181: 2009/03/15(日) 16:37:58 ID:hXffXGGA
ここしばらく、何故かネウロイの出現頻度がぐっと下がっていた。
これは、久しぶりに出現したネウロイを即座に殲滅してしまった数日後のお話。

「……エイラー」
「……どうした、サーニャー?」

日は高く、開けた窓から入る風は涼しげで、もうこれは絶好の昼寝日和という気候。
しかし、再び睡魔が訪れる気配もなく、特に何かをしたい訳でもなく、エイラとサーニャはベッドに寝転がっていた。

「……ヒマ」
「……ダナ」

食事は先程取り終えたばかり。
外では、微妙に遠くの方から再び音速を目指すシャーリーのストライカー音。
何かしたい、と言うこともなく、エイラとしては、こうしてサーニャとのんびり過ごしてるだけで充分といえばそうだった。
が、サーニャの言う事を聞き流せるエイラは存在しない。
口調は変わらずだが、頭の中ではこれからどうしようかと、ちっちゃいエイラ達による緊急脳内会議が開廷された。
その会議は一瞬にて閉廷に至った。

「サーニャは何かしたいことあるー?」

満場一致。
サーニャのしたい事!で見事に団結を見せたミニエイラ達。
ん、と一人満足気なエイラを他所に、サーニャはエイラの言葉をゆっくりと反芻していた。

「……ね、エイラ」
「決まったのか、サーニャ?」

むくり、と起き上がるサーニャに合わせて、エイラもベッドの上に座る。
そして、エイラとサーニャの一日の行動が決まったのだった。

「……運命線、やろ」



バタンッ!!
「み、ミーナ!!大変だ!!!」

のんびりとしたお昼前、執務室にて談笑をしていたミーナと美緒の元に顔面を蒼白にしたゲルトルートが駆け込んで来た。

「どうしたのトゥルーデ?」
「ふむ。バルクホルンがそこまで慌てているとなると余程の事か?」

驚いた様にゲルトルートを見る二人。
しかし、事態はのんびりとしている猶予はない状況にあった。
全力で駆けて来たのか、日常ではご法度である魔力を開放しているゲルトルートは、息を整えるのも程々に叫んだ。

182: 2009/03/15(日) 16:38:39 ID:hXffXGGA
「さ、サーニャとエイラがっ……運命線ごっこを始めたぞ!!!!」

その瞬間、ピシリ、と執務室内の空気に亀裂が走った。
こちらを見たまま微動だにしなくなった上官二人にゲルトルートは再び叫ぶ。

「ミーナ!少佐!!どうされますか!?すでにリベリアンはルッキーニを連れて上空に逃げ…げふん、避難!リネットとペリーヌ、フラウも突然買い物に行くと言って逃ぼ…もとい、避難!後残っているのは我々と……」
「み、みみみミーナさん!!エイラさんとサーニャちゃんがなんかゆっくり指を振りながら追い掛けてくるんですけど!!?」
「宮藤だけです…!!」

何を見たのか、涙ぐみながら執務室に駆け込んできた芳佳。
事情を知る三人は押し黙る様に沈黙した。
静か過ぎるその時間は長くは続かなかった。
何故なら、どこからともなく……歌が聞こえてきたからだ。

運命線~、ぎゅっと、かさねたら~♪

「っ!?」

思わずゲルトルートが後退る。
そして、徐々に大きくなるその歌声を前に、美緒は一つの決断を下した。

「……宮藤」
「さ、坂元さん!?」

美緒は芳佳の傍まで近付くとポン、と肩に手を置いた。

「これも修業だ」
「へ?」

ふわり、とした浮遊感を感じた瞬間、芳佳は美緒に抱き抱えられていた。
驚きのあまり目をぱちくり、と瞬く芳佳に美緒は優しく笑いかけた。
そのまま廊下まで連れられて、芳佳はゆっくりと立たされる。
そうして美緒は芳佳と目線を合わせると、ゆっくりと聞いてきかせる様に口を開いた。

「今日一日だけの辛抱だ。何、いつもと変わらず普通に過ごしてくれればいい。検討を祈ってるぞ、宮藤」
バタンッ!
「え…坂元さん?坂元さん!坂・元・さぁあああああああん!!!!!!!」

いくら呼ぼうが叫ぼうが、執務室のドアは超硬度のネウロイより堅く閉じられた。
一人廊下に佇む芳佳の前に、今だけは一番逢いたくない二人が現れる。

ココロ~と、ココロで、手~を~、結んで~♪

まるっきりの無表情。
そして一定のリズムで左右にゆっくりと移動する指。
そんなエイラとサーニャが延々と歌をリピートしながら口ずさみ、これまたゆっくりと迫ってくる。

「あわわわわ……あぅ」

力が入らずその場に座り込む芳佳。
エイラとサーニャは、そんな芳佳にあと1mという所まで迫り

183: 2009/03/15(日) 16:39:09 ID:hXffXGGA
運命線~♪

その場で止まって左右に揺れ始めた。

「……………」
「……………」

芳佳が少し後退ると、二人も少しだけ歩を進める。
特に何をする訳でもなく、ただ歌いながら揺れる。

「………な、なんなんですか。一体……」

その後、言われた通りに¨いつも通り¨の作業…掃除、洗濯、調理…を行い、芳佳は普段の数倍とも言える程の体感時間を経験した。
そうして間もなく夕食の時間。
ふと芳佳はエイラとサーニャがいなくなっている事に気付いた。
はて、と疑問に思っているうちに、ちらほら、と警戒を厳にしながら501メンバーが集まってきた。

「宮藤、今日は本当にご苦労だったな!あー、その、すまん」
「すまんな、宮藤。アレだけは…私も耐えられない…」
「え、と…ゴメンなさいね宮藤さん。その変わりと言ってはなんだけど、明日はお休みにしておいたから、今日の事は忘れて……」

流石に気が引けていたのか、口々に謝罪と労りの言葉をかけてくれる三人に、芳佳は大丈夫ですよ、と笑いかけようとした。しかし

「運命線ー、ぎゅっと、かさねたらー」

あれ、と首を傾げる芳佳。
言えども話せども出てくるのはリピートされた歌詞ばかり。
バツの悪そうに視線を反らす他のメンバー。
そんな中、あくびをしながら元凶が訪れた。

「ほら、サーニャ。食堂についたぞー」
「……うん」

先程までの様子はいずこへ。
普段通りのエイラとサーニャに首を傾げる芳佳。
はぁ、と深い溜め息を揃って落とす501運命線被害者の会。
しばらくの芳佳の言語機能と引き換えに、とりあえず無事に運命線危機は幕を閉じたのであった。



運命線ごっこ。
それはヒマになったエイラとサーニャが向かい合って指を振るだけの鏡遊び。
しかし、互いに相当な勢いで共鳴し、次第にトランス状態に陥って、エイラとサーニャの意識は一つに混ざりエイラーニャとなる。
そしてそのままトランスし続けるのだが、内心が外に反映されてしまうのが運命線の恐怖の象徴。
このままサーニャと一緒がいい。サーニャと一緒で楽しい、と歌を歌い延々とリピートするエイラ部分。
エイラと一緒で嬉しい。もっと一緒に居たい、ととりあえず無意識に近付くの人間に近付くサーニャ部分。
この二つが周囲に多大なる影響を及ぼす通称、運命線ごっこ。
ホラ、今日も耳を澄ませば聞こえてくるかもしれませんよ?

おーわり

184: 2009/03/15(日) 16:41:28 ID:hXffXGGA
以上です。

よくわからなかったらゴメンなさい。

では、おやすみなさい

引用: ストライクウィッチーズ避難所1