295: 2012/03/26(月) 23:15:58.38 ID:feW5xWR30
こんばんは!お久しぶりです!!

あ、お気遣いありがとうございます!!
勇者募集してたから王様に会いに行った【第一部】
勇者募集してたから王様に会いに行った【第二部】
勇者募集してたから王様に会いに行った【完結】
勇者募集してたから王様に会いに行った【IF外伝】

酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【1】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【2】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【3】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【4】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【5】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【6】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【7】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【8】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【9】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【10】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【11】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【12】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【13】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【14】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【15】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【16】
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【17】


それでは投下していきます。

296: 2012/03/26(月) 23:19:37.84 ID:feW5xWR30
381

--草原--

人造魔王「さーて、いっぱい遊ぶぞー!!」

マントを羽織った勇者似の少女が戦場を駆ける。

蚯蚓亜人「!?こんなところに5歳くらいの少女がいるにょろ!?」

人造魔王「きゃはっ!」

たんっ

蚯蚓亜人「!!」

軽い跳躍で30メートルもの距離を一瞬で詰める人造魔王。

ヌキャッ!!

蚯蚓亜人の顔が容易く引きちぎられてしまう。
魔法の世界
297: 2012/03/26(月) 23:21:14.73 ID:feW5xWR30
382

--草原--

パピヨン亜人「パピッヨンッ!!」

鷲団員「新手か!?なんてやつだ!!」

人造魔王「んっふっふー!」

パピヨン亜人「よくも同胞を……火属性対単体攻撃魔法、レベル3!!」

ゴォォォ!!

パピヨン亜人が放つ火の魔法は、その射線上にいるもの全てを燃やしながら人造魔王へ。

ドッボオオオオオオオオオオッ!!!

人造魔王「あちちっあちちっ!!」

鷲団員「ほ、ほとんど効いていない!?」

298: 2012/03/26(月) 23:22:14.83 ID:feW5xWR30
383

--草原--

人造魔王「マント燃えちった。もー!よくもやったなー僕怒ったぞー」

ギュンッ!!!!!

パピヨン亜人「!?」

鷲団員「!?」

人造魔王が構えた掌に膨大な魔力が集約される。

ジッジジジッ

パピヨン亜人「ば、ばかな!!大地が震えるほどの力が!?」

鷲団員「そ、そんなもの受けることが」

人造魔王「六色ほー」

ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

299: 2012/03/26(月) 23:23:46.30 ID:feW5xWR30
384

--草原--

人造魔王「更にーぐるぐるー」

ギャギャギャッギャギャギャ!!!

人造魔王は六色砲を放ちながらそのまま回転、

東の槍使い「!?」

西の道化師「なっ」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

人造魔王「あははははははははは!!!」

人造魔王の攻撃は無差別に戦場を破壊する。

人造魔王「やっぱ戦いって、楽しーなぁ」

裸の人造魔王は、嬉しそうにくるりと回る。

301: 2012/03/26(月) 23:25:56.45 ID:feW5xWR30
385

--草原--

ざしゃああ!!

占隊長「くっ!!」

隠蔽兵(!避けられた?姿を隠している僕の攻撃がわかるのか?)

占隊長(スキル占いで前もって攻撃を予見しているんだけれど、使う度に誤差が生じてる……)

ブゥン

隠蔽兵は剣を担いだ状態で占隊長の目の前に現れた。

占隊長「!!」

隠蔽兵(なんらかの手段で攻撃を読まれているのなら姿を隠していても意味が無い)

占隊長(魔剣の効果を切った?)

隠蔽兵「風属性移動速度上昇レベル3」

バシュッ

隠蔽兵「反応出来ない速度で叩くまで」

302: 2012/03/26(月) 23:26:52.95 ID:feW5xWR30
386

--草原--

キィンギィン!!

サム「む、これはまたとんでもないことになっているでござるな」

とても草原とは思えないありさまを見てサムは思う。

レン「大地がこんなになっても、頃し合ってるのかにゃ」

ポニテ「……ん」

アッシュ「それが人間だ」

ツインテ「……こんなことに力を注がなくたっていいのに」

アッシュ「……止めるぞ。連合軍の主力を一体ずつ倒していく」

ポニテ「一対多とかひきょーな感じするけど、まぁしょーがないよねー」

303: 2012/03/26(月) 23:27:46.56 ID:feW5xWR30
387

--草原--

虎男「ぬぅん!!」

ガガガガガガっ!!!!

虎男をラッシュで飛んでくる矢を全て叩き落とし、

虎男「がおっ!!」

ドゴオオン!!

地面を殴り、弾丸のように石を飛ばして狩人を攻撃してた。

狩人(野生動物のような身体能力……これだから亜人ってのは恐ろしいよ)

ドドッ!!

狩人「ッ!!」

石が狩人に命中する。

虎男「好機!!」

304: 2012/03/26(月) 23:32:14.75 ID:feW5xWR30
388

--草原--

虎男はここぞとばかりに駆けだした。

トンっ

右拳を振り被って跳躍、

虎男「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

石を食らいよろめいている狩人に

虎男「」

その時虎男の脳裏に、ある一つの疑問が浮かんだ。

虎男(防御が薄い職業である狩人には必須とも言われるスキル、見切りがあったはず。こんな飛んできた石に当るものなのだろうか?)

虎男は何気なく見た着地地点に嫌なものを感じた。

虎男「!?スキル虎咆哮!!」

がおおおおおおおおおおおおお!!!

口から放つ息の砲弾。それは虎男の勢いを消した。

狩人(ちぇっ、罠に気付いたか)

虎男(ぬかったがお。すでにここら一帯に罠を貼りめぐらせていたのかがお!!)

305: 2012/03/26(月) 23:36:33.30 ID:feW5xWR30
389

--草原--

絵師「ぎゃははは!!よくもやりやがった狐やろー!!」

絵師が空に描いたのは雨雲。

狐男「む?」

雨雲は一気に巨大化し、雨を降らし始めた。

ザーザー

狐男(雨なんか降らしてどういうつもりコン?水の量が増えるならぼくのほうが有利コンよ?)

狐男は掌に水の弾丸を生成してる。

ぴかっ

狐男「」

ガガアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

雷が狐男に直撃する。

306: 2012/03/26(月) 23:42:05.90 ID:feW5xWR30
390

--草原--

狐男「な、この職業、属性とか関係なしで……コンか」

どしゃっ

絵師「ぎゃはははは!!油断したな!?」

ぱしゃっ

絵師「!?」

倒れた狐男の体は水に変わる。

狐男「分身だコン」

ドジャッ!!

絵師の後ろから現れた狐男。その右腕が絵師の腹部を貫いた。

絵師「がふっ!!??」

307: 2012/03/26(月) 23:43:37.01 ID:feW5xWR30
391

--草原--

蜂隊長「あ、相性悪すぎるぶーん……最強の部隊長であるこの俺が……」

すでにボロボロの蜂隊長。

テンテン「どうした?もう終わりか?」

ガシャコっ

テンテンは右腕を銃器に変換し蜂隊長に向けた。

テンテン「投降するか?むやみに命を散らすこともあるまい」

蜂隊長「……ふ。そうぶーんね」

蜂隊長は手を挙げたまま近づいてきた。

蜂隊長「……でも意地があるぶーん。意地も通せないんじゃ生きてても仕方ないぶーん」

テンテン「そうか。なら氏ぬといい」

蜂隊長「スキル、援軍要請」

ぶーんぶーんぶーん

蜂隊長がスキルを発動すると、大量の蜂が蜂隊長のもとにあつまってきた。 

308: 2012/03/26(月) 23:47:09.22 ID:feW5xWR30
392

--草原--

ごぽ、ごぽぽぽ

義足(しまった……!!)

戦場に、巨大な水で出来た球体が出現している。

包帯女(完全にあいつの空間になっちゃった!!)

鮫隊長「……はぁあ。生き返ったぁあ」

義足(!?先ほどと体積が全然違う!?)

包帯女(嘘!?3メートルくらいあるんじゃないの!?)

鮫隊長「ふぅ……あまりに辛くていきなり奥義つかっちまったピチ……まぁ仕方ないピチ」

義足(……こりゃ、仕方ないな)

包帯女(奥義使わせて消費させただけでよしとするか……)

義足と包帯女は水の中で構える。

義足、包帯女((無事蘇生されたらまた会おう))

309: 2012/03/26(月) 23:50:25.75 ID:feW5xWR30
393

--草原--

どががっががが!!

鷲隊長「……!!やはり私がわからないのですか!?」

変化師「さ、さっきからおまえ、なにをいってる!!」

ぎゅるる!!

変化師の鞭に変化した左腕が鷲隊長を捕える。

鷲隊長「くっ!!」

変化師「お、おまえつよい。い、いけどりはむりそうだ。だ、だからわるくおもうな」

変化師は右の拳に力を込める。

変化師「つ、土属性攻撃力上昇魔法レベル4」

変化師の右腕に鉱石が集まり、まるでダイヤモンドのように光り輝く。

鷲隊長「記憶を失ってしまったのか傀儡になってしまったのか……」

310: 2012/03/26(月) 23:52:45.54 ID:feW5xWR30
394

--草原--

槍兵「げほっごほっ!!」

槍兵は口から血を流している。

槍兵「思ったよりやるじゃねぇのお前ら」

弓女「くそう!!斧女をよくも!!」

盾男「前に出るな!!」

弓女「!!!」

左腕を無くし、左脚から大量に出血してる盾男が叫ぶ。

盾男「後続のために少しでもこいつを削る……それが俺達の役目なんだ!!」

弓女「ッ!」

槍兵(いやぁ……もう随分仕事されちゃってるがなぁ。……でもまぁここまで魂見せられちゃ、答えないわけにもいかねぇな)

ずっ

盾男「!!やっと魔力を使うか」

槍兵「じゃあぁなお前ら。今度は違うとこでやろうや」

311: 2012/03/26(月) 23:54:48.86 ID:feW5xWR30
395

--草原--

ガガガアアアアアアアアアアン!!

聖騎士「ぬぅ……!!」

鬼姫「っはぁ!」

灰竜「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

空を飛んでいる灰竜の体を足場に高速で移動する鬼姫。

聖騎士「我があぁあああ灰竜ををををおお足蹴にぃ!!」

フォンっ!!

視界から音速で飛んでくる鬼姫。

聖騎士「ぬあああああああああああああああ!!!」

ギギャアアアアン!!!

それを槍で弾く聖騎士。

鬼姫「ひゅぅっ!!今のまでしのぐすか!!」

312: 2012/03/26(月) 23:55:55.87 ID:feW5xWR30
396

--草原--

聖騎士「ぬあああああああああ!!はあああああいりゅううううううう!!はああくのだあああああ!!」

灰竜「ごおおおおおおお!!」

灰竜は聖騎士に言われて灰色の炎を鬼姫に吐いた。

鬼姫「」

ゴオオオオオオオ!!!

空中で成す術も無く鬼姫は炎に飲み込まれる。

聖騎士「あれだけではやつはしなあああああああん!!目をこらせえぇえ灰竜うぅぅぅ!!」

灰竜「ぐおおおおお」

313: 2012/03/26(月) 23:57:05.02 ID:feW5xWR30
397

--草原--

ドっ

鬼姫「あちちち。やっぱ最強種は伊達じゃないっすね」

鬼姫は地面に着地し、火のついた髪を手で払う。

聖騎士「む!そこぉぉぉかぁあああ」

ばち、バチバチバチバチバチバチ!!

聖騎士は地上の鬼姫に槍を向けると、その先に魔力を集める。

鬼姫「ん」

バリバリバリバリバリバリ!!!!!!

空間が集約するほどの恐ろしい力。

鬼姫「これはちときついっすね」

聖騎士「雷属性対単体攻撃魔法ぅぅぅ、れええべぇぇぇるうぅう、5!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

314: 2012/03/26(月) 23:57:51.96 ID:feW5xWR30
398

--草原--

ばりっ、ばりりっ

聖騎士「ぬぅぅぅ……」

聖騎士の放った魔法の威力は強大で、地面には巨大なクレーターが出来ていた。

聖騎士「やぁあつめぇ、避けおったわぁ……」

……ひゅん

聖騎士「!」

直径何十メートルもある巨大岩が、聖騎士に向かって飛んできていた。

聖騎士「ぬううううう!!」

どっがああああああああああああああん!!!

315: 2012/03/27(火) 00:00:51.46 ID:RqBqf5EH0
399

--草原--

鬼姫「あれでさすがにノーダメージは無いはずっすよねぇ」

ゴゴゴゴゴゴゴ……

鬼姫(砂煙で中が見えないっすが……地面に落ちた音はしない。ってことは)

バリバリバリバリ!!!

鬼姫「っ!!」

ドッガアアアアアアアアアアアアアアン!!

砂煙の中から、凶悪な威力を持つ雷が四方八方に放たれた。

南の細兵「ぎゃああ!!!」

王国の剣兵「ぐあああああああああ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴ

鬼姫「やれやれ、辺り構わずっすか」

316: 2012/03/27(火) 00:01:28.88 ID:RqBqf5EH0
400

--草原--

ドッギャアアアアアアン!!!

ギャアアアアアアン!!!

うわああああああああああ!!

きゃあああああああああああああ!!

アッシュ「い、一体何がおきてやがんだこれは!」

どぎゃああああああああん!!!

ポニテ「やたら強い雷魔法が暴れまわってるみたいだけど」

どがん、どがあああああああああん!!

サム「これは……!!しまった、いかん!!」

レン「にゃ?」

ぴか

ツインテ「あ」

ドッガアアアアアアアアアアアアン!!

347: 2012/04/03(火) 00:26:18.24 ID:G1vFMtUq0
401

--草原--

ゴゴゴゴゴ

戦場の遥か上空に、箒にまたがった三人の姿があった。

迅雷「……ひどい」

疾風「うわぁ。もうしっちゃかめっちゃかやぁ」

魔導長「やれやれなの」

迅雷「魔導長……私達は参加しなくていいの?」

魔導長「うーん。私達の国がまだ国家として認められてないから参戦することもできないの。したらむしろまずいことになるの」

疾風「はぁ。指くわえて見てるしかないなんて……いつになったら認めてくれるんやろか」

348: 2012/04/03(火) 00:26:55.06 ID:G1vFMtUq0
402

--草原--

ツインテ「ん……んぅ」

ざら

聖騎士の魔法を受けて吹き飛ばされたツインテは、砂土の中で意識を取り戻す。

ツインテ「……!!み、皆さん!!」

ツインテが目を開けると仲間の姿は無く、

剣豪「ん?お前確か王国の」

ツインテ「!?」

他者の血を纏った剣豪が立っていた。

349: 2012/04/03(火) 00:27:21.58 ID:G1vFMtUq0
403

--草原--

アッシュ「くそ!なんなんだいきなり!ツインテ達は……」

槍兵「か~、聖騎士の旦那、好き勝手暴れやがって……あれ?お前東の王国で見たな」

アッシュ「!!槍兵……」

槍兵「……なんで戦場にガキがいやがるんだ。巻き込まれたのか?」

アッシュ「……」

槍兵「違うのか。じゃあ………」

ひゅっ

アッシュ「!?」

ギィン!!

