508: 2013/01/08(火) 00:13:41.55 ID:FLnfmfsj0
改めまして新年明けましておめでとうございます。
2013年初投下させていただきます。

シリーズ
勇者募集してたから王様に会いに行った

酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった

勇者と魔王がアイを募集した【1】
勇者と魔王がアイを募集した【2】


それでは投下していきます。

509: 2013/01/08(火) 00:14:52.35 ID:FLnfmfsj0


--南の王国近辺の村--

カーカー

?「……」

ギィギィ

ロッキングチェアーに揺られながら、褐色肌の女性は夕焼けを見ている。

?「……」

疲れた表情で、その瞳は遥か彼方を見ている、

タタタタタ

??「ママー!」

???「こら気を付けて走るバウよ」

ボールを持った幼児が女性に駆け寄り、その後ろを大型の犬が追う。

510: 2013/01/08(火) 00:15:36.82 ID:FLnfmfsj0


--南の王国近辺の村--

??「ママー! おなかすいたー!」

幼児は汚れているのにも構わずに女性に抱きつく。

?「あらあら……じゃあ急いでご飯用意しなくちゃね」

????「今日は私がすると言ったでしょ? でございます。もうすでにできてるでございます」

窓から顔をだしたメイド姿の女性が答える。

?「あ……そうでしたね」

???「大丈夫バウか? ブラ」

?改めブラ「えぇ……この所調子はいいんですけれど……。それよりすいません、遊んでもらっちゃって。番犬さん」

???改め番犬「気にするなバウ。これも番犬のつとめバウ」

??「わんっちゃあああん!!」

がばっ

幼児は嬉しそうにはしゃいで番犬に抱きついた。

511: 2013/01/08(火) 00:16:23.85 ID:FLnfmfsj0


--南の王国近辺の村--

????「はぁ。あの番犬が今ではすっかりかたなしでございますですね」

?????「ございますですー!!」

窓から全身を出す小さなメイド。

番犬「う、うるさいバウよメイド!! ……ってちびメイド、今日は外に料理を運ぶバウ」

?????改めちびメイド「ふぇ?? なんででございますですー?」

番犬「今日は流星群が見えるそうバウ。それなら外のテーブルで食べた方がいいというものバウ」

ちびメイド「流星群!? 楽しみでございますですーー!! わかったでございますですよー!!」

嬉しそうに鍋を運ぶちびメイド。

ガチャガチャ

????改めメイド「あ、こら! 気を付けて運ぶでございます!」

512: 2013/01/08(火) 00:17:15.83 ID:FLnfmfsj0


--南の王国近辺の村--

かちゃかちゃ

ブラ「おいしい……メイドさん、本当に料理が得意になりましたね」

メイド「残念ながら他にやることがないもんででございます……あ、ほらほらほっぺたにご飯ついてるでございますよ?」

??「あうー?」

メイドは幼児のほっぺたについたご飯粒をとって食べる。

かちゃかちゃ

番犬「なんでわしだけ下で犬食いせなあかんバウ」

メイド「犬畜生が何言ってるでございます」

番犬「ひでぇ!!」

ブラ「……」

513: 2013/01/08(火) 00:17:48.01 ID:FLnfmfsj0


--南の王国近辺の村--

メイド「……」

番犬「……」

??「あー! それとってーちびめいどー!」

ちびメイド「おしょーゆでございますです? はいでございますです!」

??「ありがとー!」

ブラはその光景を見てほほ笑んでいる。

メイド「……一体いつまでこれが続くんでございます」

メイドは番犬にしか聞こえない大きさの声で話しかける。

番犬「仕方ないバウ……ヤミ様が何者かに連れ去られた今、やれることはないバウ」

メイド「……はがゆいでございます」

ブラ「ほら、落ち着いて食べるのよ? やみ」

??改めやみ「うん!!」

514: 2013/01/08(火) 00:18:50.74 ID:FLnfmfsj0


--深い森--

ホーホー

ぴっち『こっちだっぴ。余所見すると入れないっぴよ?』

ぱっち『妖精郷を甘く見るんじゃないっぱ!』

ザッザッ

配達屋「はぁ……なんだって私がこんな目に……」

かっぽかっぽ

ユニコーン「ひひん」

配達屋達は妖精に導かれて森を歩いている。

アッシュ「これで嘘だったら承知しないからな」

ポニテ「うん、食べちゃう」

ぴっち『ひ、ひでぇ!』

ぱっち『善意で言ってあげてるのにっぱ』

515: 2013/01/08(火) 00:19:38.43 ID:FLnfmfsj0


--深い森--

レン「まぁ……しっきりなしに三強に襲われることを考えたら、これが最善策な気はするにゃ」

ぴっち『猫ちゃんわかってるー!』

ぱっち『そうっぱ! 妖精郷は妖精に導かれたものしか入れない幻想郷! これ以上安全な場所なんてないんだっぱから!』

びゅういん

その時、突然景色が切り替わる。


--妖精郷--



配達屋「! うわぁ凄い……これが妖精郷……」

夜であるのにも関わらず、優しい光で満たされた世界。
ほんのりと光を発する妖精が飛び回り、妖精郷全体を流れる水も眩しくない程度に輝いていた。

ポニテ「綺麗だねぇ……」

アッシュ「あぁ……ツインテにも見せてやりたかった」

レン「氏んだ風に言うなにゃ」

ぴっち、ぱっち『『ようこそ! 妖精郷へ!』』

516: 2013/01/08(火) 00:20:21.13 ID:FLnfmfsj0


--妖精郷--

ぱたぱたぱたー

配達屋達の前に妖精達が飛んできた。

ぺっち『お前達だれですっぺ? 余所者は入っちゃダメですっぺ』

ぽっち『そうっぽ。いーけないんだー、いけないんだー。精霊様にー言ってやろーっぽ』

ぴっち『待ってくれっぴ! 僕はぴっちだっぴ! 元々この郷のものっぴ!』

ぺっち『ぽっち、知ってるっぺ?』

ぽっち『うんや、知らないっぽ』

ぴっち『思い出せっぴ! ほら、小六の時の給食の時間にうOこもらした……』

ぺっち『……あ、ああー! くそ漏らしのぴっちっぺかぁ!』

ぽっち『あぁいたいたー。そのまま不登校になったやつっぽ!』

ぴっち『ふぅ、思い出してもらえたっぴ』

きゃっきゃきゃっきゃ

アッシュ「それでいいのか」

ポニテ「外見は可愛いのに」

517: 2013/01/08(火) 00:22:07.23 ID:FLnfmfsj0


--妖精郷、ぴっちの家--

ぴっち『さぁさ、今日はお腹いっぱい食べていくといいっぴ!』

ポニテ「え!? なにそれおごり!?」

ぱっち『妖精郷は精霊様の魔力の恩恵のおかげで食べ物が豊富にあるんだっぱ。だから外の世界みたいに買ったりする必要はないんだっぱよ。そこら辺から取ってきたり趣味で作ってるやつから貰えばいいだけの話なのだっぱ。だから好きなだけ食べていいのっぱ』

ポニテ「わぁい食べ放題。ポニテ食べ放題大好き。私ずっとここに住むー」

アッシュ「おい頼むからツインテのことを思い出せ」

レン「レン、ツインテと一緒にここで永遠に住みたいにゃ。そういえばIPS細胞というので同性の間でも子供ができるらしいです」

わいのわいの

配達屋(濃いなぁこの人達……一般人の私は浮きまくりですねー)

ユニコーン「ひひん」

ぴっち『じゃあ今ご飯もってくるっぴ』

518: 2013/01/08(火) 00:23:00.84 ID:FLnfmfsj0
10

--妖精郷、ぴっちの家--

アッシュ「……なんだこれ」

ぴっち『? 何ってご飯っぴ?』

配達屋達の前に置かれたものは……

ぱっち『しかもかなり豪勢な部類っぱよ』

ポニテ「こっちのは……蜜であってるんだよね?」

ぴっち『いえすっぴ』

レン「なるほど、じゃあこれは?」

ぱっち『ドラゴンうOこっぱ』

ポニテ「私うOこ嫌い!」

ダンッ!

テーブルを思い切り叩くポニテ。

アッシュ「待てポニテ! 嫌いとかそういう問題じゃないぞ!」

真顔で突っ込むアッシュ。

519: 2013/01/08(火) 00:24:01.33 ID:FLnfmfsj0
11

--妖精郷、ぴっちの家--

レン「何おもてなし雰囲気で、さりげなくスカト○プレイに持ち込ませようとしてるにゃ、このくそ妖精」

メンチ切るレンにゃん。

ぴっち『ま、待つっぴ! 誤解だっぴ! 汚れなき妖精である僕らが、そんな異常な性癖の持ち主であるはずないだろっぴ!』

ポニテ「私超絶美少女なんだよ!? 世が世なら私の同人誌いっぱい出されていてもおかしくないレベルの美少女なんだよ!? なんでそんな美少女な私がうOこなんて食べなきゃならないの!?」

アッシュ「突然何言い出したの!?」

ポニテ「顔は小顔で可愛いしお目目ぱっちりだし唇ぷるるんだし髪の毛さらさらだしおっOいぼいんだし腰はきゅっだしお尻むっちりだし足長いし! なんでそんな美少女な私がうOこなんて食べなきゃならないの!?」

ものすごく悔しそうな表情で泣きながら言うポニテ。

レン「腹減りすぎておかしくなったにゃ」

ポニテ「それとも何!? そういう同人誌あんの!? うOこ喰う奴!!」

520: 2013/01/08(火) 00:25:23.62 ID:FLnfmfsj0
12

--妖精郷、ぴっちの家--

アッシュ「おいさっきから同人誌同人誌って……」

ポニテ「違うでしょ!? そういうのよりエOチな方が需要あるでしょ!? 『ふふ……食いしん坊め……やっと食い物に仕込んだ睡眠薬が効いてきたか……』とかそういうのの方のがいいでしょ!?」

ぱっち『実に同人誌ぽいセリフっぱ』

ポニテ「『いやしいやつめ……こっちの口も食いしん坊なのかな……?』とかいってぐったりしてる私を犯したいんだろ!?」

アッシュ「もういいやめろポニテ! ここには年端のいかない読者様もいるかもしれないんだぞ!?」

ポニテ「うるさい! アッシュ君は今のをツインテちゃんに置き換えて妄想してろ!!」

アッシュ「!?……ツインテ……こんなとこで寝ちゃまずいぞ……おーい?……寝てるな……? よし!」

ぴっち『何がよしだっぴ!!』

ポニテ「いいよ犯せよ! でも言っとくけど私超強いからね!? 同人誌みたいにあっさり弱そうなおっさんとかに負けないからな!? 『おいしそうに咥えこんじゃって』って、私の場合は本当の意味で喰うからな!?」

レン「もうこれ最低にゃ」

521: 2013/01/08(火) 00:27:37.98 ID:FLnfmfsj0
13

--妖精郷、ぴっちの家--

ポニテ「ううぅレンちゃぁん……私がっかりだよぉ……! 私凄くお腹すいてたからめっちゃ期待してたのに……憤慨だよ! この代償にぴっちちゃん達の身体で払ってもらってもいいんだよ!?」

レン「この三年間で一通りの物は食べれることが実証されちゃったにゃ」

ぴっち『待つっぴ!! 騙されたと思って食べてみるっぴ!! このドラゴンうOこは超美味い絶品料理なんだっぴ!!』

ポニテ「何が料理だよ!! 体内を巡りまわってきたことを調理って言うな!!」

ぱっち『いいから喰えって言ってるっぱ。それとも三年間経っても狭い所でしか物をかんがえられないのかっぱ?』

ポニテ「む」

ぱっちの一言でポニテは少し冷静さを取り戻した。

ぴっち『さぁ食べてみるっぴ。きっと気にいるっぴ』

レン「……これを食うとか正気の沙汰じゃないにゃ。でもどうするにゃポニテ?」

ポニテ「……仕方ないから食べてみる」

レン「まじか」

522: 2013/01/08(火) 00:29:18.81 ID:FLnfmfsj0
14

--妖精郷、ぴっちの家--

レン「それはうOこぞ、それはうOこぞ」

ポニテはドラゴンうOこを手に取る。

ぬむりゅ

ポニテ「うひっ!? この手に取った時の感触ぅ……」

ぴっち『さーさー!! ひと思いに一気に!!』

ポニテ「ぐぅ……なむさん!!」

ポニテは覚悟を決め口を開いた。

ぴっち、ぱっち『『あー……』』

その様子を嬉しそうに破顔させて見ている妖精たち。

ポニテ「! な、なにその顔」

ぴっち『い、いや? なんでもないっぴ』

ぱっち『ほんとそう。なんでもないからさっさと食べちゃうっぱ』

ポニテ「……」

523: 2013/01/08(火) 00:30:02.48 ID:FLnfmfsj0
15

--妖精郷、ぴっちの家--

ポニテ「……ドッキリだったら燃やすからね。魂ごと」

ポニテの瞳が光り始める。

レン「ポニテ、無理することないんにゃよ?」

ポニテ「こ、ここまできたら意地だよ! もう触っちゃってるしね!!」

再びポニテがドラゴンうOこを口に運ぼうとすると、

ぴっち、ぱっち『『あー……!』』

嬉しそうにそれを見ているぴっちとぱっち。

ポニテ「やっぱこれドッキリだろ!!」

ぱっち『ち、ちがうってぱ』

ポニテ「う~~!! うOこは投げ捨てるもの!!」

ポニテはドラゴンうOこをブン投げる。

レン「動物園のゴリラか!」

524: 2013/01/08(火) 00:30:38.19 ID:FLnfmfsj0
16

--妖精郷、ぴっちの家--

べちゃ

ポニテ「!」

しかし妖精たちには当らずに、ドラゴンうOこはアッシュの顔面に当たった。

ポニテ「ひぃっ!?」

ぬちゃ

アッシュ「な、なんだなんだ、もうちょっとで妄想の中のツインテと……ちっ。喰い物を粗末にするんじゃねぇぞ」

ぺちゃ

アッシュは顔についたドラゴンうOこをなめる。

レン「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」

アッシュ「な……なんじゃこりゃ」

ガクガクと震えるアッシュ。

ポニテ「ご、ごめんよアッシュ君!! そんな趣味はないの!」

525: 2013/01/08(火) 00:31:30.37 ID:FLnfmfsj0
17

--妖精郷、ぴっちの家--

アッシュ「美味い! 美味いぞこれ! なんだこれ!」

ポニテ「へ?」

アッシュは自分の顔にくっついてるドラゴンうOこをかき集めて口の中に放り込む。

アッシュ「んぐんぐ。このまったりとしていてまったりとしていないようなこの、なんか、すごいいい味がたまらん!!」

レン「ば、馬鹿な……アッシュが食糞に目覚めたのかにゃ……?」

ポニテ「……ほ、本当に美味しいの?」

アッシュ「あぁ! やばいぞ!」

ポニテ「……ごくり」

ポニテは再びドラゴンうOこに手を伸ばした。

ポニテ「あのちょっと食にはうるさいですよの称号を持つアッシュ君がここまで言うなんて……よっぽど」

ポニテは再びドラゴンうOこを掴む。

ぬめりゅぶ

ポニテ「うひぃ!」

526: 2013/01/08(火) 00:32:22.06 ID:FLnfmfsj0
18

--妖精郷、ぴっちの家--

ポニテ「でも……外見とか固定概念だけで決めつけちゃだめだってことは……学んだんだ」

ポニテはうOこを前にして真面目な表情。

レン「ぽ、ポニテ!」

ポニテ「いたっ、だきっ、ます!!」

バクッ!!

