950: 2010/08/11(水) 10:29:24.57 ID:E/bsKADO
禁書「だから、おなかすいたって言ってるんだよ」

垣根「……、人んちのベランダに引っ掛かっておいていきなりなにを言い出すんだこの、……小娘は」

禁書「あれ? 日本語が正しく伝わってない? 日本人かと思ったんだけど……髪の色からして西洋人?」

垣根「は? 馬鹿にしてんのか? 俺は日本人だ」

禁書「む。東洋人は黒髪が基本のはずなんだよ。もしかしてハーフさん?」

垣根「だから日本人だっつってんだろ! 髪は染めてんだよ」

禁書「……」

垣根「なんだよ?」

禁書「やっぱり黒が普通なんだよ! あ、こういうのなんていうかこの間聞いたかも! 確か『チャラ男』って言うんだよね?」

垣根「……、テメェはそこから落とされてぇのか?」

禁書「ぇう!? それは嫌かも……。高い所から落ちるのは心臓がどうにかなっちゃいそうで怖いんだよ……」

垣根「? ……まぁいい。訳あり空腹銀髪少女をヒロインとしてヒーローをやるつもりはねぇが、たまには非常識なイベントってのも悪くねぇな。上がれよ。朝飯くらいは用意してやる」

禁書「ほんとに!? チャラ男って実は優しい人種なんだね! うん! 記憶したんだよ!」

垣根「……、……やっぱテメェはそのまま落ちやがれ!」ガシィ

禁書「えっ! なんでどうして!? 優しい人種じゃなかったの!? ご、ごめんなさい! 後でもっと謝るからまずはその手を引っ込めて欲しいんだよ!」

垣根(なんだ『ジャリ』っとした感覚は? まるで俺の能力に反発してるような……)

禁書「で、出来れば手を引っ込めるついでに私も引き上げてくれれば嬉しいんだけど……?」

垣根「……」

禁書「この微妙な体勢で無視又はスルーを決め込まれれるのは落とされるのより辛い状況かも……!」

垣根「……チッ。ほら――っよ!」

禁書「うひゃぁ!?」

垣根「うおっ!?」

頭から手を離して腕を掴んで力任せに引き上げた少女の体は思ったより軽く、引き上げた勢いで宙返りした少女の体は垣根の頭上を絶妙に『越えず』お尻から垣根の顔面共々着地した。

頭部を思いっ切り強打した垣根は「ついてねぇ」と一言残して気を失った。
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951: 2010/08/11(水) 10:30:14.60 ID:E/bsKADO
垣根(あー、なんかもの凄い悪夢を見た気がするんだが。朝起きて、空気の入れ替えでもしようかと思って窓を開けたら、良く分かんねぇ銀髪のシスターみたいなのがベランダに引っ掛かってて、「おなかすいた」とか三行どころか一行にまとめた状況説明をって――あぁうるせぇ。誰だ俺を起こそうって奴は)

禁書「ねぇねぇ、大丈夫? 大丈夫なら返事して? やっほー?」

垣根(寝ぼけてんのか俺は。この部屋には俺一人しかいないはずだ。ってかやっほーにはなんて返せば良いんだ?)

禁書「おかしいんだよ。日本人はやっほーって言えばやっほーって返すものだと思ってたんだけど、やっぱり日本人じゃない?」

垣根「日本人だっての! ついでにチャラ男でもねぇからな!」

禁書「よく分かんないけど起きたんだよ! ねぇ頭痛くない?」

垣根「んあ? ……痛ぇ。なんだってんだちくしょう」

禁書「もしかして覚えてない?」

垣根「ちょっと待て。……、……。あ、」

禁書「思い出した?」

垣根「幼児体型だもんなぁ……」

禁書「むきーっ! 思い出した一言目がそれってどういうことなのかな!? こうなったら食べ物の代わりにあなたを食しても辞さない覚悟なんだよ!」

垣根「みぎゃあっ!! か、噛み付くんじゃねぇ!! 待て、こぶの部分は止めろ! 止めて止めやがれぇぇぇあああああっ!!」

この日、垣根帝督という男は始めて少女に噛まれた。こぶの部分も漏れなくギリギリと。

952: 2010/08/11(水) 10:30:47.33 ID:E/bsKADO
垣根「ほら、食えよ」

禁書「うわぁ! ……トーストにフライドエッグってやっぱり日本人と違う?」

垣根「まだ言うか噛み切り小娘。いやなら食うな」

禁書「嫌じゃないんだよ! あぁ、天に召します我らの父よ。このチャ――お兄さんに祝福を」

垣根「テメェ今、チャラ男って言いかけただろ!? あぁっ!?」

禁書「な、名前が分からなかったんだよ! うん、そうなんだよ! って事で名前を教えて欲しいな」

垣根「……はぁ。垣根。垣根帝督だ」

禁書「て、提督!? えっと、あの、その、軍人さん?」

垣根「違うっ! 『皇帝のてい』にその『提督のとく』だ! チッ、こんな自己紹介始めてだぞ」

禁書「むむ、日本語は難しいんだよ……」

垣根「……で、お前さんどこのどちらさんだ?」

禁書「私はイギリスのシスターでインデックスって言うんだよ」

垣根「イギリス? シスター? インデックス? 目次? ……あー、留学生か何かか?」

禁書「ううん、違う。ていとくが言ってた通り『訳あり』だから詳しくはちょっと話せないんだよ」

垣根「……。ベランダに引っ掛かってたくらいだしな。まぁ俺も『訳あり』の住人だから深くは詮索しねぇよ。お前を助けたのは非常識なイベントってのもたまには悪くないと思ったからだ」

禁書「ありがと。それにしてもこのトースト凄く美味しいね」

垣根「そうか? 別にどこにでも売ってるもんだけどな」

禁書「そうかもだけど、誰かと食べるご飯は一人で食べるご飯よりも何倍も美味しく感じるんだよ」

そう言って「にこっ」と笑った顔は、シスター呼ぶに相応しい全てを包み込むような笑顔だった。

この笑顔に垣根は心を揺さぶられたような錯覚に陥るが、すぐさまそれを否定する。

少女にどんな『訳』があるかは知らないが、少女と住む世界の違う垣根にとって関わってはいけないことだからだ。

953: 2010/08/11(水) 10:32:26.55 ID:E/bsKADO
垣根「ところでお前の着てるその修道服っぽいのはどっかの研究機関が作った新しい防護服<バリアジャケット>か? なんか俺の能力が変な感じに作用にしたんだが」

禁書「??? この服は『歩く教会』って言うんだよ」

垣根「あん? 歩く、教会? そんなもん聞いたことねぇな。やっぱり新製品か?」

禁書「うーん、細かい説明は色々あるんだけど簡単に言うとね、これは全ての物理的・魔術的攻撃を受け流して吸収する優れものなんだよ!」

垣根「おいちょっと待て。お前今、魔術って言ったか?」

禁書「へ? それがどうかしたのかな?」

垣根「俺は仕事柄、魔術というものを多少は知っているがここは科学の街だ。非科学的<オカルト>は表の世界には存在しちゃいけねぇんだ。そこんとこ分かってんのか?」

禁書「え、あ、うん? えっと……ていとくは魔術師、なのかな?」

垣根「んな訳あるか。俺は学園都市に七人しかいないレベル5の一人だ」

禁書「ってことは超能力者なんだよね?」

垣根「ああ。魔術なんてよく分からねぇもの頼らなくてもこの脳があれば十分だ」

禁書「む。そこはかとなくバカにしてるね? ていとくは科学の人なのに魔術も知ってるみたいだから理解ある人かと思ったけど、とんだ勘違いだったみたいだね」

垣根「あ? いい度胸してんなお前。全て洗いざらい吐いてもらいたいところだが、残念ながら時間だ」

禁書「時間?」

垣根「あぁ。こっちの『訳あり』の時間だ」

禁書「……そっか。ご飯ありがとね。ていとく」

垣根「単なる気まぐれだよ。それで、お前はこれからどうするんだ?」

禁書「イギリスに帰る」

垣根「ん? イギリスから来たんじゃねぇのか?」

禁書「そのはず、なんだよ」

垣根「はず……?」

禁書「……。それじゃあ長居しちゃ悪いから私はもう行くんだよ! どこかで会ったらまたご飯食べさせてくれると嬉しいな!」

少女は垣根の別れの言葉も聞かずいそいそと部屋から出て行った。まるでその言葉を聞きたくないかのように。

垣根はそんな少女の存在を振り切れないでいた。少女の全てが引っ掛かる。笑顔が魔術が。そして触れてはいけないはずの訳が。

このまま一夏の非常識イベントでナンパの種にでもなれば面白い、と垣根は思考を切り替えたがそれでも引っ掛かりは取れない。

954: 2010/08/11(水) 10:33:11.15 ID:E/bsKADO
「チッ」と舌打ちをして不快感をあらわにしてみるが、そんなことをしたところで意味はなく、もう一度「チッ」と舌打ちをして仕事の内容の確認のために垣根は携帯電話を手に取る。

垣根「……遅ぇんだよ」

心理『お花を摘みに行ってたからちょっとね。それでなんの用? 仕事の内容なら昨日説明したはずだけど?』

垣根「まぁそのことなんだが、俺はそれに必要なのか?」

心理『どういうこと?』

垣根「いや、この俺が出張らなくてもお前らだけでどうにかならねぇかなって」

心理『上から直接あなたも出張るように言われてるんだけど?』

垣根「……そうかよ」

心理『なに、また女絡み?』

垣根「あ? おい、またってなんだよまたって」

心理『あなた、私の能力で何回修羅場回避出来たと思ってるの?』

垣根「……、その点は感謝してる」

心理『ま、私はそれでせいせいするから良いんだけど』

垣根「なんだって?」

心理『なんでもない。で、女絡みなの?』

垣根「否定はしねぇが、今回は特殊なケースなんだ。出来れば仕事はパスしたいんだよ」

955: 2010/08/11(水) 10:33:55.23 ID:E/bsKADO
心理『無理ね。さっきも言ったけど上から直接言われてるの』

垣根「ったく。スキルアウト連中が突然暴れ出して研究施設を占拠――なんて俺らの仕事か? アンチスキルかジャッジメントにでも任せとけってんだよ」

心理『その研究施設が公に出るとまずいものみたいだし、無能力者であるはずのスキルアウトが能力を使っていると報告がある以上、暗部の人間(わたしたち)が動くしかない。どう? 分かった?』

垣根「誰に口聞いてんだテメェは。女……いや、小娘か。は、後回しにしてまずはそっちを片付けるか」

心理『え、今小娘っていっ――』

なにならまた小うるさい話を聞かされそうなので垣根は通話を切る。直後、マナーモードの携帯がブーブーと振動する。一瞬出て「うるせぇ」と告げ通話を切り、更に電源を切った。

いつの間にか垣根の頭は先程まで居た少女のことで一杯になっていた。この引っ掛かりを解決させるためには少女が必要だった。

垣根は朝食に使った皿を片付けながら仕事後の予定を思い出す。誰か(女)と遊ぶ予定があったような気がするが、その誰かがメモされた携帯は先程眠りにつかせたばかりだ。

起こせば余計なコールがなりそうなので起こさない。思い出せない予定なんてどうでもいい。垣根は頭を仕事モードに切り替えて部屋を出る。

仕事モードに切り替えたはずなのに、少女はエレベーターを使ったのか階段を使ったのかと考えてしまった自分にまた「チッ」と舌打ちをして自らの『世界』に赴くため垣根は歩みを進める。

956: 2010/08/11(水) 10:35:48.67 ID:E/bsKADO
終わりです。次に補足と言い訳

キャラについて
垣根→オフの時はリア充爆発しろって言われるような感じにしてみた

禁書→どうしてもくどくなりがちな魔術の説明を省くため、多少なりと科学というものに理解があるようにしてる。垣根も暗部の人間として魔術を知ってるようにしてる

心理→俺の趣味。長期連載に渡った場合ヒロイン二人はいるよなぁっと思ったらこうなった


普通に禁書一巻の内容追っててもあれだからレールガンの方も混ぜていけたらなと思う
でもその前に基本的には某SSのパクリ、オマージュ、リスペクトになるんだけどやっちゃっていいのかな?

引用: ▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-11冊目-【超電磁砲】