槍兵「敵ってことでいいんだな?」

350: 2012/04/03(火) 00:27:49.40 ID:G1vFMtUq0
404

--草原--

レン「んにゃにゃにゃ……っ!ツインテ大丈夫かにゃ!?」

がばっ

レンはあの荒れ狂う魔法攻撃の中、しっかりと誰かの腕を掴んでいた。

ざらざら

レン「ツイ、っ!?」

ポニテ「えへへ……ポニテちゃんでしたー。なんて……」

レン「にゃー!?ツインテどこにゃー!ツインテー!!」

レン発狂。

ザっ

吟遊詩人「気やすくその名を~呼ぶな~」

351: 2012/04/03(火) 00:28:22.55 ID:G1vFMtUq0
405

--草原--

ポニテ、レン「「!!」」

ポニテとレンの前に吟遊詩人が現われた。否、彼は最初からそこにいた。

吟遊詩人「開戦の時に我らの陣地にいなかった者がなぜこの戦場に~」

ポニテ「こ、この戦争を止めに来たんだよ!」

レン「にゃー!」

吟遊詩人は演奏をぴたりと止める。

吟遊詩人「は?」

ぞくっ

352: 2012/04/03(火) 00:28:57.18 ID:G1vFMtUq0
406

--草原--

ポニテ「ッ」

吟遊詩人「……わけのわからないことを言う……戦争を止める?君たち程度の実力で?……まさか君たち、それにツインテを巻き込んでいないだろうね~」

レン「……」

無言が何よりの答えだった。

吟遊詩人「……処刑してやる」

ズズズズズ

吟遊詩人の体から膨大な魔力があふれ出る。

吟遊詩人「ツインテを危険に合わせるものは……全て」

ポニテ「ッ!やるしかない!」

ポニテは二本の剣を引き抜いた。

353: 2012/04/03(火) 00:29:47.09 ID:G1vFMtUq0
407

--草原--

ガガガガ!

選抜兵「な、なんでお前がこんなとこにいんだよ!」

サム「パーティの意向ゆえやむなく」

選抜兵が投げ付けるカードを全て叩き落とすサム。

選抜兵(くそ、悔しいが俺一人じゃこいつは無理だ……通信兵)

選抜兵はテレパシーで通信兵に連絡を取った。

通信兵(わかってます。今軍師さんの騎士達を誘導します)

サム「やれやれないしょ話はいやでござるよ」

354: 2012/04/03(火) 00:30:23.42 ID:G1vFMtUq0
408

--草原--

選抜兵(!?こいつ!感知で電波を)

ドバッ!!

サムの一振りで選抜兵の右腕が飛ぶ。

サム「……拙者ツインテ殿達を探しにゆかねばならぬゆえ、さっさと終わらせてもらうでござるよ」

選抜兵「こ」

ズシャッ!!

選抜兵「」

サム「両手が無ければお得意のドローは出来ぬでござろ?」

355: 2012/04/03(火) 00:31:06.62 ID:G1vFMtUq0
409

--草原--

びちゃちゃっびちゃっ

選抜兵「……ぐっ……」

サム「……自陣に戻るでござる。こんなとこで氏んでしまっては蘇生が難しいでござるよ」

選抜兵「……情けのつもりかよ」

サム「無論」

選抜兵「むかつくぜその余裕が!!」

ばっ

選抜兵は靴を脱いで裸足になると、左足の太ももにくくりつけてあるデッキケースから、器用にカードを掴んだ。

選抜兵「スキル、ファイナルドロー!」

356: 2012/04/03(火) 00:31:49.88 ID:G1vFMtUq0
410

--草原--

サム「!」

選抜兵「腕が無けりゃカードがひけねぇと思ったかよ」

ぶぅん

選抜兵のカードが光る。

サム「……むぅ」

選抜兵「確かに俺じゃ……お前を足止めさせることすら出来無さそうだよ」

ばいぃぃん!!

カードは魔法陣へと変貌し、空中に円を描く。

サム「!!」

357: 2012/04/03(火) 00:32:24.56 ID:G1vFMtUq0
411

--草原--

選抜兵「だがお前はここで終わりだ!!」

ぶぅん

魔法陣から

銀馬「ひひひぃぃん!!」

三体の騎士が現れた。

ダカラッ

サム「……」

銀河「あいつを倒せばいいのかい?」

風雲「なら早めに終わらせようか」

雷鳴「wow!!」

358: 2012/04/03(火) 00:32:59.74 ID:G1vFMtUq0
412

--草原--

犬娘「ぐ……な、なんだこいつ、わん」

犬娘は血まみれになりながら地面に横たわる。

陸王もこもこ「グルるるるるぅ」

人形師「おや貴女は討伐戦に参加していませんでしたかぁ。こいつはめちゃくちゃ強かったんでどさくさに紛れて拾って来ちゃったんですよぉ」

陸王もこもこによって、辺り一帯の兵士達は全て氏体にされてしまっている。

犬娘「……な、なんでも人形に出来るのかわん」

人形師「えぇえ。意識が無ければねぇ。人形師は人形を操ることしかできませんからぁ」

人形師が見えない糸を振ると、

フォン、グシャ

陸王もこもこの巨大な腕で犬娘が潰された。

359: 2012/04/03(火) 00:33:31.38 ID:G1vFMtUq0
413

--草原--

剣豪「やれやれめんどくせぇな。他にも仕事があるんだよ俺には」

スパスパスパスパ!!

ツインテ(!!触手が!!)

ダンっヒュッ!!

剣豪はするすると距離を縮めるとツインテの頸動脈を斬った。

ぶしゅっ

ツインテ「」

剣豪「抵抗されるとめんどいからよ、とりあえず氏んでおいてくれや」

ぶしゅーーーー!!

360: 2012/04/03(火) 00:34:04.00 ID:G1vFMtUq0
414

--草原--

茶色の大地をツインテの赤い血が染め上げていく。

ツインテ「~~~が!!」

ツインテのリボンが両方とも弾けた。

ばつん!!

剣豪「!」

ツインテ「づ!!おらぁ!!」

ストレートになったツインテは左手を傷口に当てると、触手をドリル状に変化させ剣豪に攻撃を加えた。

ヒュヒュヒュヒュ!!!!

剣豪「ちっ、人格変えが」

361: 2012/04/03(火) 00:34:29.76 ID:G1vFMtUq0
415

--草原--

スパスパスパスパ!!!!

剣豪「だがこんな鈍い動きじゃ俺にはきかねぇぞ」

ざっ

ツインテ(あぶねぇ……もう少し血を失ってたら終わりだったぞ)

剣豪(ほう、今の一瞬で治療か。精度速度共に中々大したもんだな)

ツインテ「……東の三強の剣豪ね……まぁ強くなった俺様の相手としちゃぁ上等だぜ」

ビシッ

ツインテはグローブを付けた左手で剣豪を指差した。

剣豪「……ほう」

362: 2012/04/03(火) 00:35:51.99 ID:G1vFMtUq0
416

--草原--

ひゅっ

ツインテ「!」

ギィン!!!!

ツインテ「ぐっ!!」

剣豪の激烈な打ち込みにかろうじて反応したツインテだったが、

ドンっ!!

ガードごと弾かれ体が宙に浮く。

どっがああああああああん!!!

ツインテ(片手でこれ、かよ!!)

363: 2012/04/03(火) 00:36:22.96 ID:G1vFMtUq0
417

--草原--

剣豪「……」

ツインテは大地を転がされながら体勢を立て直す。剣豪ほどの実力者であれば、その隙を見逃さず、追撃を加えることも可能だったはずなのだが、剣豪はじっとツインテを見ていた。

剣豪(ほぉ……今の攻撃に反応しやがった)

ツインテ(?なんで攻撃してきやがらねぇ……まさか手を抜いてるんじゃねぇだろうな)

ドッ!!

ツインテは魔力を放出し、斬られた触手の数を5本から8本に増やす。

ツインテ「俺様をなめやがる奴は誰であれ万回ぶっ頃す!!」

剣豪「はっ、いきがってないで来いよがきんちょ」

スッ

ツインテ「ッ」

剣豪の構えから何やら異様な雰囲気を感じ取るツインテ。

364: 2012/04/03(火) 00:36:59.26 ID:G1vFMtUq0
418

--草原--

ツインテ(……いや迷ってても仕方ねぇ……!!)

ダッ!!

ツインテは真正面から猛然と剣豪に向かっていった。

剣豪「スキル、砂塵剣」

じゃっ!!

剣豪は刀を地面につけたかと思うと、円を描くように振り抜いた。

ぶわっ!!

ツインテ「!!砂が」

舞い上がった砂が剣豪の姿を隠してしまった。

ツインテ(くそ!!ガードだ)



ズバシャアッ!!

365: 2012/04/03(火) 00:37:25.52 ID:G1vFMtUq0
419

--草原--

ツインテ「ぎっ」

触手と腕によるガードはギリギリ間に合ったのだが、それでもその全てを断ち切られてしまう。

剣豪「む」

ぶしゃああ!!!

ツインテ「がああああ!!!」

完全に体を両断したと勘違いした剣豪は、ツインテの腹部がまだ繋がっていることに驚き一瞬の隙を生んだ。それを見逃さなかったツインテの左拳が剣豪の頬を捕えた。

ゴッっ!!!

剣豪「ッ!!」

ズザザー!!!

ツインテ「くそ!!水属性回復魔法、レベル2!!」

ぽわわぁあん

ツインテの両腕は無事接着し、腹部の傷も完全に治癒する。

366: 2012/04/03(火) 00:37:56.96 ID:G1vFMtUq0
420

--草原--

バツン

今度はリボンの片方だけが復活する。

ツインテ「ふぅ、全くあの子は脳筋なんだから!」

サイドテールのツインテは触手を束ねて鞭を作る。

ツインテ(あの勇者斬りの剣豪相手に接近戦だなんて、勝ち目がないに決まってるじゃない!)

剣豪「なんだまた人格変えやがったのか」

剣豪は口についた血を拭う。

剣豪「……久々だぜ。人間に傷を付けられたのはな」

ツインテ「……」

ひゅんひゅん

ツインテは鞭を唸らせてタイミングをはかっている。

ツインテ「おじさん、ドエムなら私の鞭を食らってみませんか?」

373: 2012/04/10(火) 01:23:11.28 ID:58A9Umq30
大変遅くなりました! やっと終わったので投下していきたいと思います。

あとあの動画はエイプリルフールネタということもあり近々消させていただきます。

それでは投下していきます!

374: 2012/04/10(火) 01:24:17.47 ID:58A9Umq30
421

--草原--

ドガガガガガ!!

ヒュヒュヒュヒュ!!

ガがガガガ!!

ツインテ(!!嘘っ……私の鞭が捌かれ、るっ!!)

ズバババ!!

数百にも渡る刀と鞭の衝突。その衝撃破によって地形が変わるほどの凄まじい攻防戦。



ツインテ「」

しかし、それでもあっさりと鞭を掻い潜ってきた風の刃がツインテの太ももを切り裂いた。

ブシャッ!!

375: 2012/04/10(火) 01:25:27.44 ID:58A9Umq30
422

--草原--

ツインテ「~~ッ!!」

ブチブチブチ、ガクッ

ドシャっ

剣豪「……残念だな、経験も修行もまるで足りてねえ」

ツインテは地面に崩れ落ちた。

ツインテ「あっ、く……」

ツインテは涙目になりながらも、ちぎれた左足に手を伸ばす。

376: 2012/04/10(火) 01:26:37.50 ID:58A9Umq30
423

--草原--

剣豪「時間が圧倒的に足りてねぇ」

ザッ

剣豪は刀を肩に担いでツインテに近寄った。

剣豪「おしまいだ。お前はちゃんと頃してから連れ帰させてもらうぜ」

剣豪はそう言うと、一切の躊躇なく刀を振り下ろした。

ズパ

まるでバターでも切るかのように滑らかに振り下ろされた刀。
剣豪の一振りを受け損ね、ツインテは自らの赤き血によって大地を濡らす。

ボタッボタタ

ツインテ「……ッッぐ!!」

余りに深く切り裂かれてしまった。
左斜めからの袈裟斬りは肩甲骨を叩き割り、いくつかの重要な臓器を切り裂いた。

377: 2012/04/10(火) 01:27:23.77 ID:58A9Umq30
424

--草原--

ブシャーー!!

ツインテ「~~」

剣豪「……悪いな」

チン

剣豪は血を払った後、その刀を鞘へ収める。

ビクッビクッ

剣豪「……やれやれ。こんな幼いガキを斬るはめになるとは……。仕事とはいえやるせねぇな」

ビクッビクッ……

剣豪「……」

ツインテの生命活動が停止した。

378: 2012/04/10(火) 01:28:36.69 ID:58A9Umq30
425

--草原--

剣豪「……」

ザっ

剣豪はツインテが氏んだことを確認してから、ツインテを担ぐためにしゃがみこんだ
途端、

ズギャッ!!

剣豪「ッ!?」

小さな触手のドリルが剣豪の肩を僅かにかすめた。

……ドクン

剣豪「バカな!確実に氏んだはずだ!」

ドクン、ドクン

ツインテ「」

ツインテが上半身を起こした。

379: 2012/04/10(火) 01:30:07.90 ID:58A9Umq30
426

--草原--

バサッ!!

まるで触手が羽のように一斉に広がった。

ドクン!ドクン!

ある触手はツインテの左足を掴み、ある触手は左足と本体との接合を始め、ある触手はドリル状に変化し剣豪を襲った。

ビョッ!!

剣豪「っ!」

シャシャシャシャ!

至近距離からの不意打ちだったにも関わらず、剣豪は右へ左へと華麗に交わす。しかし量があまりにも多く、ついに回避不能の攻撃が剣豪に伸びた。

剣豪「じっ!」

380: 2012/04/10(火) 01:31:23.10 ID:58A9Umq30
427

--草原--

バシバシ!

剣豪は右手で触手を弾き落とすしかなかった。

剣豪「ちっ……」

ポタポタ

剣豪が刀を握ることが出来る最後の手での防御。

ポタポタ

剣豪に刀を抜く暇を与えないほどの猛攻は、ついに剣豪の生命線を侵した。

ユラ

ツインテ「……くくくっ。お互い不便だよなぁ。腕が一本じゃよ」

ツインテのリボンはいつのまにか二つとも外れている。

381: 2012/04/10(火) 01:32:36.36 ID:58A9Umq30
428

--草原--

剣豪「……お前……自動蘇生者か……」

剣豪は哀れみとも蔑みとも取れぬ表情でツインテを見た。

ツインテ「……ち。サイドテールの野郎、今ので気絶しやがったか」

剣豪「?」

ツインテは身体中の傷を修復しながら立ち上がる。

ツインテ「奥義、絶対回復領域」

ブゥン

ツインテの魔力がドーム型の空間を作り上げた。

382: 2012/04/10(火) 01:33:37.95 ID:58A9Umq30
429

--草原--

剣豪「……」

剣豪は無言で刀の束に手をやる。

ツインテ「どうだ?俺様の魔力の中にいる気分は。暖かくて心地よくて羊水の中みたいだろ?」

剣豪「……残念だが、お前はここできちんと殺さなきゃいけないようだ」

苦虫を噛み締めたような顔で剣豪は、刀を抜いた。

ツインテ「はっ。そう簡単に負けるかよ。いくらてめぇが三強の代表格っつったってよぉ!」

剣豪「……」

剣豪の集中力が研ぎ澄まされていく。

ツインテ「……ち」

383: 2012/04/10(火) 01:34:16.81 ID:58A9Umq30
430

--草原--

ギギギギギガン!!!