ポニテは決心が鈍る前にと、思い切ってドラゴンうOこを口に入れた。

もちゃっ、くちゃっ

ポニテ「……」

ぬちゅっ、ぐりゅる、ぶちゅ

レン「ど、どうかにゃ……?」

ゴックン

ポニテ「……」

レン「……ぽ、ポニテ?」

ポニテ「……うOこうめぇ」

527: 2013/01/08(火) 00:32:58.55 ID:FLnfmfsj0
19

--妖精郷、ぴっちの家--

レン「!! な、なんだってーっ!?」

ポニテ「うめぇ!! うOこうめぇ!! レンちゃん!! すごいよ!! このうOこうまいよ!!」

アッシュ「え……」

ぴっち『ねー!!?? 言った通り美味しいでしょっぴー!? でもうOこだけど』

ぱっち『めっちゃうまくてめっちゃ体にいいんだからっぱー!! でもうOこだけど』

ポニテ「やばいよ!! しかも食べる度に魔力が充足する気がするよ!! 細胞が喜んでる気がするよ!!」

レン「そ、そこまで……?」

レンもテーブルに置かれたドラゴンうOこを見てつばを飲む。

レン「な、ならレンも一個だけ……」

レンはそう言ってドラゴンうOこに手を伸ばした。

ぬぶるるぶりゅっ

レン「ひあっ!?」

528: 2013/01/08(火) 00:34:05.63 ID:FLnfmfsj0
20

--妖精郷、ぴっちの家--

レン「もぐっ……!! お、美味しいにゃ!!」

ポニテ「でしょー!?」

アッシュ「くっ!! まさかこれがうOこだったとは……し、しかし手が止まらん!!」

バクバクバクバクバク!!

ぴっち『喜んでもらえてよかったっぴー』

ぱっち『まー、妖精郷にあるものでまずいものなんかないんだけどねっぱ』

配達屋「……」

ぴっち『ぴ? そういや静かなお姉さん、お姉さんは食べないっぴ? 無くなっちゃうっぴよ?』

配達屋「あー……私はそんなにお腹が空いてないのでおかまいなくー」

ばくばくばくばくばく!!

配達屋(……どこまで言ってもうOこはうOこですよ。私は蜜だけいただこうっと)

ユニコーン「ひひん」

534: 2013/01/14(月) 23:54:31.06 ID:jIg4klUU0
こんばんはー! 遅くなりました。
挿絵は毎週どっかに挟む感じでやりたいなぁと考えていたのですが、描いてくれてる友達のパソコンがぶっ壊れちゃったみたいでこれからあるかわかりません……。

それとは別にwikiの方にある要望があったので、wiki設立のお礼ということも含め、絵を! 頼みました……


劇中、勇者最大のライバル(乳的な意味でも)のサッちゃんです!
http://file.sssukidesuuu.side-story.net/34b99d71.jpeg


それでは投下を開始します。

535: 2013/01/14(月) 23:55:11.18 ID:jIg4klUU0
21

--ジャングル--

姫「おーいっ! 賭博師ちゃん賭博師ちゃんー!」

賭博師「はいはい、どうしましたか姫ちゃん様」

姫「新しい柵を作るのを手伝って欲しいのだっ!」

賭博師「あー……」

元気よくトンカチを振り回している姫。

賭博師「あ、私がやっておきますんで。姫ちゃん様は休んでてくださいよ」

姫「えーっ!? 姫ちゃんもやるよっ! やりまくるよっ!!」

賭博師「いや正直バカにやらせても時間の無駄なんすよ」

姫「バカってゆったっ!?」

536: 2013/01/14(月) 23:55:38.69 ID:jIg4klUU0
22

--ジャングル--

とんてんかん

姫「おぉー!!」

賭博師「ふぅ……これでよしっと。どんなもんでしょう姫ちゃん様」

賭博師は出来あがった柵を姫に見せる。

姫「うんっ!! すごいすごいよっ!! 賭博師こんなこともできちゃうんだねっ!!」

賭博師「ははっ。まぁバカとは違いますんで」

姫「今バカってゆったっ!?」

賭博師「いや、誰も姫ちゃん様のことをバカ呼ばわりしたわけじゃないですよ。バカ姫ちゃん様」

姫「そっかぁ……えへへ、姫ちゃんちょっと勘違いしちゃっ、今バカってゆったっ!!」

賭博師(アホだなぁ)

537: 2013/01/14(月) 23:56:07.35 ID:jIg4klUU0
23

--ジャングル--

姫「じゃあその調子であと50メートル分だね!」

賭博師「はいはい、了解でぇす」

賭博師は道具を持って移動する。

姫「……」

とことことこ

その後ろに黙ってついていく姫。

賭博師「……どうしました姫ちゃん様」

姫「んー……」

とことことこ

賭博師(なんだ? まだなんか用があんのかな? 正直うろちょろされると作業の邪魔だし……仕方ない)

賭博師は姫の方に振りかえろうとする。

姫「ここ何年も一緒に暮らしてみて思ったわけだけど、とても人身売買をやっていた人間とは思えないね」

賭博師「!?」

538: 2013/01/14(月) 23:56:54.77 ID:jIg4klUU0
24

--ジャングル--

賭博師「……」

普段と変わらないはずのその表情に、なぜかまったく違うものを見ているかのような気分になる。

姫「優しいし教養はあるしお世話好き。それが嫌々やってるわけでもなければ打算的にやってるわけでもなさそうだし。そんな人間が人身売買なんてやるのかな?」

賭博師「……」

ごくり、と賭博師はつばを飲む。

賭博師(全てを、見透かされているような、気がする)

それほど姫の瞳は美しかった。

賭博師「あ、」

そしてなぜかさらさらと胸の内を口に出してしまう。

賭博師「俺が……いや、ただの言い訳なんですが……あの時の俺達は術にかかっていたような、気がするんです」

姫「……」

賭博師「確証があるわけじゃないし、過去の罪から逃れようっていうわけでもない……でも俺達は……あいつに会った時から……捻じ曲げられていたような、気がする……」

539: 2013/01/14(月) 23:58:30.10 ID:jIg4klUU0
25

--ジャングル--

調教師「あ、賭博師様と……姫ちゃん様? 何の話をしていらっしゃるんだろう」

農作物を抱えた調教師は、遠くで立って話している賭博師と姫を発見した。



賭博師「東の王国から亡命する時に……俺達には協力者が必要だった。だからあの館を出てすぐに、俺はそいつに連絡を取った……」

姫「そいつって……?」

賭博師「東の王国の黄金世代は……サム、選抜兵、通信兵、医師、そして俺の五人なんだが……実は同期でもう一人いるんだ」

姫「……」

賭博師「裏で潜伏して活動することを得意とする、俺達の、親友……今じゃそれも怪しいが」

姫「名前は?」

賭博師「……亜人保護団体、代表。あいつの言葉は、人を狂わせる」

540: 2013/01/14(月) 23:59:04.39 ID:jIg4klUU0
26

--協議会場--

代表「がー、すー、がー、すー」

代表は椅子に腰かけ、顔にタオルをかけて寝ていた。

護衛姉「代表様、そろそろ」

護衛妹「お時間でございます」

両方向からゆさゆさと代表を揺らす護衛姉妹。

代表「おっと……いやいや、ついつい寝てしまいましたか」

んー、っと背伸びをする代表。

護衛姉「どうぞ」

姉が差し出したのは暖かいタオル。

代表「おっ! 気がきくねぇ。ありがとーぉ!」

タオルでごしごしと顔を拭き、代表は立ち上がる。

代表「よっし、じゃあいっちょやりますか」

熊亜人「……」

541: 2013/01/14(月) 23:59:40.28 ID:jIg4klUU0
27

--協議会場--

ギィ

ハゲ犬幹部「ぬ!」

円卓に座る8人の幹部の目が、一斉に代表に集まる。

代表「いやいやお待たせいたしました幹部の方々」

にこりと笑いながら代表は自分の席につく。

蝶幹部「貴様……最も歳が若いくせに我らを待たせおって!!」

もじゃ幹部「あげくのはてにその軽々しい態度!! 我らを甘くみているのだな!?」

代表「いえいえめっそうもありませんよ! あなた方の後押しあってこそ、私は今この席に座っていられるのですから」

頭をペコペコと下げて笑う。

でぶ猫幹部(……相変わらず何を考えているのかわからないやつだ)

鎧幹部「……」

代表「じゃあ、始めましょうか」

542: 2013/01/15(火) 00:00:07.45 ID:7OFfM6mF0
28

--協議会場--

蛙幹部「それじゃあまずは、西の王国在住の亜人達に特別階級所得を与えるために予算をさこうと思うのだが」

もじゃ幹部「うむ。人間などより我らは優遇されるべきじゃからな!!」

でぶ猫幹部「ふぉっふぉっ」

さっ

代表「あの~」

代表は話を遮って手をあげる。

鼠幹部「なんだちゅぅ若いの!! 大事な話の流れを切りおって!!」

代表「そんなことよりも早急にことを進めなくてはならない問題があるんですよ」

がたがた!!

蝶幹部「なんだと!? 貴様!! 我らが同胞の大事な問題をそんなことだと!?」

代表「あ~……もっとお金欲しいのはわかりますけれど、そういうのは後にして欲しいんですよねぇ」

543: 2013/01/15(火) 00:01:18.38 ID:7OFfM6mF0
29

--協議会場--

でぶ猫幹部「!!」

ハゲ犬幹部「貴様!! 人間の分際でなんて口の聞き方だ!!」

蝶幹部「今お前らの発展とその裕福さは我ら亜人がいてこそなりたっているのだぞ!?」

鼠幹部「これだから人間を調子づかせるとろくなことにならないちゅ!!」

幹部達は怒りをあらわにする。

代表「あ~……」

鎧幹部「……」

蛙幹部「謝罪しろ!! 我らに!! 地面に頭をこすりつけて!!」

蛙幹部が代表に掴みかかったその時に、

代表「『沈まれ』」

ビタっ!!!!

544: 2013/01/15(火) 00:01:48.01 ID:7OFfM6mF0
30

--協議会場--

ハゲ犬幹部(な、なんだ!? こ、声が、でない!?)

でぶ猫幹部(はーっ、はーっ……それだけじゃあない……なんだ? なぜ我が、あんなひょろっちい人間なんぞに)

蛙幹部(恐怖を抱いている!?)

代表「やっぱ難しいんですよねぇ、人並みの知能がない方達を相手に話し合うのって。ちょっと努力してみようかとおもったけれど、結局こうするしかないんですよねぇ」

カッカッカっ

代表は円卓の真中に立つ。

鎧幹部(なんだ……何を始めるつもりだ……?)

蝶幹部(動くことも……できぬ!!)

代表「すーっ」

代表は深呼吸をし、そして


代表「諸君、私はおっOいが好きだ」


そう言い放った。

545: 2013/01/15(火) 00:02:19.09 ID:7OFfM6mF0
31

--亜人保護団体本部--

ぶぅん

事務員「おわっ!! な、なんだこれ……いきなり鏡に何かが映って……え? 代表……?」



--魔法王国--

ぶぅん

魔法王国民「お! な、なんだあれ! 空を見てみろよ! 人が映ってるぞ! なんかの新魔法か?」

ざわざわ

魔導長「! ……これは」



--東の王国--

東の王「これは……」



--西の王国--

秘書「! 西の王、こちらへ」



--南の王国--

南の王「この顔は……」


--王国--

中央の王「……くくっ」


--ジャングル--

姫「!」

賭博師「な、代表……」

世界中でその映像が映し出された。

546: 2013/01/15(火) 00:02:55.56 ID:7OFfM6mF0
32

--協議会場--

代表「諸君、私はおっOいが大好きだ」


代表「無乳が好きだ 貧Oが好きだ 微乳が好きだ 美乳が好きだ 普乳が好きだ 豊乳が好きだ 巨Oが好きだ 爆乳が好きだ 魔乳が好きだ」


代表「電車で 街中で 部屋で 職場で 雪山で 森林で 海辺で 体育倉庫で 学校で プールで」


代表「この地上に存在するありとあらゆるおっOいが大好きだ」


代表「テーブルの上にならべたおっOいがむにゅっとなってるのが好きだ。空中高く放り上げられたボールをおっOいが跳ね返した時など心がおどる」


代表「自転車の後ろに女の子を乗せておっOいをむぎゅっとくっつけてくるのが好きだ。運動をしている時に服の隙間から飛び出してきたおっOいをちらみした時など胸がすくような気持ちだった」


代表「四つんばいになった時におっOいが垂れるのが好きだ。縄跳び状態の女の子が息も絶え絶えにおっOいを何度も何度もたゆんたゆんしている様など感動すら覚える」

547: 2013/01/15(火) 00:03:30.88 ID:7OFfM6mF0
33

--協議会場--

代表「おっOいを紐で吊るし上げていく様などはもうたまらない。仰向け状態で寝ている時にグラヴィティに負けておっOいの形がつぶれているのも最高だ」


代表「自分のおっOいに自信を持てない女の子が手で隠しながら涙目上目遣いになっているのを見た時など絶頂すら覚える」


代表「露助のおっOい師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ。必氏に守るはずだったのおっOい達がイケメンに掻っ攫われていく様はとてもとても悲しいものだ」


代表「おっOいの物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ。英米の巨大おっOいに追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは歓喜の極みだ」


代表「諸君、私はおっOいを天国の様なおっOいを望んでいる」


代表「諸君、私に付き従う大隊紳士諸君。君達は一体何を望んでいる?」


代表「更なるおっOいを望むか? 情け容赦のない餅の様なおっOいを望むか? ぷにぷにの限りを尽くし三次元世界の男を頃す嵐の様な

おっOいを望むか?」

548: 2013/01/15(火) 00:04:28.49 ID:7OFfM6mF0
34

--協議会場--

幹部達『おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! 』


--魔法王国--

『おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい!』


--東の王国--

『おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! チハヤ! おっOい! おっOい! おっOい!』


--西の王国--

『おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい!』


--南の王国--

『おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい!』


--王国--

『おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい!』


--黄金王国--

『おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい!』

549: 2013/01/15(火) 00:05:18.06 ID:7OFfM6mF0
35

--協議会場--

代表「よろしい。ならばおっOいだ」


代表「我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとするわきわきした手だ。だがこの暗い部屋の中で四半世紀もの間堪え続けてきた我々にただのおっOいではもはや足りない!!」


代表「大おっOいを!! 一心不乱の大おっOいを!!」


代表「我らはわずかに一個大隊、千人に満たぬ紳士に過ぎない。だが諸君は一騎当千の古紳士だと私は信仰している。ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の軍集団となる」


代表「我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけているリア中共を叩き起こそう。おっOいをつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう。連中に母乳の味を思い出させてやる。連中に我々の甲高い声を思い出させてやる」


代表「おっOいの谷間には一般人の哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる。一千人の紳士の戦闘団で世界を揉み尽くしてやる」


代表「紳士の大隊大隊指揮官より全紳士艦隊へ」


代表「目標コミケ会場上空!!」


代表「第二次おっOいぱい作戦 状況を開始せよ」

550: 2013/01/15(火) 00:05:43.62 ID:7OFfM6mF0
36

--東の王国--

東の王「こ、これは……こいつ……まさか」

うぉおおおおおお!!

