1: 2007/10/04(木) 13:14:46.01 ID:9Kt/1u/X0
「そろそろね。ジュン、テレビをつけなさい」
「あー?・・・・はいはい。ったく、それくらい自分でやれってんだ」

主に文句を垂れる家来がどこにいるのかしら。
そんな些細な苛立ちも、「くんくん探偵」が始まる時間を前にしたらどうでもよくなってしまう。
それほどまでに私はこの番組を心待ちにしていた。
アリスゲーム
2: 2007/10/04(木) 13:16:06.67 ID:9Kt/1u/X0
「真紅もおかしな趣味してるよなー。雛苺や翠星石もこの番組好きみたいだけど、情熱が違うっていうか」
「当たり前よ。だって私は……くんくんを、愛しているんだもの」
「ちょっ、マジで!?はー、よくそんな恥ずかしいことを言えたもんだよ。だって相手は人形――そうか。だからか……」

ジュンはひとりで納得し、考えるようにしばし口をつぐむ。
そしてため息をつくついでのように呟いた。
「人形が恋かー。へんなの」

お父様がお求めになっているアリスは"究極の少女"。
アリスになる為には、誰かを愛する気持ちや慈しむ心も身に付ける必要があると私は考える。

3: 2007/10/04(木) 13:19:15.11 ID:9Kt/1u/X0
時計の分針が真上を指す。身を乗り出した私を、テレビ画面は裏切った。
なぜか、知らない人間の男が映っている。

「あら?ジュン、チャンネルを間違えていない?」
私が言い終わるのにかぶりぎみに、
「やあ!みんなーくんくん探偵の時間だよ!ふふ、驚いたかな?僕はくんくん役の津久井教生です!
今日はみんなの大好きなくんくん探偵の舞台裏を紹介するよ!」

くんくん……役? 何を言っているのかしらこの男は。

4: 2007/10/04(木) 13:21:34.26 ID:9Kt/1u/X0
「舞台裏紹介ぃ?ああ、新聞に書いてある。それにしてもいきなり中の人は驚きだな。ははっ」
「ちょっとジュン、この男は何なの?どうしてくんくん探偵が始まらないの」
「ああ、真紅は知らなかったのか。この人はくんくんの声優」
「せい…ゆう…?それはいったい何?」
「くんくんの声を演じる人だよ。もしかして真紅、くんくんが喋ってると思ってたのか?まさかなーっ」
「…………」
「し、真紅?あのな、くんくんが実際に動いたり喋ったりするわけじゃなくて、当然動かす人と声を当てる人が…」
「いやあああっ」

次の瞬間には、私は空を飛んでいた。後ろでガラスの砕け散る音とジュンの悲鳴が聞こえる。
風によって散らされる水滴は、間違いなく私の目からこぼれたものだった。


「おーーーーーい真紅ううう!!!待てってば!おい……」

5: 2007/10/04(木) 13:23:38.34 ID:9Kt/1u/X0
「…あんた、何してるのぉ?」
「ぅ…ぅぐ………す、水銀燈……どうして、あなたが」
「こっちが聞きたいわよぉ。真紅が突っ込んできたおかげで、乳酸菌飲料こぼしちゃったじゃなぁい」
「そう…悪いことをしたのだわ……」

静かな教会だった。
水銀燈がなぜここにいるのか解らないけど、私が来るずっと前からいたのだろう。私が飛び込んできたことに驚いていた。

「調子狂うわぁ。何泣いてるのよ。真紅ぅ、ローザミスティカ奪っちゃうわよぉ?」

7: 2007/10/04(木) 13:27:41.35 ID:9Kt/1u/X0
口ではそう言うものの、水銀燈は肩を落とす私に手を出すことはしなかった。
涙が溢れる。くんくんがくんくんでなかった――そんなこと、信じたくないけれど、この眼は見てしまった。この耳は聞いてしまった。くんくんの舞台裏?なによそれ、くんくん探偵はノンフィクションドラマではなかったの?私はずっと、勘違いをしていたの?

「くんくんなんて、いなかったのだわ……」
「え?くんくんがなぁによ。真紅ぅ、もしかしてフラれちゃったのぉ?」
「そうよ…いつかは私の愛を伝えたかった…なのにっ…!」
「もう。わけがわからなぁい。……落ち着いたら聞かせなさぁい。べ、別にあんたを慰めるとかじゃなくて…くんくんの話が気になるだけなんだからね」

8: 2007/10/04(木) 13:30:35.27 ID:9Kt/1u/X0
真紅が突進していった空を眺める。隔てのなくなった空は、普段ここから見るより澄みきっていた。

「真紅………ガラス割りやがって」

ガチャ
「あ、あらー!?ジュンくぅん、どうしたの?ガラス割れてるじゃないのぅ。ケガしてない?何があったの?」
「真紅がさ…くんくんが動かされてたこと知らなかったみたいで、ショック受けてガラス割って出てったんだ」
「え?くんくん探偵?」
「まさかお前もくんくんが生きてるなんて言うんじゃないだろうな!?」
「ジュン君ー失礼なこと言っちゃだめよ。それじゃまるでくんくん探偵が人形みたいじゃないのぅ」
「………僕がおかしいのか?」

10: 2007/10/04(木) 13:32:29.05 ID:9Kt/1u/X0
もう泣き疲れてもいい頃。実際私は疲れている。声も出ないし、涙も出ない。何も出せないから余計に苦しかった。
くんくんが実在しないと知ってしまった。
こんな世界、もう諦めてしまおうか。

「水銀燈…」
「なぁによ」
「私に、アリスになる資格はもうないのだわ…」
「え、えぇええ!?な、…何をおばかさんみたいなこと言ってるのぉ?」
「ええ、おばかさんでいいわ。私は、本当に馬鹿だもの…」
「…真紅……」

11: 2007/10/04(木) 13:34:34.45 ID:9Kt/1u/X0
これは只事ではない…水銀燈は足を組み替えた。

真紅がアリスになる権利を放棄するなんて、考えられなぁい。何か大変なことがあった…それはわかるけど、いったい何が?くんくんが関係してることは真紅がもらした言葉からうかがえる。やっぱり、失恋が第一に考えられるわぁ。
それにしてもどこで会ったのよぉ…羨ましい…。

「真紅ぅ、気は落ちるだろうけど仕方ないことじゃないのぉ。くんくんがいなくなったわけじゃないわよぉ」
「いないわよ!!最初から…いなかったのだわ……」
「はぁ?言ってることがわからなぁい!」
「私は、くんくんは悪事を働く者を懲らしめ正そうと、その強い意志で動いているのだと信じていた。水銀燈。あなたも知らないんでしょうけど、くんくんはね、人間に操られていたのよ…」

数瞬の間を置いたあと、
「そんなの、知ってるわよぉ?」
水銀燈はそう口にした。

12: 2007/10/04(木) 13:37:10.53 ID:9Kt/1u/X0
「ふへぇっ?し、知っていたの!?あなたが!?」
「あなたがって、失礼しちゃうわぁ。くんくんは私たちと同じドール。でも私たちのように自ら動いて喋ることはできなぁい。だから人間が操って物語を進めるのよぉ」
「え……じ、じゃああなた、どうしてそれを知っていて何も思わないの?くんくんは…いないのよ…?」
「くんくんは動かないドール。けど、心があるじゃなぁい。今までどこを見ていたの?」
「心…?」

くんくんは人間にからだを操られ、人間の声を当てられる。それは本人の意志ではないけど、彼は自分が"名探偵くんくん"である事を誇りに思っている。そして彼は、いまや「自分は名探偵くんくんである」と自覚を持っている。
それでもくんくんが実在しない、なんて言うの? だとしたら本当におばかさぁん。

13: 2007/10/04(木) 13:41:26.49 ID:9Kt/1u/X0
水銀燈の言うとおりなのだわ…
私は、くんくんの表面しか見ていなかった。歩いて、喋って、事件を推理するくんくんしか見ていなかった。
どんな人形にも心はある。作ってくれた人の思いを抱いた心が。
くんくんの心。私はそんな大切なことを見落としていた。

私は体を起こし、水銀燈の手をとる。
「水銀燈、ありがとう。あなたにはいくらお礼を言っても言い足りないくらいよ」
「ふん。覇気のない真紅が気味悪かっただぁけ。慰めたわけでもないのよぉ?」
「本当にありがとう。水銀燈…」
「な、なによ。そんなお礼言われることなんかしてないわ。
 さっさと家に戻りなさぁい!あの小さい人間が心配してるんじゃなぁい」
「そうね、主の帰りを待たない家来はいないわ。また会いましょう、水銀燈」
「ふふ。その時は乳酸菌飲料を持ってきたら歓迎してあげるわぁ」

14: 2007/10/04(木) 13:45:48.36 ID:9Kt/1u/X0
「あー!真紅!やっと帰ってきたか。居間の窓ガラス、直せよな!」
「…身の程を知らない家来ね。まず私の帰りを喜びなさい」
「けっ、お帰りなさいませお嬢様ー。これでいいかよ」
「…お嬢様?……悪くないわね」
「なんなんだよお前は!いいからガラス直せよ!……さっきは、要らないこと教えて悪かったよ。だ、だから早く直せ!寒いんだ!」
「いいえ、その件については解決済みよ。私も幼稚な行動をしてしまって謝るつもりだったわ。ごめんなさい、ジュン」
「わ、わかってるならいいんだよ。だから早く窓ガラスを――」
「はいはい、じゃあ黙ってなさい。ホーリエ!」

一箇所にまとめられていたガラスは、個々に浮き上がり、音も立てず溶け合うようにして元の姿に戻っていく。
お見事ね、真紅ちゃん。と、のりが大げさに手を叩きながら歓声を上げる。
「ざっとこんなものよ」
「お前なぁ、割ったのは自分なんだから威張るのはおかしいだろ!」
「口ごたえしない!」ベシッ「ぁうっ」

家来としては全く役に立たないけれど、ジュンものりも、この家も、私はとても愛している。
いつか離れるときが来ても、この愛は薄れないものだろう。

16: 2007/10/04(木) 13:57:03.69 ID:9Kt/1u/X0
豪快にガラスの割れる音で眠りから覚める。最悪だ。

「あ゛~~~~もう!!毎回毎回ガラスを割るな!ノックすれば開けてやるって言ったろ!」
「そんな細かいことで腹を立てるなですぅ。ちゃんと乳酸菌とってるですか?」
「こんのぉ~……」
「ごめんねジュン君。実は翠星石、めずらしくノックをしたんだよ。でもジュン君起きなくて…」
「ジュンね、鼻ちょうちんがぷくーってなってて、うにゅ~みたいだったのー!」

時計を見ると朝の6時半だった。非常識な時間でこそすらないが、窓ガラスをぶち破るという尋ね方は非常識だろう。
しかも来て早々こんな騒がれちゃたまったもんじゃない。こっちは夜中までネット通販してて寝不足なんだ。

17: 2007/10/04(木) 14:01:32.89 ID:9Kt/1u/X0
「あ~騒々しい! お前らもう一晩くらい泊まってくればよかったんじゃないか?」
「さすがに3日連続でじいさんばあさんの世話をするのは疲れるですぅ」
「そんなこと言いながら翠星石、すごく楽しそうだったよ。ふふ」
「あのね、トモエね、うにゅ~をいっぱい買ってくれたのよ!はい、おみやげのうにゅ~!」

雛苺から苺大福の入った袋を受け取ると、のりに抱っこされた真紅が部屋に入ってきた。
「朝から騒々しいわね」
「もうそれ真紅の決めゼリフだよな」
「不本意だけど、そのようだわ」
「あらあら、またガラスが割れちゃったのぅ?真紅ちゃん、お願いできるかしら~」
「はぁ……これもお決まりね」

19: 2007/10/04(木) 14:14:11.44 ID:geQ5DzQG0
翠星石「ジュン、相談事があるですぅ・・・」
ジュン「相談ん?うそだろ。お前は何か企んでる」
翠星石「なっなんですかチビ人間のくせに!翠星石は・・・うそなんか・・・・うぅ・・ひっく・・・」
ジュン「ええええちょっと待て、僕が悪かったよ・・・疑ったりして・・・・」
翠星石「じゃあ、こっち来るです」

20: 2007/10/04(木) 14:19:31.79 ID:geQ5DzQG0
ジュン「うわっ!・・・・・おい、ここは・・・・?」
翠星石「翠星石の夢の中です」

翠星石の夢の中。そこは、広い洋風の部屋だった。
手入れの行き届いた観葉植物に、テーブルの上に置かれたスコーン。手作りだろうか?
そうやって部屋を見渡していると、あるものを見つけた。

ジュン「なんで、僕の写真が・・・・」
翠星石「ジュン・・・」

ちゅ。
翠星石のくちびるが、僕の頬に一瞬だけついた。
彼女はいつのまにか顔を赤らめ、うるんだ瞳で僕を見つめている。

21: 2007/10/04(木) 14:29:17.36 ID:geQ5DzQG0
ジュン「え、ちょ!?ななな何するんだよっ!」
突然の予想外のできごとに動揺した僕は、動揺をそのまま口にするのがやっとだった。

翠星石「あの・・・・イヤだった、ですか?」
ジュン「ぅ・・・・・別に、イヤってわけじゃ」
翠星石「じゃあっ!翠星石のこと・・・・好き・・・ですかっ!?」
ジュン「そ・・・そんな急に言われても・・・・」

どうしたっていうんだ。あの生意気な性悪人形が、僕にいきなりキスをして、自分のことを好きか・・・だって?
そりゃあ翠星石は根っから悪い奴じゃないし、言い方は悪いけど素直なヤツだから嫌いじゃないさ。
まぁむしろツンデレという点では高い評価だし、見た目だって女の子らしくて可愛い・・・

翠星石「ちょっとチビ人間!なに黙ってるですぅ!!わ、わたしがせっかく恥を忍んでこんなことをしたというのにっ」
ジュン「翠星石。」

頭をなでてやると、翠星石はしゅぅぅ~・・・と湯気を出しながら俯いた。
これは、照れてるのか?

28: 2007/10/04(木) 14:54:03.00 ID:geQ5DzQG0
翠星石「・・・・ち・・・きたい・・・・」
ジュン「ん?なに?」
翠星石「ジュンの、気持ち・・・聞かせやがれですぅ」

僕の気持ちか。
翠星石が言ってるのは恋愛対象としてどう思っているかだと思う。
僕は・・・今まで翠星石をそういう目では見ていない。だってあいつはいつも僕に迷惑をかけて、僕を困らせて、僕の邪魔をした。
翠星石たちが僕の家に来るまでは、僕は自分の好きな生活をしていたのに。

そうだ、僕は一日中ネット通販をしてられた。ご飯もお風呂も選択も姉ちゃんにやらせてた。いつも一人でいられた。孤独が好きだった。

それがどうだ。まず真紅が来た。勝手に僕を家来にして、姉ちゃんへの態度を叱られた。
次に雛苺が来た。うるさくてすぐ泣いて、僕に抱きついてきた。
そして翠星石と蒼星石がやってきた。こいつらは毎回窓ガラスを割る。すごく迷惑だ。

僕の生活は、大きく変わった。

29: 2007/10/04(木) 14:55:22.74 ID:geQ5DzQG0
レスありがとう
嬉しいぜフヒヒ

>>26
そう
接続しなおしたらID変わっちゃった\(^o^)/

31: 2007/10/04(木) 15:15:01.40 ID:geQ5DzQG0
お前ら勝手すぎだよ。
僕の生活を壊して、くまのぶーさんに襲われたり僕を変なところへ連れて行ったり。
おかげで毎日楽しいよ。ふざけるなよ。僕は孤独が好きだったのに。

翠星石「・・・・ぅう・・ジュン、気を悪くしたなら謝るです。忘れてくれですぅ・・・・」

僕は、翠星石を抱きしめた。
ジュン「なんなんだよ、もう。僕だってお前らが大好きだよ。」
翠星石「お、お前らって・・・ジュンは他に好きな人がいるですか?」

問いに応えず、しばらく無言でいた。
翠星石は、納得しないという感じに僕の腕の中で唸っている。

34: 2007/10/04(木) 15:43:49.95 ID:geQ5DzQG0
そういえば、真紅が偉そうに語りだしたことがあったな。

真紅『心を見なさい。そのものの外見や言動だけに囚われてはいけない。
 想いや本音を、見落とさないようにするのだわ』


翠星石は今、本音を僕に打ち明けたんだ。
笑ってごまかせることでもないし、そんな気はない。

ジュン「なぁ、翠星石。お前はアリスになるために生まれたんだよな」
翠星石「・・・・ですぅ」
ジュン「いつまでも僕のそばにいられるわけじゃ・・・ないだろ?」
翠星石「翠星石は、アリスになんかなれなくていいです。ずーっとずっと、ジュンのそばにいるですぅ」

35: 2007/10/04(木) 15:46:57.44 ID:geQ5DzQG0
何年も時が経って。僕が年を取って。僕が氏ぬ。
それまで翠星石がそばにいることも可能かもしれない。だって彼女は、今までにいくつも時代を超えてきたのだから。

ジュン「僕が氏んだら、翠星石はどうする?」
翠星石「・・・・・っ」
ジュン「僕は人間だ。だから年を取れば氏ぬんだ」
翠星石「ぅぅぅ・・・・イヤですぅ、ジュンは氏んじゃダメですぅ!」

仕方ないだろ!!  つい、怒鳴ってしまった。
翠星石は肩を震わせながら、僕に強くしがみつく。絶対に離さないとでもいうように。

翠星石「そのときは・・・・そのときは、翠星石も一緒に氏にます。ローザミスティカは・・・蒼星石にあげるです」
ジュン「僕のためにそこまでするっていうのか?」
翠星石「ジュンが好きだからです! 愛してるんですぅ・・・・っ」


そのとき、小さな嗚咽をかき消すように、部屋の扉がゆっくり開いた。

43: 2007/10/04(木) 16:33:44.62 ID:geQ5DzQG0
最初に目に入ったのは、白く長い耳だった。
紳士的な仕草で挨拶をすると、どこまでも響いていくような声で、こう言った。

「あなた達を幸せへとお導きいたしましょう」

信じるわけ無い。こいつは悪戯ばかりの非情なやつだ。知ってる。
――ラプラスの魔。

翠星石「・・・何をしてくれるです?」
ジュン「おい翠星石、あいつにかまうな」
翠星石「ジュンと、幸せになりたいですぅ・・・」

翠星石は目の前の道化師を見つめていた。

44: 2007/10/04(木) 16:35:58.36 ID:geQ5DzQG0
ラプラスの魔「私の提案に乗っていただきたい。そうすればもう他のドールと戦うこともなく、アリスになる権利を放棄したことを咎められることもありません。
 そして愛する人と永遠に二人きりで過ごせましょう」

翠星石「ほ、本当ですか!?本当にそんなことが、」
ラプラス「できますよ。」
道化兎は笑ってみせた。

ジュン「どういう方法でだ?」
ラプラス「それは簡単。このフィールドに解けない鍵を掛け、出入り不可能にするのです。
 桜田ジュンさん、あなたの身体的成長も止めることはできる。つまり、不氏身です。そうすれば本当の意味での永遠が手に入るでしょう」

翠星石「ジュン!翠星石は、そうしたい・・ですぅ」
ジュン「・・・・・考えさせてくれ」
ラプラス「お時間はいくらでもありますよ。」

僕が"考える"のに長い時間を要すると察したのか、ラプラスの魔はそのままどこかへ消えた。

46: 2007/10/04(木) 16:56:58.01 ID:geQ5DzQG0
ジュン「一度、家に戻ろう」


・  ・  ・

蒼星石「あ、二人とも戻ってきたね」
雛苺「うゆ?ジュンと翠星石、お部屋でなんのお話をしてたの?今度はヒナもまぜてなのー!」
翠星石「ちょーっとジュンに勉強を教えてあげてたですぅ!チビ苺はおばかさぁんだから、わかるわけねーですっ」
真紅「そうね、勉強は大事なことだわ。でも本当かしら」
翠星石「ほほほほんとーですぅ!!」


やっぱりだ。翠星石は僕と二人きりで過ごしたら、きっと変わってしまう。
真紅や雛苺や蒼星石が大好きなはずだ。水銀燈や金糸雀ともたまには遊びたいだろう。

このままがいい。翠星石を変えてはいけない。

47: 2007/10/04(木) 17:04:56.77 ID:geQ5DzQG0
僕が好きな翠星石は、この翠星石だ。

おい、ラプラスの魔。僕は翠星石が好きだ。けど、今を変えたいとは思わないよ。
だからその提案は却下する。

――それでは彼女が悲しみますよ。

そんなことない。翠星石だって、本当は真紅たちと離れるのはイヤなはずだ。
天秤にかけただけなんだ。その天秤は今も、微弱に揺れ続けてる。

けど、今のままなら何も失わない。そうだろう。

48: 2007/10/04(木) 17:17:18.09 ID:geQ5DzQG0
翠星石が好きだ。

性悪人形だと思っていたけど、心は誰よりも純粋で一途で、そのせいで考えすぎてしまうところもある。
僕は翠星石を守りたい。思っていたよりも弱かった心を支えたい。
だから、翠星石の心が常に満たされるように。僕はラプラスの魔の提案は蹴る。
そして今まで見てやれなかった分抱きしめてやる。

なんだよ。僕、前から翠星石が好きだったんじゃないか?

自分の意識の下の下の下くらいの薄い意識が、今になって浮かび上がる。


「翠星石、おいで」
われながら恥ずかしい台詞で翠星石を抱き寄せる。

雛苺「あーっ翠星石だけ抱っこずるいのー!」
真紅「あらあら。大胆なのだわ」
蒼星石「ふふ、よかったね。翠星石」

翠星石「うぅ・・・恥ずかしいですぅ~。 でも、ありがと・・・ですぅ」


おわり

50: 2007/10/04(木) 17:27:19.82 ID:geQ5DzQG0
もうネタがない\(^o^)/

部屋に入ってくるのを誰にするかですげー迷った。
それぞれでセリフを考えてみた。

真紅「どうしてローザミスティカ私にくれないの?不人気だから?」
雛苺「うにゅーごっこしーましょ!うっにゅっにゅ~」
蒼星石「翠星石ーッ行かないでーッ」
水銀燈「あんた達、同棲はいいけどちゃぁんと乳酸菌摂りなさいよぉ~」

大したセリフ浮かばなかった。

引用: 真紅「くんくんは私の婿なのだわ」