槍兵「ひゅうっ。へへへ、お前中々やるじゃねぇか」

自分の刺突を弾かれて笑みを浮かべる槍兵。

アッシュ「はっ!はっ!はっ!」

ドクドクドク

腹部から流れ出る大量の血が、アッシュの未来を如実に語っている。

槍兵(それだけにもったいないな。最初の打ち合いでの甘さがよ。まだまだ心のエンジンの掛け方がぬるい)

アッシュ(くそっ)

384: 2012/04/10(火) 01:35:47.79 ID:58A9Umq30
431

--草原--

確かな実力差に加えて決定的なダメージ。

ガガガ!!

アッシュ「ぐ!!」

槍兵「そらそらそらそら!!」

ギギギガガガァアアン!!!!

本来ならばこの戦いは既に決着のついたはずなのだが、

槍兵(うーむ……)

シャガガガガ!!

この後の戦いを考えての安全策。ダメージは最小限に、魔力消費を最小限に。

アッシュ「ぐあああ!!」

そんな槍兵の考えが時間を引き延ばしている。

385: 2012/04/10(火) 01:36:22.88 ID:58A9Umq30
432

--草原--

アッシュ「毒属性範囲攻撃魔法、レベル2!!」

ブシュー!!

槍兵「!」

アッシュの体から毒の霧が出現し、周囲に広がって行く。

槍兵(まぁこれを通しちゃどう考えてもよろしくないよな)

槍兵は槍をくるくると回し始め、毒の霧を押し返した。

ブワッ

アッシュ「!!」

槍兵(まだめんどくさい技もあるかもしれないな。出し惜しみももうやめるか)

スチャ

槍兵は視界が毒の霧に覆われたアッシュに狙いを定める。

槍兵「スキル、一の突き」

386: 2012/04/10(火) 01:37:22.14 ID:58A9Umq30
433

--草原--

ガズン!!!

槍兵「ん」

槍兵の槍が貫いたのは、岩。

シャッ

ギィン!!

槍兵(幻覚?いやタイミングをずらされたのか?)

槍兵は不意打ちをなんなく処理すると距離を開けた。

アッシュ(ち、今の避けるなよ……)

アッシュのナイフが銀色の毒がぽつりと地面に落ちる。

387: 2012/04/10(火) 01:38:02.98 ID:58A9Umq30
434

--草原--

槍兵「……」

槍兵は槍を回しながら間合いを取っている。

槍兵(なーんかやりづらいな。別に大した使い手ってわけでもねぇんだけど。なんかどっかでこれを知ってるような……)

アッシュ「スキル、飛毒」

ぶぅん

アッシュはナイフに毒を乗せると、そのまま振り抜き斬撃として放つ。

槍兵(まぁ、避けるよな)

ひゅっ

ざざざ

槍兵はアッシュに対して円を描くように移動する。

388: 2012/04/10(火) 01:38:37.43 ID:58A9Umq30
435

--草原--

シャシャ!

槍兵「……」

ひゅっひゅっ

槍兵(こんな遅いもの当るわけねぇだろ。一体何を考えて)



槍兵「」

槍兵の足元が槍兵の体重によって崩れ始める。

がらがら!!

アッシュ(かかった!!毒罠魔法!!そのまま腐れてしまえ!)

389: 2012/04/10(火) 01:39:31.41 ID:58A9Umq30
436

--草原--

槍兵「ちっ」

槍兵の足が毒に触れようかという瞬間、

槍兵「スキル、状態異常無効」

アッシュ「!?」

ジャポン

槍兵「はー。やれやれ」

じゃぽじゃぽ

なんでもないかのように毒の沼から這い上がる槍兵。

アッシュ「ぐ」

槍兵「欠陥属性ね。珍しいし場合によっちゃ強力だけどよ。対処するのは結構簡単なもんだぜ」

390: 2012/04/10(火) 01:40:00.21 ID:58A9Umq30
437

--草原--

アッシュ「く……」

槍兵「さぁどうする?属性はもう意味がないぜ。次は攻撃速度でも試すか?移動速度か?まさかそのなりで耐久力に自信があるわけじゃねぇよな」

槍兵はじりじりと近づいていく。

アッシュ「……くそ」

ぼたぼたっ

アッシュの出血が未だに止まっていないことに加え、自身の体内から毒という形で射出した水分。

アッシュ「ぜ、ぜ……」

アッシュは限界ぎりぎりにまで追い込まれていた。

391: 2012/04/10(火) 01:41:25.40 ID:58A9Umq30
438

--草原--

アッシュ「く」

満身創痍でありながらも構えをとるアッシュ。

槍兵「……なんでそこまできばってるのかわからねぇけど、まぁ無理すんなよ。運が良けりゃ誰かが氏体を見つけてくれるだろうさ」

ずぶっ

アッシュ「」

槍兵の槍はその淡々とした喋りとは裏腹に、雷のような速度でアッシュの胸を貫いた。

アッシュ「ッ!ガっ!!」

ブシュッ!

槍兵「あばよがきんちょ。またいつか会えたら会おう」

ざっ

槍を抜き取り血をはらうと、アッシュに目をくれることもなくその場から去っていった。

392: 2012/04/10(火) 01:42:38.29 ID:58A9Umq30
439

--草原--

…………ひゅー

槍兵「……ん?」

立ち去るはずだったのだが、槍兵はありえない感覚を背中に感じ、振り返った。

アッシュ「」

ズズズ

そこには血濡れたアッシュが立っていた。

槍兵「!?な……!お前、今のは確実に心臓を」

アッシュ「」

ぼたぼたぼた

槍兵(あの傷、まさか直前で体を捻ってかわしたのか?いやもうそんなことができるほどの体力は残って)

その時

グルん

アッシュの目玉がひっくり返った。

394: 2012/04/10(火) 01:44:34.64 ID:58A9Umq30
440

--本陣--

秘書「ッ」

西の王「?どうした秘書」

突如秘書は顔を押さえてよろめいた。

秘書「いえ……些細なことです」

そう言うと秘書は何事も無かったかのように、またいつものように背筋をぴんと伸ばす。

秘書「あの子が私のあげた目をようやく使ったようです」

西の王「……そうか」

秘書ボソっ「全く、ちゃんとヤれているのかしらあの子は」



--草原--

ズズズ

槍兵「な、なんだその眼は」

アッシュ「」

アッシュの眼球はまるで血のように赤い色をしている。
まるで焦点が合っていないその眼は、見る者を恐怖にいざなった。

アッシュ「すすす、スキル、hい、人頃し、発動」

409: 2012/04/17(火) 02:01:16.04 ID:c6Z1oiGO0
441

--草原--

ざっざっ

吟遊詩人「どこへ行こうと言うのかね~」

ポニテ「……」

レン「……」

竪琴を引きながら歩く吟遊詩人と、盛り上がった土の影に隠れている二人。

ザッ、ザッ

ポニテ(せっかく……せっかくあんなに修行したのにみんなで戦うことが出来ないなんて)

ポニテは出血している左腕を押さえていた。

レン(この人レンが今までに戦ってきた中でぶっちぎりに強いにゃ……。だからこそのチャンス。レンの力がどこまで通用するのか、調べ

てやるにゃ!)

そしてレンは胸に手をやった。

410: 2012/04/17(火) 02:02:03.61 ID:c6Z1oiGO0
442

--草原--

ぱあぁ

青く光る錬金術の反応光。

吟遊詩人「!」

ポニテ(レンちゃんの個人修行は完成したのかな? ……よぉし、私も成果を見せなくちゃ)

ポニテは流れ落ちる血に魔力を注ぐ。

ぐに、ぐにに

吟遊詩人(魔力反応で居場所はわかった~。変なことをさせる前に)

ぽろん

吟遊詩人が弦を弾くと無数の魔力の球体が出現し、

ドガガガガ!!!

ガトリングのように岩を蜂の巣にした。

411: 2012/04/17(火) 02:03:01.57 ID:c6Z1oiGO0
443

--草原--

バッ!!

間一髪で岩陰から離れる二人。

吟遊詩人「!」

右に飛んだポニテと左に飛んだレン。

吟遊詩人(二手に別れて的を絞らせないつもりなのか~?)

タッタッ!!

ポニテは岩の壁を駆け、一気に跳躍する。

ポニテ「はーーー!!!」

吟遊詩人(まず仕掛けてくるのはこっちか~)

ヒュオ!!

交差したポニテの二つの剣が吟遊詩人に迫る。

412: 2012/04/17(火) 02:04:07.80 ID:c6Z1oiGO0
444

--草原--

吟遊詩人(バカ正直に真正面からだなどと~、ん)

剣が自分の首に到達するまでの、ほんの少しの時間で策を看破する。

ぽろん

ガシィン!!

ポニテ「!?」

ポニテの物理の剣は魔力の球体で、魔法を裂く剣は素手でそれぞれ防がれてしまう。

ギシッ

吟遊詩人(中々高い防御力を持っていたが、零距離ならば~)

ボロン

先ほどのものよりも大きな魔力の球体がポニテを打ちすえる。

ドッゴオオン!!

413: 2012/04/17(火) 02:05:39.58 ID:c6Z1oiGO0
445

--草原--

ビチャッ

ポニテ「ぎゃはっ!!」

血を吐きながら吹き飛ばされるポニテ。

吟遊詩人(む? まだ浅い? ならば)

ポロロロン

ポニテ「!?」

百を越える魔力の球体がポニテを取り囲んでいることに気付きポニテは青ざめた。

吟遊詩人「魔法歌、蜂の巣ラプソディー」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!

レン「……」

414: 2012/04/17(火) 02:06:40.25 ID:c6Z1oiGO0
446

--草原--

ドシャシャーーーーー!!!

吟遊詩人「ふぅ……フェミニストな僕にとってはちょっとこたえるかな~」

吟遊詩人は次の標的であるレンに視線を向けて言った。

……がら

吟遊詩人「ッ」

ポニテ「あ、くぅ……い、いたぁい……」

吟遊詩人「!? た、耐えた~?」

血だらけのポニテはがくがくと震えながら立ち上がろうとしていた。

ポニテ「……あ。剣が両方とも折れちゃった……かたっぽはレンちゃんが作ってくれたやつなのに」

吟遊詩人「……」

415: 2012/04/17(火) 02:07:27.05 ID:c6Z1oiGO0
447

--草原--

ざっ

レン「ありがとうにゃポニテ」

吟遊詩人(! しまった、この子に気を取られてる隙に)

レンの体全体が青く光り輝いている。露出した胸元には青い球体が埋め込まれていた。

レン「ポニテが時間を稼いでくれたから準備完了出来たにゃ」

ポニテ「もー、おっそいよー。私ボロボロになっちゃったー」

ポニテが笑うとレンもつられて笑った。

吟遊詩人(なんですかこれは~見たことのない技っぽいですね~)

ポニテ「まぁ私も……時間を稼ぎながら準備してたんだけどね」

吟遊詩人「!?」

ぐにぐにぐに

ポニテがまき散らした血がまるで生き物かのように動いていた。

416: 2012/04/17(火) 02:09:25.24 ID:c6Z1oiGO0
448

--草原--

レン「じゃあ行くにゃ……人体工房モード」

宣言したレンが眼鏡を外すと、それがスイッチになったのかレンの瞳から光が消える。

吟遊詩人「人体、工房?」

レン「……」

レンが両手でなんらかのポーズを取ると、地面から無数の巨大な鎌が生えてきた。

吟遊詩人「!? 詠唱無しだと?」

ぱし

レンの体が放つ光が強さを増していく。

ポニテ「じ、人体工房モード!? 何それカッコイイ!!」

417: 2012/04/17(火) 02:09:49.79 ID:c6Z1oiGO0
449

--草原--

吟遊詩人(驚いた……けど魔力の使用量が今までの比ではないね~。その分ではすぐに枯渇してしまうはずさ~)

レン「……羽、展開」

レンの呟きを合図とし、レンの背中から巨大な蝶々の羽が出現した。

バサッ!!

ポニテ「わ……鱗粉が雪みたいで、綺麗……」

レン「……」

羽が動く度に振り落ちる白く発光する鱗粉。それと青く輝くレンの姿とあいまって幻想的な光景を生み出していた。

吟遊詩人(……なぜか……彼女の魔力量がどんどん膨れ上がっている~)

ゴゴゴゴゴ

418: 2012/04/17(火) 02:10:16.77 ID:c6Z1oiGO0
450

--草原--

レンは、時間という難題をクリアした時に、また一つの問題に気付いた。

“例え素早い錬成が出来るようになったとしても、作れる物の質と量がそのままなのであれば、今と戦力にそう変わりないのではないか”

いつの時代でも求められる、質と量と速さ。
そのどれもが技術力の向上次第で、ある程度までは上を目指すことが出来る。

難解なものを短時間で仕上げるには確かな技術力が必要だし、材料がなんであるかよりも作り上げる人の力のほうが完成品の質に大きく関わってくるのは当然のこと。
より精度の高いものを作る上で、余りを極力出さずに作れるのならば、限られた材料でも完成品の量が変わってくるに違いない。

ゴキョゴキョ

技術でカバー出来ることは非常に多い。
あるもので何とかしなければならないという状況は、これから幾度となく味わうことになるはずだ。それゆえ技術は生きている限り磨き続けねばならない。

ゴキョゴキョ

419: 2012/04/17(火) 02:10:42.68 ID:c6Z1oiGO0
451

--草原--

しかし、所詮は技術なのだ。

いくらそれが大事なファクターだとしても、質と量、共に大幅に上回る敵が現われた場合、レン達は為す術もなく打ち倒されるだろうと予測していた。
所詮、工夫でどうにかなるのは実力が拮抗した相手とのわずかな差のみだと、レンは痛いほどに理解していたから。

ゴキョゴキョ

だからレンは量を欲した。
完全なる物量を。

物量の凶悪さは質も速さも上回る。
脆弱な人間がモンスターや魔族より多くの土地を所有しているという事実がこの世の摂理を物語っている。

ゴキョゴキョ

420: 2012/04/17(火) 02:11:15.89 ID:c6Z1oiGO0
452

--草原--

無論、質と速さをないがしろにするわけじゃない。
レンが自分に一番足りてないと思うものを、技術によって手に入れようとしているだけ。

ゴキョゴキョ

物量の元となるは魔力。この世界において最も用途の多いエネルギー。それをレンは求めた。

単純に考えて、精巧に作られた名剣よりも、しこたま魔力を込めあげて作っただけの棒の方が数倍強いのがこの世界。
それだけの爆発的な力が魔力にはある。

ゴキョゴキョ

レン「……」

この蝶々の羽のようなものがレンの求めた最強の力。

421: 2012/04/17(火) 02:11:58.39 ID:c6Z1oiGO0
453

--草原--

レンの背中の左側に生えている羽は大地、水脈から魔力を吸い上げ、レンの波長に合った魔力になるように変換する仕組みを持ったアーティファクト。
レンの背中の右側に生えている羽は魔力を貯蔵する役目と、供給過多になり体への負担にならないよう調整する力を持つアーティファクト。

ゴキョゴキョ

この煌く羽は、地属性と水属性、そして物体の声を聞く白雪の特性あってこそ成しえたもの。

ゴキョゴキョ

レンの羽は大地から魔力を吸い上げる。

それはつまり、
大地がある限りレンの魔力が尽きることは無くなったということ。

レン「……」

バサッ

レンは大地を手に入れた。

422: 2012/04/17(火) 02:12:51.94 ID:c6Z1oiGO0
454

--草原--

ポニテ「く、くおぉ~!! かっこいいーーー!! しキレー!! こうなりゃ黙ってられないよ!! 私も新技お披露目するしかないよね!!」

ぐに

ポニテの体から離れた血がぶるぶると動きだし、それぞれが形をなしていく。

ポニテ「キバおねーちゃんからもらった命、そして技!!」

血は全て杭の形になり、そして燃える。

ボッ

吟遊詩人「!!」

吟遊詩人の胸に付着したポニテの血すら燃え始めた。

ポニテ「いくよ。全軍とっつげきー!!」

ゴッ!!