東の王「!! 城の外で民衆が……くっ!! こんな時にっ!!」



--西の王国--

西の王「一体どうしたんだ秘書。こんな暗がりに連れてきて」

秘書「申し訳ありません。ですが、あれを王に見せるわけにはいきませんでした」



--南の王国--

うぉおおおおおおお!!

南の王「こ、こんなことが!!」



--王国--

中央の王「くくく。さぁやりましょう代表さん。世界は我らのものですよ……」



--魔法王国--

魔導長「ぐっ……正式な王じゃない私じゃあ完全には防げなかったなの……これは」



--ジャングル--

賭博師「独裁者クラススキル、独裁者の言……王の言と効力はさほど変わらないが……」

姫「……これが世界中に流されたとしたらまずい!!」

551: 2013/01/15(火) 00:06:14.32 ID:7OFfM6mF0
37

--競技会場--

代表「ぷぅ……つーかれった」

護衛姉「お疲れ様」

護衛妹「でした」

護衛妹は冷たいお茶を差し出した。

代表「おお! 気がきくねぇ、ありがとー!」

代表はコップを受け取ると一気に飲み干した。

代表「ぷはー!! 身にしみるねぇ!!」

熊亜人「……代表様、あの文章はもっとどうにかならなかったぐま?」

代表「なになに不満かい熊君? あんな素敵な演説、きっと他では聞けないぞ? 何せおっOいは浪漫だ。夢だ」

熊亜人「ぐま……」

552: 2013/01/15(火) 00:06:45.04 ID:7OFfM6mF0
38

--競技会場--

蝶幹部「……」

幹部達は放心状態のまま立っている。

代表「まぁ熱く語れればなんでもよかったのさ。こちらに熱意さえあれば、あとは何を喋ったところで一緒さ」

代表はワイシャツのボタンを外してネクタイを取る。

代表「私の言葉を聞いたものは、私の心の声に支配される」



--東の王国--

東の王「本気で行う気なのか……」


--南の王国--

南の王「この世界から」


--魔法王国--

魔導長「回復魔法と蘇生魔法を……」


--ジャングル--

姫「消滅させる……」

553: 2013/01/15(火) 00:07:10.30 ID:7OFfM6mF0
39

--過去--

裸足の少年『なんですぐ来てくんなかったんだよ!! 隣の村ばっかひいきしてさ!!』

泥だらけの女性『け、警備隊が来るまで離れるわけには、いかなくて……』

裸足の少年『バカ! バカァ!!』

裸足の少年は上半身だけの父親とおぼしき人に抱きついて泣いていた。



--競技会場--

代表「……」

代表は閉じていた目を開く。

代表「これでまた一歩、人は平等に近づくんだ」

護衛姉「……」

護衛妹「……」

熊亜人「……」

554: 2013/01/15(火) 00:08:02.97 ID:7OFfM6mF0
40

--競技会場--

代表「私は常々こう思っている。この世最大の悪は魔王でも魔族でもない。それは不公平だということ」

護衛姉「……」

スッ

護衛姉がひざまづく。

代表「家族を蘇生されて喜ぶ人の傍らには、蘇生されることなく絶望を味わっている人たちがいるんだ」

護衛妹「……」

スッ

護衛妹がひざまづく。

代表「ただでさえ親しい人を失って悲しんでいるというのに、その上その不平等さを妬み恨まなくてはならないなんて、社会の大きな損失だ」

熊亜人「……」

スッ

熊亜人がひざまづく。

代表「さあ諸君、天国を作るぞ」

555: 2013/01/15(火) 00:10:18.51 ID:7OFfM6mF0
わー、これ年内に終わるんかなぁ……

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m






勇者「……」←サっちゃんの画像を見てる

さすさす

勇者「おっOい……」(´;ω;`)ウッ




563: 2013/01/21(月) 22:43:31.46 ID:1Xs3DnU30
こんばんはー!


はい、あの絵は友人に描いてもらいましたー!

!? 561さん支援絵ありがとうございます!! もしや以前描いてくださった方でしょうか??


それではご機嫌に投下していきます!!

564: 2013/01/21(月) 22:44:02.09 ID:1Xs3DnU30
41

--東の王国--

ざっ、ざっ、ざっ

十代目「……今回はかなり厳しかったな……」

十代目は肩を揉みながら歩いている。

鎧使い「うぅ……なんとか、ライン10にまで押し戻したけど……これじゃ時間の問題じゃない!」

鎧使いは憤慨し、

シノビ「……」

シノビは無言。

戦士「しばし休養をもらいたい気分だ。うすっ!」

戦士は回復させきれなかった傷を数えている。

僧侶「きゃははは! あれ? なんだか慌ただしいねぇ」

城下町についた十代目一行は、溢れ変える人々を目の当たりにする。

ガヤガヤガヤガヤ

565: 2013/01/21(月) 22:44:30.74 ID:1Xs3DnU30
42

--東の王国--

鎧使い「ねぇ、なにかあったの?」

鎧使いは目の前を通りすぎようとする青年に話しかける。

王都青年「あぁ! 勇者様方、これは良いところに帰ってこられました。実はこれからある祭りが開催されるんですよ」

鎧使い「え! 祭り!? 素敵! 後で出店見にいこシノビン!」

シノビはこくりと頷く。

戦士「ん? この時期に東の王国で祭りなんてあったか……?」

十代目(魔王軍に攻められている状況で……?)

十代目は訝しげに話を聞いている。

王都青年「えぇ、とても素晴らしい日が始まるんですよ!」

566: 2013/01/21(月) 22:45:00.29 ID:1Xs3DnU30
43

--東の王国--

僧侶「あ」

その時僧侶は、人々の中に黒い修道服を着た人間が混じっているのを確認する。

十代目「どうかしたか僧侶」

僧侶「きゃははは……元同僚」

鎧使い「! 僧侶の元同僚って!」

十代目「黒十字教会か」

シノビ「……」

鎧使い「そんなのがこんなところに紛れ込んでいるなんて……これは東の王に聞くしかないわ!」

567: 2013/01/21(月) 22:45:40.16 ID:1Xs3DnU30
44

--東の王国--

ダダダダダっ

兵達が行き交う慌ただしい城内。

十代目「すまない。ちょっといいか?」

近衛上級兵「こ、これは十代目様! 御帰還に気づくことが出来ず申し訳ありません! 何分緊急事態でして……」

近衛上級兵は申し訳なさそうに頭を下げる。

十代目「いや、いい。それより東の王様に謁見を取り次いでほしい」

近衛上級兵「はい、かしこまりました! しばしお待ちください」

バタン

近衛上級兵は部屋に入って行った。

568: 2013/01/21(月) 22:46:18.94 ID:1Xs3DnU30
45

--東の王国--

鎧使い「……ねぇ、どう思う? あれ完全に洗脳されてるわよね」
鎧使いは外に視線を送って言う。

僧侶「きゃははは! でも洗脳なら決められた行動以外できない。国民達はあまりに普通に生活してる」

シノビ「……調べたけどダメージ履歴に何もなかった……」

十代目「ふむ……言……しかないな」

鎧使い「え?」

十代目「王の言か独裁者の言。人の心に楔を打ち込むスキルだ。強制させるほどの力は無いが、これだけの人数だ、集団意識も相まって自発的に行動させてしまえるんだろう」

戦士「!……やっかいなスキルだ……」

鎧使い「ほんとね」

569: 2013/01/21(月) 22:47:33.01 ID:1Xs3DnU30
46

--東の王国--

鎧使い「そういえばさ、町の中に黒十字教会の人がいたけど……あれって」

僧侶「きゃは……危険だね。あれは蘇生を禁忌とする宗教きゃは」

シノビ「……蘇生を出来なくさせるスキル……」

戦士「氏者が生き返るのは自然の摂理に反してるので蘇生を禁ず……だったか」

鎧使い「……これから一体何が起きようとしているのかしら」

十代目「わからない」

ガチャリ

近衛上級兵「お待たせいたしました、東の王がお会いになるそうです」

570: 2013/01/21(月) 22:48:26.84 ID:1Xs3DnU30
47

--東の王国--

東の王「ラインの維持、ご苦労だったな」

十代目「いえ。ですが増兵をお願いします。魔王軍の進行は日に日に強くなっています。このままではラインを維持し続けることすら……」

東の王「ふむ……」

東の王は渡された書類を見ながら深刻な表情。

東の王「しかし今は中々それも難しくてな……見ただろう? この国の現状を」

十代目「はい。一体何があったんですか?」

東の王「それはな……」

東の王は説明を始める。

571: 2013/01/21(月) 22:49:27.13 ID:1Xs3DnU30
48

--東の王国--

十代目「……なるほど。それで黒十字教会が国内に……」

東の王「! もう国内に来ていたか……そうだ、やつらと利害が一致する。恐らく手を組んだのだろう」

鎧使い「そんな……狂ってる」

戦士「回復手段を潰されたら魔王軍と戦うどころではないぞ……うすっ」

十代目「……事態は急を要しますね……どうします? 我々が行って討伐しましょうか?」

僧侶「!」

鎧使い「え!? でもそれじゃラインの維持が!!」

東の王「その必要は無い。現状でのお前達勇者の仕事はライン維持だ。それをやってくれればいい」

シノビ「でも……もし回復手段を封じられたら魔王軍との戦いが……」

東の王「わかっている。お前達が戦闘を行うよりも早く、奴らを倒す。そのためのメンバーを既に選抜した」

572: 2013/01/21(月) 22:50:12.85 ID:1Xs3DnU30
49

--東の王国--

十代目「メンバー……?」

戦士「お言葉ですが東の王様、亜人保護団体と黒十字教団を相手にするのは骨が折れるとおもいますが」

東の王「心配するな。総戦力で見ればお前達より上だとさえ私は思っている」

僧侶「きゃは!! 私達以上のパーティなんているのかな??」

コンコン

東の王「来たか。入れ」

ギィ

鎧使い「!! この人達は!!」

ザっ

573: 2013/01/21(月) 22:51:39.82 ID:1Xs3DnU30
50

--王国、牢獄--

中央の王「まさか……お前達がいながらなんということだ……!!」

ダンっダンっ!!

中央の王はもぬけの殻になった牢獄を見て地団太を踏んでいる。

軍師「ふーむ……中々の手際だぜぃ」

フォーゼ「ちっ! せこせことずっけぇやつらだこるぁっ!!」

オーズ「国が慌ただしくなった所を、すぱっと盗んでいくとはすごいおっ!」

三騎士は牢獄に残された痕跡を探すが何も見つからない。

軍師(痕跡すら無いとは一体どれだけの手練だぜぃ……でもまともに体を動かせないあいつに一体どんな利用価値があるのかだぜぃ)

軍師は鎖を触りながら目を細くする。

574: 2013/01/21(月) 22:52:16.93 ID:1Xs3DnU30
51

--???--

ぺたぺた

フォーテ「ふんっ、ふふーんっ♪」

一糸纏わぬ姿のフォーテは鼻唄を歌いながら歩いている。

フォーテ「久しぶりのお姉ちゃんとのお風呂だーっ」



ちゃぷ

ツインテ「……」

狐娘「はい、足は終了こん。次左腕洗うこんから出してこん」

575: 2013/01/21(月) 22:52:54.91 ID:1Xs3DnU30
52

--???--

ツインテ「……」

真っ白く広い部屋の中に、白いバスタブがぽつんと置いてある。
壁全体とも言える大きなガラス張りの外には真っ暗な世界が広がっている……そして青の球体が。

ぺたっ

ツインテはそのバスタブに張られた湯に浸かり、狐娘に身体を洗われている。

ぺたっ

フォーテ「狐娘ーっ、もういいよっ、後は僕がやるからっ」

狐娘「そう? じゃあ私は退散こん。後はお二人でごゆっくりこん」

576: 2013/01/21(月) 22:53:22.83 ID:1Xs3DnU30
53

--???--

フォーテ「えー? 狐娘も一緒に入っていけばいいのにっ」

狐娘「そんな狭いバスタブに三人も入れないこん。それにせっかくの姉妹水入らず、邪魔したくないこんよ」

狐娘はしっぽをふりふりしながら部屋から出ていく。

フォーテ「あはっ」

ぺたぺた

狐娘「……それにしても変な姉妹こん」

フォーテ「えっ? なにが?」

狐娘「それこん」

狐娘はフォーテの股を指差す。

狐娘「フォーテの股、なぜか昔から笑い男マークがあるせいで見えないこん」

577: 2013/01/21(月) 22:54:27.39 ID:1Xs3DnU30
54

--???--

フォーテの股関の部位は笑い男マークで隠されている。

狐娘「それ、なんかの魔法かと思ってたこんが、お姉ちゃんの方も似たような感じこん。脱がしてからというものの、なぜか光がさして確認できなくなっちゃったこん」

フォーテ「レーザー級だねっ!」

狐娘「? まぁ、だから二人して変だなって。やっぱり姉妹なんだなって、そう思ったこん」

フォーテ並の人間が二人もいるなんて考えたくないけど、と狐娘はそう呟いて去っていく。

フォーテ「……んふっ」

ちゃぷちゃぷ

ツインテの入っているバスタブにフォーテは入る。
二人が入るにはいささか小さいのだが、フォーテはお構い無しだ。

578: 2013/01/21(月) 22:55:13.71 ID:1Xs3DnU30
55

--???--

ぱちゃっ

フォーテ「はぁ……お姉ちゃん……」

ツインテ「……」

ぱしゃ

フォーテはツインテに抱きつく。

ツインテ「……」

ぴたっ

フォーテ「お姉ちゃんの肌すべすべで気持ちいい……」

フォーテの指がツインテの肌をなぞる。

フォーテ「お姉ちゃんの匂い、フォーテ大好き」

フォーテはツインテの首もとに顔を埋める。

579: 2013/01/21(月) 22:55:41.79 ID:1Xs3DnU30
56

--???--

ツインテ「っ」

フォーテ「だーめ、逃がさない……」

ぱしゃぱしゃ

足を絡ませフォーテはツインテとの接触部分を増やしていく。

フォーテ「お姉ちゃんの濡れた髪の毛が額に張り付いてるのなんて、もう芸術と言っていいよね」

フォーテはツインテの額に舌を這わした。

れろっ

ツインテ「……」

フォーテ「……ふふっ。でも君は僕の好きなお姉ちゃんじゃないんだよね」

ツインテ「!……」

580: 2013/01/21(月) 22:56:36.77 ID:1Xs3DnU30
57

--???--

フォーテ「お姉ちゃんの秘密は知ってるよぉ? 否、お姉ちゃんのことなら何であろうと知ってるよ? 何を食べて生きてきたのか。何を思って生きてきたのか。誰と戦ってきたのか。中にどんな人格があるのか」

