596: 2009/03/02(月) 21:57:09 ID:zw4bCw+d
皆がいいと言うので釣りバカエイラさんを書いてしまった
コメディを書こうと始めたのにとくに面白要素がない。
普通に釣りしたり意味のわからないつり用語とかがでるので適当にするーしてください。


597: 2009/03/02(月) 21:57:56 ID:zw4bCw+d
季節は夏の盛りを少し越えたが、まだまだ太陽は燦々と輝きを放っている。
浜辺特有の湿度を含んだ潮風が頬を撫でる。

時は夏!場所は海!
そのような条件ですることなど決まっているだろう。
それはもちろん………フィッシングだ!!


釣りバカエイラさん~獲物は魚か唇か?キス釣り!~

「暑いナぁ…。」

うだるような暑さは、北欧出身であるエイラ・イルマタル・ユーティライネン…いや、釣りバカエイラには厳しいものであった。
ブリタニアの夏も気温はあがるものの、扶桑の夏ほど蒸し暑くはない。
加えて、どんよりとした天気の多いブリタニアでは体験したことのないような日差しがエイラを容赦なく襲った。

「文句を言うなー!」

叫び声をあげたのは、簡素なズボンと胸当てに、これまた輪をかけて面積の乏しい貫頭衣状の衣服を身につけた女性だ。頭には日差しを避けるための麦藁帽をかぶっている。
そう、彼女こそが町で噂の露出きょ…エクスウィッチの黒江綾香。釣りバカクロエである!!
彼女の腕には4.5mにも及ぶ長さを誇る投げ竿がしっかりと握られている。

「扶桑の夏は暑過ぎんダヨー!!干からびちゃったらどうするんダ…」

釣りバカエイラはダラリと四肢を投げ出して木陰に入りんだまま動こうとしない。
砂浜が照り返す熱は気温を益々高め、体力を奪う。
しかし、クロエは愛する海を前にして、すっかりと目を輝かせている。

「情けないぞ釣りバカエイラ!!ほら、釣りバカサーニャも待ってるぞ!!」

クロエが指を指した先には、長竿を片手に持った黒い人影。
それは、漆黒の軍服に身を包んだサーニャ・V・リトヴャク…いや、釣りバカサーニャである。
クロエの言葉にエイラもすっかりと臨戦態勢を整え、目指すは目と鼻の先の大海原だ。

「今日の獲物はキスだ!!わかったか釣りバカエイラ!釣りバカサーニャ!」

クロエが嬉しそうに本日のターゲットを示す。
キスは扶桑においては最もポピュラーな部類に入る釣魚である。

「釣りバカクロエー、キスってなんダ?できることなら私は釣りバカサーニャとそれをしたいナ…。」

しかし、サーニャとエイラは北欧出身である。
釣魚としての対象はもっぱらサケやマスなどの川魚であり、キスなどと言われてもピンとはこない。
むしろ、リベリオンにおける口付けを意味する言葉の印象の方が強く、エイラはサーニャの唇にちらちらと目をやっている。

「キスってのはなぁ…扶桑には主に3種類いるんだ。シロギスとアオギスとホシギス…私たちが狙うのは一番有名なシロギスってやつだ。
残りは九州と沖縄に棲んでいる…あぁ、1944年現在なら東京湾でもアオギスが釣れるな。シロギスはデカくなっても30㎝ぐらいだからあんまデカくはねーなぁ。」

クロエは楽しそうに魚知識を披露していく。

598: 2009/03/02(月) 21:58:36 ID:zw4bCw+d
「この時期ならまだ大物が釣れるかもしれないな。30㎝を越えたら大物…扶桑では尺越えとか言ったりするが分かりやすく言えばシャーリーサイズだ。
秋も深まると15㎝サイズのキスが多く釣れる…やっぱり扶桑ではピンギスと言われてるが分かりやすく言うとペリーヌサイズだな。もちろんシャーリーサイズの方が嬉しいのは言うまでもないよな?」

クロエの言葉に、エイラは首を激しく縦に振る。
幸か不幸かサーニャが冷たい目でその姿を見ていることには気づいてはいないようだ。

「1944年だと扶桑はまだテグスと木製リールで釣るんだが便利だからナイロン…いや、PEラインを使うか。」
「あんまりメタ的なこと言うなヨ。」

テグスは釣りにいく前日に水に浸けておかなくてはならないという実にめんどくさい糸である。
現在はナイロンラインかPEラインが使われており、PEラインにいたっては同じ細さでナイロンラインの数倍の強度を誇る化け物だ。ハサミでも切りにくい。
投げ釣りにおいては遠くまでキャストできた方がやはり有利なので、同じ強度でも糸を細くできる分だけ風の影響を受けにくいPEラインの方が好まれている。

「使う餌は…青イソメにするか。1944年時点だとゴカイの方が一般的だけど現在だとゴカイはあまり使われないからな。」
「なんでさっきから一々メタ的なんだヨ!!」

クロエの用意した餌箱の中には、うにょうにょと這い回るミミズのような生き物が数百匹単位で入っていた。

「ウゲー気持ち悪いナ…。」
「気持ち悪い…。」

やはりどう見ても虫餌はグロテスクである。
クロエにとっては普通だが、サーニャとエイラは触ることを躊躇う。

「我慢しろー!!これが美味しい魚に変わるんだ!!釣れたら釣りバカ宮藤が天麩羅にしてくれる!!」

天麩羅は宮藤がブリタニアで何度か振る舞ってくれた料理だ。
エイラとサーニャにとっては振る舞われた天麩羅は十分に美味しいものであったが、宮藤と坂本にはなにやら不満がある様子だったことが思い出される。
扶桑出身の二人にとっては天麩羅には少なくとも1品、淡白な魚のものがつくことが常であった。
しかし、ブリタニアではそれらに当てはまるキスやアナゴなどが手に入らず、皆に最高のものを振る舞うことができなかったことが悔やまれたのだろう。

エイラとサーニャは宮藤の天麩羅の味を思い出す。
宮藤は納豆など奇怪なものを好むこともあったが、基本的には料理に秀でていて、さっぱりとした扶桑の味は隊の皆にも歓迎された。
特に天麩羅は、イカが用いられていたにもかかわらず、皆は美味しくいただき、食後にそれが判明したことで一悶着あったので印象深い。
食に限らず、なにに対しても寛容なシャーリーが目を丸くしていたのだから記憶にも残るというものだ。

「「宮藤(芳佳ちゃん)の天麩羅…」」

宮藤が調理してくれるのなら間違いはない。
今日の美味しい晩ご飯のために、エイラもサーニャも気合を入れてイソメを掴む。

「イテー!!」
「ぐにょぐにょする…。」

どうやらエイラはイソメに噛み付かれたらしい。
イソメなど、釣り餌として使用する虫類は噛み付くので気をつけよう。
そうこうしていると、なんとか餌を針に刺すことができた。

「少し可哀相だね…。」
「確かに痛そーダナ・・・。」

イソメにしてみればいきなり自らの体の中に針が入ってくるのだからたまったものではないだろう。
少しだけ餌が可哀相に思えてきた。

599: 2009/03/02(月) 21:59:13 ID:zw4bCw+d
「まぁ確かに可哀相ではあるな。しかし、これも美味しいご飯のためだ!!彼らの命を無駄にしないためにも美味い魚を釣るんだ!!」

クロエが声をあげる。

「では仕掛けの投げ方を教えるからよーく聞けよ!!一度しか説明してやらないからな!!初心者はオーバースローに限る!!基本的にこれだけで事足りる。
適当に糸をたらして振りかぶってぶん投げろ!!遠くに嫌いなヤツがいると思って投げるとよく飛ぶような気がする・・・あっ、リールのベールをあけとかないと竿が折れる。以上!!」

クロエは自信満々だが、やはりエイラとサーニャは疑問を両手いっぱいに抱えている。
流石にそれにはクロエもまずいと思った。

「仕方ない・・・私が手本を見せるからそれをみて学べ!!」

クロエがリールの糸のたらしとベールを調整して振りかぶる。

「チェストー!!!!!!!!!!!!」

掛け声とともに錘が風を切る音とリールが糸を送り出す音だけが響く。
遥か彼方に仕掛けが着水したのが確認できた。

「分かったか?これで五色ぐらいだな。私が本気を出せば七色ぐらいは投げられる。」

得意気にクロエが語る。

「釣りバカクロエー、五色ってなんダ?そういえば扶桑にそんな名前の魔女がいなかったカー?」
「私も芳佳ちゃんに聞いたことある・・・。」
「あぁ、色ってのは距離を測る単位だな。一色が25mぐらいだから五色で125mぐらいだ。私の勘では諏訪五色の固有魔法は巨大化だな。ヤツはホントは125mの大巨人に違いない!!」

リールを巻きながらクロエが冗談を飛ばす。

「おっ、これは2連かな…。」

クロエが呟きながら回収した仕掛けには推測どおり2匹の綺麗な魚がくっついていた。

「綺麗・・・。」
「魚じゃねーみたいダナ。」

クロエが釣り上げたシロギスを見て二人は目を丸くする。
約20cmのパールピンクに輝く魚体はまるで宝石のようで、今まで市場などでみた魚とはまったく異なっていた。

「魚ってのは本当に綺麗なんだ。氏んじまうとこの美しさは失われちまうから普通のやつはそれを知らないけどな。生臭さも生きているうちはしない…魚にもそれぞれ香りがあるんだ。」

嬉しそうにクロエが語る。
クロエは本当に魚が好きだった。海の中にいる間はそれをどう引きずり出そうかと悩ませてくれたし、釣り上げた後は舌を満たしてくれる。
本当ならネウロイと戦わずに毎日釣りをしてすごしたいとまで考えているのだ。

「ほらー、お前らも釣れ!!今日は大漁旗をあげてやる!!」

エイラとサーニャも竿を振りかぶるがクロエのように上手くはとばない。
仕掛けはクロエのような風斬音を鳴らすことはなく、ひゅるるーと情けない音をたててどぼんと音をならして着水した。
しかしキスは初心者にも優しい魚なのだ。30メートルほどしか飛ばなかった二人の仕掛けにもアタリをだしてくれる。
サーニャの仕掛けにはやはり綺麗なキスが1匹だけぽつんと食いついていた。

600: 2009/03/02(月) 22:00:40 ID:zw4bCw+d
「エイラー、見て!釣れたよ!」

微笑むサーニャを見て、エイラはそれよりも更に顔を緩ませた。

「私もホラ!!」

エイラがニヤリと笑って見せた仕掛けの先にはなんだか黄色と黒の変わった魚…間抜けな顔に髭が生えている。

「ナンダコレー?黄色か…釣りバカクロエー、ペリーヌ釣れター。」

色だけを見てすっかりとペリーヌという渾名をつけたそれをクロエえと見せ付ける。

「おー、触るなよー!そいつは毒もちだ。とげに刺されると痛いぞー!」

ツンツンとした毒のとげを持っていると聞いたエイラはますますペリーヌを思い出して笑い出す。
そんなエイラをサーニャがじとっとした視線で眺めていた。

「おーまたなんか釣れター!!コイツもトゲトゲしてんナー。でも赤い・・・クロエー、赤ペリーヌ釣れター!!」

エイラの仕掛けの先には今度は小さくてトゲトゲした赤い魚。

「釣りバカエイラー、お前は毒魚ばっか釣るなぁ。刺されるとこれも痛いぞー!」

エイラはまたもケラケラと笑う。
それをやはりサーニャはじーっと眺めていた。

「今度のはなんか膨らんでるゾ!うひっ、おっきい!!釣りバカクロエー、シャーリー釣れター!!」

エイラがツンツンとつつくと魚の身体はますますぱんぱんに膨らんでいく。

「今度は河豚かー。変なもんばっか釣るなぁ。つついてないで海に返してやれよー!」

601: 2009/03/02(月) 22:01:04 ID:zw4bCw+d
エイラは河豚の腹を撫でてやっぱリーネの胸のほうが揉んで楽しいなーと呟いている。
サーニャの瞳からはハイライトが抜けていった。

そうこうしている内に日も傾きだす。
そろそろ帰らなければ晩御飯に天麩羅の計画はおじゃんだ。
しかしそこでふと気付く。クロエは山のようにキスを釣り、サーニャも十分な量を釣ったのだが、エイラときたら実は1匹も釣れてはいなかった。
エイラの仕掛けには変なものばかりが食いつき、エイラはそれに名前をつけてはケラケラと笑っていたのだ。

「うー、さすがに1匹も釣れないと恥ずかしいナー。釣りバカクロエー、何とかならないノカ?」

クロエが頭を抱え込んで唸る。今日はそれなりに魚の機嫌もよく、釣れないはずがないのだ。
しかし現実として釣れていないのだからクロエにもどうしようもない。
けれどもそこは百戦錬磨のクロエである。頭にピコンとアイデアが浮かぶ。

「釣りバカエイラ!!目を瞑れ!!!」

クロエが叫ぶのでエイラも思わず目を瞑った。
ギュッと目を瞑るエイラの唇に何かが触れる。エイラがぱっと目を開けると目に入るのは肌色一色・・・あまりにも近くにサーニャの顔があった。
永遠にも思える時がエイラの頭の中を駆け巡る。
しかし悲しいかなヘタレ…エイラは頭に血が昇って気を失った。

「あぁ、ヘタレだなーこいつ。」
「はい、ヘタレなのにカッコよくて困り者です。」

クロエとサーニャが微笑みを交わす。

「帰って天麩羅パーティーにするか。」
「そうですね。」

二人は笑いながら帰途へとつく。エイラは砂浜で気絶中だ。
この後、エイラは天麩羅を食べ損ねるわ、サーニャに冷たくされるわでヒドイ目にあったとさ。

Fin.

引用: ストライクウィッチーズpart22