1: 2010/04/16(金) 20:32:26.24 ID:YN0DX7aQ0
ここは、とある地方都市。

ドンッドンッ!!

翠星石(以下翠)「朝から騒々しいですぅ。誰ですか?こんな時間から」

ガラガラッ

伊藤○(以下誠)「お~い、誰かいるかー」

翠「誰ですか?このチビ人間は」

誠「……チビ人間とは失礼だな。フフーン、お前が翠星石か……」

翠「そ、そうですけど。それで翠星石に何か用ですか?」


3: 2010/04/16(金) 20:33:45.96 ID:YN0DX7aQ0
誠「さっそくだが、お前の親父の残した借金1000万、今すぐ払ってもらおうか」

翠「い、1000万!ウ、ウソですぅ。そ、そんなの、知らないですぅ」

誠「お前が知らなくても、ここに証拠の借用書がある。ほれ見ろ」

翠「た、確かに……お父様の字ですぅ……」

誠「そう言えばお前の父親、現在行方不明なんだって?それじゃあ仕様がないから、娘であるお前に払ってもらおうか」

翠「そ、そんな大金、無理に決まってるですぅ」




4: 2010/04/16(金) 20:35:43.20 ID:YN0DX7aQ0
誠「それじゃあ仕方ないな。ヘヘッ」

翠「な、何ですかっ?へ、変な目で見るなですぅ」

誠「大丈夫。金が無いなら体で払ってもらえば済む話。お前なら、頑張れば数年で完済できるだろう。あ、そういえば知り合いに風俗店をやっている所があるんだ。何ならタダで紹介してやるぞ」

翠「ふ、風俗ぅ?翠星石には、む、無理ですぅ」


5: 2010/04/16(金) 20:37:57.18 ID:YN0DX7aQ0
ガラガラ

薔薇水晶(以下薔薇)「ただいま。あら?お客さま?」

翠「お、お母様ぁ」

誠「おっ?ヘヘッ。良かったな、お前。一人頭、500万で済むぞ」

翠「……ううっ」

薔薇「な、何の話でしょう?」

誠「お前の旦那の残した、1000万の借金の話をしてたんだ。返事は明日まで待ってやる。それまでに風俗で働く決心をしておくんだな。なぁに、お前等ならすぐに人気が出て、借金も全部返済できるさ。へへっ。じゃあな」


6: 2010/04/16(金) 20:39:04.46 ID:YN0DX7aQ0
ガラガラ

翠「お父様の、借金って……どうして?」

薔薇「ごめんね翠星石、黙っていて。お父様は実は……」

かくかくしかじか……

翠「ええっ!?麻雀で負けたツケが貯まってたですかぁ」



7: 2010/04/16(金) 20:41:26.29 ID:YN0DX7aQ0
薔薇「ええ、私も今まで金額は知らなかったけど。まさかそんな大金になっていたなんて……」

翠「そ、それなら警察に行くですぅ。ギャンブルの借金なら、払わなくても済むはずですぅ」

薔薇「それも考えたわ。でもアイツ、地元でも有名なゴロツキなの。もし警察に相談に行ったと知れたら、どんな報復があるか……あなたの身にも危険が及ぶかも知れない」

翠「そ、それでも風俗は嫌ですぅ。それなら多少危険でも、警察に……」

薔薇「あなたの身を危険に晒す訳にはいかない。大丈夫、お母さんがどんな仕事でもして、借金を返すから。あなたが心配する必要は無いわ」

翠「で、でも1000万ですぅ。そんな大金……、ま、まさかあいつの言っていた……」

薔薇「ええ。風俗でも何でも。だからあなたは心配しないで」

翠「そ、そんなのっ!翠星石が行くのも嫌ですけど、お母様をそんな所で働かせるのも嫌ですぅ」


8: 2010/04/16(金) 20:43:08.18 ID:YN0DX7aQ0
「ちょっと待ったぁ!!」

ガラガラ

真紅「話は聞かせてもらった。人類は滅亡するのだわ!!」

薔薇「…………」

翠「……誰ですか?お前は」


9: 2010/04/16(金) 20:44:40.12 ID:YN0DX7aQ0
真紅「…そこは、『な、何だってー!!』とボケて欲しいのだわ」

翠「悪いですけど、今はボケている余裕は全然無いですぅ。それに折角ですけど、セールスなら今はお断りですぅ」

真紅「セールスでもないのだわ。悪いとは思ったけれど、ちょうど通りかかった所に、言い争う声が聞こえたのでね。聞かせてもらったわ。私なら、解決できてよ。その問題」

薔薇「ところであなたは……」

真紅「私は単なるローゼンメイデンの第5ドールよ。麻雀で負けた借金と言っていたわね」

翠「そ、そうですけど、お前は本当に何者……」

真紅「詳しく話を聞かせてくれない?悪い様にはしないわ……」



10: 2010/04/16(金) 20:46:41.18 ID:YN0DX7aQ0
そんなこんなで

真紅「成る程。地元で有名なゴロツキにハメられて、お父様は借金を背負った訳ね。分かったわ、アイツのいる所に案内して。地元で有名なら、居そうな場所くらい、分かるのでしょう?」

薔薇「え、ええ。でも、本当にあなたは……」

真紅「私の事より、今は自分達の心配をなさい。さぁ、案内して」

翠「わ、分かったですぅ」


11: 2010/04/16(金) 20:48:05.93 ID:YN0DX7aQ0
地元の誠行き着けの雀荘

誠「ロン!チンイツ、トイトイ、ハネ満だ」

レ○パー「誠さん、まじパネェっす!って、ハダカ単騎っすかwww」

誠「アがれりゃ何だっていいんだよ!ほら、次の局行くぞ」

「待つのだわ!!」

誠「あぁン?誰だ、お前」

真紅「お前に名乗る名など無いのだわ、伊藤○。私と麻雀で勝負なさい」

誠「悪いが俺は暇じゃあないんでね。お前みたいな変な格好した女とは、勝負する気はない」


12: 2010/04/16(金) 20:52:19.88 ID:YN0DX7aQ0
真紅「あらあら、この高貴なる着こなしが分からないなんて……。アナタみたいな、見るからに低脳DQNには、ファッションは理解不能かしら?」

誠「あン?お前、喧嘩売ってんのか?」

真紅「バカでも喧嘩を売られている事は理解した様ね。なら話が早いわ。私と麻雀で、1000万の勝負をなさい。私が勝てば、あの母娘(おやこ)の借用書、貰っていくわよ」

レ○パー「おいおいお前、何勝手なこと言って……」

誠「まぁ待て。よし、いいだろう。受けてやろう、その勝負。だが、お前が負けたらどうするのかな?あの母娘とは別に、1000万、払ってもらえるのかな?」

真紅「私が負けたら、1000万でも風俗に行かせるでも、好きになさい」

翠「し、真紅っ!やめるですぅ」

誠「お譲ちゃんは黙ってな。おいお前、抜けろ」

黒服B「はい」



13: 2010/04/16(金) 20:55:28.12 ID:YN0DX7aQ0
レ○パー(誠さん、大丈夫っすか?)

誠(何変な格好した女にビビってんだよ?俺たちの『通し』は完璧だろ?それに万が一負けた時は、その時は力ずくで……)

レ○パー(そうっすよねwww向こうが喧嘩、売ってきたんスからねwww)

誠(大体俺達が負けるかよ?ああん?)

真紅「何をコソコソ話をしているのかしら?早く始めるわよ」



14: 2010/04/16(金) 20:57:20.70 ID:YN0DX7aQ0
誠「よし、いいだろう。ルールは2万5千の3万返し、アリアリの通常ルールだ。俺とこいつ(レ○パー)、黒服A、そして変な格好をした女、お前だ。俺とお前のサシウマで、半荘終了後、点数が上回った方が勝ちだ」

翠「そ、そんな3対1なんて。それにそのルールじゃあ……」

真紅「その条件でいいわ」

翠「し、真紅ぅ」

誠「ほう……?話が早いな。よし、じゃあ始めるぞ」

真紅「ちょっと待つのだわ。伊藤、そこをどきなさい」

誠「ああん?何で俺が席を……」

真紅「ルールはこちらが飲んだのだから、席ぐらい、譲ってもらっても構わないでしょう?」


15: 2010/04/16(金) 21:00:46.58 ID:YN0DX7aQ0
誠「へっ。まぁ、いいだろう。俺の席を譲ろう。ツイてる席を取って、せいぜい頑張りな」

ジャラジャラ

東一局、親、伊藤

2巡目

南家、真紅「チーっ」

誠「いきなり喰いか。おいおい、あせってんのか?」

真紅「黙って打ちなさい。それポンっ」

レ○パー「なんだそりゃ?クイタンか?」

真紅「だから黙って打ちなさい。ロン、タンヤオ」


16: 2010/04/16(金) 21:01:57.28 ID:YN0DX7aQ0
誠「へっ、俺が親だからって、そんなに怖がらなくてもいいだろう」

レ○パー(こいつしょぼいっスねwwwこりゃ心配するまでも無いかwww)

誠(だから言っただろ?)

真紅「何をコソコソ話しているのかしら?」

誠「何でもねーよ。ほら、次の局行くぞ」



17: 2010/04/16(金) 21:03:58.28 ID:YN0DX7aQ0
東二局、親、真紅

1巡目、真紅打牌

誠「おいおい、さっさと切れよ。親が切らねーと、始まんないだろぅ?」

レ○パー「ルールは知ってるんだろ?お譲ちゃん」

真紅「ツモ。天和、四暗刻」

誠「ブーーーッ」


18: 2010/04/16(金) 21:05:57.77 ID:YN0DX7aQ0
真紅「ダブルはありだわね。終わったわ」

レ○パー「な、なんじゃそりゃー!!!」

誠「て、てめぇ、イカサマしやがったな!!」

真紅「自動卓で、積み込みは出来ないのだわ」

誠「うっ」

レ○パー「な、ならっ、外から牌を持ち込んだな!」

真紅「そう思うのなら、残りの山と、王牌、自分達の手牌も全て開けて、残りの牌を確認なさい」

確認後……

黒服A「ま、誠さん……」



19: 2010/04/16(金) 21:08:08.09 ID:YN0DX7aQ0
誠「ど、どういうことだぁ!?」

真紅「終わりだわ。さ、あの母娘の借用書、早く出しなさい」

レ○パー「ど、どうして……」

誠「こ、こんな勝負、認められるかーーー!!」

ドンガラガッシャン



20: 2010/04/16(金) 21:12:04.20 ID:YN0DX7aQ0
誠「へへっ。最初からこうすりゃ良かったんだ。おいお前ら、畳んじまえ」

真紅「あらあら。勝負に負けたら、次は暴力。さすが低脳はやる事が単純ね」

誠「何やったか分からねぇが、こんな勝負は認められねぇな」

翠「し、真紅ぅ」

「待ちなさい!!」

「その子に手を出してはいけません」

誠「あァん?誰だ?テメェは」


21: 2010/04/16(金) 21:14:31.54 ID:YN0DX7aQ0
のり「私はのり。桜田のりよ」

誠「で、のりちゃんとやら、あんたが俺に命令できる立場かね?」

のり「そうね。命令できる立場ね」

誠「はぁ、ナメてんのかこらぁ」

レ○パー「ま、誠ぉ。こ、この人は」


22: 2010/04/16(金) 21:17:16.06 ID:YN0DX7aQ0
誠「おいおい、女一人増えたぐらいで何ビビってんだよ?」

黒服A「ま、まさか、桜田会の、のりお嬢様」

のり「そうです。良かったァ、私を知っている人が居て。これで余計な手間が省けたわぁ」

誠「おいおい、お前までどうした?」

レ○パー「こ、この人は……」

のり「あら?桜田会といえば、この辺を取り仕切っている、親分さんとも知り合いのはずだけど。まさかあなた、本当に知らないのぉ?」

誠「ま、まさか……」

のり「やっと分かってくれたようね。この辺りで平和に暮らしたいのなら、私の名前は知っておいた方がいいと思うわ。さっ、そこの真紅ちゃんを離しなさい」


23: 2010/04/16(金) 21:18:36.54 ID:YN0DX7aQ0
誠「うっ」

真紅「手間が省けたわ、のり」

のり「お久しぶり、真紅」

誠「ううっ」



24: 2010/04/16(金) 21:21:40.57 ID:YN0DX7aQ0
真紅「さぁ、勝負終了よ。早く置いてく物を置いて、さっさと去りなさい。下郎」

誠「……お、覚えてろよぉー」

真紅「ふぅ。どうして悪役はいつも、台詞がワンパターンなのかしら?はいこれ」

翠「あっ。ありがとうですぅ」

真紅「これで借金はもうチャラね。もしアイツがまたちょっかいを出す様なら、今度は警察にでも突き出しなさい。まぁ、のりの名前を聞いて、また手を出せる程、大物にも見えなかったけど」

のり「本当に久しぶりね、真紅ちゃん。探したのよぉ」

真紅「人前でちゃん付けはやめて欲しいのだわ」

のり「あらあらごめんなさい。忘れっぽくて……」

翠「あ、あのっ」


26: 2010/04/16(金) 21:24:42.22 ID:YN0DX7aQ0
真紅「あら何?礼なら今聞いたけど。他に用事?」

翠「用事は無いですけどぉ」

真紅「なら、早くココから立ち去りなさい。年頃の女の子が、雀荘に長く居るものではないわ」

翠「あ、あのっ。一つ、聞いてもいいですか?」

真紅「何かしら?」

翠「その、さっきのダブル役満、どうやったですか?」



28: 2010/04/16(金) 21:36:08.29 ID:YN0DX7aQ0
真紅「偶然よ」

翠「う、ウソですぅ」

真紅「ふふっ。本当に偶然なのよ……。でもね、タネもあってね」

翠「タネ?」

真紅「そうタネ……。実はね、あの雀卓。古いタイプでね。あの手の古いタイプの自動卓は、洗牌が完璧じゃないのよ。だから、意図的に牌を投入してやれば、洗牌が完璧じゃない分、偏った牌が積まれるのよ」

翠「偏った牌?」

真紅「そう、偏り……。私がココに来た時のこと、覚えているかしら?」

翠「伊藤達が麻雀を打ってた時ですか?」


29: 2010/04/16(金) 21:42:06.21 ID:YN0DX7aQ0
真紅「そう。その時の奴の上がり役。チンイツ、トイトイを利用させてもらったわ。ヤツらが中央に牌を落とした後、伊藤のアガリ、チンイツ、トイトイの手牌を一番最後に投入してね……。
それで次々局に牌が偏ったって訳。まぁまさか、自分に役満がそのまま積まれるとは思わなかったけど。まぁ、偶然9割、必然1割って所かしら?」

翠「そ、そんな偶然、信じて打ったですかぁ?分が悪すぎですぅ」

真紅「まぁ普通に実力で打っても、奴らケチなクマに負けるとは思わなかったけど。でもこれ、天罰でしょうね。奴らが今までしてきた悪行のお返しを、神様が役満という手でしてくれたのよ」




31: 2010/04/16(金) 21:46:21.21 ID:YN0DX7aQ0
のり「真紅ちゃんなら、普通に打っても大丈夫よねぇ。何たって……」

真紅「のりっ!!」

のり「……そうね、ごめんなさい。あなたみたいな普通の女の子は、知る必要、無い事ですものねぇ」

翠「ど、どういう意味ですかぁ?」


32: 2010/04/16(金) 21:50:00.36 ID:YN0DX7aQ0
真紅「翠星石。あなたの様な普通の女の子は、あまり知らない方が良い世界もあるのだわ。その方が、平和に暮らせる……」

翠「で、でもっ」

真紅「借用書も取り返したし、明日からは母娘二人で、普通に暮らしなさい。それが一番いいのよ……。それじゃあね」

翠「し、真紅っ!!」

のり「翠星石ちゃん」




34: 2010/04/16(金) 21:55:55.28 ID:YN0DX7aQ0
真紅「……」

翠「……行っちゃったですぅ」

のり「真紅ちゃんはね、こっちの世界の代打ちなのよ。それも凄腕のね。あなたの様な普通の女の子は、関わらない方がいいのよ。あっ、今言った事は、真紅ちゃんには内緒ね?」

翠「し、真紅が……」

のり「そう」

翠「……お礼、し損ねたですぅ。せめて多少でも何か、お返し、したかったですぅ」


35: 2010/04/16(金) 21:59:50.52 ID:YN0DX7aQ0
のり「……私ももう行くわ。真紅ちゃんには、後で私から伝えておきます。翠星石ちゃんが、いつかまた会えたら、その時は何かお返ししたいって言ってたって。ちゃんと、伝えておくわ」

翠「あ、ありがとうですぅ」

のり「それじゃあね」

真紅-Shinku-。第一話、完。

36: 2010/04/16(金) 22:04:17.69 ID:YN0DX7aQ0
次・回・予・告

○○○「アナタが、真紅かしら?」

真紅「あなたは?」

○○○「私の名前は○○○、ローゼンメイデン一の頭脳派かしら。真紅っ、勝負よ!」

真紅「生きる事は、戦うという事。戦うという事は、生きるという事だわ。いいわ○○○、勝負しましょう?」

次回、金の雀士。

37: 2010/04/16(金) 22:12:17.93 ID:YN0DX7aQ0
読んで頂き、ありがとうございます。
VIPはあまり来た事が無かったのですが、書き込み遅くてすいません。
一応全4話までを考えています。雛苺以外のドールは話に絡ませようかと思っています。

ローゼンメイデンファンの方で、気を悪くされた方がおられればすいません。

38: 2010/04/16(金) 22:34:57.35 ID:jDE2M1M20

引用: 翠星石「麻雀の、借金……?」