423: 2012/04/17(火) 02:13:27.60 ID:c6Z1oiGO0
455

--草原--

ヒュヒュン!!

吟遊詩人「!」

ガガガガガ!!!

吟遊詩人(この胸の血を目がけて飛んでくる~?なるほど、ただやられていたわけではないと~)

四方八方から迫る燃える血杭。

ヒュヒュヒュ!!

吟遊詩人(裂けてなお追尾)

グシャっ

顔に迫る杭を蹴りで破壊するも、

ぐにゃ

吟遊詩人(破壊されてもなお再生、とは~)

蹴りに使った足に血が棘のように刺さっていた。

424: 2012/04/17(火) 02:14:15.28 ID:c6Z1oiGO0
456

--草原--

しゅん

吟遊詩人「!!」

巨大な鎌を雨霰と放つレン。

ドガドガドガガッドガッーン!!

吟遊詩人「くっ!!」

ポニテ「!! 私の攻撃も両方交わすなんてすごい!!」

吟遊詩人(これは……今のうちに摘むしかないね~)

ギリィン

吟遊詩人が弦を弾くと

しゅるり

魔力が剣士の姿に変化する。

吟遊詩人「魔法歌、剣士の突撃~」

425: 2012/04/17(火) 02:15:12.48 ID:c6Z1oiGO0
457

--草原--

ドンっ!!

魔力で実体化した剣士は、ポニテとレンの攻撃を掻い潜りレンに詰め寄った。

レン「……」

高速で振り下ろされる剣がレンに触れるより早く、

しゅ

鎌がゴーレムに変化し、剣士の攻撃を受けた。

ガギイイイイイイン!!!

吟遊詩人(!! 早い、思考の速度での錬成~……更に魔力は無尽蔵……~)

426: 2012/04/17(火) 02:15:51.22 ID:c6Z1oiGO0
458

--草原--

ばしゅばしゅばしゅ

全ての鎌がゴーレムに変わる。

吟遊詩人(離れた物体もあっさりと!)

ゴーレム「ぐもおお!!」

ドガドガッン!!

吟遊詩人に次々に襲いかかるゴーレム。

ポニテ(くー! ゴーレムちゃんがいっぱいいると私の血が動かしにくいなー、私そこまで精密にうごかせないし)

吟遊詩人とゴーレムの戦いを離れた所から観察しているポニテは、血の杭を自分の元に集結させる。

吟遊詩人「?」

ポニテ(う、やっぱ血を操るのは簡単じゃないな。貧血になりそ)

427: 2012/04/17(火) 02:16:35.81 ID:c6Z1oiGO0
459

--草原--

ぐちぐちぐちゅちゅ

ポニテの右手の掌に集まった血は一つにくっつき、更に魔力を吸って大きく変貌していく。

吟遊詩人(血の……大剣?)

ぼっ

ポニテが手にしたのは、燃える血の大剣。

吟遊詩人(!! かなりの魔力を練り込んでいる……。さっきと同じ特性をもっているのなら形状も自在に変化するのだろうし、めんどくさいな)

バキン!

吟遊詩人「!」

しかし、血の大剣は二つに分かれる。
あくまで双剣がポニテの戦闘スタイル。

ポニテ「さぁて二体一なんだし、勝たせてもらうよ!!」

428: 2012/04/17(火) 02:33:19.92 ID:c6Z1oiGO0
460

--草原--

ガガガガガ!!

銀河「くっ!!こいつ」

サム「思ったよりしぶといでござるなぁ。名も無い騎士と思っていたでござるの、に!」

ギィン

サムの切り上げで銀河の鎧が切り裂かれる。

ブシャッ

銀河「がっ!!」

風雲「銀河!!おのれ!!」

ぱからっぱからっ

風雲は馬とともにサムに向かう。

サム「……邪魔でござるっ!!」

434: 2012/04/23(月) 23:04:16.95 ID:K/B3t6Zc0
お待たせいたしました。それでは投下開始します。m(__)m

435: 2012/04/23(月) 23:04:45.08 ID:K/B3t6Zc0
461

--草原--

ガギィアァン!!

雷鳴「s、shit!!」

馬と足を斬られた雷鳴はサムと二人の騎士の戦いを見ていることしか出来なかった。

ギギギギン!!

銀河と風雲の馬上からの剣撃をサムは刀一本で捌き続ける。

ガガガガン!!

サム「ぬぅ!!」

ドシュッ!!

銀河の刃がついにサムの肩を裂く。

436: 2012/04/23(月) 23:05:29.56 ID:K/B3t6Zc0
462

--草原--

銀河「良し今だ!!」

サム「ッ!! させるかでござる!!」

ガァアン!!

サムの一振りは銀河を馬から落とすことに成功する。

銀河「ぐ!!」

風雲「うおおおおおお!!」

風雲は槍を回転させてサムに斬りかかった。

風雲(傷つき、体勢も崩れた今ならば!!)

シャッ!!

風雲「!?」

風雲の槍がサムに届こうかというその時、一瞬早くサムの刀が風雲の体を両断した。

ズシャアアアアアア

サム「スキル、逆境剣にござる」

437: 2012/04/23(月) 23:06:05.44 ID:K/B3t6Zc0
463

--本陣--

ぴく

軍師「……なかなかやるもんだぜぃ」

軍師は一人、うんうんと頷いていた。

軍師「自ら三強の道を絶った臆病者と噂に聞いていたが、話が違うだぜぃ」

妃「関心している場合では無いですよ軍師~。それでも貴方がちゃんと指揮していればすぐに終わることですよね~?」

すりすり

妃は自分のまるまるとしたお腹を撫でている。

軍師「いや~……なにぶん戦場で任されている箇所が多すぎて、これでもいっぱいいっぱいなんですだぜぃ」

妃「泣き言は聞きません~。辛くてもこなすのが三騎士の仕事です~」

軍師「はぅあ……剣も持てないのに騎士なんて称号はほど遠いだぜぃ」

438: 2012/04/23(月) 23:06:42.45 ID:K/B3t6Zc0
464

--本陣--

東の王(……こいつか)

東の王は座禅を組んでいる軍師を見て思う。

東の王(王国のジョーカー……その力は)

軍師「あ、E9制圧だぜぃ」

軍師は地図にチェックをいれる。

東の王(兵への作戦指示。何気ない指示ですら効力を発揮し、兵のステータスを上昇させる……)

軍師「筋肉質な女性騎士の君、ちょっと鼻毛出てるだぜぃ」

妃「……最低な指示~」

439: 2012/04/23(月) 23:07:47.39 ID:K/B3t6Zc0
465

--本陣--

東の王(そんなことでもあがるのか……しかし警戒すべきだな。なにせこいつが指示するだけで、普通の兵の戦闘力が三強レベルにまで跳ね上がるかもしれんのだ)

東の王は眉間に皺を寄せる。

通信兵(東の王様、テレパシーで失礼します)

東の王(どうした? 何かあったか?)

通信兵(探ってみた所、やはりツインテ様のパーティがこの戦場にいるようです)

東の王(そうか。ツインテが東の王国を出た時に、侍も一緒にいたという情報は本当であったか)

通信兵(どうしますか?)

東の王(確保しろ。つつく材料になる)

通信兵(はっ)

440: 2012/04/23(月) 23:08:34.48 ID:K/B3t6Zc0
466

--本陣--

軍師「……」

軍師はうっすらと目を開けていた。

軍師「妃殿、私は侍の担当から降りるだぜぃ」

妃「……は~?」

軍師「侍一人を倒すために全ての指揮力を使うならまだしも、このままじゃ消耗するだけだぜぃ。ちょっと力をくわえなきゃいけないとこも出来そうなんで降りますだぜぃ」

妃「……」

軍師の真剣な表情を見て、妃も考える。

妃「ならどうするのですか~? 野放しはまずいでしょう~?」

軍師「三強クラスを数人投入しちゃうだぜぃ」

441: 2012/04/23(月) 23:09:40.99 ID:K/B3t6Zc0
467

--本陣--

通信兵「!」

東の王「バカな……」

軍師「それなら指揮なんかしなくても余裕のよっちゃんってもんだぜ」

妃「……わかりました~。通信兵ちゃん? まわせそうな三強をまわしてくださいな~」

通信兵「あ……東の王様」

通信兵は困ったような顔で東の王を見る。

東の王「く……確かに野放しはできん男だ。あれの出自は我が国だしな。通信兵、どうにかして二、三人向かわせろ」

通信兵「は……」

軍師「……」

442: 2012/04/23(月) 23:10:45.58 ID:K/B3t6Zc0
468

--草原--

ザシュッ、ズブ

雷鳴と銀河に止めを刺したサムは額の汗を拭う。

サム「ふぅ……さて、すぐ見つかってくれればよいのだ、が……」

召喚師「自分の氏に場所をでやんすか?」

サム「!」

召喚師は無数の蜂を従えて参上する。

サム「召喚師殿……また面倒くさい人が現れたものでござる……」

召喚師「む、面倒くさいとはなんでやんすか! せっかくこちとら持ち場を放棄して来てやったでやんすよ!」

サム(……そういう所も含めて面倒なんでござるよ)

443: 2012/04/23(月) 23:11:52.19 ID:K/B3t6Zc0
469

--草原--

サムは左手で刀の鞘を持ち、集中力を高めている。

サム(古くからの戦人。キャリアは長く経験豊富。その戦略は多岐に渡り様々戦局に対応できるとか。……噂しか知らないでござるが)

ザッ!!

絵師「ふぅー!! 手間取っちゃったギャハハ!! てかダルい相手だから押し付けて逃げてきちった!!」

獣のように四足歩行で現れた絵師。

サム「絵師殿……まさか三強が二人も来るとは豪華でござるな……」

さすがのサムも冷や汗を垂らす。

召喚師「それだけ警戒しているということでやんすよ。出来るなら乱暴にしたくないでやんす、無抵抗で捕まってくれると嬉しいのでやんす」

444: 2012/04/23(月) 23:12:38.69 ID:K/B3t6Zc0
470

--草原--

サム「……せっかくでござるが、拙者何も悪いことしてないゆえ、捕まるわけにはいかんのでござる」

サムはきっぱりと召喚師の目を見ていった。

絵師「ギャハハ!!」

召喚師「はぁ。堅いとことかお父上にそっくりでやんすなぁ」

召喚師は困ったように笑う。

ゆらっ

サム「」

その時サムは、視覚や聴覚では感知出来ない大気の僅かな揺れを感じとった。



そしてその場所へ音も無く刀をふるう。

ギィン!!

隠蔽兵(!! 接近に気付かれたか!)

445: 2012/04/23(月) 23:13:12.02 ID:K/B3t6Zc0
471

--草原--

サム(もう一人……! だがこれは誰でござる……?)

ブゥン

剣を弾かれた隠蔽兵はその姿をあえて見せる。

サム「……」

隠蔽兵「侍様ほどの人に名乗らないのは失礼ですね……私は東の王国の隠蔽兵と申します。もしかしたらもこもこ討伐の際にお会いしたか

もしれませんが」

隠蔽兵はビシッと背筋を伸ばしサムに名乗りあげる。

サム(ツインテ殿達とさして変わらぬ少年(少女?)だというのにこの戦場に……)

隠蔽兵「もし侍様に東の王国に戻る意志が無いようならば」

隠蔽兵の瞳が暗くなっていく。

隠蔽兵「ここで倒してしまえ、との命令を私は受けています」

446: 2012/04/23(月) 23:13:54.12 ID:K/B3t6Zc0
472

--草原--

サム「!?」

サムの反応速度を持ってしても、隠蔽兵が接近することに気付かなかった。

サッ
ギィン!!

サム「……!!」

隠蔽兵「! ……やはり弾かれますか、今のはやれたと思いましたが」

プシッ

サムの頬が裂ける。あと一瞬遅かったら……

サム(……ここにもいたか)

召喚師「さて手早く終わらせるでやんすよ」

絵師「自ペイント、カラーリングギャハハ!!」

絵師は自分の腕に絵を書き始める。

隠蔽兵「いきます」

サム(ツインテ殿達と同じく天賦の才を持つものが)

447: 2012/04/23(月) 23:14:35.90 ID:K/B3t6Zc0
473

--草原--

ガガガ!!!

剣豪「ちぇいッ!!」

ツインテ「」

ドパッ!

全ての触手をかわした剣豪はその勢いのままツインテの首をはねた。

が、

ツインテ「~~かははっ!そんなのこの中じゃ意味ねぇんだよ!!」

瞬時に元通りになるツインテは振り向きざまに触手を放つ。

シャ

しかし剣豪はすでにツインテに触れられるほど近くに来ていた。

ガズン!!

448: 2012/04/23(月) 23:15:16.48 ID:K/B3t6Zc0
474

--草原--

ツインテ「ぐッ」

剣豪「……どんな傷も治し、どんな氏からも帰ってくると言うんならよ」

剣豪は胸に突き刺した刀をねじり、ツインテの上半身を両断する。

ブシッ!!

ツインテ「げっ」

剣豪「その魔力が尽きるまで痛め付けてやる」

ブシャーー!!

ツインテの血を浴びながら次の一撃に備える剣豪と、再生しながら剣豪に反撃しようと動くツインテの触手。

剣豪「奥義、」

ミシッ

剣豪の放つ闘気によって世界が止まる。

449: 2012/04/23(月) 23:16:32.74 ID:K/B3t6Zc0
475

--草原--

ツインテ「やっ」

剣豪「天翔牙突六連ッッ!!」

ツインテ「」

キィン……ズッガガガガガガガガガガァァァァァァァァン!!!!

高速の突きの乱れ打ち。
それはいともたやすくツインテの肉体を粉微塵に変えてしまった。

剣豪「……」

じゅる、じゅるる

それでも、ツインテの体は一つに戻ろうと再生を始めている。

剣豪「……は」

剣豪の頭上をツインテのパーツが飛んでいる。

ツインテ「ま、まけ」

ばちん

ツインテ「負けられ、ない」

剣豪「……!」

グシャ!

450: 2012/04/23(月) 23:17:14.07 ID:K/B3t6Zc0
476

--草原--

ガギギギギキィン!!

槍兵(な、なんだこれはよぉ!!)

ズシャ!

