1: 2010/09/06(月) 02:38:52.45 ID:sRFRH.U0
勇者「どうも、勇者です。これは勇者と魔王系ssらしい」

勇者募集してたから王様に会いに行った【第一部】
勇者募集してたから王様に会いに行った【第二部】
勇者募集してたから王様に会いに行った【完結】
勇者募集してたから王様に会いに行った【IF外伝】

酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【1】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【2】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【3】

魔法の世界

≪あらすじ≫

勇者「前作から十数年後、新たな勇者達が魔王を倒すために旅に出た。しかし敵キャラ視点の話が長かったり、過去キャラの番外編があっ
たり、Qw0がし(ry……のせいで主人公達の出番が少なく、全然話が進んでないんだ!!いつになったら私達の出番は来るの!?」

2: 2010/09/06(月) 03:09:13.39 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

雪の降る夜、路地裏。

太男「ぐへへ。観念したかい?猫のお譲ちゃん」

細男「あ、あっー!いいですねぇその獣耳っ!わしゃわしゃしてあげたいですっ」

中男「ねーこーみーみー」

白猫亜人「ひ、ひぃ。怖いですにゃ……。お、おやめ下さい!それに私は貴方達と違って亜人ですよ?汚らわしいのでは……?」

細男「わ、わわわかってませんねぇ中には亜人じゃなきゃ駄目っていう人種もいるっていうことおぅふっ!!」

白猫亜人「にゃっ、にゃぁ……」

路地裏の奥へと追い込まれる白猫亜人。

???「待てぇい!!」

中男「ぬ!?何奴!?」

男達が声の主を探す。
声の主は、屋根の上で月を背にして立っていた。

3: 2010/09/06(月) 03:09:45.15 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

太男「な、なんだあいつはぐふ」

???「ひとーーつ、人の世の生き血を啜り」

バッ、ババ!!

屋根の上の人影はポーズを取る。

???「ふたーーつ、不埒な悪行三昧」

バッ、ババッバ!!

屋根の上の人影はセクシーポーズを取る。

???「みーーーーっつ、醜い浮き世の鬼を退治てくれよう!!!!」

ビシィン!!!!

人影は某超時空シンデレラの決めポーズを取った。

太男「キラッだ!」

細男「キラッだ!」

中男「キラァアアアアアアッ!!」

赤マントと鎧を身に纏った人影は、一人歓喜に酔いしれていた。

???「……決まった!」

4: 2010/09/06(月) 03:10:58.09 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

???「とうっ!!」

赤マントは屋根の上から飛び降り、白猫亜人の前で着地する。

シュタッ!!

???「情けない……。女一人に対して三人がかりとはな。チャバネゴキブリどもめ!」

太男「お、おまえなんかに言われる筋合いはないんだぐふ!!」

細男「そ、そそそうですっ!鉄仮面に赤マントなんて、かっこつけてっ!!」

中男「邪魔をするのなら氏ねぇい!!」

白猫亜人「あ、危ない!!」

太男は赤マントに突進した。

ドシン!

???「甘い!」

赤マントは太男の突進を左手一本で受けとめる。そして正拳突き。

ドボッ!!

太男「ぐはっ!?」

巨体でありながら宙を舞う太男。

5: 2010/09/06(月) 03:11:35.07 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

細男「!!……こいつ。一筋縄ではいかなそうですね……」

中男「俺がやるお!」

中男は背中の剣を抜き走りだす。

中男「おおおお!!」

ヒュッ!

振り下ろした剣を赤マントは中指と人差し指で受けとめ、

バキン!

???「……安い剣だ」

いとも簡単にへし折って捨てる。

中男「え、え、え」

???「そして軽い振りだ。剣はこうやって振るうのだ」

ズバッ!!

中男「っっ!!!?」

抜いた瞬間すらわからない。中男が気付いた時には、既に大剣で切り裂かれた後だった。

6: 2010/09/06(月) 03:12:15.62 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

中男「があああ!!いでぇえええ!!」

???「……深くはない。すぐ医師に見せれば氏ぬこともない」

中男「あぎょおおおおおおおおお!!」

???「……はぁ」

赤マントが中男に近づいた瞬間、

ヒュッ!!

???「!!」

ガイン!!

赤マントの頭部を石の塊が襲う。

細男「つ、つつつ土属性魔法レベル1!!や、やややりましたっ!!」

7: 2010/09/06(月) 03:13:32.78 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

思わぬ角度からの攻撃だったのか、不意を突かれた赤マントは鉄仮面が外れてしまう。

ガンっ

細男「おぅふっ!!わ、わわ私は魔法が使えるんですっ!!え、エリートなんですっ!!」

???「……」

赤マントはゆっくりと振り返った。

細男「はへ?……っ!?あ、あがががががが!!!」

???「……ちょっと痛かった」

細男「ろ、ろろ口リ娘!!??」

8: 2010/09/06(月) 03:14:15.34 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

少女の額には小さなこぶが出来ていた。

細男「も、ももも申し訳すいませんっ!!よ、よよ幼女に手を出すなどと紳士としてあるまじき行為でしたっ!!」

???「……」

ザッザッ

少女は何も言わず細男に近づいて行く。

細男「し、しし真の口リコンたるもの、現実の口リには手を出さず、守るべし!!その私が、き、気概を加えてしまうなど!!」

???「……」

ザッザッザっ

細男「あ、あぁなんたることだぁ!!……こうなったら、痛いところをなでなでしてあげるしかないっ!ぺろぺろしてあげるしかないっ!!さぁ、こっちへ来るのです!!わたしあがぺっ!?」

ボゴっ!!!

少女の拳が細男の頬にめり込む。

???「……ぶっ飛べ!!」

その後、少女は風属性魔法を使用し、三人の悪漢を吹き飛ばしたという。

9: 2010/09/06(月) 03:15:06.58 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

???「全く!あんなのばかりなのか世の中は!!」

少女は腕を組んで怒っている。

白猫亜人「ありがとうございましたにゃ……そんな小柄なのに、お強いんですね」

???「あ、大丈夫だったか?怪我は無い?」

白猫亜人「はい。なんとお礼を申し上げればよいのか……」

???「いい、そういうのも私の仕事なんだ」

白猫亜人「……え?そんな若いのに警護団か何かの方なんですか?」

???「いや、違う」

白猫亜人「じゃあ……騎士様?」

???「それも違う、私は……」

少女の赤マントが揺れる。

???「私は勇者だからなっ」

22: 2010/09/07(火) 19:23:00.98 ID:9JhRlTw0


--雪の町--

???改め勇者「すまない、寝床を貸してもらって」

白猫亜人「いえいいんですにゃ!助けてもらったお礼をしたかっただけなんですから……」

勇者「そんなに気にしなくてもいいのに。ありがとう」

白猫亜人「……」

白猫亜人は紅茶を勇者のカップに注いだ。

白猫亜人「この町にはどういったご用で?」

勇者「あぁ、この町というか、近くのダンジョンを制圧しにきたんだ。もう終わったけど」

ズッ

白猫亜人は勇者が紅茶を飲んでいるのを凝視している。

勇者「?どうしたんだ?」

白猫亜人「にゃっ!?あ……あ、えと、確かにさっきは強かったですけれど、本当に勇者様なのかにゃ、と……」


23: 2010/09/07(火) 19:24:07.99 ID:9JhRlTw0
10

--雪の町--

勇者「うん、まぁよく言われることだからな。私は成長も……あれだからよく疑われるんだ。ちょっと待ってくれ」

勇者は鎧の胸部分に手を入れるとまさぐり始めた。

白猫亜人「にゃ、にゃっ!?」

突然の出来事に驚く白猫亜人。

勇者「んと……あったあった、テレレレレレ~ゆうしゃしょうめいしょ~~……こ、コホン、これを見てくれ」

勇者は赤面しながら証書を渡す。

白猫亜人「……この者を勇者と認める。なお、本人確認をする際には、その限りなく平らな胸を見てもらえればわかることとおも」

バシッ!!

勇者は白猫亜人から勇者証明書をひったくった。

勇者「……」

白猫亜人「……どうやってこれが入ってたのかと思ったけど、胸の部分はスペースになって」

勇者「違うから勇者じゃないから」

勇者の目は笑っていない。

24: 2010/09/07(火) 19:25:07.30 ID:9JhRlTw0
11

--雪の町--

白猫亜人「え?」

勇者は自分で勇者と名乗っておきながら、勇者であることを否定した。

勇者「ち、ちち違うもん!!勇者じゃないから別にこれは!!」

白猫亜人「にゃにゃ!?貴女は勇者様なんですよね!?そして証書にある通りに胸は断崖絶壁ギアナ高地と」

勇者「そんな説明文じゃ無かったはずだ!!」

白猫亜人「むしろマイナスと」

勇者「へこんでないよ!!」

白猫亜人「着物はスレンダーの方が似合うかと」

勇者「慰めになってないよ!!」

ズイッ

白猫亜人「……とりあえず、確認させていただきますにゃ」

勇者「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!」

25: 2010/09/07(火) 19:26:00.56 ID:9JhRlTw0
12

--雪の町--

チュンチュン朝チュン。

勇者「絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した失望した絶望した絶望した絶望した絶望した」

白猫亜人「正真正銘の勇者様とお見受けいたしましたにゃ!!」

ベッドで恨めしそうに白猫亜人を睨む勇者。

勇者「……私をこんなに辱めてまで、確認したかった理由はなんだ?」

白猫亜人「あ……」

勇者「もとい、私が本当の勇者なのかを確認したかったのはなぜ?」

白猫亜人「……」

白猫亜人はしばらく沈黙し、そして勢いよく土下座した。

ガッ!

白猫亜人「無礼をお詫び致します勇者様!!大変申し訳ありませんでした!!私は、私は本当の勇者様を探していたんです!!是非お力をお貸し下さい!!」

勇者はベッドに座り直すと、真面目な表情で口を開いた。

勇者「聞こう。何があった?」

26: 2010/09/07(火) 19:26:41.02 ID:9JhRlTw0
13

--雪の町--

白猫亜人「始まりは彼ら、王国の研究員達がこの地に来たことから始まりますにゃ」

勇者(……王国の研究員……)

白猫亜人「彼らはモンスターの生態調査だと言って、町外れに一軒の建物を建てたんですにゃ」

勇者(研究員が、もしあの人が来ていたなら……きっとまともな形で終わらせはしないはず……)

白猫亜人「彼らは確かに調査をしていました。でもモンスターの生態調査というよりは、何かの実験を繰り返しているようでした……」

白猫亜人の声は次第に震えたものとなる。

白猫亜人「彼らはたまに人員を募集してきました。モンスターの相手をするには我々だけでは難しいから、と。でも……戻ってきた人は一人も……いません」

勇者「……それで?」

白猫亜人「町の人達も変だと思っていたんです。でも役人さん達は彼らに協力しろ、と一点張りで……それで……それで二週間前に、夫……も」

勇者「連れていかれたのか」

27: 2010/09/07(火) 19:27:28.91 ID:9JhRlTw0
14

--雪の町--

白猫亜人「私、怖かった!!だからあの人に行かないで、って何度もお願いしたんです……でも、あの人は正義感が強い人だったにゃ」



白猫夫『俺、行くよ。彼らが何をしているのか知りたいし、悪いことをしているんだったら止めたい』

白猫亜人『で、でもっ……もし、もし貴方が帰って来なかったら私っ!!』

白猫夫は白猫亜人の肩にそっと手を乗せる。

白猫夫『絶対に帰ってくる。俺はお前たちを残して氏んだりしないから』

白猫亜人『……あなたっ!!』

白猫夫『お前っ!!』

ヒシッ



白猫亜人「そこから二時間にも及ぶ交尾が」

勇者「台無しだよ!!」

28: 2010/09/07(火) 19:28:11.38 ID:9JhRlTw0
15

--雪の町--

白猫亜人「それであの人をずっと、ずっと待ちました。でも、いてもたってもいられなくて……私は……あの施設に行きました」

勇者「え……」

白猫亜人「あ、そういう意味じゃないです、忍び込んだんです。私元々盗賊だったんで隠密行動は得意なんですにゃ」

勇者(盗賊スキル+亜人の身体能力。確かにばれずに忍び込めるかもしれないな)

