75: 2017/12/02(土) 22:59:53.42 ID:ymxIMaUd0
最初から:外地鎮守府管理番号 88
前回:第四話 Ghost Submarine’s
ジジジジジ。
「ん。」
もぞりと寝床から起き出し枕もとの目覚ましを止める。
「主砲よし。」
「魚雷よし。」
「電探よし。」
「そして最後にダメコンよしっと。」
装備の一つ一つを指差し確認。
首に襟巻を巻き気合をひとつ。
時雨「川内も今から朝食かい?」
日課のランニングを終えストレッチをこなし体を冷やしているところに同じように運動を終えた時雨が声をかけてくる。
普通の鎮守府と違いトレーニングや訓練を一切強要されることは無い。
しかし、ここに所属している艦娘でそれを怠るものは一人としていない。
ここが激戦地で他より危険度の高い敵がうろついていたり
他の鎮守府で手に負えない敵を倒すために存在しているから。
例えるなら始まりの町を一歩出たらいきなり魔王城の大広間で魔王とこんにちは、みたいな。
それ程の危険な海域の中に存在しているのがこの鎮守府なのだ。
出撃した際に氏なない確率を少しでも上げる為にみな自分が最適と思うトレーニングをこなす。
74: 2017/12/02(土) 22:57:38.23 ID:ymxIMaUd0
第五話 川内という女
73: 2017/12/02(土) 22:56:26.21 ID:ymxIMaUd0
1です、本日分の更新をさせていただきます
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます
>72様
自分以外に同じネタで書いていた方がいらしたのでしょうか?
前々作での末尾に掲載していたものはボツネタとしての物の為、続きをやる予定すらなかったのですが
その為、ちょっと心当たりがないので申し訳ないです
他の方が書かれていてエタっていたのであればこちらで楽しんでいただければ幸いです
76: 2017/12/02(土) 23:02:30.81 ID:ymxIMaUd0
食堂
川内「今日の朝食は何にしようかな?」
時雨「食事が楽しみってのはあるよね。」
朝食は食堂の入り口で券販機から食券を出しそれを受付に置き受け取り口で受け取る。
時雨「何と言うか養成学校時代を思い出すね。」
川内「時雨は養成学校に行ってたんだ。」
時雨「川内は違うの?」
川内「私は志願、即、戦場だったからなぁ。こうして生きてるのが不思議なくらいだよ。」
雪風「川内さんの昔話は珍しいですね。」
雪風「来たときに比べれば随分丸くなったもんですよ。」
時雨「そんなに酷かったの?」
雪風「そうですね。幽鬼の如き有様でした。」
川内「ちょっと雪風。」
雪風「と、おしゃべりが過ぎました。」
普段、飄々とした態度を見せる川内の過去の話に華が咲きそうだった時に不知火がやって来る。
77: 2017/12/02(土) 23:04:46.35 ID:ymxIMaUd0
不知火「おはようございます。」
時雨「おはよう。」
不知火「急ぎでは無いのですが頼まれごとをお願いしてもよろしいですか。」
返事をする前から3人の前に書類を並べ始める不知火。
雪風「捜索に出るだけなのに結構いい稼ぎですね。」ズルズル
その小さな体のどこに入るのか6杯目のラーメンを食べながら雪風が書類の内容に感想を漏らす。
時雨「何か訳有りなのかな。」
不知火「察しがよくて助かります。」
不知火「技研が新型兵装の実験を行っていたようで
その新型兵装を積んだ艦娘が行方不明の為兵装の回収をお願いしたいと。」
川内「なんたってこんな危険海域で。」
不知火「馬鹿だったのではないでしょうか?」
雪風「辛辣ですね。」
時雨「兵装の回収だけなのかい?」
不知火「・・・・、おっしゃりたいことは分かりますが艦娘に関しては生氏を問わずです・・・。」
苦々しい、そう表現するしかない渋い顔で不知火が答える。
不知火「とりあえず、お暇な時で結構ですので。」
そういい残し不知火は去っていった。
78: 2017/12/02(土) 23:06:08.62 ID:ymxIMaUd0
時雨「皆、どうする?」
雪風「悪くないと思います。」
