296: 2018/07/11(水) 07:27:21.18 ID:RS7LKkM8.net

【ラブライブ】花丸「心中」【前編】

―津島家―


善子「リリー!」


梨子「いきなり呼び出しておいて、騒々しいわね」

善子「なんなのよ、その態度!」

梨子「ちょっと落ち着いて、善子ちゃん」


善子「なんで、なんであんなことしたのよ!?」

梨子「あんなこと?」

善子「ダイヤから聞いたわよ、ルビィを騙して関係を聞き出したって」

梨子「仕方ないでしょ、頼まれてたんだから」

善子「だからって、そんなだまし討ちみたいな――」

297: 2018/07/11(水) 07:28:34.14 ID:RS7LKkM8.net
梨子「元はといえば、善子ちゃんの責任でしょ」

梨子「私と同じように探りを入れるよう頼まれたのに、何も聞き出せなかった」

善子「それは、そうかもだけど」

梨子「早めに聞き出していれば、少なくともこんな辛い形にはならなかったのに」

善子「……」


梨子「わかってはいたけどね、友達想いの善子ちゃんにはできないことぐらい」

善子「……当たり前でしょ、大切な二人を引き裂けるわけないじゃない」

梨子「それで適当な報告をしたんでしょ」

梨子「ダイヤさんにはバレバレだったよ」

298: 2018/07/11(水) 07:29:46.25 ID:RS7LKkM8.net
善子「なんで、リリーは正直に話したの」

梨子「おかしいかな」

善子「おかしいわよ!」

梨子「でも、必要だと思ったからやったのよ」

梨子「私に言わせればおかしいのは善子ちゃんの方だわ」

善子「なんで、そんなこと言うの」


梨子「素直になっていいのよ」

梨子「嫌だったでしょ、近くに二人も同性愛者がいるのは」

299: 2018/07/11(水) 07:30:53.39 ID:RS7LKkM8.net
善子「違う、そんなことない」

善子「例えどんな人間だとしても、二人と私は大好きな友達よ」

善子「二人を大切に想う気持ちは変わらないわ」


梨子「へぇ、立派ね」

梨子「でもね、私の方がよっぽど二人の事を考えているわ」


善子「……どうしてリリーは分かってくれないの」

善子「そんなに、同性愛者が嫌なの」

善子「いいじゃない、誰にもばれないように二人で付き合っても」

300: 2018/07/11(水) 07:32:33.56 ID:RS7LKkM8.net
梨子「……ねえ、善子ちゃん」

梨子「私がピアノを弾けなくなった理由、知ってる?」


善子「なによ、いきなり関係のない話を」

善子「同情でも引こうっていうの?」

梨子「ううん、これは関係のある話だよ」

善子「関係のある、話?」


梨子「だってその理由はね、私が恋をしたから」

梨子「二人と同じ、許されない恋を」

梨子「その結果、最愛の人は消え去り、私は消えない傷を負った」

301: 2018/07/11(水) 07:33:24.30 ID:RS7LKkM8.net
善子「ま、まさか」


梨子「ねえ、善子ちゃん」

善子「な、なによ」

梨子「さっき二人のことを庇ったあなたは、私の恋を受け入れてくれるの?」

善子「そ、それは」

梨子「善子ちゃん――」

善子「こ、こないで!」


 ドンッ



                            .

302: 2018/07/11(水) 07:34:38.15 ID:RS7LKkM8.net
善子「あっ……」


梨子「……ほらね、現実はこんなもの」

善子「ち、ちがっ、今のは」

梨子「いいよ、無理しなくても」


梨子「結局こうなるの。周囲は受け入れてくれず、愛する人は引き離される運命」

梨子「離れ離れになるなら、早い方が傷は浅い」

梨子「だから私はダイヤさんに協力して、二人を引き離したの」

梨子「取り返しがつかなくなる前に」

303: 2018/07/11(水) 07:35:59.63 ID:RS7LKkM8.net
梨子「これでも、まだ同じことが言える?」

梨子「二人の仲を引き裂いた私に、文句を言える?」

梨子「言えないよね、善子ちゃんは」

善子「……ええ、そうね」


梨子「じゃあ、話はここまでかな」

善子「…………」

梨子「私は帰るわね」

梨子「今日話した内容は忘れて、明日からまた仲良くしてくれると嬉しいわ」

梨子「難しいかも、しれないけどね」

304: 2018/07/11(水) 07:37:40.86 ID:RS7LKkM8.net
善子「…………」


善子「私が、間違っていたの?」


『……ほらね、現実はこんなもの』


善子「ごめんね、リリー」



善子「ごめんね、花丸、ルビィ……」

305: 2018/07/11(水) 07:38:55.12 ID:RS7LKkM8.net
―図書室―


花丸「誰も、いないな」


花丸(ひとりぼっちの図書室)

花丸(屋上から、Aqoursのみんなが練習している声が聞こえる)

花丸(でも、以前のような活気とは程遠い、どこか空々しい声)


花丸(それだけ自分の存在感があった――わけではないだろう)

花丸(あからさまに元気をなくした同級生、詳しいことを知らないからこそ不信感が拭えないであろう上級生)

花丸(動揺するなという方が無茶だろう)

306: 2018/07/11(水) 07:40:08.50 ID:RS7LKkM8.net
花丸(ダイヤさんから出された、接触禁止令)

花丸(当然、どちらかがAqoursを辞めなければならなくなった)

花丸(同じ部活に所属している限り、それは不可能だから)

花丸(もちろん、それはマルの役目。彼女にその事を告げられた時、迷わず即答した)

花丸(ルビィちゃんから、一番大切なものを奪うわけにはいかないもの)


花丸(そして戻ってきた、一人きりの本の世界)

花丸(でも中学以前の、ルビィちゃんが居ない頃の世界)

花丸(寂しい、とても)

307: 2018/07/11(水) 07:41:29.19 ID:RS7LKkM8.net
花丸(どんなことがあっても離れない、そのつもりだった)

花丸(でも、こんなにもあっさり引き離された)

花丸(抵抗する間もなく、気づけばバラバラになっていた)

花丸(所詮無力な自分には、どうしようもなくて)


花丸(詳しい現状さえ知らないんだ)

花丸(ルビィちゃんはもちろん、善子ちゃんともかかわれない)

花丸(黒澤家の人や、息のかかった同級生や教師に阻まれ、会話さえできない)

花丸(ダイヤさん以外のメンバーに話を聞くことぐらいはできるかもしれないけど、きっと意味なんてないだろう)

花丸(分かるのは、ルビィちゃんとの関係が露見して引き離された、ただそれだけ)

308: 2018/07/11(水) 07:44:16.23 ID:RS7LKkM8.net
花丸「はぁ」


花丸(いつか、こんな日が来ることは分かっていた)

花丸(でもまさか、こんなに早いなんて思いもしなかった)

花丸(耐え難い、最愛の相手に会えない日々、今後の未来)

花丸(灰色の世界、生きることさえ辛い)

花丸(大好きだったはずの本の世界すら、くすんでみえる)


花丸「もう、いっそ――


 ガラッ


花丸「!」

309: 2018/07/11(水) 07:47:46.79 ID:RS7LKkM8.net
鞠莉「ハーイ、花丸」

花丸「鞠莉ちゃん……」

鞠莉「久しぶりね、元気かしら」

花丸「そう、見えるかな」

鞠莉「いえ、全く」

花丸「あはは、だよね」


鞠莉「少し痩せた?」

花丸「そうだね、あんまり食べられていないから」

鞠莉「食べた方がいいわよ、どんなに辛い状態でも」

310: 2018/07/11(水) 07:48:46.01 ID:RS7LKkM8.net
花丸「いいんだよ、もう何もかもどうでもいいから」

花丸「本当は何も食べずに、餓氏したい気分だから」

鞠莉「駄目よ、そんなことを口に出しては」


花丸「……鞠莉ちゃんは、何があったか知ってるの?」

鞠莉「一応、調べられる範囲ではね」

花丸「ならこの気持ち、分かるよね」

花丸「果南ちゃんの事が大好きな鞠莉ちゃんなら」

鞠莉「……そうね」

311: 2018/07/11(水) 07:50:14.63 ID:RS7LKkM8.net
鞠莉「でも、希望は捨てちゃ駄目よ」

鞠莉「もう二度と、ルビィと一緒に居られないと決まったわけではないもの」

花丸「そんな根拠のない慰め、いらないよ」


鞠莉「根拠ならあるわ」

花丸「えっ」

鞠莉「貴女はまだルビィに会いたい?」

花丸「そりゃ、もちろん」



鞠莉「それなら、私が力になろうか」

323: 2018/07/12(木) 08:35:00.42 ID:jM/hVHpL.net
――黒澤家――


ルビィ「……ごちそうさま」

ダイヤ「あら、もういいのですか」

ルビィ「うん、食欲がなくて……」


ダイヤ「やはり私の作った料理は口に合わなかったでしょうか」

ルビィ「そんなことない、美味しかったよ」

ルビィ「むしろ、お母さんがいなくて二人で作りべきなのに、任せちゃってごめんね」

ダイヤ「私から言い出したことなので、それは構いませんが……」

ルビィ「…………」

324: 2018/07/12(木) 08:36:43.32 ID:jM/hVHpL.net
ダイヤ「ルビィ?」

ルビィ「あっ、ごめんね」

ルビィ「ちょっとだけ、考え事」

ダイヤ「まだ忘れられないのですか、花丸さんのことを」

ルビィ「……うん」


ダイヤ「難しい問題、ですね」

ダイヤ「私も愛する人と引き離されたら、堪えるでしょう」

ダイヤ「貴女がそれを引き起こした私とこうして話をしてくれている事すら、驚きです」

326: 2018/07/12(木) 08:37:32.66 ID:jM/hVHpL.net
ダイヤ「しかしこれはあなたの為なのです」

ダイヤ「申し訳ないと思っています」

ダイヤ「私だって貴女の気持ちを考えれば反対はしたくない」

ダイヤ「だけどこのままでは、あなたの人生に大きく関わります」

ダイヤ「姉として、そのような事態を見過ごすことはできません」


ルビィ「うん、分かってるよ」

ルビィ「お姉ちゃんがルビィのことを考えて行動してくれてる事は」

ルビィ「だから気にしないで、本当に」

327: 2018/07/12(木) 08:39:03.43 ID:jM/hVHpL.net
ダイヤ「……いいのですよ、私を責めても」

ルビィ「しないよ、そんなこと」

ルビィ「お姉ちゃんは悪くないもん」

ルビィ「馬鹿なルビィが何も考えずに築いた関係の責任を背負ってくれた」

ルビィ「感謝してるよ、ルビィは」

ダイヤ「……ルビィ」


ルビィ「ちょっと作らなきゃいけない衣装があるから、部屋に戻るね」

ダイヤ「大丈夫ですか? 何か私にも――

ルビィ「大丈夫――今日は1人にさせて」

ダイヤ「……分かりました」

328: 2018/07/12(木) 09:02:02.20 ID:jM/hVHpL.net
  ※


ルビィ「…………」

ルビィ(無心で裁縫をしていると、少しだけ落ち着ける)

ルビィ(大好きな事を、大好きなアイドルの為にやる)

ルビィ(ある意味、一番好きなはず時間)


ルビィ(それなのに、楽しくない)

ルビィ(どんな物を作り上げても達成感を感じない、作業自体が億劫にさえ感じる)

ルビィ(その原因は明白で、自分にとって彼女がどれだけ大きな存在だったかを、思い知らされる)

329: 2018/07/12(木) 09:20:52.16 ID:jM/hVHpL.net
ルビィ「マルちゃん……」


ルビィ(いったいどれだけの時間、あの子に会えていないのだろう)

ルビィ(これからの人生、会うこともできずに過ごす時間は、どれほど続くのだろう)

ルビィ(大きくなって、お互いに結婚して、互いの人生を確立して――)

ルビィ(果てしない時間、まるで想像もできないような)

ルビィ(耐えられないよ、そんなの)


ルビィ「会いたい」

ルビィ「会いたいよ、マルちゃんに」

ルビィ「また二人で一緒に――

330: 2018/07/12(木) 09:22:47.48 ID:jM/hVHpL.net
花丸「ルビィちゃん」


ルビィ「えっ」

ルビィ(マルちゃんの声?)


