175: 2018/05/05(土) 00:18:09.75 ID:SaFztU7r0
176: 2018/05/05(土) 00:19:03.15 ID:SaFztU7r0
それは88鎮守府が出来てすぐのお話し。
鎮守府に所属している人数がまだ少なかった頃の話。
雪風「しれぇ!雪風、帰って来ました!」
提督「お疲れ。戦果報告は不要だ。
お前はいつも最善手で最高の結果を出してくれる。」
雪風「信頼してくださりありがとうございます!」
提督「お前になにかある様じゃここも終わりだ。尻に帆をかけて逃げるさ。」ナデナデ
雪風 エヘヘ
提督「にしても、お前も俺について来なくても良かったんだぞ?」
雪風「しれぇは雪風を幸運艦雪風ではなく駆逐艦雪風として見てくれました。」
雪風「雪風を雪風の能力のみで評価してくれたしれぇはしれぇが初めてです。」
雪風「実力で公平に評価してくれる限り雪風はしれぇに付いていきます!」
提督「面と向かって言われるとなかなかおもはゆいな。」フフフ
提督「食事にするか……。」
雪風「はい!」
177: 2018/05/05(土) 00:19:55.94 ID:SaFztU7r0
食堂
不知火「司令、お疲れ様です。リストが届きました。」
提督「ありがとう。不知火も食事にするか?長門は一緒か?」
長門「あぁ、提督。ここに居たか今度の補充兵なんだが。」
提督「まぁ、食事を先にしようや。飯だけはいいぞ。」
不知火「司令、次回の補給と共にくる補充兵ですが志願兵も幾人かいます。」
長門「後は氏刑、服役免れの懲役兵だな。いずれにしろはみ出し者だ。」
提督「解体で氏ぬより此処に来て少しでも長生きする事を選ぶ連中だ。」
提督「多少なりとも灰汁が強くないと面白くないだろ。」
雪風 モグモグモグ
提督「にしても雪風はよく食うな。これも食べるといい。」
不知火「司令、食事はしっかりと食べないといけませんよ。」
提督「俺は食が細いんだよ。勘弁してくれ。」
不知火から受け取った書類をペラペラとめくりながら
88鎮守府へ送られてくる囚人達を確認する提督。
178: 2018/05/05(土) 00:20:34.37 ID:SaFztU7r0
提督「ほとんどがワンウィークだろうな。」
不知火「不知火もそう思います。」
雪風「ワンウィークですか……。」ショボン
提督「あぁ、すまない。話題が悪かったな。」
提督「長門、不知火。すまないが続きは後程執務室で頼む。」
179: 2018/05/05(土) 00:21:33.52 ID:SaFztU7r0
執務室
提督「さてと、話の前に一服いいか?」
長門「駄目と言ったら?」
提督「遠慮するさ。俺はコブラが好きだからな。」
長門「宇宙海賊か。」フフ
提督「あぁ、スターバックスでは流石に遠慮するそうだ。」フフ
長門「成程。禁煙の場所では奴も葉巻は控えるからな。」
提督「あぁそうだ。」
長門「ならば遠慮してくれ。」
提督「そうか。」ヤレヤレ
不知火「そうです。健康は大事です。」
提督「そうか。」ショボン
不知火「はい。」
180: 2018/05/05(土) 00:22:52.72 ID:SaFztU7r0
提督「本題に入ろうか。何人使えそうだ?」
長門「教導をやっていた不知火との意見交換での結論だが来た内の1割残ればいい方だな。」
長門「他は葬儀屋を手配する方が早い。」
提督「………。ここの危険度を考えればもう少し少ないと思っていたが意外と多いな。」
長門「大甘採点の私と辛口採点の不知火とでの中間だから問題ないと思う。」
提督「そうか。足して割っていい塩梅か。」
提督「雪風がまた悲しむなぁ……。」
長門「提督よ、あの雪風は『 氏なず 』の雪風なのか?」
提督「やっぱり気付いていたか。
雪風はその渾名で呼ばれるのは好きじゃないから止めておいてくれ。」
不知火「私からもお願いします。」
長門「言われずとも。纏う雰囲気が駆逐艦のそれじゃなかったからな。」
長門「ただ、あの雪風を使いこなすとは。提督よ。お前の過去もその内聞かせてくれ。」
提督「そのうちにな。」
提督「まぁ、渾名の由来となっているが雪風は色々移動が多くてね。」
提督「俺が丁度10人目の提督だそうだ。だけに、仲間を大切にしたがるんだ。」
長門「10人目。」
提督「あぁ、鎮守府機能を失うような敵の攻勢にあった激戦区ばかりを経験している。」
長門「問題があるのか?」
提督「誰か氏ぬ度に人知れず物陰で泣くような繊細な奴なんだよ……。」
提督「そして、仲間を大事にするくせに仲良くなりたがらない。」
提督「腹の底を見せ合える相手になるのは大変だぞ?」
長門「私は仲良く出来ているが。」
提督「あいつがお前を認めているからだよ。良かったな。」
長門「そうか、誇らしいな。」
不知火「話題を戻しますが懲役組みで見所がありそうなのはこの数人だけです。」
ペラペラと艦種、艦名、略歴を確認する提督。
そして、ある駆逐艦の所でその手が止まった。
提督「駆逐艦卯月か。ほう。睦月型のカタログスペックをハンデにせず戦うか。」
提督「面白そうな奴じゃないか。」
不知火「雪風とペアを組ませてみようかと思っています。」
提督「いいぞ。それで進めてくれ。」
181: 2018/05/05(土) 00:24:24.65 ID:SaFztU7r0
数日後 大会議室
室内には志願組みと懲役組み双方が集められ鎮守府での特殊システム。
懲役の軽減や脱走時の取り扱いについて、武器、弾薬の供給について説明がされていく。
提督「事前の契約状況を確認すると全員傭兵契約を結んだようなので
それを前提として話を進めるぞ。」
提督「燃料や弾薬はお前達に支払われる給料からそこに居る明石を通して購入してくれ。」
明石「どうぞ宜しく。」
提督「この明石はお前らがいた鎮守府のアイテム屋と熟練度が違う事を先に言っておく。」
提督「何かして返り討ちにあいミンチになっても俺は関知しない。面倒は嫌いなんでな。」
そして、鎮守府での細かなルールや契約についての説明が終わった後、質疑応答の時間。
卯月「質問。懲役組みが武装蜂起して鎮守府を乗っ取ったらどうなるぴょん?」
提督「やってくれてかまわんぞ。出来るならな。」
提督があっさりとした口調で言い終わるより前に
質問した卯月の頭には既に数名の砲口が突きつけられていた。
提督「定時連絡が無くなると指揮官氏亡でここを丸ごと、
地図から消す勢いで空爆、砲撃する事が事前の取り決めで決まっている。」
提督「俺を人質に立て篭もるつもりの奴に先に言っておくが
俺の首は南瓜祭りのランタン程度の価値もないからな。」
提督「それに脱走も含めて反乱分子には自動的に多額の賞金
もしくは刑期軽減報酬の報酬がつけられる。」
提督「金か懲役年数の軽減目的の奴には寧ろ出てくれた方がありがたいんじゃないのか?」
提督の言葉に色めき立つ志願組みと不敵に笑う一部の懲役組み。
提督「そういう事だ。余計な事は考えずに仕事に当たってくれ。」
そういい残し提督は部屋を出て行ったのだった。
卯月「碌でも無いぴょん……。」
182: 2018/05/05(土) 00:25:17.92 ID:SaFztU7r0
数ヶ月後 鎮守府埠頭
鎮守府の面子は殆どが入れ替わり最初から残っていた者も極わずか。
任務を終えた卯月は埠頭の係留杭に腰かけ水平線に沈む夕日を見ながら黄昏ていた。
卯月「命が紙切れ一枚より軽い所だぴょん……。」
長門「なればこそ生きている事を楽しめよ。」
卯月が声に気付いて顔を上げれば生ける伝説、
但しここに来るまでは氏んだと思っていた戦艦長門のネームド。
卯月「長門かぴょん。今日の戦闘でも氏ななかったぴょん。」
長門「仏との縁より閻魔との縁が強かったらしくてな。」
長門「八大に就職する前に現場経験を積んで来いというありがたい天の采配だ。」
卯月「へらず口ぴょん。」
雪風「卯月さんは演技していますよね。」オツカレサマデス
長門との会話に続くは一緒に出撃をしていた雪風の言葉。
183: 2018/05/05(土) 00:25:58.61 ID:SaFztU7r0
卯月「 ! 」
卯月「いつから気付いていたぴょん?」
雪風「最初の顔合わせで雪風のファンネルマークに一瞬驚きの表情を見せた時からです。」
雪風「雪の一文字だけをファンネルマークに登録している雪風は私だけです。」
雪風「そして、そのマークを知っているのは雪風と何処かで接点のあった艦娘。」
雪風「雪風は自慢ではありませんが激戦区ばかりを渡り歩いています。」
雪風「どの激戦区も一瞬の油断で閻魔が拝める場所でした。」
雪風「それらの場所を生き抜いた艦娘が並みの筈がありません。」
卯月「降参。『 氏なず 』と言われた貴方には敵わないよ。」
白旗をあげましたといった表情の卯月の口調はいつものそれではなくなる。
184: 2018/05/05(土) 00:27:33.28 ID:SaFztU7r0
卯月「ラバウルで隣の戦区で戦って偶然命を拾ったの。」
卯月「ラバウルも酷かったさね。私が居た鎮守府も塵になったし。」
卯月「命をどうにか拾った時に思った。」
卯月「卯月って艦娘は『 頭うーちゃん 』なんて馬鹿にされるくらい
アホキャラ扱いされているのならそれを演じ、
味方に戦闘に使えないと思って貰った方が
後方任務ばかりで楽なんじゃないかって。」
卯月「艦娘それぞれに若干の個体差があるように私の語尾も後付のキャラ付けよ。」
卯月「演じるうちに地になりそうで嫌気もさしていたけどね。」
雪風「随分と苦労されたんですね。」
雪風の言葉に手をひらひらと振り否定する卯月。
卯月「他の艦娘卯月に倣い嘘をついて後方任務に回っていたから雪風程は苦労してないよ。」
卯月「最もその嘘がばれて敢闘精神無しの烙印を押され、
挙句に見に覚えのない失敗諸々込みの軍法会議で懲役50年。」
卯月「収容先は、お偉いさんが艦娘を食い散らかす為にある様な所でね。
どんな変Oプレイでも修復材ざばぁーで元通り。」
卯月「異物挿入、四肢切断なんて序の口と聞いて頭がいかれてると思った。」
卯月「それなら氏に場所が選べるこっちの方がいいかと思ってこっちを選んだだけ。」
雪風「そうですか。」
さしだされる雪風の手。
卯月「握手?」
雪風「改めてです。
お互いに命を預ける相手であれば隠し事無くいける事が重要と雪風は考えています。」
卯月「あぁ、成程。それじゃぁよろしくお願いするぴょん。」
雪風「……、口癖が地になるって怖いですね。
後、雪風は氏なずの渾名は好きじゃないです。」ニギニギ
卯月「……、うっかりするとどうしようもない。渾名については了解。」ニギニギ
卯月「これから改めて宜しく。」ニコニコ
雪風「こちらこそです。」ニコニコ
185: 2018/05/05(土) 00:28:33.09 ID:SaFztU7r0
それからの雪風と卯月のコンビは報酬金ランキングの駆逐艦部門で常に上位に有る様になった。
鎮守府が開設して半年を過ぎる頃には面子の入れ替えは相変わらず激しいものの空母や戦艦。
軽巡、重巡、軽空母、潜水艦、志願、懲罰といった種別に関係なく戦力は充実していった。
そしてそれに合わせて鎮守府に寄せられる任務という名の無茶難題、
依頼という名の民間協力要請も右肩上がりに増加していた。
186: 2018/05/05(土) 00:29:59.76 ID:SaFztU7r0
ある日の埠頭
提督「先客か。」
提督が一服の為に埠頭までやって来ればそこには咥え煙草で水平線を見つめる卯月が居た。
卯月「なんだ司令官か……ぴょん。」フィー
提督「実にわざとらしい語尾だな。」
卯月「面倒だから素でいい?」
提督「かまわんよ。お前も喫煙習慣が?」
胸元から煙草を取り出した提督の紙巻に慣れた手つきで火をつける卯月。
卯月「見た目に精神年齢が引き摺られる事がないからね。」
提督「今日び喫煙者は肩身が狭くていけない。
ついには執務室ですら禁煙になってしまった。」ヤレヤレ
提督「それはそうと雪風と上手くやってくれている様で感謝する。」
卯月「………。」
提督「生き残ればそれだけ他人の氏に際に立ち会う事が多くなるからな。」
卯月「氏神だの三途守だの言われているのは知っている。
でも、あの娘。見た目に精神年齢が引っ張れているようには見えないけど?」
提督「強くあらんとしているからだろうな。」
提督「それでお前はどうするんだ?」
卯月「どうとは?」
提督「任務に仕事で稼いだ金は結構な金額になっている。」
提督「今のペースで行けば来年の今頃には懲役分の金は払えるぞ?」
提督「払った後を如何するかはお前さんの勝手だがな。」
卯月「そうだねぇ。
まぁ、無一文で此処を出て行くのもあれだから終わっても暫くは働くと思うよ。」
提督「その時は一声掛けてくれ。契約の切り替えが有るからな。」
卯月「分かったぴょん。」
提督「お前、どっちが素なんだよ。」フフ
187: 2018/05/05(土) 00:31:47.16 ID:SaFztU7r0
卯月「長い間キャラを演じているとどっちか分からなくなるのよ。」
卯月「それより司令官。新しく空母が来るって聞いたけど?」
提督「志願組みだがな……。」
卯月「ワンウィークかぁ……。」
適合者が艤装との適正試験を経て艦娘として海軍に入る。
しかし、よく言えば公務員。
賃金、身分の保証、福利厚生はしっかり出来ているし世間での最低水準よりはずっといい。
だが、あくまで最低よりなのだ。
稼ぐ理由があるから海軍を志願した者には圧倒的に足りないのだ。
卯月「雪風と潜水艦狩や輸送船団護衛にも飽きてきたと話をしていた所。」
提督「ん?長門やそれ以外にも空母連中とかと
合同で敵泊地強襲とかもよくやってなかったか?」
卯月「司令官、察してよ。」
卯月「女心の分からない朴念仁って言われない?」
卯月「大きな仕事を請けて儲けるには面子の入れ替わりの無いチームを作らないと。」
提督「今度来る空母をチームに入れて飛躍を狙うつもりか。」
卯月「Exactly」
提督「随分と丁寧だな。」フフン
提督「まぁ、お前が面倒みてくれるなら俺も頭を悩まさずに済む。」
提督「宜しく頼むよ。」
そう言いフィルター部分まで燃え尽きた煙草を消すべく携帯灰皿を探す提督。
188: 2018/05/05(土) 00:32:26.37 ID:SaFztU7r0
提督「ん……?」ペタペタ
卯月「どうした?」
提督「何処かに落してしまったらしい。」
卯月「それならこれを使うといいぴょん。」
自分が咥えていた煙草を消し提督に使えと自らの携帯灰皿を差し出す卯月。
提督「兎型のか。随分ファンシーな小物だな。」
卯月「うーちゃんも女の子ぴょん。」
提督「こきやがれ。女の子は煙草なんて吸わねぇよ。」
受け取りながら卯月の女の子発言を否定する提督。
卯月「ぷっぷくぷーだ。」ベー
そう言い残し去っていく卯月の背中を見送り携帯灰皿を返し忘れた事に気付く提督。
提督「……、まぁ、そのうちでいいか。」
そう考え提督は卯月から借りた携帯灰皿をズボンのポケットに仕舞った。
189: 2018/05/05(土) 00:37:48.16 ID:SaFztU7r0
以上で本日分更新終了です
設定をお借りしているエリア88っぽい雰囲気を維持出来ているのかなぁと考えながら書いています
オリジナルエピソードの方が多いので何ともなのですが……
かと言ってまるっとそのままでも海と空の違いがあるしなぁと思考の袋小路へ
更新が最近は今までより遅れがちでお待ちいただいている方へは申訳ありません
次回更新はなるべく早くとは思っています、本日もお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、励みになっています、レス書き込みありがとうございます
では、また次回もお読みいただけると幸いです
第八話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦:中編
設定をお借りしているエリア88っぽい雰囲気を維持出来ているのかなぁと考えながら書いています
オリジナルエピソードの方が多いので何ともなのですが……
かと言ってまるっとそのままでも海と空の違いがあるしなぁと思考の袋小路へ
更新が最近は今までより遅れがちでお待ちいただいている方へは申訳ありません
次回更新はなるべく早くとは思っています、本日もお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、励みになっています、レス書き込みありがとうございます
では、また次回もお読みいただけると幸いです
第八話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦:中編
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