1: 2013/11/25(月) 00:15:41 ID:73ab78p.
男「うっ、また聞こえるぞ…」


『ニンゲンサーン』『ダイスキダヨー』


男「なんだようるせぇよ…!」

男「…」じぃー

ネズミ『人間さん人間さん!起きたんだよ!おはようだよ!』

男(…ネズミが喋ってる)

ネズミ子供『ニンゲンサーン』
ネズミ子供『エヘヘー』
ネズミ子供『オキタンダヨ!』

男(そいつが連れてる子供も喋ってる!)



前作 男「最近、変な声が聞こえるんだけど」




3: 2013/11/25(月) 00:21:47 ID:73ab78p.
男「うるせぇなオイ…また大家族で水槽から逃げ出しやがって…」ゴシゴシ

ネズミ『だってだって、真っ暗じゃないと逃げ出せれませんから!』

ネズミ子供『ニンゲンサンスキ』
ネズミ子供『ボクモスキ!』

男「…ありがとな、んで、なんだ用事でもあんのか」

ネズミ『あのだよ! なんで人間さんはぼくたちの声が聴こえるんだよ? って話だよぉ!』

男「前に言ったじゃねえか…」

ネズミ『ボクの子どもたちは知らないんだよ! 教えてよ人間さん!』

男「めんどくさい…」

男「あーもう、言ったら戻るか? じゃあ説明するけどさ…」

男「──突然、動物の声が聴こえるようになったんだよ」

4: 2013/11/25(月) 00:28:19 ID:73ab78p.
男「ただそれだけだ。うん、それだけ」

ネズミ『なるほどなんだよ! やっぱり人間さんは凄いんだよぉ!』

ネズミ子供『スゴインダヨー!』
ネズミ子供『ネー!スゴイネー!』

男「うん、俺凄いよね。よし戻ろうかお前ら、早く妹の部屋に戻ってくれ…」

ネズミ『わかりましたなんだよ! じゃあ戻るよ!』

ネズミ子供『ワーイ!』

男「……はぁ」

男(いっぱしに子供作りやがってからに。うるさくて堪らん…)

男(しかし幸せそうでよかったぜ。最初の頃は悲惨な感じだったからな)

男「ふわぁー…今何時だ? おう、まだ五時かよ…」

男(──動物の声が聞こえ始めて、数ヶ月が経とうとしていた)

5: 2013/11/25(月) 00:36:13 ID:73ab78p.
男(まぁこれだけ経てば少しは慣れてきて、こう喧しくても、寝れることは寝れる)


『交尾したいよぉおおおおおおおおお!!!』ニャーン


男(…外で喚く発情している野生もうるさいのは煩い)

男(だけど人は慣れていく。突然動物の声が聞こえても、そうじゃなくても)

男(──起こる問題に対して、人は、どうにかなっていくものなんだ)

男「難しいことなんて無いんだぜ…むにゃ…」


次の日 日曜日

妹「兄ちゃん兄ちゃん! おっはー!」

男「…おう」

妹「まだ眠そうだね。日曜だからって早起きしなくたって良いのにさ」

7: 2013/11/25(月) 00:40:25 ID:73ab78p.
男「今日はあれだろ、お前の友達来るじゃねえか…だから早く起きた」

妹「おっ? あれあれーもしかして?」

男「…なんだよ、悪いか。逃げるんだよ…気まずいじゃん、だって」

妹「べっつに気にしなくてもいいのに。知らない相手じゃないでしょ」

男「…知ってるから気まずいんだろ」

妹「えっ? なになに?」

男「なんでもねーよ。ったく、じゃあ俺は朝飯食ってからゲーセンにでも…」

ピンポーン

男「……あれ?」

妹「誰だろこんな早くに? はいはーい、いま出まーす」

8: 2013/11/25(月) 00:45:06 ID:73ab78p.
男(悪い予感しかしない)

妹「わ! もう来たの? うんうん、いいよ。今家にいるの兄ちゃんだけだし」

男「っ……」ソソクサ

妹「あがってあがってー、あれ? 兄ちゃん何処行くの?」

男「うっ」

妹「ほら、もう来たんだって友ちゃん。久しぶりだし挨拶挨拶!」

男「……よぉ」くる


「──おはようございます、お兄さん」


妹友「そしてお久しぶりですね。本当に、お久しぶりですね」

男「そう、だな。お、おう……久しぶり」

9: 2013/11/25(月) 00:50:14 ID:73ab78p.

妹友「……」じぃー

男(くそ、逃げられなかったか…なんだよ見つめるなよそんな俺のことを!)

妹「だけど兄ちゃん、これから出かけるんだってさ。残念だけどね」

妹友「そうなんですか」

男「ま、まぁな。だから気兼ねなく二人で楽しんでてくれ…」

妹友「はい。言われなくてもそうしますから」

男「……そうですか」

妹「うっし。じゃあじゃあ早速だけど! 見ていく? あたしのかわいいペットさんを!」

妹友「うん!」

男(…相変わらず俺に対して厳しいようで、昔からそうなんだよなぁ。敵対視されてるっていうか)

男(まぁ年頃だし、知らない仲じゃないし、色々と複雑なんだろ。そうしておこう)

10: 2013/11/25(月) 00:55:26 ID:73ab78p.
男「ふわぁー飯はマックで食うか…じゃあ着替えよ…」スタスタ

部屋

ネズミ『あ。人間さんだよ!』

男「……なんでいるんだよ」

ネズミ『えへへーちょっと人間さんとお話しがしたくって!』

男「はぁー…馬鹿かお前、今、妹の所に友達が来てるんだぞ…」

ネズミ『トモダチ? トモダチってなんなんだよ?』

男「……。俺とお前みたいな感じだ」

ネズミ『人間さんとぼく? …じゃあとってもイイことなんだよ!』

男「おう、だろ? そしてその友達がお前を見たがってる、今すぐに部屋に戻るんだ」

「兄ちゃーん! ピーナッツ居なくなったぁああああああ!!」

男「ほら、呼ばれてるぞ」

11: 2013/11/25(月) 01:00:30 ID:73ab78p.
ネズミ『ピーナッツ呼ばれてるんだよ! ぼく、ぼくのことなんだよ!』

男「知ってる。早く戻ってやれ、それとも俺が連れってやろうか?」

ネズミ『大丈夫なんだよ! 平気なんだよ! わーい! ぼくがピーナッツなんだよー!』シュタタタタ

男(アイツは毎回何処から俺の部屋に入ってくるんだ…)

コンコン

「すみません」

男「へ? あ、うん…どうぞ?」

妹友「失礼します。突然すみません」

男「…ど、どうした? こっちは妹の部屋じゃないぞ?」

妹友「知っています。元から彼女の部屋からコチラに来ましから」

男「……。で、なに?」

妹友「久しぶりにお会いしたので挨拶でも、と。今から出かけるんですよね」

12: 2013/11/25(月) 01:06:09 ID:73ab78p.

男「そ、そっか…別に挨拶なんていらないって」

妹友「そうはいかないですよ。なにせ久しぶりなんですから」

男(なんなんだこの娘は…)

妹友「…今」

男「な、なに?」

妹友「誰かと会話してませんでしたか」

男「えっ!? い、いや別に…っ?」

妹友「廊下まで聞こえてましたけど。お兄さんがしゃべっている声が」

男「き、聞き間違えじゃないか? お、おう」

妹友「へぇー聞き間違いですか、ふーん」

男(…まさかネズミと喋ってたなんて言えないわ…)

13: 2013/11/25(月) 01:11:11 ID:73ab78p.
男「それで挨拶だけ? だったら俺着替えるから出て欲しいんだが…」

妹友「今日は妹さんのペットを見に来たんですけど」

男「…うん」

妹友「実は私もペットを買っているんです。かわいい九官鳥を」

男「九官鳥? へー珍しいな、名前はなんて言うんだ?」

妹友「きゅうちゃんですけど」

男「…それはそれは」

妹友「今、馬鹿にしましたか?」

男「してないしてない」

妹友「……」じぃー

男「そ、それで? きゅうちゃんがどうかしたのか?」

妹友「……別に、なにも」くる

男「へっ?」

14: 2013/11/25(月) 01:14:33 ID:73ab78p.
妹友「………」

男「……?」

妹友「やっぱり一度はっきりと言っておくべきだと思いますので、言っておきますね」

男「え?」

妹友「私、あなたのことが嫌いです。視界に入れたくないぐらいに、大っ嫌いです」

男「……」

妹友「ただそれだけですので。では、これで」きぃ

パタン

男「………………」


マック


男(なんなんだよアイツはぁ! お、俺だってお前のこと嫌いだぞ!?)バクバク

男「何考えてんだがわかんねぇし…ネチネチとした視線で俺を観察するし…!」

15: 2013/11/25(月) 01:20:52 ID:73ab78p.
男「…くそぅ、嫌いってなんだよ、知ってたよ最初からよ…」モグモグ

男(だけど面と向かって嫌いって言われると、堪えるんだな案外…)

男「はぁー……もうやだやだ」チラリ

カラス『よぉー人間人間! 今日も元気ぃー? チィース!』

男「…今は周りに人がいるから話しかけるな」

カラス『えー? なんだってー? ガラス越しじゃそっちの声聞こえないっすわー!』

男「………」

カラス『人間人間ー! おーーい!』


「あのカラス凄い鳴いてる」
「怒ってるの? なんかあそこの席の人にめちゃくちゃ見つめてるけど…」


男「…んだよまったく」ガタ

16: 2013/11/25(月) 01:22:11 ID:73ab78p.
路地裏

カラス『よぉー久しぶりっす! 人間!』

男「用事はなんだよ」

カラス『いやっすね~、あの猫のおっさんがアンタのこと探してくれって頼まれて』

17: 2013/11/25(月) 01:26:28 ID:73ab78p.
男「頼まれた? 猫のおっさんって……ああ、アイツか」

カラス『そうなんっすよーんで、ちょっくら来てもらってもいいっすか?』

男「…別に良いが、変な所連れて行くなよ」

カラス『大丈夫っす。すぐそこなんで、んじゃ──おーいお前らぁー!』


カラス『どうしたお前ぇー!』
カラス『おぅおぅおぅ!』
カラス『なんかようかぁー!』


男「うおおおっ!? い、いっぱい来やがった…!」

カラス『人間を猫のおっさん所連れて行くから! 道案内頼むぜ!』

男「は? 道案内って…」

カラス『あ。後はこいつらに任せれば大丈夫っす! 猫のおっさん、すぐどっかいっちまんうんで、これで探せるっす!』

男「…お、おう」

~~~

18: 2013/11/25(月) 01:32:23 ID:73ab78p.
ギャーガァー! ガァー! カーカー!

男(カラスどもに引率されて来たものの…)

猫『ぐーぐー』

男「…おい、なに寝てやがるんだデブ猫」ぐいっ

猫『ふごっ?』

男「……」ぐにぐに

猫『んぐぐ…ぐっは! や、やめろ…! おれの毛並みは乱れやすいんだ…っ』

男「おいって」ぎゅっ

猫『ぎゃあああああ! しっぽぎゅってされたぁあああああ……お?』

男「やっと起きたか」

猫『こ、このガキ…! よくもおれのしっぽを! 敏感なんだぜしっぽはよぉ!』ペロペロ

男「はいはい、そうですか」

19: 2013/11/25(月) 01:38:15 ID:73ab78p.
猫『ったく、それでなんだ起こしてくれよってからに』

男「いや、お前のほうが用事があったんだろ?」

猫『え?』

男「帰るぞ」

猫『あー待て待て! ちょい待ち! 今思い出すから…えーと、何の用事があったんだっけか?』

男「おい。もうボケてきやがったのかお前…」

猫『んー、最近は平和すぎてなぁ。餌も食えるし、のんびりこうやって昼寝もできるしよぉ』

男「まぁ、それはいいことだけどな。よいしょっと」

猫『まぁーなんだすぐに想い出すだろ。おいおい、ガキ。それよりも聞かせろよ~?』

男「…なんだよ」

猫『あの嬢ちゃんのことだよ! 晴れてガキと……ペット飼い主の仲になった! あの嬢ちゃんだぜ!』

21: 2013/11/25(月) 01:45:55 ID:73ab78p.
男「…まったく相変わらず変Oだなお前」

猫『一般的興味と言え。猫界隈のな』

男「猫達興味津々なのかこの話題…!」

猫『なにせ面白いからなぁ。言葉がわかる人間が、人間を飼ってるぞって』

男「字面にすると凄い感じだなそれ…」

猫『んで、どうなんだ? おっちゃんも気になってんだよ、最近はあんま嬢ちゃんの所行ってないしな』

男「なんで? たまに餌貰ってたんだろ?」

猫『色々とあるんだぜ。猫にもよ、ふふっ』

男「ふーん、まぁ別になんにも変わってねえよ。あれから数ヶ月ぐらいしか立ってないし」

猫『スウカゲツ? また人間さんの時間の話しか…いい加減猫との会話にも慣れろよ、わかんねーだって、時間とか』

男「だーから、別に話するほど何もねーってこと」

猫『なんだつまらん…』

男「つまらん言うな」

22: 2013/11/25(月) 01:51:13 ID:73ab78p.
猫『いやまぁ何にもねえなら越したことはないな』

男「そうだな…ま、色々とあったけど平和ならそれでいい」

猫『そうそう、平和が一番だ』

男「……」

猫『……』

男「…あのよ」

猫『どうしたガキ』

男「っ……すまん、実はいっぱい相談したいことがある…!!」

猫『がはははは! やっぱな! やっぱな! 絶対にそうだと思ってたんだぜ!』

男(やっぱりカマかけてやがったかコイツ…!)

猫『くっく、だろーと思ったんだよ。あんな凄え嬢ちゃんをガキが扱えきれるとは想ってねえからよぉ!』

男「くそ、じゃあ最初から用事ってのは…!」

猫『ガキが上手く行ってるか聞くためだぜ。がはは、んだよ素直にきかせろって』

23: 2013/11/25(月) 02:05:50 ID:73ab78p.
男「変に追い詰める感じで聞きやがって……」

猫『いーいから聞かせろってば。ん? どうなんだ?』

男「と、とにかく、なんだ……最近はうまく行ってる方だと思ってる、けど」

猫『あれから散歩も行ってんのかい。あの嬢ちゃんと』

男「……そこなんだよ…ッ!」

猫『へ?』

男「そう、その散歩だ…! あれから色々とあって、それでも……ほぼ毎日散歩してる…」

猫『ま、毎日? 毎日ってオイ…日が昇って、また沈んで、その繰り返しの中…ずっと?』

男「…うん、ずっと」

猫『嬢ちゃんに首輪つけて、それにリードをつけて、それをガキがもつのか?』

男「……うん」

猫『そ、それは……凄いな……おっちゃん、びっくりだぜ……』

男「…だろ…」

24: 2013/11/25(月) 02:11:47 ID:73ab78p.
猫『お、おう、なんだ……楽しそうでよかったじゃねえか』

男「た、楽しくなんかねえよ!?」

猫『…いや正直おっちゃんも引いちゃったけど、猫様でもその雰囲気、いいと思うぜ?』

男「…どこかいい雰囲気なんだよ…」

猫『まぁ見方によっちゃラブラブだよ、めちゃくちゃいい感じだって』

男「……」

猫『だけどよガキ。そうやって悩めるのも、あの嬢ちゃんの問題を解決できたから──だろ?』

男「…まぁな」

猫『自由にやりたいことが出来る。それがあの嬢ちゃんが望んでたことなんだ、それをガキが叶えてやってるんだ』

男「うん…」

猫『その仕様が例え難しくても、それをずっと叶えてやるのがガキの運命だぜ。頑張りな、おっちゃんも応援してやっから』

男「…おう、そうだな。やりたいようにやらせる、そしてもっと色んなことを見せてやるべきだよな」

猫『そうとも。くっく、ガキも大変だろうけどもなぁ』

25: 2013/11/25(月) 02:17:06 ID:73ab78p.
男「んー、なんだ…お前に相談してすっきりってのも納得しづらいけど、うん、ありがとな」

猫『人間さんもままならねえなぁ。猫しか相談相手居ねえのかよ』

男「…こんな話し誰にしろってか」

猫『確かにな、がっはっは。さてさて、相談はそれだけかい? なんなら子作りの仕方もおまけしといてやるけど?』

男「やかましい」

猫『がははは!』

男(だけどまぁ、良いことなんだよな。こうやって悩みを相談できるってのは)

男(女さんも、ああやって自由に出来て。そしてそれに俺が手伝ってあげている…最高じゃねえか)

猫『ん、あれなんだガキ』

男「どうした?」

猫『ほらあそこだ、あそこ。あのカラスどもと居る鳥だよ』

男「…カラス? なんだよ急に」

カラス『よぉーテメーどこ巣出身だぁ?』
カラス『こっちは駅前巣だぞテメー!』

26: 2013/11/25(月) 02:22:51 ID:73ab78p.
男「確かになにか居るな…鳥? 小さい鳥だな…」

猫『うるさくて堪らんぞ、なんとかしてやれガキ』

男「はぁ? 俺は別に何でも屋じゃねぞ…」

猫『いーいじゃねえか。とにかく止めてやれって』

男「ったく…おいお前ら何やってんだ」

カラス『よぉー人間! コイツよそ鳥なんすよ!』
カラス『俺らの縄張り入っちゃってんすよー!』

男「余所鳥?」

鳥「ヤダヤダー!」

男「なんだこの鳥。インコ? …つかあんまいじめてやるなって」

カラス『はぁ? だってめちゃくちゃ口悪いじゃないっすか!』

男「いや、だって…」

鳥「ガンバルガンバルー! ワタシガンバルー!」

男「…?」

27: 2013/11/25(月) 02:27:25 ID:73ab78p.
猫『ぐおっ、やかましいなこの鳥…どうしたガキ? お前、めちゃくちゃ馬鹿にされてるぞ』

男「へ? 馬鹿にされてる?」

猫『だからその鳥に馬鹿にされてるぞ。聞こえてねえのか?』

男「……」じっ

鳥「モットガンバラナクッチャー!」

男「…頑張れ言ってるけど?」

猫『はぁ? …おれの声、聞こえてるよな?』

男「お、おう」

猫『じゃあなんでそいつの声、聞こえないんだよ』

男「いやだから聞こえてるって。なに、ホントに馬鹿にされてんの俺?」

カラス『あっ! 人間にそこまで言うなよ! 傷つくだろー!』
カラス『そ、そこまで言うなんて……これじゃあ人間、泣いちまうよ…』

男「どんなこと言われてんの俺!?」

28: 2013/11/25(月) 02:35:19 ID:73ab78p.
鳥「にひひー!」

男「あれ? この鳥どこかで見たことあるような…ん、テレビかどっかで…」

猫『なんだとこの鳥! テメー今、おれのことボンレスハム言いやがったなぁ!』

鳥「カワイイカワイイ!」

猫『こ、こいつッ……愛しのキティちゃんに言われても許せねえことを……ッ!』シャー

男「そんな喧嘩越しになるなって……ああ! そうだコイツ九官鳥だ!」

猫『ハァハァ…九官鳥…?』

男「そうそう! 人の声とか、モノマネが凄えうまいんだよ。そんなのテレビでやってたわ」

猫『そうかい。よかったなわかって、じゃあ喰っていいか』

男「ま、待て! この鳥一般的に野生に居るわけねえんだよ、だからどっかのペットだ」

猫『知るかってんだ! このおれ様がここまでコケにされておいて…!』

男「だぁもう落ち着けって! 俺が少し話を聞くから、な?」

猫『……チッ』

29: 2013/11/25(月) 02:41:03 ID:73ab78p.
猫『だけど聞けるのか。コイツの声わからねえんだろ?』

男「ま、まぁな。だけど集中して聞けば…なんとなく聞こえなくも…」

九官鳥『この人間マジでアホっぽいばい! 多分やけど、童Oじゃなかとな!?』

男「よし喰え」

猫『おう』

九官鳥『ぎゃー! 待って! ごめん許して!』

男「確かに糞鳥だったぜ…ああ、お前の言うとおりだったな」

猫『だろーが、んで喰っていいのか』

九官鳥『本当に許して! ちょっとした冗談やって!』

男「…冗談でも言っていいことと悪いことがある」

九官鳥『あ。やっぱ童Oやったん?』

男「…………」

九官鳥『冗談やっち。ったく、ニンゲンは冗談も通じんととかね…』

30: 2013/11/25(月) 02:46:29 ID:73ab78p.
男「カラスども。今日の餌は栄養価満点だな」

九官鳥『ぎゃー食べないでー!』

男「じゃあ静かにしてろ。そしてこっちの質問に答えろ」

九官鳥『…なんばい?』

男「お前、誰かのペットか? それで逃げ出してきたのか?」

九官鳥『んでこと聞いてどうすっと』

男「この野獣どもに喰われたくないなら連れってやらんでもない」

九官鳥『はぁー? 別にうちなら逃げられるし、簡単やし?』

猫『……』ジリ…ジリ…

男「今にも飛びかからんとしている奴がいるが?」

九官鳥『うっ』

男「どうなんだ。はい、いいえ。で答えろ」

九官鳥『…助けてください』

31: 2013/11/25(月) 02:52:26 ID:73ab78p.
~~~~