花丸「ルビィちゃん」


ルビィ(でも、おかしいよ。こんなところに居るわけない)

ルビィ(もしかして、幻聴かな)

ルビィ(会いたい気持ちが強くなりすぎて、そこまで――



花丸「ルビィちゃん!」

331: 2018/07/12(木) 09:23:52.47 ID:jM/hVHpL.net
ルビィ「マル、ちゃん」

ルビィ(窓の外から、確かに聞こえる声)

ルビィ(幻聴じゃ、ない)

ルビィ(聞き慣れた、大好きな人の声)

ルビィ(想い焦がれていた、本物の)

ルビィ(早く、早く窓を開けて――


 ガラッ


ルビィ「マルちゃん!」

332: 2018/07/12(木) 09:25:26.16 ID:jM/hVHpL.net
花丸「ルビィちゃん!」


 ギュッ


花丸「会いたかった、会いたかったよ」

ルビィ「うん、ルビィも」


花丸「少し痩せた?」

ルビィ「マルちゃんと会えなくなってから、食欲がなかったからかな」

花丸「ルビィちゃんは元々痩せてるんだから、心配だよ」

ルビィ「でもマルちゃんも、そうでしょ」

花丸「あはは、マルはちょうどいいダイエットになったから」

333: 2018/07/12(木) 09:30:59.20 ID:jM/hVHpL.net
ルビィ「どうやって、ここまできたの?」

花丸「鞠莉ちゃんが助けてくれたんだ」

花丸「こっそりここまで送って、監視の目も潜り抜けられるようにしてくれて」

ルビィ「鞠莉ちゃんが……」


花丸「あっ、話してる場合じゃなかった」

ルビィ「ど、どうしたの」

花丸「急いでこっちに来て!」

ルビィ「えっと、どこか行くの?」

334: 2018/07/12(木) 09:31:52.84 ID:jM/hVHpL.net
花丸「一緒に逃げよう、ルビィちゃん」

ルビィ「へっ」

花丸「駆け落ちしよう、お互いの家族の手が届かないところまで」

ルビィ「駆け落ち? でも、そんな――」

花丸「いいから、マルに付いてきて」

花丸「マルを愛してるなら、お願いだから」

ルビィ「でも、ルビィ達だけじゃ……」

花丸「大丈夫、鞠莉ちゃんが助けてくれるから」

335: 2018/07/12(木) 09:37:32.33 ID:jM/hVHpL.net
ルビィ「助けてくれる?」

花丸「マルたちの関係に反対する人のいない所へ連れて行ってくれるって」

ルビィ「反対する人に、いない所……」


花丸「ルビィちゃん?」

ルビィ「それは、駄目だよ」

花丸「どうして」

ルビィ「だってお姉ちゃんと離れ離れになっちゃう」

ルビィ「そうなったら、お姉ちゃんは絶対自分を責める。それは――」


花丸「ルビィちゃん!」

336: 2018/07/12(木) 09:38:57.19 ID:jM/hVHpL.net
ルビィ「ピギッ」

花丸「前に言ったよね、ダイヤさんよりマルが好きだって」

ルビィ「い、言ったね」

花丸「もうどちらかしか選べないの」

花丸「マルか、ダイヤさんか」

花丸「選ばれなかった方とは、会えなくなる」

花丸「選ばれなかったことに深く傷つく」

花丸「でも決めて、ルビィちゃんが望む方を」

337: 2018/07/12(木) 09:40:03.31 ID:jM/hVHpL.net
ルビィ「…………分かった」

ルビィ「ルビィは、マルちゃんと行くよ」

花丸「ルビィちゃんっ」


ルビィ「でも、少し待って」

花丸「へっ」

ルビィ「この書き置きを――」


『鞠莉ちゃんの家へ遊びに行っています』


ルビィ「こうすれば、しばらく時間を稼げるでしょ」

花丸「おぉ、流石ルビィちゃんずら」

338: 2018/07/12(木) 09:41:16.67 ID:jM/hVHpL.net
ルビィ「本当は嘘をつきたくないけど、仕方ないよね」

ルビィ「お姉ちゃんもルビィが消えた後、嘘つきの酷い妹だって思っていた方が、傷つかずに済むだろうし」

花丸「……ごめんね、マルの所為で」


ルビィ「気にしないで、決めたのはルビィだから」

ルビィ「早く行こう」

ルビィ「一緒に居るところを見られるわけにはいかないから」

花丸「う、うん!」

353: 2018/07/13(金) 23:07:23.75 ID:PefKim2T.net
―沼津駅―


鞠莉「着いたわよ」

花丸「ありがとう、鞠莉ちゃん」

鞠莉「悪いわね、ここまでしか送れなくて」

花丸「気にしないで。本当にありがとう」

鞠莉「じゃあ私は戻るわね。後は計画通りに」

花丸「うん」

鞠莉「困ったことがあったら連絡するのよ」


 ブロロッ


                       .

354: 2018/07/13(金) 23:08:29.50 ID:PefKim2T.net
ルビィ「鞠莉ちゃん、車の運転なんてできたんだね」

花丸「こっそり免許を取ってたらしいよ」

ルビィ「凄いねぇ、やっぱり大人だなぁ」

花丸「ルビィちゃんは、運転ができる人が好きなのかな」

ルビィ「どうして?」

花丸「駆け落ちしたら、きっと免許を取れないから、嫌かなって」

ルビィ「あはは、そんなの気にしないよぉ」

ルビィ「ルビィはマルちゃんが居れば、それでいいんだよ」

花丸「……ありがとう」

355: 2018/07/13(金) 23:10:40.68 ID:PefKim2T.net
ルビィ「それで、この後はどうする予定なの?」

花丸「北海道の方に鞠莉ちゃんの家があるらしいから、そこへ行く予定」

ルビィ「北海道かぁ」

花丸「うん、出来るだけ遠くへ逃げた方がいいだろうって」

ルビィ「なら、今からどこへ向かうの」

花丸「とりあえず東京へ行って、そこから飛行機に乗る予定」

ルビィ「へぇ、じゃあ新幹線?」

花丸「うん――あれ」

356: 2018/07/13(金) 23:11:44.47 ID:PefKim2T.net
ルビィ「どうしたの」

花丸「切符、どこにやったかな」

ルビィ「もしかして無くしちゃった?」

花丸「そ、そんなことはないはずなんだけど」


花丸「あれ、あれ、おかしいな」

ルビィ「お、落ち着いて、それならちゃんと探せばあるはずだよ」

花丸「う、うん――あっ、あった」

ルビィ「よかったぁ」

357: 2018/07/13(金) 23:13:12.09 ID:PefKim2T.net
花丸「あ、安心したら腰が……」

ルビィ「大丈夫?」

花丸「ごめんね、段取り悪くて」

花丸「こんな格好悪いところばかりみせて、不安になっちゃうかな」


ルビィ「そんなことないよ」

花丸「でも」

ルビィ「格好いいよ、花丸ちゃん」

ルビィ「一刻も早く、ルビィの元に来てくれようとしてくれたんだよね」

ルビィ「嬉しいよ、本当に」

花丸「ルビィちゃん……」

358: 2018/07/13(金) 23:14:53.83 ID:PefKim2T.net
ルビィ「ルビィね、諦めてた」

ルビィ「もう花丸ちゃんに会えないって、お姉ちゃんの言うことを受け入れようって」

ルビィ「でも、こんな風に来てくれて、連れ出してくれて」

ルビィ「マルちゃんは、最高の恋人だよ」


花丸「ありがとう」

花丸「そう言ってくれて、すごく嬉しい」


花丸「不安だったんだ、拒絶されないか」

359: 2018/07/13(金) 23:18:17.60 ID:PefKim2T.net
花丸「本当に辛かった、会えない日々は」

花丸「だから鞠莉ちゃんが協力を申し出てくれた時、すぐにそれを受け入れた」


花丸「でもね、怖かった」

花丸「ルビィちゃんはもう、マルの事なんてどうでもいいと思っているんじゃないかって」

花丸「何の抵抗もできずに、あっさりと関係を断ち切られてしまったマルを、見損なっているんじゃないかって」

花丸「もう、マルの事を好きじゃなくなったかもしれない、そんな考えが頭をよぎってたの」


花丸「でも、それは杞憂だった」

花丸「ルビィちゃんはマルの事を想っていてくれた、大切なお姉ちゃんよりも」

花丸「それがただ、嬉しい」

360: 2018/07/13(金) 23:20:07.97 ID:PefKim2T.net
ルビィ「酷いなぁ、マルちゃん」

ルビィ「マルちゃんの事を好きじゃなくなるなんて、あるわけないのに」


花丸「えへへ、ごめんね」

ルビィ「いいよ、気持ちは分かるもん」

ルビィ「ルビィだって、全く考えないわけじゃなかった」

ルビィ「バレた原因はルビィだし、マルちゃんが見損なわれてもおかしくない」


ルビィ「でも信じてた」

ルビィ「そうしたらこうやって、迎えに来てくれた」

ルビィ「だからね、どんなことがあってもルビィはマルちゃんを信じるよ」

ルビィ「どんなことがあっても、好きでいるよ」

362: 2018/07/13(金) 23:23:18.34 ID:PefKim2T.net
花丸「ルビィちゃん……ありがとう」


ルビィ「それじゃあ、行こうか」

花丸「うん」

ルビィ「もう、戻ってくることはないのかな」

花丸「そうかもしれない」

ルビィ「マルちゃんは、寂しくない?」


花丸「寂しくないといえば嘘になるよ」

花丸「でもルビィちゃんと一緒に居られない以上に、寂しいことはないから」

ルビィ「そうだね、ルビィも一緒」


花丸「……今度こそ、ずっと一緒に居ようね」

ルビィ「うん」

ルビィ「絶対に、ルビィの元から離れないでね」

花丸「うん、今度は絶対に離れない」


花丸(それに、もし離されそうになったら、その時は――――)

363: 2018/07/13(金) 23:24:46.65 ID:PefKim2T.net
―小原家―


ダイヤ「鞠莉さん!」

鞠莉「あら、どうしたのダイヤ」

鞠莉「せっかくの可愛い顔に皺が寄ってるわよ」


ダイヤ「それどころではありません!」

鞠莉「へぇ、何事かしら」

ダイヤ「とぼけないでください」

ダイヤ「ルビィが家から消えました」

ダイヤ「そして花丸さんも行方不明になったそうです」


ダイヤ「二人を、どこへやったのですか」

364: 2018/07/13(金) 23:26:33.19 ID:PefKim2T.net
鞠莉「何のことか分からないわね」

鞠莉「私がルビィと花丸の事なんて知るがないでしょ」


ダイヤ「ルビィが残した書き置きに、貴女の名前がありました」

ダイヤ「それに二人には監視をつけていたはずです」

ダイヤ「それを破って、どこかへ逃がす」

ダイヤ「こんな大掛かりな事ができるのは貴女しかいません」


鞠莉「あらあら、ずいぶんと高く評価してくれるのね」

ダイヤ「この期に及んで、よくそんなことを……」

鞠莉「きっと二人で上手く逃げただけよ」

鞠莉「どこかの硬度10のお姉さんから逃れるために」

365: 2018/07/13(金) 23:27:46.89 ID:PefKim2T.net
ダイヤ「無事なのですか、あの子たちは」

鞠莉「さあ」

鞠莉「でもきっと、元気だとは思うわ」

ダイヤ「……そうですか」


鞠莉「もし場所が分かったら、どうするつもりなの」

ダイヤ「当然、連れ戻します」

ダイヤ「それが私の、姉として、先輩としての義務ですから」

鞠莉「そう……」

鞠莉「それならきっと、二人の居場所は不明なままね」

366: 2018/07/13(金) 23:29:00.31 ID:PefKim2T.net
ダイヤ「貴女は何もわかっていない、何も考えていない」

ダイヤ「この行為は、自己満足の為でしょう」


ダイヤ「叶わない気持ちを持った自分とあの子たちを重ねて、自らの望みを託しているだけ」

ダイヤ「信じられないほどに、自分勝手な行為です」


鞠莉「……そうね、否定しないわ」

鞠莉「だけどね、少なくともあの子たちは喜んでいる」

鞠莉「貴女ではなく、私を肯定している」

鞠莉「その時点で、間違っているのは貴女の方よ」

367: 2018/07/13(金) 23:30:06.48 ID:PefKim2T.net
ダイヤ「……なるほど、よく分かりました」


ダイヤ「貴女の事は、問題が解決するまで友人とは思いません」

ダイヤ「世界一大切な妹を貶める敵として考えることにします」

ダイヤ「内浦で黒澤家を、私を敵に回す」

ダイヤ「それ相応の報いを受けることを覚悟しておいてください」

鞠莉「……残念ね、それは」


ダイヤ「では、私は失礼します」

ダイヤ「また友人として再会できる日が来ることを、期待していますよ」

鞠莉「そうね」

鞠莉「でもその日は来ない」


鞠莉「来させないわ、絶対に」

387: 2018/07/15(日) 22:50:09.59 ID:b3d/jHgP.net
――函館――


ルビィ「凄いなぁ、海」

ルビィ(北海道へ来て少しの時間が経った)

ルビィ(今のところ、追っては来ていない)


ルビィ(二人で鞠莉ちゃんの知り合いのお世話になりながら、ひっそり暮らす日々)

ルビィ(外出する時も髪型を変えて、目立たないように行動する)

ルビィ(下手な行動を取ることはできない、見つかったら終わり)

ルビィ(でも、幸せな日々)

388: 2018/07/15(日) 22:51:03.69 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ(だって横には常にマルちゃんが居るから)

ルビィ(一緒に寄り添って暮らしている)

ルビィ(一度離れ離れになる前よりも、近い距離)

ルビィ(まるで本当に駆け落ちした夫婦みたい)


ルビィ(鞠莉さんの家の人たちは、みんな理解があってやさしい人)

ルビィ(外国の人だからなのかな、それとも立場が作る余裕?)