川内「多少派手に交戦しても黒字が出る金額ではあるかな。」
長門「ん?なんだ、お前達も頼まれたのか。」
時雨「長門達も?」
長門「あぁ、この後行こうと伯爵達と話していた所だ。
時雨達も行くなら艦隊としての受任手続きはこの長門がしておこう。」
時雨「じゃぁ、お願いするね。」
長門「任された。」
79: 2017/12/02(土) 23:08:26.44 ID:ymxIMaUd0
鎮守府 出撃ドック近く
川内「おっ、提督暇してる?」
川内「釣りなんかして何か釣れるの?」
提督「釣れるさ。お前と言う話し相手がな。」
川内「そう。・・・、横、座るよ。」
提督「ん。これを下に敷くといい。尻が冷えなくていいぞ。」
川内「煙草。」
そう言い提督の口に咥えていた物を取り上げ口に咥える。
川内「やっぱりまっずい。禁煙しなよ。」
提督「してるさ。少なくとも30回は成功している。」
川内「じゃぁ、もう吸えないようにライター没収!」
提督「おいおい、ダンヒルのライターで頂きものなんだぞそれ。返してくれ。」
川内「べ――――だ。」
舌を出しあっかんべーをする川内。
提督「まったく・・・ところで川内、そろそろ契約更新の時期だが。」
川内「するよ。今回も契約延長。」
提督「・・・・、まぁ、お前さんの勝手だ。仕送りはまだやってるのか?」
川内「・・・、うん。」
提督「ここで働く理由は聞かないが安全な仕事場なら紹介してやれるぞ?」
川内「でも、儲からないよね。」
川内「ねぇ、提督はなんで煙草をすうの?」
提督「口寂しい時に乳吸わせてくれてた女が氏んだからさ・・・・。」
ふいと煙を吐く提督。
その横顔はどこか物悲しさを感じさせる。
80: 2017/12/02(土) 23:09:27.83 ID:ymxIMaUd0
時雨「あっ川内、ここに居たのかい?先程の任務だけど手続き終わったって。出るよ。」
川内「うん、分かった!すぐ行く。」
川内「提督!」
提督「ん?」
川内「行って来ます!」
提督 フン。
提督「いってらっしゃい。」フフ
81: 2017/12/02(土) 23:13:34.12 ID:ymxIMaUd0
何処かの海上
時雨「今日の任務は顔見知りでの出撃だね。」
川内「雪風と時雨、私に摩耶に長門と伯爵か。」
川内(気の許せる仲間って所かな。お互いの実力をきちんと把握出来ている。いいね。)
長門「こちら『 巨O 』リーダー長門だ、
現在行方不明になったとされる海域に到着。敵艦隊見当たらず。」
「こちら不知火、了解です。目標を発見できましたら回収をお願いします。」ザリザリ
摩耶「長門の姐さんに任せると、めちゃくちゃ恥ずかしい艦隊名で受任申請するよね。」
グラ「まぁ、理由は分からないではないがな。」
時雨「分かるの!?」
グラ「私達が万一沈んだ際に書かれる氏亡届けの艦隊名は受任した時の艦隊名だ。」
グラ「流石に『 巨O 』などと恥ずかしい名前が記載されたくはないだろう?」
グラ「なればこそ。生き残ろうと頑張るものさ。」
雪風 ペタペタ
雪風「長門さん。」
長門「ん?」
雪風「後で謝罪を要求します。」
長門「?」
82: 2017/12/02(土) 23:14:52.20 ID:ymxIMaUd0
川内「あー、まぁ仕方ないよねー。」
グラ「哨戒機に艦影なしだ。潜水艦はどうだろうか?」
時雨「感無し。」
雪風「同じくです。」
摩耶「・・・・・。妙だな。」
長門「哨戒範囲を広げるか。」
グラ「むっ。艤装と思しき浮遊物と艦娘かな?哨戒機が浮遊物を発見したぞ。」
哨戒に出した艦載機からの連絡を受け全員に伝達するグラーフ。
時雨「どっちの方角?」
グラ「ここから北東方向に200だ。」
長門「ふむ。行って見るか。」
川内「・・・・・。皆待った。」
時雨「どうしたの?」
川内「何か臭う。」
雪風「臭うですか?」
川内「うん、私とした事が仕事を請ける前に気がつくべきだった。」
摩耶「川内、どうしたってんだよ。」
川内「昔ね、私が志願したての頃に居た鎮守府がやられたやり方を思い出してね。」
83: 2017/12/02(土) 23:17:36.65 ID:ymxIMaUd0
川内は話す。