アッシュ「」

アッシュの猛烈な攻撃の嵐。思わず一歩退いた槍兵は太ももを裂かれる。

槍兵(ちっ……タイミングが取れねえし、気配が読めねぇ。こいつはまさか……)

アッシュ「ぎ。ぎ。ぎ。ぎ」

アッシュはぽたぽたと血を垂らしながら槍兵に走り寄る。

槍兵「……へ、わっかんねぇなぁ。どうしてそこまでして戦うかね」

槍兵は槍を強く握り締めた。

451: 2012/04/23(月) 23:17:44.59 ID:K/B3t6Zc0
477

--草原--

ギギンギギギン!!!

槍兵「ほっときゃ後一時間もしないで氏ぬ傷だぜ?そいつは」

ぽたぽた

アッシュ「ぎ。ぎ。ぎ。ぎ」



音もないアッシュの踏み込み。

槍兵「」

ギィガァン!

槍兵「ッちぃ!」

ガッギギッ、ガガガガ!

槍兵は小回りの効かないはずの槍で華麗に弾いていく。

槍兵(……やべぇ、ちっと楽しいじゃねぇか)

452: 2012/04/23(月) 23:18:21.47 ID:K/B3t6Zc0
478

--草原--

ガゴッ!

槍がアッシュの肩を薙ぎ払い、容赦無用に骨を叩き折る。

アッシュ「」

どさっ

槍兵「しぇいっ!!」

バランスを崩したアッシュに渾身の力を込めた槍が迫るも、

しっ

アッシュは体を捻るだけでそれを避けて、

てっ、てっ

槍兵「ッ!」

がちぃん!!

ナイフで槍兵に斬り付けた。

453: 2012/04/23(月) 23:19:06.05 ID:K/B3t6Zc0
479

--草原--

槍兵「はっふへぇ(危ねぇ)!」

ナイフを歯で受け止めた槍兵を見て、アッシュはもう片方のナイフで

ドガッ!!

アッシュ「ぎ」

斬ろうとするがそれよりも一瞬早く、槍兵がアッシュの腹部を蹴りあげた。

槍兵「べっ」

カラン

槍兵が吐き捨てたナイフ。それには毒も混じっていた。

槍兵(……スキルかけてなきゃとっくのとうにやられてるな……三強がなんてざまだ)

454: 2012/04/23(月) 23:19:41.93 ID:K/B3t6Zc0
480

--草原--

くるん

槍兵が槍を回して最善の攻撃態勢に入る。すると、

アッシュ「~~」

槍兵「……?」

アッシュが何かをぶつぶつと呟いていた。

アッシュ「~~つは」

槍兵「……」

アッシュ「……あ、いつは……ずっと……俺たちに、気を使って、いた」

アッシュは肺を絞りだすように喋った。

465: 2012/05/07(月) 23:38:45.68 ID:pHCzqzie0
本当にお待たせいたしました。。  まさかのサウナで倒れました。初めてのことでした。

それでは物語もラストスパート、投下していきます。

466: 2012/05/07(月) 23:39:46.49 ID:pHCzqzie0
481

--草原--

サム「……」

ぽた、ぽた

召喚士「プライドが傷つくでやんすね……三強が二人なんでやんすよ?こっちは」

頭部や腕から流血しているサムはじっとチャンスを待っている。サムは三人の猛攻をギリギリの所で耐えていた。

絵師「ぎゃははは!強いなぁ兄さん!」

サム「いやいやそんなことは……」

ギィヤン!

突然背後に向かって剣を振るったサム、そこには隠蔽兵が。

隠蔽兵「ぐっ!」

467: 2012/05/07(月) 23:42:21.51 ID:pHCzqzie0
482

--草原--

サム「おや、今のはさすがに首を貰えたかと思ったのに……残念でござるなぁ」

隠蔽兵(ジャミング、だぞ?姿を隠すのとは違うのに!)

ガッギガ!!

打ち合いに押され隠蔽兵は後ろに後退していく。

召喚士(集中狙いはまずいでやんすよ)「二頭巨象!!」

二頭巨象「ぱぉぉん!!」

サム「!」

どがぁん!!

468: 2012/05/07(月) 23:43:33.07 ID:pHCzqzie0
483

--草原--

サム(く、重く範囲の広い攻撃。少々やっかいでござる……やはり三人はきついでござるぜ)

どぉんどがぁん!

絵師「……ぎゃははは!いいや!奥義使っちゃうか!あんたはそれに値する敵だ!」

召喚士「!?」

体力と魔力を大量に消費することの多い奥義、それを使うということは戦線離脱もやむを得ないという意味である。戦争は一人倒せば終わるわけではない。どんな敵とこの後鉢合わせるかわからないのだ。

絵師「ぎゃははは!召喚士さん!本陣までエスコート頼むよ!」

召喚士「……わかったでやんすよ」

サム「」

その時サムは、表情を少しも変えることなく、笑った。

469: 2012/05/07(月) 23:44:06.77 ID:pHCzqzie0
484

--草原--

絵師「ぎゃははは!いくぜ奥義!」



奥義発動の構えを取ろうとした絵師。決して油断していたわけではなく、発動までのラグもないのだが、

サム(それを待っていたのでござる)

がずん

絵師「」

誰にも反応出来ぬ早さで、サムの突きが絵師の喉を貫いた。

ぷしっ

絵師「げひゅ!」

470: 2012/05/07(月) 23:44:59.88 ID:pHCzqzie0
485

--草原--

召喚士「!?」

サム「対奥義、奥義崩し」

ぶしゃぁぁぁ!!

召喚士「なっ!?」

隠蔽兵(早い!カウンターゆえの速度補正か!)

隠蔽兵が剣を構えた時、

隠蔽兵「!」

隠蔽兵は何かを感じ取った。

471: 2012/05/07(月) 23:45:54.35 ID:pHCzqzie0
486

--草原--

隠蔽兵「この威圧感……」

隠蔽兵は遥か彼方の戦場に意識を向ける。

ドクン

脳裏に浮かぶのは、人が干からびるまで全てを吸い尽くしていたあの外道達。

隠蔽兵「……見つけた」

ダッ

召喚士「!?どどどどこいくでやんす少年!?」

隠蔽兵はあっという間に戦場に消えた。

サム「……おやおやこれはこう都合でござるなぁ」

召喚士「……」

472: 2012/05/07(月) 23:46:42.61 ID:pHCzqzie0
487

--草原--

ポニテ「はっ、はっ、はっ……ぐぅ」

剣を杖がわりに立ち上がるポニテ。まさしく満身創痍だった。

レン「……、……」

白い頭髪が赤く染まったレン。それでも表情は機械的な無表情のまま。

変化師「ふ、ふーっ」

吟遊詩人「たらららぁん」(……ヘルプが無ければ危なかったかもしれないな~)

変化師「す、スキル身体変化」

ポニテ「!」

変化師はポニテ目がけて飛んだ。

変化師「た、虎兎!」

右腕は虎の頭に、左腕は兎の頭にそれぞれ変化する。

ブシャァ!!

473: 2012/05/07(月) 23:47:14.21 ID:pHCzqzie0
488

--草原--

ポニテ「ぐ、あっ!!」

ポニテの双剣では受けきれない動作。

変化師「も、もうやめろ。お、おでは君たちを頃したくなんてない」

ポニテは新たに出血した血を動かそうと試みるが、

ポニテ(ガス欠……)

レン「ッ」

レンは一瞬で巨大な槍を錬成し、同じく錬成したゴーレムに投げ飛ばさせようとするが、

バキャッ!

吟遊詩人「おいたはここまでだお嬢ちゃん~」

吟遊詩人の何らかの攻撃で粉砕されてしまう。

474: 2012/05/07(月) 23:47:44.65 ID:pHCzqzie0
489

--草原--

ぼたっ、ぼたぼた

ポニテ「はーっはーっ」

レン「……」

ぱきぃん

レンの背中の羽がガラスのように割れる。その直後、

レン「ごぷっ」

レンは大量の吐血をして倒れた。

吟遊詩人「でしょうね~あれだけの常軌を逸した力……何かしらの反動が無いほうがおかしいね~」

ポニテ「れ、レンちゃん!」



変化師のポニテを押さえ込む力が強くなる。

変化師「も、もうやめろ。わ、悪いようにはしないから」

475: 2012/05/07(月) 23:48:31.61 ID:pHCzqzie0
490

--草原--

ポニテ「ッ……」

ポニテは涙を貯めた目で変化師を見る。

ポニテ「……でも……私達が戦わなかったら……亜人のみんなは助からない」

変化師「!!」

ポニテは大粒の涙を溢す。

ポニテ「私達が戦わなきゃ、誰も亜人の味方がいなくなっちゃうじゃんか」

変化師「……」

ポニテ「私嫌だ。亜人のみんなが差別されて、それを横目に裕福な暮らしをしたって、ちっとも幸せじゃない……!」

476: 2012/05/07(月) 23:50:03.16 ID:pHCzqzie0
491

--草原--

吟遊詩人「……」

ぽた、ぽたぽた

ポニテ「これ以上……亜人の扱いがひどくなったら、きっとレンちゃんも……そうしたら私達は離れることになる……! それは、絶対に嫌!」

ばち

ポニテは自分の肉が引きちぎれることを承知で変化師の腕を振り払う。

ぶちぃっ!!

変化師「!」

ぽたぽたたっ

ポニテ「……レンちゃんは、ずっとよそよそしかったんだ……」

477: 2012/05/07(月) 23:51:17.48 ID:pHCzqzie0
492

--草原--

あれから幾度となく剣豪の刃はツインテの息の根を止めた。だが、

うじゅるぶじゅる

剣豪「……」

悪臭を放つ肉が何度も寄り添って人の形を成す。肉が幾重にも積み重なり、大地に流れた血液が本体目がけて逆走する。それはまるで終わらない呪いのようだった。

北の弓兵士「……」

南の歩兵「……」

結界の外からツインテ達の戦いを見ていた兵士達は、そのあまりに凄惨な戦いに釘付けとなって、戦闘を放棄していた。

ちわわ亜人「これが……戦い」

初級兵「や、やだ……もう戦いたくない……」

周辺にいた者達は、戦意を根こそぎ喪失していた。

478: 2012/05/07(月) 23:52:43.90 ID:pHCzqzie0
493

--草原--

剣豪「……もうやめろ」

ぐちゅるぶちゅる

剣豪「やめろ……」

にちゅるむちゅる

剣豪「……俺をここに束縛し続けるお前の目的は、もう十分に果たされただろ……?」

ぐじゅ

ツインテ「……くそ、何が六連だ。しこたま突いてきやがって」

頭部だけのツインテが悪態をつく。

剣豪「この空間を満たす魔力は枯渇しようとしている。もう戦闘は長引かない……痛みを我慢し続ける必要も、ない」

479: 2012/05/07(月) 23:53:40.72 ID:pHCzqzie0
494

--草原--

ツインテ「……あぁ?まだ俺は終わって」

剣豪「嬢ちゃん」

ツインテ「ない……ぞ」

ツインテの言葉を遮るように言い放ち、ツインテの髪の結び目を交互に指差した。
そう、ツインテのリボンは二つ。

ツインテ「ま、まだ、俺は、戦える」

震える。

剣豪「氏に貧するほどのダメージならば、お前の中の人格を気絶させられることはわかった」

ツインテ「!……」

480: 2012/05/07(月) 23:55:15.93 ID:pHCzqzie0
495

--草原--

剣豪「だから途中で男口調のやつが気絶したのも知っている。そして女口調の奴があれから現れていないことから察するに、精神のダメージは簡単には治せないようだな」

ツインテ「あっ、う……」

剣豪「……かまだよ。もう少し秘密を守る表情作りを修行しないとな」

ツインテ「」

会話の途中で、ツインテの体は修復しきる。

剣豪「なんにせよ見上げた精神力だ。いや、異常なほどだ。何度も繰り返される氏のダメージに、お前は、たった一人で耐え続けた。俺とて短時間にこれだけ殺されてはわからない。……見事だ」

剣豪はツインテに賛辞を送る。

剣豪「だがそれだけに気になるな。なぜそうまでして亜人の味方をするのか」

周囲の人間も固唾を飲んで見守っていた。

剣豪「人と国に決別してまで亜人が大切なのか?」

481: 2012/05/07(月) 23:56:28.22 ID:pHCzqzie0
496

--草原--

ざわざわ

ツインテ「……」

ビキッ

ツインテはボロボロになった義手を無理やり引きちぎって捨てる。

ガシャ

ツインテ「……ボクは亜人さん達だけの味方というわけではありません」

ざわ

剣豪「なに……?」

ツインテ「ボクが今ここで戦っているのは、この戦いを止めたいから、です」

ざわ、ざわ

ツインテ「本当は、差別もいじめも、人の争いごとをみんな止めたい……。戦わなきゃダメなこともあるのかもしれませんが、ボクは戦争が嫌いです。お互いが傷つくだけに決まってます」

剣豪「……」

ツインテ「みんな無理してるんです。傷つける側だって辛いはずなんです」

482: 2012/05/07(月) 23:57:34.18 ID:pHCzqzie0
497

--草原--

ざわざわ

ツインテ「剣以外でもきっとわかりあえる」

剣豪「そのためのこの奥義か。終わらない戦い、そして会話をするための」

ツインテ「……はい。この際時間を稼ぐために言ってしまいますけど、他には感覚区域の増大があります」

剣豪「?」

ツインテ「簡単に言うと、この中で戦った相手の戦法とか癖や動き方を学習してその対抗策や弱点を練るための領域でもあります」

剣豪「……!」

ツインテ「治すためにダメージ履歴を強引に閲覧したり、修復する際に体の構造を理解したり」

剣豪「!」

ぞく

剣豪(こいつ……)

483: 2012/05/07(月) 23:58:35.15 ID:pHCzqzie0
498

--草原--

ツインテ「更に言えば、相手の体を修復した時に僕の魔力を付着させて、相手の位置情報が常にわかるようにすることも出来ます。そして極め付けに僕は、魔力暴発も扱える」

剣豪(……ただの修復だけの力だけではない……心を折ることが出来なかった場合、相手が説得に応じなかった場合、その敵を始末することも勘定に入れているのか?)