九官鳥『なはは! いやー困った困った、途中で迷子になったとよ!』

男「結局迷子かよ…」

九官鳥『オイが助けてくれんかったら、うち、くわれっとたなぁ!』

男「お前が喧嘩越しで行くからだろ」

九官鳥『それが喋る鳥の下がってもんばい。しかたなかと』

男(…やけに方言がキツイな、これって、九州の方か?)

九官鳥『ん、ニンゲン。そっちほうやね、そっちそっち』

男「あ、ああ。こっちね…」

九官鳥『それとニンゲン。なんでオイ言葉がわかるん? めっちゃはっきり聞こえるんやけど?』

男「色々とあるんだよ。お前だってちょっとは人間の言葉わかるだろ? そんな感じだ」

九官鳥『いやいや、わからんよ? ただうちは真似てるだけやけん、歌ってるだけの気分やから』

男「へぇー…そうなのか、じゃあさっき喋ってたのもただ、真似てるだけなのか」

32: 2013/11/25(月) 02:58:06 ID:73ab78p.
九官鳥『うちがしゃべるとニンゲン、めっちゃ喜ぶ。なんでかわからんけどな』

男「まぁわからんだろうな…」

九官鳥『だけどニンゲン。オイはすごいなぁ! もしかして鳥なんか? ニンゲンっぽいのに!』

男「舐めるな、人間様だよこっちは」

九官鳥『仲間やと思ったんけどなぁ。違うんか、そうかそうか!』

男「…つかなんで逃げ出したんだお前」

九官鳥『アホな飼い主が蓋開けっ放しにしとったと。だから外に出ただけとよ』

男「そりゃホントにアホだな…」

九官鳥『ずいぶん前からアホやなー思っとったけど、ここまでとは思わんかったばい…』

男「それで、どっちだ? こっちの道で良いのか?」

九官鳥『よかよ! もうすぐつくっち!』

35: 2013/11/25(月) 14:21:50 ID:rC9B5yPg
~~~

九官鳥『ついたばい』

男「…やっぱりな」ボソ

九官鳥『どしたとね?』

男「いや、なんとなくそうじゃないかと思ってたんだよ…ああ、やっぱりなって」


男(ここ、妹友の家だコレ)


九官鳥『うちはここまででよかよ。オイもありがとさん』

男「…おう」

九官鳥『んじゃこれでなぁ! あんがとなぁニンゲン!』

男「もう家出なんてするんじゃないぞ」

九官鳥『わぁーとるばい! なはは! んじゃな!』バタバタ

男「……」

男(やっぱり妹友のペットだったか。九官鳥なんてそうそう飼ってる人いないだろうしな)

36: 2013/11/25(月) 14:26:51 ID:rC9B5yPg
男「しっかりしてると思ってたんだがなぁ。九官鳥も言ってたが、アホなのかアイツは…」

男(まぁ俺の妹にも言えたことだけど。しょっちゅうピーナッツ逃がしてるし)

「──あっ…お兄さん…!」

男「うぇっ?」くるっ

妹友「はぁ…はぁ…ど、どうして私の家の前に居るんですか…!」

男「い、妹友…」

妹友「はぁ、ふぅ、……もしかしてストーカーなんですか?」

男「ばっバカ言え! んなわけあるか!」

妹友「そうですか。ならいいです、それよりも……」キョロキョロ

男「?」

妹友「…あの、突然ですけど、見ませんでしたか」

男「なにが…?」

妹友「その、えっと………さっき連絡があって、私のペットが…」

37: 2013/11/25(月) 14:34:20 ID:rC9B5yPg
男(あぁ。家族か誰かに連絡を貰ったのか、九官鳥逃げ出したぞって)

妹友「…いえ、忘れてください。なんでもないですから、貴方には何も関係ないことでしたし」

男「…あのなぁ」

妹友「今朝にも言いましたけど」

男「……。なんだよ」

妹友「私は貴方のことが大嫌いです。つまり、そういうことなので、早くどこかに消えてください」

男「……」

妹友「まぁ今回は私の方から話しかけてしまいましたが。ええ、それについては誤ります、ごめんなさい」ペコリ

妹友「しかし、私は一人になって考えなくちゃいけないことがあるんです。なので邪魔なんですよ、お兄さんは」

男「…わかったよ、そうだよな、お前は俺のこと大っ嫌いだもんな」

妹友「ご理解いただけてるようで幸いです」

男「はいはい。何をしたいか知らなねえけど、じゃあ頑張ってくださいな、俺はもう帰るからよ」フリフリ

妹友「………」

男「ああ、最後にひとつだけ。お前に言っておくことがあるぜ」

38: 2013/11/25(月) 14:39:04 ID:rC9B5yPg
妹友「…なんですか」

男「お前、ちゃんとカゴは閉めとけよ」

妹友「えっ」

男「それだけだ」

妹友「なん、でそれを……」

男「んだよ。俺と話したくないんだろ?」

妹友「っ……」

男「しっかりしてると思ってたけどさ。くっく、案外おっちょこちょいな所もあるんだな、お前って」

妹友「…ッ~~~…お兄さんには関係ないでしょう…!」

男「そうだな関係ないな」

妹友「だ、だったら早く帰ってください…! もう顔も見たくありません!」

男「はいはい。わーってるって」フリフリ

男(くっくっく、よっしゃ! いっちょ言ってやったぜ!)


バタバタバタ!!

39: 2013/11/25(月) 14:44:40 ID:rC9B5yPg
男「ん、なんだ…?」

妹友「あ、きゅうちゃん!」

男「へ? きゅうちゃんって……」

九官鳥『よぉーニンゲン! ちょっち言い忘れとったことがあったとよ!』バタバタ

男「…おお」

妹友「よ、よかったぁ…さあおいできゅうちゃん…」

九官鳥『おっ? うちの飼い主やん。まぁいいけど、それよりも、ニンゲンニンゲン!』

妹友「きゅうちゃん…?」

男「な、なんだよ…あんまり俺に話しかけるなって…!」

九官鳥『どないしたんか?』

男「……俺が動物の声が聞こえるの、お前の飼い主知らねえんだよ」ボソボソ

九官鳥『そげんことなっとるとね。ほぁーめんどくさかなぁ』

妹友「……。どうしてお兄さんの側から離れないんですか、きゅうちゃん」

男「えっ!? わ、わからねえよそんなこと…!」

妹友「……」じぃー

40: 2013/11/25(月) 14:51:29 ID:rC9B5yPg
九官鳥『それと用事なんだけどなぁ。うちの飼い主のことでちょっち相談したいことが…』

妹友「? え…ちょ、やめっ……きゅ、きゅうちゃん!?」

九官鳥『? なんやのやかましいな、なんでうちの飼い主怒ってるん?』

男「お前が俺にばっかり構ってるからだろ」

九官鳥『そうなんか。可愛い所もあったとね、うちの飼い主も』

妹友「だっ………だだだっ……!」

男「みたいだな。だから相談ってのも後で……うおっ!?」

妹友「だめぇー! だめだめ! 聞かないでください! だめだめ!!」

男「な、なんだよ!? どうした急に…!?」

妹友「その子が言ってることはっ……なんでもないんです、だから、違うんです!」

男「へ? なにいってんだおまえ…」

九官鳥『おお、飼い主顔真っ赤やね』

妹友「ぎゃあ───!!!!」

41: 2013/11/25(月) 14:58:38 ID:rC9B5yPg
男「はっ…! ま、まさかお前……!」

妹友「えっ!? あ、あわわわっ……ち、違います……そうじゃないんです……!」

男(動物の声が聴こえる、のか? まさか俺と同じ奴がいるなんて)

九官鳥『どうげんしたとね!? どうなっとるん!?』

妹友「や、やめてっ……この子はただ、真似をしているだけで……」

妹友「べ、別に私の本音だとかそんなんじゃ……違うんです、違うんです!」

男「? あれ、違うのか…?」

妹友「ち、違うんです! えっと、なんでちょっと残念そうなんですか…?」

男「いや………だって仲間だったら嬉しいなって」

妹友「え……仲間、ですか……?」

男「おう。俺だってもしそんな奴が居たら嬉しいし、色々と話し合えたらなぁ~って思ってさ」

妹友「……ほ、ほぉー…」

男(お前もなんでちょっと嬉しそうなんだ)

九官鳥『どうげんしたとね……うち、飼い主の言葉わからんとよ……』

43: 2013/11/25(月) 15:06:55 ID:rC9B5yPg
男「なんかさ、お前の飼い主も動物の声がわかるかもって」

九官鳥『んなわけなかよ。毎日ウチ、飼い主にボケアホ間抜け言っとるけど、気づかんでニコヤカやし』

男「へ? そうなの?」

九官鳥『そうよ? やけん、うちの声が聴こえるって言うやったら……それはうちのモノマネに反応しとるんと思う』

妹友「……」ピク

男「モノマネ? ああ、お前の〝本当の声〟の方か。本音じゃなくって、鳥声のほうね……今なんて言ったんだ?」

九官鳥『ちょいまって。えーっとなぁ。こうかな、「ダイスキダヨーオニイサ」』

妹友「ぎぁああああああああ!!」ばしっ!

九官鳥『ぎゃああああああ痛かよぉおおおおおおお!!!』

男「うわあああ! な、なにやってんだお前!? 可哀想だろそんな掴み方は…!」

妹友「はぁっ…はぁっ…や、やっぱり忘れてください! 絶対絶対に忘れてくださぁ───いッ!!」

44: 2013/11/25(月) 15:16:40 ID:rC9B5yPg
男「わ、忘れろって…あんまり良く聞こえなかったんだが…?」

妹友「じゃ、じゃあそのまま記憶を忘却してください! 何もなかったと、貴方は黙っていてください!」

九官鳥『こ、こら…! やめろやめろー! 馬鹿飼い主ぃー! 動物虐待やろー!?』

妹友「ぎゃわあああ!!」ぎゅっ

九官鳥『ぐむむっ』

男「や、やめろって…氏んじゃうぞ! それ以上はダメだ!」

妹友「い、いいんです! 私のペットなんですから! 離してください!」

男「苦しがってるじゃねえか! もう何も聞かないから! なっ!? 離してやってくれよ!」

妹友「だ、だって離したら喋られっ……うっ、あっ……いややっ! いややっていっとるやろ!!」

男「お、おおっ?」

妹友「なんでそげんウチを虐めることばっかすっとね!? いやや言っとるやろ! 離さんか…!」

男「お、おまっ、出てる出てる! 方言出てるから!」

妹「うっさかね…っ! ウチはどげんしたってよかろーもん!?」

46: 2013/11/25(月) 15:26:03 ID:rC9B5yPg
男「だぁーもうっ……お前ってやつは! 良いから聞け俺の話を!」

妹友「ひぅっ」

男「良いか妹友、お前がどんなことを……きゅうちゃんに教えてたのかは知らないけどな」

妹友「…なによ」

男「お前がそれをダメだという権利はないだろーが」

妹友「うっ…だ、だって…」

男(多分、俺の聞かれたくないことを教えちまったんだろうな。例えば…)

男(俺の悪口とかな! これだけ必氏に止めやがるんだ、相当なことを言ってたに違いない…くそぅ…)

妹友「うちは…あんなこと言ってしまったんよ…やったらこげんこと…」

男「そうだな。あれだけ俺に言ってるんだ、それを上塗りさせることは……聞かせたくないかもしれない」

妹友「あっ……やっぱ聞こえとったんか…ううっ…」カァアア

男「おう」

妹友「う、うちはなっ……こんなんやけん、正直に本音話せんとよ……やけん、聞かれたくってな…」

48: 2013/11/25(月) 15:36:34 ID:rC9B5yPg
男「…それを真似されて、こんな状況でバレそうになっても、きゅうちゃんには罪はねーだろ」

妹友「…うん」コクリ

九官鳥『ぷはぁ』

男「うん。そうだぜ、離してやってくれ」

妹友「ごめんな…きゅうちゃん…」

九官鳥『ッ~~~!! ッ!! ッ!!?』(聞き取り不可能レベルの文句)

男「きゅ、きゅうちゃんも…許してくれてるってさ……」

妹友「うん…うん…」

男「…だけどよ、やっぱ俺はお前の口から聞きたい」

妹友「えっ?」

男「元からあれだけ言われてるけどさ、俺はよ、言いたいことがあるなら…ちゃんと言ったほうがいいと思うぜ」

妹友「お、お兄さん…」

男「だろ? 別にお前と俺は短くねーほどには付き合いがあるんだ。ちゃんと聞いてやるって」

男(どんな文句だって、悲しくなったって、聞いてやるぜ…!)

49: 2013/11/25(月) 16:17:04 ID:E5fJGOow
妹友「……そ、そうなん?」

男「おう」

妹友「じゃあ…その、言ってもよかと?」

男「…おう?」

妹友「ウチがこんなこといって、あんちゃん……困らん?」

男「困るって言えば困るけどな……まぁでも、ちゃんと聞いてやるよ」

妹友「……」

男(さて…果たしてどんな暴言が飛び出してくる…)

妹友「あのな、ウチ、あんちゃんのこと…」ウルウル

男(って、あれ? なんだろこの雰囲気…妹友顔真っ赤だし、あれ? 文句言われるんじゃないのか?)

妹友「ずっとずっと…前からなっ……ウチ、ウチ…!」

男「っ……」ドキ


妹「おー! やっぱここに居たんだ、探したんだよー!」

50: 2013/11/25(月) 16:22:09 ID:A6qYuKqA
妹友「だっ………大っ嫌いだったんよ!!」

妹「へっ?」

妹友「もう顔をみとーないぐらい凄かくらい大っ嫌いで…ぇ!!」

妹友「もうっ…もうっ…氏んじゃえ馬鹿がって思うぐらい氏ね!!」

男「………」

妹友「はぁ…はぁ……あ、あれ?」

男「……ハイ、スミマセン」ぐすっ

妹友「あっ、ちがっ、こげんことっ……ちがうとよ…っ?」

男「氏んだほうがいいんだよな俺…うんうん…ごめん…」

妹友「あ………」

男「…ほらきゅうちゃん、お前もそっち帰りな」

九官鳥『なんて言われたんか?』

男「ああ、思ってた通りのことを…言われたまでさ…」

すたすた

51: 2013/11/25(月) 16:27:26 ID:rWSAAP7s
妹友「ま、まって…!」

妹(めっちゃ気まずい)

男「…もう顔合わせること無いけどよ、妹友」

男「元気でな。俺は別に…お前のこと嫌いじゃなかったぜ」

妹友「えっ、あっ…うっ…!」

男「…じゃあな」フリフリ

妹友「………あんちゃん………」


~~~~


男「ぐぉぉ……なんだっていうんだよぉぉお……!」

犬『最近はよく我に相談にくるな、人間』

男「聞いてくれよぉおお…めっちゃ傷ついてるんだよ俺ぇぇ…」

犬『ふっ。犬生とは傷ついて磨かれる。ようは傷だと思うのではなく、研磨だと思うが良い』

犬『見方を豊かにするためには、傷つくこともまた必要だということだ』

男「…そう思ってもいいもんなのか?」

52: 2013/11/25(月) 16:36:54 ID:lB45cACA
犬『左様。さすればまた、己の進化と教養を生むだろう』

男「……」

犬『素直になれぬ輩は、他犬よりも多くの物事を考えておるものだ』

男「多くのこと?」

犬『多大な悩みを抱えている。そしてそれを、処理しきれずに我を忘れてしまうことが多々ある』

犬『人間。お前は彼女に何を見た?』

男「え…」

犬『我は犬なり。そしてお前は人間なり。我と人間とでは見るものは違う、そして捉えるものも違う』

犬『考えるのだ。そして見つけ出せ、それがお前が望む答えになるだろう』

男「………」

犬『人とは難儀なものだ。餌を食い、寝て、そして生きる。単純なことをさも難解な風に捉える』

犬『ようは難しく捉え過ぎだ。人間、お前は彼女とどうなりたい?』

男「…仲良くなりたいけども」

犬『それでいい。見つけたではないか、相手への解決法を』

53: 2013/11/25(月) 16:42:38 ID:LTqKs4J2
男「おう…」

犬『我は期待しておるぞ。人間が何時までも笑って過ごせることを』

男「…ありがとな、犬」

犬『うむ。では相談料として菓子をくれ』

男「くっく、持ってきてるよ安心しな」

犬『…左様か』フリフリフリ

男(めっちゃしっぽ嬉しそうだな)


次の日 放課後 中学校前


男「よぉ」

妹友「っ……お、お兄さん…!」

男「今、空いてるか?」

妹友「どうしてここに居るんですか…私を、まっていたんですか」

男「まぁな。ちょっと話でも、したいなってな」

妹友「…よくそんなこと言えますね。あれだけのことを私から言われておいて」

54: 2013/11/25(月) 16:47:32 ID:o6tSal/c
男「度胸があるのが取り柄なんだよ。それで、どうなんだ?」

妹友「…今は忙しいです。だから無理です」

男「……そっか、ならまた明日来るぜ」

妹友「こ、来ないでください。もう顔も見たくないと言ってるじゃあないですか」

男「……」

妹友「私は、嘘つきになりたくないんです。私は自分で言ったことには責任を持ちたい」

妹友「…それが私が唯一決めていることだから」

男「だから、あんまり素直に語らないのか?」

妹友「……」

男「そっか、そう思ってんなら仕方ないな。おう、だったらあんまり問い詰めるようなこと……しないでおくぜ」

くる

妹友「…あ…」

男「だけどな、妹友」

55: 2013/11/25(月) 16:51:10 ID:uXTllrow
男「俺はそういうの、あんまり好きじゃない」

男「俺は素直が一番だって思う。なんだって、やりたいって思うことも……大切なんだって」

妹友「……」

男「確かにお前は俺のこと嫌いなのかもしれないよ。けどさ、だから俺も思ってるんだ」

男「──お前と仲良くなりたいって、そう思いたいって、大切なんだからって」

妹友「大切…」

男「おう。だって嫌だろ、妹の友達と不仲なんて」

妹友「…そう、ですけど」

男「まぁちょっとばかし我儘だけどな。俺の我儘、けど、それに付き合ってもらわなくてもいい」

妹友「……」

男「何時かは……仲良くなれるって、俺は信じてるからさ」

妹友「っ……お兄さん…!」

男「…おう?」

56: 2013/11/25(月) 16:55:45 ID:WwTRiCJw
妹友「私は、私は……っ」

男「ん、どうした」

妹友「っ……貴方と…悪い関係に……じゃなくて、私は……っ」ぎゅっ

男「……」

妹友「私は──駄目な子なんです……私の問題も解決しないで……」

男「…え」

妹友「やっぱり言えません、ごめんなさい…忘れてください、私のことなんて」すっ

男「ちょ、待ってくれ。今何を言いかけたんだ?」

妹友「なんでもありません」

男「いやいや! な、なんかあったのか…? さっきの雰囲気、単純な感じじゃ…」

妹友「ッ……なんでもないんです! だから、もう私のことは放って置いてください!」

男「っ……」

妹友「私はただっ……なにも出来ない馬鹿な子なんです! なにもはっきりと言えない! 自分で自分を制御できない、馬鹿な子なんです…!」

57: 2013/11/25(月) 17:00:09 ID:E5fJGOow
男「お、落ち着けって…」

妹友「もう放っておいてください!! もうっ…もうっ…忘れてください…私のことなんて…嫌いだって想ってください…」

妹友「いいじゃないですか、仲良くなれなくたって、あなたは貴方で幸せに………」

男「お前……」


「ガンバラナクッチャー!ガンバラナクッチャー!」


妹友「っ……!」

男「え、この声は」


「ワタシカワイイ!ダカラガンバル!」


男「お前どうしてここに…」


「ガンバルガンバル! にひー! …タスケテ!」

「ガンバルガンバル!タスケテ!モウヤダヨコンナノ!」

「──ダレカワタシヲタスケテ」

58: 2013/11/25(月) 17:05:44 ID:WVDIMPHE
男「…助けて?」

妹友「あ……やめて……」

九官鳥「ミンナナカヨクシテヨ!ナカヨクナッテ!カゾクシアワアセ!」

九官鳥「ヤダヤダ!ヤダヨヤダヨ!」

妹友「やめ、やめてよっ! きゅうちゃんやめて…!!」

男「…お、おい。そいつ何言ってるんだ、もしかしてお前の…」

妹友「なにも関係ないですっ! だ、だから…!」


九官鳥「──タスケテ、オニイサン、ダイスキナオニイサン」


男「…聞かせろ妹友」

妹友「うっ…あっ……」

男「お前、なにがあった? いい加減黙ってちゃ何もわからねーんだ……コイツは何を言っているんだ?」

妹友「な、なにも…」

男「いいからきかせろ本音を!!」

59: 2013/11/25(月) 17:09:44 ID:kCJwMKOY
妹友「なっ……なにを言えばいいんですか!? あなたには何も関係ないじゃないですか!!」

男「ああ、なにも関係ねぇな! けどな、俺はコイツの声が聞こえたぞ! このきゅうちゃんの声ってやつを!!」

男「俺にそれを聞き逃せってか? バカ言うな、俺がんなこと出来るわけねえだろ!!」

妹友「なにを…っ」

男「それはお前の本音ってやつじゃねぇのかよ!!」

妹友「っ……」

男「助けてってなんだよ。お前は俺との問題以外に、何を抱えてやがるんだよ……」

男「…もしかしてそれが俺と仲良く出来ない、理由でもあんのか?」

妹友「そ、それは…!」

男「あるんだな」

妹友「っ……」

男「──言ってくれ、お願いだから、教えてくれ」

60: 2013/11/25(月) 17:18:21 ID:HGmpv3iY
妹友「どうして、言わなくちゃいけないんですか……っ」

男「俺はお前と仲良くなりたいからだ!」

妹友「…っ…」

男「なにか悪いこと言ったか、俺は? 俺は俺で本音を言っただけだぜ」

妹友「……っ」

男「だからお前も言ってくれよ。何を隠してるんだ」


妹友「……私は…何もありません…」
九官鳥『家族の仲が悪いんよ』

妹友「なにも悩みなんて、大変なことなんてこれっぽっちもないんです…」
九官鳥『何時も喧嘩ばっかりしよって、皿もいっぱい割れよってね』

妹友「だから、なにも貴方に話すことなんて……ありません」
九官鳥『ウチが頑張っても、誰も気にせんと。だからもう……オイに助けてほしかったい』



妹友「あなたの顔なんて……見たくないんです…!」
九官鳥『助けて、お願いやけん、もうオイしか頼める人……おらんとよ…』

61: 2013/11/25(月) 17:25:36 ID:vi9D.iM2
男「───……」

妹友「もう、いいですか…私早く家に帰らなくちゃいけないんで…」

男「…そっか、そうだったんだな」

妹友「…え…?」

男「お前の本音、ちゃんと聞こえたよ──俺の耳にちゃんと届いた」

妹友「なにを…」

男「お前の悩みが、その素直になれないってことが──家族の問題なら」

妹友「っ…!?」

男「……俺にできることがあったら教えてくれ」

妹友「なん、でそのことを……私言ってないのに……」

男「いや、聞こえたんだ。俺には聞こえるんだ、お前の本音ってやつを」

男「──お前の本音は、ちゃんと俺に届いてるぜ」

62: 2013/11/25(月) 17:30:37 ID:en3wQiRI
自宅 部屋

男「…家族が不仲、か」

男(確かにいまさらだけど、色々と不審な点はあったんだよな)

男「この前家に遊びに来た時、予定よりも早く着てたよな…それって、」

男(なにか家であったのかって、思うし)

男「九官鳥が出ていったって時も、どうしてアイツだけが探してたんだ?」

男(…家の窓は開いてた。家には誰か居たはずだ、探しにも行かずに…)

男「色々と問題はあるんだろうけど……助けて、か」

男「……俺もなんで、あんなに聞きたがったんだろ、アイツの本音を」

ネズミ『人間さーん! どうもだよぉ!』

ネズミ子供『ドウモダヨ!』
ネズミ子供『ワーイ!』
ネズミ子供『ニンゲンサーン!』

男「よお。お前らか」

63: 2013/11/25(月) 17:34:14 ID:5oP6uxws
男「まーた大家族で逃げ出しやがって…」

ネズミ『エヘヘー!』

男「…お前らは幸せそうだな」

ネズミ『うん! 幸せだよ! こーんなにも子どもたちに恵まれて! これからもっと増えるよ!』

男「お、恐ろしいことを言うな…」

ネズミ『そうなの? だってだって、子供は増えたらいいものなんだよ! そしてぼくも幸せなんだよ!』

男「…おう、そっか」

ネズミ『家族は何時だって仲良くなんだよ! そしたら子供とも、子供出来ちゃうんだよ!』

男「うん。そこら辺はわからねーな!」

ネズミ『そうなんだよ?』

男「ネズミ算式はちょっとな…」

ネズミ『そうなんだよー……だけど、幸せな家族はいいもんなんだよ!』

64: 2013/11/25(月) 17:40:08 ID:5oP6uxws
ネズミ子『ニンゲンサーン!』
ネズミ子供『ボクラシアワセー!』
ネズミ子供『ニンゲンサンモシアワセー?』


男「……」コショコショ

男(家族は幸せになるべき。本当に単純なことだよな、それって)

男(不仲であるべきことじゃないよな、勿論、仲良くあるべきものなんだ)

男「っ……あれ、なんだ──今、なにか思い出しそうになった」

男「だいぶ前に……確か同じようなことを考えたことが……」



『うちはね、しょうらい幸せなかぞくつくるんよ!』

『おう、そっか。がんばれよ』

『それでね、かわいいかわいい…きゅうかんちょうを、かうの!』

『へぇー九官鳥ね。なんで九官鳥?』

『ものまねがトクイ言っとったけん、いーっぱい幸せなことばおしえっとよ!』

『そっか。そりゃ楽しみだな』

『うん! たのしみばい!』

65: 2013/11/25(月) 17:43:30 ID:5oP6uxws
男「………ああ、そっか」

男(ずっと前に、妹友と話したんだっけ)

男「幸せになって、九官鳥に……幸せな言葉を教えるって」

男「忘れてたぜ。そんな昔のこと…くそっ……」

男「くそっ……じゃあどうして、アイツは幸せになってねぇんだよ…!」

男「駄目じゃねえかそんなの、あっちゃいけねーことじゃねえかっ」

男「…馬鹿か俺は、本当に、馬鹿だな」


ネズミ『あ! おねえちゃん!』


男「…へ? おねえちゃん、って誰───」


女「迎えに来た」フンスー

男「…ここ二階ですけど、それに窓から何入ってきてんの!?」

66: 2013/11/25(月) 17:47:28 ID:5oP6uxws
女「…あなたが時間通りにこないから、迎えに来たの」

男「えっ? もうそんな時間だった…?」

女「わたしとの散歩。もう嫌になった?」

男「な、なってないなってない! 俺、めちゃくちゃ楽しみだったばい!」

女「ばい?」

男「いや! なんでもない!」

女「そう。じゃあ行くから……」

女「……これ持ってにゃん?」

男(そっとリードを渡された…)

中央公園

女「♪」たったった

男「お、おいって。あんまり走るなって…」

女「にゃーん」

男「…ったく」

67: 2013/11/25(月) 17:52:23 ID:5oP6uxws
女「今日も楽しいわん」

男「…そうですか」

女「あなたも楽しい?」

男「た、楽しいよ?」

女「そう。……えへへ~」ニヨニヨ

男(嬉しそうだなぁ)

女「実は今日はお客さん様も連れてきてるの」ずぃ

猫『おれ様だ』

男「ぎゃあー!! 何時からいたんだお前!!」

猫『ずっとだよ。ガキが鼻の下伸ばして嬢ちゃんのケツを眺めてる時からずっとだ』

男「な、眺めてなんかいねーよ!」

女「なんて言ってるの?」

男「ま、またセクハラってるよ…このデブ猫は」

猫『事実だろーが!』

68: 2013/11/25(月) 17:55:18 ID:5oP6uxws
女「ふーん、にゃんにゃん?」

猫『おっほ。やっぱ嬢ちゃんの撫で方わかってるわー! 気持ちい…ぐへへ…』

男「……はぁ」

女「あ。ため息」

男「えっ?」

女「ため息は、幸せを逃すって、おねえちゃん言ってた」

男「おう。そっか、すまん…思わずやっちまったぜ」

猫『こんだけ幸せなら、少しは吐き出したほうがいいんじゃねえの?』

男「…うっせ」

女「なにか悩み事?」

男「いや、別に。大したこと……じゃねえよ、うん、女さんが気にすることじゃない」

女「…また女さんって呼んでる」

猫『ありゃま。本当だぜ』

69: 2013/11/25(月) 17:58:16 ID:5oP6uxws
男「だ、だって……」

猫『てめーもいい加減慣れろよな。ほんっと、嬢ちゃんが可愛そうだぜ』

男「うっ」

女「どうして、呼び捨てしてくれないの……」コテン

男「…急に呼び捨てって、やりにくいじゃん?」

女「わたしは呼んで欲しい。あなたに、女って」

男「……」

猫『一回呼んでみればいいだろ。それで嬢ちゃんも納得するだろーぜ』

男「だぁーもう…わかった………お、女…?」

女「!」ぴくっ

男「…女」

女「…にひぃ~」ニコニコ

男(くそ、かわいい…!)

70: 2013/11/25(月) 18:01:04 ID:5oP6uxws
女「じゃあ、わたしも呼んでみるね」

男「お、おう?」

女「…ご主人様?」

男「なんでそうなる!? 呼べよ普通に!」

女「にゃーんっ」ぎゅうっ

男「うおおっ!?」

女「…わたしは幸せだよ、男くん」

男「な、なんだよ急に…」

女「こうやって貴方に飼われてること、それがなによりも幸せで堪らないの」すっ

ちゅっ ちゅっ

男「ちょ、おまっ、やめろって…!」

猫『おっほー嬢ちゃんだいたーん!』

女「だから、あなたも幸せでいてね?」ちゅっ

72: 2013/11/25(月) 18:05:13 ID:yZXiiArY
男「……うん…っ…」

女「ふふっ」ニコリ

猫『あ。嬢ちゃんそろそろ膝の上からどいてやってくれ、コイツ勃──』

男「だぁーまってろい! デブネコ!」

女「あれ、なにかお尻に…」

男「きゃー!! やめ、やめて!!」

猫『そろそろ、おっちゃん何処か行こか?』

男「変な気遣いするんじゃねえ! い、良いからちょっとどいてくれ…!」

女「?」ストン

男「はぁ……はぁ……ちょっとひとつ言わせてくれないか」

女「どうしたの」

男「俺は、またな……誰かの悩みを解決させてやりたいんだ」

女「お人好しだね」

猫『まったくだぜ』

男「う、うっせ。だけどな、その問題は……ちょっと大きくて、俺にもどうにか出来るかわからねーんだよ」

73: 2013/11/25(月) 18:10:20 ID:yZXiiArY
女「そうなの?」

猫『またガキはとんでもねえことに首突っ込むな…変Oだろお前』

男「……その問題は、少しだけ、お前の時と似てるんだ」

女「……」

男「家族っていうのかな。そういったことで、悩んじまってる奴が居て…」

男「…それをどうにかしたいって、思ってるわけなんだよ…だけど、俺にできるかなってさ」

女「うん」

男「どう思う? お前は、俺に……」


女「──出来るよ、あなたになら」


男「えっ?」

女「あなたになら、絶対にできる。それは一番わたしには分かる、あなたは必ず成功させるって」

女「だって、わたしが──救われたのだから。わたしがわからなくて、どうするの?」

74: 2013/11/25(月) 18:15:52 ID:yZXiiArY
男「…おう」

女「貴方は大きな世界を持ってる。その悩んでる人が、家族で悩んでる人が、もし大変なら」

女「──あなたの大きさで包んであげて。貴方の優しさで、守ってあげて」

男「……」コクリ

女「わたしは貴方のペット。貴方のおおきい囲いに入り込んだ──一匹の動物」

女「そこは広々としてて、楽しくて、自由で、それでいて……ドキドキする」

ぎゅっ

女「そんな場所に、貴方の自由な空間に──入れてあげてね」

男「…おう、わかった」

女「うんっ」

猫『…よくわからねえが、良いこと言われたみたいだな、ガキ』

男「…おう」

女「でもね」

男「おう?」

75: 2013/11/25(月) 18:21:40 ID:yZXiiArY
女「わたしは一匹の動物だから。縄張りも、欲望も…人一倍あるから」

女「──上手く扱ってくれないと、その子、噛んじゃうかも?」

男「き、肝に銘じておきます…!」

女「わんわん」

猫『…おいおい、これがどっちが飼い主かわかったもんじゃねーな。ガキ、ガハハハ』

男(本当だぜ…)


~~~~


男「よぉ。夜遅くにすまんな」

犬『構わん。我もまた今、たまたま起きたところだ』

男「そっか、じゃあ手短に相談しとくぜ」

犬『なにかな』

男「…本音を言いたがらねえ奴には、どうしたらいい?」

犬『時に自分の意見を悪だと決めつける輩がいる。ただし、それは悪いことだとは言わん』

犬『それぞれ言葉というものは、捉えようによっては、悪にも正義にもなるからだ』

76: 2013/11/25(月) 18:35:09 ID:yZXiiArY
犬『己自身が悪だと思うのであれば、悪だ。正義だと思うのであれば正義であり、決めつけることは出来ぬ』

男「………」

犬『本音、とは。まさしくどちらにでも成りうる危ういものだ。嘘に隠さず、吐露すれば劇薬になり得る』

犬『…しかしまた、最大の効力を発揮する特効薬にもなり得よう』

男「なるほどな。本音ってもんは難しいんだな、扱い方が」

犬『それは違う』

男「えっ?」

犬『言ったであろう。難しく考えることが正しいのではない』

犬『簡単でよいのだ。実にしんぷるに突き進んでよいのだ』

犬『本音とは、いわばコップ一杯に入れらた水から──こぼれ落ちた雫』

犬『しかしそれは元より水であって、なにも変わることはない』

犬『当然なのだ。そう、それは──当然なのだと、こぼれ落ちて当然なのだとな』

男「…それを、そいつにわからせればいいんだな?」

犬『左様。頑張り給え、人間』

77: 2013/11/25(月) 19:25:35 ID:vTvaWhLM
~~

男「今回もまったくもってわからなかったぜ!」

男「犬が言ってくれてることはすげーいいことなんだって思うけどさ…」

男(でも、やれることはやりきろう。俺にできることがあれば、やってやるんだ)

男「よし…頑張るぜ…!」

男(俺は絶対にアイツを…助けてやるんだ、そう求められちまったんだからな…)


後日 マック


男「よく来てくれた」

妹友「…だってあなたが来いと言いますから」

男「おう。だから感謝してる、馬鹿げたことだって無視されると思ってたし」

妹友「別にそこまで思ったりしません。素直に感謝は…してます」

男「そっか、なら良かったぜ。じゃあ早速ながら本題に入るぞ」

78: 2013/11/25(月) 19:30:03 ID:H.dAu4dw
~~~~