白猫亜人「過酷な重労働をさせていると思ったんです。だからその実態を紙に書き記し、役人に届けようと……思っていました……甘かった」

勇者「……」

白猫亜人「中の惨状を上手く説明出来る……自信がありません……私、私……」

彼女が見た施設の内部は、地獄だったという。
人間同士の頃し合い、攻撃魔法の威力実験のために貼り付けられた人、突然焼け氏ぬ人間や、モンスターの顔や手足と交換させられた人間。

そして、

??『し、侵入者、はは、はっけン』

白猫亜人『!?……え?』

侵入した彼女を最初に発見したもの、それは

白猫亜人「四本の脚と毛むくじゃらの両手そして……夫の顔を持つ化物でした……」

29: 2010/09/07(火) 19:28:47.67 ID:9JhRlTw0
16

--雪の町--

白猫亜人「必氏で目を擦った!!でも、でもそれはああぁぁん!!」

白猫亜人は大声で泣き喚いた。自らの体を引き裂かれたかのようなひどい声で。

勇者「……く」

白猫亜人「私はっ、逃げました!!そして役所に伝えました!!でも!」



役所員『……はぁ、ったく怖い形相で話し始めるからなにかと思えば……。昼間っから夢見てんじゃねぇよ奥さん』



白猫亜人「……頼れる人はもういません。愛する人ももう……。だからお願いです……お願いです勇者様!!あの施設を破壊して下さい!!」

30: 2010/09/07(火) 19:30:08.84 ID:9JhRlTw0
17

--施設--

この世界は地獄。

感電している少年「ぎゃあああああ!!」

???「……あれが始まってからどれくらいになる?」

?「……さぁ。もうずっとですよ~」

感電している少年「あああああ!!」

???「かわいそうだな……早く楽になっちゃえばいいのに。ああなったらどのみちおしまいなんだから」

?「そうですね~」

地獄は続く。生きているからこそ続く。

なまじ他人より強いせいで、私は他人より長くここにいる。

感電している少年「あああっ、ああ、あ、ああ」

???「そろそろか……」

?「そうですね~」

いいなぁ……弱くて。

31: 2010/09/07(火) 19:30:37.38 ID:9JhRlTw0
18

--施設--

感電している少年「ああ……あ……あ」

私はちょっとだけ強いからいつまでもここにいる。
明日は私の番だと、ずっと怯えて生き続ける。

感電している少年「……」

???「終わったか。南無……」

?「……ふ」

全く持って羨ましい限りだ。
彼はほんのちょっとしか地獄を味わわずにあの世に逃げ込んだ。
それもこれも彼が弱いからこそ手に入れた特権。

?「ふふ……ふふふ~」

???「……気でも触れたのか?」

?「ふふふふふふ~」

早く私にもあれが来ないかな。

???「いや……それも当然か……。早く寝たほうがいいぞ36号」

?改め36号「ふふふふ~」

だって私は早く氏にたいのだから。

32: 2010/09/07(火) 19:31:48.15 ID:9JhRlTw0
19

--施設--

研究員「中々持ちこたえまーすねー、本国から持ち込んだあの三十番台はー」

ロン毛研究員「百番台がゴロゴロと氏んで行く中すごいですよね。三十番台はどんなアプローチでしたっけ?」

眼鏡研究員「確かモンスターと中身全とっかえ……あ、あれは五十番台か。えーと」

研究員「鬼の心臓。それと細胞の活性化ですかーね」

眼鏡研究員「おお、そうだそうだ。あの伝説の生物と言われる鬼のサンプルを利用した実験番台でしたな。鬼など眉唾物でしたが……こうまで成果を見せ付けられては、信じるしかないかもしれませんね」

ロン毛研究員「私は見たものしか信じません。石のようになった鬼の血の結晶だなどと……あれはきっと魔石か何かで……」

研究員「なんでもいいじゃないですーかw今は人造勇者の実験中、他のことなんかに目もくれーず、成果にだけ目をむけまーしょ」

33: 2010/09/07(火) 19:32:41.58 ID:9JhRlTw0
20

--施設--

ゴポッ

ロン毛研究員「それはなんですか研究員?」

研究員「あー、これですーか?見せたこと無かったでしたけー?」

ロン毛研究員はカプセルに入った胎児を指さして言った。

研究員「これはですねー、人造勇者実験と同時進行でやってるんですーよ。着手したのはこっちのが早いんですがねー」

ロン毛研究員「へぇ……胎児のわりに、魔力量が恐ろしい数値を示していますね……。研究員、貴方世界を滅ぼしたりしないでくださいよ?」

研究員「あはー。そんなことするわけないじゃないですかー」

眼鏡研究員(……ちょっと不安ですね。北の王とまた違ったベクトルの頭脳の持ち主……最狂の頭脳……)

研究員「あーはーはーはー」





            勇者募集してたから王様に会いに行った
               番外編ss・isの踊子

53: 2010/09/23(木) 11:56:18.74 ID:/Kiw7os0
明日は鰻屋の説明会……
こんにちわー。私です。色々とありがとうございます。

本当は全部書き終えてから一気に投下しようと思いましたが、最近書けてないので、小出ししたいと思います。それでは随分とあいてしまいましたが、投下しますー。

54: 2010/09/23(木) 11:58:05.99 ID:/Kiw7os0
21

--施設--

勇者「……」

勇者は施設のダクト内に忍びこんでいる。



勇者『駄目だ、君はここで待機していろ』

白猫亜人『え!?にゃ、にゃぜですか!?私はある程度だけど施設内の構造を理解しています。役に立てる自信はあります!!それに頼むだけ頼んで自分は傍観だなんて、いやです!!』

勇者『駄目だ』

白猫亜人『なぜ……ですにゃ』

勇者『私は諸事情により単独行動がなれている。そして……』

白猫亜人『……』

勇者『き、君では狭くて通りづらい場所でも……私なら入れるし』

白猫亜人『ごめんにゃ』

55: 2010/09/23(木) 11:59:31.40 ID:/Kiw7os0
22

--施設--

勇者(ここも通れそうだな。よし、装備換装、軽装ver)

バシュッ

勇者の装備が鎧からセーラー服に変化する。

勇者(……便利な魔法なんだけど、なんでこれ……まぁいいや)

勇者はほふく前進でダクトの中を通っていく。

もぞもぞ

勇者(うー……埃が。我慢我慢)

もぞもぞもぞもぞ

勇者(ん?)

芋虫実験体「……」

勇者の目の前に人並大の芋虫がいた。

56: 2010/09/23(木) 12:00:28.69 ID:/Kiw7os0
23

--施設--

勇者「ぎゃっ、ぎゃわああああああああああああ!!!!!!」

芋虫実験体「おぎょぽぽぽぽぽぽ!!!!?」

ドゴオオオン!!!!

勇者はダクトを破壊した。


ロン毛研究員「何事です!?この騒ぎは!?」

警備員「一部の実験体が暴れています!!」

眼鏡研究員「そんな、警備用の完全に制御した実験体以外、厳重に管理しているはずなのに!!」

研究員「……ふむー」

研究員は手元の小石を眺めている。

研究員「ふふーん」

57: 2010/09/23(木) 12:02:16.45 ID:/Kiw7os0
24

--施設--

ペガサス実験体「んー……ペガサスデース」

キリン実験体「ふー、ふー」

勇者「……つい取り乱してしまった」

合成実験体「し、しんぬーさ」

合成実験体は口から火炎弾を吐き出した。

勇者「!?」

ドオオン!!!!

施設内で巨大な火柱が上がる。

キリン実験体「やったか?」

ペガサス実験体「ちょwそのセリフはまずいデース」


58: 2010/09/23(木) 12:03:15.88 ID:/Kiw7os0
25

--施設--

勇者「熱いなぁもう」

燃え盛る炎の中から、大剣を構えた勇者が涼しい顔で歩いて出てくる。

ペガサス実験体「かすり傷すら無いデース」

キリン実験体「おのれ!!名を、名を名乗れ!!」

勇者(こいつらも……元は人間……なんだよね。でもこうなっては)

キリン実験体「名乗りやがれええええええ!!!!」

キリン実験体が叫ぶと、体の周囲に竜巻が発生する。

勇者(……可哀そうだけど、やるしかないよね)

キリン実験体「くらえええええええええ!!」

竜巻が勇者を襲う。

59: 2010/09/23(木) 12:04:12.61 ID:/Kiw7os0
26

--施設--

ペガサス実験体「び、便乗するしか無いデース!」

ペガサスは鼻から水を大砲のように発射する。

ビュオオオオオオオオオオ!!!!

勇者「……ごめん、炎属性付与」

勇者が大剣に炎を宿す。そして振り抜く。

ゴオオオオオオオオ!!!

ペガサス実験体「!?」

60: 2010/09/23(木) 12:05:08.97 ID:/Kiw7os0
27

--施設--

ゴオオオオオオオオ

施設内が劫火に支配される。

ペガサス実験体「そ、そんなバカな……トゥーンデース」

勇者「……やっぱり……私には仲間なんていらないのかもしれない」

勇者は自分の大剣を見つめて佇んでいる。

キリン実験体「俺らの、魔法攻撃を一振りで押し返しただと!?」

勇者「ちょっと本気でやれば周囲がこれだもの……」

合成実験体「う、うほーーーーーー!!!!」

合成実験体は勇者に向かって突進する。

キリン実験体(俺達はこれでも、伝説の勇者の力を組み込まれた存在だってのに、こいつ……)

61: 2010/09/23(木) 12:07:13.21 ID:/Kiw7os0
28

--施設--

???「なんだ?さっきから外が騒がしいな……」

36号「とんちきパーティでもしてるんですかね~」

???「そんなわけないだろう」

36号の隣室にいる女性はため息をつく。

???「きっと何かあったんだ」

36号「ふふ……あったからなんだと言うんです?貴女こそ長いことここに入れられてたせいで狂っちゃいましたか~?1号」

???改め1号「……」

36号「いいじゃないですか、なんであれ。誰かが助けに来ることは無い。私達が助かること、それだけは絶対にありえない。それさえわかってればいいじゃないですか~」

1号「お前……」

36号「トラブルにしろ、新しい実験にしろ、早く私達が終わるように祈っていましょう~」

62: 2010/09/23(木) 12:08:22.99 ID:/Kiw7os0
29

--施設--

眼鏡研究員「ちょ、ちょっと!!この魔力反応を見てください!!」

眼鏡研究員は六角形の石を二人に向けた。

ロン毛研究員「!?まさかこの膨大な勇者因子反応は……オリジナルですか!?」

眼鏡研究員「あぁ、恐らくどこから情報を手に入れて潰しに来たんでしょう!!まずいぞ、勇者には俺達がこんな実験をしているだなんて教えていないんだ!」

ロン毛研究員「くそ!!……!?いやまてよ、だったらこれは王国の研究だと勇者に言えばいいだけじゃないんですか!?」

研究員「無理でしょーねー」

ずずっ

コーヒーをすすりながら研究員が口をはさむ。

眼鏡研究員「!?なんでですか研究員さん!!」

研究員「あの子は徹底的に教え込まれ叩きこまれていますからねーあのお硬い大賢者様にーww。そこに悪事があればなんであれ叩き潰すようにとー」

63: 2010/09/23(木) 12:10:17.45 ID:/Kiw7os0
30

--施設--

ロン毛研究員「いやでも、見知った私らの顔を見れば納得してくれないものでしょうか?これは王の命であり王国の意志なんだすよ?」

研究員「あの子が私達を発見したら、即座に攻撃してきますよー。王国に扮したどこぞの手先、いや王国の裏切り者と考えつくかもしれませんねー」

ロン毛研究員「うぐ……じゃあどうすれば……」

研究員「逃げます」

眼鏡研究員「!!そんな簡単に言いますが、資料やデータを整理する時間だって!!」

研究員は自分の頭をこつこつと指でつつく。

研究員「もう全部入ってますー」

ロン毛研究員「!?……は、はは。やっぱりアンタはすごい人ですよ!!」

64: 2010/09/23(木) 12:11:38.14 ID:/Kiw7os0
31

--施設--

ロン毛研究員「よし逃げましょう!!一刻も早く!!」

研究員「待って下さいー。王国がやっていたという証拠だけは消していかねばなりませんよー」

眼鏡研究員「しかしもう王国の研究部隊がこの施設を使用しているという情報は周知の事実です。今更……」

研究員「北の王国にその届け出を出したのは眼鏡さんですよねー?」

眼鏡研究員「え?あ、はいそうですけど」

研究員「そして勇者に顔を知られているのは貴方達二人だけとー」

ロン毛研究員「何を今更……それを言うなら貴方だって」

研究員はポケットから錠剤のようなものを取りだした。

眼鏡研究員「それは?」

65: 2010/09/23(木) 12:12:42.42 ID:/Kiw7os0
32

--施設--

研究員「うふふー」

研究員はそれをポイと自分の口の中に放り込んだ。

ロン毛研究員「!?なんだ、何を食ったのです!?まさか自頃する気では!?」

研究員「あほですかぁ、しませんよー。これは自分の顔を変える薬ですよー。やれやれ、魔法の才能からきしだから、変身するにも道具の力を借りなければならないなんて不便ですー」