ツインテ「……」

びゅううん

そう言ったツインテは絶対回復領域を解いた。

剣豪「……瞬時に回復したから定かじゃねぇが、一撃か二撃、貰ってたのか?」

にっ

ツインテ「……さぁ、僕にはわからない」

484: 2012/05/07(月) 23:59:47.44 ID:pHCzqzie0
499

--草原--

アッシュ「レンは、仲間である、俺達にも、しばらく、猫語尾を、使わなかったんだ」

槍兵「?は?」

アッシュ「あいつは、フードをかぶり、亜人の特徴を、隠そうと、していたんだ」


--草原--


ポニテ「最初は一緒にお風呂に入るのすら嫌がった……それだけレンちゃんは今まで迫害されてきたんだ……」

吟遊詩人「?」


--草原--


ツインテ「……」

剣豪(錯覚か?今何か……)

ツインテ「……ボク達の仲間にも亜人がいることは知っていますよね?」

剣豪「?いや、しらん」

ツインテ「え?そう、ですか」

486: 2012/05/08(火) 00:00:58.51 ID:bv/Knv830
500

--草原--

ツインテ「ボク達にはレンさんという亜人の女の子の仲間がいるんです。レンさんは、最初会った時は亜人だってことを隠していました。それはきっとレンさんが今まで辛い日々を過ごしてきたからに違いありません」

剣豪「……」


--草原--


アッシュ「だが、心のかべ、なんてもの、は、同じ釜の飯を食う、うちに、なくなった」


--草原--


ポニテ「一緒に旅をしていくうちに、私達は本当に友達になれた……」


--草原--


ツインテ「ボクたちは家族も同然の」

アッシュ「かけがえのない、仲間に」

ポニテ「仲間に、なったんだ!」

496: 2012/05/14(月) 23:49:50.96 ID:YcSCNQmt0
501

--草原--

吟遊詩人「……」

ツインテ「貴方達の決断は間違っている……ボク達でも仲良くなれたんだから、貴方達が仲良くなれないわけなんてないんです!」


--草原--


アッシュ「だという、のに、その手段を、考えず、安易に、武力で制圧、しようと、する、キサマラを」


--草原--


ポニテ「止めないわけにはいかない……私は亜人だけの味方じゃないよ。そんな差別はしない。私は、虐げられし者達を助ける。ただ単純に理不尽な暴力を許せないんだ!」


--草原--

ツインテ「だからボクは……ボクたちは、不条理を断ちます」

剣豪「……」

497: 2012/05/14(月) 23:52:00.13 ID:YcSCNQmt0
502

--草原--

アッシュ「そのためならば、人とだって、戦おう」


--草原--


ポニテ「私の未来の友達候補をいじめるのなら、私は戦う!」


--草原--

ツインテ「みんなが仲良くなれる時が来るまで……ボク達は戦う……!!」

きっといつかは魔王とだって、仲良くなれる。

剣豪は、最後にツインテがそう付け足した気がした。

498: 2012/05/14(月) 23:52:37.81 ID:YcSCNQmt0
503

--草原--

五代目「……」

伊達男(強い……まがまがしいオーラを感じるのに、なぜか心地よい。こんな感覚は初めてだ……)

メイド「五代目様、この守り、我ら三人おれば十分でございます」

番犬「ばう。他の兵はここにはいらないばう。巻き添えに巻き込むだけばう」

五代目「ふむ……というわけだ。兵を下げて休ませるか、一気に攻めるか、好きに選択するがいい」

鼠亜人「ちゅ、ちゅー!?いや、でもいくら助太刀してもらったからって、そこまで信用するわけにゃいかないちゅ……」

五代目「む、確かに」

守りの彼らが裏切ればたちまち城は落とされてしまうのだから。

499: 2012/05/14(月) 23:54:54.52 ID:YcSCNQmt0
504

--草原--

メイド「五代目様が信じられないでございますか!?」

番犬「お前達が邪魔なことにはかわらないバウよ……?」

鼠亜人「ちゅ、ちゅー……」

おほん、とわざとらしく咳をする伊達男。

伊達男「ではこれでどうでしょうか?私のスキル、約束で行動を制限してみては?」

鼠亜人「?へ?」

伊達男「一個の約束をさせてこの手錠をつけるのです。手錠をつけられた人物は約束を反古に出来なくなります。破れば、氏」

メイド「!な、なんで善意で助けてやってるのに五代目様がそこまでしなきゃならんのでございますか!!」

500: 2012/05/14(月) 23:57:17.96 ID:YcSCNQmt0
505

--草原--

鼠亜人「……た、確かにそこまでされたら信じるしかないちゅが……」

五代目「……」

五代目は鼠亜人の顔を見る。

五代目「そんなことでいいのか。なら頼む」

番犬「!?」

メイド「五代目様!?」

伊達男「……よろしいので?」

五代目「あぁ。構わない。俺は弱きを守り、あの村を守り、そこにブラとともに住むのだ。そんなことで信用を得られるなら」

五代目は腕を差し出した。

501: 2012/05/14(月) 23:59:28.55 ID:YcSCNQmt0
506

--草原--

伊達男「鼠亜人さん。約束の文脈は貴女が決めてください」

鼠亜人「じゃ、じゃあ、私が戻るまでこの場所に留まり戦って欲しい」

伊達男「スキル約束、発動」

バシュッ

メイド「……それあなたが戻って来なかったらどうなるでございます?」

鼠亜人「ちゅ?」

伊達男「解除されませんね。でもその場合は約束相手が氏ねば解除されますし、私が直に解除しますよ」

番犬「お前も氏んだらどうなるバウ?」

伊達男「……その時も解除されますね」

ギラついた番犬の眼だった。

502: 2012/05/15(火) 00:03:03.61 ID:I1DTOHma0
507

--草原--

五代目「ふ、しかと約束、引き受けた」

鼠亜人「う、うん、頑張ってちゅ。私達は少し休んだ後前線で頑張ってくるちゅ」

南の兵士を引きつれて城壁の中に入る鼠亜人。

メイド「……はぁ。全く人がよすぎでございます。そのせいで人に裏切られたことを忘れたのでございますか?」

五代目「……あれはあれこれはこれだ。過去は過去だ」

五代目はメイドと番犬を見て笑みを浮かべた。

?「あれはあれ……?これはこれ……?」

五代目「!」

メイド「!この感覚は以前にも味わったでございます!」

503: 2012/05/15(火) 00:04:03.96 ID:I1DTOHma0
508

--草原--

番犬「!!屋敷でかバウ!」

スッ

?改め隠蔽兵「……」

五代目「連合の兵士か……見たところ随分と若いな」

メイド(そっか、五代目様はこいつを見たわけではないでございます)

隠蔽兵「……また、人を食らいに現われたのか……」

五代目「……いや」

隠蔽兵「……ふざけた奴だ」

ミシシッ

隠蔽兵は拳を強く握りしめる。

504: 2012/05/15(火) 00:05:41.16 ID:I1DTOHma0
509

--草原--

ぽたぽた

隠蔽兵「人を……村を壊滅させておいて、過去は過去……だと」

メイド「……!」

番犬(あの頃の五代目様と今では!)

隠蔽兵「貴様は、俺が始末する!」

ガギィャアン!!

激烈な飛び込み。その気迫は圧倒的な実力差のある五代目さえ押されてしまう。

五代目「む……」

ピキ

受けた鎌にひびが入る。

505: 2012/05/15(火) 00:08:09.30 ID:I1DTOHma0
510

--草原--

メイド「貴様!」

五代目「やめろメイド」

それを五代目が制止。

五代目「……成る程、あの村の生き残りか。それなら俺を憎むのもわかる」

隠蔽兵「ふっう!!」

五代目「あの時は記憶が曖昧だったんだ、すまん」

隠蔽兵「」

五代目はあっけらかんと、謝罪の言葉を口にした。

ぎり

隠蔽兵(何を、言ってるんだこいつは、あれだけのことをしておいて)

風が巻き起こる。

隠蔽兵「何を……言ってやがんだてめぇはぁぁぁぁ!!」

506: 2012/05/15(火) 00:09:21.56 ID:I1DTOHma0
511

--草原--

槍兵「……」


--草原--


変化師「……」


--草原--

剣豪「……」

剣豪はツインテを見つめたまま思い出に浸るように喋り始めた。

剣豪「……竜亜人の伝説というものがある」

507: 2012/05/15(火) 00:09:52.74 ID:I1DTOHma0
512

--草原--

剣豪は言葉を噛み締めるように声を発する。

剣豪「今から……そうさな、60年くらい前か?前の前の魔王が氏んですぐに事件があったんだ」


--草原--

槍兵「竜亜人という伝説の亜人の生き残りが引き起こした大量虐殺だ。その時に犠牲になった人間は推定不能。魔王から受けた被害をはるかに上回る凄まじい事件だった」

アッシュ「!」


--草原--

変化師「と、当時の権力者が根回ししたのか、その事件を目の当たりにして生きていたものが少なかったせいなのかはわからないが、お、公の記録に残ることは無かった、とされている」

508: 2012/05/15(火) 00:12:52.53 ID:I1DTOHma0
513

--草原--

ポニテ「……」

吟遊詩人「この世に地獄を再現した竜亜人は~、一部の亜人を率いて世界征服を開始したという~。もっともその後すぐに、竜亜人は亜人王と鬼亜人によって仕留められるんだけどね~」

レン「……」


--草原--

剣豪「これが記録に残らなかった闇の事件だ。記録には残らなかった分人々の記憶に強く残ったがな」

ツインテ「そんな歴史……知らないです」

剣豪「そりゃそうだ。三強以上の立場になると開示される情報の一つだからな。あの時代から生きていない限りまず知らないだろう」

509: 2012/05/15(火) 00:13:24.87 ID:I1DTOHma0
514

--草原--

剣豪「今でも脳裏に焼き付いて離れねぇ血の記憶。亜人と関わると自然とそれを思い出してぎこちなくなり、話したわけでもねぇのにそのしこりが子供に伝わりどうしようもない壁が作られる」

今のじじいばばぁしか直接には経験のないことなのによ、と剣豪。

ツインテ「……!」

剣豪「少しでも亜人がらみの事件があるとそれを連想しちまうんだ。次はどこであれが起きる?その前に全力で押さえ込んで止めなきゃならない、と」

かちん

剣豪は刀を鞘にしまった。

剣豪「俺らは、亜人が怖いんだよ。あのモンスターと見分けのつかない生物が」

剣豪は言った。

510: 2012/05/15(火) 00:14:24.02 ID:I1DTOHma0
515

--草原--

剣豪「人は臆病で脆弱なんだ。敵だかなんだかわからないものを、野放しに傍においては置けない」

剣豪は言った。

剣豪「だから仕方のないことだろう?これは侵略でも抑圧でもない、ただの防衛なんだ」

剣豪は言った。

ツインテ「……仕方ない、なんてこと、あるわけないじゃないですか」

ツインテは言った。

ツインテ「先人のやったことを、今の子供たちにまで押し付けるなんて、間違ってる……」

剣豪「……」

ツインテ「そんなの、犯罪者の家系は全員ダメだって、言ってるようなものじゃないですか……」

511: 2012/05/15(火) 00:16:23.19 ID:I1DTOHma0
516

--草原--

剣豪「……犯罪者の家族はその負い目から決して武器を持たないだろう。怪しい行動をすればすぐに糾弾される。……追い詰めない限り、やつらは無害だ。だが亜人は違う」

ツインテ「……生まれながらに強いから、ダメなんですか?」

剣豪「あぁ。あいつらの握力なら子供であっても、簡単に首をねじ切る。子供同士で遊んでるのを見るとひやひやするぜ」

ツインテ「……モンスターと見分けがつかないから、ダメなんですか?」

剣豪「あぁ。そもそも亜人とモンスターを明確に分ける手段すらない」

ざわ

ツインテ「……それなら……悪人と善人だって外見だけじゃわからないッ」

ざわ

剣豪「……」

512: 2012/05/15(火) 00:16:58.05 ID:I1DTOHma0
517

--草原--

ツインテ「……はっ、はっ」

ざわ、ざわ

剣豪「……生粋のお姫さまなんだな。さすがは言うことが違う。清廉潔白そのものだ……」

ツインテ「ボクは……お姫さまなんかじゃないです。それと……清廉潔白でも、ない」

剣豪「……」

ツインテは俯きながら声を弾く。

ツインテ「ボクは弱い……本当なら戦いなんて、したくはなかった」

ざわ

ツインテ「そんなボクがなんで……戦場に立って、東の王国最強の剣豪様と対峙しているのか……今でも正直不思議です」

513: 2012/05/15(火) 00:17:39.30 ID:I1DTOHma0
518

--草原--

ざわざわ

ツインテ「いつの間にか、ボクの拳も武器になってました……自分以外の血に濡れたりもしました……」

ざわざわ

ツインテ「……自分のふがいなさのせいで友達が傷つくことになっちゃったし、ボクも腕を失った……。いつからボクの手は人を殴るためのものになったんだろう……」

ざわざわざわ

ツインテ「本当なら、クッキーでも作って、みんなと紅茶でも飲んでいたかったのに……」

剣豪「……」

ツインテ「でも外にでなくちゃこんなことはわからなかった。こんなにも間違った世界だなんて……思わなかった」

ざわざわざわざわ

ツインテ「意志の通じる同胞を、差別して当たり前だと言い張る世界だなんて!」

ざわざわざわざわ!

514: 2012/05/15(火) 00:18:16.63 ID:I1DTOHma0
519

--草原--

ツインテ「意志を通すには力しか……ない。もうボクの手はクッキーを作らない。この拳は戦うために!」

ツインテは全ての魔力をその拳に集中させた。

ツインテ「勇者仮パーティ勇者候補その三、ツインテ。……参ります」


--草原--


アッシュ「過去のせいで、今生きてる者達を、殺させる、わけには、いかない」

アッシュが腰を沈めた。

アッシュ「勇者仮パーティ勇者候補その二、アッシュ、裂く」


--草原--

ポニテ「平和に終わらせるために……戦争をするよ!!」

ポニテは血の大剣を構えた。

ポニテ「勇者仮パーティ勇者候補その二、ポニテ……行くよ」

515: 2012/05/15(火) 00:18:56.11 ID:I1DTOHma0
520

--草原--

しゅううう

聖騎士「ぬぅぅぅ……中々ぁぁ楽しませてくれるではぁぁないかぁぁ」

服がボロボロになった聖騎士と鬼姫。

鬼姫「そりゃ、どうもっす」(やれやれ、一人対一人と一匹というハンデはあるっすが、少し押され気味っすね……)

鬼姫は構えを崩し深呼吸。

鬼姫(けど竜の羽は壊れたっす。地を這う程度ならあんまし怖くはないっす)

灰竜「ぐおるるるるううう」

聖騎士「……ぶるるるあぁあぁあっ!!久しぶりぃぃだぁああ!!この我えぇぇがぁああ本気で闘えるのはぁあなぁああ」

ざっ

聖騎士が地面に立つ。

鬼姫(竜から降りた?聖騎士が乗り物からおりるなんてどういうことっすか)

聖騎士「我は騎士でもあるがぁなぁあ。我は、単体のほうがぁ強いのよ」

ひゅ

鬼姫「」

鬼姫の反射速度をもってしても、捉えきれない速度で、

ゴッ

聖騎士の拳が鬼姫の顔面を打つ。

聖騎士「ふぅう……竜人モオオオオオドオオォ」

聖騎士の尻から尾が、頭部から角が生えた。

533: 2012/05/21(月) 23:57:34.45 ID:4WrZoB6b0
521

--草原--

ガギギギギギィヤン!

メイド(押されている……!やはり五代目様はあのことに罪悪感を感じておられるでございます!)

番犬(……)

隠蔽兵「うあぁぁああぁ!!」

ギャギャァン!!

五代目(認識をずらしての斬撃……防げちゃあいるがこれは神経を削るな……)

ギィン!

隠蔽兵「っ」

五代目の鎌が隠蔽兵の剣を大きく弾くと、隠蔽兵の体勢が完全に崩される。

534: 2012/05/21(月) 23:58:05.61 ID:4WrZoB6b0
522

--草原--

五代目「俺はお前にあれだけのことをしたのだ……俺はお前に殺されるべきだったかもしれないが」

五代目の体が深く沈む。

五代目「……許せ。今はまだやることがある。罪は、全てが終わったら必ず償う」

渾身の力を乗せた大鎌が走る。

隠蔽兵「お前が頃した人間達は、後で氏ぬという選択肢も与えられなかったんだぞ……!」

グス

刃先が肉に埋没した瞬間、

ぐるり

五代目「!」

それを起点に隠蔽兵は回転した。

535: 2012/05/21(月) 23:58:33.34 ID:4WrZoB6b0
523

--草原--

ぶちちっ!