ツインテ「……」

フォーテ「お姉ちゃんの心を守るために出てきてくれたんだよね? 確かに君ならどんなことにも耐えられる」

フォーテがツインテの顔に手をつける。

ツインテ「……あの子は今会えない」

ついにツインテが口を開いた。

フォーテ「そんなに悪いの?」

ツインテ「……回復しきるまで表には出さない」

フォーテ「回復って、三年間もあったのに回復してないのに?」

ツインテ「!」

581: 2013/01/21(月) 22:57:15.02 ID:1Xs3DnU30
58

--???--

フォーテ「そのままやってても良くならないよっ。だって回復役はお姉ちゃんなんだから」

ツインテ「……」

フォーテ「だから出して」

フォーテはツインテの顔に接近する。

ツインテ「……ダメ」

フォーテ「……」

ツインテ「君もあの子を大事に思うならそっとしておいて」

フォーテ「……」

ツインテ「いくら君でも私は突破できな」

フォーテ「ん」

フォーテは自らの唇でツインテの唇を塞ぐ。

ツインテ「んぶっ!?」

582: 2013/01/21(月) 22:58:17.57 ID:1Xs3DnU30
59

--???--

フォーテ「んー」

ぱしゃぱしゃ

ツインテ「んっ、くっ……!」

フォーテ「んふふー」

ぱしゃぱしゃ

ツインテ「……ん……ん」

フォーテ「ぷあ」

はー、はー、と息を荒げるツインテ。
ツインテとフォーテの唇から唾液の糸が伸びる。

ツインテ「はぁ……」

ぱあん

ツインテの髪止めがゴムからリボンに変化し、ウェーブがかかっていた髪の毛はストレートになる。

583: 2013/01/21(月) 22:59:09.78 ID:1Xs3DnU30
60

--???--

フォーテ「おはようっ……お姉ちゃんっ!!」

ツインテ「はー、はー……え? フォーテちゃん……?」

虚ろな瞳のツインテはフォーテを見て驚いた。

フォーテ「そうだよっ! フォーテだよっー!」

ばしゃっ

余程嬉しいのかフォーテは更にツインテを抱きしめる。

ツインテ「え? え? ……な、なにが起こってるの……?」

フォーテ「もう離さないからねっ、お姉ちゃん!」

んふふー、とフォーテはツインテの顔に頬擦り。

ツインテ(な、なんで……ボクは戦争に参加して……それで)

フォーテ「お姉ちゃんはみんなに捨てられたんだよ」

ズキッ

ツインテ「……え」

フォーテ「……お姉ちゃん。落ち着いて聞いてねもうあの戦争から三年たってるんだよ」

フォーテはツインテの瞳を優しく見て言った。

593: 2013/01/29(火) 00:40:34.06 ID:dST2XwLk0
61

--???--

ズキっ

ツインテ「……嘘」

口ではそう言うものの、フォーテの成長を目の当たりにしたツインテは頭の中では理解していた。

ズキッズキッ

フォーテ「戦争でボロボロになって、奴隷としてひどい目にあって、記憶に支障が出るほど苦しんでいたツインテお姉ちゃんを、誰も助けようとしなかったんだよ」

ツインテ「そ、んな……」

ぽたっ

ツインテではなくフォーテがボロボロと涙を溢す。

フォーテ「はが……ゆかった……よぉ……フォーテは……ずっと知ってたのに……ひっ……助けに……いけなくて……っ」


594: 2013/01/29(火) 00:41:06.20 ID:dST2XwLk0
62

--???--

ツインテ「フォーテ……ちゃん」

フォーテ「まいにち本当につらかったんだよぉ……お姉ちゃんが可哀想でお姉ちゃんが大好きでお姉ちゃんが辛そうでお姉ちゃんが大好きでお姉ちゃんが寂しそうでお姉ちゃんが大好きでお姉ちゃんが悲しそうでお姉ちゃんが大好きで」

ぱしゃ

フォーテ「でも、でも……無事に助け出せてよかったよぉっ」

笑顔とともに一筋の涙を流す。

ツインテ「そう……だったんだ……ありがとうフォーテちゃん」

ツインテはフォーテの頬に優しく触れて涙を拭う。

フォーテ「うぅん、妹なら当たり前のことだよっ! お姉ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ!」

ツインテ「ん、だめ」

凶悪バランスブレイカーに唯一ツッコミをいれられるツインテだった。

595: 2013/01/29(火) 00:41:33.74 ID:dST2XwLk0
63

--???--

フォーテ「あ、それ、不便だよね」

フォーテが指差したのはツインテの右腕の部分。

ツインテ「あ……そうか。戦争の時にで義手取っちゃったんだっけ」

フォーテ「じゃあそんなのより、もっといいのあげるよっ!」

フォーテがにこやかに笑うと、

ズズズ

闇が渦巻く。そしてそこから無数の白い腕が生えてきた。

ズズズ

ツインテ「!」

フォーテ「どれがいいかなーっ。あれからボクお姉ちゃんに似合う腕を見つけては回収してたんだーっ」

ケラケラと笑うフォーテの横顔はあまりに無邪気。

596: 2013/01/29(火) 00:41:59.59 ID:dST2XwLk0
64

--???--

ツインテ「い、いいよボクは。今のままでも」

フォーテ「だぁーめっ。あ、これいいよっ!」

れろり

引きずり出した腕を舐めるフォーテ。

フォーテ「さぁ、ツインテお姉ちゃんっ!」

ズズズ

ツインテの右腕の切断面に黒い渦が出現する。そしてツインテに有無を言わさず、

ずきゅ

ツインテ「あ」

それはツインテの身体と合体した。

597: 2013/01/29(火) 00:42:41.90 ID:dST2XwLk0
65

--???--

フォーテ「それは勇者もどきの……なんとかってやつの腕だよっ! 名前は忘れちゃったけど」

ツインテ「えっ!?」

フォーテ「あぁ、大丈夫ーっ。持ち主はもういないから。東の王国でのことみたいにはならないよっ」

ツインテ「な!?……なんでそれを知って!」

フォーテ「ふふ、内緒っ。どう? 僕からのプレゼントだよお姉ちゃん。これでツインテお姉ちゃんも全属性が解放されたねっ!」

ツインテ「……」

ズズズ

ツインテ(なんだろう……これ気持ちいい……頭の中がぼーっとして、思考が纏まらない)

ツインテは右腕を動かしてみる。

598: 2013/01/29(火) 00:43:55.16 ID:dST2XwLk0
66

--???--

????「いやいや、絶世の美少男の娘達二人のお風呂シーンは絶景だね」

ツインテ「!?」

ぱしゃ

フォーテ「あーっ。覗きはいけないんだよっトリガー」

????改めトリガー「ごめんごめん。ついね」

巻角の青年は和やかな笑みを浮かべている。お風呂シーンを覗いておいてこの表情である。

ツインテ(……この人……何か違和感を感じる……)

トリガー「二人に着替えを」

Q「かしこまりましター」

右目に傷のある掃除用ロボットが車輪を回して走っていく。

ツインテ「……っ」

トリガー「あぁ、構えなくていい。僕は君の味方だよ」

599: 2013/01/29(火) 00:44:29.51 ID:dST2XwLk0
67

--高原--

ガタンガタン

馬車は高原を行く。

?「やれやれ、東の三強のうち二人もでなきゃいけないなんてな。俺らがいなくて東の王国の警護は大丈夫かね」

??「私達がいなくても魔剣使いが残っているじゃないですか。なんとかなりますよ」

???「ござる」

????「しかし……久々ですね、我ら五人が揃うのは」

?????「いやー……ははは……な、なー! 久々だよなー! 元気してたー? 侍ー?」

???改め侍「え!? ご、ござるよ! えっと……な、医師!」

??改め医師「え? あぁ……そうですね」

?「そうだなぁ。国から逃げてったのが二人いるせいで久しぶりになっちまったんだっけなぁ」

侍、?????「「ぎくっ!」」

600: 2013/01/29(火) 00:44:55.26 ID:dST2XwLk0
68

--高原--

医師「符術師、もうそれは言わない約束じゃないですか」

?改め符術師「だって納得いかねぇもん。なぁ、通信師」

????改め通信師「そうですね。侍と賭博師は私達との約束を破ったあげく、二人揃って犯罪者になってましたからね」

侍、賭博師「「ぎくぎくっ!」」

医師「……はぁ」

医師は頭を抱えている。

侍「い、いやしかし立派でござるよ二人とも! まさか同期から三強が二人もでるなんて、なぁ!」

賭博師「いや本当本当! 同期として鼻高々だぜ!」

侍と賭博師は嫌な汗を流しながら話を盛り上げようとする。

符術師「……なー。上層部も見る目ないよなー。俺なんかより侍のほーが強いのになー」

侍「ぐふ!」

601: 2013/01/29(火) 00:46:22.33 ID:dST2XwLk0
69

--高原--

通信師「そうですねぇ。賭博師も逃げていなければ、今頃東の王国の王にして三強だったでしょーねー」

賭博師「うぐぅ!」

女二人によるネチネチした攻撃が二人を攻める。

符術師「今の俺らが三強になれたのもこいつらが席を譲ってくれたおかげだぜ? な、通信師」

通信師「えぇ、実力で劣る私達が、三強になれたのもひとえに二人がいなくなってくれたからです。感謝してますよ」

ニコニコと不思議な笑顔な二人。

医師「……侍も賭博師も皮肉で三強就任のことを言ったのではないと思いますよ……? 単純にあなた方が昇進したのが嬉しくて……」

符術師「あぁ? こいつらを庇おうってか医師の分際で」

通信師「……そういえばいましたねぇ、せっかく三強の座に推されたのにも関わらず、自ら辞退した人が」

医師「ぎくっ!」

符術師「あぁいたなぁそんな奴……まったく男共はそろって約束を破りやがる……」

通信師「えぇ。ほんと馬鹿ばっかりです」

いつのまにか三人は椅子から降りて正座している。

602: 2013/01/29(火) 00:46:56.01 ID:dST2XwLk0
70

--高原--

符術師「で、結局侍の眼はどうなんだ?」

医師「よくありませんね。侍のことです、適切な治療を受けぬままずっと無理をし続けていたんでしょう。……完治は不可能に近いかと」

侍は眼を包帯で覆っていた。

侍「はっはっ。何が原因かと聞かれると、思い当たる節がいっぱいありすぎてわからんでござる」

侍は笑う。

賭博師「……そんなんでこの任務にあたれるんかね」

侍「心配ご無用でござるよ。拙者のスキル、探知と心眼を使えば視力の無さを十二分にカバー出来るでござる」

ふん、そうだな、と符術師。

符術師「何はともあれ今は戦力を分散出来る時じゃねぇ。俺らはたった五人で、亜人保護団体と黒十字教会を倒さなきゃいけないんだ」

603: 2013/01/29(火) 00:47:47.53 ID:dST2XwLk0
71

--高原--

侍「うーん。一体一人何人計算なら倒しきれるのでござろうか」

賭博師「ひいぃ~……。全く重労働にも程があるぜぇ。労働法違反してんじゃないの?」

医師「こんな非常時に法が助けてくれるわけありません」

通信師「まったくですね」

ガタンガタン

侍「……いや、でも、夢みたいでござる。またみんなと一緒に戦える日が来るなんて」

侍は少年のように喜んだ。

通信師「……」

604: 2013/01/29(火) 00:48:40.79 ID:dST2XwLk0
72

--高原--

賭博師「そういえばツインテ様はどうなったんだ?……」

侍「! ……助かっているといいんでござるが」

符術師「……氏体が発見されたっていう連絡は無かった。ってことはとりあえずはなんとかなってるんじゃないか?」

賭博師「うぅん……まぁツインテ様がそう簡単に殺されるわけもないし、大丈夫かぁ」

侍「そうでござるな。兵士レベルがツインテ殿を殺せるわけが無いでござるもんなぁ!!」

通信師「い、言いたい放題言ってくれますね……」

ガタンガタン

符術師「見えてきたな、お喋りはここまでだ。もう着くぜ」

窓の外を確認する符術師は四人に喋りかける。

符術師「黄金世代パーティの力、見せてやる」

605: 2013/01/29(火) 00:49:16.58 ID:dST2XwLk0
73

--妖精郷--

ポニテ「しっかしここはいいとこだねー。食事は美味しいし不思議なことばかりで飽きもこないし」

しっち『きゃはははは!』

アッシュ「至るところでこいつらにちょっかい出されるがな」

アッシュは、何かのうOこを持って自分の周りを飛ぶ妖精にデコピン。

レン「……しかしどうしたものかにゃ。外敵の心配無く作戦を練られるのはいいけれど、相手がフォーテとなると……」

アッシュ「まぁ、候補の一つで考えちゃいたけどな」

ポニテ「さすがアッシュ君! 作戦考えたら俺はすごいよの異名を持つだけはあるね!」

アッシュ「ねーよそんな異名」

606: 2013/01/29(火) 00:49:49.76 ID:dST2XwLk0
74

--妖精郷--

ポニテ「で? どうやって助け出すの?」

アッシュ「いや、一番悪い可能性として考えていただけで……」

ポニテ「……あぁ」

レン「前途は多難にゃ……」

配達屋「お痒いところはございませんかー」

シャッシャッ

ユニコーン「ひひん」

配達屋はユニコーンにブラッシングをかけていた。

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

三人はその姿をジーっと見ている。

607: 2013/01/29(火) 00:50:22.09 ID:dST2XwLk0
75

--妖精郷--

配達屋「はわっ? な、なんですか皆さん……?」

配達屋は三人の視線に気づいて身構える。

アッシュ「おいハイ、お前の力もっかい見せてみろ」

配達屋改めハイ「え? 私の力ですか? ……って、なにその名前、ってあれ? 心なしか名前が変わったような??」

混乱するハイと、立ち上がり埃を払うアッシュ。

パンッパンッ

アッシュ「パーティの実力を理解しておかないと戦闘に支障が生じるからな」

ポニテ「わー、ハイちゃんの戦闘ちゃんと見るの初めてだー! 楽しみー!」

レン「ふふ、驚くにゃよ? こんな隙だらけに見せておいてかなりの実力者にゃ」

ハイ「……したくないです」

アッシュ「うるさい。さっさと支度しろ」

ハイ(絶対勘違いしてますよねぇ……まぁそれを理解させるいい機会だと思うべきでしょうか……)

ユニコーン「ひひん」

608: 2013/01/29(火) 00:50:51.53 ID:dST2XwLk0
76

--妖精郷--

五分後。

ハイ「ぐふ」

ぴくぴく

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

ユニコーン「ひひん……」

ぼろ雑巾のようになって地面を転がっているハイ。

アッシュ「ど、どうなってんだ……? 俺は軽く掌打を放っただけなんだが……」

ポニテ「演技じゃないね……お腹にヒットした瞬間のあの歪んだ顔、およそ女の子がしていい顔じゃなかったもん」

レン「あ、あれ……?」

三人は汗を足らす。

ハイ「だから言ったのに……おなかいたい」

609: 2013/01/29(火) 00:51:20.17 ID:dST2XwLk0
77

--妖精郷--

アッシュ「すると何か? 今の状態はレベル1で、レベル1状態だと何の戦闘力も無いのか?」

ハイ「はい。何かを運ぶことしか能がないです」

ダメージが抜けたハイは、普段通りのジト目でお茶をすする。

ポニテ「え、じゃあそれ弱くない? レベルアップする前に倒されちゃうじゃん」

ハイ「はい。最も難しい職業と言われる所以はそこですねぇ」

レン「なるほど……レンと戦った時は既に高レベルだったのかにゃ」

ハイ「はい。レベル3でした」

アッシュ「なんだレン、そのこと知っていたんじゃないのか?」

レン「戦闘中に職業を変える職業ってことしか知らなかったにゃ。なにせ幻の職業にゃ」

ポニテ「うーん……地力はかなり差があるねー」

ハイ(やりました、皆さん落胆してやがります。これで私も晴れて自由の身に……)

610: 2013/01/29(火) 00:51:49.59 ID:dST2XwLk0
78

--妖精郷--

アッシュ「……レベル4ならどうなんだ?」

ハイ「へ?」

アッシュ「レベル4ならどれほど強い?」

アッシュの真剣な表情。

ハイ「さぁ……まぁでも皆さんにはかないませんよ」

ハイはにっこりと笑って言いきった。

アッシュ「……嘘か」

ハイ「ファッ!?」

ポニテ「嘘だね」

ハイ「!!」

レン「嘘にゃ」

ハイ「!!!」

料理屋「嘘だな」

ハイ「誰!?」

四人の横で屋台をしている男が話に加わった。

611: 2013/01/29(火) 00:52:24.73 ID:dST2XwLk0
79

--妖精郷--

じゅぅーー

ポニテ「! いい匂いー! おっちゃん、これ何!?」

料理屋「ソース焼きそばだよおめぇ。知らないのか?」

ポニテ「知らん! とりあえず四人前頂戴!」

料理屋「あいよ、まいどっ」

ジャージャー

ハイ(よし話が逸れた)

アッシュ「話を戻すぞ」

ハイ(うあー)

612: 2013/01/29(火) 00:53:02.89 ID:dST2XwLk0
80

--妖精郷--

アッシュ「ハイ、レベル4になったらかなり強いと思っていいんだな?」

ハイ「……」

アッシュとレンの真剣な表情にハイも観念する。

ハイ「はい。一応私の奥の手ですから、自分的にはそこそこ」

アッシュ「なら決まりだ」

ハイ「はい。解雇ですねわかります」

レン「レベルアップ条件を満たすまでに力尽きないよう特訓にゃ」

ハイ「……は?」

アッシュ「まずは腹ごしらえだ。おいポニテ」

ポニテ「ずぞるるーー。ん? 自分たちの分は自分で頼んでね?」

アッシュ「全部食いやがった!?」

レン「まぁいつものことだけれど!」

632: 2013/02/04(月) 22:31:47.10 ID:5N+hn0TU0
81

--亜人保護団体本部--

うじゃうじゃ

賭博師(うわー。まじでウジャウジャいんじゃねぇかぁ……)

医師(そりゃそうですよ。大変ですね)

侍(スーパー他人事でござるなぁ)

医師(そりゃあ私は攻撃能力皆無ですからね。皆にがんばってもらうしかないですよ)

通信師(こらこら無駄会話しないで下さい。スキルだってただじゃないんですからね)

賭博師(えっ!? 金かかんの!?)

通信師(一文字につき百円です)

賭博師(ひでぇ……)

通信師(五百円です)

賭博師(三点リーダーまで文字数にカウントしやがった!!)

通信師(二千三百円です)

賭博師(漢字の変換までわかるの!?)

633: 2013/02/04(月) 22:32:43.95 ID:5N+hn0TU0
82

--亜人保護団体本部--

賭博師(おいおいこれじゃあろくに話もできやしないじゃないか)

通信師(二千五百円です)

侍(おっOい揉みたい)

通信師(八百円です)

もみ

通信師(きゃあっ!? な、何をするんです!!)

侍(え、だっておっOい八百円で揉ましてくれるって……)

通信師(とんちですか!!)

医師(あ、おしOこしたくなってきました)

通信師(千六百円です)

医師(まるでおしOこするのにもお金が発生するようです!?)

賭博師(……あぁ、そういうプレイなんだと思った)

符術師(てめぇら遊び過ぎだろ)

634: 2013/02/04(月) 22:34:18.41 ID:5N+hn0TU0
83

--亜人保護団体本部--

もそもそ

符術師(さぁて、ここまでは敵に見つからずにこれたわけだが)

侍(相変わらず運スキルは便利でござるな。エンカウント率を変動させられるとは)

通信師(馬鹿に真珠ですよね)

賭博師(おい間違ってるぞ! あっててもけなされてるがな!)

侍(馬鹿にもんじゅ?)

医師(一気に危険なオイニーが)

符術師(んー……さてさて、ここからはなんぼなんでもすり抜けは無理だな)

通信師(ですね。私も索敵をしましたが、すり抜けられるスペースはないですね)

符術師(……よし、じゃあ俺が引き付ける。お前らは先に行け)

635: 2013/02/04(月) 22:35:40.79 ID:5N+hn0TU0
84

--亜人保護団体本部--

医師(え……)

符術師(賭博師は運で通信師と医師をカバー、近寄ってきた敵は侍が斬れ)

侍(……)

通信師(符術師、あなた)

符術師(全部を相手になんか出来るか。頭を殺れば勝ちなんだ)

賭博師(でもあいつら蘇生不能攻撃使ってくるぜぇ?)

符術師(氏ななきゃいいだけの話だろ。ほれ始めるぞ)

しゅぱ

符術師(ドロー、……ふん、運スキルの影響で引きたいカードが都合よく出てきやがった)

636: 2013/02/04(月) 22:36:36.86 ID:5N+hn0TU0
85

--亜人保護団体本部--

符術師は立ち上がり駆け出した。

教団兵「!?」

女教団兵「!! 曲者!?」

ダダダダ!

符術師「来い! 爆弾なめくじ!」

キィン、ドバァ!

大量のなめくじが兵達に降り注ぐ。

教団兵「う、うわぁぁ!?」

ドガン、ドガガーン!!

637: 2013/02/04(月) 22:37:53.50 ID:5N+hn0TU0
86

--亜人保護団体本部--

代表「あれあれ、もう来ちゃいました? まだ具体的に何をするとも言ってないのに早いなぁ」

代表は高い塔の窓から下を見下ろした。
そして襲撃してきた人物を確認する。

代表「……へぇ。よりによって彼らを選んできたかぁ。東の王様は性格ひねくれてるなぁ」

代表は声を出して笑う。

代表「ふーむ……計画を前倒ししちゃおうかな」

カっ

護衛姉「代表様」

護衛妹「いかがなさいます?」

護衛姉妹が代表に意見を仰ぐ。

638: 2013/02/04(月) 22:39:14.45 ID:5N+hn0TU0
87

--亜人保護団体本部--

代表「そうだね。護衛君たちにも迎撃を頼もうかな」

護衛姉「わかり」

護衛妹「ました」

熊亜人「……」

代表「そうだね。……耳を潰してきてくれないか?」

護衛姉、妹「「はっ!!」」

護衛姉妹はその場から姿を消した。

熊亜人「……俺はどうすれば?」

代表「君はここにいなくちゃだめだよ熊くん。もし敵が僕の前に現れたら僕瞬殺されちゃうよ」

熊亜人「ぐ、ぐるぅ……」

639: 2013/02/04(月) 22:39:58.74 ID:5N+hn0TU0
88

--亜人保護団体本部--

髭長司祭「こいつ……! 一体いつの間に侵入したんだ! 火属性攻撃魔法レベル2!!」

ボゥッ!

火球が唸りをあげて符術師を襲う。

符術師「ドロー! 装備品、海亀甲羅!」

ドジャアァ!

出現した甲羅で火の球を防ぐ符術師。

髭長司祭「!!」

細目司祭「符術師か! ならばこれはどうです!?」

細目司祭はククリ刀を四つ投げつけた。

ヒュンヒュンヒュンヒュン!

ククリ刀はそれぞれ弧を描いて符術師に迫る。

640: 2013/02/04(月) 22:41:11.18 ID:5N+hn0TU0
89

--亜人保護団体本部--

金歯司祭「ふははは! 受けよ我が槍ぃ!!」

ドドドドド

更に正面からは槍を持った金歯司祭が突撃を開始する。

細目司祭(くくく。いまだかつて破られたことのないこの協力攻撃)

金歯司祭(盾の一つや二つで防げるかな!)

符術師「ドロー、強制転移」

符術師は引いた札を金歯司祭に投げつけると、一瞬で符術師と金歯司祭の位置が入れ替わる。

金歯司祭「あ、あれ?」

ヒュンヒュンヒュンヒュン、ズガッ!!

金歯司祭は四つのククリ刀に切り裂かれる。

641: 2013/02/04(月) 22:42:33.81 ID:5N+hn0TU0
90

--亜人保護団体本部--

符術師「ドロー、装備品、剣」

髭長司祭、細目司祭「「あれ?」」

ズバババッ!!

髭長司祭「!!」

細目司祭「がっ!!」

目の前にいきなり現れた符術師になすすべもなく二人の司祭は血の海に沈む。

上位教団兵「!! し、司祭様達がいっぺんに三人もやられなすった!?」

若教団兵「おのれ!! 東の三強めぇ!!」

ズン!!

符術師「!!」

そこに二人の大男が姿をあらわした。

642: 2013/02/04(月) 22:43:58.44 ID:5N+hn0TU0
91

--亜人保護団体本部--

右大司教「ふしゅるるる」

左大司教「貧弱者どもめ……」

符術師(お早い登場だ……大司教レベルがもう出てくるか)

大司教達はそれぞれ祈るように両腕を動かしていく。

スゥゥゥ

その滑らかさは残像を作り出し、増えたかのように見える。

符術師「……っ! 幻覚か!」

べギィ!!

右大司教「……ほっほっ」

ギリ

符術師「」

既に横にまで接近していた右大司教の拳が、符術師のあばらを砕いた。

643: 2013/02/04(月) 22:46:13.93 ID:5N+hn0TU0
92

--亜人保護団体本部--

ドザッ、ザザー!

右大司教「ふしゅるるる……氏に至る一撃ぞ。苦しみながら氏んでゆけ」

左大司教「罪人にはそれがふさわしい」

符術師「ぐっ、がはっ!!」

符術師は地面にうずくまったまま立ち上がれない。

符術師(い、いってぇ……)

左大司教「賊がこれだけとは思えぬ。探す」

ズパッ

左大司教「、のだ?」

次の瞬間、左大司教の顔が上下半分に別れて飛んだ。

644: 2013/02/04(月) 22:47:48.81 ID:5N+hn0TU0
93

--亜人保護団体本部--

ブシャーーー!!

侍「うん、やはり見えないが特に問題無いでござるな」

ヒュンヒュン

侍は二三度刀を振るい鞘に納める。

しゅららら、ちんっ

右大司教「ぬぅ!?」

符術師「!? お、おいお前ら! 作戦が違うじゃないか!!」

侍「はっはっ。堅いこといいっこ無しでござる。そんな捨て身の戦法、拙者らが納得できるはずが無いでござるよ」

符術師「っ! ばかやろう!」

右大司教「!! き、きさまよくも!!」

賭博師「あんたは俺の相手をしなさいよ」

右大司教「!?」

645: 2013/02/04(月) 22:49:18.29 ID:5N+hn0TU0
94

--亜人保護団体本部--

賭博師「スキル、クリティカル」

ドガァァァ!!

右大司教「がはぁ!?」

賭博師の右ストレートが右大司教の腹部に入る。
が、

右大司教「づっ……!」

賭博師「……あれ? 嘘、倒しきれなかった?」

右大司教「こ、このぉ!!」

賭博師「俺の攻撃力がないのかおっさんの防御力が硬すぎなのか……多分両方?」

シュパッ!

右大司教「」

侍「クリティカルヒットが出れば相手に硬直が生まれる。それだけでも十分でござるよ」

646: 2013/02/04(月) 22:50:29.03 ID:5N+hn0TU0
95

--亜人保護団体本部--

右大司教「あ、れ?」

今度は右大司教の身体が左右に切り開かれた。

ズズーン!

賭博師「……。あれ? 大司教レベルって三強も苦戦するレベルじゃなかったっけ?」

通信師『馬鹿賭博師。それはタイマンの話です。私達は今、一人で戦っているんじゃないんですよ』

通信師の声が頭の中に響く。

侍「そうでござる。パーティスキルのバックアップがあればこそでござる」

ざわざわ

上位教団兵「だ、大司教様方がやられた……!?」

中位教団兵「そんな! 今まで一度も氏ねない戦線で戦い続けた大司教様達が!!」

教団兵達は驚きを隠せない。

647: 2013/02/04(月) 22:51:42.12 ID:5N+hn0TU0
96

--亜人保護団体本部--

賭博師「おーい、立てますかー」

賭博師は符術師に近寄って手を伸ばす。

符術師「ふん……余計なことしやがって」

スッ

符術師は既に引いていた符を山札に戻した。

医師「どれ見せて下さい。まだ回復魔法が使えると思いますから」

符術師「ぐっ……」

ぽわぁあ

魔法教団兵「く、く! 撃てー!! 大司教様の仇を取るのだー!」

ボヒュッ!ボヒュッボヒュッ!!

放たれた風と水の弾丸が賭博師達を襲う。

648: 2013/02/04(月) 22:53:09.14 ID:5N+hn0TU0
97

--亜人保護団体本部--

賭博師「ふん、そんなもん運スキル、」

ズパパパ!!