自身が所属していた鎮守府が敵にいかに潰されたかを。
敵の深海棲艦は実に狡猾かつ卑劣な手段をとっていた。
駆逐艦の娘達を捕まえ救援要請を出させ機雷原に放置し、
助けに来た味方を救援対象事吹き飛ばす。
救援要請を拒んだ娘については
徹底的に『 壊した 』後に海面に打ち捨てその確認に来る者を頃す撒餌にした。
艦娘の仲間意識を利用した卑怯だが非常に有効なやり方。
川内「餌に使う娘はとにかく口だけ利ければいいって感じで状態にされててね。」
川内「一番酷いので達磨だったかなぁ。」
川内「そんな状態だから助けに行っても結局氏んじゃう事が多かったかな。」
川内「それで戦艦とか空母の娘とか。
自分に絶対の自信を持っている娘程助けに生きたがるものだからその娘達から先に消えていったんだ。」
長門「ふむ。ならば行かずに帰投するのが正解か。」
グラ「むぅ。しかし、哨戒機からの連絡によると浮遊物は艦娘らしくどうも生きているようだが?」
川内「それが敵の狙い目でね。助けても花火を大量に持たされていて敵は一発でも当てれば救援に来た艦隊事ドカン。
外そうとしても仕掛けが働いてドカンなんだ・・・。」
84: 2017/12/02(土) 23:19:35.41 ID:ymxIMaUd0
時雨「川内?」
川内「・・・・、妹達がね。自分の部下だった娘達を助けようとして、ね。」
時雨「ごめん。つらいことを聞いたね。」
川内「いいよ。別に。昔の事だし。」
雪風「空撮した写真の提出でいいでしょう。火薬庫に裸で突っ込ませた技研が問題です。」
雪風「私達の命を手札に載せてまで連れて帰る価値は無いと思います。」
哨戒機からの情報を受け取ったグラーフが何かに気付く。
グラ「ほぅ。成程、どうやら敵はこちらが罠と気付くのも見越していたようだ。」
グラ「水雷戦隊の一編成がこっちに急襲をかけようと向かってきている。」
グラ「どうする?やれなくはないと思うが。」
川内「全力で逃げよう。」
川内「本隊が来るまでの時間稼ぎの捨て駒だよ。」
長門「だろうな。君子危うきになんとやらだ。」
85: 2017/12/02(土) 23:22:43.78 ID:ymxIMaUd0
全員が反転して海域離脱を図ろうとした時だった。
遠くで一際大きな砲声がしたかと思った後、川内が横に大きく吹き飛ぶ。
川内「おおぅふぅ。」
時雨「川内!」
川内「機関への直撃はしていないよ。まだ動ける。」
腹部への直撃弾を受け口から吐瀉物を漏らしながら時雨の問いかけに答える川内。
川内「くっそぉ・・・、スナイパーが居やがるかぁ。」
グラ「スナイパー?」
川内「連中の戦艦の中で特別に長距離射撃に長けた奴でね。
私が居た所が潰された原因のひとつがこっちの電探感知範囲外から一方的にやられたからなんだ・・・。」
川内「あの糞連中めぇ・・・ここにも出張って来てたかぁ。」
摩耶「おい。川内?」
普段の戦場においても余裕を見せていた川内の豹変に摩耶が驚き声をかける。
川内「奴らは一人ずつ仕留めるのが好きなサディストでね。私がここを引き受ける。
みんな、急いで逃げて。絶対に後で合流するから。」
時雨「川内、氏ぬつもりじゃないよね?」
川内「私には生きてやることがあるんだ。時雨、あんたと同じくね。」
川内「それにもうすぐ日も暮れる。夜の闇に紛れるにはいい頃あいだよ。」
長門「夜の闇に溶け込むか。」
86: 2017/12/02(土) 23:24:53.63 ID:ymxIMaUd0
川内「うん、盆じゃないけどね。送り火をつければ派手に明るく見えるでしょ?」
長門「・・・・、送り火か。」
川内「生者の魂をあの世に送るには必要でしょ?」
長門「成る程な。ではな。」
そう言葉をかわし握りこぶしをこんとぶつけ挨拶。
川内「さぁ!さっさと後ろを見ずに退け!ここは私に任せて退けぇ!」
首に巻いていた襟巻を腹部の出血を止める為に腹部へ巻きなおす川内。
長門「生きて帰えるぞ。」
摩耶「帰ったら一杯奢らせて貰うぜ。だから帰ろうな!」
雪風「どうぞ御武運を!」
時雨「また後で!」
グラ「Viel Glück!」
川内以外の全員が全力で海域離脱に動く。
川内「いい仲間に恵まれたね。やるだけやらなきゃだね。」
全員の後ろ姿を目に焼きつけ、くるりと敵の向かってくる方向へ向き直る川内。
川内「さぁ、命が惜しくないならかかっておいで!」
87: 2017/12/02(土) 23:26:34.62 ID:ymxIMaUd0
―――――
―――――――――――
―――――――――――――――――――――
川内は耐えていたある種の野生の感じみた物で敵の狙撃をかわしていた。
しかし、敵の執拗な攻撃には贖えずついに膝をついた。
川内「スナイパーの糞さえいなければねぇ・・・。」
遠距離からの狙撃はすでに相当な数が川内に命中している。
その命中弾は狙撃手の性格を現しているのか御丁寧に全て致命傷を外していた。
川内「ちぃ!」
一人で奮戦して通算で15隻目、一度の出撃で撃沈した敵の最多数記録を更新するものの奮戦むなしく膝を折った。
―――――――――――――――――
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川内は耐えていたある種の野生の感じみた物で敵の狙撃をかわしていた。
しかし、敵の執拗な攻撃には贖えずついに膝をついた。
川内「スナイパーの糞さえいなければねぇ・・・。」
遠距離からの狙撃はすでに相当な数が川内に命中している。
その命中弾は狙撃手の性格を現しているのか御丁寧に全て致命傷を外していた。
川内「ちぃ!」
一人で奮戦して通算で15隻目、一度の出撃で撃沈した敵の最多数記録を更新するものの奮戦むなしく膝を折った。
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88: 2017/12/02(土) 23:28:45.35 ID:ymxIMaUd0
レ級「今回の獲物はもったなぁ。」キシシ
ル級「そうですね。遠距離からのスナイプお見事でした。」
レ級「全部で20発超えたから賭けはル級の勝ちだねー。」
ル級「致命傷をわざと狙わずにちまちま当ててただけですからね。」
ル級「腰、足、手、の順番でまぁまぁ当てやすくもちのいい方から順番に。」
レ級「でも同じ軽巡でも前のは20発も持たなかったけど?」ニタニタ
レ級「しかも最初にどてっ腹に当てておいてよく言うわ。」
ル級「そこは敵にガッツがあったという事でしょう。」
レ級「最初に弾が当たった時の驚いた表情といったら傑作だったな。」グヒ
ル級「えぇ、なかなか。」クフフ
89: 2017/12/02(土) 23:30:07.77 ID:ymxIMaUd0
ル級「ところで一緒にいた仲間は逃がして本当に宜しかったのですか?」
レ級「ル級は美味しい食べ物は一気に食べてしまう方?」
ル級「はぁ。」
レ級「私はね。美味しいものは複数回に分けて食べるほう。」
レ級「楽しみは多いほうがいい。」
レ級「特に極上な獲物はよく味わって絶望って味がよーく廻っている方が美味なの。」
レ級「そして復讐という調味料を加えて立ち向かってきた塵を踏み潰すのってもう最高。」
レ級「濡れるわ。」
ル級「ドドMですねぇ。」
レ級「それはそうと獲物を倒したトロフィーになりそうなものなにかないかねぇ。」ギヒ
レ級「夜になって暗い所為か見にくいねぇ。」
90: 2017/12/02(土) 23:31:16.35 ID:ymxIMaUd0
ル級「・・・、襟巻が浮いてますね。」
レ級「おっ、本当だ。あぁ、狙撃するときの目標にしてた奴だ。」
ル級「明るい色で目立ちましたからね。」
レ級「制服もオレンジ色で撃ってくださいと言わんばかりの色。」
ル級「やられない自信でもあったのでしょうか?」
レ級「それで殺されてたんじゃ世話ないでしょ。」ハハハ
ル級「確かにそうですね。」ハハハ
レ級「んー、いい感じの長さ。首に巻いて帰りますか。」
レ級「どう?似合ってる?」
ル級「今日の夕飯はレ級様のおごりという事で。」
レ級「沈めた貨物船から拾ったカップ麵でいい?」
ル級「もう少しましなものを・・・。」
戦艦の2人が川内の襟巻きをトロフィーとして持ち帰ろうと踵を返した時だった。
95: 2017/12/03(日) 22:13:46.93 ID:RcCbv53L0
ザバァッ!
レ級の背中にしがみ付く人影。
川内「あんたらが食う飯は黄泉戸喫だよ。」
海中から踊り出てレ級を羽交い絞めにする川内。
川内「あんたが首に巻いてる襟巻はあの世への餞別代りにくれてやる。しっかりと暖まるといいさ。」ニタァ
カチン!
金属特有の擦り合わさる音が夜の海に冷たく響き、ライターに火が燈された。
ゴゥ
レ級 あぁぁあああぁああ!!!
ル級「レ級さま!?」
川内が手に持ったライターからの火が襟巻に燃え移りレ級の顔面を焼き視界と顔面周囲の酸素を奪い赤々と闇夜を紅に染めゆく。
川内「あぁ、綺麗だねぇ。」
96: 2017/12/03(日) 22:16:08.71 ID:RcCbv53L0
レ級「息が出来ない!あつい!あついぃ!!」
ル級「くそ!この氏にぞこないが!レ級様から離れろ!」
レ級に密着しているため主砲を撃ち川内を撃沈させる事も叶わず必氏に素手で川内を引き離そうとするル級。
川内「離れる訳にはいかないねぇ。この火があんた達の黄泉路を照らす灯火になるんだからねぇ。」ニヤリ
ル級「はぁ?」
川内「理解する必要な無い。ここで氏ねぇ!」
泰山鳴動。
いや、海上なだけに海峡鳴動といった所か。
川内達のいる辺りの空気を震わしその音、雷の如くと行進曲に謳われる程の砲声が響く。
鉄の城。
仇なす敵を攻め滅ぼす、その単純なまでの殺意と暴力がル級、レ級
そして川内のいる辺りに降り注ぐ。
砲弾、砲弾、砲弾。
そしてありったけの魚雷。
それはさながら真夏のスコールの如く。
97: 2017/12/03(日) 22:17:21.67 ID:RcCbv53L0
川内「この篝火はあんた達をあの世へ送るためのもんだ。」
川内「遠慮するなよ?私の仲間の砲弾と魚雷、たっぷりとくらいな!」
ル級「馬鹿な!?貴様、自分もろともだと!?」
レ級「離せぇまだまだ氏にたくない!」
襟巻の火がまだ燃え盛る中必氏の懇願を始めるレ級。
川内「あんたもそう言って懇願して来た相手を今まで頃して来たんだろ?」
川内「今度は自分の番だ。最期くらい笑えよ。」
なおも砲声は続き、雨霰と砲弾は降り注ぎ魚雷は隙間無く走ってくる。
川内「さぁ、共に黄泉路を逝こうじゃないか。」
すでにル級は沈んだようである。
川内が自分の艤装の砲身をレ級に向ける間も絶え間なく砲弾は降り続く。
98: 2017/12/03(日) 22:18:46.93 ID:RcCbv53L0
川内「あんたは流石に硬いねぇ。」
口唇を吊り上げニタニタと笑いながら川内が言葉を続ける。
川内「それにしても、砲弾、魚雷のバーゲンセールじゃないか。」
川内「私の砲弾は安くしてあげられないけどねぇ。」ニタァ
レ級の顔に砲口をピタリと付けての接射。
川内「砲弾の領収、宛名は閻魔で宜しく。お代はあんたの命で勘弁しといてあげるよ。」
満面の笑みを浮かべ主砲を撃つ。
ドンと鈍い砲声一つ。
レ級「あぁああああ!」
声にもならない呻きをあげ終わったかと同時か。
レ級の頭が砲撃による衝撃で大きく後ろに仰け反った。
川内「漫画みたいに弾け飛ばないんだね。まぁ、戦艦に軽巡の主砲じゃねぇ。」
川内「戦車に豆鉄砲みたいなもんか。」
川内「あんたが今まで頃して来た私の仲間達に宜しく。」
99: 2017/12/03(日) 22:20:01.20 ID:RcCbv53L0
ブスブスブス。ボフッ。
海中に身を潜め、長門や摩耶といった重量級の砲撃を受け。
駆逐艦達の魚雷を受け。
青息吐息の状態だった機関も完全に停止した。
川内「無茶しすぎたか。」
沈降していく体。
脳裏に浮かぶは嘗ての僚艦。
妹達の懐かしい顔ぶれ。
100: 2017/12/03(日) 22:22:17.82 ID:RcCbv53L0
川内「んー、これが噂に聞くあの世という奴?」
川内「聞きしに勝る殺風景だねぇ。」
神通「姉さん。まだ、こちらに来るときではないかと?」
那珂「もー、川内ちゃんはまだこっちに来る時じゃないんだからね!」
川内「えー。」
川内「ウエルカムティーとかないの?」
那珂「ウエルカムしないよ?」
神通「応急修理要員を積んでいるのでしょう?さぁ、みんなが待っていますよ。」
那珂「そうそう。早く帰らなきゃ!」
那珂「川内ちゃんは向こう!回れ右!」
トンと記憶の中の二人に背中を押され・・・。
101: 2017/12/03(日) 22:24:57.83 ID:RcCbv53L0
コポコポコポ。
コポコポ。
目を開けると、服を引っ張る者の姿と水上への浮揚感。
ザバァ。
伊58「時雨!見つけたでち!」
伊58「ダメコンのお陰で一命を取り留めてるでち!」
時雨「ありがとうゴーヤ!」
伊58「べっ別に時雨の為にやった訳じゃないでち。」
伊58「この間の借りを返しただけでち。かっ、勘違いしないで欲しいでち!」
伊8「ツンデレ?」
長門「むぅ。意識が戻ってないな。よし。ここは一発。」
腰を落とし正拳突きの構えを取る長門。
グラ「待て待て止めを刺す気か?」
川内「痛そうだからやめて。」
摩耶「おっ。戻ってきたか。」
雪風「川内さん。こういうのはこれっきりにして下さい。」
雪風「味方に弾を撃つのは例え必要であったとしても後味が良くありません。」
雪風「撃つ側の気持ちをしっかりと考えて下さい。」
時雨「・・・、そうだね。川内は目印となる明かりを点けた後は逃げたとばかり思っていたよ。」
周囲を見回せば氏線を共に潜り抜けた仲間の顔。
102: 2017/12/03(日) 22:26:54.97 ID:RcCbv53L0
長門「まったく。相手を羽交い絞めにして動きを止めるとは無茶をする。」
時雨「じゃ、みんな今日のMVPを曳航して帰ろう!」
長門「そうだな!」
めいめいが自身の艤装から曳航索を取り出し川内にかけて行く。
川内「まってまって、長門。首にロープ掛かってる。」
川内「時雨はなんで右腕なのさ。雪風は左腕だし。」
川内「ちょっと、足も右と左でなんで分かれるのよ。」
川内「摩耶はなんてとこに引っ掛けてるのさ。」
伊58「あっ、これ古代中国の処刑方法で見たことあるでち。」
伊13「・・・、車裂きの刑でしょうか・・・。」
伊8「川内さんが自分の命を軽んじた行動をとったことに対する無言の怒りという奴なのでしょうね。」
長門「よし!せーので引っ張るぞ!」
一同「「「「「「せーの!」」」」」」
川内「いやぁ―――――!」
103: 2017/12/03(日) 22:27:32.45 ID:RcCbv53L0
スッポ――――――ン!
104: 2017/12/03(日) 22:28:48.35 ID:RcCbv53L0
っと小気味良い音と表現するに相応しいような、そんな音がして皆が括った曳航索がすっぽ抜ける。
長門「あっはっは!見ろ、川内のあの間抜け顔!」
時雨「ふふふ。」
雪風「実にいい顔です!」
グラ「まっ、これに懲りたら自分の命をもっと大事に扱うんだな。」ハハハ
伊8「そうでち、命は大事に使えば一生使えるでち。」
摩耶「じゃっ。帰るとしますか。」
ひとしきり笑った後に帰るべく鎮守府へと進行方向を向ける一同。
川内「あれ、ちょっと。私、動けないんだけど。」
川内「誰か引っ張ってよ―――!」
川内「ひっぱってよぉ―――――!」
106: 2017/12/03(日) 22:30:17.41 ID:RcCbv53L0
鎮守府修理ドック
明石「お疲れさまです。川内さん、派手に壊しましたねー。」
川内「んなぁ―――――!!!」
明石「まぁ、ねぇ?改造がっつりしてましたからね。」
明石「普通の娘の艤装と同じ機能でよければ桁が一つ減りますけど。」
修理の見積書を持ってきた明石に本当なのこれ?と目で訴えかける川内。
明石「残念ながら。」
川内「超赤字だぁ・・・。」
修理用入渠ドック内で項垂れぷかぷかと浮かぶ。
明石「ご愁傷様です。」(合掌)
明石「で、見積もり通りでいいんですかね?」
川内「お願いします・・・・・。」
コツコツコツ。
靴音を立てながら一人の男が明石と入れ替えでやってくる。
107: 2017/12/03(日) 22:32:25.13 ID:RcCbv53L0
提督「川内。お疲れだったな。」
川内「傷心のあたしに話しかけないで・・・・。」プカプカ
提督「お金の必要な川内に朗報を持って来たんだが?」
川内「えっ!?何?!」
提督「お前が倒した国際コードネーム『 レ級 』な。
あれの残骸をゴーヤ達が持って帰ってきて、それを検分した結果。名前付、ネームド個体だったんだ。」
川内「ネームド。」
提督「あぁ、お前なら知ってるだろ。スナイパー連中の頭。ホークアイと呼ばれていた奴でな賞金首だ。」
提督「昔に日本近海でえぐいやり方で鎮守府潰しをやって海軍に懸賞金、
まぁ普通の鎮守府だと特別戦果みたいな扱いになるわけだが、まぁ、それはいい。」
提督「そんな訳であいつを倒した奴に多額の金が支払われる。米軍側からの懸賞金もかけられていてな、かなりの額だ。」
川内「なんで米軍?」
提督「日本から離れてほとぼり冷ましてる間に大西洋側で暴れていたらしい。」
提督「そのおかげか撃沈したって連絡したら喜んだ向こうの海軍総司令官からの祝電も来てるぞ。」
川内「鼻紙にもなりゃしない。それに懐も暖まらない紙なんていらない。」
提督「酷いいいようだな。」
提督「言わんとすることは分かるがな。ここじゃ名誉や名声は意味の無いものだからな・・・。」
108: 2017/12/03(日) 22:34:28.49 ID:RcCbv53L0
川内「ていうか今気付いたけど提督、私、裸なんだけど?」
提督「服着たまま入渠(風呂)入る奴っているのか?」
川内「いやそういう意味じゃなくて。」
提督「川内がいい女なのは認めるが俺が男として役勃起ずなのは知ってるだろ。」
川内「まぁ・・・。」
提督「まっ、恥じらいがあることはいい事だ。
女は恥じらいのある方がより色気がある。」
提督「恥じらいの忘れた女なんぞひでぇもんだ。まったく。」
提督「でだ、懸賞金はどうするよ。一緒に出撃していた連中にも聞いて回ったが全員川内にくれてやるってよ。」
川内「本当!?」
提督「あぁ、艤装の修理代金でスカンピンになってるだろうからだとさ。」
提督「日米双方合計で150万だ。大事に使え。」
川内「じゃぁ、当面の生活費と弾薬とかの購入費で10万残して
後はいつも通りに振込みを不知火にお願いして貰っていい?」
提督「・・・・、遺族への仕送りでいいんだな?」
川内「なんだ知ってたの。」
提督「俺が決済の処理してんだぞ?」
川内「それもそうか。知ってて当たり前だよね。」
川内「初めに所属した鎮守府でさ。姉妹って事で一緒に戦った娘達にもやっぱり家族はいるわけでさ。」
川内「食っていく為に志願して、あっさりおっ氏んでさ。遺族年金なんか雀の涙。」
提督「・・・・。」
川内「それ以外にもさ、みーんな、みーんな食っていくのが厳しくて志願したのに
あっさりとあの世に先に行くしさ。家族が待っているってのにさ――。」
提督「・・・・。」
川内「提督。後は宜しくね。」
提督「ん。」
提督「でだ、川内。お前、ライター返せや。」
川内「ごめん。海で失くした。」
提督 ハァー・・・・
提督「仕方ねぇ。本気で禁煙考えるか。」
提督「じゃ、まっ、そういう事だからゆっくり風呂に入ってろ。」
そういい残し立ち去ろうとする提督。
川内「提督待った!」
提督「ん?」
川内「ただいま、提督!」
提督 フン。
提督「おかえり、川内。」ニヤリ
109: 2017/12/03(日) 22:37:38.19 ID:RcCbv53L0
以上で本日分の更新と第五話が終了です
イチャコラでもなければギャグコメディでもない、最近のSS需要に真逆をいっています
そんなSSですがよろしければこれからもお付き合いよろしくお願いいたします
いただいている乙レス、感想は目を通しております
いつもありがとうございます、では、また次回の更新時に
第六話 英雄の条件:前編
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