肉が裂け血が弾ける。そして剣が、

フォン!

五代目「」

ズブシャッ!!

五代目に落ちた。

メイド「五代目様ー!!」

隠蔽兵「……今氏ね。悪鬼」

536: 2012/05/21(月) 23:59:01.99 ID:4WrZoB6b0
524

--草原--

メイド「五代目様!」

番犬「!!」

倒れゆく五代目を目の当たりにした二人は隠蔽兵に迫る。

ザザザ!

隠蔽兵「くっ!」

これにはさすがにたまらず、隠蔽兵は後ろに引くしかなくなった。

メイド「五代目様!五代目様!」

五代目を抱え悲痛な声をかける。

五代目「……ぐ」

537: 2012/05/21(月) 23:59:38.22 ID:4WrZoB6b0
525

--草原--

番犬「ぐるるる……!」

隠蔽兵「……」

隠蔽兵と番犬が睨み合っている。
自力で言えば完全体になった番犬のほうが遥かに上なのだが、それでも番犬は動かない。

隠蔽兵「……」

隠蔽兵の向ける強烈な殺意は、ある程度の実力差なら吹き飛ばすだろうと予想できたし、何よりその殺意は正当なものであると感じたからだった。

番犬「……」

かつて人間だったからこそわかる。自分の親しい人間を、他人の都合のために蹂躙されるということを。それに対する恨みを。怒りを。悲しみを。

ぽろ

番犬には、自分たちが理不尽に奪う側になっていることを、痛いまでに感じていた。

番犬「…………狂ったままでいられたら、よかったのに」

番犬は
涙を溢した。

538: 2012/05/22(火) 00:00:09.97 ID:axUq8psR0
526

--草原--

五代目「……ふん。魔王は辛いな……悪夢から目覚めてもまた悪夢だ」

五代目の体が修復せず朽ちていく。まるで自身がそう望んでいるかのように。

五代目「……魔王のままであれたなら」

メイド「」

メイドは五代目のその言葉を聞いて止まった。


--過去--

メイド「はーっ、はーっ」

番犬「ぐ、人間どもめ……!やっと振り切ったバウ」

ナビ子「……五代目ちゃん、こんなボロボロに……!」

五代目に既に意識はなかった。

539: 2012/05/22(火) 00:00:52.84 ID:axUq8psR0
527

--過去--

メイド「……肉体は氏にました……だが、まだ終わりにはしないでございます!」

番犬「!何をするつもりバウ!?」

メイド「我が奥義、メイドメイドで創造するのでございます」

ナビ子「!?メイドちゃん!?それって!」

メイド「全員の回復装置……きっとこれだけの傷……すぐには治らないでございます。回復に必要な魔力が途中で無くなれば、そのまま朽ちていくのみになるかもでございます……でも、でも……私は、悔しい!!」

ナビ子「……」

番犬「メイド……」

メイド「……なんで!なんでよ!!……私達は世界のためにと戦い続けたのに、なんで今度は世界のために滅ぼされなきゃいけないの!?こんな、こんなエンディングは嫌!!」

メイドは血の涙を流す。

540: 2012/05/22(火) 00:01:50.37 ID:axUq8psR0
528

--過去--

五代目「」

五代目の亡骸にメイドは触れる。

メイド「私は……絶対に認めない……五代目、様……」

メイドの指は五代目の顔にそっと触れた。

メイド「今度は迷わないように……今度は苦しまないように……人を憎んでだけいられるように作り変えてあげる……」

メイドから魔力が漏れ始める。魔力は周りの地形に作用し迷宮を作り上げる。

番犬「……次に目覚めるのはいつになろうな……バウ」

ナビ子「さぁ、もしかしたら目覚めないかもね」

番犬「縁起でもないバウ」

メイド「……」

541: 2012/05/22(火) 00:02:24.26 ID:axUq8psR0
529

--過去--

ナビ子「……うん、じゃあ私がその装置と一体化して管理してあげるよ」

番犬「!?何を言いだすかバウ!」

ナビ子「だってメイドちゃんもうそこまで魔力残ってないもん。五代目ちゃんとメイドちゃんと番犬ちゃんの分で精一杯だよ」

メイド「……」

番犬「……女にそんなことを任せられるかバウ。番犬らしく俺が番をするバウ」

ナビ子「あー男女差別発言だー。……いいんだよ。メイドちゃんと番犬ちゃんは五代目ちゃんを守る使命があるんだから。一番弱い私がその任を引き受ける」

メイド「……お願いするでございますナビ子」

番犬「メイド!」

ナビ子「私ももういい加減ボロボロだしね~。ここいらが潮時だよ」

ほぼ頭部だけのナビ子は笑う。

542: 2012/05/22(火) 00:02:54.61 ID:axUq8psR0
530

--過去--

番犬「……」

メイド「……みんなで生きようでございます……憎き人間どもを根絶やしにしたら、みんなで」

ナビ子「いーねー」

番犬「……」

メイド「あの幸せだった日の続きを取り戻すために」


--草原--

メイド「うっ!うぅっ!」

メイドはボロボロと涙を溢す。

五代目「メイド……?」

メイド「ごめ、ごめんなさい五代目様!私が貴方にあんな行動を、させたのでございます……」

五代目「……?」

543: 2012/05/22(火) 00:03:33.18 ID:axUq8psR0
531

--草原--

メイド「目覚めた貴方が、また人に、勇者に滅ぼされないように、冷徹でいられるようにと」

五代目「……」

メイド「現代に蘇ってからの蛮行は、全て私のせいなんでございます!私が、私が人格に手を加えたから……」

五代目「……」

メイド「あの国を滅ぼしていた時は人を憎んでいたのに、最後に勇者に殺された時の貴方は」


--過去--

メイドの指が魔王のほおをなぞる。やっと呪縛から解放されたような安らかな氏顔を……。

544: 2012/05/22(火) 00:04:01.96 ID:axUq8psR0
532

--草原--

五代目「……」

メイド「だから、あの者の怒りは私に向けられるべきものなのでございます……!その氏は私のものでございます!五代目様!だから生きて!!」

五代目「……他にいじくった所はあるのか?」

メイド「え……いえ、人を滅ぼす魔王の使命と、頃すことに抵抗がないようにしただけで……ございます」

五代目「ふむ……なら、何も問題はない」

五代目はにっこりと笑う。

五代目「お前達への接し方や想いまでもが作られたものならば……と少し不安になったぞ」

メイド「……へ」

五代目「お前達の罪は全て俺の罪だメイド。それにあの町でやったことは俺の責任だ」

ぐぐ

五代目は立ち上がった。

545: 2012/05/22(火) 00:04:28.98 ID:axUq8psR0
533

--草原--

五代目「正直……スカッとしたところもある。俺は人を憎んでいたしな」

メイド「」

五代目「俺は悪役だ。正義には戻れない」

ガシュ!

番犬「……っあ」

隠蔽兵の剣により血の海に沈む番犬。

五代目「……迷ったか番犬」

倒されるはずもない番犬がやられるも、五代目は予想が的中したような表情。

メイド「あ……あ」

五代目「さて……お前達がくれた二度目の生、しかと生かしてくれよう」

だっ

メイド「……!」

ただ生きていたかった。

546: 2012/05/22(火) 00:04:55.07 ID:axUq8psR0
534

--草原--

鬼姫「が、っあああ!!」

ドギャギャギャギャ!!

縦横無尽に戦場を駆け抜け飛行する竜と戦った鬼姫だったが、聖騎士の攻撃を一度たりとも避けることができない。

ギャギャギャ!!

竜の攻撃をも受けきった鬼姫の強固な防御力ですら、聖騎士の拳はたやすくその肉を叩き破る。

北の人形師見習い「……す、すごい」

圧倒的戦力を持つ鬼姫、それが今は殴られる度に血を撒き散らす肉のサンドバックと化していた。

鬼姫(お、も゛、い)

聖騎士「どうしたどうしたどうしたぁぁぁぁぁん!!」

聖騎士はくるりと高速で回転し、

ベギャ!!

鬼姫「ぎゃ!!」

強烈な回転蹴りを鬼姫に見舞った。

547: 2012/05/22(火) 00:05:22.31 ID:axUq8psR0
535

--草原--

ズザザザザザー!

数十メートルも吹き飛ばされた鬼姫は岩に激突することでやっと止まった。

聖騎士(……後ろにぃぃ威力を流したかぁぁ)

ぱら

鬼姫「ぐ……」(まさかこれほどとは……さすがは厄災の代名詞っす、ね)

鬼姫はたたらを踏みながらなんとか立ち上がった。

聖騎士「……まさかその程度で本気などとぉぉ言うのではぁぁ、なかろうなぁ」

ズシャ

聖騎士は地面を踏み砕き一歩ずつ近づいていく。

ズシャ

それはまるで氏刑宣告。鬼姫の命は聖騎士までの距離に比例する。

548: 2012/05/22(火) 00:05:50.83 ID:axUq8psR0
536

--草原--

ズシャ

聖騎士「どうしたぁぁ……貴様のぉぉ父はもう少しぃぃましであぁぁったぞぉ……」

鬼姫「!」

鬼姫は口を拭いて構えを取る。

鬼姫(……まだ近距離でのスピード勝負ならわからないっす)

シュ

鬼姫が弾かれたように飛び出す。

聖騎士「ぬぅぅあぁ」

ガガガガが!!

フェイントに次ぐフェイント、的を絞らせない動きで聖騎士を圧倒

ゴッ!

鬼姫「」

聖騎士の尾が鬼姫の首をはたき、大地に打ち付ける。

549: 2012/05/22(火) 00:06:28.00 ID:axUq8psR0
537

--草原--

鬼姫「くっ」

すぐさま走りだす鬼姫。が、

聖騎士「あの伝説の鬼がぁ、ちょろちょろちょろちょろ動き回りおってぇぇ、小蝿の真似事かぁぁ?」

鬼姫「」

聖騎士は鬼姫の後ろで腕を組んでいる。

鬼姫(このスピードに)

ゴシャッ!!

聖騎士はかかと落としを鬼姫に放つ。

鬼姫「だっ」

ぐらりと沈む鬼姫。

鬼姫(受け、ながせなかった、っす)

ダメージは大きい。

550: 2012/05/22(火) 00:07:01.58 ID:axUq8psR0
538

--草原--

聖騎士「……ぶるぁぁぁ。これは面白いぃ」

ざっ

鬼姫「……?」

足が震えて立ち上がれない鬼姫が顔をあげた。

ざっ

聖騎士「まるでぇぇあの時のようではないぃぃかぁぁ」

ざっ

亜人王「……」

聖騎士「久しいなぁ象よぉぉ……」

ざっ

亜人王「お前が来るのならば私も出なくてはなるまい。盟友よ」

551: 2012/05/22(火) 00:07:52.06 ID:axUq8psR0
539

--草原--

鬼姫「……亜人王」

亜人王はばさりと着ていた服を脱ぎ褌一つになる。

亜人王「……はぁぁ」

深く長い深呼吸。そして

亜人王「ふんっ!!」

ぼごごっ!!

鬼姫「!?」

弾けんばかりに筋肉が盛り上がる。

亜人王「しゅうぅ……」

聖騎士「……衰えたなぁ亜人王……」

亜人王「あぁ。肉体はな」

聖騎士「……?」

亜人王「だが心は違う。破壊しか知らなかったあの頃とは、強さのみを追い求めていたあの頃とは違う。私は、今こそが最強なのだ」

聖騎士「……」

亜人王「鬼子よ、共に竜を退治しよう。今こそ命は投げ捨てるもの!!」

552: 2012/05/22(火) 00:08:20.67 ID:axUq8psR0
540

--草原--

サム「……は!!」

サムはテレパシーのようなものを感じ取る。

サム「……こんなことしてる場合じゃないでござる。急がねば」

サムは生者のいない戦場で、ズボンをはいた。

565: 2012/05/28(月) 21:22:09.62 ID:0kaWWfGO0
541

--草原--

人造魔王「うほほーい! 強いのがいっぱい!」

そこに人造魔王が現われた。

亜人王「!」

聖騎士「……貴様はぁ西の……」

亜人王(増援か……きついな……)

人造魔王「あれれー困ったなぁ遊軍がいないからどっちにつけばいいのかわからないや!」

鬼姫「へ」

人造魔王は竜人になった聖騎士がわからないらしい。

人造魔王「じゃあじゃあ、弱いほうにつこうっと!」

そう言って、人造魔王は鬼姫と亜人王の傍に飛ぶ。

ざざっ

人造魔王「3対1! これでイーブンだね!」

聖騎士「……ふふふ、はははははぁ!」

566: 2012/05/28(月) 21:22:54.33 ID:0kaWWfGO0
542

--草原--

ツインテ「ああぁぁぁ!!」

ビュオオオオ!!

ツインテの左拳を中心に、竜巻のような魔力の突風が吹き荒れる。

剣豪「……」

ツインテ「……」

剣豪とツインテは一歩も動かずタイミングをはかっている。

剣豪(……この歳でこの実力、こいつがこれから場数を踏んでいけばきっと厄介な存在になるだろう。……こいつの思想は世界の理を変えかねないし、自動蘇生スキル持ちということもある……)

ぎり

剣豪(……何かある前に、終わらせるか)

ツインテ「……」

ツインテは剣豪の目の色が変わったことに気付いていた。

567: 2012/05/28(月) 21:23:22.62 ID:0kaWWfGO0
543

--草原--

周囲の人間の戦意を折るためとはいえ、三人はあまりに危険な行為を犯した。

アッシュ「」

ガキキキキキン!!

槍兵(くそ……こいつも暗殺組織の生き残りか? ……それとも)

キキキンブシッ!

あの槍兵が容易く間を詰められ、

ブシッ!

槍兵「ッ!」

受けに回るしかないこの現状は明らかに異常だった。

ガガキン!ブシッ!

名もなければ歳も若い、満足に体が出来上がってないような少年なんぞに、たったのナイフ一つで身体中に傷をつけられているのだ。

568: 2012/05/28(月) 21:24:16.82 ID:0kaWWfGO0
544

--草原--

ブシャッ!

