18: 2012/04/15(日) 07:05:28.27 ID:osusg0Z50
ミルフィーユ「魔法少女になれるんですか!? うわーい、私ちっちゃいころから魔法少女って憧れてたんですよ!」

フォルテ「およしよミルフィーユ、そんな見るからに怪しそうな小動物相手にするもんじゃないさ」

蘭花「そうそう、こういうのに巻き込まれたらロクな事にならないのが世の常ってもんよ」

ミント「それに契約という言葉が既にひっかかりますわ。それは言い換えると私たちになにか見返りを要求するということではありませんの?」

ヴァニラ「……テクマクマヤコン」

ノーマッド「ね、言った通りでしょう? 可憐でお美しいヴァニラさんはともかくとしてこの人たちは魔法少女なんてガラじゃないんですよ」

ノーマッド「そもそもフォルテさんなんて魔法『少女』なんて年齢じゃ、」

ズギューン

フォルテ「なんか言ったかい?」

ノーマッド「……いいえ、私はなにも」

QB「なるほど、たしかに一筋縄ではいかなそうだね」

20: 2012/04/15(日) 07:14:26.18 ID:osusg0Z50
QB「ミント・ブラマンシュと言ったかな? 君の言う通り、たしかに魔法少女になってもらった場合君たちにはとある使命を負ってもらうことになる」

蘭花「ほーらでた、ミントに痛いとこつつかれたから仕方なくゲロし始めたわよ」

フォルテ「この手の類は肝心なことは伏せておいて後になってバレたら『聞かれなかったから』とかほざきだすんだよ」

ミント「まったくですわ。さあみなさん、そろそろ任務の時間ですわよ」

蘭花「はーだるーい、アタシ今日は任務って気分じゃないわー」

フォルテ「子供みたいな駄々こねるんじゃないよ、ほら支度支度」

蘭花「はーい。ほらヴァニラ、ミルフィーユ、あんたらも準備しなさい」

ヴァニラ「……ヤンバラヤンヤンヤン」

ミルフィーユ「ちょ、ちょっと待って下さいよみなさん!」




22: 2012/04/15(日) 07:21:13.83 ID:osusg0Z50
フォルテ「なんだいミルフィーユ、まさかその小動物の話を鵜呑みにしようってんじゃないだろうねぇ?」

蘭花「あんたね、フォルテさんじゃなくてもその歳で魔法少女はないわよ?」

フォルテ「……蘭花、アンタ私に喧嘩売ってんかい?」

蘭花「い、いや、言葉のアヤってやつですよ……ほ、ほらミルフィーユ! さっさと行くわよ!」

ミルフィーユ「だから待ってくださいよ! こんな可愛い人のこと無視するなんてひどすぎるじゃないですか!」

ミント「これを人と言っていいのかは疑問ですが……」

ミルフィーユ「とにかく、話だけでも聞いてあげましょうよ! ね? ヴァニラさんもそう思いますよね?」

ヴァニラ「……シャランラ―」

ミルフィーユ「ほらー! ヴァニラさんだってこう言ってるじゃないですか!」

フォルテ「いや、アタシらにはヴァニラがなにを言いたいのかさっぱりわかりゃしないんだが……」

23: 2012/04/15(日) 07:22:18.70 ID:dyzBmG240
ヴァニラさん、あなたは天使だ

29: 2012/04/15(日) 07:30:22.75 ID:osusg0Z50
蘭花「はぁ、付き合ってらんない。私先行ってまーす」

フォルテ「私もパスだ。後は頭ん中がお花畑の奴ら同士でよろしくしておくれ」

ミント「申し訳ありませんが、私も失礼させて頂きますわ」

ミルフィーユ「あっ、あっ……みなさん行っちゃいました……」

ミルフィーユ「ごめんなさいキュウべえさん。みなさん本当は悪い人じゃないんですけど……」

QB「構わないよ、ミルフィーユ・桜葉。君だけでも僕の話を聞いてくれるかい?」

ミルフィーユ「はい、もちろんです!」

QB「ありがとう。さて、まずは君の願いから聞こうか」

ミルフィーユ「願い?」

QB「ああ。魔法少女の契約を交わす者にはひとつだけなんでも願いを叶える権利があr」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・

バァーン!

蘭フォルミン「「「ちょっと待ったー!」」」

33: 2012/04/15(日) 07:44:33.46 ID:osusg0Z50
ミルフィーユ「みなさん!?」

フォルテ「水くさいじゃないかミルフィーユ、一人で魔法少女の使命を背負おうだなんて!」

蘭花「そうよ! 私たち、辛い時でも一緒に困難を乗り越えてきたじゃない!」

ミント「どんな時でも一蓮托生。それでこそ仲間でなくって? ミルフィーユさん」

ミルフィーユ「み、みなさん……私、みなさんのこと信じてました!」

フォルテ(目玉が飛び出るほどの額でとてもじゃないが手が出ないと思っていたプレミアもんの拳銃……)

蘭花(一生私につくしてくれる金持ちハンサムな理想のダーリン……)

ミント(数年前に古代の遺跡から発掘され今は美術館に展示してある超レア着ぐるみ……)

蘭フォルミン(このチャンス、逃すわけにはいかない……!)

