61: 2018/04/05(木) 23:58:11.71 ID:4Zou6NdV0


前シリーズ最初から:外地鎮守府管理番号 88 
今シリーズ最初から:続 外地鎮守府管理番号88
前回:第二話 海賊と賞金首:中編

第三話 海賊と賞金首 後編


※今更ですが前スレ、グラーフ編にてFw190とすべき所が多くの箇所にてFw109と機種名を間違えていました
 ここに深くお詫びいたします、誤字に気付かず申し訳ありません

62: 2018/04/05(木) 23:59:19.51 ID:4Zou6NdV0

空母棲姫達深海棲艦拠点



全ての物資が揃い、招集をかけていた深海棲艦全てが揃う。

机上の海図と各戦力を示す駒を睨みながら空母棲姫がゆっくりと口を開く。



空母「機は熟したわ。」

空母「まずは助攻になる部隊Aから動いてもらおうかしら?」

南方「では、同時に部隊Bもだな。」

空母「えぇ、そうね。主力になる本隊Cは時間差で最後に動いて貰う事になるわね。」

空母「数日程AとBで暴れてもらって本隊への欺瞞工作とする形になるわね。」

南方「主力のCが侵攻を開始した場合は正しく破竹の勢いとなるだろうな。」

空母「そうね。Cが侵攻を始めたらBは方向転換して主攻撃目標へ進攻。」

南方「各部隊の旗艦と司令部施設のある本隊Cとは連絡を密にしないとな。」

空母「えぇ。後は進軍速度が全てになるわ。」

南方「部隊Aは捨て駒になるから敵鹵獲艦娘部隊で指揮系統は不要?」

空母「もちろん不要よ。使い捨ての駒を統率する必要はないわ。」

空母「攻撃する方向は見せかけもいい所だし。時間稼ぎと攪乱目的だから要らないわ。」

南方「では部隊Bの指揮に私が入ろう。」

空母「私が本隊の指揮でいいの?」

南方「 ? 空母が立案したんだろ?ならば戦功はそっちがあげるといい。」

空母「あら。悪いわね。」

南方「戦略爆撃機まで組み込んだ作戦の指揮は私には無理というだけの話さ。」

南方「流石に副官を複数抱えないと処理しないといけない情報が多くなるから私に総指揮は無理だ。」

南方「私が自分自身のいい所と思っているのは身の程を弁えているということだよ。」

空母「将として重要な資質と思うわよ?」

南方「褒め言葉として受けとろう。」

南方「それに敵が認識しているこの辺りの指揮官は私だ。」

南方「囮に立つなら有名人の方が向いてるだろう。」

空母「あら、アイドルでも目指すつもりかしら?」

南方「はは。私の歌声は酷いから無理だろうな。」
海の画集 -「艦これ」公式イラスト集-
63: 2018/04/06(金) 00:00:20.46 ID:UVTnURzf0