ルビィ(立場、はあると思う)

389: 2018/07/15(日) 22:53:01.09 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ(少なくともお姉ちゃんの立場で、ルビィ達の関係に賛成できない)

ルビィ(例え本心では理解があるとしても)


ルビィ(そこの事に気づいたのは、最近の事で)

ルビィ(もっと早く気付いていれば、何か変わったのかな)

ルビィ(相いれない事は不変だから、変化なんてないかな)

ルビィ(でも結果は変わらなくても、もっとお姉ちゃんにやさしくできたかもしれない)


ルビィ(後悔をしても、もう遅いけどね)

ルビィ(だってもう、会うことはないんだから)

390: 2018/07/15(日) 22:53:49.97 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ(……あそこのハンバーガー、マルちゃん好きそうだな)

ルビィ(今度、教えてあげよう)


ルビィ(せっかく駆け落ちしたのに、残念なのは一緒に外出できない事)

ルビィ(二人でいたら目立つから、変装して別々に出かけるだけ)

ルビィ(今日は前から気になっていた赤レンガ倉庫に来てみた)

ルビィ(お洒落で可愛いお店もたくさんあって素敵)

ルビィ(多分、デートにピッタリな場所)

ルビィ(カップルみたいな人、たくさん見かけたもん)

391: 2018/07/15(日) 22:54:40.69 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ(どこかで海外に連れていくからその時までの我慢だって、鞠莉ちゃんが電話で言ってた)

ルビィ(もう少し、本当に自由な立場までもう少しだ)

ルビィ(だから今の寂しさぐらい、我慢しないと)

ルビィ(でも、外で一緒に話ができる友達ぐらい欲しいなぁ)

ルビィ(ルビィ達の事を理解して、存在を外部に話したりしない、理想的な友達――)


??(……)

ルビィ(例えばそこに座っているような、同い年ぐらいの子なんて――)

??「ん?」

ルビィ(あれ、こっち観た)

392: 2018/07/15(日) 22:55:31.49 ID:b3d/jHgP.net
??「……」

ルビィ「ピギッ」

ルビィ(こ、こっちに来る)


??「ねえ、そこのあなた」

ルビィ「な、何ですか」

??「あなた、黒澤ルビィ」

ルビィ「えっと」

ルビィ(もしかして、黒澤家の人?)

ルビィ(ば、ばれたの、どうしよう、逃げなきゃ――)

393: 2018/07/15(日) 22:56:20.58 ID:b3d/jHgP.net
??「その反応、私のこと覚えてないの?」

ルビィ「えっ?」


理亞「鹿角理亞、Saint Snowの」

ルビィ「あっ……」

理亞「思い出した?」

ルビィ「東京で会った、あのバク宙の」

理亞「……何か微妙な覚えられ方ね」

ルビィ「あ、あはは、インパクト強かったから」

394: 2018/07/15(日) 22:57:20.33 ID:b3d/jHgP.net
理亞「なにしてるの、こんなところで」

ルビィ「え、えっと」

理亞「観光?」

ルビィ「う、うん」

理亞「でも今は普通に学校のある期間でしょ」

ルビィ「まあ、そうなんだけど……」

理亞「もしかして、訳ありな感じ?」

ルビィ「そ、そうなんだよね」

396: 2018/07/15(日) 23:02:22.00 ID:b3d/jHgP.net
理亞「まあ、詳しいことは聞かないでおくわ」

ルビィ「ありがとう、理亞――さん?」


理亞「同い年なんだから呼び捨てとかでいいわよ」

ルビィ「そう?」

理亞「そ、そうよ」

ルビィ「じゃあ――理亞ちゃん?」

理亞「『ちゃん』は付いてくるのね……、まあいいけど」

397: 2018/07/15(日) 23:03:43.26 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ「でもよくルビィだって分かったね」

ルビィ「髪型とか、普段と変えてるのに」

理亞「まあ、貴女は特に気になっていたから」

ルビィ「気になってた?」


理亞「少し前にね、あなた達のライブの動画を姉さまにみせられたの」

理亞「凄くいい動きをして、みんなイキイキしてた」

理亞「その中でも特に、貴女は輝いてた」

理亞「本当に楽しそうに歌って、踊って……」

理亞「その時確信したの、この子は私と決勝で戦うライバルになると」

398: 2018/07/15(日) 23:05:17.90 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ「……そうだね」

理亞「なによその反応」

理亞「自信がないの?」

ルビィ「そういうわけじゃないんだけど……」

理亞「じゃあなに? 私たちが予選で負けるとか考えてるの?」

ルビィ「それも、違うんだけど」

理亞「……煮え切らないわね」

ルビィ「ごめんね」


理亞「もう、まさかアイドルを辞めたからとかじゃないでしょ」

ルビィ「…………」

399: 2018/07/15(日) 23:06:13.33 ID:b3d/jHgP.net
理亞「えっ、本当に?」

 コクリ

理亞「本当にアイドル、辞めたの?」

ルビィ「……うん」


理亞「もしかして、私の所為?」

ルビィ「へっ、なんで?」

理亞「だって、初対面で攻撃的な態度を取って、あなた達を否定して――」

ルビィ「ち、違うよ。それ以外の理由」

400: 2018/07/15(日) 23:07:12.94 ID:b3d/jHgP.net
理亞「グループ内の誰かと喧嘩したとか?」

ルビィ「えっと……」

理亞「定番だけど、方向性の違いみたいな?」

理亞「人間関係が原因で脱退するのはよくあるし」


ルビィ「まあ、それに近いかな」

理亞「……勿体ない」

理亞「せっかく、ライバルになれると思ったのに」

ルビィ「……仕方なかったんだよ」

401: 2018/07/15(日) 23:08:01.59 ID:b3d/jHgP.net
理亞「理由はなによ」

理亞「恋愛関係のもつれとか?」

ルビィ「っ」


理亞「ほ、本当にそうなの?」

理亞「アイドルに恋愛はタブーでしょ」

ルビィ「す、スクールアイドルはそこまで厳しくないもん」

理亞「でも人間関係の崩壊の原因になるから、普通は避けるじゃない」

ルビィ「そうだけど……」

402: 2018/07/15(日) 23:09:38.43 ID:b3d/jHgP.net
理亞「相手はアイドルに関係ある人なの?」

ルビィ「まあ……」

理亞「何よそれ、理解した上で付き合ってるなんて、ろくでもない奴ね」


ルビィ「ま、マルちゃんはろくでもない奴なんかじゃないもん!」

理亞「マル、ちゃん?」

ルビィ「あっ……」

理亞「マル『ちゃん』って言ったわよね、今」

ルビィ「ち、違くて――

理亞「確かAqoursに居たわね、貴女と仲良しの、国木田花『丸』って子が」

403: 2018/07/15(日) 23:10:34.42 ID:b3d/jHgP.net
理亞「もしかして貴女、メンバーと、女と付き合ってるの?」

ルビィ「…………」


理亞「別にいいわよ、話さなくても」

理亞「言いにくいことだろうし」

理亞「でも口に出すことで、少しは楽になれるんじゃない」

理亞「私は誰にも言わないし」

理亞「そもそも友達いないから言う相手もいないし」

ルビィ「理亞ちゃん……」

404: 2018/07/15(日) 23:11:31.11 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ(いいのかな、話しちゃっても)

ルビィ(ほとんど初対面の相手に、こんな大事なことを漏らす)

ルビィ(人に聞いたら、絶対に止められそうな行為)


ルビィ(けどどうしてかな、不思議と大丈夫な気がする)

ルビィ(この子なら大丈夫って安心感がある)

ルビィ(実際、抱え込むのもつらい)

ルビィ(味方が欲しい、自分を肯定してくれる味方が)

ルビィ(もしかしたら、理亞ちゃんはそれになってくれるかもしれない)

405: 2018/07/15(日) 23:12:30.96 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ「じゃあ、話すよ」

理亞「う、うん」

ルビィ「最初にね、出会ったときの事から――――


―――
――



ルビィ「――とまあ、そんな感じで駆け落ちしてきたの」

406: 2018/07/15(日) 23:13:14.51 ID:b3d/jHgP.net
理亞「はぁ……」

ルビィ「や、やっぱり変かな」

理亞「そんなことない」

理亞「凄いわ、あなたたち」


ルビィ「気持ち悪いとか思わないの?」

理亞「思わないわよ、そんなこと」

理亞「尊敬するわ、あなたたちの事」

407: 2018/07/15(日) 23:14:52.31 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ「尊敬って、そんな」


理亞「そこまで相手の事を想える、素敵じゃない」

理亞「私は恋をしたことがないけど、憧れるし、格好いい」

ルビィ「そ、そんなに立派なものじゃないよ」

理亞「でも実際、全てを投げ捨ててでも駆け落ちをしてきた」

理亞「大好きだったアイドルさえ捨てて」

ルビィ「よく分かったね、ルビィがアイドル好きだって」

理亞「見てれば分かるわよ、演じている時の雰囲気を」

理亞「それに、私と貴女はどこか似てるもの」

408: 2018/07/15(日) 23:15:54.24 ID:b3d/jHgP.net
理亞「私ね、本当は凄い人見知りなの」

ルビィ「理亞ちゃんが?」

理亞「ええ」

理亞「東京に居た時にそっけない態度をとったのも、どう話していいのか分からなかったから」

理亞「だから、普段の私なら今日も話しかけられなかったと思う」


理亞「でも今日、貴女に話しかけられたのは、どこか放っておけない雰囲気を感じたから」

ルビィ「そうなんだ……」

理亞「実際話してみても、正直心配よ、貴女の事」

理亞「危うい状態にいるようにしかみえないもの」

409: 2018/07/15(日) 23:16:55.69 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ「……理亞ちゃんは反対なの」

ルビィ「ルビィがマルちゃんと今の状態を続けること」

理亞「ううん、さっきの話を聞いて反対なんてしないわよ」

理亞「助けにはなりたいけどね」

ルビィ「理亞ちゃん……」


理亞「何かできることがあったら言ってね」

理亞「できる限り、協力するから」

ルビィ「うん、ありがとう」

410: 2018/07/15(日) 23:18:16.06 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ「あっ、私そろそろ行かないと」

理亞「時間?」

ルビィ「うん、そろそろ帰らないと心配されちゃう」


理亞「ねえ、しばらくはこっちにいるのよね」

ルビィ「うん」

理亞「じゃあ、明日も会える?」

ルビィ「うーんと、明後日なら」

理亞「じゃあ明後日、またここで待ち合わせしない?」

ルビィ「うん、いいよ」

411: 2018/07/15(日) 23:19:13.49 ID:b3d/jHgP.net
理亞「今度はもっといろんな話をしましょう」

理亞「好きなアイドルについてとか、国木田花丸の話とか」

ルビィ「そ、それは恥ずかしいかも」

理亞「いいじゃない、一度恋バナとかしてみたかったのよ」

ルビィ「り、理亞ちゃんも話すならいいよ」

理亞「残念、さっきも言ったけど私は恋とかしたことないから」

ルビィ「む、むぅ、ズルいっ」


理亞「あはは、じゃあまたね、ルビィ」

ルビィ「またね、理亞ちゃん」

412: 2018/07/15(日) 23:20:14.29 ID:b3d/jHgP.net
  ※


―小原家関係者宅―


ルビィ「ただいまぁ」

花丸「あっ、おかえり」

ルビィ「あれ、外行きの格好だね」

花丸「ごめんルビィちゃん、すぐに荷造りできるかな」

ルビィ「ふぇ?」

花丸「急いでここを出なくちゃ行けなくなったみたい」

ルビィ「えっ」

413: 2018/07/15(日) 23:22:36.19 ID:b3d/jHgP.net
花丸「さっきね、鞠莉ちゃんから連絡があったの」

花丸「黒澤家の人に、滞在場所がバレたかもしれないって」

ルビィ「そ、そんな」

花丸「もうマルは準備ができてる」

花丸「後はルビィちゃんが良ければすぐに出発を――」


ルビィ「あ、あのね」

花丸「どうしたの?」

ルビィ「その、こっちで友達ができたの」

ルビィ「それで挨拶をする時間ぐらいは――」

414: 2018/07/15(日) 23:23:47.44 ID:b3d/jHgP.net
花丸「……ごめんね、早く出ないといけないから」

ルビィ「そ、そっか……」


花丸「でも、どうしても必要なら――」

ルビィ「大丈夫だよ」

ルビィ「そんな事より、逃げなきゃだもんね」

ルビィ「元々、友達を作る事自体がおかしいわけだから」

花丸「ルビィちゃん……」

415: 2018/07/15(日) 23:24:39.62 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ「じゃあ急いで支度するから。物も少ないしすぐに――」

花丸「ごめんね」


ルビィ「マルちゃん?」

花丸「マルはずっと、ルビィちゃんの気持ちを考えられてない」

花丸「駆け落ちをすれば、ダイヤさんだけじゃない」

花丸「善子ちゃんやAqoursのみんな、新しくできた友達」

花丸「そして、大好きなアイドルとしての活動」

花丸「それら全てをルビィちゃんが失う事、ちゃんと理解できていなかったかもしれない

416: 2018/07/15(日) 23:25:36.88 ID:b3d/jHgP.net
ルビィ「いいの」

ルビィ「マルちゃんは、どんなものよりも大切だから」

ルビィ「それにルビィを手に入れる代わりに色々な物を失ったのは、マルちゃんも一緒でしょ?」

花丸「そうかもしれないけど……」


ルビィ「それより急ごう、お話は後でじっくりすればいいよ」

花丸「う、うん」


ルビィ(でも連絡先ぐらい、聞いておけばよかったかな)

ルビィ(ごめんね理亞ちゃん)

ルビィ(いつかお詫びするから)

ルビィ(今はルビィが来ない理由、察してくれると嬉しいな)

417: 2018/07/15(日) 23:27:16.00 ID:b3d/jHgP.net
―十千万―


曜「あの2人が、駆け落ち?」

千歌「うん」

曜「な、なんで」


千歌「詳しいことは分からないけど、付き合ってたらしいよ」

千歌「ダイヤさんに聞かれたんだ、二人から連絡はないか」

曜「駆け落ち……」

418: 2018/07/15(日) 23:28:19.64 ID:b3d/jHgP.net
千歌「ビックリしたけど、やっと納得できたよね」

千歌「突然花丸ちゃんがAqoursを辞めた理由」

千歌「二人が付き合っていたからなんだね」

曜「……そうだね」


千歌「曜ちゃんは知ってたの?」

曜「何となくは、ね」

千歌「えー、直接聞いてたとか?」

曜「そういうわけじゃ、ないけど」

419: 2018/07/15(日) 23:29:51.94 ID:b3d/jHgP.net
千歌「じゃあ、自分で気づいたってこと?」

曜「そうだね」

千歌「へぇ、流石曜ちゃん」

曜「ははっ、まあね」


千歌「二人のこと、心配?」

曜「そりゃね」

曜「駆け落ちなんて、簡単にできることじゃないから」

千歌「そうだよね、あんな可愛い子たち二人だけなんて」

千歌「幼めに見られる私から見ても、子どもみたいだもん」

曜「そう、だよね」

420: 2018/07/15(日) 23:30:36.96 ID:b3d/jHgP.net
千歌「でも大丈夫、ダイヤさんがすぐに二人を見つけ出すよ」

曜「えっ」


千歌「何かね、だいたいの居場所を見つけたらしいんだ」

千歌「もうすぐ戻ってくるよ、二人とも」

曜「……連れ戻されるの」

千歌「言い方は悪いけどそうなるね」

千歌「でも仕方ないよ、それが普通なんだもん」

千歌「これが普通に男女同士で、年齢も大人だったら応援したんだけどなぁ」

421: 2018/07/15(日) 23:31:39.16 ID:b3d/jHgP.net
曜「ダイヤさんは、二人の関係に反対なんだよね」

千歌「うん、絶対に認められないって言ってたよ」

千歌「千歌はリーダーだから教えてくれたけど、他の人には知られないようにしているみたいだし」

千歌「本当はこうやって曜ちゃんに話すのもダメなんだよ~」

千歌「人に漏らしたりしないって、信じてるからいいけどね」


曜「…………」


千歌「どうしたの?」

422: 2018/07/15(日) 23:34:18.88 ID:b3d/jHgP.net
曜「……私、二人を助けなきゃ」

千歌「曜ちゃん?」


曜「ルビィちゃんと約束したんだ」

曜「二人の事を応援するって」

曜「もし連れ戻されたら、二人はどうなるか」

曜「どうしても、嫌な予感しかしない」

千歌「……それは」

423: 2018/07/15(日) 23:35:44.43 ID:b3d/jHgP.net
曜「今ならまだ間に合う」

曜「この事を伝えて、パパにも協力してもらえば何か――


千歌「駄目だよ」

曜「千歌ちゃん?」

千歌「そんなことしたら、黒澤家を敵に回したら、ここで生活できなくなる」

曜「……きっとパパもママも分かってくれる」

曜「例えどんな目に遭っても、私は行かないといけない気がする」


千歌「嫌だよ」

千歌「私を、置いて行かないでよ」

曜「でも」

424: 2018/07/15(日) 23:36:28.95 ID:b3d/jHgP.net
千歌「私ね、二人と同じなの」

曜「同じ?」

千歌「曜ちゃんの事が、好きなの」

曜「っ」


千歌「二人みたいに、女の子が、曜ちゃんが好きなの」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「だから離れたくない、一緒に居たい」

425: 2018/07/15(日) 23:38:35.46 ID:b3d/jHgP.net
千歌「今ね、もし曜ちゃんが動いたら私が疑われる」

千歌「曜ちゃんに情報を漏らした犯人だって」


千歌「そうなったら、どうなるのかな」

千歌「どんな報いを受けさせられるのかな」

千歌「怖いよ、想像しただけで」

曜「や、止めてよ、そんなこと――」


千歌「行かせないよ、絶対に」

千歌「曜ちゃんの居ない世界は嫌なの」

千歌「お願いだから私と一緒にいて」

千歌「千歌を、見捨てないで」

438: 2018/07/16(月) 22:51:03.58 ID:w8LuAtmy.net
――某所――


ルビィ「うゅぅ……」


花丸(ルビィちゃん、寝てる)

花丸(柔らかく握られている手にも、全く力が入っていない)

花丸(完全に身を委ねている証拠)

花丸(穏やかな寝顔)

花丸(こんな頼りないマルの横でも、安心してくれているのかな)

439: 2018/07/16(月) 22:51:54.02 ID:w8LuAtmy.net
花丸(鞠莉ちゃんからの直接の連絡が途絶えて、ずいぶんな時間が経った)

花丸(危機が迫っていることは理解している)

花丸(でもマルの力じゃ、どうしようもない)

花丸(絶望的な状況でも、助けてくれる人を信じるしかない)


花丸(鞠莉ちゃん、大丈夫なのかな)

花丸(小原家の人は心配ないと言っていた)

花丸(でもそれが嘘であることぐらい、マルにも簡単に理解できて)

440: 2018/07/16(月) 22:52:49.49 ID:w8LuAtmy.net
花丸(今の状況で、理解できない方がおかしい)

花丸(最近場所を変えたばかりなのに、もう移動を伝えられている)

花丸(これはきっと、居場所が露見してきている証拠)

花丸(ダイヤさんはどんな手を使ってでも、マルとルビィちゃんを探し出そうとしている)


花丸(それでも耐え忍んでいれば大丈夫、見つかることはない)

花丸(そんな風に、必氏に言い聞かせて)

花丸(震えそうな心を抑え込んで)

441: 2018/07/16(月) 22:53:43.55 ID:w8LuAtmy.net
花丸(ルビィちゃんは鋭い子だから、何も聞かなくても周囲の不安を感じ取っている)

花丸(特にマルの感情には敏感に気づくはず)

花丸(それでも彼女は何も言わない)

花丸(マルのことを信じてくれている)

花丸(今みたいに、無防備な自分を晒してくれる)

花丸(その信頼に応えないわけにはいかない)


  ギュッ


ルビィ「……痛いよ、マルちゃん」

442: 2018/07/16(月) 22:54:45.09 ID:w8LuAtmy.net
花丸「あっ、ごめんね」

花丸「起こしちゃった?」

ルビィ「ううん、大丈夫だよ」

ルビィ「そろそろ時間?」

花丸「そういうわけじゃないけど、ちょっとね」

花丸「まだ寝てても大丈夫だよ」

ルビィ「そう?」

花丸「うん」

443: 2018/07/16(月) 22:56:18.54 ID:w8LuAtmy.net
ルビィ「でもせっかくだし、起きてるよ」

ルビィ「寝てたらマルちゃんが一人で寂しくなっちゃうもんね」

花丸「ふふっ、ありがとう」


花丸「ねえ、ルビィちゃん」

ルビィ「なぁに?」

花丸「もしも、もしもの話だけどね」

ルビィ「うん」

花丸「マルが、ルビィちゃんに酷い事をしても、ルビィちゃんはマルの事を好きでいてくれる?」


ルビィ「酷い事、するの?」

花丸「……かも、しれない」

444: 2018/07/16(月) 22:57:19.53 ID:w8LuAtmy.net
ルビィ「マルちゃんなら、いいよ」

ルビィ「きっとそれが、ルビィの為になるんでしょ」

ルビィ「意味もなく、そんなことはしないって、分かってるから」

花丸「……うん」


花丸(選択するなら、もうあまり時間はない)

花丸(これ以上二人で居ることが叶わない、そんな状況になった時)

花丸(二人で愛の象徴として氏を迎える、そのつもりだった)

花丸(ルビィちゃんが否定しない今、それには何の障害もないはず)

446: 2018/07/16(月) 22:58:20.76 ID:w8LuAtmy.net
花丸(でも言い出せない)

花丸(躊躇してしまう、彼女の命を奪うことを)

花丸(例えそれが最良だと考えていても、どうしても)


ルビィ「マルちゃん?」


  ギュッ


ルビィ「どうしたの、大丈夫?」

花丸「うん」

花丸「ただ好きな人を抱きしめて、ぬくもりを感じたかっただけ」

ルビィ「そっか」

447: 2018/07/16(月) 22:59:44.58 ID:w8LuAtmy.net
花丸(そもそも、まだ考えるのは早いよね)

花丸(だって見つかったわけじゃない)

花丸(それが言い訳じゃなくて、冷静な判断――)


  ガタガタッ


花丸「えっ」

ルビィ「な、なにかな」

花丸「きっと、小原家の人だよ」

花丸「時間的に、そろそろ逃げる準備ができたんじゃないかな」

ルビィ「そ、そうだよね」

448: 2018/07/16(月) 23:00:41.11 ID:w8LuAtmy.net
花丸(まだだよね)

花丸(まだ大丈夫な、はずだよね)


  ギィ


花丸「!」

ルビィ「あっ……」



ダイヤ「……やっと見つけましたわ、二人とも」

450: 2018/07/16(月) 23:01:53.07 ID:w8LuAtmy.net
ルビィ「お、お姉ちゃん」

花丸「ど、どうして」


ダイヤ「どうして?」

ダイヤ「簡単なことです」

ダイヤ「小原家の人間を『説得』して聞き出しました」

花丸「説得……」


ダイヤ「黒澤家を舐めない事です」

ダイヤ「世間的に見れば小原には劣っていても、自分の庭で、内浦で負けるわけがありません」

ダイヤ「私が余計な情さえ捨てれば、簡単なことでした」

451: 2018/07/16(月) 23:03:08.87 ID:w8LuAtmy.net
花丸「る、ルビィちゃん、逃げよう!」

ルビィ「ピギッ」

花丸「今ならダイヤさんさえ振り切れば――



果南「おっと、そうはさせないよ」


  ガシッ


ルビィ「果南ちゃん!?」

花丸「い、いつの間に」

452: 2018/07/16(月) 23:04:40.35 ID:w8LuAtmy.net
ダイヤ「果南さん、お疲れ様です」

果南「いやー、簡単だったよ」

ダイヤ「貴女にとっては、そうでしょうね」


花丸「な、なんで」

果南「ごめんね」

果南「マルは嫌いじゃなかったけど、私のうち、黒澤家の助けがないと成り立たないんだよね」

果南「それに、大事な幼馴染の頼みは断れないから」

花丸「そ、そんな」

453: 2018/07/16(月) 23:05:31.45 ID:w8LuAtmy.net
ダイヤ「果南さん、お喋りは結構です」

ダイヤ「早く花丸さんを運び出してください」

果南「はいはい、了解しました」


花丸「は、離してよ!」

果南「ちょっと、暴れても無駄だから抵抗しないでよ」

花丸「離して、離して、お願いだからっ」

果南「それは無理だよ」

454: 2018/07/16(月) 23:08:04.89 ID:w8LuAtmy.net
ルビィ「マルちゃん!」

ダイヤ「ルビィ、貴女はこっちです」

ルビィ「嫌だっ!」

ダイヤ「ルビィ!」


  グッ


ルビィ「お姉ちゃん……」

ダイヤ「何ですか、その反抗的な目は」


  パァン


ルビィ「っ」

455: 2018/07/16(月) 23:09:09.48 ID:w8LuAtmy.net
ダイヤ「甘やかさずに、もっとはっきりと告げるべきでした」

ダイヤ「自分の行為の愚かしさを」

ルビィ「愚かじゃ――」


  パァン


ダイヤ「黙りなさい、今の貴女は異常なのです」

ダイヤ「異常な妹の言葉など聞きたくありません」

ダイヤ「話してないで、早く帰りますよ」

456: 2018/07/16(月) 23:10:50.68 ID:w8LuAtmy.net
花丸「ルビィちゃんに何するの!」

果南「マル」

ルビィ「マルちゃん……」


花丸「嫌だよ、ルビィちゃんとこれでお別れなんて」

花丸「ルビィちゃんのいない世界なんて」

花丸「なんで一緒に居ちゃ駄目なの!」

花丸「世界中の誰よりも、愛しあってるのに!」

花丸「お互いに想いあってるのに!」



花丸「いらないよ!」


花丸「ルビィちゃんと一緒に居られない世界なんて、マルはいらない!」

468: 2018/07/17(火) 20:28:27.69 ID:JS5rhXHf.net
―静岡・某病院―


鞠莉「…………」


 ガチャ


果南「やあ」

鞠莉「果南……」


果南「元気だった?」

鞠莉「これが、元気に見える?」

果南「まあ、見えないね」

469: 2018/07/17(火) 20:29:22.81 ID:JS5rhXHf.net
果南「はい、これお土産」

鞠莉「……干物を渡されても、食べられないんだけど」

果南「きっと頼めば焼いてくれるよ、こんな良い病室に泊まってる上客なら」

鞠莉「それは流石に、遠慮しておくわ」


果南「ずいぶんと、偉い目に遭ったね」

鞠莉「……ええ、そうね」

果南「入院かぁ、大変だねぇ」

471: 2018/07/17(火) 20:30:40.82 ID:JS5rhXHf.net
鞠莉「証拠も出ない、犯人も見つからない」

鞠莉「自作自演を疑われるぐらい、何も出てこない」

鞠莉「怖いわね、田舎の権力者は」


果南「普段は仲良しだから、私や鞠莉は実感することが少ないけどね」

鞠莉「本当にね」

鞠莉「今回は身をもって思い知らされたわ」

果南「内浦だとみんな、黒澤の味方だからね」

果南「黒澤家のおかげで生活できている人が、大半なわけだし」


鞠莉「果南も、ダイヤの家に助けられてるのよね」

果南「うん、そうだね」

果南「うちはあらゆる意味で、黒澤家がいないと成り立たない商売だから」

472: 2018/07/17(火) 20:31:51.76 ID:JS5rhXHf.net
鞠莉「二人を捕まえるのに、果南も協力したのよね」

果南「うん、そうだね」

鞠莉「今回の事、全部知ってるの?」

果南「まあね」

果南「そうじゃなきゃ私もダイヤに協力しないよ」


鞠莉「信頼されてるのね、ずいぶん」

果南「長い付き合いだからね、私とダイヤも」

鞠莉「妬けちゃうわね」

鞠莉「私には、ずいぶんと情熱的な接し方だったのに」


果南「まあダイヤからすれば、遠慮した方なんじゃないかな」

果南「これでも一応、入院ぐらいで済んでるわけだし」

鞠莉「そうかも、しれないわね」

473: 2018/07/17(火) 20:33:16.11 ID:JS5rhXHf.net
鞠莉「正直は侮ってた」

鞠莉「口では厳しいことを言いながらも、私の中のダイヤはこんなことをする子には見えなかったから」

鞠莉「ここまで強引な手段を使ってくるなんて、想像もできなくて」


鞠莉「襲われた時のダイヤの顔、思い出すとゾッとするわ」

鞠莉「あんな顔ができたなんて、私は知らなかった」


果南「それだけルビィの事が、周りのみんなの事が大切なんだよ」

果南「一人で必氏に考えて、これが最良だと考えたから、ここまでの事をしたんだ」

果南「鞠莉に対しても、障害が残るレベルの怪我を負わせるようなことはしなかったでしょ」

鞠莉「……そうね」

475: 2018/07/17(火) 20:35:05.74 ID:JS5rhXHf.net
果南「相談ぐらい、してほしかったけどね」

果南「そうすれば、もう少し他の考えも浮かんだかもしれないから」

鞠莉「あの子は信じられないぐらい頑固だから、何を言われても自分で決めたことを曲げたりしないわよ」

果南「ははっ、そうかもね」


鞠莉「本当に、どんなことをしても無駄だったのかもしれないわね」

鞠莉「例え海外へ二人を逃がしても、あの子は追いかけてきた気さえする」

鞠莉「結局、私は場をかき回し、無駄に混乱させて、みんなを傷つけただけなのかもしれない」

果南「……かもね」

476: 2018/07/17(火) 20:36:11.48 ID:JS5rhXHf.net
果南「ねえ鞠莉」

鞠莉「なにかしら」

果南「ダイヤから聞いたよ」

鞠莉「なにを?」


果南「私のこと、好きなんでしょ」

鞠莉「っ」


鞠莉「……あの石頭、本当に恐ろしいわね」

鞠莉「『相応の報い』は怪我じゃなくて、こっちの方だったのかしら」

477: 2018/07/17(火) 20:37:11.01 ID:JS5rhXHf.net
果南「その様子だと、間違ってはないみたいだね」


鞠莉「ええ、私は果南が好きよ」

鞠莉「昔からずっと、果南が好きだった」


果南「そっか、ありがとう」

果南「でもごめんね、私は鞠莉の気持ちを受け入れられない」


鞠莉「うん、知ってる」

鞠莉「だから今まで言わなかったんだもの」

鞠莉「みんな薄々感づいてはいたみたいだけどね」

478: 2018/07/17(火) 20:38:27.77 ID:JS5rhXHf.net
果南「大丈夫、告白されたからって、関係は変わらないよ」

果南「私だって何となく気づいた状態で、一緒にいたわけだし」

鞠莉「それなら、幸いね」


果南「二人とはいつまでも友達でいたい」

果南「私は本気でそう思ってる」

果南「鞠莉はもちろん、ダイヤとも」

果南「三人でずっと、大切な幼馴染として、一緒に」


鞠莉「一緒に、ね……」

479: 2018/07/17(火) 20:39:03.55 ID:JS5rhXHf.net
――渡辺家――


曜「退屈、だね」

善子「そうね」

曜「練習、なくなってからどれぐらいの時間が経ったのかな」

善子「もう数えてないわよ、昔のこと過ぎて」

曜「善子ちゃんがうちに来るようになってからも、それぐらいが経つんだね」

善子「ええ」

480: 2018/07/17(火) 20:39:45.83 ID:JS5rhXHf.net
曜「まだ梨子ちゃんとは仲直りしてないの」

善子「……仕方ないでしょ」

善子「それに、曜さんだって千歌さんからの返事、保留にしたままじゃない」

曜「まあ、そうなんだけどね」


善子「何やってるのかしらね、私たち」

善子「こうして余った者同士集まって、ぼんやりと一緒に過ごして」

善子「何もしない、何もできない、そんな日々を送って」

481: 2018/07/17(火) 20:40:50.37 ID:JS5rhXHf.net
善子「今日も、ルビィは一言も言葉は発していなかったわ」

善子「基本的にうつむいて、時々何もない宙に視線をさまよわせて」

善子「私が話しかけてもずっと空返事しか言わないの」

善子「無表情で、感情をなくした人形みたいになって」

善子「周囲のみんなにも、腫れ物扱いされて」


善子「私は二人の友達だと思っていた」

善子「ダイヤに何を頼まれても、二人の味方でいた」

善子「いざとなったら、身を投げ出してでも助けるつもりだった」

善子「それなのに、結局何の力にもなれずに……」

482: 2018/07/17(火) 20:42:46.95 ID:JS5rhXHf.net
曜「あんまり、自分を責めちゃ駄目だよ」

曜「私もね、偉そうに応援するなんて言って、このざま」

曜「千歌ちゃんにすがりつかれたら、何もできなかった」

曜「助けようとしたのは、口だけで」


曜「実際、動いても無駄だったかもとは思うけどね」

曜「あの鞠莉ちゃんですら、あんなことになったんだ」

曜「私なんかじゃ、きっと何もできない……」

善子「曜さん……」

483: 2018/07/17(火) 20:46:44.35 ID:JS5rhXHf.net
曜「……そういえば鞠莉ちゃん、最近退院したらしいよ」

善子「それは朗報ね」


善子「元気なのかしら」

曜「どうだろう」

曜「鞠莉ちゃん、責任を感じちゃってるだろうし」

善子「そうよね……」

曜「心配だから、後で様子を見に会いに行こうか」

善子「そうね――」

484: 2018/07/17(火) 20:47:46.56 ID:JS5rhXHf.net
鞠莉「その必要はありませーん」


善子「わっ」

曜「ま、鞠莉ちゃん!?」


鞠莉「ハァイ、久しぶりね」

曜「い、いつの間に」

鞠莉「ちょうど窓が空いてたから、ちょちょいとね」

善子「なによそれ、滅茶苦茶じゃない」

曜「あ、危ないなぁ」

485: 2018/07/17(火) 20:48:59.59 ID:JS5rhXHf.net
曜「というか、身体の方はいいの?」

鞠莉「おかげさまでね」

鞠莉「こんな派手なことができる程度には回復したわ」


曜「駄目だよ、病み上がりで無理しちゃ」

善子「そうよ、また入院なんてことになりかねないわ」

鞠莉「むぅ、私としては粋なサプライズのつもりだったんだけど」

鞠莉「可愛い後輩たちに言われると、流石に反省しちゃうわね」

486: 2018/07/17(火) 20:50:30.73 ID:JS5rhXHf.net
曜「でもどうして突然?」

鞠莉「退院したこと、知り合いに直接報告しようと思ってね」

鞠莉「みんなの家を驚かせながら回ろうってわけよ」

曜「な、なるほど」


鞠莉「まあ、回るのはこれからだけどね」

鞠莉「沼津組の曜と善子が順番的に一番よ」

曜「あー、地理的に」

鞠莉「まあそうね」

鞠莉「理由はそれだけじゃないけど」

曜「へっ」

487: 2018/07/17(火) 20:51:37.08 ID:JS5rhXHf.net
鞠莉「ねえ、二人とも」

曜「鞠莉ちゃん?」

善子「な、なによ、急に真面目な雰囲気になって」

鞠莉「二人は、ルビィと花丸の味方だったのよね」

曜「……それは」


鞠莉「行動できたかどうかは重要じゃないわ」

鞠莉「事情は何となく察しているから」

鞠莉「それよりも助けたいという意志があったか、それが知りたいの」

488: 2018/07/17(火) 20:52:19.12 ID:JS5rhXHf.net
曜「それは、あったよ」

鞠莉「善子は」

善子「もちろん、私だって」


鞠莉「……そうよね」

鞠莉「二人は人一倍繊細で敏感な、やさしい子」

鞠莉「あの状況で、二人の味方をしないわけがない」


鞠莉「だからこそ、後悔してるのよね」

鞠莉「何もしなかったことを」

鞠莉「何もできなかったことを」

489: 2018/07/17(火) 20:53:26.97 ID:JS5rhXHf.net
曜「……うん」

善子「……そうね」


鞠莉「だからこそ、私は貴女たち二人に頼みたいことがあるの」

曜「頼みたいこと?」


鞠莉「二人とも、ルビィと花丸を助けたくない?」


「「!」」


鞠莉「もしもその意思があるなら、明日の夜に、私の家へ来て」

鞠莉「そこで詳しく話すわ」

490: 2018/07/17(火) 20:54:16.50 ID:JS5rhXHf.net
曜「それって、どういう――」

鞠莉「あら、もうこんな時間」

鞠莉「早く行かないと全員の家を回る時間が無くなっちゃうわ」

曜「えっ」


鞠莉「じゃあね二人とも、チャオ~」



「「…………」」

曜「また、窓から出ていったね」

善子「凄いことするわね、ホント」

491: 2018/07/17(火) 20:55:01.43 ID:JS5rhXHf.net
曜「どうする、明日の夜」

善子「行くしかないでしょ」


曜「でも、行っていいのかな」

曜「結局私たちは、自分の答えを出せていない」

曜「鞠莉ちゃんが何かを提案してくれても、受け入れられるか――」


善子「いいから行きましょう」

曜「善子ちゃん……」

善子「そうすれば、答えも出るかもしれないわ」

492: 2018/07/17(火) 20:55:50.39 ID:JS5rhXHf.net
曜「……そうか、そうだね」

曜「考えるのも大事だけど、まずは動いてみないとだもんね」


善子「そうよ」

善子「何も考えずに動く、それでこそ曜さんらしいわ」

善子「流石脳筋ヨ―ソローね」


曜「あっ、言ったなぁ」

曜「善子ちゃんだって脳筋じゃないけど、同じようなもんじゃん」

善子「う、うるさいわね」

497: 2018/07/17(火) 22:25:53.35 ID:JS5rhXHf.net
――黒澤家――


ダイヤ「ルビィ、朝ですよ」

ルビィ「うん」

ダイヤ「早く起きないと、遅刻しますわよ」

ルビィ「うん」

ダイヤ「やれやれ、布団を取ってしまいますよ」

ルビィ「うん」

498: 2018/07/17(火) 22:26:29.52 ID:JS5rhXHf.net
ダイヤ「ただでさえ欠席が多いのです。これ以上は遅刻さえ好ましくないのですよ」

