしぼんだシャーリーはマグカップを受け取ってひと口、あったかいチョコレートを流し込んだというのに表情は明るくならなかった。
甘い味や香りもいまのシャーリーの心を溶かしてメロメロにすることはできないようだ。
じゃあ、どうしよう。
答えはすぐに出た。
この部屋の主、あたしの大好きなシャーリーのものにまちがいない。
けれどどことなく元気がなさそうな音だった。たぶん、気のせいじゃない。
あたしはシャーリーのことについてはいわゆるオーソリティなのだから。
扉が開いて現れた顔はやっぱりシャーリーのものだった。
「おかえり、シャーリー」
「んー……ただいま」
覇気のない声、下がった眉、丸まった背中、きわめつけに目は赤く充血している。
扶桑人の宮藤に言わせればまさに“ウサギさん”状態だった。
あたしの思ったとおり、シャーリーは油のきれた心のエンジンをフルスロットルで稼動させて突撃してきたみたいだった。
勝てない勝負とわかっていて、もしかしたらわからないフリをして、エイラに思いの丈をぶつけてきたのだと思う。
「はい、ホットチョコレートだよ」
「……うん、ありがと」
しおしおにしぼんだシャーリーはマグカップを受け取ってひと口、あったかいチョコレートを流し込んだというのに表情は明るくならなかった。
甘い味や香りもいまのシャーリーの心を溶かしてメロメロにすることはできないようだ。
じゃあ、どうしよう。
答えはすぐに出た。
80: 2009/02/23(月) 05:28:00 ID:9+7MXS/G
「シャーリー、ちょっとはやいけどもう寝ない?」
「うーん、そうするかなぁ……」
シャーリーの手からマグカップを奪い取り、身につけている洋服を次々に脱がしていく。
ぼーっと突っ立っているシャーリーには抵抗する気なんて欠片もないようで、下着だけになった次の瞬間にはベッドに倒れこんでしまった。
まるで木が切り倒されたみたいにうつ伏せになったままぴくりとも動かない。
これは重傷、とっても大きなキズができたんだ。
あたしは灯りを消してシャーリーの横に寝転がった。
シャーリーが風邪をひかないように毛布をちゃんとかけてあげる。
いつもならシャーリーの役目なのに、今日だけはあたしがお姉さんになった気分だ。
年上の妹は悲しみに胸を痛めていて、その痛みをやわらげてあげられるのは時間だけ。
お姉さんのあたしはほんのすこし背中を支えてあげるのだ。
痛くてつらくてさびしいときは誰かがそばにいてくれると元気が出るものだから、今夜はあたしがいっしょにいてあげなければいけない。
仰向けのあたしは投げ出されたシャーリーの手のひらに自分の手を重ねた。
なるべくいっぱい触れるように指と指をからませて、隙間をうめるようにさわろうとした。
そうしたらシャーリーはあたしに背を向けるように寝返りをうってしまった。
自 然、つなごうとしていたあたしの手は行き場を失う。
洗いたてのシーツが冷たかった。
「うーん、そうするかなぁ……」
シャーリーの手からマグカップを奪い取り、身につけている洋服を次々に脱がしていく。
ぼーっと突っ立っているシャーリーには抵抗する気なんて欠片もないようで、下着だけになった次の瞬間にはベッドに倒れこんでしまった。
まるで木が切り倒されたみたいにうつ伏せになったままぴくりとも動かない。
これは重傷、とっても大きなキズができたんだ。
あたしは灯りを消してシャーリーの横に寝転がった。
シャーリーが風邪をひかないように毛布をちゃんとかけてあげる。
いつもならシャーリーの役目なのに、今日だけはあたしがお姉さんになった気分だ。
年上の妹は悲しみに胸を痛めていて、その痛みをやわらげてあげられるのは時間だけ。
お姉さんのあたしはほんのすこし背中を支えてあげるのだ。
痛くてつらくてさびしいときは誰かがそばにいてくれると元気が出るものだから、今夜はあたしがいっしょにいてあげなければいけない。
仰向けのあたしは投げ出されたシャーリーの手のひらに自分の手を重ねた。
なるべくいっぱい触れるように指と指をからませて、隙間をうめるようにさわろうとした。
そうしたらシャーリーはあたしに背を向けるように寝返りをうってしまった。
自 然、つなごうとしていたあたしの手は行き場を失う。
洗いたてのシーツが冷たかった。
81: 2009/02/23(月) 05:29:09 ID:9+7MXS/G
シャーリーはずっと前からエイラのことが気になっていたみたいだった。
ほかのみんなはわからないけれど、いつもいっしょにいるあたしには会話のさりげない空白のたびにシャーリーの目がエイラを追っているのに気付いていた。
それはもしかしたらささいな興味に過ぎなかったのかもしれないし、あっつあつのお風呂より情熱的な想いだったのかもしれない。
それでもシャーリーは好きという気持ちをあたためつづけていたんだ。
サーニャがきて、エイラの視線とハートをぜんぶ持っていってしまってからもずっと、ずっと。
リベリオンの人なのだからもっとはやく、ばぁーっと気持ちを伝えてしまえばいいとあたしは思った。
でも惚れっぽいシャーリーにとって、惚れっぽいからこそそういう気持ちはそれだけ大事にしたいものなのかもしれなかった。
隣からぐす、ぐすとハナをすする音が聞こえた。
見ればシャーリーの背は丸まっていて、いつもより小さく思えた。
ううん、小さかった。
かすかに震える背中は年上とか大人とかそういうものじゃなくて、傷を負った痛みを必氏にこらえようとしている、ただの女の子の背中だった。
こんなシャーリーを見たのは初めてだ。
だけどきっとあたしと出会う前だってかわいい女の子やきれいな女の人を見かけてはひっそりと恋心を芽生えさせ、破れてはいまのように涙で枕を濡らしていたのだろう。
ほかのみんなはわからないけれど、いつもいっしょにいるあたしには会話のさりげない空白のたびにシャーリーの目がエイラを追っているのに気付いていた。
それはもしかしたらささいな興味に過ぎなかったのかもしれないし、あっつあつのお風呂より情熱的な想いだったのかもしれない。
それでもシャーリーは好きという気持ちをあたためつづけていたんだ。
サーニャがきて、エイラの視線とハートをぜんぶ持っていってしまってからもずっと、ずっと。
リベリオンの人なのだからもっとはやく、ばぁーっと気持ちを伝えてしまえばいいとあたしは思った。
でも惚れっぽいシャーリーにとって、惚れっぽいからこそそういう気持ちはそれだけ大事にしたいものなのかもしれなかった。
隣からぐす、ぐすとハナをすする音が聞こえた。
見ればシャーリーの背は丸まっていて、いつもより小さく思えた。
ううん、小さかった。
かすかに震える背中は年上とか大人とかそういうものじゃなくて、傷を負った痛みを必氏にこらえようとしている、ただの女の子の背中だった。
こんなシャーリーを見たのは初めてだ。
だけどきっとあたしと出会う前だってかわいい女の子やきれいな女の人を見かけてはひっそりと恋心を芽生えさせ、破れてはいまのように涙で枕を濡らしていたのだろう。
82: 2009/02/23(月) 05:30:47 ID:9+7MXS/G
あたしはシャーリーと逆向きに寝返りをうって、そのまま背中あわせになるように体をよせた。
触れるか触れないか、ぎりぎりで触れていない。
あとすこし踏み込んだらシャーリーにとどく位置、そのあたりであたしは眠ることにした。
さわらないよ、シャーリーのキズあと。
でもあたためさせて、あたしにはそれしかできないから。
あたしとシャーリーのあいだを二人の体温がたしかに行き来している感覚、それがわかるだけでいい。
離れていても、体が触れあっていなくてもあたしはここにいるよ、そう伝えられたらオールオッケー。
いつもいつもあたしのそばにいてくれて、なぐさめてくれて、抱きしめてくれて。
いっぱいいっぱいあたためてくれたシャーリーに、いまだけでもぬくもりを返してあげたかった。
ぐすぐす言っていた音はいつの間にか消えて、かわりにすーすーおだやかな寝息が聞こえてきた。
あたしの気持ちは伝わったかな。わからない。
シャーリーはやさしくてあったかくて、いつもにこにこ笑っている姿が一番だ。
雲が晴れて雨が止んで、ぴっかぴかの太陽が顔を出すまで、あたしは傘をさして待っている。
横にならんで歩いているということはいつでも肩を貸してあげられるということなんだ。
はやく気付いて、シャーリー。あたしだって支えてあげられるってこと。
さびしくないよ、ひとりじゃないよ。
ふわふわで受け止めてくれるシャーリーみたいに上手くはいかないけど、どんなに悲しいときでもあたしがいること、忘れないでね。
大大大好きなあたしのパートナー。
元気になるまでずっと、元気になってからもずっとずっと、あたしがそばにいるよ。
おしまい
触れるか触れないか、ぎりぎりで触れていない。
あとすこし踏み込んだらシャーリーにとどく位置、そのあたりであたしは眠ることにした。
さわらないよ、シャーリーのキズあと。
でもあたためさせて、あたしにはそれしかできないから。
あたしとシャーリーのあいだを二人の体温がたしかに行き来している感覚、それがわかるだけでいい。
離れていても、体が触れあっていなくてもあたしはここにいるよ、そう伝えられたらオールオッケー。
いつもいつもあたしのそばにいてくれて、なぐさめてくれて、抱きしめてくれて。
いっぱいいっぱいあたためてくれたシャーリーに、いまだけでもぬくもりを返してあげたかった。
ぐすぐす言っていた音はいつの間にか消えて、かわりにすーすーおだやかな寝息が聞こえてきた。
あたしの気持ちは伝わったかな。わからない。
シャーリーはやさしくてあったかくて、いつもにこにこ笑っている姿が一番だ。
雲が晴れて雨が止んで、ぴっかぴかの太陽が顔を出すまで、あたしは傘をさして待っている。
横にならんで歩いているということはいつでも肩を貸してあげられるということなんだ。
はやく気付いて、シャーリー。あたしだって支えてあげられるってこと。
さびしくないよ、ひとりじゃないよ。
ふわふわで受け止めてくれるシャーリーみたいに上手くはいかないけど、どんなに悲しいときでもあたしがいること、忘れないでね。
大大大好きなあたしのパートナー。
元気になるまでずっと、元気になってからもずっとずっと、あたしがそばにいるよ。
おしまい
83: 2009/02/23(月) 05:33:32 ID:9+7MXS/G
以上です。読んでくれた人に感謝。
楽しんでもらえたら幸い。
楽しんでもらえたら幸い。
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