12: 2013/11/10(日) 10:35:18 ID:u30Li6H6
一人称および地の文の練習も兼ねて投下




鬼龍院皐月「私は孤高で豪華」

13: 2013/11/10(日) 10:36:28 ID:u30Li6H6
あの転校生……纒流子が、最近めっきりきれいになったと巷では噂らしい。


猿投山曰く。
「ありゃ男でも出来たんじゃないですかね? 俺には見えないが、発する気が変わったのが分かる」


蒲郡曰く。
「不純異性交遊はすぐにでも風紀部委員長として厳しく取り締まりたいところですが、何分確固たる証拠が無いもので」


犬牟田曰く。
「男……でしょうかね。情報戦略部で現在身辺を調べてはいますが、なかなかどうして尻尾を掴ませてくれない」


蛇崩曰く。
「新手の美容法でも編み出したとか? そういや皐月様って、化粧水とか何使ってるの? 私最近乾燥が気になっちゃって」
キルラキル Blu-ray Disc BOX(完全生産限定版)

11: 2013/11/10(日) 04:47:28 ID:u30Li6H6
えーもう終わりってなんか早漏バカにされたみたいだな くやしい、くやしいっ

また後で青春三文オペラ投下するかも

14: 2013/11/10(日) 10:37:49 ID:u30Li6H6
曖昧模糊な現状報告など要らぬわ。

基礎化粧品? そのような物、使ったことなど一度もないわ。

私の美の秘訣? 至極簡単。鏡に向かってただ一言、こう唱えかけるだけ。


『きれいキープ』


「……皐月様って、本当チート的存在よねぇ」

蛇崩が溜息をつくのが聞こえたが、知るか。チートだの何だの言われたところで、それが私なのだから致し方あるまい。

15: 2013/11/10(日) 10:40:02 ID:u30Li6H6
――休日。

私とて時には下々の女達と変わらぬ格好をして一人で街に繰り出すこともある。所謂、お忍びヴァカンスというもの。

この国を鬼龍院家の完全支配下に治めるためには、定期的に街の様子を把握しておく必要がある。

そこで異分子でも発見しようものなら慌てず騒がず先手必勝、見敵必殺。

古き時代より、上に立つものはそうしてきた。私も、先人達に習っているだけ。

何の気もなしにふらりと入った書店。目に飛び込んできたのは、平積みの女性誌の煽り文句。

…………『できれいになる』??

下々の女達は、態々男にその身を委ねないと己の美を保つこともできぬということか。

……ますます以って、哀れなことよ。

店を出る。女達が、クレープ片手にそぞろ歩いている。

……私も食べるとしよう。何、悪衣悪食、下々の者達の食生活を知っておくのも覇道を征く者の務め。

クリームチーズブルーベリー? イチゴバナナチョコ??

この私を惑わすとはなんと罪深き食物よ、クレープめ。クレープめが。

16: 2013/11/10(日) 10:42:02 ID:u30Li6H6
夕暮れの街角。ふとのぞいた喫茶店に、見覚えのある後ろ姿。

あれは……纏流子。

おそらく声をかければ、あの喧嘩早い頑固一徹激烈馬鹿は直ぐ様戦いを挑んでくることだろう。

あの女を捻り潰すくらい造作も無いことだか、斯様な街中では面白みも何も無い。やはり倒すなら我が学園内でないと。

私とて、お忍びのヴァカンスを邪魔されるのは心外である。

一緒にいるのは見かけない男だ。学園内では見ない顔だが……あれが、噂の?

ああ、纒流子め。短時間のうちにに微笑んだり顔をしかめたり不貞腐れたり真っ赤になったりと、随分と忙しないことだ。

周りの女共からやれイケメンだのイケボだの何やら聞こえてくるが、顔面の造作や声色に一喜一憂するなどまさに俗な価値基準、小物共もいいところよ。

……纒流子は、あのような軽佻浮薄桃色吐息変O三昧を絵に描いたような男が好みなのか?


『できれいになる』


先程目にした雑誌の下衆な煽り文句が脳裏をよぎる。

纏流子が急に何故かきれいになったのは、あの男とこんな風に会っているからなのか?

17: 2013/11/10(日) 10:43:38 ID:u30Li6H6
羨ましくない。……羨ましくなど、無い。

大事なことだから何度でも言おう。決して羨ましくなど、無い。

私が覇者への階段を着実に上り詰めている一方で、お前はあの男の手のひらでいいように弄ばれているがいい。

身動きも取れない程にきつく抱き竦められているがいい。

二度と出られぬ蟻地獄でもがいているがいい。

恋や愛などという俗で矮小で煩わしく甘ったるい感情に振り回されているがいい。





「…………でも本当は全く羨ましくない訳でもない」

18: 2013/11/10(日) 10:44:45 ID:u30Li6H6
自分でも、顔が赤らむのが分かった。

一人で良かった。四天王にも執事にも、誰にも見られなくて良かった。

……全く、何を言っているのだ私は。

久々に出た街中で、浮ついた豚共の発する毒気に当てられてしまったか。

私もまだまだ修行が足りぬ。

帰ろう。そして戻ろう、私の日常へ。

19: 2013/11/10(日) 10:46:50 ID:u30Li6H6
「はー、レモンティー超うめぇ。五臓六腑に染み渡らぁな」

「ん? ……あれは、皐月お嬢さん?」

「んーな訳ねぇだろ。あのゴージャスでラグジュアリーでリッチネスでイレレガンスなお嬢様が、こんなゴミゴミした街中に一人でいるかっつの」

「つか休みの日まで鬼龍院皐月のことなんか考えたかねぇよ。勘弁してくれ全く」

「さしずめお忍びのヴァカンスってところかな。どうしようか、休日に教師と教え子がこんな街中でデートしてるなんてバレたらコトだ」

「デデデデデデートだぁ!? ぶぁ、馬っ鹿じゃねぇの?」

「随分と忙しないな君は」

20: 2013/11/10(日) 10:49:03 ID:u30Li6H6
「そういや君、こんな休日の街中でも神衣姿なんだね」

「他に服持ってねぇし、いつ何時刺客が襲ってくるか分かんねぇからな」

「そこの店で何着か買ってあげようか? 女の子の服の見立てには自信があるつもりだが」

「マジで!? さっきからあのワンピ気になってたんだよなぁ」

「ただし、後で全部脱がすけどね」

「やっぱいらねぇ」

21: 2013/11/10(日) 10:51:33 ID:u30Li6H6
おしまい
やっぱり超短編しか書けないや
あと戸川純は良いぞ

引用: 纏流子「だんな様はヌーディスト」