ルビィ「うん」

ダイヤ「今日は体育もあるのでしょう。準備はできているのですか」

ルビィ「うん」

ダイヤ「朝食の準備はできています。顔を洗って早く来なさいね」

ルビィ「うん」

ダイヤ「ルビィ」

ルビィ「うん」

499: 2018/07/17(火) 22:27:13.77 ID:JS5rhXHf.net
ダイヤ「…………」


ダイヤ(強引に花丸さんと引き離し、家へ連れ戻して以来、ルビィはずっと上の空)

ダイヤ(私は、間違っていたのでしょうか)

ダイヤ(もっと上手く事を運べる手段が、あったのではないか)

ダイヤ(そんな事を考えずにはいられない日々)


ダイヤ(でもきっと、時間が解決してくれるはずです)

ダイヤ(いつかルビィも理解してくれるでしょう、私が正しいことを)

ダイヤ(生きるためには、私が与えた道しかないことを)

500: 2018/07/17(火) 22:27:57.38 ID:JS5rhXHf.net
ダイヤ(しかしその時の為にも、現状をどうにかしなければ――)


  ピーンポーン


ダイヤ「あら、朝から来客?」

ダイヤ(小原家の……)

ダイヤ(いや、それなら家の者が通すわけがないと考えると、どなたが)


 ピーンポーン


ダイヤ(とにかく、出ないことには)

ダイヤ「はい、どちらさま――」

501: 2018/07/17(火) 22:28:40.31 ID:JS5rhXHf.net
曜「おはヨ―ソロー!」

ダイヤ「曜さん?」

善子「私もいるわよ!」

ダイヤ「善子さんまで」


ダイヤ「いったい、どうしたのですか」

曜「ルビィちゃんを迎えに来ました!」

ダイヤ「ルビィを?」

善子「ええ、そうよ」

502: 2018/07/17(火) 22:29:40.09 ID:JS5rhXHf.net
ダイヤ「ありがたいですが、なぜ急に」

善子「前からルビィの為に何かできないかって曜さんと話してたのよ」

曜「それで、まずは学校に来られるようにと今日から毎日送り迎えをしようってことになって」

ダイヤ「はぁ……」


ダイヤ(この二人、信用していいのでしょうか)

ダイヤ(性格や人間関係的には、私の行動には反対するタイプのはず)

ダイヤ(特に善子さんは、一度私に反抗している)

503: 2018/07/17(火) 22:30:23.39 ID:JS5rhXHf.net
ダイヤ(しかし、それが以外の状況で特に何もしてこなかった)

ダイヤ(千歌さんと梨子さんに説得されて、考えを改めたという方が妥当か)

ダイヤ(この行動も、常にルビィを気にかけていた二人だからこそ)

ダイヤ(純粋にルビィを心配しての行動と、考えていいのでしょう)


ダイヤ「そうですか、それはありがとうございます」

ダイヤ「しかし、ルビィはまだ寝床を出られていないのですよ」

善子「あら、そうなの」

曜「それなら私たちが起こしに行きますよ」

504: 2018/07/17(火) 22:30:58.17 ID:JS5rhXHf.net
ダイヤ「いいのですか」

曜「はい、その為に来たようなものですから」

ダイヤ「それなら、ぜひお願いしたいですが」


曜「了解であります!」

善子「じゃあお邪魔するわよ」

善子「ルビィの部屋はこっちよね」

ダイヤ「ええ」

505: 2018/07/17(火) 22:31:56.21 ID:JS5rhXHf.net
善子「ルビィ、いるかしら」

ルビィ「うん」

善子「最近ちゃんと学校に来ないから、迎えに来たわよ」

ルビィ「うん」

善子「ほら、一緒に学校行きましょう」

ルビィ「うん」

善子「もぅ、聞いてるの?」

ルビィ「うん」

506: 2018/07/17(火) 22:32:47.64 ID:JS5rhXHf.net
善子「駄目ね……」

ダイヤ「私が話しかけても、ずっとこんな感じなのですよ」

曜「うーん、これは重症みたいだね」

善子「曜さん、何か良い案はあるかしら」

曜「そうねだぇ……」


ダイヤ「無理しなくてもいいのですよ」

ダイヤ「気持ちだけで充分ですから」

507: 2018/07/17(火) 22:33:26.25 ID:JS5rhXHf.net
曜「いやいや、でも一ついい案が浮かびましたよ」

ダイヤ「案?」

曜「ダイヤさん、ルビィちゃんの制服と鞄はどれですか」

ダイヤ「一応、これですが」

曜「善子ちゃん、悪いけどそれを両方持ってくれる?」

善子「ええ、分かったわ」


ダイヤ「何をするのですか?」

曜「まあ、見ててくださいよ」

508: 2018/07/17(火) 22:34:06.64 ID:JS5rhXHf.net
曜「ルビィちゃん、おはヨ―ソロー!」

ルビィ「うん」

曜「さあさあ、曜ちゃん先輩と学校へ行こうじゃないか!」

ルビィ「うん」

曜「えっ、嫌なの」

ルビィ「うん」

曜「そっかぁ、それなら――こうだ!」


  ひょい


ルビィ「ピギッ!?」

509: 2018/07/17(火) 22:34:56.10 ID:JS5rhXHf.net
善子「おぉ、流石曜さん」

善子「いくら軽いとはいえ、軽々ルビィをお姫様抱っこするなんて」


曜「じゃあダイヤさん、私たちはこのまま学校へ行きますね!」

ルビィ「なっ」

ダイヤ「はい!?」

曜「さあ行くよ、善子ちゃん!」

善子「ふふっ、了解よ」

510: 2018/07/17(火) 22:35:40.36 ID:JS5rhXHf.net
曜「全速前進、ヨ―ソロー!」

善子「あはは!」

ルビィ「ぴ、ピギィ――――――――!」


ダイヤ「…………なんだったのでしょうか、あの二人は」


ダイヤ(つい勢いに圧倒されて、何もできませんでした)

ダイヤ(一応、家の者はちゃんと追いかけたようですね)

ダイヤ(やや心配ですが、連れ去られたりする心配ないでしょう)

512: 2018/07/17(火) 22:38:05.31 ID:JS5rhXHf.net

ダイヤ(二人はこれからも、今日のようにルビィを迎えに来ると思うと、やや頭痛の種ですね)

ダイヤ(まあ監視をつけておけば、最悪の事態は避けられるはず)

ダイヤ(今は余計なことを考えるより、ルビィを優先するべき――)


ダイヤ(現に、今日は久しぶりに『うん』以外の言葉を話しました)

ダイヤ(あの泣き声を、言葉と評していいのかやや疑問は残りますが)

ダイヤ(少なくとも、私よりは二人の方がルビィを良い方向へ導いてくれるはずです)

ダイヤ(素直に信頼して、彼女たちに委ねてみましょうか)


ダイヤ(さて、私も急いで準備をして追いかけなければいけませんね)

ダイヤ(自分が遅刻しては示しがつきません)

ダイヤ(今日から復学する鞠莉さんにも何をされるかと思うとやや憂鬱ですが、きちんと謝らなければなりませんもの)