ボコボココ

研究員の顔が波打ち、顔の造形が変わっていく。
研究員は変形が終わるころ合いを見計らい、ポケットから手鏡を取りだして自分の顔を確認した。

研究員「おうおう、いいじゃないですかー」

それはまるで蛙の顔。

眼鏡研究員「い、いとも簡単に自分の顔を捨てやがった……」

66: 2010/09/23(木) 12:13:13.92 ID:/Kiw7os0
33

--施設--

ロン毛研究員「く、くっ!!背に腹は代えられない!!早く私にもそれを下さい!」

研究員「え?何を言ってるんですかー?これは私一人分しかないですよー?ゲロゲロww」

ロン毛研究員「ええ!?それじゃあ私達はどうするんですか!?」

研究員「そうですねー」

研究員はさも考え事をしているかのようなポーズを取る。そしてカプセルのところに行く。

コツコツ

研究員「起きて下さいー。君を使う時が来たようですー。ちょっと時期が早かったですけど仕方がないですからねー」

????『ゴボッ』

バキっ、バキィン

カプセルにひびが入り、緑色の液体が廊下を濡らしていく。

眼鏡研究員(……)

67: 2010/09/23(木) 12:13:55.91 ID:/Kiw7os0
34

--施設--

????「ヴー……」

バキバキ

二つの尻尾を持つ胎児がカプセルを割りながら出てくる。

パシャっ

ロン毛研究員「そいつには何か能力があるんですか!?そいつがいれば私たちもなんとかなるんですか!?」

研究員「えー。なんとかなりますよー。さぁ、とりあえずあれだ、やってごらんー」

研究員は胎児に命令を下すと、胎児が動き出した。

????「ヴー」

バヂン

眼鏡研究員「……え」

一瞬のことだった。
胎児は跳躍し、一瞬でロン毛研究員の頭部を粉砕した。

68: 2010/09/23(木) 12:15:07.23 ID:/Kiw7os0
35

--施設--

????「ヴー」

研究員「ほぉう。中々素晴らしいじゃないですかー。では次は……」

眼鏡研究員「ひっ!?あ、貴方!!元から私達をここで始末する気だったのですか!?」

研究員「いえね、私が一人で逃げるのと、貴方達と一緒に逃げるのと、どっちの方が安全かなんて考えたら一目瞭然じゃないですかー」

????「ヴー」

研究員「貴方の口から情報が漏れる心配もありますしー。ほら、人の口にはどうのこうのって言うじゃないですかー」

眼鏡研究員「ひ、ひっ!!」

研究員「他人の実験の仕方も見れて有意義でしたー。と言っても貴方方の無能さは目に余りますねーw結局私自身が行った1号と36号以外3日も生き延びられなかったのですから」

????「ヴー」

研究員「ここでの研究を糧に、本国に帰ったら必ずや成功体を作ることをお約束いたしますー。ではではー」

ベチャッ

69: 2010/09/23(木) 12:15:57.86 ID:/Kiw7os0
36

--施設--

ペガサス実験体「ば、化物デース……」

勇者「……」

フロアには数十体の実験体が無造作にころがっている。

ペガサス実験体「わ、わたしたちは弱くナイデース!!弱くない……筈なのに……こうも簡単に……」

じゃり

勇者がペガサスに視線を向ける。

ペガサス「どきっデース!!」

勇者「……お前ももうおやすみ」

勇者の掌に赤い光が灯る。

ガシャアアアアン!!!!

勇者「!?」

施設の二回のガラスが破られ、中から5人の実験体が飛び出してきた。

70: 2010/09/23(木) 12:17:20.93 ID:/Kiw7os0
37

--施設--

がいこつ実験体「バカメ!!スキガデキルノヲマッテイタノダ!!雷属性魔法レベル4!!」

トイレ実験体「土属性魔法レベル4!!」

扇風機実験体「水属性魔法レベル4!!」

納豆実験体「火属性魔法レベル4!!」

靴下実験体「氷属性魔法レベル4!!」

ドッゴオオオオオオオオオオオオン!!!!

各属性の最強魔法が勇者を襲う。
しかし勇者は微塵も揺らがない。

勇者「全方位逆転バリアー」

がいこつ実験体「なに、」

全ての魔法が反射される。

チュドドドドドオドオオオオオン!!!!!

71: 2010/09/23(木) 12:18:02.41 ID:/Kiw7os0
38

--施設--

ペガサス実験体「レベル4魔法を全部跳ね返したデース!!で、でたらめデスゆーぎボーイ!!」

勇者「……残るはお前のみだ」

勇者は大剣を構える。

ペガサス実験体「……逃げるが勝ちデース!!」

バサバサ

勇者「に、逃げるなっ!」

戦闘で空いた穴からペガサスは逃げ出した。

勇者「……まぁいいか。一体くらい。あんま危害を加えそうな奴じゃないし」

72: 2010/09/23(木) 12:18:37.72 ID:/Kiw7os0
39

--施設--

その後勇者が施設を探索していると、ある部屋の扉が急に開いた。

研究員「た、助けてゲロー!!」

中からカエル顔の人間が飛び出してきた。

研究員「もう実験される人生は嫌だゲロ!!あんた助けに来てくれたゲロね!?よかったゲロー!」

????「ヴー」

研究員は胎児を抱きながら勇者のもとに駆け寄った。

勇者「……そうだ、助けに来た。他にもまだいるのか?」

勇者は燃えている資料と、床に散らばった二人の氏体を見ながら問うた。

研究員「この階にはもういないゲロが、地下にはまだいるかもゲロ」

勇者「そうか。じゃあ地下に行こう」

勇者は踵を返し、地下への階段を探す。

研究員(うーふーふー)

73: 2010/09/23(木) 12:19:38.21 ID:/Kiw7os0
40

--施設--

勇者「地下への入り口がどこにあるかわかるか?」

研究員「多分あっちかなゲローリ」

????「ヴー」

勇者「ここ……かな?」

勇者が瓦礫をどかすと、地下へと続く空洞を発見した。

研究員「おぉーあったゲロー!よかったゲロー」

勇者は通路を確認した後、大剣の柄に手を伸ばし研究員を切り付けた。

ブシッ

研究員「!?なんでゲロ!?」

深くは無い傷口を押さえながら研究員は叫ぶ。

勇者「……白々しい。貴方はこの施設の人間だろう?」

研究員「!!……」

74: 2010/09/23(木) 12:20:41.83 ID:/Kiw7os0
41

--施設--

勇者「顔は変えようとも、体に染み付いた薬品の匂いは誤魔化せない」

研究員「や、薬品をかぶっちまったんだゲロ!!」

勇者「その割りに服は濡れてないじゃん」

研究員「……濡れるッ!!」

勇者「ただ言いたかっただけでしょ!!」

????「ヴー」

勇者「なぜ他の研究員を頃したの?やっぱり口封じ?……研究員さん」

研究員「!!……ふふふ。しばらく見ない間に、ちょっとは成長したみたいですねー。この状況化でもちゃんと観察しているしー。段々勇者が板についてきたようですなー、勇者ちゃん」

75: 2010/09/23(木) 12:21:21.83 ID:/Kiw7os0
42

--施設--

勇者(……やっぱり)

研究員「例え半信半疑でのかまかけだったとしても、十分評価に値しますよー。でも、なぜ私だと?」

勇者「貴方の実験は結果だけを求めているから品が無いんです。すぐに……わかる」

研究員「ふふふ。全ては結果が出てから取り繕えばいいと思ってますのでー。しかし無駄になっちゃいました、この顔。ゲコッ」

勇者「……これは王様の命令なんですか……?」

研究員「さあねー」

勇者「ッ!」

勇者は大剣を強く握り締める。

研究員「ふふふ。勇者ちゃん、今、嘘発見スキル使ってるでしょ。お見通しさっ」

76: 2010/09/23(木) 12:22:22.70 ID:/Kiw7os0
43

--施設--

勇者「……」

研究員(これ以上話して情報を与える必要は無さそうだなー)

????「ヴー」

研究員「あぁ、ごめんごめん、もう行こうねー。じゃあ勇者ちゃん、私はおいとまさせていただくよー」

研究員はひらひらと手を降って勇者に背を向けた。

勇者「!!逃がすか!!」

研究員「やっぱり顔見知りの私でも頃すの?」

勇者「頃す。私は全ての悪しき行動を駆逐する義務と権利がある!!」

研究員「ふーん。一体勇者様って何様な職業なんだろねー。まぁいいやー」

研究員は再び勇者と向かい合う。

研究員「勇者ちゃん、一つだけ忠告してあげるー。勇者ちゃんはきっと悲劇的な結末を送ることになるよー」

77: 2010/09/23(木) 12:23:12.27 ID:/Kiw7os0
44

--施設--

勇者「な、何を言って」

研究員「……今のは私なりの勇者ちゃんへの贈り物。未来がわかっているなら覚悟もしやすいでしょ?」

勇者「ッ!!ただの呪咀にしか聞こえない!!」

勇者は全力で切り掛かった。

????「ヴー」

ガキィィィン!!

勇者「……な」

しかし大剣は胎児の尻尾で防がれてしまう。

研究員「じゃあ、次があるかはわからないけど、またねー」

ズブブ

胎児から天使のような羽が生える。

バサッバサッ

勇者(私の攻撃が……防がれた?)

勇者は彼らが穴から外にでていくのを呆然と眺めていた。

78: 2010/09/23(木) 12:24:16.25 ID:/Kiw7os0
45

--施設--

白猫亜人(うわ、随分すごいことになってるにゃ)

ダクトの中から白猫亜人が顔を出す。

白猫亜人(やっぱりマジもんの勇者様だったんだ……)

シュタッ

ダクトから飛び降りて着地。

白猫亜人(やっぱり勇者様にだけ任せておけない……あの人は、あの人だけは!!)

白猫亜人は四足で疾走する。そこは野生の力なのか、風のように通路を駆け抜ける。

白猫亜人(確か前はここら辺辺りで……)

道の先まで見渡すも、生物の姿を確認することもできない。

白猫亜人(……捜し回るにゃ)

79: 2010/09/23(木) 12:25:22.79 ID:/Kiw7os0
46

--施設--

勇者(この施設で一体何の実験をしていたんだろう。資料は燃えていたからな……)

カンカン

勇者は地下への階段を降りていく。

勇者(どの実験体も強かった。大賢者様を除けば、あれほど強い敵はみたことがない)

カンカンカン

勇者(!!……何か感じる。何だこの感覚……呼び合っている?共鳴?)