槍兵(驚いた……だがそれ以上に危険だ)

アッシュ「……」

彼ら三人の行動と言動は、軽視出来ないものだった。


--草原--

ポニテ「ああああ!!」

ポニテは全ての力を二つの大剣に込める。

吟遊詩人「……」

ビキビキ

変化師「……」

大剣はひび割れ、中からおぞましい光が漏れ始めた。

ビキキ

そしてそれを見た二人の顔つきが変わる……。

569: 2012/05/28(月) 21:24:45.20 ID:0kaWWfGO0
545

--草原--

剣豪、槍兵、吟遊詩人、変化師(((この分だと、残りの二人も危険だ)))


彼らは強者ゆえに、ツインテ達が後に強大化することがわかっていた。
そしてその思想が自分達とは相いれぬものであるということも。

ひゅん

槍兵「……どんな凶悪なポテンシャルを持った奴でも、成長しきる前に氏んじまったなら、そいつはポテンシャルがねぇのと一緒だぜ?」

しゃっ

アッシュ「……!」

槍兵の殺意が込められた槍はアッシュの頬を裂いた。

アッシュ「……」

570: 2012/05/28(月) 21:25:13.45 ID:0kaWWfGO0
546

--草原--

ツインテ達三人は、最初に三強達と出会ったその時すでに、敗北を覚悟していた。

ツインテ(……)

埋まらない実力差、それでも役目を果たさんと彼らなりに努力したのだ。

571: 2012/05/28(月) 21:25:52.20 ID:0kaWWfGO0
547

--草原--

アッシュ(……)

時間さえ稼げば、あのヤミならばこの戦局を変えられると信じて。
そして、


--草原--

ポニテ(……)

彼らは同時にあることを考えていた。


ツインテ、アッシュ、ポニテ(((この人達はきっと、自分を倒したら仲間の二人を始末しにいくだろう)))

と。

572: 2012/05/28(月) 21:26:24.96 ID:0kaWWfGO0
548

--草原--

だから皮肉にも、

ツインテ、アッシュ、ポニテ(((なんとしても、ここで倒す)))

ツインテと剣豪が激突する。

ツインテ、アッシュ、ポニテ(((この人(達)だけは)))

アッシュが必殺の構えから槍兵の命を狙う。

ツインテ、アッシュ、ポニテ(((この命と引き替えにしてでも!!)))

ポニテが大剣を降りぬいた。

ドガァァン!!

……くしくも三人の少年少女は、同時にその考えにいきついてしまったのだ。

573: 2012/05/28(月) 21:27:04.36 ID:0kaWWfGO0
549

--草原--

ズバッ!

ブシュ!

グチャ!

ツインテ、アッシュ、ポニテ((()))



三人の仲間を想うがゆえの自爆突攻は、非情にも裏目となり、


アッシュ(畜生、仲間が……欲しい)

ポニテ(みんなが傍にいれば、何だって出来るのに……)

ツインテ(せっかく……修行したのに)

ブシャ

ツインテ、アッシュ、ポニテ(((あとは、頼ん、だ)))

全滅することとなった。

574: 2012/05/28(月) 21:27:30.84 ID:0kaWWfGO0
550

--草原--

五代目「……」

隠蔽兵「はぁ、はぁ」

傷ついた身でありなから、五代目は隠蔽兵の攻撃を捌き続けた。

五代目(やれやれ……戦争を止めるどころではなくなってしまった)

メイド(く!……私達にこの少年を頃すことは出来ないでございます)

それはスタンスを変えてしまったから。

隠蔽兵「いやぁぁぁぁ!!」

ギガァン!!

五代目(……!)

理性を失い、好き勝手に振る舞えたならどんなに楽か。

575: 2012/05/28(月) 21:27:59.37 ID:0kaWWfGO0
551

--草原--

隠蔽兵「……!スキル」

隠蔽兵が構えを取る。

隠蔽兵「空断ち!!」

シャン!

隠蔽兵が剣を振るうと、飛翔する斬撃が放たれた。

五代目「!」

シャンシャンシャン!

それも一つや二つではなかった。

五代目「く!」

ガガン!

狙いを正確につけることが出来ないということが、逆に隠蔽兵にとって幸し、五代目にとって不幸だった。

576: 2012/05/28(月) 21:28:36.35 ID:0kaWWfGO0
552

--草原--

五代目「!」

五代目が下手に弾きそこなうと、後ろの傷ついた兵達に当たってしまう。

ガンガンガギィン!

五代目(……ここで戦えば他のものに犠牲が出る……やむを得ない)

五代目は隠蔽兵との戦いの場を変えようとした。

ざっ

伊達男「!?ばっ!!」

ぎゅぎゅり

……そんな初歩的なミスをするほどに、隠蔽兵の件は五代目の心を揺さ振っていたのだ。


《約束、発動》

五代目「」

ぐしゅる

場所を動こうとした五代目の心臓が破壊される。

メイド「!!あぁああ!」

577: 2012/05/28(月) 21:29:05.75 ID:0kaWWfGO0
553

--草原--

聖騎士「ぶるぅぅぅあぁぁぁ……」

何度にも渡り削られた聖騎士がよろめく。

亜人王「好機!超象パンチ!」

ドゴゴゴォン!!

聖騎士「っっ!!」

強力無比な亜人王の攻撃が聖騎士を吹き飛ばす。

ガッゴゴ!!

岩や地面を転がった先に、

人造魔王「にょー」

バチバチバチ!!

人造魔王はそれぞれの掌に、雷と氷の魔力球を生成。それらは接触すると互いに反発しあい、完全に融合が終わると凄まじい力を生みだしていた。

人造魔王「くーらえーい!」

578: 2012/05/28(月) 21:29:41.07 ID:0kaWWfGO0
554

--草原--

ババババババババ!!

聖騎士「ぬっ」

強力な魔力砲を途絶えることなくたたき込む人造魔王。

ドバァン!ドバァン!ドババァン!!

鬼姫「スキル」

ギ、ギギギィン!!!!

鬼姫の右手の指先に高濃度の魔力が集約される。大気が震え、空間が歪むほどの恐ろしい力。

ドバァン!ドバァン!

砲撃の連打で動きが取れない聖騎士は、嬉しそうに口元を歪める。

聖騎士「……さすがにぃ、お前ら三人同時はぁぁ、きつかったかぁぁ」

そう、ボソリとつぶやいた。

鬼姫「鬼包丁!!」

ズバァァン!!

聖騎士の硬い鱗を軽々と裂き、戦場に血の花を咲かせた。

579: 2012/05/28(月) 21:30:08.33 ID:0kaWWfGO0
555

--草原--

どしゃっ

亜人王「……ふぅ……」

鬼姫「はぁっ、はぁっ……なんとか、倒せたっすね」

人造魔王「あぶなかったねー!」

もぞ

亜人王「これで後は貯蔵魔力の量次第だ……奴があれを手に入れているのならの話だが」

鬼姫「貯蔵魔力?」

人造魔王「にょー?」

もぞぞ

亜人王「知らないかね?その昔の災厄の話を」

580: 2012/05/28(月) 21:30:55.65 ID:0kaWWfGO0
556

--草原--

鬼姫「災厄……」

人造魔王「にょー」

もぞぞぞ

亜人王「今でも語りつがれているじゃあないか。災厄の象徴は二つ。竜亜人と」

鬼姫「!!」

人造魔王「……あれ?」



聖騎士「」

そこには倒したはずの聖騎士が立っていた。

鬼姫「……自動、蘇生者」

亜人王「……竜の生命力と人の生への執着が生み出す奇跡の技。竜亜人一族固有スキル、自動蘇生。竜亜人が災厄だからこそ、そのスキル持ちも災厄と呼ばれるのだ」

聖騎士「ふむ。第二ラウンドといこぅかぁぁ」

災厄が笑う。

581: 2012/05/28(月) 21:31:32.09 ID:0kaWWfGO0
557

--草原--

秘書(はっ!この気配!)

秘書はナイフを抜き臨戦態勢に移るも、

すっ

一瞬早く、東の王の後ろに影が現われた。

シノビ「……お久しぶりでございます。姉様」

東の王「!?」

シノビのクナイが東の王の背中に突き付けられていた。

東の王「乱破め……」←一度言ってみたかった。

秘書「お前は!」

シノビ「十代目、すなわち現勇者より言伝を扱っています」

新王「!?」

582: 2012/05/28(月) 21:32:03.08 ID:0kaWWfGO0
558

--草原--

戦士「やれやれ、戦争地域に近い村だと言うのに兵もおかないとは。無用心だな、うすっ!」

僧侶「きゃはは!でも安心してね!私達が来たからにはもう大丈夫!守ってあげるからね!」

花屋のおばちゃん「!そのひっくり返った蜘蛛のような紋章は!!」

ブラ「勇……者?」

村の警護に来た二人は笑う。


--草原--

聖騎士「……ぬ?」

??「う、く」

聖騎士の蹴りを間に入った鎧が受けとめていた。

聖騎士(我の蹴りを、受け切ったぁ?)

??「い、いったーい!やっぱし痛いじゃないっ!ばかばか!」

鎧の中から聞こえてきたのは女の子の声。

583: 2012/05/28(月) 21:32:28.28 ID:0kaWWfGO0
559

--草原--

?「それはまだ鎧使いの受けが甘かったんだ」

??鎧使い「そんなことないそんなことない!あんたの見立てが甘かったのが悪いのよ!」

亜人王「……誰だ」

ざっ

フードを被ったものが歩いてくる。

鬼姫「……」

ざっ、ざっ

人造魔王「!!なにか、感じる!すごい感じる!!」

ざっざっざっ

?「……双方戦闘行為をやめよ」

聖騎士(声からさっするにぃぃまだ若いいぃぃ……)

584: 2012/05/28(月) 21:32:55.23 ID:0kaWWfGO0
560

--草原--

ざり

聖騎士は向き変える。

聖騎士「いきぃぃなり来てぇぇいきなりぃぃだなぁぁ……何かをぉぉ訴えたいぃぃというのぉぉならぁぁ」

しゅ

聖騎士は跳躍した。

聖騎士「顔をぉぉ見せぇぇい!!」

びょっ!!

聖騎士の空中から放たれた飛び蹴り。

ふぁさ

それは絶妙にフードだけを取ることに成功した。

ぴょこ

?「それは最もな話だ。すまない」

亜人王「!?」

フードの下から現われたのは、青い髪、そして猫のような耳を持った少年。

聖騎士(……いや、我は首をはねるつもりで放ったのだぞ……?一体ぃぃ)

?「俺は、十代目勇者」

585: 2012/05/28(月) 21:33:29.63 ID:0kaWWfGO0
561

--草原--

亜人王「!?」

聖騎士「!?」

鬼姫「!?」

人造魔王「勇者……」

?改め十代目「証明書はこれだ。わかったか?」

ぴら

亜人王「……北の国の印……抜け目のない国よ」

鎧使い「そういうわけだから、ただちにこの無益な戦いを停戦しなさい!め、命令とかじゃないんだからっ!」

聖騎士「……ただのぉ紙切れがなんだと言うのだぁぁ……まさか亜人風情がぁ勇者に選ばれるとでもぉぉ?」

鬼姫「……?」

十代目「言って納得するはずもないか。いいだろう。ならば、こい」

586: 2012/05/28(月) 21:34:24.48 ID:0kaWWfGO0
562

--草原--

ばっ

ローブを脱ぐ十代目。短めの青いマントをなびかせて剣を抜く。

十代目「力で認めさせてやろう」


--草原上空--

魔導長「……」

疾風「なぁなぁ、あれどう思う?」

迅雷「うん……多分本物だよ」

遥か上空から聖騎士と勇者を名乗る亜人との戦いを見ている三人。

魔導長「……蒼天」

ボソリと魔導長は呟く。

ガギャァン

上空にまで響く戦闘音。

587: 2012/05/28(月) 21:34:53.47 ID:0kaWWfGO0
563

--草原--

聖騎士「ぶるぅぅぅあぁぁぁ!!スキル雷拳ぇぇん!!」

十代目「土属性防御剣」

ギィン!!

聖騎士「ぬ!か細い軟弱な剣で我の拳をぉぉ!」

十代目(聞きしに勝る戦闘力だな、これは長引けない)

十代目は足で陣を描く。

十代目「供給要請、ステータス一段階上昇!」

ぶぅん

聖騎士(!なんだその強化魔法はあぁ)

十代目「更に六属性複合攻撃魔法、」

ぎゅぎゅ

一瞬で六つの属性魔力を融合させ、剣に宿らせた十代目。

聖騎士「な」

聖騎士が見惚れるほどの手際の良さだった。
そして、

十代目「受けよ我が秘剣、六色剣」

何食わぬ顔で聖騎士を斬り裂いた。

ズバシャアアアアア!!

588: 2012/05/28(月) 21:35:26.21 ID:0kaWWfGO0
564

--草原--

ツインテ「……」

今際の際、ツインテは見た。
六色に輝く神々しき光を。

ツインテ「……」

それを見てツインテは確信する。
そう、なんてことはなかったのだ。

ドギャアアアアアアン!

ツインテ「……」

こんな結末も仕方が無い。なぜならば、

ツインテ「…」

ただ単にボク達は、勇者じゃなかったのだから。



      酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
              第四部
            亜人解放戦争
               完

589: 2012/05/28(月) 21:36:09.85 ID:0kaWWfGO0
565

--草原--

五代目「」

心臓を潰され倒れゆく微かな秒の間に、

???「……」

それは現われた。

五代目(こいつは……)

???「やぁ、久しぶり。元気だったかい?」

五代目の容姿にそっくりな巻角の少年、いや青年が立っていた。

???「まさかこんなことになっているとは思わなかったよ。なぜ今君が勝手に活動出来ているのか疑問に思う所はあるけど……まぁよしとしようか」

五代目(こいつは……!)

???「困るんだ。僕と彼で作ったルールがめちゃくちゃだ。まがい物とはいえ今の世には魔王と勇者が多すぎる」

巻角の青年は笑う。

590: 2012/05/28(月) 21:36:38.27 ID:0kaWWfGO0
566

--草原--

???「いつだって一時代に魔王と勇者は一人ずつだ。今だって正規の魔王と勇者がいるんだからそれ以外は引っ込まないといけないよ」

五代目(!?正規の、魔王……今代の)

ズズズ

五代目が倒れようとしている先の地面が漆黒に染まり口を開けた。

???「そうさ、空白の時代は終わりだよ。新しい魔王の城で彼女がもうすぐ目を覚ます」

闇から血塗れた手が出現し五代目の体にまとわりついていく。

???「あぁ、君が心配しなくても彼女は優秀だ。無事に責務を果たすだろう。何せ歴代最弱の勇者だったんだ。魔王になった今、自動的に歴代最強の魔王になっている」

五代目()

592: 2012/05/28(月) 21:37:07.87 ID:0kaWWfGO0
567

--草原--

ズズズ

???「ほら、さっそく彼女が目覚めたようだよ。ルール違反だが今は君も魔王なんだ。感覚でわかるよね?」

五代目(これ、は)

五代目は、遥か遠くの地で目覚めたそれを感じとった。

???「『紅き絶壁』十代目魔王を」

そうして五代目は闇の中に引きずり込まれてしまった。


--草原--

ブラ「っ」

何か虫の知らせのようなものを感じたブラは空を見上げる。

ブラ「……ヤミ……様」

ブラは皆の無事を願って祈った。

593: 2012/05/28(月) 21:38:27.58 ID:0kaWWfGO0
568

--魔王城--

ドクン、ドクン

?????「……」

主の目覚めとともに鼓動を再開する魔王城。

?????「……」

その玉座に座りたる赤髪の少女の瞳が開く。

?????「……と」



      酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった

              完                                    ?

594: 2012/05/28(月) 21:45:01.01 ID:0kaWWfGO0
……というわけでした。長きに渡り読んで下さり、ありがとうござ(ry




……まだわかりません。

まだ終われません。

しかしついに、プロローグが終わった……


それでは本日の更新はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m


 











           次回予告

    これは脇役の人の物語。間を埋める物語。

      次回、番外編。黄金王国戦略侵略記。

602: 2012/05/29(火) 16:11:15.13 ID:pVvTqKN9o

正史的には魔王化ENDか氏亡ENDだからなぁ
魔王化ってことは盗賊は氏んでるか


酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった【18】

引用: 酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった5