11: 2017/11/17(金) 23:03:48.18 ID:ngMkegDN0


前回:第一話 仕事と任務


摩耶「予定されてる航路だけどトラックの連中が下手こいた後だからさー。」

摩耶「空母か戦艦が欲しいんだよねー。」

時雨「長門は?」

摩耶「燃料は向こう持ちだけどさ、弾代がね。」



戦艦の様に高火力ともなると弾の消費も莫迦にならない。

その為、支払われる報酬によっては金になる話でも見送るのがつねなのだ。



摩耶「まぁ、殴り合いが好きな長門からしてみれば対潜哨戒が主になる護衛は退屈なんだろ。」

時雨「違いない。」

摩耶「んっ、まっ、心辺りがあるから。そっちいってみるわ。」

時雨「じゃ、1時間後に出撃ドッグで。」

摩耶「あぁ、受任の手続きもこっちでやっておくよ。」

時雨「分かった。」



伯爵は暇してるかなぁと言いながら何処かへ向かう摩耶。

それぞれが稼ぐ理由があり、稼ぐ為にこの島へやってくる。

或る者は故郷への仕送り、或る者は贖罪の為。

そして、僕は僕を裏切って此処へ売り飛ばした彼女に理由を聞く為に。

今日も金を稼ぐ。生き残る為に。


12: 2017/11/17(金) 23:04:23.86 ID:ngMkegDN0

第二話 補充兵器
海の画集 -「艦これ」公式イラスト集-
13: 2017/11/17(金) 23:05:30.64 ID:ngMkegDN0

数ヶ月前

小型デリックが輸送船から忙しなく補充物資を下ろしている港に一人の男が佇んでいた。

不知火「司令。司令部からのメールを印刷したものです。」

不知火「正式な書類は本日の船で『 補充兵器 』と共にとの事です。」

提督「ん、あんがとね。戻っていいよ。」

不知火「了解いたしました。」



一礼し下がる不知火。

胸元に入れている煙草を探すが・・・、最近禁煙を始めたことを思い出し軽く舌打ちする。



提督「補充兵器ね・・・。」

提督「いつもの定期便に乗せずにわざわざ船を出すってことはそれだけ早く厄介払いしたいってことかね。」



罪状、艦娘のこれまでの武勲。元の所属艦隊名と鎮守府。



提督「△×鎮守府ねぇ。ぴっかぴかのエリートさんじゃねぇか。」



中身をざっと見終えたくらいにちょうどタグボートが艀に近づいてくる。

14: 2017/11/17(金) 23:06:42.80 ID:ngMkegDN0

提督「お疲れ、連絡のあった『 補充兵器 』はこの船に?」

水兵「えぇ、こちらを。」



受け取りと引渡しの認証をいつも通りに端末へお互いの身分証を兼ねたICカードを翳す。



提督「どうだい。珈琲の一杯でも?陸の話を聞かせてくれないか?」

水兵「すみません、自分はこの後も仕事がありますので。」

提督「そうかい。生きているうちに稼がなきゃな。」



提督の言葉にははと笑い返す水兵。

ガチャガチャ



提督「と、これで枷は全部かな?」

提督「さてと、お嬢さん。ここが何処か分かるかね?」

提督「後ろをついて来な。着任の手続きが執務室で待ってる。」

提督「あぁそうそう、俺の命を狙っても無駄だからな。三途の川の渡し賃にすらなりゃしねぇ。」



補充兵器として来た彼女の前をべらべらと喋りながら鎮守府建屋へ向かう提督。



「僕は無実だ。」

提督「既に出た判決を覆す事は難しいな。」

提督「人権に配慮した上は艦娘にも裁判を受けさせるという有難い配慮をしているが配慮だけだ。」

提督「結果がなにか変更される事はないさ。」

15: 2017/11/17(金) 23:07:51.20 ID:ngMkegDN0

「だから僕はやっていない。」

提督「お前さんは運が良い。武勲を立てていなけりゃ問答無用で銃殺だ。」

提督「武勲を立ててきたお前さんに上はまだ利用価値を認めているらしい。」



補充兵器とされた彼女の返答を一方的に無視し話し続ける提督。



提督「よろこべ、敵の弾は戦艦、空母、重巡、軽巡、駆逐。全てを区別せずに等しく氏を与えてくれる。」

提督「氏にたくなったらいつでも当たりに行ってくれ。自殺の弾代が安く済む。」

提督「その分だけ花篭も良いやつにしてやるよ。」

提督「まぁ、何かやりたいことが残っているなら生き抜いて稼ぐこったな。」

提督「さぁて、着いたぞ。この立派な建物がお前さんの塒であり刑務所でもある鎮守府だ。」

提督「なかなかイカス建物だろ?そして、俺がここの看守兼提督だ。」

提督「これから宜しく頼むぜ?お嬢さんよ。」



港から少し歩いた所に聳え立つその建屋には

『 外地鎮守府管理番号 88 』とだけ書かれた看板が掛かっていた。



提督「普通の法律から外れた、そうだなある種の治外法権。」

提督「ここが地獄の一丁目と呼ばれる所以だ。」

提督「今までいた世界の常識とはこの入り口でおさらばするんだな。」

提督「 『 この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ 』 ってな。」



そう言い残し提督は建屋の中へと消えていった。


第三話:時雨,着任

引用: 【艦これ】 外地鎮守府管理番号 88