侍「……スキル、魔力斬り。こういうのは拙者がやるでござる。賭博師は運をとっとくでござるよ」

賭博師「あ、そう? ……じゃあ、そうするわぁ」

魔法教団兵「ぐ、ぐぐ! レベル3魔法を苦もなく……!!」

医師「はい、治療終わりです」

符術師「……仕方ねえやつらだなまったく」

立ち上がる符術師。

符術師「もうこのまま暴れるしかねぇな!!」

不適に笑う符術師。


649: 2013/02/04(月) 22:54:42.99 ID:5N+hn0TU0
98

--亜人保護団体本部--

賭博師「まぁ即氏は俺が運でなんとか防ぐから」

賭博師はコインを掌の上で回している。

侍「拙者は敵を斬るでござるよ」

侍は首の骨を鳴らす。

医師「多少の怪我なら魔法を使わなくても治せますよ」

医師は医療箱を抱えて立ち上がる。

通信師『私は表に出ませんけどねー』

……姿は見せず声だけの通信師。

符術師「うし、黄金世代の力、見せてやる!!」

符術師の瞳に力が宿る。

650: 2013/02/04(月) 22:55:42.65 ID:5N+hn0TU0
99

--亜人保護団体本部--

代表「魔力エンジン起動」

ドゥルルル

脳亜人「問題なーし。いつでもやれますよぉー大将」

代表「よしちゃっちゃと行こう。物事はスピーディーにいかなきゃいけない。マントルに書きこんだ極大魔方陣を起動してください」

脳亜人「発車おーらいー」

ギギキン!!



その瞬間、世界中に用意した黒い鉄塔が地面に潜る。
そして世界は赤く光った。

ゴゴゴゴゴ

符術師「な、なんだ!?」

侍「これは一体……」

ゴゴゴゴゴ

賭博師「……ち、遅かったみたいだな」

651: 2013/02/04(月) 22:58:25.89 ID:5N+hn0TU0
100

--亜人保護団体本部--

医師「っ!!」

ゴゴゴゴゴゴ

通信師『そんな……もう既に準備は整っていたって言うんですか!?』

賭博師「あいつが表だって動くときはもうなにもかも終わってたもんだ。こんなのは想定範囲の内に入る。……問題なのはそれをどうぶち壊すかだ」

侍「……しかしこれだけ大規模なことを秘密裏にやるとは……さすがは代表」

ゴゴゴゴゴゴ

通信師『ほとんどの国のお偉いさん方を金で抱き込んでますからね……にしてもここまで大がかりなものだとは思いませんでしたよ』

符術師「……これからは回復魔法も蘇生魔法も無しか。ハードモードだな」

医師「そのための私です」

661: 2013/02/11(月) 21:43:38.87 ID:cuH0pWZU0
101

--妖精郷--

ハイ「はー。はー……も、もうダメ……」

仰向けになって息を荒げているハイ。

アッシュ「ち、もう無理とは……仕方ない十分休憩だ」

ハイ「はい……はーっ、はーっ。アッシュ先輩……ハゲシスギマス」

アッシュ「レン、ちょっと付き合え」

アッシュはレンに来い来い。

レン「別にいいにゃけど、ポニテじゃなくていいのかにゃ?」

アッシュ「……」

レン「?」

662: 2013/02/11(月) 21:44:17.04 ID:cuH0pWZU0
102

--妖精郷--

アッシュ「……俺もこの二年間で相当強くなったつもりだが……なんだあいつは。化物じゃないか」

アッシュは焦りを浮かべた表情でレンを見る。

レン「レンもそう思うにゃ。……正直今のポニテには勝てる気がしないにゃ」

アッシュ「……」

レン「……」

ハイ「はーっ、はーっ」

アッシュ「一体どんな修行をしたらあそこまで……。なんかこの前の暗黒森林でも三強クラスのを二体倒したんだろ? しかも虎男とテンテンっつー、トップレベルのを」

レン「レンはかろうじて一人、しかも次やったら負けるかもしれないってレベルにゃ……」

アッシュ「俺は落ち目のじいさんが相手だったしな。魔剣使いとは互角に近かったし……」

ハイ「はーっ、はーっ」

663: 2013/02/11(月) 21:44:44.89 ID:cuH0pWZU0
103

--妖精郷--

アッシュ「……ぱねぇ」

レン「にゃ……あ、修行のことだけど、ポニテには魔導長直々に指南してたにゃ。あと三砲の二人」

アッシュ「五柱か……盗賊、暗殺者系統の五柱はいないからなぁ」

アッシュは残念そうに呟く。

レン「こればかりはどうしようもないにゃ、生まれも育ちも実力のうちにゃ。そういえば前の勇者パーティには結構強い盗賊の人がいたって聞いたけれど……」

アッシュ「……」

二人は真剣な表情で意見を交わしている。

ハイ「はーっ、はーっ」(あなたたちが生まれ持った素質を羨むとかどんだけー……)

ハイはジト目で二人を見ていた。

アッシュ「む、休憩終了。しごくぞこるぁっ!」

ハイ「えぇっ!?」

664: 2013/02/11(月) 21:45:16.44 ID:cuH0pWZU0
104

--妖精郷--

ユニコーン「ひひん」

ハイ「ひっ、ひぃい……全身の筋肉が悲鳴をあげています……」

ドサっ

力なく倒れ込むハイ。

ポニテ「おっつかれーい! お疲れのハイちゃんっ、後で私が全身揉みほぐしてあげるよ!」

ハイ「あ……本当ですか? じゃあ、お願いしてもいいですか?」

レン「やめたほうがいいにゃよハイ。余計疲れるにゃ」

ハイ「え?」

ポニテ「うわ、ひどいよレンちゃーん」

レン「事実にゃ」

ユニコーン「ひひん」

665: 2013/02/11(月) 21:46:00.25 ID:cuH0pWZU0
105

--妖精郷--

ポニテ「しっかしちょっと硬いねハイちゃん。ダメだよー、女の子なんだから体はやわらかくしておかないとー。戦闘でもそうだけどいざという時に困るよー??」

大人な目つきなポニちゃん

ハイ「は、はぁ……今までは生きるのが精いっぱいだったので、女の子らしさを磨く時間がなかったというか……」

ハイはポニテの頭の天辺から足の爪先までじっと観察する。

ハイ「……それに比べて先輩は女女してますね。スタイルいいし髪の毛綺麗だし」

ポニテ「え、えへへ!! そ、そっかなぁ~」

ポニテはさりげなくおっOいを寄せてみる。

レン「ファック!!」

ハイ「私なんて、男性とろくに会話したことも無かったですから。ポニテ先輩はそっちの経験も豊富なんですか?」

ポニテ「え!? ……え、えへへ!! ば、ばれちゃったかー!! そうなんだよー、もうあれだよー入れ食いだったねー私くらいになるとー!! 仙人斬りとかしちゃったかなー!?」

レン「誰を斬ってるにゃ」

ハイ「へぇやっぱりもてるんですねぇ」

666: 2013/02/11(月) 21:46:28.08 ID:cuH0pWZU0
106

--妖精郷--

ハイ「あ、つ……家まで乗っけてってくださいユニちゃん。ん、あたた……足が持ち上がらない」

ポニテ「……」

必氏になってユニコーンに乗ろうとしているハイを、ポニテはジーっと見ている。

ハイ「? どうかしました? ポニテ先輩」

ポニテ「いや、毛並み綺麗だなーって。乗ってみたいなーって」

じゅる

ユニコーン「ひひん!?」

何か恐ろしいものを感じるユニコーン。

ハイ「ユニちゃんに乗りたいんですか? 別に構いませんけれでも、でも」

ポニテ「え!? いいの!? やたー!!」

ポニテはハイの言葉を遮って猿のようにユニコーンの背中に登った。

667: 2013/02/11(月) 21:47:06.63 ID:cuH0pWZU0
107

--妖精郷--

ガバッ

ハイ「あ!」

レン「……」

ポニテ「うおぉお! たかーい! なんかすごーい! 股間痛ーい!」

アッシュ「なんで喜んでんだよ」

ポニテ「ただ高いだけじゃない…生き物に乗ってるからかな…高いのに地面とつながってる感じがする…」

ユニコーン「ひひん」

ハイ「あ……あれ……?」

ポニテ「ん? どうかした? ハイちゃん? 私なんか乗り方間違えちゃってる?」

ハイ「いや、そうじゃないんですけれど……おかしいなって」

ハイは頭を傾げながら唸っている。

668: 2013/02/11(月) 21:47:51.14 ID:cuH0pWZU0
108

--妖精郷--

ユニコーン「ひひん」

ポニテ「ん? 何がおかしいの?」

ハイ「そもそもユニコーンが背に乗せるのは」

レン「処Oだけだからにゃ」

ポニテ「」



口を大きく開けるポニテ。
そして、すっ、と音もなくユニコーンから降りる。




ポニテ「しょ、処Oとかちゃうし」

ダラダラダラ

滝のように汗をたらしながら目を泳がせるポニテ。

669: 2013/02/11(月) 21:48:55.17 ID:cuH0pWZU0
109

--妖精郷--

アッシュ「さっき千人切りがどうとか言ってなかったか」

ばっ

両手で顔を隠すポニテ。

ポニテ「やっ!」

レン「なんだっけ? 昔聞いた話だと好きな体位は大外刈りとか言って無かったかにゃ?」

アッシュ「柔道じゃねえかそれ」

ポニテ「やんやん!」

顔を隠したまま顔を左右に振るポニテ。

アッシュ「……自称ビXチがこれですよ」

レン「背伸びしたい年頃だったのにゃね」

ポニテ「うううう!!」

レン(そもそもポニテは修行が忙しくて、そんなことしてる暇なんて無かったのにゃ。レンは知ってるのにゃ)

ポニテ「……」

ハイ「あ! いつのまにか片手で目線だけ隠してる! ちょっとエOチ!」

670: 2013/02/11(月) 21:49:24.41 ID:cuH0pWZU0
110

--妖精郷--

ポニテ「はい怒りましたもう怒りましたー」

アッシュ「嘘が露見して怒りやがったぞ。糞ヤロウだな」

ポニテ「はい今から修行しまーす」

ハイ「……えぇ!?」

ポニテ「元はと言えばハイちゃんがいけないんじゃないっ!!」

ハイ「えっえぇえ!?」

レン「ないわー」

ポニテ「とゆわけで、はい、このミニスカに着替えてきて!」

ハイ「……え?」

ポニテはひらひらした可愛らしいスカートを提示する。

ハイ「な、なんでですか? 配達用の作業ズボンの方がいいんですけど」

ポニテ「黙りなさい処Oのくせに!」

アッシュ「お前が言うな」

671: 2013/02/11(月) 21:49:57.00 ID:cuH0pWZU0
111

--妖精郷--

ポニテ「修行なんだからつべこべ言わずにはきかえなさい!」

ハイ「わ、わかりました。着替えてきます……」

レン「あーあー」

アッシュ「押し切られちゃったかー」


少女着替え中。


レン「でもポニテ、あのミニスカを装備させることで一体何の修行になるのにゃ?」

ポニテ「着せてみたかった」

アッシュ「……ん?」

ポニテ「ハイちゃんに合いそうな可愛い服持ってたから着せて見たかったの」

レン「……」

672: 2013/02/11(月) 21:50:37.71 ID:cuH0pWZU0
112

--妖精郷--

トボトボ

ハイ「あの……これでいいですか?」

そこに現れたミニスカハイ。

ポニテ「! おぉう……」

ごくっ

つばを飲むポニテ。

ハイ「私……先輩達みたいにスタイルよくないからちょっと恥ずかしい……」

照れくさそうにスカートの裾を持つハイ。

ポニテ「い、いやグーよグー!! 似合ってるーフゥ~ッ!」

アッシュ「お洒落なれてない感じが素朴でいいよね」

レン「……あ、今のレンに言ったの? そんな同意求めてくるとは思わなかった」

673: 2013/02/11(月) 21:51:08.14 ID:cuH0pWZU0
113

--妖精郷--

ポニテ「じゃあ次の段階に行きます」

ハイ(第一段階かよ。そして今のでクリアかよ)

ポニテ「次はパンツを脱いでもらいます」

アッシュ「……」

レン「……」

ハイ「……」

ユニコーン「ひひん」

三人はしばらく無言でポニテを見つめて、

ハイ、アッシュ、レン「「「はぁ!?」」」

ポニテ「(パンツを脱げと言ったのが)聞こえんかったのか?」

674: 2013/02/11(月) 21:51:36.62 ID:cuH0pWZU0
114

--妖精郷--

ハイ「はいぃ!? い、いやぁ、いきなり何をおっしゃっているのか私にはさっぱりですよ! ぱ、パンツですよパンツ!!」

アッシュ「そうだぞポニテ、お前一体何を考えているんだ! おぱんつが修業にどう関係してくるっていうんだこのぉ!」

レン「後輩いじめも大概にするにゃ」

ポニテ「うるせぇ黙ってろお前ら!! 頃すぞ!!」

アッシュ「ひっ!?」

レン「にゃんっ!?」

ポニテに凄まれた二人は寄り添って抱き合う。

ジリジリ

ポニテ「いいから脱げよぉ、うりうり脱げよぉ」

ポニテはハイに駆け寄ると中腰の姿勢になってスカートの下に手を伸ばす。

ハイ「っ!?」

フェイントをかけたりして結構本気な顔なポニテ。

キュッキュキュ

アッシュ「こら! やめろポニテ! ハウス!」

レン「バスケのディフェンスみたいな動きするのやめろにゃ!」

675: 2013/02/11(月) 21:52:04.98 ID:cuH0pWZU0
115

--妖精郷--

ポニテ「ハイちゃん。貴女強くなりたくないの?」

突如見下した感じの冷たい目つき。

ハイ「え……そりゃまぁ強くはなりたいですけれど……」

ポニテ「なら、私の言うことを聞くべきだと思うよ……? 私が伊達や酔狂で後輩のパンツをマジで脱がしにかかってると思っているの!?」

ハイ「っ!……」

アッシュ「俺は思うなぁ」

レン「レンも」

ハイ「!?」

ポニテ「黙れっ!!」

ボッ!!

アッシュ「あああああああああああああああああああああああああああああ」

レン「アッシュが、燃えたっ!」

676: 2013/02/11(月) 21:52:33.89 ID:cuH0pWZU0
116

--妖精郷--

ポニテ「とにかく、今は信じられないと思うけど信じて。後できっとわかる時がくるから」

ハイ「ごくり」

ポニテのあまりに真剣な表情を見てハイは息を飲む。

ハイ「……で、でも」

ポニテ「ハイちゃん」

ハイ「……」

ハイは小さく頷いた。

ポニテ「よし、わかったならパンツ脱ごう?」

こんなに真面目な顔でこんなことを言われるとは思わなかったハイ。

ハイ「わ……わかりました」

アッシュ「わかっちゃったの!?」

レン「何を感じとったのにゃ!」

677: 2013/02/11(月) 21:53:02.02 ID:cuH0pWZU0
117

--妖精郷--

ハイ「じゃあ……その木陰で脱いできます」

ポニテ「ノン!」

それを制止するポニテ。

ハイ「え……?」

ポニテ「ここで脱ぎなさい」

ハイ「……ハイぃぃぃ!?」

ポニテ「それも修行なの!! ほら! 早く脱ぎなさい!!」

ハイ「ちょ、ちょちょちょっと、いくらなんでもそれは!!」

ポニテ「しゅ・ぎょ・う!! しゅ・ぎょ・う!!」

ポニテは手を叩きながら伝説のコールを始める。

アッシュ「な! これは!!」

レン「服を脱がせる強力なスキルD・V・D!!」

678: 2013/02/11(月) 21:53:29.19 ID:cuH0pWZU0
118

--妖精郷--

ハイ「あ、あうあう」

ガクガクと震えるハイ。

アッシュ(バカな……! ポニテのやつこんなスキルまで取得していたのか!!)

レン(恐ろしい奴にゃ……だけど)

アッシュ「しゅ・ぎょ・う!! しゅ・ぎょ・う!!」

レン「しゅ・ぎょ・う!! しゅ・ぎょ・う!!」

ポニテ「!?」

驚いた表情で振り向いたポニテ。それをアッシュとレンは不敵に笑う。

アッシュ(ふんっ、お前だけが手にいれてると思ったら大間違いだ!)

レン(レンを、見くびらないで欲しいにゃ!)

ポニテ(さすがだよ二人とも……! それでこそ……それでこそ勇者パーティだよ!)

679: 2013/02/11(月) 21:53:55.34 ID:cuH0pWZU0
119

--妖精郷--

ハイ「う、ぐぅ」

眼をぐるぐると回しているハイ。

ハイ(な、にこれ……頭がふわふわしちゃって)

ハイは完全に混乱している。

ポニテ「おパンツだよ早く!!」

ハイ「は、はい…」

スッ

アッシュ「は…ハイさん」

シュル

ハイ「せ…先輩達やっぱりやめましょう。こんなこと…ね」

アッシュ「ダメだ!! だったらツインテ取り返して来てよ!」

アッシュ、ポニテ、レン「「「しゅ・ぎょ・う!! しゅ・ぎょ・う!!」」」

ハイ「うう」

レン(これ前もやったにゃ)

680: 2013/02/11(月) 21:55:00.08 ID:cuH0pWZU0
120

--妖精郷--

シュル、パサッ

アッシュ(……しまった)

レン(ついノリで後輩のぱんてーを脱がさせてしまったにゃ)

ハイ「っ……っ」

ハイは涙目になり静かに震えている。

ポニテ「……」

それを静かに見ているポニテ。

ポニテ「……いいね!」

アッシュ「よくなーい!」

ポニテ「……ってなんでアッシュ君まで脱いでるの!?」

アッシュ「!? っく……スキルがあまりに強力すぎてその余波が!?」

レン「さいってーだにゃ」

688: 2013/02/18(月) 23:55:03.96 ID:9Ozp8GgZ0
121

--妖精郷--

ホーホー

アッシュ「いやしかしついノリでやっちまったがこれは犯罪だろう! ほらハイを見てみろ! あんなに恥ずかしそうに……」

ハイ「……」

スカートを押さえて下唇を噛み締めているハイ。

アッシュ「……いいね」

レン「!?」

ポニテ「はい、じゃあ脱いだおぱんてーは私が回収しまーす」

ハイ「!?」(ど、どんだけですかこの人……でも……このまま修行とやらが進まなかったら脱ぎ損に……)

ハイ「……はい」

689: 2013/02/18(月) 23:56:03.61 ID:9Ozp8GgZ0
122

--妖精郷--

ハイはふるふると震えながら手に握っていたそれをポニテに手渡した。

ふわっ

ポニテ(……温かい!)

真剣な表情でポニテは、

しゅる

ポニテ「ではこれより修行に入るよ」

アッシュ「ナチュラルにポケットにしまうな!!」

レン「もうなにこれ」

ハイ「ははは……」

690: 2013/02/18(月) 23:56:38.43 ID:9Ozp8GgZ0
123

--妖精郷--

ポニテ「それじゃハイちゃんにはこれから私のパンチを避けてもらうよ」

ハイ「……はい? このミニスカノーパン状態で……ですか?」

ポニテ「うん。だからこそ意味があるんだよ」

ハイ「……そんな……こんな格好で運動したら見えてしまいます……」

ポニテ「うん。だからなるべく中身を見せないように避けてね」

アッシュ(……なるほど)

レン(ふむ)

ハイ「み、見せないようにって言われましても……」

ポニテ「つべこべ言わない、いくよ! まずは魔力によるブースト無し状態で」

ひゅっ

691: 2013/02/18(月) 23:57:15.85 ID:9Ozp8GgZ0
124

--妖精郷--

ハイ「っ!」

しゅっ

ハイはポニテの攻撃をかわす。

ポニテ「だめー!!」

ハイ「へ?」

ポニテ「手でスカート押さえちゃだめでしょー!?」

ハイ「そ、そんなこと言われても……」

ポニテ「それじゃ修行にならないよ! 敵に襲われてもそんな格好で戦うの!?」

ハイ(まずノーパンで戦わねぇです……)

692: 2013/02/18(月) 23:57:48.29 ID:9Ozp8GgZ0
125

--妖精郷--

ポニテ「ほら次!」

ひゅっ

ハイ「ッ!」

ふわり

アッシュ「見えた!」

レン「見えた!」

ポニテ「私も!」

ハイ「うぅ……うわーんなにこれー」

ハイはぼろぼろ涙を溢す。

693: 2013/02/18(月) 23:58:23.51 ID:9Ozp8GgZ0
126

--妖精郷--

ポニテ「いい、ハイちゃん。スカートがめくれるってことは無駄な動きだからなんだよ」

ハイ「……え」

ポニテ「敵の攻撃は最善の最速の最小の動きで避けるんだ。ハイちゃんはレベルがあがれば強くなるみたいだけれど戦闘経験は少ないんだろうね、そういう基本的なことが甘いかな」

ハイ「……!!」

アッシュ「ポニテもあまり避けるタイプじゃなかったような気がするが」

アッシュはハイのスカートに目が釘付けになっている。

レン「これは攻撃にも防御にも、全てのことに関わってくるにゃ。ようはおっかなびっくりで敵の力量を正確に図れていないことと、必要以上に体力を使ってしまうのが問題だと言うわけなんにゃ」

ハイ「……」

ポニテ「つまり、ハイちゃんには力量を見極める力と、身体の効率的な動かし方を身体で学んでもらうってことなんだよ!」

694: 2013/02/18(月) 23:58:55.27 ID:9Ozp8GgZ0
127

--妖精郷--

ポニテ「ハイちゃんはレベルアップしなくちゃいけない。レベルがあがる前に致命傷になっちゃいけないんだ。だからせめて1の状態でも最低限のことをできるようにならなくちゃね」

尤もらしいことをドヤ顔で言うポニテ。

ハイ「……」

否、多分ドヤ顔。
なんせ今のポニテは変O仮面のようにハイのパンツを被っているから。

ハイ「……でもノーパンなんですよね?」

ポニテ「だからこそノーパンなんだよ!!」

ハイ「……他にも方法があるような」

ポニテ「ノーパンだからこそ出来ることもあるんだよ!!」

695: 2013/02/18(月) 23:59:23.86 ID:9Ozp8GgZ0
128

--妖精郷--

アッシュ、ポニテ、レンはハイを取り囲むようにして立っている。そしてハイに正拳突きを繰り出す額に5の数字の入ったゴーレム。

ひゅっ!

ハイ「ん!」

ふわり

避けるハイとめくれるスカート。

アッシュ「桃尻!」

ばっ!

アッシュは旗をあげる。
そしてゴーレムはまた正拳突きを放つ。

ひゅっ!

ハイ「ひぁ」

ふわり

避けるハイとめくれるスカート。

レン「プリケツ!」

レンは旗をあげる。

696: 2013/02/19(火) 00:00:03.49 ID:Razrft/D0
129

--妖精郷--

ひゅっ!

ハイ「うぐっ」

ふわり

避けるハイとめくれるスカート。

ポニテ「!! 審議!」

ポニテはアッシュとレンを集めて審議を始める。

ハイ「……はぁ、はぁ」

ポニテ「……」

ポニテ達はお互いの顔を見たあと頷いて、

ポニテ「一本!」

ハイ(柔道の試合みたいになってる……)

697: 2013/02/19(火) 00:01:01.06 ID:Razrft/D0
130

--亜人保護団体本部--

どかーん、どかーん!

イモリ亜人「くっそ! なぜたった五人にこうまで振り回されるイモ!!」

符術師「はぁああ!」

ダダダダダ!!

槍や剣、魔法による攻撃を恐れずに突進してくる五人。

医師「……」

ぎぃぃん

スキル鑑定眼による次行動予測……鑑定眼は敵や物などを注意深く観察し、手がかりや隠しているものなどを見つける時に役立つスキルである。戦闘時に使うと僅かな癖や初動を見抜き、次に何をしようとしているのか予測することが可能になる。

698: 2013/02/19(火) 00:01:46.20 ID:Razrft/D0
131

--亜人保護団体本部--

通信師「」

それを言葉にするよりも早く、思考した瞬間に他のメンバーに送る役割が通信師。パーティスキルの共有効果も相まって、パーティ全体が行動予測の恩恵を受ける。

符術師「おらぁぁあ!!」

攻撃防御補助妨害を一手に担うのは符術師。札による多様な戦術はもはやパーティの便利屋さん。

侍「ふんっ!」

その札を掻い潜ってきた、もしくはうち漏らした敵を侍が斬る。視力を失えど、侍の一撃は万全の状態でなければ防ぐことすらままならない。

ボボッ!!

賭博師「あ、あちっ! あ、あぶねぇ……」

そして全ての行動の成功率と、攻撃の辺りどころを良くしているのは賭博師の運スキル。結果的に、彼のおかげで五人は生き長らえていると言える……。

699: 2013/02/19(火) 00:02:22.55 ID:Razrft/D0
132

--亜人保護団体本部--

代表「いやぁ素敵なパーティだ。進んだ道は違えども、そこはかつて同じ釜の飯を食べた者同士、抜群のコンビネーションだ」

代表は静かに快進撃を見守っている。

代表「……」

ズシン

???「ふふふ……小蝿に苦労されているようねぇ」

代表「あ、賢帝さん、いつのまに降りてこられたんです?」

???改め賢帝「ふふふ、今来たところよ。だってなんだか騒がしいんだもの、気になって来ちゃったわぁん」

ゴゴゴゴゴ

八本の腕を持った筋肉質なハゲは口に手をあてて笑っている。

700: 2013/02/19(火) 00:04:22.82 ID:Razrft/D0
133

--亜人保護団体本部--

代表「申し訳ありませんー。ちょっとうちの団員だけじゃ対抗出来ないかもしれませんねぇ」

賢帝「嘘おっしゃいな。……まぁでもいいわ、暇だったから遊んでこようかしら私」

代表「え、そんな賢帝様自らのお手を煩わせるなど」

賢帝「いいのよ気にしないで。それに……美味しそうな子がいるのよ」

禍々しい表情でしたなめずり。

代表「……そうですか。いや助かります、正直困っていたんですよ」

ははは、と笑う代表。

賢帝「ふふふ。じゃあ黒十字教団の指揮も一旦貴方に預けるわ、後はよろしくやっておいて頂戴」

代表「はい、かしこまりました」

ばたん

701: 2013/02/19(火) 00:05:55.15 ID:Razrft/D0
134

--亜人保護団体本部--

ドカーン、ドカカカーン!

護衛姉「困ったです」

護衛妹「隙を見せません」

物陰から静かに狙う護衛姉妹。

しゅたっ

その時戦場の真ん中に一人の男が現れた。

賢帝「んふっ」

護衛姉「!」

護衛妹「賢帝様!?」

702: 2013/02/19(火) 00:07:27.98 ID:Razrft/D0
135

--亜人保護団体本部--

シーン

辺りが一旦静まり返り、そして

おおー!!

沸き立つ。

符術師「!! 来やがったか、黒十字教団の教祖にして五柱が一角!」

侍「賢帝殿……」

賢帝「ふふふ。お久しぶりね侍ちゃん。そのおめめやっぱり見えなくなっていたのね、可哀想」

侍「……お陰様で」

賭博師「ん? なんだ五柱と顔見知りなのか?」

通信師『一時期噂になってたんですよ。教団に忍び込んだ砂漠の風の一員が賢帝と交戦したと』

703: 2013/02/19(火) 00:08:45.38 ID:Razrft/D0
136

--亜人保護団体本部--

医師(暗黒森林での事件の後診察してわかったことですが、数年前に侍は視神経にダメージを受けていました。実に巧妙な技でした……回復不能攻撃でギリギリまで視神経を削り、激しい運動を繰り返せば取り返しがつかなくなる……そんな技でした)

侍「……」

医師(徐々に具合が悪くなる……しかし治すことのできないもどかしさ。そんな苦痛を与えて喜んでいるゲスがいるのです)

賢帝「ふふふ。そんな状態じゃあ私と戦うのは無理じゃないかしら? だって万全な状態ですら私に歯がたたなかったのに」

符術師「!?」

医師(侍ほどの実力者が眼にダメージをもらうということはそういうことになります……)

賭博師(まぁ腐っても五柱ってこった)

通信師『聖騎士を頂点とした五柱、長、皇、王、帝……聖騎士を除けば彼が一番やっかいな相手なのは間違いないでしょうね』

符術師(腐りきってんな。自分で宗教立ち上げてこれだもんよ)


704: 2013/02/19(火) 00:09:13.23 ID:Razrft/D0
137

--亜人保護団体本部--

ゴゴゴ

賢帝「ふふふ」

賢帝の威圧感には凄まじいものがあった。

符術師(多腕族……)

それはまるで仏像のようにポーズを取っている。

侍「……さぁ……わからないでござるよ」

賢帝の問いに、長いためを入れた侍が答える。

侍「あの時とはなにもかもが違うでござる」

侍は臨戦態勢に入る。

賢帝「ふふふ。面白い子ねぇ。やっぱりいいわ貴方。私のコレクションに加えてあげるわ」

侍「……拙者両刀でござれども、オカマは無理でござる」

705: 2013/02/19(火) 00:09:44.21 ID:Razrft/D0
138

--亜人保護団体本部--

賢帝「」

護衛姉「あっ」

護衛妹「まず」

賢帝「ふっふっふっ……ふふふふふふふふふふふふふふふ、あーはっはっはっ!」

ゴゴゴゴ

符術師「来るぞ!! 構えろ!!」

侍(悪いでござるが一人でやらせてもらいたいでござる)

賭博師(はっ!? 何言ってんだよ侍! 今は回復も使えない状況なんだぜぇ!?)

侍「武士の一分でござる」

通信師『……はぁ。五体一でさえ負ける確率の方が高いだろうというのに……』

医師(……侍は一度言い出したら聞かないですからね)

706: 2013/02/19(火) 00:10:27.45 ID:Razrft/D0
139

--亜人保護団体本部--

符術師(……)

賭博師(まじか納得しちまうんか……ちぇ、じゃあいいよ、さっさと負けちまえ)

侍「恩に着るでござるよ」

侍は賢帝と睨みあう。

ゴゴゴゴ

賢帝「仲間とのこそこそ話は終わったのかしら?」

侍「あぁ。すまないでござるな待たせてしまって」

賢帝「ふふ……じゃあ、始めましょうか!!」

賢帝が円を描くように八本の腕を動かしていく。

707: 2013/02/19(火) 00:12:11.65 ID:Razrft/D0
140

--亜人保護団体本部--

符術師(あ、さっきのじゃねぇか)

まるで大司教の、いやそれ以上の動きがそこにはあった。

侍「……」

賭博師(だが侍は今眼が見えない。幻覚なんて効かないぞ)

賢帝「これは元々私なりの呼吸法なのよ。あまりの美しさに周りが勝手に幻覚にかかっているだけ……」

賭博師(!?)

賢帝「んふっ。あなた達が考えていることなんて手に取るようにわかるわよぉん」

侍「……」

侍は抜刀の構えから動かない。

賢帝「いくわよ……千手神拳、」

侍「!」

ボボォ!!

賢帝は八本の腕に炎を纏う。

侍「」

ダンっ!

侍は刀を抜いた。

719: 2013/03/04(月) 22:14:54.93 ID:7IUNnLwu0
141

--亜人保護団体本部--

が、ががががが!!

賢帝「おほほほほ! いいじゃない、やるようになったじゃないの!」

侍「っ」

ががががが!!

侍は迫る火の手刀を全て叩き落としていく。

医師(!! あれだけ流麗で鋭いと思っていた侍の攻撃が……)

賭博師(賢帝の動きの前じゃ荒々しく見えやがる)

符術師(スローで大降りな動きにしか見えないのに、侍より速い!)

ががががが!!

720: 2013/03/04(月) 22:15:28.20 ID:7IUNnLwu0
142

--亜人保護団体本部--

通信師『それでも全部の腕を弾いています。隙をつかれないための体捌き、とても目が見えないとは思いません』

賢帝「でもそれが何になるのかしら」

ずしっ!

賢帝が放った右の手刀は侍のガードを押しのける。

侍「」

メリメリ

侍「っッ!」

侍の中を壊す音が聞こえた。

っっどがーん!!

そしてそのまま壁に叩きつけられてしまう。

721: 2013/03/04(月) 22:16:05.53 ID:7IUNnLwu0
143

--亜人保護団体本部--

ぱら

賭博師「侍!!」

ぱらぱら

侍「ぐ……」

賢帝「弱いわぁ。防がれても力で持っていけちゃうくらいに……防ぐだけじゃわたしには勝てないわよ?」

侍「……あぁ、まったくもってその通りでござるな」

符術師「おいもうやめろ侍、お前じゃ敵わない! 相手はあの五柱だぞ!?」

侍「うるさいでござる。手出し無用でござるぞ」

ダンッ!

侍は地面を蹴って駆け出す。

722: 2013/03/04(月) 22:17:21.39 ID:7IUNnLwu0
144

--亜人保護団体本部--

賢帝「うふふふ、いいわぁ。その愚直なまでの真っ直ぐさ、まるで若いときの剣豪ちゃんみたい」

ガガァン!

侍「その名を口にするなでござる!」

賢帝「うふふふ、不仲なのね」

ががががが!!

そしてまた始まる高速の攻防。
だが、

侍「がっ!」

メキメキ

賢帝「……」

今度は完全に賢帝の一撃が入ってしまう。

723: 2013/03/04(月) 22:19:07.71 ID:7IUNnLwu0
145

--亜人保護団体本部--

ズ、ズーン!!

賢帝「……なによ、さっきのダメージのせい? 今度は普通に受けきれてないじゃないの」

侍「がはっ……」

ぱたたっ

侍は頭部から出血し、ふらふらになりながら立ち上がろうとする。

符術師「侍っ!!」

侍「ふ、ふふ……」

刀に体重を乗せがくがくと震えながら立ち上がる侍。

医師(くっ、さすがです……医療系の頂点と呼ばれるだけはあります。たった二撃で侍をここまで……)

医師は汗を垂らしながら賢帝を見ている。

724: 2013/03/04(月) 22:21:40.48 ID:7IUNnLwu0
146

--亜人保護団体本部--

符術師(あぁ、凄い威力だな。ただでさえ動きが読みづらいっていうのにあの威力じゃ……)

医師(いえ、違いますよ。単純に威力が問題なのであれば、あの侍なら流しきれます)

符術師(え)

賢帝「んふっ」

医師(彼は医療のスペシャリストゆえ、人体の構造、稼働域を完全に把握しています。だからどんな動きをさせれば身体がもたないか全部わかっているんです……。そして高い観察力で相手を研究し、最もダメージが与えられる場所に手刀を運ぶ……)

通信師『……下手すりゃ一撃必殺ですね』

医師(実際一撃必殺の類いでしょう。その点では侍はうまくやりましたが……)

侍「がふっ」

ボタタタッ

725: 2013/03/04(月) 22:22:26.80 ID:7IUNnLwu0
147

--亜人保護団体本部--

賢帝「やだ、もう終わりなの? まだ準備体操だってのに……」

賢帝がゆっくりと侍に近づいていく。

侍「……」

符術師(おい!もういいだろ侍! お前本当にしんじまうぞ!)

侍「……」

医師(もしかしたら既に手傷を負っていた侍は、あえて自分が犠牲になることで賢帝の突破口を見出ださせようとしたのかもしれない……)

通信師『メインアタッカーがいなくて勝てますか!!』

賭博師(……違うぜ)

通信師『え?』

賭博師(あいつは氏ぬために戦うやつじゃない)

726: 2013/03/04(月) 22:23:04.03 ID:7IUNnLwu0
148

--亜人保護団体本部--

侍「……」

侍はテレパシーのやりとりを聞いてにやりと笑う。

賭博師(あいつは勝つためにあそこに立っている)

賢帝「安心して、頃しはしないわよ。ただおいたはできないように腕はもらうけど」

賢帝が腕を構える。

スッ

賢帝の腕は滑らかに円を描いた。

侍(符術師、リーダー権利を賭博師に譲渡してくれでござる!)

符術師(!!)

侍「スキル、逆境剣!!」

ズバッ!!

727: 2013/03/04(月) 22:23:33.48 ID:7IUNnLwu0
149

--亜人保護団体本部--

賢帝「!!」

ブシュッ!!

侍の刀は、攻撃してきた賢帝の腕を弾きつつ、賢帝の胸を斬り裂いた。

ばたったっ

賢帝の血がフロアを濡らしていく。

賭博師(あれ? リーダー変えた意味が)

団体兵「け、賢帝様が……!」

どよめく兵達。
五柱である賢帝が大ダメージを負ったのだ。しかも回復魔法を封じた矢先に。

賢帝「……あら、そんなスキルまで持ってたのね。ふふ。やるじゃないの」

賢帝は胸の傷口に手を当てて血を口に運ぶ。

728: 2013/03/04(月) 22:23:59.64 ID:7IUNnLwu0
150

--亜人保護団体本部--

侍「……」

医師(さすが賢帝、攻撃が当る寸前に身を捻ってダメージを軽減してますね)

通信師『辛いですね、今ので決めたかった所でしょうに』

ぽたぽた

符術師(いや決まりだろ。あの傷で戦闘続行は無理だ。手当をしなきゃ氏んじまうぞ)

賢帝「火属性回復魔法、レベル4」

ボッ!!

医師「!? なっ!!」

賢帝の傷口が柔らかな火で覆われたと思うと、次の瞬間、傷口は一切無くなっていた。

賢帝「ふふ……」

符術師「は、はぁ!? 回復魔法は封じられたんじゃなかったのかよ!!」

729: 2013/03/04(月) 22:24:32.14 ID:7IUNnLwu0
151

--亜人保護団体本部--

賢帝「ん? そうね、そうよ。ふふふ」

医師「……そうか、そういうことか!!」

賭博師(なに、どうゆうことよ)

医師「この回復、蘇生魔法の封印の目的はその力の独占にあったんですよ! この魔法陣の効果を無効化する術を彼らだけが持っているんです!!」

通信師『!!』

医師「これで彼らだけが今までと同じように回復できる……これはつまり」

符術師「ちっ、回復蘇生をビジネスにするつもりかよ!!」

ざわざわ

教団僧侶「!? そ、それでは我々の教義と違う! 出鱈目を言うんじゃない侵入者共!!」

教団槍使い「でも……賢帝様は今回復を……」

730: 2013/03/04(月) 22:25:05.63 ID:7IUNnLwu0
152

--亜人保護団体本部--

ざわざわ

侍「……」

賢帝「そうよ。わたしはこれをビジネスにしようだなんて思っちゃいないわ」

賭博師「……」

ざわざわ

賢帝「わたしがあの子の手を貸してまで回復魔法を封じようとしたのは、他に使うものがいなくなればわたしが神になれるからよ」

ざわざわ!!

教団魔法使い「け、賢帝様!?」

賢帝「もういいわあなた達。最初の予定と変わってしまったのは残念だけれど……これを知ってついてくる子達はいないでしょうからね」

ぼっ

賢帝の全ての腕に炎が宿る。

731: 2013/03/04(月) 22:25:54.96 ID:7IUNnLwu0
153

--亜人保護団体本部--

教団僧侶「け、賢帝様!! 教主様!! 何をなさるおつもりですか!!」

賢帝「ゴミ掃除よん。火属性範囲殲滅魔法、レベル3」

ボッ、ゴオォォオッ!!!!

侍「!!」

符術師「な!?」

どばあああああああああああああああああああん!!

護衛姉「きゃっ!!」

護衛妹「あうっ!!」



代表「おやおやもう切っちゃうんですか? 少々早い気もするけど……」

代表は下の惨劇を見ながら独り言を続ける。

代表「まぁうちの部下達は全部撤収済みだからいいですが」

732: 2013/03/04(月) 22:26:51.52 ID:7IUNnLwu0
154

--亜人保護団体本部--

ゴオオォォオ

賢帝「ほほほ。よく耐えたわねぇあなたたち」

炎の海の中、立っていたのは賢帝と符術師達。

符術師「こ、こいつ……平然と部下を焼き払いやがった」

賢帝「ふふふふ。神の考えは凡人にはわからないのよぉ。ふふふ。わかるだなんて勘違いされるのもいやだしねぇ」

炎をバックに八本の腕を持った賢帝はゆっくりと五人に近づいていく。

ずしっずしっ

侍「……」

符術師「おい侍、これでもまだ手を出すなって言うのかよ」

侍「……そうでござる」

符術師「!?」

733: 2013/03/04(月) 22:27:20.51 ID:7IUNnLwu0
155

--亜人保護団体本部--

賢帝「やれやれ、あなたって本当に男らしいわぁ侍ちゃん。でも」

賢帝の腕が回る。

賢帝「まだ力量の違いがわからないだなんてちょっと失望しちゃったわぁ」

侍「スキル、空振り!」

ドシュッ!!

賢帝「」

バシィン!

飛んできた斬撃を軽々と弾く賢帝。

符術師「おい侍!!」

賭博師「いいからやらしとけよ」(リーダーを変更したんだぜ? まだわからないのか?)

符術師(え)

734: 2013/03/04(月) 22:28:19.34 ID:7IUNnLwu0
156

--亜人保護団体本部--

ダダダダ!

侍は駆けだした。

賢帝「……浅はかねぇ」

ヒュッ

接近してきたところを賢帝の手刀が狙う。

ゥン

賢帝「!?」

しかし、それを侍は軽々と避けた。

賢帝「な!!」

賭博師(約100人に1人の割合でしか発現しないパーティスキル、リーダースキル。俺がリーダー時はパーティ全体の回比率を三割あげる)

735: 2013/03/04(月) 22:28:55.67 ID:7IUNnLwu0
157

--亜人保護団体本部--

ドッ!!

侍の剣撃を左腕で防ぐ賢帝。

侍「っ! 取ったと思ったでござるが!」

賢帝「ぬぅ……! あんた何かしたわね!」

ボッ!!

今度は左の手刀が侍を狙うが、

スッ

またしても当らない。

賭博師(いやー、三割をよく二回連続で引けたなーあいつ)

符術師(……そういうことか)

侍(はっはっ、すまんでござるな。敵を騙すにはまず味方から……元より拙者一人で勝てる相手だなどと思ってないでござるよ)

賢帝「ふぅ……」

736: 2013/03/04(月) 22:30:11.92 ID:7IUNnLwu0
158

--亜人保護団体本部--

通信師『まぁ……結果的に侍だけということで油断してましたからね。回復魔法さえ使われなければ勝敗は決していたかもしれませんし』

医師(私達は全員リーダースキル持ち……後ろでリーダー権をころころ変えてるだけで侍のステータスを変えることができますからね。侍の孤軍奮闘のスキルのことを考えたら……全員で突撃するのと結果は変わらないかもしれない)

符術師(まぁ、そう考えたら侍の単騎突は効率的にいいのかもしれないけれど、なんかなぁ)

侍(医師にリーダー権を!)

賭博師(あいよ)

医師(リーダー変わりました、私のリーダーパーティスキル、常時回復が発動します)

駆ける侍の傷が少しずつ回復していく。

賢帝(! 回復魔法は使えない状況なのに……そう、回復アイテムを使ったわけでもないのなら、祝福か呪いを受けたアイテムを所持しているのか、もしくはパーティスキルってことね)

シャシャシャ!!!

賢帝は侍のスピードに追いつけない。

侍(このまま逃げ続けていれば全回復でござる。兵達を一掃したのは失策でござるな)

737: 2013/03/04(月) 22:30:39.08 ID:7IUNnLwu0
159

--亜人保護団体本部--

賢帝(でも今回復が始まったってことはやっぱりパーティスキル……いやリーダースキルか。なるほど、リーダーを交換したのね!!)

賢帝は四人の方に向き直る。

賢帝「なるほど。こそこそ電波で喋ってるだけかと思ったらそういうこと」

賢帝は走り出した。

賢帝「ならそっちから倒してあげるっ!!」

侍(! 賢帝を囲むように逃げてくれでござる!! そしてリーダーを拙者に!)

医師(わかりました!!)

賢帝「ふん、ばらばらに逃げたからって誰かが氏ぬのには変わりないのよぉ!!」

侍「」

ばちっ!!

賢帝「……!?」

738: 2013/03/04(月) 22:31:14.17 ID:7IUNnLwu0
160

--亜人保護団体本部--

侍「拙者のリーダースキルは一発型でござるからな」

侍が居合の構えを取ると、符術師達も全員居合の構えになる。

ばちばち!

そして各々の属性の魔力で作られた刀が出現する。

侍「くらうでござるよ!!」

シャッ

5人に囲まれた賢帝に逃げ場はない。

どばっ!!

賢帝「ぐぁっ!?」

5つの飛ぶ斬撃が賢帝を襲った。

739: 2013/03/04(月) 22:33:16.74 ID:7IUNnLwu0
最初から読み始めたらここにおいつくまでに一体どれくらいかかってしまうんでしょうか……。

本来は勇者募集、酒場募集、アイ募集のヒロイン三人の記念絵になる予定でしたが伝達ミスで酒場時代のヒロイン3人絵になりました!ありがとう!


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

勇者と魔王がアイを募集した【4】

引用: 勇者と魔王がアイを募集した