1: 2013/05/20(月) 23:52:01.02 ID:ddXx7gbJ0

9: 2013/05/28(火) 00:04:10.77 ID:Gv75KDnV0
341

--飛行船--

ごぅんごぅんごぅん

熊亜人「う、ぐ……」

護衛姉「大丈夫ですか?」

護衛妹「具合悪そう……」

治療を受けている熊亜人。

代表「まいったねぇ。君でさえこの有様では……」

熊亜人はあれから一向に容態がよくならない。むしろ黒い靄による侵食は悪化していた。

代表(恐ろしい力だ。だがだからこそ彼女を倒せる)

熊亜人「し、心配なさらないで欲しいぐま……さっきも言ったとおり、ちゃんと目的は果たすぐま!」

汗をたらしながら熊亜人は微笑んだ。

代表「……無理はしないようにね」

10: 2013/05/28(火) 00:06:37.55 ID:Gv75KDnV0
342

--空--

ぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅうううぎゅううううううううううん!!

侍「うおおおおおおおおおおおこえええええええええええええ!!」

賭博師「はええええええええええええええたけええええええええええ!!」

符術師「おしOこちびるぅうううう!!」

魔導長「もうっ、みんななさけないのっ! それでも大の大人なのっ?」

侍「そ、そうは言っても、音速レベルで高度1万メートルを飛行するとかむちゃくちゃでござる!!」

侍たちは魔導長が魔力で作り上げた鳥に似た飛行物体に乗って移動している。

魔導長「うるさいなの。そうでもしなきゃ追いつけないなの」

11: 2013/05/28(火) 00:08:56.21 ID:Gv75KDnV0
343

--空--

賭博師「……っていうか魔導長さんはあいつらがどこに向かったかわかってるんですか?」

侍「え? 目的も無しに音速飛行とかありえないっしょ」

符術師「……」

魔導長「ばかにしちゃいやなの、ちゃんとわかってるなの」

符術師「わかってるって、一体どこなんです?」

魔導長「君達の過去、調べさせてもらったの」

侍「!!」

魔導長「代表君と君達が昔仲間だったこと、そしてなぜ代表君がこんな行動をしたのかを」

賭博師「……」

魔導長「先生、でしょ」

符術師「!……」

12: 2013/05/28(火) 00:09:24.52 ID:Gv75KDnV0
344

--空--

ぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅうううぎゅううううううううううん!!

魔導長「かつて東の王国のある学校に一人の教師がいた。その人はあらゆる差別を無くしたいと思って、人種だとか貧富だとか亜人だとか、そんな壁を全てとっぱらって差別から子供達を守っていたなの」

賭博師「……」

魔導長「彼の生徒には、後に黄金世代と言われる君達五人と代表君。亜人保護団体の幹部達がいたなの。そして……災厄を引き起こした竜亜人」

侍「……」

魔導長「の娘、竜子」

魔導長は淡々と話を続ける。

魔導長「災厄のこともあり、先生に拾われるまではひどい迫害を受けて育った竜子。学校に来てからも町の人間からは危険だと怖がられていた。それでも先生や君達は彼女を普通の人間として扱い続けたなの……」

符術師「……」

魔導長「でも闇は深かったなの。ある日、竜子は君達の前で……先生を殺害して学校から逃走した」

13: 2013/05/28(火) 00:09:53.20 ID:Gv75KDnV0
345

--飛行船--

ごぅんごぅん

代表「ん、見えてきたよ。竜骸の渓谷が」

熊亜人「……」

護衛姉「亜人保護団体構成員439名」

護衛妹「全員戦闘の準備、できています」

ざっ

代表の後ろで三人が立つ。

代表「……うん、じゃあ行こうか。敵討ちだ。それぞれのね」

14: 2013/05/28(火) 00:10:51.13 ID:Gv75KDnV0
346

--空--

ぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅうううぎゅううううううううううん!!

魔導長「代表君は大豚亜人などの仲間を連れて君達と袂を分けた。そして先生の意思を次ぐ団体として亜人保護団体を設立させたなの。まぁ表向きはだけどね。本当の目的は今の現状を見たらわかるなの。君達も最初から気付いてたんじゃないの?」

侍「……いやそんなことはないでござるよ。我らとて代表を全部理解しているわけではござらん」

賭博師「だな……俺もよくわからないまま大分片棒担がされたし」

パーティスキルの回復を封じてなかったしな、と誰にも聞こえない声で賭博師は言う。

符術師「ふん、お前らは情けないだけだろ」

魔導長「この回復と蘇生を禁じる魔方陣……どこまでの効力かはわからないけれど、もし私が考えている通りならば、回復魔法の利権とか、そんなちゃっちいもんじゃないなの。ようは自動蘇生スキル潰し。代表君の狙いはただ一つ」


--飛行船--

代表「これより、竜亜人を抹頃する」

飛行船に備え付けられた砲台を構成員達が動かし、そして

バルルルルルルルルルル!!!!

15: 2013/05/28(火) 00:11:48.74 ID:Gv75KDnV0
347

--竜骸の渓谷--

火竜亜人「ん? この音は」

チュチュチュチュチュン!!

火竜亜人「!?」

空から弾丸の雨が降った。

ギギギギンギギンッ!!

団体構成員「ん、やっぱり硬いですね。並の弾丸じゃ話にならないや」

団体隊長「硫酸弾、装填用意!」

火竜亜人「いっでぇ……ちぃ、また人間の仕業かぁ!? ちょっかいだしてきやがって、ぶち頃してやる!!」

ボッ!!

16: 2013/05/28(火) 00:12:21.10 ID:Gv75KDnV0
348

--竜骸の渓谷--

団体隊長「全身を火で包んでいる……何かするつもりだぞ!! うてー!!」

がうんがうん!!

風竜亜人「騒がしいと思ったらこういうことですか」

団体隊長「!?」

めぎっ

飛行船の砲台にすでに取り付いていた風竜亜人は団体隊長の首をねじり取った。

団体構成員「う、宇和あああああああああああああああああああ!!」

ガガガガガン!!

じゅっ

風竜亜人の肌が僅かに溶ける。

風竜亜人「づっ!!……またおかしな武器を作ったようです、ねっ!」

どごっ!!

17: 2013/05/28(火) 00:12:57.88 ID:Gv75KDnV0
349

--竜骸の渓谷--

うわぁあーー 

きゃああああ

護衛姉「代表様、敵がこの船に取り付いたみたいです」

護衛妹「いかがいたしますか?」

代表「そりゃあ、当初の予定通りにいくだけだよ。僕のことは気にしなくていい、君達は迅速に持ち場についてくれ」

熊亜人「……ご武運を」

代表「それは僕のせりふだ。頼んだよ」

ざざざっ

代表「しかしまぁ……機械兵士が流した情報から作られた武器っていうのもも案外なさけない。竜亜人にあまり有効じゃないだけなのかな?」

18: 2013/05/28(火) 00:13:33.57 ID:Gv75KDnV0
350

--竜骸の渓谷--

どがーん!! どががーん!!

団体戦士「うおおおおおおおおおお!! お前らのせいでぇええ!!」

土竜亜人「がっ、ぐっ!!」

ロケットランチャーを連発する団体戦士。だが土竜亜人は攻撃を受けても前進をやめなかった。

団体魔法使い「どいてろ!! 氷属性単体攻撃魔法、レベル4!!」

バッシャアアアーーン!!

土竜亜人「んぐっ!! き、さまらあぁ!!」

土竜亜人が大きな拳を振り上げて、地面に叩き落す。

ドッがァあああああああああああああああん!!

団体魔法使い「きゃあああああああああああああ!?」

地面は隆起し、団体構成員達は皆吹き飛ばされてしまう。

19: 2013/05/28(火) 00:14:09.68 ID:Gv75KDnV0
351

--竜骸の渓谷--

水竜亜人「ほっほっほっ」

団体女賢者「がぼっ、ごぼぼっ!!」

水竜亜人「なんてやばんな生き物なんでしょう。頃すだけでは生ぬるい、存分にいたぶって苦しませてから頃してあげますよ」

団体構成員達の顔を水の球体が覆っていた。

ひゅん

水竜亜人「」

がぎぃん!!

護衛姉「っつ」

水竜亜人「あらまたお客さん?」

落下しながら切りかかった護衛姉だったが、水竜亜人の腕で防がれてしまった。

20: 2013/05/28(火) 00:14:36.23 ID:Gv75KDnV0
352

--竜骸の渓谷--

護衛姉「硬い、けど計算通りです!」

ギギン!! ガキィン!!

水竜亜人の爪を護衛姉の刀が防ぐ。

水竜亜人「獅子か……同じ亜人なのに戦わなきゃいけないだなんて、ねっ!!」

ガギイイイン!!

護衛姉「黙るです……! 自分達以外は、亜人だろうと下に見ているくせに!」

水竜亜人「……そりゃそうよ。私達がこの世で最も優れた生物なのだから。でも私達は差別なんてしない。全部平等に扱っているのよ」

しゅうぅうう

水竜亜人「……? くさっ!! な、なにこの臭い!!」

しゅぅうううう

護衛姉から何かが噴出している。

水竜亜人「な、なにそれ!? おならなの!? すんごい臭い!!」

21: 2013/05/28(火) 00:15:02.86 ID:Gv75KDnV0
353

--竜骸の渓谷--

つー

水竜亜人「うっく……あ、あまりの臭さに頭が痛いわ」

ぼたっ

水竜亜人は気付かないうちに鼻血をたらしていた。

護衛姉「臭属性範囲攻撃魔法、レベル3」

しゅぅううう

水竜亜人「臭属性ですって?……ラッカーだったの。それも聞いたこともないし使えるとも思えないひどい属性ねぇ」

しゅぅううう

しかし水竜亜人の足は震えていた。

水竜亜人(で、でも……吐き気、眩暈、頭痛……身体能力が優れている亜人にこれは……かなりきついわね!)

だっ!!

水竜亜人は護衛姉に飛び掛った。

ズシャッ!!

22: 2013/05/28(火) 00:15:38.68 ID:Gv75KDnV0
354

--竜骸の渓谷--

水竜亜人「!!」

護衛妹「土属性武器強化魔法レベル4」

水竜亜人は護衛妹に背後から攻撃され、刀の先端が胸部から出ていた。

ぶしゅっ

水竜亜人「ぐっ!? こ、この臭いで索敵がばかになってる!!」

どごっ!!

護衛妹「ぎゃっ!!」

貫かれた状態でありながら水竜亜人は背後の護衛妹に蹴りを放ち、護衛妹を吹き飛ばす。

ずるり

護衛姉「……」

水竜亜人「ふん、私の体を傷つけたことはほめてあげる。でも無意味なことよ。私達竜亜人はどの種よりも回復能力が高く、たとえ氏んだとしても氏なない体なんだから!!」

23: 2013/05/28(火) 00:16:14.41 ID:Gv75KDnV0
355

--竜骸の渓谷--

ぽたっ

水竜亜人「……あ、れ?」

ぼたっ、ぼたっ

護衛姉「……」

水竜亜人「回復が……始まらない?……ごふっ!!」

びちゃちゃ!!

護衛妹「ふふふ……」

護衛姉「あはは……」

水竜亜人「い、痛い、痛い痛い痛い!! あ、頭も痛い、気分も悪い……ぐぅ!!」

ずしゃ

水竜亜人はとうとう立っていられなくなって地面に崩れ落ちる。

24: 2013/05/28(火) 00:16:42.63 ID:Gv75KDnV0
356

--竜骸の渓谷--

水竜亜人「げぼっ!!……はぁ、はぁ、はぁ! く、くそ、なんで? なんでよ!! こ、こんな雑魚どもに、なんで!!」

護衛姉「どうせ今まで怪我の痛みも知らなかったんでしょう?」

護衛妹「どうせすぐ治っちゃうものね。たった少しの切り傷がどれだけ致命的なものかなんてわからないんでしょう?」

水竜亜人「はぁっ、はぁっ、はぁっ!!」

水竜亜人の鼻血は止まらない。

護衛姉、妹「「今までしてきたことがどんなことなのか、理解しようとも思わなかったんでしょう?」」

ちゃき

水竜亜人「い、い……」

ざっざっざっ

水竜亜人「いやああああああああああああああああああああああ!!」

ざしゃっ!!

25: 2013/05/28(火) 00:17:17.93 ID:Gv75KDnV0
357

--竜骸の渓谷--

団体伝達兵「ご報告いたします。戦況は圧倒的に我らが有利です。代表様が見越していた通り、やつらは強いがゆえにダメージを恐れていません。今のところ討ち取ったと報告があったのは、火竜亜人、風竜亜人、水竜亜人、土竜亜人の四体です。雷竜亜人はもう少しで倒せるとのことです!」

代表「ご苦労。もう半分か。早いね。熊亜人君が頑張ってくれてるのかな?」

団体伝達兵「はい。まさに鬼神の如き働きかと」

代表(長くは持たないということか)「わかった、この調子だ、続けて頑張ってと伝えておいてくれ」

団体伝達兵「はっ!!」

ざっ

代表「あぁそれと」

団体伝達兵「?」

代表「そろそろ彼女が出てくるはずだ」

26: 2013/05/28(火) 00:18:08.61 ID:Gv75KDnV0
358

--竜骸の渓谷--

どがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

その時、飛行船の外壁を破壊し、何かが中に入ってきた。

団体伝達兵「な、なぁ!! だ、代表様お逃げください!!」

しゅぅうううう

代表「……お早いおつきだね」

???「……」

代表「お久しぶり、竜子ちゃん」

???改め竜子「お前……代表、これは一体どういうつもりだ?」

青白い肌を持った竜亜人・竜子は、全てを凍てつかせる絶対零度の殺意を持って代表を見ている。

代表「? どういうつもりだ、とは?」

竜子「とぼけるなよ。なぜ私達の住処を襲いに来たんだ」

27: 2013/05/28(火) 00:19:05.56 ID:Gv75KDnV0
359

--竜骸の渓谷--

代表「それこそ君の方こそわかっているはずだよ。僕はただ単に敵討ちに来たんだよ」

竜子「……」

代表「その前に、一つ教えてくれないかな。なぜ……君は先生を頃したんだい?」

竜子「……ふん、私が人間を頃すのに理由なんかいるのか? 私は災厄を引き起こした男の娘だぞ」

ぱき、ぴきぴきき

周囲が徐々に凍り始めていく。

代表「……僕達はそんな目で君を見たことは無かった」

竜子「……」

代表「あの日までは、僕たちはずっと一緒にいられると思っていたんだ」

竜子「……はっ」

28: 2013/05/28(火) 00:21:04.92 ID:Gv75KDnV0
360

--竜骸の渓谷--

竜子「おめでたいアホだなお前も。あの男も。みんな頭の中はお花畑か?」

代表「僕は違うよ。先生のことは否定しないけどね」

ぴききっ

竜子「……人間は誰も信用しねぇ……私は人間を心の底から恨んでいる」

ぱききっ

竜子「たとえ何をされようと心は絶対に開かない、絶対に恨みを風化させはしない」

燃え上がるほどの熱い殺意の氷で部屋が満たされていく。

代表「……」

竜子「人間は私から全てを奪った。優しかった父ちゃんを狂わせておいて頃し、何もしていない母ちゃんを虐頃し、何も知らない私に地獄を味わわせた」

代表「……」

竜子「全て憎むと決めていた。なのにあいつは恨みを忘れて人間と仲良くさせようとした。だから頃したんだよ」

38: 2013/06/04(火) 22:24:18.85 ID:ZQDRXVG30
361

--竜骸の渓谷--

代表「そっか」

代表は静かにうなずくと竜子に向かって言った。

代表「じゃあ、さようなら」

竜子「……お前如きに私を倒せると思ってるのか」

代表「僕の腕力じゃあとてもじゃないけど無理だよ。君は亜人最強の一族、竜亜人の一人なんだ。君ら相手にまともに戦おうと思うなら鬼亜人を呼ぶしかないだろうね」

ひゅおおお

吹雪が船の中を凍らせていく。

竜子「なら、どうするつもりだ」

ドガッあああああああああああああああん!!

竜子「!?」

熊亜人「があああああああぁいいぇ9おgふぁうぇ!!」

船の壁を破壊して熊亜人が飛び込んできた。

代表「魔王を使う」

39: 2013/06/04(火) 22:25:02.35 ID:ZQDRXVG30
362

--竜骸の渓谷--

ドドドドドッドドドガッアアアアアン!!

熊亜人はそのまま竜子を引きずり続けること百メートル。そしてその勢いのまま思い切りたたきつけた。

竜子「ぐはっ!!……この、力は」

熊亜人「ふー!! ふーっ!!」

竜子「危険な力に手を出したようだな! 代表!!」

きぃーーーん!!

竜子の口に冷気が集まり、

熊亜人「」

バキバキバキバキィピキイイイイン!!!!

強烈な吹雪が熊亜人を襲う。

40: 2013/06/04(火) 22:26:01.69 ID:ZQDRXVG30
363

--竜骸の渓谷--

熊亜人「ぬあああぅ!!」

ドオーン!!

今度は反対に吹き飛ばされる熊亜人。

ぱらっ

熊亜人「ふーっ!! くやおいrhがpうぇおいあ@We!!」

体中に氷がまとわりついていたが黒いもやがそれらを全て溶かしてしまう。

じゅっ

熊aじん「U-! ふぅー!!」

竜子「……嫌な気配だ……」

熊亜人「UGAOAAAAAAAAAAAAA!!!!」

ドガッ!! ドガドーーン!!

咆哮とともに黒いもやが暴れだし、周囲の地形を破壊し始める。

41: 2013/06/04(火) 22:28:23.15 ID:ZQDRXVG30
364

--竜骸の渓谷--

護衛姉「代表さま」

護衛妹「はっ、はっ……任務は完遂しました」

傷だらけになった護衛姉妹が代表のもとに現れる。

代表「あぁお疲れ様。あとはあれに復讐するだけか」

ドーーン!! ドガーーーン!!

護衛姉「うっ」

護衛妹「すごい……パワー」

熊亜人と竜子は、世界が振動するほどの一撃を互いに打ち合っている。

代表「全くでたらめな種族だよ。やはり他のと同じように毒でやったほうが早かったかもしれないね」

代表は船から二人の戦いを眺めている。

代表「でもそれじゃあこの恨みは収まらない。我らの恨みは」

42: 2013/06/04(火) 22:28:53.89 ID:ZQDRXVG30
365

--竜骸の渓谷--

護衛姉「……しかしこれ以上長引くと熊亜人さんの方が危ないかもしれません」

護衛妹「あんな危険な力、熊亜人さんの方をおかしくしてしまう」

代表「そう、だね……」

代表は何かを考えるようにして

代表「なら君達に頼もうかな。援軍だ」

護衛姉「はっ!!」

護衛妹「了解ですっ!!」

ざっ!!

43: 2013/06/04(火) 22:30:09.88 ID:ZQDRXVG30
366

--竜骸の渓谷--

ドッオオオン!!

竜子「がひゅっ!!……っくそ!!」

熊亜人の拳を受けて竜子の歯が抜けて飛んでいく。

ドオオン!!

竜子の反撃の蹴りは熊亜人の腹部に命中するが、黒いもやのようなものでガードされて感触が無い。

竜子(っ!! くそ、これは一体なんなんだよっ!!)

くma亜じじ人「silあsrgdrsrghjy6gう8いk5oaerug」

竜子(なんか涎垂らしてぶつぶつ言ってるしよ……)


44: 2013/06/04(火) 22:32:33.33 ID:ZQDRXVG30
367

--竜骸の渓谷--

ザザザッ!!

竜子「!」

護衛姉「はあああああああああああああ!!」

護衛妹「いやああああああああああああ!!」

ギギンッ!!

竜子「ちっ!! 新手か!!」

護衛姉「!! 肌を切りつけただけで刃こぼれ!?」

護衛妹「!! 魔剣が折れた!?」

竜子「今はお前らの相手なんぞ」

おあsdr8gは「あぃうぇごあうぇおrkq」

もはや何なのかすらわからない黒いものが三人の傍で呼吸をしていた。



45: 2013/06/04(火) 22:33:19.57 ID:ZQDRXVG30
368

--竜骸の渓谷--

護衛姉「父と母の仇っ!!」

護衛妹「覚悟っ!!」

ギギギィン!!

竜子「はぁ!? そんなもの知らないね!!」

ギギギギン!!

護衛姉「お前の父親に虐殺されたんだよ!!」

護衛妹「何にも悪いことしてなかったのに!!」

ギギギギン!!

竜子「!! ふざけんじゃねぇ!! 私がしたわけじゃないだろ!! それにもとはと言えばどっかの馬鹿な人間のせいなんだぞっ!!」


46: 2013/06/04(火) 22:34:07.22 ID:ZQDRXVG30
369

--竜骸の渓谷--

ドガガガッ!!

護衛姉「きゃうっ!!」

護衛妹「ふぎっ!!」

どざざー

竜子「はぁっ、はぁっ」

護衛姉「イキナリ何を言い出すのかと思えば……」

護衛妹「そんなたわ言……」

竜子「父ちゃんはなぁ、超脱皮を人間に見られたんだよ……」

護衛姉「超……」

護衛妹「脱皮……?」

47: 2013/06/04(火) 22:35:04.28 ID:ZQDRXVG30
370

--竜骸の渓谷--

竜子「竜と竜亜人が十五年に一度行う、身体機能の調整能力だ。これは誰にもジャマをされてはならない。だからこの渓谷の深部にてひっそりと行われる儀式……それを人間の学者が研究と称して勝手に踏み入りジャマをしたんだ」

護衛姉「……」

護衛妹「……」

竜子「超脱皮をジャマされたことで優しかった父ちゃんは人が変わったように狂った……恥ずかしいだとか怒りとかじゃあない。本当に狂っちまったんだ……」

護衛姉「……だから」

護衛妹「……なんだ?」

竜子「!?」

護衛姉「例え何が原因だとしてもお前の父親が私達の両親を頃したことは変わらない!!」

護衛妹「私達の目の前で握りつぶした事実は変わらない!!」

48: 2013/06/04(火) 22:35:56.41 ID:ZQDRXVG30
371

--竜骸の渓谷--

竜子「なん、だと……?」

ぱきぱきぱき

竜子から再び絶対零度の殺意がにじみ出す。

竜子「それから私達を待っていたのは地獄のような迫害だったんだぞ……強く誇り高い我らの種族は半数以下にまで減らされた……」



--空--

魔導長「私の調べでは先生を頃すよう提案したのは東の王国の政府らしいなの」

賭博師「!! なん、だと」

侍「政府が……いや無いとは言い切れないが」

魔導長「先生の影響力は中々強かったようなの。あんな凄惨な事件のあった後だからそれに反発する人もいたけれど、でも少しずつ理解者を増やしていったの……」

符術師「……」

三人はあの頃を思い出す。

49: 2013/06/04(火) 22:38:03.58 ID:ZQDRXVG30
372

--空--

魔導長「政府役人はなんらかの意図から完全な人間対亜人の関係を作ろうとしていたの。段々先生の存在をわずらわしく思ってきた政府は、先生の教え子にあの竜亜人の娘がいることをつきとめたの」

侍「竜子……」

魔導長「『先生をみんなの前で頃して欲しい、もしそれが成功したら、君達竜亜人の一族に誰にも関われないよう、特別な住処を用意しよう』……金輪際人間が関わってこないことを条件に竜子ちゃんは先生を頃したの」

賭博師「……」

魔導長「当時の迫害は想像を絶するものだった。運よく先生に拾われた竜子ちゃんはなんとかなっているものの、かつての仲間たちはその限りではない。特に竜亜人に対してはひどかったから……。竜子ちゃんは仲間を助けるために命を天秤にかけ、先生を頃すしかなかったの」

符術師「……ち、おかしいと思ったぜ。あいつ暗かったが悪いやつじゃなかったしな」

侍「だとすると、真の黒幕は、東の王国の政府ということになるでござるな」

魔導長「どうなんだろうなの」

賭博師「……へ?」

魔導長「もしかしたら政府にもなにか理由があったのかもしれないの。まだ私の調べだとここまでだから結論づけられないなの」

50: 2013/06/04(火) 22:38:43.41 ID:ZQDRXVG30
373

--空--

魔導長「……竜子ちゃんに復讐しようとしている代表君は先生を殺されたことを恨み、先生を頃した竜子ちゃんは親を狂わせ頃した人間を恨み、人間は災厄を引き起こしたの竜亜人を恨む……どんどん怨嗟が連鎖していくの。誰が本当に悪いかなんてわからないの」

賭博師「……」

魔導長「だから止めるの」



--竜骸の渓谷--

氷の世界と化した渓谷で、竜亜人と護衛姉妹が戦っている。

ギィン! ドォオオン!!

否、ただ一方的に護衛姉妹はいたぶられている。

護衛姉「が、がひゅ……」

ずざざー

51: 2013/06/04(火) 22:40:08.30 ID:ZQDRXVG30
374

--竜骸の渓谷--

竜子「はぁっ! はぁっ!!」

竜子にはさすがに疲れはあるものの、ダメージはほぼ無い。

護衛姉「さ、すが化物……蘇生スキルを潰せばどうにかなると思ったけれど」

護衛妹「そんなことは、無かったですか」

護衛姉は両足をねじ切られ、護衛妹は内臓が外に飛び出している。

おあいうぇぐ4y「あwp49うgじゃlkhが」

竜子「あいつは動かなくなっちまったし……もういいだろ、帰れ!」

護衛姉「嫌だ、絶対に、許さない」

護衛妹「お前だけは、お前らだけは」

竜子「……」

ずるっ

52: 2013/06/04(火) 22:40:39.18 ID:ZQDRXVG30
375

--竜骸の渓谷--

竜子「!?」

竜子の横を黒いもやが通り抜けていく。

竜子「な、なんだこいつ……一体」

護衛姉「く、熊亜人、さん」

護衛妹「あいつを、倒して、ください」

あおw39た「あを9えあわえy」

黒いもやはそっと護衛姉妹に近づき、

おj2h3い「あをえrhが」

ぐばっ

護衛姉「……え」

護衛姉を捕食し始める。

53: 2013/06/04(火) 22:41:18.04 ID:ZQDRXVG30
376

--竜骸の渓谷--

ぶしゃああああああああああああああああ

護衛妹「!? な、なにやってるんですか!! く、熊亜人さん!?」

ぎょろ

目玉の無い顔が護衛妹の方に向けられる。

護衛妹「ひっ!?」

がぶっしゅ!!

黒いもやは護衛妹の足にかみつくと、少しずつ胴体のほうへと噛み進んでいく。

ばぎっぐちゃっごきっ!!

護衛妹「い、いやああああああああ!!!」

竜子「なにが……起こってる、んだ?」

54: 2013/06/04(火) 22:41:55.97 ID:ZQDRXVG30
377

--竜骸の渓谷--

代表「……」

団体伝達兵「だ、代表様!! 大変です!! 何を傍観しているんですか!! 護衛姉妹様が……護衛姉妹様が!!」

護衛妹「いっ、ぎっ!! た、たす、助け、て……だ、だいひょぶっ!!」

ばぎん!!

護衛妹「……」

ばぎっじゃりっぐちゅりっ

護衛妹「」

竜子「ちっ!! 化物め!!」

竜子が黒いもやに攻撃を繰り出そうとするも、

ばしっ!!

竜子「ぐっ!?」

尻尾のような黒いもやに弾かれる。

55: 2013/06/04(火) 22:42:26.36 ID:ZQDRXVG30
378

--竜骸の渓谷--

びゅおおおおおお

魔導長「着いたの……っ!! ん……でも、どうやら遅かったみたいなの」

賭博師「うええ、吹雪いてやがる……この妙な気配……なんだ?」

侍「黒いもやのようなものが……!! ものすごい魔力を感じるでござる!!」

符術師「ち、何が起こってるんだ!?」


あおういえgは「おあいうぇjがkl;wjgは;おいhg」

ぐぎっ、ぐぎぎっ

黒いもやは変形を重ね、徐々に巨大になっていく。

竜子「っ……」

そして熊の頭部が出来上がり、その両脇に護衛姉妹の顔が現れた。

56: 2013/06/04(火) 22:42:53.82 ID:ZQDRXVG30
379

--竜骸の渓谷--

魔導長「ん……たいしたパワーなの。見た感じ三つ首で……ケルベロス?」

擬似魔王ケルベロス「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

ビリビリビリ!!

魔導長「んくっ!!」

侍「な、なんつー咆哮でござるか」

賭博師「み、耳がいてーー!」

符術師「……おい、あれどうすんだよ。あのでっかいの」

擬似魔王ケルベロス「ぎゅるるるうる」

巨大な護衛姉の頭部が魔導長たちを見つける。目玉の無いその眼窩で。

ぎゅぎぎぎぎぎぎぃぃん

侍「!! 魔力攻撃くるでござる!!」

ぎぃあああん!!

57: 2013/06/04(火) 22:43:42.10 ID:ZQDRXVG30
380

--竜骸の渓谷--

どっごおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!

符術師「うオオオオオオオおおおおおおおおおおおおお!!!?」

爆風に吹き飛ばされる符術師。

擬似魔王ケルベロス「ぎゅるう?」

侍「ぺっぺっ……どうやら狙いがまだ定まらないようでござるな。おかげで助かったでござるが」

賭博師「俺らに当たらなかったせいで山は一個消し飛んじまったけどな」

賭博師はその破壊力を見て冷や汗をたらす。

魔導長「……これはちょっと困ったの……あれ強いの」

侍「……どうするでござる? あんな化物ほうってはおけないでござるぞ」

魔導長「……よし、私の奥義で吹き飛ばすの」

符術師「まじか……どうにかなるんか。やっぱ五柱はすげぇや」

魔導長「でもここまで飛んでくるのに魔力いっぱい必要だったから、今私魔力すっからかんなの。一戦交えた後だったし」

侍「……は? せ、拙者たちの魔力供給では魔導長殿を満タンにさせてあげることなんて……」

魔導長「その心配はいらないの。君達には10ターン稼いで欲しいだけなの。魔力は星からもらうからなの」

符術師「ターンてなに?」

62: 2013/06/11(火) 00:44:02.82 ID:msJPYGRP0
381

--竜骸の渓谷--

ゴゴゴゴゴ

擬似魔王ケルベロス「gyるるるるるうぅ」

強大にして巨大なケルベロスを前に魔導長達は算段を立てている。

侍「しかし……こいつ相手に時間稼ぎなど……無理じゃね?」

賭博師「ん、ん~……我々三人の総魔力量の数十倍あるよこれ」

符術師「魔力量だけの問題でもないしな……おいこれどうするよ」

魔導長「何言ってるの? 三人でやれなんて言ってないの」

侍「いや……そうは言っても拙者たちは三人しかいないでござる。通信士と医師はここには……」

魔導長「だーかーらー。そこに二人いるじゃないの!」

そう言って魔導長が指差したのは、

竜子「……は?」

代表「ナンデス?」

63: 2013/06/11(火) 00:45:37.69 ID:msJPYGRP0
382

--竜骸の渓谷--

魔導長「五人でパーティ組めばいいの。昔は一緒に暮らしてたみたいだし、なんとかなるでしょなの」

侍「いやいやいやいや無理っす無理っす、そんな簡単に組めるもんじゃないっすから連携とか」

竜子「いかれてんのかこの女! 私はこいつらに襲撃を受けてる身なんだぞ!?」

代表「まぁ、そう、よね……」


魔導長「じゃあこのまま仲良く氏ぬの?」


竜子「!……」

賭博師「……」

魔導長「嫌でしょ? どうせなら力を合わせて仲良く生き残ったほうがおりこうさんだと思うなの」

64: 2013/06/11(火) 00:46:55.99 ID:msJPYGRP0
383

--竜骸の渓谷--

擬似魔王ケルベロス「ぎゅぎゅぎゅぎゅうるるるあああ!!」

ぎぃぃいいん

再びケルベロスは魔力を圧縮し始める。

侍「! どうやら考えてる暇はなさそうでござるぞ!!」

賭博師「そーみたいだなぁ」

符術師「お前らもいいな!? 今は事情は後にしろ!! 私も後にする!!」

竜子「……くそ人間どもめ……やっかいごとを持ち込んできやがって……!」

どがっ

竜子は地面を殴る。

代表「まさか……こんなことになるとは」

ぎぃぃいいん!!

魔導長「充電開始!」

65: 2013/06/11(火) 00:48:02.51 ID:msJPYGRP0
384

--竜骸の渓谷--

侍「とりあえずあの攻撃どうするでござる? 拙者じゃ弾けないでござるよ」

竜子「……私には氷の盾の魔法があるけれど、あれ相手じゃさすがに強度に問題がある……」

代表「……それは確か一定確立で攻撃相手に反射するんだったよね?」

竜子「……あぁそうだ」(こいつ私について完全に調べてきてるみたいだな)

代表「なら簡単だ、賭博師君、君が確立を操作してあげればいいだけさ」

賭博師「そうなるか。よし、盾だしてくれ」

竜子「……氷属性反射盾、レベル4」

ヴぃきヴぃきヴぃき!!

符術師「ん……魔力の練り、量……強力だな。こんなもんがあれば確立操作しなくても防げるんじゃ?」

66: 2013/06/11(火) 00:49:10.62 ID:msJPYGRP0
385

--竜骸の渓谷--

擬似魔王ケルベロス「ぎゅろおおおおおおおおおおおおお!!」

ぎゅいん!!

ドッがごアアアアアアアアアアアアああああああああああああ!!!!

符術師「あ、わりぃ前言撤回。こりゃむりだな」

どおおおおおおおおおおおおおおん!!

魔力砲撃の直撃を受けた盾はあっという間にひび割れて、今にも壊れそうになる。

竜子「おい賭博師!! 早くしろ!!」

賭博師「スキル運操作!」

賭博師のスキルを受けた盾は不思議な光を放ち、ケルベロスの放った攻撃をそのまま跳ね返した。

んんんぎゅぅううおおおお!!

擬似魔王ケルベロス「んぎゅ!?」

どおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!

賭博師(……久しぶりに、名前呼ばれたな)

魔導長「あと9ターン」

67: 2013/06/11(火) 00:50:05.32 ID:msJPYGRP0
386

--竜骸の渓谷--

擬似魔王ケルベロス「あぎゅああああああ!!」

自分の放った特大の魔力がケルベロスの体を破壊する。だが。

ぎゅじじじ

賭博師「再生能力か。困ったな。こりゃどれだけやっても終わらないんじゃないか……?」

擬似魔王ケルベロス「亜アアアアあああああああああああああああああああ!!」

ズシン

ケルベロスは前足を地面に叩きつけて四速歩行になり、そして

擬似魔王ケルベロス「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃあああああああああああ!!」

突進する。

68: 2013/06/11(火) 00:51:39.77 ID:msJPYGRP0
387

--竜骸の渓谷--

ズシンズシンズシン!!

竜子「これじゃあもう、盾で跳ね返す戦法はもう無理だな……」

代表「そうだね。じゃあ、散開、と行きたいところなんだけど」

魔導長「……」

きゅいいいいん

侍「駄目でござるよ。魔導長殿を守らねばっ!!」

シャキン!!

賭博師「うわぁ、いやだぁおっかねぇ……あんなのと戦わなきゃいけないだなんてよぉ」

符術師「うるせぇ! たまきんついてるなら腹をくくれ!」

賭博師「とっちゃおうかなぁ……」

69: 2013/06/11(火) 00:52:33.50 ID:msJPYGRP0
388

--竜骸の渓谷--

ざざざざ

刀を抜いてケルベロスに向かっていく侍。

侍「先手は拙者がもらうでござる! スキル、空振り!」

シャッ!!

空を裂く斬撃がケルベロスを襲う。

ブシャッ!!

しかし傷は浅く、それもすぐに修復してしまう。

侍「ぬぅ、なんのダメージにもならないとは……少々拙者ショックにござる」

擬似魔王ケルベロス「具アアアアあああああああああああああ!!」

70: 2013/06/11(火) 00:54:03.84 ID:msJPYGRP0
389

--竜骸の渓谷--

侍「ならば、スキル、地裂!!」

ざんっ!!

侍が地面に刀を突き刺すと、

ボコボコボコボコボコ!!

擬似魔王ケルベロス「!?」

ドガガァアン!!

地面がひび割れ、せりあがり、ケルベロスの前足が完全に地面に埋まってしまう。

符術師「おし、俺はケツを叩く、いでよ、爆弾なめくじ!!」

跳躍して大量の札をばら撒くと、ケルベロスに無数のなめくじが降り注いだ。

ドガガガガガガガガガガアァアアン!!

擬似魔王ケルベロス「ぐあああああああああああああん?!!」

侍「続いてスキル、百突き!!」

魔導長「あと8ターン」

71: 2013/06/11(火) 00:54:37.00 ID:msJPYGRP0
390

--竜骸の渓谷--

ドズズズズズズズズズズズズズズ!!!!

侍は至近距離からケルベロスの右前足に突きのラッシュ。さすがの再生能力も間に合わず、

ドブチィッ!!

擬似魔王ケルベロス「ッッ!!」

とうとう体から分離した。

竜子「ふん、私もいくぞ。スキル」

ビキビキビキ!!

竜子の両腕に冷気が渦巻く。

竜子「スキル、氷拳!!」

ドゴオオオオオンン!!

竜子の右拳がケルベロスの頭部の一つを捉える。

72: 2013/06/11(火) 00:56:23.70 ID:msJPYGRP0
391

--竜骸の渓谷--

擬似魔王ケルベロス「ぎゅはっ!?」

竜子「からの、ラッシュ!!」

ドゴッ、ドッ、ゴガガガガッガガガガガッ!!

竜子「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

殴りつけるたびに氷った部位が広がっていく。

びきききっ

擬似魔王ケルベロス「ぎゆぁあ!」

竜子「っ!」

ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ケルベロスの頭の一つが眼窩からビームを放つ。

どふぅんッ!!

竜子「ぐっ!!」

それは竜子の右肩をかすめていった。

魔導長「あと7ターン」

73: 2013/06/11(火) 00:57:06.71 ID:msJPYGRP0
392

--竜骸の渓谷--

竜子(今の攻撃、完全にやられていた……私が超反応でよけた……いや、違う)

賭博師「うおーみんながんばれー」

代表「賭博師君はいかないの?」

賭博師「俺が行っても足手まといだし」

竜子「……そういうことか……」

ぼごごっ

侍「! やつめ、地面から足を引き抜いてしまったでござる」

擬似魔王ケルベロス「ぎゅる、るるるぅ……」

黒いもやのような尻尾をふってケルベロスはよだれをたらしている。

74: 2013/06/11(火) 00:57:50.88 ID:msJPYGRP0
393

--竜骸の渓谷--

魔導長「あと6ターン」

擬似魔王ケルベロス「くぱぁ」

ケルベロスの三つの口が開口し、それぞれ属性の違う魔力を溜め始める。

符術師「三属性複合攻撃魔法か! とめねぇと次は防げねえぞ!! ドロー!!」

符術師が引いた札は、

符術師「……ふん、来たか相棒!!」

符術師は引いた札を空へ向けて、高らかにその名をうたう。

符術師「こい!! デッドラ!!」

きゅぴーーん!!

デッドラ「ぐおおおおおおぉぉおお!!」

75: 2013/06/11(火) 00:58:32.98 ID:msJPYGRP0
394

--竜骸の渓谷--

符術師「デッドラ! あいつを石化させちまえ!!」

デッドラ「うきゅうういいいいい!!」

符術師の宣言とともにデッドラの瞳が怪しく光る。

ビキィィイイイン!!

擬似魔王ケルベロス「!?」

びきぴきぱききっ

ケルベロスの体は一瞬で石化してしまった。

符術師「おっ? なんだ……てっきり耐性でもあって無効化されちまうかとおもったが」

侍「石化は耐性ないと即氏能力でござるからなぁ」

……びき

魔導長「あと5ターン」

76: 2013/06/11(火) 00:59:17.03 ID:msJPYGRP0
395

--竜骸の渓谷--

ばっきゃあああああああああああああん!!

擬似魔王ケルベロス「ぐるるるああああぁああぁ!!」

石化も氷結も吹き飛ばし、再びケルベロスは咆哮する。

符術師「ぐ、やっぱだめか」

代表「いや……一旦はちゃんと利いたんだろうね。ただすぐに耐性がついたんじゃないか?」

賭博師「おいおい、ってことは同じ技つかえねぇじゃないの」

代表「そうなるね」

きゅいーん!!

魔力の集約を再開したケルベロス。

代表「よし、じゃあ……独裁者の言」

ずぅううん!!

擬似魔王ケルベロス「ぎゅぴっ!?」

代表の言葉を聞いたケルベロスは強制的に伏せの体勢に。

魔導長「あと4ターン」

77: 2013/06/11(火) 01:00:36.63 ID:msJPYGRP0
396

--竜骸の渓谷--

代表「少しだけ僕が抑えておくけど、これもすぐに跳ね返されちゃうと思う。みんなも全力で行った方がいいよ、もう小出ししている状況じゃない」

侍「……で、ござるな。なら次は拙者いくでござる。拙者史上、最大の斬撃をご馳走してくれるでござるよ」

そういうと侍は精神を集中していく……。

擬似魔王ケルベロス「すぎゃああああああああ!!」

ぶわっ!!

代表「ちぇっ、思った以上に早いね。次頼んだよ」

侍「任せるでござるよ。スキル、主水セレクション!!」

きぃん

擬似魔王ケルベロス「」

刹那の瞬間に放たれたいくつもの必殺の斬撃がケルベロスをばらばらにする。

ずる……ずずーーーんん

魔導長「あと3ターン」

78: 2013/06/11(火) 01:01:43.92 ID:msJPYGRP0
397

--竜骸の渓谷--

ず、ずずずずるるるるる!!

しかし、吹き飛んだ肉片が全て胴体に向かって触手をのばし、重なり、また一つになっていく。

侍「ふぅ……対軍スキルでござるのに効果薄……次頼んだでござる」

竜子「ん?」

符術師「ん?」

賭博師「ん?」

侍「あれ? 次の準備できてないでござる?」

擬似魔王ケルベロス「ぎゅおおおおおおお!!」

ケルベロスはまたもや完全な体に復活する。

魔導長「あと2ターン」

79: 2013/06/11(火) 01:02:38.38 ID:msJPYGRP0
398

--竜骸の渓谷--

符術師「くっ、じゃあ俺がいってやる!! ファイナルドロー……これは!」

擬似魔王ケルベロス「ぎゅいいぁああるあああ!!」

竜子「遅ぇ!! 奥義、絶対零度ビーム!!」

かっ!!

バッキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

びゅおおおおおおおおぅぉぉおぅぅぅうう……

侍「う、うおう……な、なんて強力な魔力攻撃……広範囲で高威力かつ強制氷結……おっそろしい」

代表(……これを最初に撃たれていたら僕たちは速攻で終わりだったわけなんだが……)

竜子「……」

びきっ

魔導長「あと1ターン」

80: 2013/06/11(火) 01:04:07.32 ID:msJPYGRP0
399

--竜骸の渓谷--

擬似魔王ケルベロス「GUぎゃああああああああああああ!!」

ばきばきばきばき

竜子「これでもほぼノーダメ……はぁ。自信がぶっ壊れそうだぜ」

符術師「よ、よし!! 次こそ俺の番だぜ!! 天を見ろ!! 星よ輝け!! 我が右手に光るのは」

賭博師「奥義、賭博場」

ぶにゅむぅ

符術師「……え?」

辺り一帯を賭博師の魔力が包み込んだ。

賭博師「あー……これはサイコロが権力を持つ戦闘空間なんだけど……説明しても意味ないよな。その手じゃサイコロ振れないしな」

侍「前足で蹴ることはできるんじゃないでござるか?」

賭博師「駄目だ振らなきゃ。そういうルールなんだから」

じじ、じじじっ

賭博師「ま、俺の魔力だけじゃ数秒展開が関の山~」

びゅぅん

魔力フィールドは消え去った。

符術師「……」

寂しそうにカードを持って立ちすくむ符術師。

81: 2013/06/11(火) 01:04:48.87 ID:msJPYGRP0
400

--竜骸の渓谷--

魔導長「0」

びきーーーーん

侍「!?」

符術師「! ……溜まったか」

賭博師「ミッション達成か……さぁこれで倒せないとかはやめてくださいよ?」

魔導長「まかせてなの」

直視することもできないほど、今魔導長は光り輝いている。見るものを癒す、優しくも力強い光。

擬似魔王ケルベロス「ぐ、ぐひゅる……」

さすがのケルベロスも後ずさり。ケルベロスからしたらあれは悪魔の光なのだ。

竜子「……どっちが化物だっつーの」

代表「はは、まったくだ」

魔導長「いくよ、全力全開っ!!」

92: 2013/06/17(月) 20:52:45.93 ID:rOfiXxG/0
401

--竜骸の渓谷--

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

光が魔導長の杖の先に集まっていく。

擬似魔王ケルベロス「ぐ、ぐ……ぎしゃああああああああああああ!!」

ケルベロスは怯えながらも魔導長に飛び掛った。

魔導長「……終わりだよ。奥義」

ギィイイイイイイイン!!!!

光の玉は急激に膨張し、そして圧縮される。

魔導長「星☆光☆破☆壊☆砲!!」

かっ

93: 2013/06/17(月) 20:53:27.26 ID:rOfiXxG/0
402

--過去、学校--

シOタ代表「てんてー! いかないでよぉー!」

口リ符術師「やらー! ずっといっしょにいるのぉーお! びえー!!」

夕暮れの校庭で、少年少女達は泣きながらある大人に走りよった。

先生「お、おっとっと! こらこら君たち……弱ったな……」

先生と呼ばれた青年は困った顔で頭をかく。

シOタ侍「しぇ、しぇんしぇい、いつでもけいこつけてくれるって、いってたでごじゃるのに……ぐしゅ」

口リ通信師「ふぇぇぇん! ふぇぇぇん!」

地団駄をしながら泣いている通信師。

94: 2013/06/17(月) 20:54:04.59 ID:rOfiXxG/0
403

--過去、学校--

シOタ賭博師「ぼくたちのこと、きらいになったの……?」

先生「おいおい待っておくれよ、どうしてそんな話になるんだい?」

先生はしゃがみこみ、優しく微笑んだ。

シOタ医師「ふぁーぶるすこ……ふぁーぶるすこ……」

口リ通信師「うぅぅ、うぅぅ!」

しっかり先生を捕まえて離さない賭博師達。

先生「僕はね、ただ山の向こうの学校も見ることになっただけなんだよ。心配しなくても君たちの前からいなくなったりしないよ? ちゃんと明後日には帰ってくるから」

シOタ大豚亜人「ぷぎっ、ぷぎっ……」

口リ竜子「……」

口リ符術師「ほっ、ほんとぉ……?」

先生「あぁ本当だとも。もう少しして向こうが落ち着いたら君達を連れていくよ。向こうの学校の子達も中々個性的でね、戦士君は侍君と同じで今から修行しているんだよ? きっといい友達になれる」

シOタ侍「ぐしゅっ、ぐしゅ」

95: 2013/06/17(月) 20:54:33.94 ID:rOfiXxG/0
404

--竜骸の渓谷--

ドゴオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

擬似魔王ケルベロス「ぎゃ、ぎゃひぃっ!?」

超密度の魔力攻撃がケルベロスを押し戻す。

ドギャギャギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアア!!!!

擬似魔王ケルベロス「っぎぃ!! ぎやああっ!!」

ズズゥン!! ドオォォン!!

ケルベロスは一歩、また一歩と後ろに下がるしかない。

96: 2013/06/17(月) 20:54:59.66 ID:rOfiXxG/0
405

--過去、学校--

口リ竜子「……」

シOタ賭博師「うわぁああぁあん!! せんせい、せんせいい!!」

先生「がっ、がふ……」

竜子の右腕が先生の腹部を貫いている。

ずぼっ

ぼたたっ

竜子が右腕を引き抜くと、傷口から血があふれだし地面を染める。

口リ通信士「りゅ、りゅうこちゃん……なんで」

口リ竜子「……」

97: 2013/06/17(月) 20:55:29.38 ID:rOfiXxG/0
406

--過去、学校--

シOタ侍「しぇんしぇー! しぇんしぇー!!」

先生「ぐふっ、だ、大丈夫だよ。急所は外れてる……それより、竜子ちゃん」

口リ竜子「っ!?」

先生は震えながら立ち上がり竜子に近づいていく。

口リ竜子「……っ」

先生「……ごめんね。僕は少し、無責任だったね」

口リ竜子「!?」

先生「君のことを、もっと理解してあげるべきだった……ぐっ!!」

どざっ

口リ竜子「あっ!!」

跪いた先生を見て咄嗟に手を伸ばそうとしてやめる竜子。

98: 2013/06/17(月) 20:55:59.26 ID:rOfiXxG/0
407

--過去、学校--

シOタ医師「せ、せんせぇ!! い、いまおいしゃさんよぶから!!」

口リ符術師「わたしもいぐっ!!」

走っていく二人。

先生「はははっ、魔法もうちょっと勉強しておくべきだったなぁ」

情けない、と汗を流して笑う先生。

シOタ代表「なんで、なんでこんなことしたの竜子ちゃん……」

みんなの視線が竜子に集まる。

口リ竜子「あっ……わ、わたし」

言葉につまり竜子の足が震える。

先生「……いいんだみんな。竜子ちゃんが悪いわけじゃないんだよ」

口リ竜子「!?」

99: 2013/06/17(月) 20:56:25.59 ID:rOfiXxG/0
408

--過去、学校--

先生「竜子ちゃんは本当にいい子なんだ……。これは僕のせいでもあるし、何か悪いことをたくらんで竜子ちゃんをだましてる人がいるんだ……だから君達、竜子ちゃんをそんな目で見ちゃだめだ。彼女は君達の友達で、仲間なんだから」

シOタ大豚亜人「で、でも、これって……あの……竜亜人と一緒なんじゃ」

口リ竜子「」

先生「!? こ、こら! そんなことは言っちゃ駄目だって教えたでしょ!?」

口リ竜子「っ」

だっ!!

竜子はそのままその場から駆けていく。その速度は既に人が追えるレベルのものではなかった。

ひゅん

先生「くっ……はぁ……人を導くって、難しいなぁ」

シOタ賭博師「せ、先生、血が止まらないよ!?」

先生「大丈夫、安静にしていればすぐにお医者様が来てくれるさ。賭博師君、悪いけど保健室に行って保健の先生から……あぁ、今日はもう誰もいないんだった」

シOタ賭博師「タオルとか包帯とか薬もってくればいいんでしょ!? とってくるよ!!」

100: 2013/06/17(月) 20:56:56.55 ID:rOfiXxG/0
409

--過去、スラム街--

竜子「はっ、はっ、はっ……」

竜子は血に塗れたまま町を走り、そして黒い馬車を見つけて止まった。

ある館の主「ほっほっ。お疲れ様でした。竜子さん」

馬車の主は馬車の中から竜子に話しかける。

ある館の主「既に報告は受けています。お見事でした。それではこれより貴女方を約束の場所へ連れて行きましょう。ささ、お乗りください」

竜子「……もう一つの約束は、大丈夫なんだろうな」

ある館の主「もう一つの約束……とは?」

竜子「あの学校にはもう手を出さないってことだ! もちろん先生にも!!」

ある館の主「……えぇえぇもちろん。約束は守りますとも。ちゃんと医者も手配していますよ」

竜子「……なら、いいけど」

ある館の主(手出ししませんとも。そう例え、治療であろうとも、ね)

101: 2013/06/17(月) 20:57:22.95 ID:rOfiXxG/0
410

--竜骸の渓谷--

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

擬似魔王ケルベロス「っ!! っ!!」

肉片が弾け、徐々に体が小さくなっていくケルベロス。
黒いもやのガードでは防ぎきることなどできないのだ。

魔導長「ああああああああああああああああ!!!!」

ぎゅむっ!!

魔導長はトドメとばかりに威力を強めた。

102: 2013/06/17(月) 20:58:27.00 ID:rOfiXxG/0
411

--過去、スラム街--

東の老警備兵「むごい話だな……」

東の新警備兵「お疲れ様でした。どうでした……?」

東の老警備兵「被害者は学校のあの先生だ。やったのは生徒の亜人の子らしいが、何がひどいってその後のことだ」

東の新警備兵「後?」

東の老警備兵「氏因は出血氏。事件が起きてから四時間後に氏亡したんだと。生徒がすぐに医者を呼びに行ったのにどこも休みでいなかったんだとさ」

東の新警備兵「はぁ……なんだか奇妙な話ですね。それじゃあ必要なのは蘇生魔法の使い手になってくる」

東の老警備兵「……蘇生魔法使いが現場に到着したのは、被害者が氏亡してから二十五時間だったんだとよ」

東の新警備兵「!? はぁっ!? そんなのありえないですよ!? いくらなんでも、そんな……じゃあ間に合わなかったんですか?」

東の老警備兵「現場には氏後二十五時間が経過した被害者と、血まみれの児童達がずっと泣いていた……地獄絵図だったよ」

東の新警備兵「……」

103: 2013/06/17(月) 20:58:57.75 ID:rOfiXxG/0
412

--竜骸の渓谷--

ドオォンドォオオオオオン!!!!

擬似魔王ケルベロス「          」

最後の力を振り絞りぼがくケルベロスだったが、それももはや時間の問題。

ギュゴッゴオゴオオオオオオオオオオオオオオン!!

代表「……」

竜子「……」

五人は魔導長の放つ眩い光と、それにかき消されそうになっている黒い巨人を見ていた。

104: 2013/06/17(月) 20:59:25.70 ID:rOfiXxG/0
413

--過去、学校--

事件より五年後。

通信士「この学校もとうとう取り壊されるんですね」

符術師「新しい生徒が入ってこないんじゃそりゃそうなるだろ。しかたねぇ」

医師「でも、仕方ないですましちゃいけないこともある」

侍「……あの時のことは今でも思い出すでござる。あれは明らかにおかしかった。きっと何か陰謀があったのでござろうな」

賭博師「……」

五人は校庭の隅にある石の前に立っている。

賭博師「大人は信用できない……俺達がこの国の中枢に入って世界を変える!!」

105: 2013/06/17(月) 20:59:53.55 ID:rOfiXxG/0
414

--竜骸の渓谷--

しゅぅううううぅぅ

代表「! あれは……」

擬似魔王ケルベロス「ぎっぎぎ」

黒いドロと王冠が爆心地に残っている。

賭博師「おいおい、あれをくらってまだ耐えるってか? どんだけだよ」

侍「! いかん、どうやら再生しようとしているようでござるよ!?」

魔導長「これでいいなのっ」

そういうと魔導長はふわりと飛んでケルベロスの傍に着地。そして、

魔導長「魔王の骨、ゲットなの」

王冠を取り上げた。

106: 2013/06/17(月) 21:00:28.55 ID:rOfiXxG/0
415

--竜骸の渓谷--

擬似魔王ケルベロス「ぎ、ぎぃい……」

黒いもやが消えていき、そこには

代表「熊亜人君……それに護衛姉妹君達も」

魔導長「私くらいになればコアを消さずに倒すことも可能なのっ。さぁ一件落着にしちゃおうなの」

魔導長は黒い袋に魔王の骨をしまうと向き直った。

魔導長「さぁ、代表君。竜子ちゃんにごめんなさいしなさいなの」

侍「は?」

賭博師「へ?」

符術師「ほ?」

107: 2013/06/17(月) 21:01:03.29 ID:rOfiXxG/0
416

--竜骸の渓谷--

代表「……い、いやいや……いきなりそんなこと言われましても。というか謝るレベルで済む問題じゃないし、それに僕らは」

魔導長「悪いことしたらごめんなさいするのが筋でしょなのっっ!!!!」

びりびりびり!!

声に魔力をのせた魔導長の一喝は五人をその場に倒れこませるほどの威力があった。

代表「……ぐ」

魔導長「……引けなくなっちゃってるのはわかるなの。君はたくさんの悲しみを背負った人なの。人に迫害されたもの、亜人に迫害されたもの……心に傷を負った色んな人たちの心のよりどころになってきたのは知っているなの」

竜子「……」

魔導長「組織を巨大にするために金儲けを黙認し、たくさんの悲しみを生んだのも事実……。君が歩いた道は正しいとはおせじにも言えないなの。でも全ては更に巨大な悪を倒すため……そのために君は下水の道を歩むことを選んだ」

賭博師「……」

魔導長「君も袂を分けたとはいえ、国のために、先生の教えを守るために生きていたなの。……やり直すなら今なの」

108: 2013/06/17(月) 21:01:58.35 ID:rOfiXxG/0
417

--竜骸の渓谷--

代表「……そんな全うな考え私は考えてませんよ? 私はただ、金儲けしか考えてない人間です」

魔導長「人間は歪むものなの。多少はしょうがないの」

賭博師(いやいやいやいや)

侍(多少って言うか、被害甚大っていうか)

賭博師(器でかいのか馬鹿なのか)

竜子(住処攻撃されて同胞をひどい目に合わされたのに)

魔導長「返事は決まったなの?」

代表「……すいませんがその言葉には従えません」

侍「!」

代表「貴女も言った通り、私は色んな悲しみを、恨みを背負っています。僕だけがそっちにいくわけにはいかないんです」

魔導長「みんなもこっちにきたらいいなの」

代表「……人によってはもう戻れないんですよ」

109: 2013/06/17(月) 21:03:05.21 ID:rOfiXxG/0
418

--竜骸の渓谷--

代表「私の団体には、竜亜人によって妻と息子夫婦、それと孫を殺された七十歳の人がいます。彼はもう、竜亜人種を恨まずには生きていけないんです」

竜子「……」

代表「生き続ける限り憎み続けるんです。そしてそれはまた誰かを巻き込み連鎖となる」

魔導長「……そう、君は自分自身を含む全ての亜人保護団体構成員を……頃すつもりだったのね」

賭博師「!?」

魔導長「連鎖の終点である魔王に全てを押し付けて」

代表「……」

魔導長「世界中全ての回復を禁止にして回復魔法で金稼ぎ、というのは嘘。自動蘇生を封じ、竜亜人を頃すためにおこなった、それすらも嘘だったのね」

竜子「……ふざけたやつだ。そんなことのために私らの住処を氏に場所にしようとしていたのか」

竜子は怒りを隠せない。

110: 2013/06/17(月) 21:03:49.28 ID:rOfiXxG/0
419

--竜骸の渓谷--

竜子「お前の身勝手な行動のせいで一体どれだけ不幸な人間が増えたんだ!?」

侍(お前さんは外の世界知らないんじゃない? のでござる)

賭博師(まぁ言わしとこうぜ)

竜子「どんどんどんどん雪だるま式に被害者を増やしていって、全部頃す気だったのかよ!!」

代表「……真相を探っていくうちに、誰が最初の悪なのかわからなくなったんだ」

どがっ!!

竜子は代表をぶん殴る。

ずざざー!!

符術師(うわ、非戦闘員の代表に竜亜人のパンチとか。氏んだな)

代表「ぐっ……」

符術師(あれ?)

111: 2013/06/17(月) 21:05:44.70 ID:rOfiXxG/0
420

--竜骸の渓谷--

竜子「許さない。お前は……お前は!!」

魔導長「はいストーップなの」

ふわり

魔導長は代表と竜子との間に割って入る。

魔導長「代表君、残念なの。せっかくの申し出を受け入れてもらえないみたいで悲しいの」

代表「……はい」

魔導長「でも殺させはしないの」

竜子「……え」

魔導長「そもそも私達人類はこんなことしている場合じゃないの。本当の魔王が迫ってきている……今はどんな戦力も欠かすことはできないの」

そう言って魔導長は竜子の顔を見る。

魔導長「だから今から竜亜人種はうちの国民なの。世界存亡の危機に腐らせておくにはもったいない戦力なの」

竜子「へ?」

魔導長「で、亜人保護団体は悪いことしたからうちの国でこき使うなの。わかったの?」

代表「……へ?」

魔導長「君達の罪は人類存続が出来た時に裁いてあげるから。罪滅ぼしってことで人類救っちゃって欲しいの」

魔導長はにっこりと微笑む。

侍(あー……このためにこの人は……)

112: 2013/06/17(月) 21:06:34.16 ID:rOfiXxG/0
二部の本筋は終わったかな?
それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m


名前・男A、賢者、新王
職業・賢者
タイプ・魔法、守
属性・水
体力・D
攻撃性能・E
防御性能・B
速度関係・D
魔力関係・B
精神関係・C
固有能力・C

117: 2013/06/24(月) 19:13:56.94 ID:RPC+nsdg0
421

--???--

魔王勇者「……」

魔王勇者は窓際で黄昏ているツインテに近づいていく。

ツインテ「……」

魔王勇者「ツインテ……」

ツインテ「ボク……知りませんでした。魔王勇者さん達が……あんなことをしているなんて」

魔王勇者「……」

ツインテ「ボクは魔王勇者さん達と会って、そして話をして魔王側を知りました……今までの価値観を壊されました。だって、皆さん本当にいい人達でしたから」

魔王勇者「……」

ツインテ「でも、氏んだ人を、命をまるで人形のようにもてあそぶのはよくないと思います!!」

ツインテは涙を零しながら魔王勇者の顔を見た。

118: 2013/06/24(月) 19:14:32.58 ID:RPC+nsdg0
422

--???--

魔王勇者「……価値観の違いよツインテ。私達は命をもてあそんでなんていない」

ツインテ「え……」

魔王勇者「私達は真実を知らされずに終わってしまった命にもう一度チャンスを与えているだけ。それに納得できないなら私に付き従わなくてもいいと言ってあるのよ」

ツインテ「え、そう……なんですか?」

魔王勇者「えぇ。私達は自由意志を尊重している。あなたが見てきたこの魔王軍の中で、誰か一人でも嫌々働かされているのがいた?」

ツインテ「……いえ」

魔王勇者「……確かに私達は多少なりとも強引な手段を使ってる。これを決して綺麗な手段だとは思わないわ。でも」

魔王勇者はそっとツインテの頭を引き寄せて自分の絶壁に押し付ける。

魔王勇者「誰だって、氏んだままはいやでしょ?」

ツインテ「……うっう……」

絶壁が涙でぬれていく。

119: 2013/06/24(月) 19:15:20.92 ID:RPC+nsdg0
423

--???--

ばたーん!!

銀蜘蛛「オリャー! ア、ツインテチャンミッーケ!! アッ!? ゼッペキチャンガナカシテルッ!?」

機械仕掛けの蜘蛛が扉を開けて入ってくる。

魔王勇者「ふぇっ!? ち、違うってば! 私が泣かしたんじゃないからっ!!」

ウェイトレス「なんだとー? こら絶壁、ツインテ坊泣かすんじゃないよ。せっかく肉まん作ってきたのに!」

続いて大きな皿を持ったウェイトレスが部屋に入ってくる。

魔王勇者「……え。あんたが料理……したの?」

ウェイトレス「ん? あぁ。ツインテ坊が落ち込んでるって腹黒から聞いたからさ。ここは私が腕によりをかける番だと思ってさっ!」

桃鳥「す、すいません……ウェイトレスさんには気持ちだけで十分ですよって言って止めたんですけど……。や、やっぱ私のせいですか? って私思っちゃったりしてます」

その後ろを泣きながら鳥の亜人少女が付いてきた。

ツインテ「あ、あはは……」

気付けばツインテは泣くのをやめていた。
泣いている暇がないほどの緊急事態になったのだから。

120: 2013/06/24(月) 19:15:52.58 ID:RPC+nsdg0
424

--???--

銀蜘蛛「ア、ジャ、ジャア、ボクハサンポニデモイッテコヨウカナッ!!」

がしゃぁあん!

窓を割ってアンカーを飛ばす銀蜘蛛だったが、

しゅる

銀蜘蛛「ンギッ!?」

銀蜘蛛は動きを止める。

ウェイトレス「何言ってるんだよ。私がそんな薄情に見える? ちゃんとあんたの分も作ってきたからさ」

銀蜘蛛「ウ、ウゴケナイ……イ、イヤイヤ、ボクロボットダシッ!? ソウイウノハタベレナイカラッ!!」

ウェイトレス「だーいじょうぶ大丈夫。あんたのだけはちゃんと味付けオイルにしておいたからさ!」

銀蜘蛛「ナニガダイジョウブナノッ!?」

桃鳥「すいませんすいません……」

魔王勇者「……どうしよう」

魔王勇者はがたがたと震えて汗を流している。

121: 2013/06/24(月) 19:16:30.86 ID:RPC+nsdg0
425

--???--

銀蜘蛛「アッアーッ!! ダ、ダメダッテバッ!! ヤメテッ! ソコハイラナイッ! ソコハイラナイカラッ!! ソコハイシュツコウダカラッ!!」

ウェイトレス「なーに腹に入っちゃえば一緒だって」

銀蜘蛛「ンナワケナイデショウッ!? アッ!? アッ、アアァ、アーーーーッ!!」

魔王勇者「ご、強引に押し込みよった……」

ツインテ「ま、魔王勇者さん……」

ぎゅっ

ツインテは魔王勇者にしがみつき一緒に震えている。

魔王勇者「あれを食らったらいくら魔王でも……」

魔王勇者はツインテの顔を見つめる。

ツインテ「うぅ、ううう……」

魔王勇者「……そうね、私がしっかりしなきゃ」

魔王勇者の瞳に魂が宿る。

122: 2013/06/24(月) 19:17:51.34 ID:RPC+nsdg0
426

--???--

魔王勇者「安心してツインテ。ちゃんとあなただけは逃がしてあげる。たとえ、何を犠牲にしてでも!!」

ウェイトレス「はいつぎー、これ味なんだったっけ? まぁいいかー」

桃鳥「んむー!? ん、むぅむーー!!」

じたばたじたばた

銀蜘蛛「システムに重大なエラーが発生しました。アンインストールを推奨します」

魔王勇者「……ごくっ……ツインテには元々頼みたかったことがあるのよ。もうフォーテには言ってあるから。だから……だから……後はお願いね」

優しく微笑む魔王勇者。

ツインテ「そ、そんな、そんな魔王勇者さんはどうするんですか!?」

魔王勇者「魔王が退くことは許されない!」

ぶんっ

魔王勇者はツインテを窓の外に放る。

123: 2013/06/24(月) 19:18:29.37 ID:RPC+nsdg0
427

--???--

ツインテ「ま、魔王勇者さんっ!!」

落ちていくツインテと窓から身を乗り出す魔王勇者。

魔王勇者「フォーテ!! 今朝言っておいたことお願いねっ!!」

ウェイトレス「」

ゆらっ

魔王勇者「はっ!?」

がばっ!!

魔王勇者「!?」

ウェイトレスは後ろから勇者の口に肉まんを押し付ける。

ツインテ「ひっ!?」

魔王勇者「うっぐっ!? がっ、うあ……う」

抵抗もむなしく、魔王勇者は力なく窓の内側へと消えていく……。

ツインテ「いやあああああああぁああああぁああああ!!」

124: 2013/06/24(月) 19:19:10.37 ID:RPC+nsdg0
428

--???--

ズズズズズズズズ

フォーテ「やっほーお姉ちゃんっ!!」

落下していくツインテの隣に闇が広がり、そこからフォーテが顔を出す。

フォーテ「災難だったねぇ……こんなに美しくて可憐なお姉ちゃんにあんなものを食べさせようなんて……さっ、いくよっ!? 僕達に課せられた指名はねっ?」

ウェイトレス「逃がさないよ」

ツインテ、フォーテ「「!?」」

ひゅんっ!!

ウェイトレスは肉まんをもったまま急降下、ツインテの眼前にまで迫ってきていた。

フォーテ「お姉ちゃんには触らせないっ!!」

ズズズッズズ!!

125: 2013/06/24(月) 19:20:39.08 ID:RPC+nsdg0
429

--呪空間--

闇が急速に広まり、ツインテをその中に確保する。

フォーテ「ふぅ……いくらウェイトレスでもこの呪空間の中までは」

しゅばばばっ!?

フォーテ「!?」

その時、一瞬でフォーテの体に無数の糸が絡まった。

ぎしっ

フォーテ「そ、そんな、嘘だ……」

ツインテ「ふぉ、フォーテちゃんっ!?」

ぎしっ

ウェイトレス「お残しは、許さないよ」

ぎぎぎぎぎぎぎぎぃ

フォーテ「そんなっ!? 僕の空間が強引にこじ開けられてるっ!?」

126: 2013/06/24(月) 19:21:07.77 ID:RPC+nsdg0
430

--呪空間--

ぎちぎちちっ

ツインテ「フォーテちゃんっ!!」

フォーテ「し、心配しないでお姉ちゃん……っ、ここは僕が食い止めるからっ!!」

ウェイトレス「? 食い止める? 何を言っているの……?」

ごごごごごごごごご

肉まんを持ったウェイトレスが強烈なプレッシャーを放ちながら空間を捻じ曲げていく。

ツインテ「そんな、でもフォーテちゃんを置いてなんて!!」

フォーテ「……ありがとうお姉ちゃんっ。その言葉を聞けただけでも僕、幸せだよっ」

おぉぉおおおおぉぉぉおお

氏者の腕がツインテに絡みついていく。

フォーテ「あとはその子達に聞いてねっ」

涙の滲んだ瞳でフォーテは微笑んだ。

ツインテ「ふぉ、フォーテちゃああああああああああああああん!!」

127: 2013/06/24(月) 19:21:45.89 ID:RPC+nsdg0
431

--呪空間--

びくっびくっ

桃鳥「」

銀蜘蛛「ががーぴぴー」

痙攣を続ける桃鳥と煙を出している銀蜘蛛。

魔王勇者「がはっ!!……げ、現役の魔王の体力を一撃で0にする料理って……ど、どんだけなの、よ」

じゃー、がちゃ

茶肌「ん」

新聞を持ってトイレから出てきた茶肌は、部屋の現状を見て何が起きたかを察知する。

茶肌「みんな、おかわいそう、合掌」

128: 2013/06/24(月) 19:22:30.41 ID:RPC+nsdg0
432

--呪空間--

ズズズズズ

ツインテ「うっうぅ……皆さん」

めそめそと泣いているツインテの周りを腕たちはぐるぐると回っている。

おおおぉぉおおおお

ツインテ「ぐすっ……そう、ですよね。今は仕事をこなさなくちゃいけないってことは、わかってます、けど……でも」

ツインテはみんなの最後の顔を思い出す。

ツインテ「でも、あんなものを食べさせられちゃうなんてっ!!」

ツインテはあふれ出す涙を止められない。

おおおぉぉぉおおお

腕たちはおろおろと慌ててツインテの周りを回っている。

129: 2013/06/24(月) 19:23:01.51 ID:RPC+nsdg0
433

--呪空間--

ツインテ「え、なんですかこれ」

おおおぉおおぉ

腕たちはツインテに服を渡した。

ツインテ「これを着ろ、って? なぜですか?」

おおぉぉおおぉぉ

ツインテ「最新の防御装備なんですか? ……そうは思えないんですけど……でも確かに魔力が込められている……」

ツインテが渡された黒い服からは魔力が感じられた。

ツインテ「わかりました。じゃあ着てみます」

おおおぉぉおおぉ

ツインテ「この部屋使っていいんですか? わかりました」

おおおおぉぉお

腕たちが手を振る。

ツインテ「……覗かないで下さいね」

おおおぉっ!?

腕たちは汗をかきながら、後ろで持っていたカメラを慌てて隠した。

130: 2013/06/24(月) 19:24:10.24 ID:RPC+nsdg0
434

--呪空間--

しゃっ

ツインテ「ど、どう、でしょうか。これちょっとふりふりしすぎなんじゃないかって、思うんですけど……」

おおぉおぉおカワイイおおおおぉおお

ツインテは黒い色の、ミニスカウェディングドレスへと着替え終わる。

ツインテ「ん……確かにこれは……強くなった気がします」

おおぉぉおぉお

ツインテ「え? もう着くんですか?……わかりました、頑張ります」

ツインテはスカートを握り締め、闇が開くのを待つ。

ズズズズズズズ

ツインテ「……っ」

131: 2013/06/24(月) 19:25:05.35 ID:RPC+nsdg0
435

--集落--

ズズズズズズ……

電王「……ん?……!? あ、あれは!!」

ズズズズズ

集落の真ん中に闇が出現し、それを電王が察知する。

電王「おいおいおいおい、やつらがまたしかけてきたぜぇ!! カブトォォォ!!」

カブト「……言われなくとも気付いている」

V3「今回はどうする……?」

カブト「今までどおりだ。俺が行く」

ざっ

カブトは立ち上がり闇から出てくる者を待つ。

ぽひゅっ

ツインテ「ここで……いいんだよ、ね?」

カブト「……いつもの奴じゃあない?」

132: 2013/06/24(月) 19:26:11.26 ID:RPC+nsdg0
436

--集落--

ツインテ「ここで、いいんだよね?」

おおぉぉおお

親指を立てる腕たち。

ツインテ「うん、じゃあフォーテちゃんたちが来る前に始めちゃおうかな」

しゅんっ、ざっ!!

ツインテ「っ!?」

どこからともなくツインテの目の前にカブトが現れる。人智を超越したそのスピードは、何者であっても見切ることは出来ないだろう。

カブト「……お前……魔王の手の者か?」

ツインテ「は、はいっ。あ、あのお話をしに来ました……」

カブト「話……だと?」

ツインテ「はいっ。魔王側に争う意思はありません、だから貴方達と和平を結びたい、と」

133: 2013/06/24(月) 19:26:42.62 ID:RPC+nsdg0
437

--集落--

カブト「」

眼を見開き絶句するカブト。

ツインテ「あの……だ、だめ、ですか?」

カブト「ふ……ふふ……ふははははははは」

ツインテ「え? あ、あはははは……」

いきなり笑い出したカブトにつられて笑っておくツインテ。

カブト「魔王軍が和平、だと? 冗談にしてはひどすぎるな」

ツインテ「じょ、冗談じゃないですっ!! 本気で言ってるんですよ!?」

カブト「……」

カブトはツインテの右腕に視線をやる。

カブト「……やつの腕か」

ツインテ「え?」

134: 2013/06/24(月) 19:27:18.07 ID:RPC+nsdg0
438

--集落--

カブト「却下だ」

ツインテ「えっ!? な、なんでですか……? これ以上争うのはよそうって言っているんですよ? あなたたちももう戦いたくないでしょう?」

カブト「おばあちゃんが言っていた。人生とは戦いだと。戦わない命は命ではない」

ツインテ「そ、そんな……」


電王「なぁにをちんたら喋ってるんだあいつ? さっさとやっちまえばいいじゃねぇか。普段の奴より弱そうだしよぉ」

V3「……」


ツインテ「……困ります」

カブト「……なに?」

ツインテ「戦いをやめてもらわないと、困るんです」

ツインテの魔力が膨らんでいく。

135: 2013/06/24(月) 19:28:00.76 ID:RPC+nsdg0
439

--集落--

カブト「……なんだ、和平を承諾しないのなら力づくで従わせる気か? おもしろい」

ツインテ「違います……ボクは力づくでなんてこと、したくありません」

ずずず

カブト「……」

ツインテ「でも、この世の中には言ってもわからない人たちもいるから……だからわかってもらうまで、ボクは!」

カブト「KAGEROU!!」

どぅぃうういんん……

ツインテ「  」

カブトがKAGEROUを使った瞬間に時が止まる。
動けるものはカブトのみの世界。

カブト「何か力を使う予定だったのだろうが、どんな効果を持っているかわからないからな」

ざっざっ

カブトはツインテに近づいていく。

カブト「……悪いが、俺達は魔王と分かり合おうだなんて思っちゃいない」

カブトはそういうと手刀を振り下ろし、

ざんっ!!

ツインテ「  」

ツインテの首を刎ねた。

136: 2013/06/24(月) 19:28:56.13 ID:RPC+nsdg0
440

--集落--

……んんぃうぅううんど

再び時が動き出す。

びくっびくっ

ツインテは首を失い、傷口から大量の血を噴出していた。

カブト「……」

カブトはツインテの首を一瞥すると、踵を返して歩き出す。

ツインテ「ぜっ、ぜったい、かいふく、りょういき」

カブト「!?」

ぎゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

カブト「なっ!? 確かにしとめたはずだ……まさか、これは」

カブトはツインテが展開した魔力空間に閉じ込められてしまう。

ツインテ「ごべっ、ごべん、なさい」

首の無いツインテは自分の首を拾って傷口にくっつける。

ツインテ「……ボクは自動蘇生スキル持ちですから」

カブト「くっ! KAGEROU!!」

どぅぃうういんん……んんぃうぅううんど

カブト「……なに? KAGEROUが発動しない!?」

ツインテ「してますよ。してますけど、全部戻っちゃってるだけです」

カブト「!?」

ツインテ「奥義、絶対回復領域。誰かを傷つけることも、誰かに傷つけられることもない、世界で一番平和な空間です」

にこりと笑うツインテの瞳はなぜか暗い闇のよう。

ツインテ「わかってくれるまでだしません。何年でも、何十年でも、何百年でも……」

142: 2013/07/01(月) 22:57:21.91 ID:tkqOy3JC0
441

--集落--

電王「お、おいおいまずいんじゃねぇかありゃ、カブトのやつ変な空間に閉じ込められてやがるぞ」

V3「油断しおって! 外側からどうにかなるか……ためしてみるか」

だだだだだ

ディケイド「先輩方どうかしましたか!?」

電王「おうディケイド、おせぇじゃねぇか! おめーの力を使う時が来たかもしれねーぞ!」

ディケイド「私の、ですか? うわなんか変な空間が!」

V3「! なるほど確かに……BLACKの解除する力ならなんとかなるかもしれないな……」

ディケイド「あれを壊すのにBLACKさんの力を使えばいいんですか?……わかりました、やってみます!」

そういうとディケイドは祈るように手を合わせ目を瞑る。

ディケイド「BLACKさんBLACKさん、力を貸してください」

……ぎゅいいいいいいいいいいん!!

電王(俺ら人造勇者全員の能力を……)

V3(自由に使うことの出来る能力……便利だな)

143: 2013/07/01(月) 22:58:28.87 ID:tkqOy3JC0
442

--集落--

ディキーン!!

ディケイド「ん! 準備完了しました! それじゃあ使います、離れていてください!!」

そういうとディケイドは両手をツインテ達に向ける。

ずずずず

フォーテ「そうはいかないよぉっ」

V3、電王、ディケイド「「「!?」」」

晴天だった空が一瞬で暗黒に染まり、空から無数の腕が生えてくる。

電王「この悪趣味な感じは、やつか!!」

V3「……」

ディケイド「う……何この血なまぐさい臭い」

フォーテ「世界で最も美しく優しいツインテお姉ちゃんの最愛の妹、フォーテちゃん参上っ!」

144: 2013/07/01(月) 22:59:01.50 ID:tkqOy3JC0
443

--集落--

ツインテ「フォーテちゃん……なんて恥ずかしい口上」

ツインテは両手で顔を抑えている。

カブト「!! 奴まで来たのか!」

フォーテ「うぇえぇん。ツインテおねーちゃああん、聞いてよぉ、フォーテ結局食べさせられちゃったよぉぉ」

ツインテ「!!……そんな……可愛そうに……」

フォーテ「今もお腹ごろごろいってるよぉ……うぇぇ……」

カブト(お姉ちゃん……だと?)

フォーテ「あっ! さすがお姉ちゃんっ!! あのめんどくさいカブトをあっさり捕らえちゃうなんて、まるで虫取り名人だねっ!! お姉ちゃんの光り輝く美しさに吸い寄せられちゃったのかなっ!?」

ツインテ「だ、だから外ではそういう恥ずかしいセリフは/////」

V3「わしら相手に余所見とはな」

たんっ

フォーテ「?」

V3は跳躍し、そしてキックを放つ。

145: 2013/07/01(月) 22:59:41.45 ID:tkqOy3JC0
444

--集落--

ゴオオオオォ

V3「くらえぇい!!」

おおおおぉぉおお

氏者の腕が間に入るも、

V3「無駄だっ!!」

ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

その全てを粉砕する。

フォーテ「」

電王「ひゅー。さすが人造勇者の中で最も高い攻撃力を持つ男だぜ!」

ディケイド「す、すごい!!」

フォーテ「……」

ぱらぱらと落ちていく腕の残骸を見ているフォーテ。さすがのフォーテも笑っていられないのか、顔から表情が無くなっていた。

V3「悪鬼、貴様の命運はここで尽きるのだ!!」

146: 2013/07/01(月) 23:00:37.43 ID:tkqOy3JC0
445

--集落--

フォーテ「あ、は」

V3「?」

フォーテ「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは

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はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

電王「ぐっ!?」

ディケイド「っ!!」

おぞましい波動、その笑い声にさえ邪悪な魔翌力が宿っている。耐性の無い者がこの場にいれば一瞬で正気を失ってしまうだろう……。

フォーテ「きゃはっ! 君がっ? 一人でっ? 僕をっ?」

けたけたけたけた

フォーテ「むぅりぃ」



147: 2013/07/01(月) 23:01:55.50 ID:tkqOy3JC0
446

--集落--

ああああぁあああ

まるで木々のように生えていく氏者の腕は徐々にこの世界を埋め尽くしつつある。

ああぁあああぁあ

フォーテ「ちょっと強いからって、調子に……」

つー

フォーテの口から一筋の血が流れる。

フォーテ「……あれ?」

ぼたっ

フォーテ「え、なに、これ」

V3「ふっ、スキル、化物頃し……わしの攻撃は、相手が人間離れしていればそれだけダメージがでかくなるのだよ……」

電王「単純なスペックの時点でV3のおっさんは人類最強クラス、そしてあのスキル……おっかねぇぜ」

148: 2013/07/01(月) 23:02:21.05 ID:tkqOy3JC0
447

--集落--

フォーテ「……ごふっ」

フォーテは左のわき腹から血が滲んでいることに気づく。

フォーテ(さっきの攻撃……防ぎきれなかった?)

V3「お前ほどの化物なら、相当威力は上乗せされているのだろうなぁ」

フォーテ「……」

ぐしっ

フォーテは手の甲で血を拭う。

フォーテ「……ふぅん。やっぱり前も思ったけど、君達ってめんどくさいね」

ずずずずずずず

フォーテは更に腕を呼び寄せる。

フォーテ「久しぶりに全力出しちゃおうかなっ」

149: 2013/07/01(月) 23:03:11.06 ID:tkqOy3JC0
447

--集落--

フォーテ「……ごふっ」

フォーテは左のわき腹から血が滲んでいることに気づく。

フォーテ(さっきの攻撃……防ぎきれなかった?)

V3「お前ほどの化物なら、相当威力は上乗せされているのだろうなぁ」

フォーテ「……」

ぐしっ

フォーテは手の甲で血を拭う。

フォーテ「……ふぅん。やっぱり前も思ったけど、君達ってめんどくさいね」

ずずずずずずず

フォーテは更に腕を呼び寄せる。

フォーテ「久しぶりに全力出しちゃおうかなっ」

150: 2013/07/01(月) 23:04:16.70 ID:tkqOy3JC0
448

--集落--

電王「お前はだりぃからよぉ、複数でいかせてもらうぜぃ!」

ディケイド「覚悟してください!」

フォーテ「!」

電王とディケイドは空中にいるフォーテに接近する。

フォーテ「真正面からなんて失礼しちゃうっ」

フォーテが闇を操り迎撃しようとするが、、

ディケイド「カブトさんカブトさん、力を貸してください」

ディケイドは空中でカブトの力を手に入れた。

フォーテ「」

ディケイド「KAGEROU!!」

ぎゅぃぃいいいん!!

151: 2013/07/01(月) 23:04:44.88 ID:tkqOy3JC0
449

--集落--

時が止まった世界。

ディケイド「ふぅ、今のうちに!」

ディケイドは電王とV3の場所を移動させたのち、自分もフォーテの視覚に回り込む。

ディケイド「解除!」

んんぃぃいいぃぎゅ!!

フォーテ「!?」

電王「っと、いつもながら慣れないぜ。気付いたら目の前に敵がいるんだからな」

V3「まったく」

ドギャギャッ!!

無防備なフォーテのの背中を二人の攻撃が襲う。

フォーテ「あっぐ!」

152: 2013/07/01(月) 23:05:16.10 ID:tkqOy3JC0
450

--集落--

ディケイド「ブレイドさんブレイドさん、力を貸してください!」

墜落するフォーテに追撃を加えんとするディケイドの手から巨大な剣が出現する。

ふぉん

ディケイド「てやああああああああ!!」

フォーテ「やm」

ズバァアアアアアアン!!

フォーテ「!!!!」

ツインテ「!? なっ!!」

フォーテは体を大きく切り裂かれて落下していく。

ひゅるるるるどおぉん

ディケイド「や、やった!?」

V3「……手ごたえないな」

電王「あぁ、なんかおかしいぜ」

ディケイド「え!?」

153: 2013/07/01(月) 23:06:12.54 ID:tkqOy3JC0
451

--集落--

電王「あいつがカブトとやりあってた時のスピードとパワー、こんなもんじゃなかった。手を抜いてるのか?」

V3「わからん。だが油断はできん」

ディケイド「……」

フォーテ「う、うわぁ……血が、血がいっぱいだぁ……」

フォーテは流れていく自分の血をぼーっと眺めている。

ツインテ「フォーテちゃん!! 今助けてあげるから!!」

フォーテ「だめっ!!」

ツインテ「!?」

フォーテ「絶対回復領域は解いちゃだめだよお姉ちゃん。カブトと遊ぶ前にあの三人を片付けておかなきゃならないんだからっ」

ツインテ「で、でも」

V3「……随分となめた口をきいてくれるな!!」

どん!

V3は宙を蹴ってフォーテに突進する。

154: 2013/07/01(月) 23:07:02.15 ID:tkqOy3JC0
452

--集落--

フォーテ「スキル、ダメージカーズ」

うぉおん

V3「なん、だこの感覚……ぐっ」

どろり

V3はどこからともなく現れた血によって視界が奪われる。

ディケイド「きゃっ!」

電王「ぐおっ!?」

空中の二人も体中から血が噴出している。

V3(コレはわしの血!? 何が、起きている!?)

フォーテ「僕の職業はねぇ、呪術師なんだよぉ。スキル、スピードカーズ」

ぎゅぅうん

V3の落下速度が極端に遅くなってしまう。

フォーテ「スピードカーズ、スピードカーズ、スピードカーズ、スピードカーズ」

ぎゅぅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぅうううん

155: 2013/07/01(月) 23:07:59.66 ID:tkqOy3JC0
453

--集落--

V3「」

V3は空中に固定されたように動かなくなる。

フォーテ「さっきスキルの効果教えてもらっちゃったから僕も教えてあげるねっ。ダメージカーズは僕が受けたダメージをそのまま返す技なの」

電王「!?」

ディケイド「なんだと!?」

フォーテ「スピードカーズは動きを束縛する呪い。いっぱい重ねてかけちゃったからもう地面につくまで何ヶ月かかるかわからないね。くすくす」

V3「」

喋ろうとしても動きが遅く、動いているのかもわからないV3。しかし、出血まで遅くなったわけではなかった。

どく、どくっ

フォーテ「さぁて、あと二人」

フォーテは舌で自分の口周りを舐めた。

156: 2013/07/01(月) 23:09:01.82 ID:tkqOy3JC0
454

--妖精郷--

ぼろぼろになった妖精郷のある家で旅支度をしているハイ達。

アッシュ「……しかし精霊を殺った意味はなんだったんだ?」

レン「わからないにゃ。でも何かすごくいやな予感がするのにゃ。魔王軍もここの所本格的に動いているにゃし」

ポニテ「うん……アッシュ君に蘇生魔法かけた時に利きが悪かったのもそのせいなのかな」

ぴっち『それは外の影響かもしれないっぴ。精霊様が氏んで、世界を隔てる壁の効果が薄れてしまったっぴ』

ハイ「……精霊様……」

ぱっち『……君達には色々助けてもらっちゃったっぱ』

アッシュ「よせよ、俺たちは防ぎきれなかったんだからな」

ポニテ「……」

レン「……」

ハイ「行きましょう、皆さん」

157: 2013/07/01(月) 23:09:54.52 ID:tkqOy3JC0
455

--妖精郷--

ぴっち『もうすぐ出口っぴ……でも寂しくなるっぴねぇ。僕たちは妖精郷再建するためにしばらくここを離れられないっぴ』

ぱっち『次に会えるのは何年後か、何十年後か……』

ポニテ「そんなにかかるの? また会いに来るよ!」

ぴっち『あー、先に言っておかなきゃいけないことだったのかもしれないっぴが、実はここは外と時間の流れがちょっと違うっぴ』

ハイ「……え」

ぱっち『だから』

伝達鳥「くるっぽー! くるっぽー!」

ばさばさ

アッシュ「ん、伝達鳥が出口の方から飛んできたぞ」

ぴっち『あぁ、伝達鳥さんにはここに自由に出入りできるよう許可だしてるっぴ』

伝達鳥「レン様、レン様にお手紙が届いていますっぽー」

レン「? レンに?」

158: 2013/07/01(月) 23:10:42.48 ID:tkqOy3JC0
456

--妖精郷--

伝達鳥「ではこちらにサインくださいっぽー。それと返りの魔力下さいっぽー」

レン「にゃ」

伝達鳥「はわわわ、こりゃまたなんともエクスタシーな魔力っぽー。それじゃあ皆さんお達者で」

ばさばさ

アッシュ「レン、何だその手紙」

レン「今開けるにゃ」

がさがさ

レン「えーと何何……これ魔導長からにゃ」

ポニテ「え! お姉ちゃん!?」

レン「読むにゃ。 やっほー☆ 元気してるかなー? 魔導長お姉ちゃんだよー☆……声にだして読むのきついにゃ……もう読みたくないにゃ」

レンはそういってハイに手紙を渡す。

ハイ「……はい? なんですこれ」

レン「読めにゃ。先輩命令にゃ」

ハイ「は、はいいいぃいぃ!?」

159: 2013/07/01(月) 23:11:57.24 ID:tkqOy3JC0
457

--妖精郷--

ハイ「じゃあ、後輩なので読みます……」

アッシュ「完全にいじられキャラに定着したな」

ポニテ「しかし実は年上っていうね」

ハイはンーッンー言いながら絡まった痰をなんとかして手紙を読み始めた。

ハイ「今回この手紙をレンちゃん達に送ったのは重大なことがあったからなのです。……しかし、この手紙をレンちゃん達が読んでいるということは、私はもうこの世にはいないのだと思います」

レン「!?!?」

ポニテ「えっ!?!?」

アッシュ「魔導長がか!?」

ハイ「っていうのはうっそー☆ひっかかったー? てへぺろだぶるぴーす☆」

レン「……」

ポニテ「……」

アッシュ「……」

ハイ「えっ!? 私そのまま読んでるだけですよ!? 私のせいじゃな、あ! ポニテ先輩おっOい揉まないで!?」

160: 2013/07/01(月) 23:13:28.65 ID:tkqOy3JC0
458

--妖精郷--

ハイ「はい、という私の素敵なギャグが見れて随分緊張がほぐれたと思うなの」

レン「ほぐれたのはハイのぱいおつだったけどにゃ」

ポニテ「読み間違いするたんびに揉んでやろうと思う」

アッシュ「いじめか」

ハイ「今回の事件……って言ってもポニテちゃん達は今妖精郷にいるだろうから知らないと思うけど、こっちではちょっと色々事件があったなの。そして五柱の一人、賢帝が五柱の席から退くことになったの」

アッシュ「……あっちもすんごい事件起きてんな」

ポニテ「ほんとそう」

ハイ「それで私は緊急に五柱会議を発足し、全五柱に収集をかけたの。でもまぁいつもの通り集まらなかったの」

アッシュ「……」

ハイ「会議の内容は空いた五柱の席に誰を座らせるか。でも五柱のみんなは五柱であることをどうでもいいって思ってるやつばっかなの。そんな奴らだから、五柱に推薦したい奴がいる、とかそういうことも言ってこないの。だから私が推薦状を書いたの」

ポニテ「え」

ハイ「空いた五柱『帝』の枠に、私はレンちゃんを推薦したの……ってえぇえええ!?」

161: 2013/07/01(月) 23:14:37.94 ID:tkqOy3JC0
459

--妖精郷--

ポニテ「つ、続き早く! 続き!! 揉むぞ!!」

ハイ「は、はい。で、えっと、ひゃうぅん!! ……そ、それで」

レン「揉むな」

ハイ「手紙の返事は、竜騎士・んんんぶるるるるぁああぁあああぁ……誰でもぉ、かまわあぁあぬぅ。まかぁせたぁあ」

ポニテ「うわ、手紙までぶるるぁあっとか書くんだあの人、わけわかんない」

ハイ「射王・いいんじゃね別に」

アッシュ「射王……って、確か」

レン「……」

ハイ「残る護皇は居場所がわからなかったの。でも反対票無かったから五柱会議は成立したことになるの。よって今日からレンちゃん、貴女は五柱、帝になったの」

レン「」

ポニテ「イやあああああああああああああああああああ!! ポニテちゃんばっかずるくないい!? パワーアップやらなにやらひいきされすぎじゃない!?」

レン「レンが……五柱……」

ポニテ「無視もいやあああああああああああああああああ!!」

162: 2013/07/01(月) 23:15:48.07 ID:tkqOy3JC0
460

--妖精郷--

ハイ「で、つきましては、新しい帝の座についたわけなんだけど、レンちゃん何帝にする?」

レン「にゃ?」

ポニテ「あぁそうか。職業に合わせて名前が変わるんだっけ五柱は」

アッシュ「賢帝は賢者の職業が五柱になったら賢帝なんだしな」

レン「錬、帝? 錬金帝? うぅむ、なかなか難しいにゃ」

ポニテ「そうだねぇ。これから世界中の人に名前が知れ渡るわけだしね。ここは慎重に考えるべきだよね」

ハイ「あ」

アッシュ「ん、どうしたハイ」

ハイ「レンさんは生産系の職業なわけですから……物作りてー(ものつくり帝)、とか」

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

ハイ「あ、あはは、なんちゃって」

ピヴォン 

ハイ「あれ? 手紙が光って……何々? なお、この手紙の最後に声紋で自分の職業名を入力してね。そうしたら自動的に世界中にレンちゃんの新しい職業名が登録、され……て」

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

ハイ「あ、あはははは……」

手紙『入力完了、ものつくり帝、登録されました』

レン「そんなださいの嫌にゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

レンが五柱の一角、ものつくり帝になった。

168: 2013/07/09(火) 02:42:54.20 ID:IfyTEM5+0
461

--集落--

ドゥン! ドンドーン!

フォーテ「あはははははは」

氏者の腕を羽のように広げて空を舞うフォーテ。

電王「ちぃ!! めんどくせぇやつだぜ、火の剣!」

ぼっ!!

ディケイド「響鬼さん響鬼さん、力を貸してく」

フォーテ「けたけたけた」

ズンッ!!

ディケイド「アッ」

伸びた氏者の腕がディケイドの胸部を貫いた。

フォーテ「ディケイドちゃんの弱点は能力発動までのタイムラグだねっ。いくら色んな力を使えても、使えるようになるまでに時間がかかるのが、オリジナルより弱い所っ!」

ドズドズドズドズっ!!

ディケイド「」

無数の氏者の腕がディケイドを貫き、そしてバラバラにした。

169: 2013/07/09(火) 02:44:06.24 ID:IfyTEM5+0
462

--集落--

ディケイド「ぎ、Gあじ8あAAぁAAAああAAAAAAA!!」

ずぅん!!

落下していくディケイドの肉片が黒く光り始める。

ぎち、ぎちぎちぎち

電王「! バカヤロウ! お前はまだ制御しきれてねぇだろ! やめろ!!」

ディケイド「う、ふぅ、!! ぐああぁあああああ!!」

ぐちゃあぁん!!

肉片が一つに集まり、そして

擬似魔王ディケイド「GU、ぐるぅる」

黒いもやを体中から吐き出した。

170: 2013/07/09(火) 02:44:40.03 ID:IfyTEM5+0
463

--集落--

フォーテ「まってたよっ」

ずずず

擬似魔王ディケイド「」

フォーテの後ろで広がっていた闇が、口を開けてディケイドにかぶりつく。

ずず、ずずずず!!

擬似魔王ディケイド「ご、gooooっごろooじょあおえいあl!!」

もがきながらも徐々に闇の中に飲み込まれていくディケイド。

電王「て、てめぇー!!」

電王は空中を蹴ってフォーテに向かって行くが、

おおぉぉおお

氏者の腕が邪魔をする。

電王「くっそっ! どきやがれてめぇら!!」

171: 2013/07/09(火) 02:45:56.57 ID:IfyTEM5+0
464

--集落--

擬似魔王ディケイド「……」

イィィイイイイン!!

ディケイドの右手に魔力が集まり始める。

フォーテ「? まだ抵抗する気なんだっ? そんなことしても無駄なのにっ!!」

ドゥン!!

フォーテ「……なんで真下なんかに撃って……!」

それは空中で停止しているV3に当たる。

どぉおおん!!

フォーテ「……そういうこと……随分と仲間想いじゃないっ!」

しゅたっ

V3「動きが……戻った? ディケイドか、感謝するぞ!」

振り返るV3。

ディケイド「」

しかしV3が見たものは、擬似魔王化も解けて、なすすべも無く闇に喰われているディケイドの姿だった。

ごっくん。げぇぷ。

172: 2013/07/09(火) 02:46:47.08 ID:IfyTEM5+0
465

--集落--

V3「ディケイドを……喰らったのか……?」

フォーテ「えへへっ☆ とってもおいしかったよっ。やっぱり魔王とか勇者の類が一番おいしいねっ!!」

うっとりとした表情でお腹をさするフォーテ。

V3「……」

ぽたっぽたたっ

拳を握り締め、血を垂らすV3。

V3「……弔い合戦だ……無残にも貴様に食われていった我らの同胞、その全てのな!!」

どっぅん!!

V3の跳躍、その身は一瞬でフォーテの目の前に。

V3「受けよ!! 我が一撃!! ダァブルルゥゥゥ!!」

V3の両足の周りを魔力が高速で回転し渦を作る。

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

けたたましい破壊音とともに台風がフォーテに向けて放たれた。

V3「キィイイイイイック!!!!」

173: 2013/07/09(火) 02:47:32.89 ID:IfyTEM5+0
466

--集落--

ディケイド「やめてくださいV3さん!!」

V3「!?」

奥義の前にディケイドが現れてV3は一瞬躊躇ってしまった。

ドズズズズ!!!!

フォーテ「あはははは。やっぱり甘いなぁおじちゃんもっ!」

氏者の腕がV3の四肢を貫き、空中に固定している。

V3「ぐっ!!」

フォーテ「こんなの、偽者に決まってるのにさっ」

ディケイド「ぶ、ぶぅいぃすぅうりrぃぃいいさぁあああああんんん」

ディケイドはV3の目の前でどろどろと溶けていく。

V3「ぐ、ぐっ!! 貴様同胞の命でもてあそびおって!!」

ぎしっ!! ぶちぶちぃ!!

フォーテ「! へぇ、強引に千切れちゃうんだっ? やっぱり人造勇者最強の三戦士の一人っ」

174: 2013/07/09(火) 02:48:16.67 ID:IfyTEM5+0
467

--集落--

電王「俺をっ!!」

フォーテ「!」

フォーテが右を振り向くよりも早く斧は振り下ろされる。

電王「無視するんじゃないっ!!」

ドッガァアアアアアアアン!!!!

フォーテ「んあっ!!」

フォーテは赤い血を撒き散らせながら落ちていく。

ひゅるるるる、どがっ

電王「……あんま不意打ちは好きじゃないがぁ、この場合は仕方ないわな……」

V3「ぐ、すまん、助かった」

175: 2013/07/09(火) 02:48:50.66 ID:IfyTEM5+0
468

--集落--

ツインテ「フォーテちゃん!? ど、どうして……やっぱり今日のフォーテちゃんはどこかおかしい……」

カブト「……」(観察していてわかったが、どうやらその右腕に何か細工をほどこしているようだな……ともすれば)

ざっざっ

カブトはゆっくりとツインテに近づいていく。

ツインテ「……なんですか? 何をやっても無駄ですよ? この空間内で起こったことは全部直っちゃうんですから」

カブト「そのようだ」

カブトは手刀を構えると、

ザンッ!!

ツインテ「っ」

ツインテの右腕を切断した。

176: 2013/07/09(火) 02:49:23.02 ID:IfyTEM5+0
469

--集落--

ツインテ「気が済みましたか? 貴方は……まだ戦いを続けたいんですか……?」

切断面に戻ろうとする腕をカブトは取り押さえる。

ツインテ「そ、そんなことしたって無駄なのに!!……あ、れ?」

ツインテの視線が定まらない。

ツインテ「あれ? ボクは一体、何して……るの?」

カブト(やはり)

ツインテ「ここ、は……」

びちっびちちっ!!

傷口から闇を吐き出している右腕は、カブトの手の中でもがいている。

カブト「……目を覚ませ、お前のこれは、お前の意思ではないのだろう?」

ツインテ「え……」

177: 2013/07/09(火) 02:50:02.19 ID:IfyTEM5+0
470

--集落--

ドガァン!
ズガァン!

フォーテ「んあっ!?」

V3の攻撃を受けて岩に叩きつけられるフォーテ。

電王「おっ!? きいてやがるぜあのインチキ無敵やろうに!」

V3「む、これはいけるぞ……!!」

フォーテ「はぁ、はぁ……」

フォーテは大量の血を流し、生まれたての小鹿のように必氏に立とうとしている。

がく、がくっ

フォーテ「はぁ、はぁ」

V3「休ませはせんぞ!」

ばっ

空中に飛び上がったV3は真っ赤に燃えながら回転する。

フォーテ「はぁ……はぁ」

178: 2013/07/09(火) 02:50:32.02 ID:IfyTEM5+0
471

--集落--

フォーテ「ん……」

見上げたフォーテ。そこには太陽の如ききらめきが。

ゴオオオォオオオオオオオォオオオオ!!!!

V3「奥義、大回転プロミネンスキック!」

ゴオォ!!

炎の竜巻と化したV3の一撃、それは全ての障壁を破壊して、

ズドン

フォーテ「」

V3「……終わった」

フォーテの腹部に命中する。

179: 2013/07/09(火) 02:51:12.57 ID:IfyTEM5+0
472

--集落--

フォーテ「げほっ」(そっか……僕……弱くなってたんだ……お姉ちゃんと一緒にいられたから……幸せだったから……呪う力が弱まっちゃった……んだ)

刹那の出来事。
V3の強烈な魔力が注ぎ込まれて爆散する直前、フォーテはツインテを見た。

フォーテ「」

その光景は、ツインテが右腕を奪われているものだった。

ドグオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

電王「う、うおおおおおおおおおお!? 俺達の基地が吹っ飛んじまうぜ!!……相変わらずすげぇ威力だ……こんなもん喰らったら五柱でもひとたまりねぇぞ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

しゅたっ!

高熱の爆心地から離れた所に着地したV3は、標的が完全に仕留められたという確証を持てるまで臨戦態勢を解かない。

V3「……」

ごごごごご

V3「……」

しゅぅうう……

180: 2013/07/09(火) 02:52:00.25 ID:IfyTEM5+0
473

--集落--

ずしゃっ

V3「……!!」

電王「な、おいおい……嘘だろ」

ずしゃっ、ずしゃっ

煙の中から現れたのは、黒い着物に身を包んだフォーテ。

電王「この感覚は、この力は!!」

V3「魔王化……したというのか」

擬似魔王フォーテ「……許さない……ツインテお姉ちゃんを……いじめるものは……なんであろうと許さないっ!!」

ずおおおおおおおおおおおおおおぉぉおお!!

フォーテの周囲を、まとわり付いた黒いもやが破壊する。

V3「全制限解除、魔王化発動!!」

ゴオオオオ!!

それを見たV3は迷うことなく擬似魔王へと変貌する。

電王「っ!!……くそっ、仕方ねぇ! 全制限解除、魔王化発動!!」

181: 2013/07/09(火) 02:52:34.81 ID:IfyTEM5+0
474

--三日前、???--

ツインテ「フォーテちゃん」

フォーテ「ん? 何? ツインテお姉ちゃんっ!!」

ツインテが声をかけると嬉しそうに抱きついてくるフォーテ。

ツインテ「……前、フォーテちゃん言ったよね? ボクと頃しあう、って」

フォーテ「うんっ! 言ったよ!? 勇者になったお姉ちゃんと魔王になったボクで頃しあうのっ!! それはとても素敵なことなんだよっ!!」

ツインテ「……」

フォーテ「……お姉ちゃん?」

ツインテ「……ボクはお姉ちゃんと戦いたくなんて、ないよ」

フォーテ「え……」

ツインテ「だってフォーテちゃんはボクの大事な弟なんだもの」

182: 2013/07/09(火) 02:53:03.90 ID:IfyTEM5+0
475

--三日前、???--

フォーテ「そ、そんなっ! お姉ちゃん僕との約束破る気なのっ!?」

ツインテ「そんな約束してないよ……どうしても……フォーテちゃんと頃し合いしなくちゃいけないって言うのなら……ボクはその前に氏ぬよ」

フォーテ「駄目だよっ!?」

フォーテはツインテを強く抱きしめる。そして半狂乱となり泣き叫ぶ。

フォーテ「駄目っ! ダメッ!! ダメェッ!! ツインテお姉ちゃんが氏んじゃうなんて絶対に駄目なんだよっ!? そんなの絶対やだっ!!」

ツインテ「で、でも頃しあうっていうことはどちらかが氏ななくちゃいけないから……」

フォーテ「だから僕が氏ぬんだよっ!! お姉ちゃんに看取られながらお姉ちゃんに殺されるのっ!!」

ツインテ「……え?」

フォーテ「だってそうすれば僕はお姉ちゃんの心の奥深くに刻み込まれるでしょっ!? その時初めて僕はお姉ちゃんの一番になれるんだよっ!!」

ツインテ「そ、そんな理由……だったの?」

フォーテ「そんなって、ひどいよぉ……」

ぐしゃぐしゃになった顔でツインテを見上げるフォーテ。

ツインテ「……フォーテちゃん、やっぱりそれはやめよう?」

183: 2013/07/09(火) 02:54:37.06 ID:IfyTEM5+0
476

--三日前、???--

フォーテ「ふぇ……」

優しく頭を撫でられるフォーテ。

ツインテ「ボクはフォーテちゃんとやっぱり戦いたくないの」

フォーテ「そん、なぁ」

ツインテ「フォーテちゃん、ここに来て過ごしてきた日々……楽しくなかった? みんなでご飯食べたり、お菓子作ったり、遊んだり……」

フォーテ「楽しかった! すごい楽しかったよ!! フォーテ、お姉ちゃんと過ごせて夢のように楽しかったよ!!」

ツインテ「ボクもだよ」

にっこりと笑うツインテ。

ツインテ「ねぇフォーテちゃん。今の日々をずっと続けたいって思わない?」

フォーテ「……う」

ツインテ「こういう日々をボクとずっと一緒に過ごすのじゃ駄目なの?」

フォーテ「……ツインテお姉ちゃんは、楽しかったの?」

ツインテ「うん。こんな幸せがいつまでも続いたらいいなって思ったよ。それくらいみんなと、フォーテちゃんと過ごした日々は楽しかったんだ。……それなのにフォーテちゃんと戦わなきゃいけないなんて、そんなのすごく悲しいよ……」

184: 2013/07/09(火) 02:55:03.26 ID:IfyTEM5+0
477

--三日前、???--

フォーテ「!?」

ツインテの悲しそうな表情を見たフォーテは驚いて、

フォーテ「う、うんわかった!! フォーテ、お姉ちゃんの言う通りにするっ!! もう頃し合いしたいなんて言わないよ!!」

ツインテ「あ、本当?」

フォーテ「本当!! 絶対!! お姉ちゃんの美しさにかけて絶対だよ!!」

ツインテ「ボクの美しさって……いや、でもよかった、これで不安が一つ無くなったよ」

ツインテはそっとフォーテを抱きしめる。

フォーテ「!!!!!! ふぉ、フォーテ、ツインテお姉ちゃんに……不安にさせてたの……?」

ツインテ「ん……まぁ、ちょっと、少し……」

フォーテ「ご、ごめんねぇええおねええちゃああああああぁああんん!!」

185: 2013/07/09(火) 02:56:15.83 ID:IfyTEM5+0
478

--集落--

しゅぅうううぅう

擬似魔王フォーテ「あ、あは、AHAHAHAHAHAHA」

ケタケタと笑うフォーテ。その周囲には無数の肉片が無残にも転がっている。

ぎちち

それでも動こうとする肉片を氏者の腕が一つ残らず拾い上げる。

擬似魔王フォーテ「すごい……呪術以上の力があるよ……弱くなる前の僕よりも、ずっと強い力だっ!!」

ツインテ「フォー、テ、ちゃん……」

意識が朦朧としているツインテ。まるで現実と夢との区別がついていない様。

擬似魔王フォーテ「待っててお姉ちゃん……今そいつ、轢き頃してあげルかラ」

カブト「……」

カブトはツインテの右腕を握り締めたままフォーテを睨んでいる。

カブト「……おばあちゃんが言っていた。歪んだ愛は醜いものだと」

186: 2013/07/09(火) 02:57:42.16 ID:IfyTEM5+0
479

--集落--

擬似魔王フォーテ「なにが……言いたいの?」

カブト「お前の愛は歪んでいる。こんな手を使ってまで実の姉の心を支配したかったのか?」

カブトは右腕を掲げる。

擬似魔王フォーテ「違う……そんなんじゃないよっ、僕は、違う、お姉ちゃんの、タメ、なンだ」

カブト「違う、お前は愛の重さ故に周りが見えなくなっている。そんなことでは愛する人を失うぞ」

擬似魔王フォーテ「失う?」

ぴくりと反応し、フォーテは震え始める。

擬似魔王フォーテ「失う……? ツインテお姉ちゃんを? 失う!? そんな、嫌だ、絶対に、嫌だっ、そんなの、絶対に」

ごごごっごごごごごごご

カブト「世界を呪うだけ魔力の総量が増えるのか……いいだろう、俺も仲間達が氏んでいくのをただ黙って見ていたわけではない……」

ぶちっ

カブトは唇を噛み切った。

カブト「最強の人造勇者の名にかけて、貴様を倒す!!」

擬似魔王フォーテ「お姉ちゃんだけは絶対に失わないっっ!!」

かっ




  勇者と魔王がアイを募集した
   第二部、リベンジ

187: 2013/07/09(火) 02:58:27.56 ID:IfyTEM5+0
480

--荒れ果てた地--

ひゅうぅううう

アッシュ「ふぅ……久々の通常世界だ。随分懐かしい気がするぞ」

ポニテ「だねー。今思うと妖精の世界に行ってからうOこしか食ってなかった気がする。何かおいしいもの食べに行こう!」

レン「他のものもしっかり食ってたにゃ。相変わらず忘れっぽいにゃポニテは」

ハイ「あの、それより皆さん? その前に気になることあるんじゃないでしょうか?」

ひゅぅううう

アッシュ「……俺も実は気にはなっていた」

ポニテ「はいはいはーい! 私も気になってたよ!」

レン「レンもにゃ」

ハイ「そうですか、よかったです。実は私だけなんじゃないかと思ってました」

ひゅうぅうう

ハイ「これ……世界滅んでますよね?」



  勇者と魔王がアイを募集した
   第二部、リベンジ
       完

188: 2013/07/09(火) 03:00:29.87 ID:IfyTEM5+0
というわけで第二部が終わりました。中々反省点の多い部でした……。

残るは第三部と第四部のみです。どうかもうしばらくお付き合いください。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m


192: 2013/07/09(火) 12:28:15.55 ID:kYRTKiYyO

引用: 勇者と魔王がアイを募集した2