521: 2018/07/18(水) 17:52:11.85 ID:gxD6UBcA.net
――  ――


花丸「ルビィ、ちゃん」

花丸「ルビィちゃん、どこにいるの」


ルビィ?【マルちゃーん】


花丸「あはは、そこにいたんだね」

花丸「駄目だよ、一緒にいないと危ないから」

花丸「ほら、手を繋いで」

522: 2018/07/18(水) 17:52:50.62 ID:gxD6UBcA.net
果南「おーい、マル」

花丸「ルビィちゃん?」

果南「やれやれ、また変なものが見えてる」

果南「ルビィじゃないよ、果南だよ」


花丸「か、なん――」

花丸「うっ、うぇぇ」


 ビチャビチャ


果南「うわぁ、汚いなぁ」

523: 2018/07/18(水) 17:53:34.41 ID:gxD6UBcA.net
果南「そんなに怖がらなくてもいいのに」

果南「確かに私は悪いことをしたとは思うけどさ」

果南「わざわざこうして、内浦から離れた場所まで定期的に面倒を見に来てるんだよ」

果南「なのにそんな反応をされたら、結構ショックなんだけど」


花丸「マルは、来てほしいなんて頼んでない」

花丸「むしろ来ないでほしいと思ってる」

果南「仕方ないじゃん、監視も兼ねてなんだから」

果南「他に人もいるし大丈夫だとは思うけど、念のためのさ」

524: 2018/07/18(水) 17:54:32.71 ID:gxD6UBcA.net
花丸「……流石に諦めてるよ、もうここから逃げることなんて」

果南「いやいや、そっちじゃなくて」

花丸「じゃなくて?」


果南「確かに、一応逃げないための監視も兼ねてるけどさ」

果南「メインは、マルが馬鹿なことを、自ら氏を選ばないようにするための監視だよ」

花丸「っ」

果南「あれ、見透かされていないとでも思ってた?」

525: 2018/07/18(水) 17:55:34.72 ID:gxD6UBcA.net
果南「この部屋、全く物がないでしょ」

果南「小さな文庫本が数冊あるだけ、その手の行為に利用できる物は一切置いてないの」

花丸「……何で、そんなことを」

花丸「マルがいなくなった方が、都合がいいはずだよね」


果南「さぁ」

果南「指示してるのはダイヤだからね、何を考えているのかまでは」

果南「でもたぶん、ダイヤはマルも助けたいんだよ」

果南「何度も言ってたから、大切な後輩だって」

526: 2018/07/18(水) 17:56:34.09 ID:gxD6UBcA.net
花丸「……だったら、ルビィちゃんを連れてきてよ」

花丸「それかもう、頃してよ」

花丸「大切だっていうなら、マルの望みを叶えてよ」

果南「無茶言うなぁ」

果南「どっちも無理に決まってるでしょ」


果南「もういい加減、ルビィのことは諦めて切り替えなよ」

果南「内浦に居られなくなった代わりに、手厚く面倒を見てあげてるんだから」

果南「普通に生きれば、標準よりいい暮らしができるんだよ」

527: 2018/07/18(水) 17:57:25.28 ID:gxD6UBcA.net
花丸「忘れるなんて無理だよっ」

花丸「ルビィちゃんは唯一無二の存在なの」

花丸「なによりも大切で、マルの全てで」

花丸「少し離れ離れになっただけで、寂しくなるぐらい好きで」


花丸「ルビィちゃんも同じぐらいマルの事を愛してくれた」

花丸「だからずっと一緒にいようと誓い合った」

花丸「どんなことがあっても、離れないはずだったのに」

528: 2018/07/18(水) 18:00:12.31 ID:gxD6UBcA.net
花丸「もう嫌だよ」

花丸「運命の人と出会った後、その人と引き離されて、一生存在を忘れられずに生きていく」

花丸「辛すぎるよ、耐えられないよ」

花丸「せめて声を聞かせてよ」

花丸「写真を見せてよ」

花丸「ルビィちゃんの存在を、マルから排除しようとしないでよ」

花丸「なんで、なんでみんな分かってくれないの」



果南「……はぁ、面倒くさいなぁ」

529: 2018/07/18(水) 18:01:04.11 ID:gxD6UBcA.net
花丸「面倒くさいって、そんな」

果南「もういいよ、グダグダ言われるのも堪らない」

果南「それなら、私がマルを逃がしてあげるよ」

花丸「えっ」


果南「正直さ、相手をするのも嫌になってきたんだよね」

果南「いつもうじうじと、泣き言ばかり言って」

果南「一緒にいるだけでこっちまで暗い気分になってくる」

果南「やってられないよ、本当に」

530: 2018/07/18(水) 18:02:19.20 ID:gxD6UBcA.net
花丸「ちょっと待って、今の本当に――」

果南「まあたぶん、マルが知らないような遠い場所にだけど」

果南「ルビィに近い場所だと、ダイヤに怒られそうだから」

果南「黒澤家を怒らせたら、私も色々ヤバそうだしねぇ」


果南「気が向いたときに、どこかに放り出すよ」

果南「それであとは自由にすればいい」

果南「私は関係ない、適当に小原の所為にでもすれば、ダイヤも納得してくれるでしょう」

花丸「果南ちゃん……」



果南「じゃあ私はそろそろ帰るよ」

果南「またね、マル」

花丸「……うん」

531: 2018/07/18(水) 18:03:06.85 ID:gxD6UBcA.net
―桜内家―


梨子「そっか、曜ちゃんにはフラれちゃったんだ」

千歌「うん……」

梨子「告白する前は、ひょっとしたらとは思ったんだけどね」

梨子「曜ちゃんは千歌ちゃんが大好きだから」

千歌「あはは、いつも反対してた割にそんなこと考えてたんだね」

梨子「別に、現実的な可能性の話よ」

532: 2018/07/18(水) 18:03:53.26 ID:gxD6UBcA.net
千歌「でも自分でもね、肯定してくれるかもと思ってた」

千歌「曜ちゃんが返事を悩んでいたのを見て、もしかしたらって」


梨子「悩んでいたのは、断り方でしょ」

梨子「あんな最悪のタイミングで告白して、受け入れてもらえるわけない」

千歌「あはは、そうなんだけどね」

千歌「あそこで止めないと、曜ちゃんまで鞠莉ちゃんみたいな目に遭うかもしれなかった」

千歌「そう考えたら、もう止まらなくなってた」

533: 2018/07/18(水) 18:04:50.55 ID:gxD6UBcA.net
梨子「本当に変な人ね、千歌ちゃんは」

千歌「そうかな」

梨子「ええ、私には理解できない」

千歌「そっか」

千歌「私自身は、酷い人間だとは思ってたけど、変な人ね」


梨子「実際、意味はなかっただろうから気にすることはないわよ」

梨子「少なくとも、二人に対して千歌ちゃんが責任を感じることはないと思うわ」

千歌「まあ、そうなのかもね」

534: 2018/07/18(水) 18:07:19.43 ID:gxD6UBcA.net
千歌「でもわからないよ」

千歌「曜ちゃんは何でもできちゃう子だから、ひょっとしたら」


梨子「……その過程は考えない方がいいわよ」

梨子「絶対に無理だった」

梨子「そんな風に考えないと、それは一生消えない傷になるかもしれない」

梨子「千歌ちゃんの考えていることは、恋による盲目的な過程」

梨子「私に言わせれば、そんな感じのものよ」

千歌「うん、ありがとう梨子ちゃん」

535: 2018/07/18(水) 18:08:31.09 ID:gxD6UBcA.net
千歌「でもね、目を逸らしちゃいけないと思うの」

千歌「私の行為が招いたかもしれないという事実からは」


梨子「……千歌ちゃんは、強いわね」

千歌「そんなこと、ないよ」

梨子「いいえ、強いわよ」

梨子「自分への言い訳を、必氏に頭の中で組み立てている私とは大違い」

千歌「それは単純に頭の良さの違いだよ」

千歌「千歌は馬鹿だから、梨子ちゃんみたいな考え方ができないだけ」

536: 2018/07/18(水) 18:09:47.98 ID:gxD6UBcA.net
千歌「これから二人は、どうなるのかな」

梨子「……さあね」

千歌「私に、気を遣ってる?」

梨子「そんなことは――

千歌「いいよ、正直に言って」

千歌「その答えには、何となく気づいているから」


梨子「……許されない恋をした者が愛を成就させる方法は、一つしかない」

梨子「私が東京で愛した人としたように」

梨子「花丸ちゃんは、早い段階でそれに気づいたみたいだけどね」

537: 2018/07/18(水) 18:10:26.04 ID:gxD6UBcA.net
千歌「……だからこそ、止めたかったんだよね」

梨子「そうね」


梨子「そもそも、その方法さえも上手くいくとは限らない」

梨子「片方だけが取り残されてしまうこともある、不確実な方法」

梨子「実際、上手くいかなかったから私もここに居るわけだしね」

千歌「……」

梨子「千歌ちゃん?」

538: 2018/07/18(水) 18:11:35.22 ID:gxD6UBcA.net
千歌「ごめんね、また思い出させちゃって」

梨子「いいのよ、これは自分自身への戒めでもあるから」


千歌「二人は、もうどうしようもないのかな」

梨子「そうね」

梨子「愛を成就される方法すら選べない」

梨子「お互いの事を想いながら、葛藤して、苦しんで、ただの生き地獄を味わい続ける」

梨子「すぐに相手の事を忘れられる薄情さがあれば、別だったかもしれないけどね」

千歌「愛の深さ故に、か」

539: 2018/07/18(水) 18:12:35.07 ID:gxD6UBcA.net
梨子「だから千歌ちゃんも止めておきなさい」

梨子「深すぎる愛はただでさえ上手くいきにくい」

梨子「それが普通の形でなければなおさらよ」


梨子「ちょうどフラれたタイミングで、諦めた方がいい」

梨子「元々、私と違って女の子が好きというより、曜ちゃんが好きなだけでしょ」

梨子「千歌ちゃんみたいに可愛いし、人当たりもいい子はモテるわよ」

梨子「きっとすぐに素敵な人が見つかるはず」

梨子「だから、ね」

540: 2018/07/18(水) 18:13:45.93 ID:gxD6UBcA.net
千歌「そうだね」

千歌「確かに私は曜ちゃん以外の女の子を好きにならないかもしれない」

千歌「男の人も同様かもしれないけど、同じ条件なら普通の道を目指すべき」

千歌「それは、分かるよ」


梨子「そうよ」

梨子「そもそも恋が成就しても、まともに生きていけるわけがない」

梨子「私や花丸ちゃんたちみたいにならなくても、苦難の連続が待っているだけ」

梨子「そもそも曜ちゃんは考えを簡単に変えるような子じゃない」

梨子「素直に諦めて、幼馴染の親友として生きて、おばあちゃんになったら告白の話は若気の至りと笑い飛ばして」

梨子「そんな風に生きるのが、一番幸せなのよ」

541: 2018/07/18(水) 18:14:30.03 ID:gxD6UBcA.net
千歌「うん、ありがとう」

千歌「梨子ちゃんが千歌の為に真剣に言ってくれてるの、よく分かるよ」

梨子「なら――


千歌「でもね、全てがそうなるとは言えないでしょ」

千歌「梨子ちゃんのは、自分の経験に基づいた話」

千歌「確かにそれが一つの事実であることは間違いない」

千歌「だけど、世の中にはもっと違うケースもあるかもしれない」

542: 2018/07/18(水) 18:21:20.18 ID:gxD6UBcA.net
梨子「千歌ちゃんは、まだ恋を諦めないの」

千歌「うん」

梨子「私がこんなに、現実の話をしてるのに」

梨子「実体験まで語っているのに」

梨子「千歌ちゃん自身だって、それが間違っていると分かっているはずなのに」


千歌「だって、それぐらい曜ちゃんの事が好きだから」

千歌「傍にいれば、いつかこの想いは叶うと信じて」

千歌「幸せな未来があると想い続けて、一緒に居続けるの」

543: 2018/07/18(水) 18:22:10.12 ID:gxD6UBcA.net
梨子「……変じゃなくて、馬鹿な人の方が正しかったかしら」

千歌「うん、さっき自分でも言ったじゃん」

千歌「千歌は馬鹿だって」


梨子「まあ、そこまで意志が固いなら私は止めないわよ」

梨子「勝手にフラれて絶望するといいわ」

千歌「フラれたら慰めてくれる?」

梨子「親友として、最低限はね」

千歌「ふふっ、ありがとう」

544: 2018/07/18(水) 18:23:29.24 ID:gxD6UBcA.net
千歌「でもね、私は梨子ちゃんにも諦めないでほしい」

千歌「『私たち』にはまだ、希望がある」

千歌「今は相手にその気がなくても、いつか気が変わるかもしれない」

千歌「別の恋をするならともかく、相手のことを想い続けるなら、諦めちゃ駄目だよ」

千歌「今、手元にある希望を捨てるのは、あの子たちにも失礼だと、私は思う」


梨子「……そうね」

梨子「きっと私の考えは変わらない」

梨子「でも一応、頭の片隅には入れておくわ、その言葉」


千歌「うん」

千歌「今はそれで、十分だよ」

549: 2018/07/18(水) 21:00:13.35 ID:gxD6UBcA.net
――黒澤家――


曜「こんにちは~」

ダイヤ「あら二人とも、いらっしゃい」

善子「ふふっ、ヨハネ降臨!」

ダイヤ「善子さんは今日も元気ですね」

善子「ヨハネよ!」

550: 2018/07/18(水) 21:00:54.35 ID:gxD6UBcA.net
曜「今日も遊びに来ましたよ」

ダイヤ「すみませんわざわざ、ルビィの為に」

曜「これぐらいしかできることはありませんから」

善子「親友の為なら当然でしょ」


ダイヤ「……本当に感謝してますよ」

ダイヤ「おかげさまでルビィも以前に比べてずいぶんと元気になりました」

曜「いやいや、まだまだですよ」

551: 2018/07/18(水) 21:01:54.95 ID:gxD6UBcA.net
善子「それにしても今日は人が少ないのね」

ダイヤ「両親は所用で、家の者も色々あって出払っていますの」

ダイヤ「ちょうど良かったかもしれませんがね」

ダイヤ「せっかく友人が遊びに来ているのに、家の者がうろついているのも野暮でしょう」

善子「確かに、それはそうかもしれないわね」

曜「善子ちゃん、警備の人とか怖がってたもんね~」

善子「う、うっさい」

552: 2018/07/18(水) 21:03:46.90 ID:gxD6UBcA.net
ダイヤ(楽しそうにじゃれ合う二人)

ダイヤ(彼女たちは、私には無い力を持っている)

ダイヤ(私では絶対に取り戻せなかったルビィの心を徐々に取り戻す力を)


ダイヤ(退院後、鞠莉さんにはどんな事をされても仕方ないと思っていた)

ダイヤ(それなのに平手一回でで手打ちにしてくださって)

ダイヤ(皆がとても、心が広い)

ダイヤ(寛容すぎて、どこか違和感を覚えるぐらい)


ダイヤ(いや、考えすぎかもしれません)

ダイヤ(ここまで尽くしてくれているのです、あまり疑ってかかるのも失礼でしょう)

553: 2018/07/18(水) 21:05:36.71 ID:gxD6UBcA.net
  ※


曜「やあやあ、こんにちヨ―ソロー!」

ルビィ「……また来たの、二人とも」

善子「ぐっ」

曜「もぅ、そんな煙たがらないでよ」

曜「流石にお姫様抱っこ登校は悪かったと思うけどさ」

554: 2018/07/18(水) 21:06:34.40 ID:gxD6UBcA.net
ルビィ「確かにあれは恥ずかしかったですけど」

曜「だよねぇ」

ルビィ「でも、関係ないです」

ルビィ「そもそもルビィは曜ちゃんや善子ちゃんと話したくないんです」

曜「そんなこと言わないでよ、つれないなぁ」

ルビィ「もう放っておいてください」

ルビィ「ルビィは二人に会うことを望んでいません」

曜「うーん、そこまで煙たがれると……」

555: 2018/07/18(水) 21:07:29.20 ID:gxD6UBcA.net
善子「大丈夫よ曜さん、ルビィは照れてるだけだから」

ルビィ「へっ」

善子「曜さんが来ることを本当は喜んではいるのよ」

善子「その証拠に、こうして普通に話すようになってるわけだし」

ルビィ「ち、違うよ。そうしないと前みたいに無理やり――」


曜「あー、なるほどね、照れ隠しか」

ルビィ「ち、ちがっ」

曜「もー、可愛い後輩ちゃんだなぁ」

556: 2018/07/18(水) 21:08:32.00 ID:gxD6UBcA.net
ルビィ「ち、違うもん!」

善子「おっと、怒ったわ」

ルビィ「もぅ、曜ちゃんと善子ちゃんなんて知らない」


善子「ありゃ、拗ねちゃった」

曜「ルビィちゃん、機嫌直してよ」

ルビィ「嫌だ、絶対」

曜「困ったなぁ、それなら――



曜「私が、花丸ちゃんのいる場所まで連れて行ってあげるって言ったらどうする」

ルビィ「えっ?」

557: 2018/07/18(水) 21:09:22.76 ID:gxD6UBcA.net
ルビィ「それって、どういう――


 ガラッ


ダイヤ「三人とも、そろそろおやつにでも――


曜「善子ちゃん!」

善子「了解!」

ダイヤ「へっ」


  ガシッ


ダイヤ「な、なにをするのですか!?」

善子「なにって、貴女を抑え込んでるのよ」

558: 2018/07/18(水) 21:10:21.43 ID:gxD6UBcA.net
曜「ルビィちゃん、行くよ!」

ルビィ「ふぇ、またお姫様抱っこで――」

曜「善子ちゃん、後任せた」

善子「ええ!」


ダイヤ「よ、善子さん、離しなさい!」

ダイヤ「こんなことをして、ただでは済みませんよ!」

善子「無理よ、私も曜さんも鞠莉さんに脅されてるの」

善子「家族や大切な人の命がかかってるから、絶対に無理」

ダイヤ「ま、鞠莉さんはまだ――――」

559: 2018/07/18(水) 21:11:07.70 ID:gxD6UBcA.net
ルビィ「ど、どこに行くの」

曜「だから、花丸ちゃんのところ!」

ルビィ「む、無理だよ、捕まっちゃう」

ルビィ「このまま走ってたら、絶対誰かに――」


曜「大丈夫、ちゃんと考えてあるから」

曜「すぐに内浦から出られる方法を」

ルビィ「で、出られる方法?」

曜「うん――これだよ!」

560: 2018/07/18(水) 21:11:51.36 ID:gxD6UBcA.net
ルビィ「ば、バイク!?」


曜「早くヘルメット被って!」

ルビィ「免許持ってるんですか!?」

曜「最近取ったの」

曜「本当はまだ2人乗りは駄目なんだけど、今は緊急時だから」

曜「今日は警備が薄いから、これがあれば逃げ切れるはず」

ルビィ「す、凄い」

曜「被れたら後ろ乗って」


 ブロロッ


                          .

561: 2018/07/18(水) 21:12:35.93 ID:gxD6UBcA.net
曜「色々聞きたいことはあるかもだけど、今は我慢して」

曜「ちょっと飛ばさないといけないかもしれないから」

ルビィ「わ、分かりました」

曜「ちゃんと捕まっててね!」

ルビィ「は、はい!」


曜(よし、ここまでは計画通り)

曜(ちゃんと言われた通りに実行できてる――

562: 2018/07/18(水) 21:13:28.03 ID:gxD6UBcA.net
  ※


―小原家―


鞠莉「よく来てくれたわね、二人とも」

曜「来ないと思ってたの?」

鞠莉「いえ、ほぼ来るという確信はあったわ」

鞠莉「それでも、私に会うということ自体、勇気のある行動だから」

曜「ダイヤさんに、目をつけられるから」

鞠莉「まあ、そうね」

564: 2018/07/18(水) 21:14:26.38 ID:gxD6UBcA.net
善子「それで、ルビィたちを助ける方法って」

鞠莉「……その前に、一つ話しておかなきゃいけないことがあるの」

善子「なによ」


鞠莉「実は果南に頼んでね、ルビィに聞いてきたの」

鞠莉「何か、私にしてほしいことはないかって」

鞠莉「そしたらルビィは言ったらしいの、『最後に花丸ちゃんに会いたい』と」



善子「えっ……」

曜「最後って、それじゃあ」

567: 2018/07/18(水) 21:15:30.80 ID:gxD6UBcA.net
鞠莉「でも私は叶えなきゃいけない。それが二人の望みなら」

鞠莉「二人がここまで追い込んでしまったのは私」

鞠莉「自分の感情で、無理やりその恋を成就させようとした私の責任」

鞠莉「だからその分、私が救ってあげなきゃいけない」

鞠莉「例え大切な友人に恨まれることになっても」

曜「鞠莉ちゃん……」

善子「マリー……」

569: 2018/07/18(水) 21:16:27.62 ID:gxD6UBcA.net
鞠莉「頼みは簡単」

鞠莉「ダイヤの信頼を得て懐に入り込んで、信頼を得る」

鞠莉「そして油断したところで、ルビィをさらってもらう」

曜「さらう……」

鞠莉「そして、私が指示する花丸との合流地点まで連れて行ってほしいの」

鞠莉「その途中の移動方法も考えてある」


鞠莉「ダイヤはしっかりしているようで甘い子だから、どこかであなた達を信頼して警戒を緩めるはずよ」

鞠莉「そうなれば後は、黒澤家に人が少ないタイミングでルビィをさらえる」

鞠莉「二人いれば、十分に可能なはずだわ」

570: 2018/07/18(水) 21:18:00.84 ID:gxD6UBcA.net
曜「でも、花丸ちゃんの方はどうするの」

曜「今の居場所さえ分からない状態だよね」

鞠莉「花丸の方は果南が上手くやってくれるらしいから、どうにかなるはずよ」

曜「果南ちゃん、協力してくれるのかな」

曜「ダイヤさんの味方、なんだよね」


鞠莉「少なくとも、ルビィとの仲介役にはなってくれた」

曜「でも、全部ダイヤさんに筒抜けにするための可能性も」

鞠莉「……信じるしかないわ、無理なら他の方法を考える」

571: 2018/07/18(水) 21:18:49.36 ID:gxD6UBcA.net
鞠莉「果南は私とダイヤを同じぐらい大切だと言っていた」

鞠莉「でも一度、ダイヤの味方をして、私の敵になった」

鞠莉「だから今度は、私の味方になってくれる番――だといいのだけど」


曜「ずいぶんと、薄い根拠だね」

鞠莉「ええ、そうかもね」

鞠莉「でも私にはそれしか方法がないの」

鞠莉「果南を、曜を、善子を信じて助けを借りないと、また失敗してしまうから」


曜「…………」

善子「…………」

572: 2018/07/18(水) 21:19:26.02 ID:gxD6UBcA.net
鞠莉「曜、善子」

鞠莉「二人は、これを手伝う意志はある?」


鞠莉「責任はすべて私が取る」

鞠莉「例え反対されてもこれは譲らない」

鞠莉「だから、あなたたちと大切な人の立場は守られる」



鞠莉「だけど十字架を背負うことになる」

鞠莉「これに加担することによって、重い、一生に背負わなければならない十字架を」

鞠莉「それでも、協力してくれるかしら」

573: 2018/07/18(水) 21:20:14.82 ID:gxD6UBcA.net
  ※


曜(……これで、よかったんだよね)

曜(少なくとも、直接的に手を下したのは私)

曜(善子ちゃんは私より、罪の意識は薄くなるはず)


曜(ルビィちゃんも、きっと花丸ちゃんもこれを望んでいる)

曜(数だけで見れば、これは正しい決断)

曜(だけど、ダイヤさんは……)


曜(いや、考えるのは止めよう)

曜(私は考えて、決断して、行動に移した)


曜(あとは、果南ちゃん次第……)

574: 2018/07/18(水) 21:21:34.23 ID:gxD6UBcA.net
―――???―――


花丸(ここ、どこだろう)

花丸(果南ちゃんに突然連れ出された先)

花丸(近くには崖みたいな場所)

花丸(見たこともない景色)

花丸(ここで生を終えろということ?)

花丸(マルの氏に場所を、用意してくれたってこと?)

575: 2018/07/18(水) 21:22:30.41 ID:gxD6UBcA.net
花丸(あれから、どれほどの月日が経ったかな)

花丸(マルはルビィちゃんと引き離された日から)


花丸(最初は数えていたけど、気がつけば分からなくなった)

花丸(数える意味などないと気づいて、止めてしまったから)


花丸(崖下を覗くと、大きな荒れた海が見える)

花丸(なるほど、これは確かに氏の舞台にふさわしい)

花丸(果南ちゃん、こんなところで無駄に気を遣ってくれるなんて、馬鹿みたい)

576: 2018/07/18(水) 21:26:12.14 ID:gxD6UBcA.net
花丸(あぁ、緊張するな)

花丸(飛び降りる前に、何かするべきことは――)


花丸(ルビィちゃんに電話してみる?)

花丸(ちょうどそこに公衆電話がある)

花丸(小銭まで置いてあるから、かけることはできそう)

花丸(でも、きっと番号は変わっているよね)

花丸(ダイヤさんがそんなミスを犯すとは思えない)


花丸(そうだ、遺書を書くべきかもしれない)

花丸(きっと果南ちゃんが回収してくれるだろう)

花丸(紙は、文庫本の空白でいいかな)

花丸(でもペンは――ポケットに入ってる)

花丸(なんて至れり尽くせりな、確かに標準よりいい待遇かも)

577: 2018/07/18(水) 21:27:14.31 ID:gxD6UBcA.net
花丸(内容は、どうしようかな)

花丸(ルビィちゃんへの愛を語る?)

花丸(でもそれだと、残されたルビィちゃんに悪影響かな)

花丸(そもそも、本人にメッセージを伝えてもらえないかもしれない)


花丸(いっそ、罵詈雑言でも書けばいいかな)

花丸(それでルビィちゃんがマルを嫌いになれば、また新しい人生を歩み直せるかもしれない)

花丸(でも、生半可な言葉だと嘘だってばれるよね)

578: 2018/07/18(水) 21:28:43.13 ID:gxD6UBcA.net
花丸(悪口……ルビィちゃんの悪口なんて思いつかない)

『ルビィちゃんの馬鹿、あほ、まぬけ』

花丸(なにこれ、小学生みたいな――


ルビィ「あはは、小さい子どもみたいだね」


花丸「えっ」

ルビィ「マルちゃん、ルビィのことをそんな風に思っていたの?」

花丸「……ルビィ、ちゃん?」

ルビィ「うん、そうだよ」

花丸「本物? それともルビィちゃんを想い続けていたマルが生み出した幻覚?」

579: 2018/07/18(水) 21:29:28.21 ID:gxD6UBcA.net
ルビィ「本物だよぉ、だってほら」


 チュッ


ルビィ「この感触、変わらないでしょ」

花丸「……そうだね」


花丸「ルビィちゃんの味、匂い、声」

花丸「これが幻覚だったら、マルは超能力者だよ」

ルビィ「ふふっ、信じてくれた――


 ギュッ


ルビィ「わっ、マルちゃん」

580: 2018/07/18(水) 21:30:21.11 ID:gxD6UBcA.net
花丸「ルビィちゃん、ルビィちゃんだ」

花丸「もう二度と、会えないと思ってた、ルビィちゃん」

花丸「マルの大切な人」

花丸「永遠に寄り添うことを誓った、最愛の人」

花丸「大好きな、大好きなルビィちゃん」


ルビィ「……うん、そうだよ」

ルビィ「マルちゃんが大好きな、ルビィだよ」

581: 2018/07/18(水) 21:31:25.16 ID:gxD6UBcA.net
花丸「これから、ずっと一緒に居られるの?」


ルビィ「それは、無理かな」

ルビィ「じきにお姉ちゃんがルビィ達を見つけ出す」

ルビィ「今度はマルちゃんだけじゃない」

ルビィ「協力してくれた人とも二度とかかわれない場所に連れ出されるかもね」

ルビィ「海外にでも連れていかれるかな」

ルビィ「二人とも別々の国で、絶対に会えないようにされて」

花丸「そんな……」

582: 2018/07/18(水) 21:32:23.55 ID:gxD6UBcA.net
花丸「せっかく再会できたのに、結局また」

花丸「そんなの、嫌だよ」

ルビィ「うん、ルビィも嫌だ」

ルビィ「もう二度とマルちゃんと離れたくない」

花丸「ルビィちゃん……」


ルビィ「だからマルちゃん、いいんだよ」

ルビィ「ずっと望んでいた、『酷いこと』をしても」

ルビィ「ルビィ、覚悟はできてるから」

583: 2018/07/18(水) 21:34:38.27 ID:gxD6UBcA.net
花丸「……無理だよ」

ルビィ「どうして」


花丸「どんなに理想を語っても、マルはルビィちゃんを傷つけられない」

花丸「さっきの遺書にも、まともな悪口一つ書けないぐらい、ルビィちゃんが大切で」

花丸「本当はそれを望んでいるのに、身体がいうことを聞いてくれないの」


ルビィ「……そっか」

ルビィ「それなら――――


花丸(あれ)

花丸(ルビィちゃんの手、何か光って――)
 

 グサッ



花丸「あっ、あぁ」

584: 2018/07/18(水) 21:35:46.89 ID:gxD6UBcA.net
ルビィ「それなら、ルビィが助けてあげる」

ルビィ「代わりに『酷いこと』、してあげる」

花丸「……ルビィ、ちゃん」


ルビィ「ごめんね、痛いよね」

ルビィ「でもちょっとだけ我慢して」

ルビィ「ルビィも、すぐに一緒にいくから」

ルビィ「ちゃんと一緒に、マルちゃんを1人にしたりしないから」

花丸「……ありが……とう」

585: 2018/07/18(水) 21:36:52.20 ID:gxD6UBcA.net
ルビィ「ごめんね、ずっと苦しめちゃって」


花丸「マルは……ルビィちゃんと最後に居られて……幸せだよ」

ルビィ「ルビィも、幸せ」

花丸「……最後に……抱きしめて」

ルビィ「うん」


 ギュッ


ルビィ「マルちゃん、温かいよ」

花丸「……ルビィちゃんも……ね」

586: 2018/07/18(水) 21:38:24.12 ID:gxD6UBcA.net
花丸「……生まれ変わっても……ずっと一緒に居よう」

ルビィ「そうだね」

ルビィ「どちらかが男の子になるか、女の子同士でも一緒に居られる、そんな世界で」

花丸「……素敵だね……そん……な……世界」


ルビィ「もう、限界かな」

花丸「……う……ん」

ルビィ「ルビィも、そろそろいくね」

花丸「……………………」


ルビィ「バイバイ、マルちゃん。また来世で」






ルビィ「生まれ変わっても、ずっと一緒だよ」

587: 2018/07/18(水) 21:38:49.34 ID:gxD6UBcA.net

589: 2018/07/18(水) 21:40:44.64 ID:gxD6UBcA.net
以上で完結となります
途中長い中断期間がありながら無事完結できたことを嬉しく思います
保守、コメント等、皆さんにはとても助けられました
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました

591: 2018/07/18(水) 21:42:26.99 ID:z358DUkH.net
完走お疲れ様でした
約一ヶ月ハラハラしながら読ませていただきました

592: 2018/07/18(水) 21:45:50.77 ID:UMmNVh0H.net
一ヶ月もやってたのか結構短く感じた
面白かったありがとう

引用: 花丸「心中」