空母棲姫と南方棲姫が拠点に居並ぶ深海棲艦達の前に立つ。

その様は閲兵式と呼ぶに相応しく実に多くの艦種、階級の深海棲艦達が居た。

空母棲姫と南方棲姫が一同の前に立つとその視線が一斉に集まる。

右手をさっと上げ自分へ視線を集中させる空母棲姫。

そして全員へ向け出撃前の演説を始める。



空母「屑鉄諸君!今日は我々の歴史に新たな1ページが刻まれる事になる!」

空母「その日を諸君らと迎えることが出来ることを実に喜ばしく思う。」

空母「我々がこれより行う作戦は敵を完全にこの南太平洋海域から消滅させるだろう。」

空母「敵は全て殺せ!通り道に有るものは全て瓦礫へと変えるのだ!」



空母棲姫の宣言へ同意の声が方々から上がる。

64: 2018/04/06(金) 00:02:17.14 ID:UVTnURzf0


空母「屑鉄諸君!諸君らの敵は!」

一同「殺せ!殺せ!ぶっ殺せ!」

空母「我ら深海棲艦の目的は!」

一同「殺せ!殺せ!ぶっ殺せ!」

空母「深海棲艦として諸君らは敵を愛しているか!?」

空母「敵を屑鉄に変える準備は出来ているか!?」

一同「ガンホー!ガンホー!ガンホー!」

空母「よろしい。総員、抜錨!」



人型の深海棲艦達が鬨の声をあげ異形の者達もそれに続く。

後に『 南太平洋の悲劇 』とも『 南太平洋の悪夢 』とも言われる戦いの幕が開ける。

南方棲姫達が助功として敵防御線右翼を攻撃開始。

時を同じくその最右翼を深海機雷に寄生された艦娘達が攻撃を開始する。



南方「逃げるものは追うな!進軍速度を重視だ!」

南方「進路上にある物は全て破壊せよ!」



怒涛の進軍速度に合わせ司令部機能を移動させながら南方棲姫が指示をだす。

進軍速度重視で損害は度外視。

まさしく物量で攻める事の出来る深海側だからこそ出来る攻勢である。

そして、敵からの攻勢に対し防御線の維持の為、

南太平洋に置かれた海軍南方方面軍司令部が下した決断は

各鎮守府より予備戦力を抽出しそれを持って防御に当たるといういかにもな作戦だった。

姫級ですら囮として使う絢爛豪華な作戦。

まして、その囮の姫級は以前より既知の指揮官として知られる南方棲姫である。

この時の海軍司令部の判断を誤りと言う者がいるとしたら

正解を神の視点で論ずることが出来る後の世の歴史家くらいであろう。

65: 2018/04/06(金) 00:03:36.65 ID:UVTnURzf0

南方棲姫達が進撃を始めた頃の明石達拠点



愛用のキャラバッシュに刻み煙草を詰め、火をつけて一服した後に黙考。

提督は敵の意図を探るべく静かに考えを巡らせていた。

敵がここ2、3日妙な動きをしている事を察知。

秋津洲の大艇や軽空母の艦娘達に偵察機を出させ集められる限りの情報を得た中で気になるものがいくつか。

友軍の拠点に味方であるはずの艦娘が攻撃を仕掛けていること。

損害を無視して全力で進む部隊がある事。その進撃方向での海軍重要拠点は遠い。

しかも驚いた事にそれを率いているのは南方棲姫では無いかという事。



提督「新人兵が戦場の空気にやられて錯乱して味方を頃すってのはままあるが。」



敵として向かってきた艦娘に遭遇し撤退してきた阿賀野の話を聞く限り。



提督「薬物等の新兵器で精神汚染にでもあったのか?」



と判断するしかないのだった。

そしてその仔細を話し意見を求めた明石は「あっ…。」と一言を発した後、

自分用に割り当てられたテントから出てくる気配がない。



提督「自分の位置が漏れるのを警戒して司令部との連絡を最低限にしていたのが裏目に出たな。」



海図を広げ敵の進行方向と先日情報を得た新設されたと思しき補給拠点の位置を改めて見直す。

66: 2018/04/06(金) 00:04:33.28 ID:UVTnURzf0


提督「あっ。」



手に持っていたパイプを地面に落す。

提督は気付いたのだ、いや、気付いてしまった。



提督「俺達は檻の中じゃねぇか。」

提督「この南太平洋にたいした策士が居たもんだ。」クックック

提督「実に清々しいまでの負けっぷりだ。いっそ弟子入りしたいくらいだな。」ハハハ

秋津洲「提督、どうしたかも?外まで笑い声が聞こえてきたかも。」

提督「あぁ、秋津洲か。悪いが全員に集合を掛けてくれ。」

提督「拠点8へ移動だ。」

秋津洲「8番かも!?」

提督「あぁ、8番だ。」



拠点8番は万一補給が受けられなかった時用に燃料、弾薬、保存食等を備蓄してある拠点。

そこへ向かうという事は自分達が緊急事態に陥ったと全員に暗に知らせる事になる。

提督は敵の助攻が陽動ということを見抜いていた、更に今の状態が嵐の前の静けさという事も。

67: 2018/04/06(金) 00:06:02.49 ID:UVTnURzf0

補給所 拠点8番


提督「全員聞いてくれ。南太平洋の海軍はまもなく壊滅する事になる。」

提督「完全に敵にしてやれた。」

阿賀野「提督さん、どうしたの?」

提督「俺の読みが正しければ間違いなく敵は海軍の後方集積地点を落す。」

提督「それも今まで見たこと無い圧倒的物量を持ってだ。」

秋津洲「かも!?」

提督「持てるだけの燃料、弾薬、食料を持ったら今夜にでも撤収作戦を実行してくれ。」

提督「敵にたいした策士が居たもんでな。ブリッツをやられた。」

阿賀野「ブリッツ?」

提督「ん?何だ?知らないのか?」

阿賀野「提督さん程阿賀野達は戦史の事は詳しくないもん。」

提督(現状認識は最悪の事態でも共有しておいた方がいいとは士官教練の基本だな。)