勇者は新しい感覚に戸惑いを感じた。

80: 2010/09/23(木) 12:25:51.89 ID:/Kiw7os0
47

--施設--

1号「……何かが来るね。凄いプレッシャーだ……でもこれを知っている」

36号「なんでですかね~……」

1号「多分」

ギィ

彼女らのいるフロアのドアが開かれる。

勇者「ここか?」

勇者は檻の中に入れられている二人の少女の姿を確認した。

1号「……あれがオリジナルなんだろう」

36号「……ふ、ふふふふ!」


81: 2010/09/23(木) 12:26:35.75 ID:/Kiw7os0
48

--施設--

勇者「君達……二人だけか?」

勇者は辺りを見回しながら質問する。

1号「助け……なのか?……そして勇者、だな?あんた」

1号は警戒しながら立ちあがった。

勇者「……あぁ、そうだ」

勇者は檻に近付いて行く。

勇者(……彼女たちは、大丈夫なのか?人に害をなさないようであれば助けるのだが)

36号「ふふ、ふふふふ!!」

36号は立ちあがり檻を掴む。

ガンっ

36号「貴方が、貴方が天下の勇者様ですか~!!」

勇者「?」

82: 2010/09/23(木) 12:27:18.02 ID:/Kiw7os0
49

--施設--

1号「おい」

36号「今も人助けの最中なんですか?勇者様は~。さすが勇者様です~。こわーい人達に体をいじくり回されている可哀そうな私達を助けに来てくれたんですか~?感激です~」

勇者「……何が言いたいんだ?」

36号「全ての元凶が何様だって言ってるんですよ~」

勇者「!?」

1号「おい36号……」

36号「でも残念ですね~ここに人はいませんよ~?ここにいる実験体は全て、ある化物から抽出されたエキスを元に、非人道的な改造を受けた化物もどきですからね~!!」

勇者「まさか……まさかそういうことなのか?」

36号「そうですよ~。間違いありません~。いじくられた私の体が答えるんですよ~。分かたれた体がそこにあるってね!!」

83: 2010/09/23(木) 12:28:13.35 ID:/Kiw7os0
50

--施設--

36号は檻を揺らす。

36号「お前が、お前が全ての元凶だ!!お前なんかがいたから人は夢を見たんだ!!人類の希望?はっ!!私達にとってはちっとも希望なんかじゃない!!」

勇者「っ……」

勇者は36号を直視できず視線をずらす。

1号「もう気が済んだだろ、やめるんだ」

36号「1号は悔しくないんですか!?憎くないんですか!?こいつがいなければ私達がこんな目にあうことなんて無かった!!こいつが人知を超えた化物だったからっ……くっ」

36号は地面にしゃがみ込んだ。

1号「……なぁ、あんた。あんた……自分のデータとか、血液とか、誰かに渡したことあるか?」

勇者「……あぁ」

36号「!!」

102: 2010/10/07(木) 22:00:49.28 ID:ZmaCCcs0
51

--施設--

1号「自分から提供したのか?」

勇者「いや。……だが今思えばそれが何に使われるのかなんて、容易に想像できたことだな」

1号「……だろうな」

勇者はいまだに自分のことを睨んでいる36号に向き直る。

勇者「しかし私を怨むというのなら逆恨みだ。私の存在まで恨まれる理由は無い」

35号「ぐう!!」

勇者「ともかく、君らは外見上は人と変わらないし、会話も十全に出来るようだ。もし君らが人を傷つけないと約束するのなら、そこから出そう」

1号「人を傷つける?そんな気なんてないさ。この力だって欲しくて手に入れたわけじゃないんだ」

勇者「そう……だろうな」(でも人に恨みは……)

103: 2010/10/07(木) 22:06:55.48 ID:ZmaCCcs0
52

--施設--

36号「腹が煮え繰り返りそうです……なんで、なんであんたなんかに命を握られなきゃならないんですかっ……」

1号「もうやめろ……彼女の言う通り、それは逆恨みだ。恨むなら施設の研究員達を恨め……」

36号「わかって……ます、わかってますよ!!それでも恨んでないと狂いそうになる!!少しでも今の状況を生み出したことにかかわり合いがある奴を、片っ端から!!」

36号は涙に滲んだ瞳で勇者を睨む。

36号「正しいとか真実とかどうだっていい!!」

36号は過去を振り替える。かつて自分のことを姉と慕う少年の笑顔。

36号「私の日常が奪われたことには変わりないんだ!!」

黒服の男達に連れ去られようとしている幼き日の自分。

36号「私の体を元通りにしろ!!」

黒服の男達に飛び掛かった弟は切り捨てられる。

36号「ただ……ただお前が憎い!!」

1号「……!?これは……暴走!?やめろ36号、落ち着け!!戻れなくなる!!」

36号の体の所々が裂け始め、魔力が漏れはじめる。

104: 2010/10/07(木) 22:14:49.66 ID:ZmaCCcs0
53

--施設--

空を漂う研究員と羽の生えた胎児。二人は鳥も飛ばない高度から施設を眺めていた。

研究員「そろそろ彼女らは接触しましたかねー。36号は勇者と会った時にスイッチが入るようにしてありましたから。さて、最後の実験は高みの見物ですー」

1号「36号!!ダメだ!!」

36号「う、ううう!!ウアアイアアアア!!」

36号は鉄枷を粉砕する。

1号「!?対魔物質で出来た枷を!?」

勇者「!!」

ギギギィ

36号が手を触れると、檻は簡単に歪み始めた。

36号「アアアアアアア!!」

そして強力な魔力爆発が発生する。

ドゴォォォン!!

105: 2010/10/07(木) 22:23:17.57 ID:ZmaCCcs0
54

--施設--

勇者「げほっ、ごほっ。今のは一体……」

粉塵を払い、視界を確保しようとする。

ユラッ

勇者「……っ」

立ち上がった影が視界の端に映る。そして、

36号「あ、亜は波はは!!凝んな体にナッテカラ、本気なんてダシタコトなかっ他けど、スゴい……なんてちから!!今ならドンナも野でも壊せそう~」

勇者「……力に飲まれている」

1号「や、やめるんだ!抑えろ36号!!」

106: 2010/10/07(木) 22:31:56.19 ID:ZmaCCcs0
55

--施設--

36号「……もう無理デスよ1号……私、リミッター外れちゃったミタイデスもん~……貴女はニゲテくだ再~貴女まで傷つける理由ナンテ無いデスから~」

1号「自分の身を案じて言ってるわけじゃない!」

36号「わかってマスよ、それくらい私二だって……でも、モウ、止められ、ない!!」

36号は渾身の力を込めた右足で勇者を狙う。

ドゴッ!!

勇者「ぐっ!」

勇者はそれを左腕でガードするが、いとも簡単に弾き飛ばされてしまう。

ドザッ

勇者「私が……ガード仕切れない?」

勇者は痺れた自分の左腕を見て驚いていた。

107: 2010/10/07(木) 22:40:54.14 ID:ZmaCCcs0
56

--施設--

36号「アタリマエです夜~いくら模造品と言えど私の力は貴女の力。効かぬ道理は無いです余~」

36号は跳躍し、勇者に次の一撃を放つ。

36号「ドゥリルゥ……」

36号は空中で回転する。右足に一極集中された魔力は閃光を放ち、光の帯のように目に映る。

勇者(やばい……あの光は私の、六色魔法の光!!)

36号「イナズマ蹴り!!」

足に集中させたのとは別の魔力を反対方向に放出。36号は空中で推進力を得て、爆発的な速度で落下した。

ギュン!!

勇者「!!」(回避がまにあ)

ドギャギャギャギャギャ!!

108: 2010/10/07(木) 22:47:30.51 ID:ZmaCCcs0
57

--施設--

勇者は防御体制を取るだけで精一杯。クロスした両腕の上で36号はコマのように回転している。

ビヂ、ビヂャヂャヂャヂャ!!

あっという間にガントレットは突破され、その下の肉が掘られ始める。

勇者「ぐっ、ぐああっ!!」

36号「ヤリ、ますねェェ、まさか、今のワタシの攻撃をスキルも魔法も使わずにタエテルだナンテ!!」

しかし回転は止まらず、勇者の血が部屋を塗りつぶしていく。

1号「36号!!」

勇者(ダメだ、まずい、ガードを下げたいけど踏張ってないと押し込まれる!!でもこのままじゃ自分から差し込むことに!!)

36号「おら、オラオラ、おララララー!!」

36号は更に魔力を放出、回転速度が増していく。

109: 2010/10/07(木) 22:52:33.66 ID:ZmaCCcs0
58

--施設--

勇者(だめっ!!もう耐えきれない!!)

バヂュン!!

腕を粉砕した36号の爪先が勇者の平たい胸に接

勇者「独自開発魔法、アリスパーティ」

ビャー!!

36号の攻撃が身体に触れるか否かの瞬間、六色の光が勇者から放たれた。

1号「ぐっ!?」

36号「うおっまぶし!」

眼も眩むような閃光。

110: 2010/10/07(木) 22:55:48.75 ID:ZmaCCcs0
59

--施設--

36号「なにが……起こったンデ巣か~……」

気付けば36号の回転は止まっていた。しかも空中であの体勢のまま。

36号の自分の右足を見てみると、そこには4つの変な物がまとわりついていた。

?「やいやいやい、よくもうちのアリスをいじめてくれたにゃ」

??「アリスさん、今腕を治しますっ」

???「ひひww久しぶりだなぁおっおっww」

????「お、おで」

36号「!?」

奇妙な猫と、眼鏡をかけたウサギ、動く帽子と、巨大なうさぎ。

111: 2010/10/07(木) 23:04:55.58 ID:ZmaCCcs0
60

--施設--

眼鏡をかけたウサギはぴょんぴょんと跳びはねて移動する。そこには片腕のとれた小さな少女がいた。

??「アリスさん!大丈夫ですか!?」

勇者改めアリス「痛い……」

少女は体育座りをしてうずくまっている。

アリス「早く治して……白兎」

??改め白兎「了解です」

白兎は小さな両手をアリスの腕に向けると、水の治癒魔法がかけられた。

白兎「すぐよくなりますよ、私のアリス」

112: 2010/10/07(木) 23:08:35.74 ID:ZmaCCcs0
61

--施設--

???改め帽子屋「ひひひwおいらは帽子屋ww」

?改めチェシャ猫「俺はチェシャ猫だにゃ」

????「お、おで!」

帽子屋「ひひひwこのどんくさいのが三月兎www」

????改め三月兎「お、おで」

36号「な、なんデスかこれは~。何かのお遊戯デスか~……ふっ!!」

36号は身体を思いきり捻り、足に纏わりついていた奴らを弾き飛ばす。

1号「36号やめろ!仮にも勇者の魔法なんだ、しかも追い詰められた状況で使ってきた。これは危険だ!!もう馬鹿なことはよせ!!」

36号「駄目デスヨ1号~。今やらなきゃ無残に朽ちて行ったハラカラが浮かばれません~私の恨みがキエマセン~」

113: 2010/10/07(木) 23:17:37.55 ID:ZmaCCcs0
62

--施設--

36号(こいつらがヤバイッテのは分かって益代~……マガリナリニモ今の私ノ攻撃を無傷デ不正じゃったンデスカラ~)

36号は地面を踏みしめた。

びしぃっ!!

それだけで地面はひび割れ、無数の石が舞う。

36号「雷属性攻撃魔法、雷石砲!!」

36号は空中を漂う石々目がけ、電力を帯びた右足で蹴りだした。

バチィっ

チェシャ猫「にゃ?」

ドシュドシュドシュゥぅん!!!

115: 2010/10/07(木) 23:23:50.59 ID:ZmaCCcs0
63

--施設--

電速の砲弾が放たれる。
しかし、

三月兎「おでっ!!」

三月兎は全身を土塊と化し、その攻撃を全て弾いた。

36号「!?」

三月兎「!し、しまった」

ヒュン!