妹友「素直に話してみる、ですか?」

男「そうだ。お前の本音を、つまり言いたいことを家族に言ってやるんだ」

妹友「…そんなの」

男「何も変わらないってか? 違うって、多分、お前本音で家族と会話したことないだろ?」

妹友「………」

男「どうなんだ」

妹友「…わかりません、確かに言われれば本音で喋りあったことも無い、とも言えますし」

妹友「そうじゃないとも言えます。わかりませんよ、そんなこと…」

男「じゃあ、家族は好きか」

妹友「…好きですよ」

男「そのことを、親に伝えたことは?」

妹友「……ない、ですけど。お兄さんもあるんですか、好きだってことを伝えたことは」

79: 2013/11/25(月) 19:35:14 ID:9aj/lcCo
男「えっ? えーっと、うん、ないかも…」

妹友「言いづらいですよね、そういうのって」

男「…確かにな、けど、この状況を打破するためには…」

妹友「お兄さん。少し良いですか」

男「…どうした?」

妹友「私、別に助けて欲しいなんて思ってませんよ?」

男「おい…」

妹友「最初からそう思ってますけどね。何処をどう知ったのかはわかりませんけど」

妹友「──私はあんな家族でも十分、充実していると想ってます」

妹友「一般的には悪く見えるかもしれません。けどですね、私は満足なんですよ」

妹友「だから、変に頑張らなくてもいいんです。放っておいても良いんですよ」

男「……」

妹友「私はそれを、貴方に伝えにきました。だから、こういったこと、ウレシイですけど、やめにしてくれませんか」

80: 2013/11/25(月) 19:44:55 ID:sOG49JXE
妹友「だからもう金輪際──」

男「…幸せな言葉を教えたい」

妹友「…なんですかそれ」

男「昔によ、お前が俺に言ってくれたんだ。九官鳥に幸せの言葉を教えたいって」

妹友「へーえ、よく覚えてましたね。忘れてしまいましたよ、そんな昔のこと」

男「お前はさ、幸せな家族を作って。それから飼ってる九官鳥に、色々と言葉を教えたかったんだろ?」

妹友「…それが何ですか」

男「素敵だって思う。そういった夢を俺は考えたこともなかった」

妹友「……」

男「けどよ、今はその飼っている九官鳥は……幸せの言葉は憶えてない」

男「お前の苦悩やら嘆きやら、そんなんばっかりじゃねえか」

妹友「………」

男「なぁ。今回のこと、本当に何もしなくていいのか?」

81: 2013/11/25(月) 19:49:09 ID:vFxtF7L2
妹友「…良いんです、大丈夫ですって」

男「それが本音か?」

妹友「はい。私の本音ですよ、ちゃんとした私の言葉です」

男「…責任が持てる事実なのか」

妹友「そうですよ」

男「もし、仮にだ」

妹友「……」

男「それが嘘だった場合。おい、テメー覚えておけよ」

妹友「…嘘じゃないですよ」

男「そっか、そっかそっか。そうなんだな──」すっ

九官鳥『やっはろー』

男「──じゃあ一つ一つ聞いて行ってやろうじゃねえか、えぇ?」

82: 2013/11/25(月) 19:54:25 ID:nlA3d4FA
妹友「えっ!? なんで、きゅうちゃんがここに……!」

男「質問一つ目だ。お前は母親とは仲は良いか」

妹友「なっ…べ、別に悪くなんか……」

九官鳥『たまーにご飯、つくってくれちょらんばい』

男「ちょらんばい…? つまりは、仲良くないなテメー!」

妹友「は、はぁ?」

男「つ、次だ! 父親とはどうだ!?」

妹友「だから別に悪く無いって…!」

九官鳥『もっそい悪かよ。たまにびんたされとるの、みたことあるけん…』

男「なっ……お前、暴力振るわれたこともあるのか…?」

妹友「っ…!」びく

男「……そして最後に、お前はそんな家族と仲直りしたいか」

妹友「……。仲直りもなにも、悪くなんかありません」

九官鳥『助けてほしかとよ。うちの飼い主は、オイにしかた頼めんとよ』

九官鳥『みんなで仲良くしたいって。望んちょっとやけん』

83: 2013/11/25(月) 20:01:31 ID:kDbtmdo.
男「…やっぱ嘘じゃねえか」

妹友「…意味がわかりません!私の何を…わかってるとでもいうんですか…!」

男「ああ、総何度も同じことを言わせるなよ。お前の本音、ちゃんとわかったんだ」

男「俺には聞こえてるんだぜ。助けて欲しいって言葉を、お前が……ちゃんと残してる大切な思いを」

男「なぁきゅうちゃん。教えてやれ、お前の本音ってやつを──」

男「──コイツの本音ってやつを、自分自身に、教えてやってくれ」

妹友「きゅうちゃん…?」

九官鳥「ガンバレガンバレー」

男「……『何をそこまで意固地になっちょっとね。アホな飼い主』」

妹友「……え…」

九官鳥「カワイイカワイイ」

男「『ウチはね、ずっと見てたから知っとるんよ。アンポンタンなオイを、ずっとずっと見てた』」

妹友「お、お兄さん何を言ってるんですか……?」

九官鳥「ダイスキダイスキ! チョーダイスキ!」


男「『──よく泣かずに頑張ったね。ほんと、凄かよ。飼い主さん』」

84: 2013/11/25(月) 20:07:40 ID:3n/3Mwe2
妹友「え……あ……?」

九官鳥「『ずっとずっと、飼い主さんはしあわせになりたいって言っとったよね』」

九官鳥「『こんな仲の悪い家族は嫌だって、もっと皆仲良くなろうって、言っちょったよね』」

九官鳥「『ウチもそう思うんよ。だって、飼い主さんが悲しんでる所、みたくないんよ』」

九官鳥「『昔みたいに、あの公園で……楽しくピクニック行きたかとよね』」

妹友「っ……そ、そのこと…どうして……」

九官鳥「『もういいとばい。飼い主さん、もう、もう、頑張らなくたっていいとよ』」

九官鳥「『これからは自分の幸せ考えて良かって。な?』」

妹友「きゅう…ちゃん……」

九官鳥「『うちはわかっとるよ。オイの馬鹿な所、おっちょこちょいな所───』」


九官鳥「『──なによりも家族を愛しとる所、知っとるよ』」

85: 2013/11/25(月) 20:14:16 ID:vQ.JUUD.
妹友「うっ、あっ…なんで、どうして…私は……うちは…!」ポロ

ポロポロ…

妹友「もっと頑張らんばいけんとにっ…ぐすん…どげんしてそんなこと言うと…っ?」

男「自分で本音を重く見過ぎてるんだよ、お前は」

妹友「だ、だって私がわがままを言っても…っ」

男「それがどうしてわがままになるんだ? 違うだろ、本音はただの……思いだ」

男「何も変わらない。お前の意思であって、間違ったことでも、凄すぎることでもねーんだよ」

男「──我慢から零れ出てるものも、ただの思いだ」

妹友「思い…?」

男「そう、お前が本音を大きい物だって思うんだったら。それはただの勘違いだ」

男「本音はただの言葉だよ。お前にとっての、本当の言葉」


九官鳥「『──助けてというのは、正しいこと』」

86: 2013/11/25(月) 20:19:19 ID:9X0fBFBA
男「そのことを、この九官鳥は──きゅうちゃんは知っているんだ」

男「お前の本音をコイツは覚えている。だから、こうやってお前にわからせてあげられるんだ」

男「自分はこれだけ悲しんでるって。それを置くに仕舞いこんでても、ダメだってことを」

妹友「本音をわからせる…」

男「…ああ、ちゃんと聞いてやれ」

男「もう一度、自分と向き合え。そして考えろ」

男「……お前のこと心配してんのは、俺だけじゃないんだぜ」

九官鳥「ガンバレー!ガンバレー!」

男「…な?」

妹友「ひっぐっ…ぐしゅっ……あぁっ……きゅうちゃん…! きゅうちゃん!」ぎゅっ

九官鳥「カワイイカワイイ!」

妹友「ごめん、ごめんねっ…ウチ…そうよね、悲しいんよねっ…!」

妹友「もっと幸せを考えなくちゃっ…いけんとよねっ…」

87: 2013/11/25(月) 20:29:02 ID:kDbtmdo.
男「……」

妹友「うあああっ…! あぁあぁっ…きゅうちゃ、きゅうちゃん…!」

九官鳥『…なはは、ほんっとうちの飼い主はおバカさんたい』

男「…だな。こんなひと目の在るところで泣きやがって」

男「だけど、悪いことなんてこれっぽっちもない。それが、大切な本音なんだ」

妹友「ああぁぁっ…ひっぐ…ぐしゅっ…」

九官鳥『さてさて、にひひ、これからどうすっとかね?』

男「決まってんだろ? …騒ぎに行くんだよ、たーんとな」


男「くっく、さぁ行くか──本音とやらを語りによ!」


~~~~


九官鳥『ウチを飼ってくれた日。それはもう忘れられんたい』

男「覚えてんのか。鳥のくせに」

九官鳥『そうよ。案外覚えとるもんよ、あの日は…そりゃもう幸せだったばい』

88: 2013/11/25(月) 20:33:41 ID:g4wI0urY
男「……」

九官鳥『みーんな笑顔で、笑ってて、ウチの言葉に爆笑しとったよ。なはは。今でも思いだして笑えるね』

男「なんか、幸せそうだな。そういった雰囲気」

九官鳥『あったりまえやん。やけど、やっぱ今はそうでもなかとよね』

男「…おう」

九官鳥『なぁオイはどうしてそこまで、やってくれたん? うちの飼い主さんの為に、自分の秘密までバラして』

男「別に。理由なんてねえよ、けど、コレしか無いだろうなって」

男「一番アイツを理解できているのは、お前だって思っただけだ。俺にどうにか出来るって、思わなかっただけだ」

九官鳥『ほぇー案外考えとるんやね。真っ直ぐ馬鹿やと思ってたわ、すまんなあ』

男「…俺もそう思ってたよ。けど、教えてくれた奴が居たんだ」


「貴方は大きな世界を持ってる。その悩んでる人が、家族で悩んでる人が、もし大変なら」
「──あなたの大きさで包んであげて。貴方の優しさで、守ってあげて」


男「俺にできることは、ただ、守ってやるだけなんだって」

89: 2013/11/25(月) 20:43:23 ID:19I41Aoo
男「アイツの本音ってやつを大切にするだけだ。その手段として、お前を使わせてもらったんだよ」

九官鳥『ほうほう。よくわからんけど、ウチは役に立ったとことやね?』

男「ああ、十分だぜ」

じゃり

男「──さて、来たみたいだな」

九官鳥『なはは。ちょっち楽しくなってきたばい! どげんことなるとかね!?』

男「はぁ? んだよ、幸せなことに決まってんだろ」

九官鳥『よく言うなぁーニンゲン!頑張らなくちゃいけんのは、うちのほうばい!』

男「じゃあ頑張れよ。幸せにしたいんだろ」


「あの、お兄さん…」じゃり


男「おう、待ってたぜ…ここの公園はほんと人気だなぁ」

妹友「え、なにがですか?」

男「いいや、気にしなくていい。それで、どうだった?」

90: 2013/11/25(月) 20:47:22 ID:246fsRj2
妹友「…とりあず思ってたこと、言いました」

男「おう」

妹友「だけど、本当に伝わったのかは……わかりません」

男「…うん、だよな」

妹友「私にはやっぱり、かわれないと思うんです。だけど、だけど……っ」

男「どうした」

妹友「私は! うちは……諦め、ません」

妹友「やっぱり愛してるから、大好きだから、やっぱり……私の両親だから」

男「……」

妹友「もっと…もっと本音で…やっていきたいと、思います」

男「…おう、その意気だぜ」

妹友「は、はい! えっと、それとなんですが……そろそろ来ると思いますけど」

男「ん、ああ両親か。よく呼べたなぁ」

91: 2013/11/25(月) 20:50:26 ID:F.5A/awg
妹友「絶対に来て、って言ったら……来ると言ってましたので」

男「そうか。良くやった妹友」

妹友「それで、なにをするんですか?」

男「別に俺は何もしねえよ。ただ、コイツがな」ひょい

九官鳥「カーカー!」

男「…色々と言いたいことあるんだってよ」

妹友「えっ? きゅうちゃんが…」

男「お? そうこうしてるうちに、あれがお前の両親? あっちから歩いてきてるのって」

妹友「…そうですね」

男「じゃあ後は頼んだぜ、きゅうちゃん」

妹友「えっ、ちょ、何処に行くんですか!?」

男「またあとでくるってー! じゃあなー!」たったった

92: 2013/11/25(月) 20:54:29 ID:vJnILagk
妹友「なにを…」

「妹友。どうしたこんな所に呼んで」
「もう帰りましょう。時間も遅いし…」

妹友「あ、うん。そうだけど…」


「オカーサン……オトーサン……」


妹友「…え」


「オかーサン…おとーサン……にひひっ…キョウはぴくにっくだねっ!」


「こ、これは…」
「きゅうちゃん…?」


「たのしいねっ! おべんとう、おいしいねっ! おとうさん! あっちでなわとびしよう!」

「おかーさんお弁当美味しい! 美味しいよ! もっとたべたい! おとーさん! おかーさん!」


九官鳥「ダイスキ! みんなだいすきだよ! みんなみんな、だいすきだよ!」

93: 2013/11/25(月) 20:59:34 ID:CI3FzQ9I
「これっ…まさか…」
「あっ…うそ、そんなこと……」

妹友「これって……昔にピクニック来た時の……」


九官鳥「もっと遊んでよおとーさん! あっちにいっぱいあるよ! 楽しいよ!」


「わ、私は……そうだ、昔はもっと……」


九官鳥「おかーさん! お弁当、私もつくればよかったね!」


「っ…わたしは…!」


九官鳥「だけどね、がんばらなくっちゃ、わたしはもっとがんばらなくっちゃ!」

九官鳥「みんなえがおにしなくちゃ! もっとかわいくなって、みんなみんなげんきにしなくちゃ!」


妹友「………」

ポロポロ…

妹友「ひっぐ…あぁ……きゅうちゃん…!」

94: 2013/11/25(月) 21:05:50 ID:TS0UFIcQ

男「……頑張れ、頑張るんだきゅうちゃん」

男(お前の出来る限りの真似を、歌を、伝えてやるんだ)

男「それは、お前にしか出来ないことなんだ。お前の意思で、伝えてやるんだ」


九官鳥『ばかやろー! もっと幸せになれってんだぁああああああああ!!!』


男「…ああ、そうだぜ。お前の言うとおりだぜ」

男「幸せになりやがれってんだ。くっく、あははは!!」




私には見えた気がした。この夕暮れに赤く沈む公園の景色が、
ほんの一瞬だけ──あの春一色の記憶へと戻ったのだと。


妹友「おとーさん、おかーさん…」


口に頬張った、玉子焼きに味。
両手にもった縄跳びの硬い感触。

私は忘れることは出来ない。
いや、忘れてはいけなかったこと。

95: 2013/11/25(月) 21:10:22 ID:ESMNNmSM
妹友「もっと仲良くしようよ…っ」


今やっと思い出すことが出来た。
私が本当に望んでいた景色がここにあるのだと。

───私の願いが、今、見えたのだと。

妹友「私っ…もっといい子になるから! だから、お父さんお母さん! もっと…仲良くなってよ!」

妹友「昔みたいにっ…楽しくピクニック行けるみたいに! もっと笑って、楽しそうに…!」

妹友「私はやだよ! こんなの、やだ……やだばい!! もっと幸せに生きたんよ!!」

妹友「だからっ…だからっ……」


妹友「私は……幸せになりたい……」




~~~~~
~~~
~~

96: 2013/11/25(月) 21:14:54 ID:hPXDoNec
猫『ふわぁ~』

男「お。こりゃ雨が降るな」

猫『顔洗ったらだ馬鹿。んなこともしらねーのかよ』

男「うるせ」

猫『今日はどうした。また暇そうだなぁ』

男「なんか家に妹の友達着てるんだよ。気まずくてな」

猫『人間さんのクセにチキンってか、がはは』

男「…ホントにお前は口が減らないよな、ったく」

猫『ふわぁーにしても、眠いねぇ。おいガキ、ちょっと膝かせよ、寝るから』

男「はぁ?」

猫『いいだろ別に。喜べ、猫さまが膝の上に寝てやるんだぞ、幸せもんだぞ』

男「何言ってんだコイツ…」

97: 2013/11/25(月) 21:18:19 ID:5uKaxIpI
猫『よっこらせっと』

男「あーもう邪魔くせえ…」

猫『ふんふーん。おっ? オイみてみろ、あの鳥っこ』

男「なんだよ、また何か見つけたのか?」

猫『きゅうかんちょう、だったか? またカラスどもにいびられてるぜ』

男「へ?」


カラス「ぎゃーぎゃー!」

九官鳥『うるせぇー! ダマッチョルバイ!』

男「…何やってんだアイツは」すっ

猫『あ痛! 急に落とすなよガキ!』

男「はいはい。ごめんごめん」

九官鳥『ここいらの鳥は礼儀ってのをしらんばい!! …お、ニンゲン。おっすー』

98: 2013/11/25(月) 21:21:15 ID:lHF/lr8I
男「また逃げ出したのかよ…」

九官鳥『いや、今回はちゃうんよ。ちゃんと飼い主おるよ』

男「へ?」

「あ、ここに居たんですね」

男「…お前」

妹友「ど、どうも。お久しぶり、なんですかねこれって…」

男「まぁそうなるな。三週間ぐらいあってなかったし」

妹友「あの、えっと、今回のことは本当に…」

男「いや、何回礼を言うつもりだよ。別にいいって」

妹友「でも…」

男「メールでも電話でも。直接でも何回も言われれば、こっちも迷惑だぜ」

妹友「…そうですか」

男「ん。それで、最近どうだ?」

99: 2013/11/25(月) 21:24:45 ID:.XxuTG.2
妹友「…何もいうことありませんね。えっと、大丈夫だってことです!」

男「おお、そうかそうか。ならよしだ」

妹友「……あの」

男「うん?」

妹友「もう一回だけ、聞かせて欲しいんですけど……きゅうちゃんの声、聞こえるんですよね?」

男「え、あ、まぁーな。おう、なんとなくだけどな」

妹友「じゃあ一度だけ。一度だけでいいですから、なんて返事したか教えてくれませんか」

男「返事? 別にイイケド」

妹友「きゅうちゃん」

九官鳥『おっ?』

妹友「その、ありがと。本当に感謝してるから……本当に本当に」

九官鳥『なはは。ほんっとこの飼い主はアホよなぁ』

九官鳥『──よかよ、オイが笑ってれば、なによりも幸せたい』

100: 2013/11/25(月) 21:28:11 ID:a7ULTpbI
妹友「今、なんてイイました?」

男「…お前が笑ってれば、オイは幸せだってよ」

妹友「…はい! ありがとうございます!」ペコリ

男「よかったじゃねーか、なぁ?」

猫『おれに降るなよ。今回はノータッチだぜ、おっちゃんは』

男「いじけてんのか?」

妹友「えっと、その…最後に一つだけいいですか」

男「おう? どうした?」

妹友「……」

男「?」

妹友「私は、素直に言葉を言うのが……苦手です」

男「…ん」

妹友「だから、こうするしかなくって、その、えっと……ううっ…」

101: 2013/11/25(月) 21:51:45 ID:7sDbJBv6
男「お、おう?」

妹友「っ…やっぱり後は頼んだっち! きゅうちゃん!」ダダダダダ

男「ちょ、お前何処行くんだよ!?」

九官鳥『しっかたねーなーぁ、ニンゲン! よーく聞いとくんよ! 一度しかいわんけんな!』

男「お、おお」


九官鳥「──お兄さんのことなんて大っ嫌いです!! もう付き合いたくなんかありません!!」


男「……え?」

猫『ほぅ』

男「い、いまのって……どっちだ!? どっちが正しいんだ!?本音どっち!?」

猫『こりゃ嬢ちゃんに喰われるな…クワバラクワバラ……ッ!? ッ!? ……!!』びくぅ

九官鳥『なははー! んじゃまったなー!』

男「おぃいいいいいい!!」

102: 2013/11/25(月) 21:52:58 ID:7sDbJBv6
男「なにがどうなってやがるんだ…」

「にゃーん」

男「…おい、こんな時に猫のモノマネなんてやめろよ。ちゃんと聞こえるよに言えって」

「にゃん?」

男「こ、こっちはどうしようかテンパッてんだぞ!? からかうのもやめろデブ猫───」


女「にゃんにゃん」


男「──………」

女「…」

男「何時からそこにいたんですか」

女「…さっきから」

男「っ…っ……っ」ダラダラダラダラ

103: 2013/11/25(月) 21:53:50 ID:7sDbJBv6
女「あーここに美味しそうなぁ──」

女「──お肉があるなぁって」

男「ま、待ってくれ! 違う! そうじゃないんだ女!!」

女「がおー」


ぱくり


男「ぎゃあああ! やめてぇええええ!!」

女「はむはむ」

男「おっおっ…おふぅ!」

猫『…こりゃまた大変だねぇ、まったく』

猫『ふわぁーあ。眠いったらありゃしねーわ』

104: 2013/11/25(月) 21:55:22 ID:7sDbJBv6
ということで終わり

特別に続いたお話しなので続くは不明
とりあえず、数日置いて書く気起きなかったら落とそうと思いまふ


ではではノシ

109: 2013/11/27(水) 11:31:40 ID:xgbZ4olQ
小春日和の今日此の頃。
吐く息も白くなり、朝夕一際冷え込むようになりました。


男「………」

ペンギン『やべぇうめぇ魚うめぇ』グェグェグェ

キリン『あぁあぁぁああぁぁああ首凝るわぁぁああぁぁあああ』

ゾウ『オラ……なんで生きているんだっけ……ワカラン……リンゴ美味しいムシャムシャ』


今日は動物園に来ていて、
寒さにも負けず様々な動物たちは、思い思いに生きているようです。

やはりといいますか、なんとも動物の声が聴こえる俺にとって、
そんな一変した世界に心踊ることと──


女「ご主人様。あっちにライオンがいるの」

妹友「お兄さん。こっちにはカバが居るみたいですよ?」


──なるわけにもいかなそうです。

110: 2013/11/27(水) 11:34:14 ID:xgbZ4olQ
数日前 夜の公園

男「……………」

女「……………」

男「あの、ですね、えっとぉ~」

女「もう一度だけ言うからね」

男「ハイ」

女「あの彼女とはまだ会ってるの?」

男「な、なんで? 別に気にすることじゃ…」

女「これはただの世間話だよ」

男「…そ、そうだな、そうだけどさ! もう何それ!?」

男「ハッキリ言うけど…妹友とは変な関係じゃないって…!」

女「…妹友?」

猫『あ。やべぇ』

111: 2013/11/27(水) 11:34:59 ID:xgbZ4olQ
男「え? なに、俺なんか悪いこと言った?」

女「…………」じぃー

猫『おいおい、嬢ちゃんの前で呼び捨てにするなよ、他の女のことをよぉ…』

男「あ」

女「…わたしだって、まだ、そんなに呼び捨てされたこと無いのに…」

男「ま、待て。違うんだ、そいつとは長い付き合いだからさ…!」

猫『なぜ墓穴を掘るようなことを言うんだ…』

男「おぉぉ…っ?」

女「それは、わたしよりも長い付き合いなの?」

男「お、おう。まぁ数年ぐらい関係はあるな…ていうか幼馴染レベルというか…」

女「……そうなんだ」シュン

猫『ガキ…』

男「本当に待ってくれ! あのなぁ! 違うんだって、本当に!」

112: 2013/11/27(水) 11:35:49 ID:xgbZ4olQ
猫『おっちゃん。わかるぞ、嬢ちゃんの声わかんねーけどこの状況ははっきり分かんべ』

猫『ガキ。いい加減にハッキリ言わねぇと……嬢ちゃんマジで逃げ出すぞ』

男「ッ…」

猫『お前の手から離れて、手綱を引き千切ってな』

男「それは…」

猫『良いのかよ人間さん。おまえはそれで良いのかって聞いてんだ、おれ様は』

男「……」

猫『嬢ちゃんだっていっぱしの女なんだぜ? ペットだか飼い主だが言ってるけども』

猫『──自分が大事にしてるモンを取られるかけてるってことに、女として嫉妬してんだ』

男「…お、おう」

猫『わかってるならハッキリ言ってやれ。オレの大事な奴はお前だけだって、な』

113: 2013/11/27(水) 11:36:36 ID:xgbZ4olQ
男「は、はっきりと…!」

猫『ああ、そうだぜ。ハッキリと言うんだ! ほら言っちまえ!』

男「お、おぉぅ! 言ってやるぜ! あのな! お、女!」

女「わかった」コクリ

男「俺はお前のことを、えっ?」

女「最初からこうすれば良かったんだよね」

男「な、なにが?」

女「あのね、男くん」

男「は、はい…?」

猫『…なんか嫌な予感するぞ、おっちゃん。声わかんねーけど』

男(実に俺もだ)

女「──会わせて、彼女に。その貴方の妹友さんに」

女「会わせて」

117: 2013/11/29(金) 01:13:04 ID:3GWlqlLs
次の日 マック

男「ということなんです…」

妹友「いきなりなんですかお兄さん」

男「いやさ、わかるだろ。というかわかってください…!」

妹友「……」じぃー

男「な、なんだよ」

妹友「はぁーあ。知らなかったなぁ……お兄さんに彼女、居たなんて」

男「お、おう? まぁな、というか別にお前に言うことでもないかなぁって…」

妹友「………」

男「な、なんだよ?」

妹友「本気で言ってます? それ?」

118: 2013/11/29(金) 01:13:44 ID:3GWlqlLs
男「…………オ、オウ」

妹友「私、曲がりなりにも──こ、告白ッ! こくはくっ……してるんですけど…っ?」

男(顔が真っ赤だ…)

妹友「だからってその、なんていうか、お兄さんが悪いってことじゃないんですけど…でも、」

男「…そうだな、確かに言い方が悪かったぜ。すまん、無神経だった」

妹友「…。お兄さんは」

男「は、はい!」

妹友「…私の事嫌いですか?」

男「き、嫌いじゃねえよ?」

妹友「じゃ、じゃあ……しゅ、しゅき……好き、ですかっ?」

男「…友達としてっ?」

119: 2013/11/29(金) 01:14:32 ID:3GWlqlLs
妹友「…そうですよね、わかってました」ジュルルル

男「おう…」

妹友「それじゃ私、振られちゃったってことなんですね、これって」

男「ま、まぁそうなるかも……しれん」

妹友「そうですか……まぁ大丈夫です。平気ですからそんな顔しないでください」コトリ

男「なんか、すまん。こう……上手く言えないけどよ」

妹友「ですから大丈夫です。私は子供じゃないんですから。言ったでしょう? 自分の言ったことには責任を持ちたいって」

妹友「私はこれで良し。と判断したんですよ」

男「…わかった」

男(これでよかったんだよな、な? そうだよな、だけどえらくこう……)

妹友「…わかりました。じゃあその彼女さんと会えばいいんですね」

男「お、おう。えっ!? いいの? 会ってくれるのか…?」

120: 2013/11/29(金) 01:15:38 ID:3GWlqlLs
妹友「あちらが会いたいと仰るのなら。私だって、このままでいいとは思ってませんし」

男「……そりゃありがたいが、えっとなぁ」

妹友「もしかして、振った相手に頼みにくいとかですか?」

男「勿論それもあるけども。それ以外に色々と問題があるっていうか…」

男(女さ、ゴホン、女のほうがどう出るかイマイチ把握できてないのがなぁ…)

男(もしかしたら妹友を悲しませることを言うかもしれん。いや、アイツに限ってそんなことは…)

妹友「なにが心配なのか分かりませんけど、とにかく───」

妹友「──私は別にお兄さんの彼女とあっても構いませんってことです」

男「………。強いな、お前」

妹友「え?」

男「あ、いいや。なんでもない……ただ、無理してるんだったら」

121: 2013/11/29(金) 01:16:30 ID:3GWlqlLs
妹友「無理なんて、してませんよ。そんな馬鹿なことはもうとっくに…やめてます」

男「…おう、そっか」

妹友「私は私でやりたいことを、思うことを、したいことをやってるだけですよ」

妹友「だからお兄さん。是非とも会わせてください、彼女さんに」

男「…助かる。ホントマジで感謝するわ」

妹友「ふふふ。だーいじょうぶですよ、にしても、えらく尻に惹かれてますねお兄さん」

男「ま、まぁな。俺も驚いてるよ…」

妹友「可愛い方なんですか」

男「か、可愛いと思うけどっ?」

妹友「へぇーえ…」

男「そんなに詮索するなよ…恥ずかしいだろ…」

122: 2013/11/29(金) 01:17:37 ID:3GWlqlLs
妹友「…噂はやっぱりほんとうだったんだ…」ボソリ

男「えっ? なんか言ったか?」

妹友「い、いえいえっ! なんでもないんです、ただ…ちょっと覚悟を決めたっていうか」

男「覚悟? お、おう。そりゃありがたい…」

妹友「え、えーと…それじゃあ私はこれから用事があるので、日程決まり次第教えて下さい」

男「わかった。んじゃ…ありがとな妹友」

妹友「……っ……」

男「ん?」

妹友「…で、ではこれで!」

たたたーっ!

男「…どうしたんだいアイツ? いや、まぁ、俺が振っちまった後だしな…うん…」

123: 2013/11/29(金) 01:18:29 ID:3GWlqlLs
帰り道

男「……」スタスタ

男「はぁーあ……」

男「……」ピタリ

男「……モテ期か」ボソリ

猫『自分で言ってちゃ世話ねーな』

男「どぅあっ!? な、猫!?」

猫『よぅ。良く会うなガキ、昨日ぶりか。おれ様は今から餌場巡りだぜ』

男「そ、そうか…つか立ち聞きすんじゃねえよ、びっくりすんだろ」

猫『したくてしてんじゃねえっつのよ。おまえさんこそ、一人でブツブツ面白いこといってんじゃねえ』

男「お、面白いこととはなんだ! これはなぁ! い、一男子高校生としてな…!」

猫『あーわかるわかる。おっちゃんもわかるよ、猫だし、モテ期とか敏感だし、雌の発情期とかチョー気になるし』

男(なんか言い方がムカつく…)

124: 2013/11/29(金) 01:20:26 ID:3GWlqlLs
猫『けどよぉガキ、まぁガキはガキだからわっかんねーと思うけどよ』

男「…なんだよ」

猫『経験数として、ちっとガキよりも上級猫として一つ助言しておいてやる』

猫『──モテるってことは決して良いことだらけじゃねえぞってな、がはは』

男「…猫のくせして、人間様に言うじゃねえか」

猫『まぁ聞いておけって。あのなぁガキ、お前は女ってもんをわかっちゃいねーよ』

猫『何時だって可愛くて、綺麗で、胸をキュンキュンさせてくれる存在……だけじゃねえんだ』

猫『一度覚悟を決めたら、女は時に牙を剥く。爪を立てて、相手の喉仏に噛み付くことすら──躊躇しねぇ』

男「そりゃ猫の場合だろーが」

猫『おやおやぁ? でもよぉ、よく人間様の中でも言うらしいじゃねえか〝猫をかぶる〟ってよぉ?』

男「う、うるせぇな。違うって、アイツらはそんな野蛮な奴らじゃない、きちんと物事考えられる奴らなんだよ」

125: 2013/11/29(金) 01:21:32 ID:3GWlqlLs
猫『おやまぁこりゃ──随分と甘く見てやがんだな、生き方ってもんを』

男「甘く見てない」

猫『まぁいいぜ。おれだってとやかく言うつもりはねぇ、ただ、嬢ちゃんだけは悲しませるなよ』

猫『──ただまぁ、くっく、この状況でつらい目に会うのは──どっちだろうなぁ、えぇ? がはは!』

シュタタ

猫『おいガキ。おれは応援してやらねぇが、その状況には同情してやらんでもない』

男「…なんだよその言い方は」

猫『答えは一つだ。より良い運命ってやつはよ、絶対的に──一つだけって決まってやがるんだぜ』

男「……おう?」

猫『イタズラに答えは転がってる。おまえさんが一番ってモンを見つけて、ちゃんと納得しやがれよ』

猫『じゃねえと運命様に見限られちまうからな、んじゃな。ガキ』

126: 2013/11/29(金) 01:23:05 ID:3GWlqlLs
男「お、おい! 待てって、言いたいことだけ言いやがって…!」

男(…。何にも起きないよな、いや、本当にお話して綺麗さっぱり終われるよな?)


当日 動物園

男「そうしてこうなった、と…」

女「ご主人様」

男「…世間一般様居るところでそう呼ぶのやめような…!」

女「いや」フルフル

男「えっ!? いやっておまえ…!」

妹友「…」じぃー

男「ほ、ほら! 世間様じゃなくても俺の知り合いに聞かれてるよ!」

女「…ごしゅじんさまぁ~」ぐいぐいっ

男「おまっ! か、顔を押し付けてくるなって…っ」

妹友「ぐぬぬっ」ギリリッ

男「ちょ、本当に怒らないでください! マジで迷惑なのわかってるし、やめさせるからよっ?」

127: 2013/11/29(金) 01:24:01 ID:3GWlqlLs
妹友「うらやましぃっ…私だって、私だって…」

男「何いってんのお前!?」

妹友「はっ!? な、なんでもないばいっ! 聞き間違いやけん絶対!!」

男「き、聞こえてましたけど…?」

妹友「うッ…きゃ……うぅぅうう…っ」プッシュー

女「にへへぇ」

男「…お前もそろそろいい加減にしろって」ストン

女「にゃあっ」ゴス

男「なんなんだよ、ほんとーに何だよお前ら! 俺等って話をしにきたんじゃねーの!?」

女「違うよ」

妹友「ち、違いますけど…」

男「えっ、違うの!?」

128: 2013/11/29(金) 01:24:57 ID:3GWlqlLs
女「わたしは最初から話し合うつもりなんて無い」

妹友「…やっぱりそういうことなんですね」

男(いったい何が始まろうとしてるんだコレは…)

妹友「知ってますよ、貴女のこと。私の中学でも伝説はいくつか届いてますし」

男「で、伝説!? なにそれ初耳!!」

妹友「告白された回数がゆうに三桁超えている──から始まり」

妹友「嫌われ者の教師を無言で泣かせ、近所の不良を目先一つで飼いならし」

妹友「誰とも関係を作ることもなく、それを周りに孤独だと思わせず──優雅に佇む貴女を何時しか…」

妹友「人は『黒姫』と呼び始めた」

男「…なにその恥ずかしい名前」

女「フフ…懐かしい名前、確かにそんな風に呼ばれていた──時期もあったの」

男「ノリが良いなお前も!」

妹友「そして、そんな黒姫が……最近では変わってしまったと!」

129: 2013/11/29(金) 01:26:40 ID:3GWlqlLs
妹友「一度も感情を表すことのなかった彼女が、何時しか微笑むようになり──」

妹友「──それが一人の人間にだけ向けられていると噂になっていたんです!!」

女「それがあなた」ぎゅっ

男「…なんとなく流れでわかってた…うん…」

妹友「直ぐにお兄さんのことだって分かりましたよ…そんな人、そんなことになるように出来る人、あなたしか居ないって!」

男「え、じゃあお前…俺がその…」

妹友「……ええ、知ってましたですっ…彼女が居るってこと、知ってて告白……しました」

男「お前…」

妹友「だ、だって、言ったじゃないですか! 私は……私は無理をすることをやめたって」

妹友「例え馬鹿げたことでも、きちんと本音を伝えなくちゃって…」

男「…おう」

妹友「だから私は! 私は…後悔しないためにここにいます! ちゃんとぶつかって、この関係が壊れてでも…!」

130: 2013/11/29(金) 01:27:36 ID:3GWlqlLs
妹友「──私は絶対に…納得するまで諦めないって!!」

女「だと思った」

妹友「え…?」

女「匂いがするの、あなたからは。一匹の……獰猛な動物の匂いが」

女「男くんが、あたなの話をするたびに。あなたの想いが濃く感じた」

女「あなたは一匹の動物。もしかしたら、今までは…なにかの悩みに首を押さえつけられていたのかもしれない」

妹友「………」

女「だけど今は違う。あなたは自由な野良。何処にでも駆けていけて、どこまでも行けることが出来る」

妹友「…ええ、そうですよ」

女「うん。だからわたしは迎えうつ」

妹友「…私は覚悟を決めたら強いですよ」

女「わたしも強いの。だって、わたしはリードに繋がれてるから」ぎゅっ

131: 2013/11/29(金) 01:29:03 ID:3GWlqlLs
男「おお…っ?!」

女「わたしは、あなた以上に何処までも行ける。この人に連れられて、色んな世界を見て回れる」

妹友「…ッ…」

女「だから、だからね──」


女「──奪えるものなら奪えばいい」


男「……おぉ…」

妹友「いっ……ぁっ……ぐぅううっ……わ、わかりましたよ! ぜぇーたっい! 奪ってみせますから!」

女「待ってる」コクリ

妹友「ま、待っちょるばい!? こげんあっぱさかこといっとっても…!」

女「あっぱさか?」

妹友「っ……見くびんなってことばい!!」

男(もうやだ帰りたい…色々と頭の整理をしたい…)

135: 2013/11/30(土) 11:41:15 ID:jyqfrp6k
動物園 レストラン

男「ジュルルルル」

女「このカレーおいしぃ」

妹友「もぐもぐ」

男「…ぷはぁ、とりあえずお前らは何がしたいんだ?」

女「どういうこと?」

妹友「?」

男「そ、その…つまりは喧嘩を始めたいってことで…捉えてもいいの?」

女「喧嘩。それは少し、違う」

妹友「…喧嘩はいやです」

男「じゃなんだよ…俺にはよくわからん…」

女「ぶっちゃければあなたの取り合い」

妹友「…しょ、しょうですね…」

136: 2013/11/30(土) 11:46:14 ID:jyqfrp6k
男(本当にぶっちゃけられた…)

女「だから今日は彼女に会いたかった。確認のために──勝負のために」

妹友「ま、負けません! 絶対に…っ!」

男「…あのよ」

女「なに?」

男「今回のこと。はっきりいって、俺のせいだって思ってる」

男「俺がハッキリと言わないからこうなってんだろ? はっきり…お前のことを好きだって」

男「──お前が一番だって言わなかったから」

女「…」

男「俺がちゃんと言えばこんなことにならなかったはずだ。お前を不安にさせなきゃ、こういったことには…」

妹友「……ジュルル…」

男「だったら、言わせてくれ。俺にはもう気持ちは決まってんだ」

137: 2013/11/30(土) 11:51:23 ID:jyqfrp6k
男「俺にとっての一番は女、お前だってことを──」

女「わたしはペット」

男「──……え?」

女「そしてあなたはご主人様。これは、わたしが貴方に望んだ関係」

男「た、確かにあの時はそう言ってたけども…」

女「だからそれ以上、なにかを望めるとは思っていないの」

男「…どういう意味だ?」

女「そういう意味なの」

男「……。お前はペットだから、俺の彼女だとか付き合うとか駄目、そう言ってんのか?」

女「そう」コクリ

男「お前…」

女「なにか、間違ったことをいってる? わたしはなにも…間違ったことを言ってるつもりはない」

138: 2013/11/30(土) 11:57:56 ID:jyqfrp6k
男「んなの、人としての考えでは赤点だろ。お前は本当に動物のつもりか?」

女「…」

男「あーもう、よくわからん…お前はなに、俺のこと好きじゃねえのかよ…?」

女「…」チラリ

妹友「っ?」ビクッ

女「…スキ、だけど…」ボソボソ

妹友「………」

女「わたしは…ホントウに…」

妹友「……。お兄さん少し席を外しもらっても良いですか」

男「へっ? お、俺が外すの…?」

女「っ!」びくん

妹友「はい。お願いします、私ちょっと……この人とお話しがしたいんです」

139: 2013/11/30(土) 12:02:07 ID:jyqfrp6k
女「……」

妹友「別にお兄さんが心配するようなことにはなりませんから。大丈夫です」

男「いや、でもよ…」

妹友「お願いします」じっ

男「……」チラリ

女「……」

男「…わかった。喧嘩はするなよ、本当に」ガタ

妹友「はい」

男「じゃあ…話しが終わったら店出てこい。店前で待ってるから」

妹友「…ありがとうございます」

~~~

男「……本当に出てきちまってよかったのか?」

男(わからん。けど、えらく真面目な表情してたしな…妹友のやつ)

140: 2013/11/30(土) 12:06:59 ID:jyqfrp6k
男「はぁー…マジで猫の言うとおりだったぜ…」

男(女性ってのは何考えてんたが、わからねえ…普通に好きだ付き合うだじゃ駄目なのか…?)

男「うぅむ…」


『うぅむ…』


男「…んあ?」

『女性とはわからんものだ…うぅむ…どうしたらいいものか…』

男(変な声が聴こえるな。動物か?)スタスタ

男「えーっと、名前は…トラ?」

虎『ぬぉっ!? な、なんだ!? お主の声がわかるぞ!? …何者だ?』

男「怖っ!?」

虎『うわぁあああ! また聞こえたぞ!! くわばらくわばら…!!』

141: 2013/11/30(土) 12:12:45 ID:jyqfrp6k
男「あ、いや。すまん、驚かせるつもりはなかったんだ…聞こえてるか?」

虎『お、おおう…なぜお主は檻の外にいるのだ? 拙者と同じ…仲間ではないのか?』

男「…色々とわけがあってな」

虎『そうか。虎生にも…色々とある。うぅむ、深い』

男(なんか変なやつだなコイツ。いや、変じゃない動物なんて居なかったけども)

虎『…それでどの様な要件だ』

男「へ?」

虎『拙者に声をかけたということは、何かしらの理由があるということだろう?』

男「お、おお…別にただ、お前の独り言が聞こえてただけっつーか…」

虎『独り言? ああ、拙者の独り言か──ふふ、聞きたいか?』

男「いや別にききた」

虎『聞いて驚け。拙者は恋をしておるのだよ…長年の間、ずっとな』

男「……おう」

142: 2013/11/30(土) 12:23:51 ID:jyqfrp6k
虎『叶わぬ恋というのかな。ただ拙者は望まれれぬ恋などに興味は無い』

虎『必ず成就させてみせると──拙者は意気込んでいるのだ』

男「…叶わぬ恋ってなんだ?」

虎『見てみるがいい。そっちだ、その檻の向こうにいる女性だ──』

男「──ああ、あれか…」

男(少し離れた所に、もう一個の虎の檻があるな。雌なのかあれは)

虎『拙者とは遠くはなれておる。時折、檻が開き面会することも多々あるのだが…』

虎『…それでも言葉を交わすことは出来ぬのだ』

男「なんで?」

虎『生きた場所が違うというのかな。生まれついて覚える知識というものに差があるのだ』

男「……ああ、お前ら出身が違うのか」

虎『おお、そのようなものだ。同じ生き物であっても、生を受けた存在であっても』

虎『分かり合えぬことがある。そして、伝わらない思いというものがあるのだ』

143: 2013/11/30(土) 12:28:27 ID:jyqfrp6k
男「……なんでだよ、伝えればいいじゃねーか」

虎『クカカ。そうだろう? 拙者も同じ思いだ、お主とな』

男「何時かは伝えるんだろ? その思いってやつをよ」

虎『勿論だ』

男「…じゃあ伝えてきてやろうか」

虎『おっ? お主、今なんと?』

男「お前がタイミングを測ってるなら、俺が伝えてきてやるよ」

男「俺なら言葉も通じるし、檻に入ってるわけでもない。だったら簡単だろ?」

虎『…優しいのだなお主』

男「いい迷惑だったら、やめとくよ。どうだ、どうする?」

虎『いや…ありがたい。既に拙者の思いは固まっておる。あとは…どのような手段でも伝えるだけだったのだ』

144: 2013/11/30(土) 12:34:47 ID:jyqfrp6k
男「じゃあいいのか?」

虎『宜しく頼む。拙者の思い一つ端的に──『好きだ』と伝えてくれ』

男「わかった。任せろ」

虎『うぅむ』

男「……」くるっ

男(そう、だなよな。ホントに伝えるってことは大切なんだよ)

男(例え遠くても、近くても、自分の思いってやつに嘘をついちゃ駄目なんだ)

男(──伝えてからこそ、何かが始まるってもんだろ)

男「よぉ、聞こえるかアンタ」

トラ『…なぁーにアンタ。ウチになんかよぉ? ふふ、面白い人間ね…?』

男「一つ、アンタに伝えたいことがあるんだ。今は質問はしないでくれ」

トラ『…。りょーかい、それでなぁに?』

145: 2013/11/30(土) 12:41:00 ID:jyqfrp6k
男「あそこの虎から…アンタに伝言だ」

トラ『へーぇ…なにかしら?』

男「アンタのこと。ずっと前から好き、だそうだ」

トラ『……』

男「ただそれだけを伝えに来た。そして、その気持を───」

トラ『…ふっふ、くくくっ…』

男「な、なんだよ…?」

トラ『キャハハハハ!! な、なにそれ…っ…ふふふ!! アハハハ!!』

男「な、なんで笑うんだ!? テメー…ッ!」

トラ『あらあらあら……ふふ、笑っちゃうわよぉーだって、だって、クフフ』

男「あの虎の思いを馬鹿にしてんのか…!?」

トラ『馬鹿にする? うーうん、違うのよぉ? 聞いてね可愛い可愛い人間さん』

トラ『あなた勘違いしてるわよぉ? あの虎が好きなのは、ウチじゃーない』

146: 2013/11/30(土) 12:44:35 ID:jyqfrp6k
男「は…? だ、だってアイツは確かに…」

トラ『ここの檻のことを言ってたのかしらぁ? うんうん、じゃあ後ろ見てみなさい。ウチの後ろよ』

男「後ろって…」

トラ『そろそろまた──餌の交換で来るはずだからねぇ…ふふふ』

きぃー…ガチャン


「ほらーメイちゃん。ご飯の時間だよ~」


男「え?」

トラ『これがアイツの──本命の相手よ。アイツが好きで好きで堪らない…』


飼育員「たーんとお食べー」


男「…嘘だろ…オイ…」

トラ『──叶わぬ恋の相手、よ』

147: 2013/11/30(土) 12:55:20 ID:jyqfrp6k
男「っ……人間…?」

トラ『だから言ってやりなさい。あの馬鹿虎に、ウチが代わりに答えを用意しておくわん』

トラ『いい加減みっともないことやってないで、はやくウチと──交尾しろってねぇ?』

男「うぇ?!」

トラ『そっちのほうが、この人間も喜ぶわよって。フフフ、じゃあよろしくねぇ…かわいい人間さん』

男「……お、おおう…」

~~~

虎『ど、どどどどうであったか!?』

男「…お前」

虎『…? どうしたのだ、伝えることが出来なかったのか?』

男「つ、伝えられるわけねーだろ!? な、なんだよ好きな相手って…人間かよ!?」

虎『言わなかったか?』

男「い、言ってねーよ! いや、俺の勘違いってやつかもしれねーけどさ!」

148: 2013/11/30(土) 13:02:43 ID:jyqfrp6k
虎『…ふむ。なんにせよ、やはり否定されてしまうのか…』

男「お前っ……本当にあの飼育員さんが好きなのか…?」

虎『うぅむ。愛しておるな』

男「…お、おおっ…」

虎『拙者は正直者だ。自分でいうのもなんだがな、絶対に嘘はつかんのだ』

虎『あの人間を愛しておる。生まれが違えど、生き物として違えど──』

虎『──子を作りたいと願っておるのだ』

男「……そう、なのか」

虎『堪らんだろう。あの引き締まったヒップ、着衣を引き裂いて、舐めまわしたい』

男「オイ」

虎『おっと、失礼した。何分性としてな…クカカ』

男「…だけど、言ってたぞ。あの檻にいるトラが」

149: 2013/11/30(土) 13:10:19 ID:jyqfrp6k
虎『なにっ? あやつの言葉など聞くな……不愉快で耳が腐るぞ』

男「…結構厳しいこと言ってたぞ。馬鹿虎って」

虎『フン』

男「お前とアイツ、そういった仲なのか?」

虎『…長年の付き合いではある。とはいっても、生まれは違うのだがな』

男「こ、子作りしろって…言ってたぞ?」

虎『御免被る。拙者はあの人間と子を作るのだ…アイツとは無理なのだ』

男「無理ってお前……嫌でもわかってんだろ? 人間と虎じゃ…」

虎『言ってたであろう。拙者は、叶わぬ恋など望まぬ』

虎『──絶対に実らせてみせるのだと』

男「…お前」

虎『お主には感謝しておる。気持ちを伝える手立てを手伝ってくれた』

150: 2013/11/30(土) 14:59:12 ID:jyqfrp6k
虎『だが、拙者の思いを否定するのであれば──……去ってくれ』

男「…俺は別に否定なんてしねぇよ」

虎『ほぅ』

男「良いじゃねえか。例え人間と動物、そこに恋愛やら好きやら……そんなのを馬鹿にしたりはしない」

男「お前の気持ちは上等だよ。かっこいいし、素敵だなって…思う」

虎『……』

男「けどよ、やっぱ難しいだろ。そういうのって、やっぱしさ」

虎『だろうな』

男「応援、っていうのもあれだけど。頑張ってくれとしか、俺には……言えない」

虎『うぅむ。言われなくても頑張るのだ、拙者は元よりそのつもりなのだから』

虎『お主、拙者の話を聞いてくれ感謝する』

男「おう」

虎『近いうちにまた逢おうではないか。その時になれば、クカカ、また状況も変わっておろう』

151: 2013/11/30(土) 15:04:34 ID:jyqfrp6k
~~~

男「…人間を好きになった虎か」

男(本当に動物ってのはいろんな事を考えるよな。好きになったり、嫌いになったり)

男(自分がやりたいってことに──素直に向かっていく、人よりも正直者だ)

男「…アイツは何時、正直になれるんだろうか」

「──お兄さん、ここに居たんですね」

男「おっ? おお、妹友か」

妹友「探したんですよ。店前で、と言ったのは貴方じゃないですか」

男「す、すまんな。ちょっと野暮用があって…えっと、それで?」

妹友「あ、はい。話は終わりました」

女「…終ったの」コクリ

男「…おう、どうなったんだ一体」

152: 2013/11/30(土) 15:08:20 ID:jyqfrp6k
妹友「ゴホン! えーっと、つまりは簡単に言うと──私達、友達になりました!」

女「…なったの」コクリ

男「はい?」

妹友「これもまた簡単に言いますけど、お兄さん。私諦めませんからね」

男「…どうしてそうなったのかをまず教えろ!」

女「えへへ」テレテレ

男「なぜ照れてんだ!」

妹友「あれ、分かりませんか? まぁそうですね…」

女「…この人には伝えなくてもいいって思う」

妹友「そうですか? そうかもしれませんね…ということで秘密です、お兄さん」

男「ひ、秘密…!?」

女「秘密です」

153: 2013/11/30(土) 15:13:51 ID:jyqfrp6k
男「いや、ホントに教えてください…! なんで秘密なんだ!? 俺って部外者じゃないよな!?」

女「…あの、ね」

男「なんだよ…?」

女「わたしは自信がなかったの…色々と、いっぱい、自信がなくって…」

男「…おう」

女「これが本当に正しいのかなって、今はこうなってるけど、これが…」

女「同じように求める人と出会ったら、悪いことじゃないのかなって…わたしだけってのは駄目じゃないのかなって」

男「…どういう意味だよ」

女「……」じぃー

男「?」

女「わたしはあなたが──好き…です…」

男「お、おおっ?」

女「う、うん……そう、だから……えっと…その………ごめんなさいっ…!」ダダダダダ

154: 2013/11/30(土) 15:19:49 ID:jyqfrp6k
男「えっええぇぇええ!! なんで逃げる!?」

妹友「あーあ。お兄さんが問いただすことするからじゃないですか」

男「お、俺が悪いの?」

妹友「はっきり言いますけど、お兄さん。女さんから好きって言われたこと、あります?」

男「………」

妹友「無いですよね。今のが初めてですよね」

男「…かもしれない」

妹友「あの人って多分、人との付き合い方が……苦手なんだと思います」

妹友「だから動物だとか、縄張りだとか、そういった言い方をして誤魔化してたんでしょうけど…」

妹友「…もっと言いたいんだと思いますよ。好きだってことを、お兄さんに」

男「…そ、そうなのか」

妹友「私のことも、どうも苦手だったみたいですね。だから言ってあげたんです、さっき──」

妹友「──私は貴女と一緒で、同じ仲間です。だから友達になりましょうって」

155: 2013/11/30(土) 15:25:07 ID:RsxuuQow
男「同じ仲間?」

妹友「何も変わらない同じ人間だってことですよ。同じ人を好きになって、同じことを思ってる」

妹友「不安なんでしょうね…人を好きになるのが初めてのことだから、慣れてそうな私が正しいじゃないかって…」

男「…すまん、意味がわからん」

妹友「ようは、どちらが──本当に正しいのか、決めようって話です。お兄さん」ぎゅっ

男「おおっ?」

妹友「私はお兄さんが……す、好きです。だって、ずっとずっと貴方を見ていたから…」

妹友「私が小さい時から、良いところや悪いところ。全部、見てきて…そう言ってるんです」

男「…あ、ありがとう…?」

妹友「例え沢山の距離が開いてたとしても、それでも、私は満足する結果を追い求めます」

妹友「──覚悟しておいてください、お兄さん?」にこ

男「………え、えぇ…」

156: 2013/11/30(土) 15:33:54 ID:RsxuuQow
~~~~

男「…ということがあったんです…」

犬『ほぅ。些か話を変えてすまないが、その虎。元気にしていたか』

男「え? 知り合いなの…!?」

犬『昔にな。くっく、楽しいやつだった…己の生き様を高らかに語る姿は、今でも忘れぬ』

男「お前、一体何者だよ……」

犬『我は犬なり。それ以上でもそれ以下でもない』

男「…なんかさ、みーんなそれぞれ考えてて。それが俺にはよくわからねえんだ」

犬『だからこそ、世界とは面白い』

男「お前はそう言えるかもしれないけどよ…俺には大変なことなんだぜ」

犬『…己が見える景色が広がり、そして捉える幅も大きければ、悩みもまた大きくなろう』

犬『人間。悩め、苦悩するのだ。そして──導き出した答えは、武器となる』

男「武器?」

157: 2013/11/30(土) 15:44:29 ID:RsxuuQow
犬『左様。武器とは傷つけるものだけではない。そして、この武器は悩み抜き続けるモノでしか持ち得ることは出来ぬ』

男「…つまり?」

犬『慣れだ。慣れという武器は、なによりも強い』

犬『他犬に思いを伝えることもできよう。種族の幅をも飛び越えよう』

犬『己が紡ぎだす思いに──純粋に慣れることが出来る輩は、強いのだ』

男「慣れることがうまいやつは…凄いのか」

犬『人間もまたそうであろう。我々の言葉を聞き、それでもまた正常でいられる』

男「…そっか、これもまた慣れなのか」

犬『単純ではないのだ。悩み、考え、思考する。それが慣れという武器を作る手段だ』

犬『あのおなごは、その武器を持ち得てないのだろう』

犬『──だから他の武器におそれを抱く。見たこともない強さに、牙を向くことしか出来ぬ』

男「……おう」

犬『おなごはいい友をもったようだぞ、人間。感謝するのだな』

158: 2013/11/30(土) 15:49:54 ID:RsxuuQow
~~~

男(つまりは──アイツは好きだってことに慣れてないんだな)

男(それで妹友が怖いと。好きだって言える慣れに、武器に、怖がってたんだ)

男(…気づいてやれば良かったな)

男「今まで独りぼっちだったんだ。黒姫なんて言われるぐらいに、誰とも接してなかったんだ…」

男「…俺がどうにか出来る問題じゃねーよな、これって」

男(俺がどれだけ好きだ好きだ言っても、アイツが納得しないなら、それまでだ)

男「…というかどんだけアイツの事、好きなんだよ俺」

男(なんか…妹友に申し訳なくなってきた…いろんな意味で…)

カラス『よぉ人間!』

男「うぉっ!? な、なんだカラスか…どうした?」

カラス『きゅうにすまねえっす。あの犬から伝言だぜ!』

159: 2013/11/30(土) 15:54:09 ID:RsxuuQow
男「伝言? なんでさっき言わなかったんだアイツは…」

カラス『しらねーっすよ。それよりも伝えてもいいっすか?』

男「おう。なんだよ」

カラス『えーっと、なんか犬のじっさんが言うにはぁ』


『人間。武器とはまさに猛犬の象徴である。しかし、それが正義と限られることではない──』


カラス『だそうっすよ?』

男「…なんだそれ?」

カラス『わかんね。その後、じっさん家の中に入っちまったし』

男「おう。そっか……わざわざすまねーな」

カラス『おうよー! んじゃまったな人間ー!』バサバサ

男「…正義と限られることでない、か」

男(意味がまったくわからん)

160: 2013/11/30(土) 15:58:30 ID:RsxuuQow
次の日 朝

妹「うわぁー…今日学校あるのかなこれって……」

男「んあ? どうした朝から…ふわぁ…」

妹「ほらほら、見てよ兄ちゃん。これこれ」

男「なんだよ…」


『速報です。動物園の虎が逃げ出したということで───』


男「…は?」

妹「昨日兄ちゃんが行ってた動物園じゃない? ていうか、どうしてあたしも連れってくれなかったの!」

男「うそ、だろ、えっ?」


『詳細は近隣の森へと逃げ出した模様。地域の住民の方は───』


男「ッ…!」ダダダ

妹「ちょ、兄ちゃんどこいくの!?」

161: 2013/11/30(土) 16:03:43 ID:RsxuuQow
~~~

prrrr ガチャ

男「…妹友かっ!? お前大丈夫か!?」ダダダダ

妹友「はぇ…だればい…こんな朝早く…ふぇえ…」

男「寝ぼけてんじゃねぇ! お前、動物園近くだろ!?」

妹友「そうやけど……なぁに…あんちゃん、ウチ眠かとよ…」

男「だぁーもう! 良いから早くニュース見ろニュースを!!」

妹友「にゅーす…? うん、うん……きゃあああああああ!?」

男「わかったか…はぁ…はぁ…」

妹友「な、なんですかこれ!? に、逃げ出したって…あわわわわわ…!」

男「とにかく落ち着け! 今からそっちに俺が向かってるから!」

妹友「だ、駄目ですよ! 危ないじゃないですか!」

男「馬鹿かお前は! 俺なら大丈夫だろ!」

162: 2013/11/30(土) 16:07:33 ID:RsxuuQow
妹友「あ。そうでしたね………って、駄目ですよ虎ですよ虎ぁ!? お兄さんがどうにか出来る問題じゃないですって!!」

男「……いや、多分、その虎知り合いだ…」

妹友「えっ!? …マジです?」

男「お、おう。だから今そっちに走って向かてる……お前は外にでるなよ!? いいな!?」

妹友「は、はいっ!」

ピッ

男「ふぅーこれでよし、後は──」

男「──こうするしかない、よな」


すぅううううううはぁあああ…


男「俺の声が聴こえる奴らは聞けぇ──!! 」



ネズミ『あん、ピーナッツの飼い主じゃん』ヒョコ

カラス『どしたー人間?』バサバサ

野良猫『おやまぁーデブちゃん所のぉー』シュタタ

163: 2013/11/30(土) 16:18:16 ID:RsxuuQow
男「よし。よく集まったな、お前らに頼みがある。そして仲間にも伝えるんだ」

男「黄色くて、シマシマの、そしてとてつもなくデカイ動物を見かけたら──教えろ」

ネズミ『なんだよそれ。まぁいいけども』

カラス『黄色ね。はいよー』

野良猫『あらあらまぁまぁそうなのねぇ、わかったわぁ』

男「頼む。後は…自力で探すしかねえな」

男「ほんっと何やってんだよあの虎は…っ!」

ダダダ

~~~~~

世界はまあるいと、誰かが言っていた。
どこまでも続いているのでなく、何処かでまた元の場所に戻る道になるのだと。

初めて聞いた時は、そんな馬鹿なと否定はした。
けれどそうなのかもと、今ではそう思ってしまう。

どのような道を進もうとも。
いずれ元の場所に戻される。いつだってそうだ、世界に自由はない。

「………」

何時だって世界は窮屈で仕方無い。

164: 2013/11/30(土) 16:39:33 ID:RsxuuQow
「……ガルル…」

自分がどうなろうと構わない。
気に入られなかったのなら、何時か見た他の動物同様に。

何かに撃たれて氏ぬだけだ。
血を流して、何も見えなくなって、そのまま──

「…ガウ…」

それでもいいと思った。
それでアイツが良くなるのであれば。

単純に答えをみつけられるのであれば。


「──そうじゃねえだろ!!」


声が聞こえた気がした。
振り向く、するとそこには──見覚えのある顔があった。


「お前は……そうすることがいいことだって思ってんのか…!」

165: 2013/11/30(土) 16:46:48 ID:RsxuuQow
「ガルル…」

この人間は何を言っているのだろうか。
わからなくて、そしてとても怒っていて、気分が沈んでいく。
台無しにされた気分だった。

「…お前はわかってると思ってたのによ。どうしてだ、どうして逃げ出したんだ」

どうして。
理由なんて一つしか無い。

「…振られたのか」

そう、それしかない。
振られてしまったのだ。アイツには──恋人がいた。

「…グルル」

だから逃げ出したのだ。
以前から企てていた手段を使って。

「以前から? 以前からって…」

傍観だけでは何も始まらない。
なにか手段を作らなければ、思いは伝わらない。

166: 2013/11/30(土) 16:53:59 ID:RsxuuQow
「…ガフ」

全ては誰かの為だった。
そのために準備をしていた、なのに、今はこうやって違った形で使用してしまっている。

「…お前は」

弱いのだろうか。
いけないことだとはわかっていた。けれど、それでも。

──こうするしか方法はない。

「違う…そうじゃないだろ、なんでお前はそうも…!」

「俺が知っているお前は…もっと賢そうだったぞ、なのに…」

人間は悲しそうだった。
この話は人間にも伝わるのかと、少し意外だった。

「…お前がなんでここまでするのか、わっかねーよ…けど、それでも!」

「あの虎の為にだってことはわかる!!」


『──そうね、確かにあの馬鹿虎のためよ』

167: 2013/11/30(土) 16:58:45 ID:RsxuuQow
『ウチはそれでも、やっぱり──報われて欲しかったのよ』

『あの馬鹿虎に、幸せに、アンタなんか絶対に報われないって思ってても…』

トラ『ウチは幸せになって欲しかった。アイツに』

男「……っ…」

トラ『ほんっと馬鹿よね、アイツって。もう氏にたくて氏にたくてたまらないらしいわ』

トラ『本気で、本気で好きなのねって思った。たった一回の失恋に、アイツはもうボロボロ』

トラ『…ほんっと馬鹿なんだから』

男「お前は…一体何がしたいんだ」

トラ『逃げ出して? ふふふ、そうね。これってただの…罪滅ぼし』

トラ『あの飼育員に恋人がいるって教えたの、ウチだもの』

男「えっ…」

トラ『昨日のよる。何度目かの──繁殖対面だったとき』

トラ『相変わらずぶすっとしてたわ。なーんにもウチに興味示さないの』

168: 2013/11/30(土) 17:04:10 ID:RsxuuQow
トラ『これだけ毛並み良くしたのに、何度も何度も毛づくろいして、気に入られるようにしたけど』

トラ『ふふ。やっぱり伝わらないわよね、馬鹿な男ってのには…だから怒っちゃったのよ』

トラ『──あの人間には恋人がいるわよって、ぱぱーっと言っちゃったの』

男「……」

トラ『そしたら、もう──想像はつくわよね? 酷かったわぁ、暴れて、鳴いて、転がって』

男「…そう、なのか」

トラ『馬鹿みたい。ほんっと馬鹿みたい、しあわせになりたいのなら──もっと良い答えを見つければよかったのに』

トラ『こうなる運命ってのは、わかってたはずなのに。わかってた、わかってたのにね……』

男「……」

トラ『ウチはどうなると思う? こうやって檻から逃げ出して、それから、どうなると思うかしら?』

男「…良いことにはならないと思う」

トラ『でしょう? みたことあるわ、なにかこう長い黒いやつで……殺されちゃうの』

169: 2013/11/30(土) 17:13:29 ID:RsxuuQow
男「こ、殺されるまではならねえって…!」

トラ『ううん。十分よ、殺されて当然のことしてるつもりだし』

男「お、お前…今からでも戻ろうって! まだ間に合うから!」

トラ『…優しいのねかわいい人間さん。でもね、戻っても仕方無いじゃない』

トラ『壊してしまった世界は──もう元に戻らない』

トラ『世界は本当に狭いのよ。ちっさくて、あの檻ぐらいしかないの』

トラ『…そんなの耐えられない。ウチがやってしまったことを、ずっとずっと…』

トラ『あの檻の中で悔やみ続けるなんて。無理なの…』

男「む、むりだなんて…」

トラ『クスクス。かわいい人間さん』

170: 2013/11/30(土) 17:22:42 ID:RsxuuQow
トラ『見てたわよ? あなた、素敵な女の子を二人も連れているのね』

男「お、おおっ?」

トラ『声はわからないけれど、それでも、二人共あなたのこと──好きだってわかったわぁ』

男「…そう、みたいだよ」

トラ『ふふっ、それに対して人間さん。あなた、すっごく──後悔してるでしょう?』

男「……」

トラ『なんでもっとしっかりしなかったのかって。自分がはっきり言えば、こうも面倒くさいことにならなかったって』

男「…ああ」

トラ『けどね、仕方ないわよ。そういうのって、ホントに女の子って強いから』

トラ『いち早く慣れることをオススメするわ。頑固者にはならないこと、これお姉さんからの助言ね』

男「…ありがと、いや! 違う違う! なんで俺がこうも言われなくちゃいけないんだよ!?」

トラ『あらあら。元気ねぇかわいい人間さん』

171: 2013/11/30(土) 17:34:39 ID:RsxuuQow
男「お、俺のことはどうだっていいだろ!? 今はお前のことだよ!」

トラ『…』

男「お前があの虎に罪滅ぼしがしたいっていうんだったら…もっと、イイ風にやろうぜ!」

男「こんな、氏んでなんかじゃアイツも…なにも浮かばれないだろ…!」

トラ『大丈夫よ。アイツはウチになんの興味もないし、氏んだって何も思わないからねぇ』

男「んなこと…!」

トラ『かわいい人間さん。今日はウチを探しに来てくれてありがとうね』

男「っ…」

トラ『だけど、ここまでよ? もうウチに構わないで、もっと自分のことを大切にしないさいな』

トラ『これからもっと大変なことになるんだから。二人共…大切にしてあげてね』

男(…ダメだ、コイツはもう諦めてる…っ)

男(逃げ出している時点で、もう覚悟を決めてやがるんだ。すでにこの状況に…慣れはじめてる…っ)

172: 2013/11/30(土) 17:38:02 ID:RsxuuQow
トラ『ほら、早くしないと噛み付いちゃうわよ』

男「お前は…っ」

トラ『なぁに?』

男(っ……なんで、そうも簡単に出来るんだよ…自分の命だぞ、大切な思いだぞ!)

男「なのにっ…どうして…っ」


「───伝えるのが怖いからだよ」


男「…え?」


「───慣れないことをしようとすれば、やっぱり怖いんだもの」


「───だったら逃げ出したくなるのも、わかる」


トラ『あなたは…』


女「そう思うの、男君」

173: 2013/11/30(土) 17:41:49 ID:RsxuuQow
男「お前どうしてここが…! いや、なんでここに居るんだ!?」

女「妹友ちゃんから聞いたの。あとは……匂いで追ってきて」

男「匂い!?」

女「そんなことよりも、ねぇ、聞かせて」

男「え、な、なんだよ?」

女「このトラさんは困ってるんだよね」

男「え、まぁ、そうだけど……わかるのか?」

女「うん」コクリ

女「…私と同じような感じがする。わたしと同じで、怖がってるんだと思う」

トラ『な、なにを言ってるの? この女の子は…』

男「…お前が困ってんだろ、って聞いてる」

トラ『えっと…』

174: 2013/11/30(土) 17:45:43 ID:RsxuuQow
女「伝えることはとっても怖いこと」ずぃ

トラ『…あの、ちょっと、言葉がわからないんだけど』

男「あ、あーっと……『伝えることはとっても怖いこと』」

女「『あなたがもし、伝えることが怖いのなら──ホントにわかるよ』」

トラ『……』

女「『でもね、ちょっとだけわかってきた気がするの。違いは無いんだって』」

トラ『違い…?』

女「『どんなに怖くても、自分を誤魔化そうとしても、結局は──やりたいことは一つだけ』」

女「『──その人と仲良くなりたい、ただそれだけなの』」すっ

男「って、待て女! そんなに近づくなっ!」

女「大丈夫…」

ぎゅっ

トラ『あっ……』

175: 2013/11/30(土) 17:49:50 ID:RsxuuQow
女「どれだけ我慢しても、寂しいよね。もっとくっつき合って、仲良くしたいよね」ナデナデ

トラ『……』

女「わかるよ、その気持。とってもわかる……だから慣れよう?」

トラ『あなた…』

女「わたしも頑張るから。あなたも頑張ろう、もっと気持ちを出せるように……頑張ろうよ」

女「…怖いなら、わたしが友達になるから」

トラ『……っ……』

男「えっと、通訳するとだな…」

トラ『…いいわ。大丈夫、伝わったから』

男「おう?」

トラ『ウチは本当はもっと…アイツと仲良くなりたい、子作りだって、なんだって、いっぱいしてあげたい』

トラ『あんな人間よりも、ウチを見て欲しい…』

トラ『…駄目よね、こういうのは…そうよね…そうでしょ?』

女「…うん」コクリ

176: 2013/11/30(土) 17:54:36 ID:RsxuuQow
男「……わかるのか言葉が」

女「ううん、わからない。けど、納得してもらったのかなって」

男「…。ああ、してるよちゃんとな」

女「そっか、そうなんだね……きゃああ!?」

男「ど、どうした!?」

女「あ、あれ……!」フルフル

男「あれって…うぉおおお!?」


虎『どこだぁあああああああああああああああああ!!!!!!』ダッシダッシダッシダッシ


トラ『きゃあああ!?』

男「お、おまっ! なにお前まで逃げ出しちゃってんの!?」

虎『なんだぅ!? お? お主か…うぅむ、すまない驚かせてしまったか』

男「驚くわッ!」

トラ『あ、あんた…なんでここに…』

177: 2013/11/30(土) 18:01:54 ID:RsxuuQow
虎『うぅむ? やっと見つけたぞ馬鹿トラめッ! なにを逃げ出しておるのだ!?』

男「お前もな…」

女「静かに」

トラ『だ、だって…いられないじゃない…もう…アンタを傷つけて…っ』

虎『傷つけて? フン、バカ言え! あの程度で傷つく奴があるか!!』

トラ『アンタ昨日…』

虎『…確かにな、確かに拙者は酷い有様だった。それはもう夢に出てしまうぐらいに』

虎『しかしそれが何故、お前の罪になる。お前はただ、拙者に教えてくれただけであろうに』

トラ『っ……』

虎『さあ帰るぞ。なに、怖がることはない。丁寧懇切に謝れば、許してもらえる』

トラ『うちっ…うちは…!』

虎『言うな』

トラ『え…?』

虎『…聞きたくないのだ。お前から、謝罪の言葉などな』

虎『──お前は強くて、賢い女だろう?』

178: 2013/11/30(土) 18:06:57 ID:RsxuuQow
トラ『っ……よくいうわぁ馬鹿虎の変Oのクセに! はぁん!』

虎『フン。お前こそ口が減らんクソ女だ』

男「お、おまえら…」

女「…もう大丈夫みたいだね」

男「なにが大丈夫なんだよ!? すっごいことなってるぞ!? 二匹逃げ出しちゃってるから!」

女「ううん、悪いことにはならないの。きっとこの後は幸せなことが待ってるはず」

虎『…昨日はすまなかった』ペロ

トラ『あん! ほんとうよ、よくも引っ掻いてくれたわよね…!』

男「…ほ、本当に大丈夫なのか? 平気なのかこれって?」

女「へいき」コクリ

男「っ…お前が言うのなら信じるけど、まぁちょっと最後ぐらいは…おーい誰か居るかー?」

カラス『おれいっすよーん』

男「すまねぇ。ちょっとこいつらを動物園まで道案内してやってくれ、できれば人間に見つからんように!」

179: 2013/11/30(土) 18:10:10 ID:RsxuuQow
女(男くんの慣れ方も凄いと思うけど…)

虎『すまぬなお主。世話を掛けた』

トラ『…また動物園にいらっしゃいな』

男「あったりまえだろ。つか、ちゃんと仲良くやれよな」

虎『ああ、では参ろうか』

トラ『…はいはい』


スタスタ


男「…あー心配だ…なにか問題になるんじゃないかこれって…」

チョンチョン

男「おう、どうした女──」

女「んっ」ちゅっ

男「むぐっ!?」

女「…えへへ、初めて口にしちゃった…」ニヨニヨ

男「お、お前…」

180: 2013/11/30(土) 18:13:29 ID:RsxuuQow
女「わたしはね、きっと、男君と……恋人になりたいんだって思うの」

男「そりゃ…まぁ、うん」

女「けれどそんな自分が凄く、不自然で。人と人が付き合うってのが、自分に当てはめれなくて」

女「…あなたと付き合える自分が想像できない」

男「おう…」

女「けれど、わたしは頑張るよ?」

男「……」

女「いつかは絶対に、あなたと付き合えるんだって──そう本当に望めるように」

女「だからわたしは、あなたの側から離れない。だから、妹友ちゃんにも負けない」

女「──絶対に、にゃん!」


~~~~


妹友『はぁー大変でしたねぇ本当に』

男「いやマジで大変だったわ…」

181: 2013/11/30(土) 18:19:30 ID:RsxuuQow
妹友『まあでも良かったじゃないですか。どうやら処分は軽く…済んだみたいですし』

男「そうだな。虎が二匹逃げ出したっていうのに、十分過ぎるもんだよな」

男(あの後、二匹のトラは無事に檻へと戻り)

男(その際、誰の目にもつくことなく──いつの間にか檻に居たと言われている)

男(二人仲良く寄り添いながら、互いの毛並みをづくろいながら)

男(…幸せそうに、たまには本気めいたじゃれ合いを見せながら)

妹友『担当していた飼育員さん。まぁ辞めたらしいそうですけど、調度良く結婚が決まってたらしいですよ』

男「知り合いだったのか?」

妹友『そんな感じです。ですけど、今回のことは本気でびっくりしてるそうで…』

妹友『最後の最後に、奇跡に立ち会えてよかったと言ってました』

男「…どうも逃げ出したきっかけって、檻の老朽化だったらしいな」

妹友『責任と取らされなくてよかったと言ってましたよ。ええ、本当に』

182: 2013/11/30(土) 18:23:37 ID:RsxuuQow
妹友『今回もまた、お兄さんの活躍で功を奏したんです?』

男「いいや、違う。俺はなにもしてないよ、女が全部解決してくれた」

妹友『ほぅ…そうなんですか』

男「…その、なんだ。これからも頼む、アイツの事」

妹友『いいんですか? 私、何時だってお兄さんのこと奪う気で居ますよ?』

男「そ、それについては俺はノータッチだ! …無責任だとか言うんじゃねえよ…っ?」

妹友『良い判断だと言っておきますよ。これって、もうお兄さんだけがどうにか出来る問題じゃないですし』

妹友『──女さんのことを考えるなら、褒めたいぐらいですって』

男「…おう、そっか」

妹友『それじゃあもう切りますね。明日また、お会いしましょう』

男「おう。おやすみ妹友」

妹友『おやすみなさい。ああ、それと──』

妹友『──大好きですよ、あんちゃん』

ぴっ

183: 2013/11/30(土) 18:30:53 ID:RsxuuQow
男「あ、あいつはまた…変なタイミングで言いやがって…っ」

男「…はぁーあ」パタリ

男(俺はやっぱりまだ、無責任だと思っている。こんな状況、許されるわけがないって)

男(けれど、アイツはそれを望んでる。自分のためだと、自分を自分で認められるようになる為だと…)

男「…今思ったけど、あんまりアイツの事知れてないな、俺って」

男「俺もまた…慣れないと駄目なんだろうな、武器ってのを持たなくちゃあな」

男(誰かのために、他の人のために、自分を投げ打ってでも──動けるような、そんな武器を)

男「さて、寝るか……ふわぁーあ」

184: 2013/11/30(土) 18:32:45 ID:RsxuuQow
ということで終わり
楽しみしててくれた人、ありがとでした

このスレは一度落としますゆえに
続きがある際はまた、お読み頂けたら幸いです


ではではノシ

引用: 男「最近、変な声が聞こえ過ぎるんだけど」