提督(この辺りの教育を怠っていたのは己の不始末だな。)ハハ

提督「昔取った何とやらだな。よし、夜まで時間はある。講義と行こうじゃないか。」



周辺海域の海図にざらりと広げるのはどこに持っていたのか大量の将棋の駒。

68: 2018/04/06(金) 00:08:10.64 ID:UVTnURzf0

提督「まずは俺達海軍の防衛ラインがここで……。」キュキュキュ

提督「俺が海軍大学校で教鞭をとっていたのは皆知っての通りだと思うが、

   さてと、敵の防衛線がここに設定されている場合どう攻める?」

阿賀野「えーっとこれは阿賀野達が深海側として海軍の防衛線をどう突破するかって事?」

提督「そうだ。補給については考えない物とする。」

秋津洲「えーっと、右側の防御が薄いから右側から防御線をずーっと迂回するかも!」

提督「うん。だいたい普通の解答だな。」

提督「左側は抜かれたらアメリカ大陸に一気呵成に攻める事が出来るから基本厚めの防御陣が敷かれてる。」

提督「じゃ、次にだ。局地戦闘においての戦闘の勝利条件は何だと思う?」

阿賀野「えっと…、継戦能力の破壊?」

提督「正解、通商破壊で敵補給艦の掃討をさせていた甲斐があったようだな。」

阿賀野「提督さんにいつも作戦の目的は口をすっぱくして言われていたもん。」ドヤッ

提督「以上を踏まえるとだ。敵が俺達南方方面軍を完全に潰そうと思った時に重要拠点となるのがここだ。」

秋津洲「後方の巨大集積地かも?」

提督「あぁ、集積地はもとより南方方面軍の艦隊司令部がある所だ。さらに石油精製所やらの生産拠点でもある。」

阿賀野「でも、前線からかなり後方だよ?」

提督「そうだ。だから、始めに言った『 ブリッツ 』が生きてくるんだ。」

提督「元々は陸軍の戦術の一つで俺自身海軍に応用してくるとは思って無かったのが迂闊だったと言えるな。」

提督「まぁ、みんな見てくれ。」



提督が先ほどの海図に置かれた駒を動かしながら行う説明を聞き入る一同。

69: 2018/04/06(金) 00:10:08.18 ID:UVTnURzf0


提督「先ほどの後方拠点は左翼から侵攻した方が近いが説明したようにまず無理だ。」

阿賀野「だね。」

提督「その為、今まで前線で小規模戦闘を繰り返しお互いの陣取り合戦を敵、南方棲姫とやって来た。」

秋津洲「かも。」

提督「そして、ここ2、3日の敵の動きだ。」

阿賀野「右翼の防御が薄い所をついて後方へ侵攻しようとしている?」

秋津洲「南方棲姫が一大攻勢をかけてきたかも!」

提督「と、思うよな。」

秋津洲「かも?」

提督「ここで思い出してくれ。俺達が設営を察知した敵の補給基地の位置だ。」



提督が海図にある敵側領域の島に飛車を一枚置く。



阿賀野「どちらかというと左翼よりの位置?」

提督「そうだ。更に敵の手に落ちて何がしかの細工をされた?と思しき艦娘達が攻めてきているのがこの辺り。」



歩の駒を右翼側にぱちぱちと置き並べていく。



提督「だんだん分かってきただろ?」

阿賀野「提督さん、深海側だけ王将が2枚有るのはどうしてかしら?」

提督「つまりはそういう事だ。」

提督「敵に指揮官、つまり姫級が二人いるって事だ。」

提督「前線補給基地を新設した所で気付くべきだったんだよ。」

提督「南方棲姫と比べてやり方が大胆になった違和感にな。」

提督「今回の敵は作戦参謀が今までと別の奴が絵図を書いているのは間違いない。」

提督「それで右翼に南方を使って総攻撃をかけると?」

秋津洲「各鎮守府で出せる戦力を持って防衛に当たるかも。」

提督「そうだ。」

提督が戦力に見立てた歩を南方棲姫を表す王将に向けて動かす。

阿賀野「左翼の守りが薄くなっちゃった……。」

提督「そして、将棋の駒で飛車といえば?」

秋津洲「縦横の直線移動かも。」

提督「そうだ。ここの新設基地に基地航空隊を配備するとどうなる?」


70: 2018/04/06(金) 00:11:33.64 ID:UVTnURzf0

阿賀野「敵に基地航空隊があるの?」

提督「俺達にあるんだ。敵に無いと考える方が不自然だろ。」

秋津洲「陸攻?」

提督「ならまだ救いがあるが戦略爆撃機なんか持って来られたらお手上げだ。」

阿賀野「戦略爆撃機かも?」

提督「あぁ、陸攻なんか目じゃねぇ搭載量の爆弾を運んでくるぞ。」

提督「第二次世界大戦で代表的な所でB-17だな。

   日本が零戦の開発で四苦八苦してる頃には既に実戦配備されてた化け物だからな。

   後はB-24、29と続いていくシリーズだ。」

提督「B-17は頑丈で機銃で撃ったくらいじゃなかなか落ちてくれねぇんだよ。」

秋津洲「大艇ちゃんみたいな感じ?」

提督「そうだな。日本が頑張って作った四発機で実戦に投入出来たのは大艇くらいだもんな。」

提督「まぁ、そんな感じで陸攻がワンショットライター等と不名誉な渾名を付けられるのに対して

   B-17はフライングフォートレスと来たもんだ。」

提督「搭載爆弾は単純比較で陸攻の4倍。赤い人もびっくりだ。」

阿賀野「赤い人?」

提督「知らないか…。ジェネレーションギャップだなぁ。」

提督「4倍の爆弾をその護衛機を必要としない防弾性能と対空性能を持った爆撃機が後方へ浸透してきてみろ。」



つついと飛車の駒を動かす提督。

71: 2018/04/06(金) 00:13:21.11 ID:UVTnURzf0


秋津洲「おおぅ。」

阿賀野「うわぁー。」

提督「間の駒を全て無視のとんでも王手。」

秋津洲「将棋でやったら怒られるかも。」

提督「実際の将棋で言えば初手で相手の王将を盤面から叩き出す行為だからな。」

提督「ブリッツって言葉はドイツ語で稲光を意味する。」

提督「最近ではイラク戦争で米英軍がやってのけていたな。」

提督「まずは爆撃機で敵の拠点を破壊、

   その後高速機動機械化部隊が敵の脆弱な部分へ突撃そして文字通り稲光の如き速さで敵最重要拠点を破壊だ。」

提督「そして、通過時に空いた穴から雪崩の如く怒涛の勢いで敵が侵入してくる。」

阿賀野「はい!提督さん。つまり阿賀野達の司令部が落ちるって認識でいいの?」



少し青ざめた顔で理解した事への確認を行う阿賀野。



提督「その通りだ。始めの南方棲姫の部隊は陽動だな。」

提督「陽動に姫級を使うとは予想もしてないだろうし

   更に言えばこの辺りの指揮官として既知の相手だから突出して出てくれば司令部は全力で排除を命じるだろう。」

提督「で、陽動に引っかかって左側が通常より手薄になる。」

提督「その手薄になったところに戦略爆撃機で防衛線上の拠点を吹き飛ばす。」

提督「戦略爆撃機は艦艇とかの移動目標には使えんが建物とかの固定目標には

   さっきも言った爆弾の搭載量のお陰で甚大な被害を齎すことが可能だ。」

72: 2018/04/06(金) 00:15:40.96 ID:UVTnURzf0

秋津洲「防御線に穴をあけるだけなの?」

提督「穴を空けたら今度は同じ航空戦力の空母連中の仕事だ。」

提督「大まかな仕事と細かな仕事の作業分担、ちょいと意味は違うがワークシェアって奴だな。」

秋津洲「でもこの仕事の分かち合いはよくない分かち合いかも。」

提督「だな、戦略爆撃機隊は雑事に捕らわれなくていいからどんどん先に進めるからな。」

提督「後、間違いなく護衛もついてるだろうから完全に爆弾を落すのみに集中できる。」

阿賀野「敵がずるい。」

提督「そう言ってもなぁ。戦争だからなぁ…。さてと、説明を続けるぞ。」

提督「穴が開いた後は高速機動部隊で一気に進軍。

   そして無線などの連絡手段で連携を密にしているだろう南方棲姫が同時に進路変更。」

阿賀野「二方向からの進軍には急に対処出来ない?」

提督「予測出来てないと無理だろうな。」

提督「姫級指揮官が1人と思い込んでいた上に

   敵の基地戦力は飛行場棲姫だけだと思い込んでいた所に付け込まれた。」

提督「更に味方を攻撃する事への躊躇い、

   鹵獲艦娘の攻撃へ躊躇わない奴は居ないだろうから迎撃の手は正直鈍くなるだろう。」

提督「大陸における都市爆撃と違って島にある拠点を狙うやりかたは

   的が小さいから狙いにだろうがそこは落す爆弾の量を増やせば問題ない。」

提督「なんせ挟撃の形になるから前線から戦力を引き抜く暇はないだろう。」

提督「南方棲姫の陽動が始まってここ数日。

   それから考えれば早くて明日、遅くても明後日には俺達の後方司令部は更地にされるだろうな。」

阿賀野「そんなに早く?」

提督「あぁ、このブリッツって戦術は敵深海棲艦の性能の良い電探、無線設備、航空機材、

   全てにおいて向こう側に有利な条件が整ってる。」

提督「さらに言えば兵力を旧ソ連の如く無駄遣い出来る深海連中なら

   猛進する際の損害も一切考えなくていいから負傷した連中も俺達と違って捨てていける分、

   進軍速度が落ちることがない。」

提督「だから進軍速度はこちらの予想する以上の早さだろう。

   さらに兵站についても補給艦を大量に向こうは用意できるし

   それでも足りなければ爆撃機に積んで航空輸送してもいいしな。」

提督「まさしく物量で殴る。だ。」


73: 2018/04/06(金) 00:17:01.54 ID:UVTnURzf0

提督「だから補給基地が作られた時点で詰みだったと言うわけだ。」

提督「まっ、そういう訳だから撤収だ。」

阿賀野「じゃ、提督さんの船も燃料入れておくね!」

提督「いや不要だ、俺はここに残る。」

阿賀野「えっ!?」

提督「本来は指揮官が氏ぬのは避けるべきだが退き陣も速度が全てだ。」

提督「俺が乗る船を守りながら逃げてみろ?

   スピードが遅いのと標的がここに居ます!って言っているようなものだ。」

提督「敵の指揮官っていうのは須らく最優先排除目標だからな。」

提督「それに生き残っても俺の階級だと地獄しか待ってない。」

秋津洲「階級かも?」クビカシゲ

提督「俺の階級は将官位だ、南太平洋で大きく負けたとしても人類が消滅するわけじゃない。」

提督「責任をとらせる生贄が要るわけだよ。

   どんなに才能があっても一度の失敗で全てを失うのがすばらしきかな日本型社会って奴だ。」

提督「逆に氏んだ奴はいい奴だ、となるのも日本型社会でな。」

提督「俺がここで氏んでお前達が逃げる為の時間を稼げば

   不惜身命の精神すばらしいで美談に仕立ててくれる。」

提督「お前達が本土に逃げ帰った後の事まで考えれば俺はここで氏んだ方がいいのさ。」

提督「生きて帰って、生き地獄を味わうくらいなら英雄として氏なせてくれ。」

提督「俺は疲れたよ。」

阿賀野「提督さん。」


74: 2018/04/06(金) 00:18:17.74 ID:UVTnURzf0

提督「ま、そういう訳でこいつは俺からの最後の指令書だ。

   俺が撤退命令を出したことを証明するものだから絶対に無くすなよ?」

阿賀野「分かったわ!」

提督「それから阿賀野、これは白紙の指令書だ。

   撤退中に本土へ逃げるまでに必要あれば現地徴発でもして物資は手に入れろ。」

提督「判子と俺の署名は入れてある。文面は良く考えて書け。」

阿賀野「白紙委任状みたいなものかしら?」

提督「当たりだ。こいつは海軍の人事システムの穴を突いた物だからな。

   悪用は今回限りにしとけよ。」ニヤリ

阿賀野「うん!分かったわ!」ウフフ



これは、海軍の司令部に戦氏が報告され確定するまでは提督が生きている扱いになる為、

提督の地位をぎりぎりまで使い倒すというある種の詐欺である。


75: 2018/04/06(金) 00:19:30.88 ID:UVTnURzf0

提督「負傷者は出来る限り収容しながら撤収してくれ。

   この海域で何があったのかの情報は値千金の価値がある。」

阿賀野「分かったわ!」

提督「最後にこの手紙だ。艦隊司令部の戦略参謀におれの昔馴染みがいる。

   そいつを頼れ。悪いことにはならんはずだ。」



こうして撤退の指示を出し、拠点を離れる阿賀野達を見送ると提督は一人、拠点にある建屋へ入っていった。



提督「元々はここが鎮守府としての拠点になるはずだったんだがな…。」

提督「まぁ、無駄に拠点を構えると枷になっちまうわなぁ。」



食堂になるはずだった部屋に椅子を置き床下収納からナポレオンを取り出す。



提督「お前達はどうして逃げなかった?」



発電機を動かしている為に使える水道から出る水で

埃を被ったグラスを洗いながら部屋の入り口に向かって問いかける提督。

76: 2018/04/06(金) 00:21:26.59 ID:UVTnURzf0

明石「結婚した時の誓いの言葉忘れたんですか?健やかなる時も病める時も。」

提督「夫婦寄り添いだったか?」

明石「それに、提督にはちゃんと話しておかなきゃと思って…。」

秋津洲「秋津洲は大艇ちゃんがあるからギリギリまで逃げなくても大丈夫かも。」

秋津洲「それに必要だと言ってくれた提督さんの最後を見届けたかったから…。」

提督「俺は妻と部下に恵まれたな。」

提督「阿賀野もこの撤退戦の修羅場を抜けきれば一端の旗艦としていい面構えになるだろうが。」

提督「それを見届けられないのは心残りだな。」

提督「お前達も飲むか?」



グラスを二人に差し出す提督。



提督「ちょいとつまみをとってくる。保存食になにかあっただろ。」



そして、ブランデーのつまみとしてはちょっとおかしなサラミ。



秋津洲「塩たっぷりの保存食かも!健康の為に遠慮しておくかも!」

提督「だなー。高血圧まっしぐらだ。」

明石「結構いいお肉を使っていますね。」



箸を伸ばそうとしない秋津洲と対象的にぱくつく明石。



提督「でだ、明石。話してくれるんだな?」

明石「はい。」



明石が話し始めるのは前職での仕事内容。それは驚愕の内容だった。


77: 2018/04/06(金) 00:24:15.12 ID:UVTnURzf0

提督「するとその○四計画ってのは深海の姫、鬼級を人工的に作り出す研究だったのか。」

明石「はい。分野を超えて研究していた中で深海棲艦の姫級が群の統率を蜜蜂や蟻の様に行うなら

   その頭を此方で作って挿げ替えてしまえばいいという結論になったんです。」

提督「だが、それはお前、制御できないだろ。」



提督の意見は最も。



明石「その為の制御装置があったんです。」



提督の脳裏に浮かぶのは阿賀野からあった報告。



提督「例の友軍に攻撃してきた艦娘に使用されたという敵の新兵器の事か。」

明石「はい。何処から漏れたのか…。」

明石「私もその研究所で主席として研究していたのですがある日にふと目が醒めたんです。」

明石「艦娘を深海棲艦の姫級へ艦娘の意識を残したまま改造して頭には制御装置兼万一の自爆装置。」

明石「とても許されるものじゃないと。

   戦争を終わらせる為だとしてもこんな人の道を外れたものが許される筈がないって。」

明石「それで、全てを破壊して逃げたんです。」

提督「そうか。」

明石「それが、どうしてこんな事に……。」

提督「一緒に研究していた連中が居たんだろ?そいつらから漏れたんだろうさ。」

提督「戦争っての始まりから終わりまで全部を通して金になる。」


78: 2018/04/06(金) 00:26:20.39 ID:UVTnURzf0

提督「大方、欲に目のくらんだ海軍の誰かの仕業だろ。」

秋津洲「武器業者さんかも?」

提督「武器業者の実際はイメージ程儲からないのが実情だなぁ。」

提督「武器だけ作る重工業より化学や総合商社、

   戦費調達に関連する銀行、証券とかの金融屋だろうな。」

提督「武器開発に関連しての技術の方が民生転用して大きく儲けれるのよ。」

提督「枯葉剤なんかの土壌汚染は食料問題に直結するから

   化学兵器を使用された国は土壌汚染を無視して作物を作るとかで無い限り食料輸入国になっちまう。」

提督「コングロマリットなんかだと武器製造の重工業、食料調達の総合商社、あるいは穀物商社、

   戦費調達に関わる国債の販売引き受けで銀行、証券会社。全てにおいて金を稼げる。」

提督「戦争ってのは物と金を大量に消費してまったく生産性がない。」

提督「門外漢だからあまり詳しくないが軍事ケインズ主義っていう、

   まぁ、経済の調整目的で戦争をやる、あるいは強力な軍隊を持ち大量の軍事費を投入すべき、

   なんていう学説もあったりする。」

秋津洲「めちゃくちゃかも…。」

提督「学説が出る前だが成功例としてナチスドイツやら同時期のルーズベルトが有名かな。」

提督「ただ、こいつらはちょっと頭の螺子がなぁ。」

提督「とりあえず、ざっくり言うと巨額の軍事費が経済を好転させると考える経済学だ。」

提督「第二次世界大戦の例で言うなら週間護衛空母なんてやれたのは

   当時の不況により余っていた労働力の解消と

   金をばら撒く公共事業への大義名分を手に入れる為だったという見方も出来る。」

秋津洲「工業力があればこそのような気がするかも。」

提督「まぁな。んでだ、折角、戦争が起こってくれているなら

   なるべく長引かせて金を儲け様と考える輩が出てきてもおかしくはないさ。」

提督「長引く程にばら撒かれる金は多くなるからな。」

秋津洲「救いようの無い馬鹿かも…。」

提督「確かにな。」


79: 2018/04/06(金) 00:27:46.17 ID:UVTnURzf0

明石 グゥ

提督「と、薬が効いたな。」

秋津洲「やっぱり睡眠薬いれていたかも。」

提督「サラミは香辛料やら塩を多く使う分、味覚を鈍くしてくれる。」

提督「継ぎ足した酒に入れた薬の味を悟られずに済むって寸法さ。」

提督「惚れた女が一緒に氏のうと言ってくれたとしても男は黙って拒否しねえとな。」

提督「氏ぬのは一人でいい。」

提督「それと、誓いの言葉だが。氏が二人を別つまで。って続くのを忘れてやがる。」

提督「まったく忘れっぽい奴だよ。」

秋津洲「提督。」

提督「秋津洲。すまねぇがお前の気持ちに応えてやることは出来ない。そして、明石の事、頼まれてくれないか。」

秋津洲「提督。」グシッ

提督「泣くな。化粧が崩れるぞ?」

秋津洲「ていとく~。」ブワッ

提督「苦手なんだよ。女の涙ってのは。」

提督「まったく……。」

秋津洲 ウワァ―――――ン



抱きつく秋津洲の頭を撫でながら提督は一つ、深く溜息をついた。

一頻り泣いた秋津洲が良く眠る明石を抱え拠点から離れたのはその日の深夜。

不肖にして優秀と相反する評価が付けられた弟子への手紙とともに。

これはタイミングとしてギリギリだった。

なぜなら、空母棲姫達主力部隊侵攻の開始は払暁と同時だったから。

80: 2018/04/06(金) 00:29:37.56 ID:UVTnURzf0

夜明けの時間にも関わらず空がいつまでも暗いままだった。

敵が多すぎて空の色、海の色が見えなかった。

辛うじて命を拾った艦娘の証言である。

飛行機が八分に空が二分。

船が八分に海が二分。

いかに敵の航空兵力と艦艇が多かったかが分かるだろう。

払暁と共に始まった深海の一大攻勢作戦は翌日の黄昏時には終わり

黄昏と類義語である落日を南太平洋に展開する海軍に齎す事となった。



日本海軍南太平洋重要拠点



南方「この敵後方拠点をこうもあっさりと落すことが出来るだなんて思いもよらなかった。」

南方「人間達にとって要衝のはずなんだけどな。」



空母棲姫率いる主力C部隊が陥落させた敵拠点で合流した南方棲姫が最初に交わした言葉。



空母「そうそう、ここの指揮官達の首は浜辺に並べて置いたので一応見ておいて?」

空母「皺だらけの爺だの脂で弛みきったデブの首ばかりで華がないけれど。」



苦笑しながらその要請に了解したと返す南方棲姫。



空母「まぁ、攻められるはずが無いとの思い込みが防衛に割く人員を少なくしていたのでしょう。」

空母「実際あっさりとしたものだったわよ?」

南方「我々の拠点からここまでの距離を考えればそう思うのも無理は無い。」

空母「もっとも割いていた所で応戦出来ていたかどうかは分からないけれどね。」

南方「そうね。これだけの数を動かす作戦はそうそう実行できないものね。」



圧倒的物量で押す作戦というのは立案出来てもなかなか実行出来る物ではない。

RTS等のゲームをプレイした事がある方は分かると思うが大量の軍勢を一度に整えるのは

それだけで資源が底をつきかねない行為である。

だけに数を頼みとする深海勢力でも今回の作戦に用意した軍勢は前例の無い規模だった。

この時の作戦に使用された深海の主攻部隊C郡参加戦力は以下の数である。

81: 2018/04/06(金) 00:31:11.42 ID:UVTnURzf0

戦略爆撃機1500機

護衛参加戦闘機800機

参加した艦艇

駆逐艦(級種階級別省略) 423

軽巡洋艦(同省略) 45

重巡洋艦(同省略) 33

戦艦(同省略) 36

空母(同省略) 51

軽母(同省略) 54

補助艦艇(兵站等輸送用補給艦) 1500

これだけの艦艇数が一度に作戦参加して正しく蹂躪をしたのである。



南方「ここを落したことで兵站輸送関連の情報を精査すれば

   敵の拠点も全て所在が明らかになるだろうな。」

空母「ここの要衝を私達の拠点化に成功すれば敵の本土侵攻への拠点としても使用可能ね。」

空母「さてと、後の事は任せてもいいかしら?」

南方「?」

空母「私がこれだけの作戦指揮をとった理由ぐらい察しなさいよ。」

南方(まだ諦めてなかったのか。)

南方「……、爆撃機に私の部下も出そうか?」

空母「いらないわ。黒こげの剥製なんて面白くないでしょ?」

空母「剥製にするなら生身のままでないと。少数の手勢で充分よ。」

空母「あなたには此処の足場固めと残敵掃討の残業をお願いしてもいいかしら?」



笑顔で要求してくる空母棲姫。

勝利した後の個人的な楽しみ。

いや、寧ろ其方が主目的で敵の後方重要拠点を落すことは前座。

彼女は自分を虚仮にしてくれた提督を確実に頃す為、動き始めた。

82: 2018/04/06(金) 00:32:37.08 ID:UVTnURzf0

補給所8番近海



空母「日も暮れて来たわね。」

ヲ級「空母棲姫様、近くにどんちゃん騒ぎというか賑やかというか。」

空母「?」

ヲ級「尋常ならざるおかしな状況の鎮守府があります。」

ヲ級が言いにくそうに伝える変な様子の鎮守府の状況。

空母「なにそれ、あからさまに罠じゃない。」



どうしましょうという顔で空母棲姫を見るヲ級。



空母「実に面白いわね。本当、敵の指揮官の中で狂おしい程に会いたいと思った相手は初めてよ?」

空母「出来れば生きたまま味方に引き込みたいわね。」アハハハハ

ヲ級「敵の指揮官をですか?」

空母「私達に足りないものは何だと思う?」

ヲ級「?」

空母「全体を見通して総合的に戦略を立てる戦略参謀よ。」

空母「一部にそれをやれる姫、鬼の娘達も出てきているけど圧倒的に足りないわ。」

空母「さらに南方棲姫の様に兵站管理の出来る戦務参謀なんてもっと足りない。」

空母「私達が現状勝っているのは量だけよ。質を上げなければ勝利は無いわ?」

空母「さて、どうしようかしら?」



一般的な話をすればあからさまな罠にのる相手は居ない。

だが、現状、この戦闘域でまともな戦力を残している相手は居ない。

そして、自分が連れている部下達は選りすぐりの精鋭。



空母「ちょっと挨拶くらいしてみるべきかしら?」

空母「あなた達は万一に備えて戦闘体勢のまま待機しておいて。ちょっと顔を見てくるわ。」



空母棲姫はまんまと敵の思惑に乗った、好奇心が勝ってしまったのだ。

83: 2018/04/06(金) 00:34:18.47 ID:UVTnURzf0


その鎮守府は煌々と灯りに照らされ、腰に太刀を佩き正装をした人間が一人酒盛りをしていた。


提督「ようこそお嬢さん、我が鎮守府へ。」ニヤリ

空母「随分と面白い事を言うわね。」

提督「あんたは空母棲姫か?深海棲艦の図録で確認した事があるだけだが。」

提督「へぇ、写真よりずっとハクイ女じゃねぇか。」

空母「世辞の言葉として受け取っておくわ。」

空母「あなたが?」



尋ねる言葉はこれで充分。



提督「あぁ。」

空母「答えは分かっているけど一応聞くわ。あなた、私達の所に来る気はないかしら?」

提督「分かっているなら聞くだけ無駄だろ?」

提督「俺からもいいか?」

空母「どうぞ。」

提督「お前か?」

空母「分かっているんでしょ?無駄な質問よ。」

お互いの力量を知っている敵同士が出会えば。

提督「俺の首を獲るかい。」

空母「厄介な指揮官は生きていて貰うと困るのよ。」

空母「氏んで貰えるかしら?」

提督「まぁ待て。最近の若い奴はせっかちでいけねぇや。酒でも飲もうじゃないか。」

提督「月が綺麗だぜ?」

空母「文学的なお誘いという訳ではなさそうね。」

提督「妻帯者なんでな。悪いが深い意味は無い。

   敵の優秀な指揮官という事なら話の一つくらいしてみたいとも思うものだろ?」

提督「それとも、その程度の心の余裕すらないのかい?」



ふんと鼻を鳴らし。



空母「いいわ、その酒瓶が空くまでは付き合ってあげる。」

提督「高級酒なんでな、時間を掛けてゆっくりと味わってくれ。」ニヤリ



それからゆっくりと2時間程、敵同士という形でありながら不思議な酒盛りは続いた。

そして、最後は訪れる。

84: 2018/04/06(金) 00:36:55.77 ID:UVTnURzf0

提督「……、これで最後か。」

空母「そのようね。この酒盛りは貴方にとって何か意味はあったのかしら?」

提督「あぁ、大有りだ。俺の部下達を逃がす時間稼ぎに必要だったのさ。」



やられたという顔をする空母棲姫。



空母「何かの罠を仕掛けてくるのかと思っていたけど

   何も仕掛けてこない事が罠だったなんて。呆れたわ。」クスクス

空母「貴方みたいな指揮官は本当に厄介ね。心の底からここで殺せて良かったと思うわ。」

空母「さぁ、氏になさい。」

提督「待て待てどうせ氏ぬならそのでっけえ胸に挟まれて氏にたい。」

空母「随分と肝の据わった願いね。いいわよ、いらっしゃい。」フフフ



ぎゅっ。



提督「ほほう。なかなかこれはボリュームあるじゃねぇか……。」ポムンポムン



スラッ。


ズンッ。



空母「!?」

提督「悪いな、俺も敵の優秀な指揮官を生かしとくわけにはいかねぇんだ。」



空母棲姫に抱きつきその背中から自分を貫くような形で刀を串刺しにて逃げられないように固定。



提督「一緒にあの世に逝ってくれや。」ニヤリ



カチリ。



提督が隠し持っていたスイッチを入れると大爆発が起き全てがその炎の中に飲み込まれる。

その爆発の炎は遠く離れた場所でも観測出来たそうである。


85: 2018/04/06(金) 00:37:40.17 ID:UVTnURzf0
旧海軍後方集積地(現深海棲艦新拠点)



南方「空母棲姫が殺られた!?」

南方「……、了解した。一旦拠点に戻ってくれ。」



空母棲姫が氏んだことを連絡する無線を受け空母棲姫に付き従っていた部下に撤収の指示を出す。



南方「くそっ!これからの深海棲艦を支える貴重な人材が!」

南方「ここの拠点化と平行しての残敵狩りは私だけでは厳しいというのに!」

南方「実におしい人材を失くした。」クソッ



空母棲姫が提督の自爆による相打ちにより南方棲姫の残敵狩り包囲網構築は遅れ、

結果として多くの艦娘がその包囲網から逃げ延びたのである。

これが、後に海軍最大の汚点とも言われる『 南太平洋の悲劇 』の全貌である。

86: 2018/04/06(金) 00:39:12.59 ID:UVTnURzf0

現在

提督「明石。探したぞ。」

明石「提督ですか。私に何か用ですか?」

提督「こいつもお前に渡しておこうと思って探していた。」

明石「バスクリンの缶ですか。」

提督「中身が強烈でな。疲れも吹き飛ぶ。」

提督「くれぐれも取り扱いには気をつけてくれ。」



カロカロコロ



明石「中身はなんですか……?」

提督「献金絡みの金の流れと積荷証券関連の金の流れ等色々だ。」

提督「俺の同期が時雨のやらかした事の裏取りしていて

   手に余るって事で俺に保険を掛けて来たんだ。」

提督「なんせ本土は魑魅魍魎の類が多いんでな。」

提督「表向きには時雨が主導してやった事になってそれ以外の関与を示す証拠が一切ない。」

明石「怪しいこと限りないですね。」

提督「あぁ、言葉は悪いが一介の艦娘風情に出来る山じゃねぇ。」

提督「中身を見ていたら明石が昔に勤めていた研究所の名前も出てきた。」

提督「それで、俺も再保険を掛けておこうと思っただけだ。」

明石「ありがとうございます。」

提督「礼には及ばん。世話になった師匠への手向けだ。

   お前ならこの情報の生かし方が分かるだろ。存分に役立ててくれ。」



提督はそう言い、同期から託されたUSBメモリのコピーを明石に渡したのだった。



引用: 【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88