ヴァニラ「……酢昆布」

ノーマッド「なんて汚らわしい笑みだ。どうせくだらない願いで頭の中がいっぱいなんでしょうよ」

ノーマッド「あ、もちろんヴァニラさんは別ですよ? ヴァニラさんの願いはきっとあそこの醜い笑いを浮かべている人たちなんかとは比べ物にならないほど崇高な、」

ズギューン

39: 2012/04/15(日) 08:00:05.77 ID:osusg0Z50
QB「……よくわからないが、とりあえず君たち全員僕の話を聞いてくれるということでいいのかな?」

フォルテ「あったりまえだろべえちゃーん? 私とアンタの仲じゃないか」

蘭花「そうよそうよ、困ったときはお互い様って言うじゃない?」

ミント「さて、それでは早速願いの件ですが」

蘭花「あ、ちょっとミント! アンタ一人だけ抜け駆けする気!?」

ミント「さて? なんのことをおっしゃってるのかわかりませんわね」

40: 2012/04/15(日) 08:05:19.58 ID:osusg0Z50
フォルテ「けっ、白々しいね。この私を出し抜こうなんて百年早いんだよ。さあべえちゃん? まずは私の願いから叶えてもらおうか?」

蘭花「フォルテさんも人のこと言えませんよ! 年長者は少しくらい遠慮してください!」

フォルテ「はーん蘭花、アンタ言うようになったねぇ?」

蘭花「あーらごめんあそばせ。私まだ『若』輩者なんで礼儀作法がなってないんですぅ」

フォルテ「……いいだろう。その喧嘩、買ったぁ!」

蘭花「上等ぉ!」

ミント「やれやれ、心が醜い方は表情にまでその醜さが滲み出るものなんですのね」

蘭フォル「ちびっ子は黙ってな!」

ミント「んまぁ、一体誰がちびっ子だとおっしゃいますの!? その喧嘩、私も乗らせて頂きますわ!」

ミルフィーユ「え、え、なんで急に喧嘩し始めちゃうんですかみなさーん!」

ノーマッド「だーめだこりゃ」

ヴァニラ「……梅昆布茶」

QB「困ったな、話がなかなか進まないよ」

43: 2012/04/15(日) 08:21:14.86 ID:osusg0Z50
一時間後――

フォルテ「はぁ、はぁ……おーし、じゃあ三人でじゃんけんして勝ったやつから順番に願いを叶えてもらう。それでいいか?」

蘭花「ぜー、はー……りょ、了解です……」

ミント「た、たったこれだけのことを決めるのにものすごく無駄な体力を使った気がしますわ……」

QB「おや、ようやく一段落ついたようだね。ひとまず説明を区切るよ、ミルフィーユ・桜葉」

ミルフィーユ「えーっと、魔法少女さんがいて、魔女さんがいて、魔女さんは悪い人で、魔女さんには使い魔さんもいて……うえーん、よくわかんないですー!」

ノーマッド「あっちの馬鹿もこっちの馬鹿もどうしようもねぇな」

46: 2012/04/15(日) 08:31:10.82 ID:osusg0Z50
蘭花「よっしゃー! アタシいっちばーん!」

ミント「……仕方ありませんわね、ここは二番手に甘んじておきましょう」

フォルテ「くそっ、この私が一番最後だと!? 納得いかないよ!」

蘭花「あーらフォルテさぁん? まさかご自分で言ったことを舌の根も乾かぬうちに覆しちゃうんですかー?」

ミント「まるで子供のわがままですわね」

フォルテ「……ちっ、わぁーったよ! 蘭花が最初、次はミント、最後は私! これで文句ないだろ!」

蘭花「わかればいいんですよ、わかればー」

ミント「それでこそ良識のある大人というものですわ」

ノーマッド「……ミルフィーユさん、あなた完全に忘れ去られてますよ」

ミルフィーユ「それでけーやくしたらそうるじぇむがでてきてそれが真っ黒くなるとばーんってなっちゃって……え?」

ノーマッド「あー、あなたはもう少し理解してからの方がいいかも知れませんね」

48: 2012/04/15(日) 08:44:32.18 ID:osusg0Z50
QB「順番は無事決まったようだね。時間がかかりそうだったからミルフィーユ・桜葉には先に魔法少女の説明をしておいたけど、君たちは大丈夫かい?」

蘭花「説明なんてあとあと! いいから私の願いを叶えてちょうだい!」

QB「ずいぶんとせっかちだね。願いを叶えれば自動的に君たちは魔法少女になってしまうけれど、それでもいいのかい?」

フォルテ「くどいよべえちゃん。あたしらは使命の一つや二つ背負ったくらいで潰れるようなタマじゃないんだよ」

ミント「フォルテさんの仰る通りですわ。こう見えても私たち、くぐり抜けてきた修羅場の数が違いますの。今さらその程度のことに臆したりいたしませんわ」

QB「……なるほど。その気概、魔法少女にはうってつけかもしれないね」

QB「わかった。それじゃあ今こそ叶えよう、君たちの願いを。だから――」


QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

49: 2012/04/15(日) 08:57:29.95 ID:osusg0Z50
イケメン「愛してるよ、ハニー」

蘭花「あぁん、ダァーリィィィィィン! 私も愛してるわああぁぁぁぁん!」

ミント「この愛らしい見た目、肌触り、そしてなにより着心地! これぞまさしく究極の着ぐるみですわー!」

フォルテ「あぁ、まさかお前を手にする日が来るだなんて思ってもみなかったよ……この両の手にかかる絶妙な重みがたまらないねぇ!」

ノーマッド「なんというか、凄まじい光景ですね。これほどまでに魔法少女という格好の似合わない人たちもそういないでしょうに。まあ若干一名は着ぐるみ姿ですが」

QB「どうやら気に入ってもらえたようだね、なによりだよ。さて……次は君の番だよ、ミルフィーユ・桜葉」

ミルフィーユ「それでぐりーふしーどが手に入って黒いのがとれてでもそれは魔女さんの卵でそれが孵化しちゃったらまたばーんてなっちゃって……はい?」

QB「だから、次は君の願いを叶える番だよ」

ミルフィーユ「えええ、もう私の番なんですかぁ! まだよくわかんないですー!」

QB「説明はあの三人も交えて改めてするよ。だからさあ、君の願いを言ってごらん」

ミルフィーユ「うう、でもでも、私まだお願いごとも決めてないですし……やっぱりよくわかんないのは怖いですし……」

QB「……わかった。それじゃあもう一度説明するからよく聞いておいて。願い事もその間に考えておけばいいさ」

ミルフィーユ「ふえぇ、ごめんなさーい!

53: 2012/04/15(日) 09:15:22.77 ID:osusg0Z50
フォルテ「……するとなんだい、魔法少女ってのは魔女を退治する正義の味方ってわけか」

蘭花「だけど魔法を使いすぎるとこのソウルジェムが黒く汚れていってしまって、真っ黒になってしまうとあたしらがピーンチ! ってことよね、ダーリン?」

イケメン「愛してるよ、ハニー」

ミント「それを浄化するには魔女の卵たるグリーフシードが必要となる」

ミント「すなわち魔法少女が魔女を退治するのは使命というより宿命、といったところですわね」

ミルフィーユ「……す、すごいですみなさん! なんでそんな簡単に理解できちゃうんですかー!?」

フォルテ「単にアンタが馬鹿なだけだよ、ミルフィーユ。それにしてもよ、べえちゃん。この服装どうにかなんないのかねぇ? あたしゃこういうヒラヒラした服は苦手なんだよ」

QB「それはいわば魔法少女のコスチュームだからね。変身を解除すれば普段の姿に戻れるよ」

フォルテ「どれ……お、ほんとだ。元の服に戻ったよ」

56: 2012/04/15(日) 09:27:35.17 ID:osusg0Z50
ミント「なるほど。それではまさしく変身魔女っ子、というわけですわね」

蘭花「ちょっとミント、魔女っ子じゃ敵側になっちゃうじゃなーい。ねぇ、ダーリン?」

イケメン「愛してるよ、ハニー」

蘭花「あーんアタシもー!」

フォルテ「……なぁ、蘭花のダーリンとやらはあれでいいのかい? なんだか壊れたおもちゃみたいで気味が悪いよ」

ミント「ご本人が満足されているならアレが蘭花さんの願いだったということでしょう。放っておくのが吉、ですわ」

フォルテ「まあたしかにそうだけどよ……」

QB「さて。今度こそ君の番だよ、ミルフィーユ・桜葉。今度こそ願いは決まったね?」

ミルフィーユ「うう……最新型のオーブンと食洗機、どっちにしよう……」

ノーマッド「なんだかんだでミルフィーユさんもあの三人と同じレベルですね。やっぱりエンジェル隊の中で清らかな心を持っているのはヴァニラさんただ一人です!」

ヴァニラ「……こたつ」

バァーン!

??「お待ちになってください、ミルフィーユさん!」

57: 2012/04/15(日) 09:35:01.98 ID:osusg0Z50
フォルテ「お、お前は!」

??「インキュベーターの甘言に惑わされてはいけません、ミルフィーユさん!」

蘭花「あ、あんたは!」

??「たしかに誘惑とはいつも甘美な響きを持つもの。だけどそれは罠なんです! 私たちの友情を引き裂く邪悪な魔の手なんです!」

ミント「あ、あなたは!」

??「さあ、私の手をとってください、ミルフィーユさん! 一緒にインキュベーターの野望を打ち砕きましょう!」

蘭フォルミン「誰だっけ?」

??「……へ?」

フォルテ「なーんか喉元くらいまでは出かかってるんだよなー、こいつの名前」

蘭花「あ、でもあの子ソウルジェム持ってますよー」

ミント「服装からしても魔法少女なのは間違いないみたいですわね」

フォルテ「なーんだ、魔法少女に知り合いなんているはずないし勘違いか」

??「え、いや、その……」

59: 2012/04/15(日) 09:43:21.70 ID:osusg0Z50
ミルフィーユ「みなさん酷いですよ! 私たちのお友達じゃないですか!」

??「ああミルフィーユさん、やっぱり貴女は私の大切なお友達! でもこの展開とってもデジャヴ……!」

ミルフィーユ「『鳥』丸さんですよね!」

鳥丸「やっぱりー! くぅ、ミルフィーユ・桜葉にエンジェル隊め、よくも私の純情を弄んでくれたわね!」

鳥丸「髪の色的に昔はメガネに三つ編みだったり時間遡行してたり他の世界ではミルフィーユさんと親友にまでなっててさらにはあなたのことを絶対に救い出してみせるとか心に誓ってるはずなのにー!」

ノーマッド「あのー」

鳥丸「なんですか、今忙しいんです!」

ノーマッド「いやですね、勝手に盛り上がってるとこ悪いですけど、あなたのソウルジェムとやらどんどん黒くなってますよ?」

鳥丸「ほえ?」

61: 2012/04/15(日) 09:58:46.98 ID:osusg0Z50
鳥丸「え、え、これってすごくまずい状況ですよね!?」

QB「まずいな。ソウルジェムがグリーフシードになりかかっている」

フォルテ「……おいキュゥべえ。今のはちょいとばかし聞き捨てならない台詞だよ?」

QB「説明は後だ、フォルテ・シュトーレン。今は彼女の精神を安定させるのが先決だ」

ミント「早く安定させなければソウルジェムがグリーフシードになって……魔法少女は一体なにになってしまうんでしょうね?」

QB「――後でだ、ミント・ブラマンシュ」

蘭花「と、とりあえず落ち着きなさい鳥丸ー!」

ノーマッド「あんたは順調に火に油注いでんじゃねぇよ」

63: 2012/04/15(日) 10:08:40.04 ID:osusg0Z50
鳥丸「うえーん、こんな最期いやですー! ミルフィーユさん助けてえええええ!」

ミルフィーユ「と、とにかく一回深呼吸しましょう!? 鳥丸さん!」

鳥丸「だから鳥丸じゃないって言ってるのにー!」

フォルテ「おいおいおい、こりゃ本格的にまずいんじゃないのかい!?」

ミント「おそらく彼女の本名がキーですわ。彼女の本名を呼んであげれば落ち着きを取り戻すはず」

フォルテ「本名って、鳥丸じゃないのかい!?」

ミント「本人が違うと仰っているのですから違うのでしょう。もっとも、私にはさっぱり見当がつきませんが」

蘭花「えーっと、その、あれよ、要求はなんだ鳥丸ー! なんでも言ってみろー!」

ノーマッド「とりあえずこの人黙らせたほうがいいんじゃないですかね」

67: 2012/04/15(日) 10:20:23.79 ID:osusg0Z50
鳥丸「うう……私なんて……私の存在なんて……」

ノーマッド「あああ、彼女のソウルジェムはもうほとんど真っ黒ですよ」

ヴァニラ「……年貢の納め時」

ミント「諦めてはいけませんわ! なんとかして思い出すんです!」

フォルテ「鳥皮……違う。鳥つくね……違う。鳥もも……違う!」

蘭花「いやに美味しそうな間違いばっかりですね」

フォルテ「ならあんたは思い出せるのかい!?」

蘭花「それは、えっと……トルマリン?」

ノーマッド「あんたら当てる気ないでしょ」

鳥丸「私なんてええええええ!」

ミルフィーユ「泣かないでください鳥丸さん!」

鳥丸「泣かせてるのはミルフィーユさんですううううう!」

69: 2012/04/15(日) 10:27:01.22 ID:osusg0Z50
フォルテ「なんこつ! 手羽先! 砂肝! ねぎま!」

蘭花「トリートメント! トリミング! トリックオアトリート!」

ミント「もうお二人は口を閉じててくださいな!」

ミルフィーユ「わ、私は覚えてますよ? ほら、えっと、とり――」

フォルテ蘭花「もー駄目だああああああ!」

ウィーン

ウォルコット「ちょっとみなさん、任務の時間はとっくに始まってますよ。おやちとせさん、そんな格好でどうされましたかな?」

ミルフィーユ「――ち、ちとせさん!」

ちとせ「!」

70: 2012/04/15(日) 10:31:28.96 ID:osusg0Z50
フォルテ「そーだよちとせ! 私たちがお前のこと忘れるはずがないだろちとせ!」

蘭花「そうよちとせ! なんたって友達ですもんねちとせ!」

ミント「そうですわちとせさん! 友達のお名前を忘れるはずがありませんわよねちとせさん!」

ノーマッド「清々しいくらいのクズっぷりですねみなさん」

ヴァニラ「……ちとせさん。友達」

ノーマッド「えぇそうです、ちとせさんは私達の大切な友達ですとも!」

72: 2012/04/15(日) 10:38:30.96 ID:osusg0Z50
ちとせ「み、みなさん……私、みなさんのお友達でいいんですか……?」

ミルフィーユ「当たり前ですよ、ちとせさん」

ちとせ「みる、ふぃーゆさぁぁぁぁん……」

フォルテ「ほーらちとせー、泣いてなんかいないでこっちにおいでー」

ちとせ「ふぉ、フォルテさああああああん!」

フォルテ「そぉい!」

ゴスッ

ちとせ「あがっ!」

ドサッ

フォルテ「ふう……危機は去ったか……」

蘭花「うわー、銃把で殴られるのって結構痛いのよねぇ」

ミント「まあまた情緒不安定になられても困りますし、これが妥当でしょうね」

ノーマッド「あんたら鬼ですね」

ヴァニラ「……福は我らがうちにあり」

ウォルコット「……えーっと、みなさん任務は……」

73: 2012/04/15(日) 10:45:39.26 ID:osusg0Z50
フォルテ「さーて。ようやく一段落ついたところで、だ」

ミント「説明してもらいますわよ? キュゥべえさん。いえ……インキュベーター、さん?」

QB「……ああ、説明するよ。特に隠すことでもないしね」

ミルフィーユ「ふー、私喉乾いてきちゃいました。ちょっとお茶淹れてきますね」

蘭花「あー、あんたはどうせ聞いても理解できないだろうから好きにしなさい」

ミルフィーユ「はーい、それじゃあみなさんの分も入れてきますね!」

フォルテ「……よし、馬鹿もいなくなったことだ。全部ゲロしちまいな」

ウォルコット「任務……」

74: 2012/04/15(日) 10:57:05.13 ID:osusg0Z50
蘭花「そ、ソウルジェムに私たちの魂が移し替えらてるですって!?」

ミント「つまり私たちのこの体は……もう……」

フォルテ「その上ソウルジェムが本体から100メートル離れれば即お陀仏ってか。はん、ふざけた話だよ」

QB「そうかい? そのお陰で君たちの肉体は常人とは比べ物にならない強度を持ったんだ。むしろ喜ぶべきことなんじゃないかと思うけれどね」

蘭花「あんた、ふざけてんじゃないわよ!」

QB「ふざけてなんかいないさ。僕はいたって本気だよ?」

フォルテ「だからこそ余計に質が悪いんだろうが……くそっ!」

ヴァニラ「…………」モシャモシャ

ウォルコット「……あ、私お掃除してきますね……」

ノーマッド「あなたも苦労人ですね」

ウォルコット「もう慣れましたから……」

75: 2012/04/15(日) 11:05:11.85 ID:osusg0Z50
蘭花「元に……元に戻る方法はないわけ!?」

QB「ないよ。いずれ魔女になるその日まで君たちはその体のままさ」

蘭花「っけんじゃ、ないわよおおおおお!」

ズゴウゥゥゥゥゥン!

ミント「た、ただ殴っただけなのにこの威力……!」

フォルテ「……すごいね、キュゥべえが粉々だ。これが魔法の力ってわけかい」

蘭花「ハァ、ハァ……命と引き換えに手に入れた、ですけどね」

QB「はぁ。君たち人間はなぜ感情が昂ぶると急に暴力的になるんだろうね」

蘭花「なっ!?」

QB「ああ、僕はどれだけ頃しても無駄だよ」

ミント「クローン、ということですか……」

QB「厳密には違うけれどね。その概念が一番近いかな」

ヴァニラ「…………」ズズー

76: 2012/04/15(日) 11:15:33.36 ID:osusg0Z50
ノーマッド「ま、ぶっちゃけ自業自得というやつじゃないですかね」

フォルテ「あんだと!?」

ノーマッド「だってそうでしょう? あなた方三人は目の前にぶら下げられた願いという餌にまんまと食いついた間抜けじゃないですか」

蘭花「あんたねぇ……!」

ノーマッド「やれやれ、今度は逆ギレですか? これだから野蛮な人たちは困る。あなた方もヴァニラさんみたいに慎ましく生きていればこんなことには……」

ヴァニラ「…………」ヌクヌク

ノーマッド「……あのー、ヴァニラさん? さっきからちょーっとだけ気になってたんですけど、一体なにをしているんでしょうか?」

ヴァニラ「酢昆布。梅昆布茶。こたつ。三点セットでお買い得」

ノーマッド「えーと、ひょっとしてまさか……」

ヴァニラ「三つでひとつの願い」キラリ

ノーマッド「うわあああああ! ヴァニラさんの首元で輝くそれは紛れもなくソウルジェム! 一体いつの間に!」

ヴァニラ「さっき」

QB「君たちがごたごたしている間にね。頼まれたから願いを叶えてあげたのさ」

79: 2012/04/15(日) 11:29:09.44 ID:osusg0Z50
フォルテ「畜生、これで残るはミルフィーユだけってわけかい」

蘭花「なんとしてもミルフィーユは……」

ミント「そう、ですわね……」

ちとせ「う、ううん……」ムクリ

フォルテ「おっとちとせ、目覚めたのかい」

ちとせ「ここは、エンジェルルーム? 私はなぜこんなところに……うっ、頭痛い……」

フォルテ「ふむ、どうやら落ち着いてはいるみたいだねぇ」

ちとせ「フォルテさん……? はっ、そういえば私!」

フォルテ「ちっ、思い出したか。蘭花トンカチ! 今度は三日くらい目覚めないのいくよ!」

蘭花「はいはーい」

ちとせ「え、いやちょっと待っていやいやそんなので殴ったら氏んじゃいますから助けてミルフィーユさーん!」

ミルフィーユ「はーい、呼びましたかー? あ、ちとせさん! 目が覚めたんですね!」

フォルテ「くそ、仕留め損なったか……」

ミント「もはや目的が明後日の方向へ向かっていますわね」

81: 2012/04/15(日) 11:41:32.57 ID:osusg0Z50
ちとせ「そうですか、エンジェル隊のみなさんもミルフィーユさん以外は……」

ミント「ええ、まんまと契約してしまいましたわ」

ちとせ「私が……私がもっとはやくお教えすることができていれば……」

蘭花「ちとせのせいじゃないわよ、気にしないで」

フォルテ「そうだよ。悪いのはみんな……」チラッ

QB「僕が悪い、ということかい。やれやれ、まったくもってわけがわからないよ」

フォルテ「けっ、ほざいてろ」

ちとせ「とにかく、ミルフィーユさんだけはなんとしても……あら? あらら?」

ミルフィーユ「どうしたんですか、ちとせさん?」

ちとせ「いえ、私のソウルジェムが……見当たらなくて……」

ミント「え? あら、おかしいですわね。ちとせさんのソウルジェムならそちらに置いておいたはずですが」

ウィーン

ウォルコット「あ、そこに置いてあった宝石なら黒く濁ってたのでゴミかと思ってダストシュートに放り込んでしまったんですが……ひょっとして、まずかったですか?」

ちとせ「え」

86: 2012/04/15(日) 11:51:36.97 ID:osusg0Z50
フォルテ「だああああ中佐! あんたはいつもいつも余計なことばっかり!」

蘭花「氏ね! 氏んで詫びろこのヒゲ!」

ウォルコット「ひいいい! ヒゲは! ヒゲだけはご勘弁を!」

ちとせ「あ、あ、あああああ」ヘロヘロ

ミント「気を確かに、ちとせさん! ダストシュートに入れられただけならまだ間に合いますわ!」

ちとせ「え……ほ、ホントですかミントさん!?」

ミント「ええ、宇宙廃棄用ダストシュートは二重扉になっており、ゴミはその二つの扉の間のスペースに貯められていますわ」

ミント「外側の扉が開かれる前に回収することができれば、まだ間に合うはずです!」

ちとせ「な、なら急いで探しに行かないと!」

蘭花「ちなみにその外側の扉のスイッチはどこにあるわけ? そっちも押されないように監視しておいた方がいいんじゃないかしら」

ウォルコット「ああ、それでしたら私がゴミ当番になったのでスイッチも管理しやすいようにとエンジェルルームに……」

ミルフィーユ「あれー、こんなところに見慣れないスイッチがありますよ? なんでしょうこれ」ポチッ

87: 2012/04/15(日) 11:53:44.06 ID:osusg0Z50
ウォルコット「あ」

フォルテ「あ」

蘭花「あ」

ミント「あ」

ノーマッド「あ」

ヴァニラ「……南無」


ちとせ「」パタリ

88: 2012/04/15(日) 11:58:12.28 ID:osusg0Z50
フォルテ「インキュベータああああああああ! よくも、よくもちとせを!」

蘭花「許さない……絶対に許さないわ!」

ミント「ちとせさんの仇、必ずやとらせていただきますわ!」

ミルフィーユ「え? え? もしかして私また何かやらかしちゃったんですかぁ!?」

ヴァニラ「……命は、儚い」

ウォルコット「わ、私これから会議があるので……」


QB「わけがわからないよ」

92: 2012/04/15(日) 12:05:36.67 ID:osusg0Z50
フォルテ「さよならちとせ、お前の肉体もすぐに後を追わせてやるからな……」

蘭花「せめてもの情けで宇宙服は着せたげる」

ミント「満天の星空の中でいい夢をご覧になってくださいまし」

フォルテ「エンジェル隊……黙祷!」

蘭花ミント「はい!」

ミルフィーユ「うっ、ひぐっ、ちとせさぁん……ごめんなさいぃ……」

フォルテ(さて)

フォル蘭ミン(これで邪魔者はいなくなった)

94: 2012/04/15(日) 12:09:56.40 ID:osusg0Z50
フォルテ「(私に蘭花、ミントにヴァニラまでこんな体になっちまったってのに、ミルフィーユだけはピンピンしてるときたもんだ)」ヒソヒソ

蘭花「(このままじゃ私らが生きるために必氏こいて魔女をぶちのめしてる間、ミルフィーユだけはのうのうと暮らしていられることになる……!)」ヒソヒソ

ミント「(エンジェル隊は一蓮托生ですわ……!)」ヒソヒソ

フォル蘭ミン「(なんとしてもミルフィーユ(さん)も契約させて魔法少女にしないと……!)」

ノーマッド「お前らホントに屑だな」


ズギューン

95: 2012/04/15(日) 12:20:05.51 ID:osusg0Z50
フォルテ「さぁーてミルフィーユー、今度はお前がお願いを聞いてもらう番だよー?」

ミルフィーユ「ひっく、えっぐ……フォルテさん?」

蘭花「ちとせという大切な仲間を失ったのはたしかに辛いわ。でもね、そうやっていつまでも思い悩んでいることをちとせが望むかしら?」

ミルフィーユ「蘭花、さん……」

ミント「ちとせさんのことが大切だったなら。ならばこそ、ミルフィーユさんはちとせさんの分も幸せにならなければいけないんじゃありませんこと?」

ミルフィーユ「ミントさん……そっか、そうですよね!」

ミルフィーユ「私が悲しんでたらちとせさんも笑って逝けないですもんね! 私、魔法少女になります!」

フォル蘭ミン(イエス!)

ヴァニラ「……神は全てをご覧になっています」

97: 2012/04/15(日) 12:27:15.38 ID:osusg0Z50
QB「僕が言うのもおかしな話だけれど、本当にいいのかい?」

フォルテ(あんにゃろ、こんな時に限って余計なこと言うんじゃないよ!)

ミルフィーユ「はい。私、決めましたから。ちとせさんの分も幸せに生きるって」

QB「だからこそなんだけれどね。まあいいよ、僕にとっては好都合だからね」

QB「さあ、ミルフィーユ・桜葉。君の願いを言ってごらん」

ミルフィーユ「私の、私のお願いは……」

QB(! このエネルギー量は……!)

ミルフィーユ「私の、お願いは……!」

バァーン!

??「お待ちになってください、ミルフィーユさん!」

98: 2012/04/15(日) 12:35:05.44 ID:osusg0Z50
フォルテ「……なあ蘭花。あたしゃこの光景をつい先程見たばかりのような気がするんだが」

蘭花「……奇遇ですね、私もです」

ミント「……今ばかりはお二人に同意せざるを得ませんわ」

フォル蘭ミン「…………」

フォル蘭ミン「誰だっけ?」

ちとせ「烏丸ちとせです! わざとらしくとぼけないでください!」

ミルフィーユ「ちとせさん! 生きてたんですか!」

ちとせ「ああ、私の大親友ミルフィーユさん! 奇跡です、私達の友情が奇跡を産んだんです!」

フォルテ「いや、実際のところどういうことなんだい? ちとせのソウルジェムと体は宇宙の藻屑となったはずだろ?」

ミント「……ありえない話ではありませんわ」

蘭花「どういうことよ、ミント?」

ミント「簡単な話です。ソウルジェムと肉体が100メートル以上離れると体は動かなくなる。なら、逆に言えば」

フォルテ「あたしらが投棄したちとせの肉体が先に廃棄されたソウルジェムの100メートル以内に入ったってことかい? そりゃどんな奇跡だよ」


ちとせ「奇跡です! 友情が産んだ奇跡なんです!」

100: 2012/04/15(日) 12:38:45.62 ID:osusg0Z50
ちとせ「それにしても。フォルテ・シュトーレン、蘭花・フランボワーズ、ミント・ブラマンシュ。あなたたちという人は……」

フォルテ「おいおい、これはひょっとして……」

蘭花「最悪の展開?」

ミント「ということに、なりますわね……」


ヴァニラ「……神は全てをご覧になっています」

101: 2012/04/15(日) 12:43:07.56 ID:osusg0Z50
ミルフィーユ「え、ということはつまり……」

ちとせ「ええ、もし今ミルフィーユさんがインキュベーターと契約を結んでいたら、ミルフィーユさんも私たちと同じような体になってしまっていたということです」

ミルフィーユ「…………」

フォルテ「(おいおい、まずいよこいつは……)」ヒソヒソ

蘭花「(これでミルフィーユがキュゥべえと契約を結ぶことは……)」

ミント「(ほぼ100%、ありえませんわね……)」

ミルフィーユ「ということは、みなさん……」


ミルフィーユ「とっても大変な状態ってことじゃないですか!」

フォル蘭ミンちと「え?」

102: 2012/04/15(日) 12:49:38.16 ID:osusg0Z50
ミルフィーユ「だってそうでしょう? ソウルジェムが体から100メートル離れちゃったらさっきのちとせさんみたいになっちゃうし」

ミルフィーユ「そうじゃなくてもいつも危険と隣り合わせになりながら魔女と戦わなくちゃいけないなんて……」

ミルフィーユ「私、みなさんがそんな状態になっているとも知らずに自分のことばっかり……」

ミルフィーユ「本当に、ごめんなさい!」

フォルテ「い、いやーミルフィーユ? そんなに気にすることないってー」

蘭花「そ、そうよー、間違いは誰にだってあるわー」

ミント「む、むしろ反省できたご自分を褒めてあげるべきですわ、おほほほほ」

ノーマッド「おーおー、みなさん面白いくらいに目が泳いじゃってますね」

ヴァニラ「……神は、全てを、ご覧になっています」

103: 2012/04/15(日) 12:57:51.28 ID:osusg0Z50
ミルフィーユ「そうだ! 私のお願いでみなさんの体を元に戻してあげれば……」

蘭花「いやー、それはさすがに無理っしょ? キュゥべえも魔女になるまでこの体のままだって言ってたし」

QB「いや、そうでもないよ」

フォルテ「……どういうことだい?」

QB「さっきミルフィーユ・桜葉の願いを叶えようとした瞬間、彼女の体内に凄まじい量のプラスエネルギーを感知したんだ」

QB「それが一体なにに起因するものかはわからないけれど、あれだけのエネルギーがあれば君たち五人を元の体に戻すことくらいはできるはずさ」

ミント「プラスエネルギー……ひょっとして、強運のことでしょうか?」

ミルフィーユ「よ、よくわかんないですけど、みなさんの体を元に戻してあげられるってことですよね? それならばーんってやっちゃってください!」

フォルテ「……ひょっとして、あたしら元に戻れるってこと?」

蘭花「本当に!? ひゃっほーう! ミルフィーユ、あんたもたまには役に立つじゃない!」

ミント「どうやらこれで一件落着、ということらしいですわね」

ノーマッド「いやー、一時はどうなることかと思いましたよ。このもはや神秘性さえも帯びていヴァニラさんの御身体に魂が入っていないだなんて考えたくありませんものね」

ヴァニラ「……全ては神の思し召し」


ちとせ「……ちょっと待って下さい」

105: 2012/04/15(日) 13:08:55.18 ID:osusg0Z50
フォルテ「あん? どうしたんだいちとせ。あんたも元の体に戻れるんだ、もっと喜びなよ」

蘭花「そーよちとせー、一人だけ辛気臭い顔しちゃって。こっちの気分までだだ下がりじゃなーい」

ミント「ちとせさん、人付き合いの経験が乏しく感情をうまく表に出せない気持ちはよくわかりますが、ここは素直に喜んでいいんですのよ?」

ちとせ「そうじゃありません! みなさん真面目に聞いてください!」

ちとせ「インキュベーター、教えなさい」

QB「……なにをだい?」

ちとせ「ミルフィーユさんの願いによって私たちが元の体に戻れるとして」

ちとせ「――ミルフィーユさんの体は一体どうなるの?」

107: 2012/04/15(日) 13:20:37.29 ID:osusg0Z50
エンジェル隊「!」

QB「……おそらくは、君の思っている通り。魔法少女のそれになるだけだよ」

QB「ミルフィーユ・桜葉の願いはあくまでも『魔法少女となった仲間の体を元に戻す』だからね。そこに彼女自身の体は含まれない」

ちとせ「やっぱり……」

蘭花「そ、それなら願いにミルフィーユ自身を含めちゃえばいいだけじゃない! それで万事解決でしょ!?」

QB「それも無理さ。ミルフィーユ・桜葉の願いが叶うのは彼女が魔法少女になる瞬間、ほぼ同時なんだ」

ミント「でしたらそもそも魔法少女になること自体をキャンセルする内容を願いに含めれば……!」

QB「そうするとミルフィーユ・桜葉は『魔法少女にならない』という事実だけが残ることになってしまい、そもそも願いが叶わない。パラドックスが起きてしまうんだよ」

ミント「……っ!」

QB「もっとわかりやすく説明して上げよう」

QB「五人を元に戻したいのであれば、ミルフィーユ・桜葉は魔法少女にならざるを得ない。これは決定的な事実だ」

ミルフィーユ「…………」

QB「考える時間が欲しいだろうから、答えは明日の朝まで待つよ。一晩じっくり悩むことだね」

ウィーン

ウォルコット「……え? 明日?」

108: 2012/04/15(日) 13:29:06.88 ID:osusg0Z50
~深夜・エンジェルルーム~

ミルフィーユ「…………」

ウィーン

蘭花「……はぁ。やっぱりこんなところにいた」

ミルフィーユ「え、蘭花さん?」

フォルテ「だけじゃないよ」

ミント「私たちもいましてよ」

ミルフィーユ「フォルテさん、ミントさんも」

ヴァニラ「…………」

ちとせ「ミルフィーユさん……」

ミルフィーユ「ヴァニラさんにちとせさんまで。い、一体どうしたんですか? みなさんお揃いで」

蘭花「どうしたんですか、じゃないわよこの馬鹿」

フォルテ「どうせあんたのことだから寝もしないでウジウジしてるんじゃないかと思ってね」

ミント「みんなで様子を見に来た、というわけですわ」

ミルフィーユ「みなさん……」

111: 2012/04/15(日) 13:38:07.87 ID:osusg0Z50
フォルテ「……ミルフィーユ。あんたは自分の思った通りにすればいいんだ」

ミルフィーユ「え?」

フォルテ「私らに気を遣う必要なんかないってことさ。もちろん、両方の意味でね」

蘭花「あんたが魔法少女になんかなりたくないって思うなら好きな願いを叶えればいい」

ミント「ミルフィーユさんが自分を犠牲にしてでも私たちを救いたいとお思いになるのであれば、ぜひそうしてくださいな」

ちとせ「ミルフィーユさんがどんな答えを出そうとも、私たちは決してそれを責めたりしません」

ヴァニラ「……後悔だけは、いけない」

ミルフィーユ「みな、さん……」

ミルフィーユ「…………」ゴシゴシ

ミルフィーユ「はいっ! 私、絶対に後悔だけはしません!」ニコッ



ウォルコット「あーえらいこっちゃえらいこっちゃ……」

ノーマッド「おっさんはさっきからなにやってんだよ」

112: 2012/04/15(日) 13:42:19.51 ID:osusg0Z50
>>111の訂正

蘭花「あんたが魔法少女になんかなりたくないって思うなら好きな願いを叶えればいい」
                     ↓
蘭花「あんたが魔法少女になんかなりたくないって思うなら断っちゃえばいいのよ」

114: 2012/04/15(日) 13:46:58.12 ID:osusg0Z50
~翌日・朝~

QB「さて、答えを聞こうかミルフィーユ・桜葉」

QB「君は魔法少女になって仲間を救うのかい? それとも魔法少女にはならないかい?」

ミルフィーユ「私は……」チラッ

エンジェル隊+ちとせ「…………」コクッ

ミルフィーユ「…………」コクッ


ミルフィーユ「……私、魔法少女になってみんなを助けます!」

116: 2012/04/15(日) 13:59:13.86 ID:osusg0Z50
QB「……いいんだね?」

ミルフィーユ「はい! 私、みなさんのこと大好きです! それなのにいつもみなさんには迷惑掛けてばっかりだから、こんな私でも役に立つことが見つかって嬉しいくらいです!」

蘭花「まーったく、ミルフィーユのクセに生意気言っちゃって。あんたがあたしらのためになんかしようなんて100年早いのよ」

フォルテ「その通りだよ。むしろあたしらの方があんたのこと手伝ってやるんだからな、覚悟しとけよぉ」

ミント「私たちにできることがあったらなんでも仰ってくださいな」

ちとせ「ミルフィーユさんの大親友であるこの私が全身全霊をもってお手伝いいたします!」

ヴァニラ「……皆は一人のために。一人は皆のために」

ミルフィーユ「みなさん……本当に、ありがとうございます!」

ミルフィーユ「それじゃあキュゥべえさん。よろしくお願いします」

QB「……わかった。それじゃあ君の願いを叶えよう」

QB「ミルフィーユ・桜葉! 君の祈りは今エントロピーを――」


QB「――凌駕して、ない?」


一同「は?」

118: 2012/04/15(日) 14:05:18.23 ID:osusg0Z50
QB「ど、どういうことだい!? 昨日は確かにプラスエネルギーが満ち溢れていたはずなのに、今日はむしろマイナスエネルギーが……!」

ウォルコット「あのー、ちょっとよろしいでしょうか?」

フォルテ「なんだよ中佐! 今ちょっと忙しいんだから後に――」

ウォルコット「いえこれは今言わないと間に合わないというか、ぶっちゃけもう言っても間に合わないというか……」

フォルテ「――どういうことだい? 中佐。説明しな」

ウォルコット「いえですね、昨日から何度も何度も言おう言おうと思っていたんですけれど、雰囲気的にどうしても言い出せなかったというかなんというか」

ウォルコット「かと言ってみなさんは綺麗サッパリお忘れになってるみたいですし……」

フォルテ「えーいはっきりしないね、さっさとお言い!」

ウォルコット「あ、あの、ですから!」


ウォルコット「今日ってミルフィーユさんの年に一度の運勢逆転の日……つまり『天中殺の日』なんですよねぇ。いやー、ははは」


エンジェル隊「あ」

ミルフィーユ「ほえ?」

119: 2012/04/15(日) 14:14:43.01 ID:osusg0Z50
ウォルコット「それなのにみなさんなーんの準備もされてないし、かと言ってこんな話切り出せる雰囲気でもなかったし。いやー困っちゃいましたよね、ははは」

蘭花「あ! ミルフィーユのエネルギーがマイナスなのも、ひょっとして……」

フォルテ「このせい、だろうね……」

蘭花「あーんもうあんたってやつは! どうしてこういう大事な時にやらかすのよこの大馬鹿ー!」

ミルフィーユ「え? え? なんかわかんないけどごめんなさーい!」

ミント「……ところで中佐。とても確認したくないけれど確認しなければいけないことがありますわ。……『間に合わない』というのは、どういうことですの?」

ウォルコット「そりゃーもう、今までを思い出していただければよーくわかると思いますけど……」

ウォルコット「突如現れた大型隕石がこの基地、というかミルフィーユさんに向かって一直線だそうです」

ウォルコット「いやーははは、ちなみに衝突まであと一分ほどですのでもうどうしようもないかと……」

フォルテ「……なぁ、中佐よ」

ウォルコット「ハ、ハイ」

フォルテ「そういうことは……もっと早く言ええええええええええええ!」

ウォルコット「ああああヒゲだけはあああああああああ!」


ノーマッド「だから言ったでしょう? この人達相手にしても無駄だって」

(終)

120: 2012/04/15(日) 14:18:51.58 ID:6SXK5PQp0
うん、ギャラクシーエンジェルらしく投げっ放しで終わったな

123: 2012/04/15(日) 14:49:38.54 ID:Axa8wS7L0
最近全話見たけどBOX欲しくなった

124: 2012/04/15(日) 14:55:01.84 ID:osusg0Z50
最後の最後でさるさん食らった
徹夜の頭で即興で書いてたら頭痛くなってきた
しっちゃかめっちゃかで投げっぱなしだけど読んだ奴thx

引用: QB「僕と契y」ノーマッド「あーこの人達相手にしても無駄ですよ」