仕損じた石がアリスに向かって飛んでいく。

アリス「!……守って」

その一言でアリスの影から炎が出現しアリスを覆う。
石はアリスを守る炎の膜によって跡形もなく融かされた。

116: 2010/10/07(木) 23:31:03.25 ID:ZmaCCcs0
64

--施設--

1号「なんだこの魔法は……本体の勇者が、先ほどより圧倒的に弱体化している……そんな魔法ありえるのか??」

アリス「……」

帽子屋「教えてやんよwwwおいら達はアリスパーティwww友達も仲間も、あいつの傍には一人たりともいないwwそんな中で苦し紛れに産みだしたのがおいら達さwwwwあいつは自分の魔力で作りだしたものしか友達がいねぇんだよwwwぶべっ!!」

三月兎の拳が帽子屋の頭を叩く。

三月兎「あ、アリスさんの、悪口は良くない……」

帽子屋「けへへww何言ってんだよwwお前だってそういう用プログラミングされてるだけなんだぜwwwおいらは皮肉がかりなのさwww」

1号「……ややこしすぎる魔法だな」

36号「……」

117: 2010/10/07(木) 23:31:39.82 ID:ZmaCCcs0
65

--施設--

36号「は、一人が寂しい~?何をイッテンダカ~。とりあえず、あの人の能力が激減シタトいうことは……」

ドッ

36号は跳躍し、再び空中で回転を始める。

36号「アッサリと頃しやすくナッタってことにほかならないじゃないデスカ~!!」

チェシャ猫「そうはいかねぇんだにゃ」

36号「!?」

36号は驚きのあまり体勢を崩す。それもそのはず、いきなり顔だけの猫が出現したのだから。

36号「なっ」

チェシャ猫「スキル、インビジボゥ。さらにポリゴンフラッシュ!!」

ビカッ!!

チェシャ猫の眼球が光り輝き、36号の視覚を奪い去る。

1号「36号!!」

118: 2010/10/07(木) 23:32:24.45 ID:ZmaCCcs0
66

--施設--

36号「くぅ~くらくらします~吐き気をもよおします~」

36号は地面に着地した後も立ちあがることが出来ない。

帽子屋「うぅしwwおいらもやってやんよwwサンダーww」

ビッシャァアアン!!

36号「ぎゃうっ!!」

帽子屋「ひひひwwいてぇだろwwwおいら達は勇者から一属性ずつ奪って独立してんだwww雷魔法だけなら勇者とそん色ねぇんだぞww」

チェシャ猫「……お前ばらしすぎてんぞ。いくら喋りたがりのうるさい設定だからっていいすぎにゃ」

帽子屋「うwるwせwww」

36号「……奪う~?」

1号(勇者は全六属性……そしてあのへんてこなやつらは全部で4体。なら今の勇者本体は2属性しかないとでも?)

119: 2010/10/07(木) 23:33:00.69 ID:ZmaCCcs0
67

--施設--

36号(これはイイことを聞きました~。さっきの白兎は水の魔法を、でかい兎は土、うるさい帽子は雷、そして本体は火をツカッタわけです~。本体を叩くのに適していない属性は風、これは駄目です~。火に負けちゃいマスカラね~。あと出てないのは風と氷ですけど、相性的に水で押すのが安定ですカね~)

36号は両手を合わせて魔力を圧縮する。
そして

36号「対単体水属性攻撃魔法、レベル3!!」

激流のような水が36号の掌から放出される。

帽子屋「あーwwwやっちまったなwwwwばーかばーかww」

36号「!?」

帽子屋「おいら達は自由意志があるようでいてねーのさwwさっきから言ってるようにプログラミングされてっからよぉwww」

1号(!!嫌な感じが)

チェシャ猫「完膚なきまでの殺意を感じたにゃ。アリスのためにお前を頃す」

120: 2010/10/07(木) 23:33:46.09 ID:ZmaCCcs0
68

--施設--

白兎「アリスさん下がってください!水属性防御魔法、水鏡!!」

ドバッシャーン!!

白兎が作りだしたのは薄い水の壁。本来なら激流に耐えるわけがないのだが、まるで水の鏡が別次元への入り口にでもなっているかのように水を無効化していた。

三月兎「ふんっ!!」

激流を掻い潜って接近してきた三月兎は、36号の下からアッパーを繰り出す。

ガシィン!!

36号「っ!!」

36号はそれを左のひざで防ぐも、その破壊力の前に後ろに倒されてしまう。

チェシャ猫「ほーれ」

36号の落下位置にチェシャ猫の顔が出現する。大きく口を開けたと思うと、その中から小さな風の刃が無数に飛び出して36号を襲った。

バシュバシュバシュ!!!!

121: 2010/10/07(木) 23:34:21.36 ID:ZmaCCcs0
69

--施設--

36号「ぎゃああああああ!!!!」

1号「なぜだ……完全体の勇者ですら押していた36号が、なんでこうも一方的に……」

帽子屋「そりゃー当たり前だぜww確かにおいら達は勇者の6分の1しかパワーがねぇ。でもおいら達には勇者にある弱点が存在しねぇのさww」

36号「弱……点?」

チェシャ猫「おい喋り過ぎだにゃん。この帽子ひっぱって使い物にならなくしてやるにゃん」

ぎぎぎぎぎ

帽子屋「あてててwwwwひひwwどんだけひっぱってもおいらは喋るぜwww男は数でも早さでもねぇ、皮の伸び具合だwwwww」

チェシャ猫「またろくに見てないやつのネタを使ってるにゃ」

帽子屋「勇者の弱点、それはなww迷いだ」

122: 2010/10/07(木) 23:35:29.59 ID:ZmaCCcs0
70

--施設--

帽子屋「どんな人間にもそりゃぁあるさwwでもな、あいつのは異常だぜwwマイナススキルとしてくっついてんのよwwwどうやっても取りようがねぇ不治のスキルwwwただおいら達には関係ねえのさww」

36号「!!」

帽子屋の帽子の中からナイフが飛び出してきて36号の腹部を抉った。

36号「!!!!」

帽子屋「ひひひwwおいら達の姿がファンシーだからってあなどんなよwwwこうなったおいら達はガチの殺意を持ってお前らを頃すんだぜwwwガチの殺意は実力差だってひっくり返すのってことを覚えとけよwwヒーハー!!!!」

ザクザクザクザクっ!!!

36号「ぐっ、あうっつ!!あああああああああああ!!!!」

チェシャ猫「まぁそういうことだにゃん」

猫は36号の前で口を開き、

三月兎「おっで!」

三月兎は36号に拳を振り下ろした。

べゴン!!!!

147: 2010/10/25(月) 21:04:33.51 ID:AZOqHoA0
ねーちゃん!近日中って今さッ!
こんばんは。
長らく間を開けてしまい申し訳ないです。それでは再開させていただきますm(__)m

148: 2010/10/25(月) 21:06:10.90 ID:AZOqHoA0

71

--施設--

帽子屋「ひひひひひwwwどういうつもりだお姉ちゃん??」

1号「っ」

右手で帽子屋のナイフを、左手で三月兎の拳を、背中で猫の攻撃を防いだ一号。

1号「すまなかった勇者!!もうこの辺でやめてくれ!!36号だってどうしようもなかったんだ!!」

アリス「……」

アリスは一号の言葉に反応を示さず、ぼーっと足元を見ている。

1号「おい、聞いているのか!!勇者!!」

帽子屋「聞いてるけど聞いてないよwww」

1号「!!」

帽子屋の中から6本の細い腕が飛び出し、それぞれの手に握られたナイフで切りつけた。

149: 2010/10/25(月) 21:10:14.57 ID:AZOqHoA0
72

--施設--

ドシュっ

1号「ぐっ!!」

帽子屋「あそこでうずくまってるのは勇者じゃねぇww確かに核であることに変わりはねぇけど、おいら達も勇者の一部だっつーのww」

1号は36号を抱えてそこから走り出す。

36号「1、ごう」

帽子屋「ひひひひwwこの魔法は、誰にも頼れない勇者が危機に陥った時に発動する魔法だwww」

チェシャ猫「勇者が戦闘続行になるまでの間、俺らが全力で守るにゃん」

三月兎「お、おで」

帽子屋「この魔法は勇者が完全回復するか、完膚無きまでに敵を破壊するまで解除されないんだじぇwwwwwやめてって言っても強制だからやめられんのよwwwww」

150: 2010/10/25(月) 21:15:35.30 ID:AZOqHoA0
73

--施設--

ドゴオン!!

白猫亜人「あきゃっ!!」

??改め白猫実験体「うぎゅるるる」

勇者達とは違う所で、二人は闘っていた。

白猫亜人「あ、あなた……」

白猫実験体「ふしゅrぅうろぁう」

白猫実験体の背中から蟷螂の腕が飛び出し、白猫亜人を襲う。

シュッ!!

151: 2010/10/25(月) 21:19:30.60 ID:AZOqHoA0
74

--施設--

白猫実験体の攻撃は白猫亜人の腕をかすめただけだが、かすり傷とは思えないほど出血している。

白猫亜人「あなた……やっぱり私の事、思い出せないにゃ?」

白猫実験体「うぎゅるるる」

白猫亜人「そう……そうだよにぇ……」

白猫亜人は右手の指先に力を込める。

白猫亜人「……あれはどう考えても氏亡フラグだったものね」

白猫亜人は駆ける。

白猫実験体「が、がぱっ」

突然白猫実験体の口は開かれ、そこから魔力が発射される。

ドゴオオオッ!!

152: 2010/10/25(月) 21:23:05.51 ID:AZOqHoA0
75

--施設--

1号「止められない……だと」

帽子屋「今あいつの意識は無いのさwww言わばオート、故の躊躇無しだww」

帽子屋はナイフを投げつける。

1号「っ!」

ギイン!!

1号は落ちていた瓦礫の破片でナイフを打ち落とす。

1号(……いや、勇者が完全回復するまでと言ったな?なら時間稼ぎをすれば……)

1号はそっと36号を地面に下ろす。

36号「1号?」

1号「落ち着いたか?もう発散できただろ……しばらく離れてろ」

バキっ

1号は自分の手枷を破壊する。

36号「っ!」

153: 2010/10/25(月) 21:27:26.18 ID:AZOqHoA0
76

--施設--

帽子屋「なんだお姉ちゃん、やっぱりあんたも敵なのかいwwじゃあ……」

1号「そんなつもりじゃないが、しばらくの間お相手願うよ」

1号は右手に風、左手に炎の魔力を集中させる。

チェシャ猫「!」

そして両手を中央で合わせる。

パンっ

1号「二属性複合攻撃魔法、二色剣」

154: 2010/10/25(月) 21:31:26.32 ID:AZOqHoA0
77

--施設--

帽子屋「ひひひひww四つ属性が足りねぇんじゃねぇのかお姉ちゃんwww勇者もどきなんだろ?六ついっぺんに使ってみなよwww」

1号(そんな簡単に六属性使えるか!魔力消費も維持するコントロールも楽じゃないんだ、ただでさえ持久戦になりそうだってのに)

帽子屋の攻撃を二色剣で切り払う。

三月兎「おでっ!!」

三月兎は跳躍し、1号に飛び蹴りを放つ。

1号「っ」

1号は二色剣を分離させ、雷の剣で足に斬りつけた。が、

バチっ

1号「しまった、こいつ土ぞくせ」

ドギョッ

三月兎の蹴りは一号の右腕をへし折った。

155: 2010/10/25(月) 21:35:33.04 ID:AZOqHoA0
78

--施設--

1号(強い、単純に強い!!)

ドザザッ

1号は36号の傍まで吹き飛ばされる。

36号「い、1号、何やってるんですか、やめて下さいよ」

1号「……ったく誰のせいでこんな目に合ってるんだか」

1号はすぐに立ちあがりアリスパーティに向かい合う。

1号「勇者を怨むのはやめようぜ」

36号「……今だってあいつは私達を苦しめているんですよ」

1号「それは36号が追い詰めたからだ。いいか?6等分されたようなやつらに私達は押されてるんだぞ?勇者が本気で私達を殺そうとしているのならとっくにやられてる」

36号「!!」

1号「通常時の勇者は36号に一度も攻撃をしなかったしな」

156: 2010/10/25(月) 21:40:32.87 ID:AZOqHoA0
79

--施設--

帽子屋「はっwwしらねぇよwww何の話をしてるんだかwwそんな話したところで意味ねぇのに、おいら達は具現化された殺意、あいつの敵は全部頃すのよwwww」

1号は右手の雷の剣を失ったことに気付き、片手だけで新たに二色剣を作りだす。

1号(……もう私達の身体なら回復が始まってるはず。それなのに36号は立てない。……心が折れてしまったか。喧嘩っぱやいくせに心がなぁ)

1号は剣を回しつつ様子をみる。

1号(話を聞く限りじゃこれらは勇者の分身らしいし……倒したらまずい感じがするな)

チェシャ猫「行くにゃよ!!」

宣言とともにチェシャ猫が姿を消す。

157: 2010/10/25(月) 21:44:32.31 ID:AZOqHoA0
80

--施設--

1号(消えた!!なら……)

1号は二色剣を水と雷に変化させ、空間をなぎ払った。
すると電気を浴びた水流が発射される。

バシャっバチバチっ!!

チェシャ猫「あびびびび!!」

1号(うし、姿が消えてるわけじゃないんだな)

帽子屋「……うーんww結構めんどくさい敵やなぁww勇者の適応力を上手く使えてやがるぜwwww」

白兎(発想は至って単純。見えない敵に対して、面で攻撃しただけ……。でもこの状況下で、瞬時に属性を変えて対応してきた。それは確かな彼女の力……)

白兎はじっと1号を観察していた。

158: 2010/10/25(月) 21:49:05.98 ID:AZOqHoA0
81

--施設--

1号(いやな感じだなあいつ……探ってやがる。後ろに控えてるって意味でもそうなんだろうな。なら)

1号は二色剣を氷と土に変え、地面に突き刺した。

バキバキバキバキ!!

1号「地形変化亜種、氷迷宮」

地面から氷がせりあがり、アリスパーティ達を分断した。

チェシャ猫「にゃっ!?」

白兎「なっ!!」

三月兎「お、おで」

帽子屋「ひひひwwww……やられたぜ」

159: 2010/10/25(月) 21:57:20.68 ID:AZOqHoA0
82

--施設--

1号(これで少しは……いやだめだ、風属性がいた。すぐに破壊されてしまう!!)

1号は属性の相性を思い出し、腕に回復魔法をかけながら迷宮へ向かう。

三月兎「お、おで寒いの、にが、て」

三月兎は一歩も歩くことが出来ず、ガタガタと震えている。

ザクザク

帽子屋「ひひひwwこんなナイフじゃちっとも削れねぇww雷も有効じゃねぇしwwてかこの氷、透けて向こう側が見えるくせに、反射しまくってて位置がわからねぇww」

チェシャ猫「この氷……結構魔力錬り込んでるにゃね。これで時間稼ぎしようと考えたんだろうけど、風属性の俺がいることを忘れてるにゃ?いやそれだけ焦ってたのかにゃ?どちらにせよ、選択ミスだにゃ。こんだけおおがかりにやっちゃったら破壊された時の損失もドデカだにゃ」

そう言ってチェシャ猫は口を大きく開けた。

バリィン!!

チェシャ猫「!?」

大きく息を吸い込み吐き出そうとした瞬間、破壊しようとした目の前の氷から1号が飛び出してきた。

160: 2010/10/25(月) 22:02:08.96 ID:AZOqHoA0
83

--施設--

チェシャ猫(!?向こう側には何も映っていなかったのに……しまっ)

ドジュウ!!

二振りの炎の剣がチェシャ猫に突き刺さる。

チェシャ猫「ぐぶふっ!!この氷……幻覚症状を……付加して……にゃ」

ドサリ

1号が剣を引き抜くと、チェシャ猫は地面に倒れこんだ。

1号「よし、厄介なのは倒せた。後は」

1号は剣を氷属性に変化させる。

1号(腕も修復し終わった。十分戦闘に耐えられるレベルだが、ここは迷宮の維持に力を割いた方がいいな)

作り上げた剣を地面に刺す。

161: 2010/10/25(月) 22:06:58.09 ID:AZOqHoA0
84

--施設--

チェシャ猫「……止めは刺さないのかにゃ?それも仕損じではなく、わざと」

むくりとチェシャ猫の頭が持ち上がり、1号の方を向く。

1号(!?まだ動けるか!)

チェシャ猫「俺らを一体でも倒してしまうと、勇者は甚大なダメージを受ける……そう考えたんにゃね」

1号「……」

チェシャ猫「優しい人だにゃ。命をかけた戦いの最中だというのに、相手のことまで考えてあげるだにゃんて」

1号「別に……」

チェシャ猫「でもおばかさんだにゃ。俺らには躊躇いも戸惑いも一切無いんだにゃ」

チェシャ猫は口から無数の風の刄を吐き出した。

162: 2010/10/25(月) 22:10:01.71 ID:AZOqHoA0
85

--施設--

1号「!!」

バリバリバリィン!!

暴風と風の刄が、容赦無く氷ね迷宮を破壊していく。

チェシャ猫「……情けをかけた相手が、君に情けをかけるとは限らない」

ガラガラガシャァン

1号「しまった!」

既に後の祭り。
全ての氷が破壊されたわけでは無い。だが、この損傷では迷宮の意味を成さない。

163: 2010/10/25(月) 22:22:50.37 ID:AZOqHoA0
86

--施設--

帽子屋「ひひひwwズタボロじゃねぇかチェシャ猫ww」

三月兎「み、みんな、いた」

白兎「アリスさんは無事ですよ。今チェシャ猫さんも治してあげます」

1号(一瞬で集まった!?まずい、せめてチェシャ猫だけでも!!)

1号は急いで振り返るもそこにチェシャ猫の姿は無かった。

チェシャ猫「ごめんよ嬢ちゃん」

どこからか響いてくる声。

1号(迷彩……か)

帽子屋「ひひひww形勢逆転だなぁwwじゃあ食らってみるか?勇者の極みを」

三月兎「勇者の極みを」

白兎「勇者の極みを」

アリス「…………」

164: 2010/10/25(月) 22:27:25.51 ID:AZOqHoA0
87

--施設--

白猫亜人「がはっ!!」

ドガシャン!!

白猫実験体「ぎゅるりる」

白猫亜人は、白猫実験体の毛深い腕に掴まれ、何度も壁に打ち付けられている。

白猫亜人(……図体のわりにこのきど)

ドゴッ

白猫亜人(ぐっ!!……機動力。しかも私を遥かに上回るこ)

バキャッ

白猫亜人(がはっ!……攻撃力と防御力。でも)

バキッ

白猫亜人(ぐっ!……で、でも、スキルを使うことは出来ないっぽいにゃ!!)

ドシャっ

白猫亜人「これなら私でも頃してあげられるにゃ」

165: 2010/10/25(月) 22:32:13.75 ID:AZOqHoA0
88

--施設--

白猫実験体「!?」

白猫亜人は腫れた顔で笑うと、するりと白猫実験体の手からすりぬけた。

白猫亜人「スキル、猫じゃらし抜け」

白猫亜人は着地するや否や、飛び掛かる。

白猫亜人「猫ひっかき!!」

ズバシュッ!

白猫実験体「ぎゅるりる!!」

白猫亜人(浅い、そして硬い!)

その攻撃は白猫実験体の両腕で防がれてしまう。しかもほとんど効いてはいないようだ。

166: 2010/10/25(月) 22:33:00.63 ID:AZOqHoA0
89

--施設--

白猫実験体「ぎゅるりる!!」

シュバババ!

猛攻。
恐ろしい早さで繰り出される手刀、打撃、掌底。
それらが一撃でも当たろうものなら、体はバラバラになってしまうかもしれない。

白猫亜人「っっ」

それらを紙一重で交わし続ける白猫亜人。

ビシッ!!

白猫実験体「ぶっ!」

嵐を掻い潜った白猫亜人の一撃か顎に着弾、白猫実験体をわずかに仰け反らせる。

167: 2010/10/25(月) 22:33:59.43 ID:AZOqHoA0
90

--施設--

白猫実験体「ぎゅるりる!!」

白猫亜人「!!」

続けざまに攻撃を加えようとした白猫亜人を右の手刀が襲う。

ガチィ!!

白猫亜人は即座に反応し、左肘と左膝で白刃取りを試みる。が、

ブシュッ

白猫亜人(つっ!!少し間に合わなかった)

手刀の先端が白猫亜人の腹部に埋没している。
……。
先っちょだけ入ってしまった。

白猫実験体「先っちょ!先っちょだけだから!!ね!!」

白猫亜人「……」

171: 2010/10/28(木) 12:09:28.34 ID:bc1CD9U0
こんにちわー。
書き溜め終わりましたので今日で完結させます。では投下していきますー。

172: 2010/10/28(木) 12:10:03.96 ID:bc1CD9U0
91

--施設--

ギリギリ

白猫実験体「ぐぁば!!」

白猫実験体は手刀を振りぬき、地面に叩きつけようと企む。

白猫亜人「んっ!!」

白猫亜人はまるで猫の様に体をひねらせ、地面に手をつく。そして腕の力で跳躍し、顔面を蹴った。

どがっ!!

白猫亜人(……普通にヤレルと思ったけど、ダメージはほとんど与えられてない……やっぱりこれしかないにゃ)

白猫亜人は両手に魔力を集中させる。

白猫実験体「ぐりゅりぃる!!」

白猫亜人(攻撃を繰り出すだけで避けようとはしないのね。防御も反射的にとっているだけのようだし)

173: 2010/10/28(木) 12:11:17.70 ID:bc1CD9U0
92

--施設--

白猫実験体「ぎゅるりる!!」

ボゴ

白猫亜人は頭部を攻撃するように見せ掛けておいて足を殴った。

白猫実験体「おぐ!」

白猫亜人(本当に堅い……でもフェイントにも対応出来ないのなら)

白猫亜人が何かのアクションをするたびに白猫実験体は過剰に反応する。

ボゴ
ボゴ
ボゴボゴ

幾度となく蜘蛛のような足に殴打を加える。

白猫亜人(まだ!?こんなに殴ってるのに!)

シュ!!

焦りから生まれた一瞬の隙を敵が突いてくる。

ブチャ

白猫亜人「あがっ……」

白猫亜人が気付いた時には、自分の顔の右側が無くなっていた。

705: 2011/01/09(日) 00:50:03.78 ID:JU6bj260


93,5

--施設--

白猫亜人「……」

白猫実験体「ぎゅる……り…よ」

しかし、白猫実験体は明らかに動きが鈍くなっていた。

白猫亜人(常時発動スキル。分類、蓄積攻撃。効果、移動速度低下……やっと効いてきたのかにゃ)

白猫実験体「ぎゅる、るり」

今度は白猫亜人の方から、白猫実験体に近づいた。

白猫亜人「今までお世話になりました。ご苦労様……でしたにゃ」

白猫実験体「ぎゅ……らり……」

白猫実験体はゆっくりと手をのばして、

白猫亜人「!!」

白猫亜人のお腹を、愛でるように撫でた。

白猫亜人「っ……………………………………………………………………………スキル、鋼爪っ!!」

ザシュ

174: 2010/10/28(木) 12:11:56.06 ID:bc1CD9U0
93

--施設--

白猫亜人(か……かろうじて交わしたのに、いや擦った?擦っただけでこんな……)

白猫亜人は目眩を起こしながらもなんとか距離をとる。
そして恐る恐る右側を触ってみた。

ピチャッ

触っても痺れていて感覚がない。だが顔の骨格はある。ちゃんとついているようだ。致命打ではない。

白猫亜人(でも片目と耳は失ったみたい……)

触る迄もなく、視界の変化で気付けようものだが、気が動転していて、眼窩に触れるまで理解出来なかったのだ。

白猫実験体「ぎゅるりるる」

白猫実験体はゆっくりと近づいてくる。それに呼応して構えようとするが、ぐらりと態勢を崩してしまう。

白猫亜人(ん……思ったより深刻なダメージかもしれない。早めに決着をつけないとにゃ)

白猫実験体はゆっくりと近づいてくる。

175: 2010/10/28(木) 12:12:29.64 ID:bc1CD9U0
94

--施設--

帽子屋「ひひひwwwやるじゃなイカwww」

チェシャ猫「しぶといにゃ」

三月兎「おふ、おふ」

白兎「……ここまで持ったことは誉めてさしあげます。けれどもう限界でしょう……」

1号「はっ!はっ!はっ!」

1号の体はあまりに無惨。切り裂かれて叩き潰されて血まみれになりながらも必氏に耐えていた。

白兎(とはいえ、後一歩が中々届かない……。確実に勝てる、これは決まり切ったこと。なのにゴールが近づいてこない……よくもまぁあの状態でのらりくらりと致命打を避けますね……)

36号「い、1号!!もうやめてください!!自分の体が今どうなってるかわかってます!?」

1号「仕方ないだろ……やるっきゃないんだから、さっ」

ガキィン!

帽子屋のナイフを氷の剣で弾く。

176: 2010/10/28(木) 12:13:09.09 ID:bc1CD9U0
95

--施設--

白兎「……帽子屋くん、もうやめましょう」

帽子屋「あ?何言ってんだてめぇwwやめられるわきゃねえだろww」

1号(?仲間割れ?それとも時間制限がきたのか?)

白兎「勘違いしないでください。このままやってても時間制限がある分こちらが不利なんです。だから、あれをやりますよ」

チェシャ猫「!!……えげつない奴にゃ」

帽子屋「ひ、ひひひww参謀長の命令じゃあ仕方ねぇ……やるぜ、我らがアリスの抜群の目覚めのためにwww」

三月兎「ゆ、融合魔法陣、展開」

バジューン

三月兎が地面を殴ると光り輝く陣が出現する。

177: 2010/10/28(木) 12:14:13.72 ID:bc1CD9U0
96

--施設--

チェシャ猫「許せにゃ嬢ちゃん。せめて苦しまないようにやったげるにゃ」

陣の中に帽子屋、チェシャ猫、三月兎、白兎の四体が入る。

1号(融合魔法……禁術じゃないか。どこでそんなものを!)

アリスパーティの四体は融合し新たな姿となる。

?「ふしゅるるる」

36号「……化け物」

?「我が名はジャバウォック」

178: 2010/10/28(木) 12:14:44.87 ID:bc1CD9U0
97

--施設--

?改めジャバウォック「ウゴォォォ!!」

黒光りしたむき出しの筋肉。魔獣のような頭部に唸り声。
まさしくそれは化け物と呼ぶにふさわしい。

ビリビリ

1号(……駄目だ話にならない。さっきのと戦闘力が違いすぎる。あの小さな勇者の体にこれほどの力があるなんて……)

36号(何かに捕まっていないと吹き飛ばされる気さえします……)

ジャバウォック「ねぇ力欲しい?ねぇねぇ」

1号&36号「うっざ!!」

179: 2010/10/28(木) 12:15:56.58 ID:bc1CD9U0
98

--施設--

ジャバウォック「力が欲しけりゃくれてやんよ?」

1号「……。えと、くれるのか?」

ジャバウォック「やんよやんよぉ。はい受け取ってちょ」

そう言ってジャバウォックは魔力球を形成し発射した。

1号&36号「!?」

チュドオオン!!

1号がかろうじてその攻撃を交わすと、後ろの施設が吹き飛んだ。

1号「っ!……」

ジャバウォック「なんだぁ受け取れよぉん。愛のキャッチボールっうふっ」

180: 2010/10/28(木) 12:16:45.08 ID:bc1CD9U0
99

--施設--

1号「……質問がある」

ジャバウォック「ん?なにかなレディー。おじさん何でも答えちゃうよん」

1号「お前でそれほどの力があると言うのに、なぜ勇者は先ほど遅れをとったんだ」

ジャバウォック「んん?言わなかったっけ?勇者は甘ちゃんのへたれだって。だぁからあんな海賊版なんかに追い込まれたぁのよぉ」

1号「……それだけとは思えない」

ジャバウォック「……んふ悪いけどぼくちんの役割は帽子屋と違って秘密をばらしちゃったりはしないんだなぁ。ぼくちんの役割は」



ジャバウォックが地を蹴ると一瞬で1号の目の前へ。

ジャバウォック「ストレスを発散し、敵を絶対に破壊すること」

1号「っ」

ドグシャァア!!

36号「い、1号ーー!!」

181: 2010/10/28(木) 12:17:38.40 ID:bc1CD9U0
100

--施設--

ジャバウォック「んあ?これ……氷?」

1号(氷属性魔法、氷像分身。こいつにはかなわない、時間稼ぎも出来ない。なら)

ジャバウォック「あぁん……成る程。逃げようってのね。むっちりバデーのお姉ちゃんもいなくなってるし。でもなぁ」

ジャバウォックは胸が倍に膨らむほど空気を吸い込む。

ジャバウォック「ごばあ!!」

そして炎を吐き出した。

ジャバウォック「逃げても無駄よっ!この炎はぼくちん以外の生命反応を追尾して燃やし尽くすのさっ」

しかし炎は前進せず、それどこらかジャバウォックの方に向かってくる。

ジャバウォック「んん!?なんでかなっ!?かなっ!?ぼくちん達は安全なはずなのにあちっ!!あちあちっ!誰だこの熱い炎吐いた奴!!畜生!!」

ジャバウォックは自らの吐いた炎を振り払おうとしている。

182: 2010/10/28(木) 12:18:19.90 ID:bc1CD9U0
101

--施設--

ジャバウォック「まてまてまだ慌てる時間アッチィ!!どゆことだどゆこと!?対象を書き替えたの?いやそんな高度なことをこの短時間の間には出来アッチィない」

ジャバウォックが振り替えるとアリスの周りにまで火が近づいていた。

ジャバウォック「アリスちゃんは炎シールドでなんとかなるから大丈夫だけど……まさか」

ブゥン

1号がアリスの上空から接近する。

1号(ステルス化と飛行能力付加!!一つに集合したのがあだとなったな!!)

1号は炎の膜に手を突っ込んだ。

ジュッ

1号「ぐっっ!!っっでも!!」

ジャバウォック「なっ!何をするだァ――ッ」

1号「回復させる!!」

183: 2010/10/28(木) 12:18:56.25 ID:bc1CD9U0
102

--施設--

1号が行った回復魔法によりアリスの体は一瞬で回復する。

ジャバウォック「……やられたずぇい!!」

1号「よし、これで……」

1号は焼け焦げた腕を引き抜く。

ジャバウォック(戦力を集中させたのが裏目に出たか……まさか最初から狙って……はないね)

ジャバウォックは二人に向けて拍手を送る。

ジャバウォック「ブラボー! おお… ブラボー!!そのままアリスを倒すことも出来ただろうに……。感動した!」

1号「はいはいどーも……ててて」

1号は自分の体に回復魔法をかけている。

1号「というかいつまでいるのだ?まさか治りきったら戻るというのは嘘だったのか?そんならもう詰みなんだが」

184: 2010/10/28(木) 12:19:33.99 ID:bc1CD9U0
103

--施設--

ジャバウォック「うにゃ、もう戻るさ。では、」

そういってジャバウォックは紳士のように頭を下げる。

ジャバウォック「アリスへの配慮、誠に痛み入る。願わくば二人の未来に幸があらんことを」

1号「気にするな。元々こちらの不手際だ」

スクッ

アリスがゆっくりと立ち上がり、そして手を伸ばす。

アリス「おいで、ジャバウォック」

バシュ

ジャバウォックの体はアリスの体の中に入っていく。

1号「……」

36号「……」

ジッジジジ

全ての要素を取り入れたアリスは変貌していく。

185: 2010/10/28(木) 12:20:24.39 ID:bc1CD9U0
104

--施設--

シュウウ

勇者「……ん?ここは……」

1号「……」

36号「……」

勇者「……」

1号「……」

36号「……」

勇者「……な、なんかあったの?」

勇者は無自覚だった。

186: 2010/10/28(木) 12:21:28.46 ID:bc1CD9U0
105

--施設--

1号「……ふっ」

36号「はぁ……あれだけ暴れといてよくもまぁ~……もう怒る気力も無いです~」

36号は天を仰ぐ。

36号(……本当はわかってた。勇者だって同じように利用された実験体なんだ。……でも黒い感情が抑え込めきれなくて……私は何てバカなことをしたんだ。……勇者はもっと辛い思いで戦ってきたのかもしれないのに)

勇者「ん?んん?」

1号(いつの間にか36号からあの感覚が消えている……制御出来るようになったのか?……それとも、ストレスを発散出来たとかの可能性も……てことは全て勇者の手のひらの中?……いや考えすぎだな)

そうして1号は自分の体に回復魔法をかけるのをやめた。

36号「?まだ傷が残って、って!私なんか回復させる必要ありませんよ!!もうだいぶ治ってきてるんですから!」

1号は36号に回復魔法をかけ始める。

勇者(……これあいつらやったのかな……。緊急時だったから構成ミスったのかな?……やばあ)

1号「……うん、もう私の体は限界みたい……だからさ」

36号「!?」

187: 2010/10/28(木) 12:22:10.59 ID:bc1CD9U0
106

--施設--

勇者「あわ、あわわわわわ!?」

勇者はガクガクと震えている。

1号「いや、断じて言うが君のせいじゃないよ。体をいじくられたせいで、どのみち長くはなかったんだ」

36号「1……号」

1号「よかったよ。36号が無事に生き延びられただけでも。この日だけを待っていた」

1号は36号の頭を撫でる。

1号「勇者、この子を頼みたい」

36号「!!」

勇者「……」

188: 2010/10/28(木) 12:23:12.07 ID:bc1CD9U0
107

--施設--

1号「強がりばっか言うし、何事にも感情が先行しちゃうめんどくさい子だけどさ……私の娘みたいなもんだから」

36号「い、ち……ごう」

1号「それにこの子も実験体だ。そう寿命が残ってはいないだろう……旅の途中で勇者の足手まといになるかもしれない。でも!勝手だとわかっていても……」

勇者は1号に向かって直立不動の姿勢を取る。

勇者「私は勇者だ。私の旅の同行は、はっきり言って最大級の危険を伴う。彼女は旅の最中に何度も危険な目に会い、もしかしたら四肢を失うかもしれない」

1号「……」

36号「……」

勇者「だが誓おう。彼女を私に預けてくれるのなら、決して氏なせはしない。私が守ってみせる!勇者の名にかけて!!」

36号「な、な、」

1号「……すまない。お願いするよ」

1号は勇者に向かって微笑む。

勇者「貴女の願い、聞き入れた」

勇者は1号に向かって微笑む。

フォン、グシャ

189: 2010/10/28(木) 12:23:54.38 ID:bc1CD9U0
108

--施設--

36号「……………」

勇者「!!!!」

1号は

研究員「……やれやれー。一体全体どんな結末になるのかと思いきや……興ざめですー」

急降下してきた

????「あうー」

羽と尻尾の生えた胎児に踏み潰された。

36号「あ、う……あ」

36号はとっさに飛び散った脳をかき集めている。

研究員「それにやったらやりっ放しというのも人間としてまずいですしー、ちゃんと責任取って後片付けに来ましたー。先ほどお別れを済ましたというのに申し訳ないです勇者ちゃんー」

36号「いち、ご……」

190: 2010/10/28(木) 12:24:35.96 ID:bc1CD9U0
109

--施設--

研究員「ん?えっと……型番は忘れてしまいましたがなんとか号君ー。貴女を潰すつもりで落ちて来たんですけども……しくじっちゃいましたね。じゃあこっちできちゃないジャムになってるのは元妻かー」

36号「……ひっ」

36号は地面に頭をつけて涙を流す。

研究員「最後くらい話をしとこうと思ったけど、まぁいいかー。実験材料にすると決めた時に、この人との縁は切ったのだしー」

????「あうー?」

研究員「あぁいいですよそれもう潰しちゃってもー。もうこのシリーズでやれることはもうありませんからー」

胎児は36号の頭を掴み持ち上げた。

研究員「脳を掻き集めればまだ蘇生は可能だと考えたんですかー?無駄ですよ。もうこの人の寿命では蘇生出来ないレベルでしたからー」

36号「うっ、……うああ」

191: 2010/10/28(木) 12:25:34.01 ID:bc1CD9U0
110

--施設--

研究員「にしても甘ちゃんな勇者ちゃんなら少しは邪魔してくると考えていたのですがおかしいですねー?それとも実験体の命には興味が無いですかー?この研究所内でも頃して回ってましたしねー。勇者ちゃんの邪魔がないのならやりやすくて嬉しいのですー手間が省けますー」

????「うー」

研究員「あぁごめんよー。もういいよ、ばきゃしなさいばきゃー」

ボッ

????「!」

胎児は咄嗟に36号から手を離した。

ブオン!!

そして空を勇者の大剣が切り裂く。

????「あ、あう」

勇者は36号と研究員達の間に立つ。
その顔はまるで鬼のようで。

勇者「研究員……お前は許さないッッ!!!!」

192: 2010/10/28(木) 12:26:30.10 ID:bc1CD9U0
111

--施設--

研究員「……なんだ、やっぱり邪魔しにくるんじゃないですかー。時間差はやめてくださいよー」

研究員はおどけた感じに頬を膨らます。

研究員(この子が手を引いた……?圧倒的な強度を持っているこの子が身の危険を感じたということー?)

勇者「……こんなこと、こんな残酷なこと!王国の総意であるはずがない……これは全てお前の独断だったんだな!?」

研究員「違うですよー……と言っても聞く耳持たないですよねー。なんでそんなに怒っているのか理解に苦しみますよー。なんでその子を庇うのですかー」

勇者「私は頼まれたんだ……お前らが踏みつぶしたあの人から、彼女を守るように!!」

ガァン!!!!

????「あ、あだ」

勇者の斬撃から研究員を庇う胎児。
おっかなびっくりで自分の尻尾を見るも傷一つついていない。それを確認した胎児はほっと安堵の息をつく。

勇者「……その赤ん坊、そういや硬かったんだっけ。なら……全属性複合攻撃魔法、六色剣っっ!!」

ギイイイイイイイイン!!!!

勇者の大剣が六色の光に包まれる。

193: 2010/10/28(木) 12:27:06.85 ID:bc1CD9U0
112

--施設--

研究員(氏の光というやつですかー。……さすがのこの子でも今はまずいかもですねー)

ドギャッ!!

勇者の高速の斬撃を食らい、研究員の視界から胎児は消えた。

????「ぶえ?!」

ドゴオン!!

弾き飛んだ胎児を追い、勇者は駆けて行く。

勇者「ああああああああああああああ!!!!」

????「あー!!」

フォン!!

胎児が迎撃のために放った尻尾の攻撃を、勇者はなんなく交わして見せる。

ドジュドジュ!!

そして二撃、胎児を切りつけた。

194: 2010/10/28(木) 12:27:58.37 ID:bc1CD9U0
113

--施設--

ドロッ

????「あ?……う、うぶっ!!あーん、あーん!!」

自分の身体が傷つけらたことを知って胎児は泣きだした。

勇者(今のは完全に頃すつもりで斬ったのに、切傷があまりに浅い……)


36号「……」

その戦いを36号は抜け殻のように眺めていた。

研究員(やれやれー。というか今地味に絶対絶命じゃないですか私ー。私戦闘能力皆無なんですから、この実験体の心が折れて無かったら私氏んでるじゃないですかー)

195: 2010/10/28(木) 12:28:54.08 ID:bc1CD9U0
114

--施設--

ガギン!ギン!ブシュッ!!

勇者(危険だ、この子はまずい。絶対にこの場で仕留めなくては……今を逃せば手が出せなくなるかもしれない!!)

????「あーん!あーん!!」

胎児の攻撃を悉く掻い潜り、弾き返し、返しの刃で傷を付けていく。

ドシュドシュドシュっ!!!!

研究員(ひゅー。恐ろしい剣捌きに体捌きですー。あのでたらめなスペックのうちの子相手にああまで押すとはー。まぁ人間相手ではそうはいかないんでしょうがねー)

斬撃を幾重にも重ね、一点のみを斬り続ける。

ドパッ

????「ぶっ!?」

そして遂に胎児の右腕は斬り落とされた。

196: 2010/10/28(木) 12:29:27.94 ID:bc1CD9U0
115

--施設--

研究員(まずいですねー、やはりさすがに次期が早すぎたということでしょうかー。撤退ですね)

研究員は服の中から赤色の玉を取りだした。

研究員「今回はこの辺で終わりにしておきましょー勇者ちゃん。私の負けでいいですからー」

ボウン!

研究員が赤色の玉を地面に投げつけると赤い煙が辺りを包み始める。

勇者「!!」

????「あうあー!!」

胎児は煙幕に乗じて研究員のところにまで行くと、急いで抱えて空に飛んで行った。

バサッ

勇者「!!逃げるな!!」

研究員「またどこかでお会いすることがないよう願ってますよー勇者ちゃーん」

研究員はひらひらと手を振っている。

勇者(くそっ!!……今の現状を越える力がいる……。あの赤ん坊や魔王を倒すための……奥義が)

無力さを感じ、大剣を強く握る勇者。
そして36号はじっと勇者を見ていた。

197: 2010/10/28(木) 12:30:10.67 ID:bc1CD9U0
116

--雪の町、町はずれ--

三日後。

勇者「さて……と」

パンパン

勇者は手についた土を落とすために手を叩く。
勇者は今回の件で氏んだ者全ての墓を作ったのだ。

勇者(偽善だってわかってる。今後同じようなことがあっても、また弔う時間があるとは限らないんだ……)

それでもやれる時は、と呟いて手を合わした。

白猫亜人「ありがとうございましたにゃ。もう犠牲者が出ることもない……それに旦那も氏んでゆけましたにゃ」

勇者「うん。いや、私は何も出来なかったよ……腑甲斐ない」(行くなと言ったのにこの人研究所に忍び込んだな。右のガーゼ……)

白猫亜人「何をおっしゃいますやら!勇者様のお力が無かったら、きっと何も変わりはしなかったにゃ」

勇者「……どうだろう」

198: 2010/10/28(木) 12:31:03.02 ID:bc1CD9U0
117

--雪の町、町はずれ--

白猫亜人「……あの勇者様?失礼なのは重々承知でお願いがありますにゃ」

勇者「だめ」

白猫亜人「私を魔王討伐の旅に連れていってくだ……にゃっ!?」

勇者「だめ」

白猫亜人「ななな、なんでですにゃ!私こう見えて優秀なんですよ!?きっとお役に立てると思いますにゃ!!」

白猫亜人は勇者に抱きつき舐め始めた。

ペロペロペロペロ

勇者「あ、ひゃっ!?や、やめっ!くすぐ、わっ!!」

白猫亜人「勇にゃんペロペロ(^ω^)」

勇者「もうペロペロはしないって約束したじゃないですかー!」

一時間後の、話の本筋に戻るまでペロペロは続く。

199: 2010/10/28(木) 12:32:54.65 ID:bc1CD9U0
118

--雪の町、町はずれ--

勇者「はぁんっ……はっはっ」

白猫亜人「さすがに、はっはっ。舐めすぎましたにゃ」

既に満身創痍の二人だった。

勇者「はっ、はっ、と、とにかく……理由は貴女の体が、一番よくわかってるでしょ?」

白猫亜人「……うく」

白猫亜人は俯く。

勇者「その子にいっぱい愛情を注いであげること。それが貴女が一番やらなくちゃいけないことでしょう?」

白猫亜人「……ぐす。はいにゃ」

勇者「それに私には既に仲間がいる。だからその申し出は却下させてもらう。……これからは今までの分も幸せに」

白猫亜人「……っはい!……ありがとうございましたにゃ。勇者様!!」

200: 2010/10/28(木) 12:34:11.16 ID:bc1CD9U0
119

--雪の町、町はずれ--

勇者「さて、次は東の王国に……いやそろそろ戻って見ようかな」

勇者は一人、町の門を潜る。36号はあれから……姿を消した。

勇者(あんなことがあった後だ。やっぱりすぐには決断がつかないだろう。だが私も忙しい。彼女が決断できるまで待つわけにはいかない)

勇者は門を振り返る。

勇者(ごめん。約束護れなくて。でも本当にあの子のためを思うなら、私の旅に連れていくのは得策じゃない……)

勇者は一礼すると、草原へと続く道を歩きだす。



??「やー、ひどいですね~連れてってくれるって行ったのに置いてっちゃうつもりだったんですか~?」

突然声がかけられる。
勇者が視線をあげると、岩の上に彼女が立っていた。

勇者「な、なにその寒そうな服!?」

??「あぁこれですか~?いいでしょ~自分で縫ったんですよ~。服屋さん回っていらない布とかもらって。いつまでもあんな服じゃいられないですし~」

彼女は肌を露出させた服を身に纏っている。

そう、所謂、

露出魔があらわれた!

201: 2010/10/28(木) 12:35:42.34 ID:bc1CD9U0
120

--雪の町、町はずれ--


??「……私が行かないとでも思ったんですか~?」


  どんな生にも意味はある。


勇者「……思わない」


  そして人の生の意味は、誰のために氏ねたかなんだ。と、あの日私は結論付けた。


??「ふふ。またイライラしてきたらこの前みたいに攻撃しちゃうかもですよ~?ナウなヤングは危ないのです~」


  あの人は私のために氏んだ。


勇者「それならまた返り打ちにするだけだ」


  なら私はこの人のために氏のう。


??「……ふふ」


  それが私の仕返しと恩返し。

だって人は氏を重ねて未来に進んで行くんだから!

202: 2010/10/28(木) 12:37:42.78 ID:bc1CD9U0
121

--草原--

勇者「とゆーわけでだ。私は君と出会ったのは南の王国で、ということにする」

??「えー?なんでですか~?」

勇者「……今説明したのに。だーかーらー!今回の事件のことが私の仲間の耳に入ったら、変な詮索を受けることになるかもしれないでしょ?」

今回の一件は、
事情を知らない人からしたら北の研究所が襲撃されただけのことだし、彼女の身分を証明するものがないのも事実。

??「別に構わないんですけど~……まぁいいや了解です~」

勇者「うん。それじゃ……あれ?そういや名前なに?」

??「えー!!まだ私の名前言ってなかったでしたっけ~」

勇者「言ってない絶対」

??「じゃあちゃんと覚えてくださいね勇者様~。私の名前は」

草原でくるりと舞う彼女は言った。



町はずれに作った墓。
その中の一つに、オンシジウムの花が添えられている。

そしてその墓には粗末な板がささっており、幼さの残る字が書いてあった。

名も無き母の墓。



            勇者募集してたから王様に会いに行った
               番外編ss・isの踊子
                    完


203: 2010/10/28(木) 12:39:04.07 ID:bc1CD9U0
やっと番外編が終わったです……。次回から本編を再開します!!

それでは本日はこれにて終了とさせていただきます。

それでは質問、疑問などがありましたら書きこんでおいてください。
読んでいただき、ありがとうございました!!m(__)m

酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【5】

引用: 酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった2