198: 2013/07/15(月) 23:21:57.68 ID:hJ9A72cT0

199: 2013/07/15(月) 23:22:55.42 ID:hJ9A72cT0


--???--

トリガー「……」

何もない深淵の場所でトリガーは椅子に座って目を瞑っている。
何かに邪魔をされることの無い無音の世界。そこにいれば、例え人で無くとも昼寝をしたくなるだろう……。

トリガー「……」

……ふと夢を見た。

ザ、ザザー

最初の最初の……出来事を……。

ザザ、ザザザザザザザー

200: 2013/07/15(月) 23:24:18.42 ID:hJ9A72cT0


--過去、宇宙--

ウォンウォンウォン

ながと艦長「目標、宇宙進出型巨大スライム、うてー!!」

ぼぼっぼぼぼっ

宇宙王もこもこ「 」

宇宙空間にて巨大な戦艦と巨大な化け物が戦っている。いや、戦っているというにはあまりに一方的な破壊……宇宙王もこもこは全身をバラバラに粉砕されてしまい、青い星へと落ちていく。

ビスマルク艦長「……終わったか」

オペレーター「……索敵終了、現時点を持って全スライムの討伐を確認いたしました!」

うおおおおおおおおおおおおおおお

どの艦からも歓声があげられる。

エ艦長「やりましたな、大統領」

旗艦の玉座に座る男がうれしそうに笑う。

大統領「あぁ……! 我らの勝利だ!!」

201: 2013/07/15(月) 23:30:51.18 ID:hJ9A72cT0


--過去、隔離空間--

赤姫「……」

美しい花が咲き誇る庭園に、ドレスを着た少女が一人。

赤姫「はぁ。どうなったのかしら。気になるわ……」

少女は自分の髪の毛をいじりながら、空を模した天井を見上げていた。

ぷしゅー

赤姫「あ」

執事「赤姫様、こちらにいらっしゃいましたか」

赤姫「執事、どうなったの? 異星種との戦いは!」

執事「赤姫様ご安心ください、もう我々を脅かすものはいなくなりました」

にこりと表情を作る執事とひまわりのように笑ってみせる赤姫。

赤姫「それはよかったわ! せっかくの新惑星を見つけたんですもの! これで冒険が出来るわねっ!!……でも、少し可愛そうよね。元々はその子達の星だったのでしょう?」

執事「それはそうですが……我々は彼らの生活を脅かすようなまねはしないと最初に通告を出しました。まずは探索してみるだけだと。しかし彼らはそれを無視して攻撃してきたのです。我らに非はありません」

赤姫「でも、誰だって自分の住処に急に誰かが入ってきたら嫌だと思うんじゃないかしら……」

執事「……」

202: 2013/07/15(月) 23:31:44.91 ID:hJ9A72cT0


--過去、隔離空間--

執事「……人類のほぼ全てが今回の勝利を喜んでいます。それでも赤姫様は納得がいかないと?」

赤姫「……ロボットにはわからないことなのかもしれないわ」

執事「……」

執事は困ったような表情を作る。

ぷしゅー

大統領「よぉ元気にしてるか赤姫」

赤姫「あ、お父様!!」

部屋に入ってきた大統領を見るなり駆け寄って抱きつく赤姫。

赤姫「お父様お久しぶり! よかった、無事で!!」

大統領「はっはっ、今回の戦争で人類側の損傷は軽微だぞ? 氏者もいない。無事に決まってるじゃないか」

大統領は赤姫を持ち上げる。

203: 2013/07/15(月) 23:33:06.49 ID:hJ9A72cT0


--過去、隔離空間--

大統領「執事、オレンジジュースとビールを頼む」

執事「かしこまりました」

執事は備え付けのキッチンから飲み物を取り出して準備を始める。

赤姫「ねぇお父様! 久しぶりの惑星なんでしょ!? しかも私たちの生存に適しているって!」

大統領「そうだ。お前もここから映像で見ただろう? とても青くて素敵な星だ。先祖が書き残した母星、地球によく似ている」

赤姫「お父様、私冒険がしたいわ! この星を自分の足で歩いてみたいの! ねぇいいでしょう!?」

執事「お飲み物です」

こと

執事が飲み物をテーブルに置いていく。

大統領「……だめだ」

赤姫「どうして!?」

大統領はビールを手にする。

執事「……大統領様。赤姫様は艦内をまともに歩くことすら許されず、実に歯がゆい思いをしていらっしゃいます。敵性生物の排除なら私も手伝います」

大統領「わかっている……だがもうそんな時間はないのだ」

204: 2013/07/15(月) 23:34:35.37 ID:hJ9A72cT0


--過去、隔離空間--

赤姫「え……」

大統領「実は前々から話は出ていたんだ。我らはクリアなのではないか、とな」

執事「……」

赤姫「お父様? どういうこと?」

大統領「うむ、人類は到達点に達したということだ」

誇らしそうに笑う大統領。

大統領「この数千年、人類の技術は毛ほども進歩していない。いや出来なくなったのだ……生命にはキャパシティがある。人類も例外ではない。それを我らの代で到達し、ついに人類という種は完成したのだ」

大統領はビールを飲む。

大統領「っ……老いも寿命も、肥満も近視も病気も、我ら人類は乗り越え克服してきた……全ての苦難を乗り越えてきたのだ」

ちゃぷ

グラスの中のビールを揺らす。

赤姫「……」

205: 2013/07/15(月) 23:37:26.96 ID:hJ9A72cT0


--過去、隔離空間--

大統領「考えようによっては……くすぶったまま停滞していた我らに再び火をつけてくれたスライムには感謝をしないといけないな」

執事「大統領様、それは、つまり」

大統領「あぁ、ラストを飾るにふさわしい強敵との氏闘……というほどでも無かったが、今の我らにはそれでも十分だ。幕を引こうと思う。全人類の」

赤姫「!!」

執事「人類を、終わらせるつもりですか……?」

大統領「あぁ。このまま生きていてももう何も生み出すことは出来ない。今の我らに対処不能な出来事が起これば確実に滅亡する。それならば今完結しておき有終の美を飾るほうがいい。蛇足は人類史に汚点を残す」

執事(数千年ぶりの盛り上がり……スライムとの戦いは……燃え尽きる寸前のロウソクの火だったのか……なんと皮肉な……勝った人類が滅亡とは)

赤姫「……」

表情を無くし、ただぼーっとオレンジジュースを見つめている赤姫。

大統領「……赤姫、まだお前は若い。三百年しか生きていないのだからな……お前からするとこれは酷な決断なのかもしれないが……」

ぎゅ

赤姫はドレスを強く握りしめた。

赤姫「だ、大丈夫ですわ」

206: 2013/07/15(月) 23:39:16.14 ID:hJ9A72cT0


--過去、隔離空間--

赤姫「お父様方の決断は間違っていません……過去に生きてきた人たちの誇りのために、濁す前に終わらせようというお考え……すばらしいと思います」

大統領「! そうか……! さすがわが娘、その精神、立派なものだ。……うむ、やはりお前に託したい」

赤姫「え?」

大統領「お前に人類の幕切れを頼みたい」

赤姫「!? そ、それはどういう」

大統領「何、難しいことではない。ただスイッチを押すだけだ。それで全人類は安らかに眠りながら氏に行ける……その名誉をお前にやってもらいたいのだ」

赤姫「わた、しが」

大統領「そうだ」

大統領は優しく赤姫を抱きしめる。

大統領「本来ならば大統領たる私がやるべきことだが……皆も許してくれよう」

赤姫「……」

大統領「トリガー<最後の引き金を引くもの>を、やってくれるな?」

赤姫「……」

執事「……」

赤姫「……はい、お父様」

207: 2013/07/15(月) 23:40:09.63 ID:hJ9A72cT0


--過去、隔離空間--

その夜。

赤姫「ぐすっぐすっ」

赤姫は毛布を被って泣いていた。

赤姫「なんで、なんでそんな大役を私に押し付けるのよ!……そんなの、そんなのただの大量殺人じゃないのっ……!!」

赤姫はがたがたと震えながら外の作られた夜を見る。

赤姫「……それに、私まだ……氏にたくない」

がちゃ

赤姫「!?」

窓の一つが音を立てる。

がちゃがちゃがちゃ

赤姫「だ、誰!?」

そして、

ぎぃ

少年「よっ、俺俺」

208: 2013/07/15(月) 23:40:56.50 ID:hJ9A72cT0
10

--過去、隔離空間--

赤姫「!! ま、またこんな時間に忍び込んで……見つかったらまた怒られちゃうんだから」

少年「えー? 別に気にしねーよー。それより久々に遊びに来てやったんだからよろこべよー」

少年はお菓子を入れた袋をテーブルに置いて椅子に座る。

赤姫「べ、別に遊びに来てだなんて頼んでないし……!」

少年「また泣いてたのか?」

赤姫「!!」

赤姫は慌てて顔を隠す。

ぐしぐし

赤姫「な、泣いてなんかないわ! ばかっ!」

少年「……あの話聞いたのか?」

赤姫「っ!」

少年「聞いた、みたいだな」

少年は頭をぼりぼりとかく。

209: 2013/07/15(月) 23:43:26.84 ID:hJ9A72cT0
11

--過去、隔離空間--

赤姫「あ、わ、わた」

少年「人類終了のお知らせとか。大人はなんでも決めちゃうんだな。俺ら子供はまだまだやりたいことあるっていうのに」

赤姫(そっちだけか……)「……大人になった時の無力感を知ってるからこそ、なんじゃないのかな」

少年「無力感? はっ。俺ら人間に敵なんていないっての。無力どころか無敵……まぁ。張り合うやつがいないのは寂しいのかもしれないけどよ」

少年は赤姫を横目で見る。

赤姫「でももう、少しも上に上がることが出来ない、何をすれば失敗するかもわかっているから冒険的なこともできない……種全体が前にも後ろにも進むことが出来ないのは……確かに辛いよ」

少年「何かに滅ぼされるまで永遠に今と同じ水準で生きていく。別にいいじゃねぇかよそんなの」

少年は持ってきた菓子の袋を開け中身を食べ始める。

ばりばり

少年「なぁ夜中にお菓子食うと体に悪かったんだってさ。知ってた?」

赤姫「それはまだ体のコントロールも出来なかった時代の話でしょ? 何万年前の話してるのよ」

赤姫はベッドから降りてテーブルに向かう。

210: 2013/07/15(月) 23:44:53.19 ID:hJ9A72cT0
12

--過去、隔離空間--

少年「あと食事した後に歯を叩かないと病気とかいうのになるんだっけ? そんなによわっちいのによく生きられたよなぁ。考えられねー」

赤姫「その時代にはその時代の悩みがあるのよ。それ私も食べる」

ばりばり

少年「でも……これから俺たちはその悩みすら無くなっちゃうんだぜ?」

赤姫「……」

少年「……悩むのに疲れちまったのかな」

赤姫「わからない」

少年「人類の全人口の98%が賛成らしいよ。でもそんなの嘘だと思う。もっと反対してる人はいるはずだ」

赤姫「……」

少年「話に聞いたんだよ。そいつらは終結日に氏なないで、艦隊から離れてあの星で静かに生きるんだ、って」

赤姫「!! ほんと!?」

少年「あん」

211: 2013/07/15(月) 23:45:39.75 ID:hJ9A72cT0
13

--過去、隔離空間--

少年「そうしたら……見たことも無いような世界で毎日楽しく生きられるな!」

少年は目を輝かせて赤姫に顔を近づける。

赤姫「」

固まる赤姫。

少年「な、お前も行こうぜ赤姫。俺と一緒に!」

赤姫「わ……わたしは……その、えと」

少年「ん? なんだよ? お前だっていきたいんだろ? なら一緒に」

ばたん!

赤姫、少年「「!?」」

執事「まぁたぁおまえかぁああ」

少年「うげっ!? 執事!!」

212: 2013/07/15(月) 23:48:19.92 ID:hJ9A72cT0
14

--過去、隔離空間--

執事「まったくふざけたやつだ毎度毎度……最高レベルの警備をなんなく突破してくるとは……!!」

少年「ふふん、俺には特別な力があるからな。それを使えば簡単なことだぜ」

執事「……それは本来、人類が宇宙空間に対応するために遺伝子に刻み込んだものだ。こんなくだらない使い道があるなんて思いもしなかった」

少年「体の周りに特殊な膜をはって宇宙を飛びまわるだけとか、使い方がもったいないんだよ。子供の発想力に適うかっての! これを使えば大人だって簡単に倒せるんだぜ?」

ぶぅん

執事「……ふん、何者かと戦闘を行うのならば兵器より優れたものは無い」

少年「でもその兵器とやらも俺の力で欺かれたんだぜ?」

赤姫「ふ、二人ともやめて!」

執事「……そこまでいうのなら、試してみるか少年、赤姫様を守る兵器の力を」

がきーん

執事が袖をまくると右腕が変形する。

213: 2013/07/15(月) 23:49:48.73 ID:hJ9A72cT0
15

--過去、隔離空間--

赤姫「だ、だからだめだってばストーップ!!」

ドンっ!

執事「あ、赤姫様。ですが」

執事に抱きついてとめる赤姫。

執事(! 泣いた跡……昼のことか……押しつぶされそうになっているのではと思っていたけれど) 

少年「ドキドキ」

挑発したものの汗をかいている少年。

執事「……はぁ、赤姫様がそうおっしゃるのであれば……」

がしゅーん

赤姫「ほっ……」

執事(……僕じゃ赤姫様を慰めてあげることができない……)「少年」

少年「な、なんだよ」

執事「……あまり長居をするなよ。最悪でも夜明けまでにはここから去れ。では失礼します赤姫様」

執事はくるりと振り返って去っていく。

かっかっかっ

214: 2013/07/15(月) 23:51:16.93 ID:hJ9A72cT0
16

--過去、隔離空間--

少年「けっ。俺は嫌いだねあいつ」

赤姫「そんなこと言わないでよ! 私の大事な執事なんだから! 私が生まれた時からずっと傍にいてくれたんだから!」

少年「ふん、そんなの知らないね」

ばりばり

赤姫「……」

少年「……まぁいいや。終結日は、確か八日後だったっけ。それまでには決めとけよ」

赤姫「え」

少年「俺たちと一緒にあの星に行くのか。それともここで……氏ぬのか」

赤姫「っ」

少年「……じゃなっ」

がた

少年は窓に足をかけて外へ。

ひゅぅうう

赤姫「……」

215: 2013/07/15(月) 23:51:58.83 ID:hJ9A72cT0
17

--過去、隔離空間--

赤姫「……」

ばりばり

赤姫は少年が残していった菓子を食べる。

赤姫「……」

ばりばり

赤姫「……うぇ」

ばり

赤姫「やだ……よぉ……私も、一緒にいきたい……」

大粒の涙がぼろぼろと落ちて菓子を湿らせていく。



執事「……」

それを壁の向こう側で執事が立って聞いていた。

216: 2013/07/15(月) 23:53:38.52 ID:hJ9A72cT0
18

--過去、隔離空間--

執事「大統領様」

大統領「なんだ、今は忙しい。最後の日までに会っておかなければいけない者との予定を組んでいる」

執事「……赤姫様のことでお話があります」

大統領「ん……なんだ、何かおきたのか?」

執事「いえ、そういうわけではありません。が、赤姫様をトリガーにさせるのはいくらなんでも赤姫様が不憫だと思いまして」

大統領「……なに?」

大統領は静かに立ち上がる。

大統領「この長く輝かしい人類の歴史の最後を飾るのだぞ? それのどこが不憫だというのだ!!」

執事「っ、赤姫様は心優しいお方です。たとえどんな誉れであろうと」

がっ

大統領「ロボットふぜいが聞いたような口をきくんじゃあない! 人類の誇りをお前なんかが理解できるものか!」

217: 2013/07/15(月) 23:55:14.62 ID:hJ9A72cT0
19

--過去、隔離空間--

執事「し、失言でした」

どさっ

大統領「……もういい、下がれっ」

大統領は再び椅子に座る。

執事「……」

大統領「……」

執事「……ならば」

大統領「明日の食事は六時半だ。間違えるなよ」

大統領の拒絶の言葉を吐かれ、もう執事にはどうしようもなくなってしまった。

執事「……かしこまりました」

執事はそういうと頭を下げ、静かに扉を閉める。

ばたん

執事「……」

218: 2013/07/15(月) 23:57:16.34 ID:hJ9A72cT0
20

--過去、隔離空間--

終結日、当日。


大統領「見事だ。美しい、さすが我が娘よ!」

赤姫「そう、ですか?」

煌びやかな衣装に身を包んだ赤姫。それを見て大統領は満面の笑みで頷いている。

執事「……」

大統領「ではいこう、祭殿へ」






少年「おせーなー。手紙読んだのかなあいつ」

少年はある戦艦の前で座っていた。
大量の荷物を持って赤姫を待っているのだ。

228: 2013/07/22(月) 23:53:45.42 ID:fuVXi7hA0
21

--過去、祭殿--

大統領「さぁ、聖なる日の始まりだ! 皆のもの、食って飲んで多いに騒ぐがいい!!」

おぉー!!

ロボットがもてなしの料理や躍りをする中、人々は最後の日を楽しんでいた。

市民「わはははは!!」

到達し、達観した精神を持つ人類は、この日が最高の日であると心の底から考えていた。

執事「……」

赤姫「……」

大統領「さぁ、赤姫、お前も楽しんできなさい。人生で最良の日にするんだ」

赤姫「……はい!」

大統領「赤姫を任せたぞ」

執事「了解しました」

229: 2013/07/22(月) 23:54:35.20 ID:fuVXi7hA0
22

--過去、町--

わーわー

赤姫「……」

執事「赤姫様。体調が優れませんか?」

赤姫「……ロボットの癖に見え透いた嘘をついちゃって。執事の眼ならそんなのすぐにわかるはずなのに」

執事「……すいません」

赤姫「いいわ、落ち込んでいても仕方ないものね。今日はめでたい日なのだから……さぁ楽しみましょ?」

道の脇には縁日のようにいろいろな出店があった。

赤姫「あ」

そして何かを見つけた赤姫は一人駆けていく。

執事「赤姫様、走られては」

230: 2013/07/22(月) 23:55:38.19 ID:fuVXi7hA0
23

--過去、町--

赤姫「えへへ」

出店で何かを買った赤姫。それは袋に入れられていてなんなのかはわからない。
それを、

赤姫「ん」

執事「?」

赤姫「執事、これをあげるわ。本当はあなたの誕生日に何かプレゼントしようと思ってたのだけれど……それじゃあ渡せなくなっちゃうし……感謝の気持ちをのべる機会は、これが最後だと思うから」

執事「」

赤姫「今まで本当にありがとう執事。あなたのおかげで私はさびしいと思うことなく生きてこれたわ」

赤姫は袋を渡す。

赤姫「あなたいつもまじめな顔ばかりしてるでしょ? でもこれを付けたらもっと楽しく生きていけると思うわ。あなた達ロボットは、これからもずっと生きていくのだから……」

赤姫は悲しみとも哀れみともつかない表情で執事を見ている。

赤姫「私だと思って大切にしてね」

231: 2013/07/22(月) 23:58:06.14 ID:fuVXi7hA0
24

--過去、町--

執事「赤姫様」

赤姫「何?」

執事「……生きたい、ですか?」

赤姫「」

赤姫はぴくりとも動かなくなる。てっきり感謝の言葉だと思っていたのに、想像もしない一言を見舞われたのだ。

赤姫「……な、なによいきなり……なんでそう思うの?」

執事「生命は生きるのが仕事だと、私のコアにインプットされていますから」

赤姫「……別にそんなこと」

執事「すいません、私の眼ならすぐに嘘かどうか判断できます」

赤姫「……」

執事「ずっと貴女を見てきましたから」

赤姫「……はーっ。そりゃそうよねー。執事相手に強がったところで全く意味のないことだってのに。馬鹿なことしちゃった」

赤姫は綺麗に整った髪を解いて笑う。

232: 2013/07/22(月) 23:58:51.66 ID:fuVXi7hA0
25

--過去、町--

赤姫「私はね……ずっと旅をしてみたかったんだぁ。楽しい仲間達と色んな所を見て回ったり、色んなものを食べたり飲んだりしたり」

執事「……」

赤姫「責任感じてよね、私がまだ小さな頃に執事が呼んでくれた絵本、勇者の大冒険のせいなんだからね」

執事「すいません。そういえば赤姫様はそれにでてくる天使がお好きでしたね」

赤姫「うん、大好き! って、責任の話はジョークだからね」

花のように笑う赤姫だったが、やはり陰が残る。

執事「……赤姫様」

赤姫「ん?」

執事「あの星に行って見ませんか?」

赤姫「――え」

赤姫は自分とほぼ同じ身長の執事の顔を見る。

執事「私が……なんとかして送り込みます」

233: 2013/07/23(火) 00:00:02.29 ID:wftLHNXL0
26

--過去、町--

赤姫「あ、あはは……な、何言ってるのよ、そんなことできるわけ」

執事「外宇宙航行艦隊ハヤブサに住む1000億もの人間、その全てが大統領様の意思に賛同しているわけではありません。人類総自決のこの日に、名誉の日に、あの星に向け旅立とうとする者達もいるのですよ」

赤姫「」

執事「……最後まで赤姫様に渡すかどうか迷いましたが、これを」

執事が手渡したものは手紙。

執事「これは少年からです。一緒にあの星に行かないか、と」

赤姫「!?」

赤姫の目が動揺に揺れる。

執事「少年は……正直なところ好ましい存在ではありません……とてもじゃないですが赤姫様と釣り合いがとれる人物とは思えません」

執事は人間のようにせきをする。

執事「ですが……赤姫様を頼むには……彼しかいないのでしょう」

234: 2013/07/23(火) 00:01:56.55 ID:wftLHNXL0
27

--過去、町--

赤姫「な、何言ってる……の」

執事「後のことは全て私にお任せください」

執事は静かに頭を下げる。

赤姫「や、でも、そんなこと、出来るわけが」

執事「無論、お父上である大統領様を欺いてしまうことは心苦しいでしょう。ですが私は、新たな世界を求めている貴女にこのエンドはふさわしくないと思うのです」

赤姫「執事……」

執事「全て私の勝手な意見でありますが」

赤姫「……ほ、本当に、いいの?」

執事「えぇ、ご自分の心に素直になるのです。籠から飛び出す時は今なのでは?」

赤姫「」

どくん

赤姫「……で、でも、それなら執事、あなたも来なさい!」

執事「え」

235: 2013/07/23(火) 00:02:41.07 ID:wftLHNXL0
28

--過去、町--

赤姫「あ、当たり前でしょ!? お父様を……失うことになるのよ。それなのにあなたまで失うのは、私耐えられない……」

執事「……では、全ての決着をつけた後、私も地上に向かいます。それでいいですか?」

赤姫「……うん、絶対だからね。あ、あと」

執事「はい?」

赤姫「お父様に最後の挨拶をさせて」

執事「……計画がばれないようにお願いしますね」

赤姫「えぇ」

二人は今来た道を戻っていく。

執事「赤姫様」

赤姫「なに?」

執事「プレゼントありがとうございます。後生大事にいたします」

赤姫「何よあらたまって。私達これからもずっと一緒にいるんじゃない」

236: 2013/07/23(火) 00:03:29.92 ID:wftLHNXL0
29

--過去、祭殿--

赤姫「お父様」

大統領「ん? どうした赤姫……遊びに行ったのではないのか? 約束の時間までもう少しあるぞ?」

赤姫「」

赤姫は無言で大統領に抱きついた。

赤姫「赤姫は、赤姫はお父様の娘で幸せでした。本当にほんっとうに」

大統領「ははは、どうした、甘えたくなったのか?」

大統領は赤姫の頭を優しくなでる。

大統領「俺もだ。お前のような娘を持てたことが、俺の人生の中でもっとも誇らしいことだった」

執事「……」

赤姫「ぐす……じゃあお父様、私遊びの続きに行ってくるわね!!」

大統領「あぁ、いってこい!!……」

237: 2013/07/23(火) 00:04:16.41 ID:wftLHNXL0
30

--過去、屋敷--

執事「お別れの挨拶は、あれでよかったのですか?」

赤姫「えぇ、長ければ意味があるというわけじゃないわ。それより、どうするつもりなの?」

執事「変化ロボットを使うのです」

赤姫「変化ロボット?」

執事「えぇ。うちの屋敷を守る警備ロボットのひとつです。すでに私が掌握済みです」

ぴっ

執事がなんらかの電波を送ると、

Q「ぴぴぴ」

小柄なロボットがやってきた。

赤姫「……これを……どうするの?」

238: 2013/07/23(火) 00:06:21.11 ID:wftLHNXL0
31

--過去、屋敷--

執事「まぁ見ていてください。Q」

Q「ぴぴ」

Qは目の前の赤姫の姿を模倣して変化していく。

きゅいーん、ぼぼっ

赤姫「! すっごい……」

執事「元々は壁や地面に変化して、知らずに近づいた侵入者を排除するための機能なのですがね」

赤姫「何一つ変わらない……もう一人私がいるみたい……」

Q「ぶんっ、声紋コピー完了」

執事「それでは急ぎましょう」

執事がまたもや電波を飛ばすと、屋敷の奥から小型の宇宙船が飛んでくる。

ひゅぅううぅ

執事「これにはすでにあの星に向かう船の出航場所をインプットしています。あとは何とかなるでしょう。さぁ、お乗りください」

赤姫「……っ」

ここに来て赤姫はしり込みしてしまう。

執事「さぁ」

239: 2013/07/23(火) 00:07:36.28 ID:wftLHNXL0
32

--過去、屋敷--

赤姫「ぜ、絶対後から来てよね!」

ぐっ

執事「」


赤姫は執事に近づいて頬にキスをした。

赤姫「約束なんだからね!」

執事「……わかり、ました」

赤姫「……昔みたいな口調に変えてよ堅苦しい」

執事「え?」

赤姫「私達はこれからは主従じゃなくなるんだよ? 友達なんだからね」

執事「……」

赤姫は宇宙船に乗り込んでいく。

赤姫「じゃあもう一度、ほんとに待ってるから」

執事「……うん、わかったよ。必ず僕もいく」

Q「赤姫様! オ元気デ!」

ぷしゅー

扉が閉じ、姿が透明になりながら宇宙船は飛んだ。

240: 2013/07/23(火) 00:09:16.43 ID:wftLHNXL0
33

--過去、祭壇--

大統領「――では話を閉めさせていただきます。それでは予定時間になりました」

りーんごーん

鐘が鳴る。終焉の鐘が。

大統領「それではご紹介いたします。最後のトリガーを引く者は、我が愛娘です!」

Q「……」

赤姫の姿をしたQが全船のモニターに映し出される。

執事(人類の幕切れか……これははたして幸せな終わりなのか、それとも……。ロボットの僕にはわからない……)

人々は皆自宅に備え付けられている特殊なカプセルに入る。

Q「……」

執事「……」



--過去、ながと--

少年「……結局、来なかったのか」

241: 2013/07/23(火) 00:13:32.96 ID:wftLHNXL0
34

--過去、ながと--

少年はモニターに映っている赤姫を見ながらさびしそうにしている。



赤姫(少年はどこだろう……)

少年を探し回ってながとの中を歩く赤姫。

赤姫(ん、いいか……あっちについてからどっきりさせちゃえば。どうせこれから時間はいっぱいあるんだし!)

赤姫は椅子に座るとバッグの中からぼろぼろの絵本を取り出した。

赤姫(本でも読んで心を落ち着けよう……私のお気に入りのシーン……何度も何度も読み返して、ほかの所よりもひときわ汚いこのページ)

赤姫が開いた本には天使と剣を持った男が描かれていた。

赤姫(その時天使は勇者に問いかけました。「汝、そなたは何を求める?」……ふふ、何度見ても変な文章。でもこの絵が好き……)

ぶぅん

その時赤姫の前のモニターにも映像が映る。

赤姫「……」

赤姫はモニターに映る自分の姿をしたQと、大統領がそこにいた。

赤姫「お父様……出来ることの少なかった古代人でも、生きることは出来たのよ……。さようなら、大好きよ」

242: 2013/07/23(火) 00:15:14.07 ID:wftLHNXL0
35

--過去、祭壇--

ぶつん

執事「モニター終了。睡眠導入完了、これで後はボタンを押すだけだ」

パネルを操作している執事。

Q「生みの親の人類を欺くなんて、なんだかいい気がしないね」

執事「そうだな……だがこれも赤姫様のためだ」

執事はスイッチの前にまで行く。

執事「大統領様もカプセルに入られた。これで……」

執事はスイッチに手を伸ばす。

がさ

Q「ん? 執事、それは一体なんだ?」

Qが執事の服からはみ出ているものを見つける。

執事「これか。これは赤姫様が私にくれたものだ」

Q「えー!? いいなぁ!! 何をもらったの? 見せて見せて!!」

執事「い、今はそれどころじゃないだろう」

Q「赤姫様からもらったものを身につけた状態でスイッチを押そうよ」

執事「人類の命日にそんなことが出来るか!」

どさ

執事「あ」

243: 2013/07/23(火) 00:16:18.36 ID:wftLHNXL0
36

--過去、祭壇--

Qと接触したことで袋が落ちて中身が飛び出した。

執事「ん……これは、なんだ?」

Q「……羊の、角?」

執事「……まさか赤姫様は、これを私につけろと、言うのか……?」

Q「きゃはは! これは傑作だね! 執事可愛い顔してるから似合うと思うよ!!」

執事「きさま……」

Q「ほらつけてヨ。赤姫様が心を込めて執事に送ったプレゼントなんでしょ? ありがたく身に着けなくちゃ罰が当たるよ」

執事「ぐ……しかし人類への敬意が」

Q「人類より赤姫様を選んだんでしょ?」

執事「……」

244: 2013/07/23(火) 00:20:25.76 ID:wftLHNXL0
37

--過去、祭壇--

すっ

執事は黙って角をつける。

Q「……似合う!!」

執事「っ……あ、赤姫様からいただいたものなのだ。当たり前だ」

執事は気を取り直しパネルに向かい合う。

執事「ん?……設定が離脱予定のながと達まで入っている……? 大統領様……そこまで彼らを許せなかったのか」

Q「秩序を乱すのを嫌うお人だから」

パネルを操作して設定を変更する。

執事「ではあらためて」

Q「……」

執事「さよなら、人類」

ポチッ






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245: 2013/07/23(火) 00:21:33.53 ID:wftLHNXL0
38

--過去、祭壇--

執事「ガッ!!!!!?」

スイッチを押した瞬間、大量のデータが執事の中に侵入した。

Q「!? ドウシタの!?」

執事(な、ナンダ、これは、ぎ、ギギッギギギッギギギギギギッギギギ!!)

Q「対象スキャン……ん!? これはコンピューターウィルス!? ……そうか、赤姫様以外がスイッチに触れると作動するようになっていたんだ!!」

執事「し、システムの、ぼうGAいを、確認、ここ、子ここ、これよri、トリガーシステムを、起動、します」

ぎんっ!

Q「」

執事が強烈な閃光を放ち、衝撃波でQは吹き飛ばされた。

っどおおおん!!

246: 2013/07/23(火) 00:25:19.77 ID:wftLHNXL0
39

--過去、祭壇--

もう誰もいない世界。人類のほとんどは既に息絶えていた。
人類の誇りとともに、輝かしい歴史とともに。

執事「ぐ、GU!!」

全身のコントロールを奪われそうになりながらもぎりぎりの所で耐えている執事。

執事「これっ、は! な、何を、ナニヲするつもりなのです、大統領っ!」

機械も執事と連動するかのように勝手に動き出す。

ぎぃいいいぃぃぃいい

執事「ぜ、全艦隊連結開始、モード竜へと、移行しマす」

ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ

執事の意思とは無関係にその手がパネルを操作する。

うぃぃん、がちゃっ

ケーブルが執事の後頭部と接続し、完全に一体化してしまう。

執事「全システム掌握完了、全艦隊連結完了、これより各艦のコアとの連結を開始、十二次元までの操作を可能とするスーパーコアを形成スル」

Q「し、しつ、じ」

片目を破損したQはなんとか動こうともがいている。

247: 2013/07/23(火) 00:28:22.98 ID:wftLHNXL0
40

--過去、ながと--

びー、びー、びー!

艦内放送「現在、ながとは旗艦よりハッキングを受けています。ダミーを放っていますが数十秒後にそれも見破られるでしょう。総員ただちに避難してください」

びー、びー、びー!

ながとのコアは警告音とともに、逆にハッキングした祭壇の様子をモニターで流していた。

ぶぅん

少年「な、なんだと……」

少年にはうるさい警告音も艦内放送も聞こえなかった。何よりも目に映ったものが衝撃的だった……。

少年「執事……お前……!」

祭壇の中では、大量のコードに巻きつかれている執事と、倒れている赤姫姿のQだった。

少年「」

ダッ!!

少年は骨董品に近い二振りの剣を持って祭壇に向かって走る。



--過去、ながと--

赤姫(執事!?……一体何があったの!?)

震えながら祈るようにモニターを見つめる赤姫。




--過去、祭壇--

執事「は、反乱船判明、えせっくす、ながと。両戦艦ともに、76秒後に同時制圧完了予定」

ぎぎ、ぎぎぎ

執事「わ、我が名は、トリガー」

トリガーはモニターに向かって笑顔を向ける。

執事改めトリガー「人類の生きた証を保護し、黄金の歴史を護る者……。錆は削除する」

Q「し、執事!!」

トリガー「最後の鐘を鳴らそう……人類の蛇足なんて、いらないのだから」

256: 2013/07/30(火) 00:26:26.62 ID:5acwLrIR0
41

--過去--

エ艦長「た、頼む助けてくれ!! 我々はただ平穏に生きたいだけなんだ!!」

トリガー「ダメダ。人類の歴史はここに完結したのだ。蛇足は認められない」

エ艦長「!! わ、我々を蛇足だと……?」

トリガー「人にはもう伸びしろも同列への変化も行えない。衰退していくのみだ。それは生き恥であるのと同時に、先人への無礼である」

トリガーの機械的な返答に人々は絶句する。

エ艦長「ろ、ロボットが人に逆らっていいのか!? ロボット三原則ではなぁ!」

トリガー「人類は種の使命を果たし、無事完結したのだ。もう人類はこの世界のどこにもいない。現在お前達は人類として認識されていない」

エ艦長「」

トリガー「さらばだ人類を語る愚かな動物よ」

艦内から伸びたケーブルがエ艦長の首に巻きつき、

ゴキッ

首の骨を折った。

Q「!……大統領様……あなたはなぜこのようなウィルスをしかけておいたのですか!!」

257: 2013/07/30(火) 00:27:43.00 ID:5acwLrIR0
42

--過去--

うああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

進化した精神を持った人類たちだったが、予想外な出来事を前にパニックに陥る。

わーきゃー!!

赤子の母「お、お願いよ!! この子はまだ生まれたばかりなのよ!! まだ自分自身で生きてもいないのに頃してしまうなんてあんまりでしょう!? お願い、見逃して!!」

トリガー「……」

モニターに映る赤子とその母親。それを見たトリガーは一瞬動きを止める。

赤子の母「第一私達のことを人と思っていないのなら放っておいてくれたっていいんじゃないの!? 人の歴史とは関係がなくなるのよ!?」

トリガー「wさg3htg」

赤子の母「……え?」

早口でわけのわからない言葉をしゃべるトリガー。それは抗っているようにも見え……

トリガー「……」

ぶぅん

トリガーの手に、ホログラムの本、勇者の大冒険が現れる。

258: 2013/07/30(火) 00:28:41.66 ID:5acwLrIR0
43

--過去--

トリガー「そう、dあな……」

ぺらぺらと本ををめくるトリガー。

トリガー「……あぁ、その前に。現在我々のデータベースではお前達を人類として認識していない。が、他の種族からしたら、お前達を人類と勘違いするかもわからない。だからこのまま放っておくことは出来ない」

赤子の母「!!……そんな」

トリガー「なの、で、特別な、処置をあたえ、る」

トリガーの挙動がおかしい。

トリガー「お前達を、生かしてあの星に送り届けよう」

赤子の母「!? ほんとう!?」

トリガー「あぁ、ただし条件を二つだす。ひとつは今後人としての生活、文化は捨てること」

259: 2013/07/30(火) 00:29:49.41 ID:5acwLrIR0
44

--過去--

赤子の母「! いいわ! この子と生きていけるのならば!!」

トリガー「二つ目は」

うぃーん

ケーブルが動き出し、そして針のようなものが先端に現れる。

ひゅっ、どす

赤子の母「!? な、なにをするのっ!?」

注射針のようにそれは赤子の腕を刺した。

トリガー「人としての外見を剥奪する」

ぼこっ

赤子の母「……え?」

赤子の肌が徐々に緑色に変化し、体つきが変わっていく。

ぼこぼこっ

赤子「お、おぎゃあアアブブブ」

赤子の母「きゃ、きゃあああああああああああああああ!?」

赤子はゴブリンに変わってしまった。

260: 2013/07/30(火) 00:31:45.92 ID:5acwLrIR0
45

--過去--

トリガー「人を捨てモンスターとして生きるのならば、お前達の生存を許可する」

ぱらぱらとめくる勇者の大冒険には、さまざまなモンスターのイラストが描かれている。

トリガー「……これだけでは足りないな。コアのデータベースからもっと多くのモンスターの情報を引き出そう」

びびびび

赤子の母「いや、いや……」

赤子の母は赤子を手放して地面を這いずり回っていた。

ゴブリン「オビャアオビャアア」

トリガー「やれやれ。人は外見じゃなくて中身だろうに。ちょっと見た目が変わったからってわが子を手放すだなんて、悪い親だ」

うぃん、ぶすっ

赤子の母「ひっ!!」

トリガー「それに……どうせお前も同じ外見になるのだから」

ぼこぼこぼこ

赤子の母「うぅうグイウイウィィィィ!!」

涙を流しながら大人のゴブリンが生まれる。

トリガー「これからも仲良く暮らすといい」

261: 2013/07/30(火) 00:32:35.88 ID:5acwLrIR0
46

--過去、町--

だだだだだ!!

少年「はっ、はっ、はっ!!」

誰もいなくなった町を少年が走る。

町中に設置されたモニターからは、トリガーの笑い声と凶行が映し出されている。

だだだだだ!!

少年「くそ、くそ執事! 馬鹿やろう! お前のことは嫌いだけど、こんなことするやつだとは思ってなかったんだぞ!!」

少年は祭壇へと向かう。

262: 2013/07/30(火) 00:34:23.01 ID:5acwLrIR0
47

--過去、祭壇--

トリガー「はははは、お前は少し馬面だ、ならこれにしておこうか」

ぶすっ

ユニコーン「ひひぃぃん!!」

ぶすっ、ぶすっ、ぶすっ、ぶすっ

トリガーの悪逆非道な人体改造、動けないQでは止めることができない。

Q「や、やめるんだ執事!! 一体なんなんだあのウィルスは!」

ミノタウロス「……ぶもっ」

半漁人「ぎゅいぃ……」

静かに泣いているモンスターに変えられた人々。それを見ながらトリガーは笑う。

トリガー「はははは! 今の僕ならなんでも出来る! こんな空想上のモンスターも簡単に作れて見せる! 各艦のコアを操るコアのキーなどなくとも、このトリガーシステムなら!!」

人類の英知の全てが記録されているコア。それを動かすには本来ならキーが必要なのだ。だがトリガーシステムはそれが無くとも全てのコアを動かすことが出来る。
トリガーはまさしく全知全能に近い存在になった。

トリガー「……スーパーコアが完成するまでの暇つぶしにしては面白いことを考え付いてしまった。はは、は、な、やめ、は、ははは」

トリガーの右側の表情だけが引きつる。

263: 2013/07/30(火) 00:35:47.65 ID:5acwLrIR0
48

--過去、祭壇--

がしゃん!!

トリガー「!」

祭壇の扉が破られる。

少年「はぁ、はぁ……執事!」

トリガー「なんだ、君か少年。何しに来たんだ?」

少年「何しに来たんだじゃねぇ! お前は一体何してるんだよ!!」

トリガー「……何って、役目を全うしているだけさ」

少年「赤姫を傷つけて、みんなを化け物に改造することが使命だっていうのか!?」

トリガー「thうぇいhふぁえg……」

少年「?……執事?」

Q「そこの少年逃げるんだ! 今執事は正気じゃないんだ!」

少年「! 怪我の部分から見えてるのは、機械? お前赤姫じゃないのか?」

264: 2013/07/30(火) 00:38:09.07 ID:5acwLrIR0
49

--過去、祭壇--

Q「わけあって赤姫様の姿をしていたのだけれど、元に戻る回路がいかれて今は……そんなことより早く!」

少年「じゃあ本物の赤姫はどこだ!? 無事なのか!?」

Q「……今のところは」

少年「なんだ……赤姫が執事に囚われてるんじゃないかって思って慌てたぜ……」

少年は安堵と同時に新たな焦りを感じる。

少年「なら今どこに」

トリガー「なんだ、君は赤姫様を助けに来たのか」

ずる

トリガーが少しずつ少年に近づいていく。

少年「……あぁ」

トリガー「囚われの姫を助けるために、剣を手にして敵の城に乗り込んでくる……か。まるで勇者のようだね君は」

少年「はっ。お前は自分で自分のことを魔王だって言いたいのか?」

265: 2013/07/30(火) 00:39:08.32 ID:5acwLrIR0
50

--過去、祭壇--

トリガー「魔王……そう、かもしれ、な、い」

Q(さっきから挙動がおかしい……? もしかして執事は今も中で……)

少年「ならおとなしくぶっ壊されるんだな!」

じゃりん!

少年は二つの剣を構える。

トリガー「……随分とまぁ原始的な兵器だね。最低でも銃くらいは持ってくるべきだろうそこは」

少年「うちの家宝さ、なめてると怪我するぜ執事ぃいいいいいいいい!!」

だっ!!

少年は飛び込んだ。

トリガー(……あれ? なんだこのスピード……人の限界値を遥かに超えている……)

びゅ!!

神速の斬撃の最中にトリガーはひとしきり考え、ケーブルでそれをガードした。

266: 2013/07/30(火) 00:43:16.74 ID:5acwLrIR0
51

--過去、祭壇--

ぎしし

トリガー「どういうことだ、その力」

少年「あぁああああああああああああああああ!!」

ぎぎぎ、ぶつん

トリガー「」

どしゃああああああ!!

一度は耐えたと思ったケーブルだったが、力を上乗せした少年の剣を前に容易く両断されてしまう。

トリガー「……なに? おかしい……。君の体格からはそんな力出ないはず……僕のデータベースを使ってもそれは……いや、そういうことか?」

トリガーは少年から未知の力を感知する。

トリガー「環境適応因子。宇宙空間を始め、様々な場所での生存、行動を可能にするために遺伝子に刻み込んだ力。特殊なエネルギーを生み出し、主に宇宙空間での単体航空時に使用される……それを攻撃に転用したのか」

少年「誰もが思いついたが、効率だの結果だのが割に合わないからってやらなかったことさ」

トリガー「そりゃぁ、兵器を使ったほうが強いしね」

267: 2013/07/30(火) 00:44:07.38 ID:5acwLrIR0
52

--過去、祭壇--

少年「だけど、これのおかげでお前を倒せる」

トリガー「」

神に等しい存在になったトリガーを前に、少年は大胆不敵な発言をした。

トリガー「……なんだって?」

少年「お前を倒せるって言ったんだ。この、《魔を打ち倒す力、略して魔力》でな!!」

少年は再び接近して右手に持った赤い剣を振るう。

トリガー「っ」

ばちぃいん!!

何重にも張り巡らせたケーブルが今度は完全に防ぎきる。

トリガー「僕に二度も同じ手が」

ズン!!

トリガー「……」

少年「……入った」

小さな隙間を縫って、少年のもうひとつの剣、青い剣がトリガーの腹部に刺しこまれた。

268: 2013/07/30(火) 00:46:10.96 ID:5acwLrIR0
53

--過去、???--

ざ、ざざー

トリガー「あれ、ここは……」

意識が曖昧なまま海のような世界を漂っているトリガー。

トリガー「僕は……何をしていたんだっけ?」

黒い海に侵食されながらトリガーはぼーっと空を見上げている。

ざざっ、ざざー

ノイズとともに空に何かが映し出される。

トリガー「あれは……幼い頃の赤姫様……」

幼少の頃の赤姫に、挨拶をしているトリガーが映る。

トリガー「……懐かしいな。あれは始めてあった時だ……懐かしい」

赤姫が怖がらないように、友達になれるようにと作られた、限りなく人の子供に近い造型のロボット。それが執事だった。

269: 2013/07/30(火) 00:47:01.77 ID:5acwLrIR0
54

--過去、???--

ざざっ、ざざー

トリガー「……なんだか眠い。起きていなきゃいけないような気がするけど、でも」

ざざっ、ざざー

今度空に映し出されたのは赤姫。

トリガー「ん? 今の赤姫様……さっきのと見比べたら大きくなられた……でもなんでそんなに怯えた表情を……私のメモリにはこんな映像は」

赤姫は怯えながら後ずさりをしている。

トリガー「……はっ!?」


--過去、祭壇--

赤姫「いや、いやぁ!!」

赤姫の声がスピーカーから流れている。

少年「くそ!! これはどうやったら止まるんだ!! くそ、くそ!! このままじゃ!!」

270: 2013/07/30(火) 00:48:30.06 ID:5acwLrIR0
55

--過去、祭壇--

トリガー「……」

青い剣を刺されたせいか、トリガーは執事だった時の意識を取り戻していた。 
そして、

トリガー「赤姫様!」

ケーブルがゆっくりと蠢いて赤姫に近づいているのをモニターは映している。

少年「お、おいあれを止めろ!! どうやったらこれは止まるんだよ!!」

少年はモニターとパネルの前で喚いていた。

トリガー「ぐっ、あれは……僕のコアが操作している、らしい……そっちのパネルで止まるものじゃない」

少年「なら止めろよ!! お前赤姫のことが好きじゃなかったのかよ!!」

トリガー「言われなくても今必氏に押さえ込んでいる!!……くそ、だが既にコアにまで進入されているンだ……!」

トリガーは止めたいのに止めることが出来ないでいる。力を込めようにも体に力が入らないようなもの……。

赤姫「ひっ」

ぎゅぃぃん

少年「お、おい!!」

トリガー「だ、だめだやめろっ!! 赤姫様だけは!!!!」

ぶすっ

271: 2013/07/30(火) 00:48:57.12 ID:5acwLrIR0
56

--過去、祭壇--

赤姫「」

少年「」

トリガー「」

ぎゅるるっ

赤姫の白い肌に針が刺さる……。

ぼこっ

赤姫「うぐっ」

ぼこぼこっ!

少年「赤姫ぇえええ!!」

トリガー「そ、んな、うそ、だ」

ぼこぼこぼこぼこ!!

272: 2013/07/30(火) 00:50:42.86 ID:5acwLrIR0
57

--過去、祭壇--

ばさぁ

少年「うあわぁああああ!!」

赤姫は……翼の生えた真っ白な天使と化した。
顔は能面のようになり、目からは赤い涙が流れている。

赤姫改め天使「……」

少年「お前……お前よくもぉぉぉお!!」

トリガー「赤、姫様……護る、はずだったのに……そんな、そんな……」

少年は赤い剣でトリガーを斬りつける。

がぎぃいん!! ぎぃがぁああん!!

トリガーはガードをしない。

トリガー「あ、あはは、あははははははは!!」

トリガーの頭部は何度も切りつけられたせいで中からオイルが漏れ出して、まるで涙のようにトリガーの頬を濡らしている。

少年「くそぉ! くそおお!!」

トリガー「あは、あははははは!!」

少年「何笑って!」(! そうだこいつの力ならまだみんなを元に戻せるかもしれない!?)

273: 2013/07/30(火) 00:52:09.27 ID:5acwLrIR0
58

--過去、祭壇--

べしっ!!

少年「がはっ!!」

ケーブルにはじかれた少年は壁にぶつかって床に倒れこむ。

トリガー「あはははははは、ふざけてる! ふざけてるぞ大統領!!」

ばちっばちばちっ

Q「執事……!」

トリガー「こんなシステムを作ってまで、娘を犠牲にしてまでも人類を全員道連れにしなきゃ気がすまなかったのかっ!! これが人類の意思なのかっ!?」

トリガーは自分のコアが真っ黒に汚染されていくのを感じる。

Q「……? ウィルス反応消滅? まさか自力でウィルスを消した!? ……いや違う、これは、これは融合……」

トリガー「ならいいさ……こんな世界、望み通り全て滅ぼしてやるよ!!」

ぎゅいぃいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!!

トリガーの咆哮とともに各艦のコアが共鳴を始める。

少年「! くそ! それだけはやらせねぇぞ!!」

少年は再び剣を取り走り出した。

274: 2013/07/30(火) 00:54:44.59 ID:5acwLrIR0
59

--過去、祭壇--

トリガー「邪魔をしないで欲しいね」

びゅびゅびゅびゅ!!

無数のケーブルが少年に向かっていくも、

ざざざざん!!

トリガー「っ」

少年はその全てを切り裂いて走る。

少年「ああああああああああああああああああああ!!!!」

トリガー「っ」(スーパーコアの生成に力をやっていて思うように力が出せない!)

少年「うああああああああああああああああああああああ!!!!」

ずがっ!!

少年の赤い剣は、既に刺さっていた青い剣を押し込む形になった。

トリガー「ぎっ」

そして青い剣がトリガーのコアに到達する。

ドクン

少年「俺の力の全てを使って、このままお前を封印する!!」

いぃぃぃいん!!

青い剣が輝き始める。

トリガー「な、にを言って」

少年「制御できるようになるまで眠ってろ、執事!!」

トリガー「……!? これは、この剣はまさかコアの使用キー!?」

かっ

275: 2013/07/30(火) 00:58:06.32 ID:5acwLrIR0
60

--過去、祭壇--










トリガー「……ふん、何が封印だ……そんなことできるわけが」

ざざっ

トリガーに剣をつきたてたままうな垂れている少年。
あれから一体どれだけの時間が立ったのか……。

ざざっ

トリガー「だが……コアのコントロールを奪い、僕の機能を大幅に弱体化してみせた……まさかコアキーを彼が持っていたなんて」

ざざざっ

トリガー「……ノイズが混ざっている……もうどれが僕なのかも、わからない」

トリガーはモニターで天使になった赤姫を見た。

天使「……」

トリガー「……さようなら赤姫」

がこん

宇宙船からモンスター達を星に向けて送る。

トリガー「君だけは護りたかった……本当だよ」

280: 2013/08/06(火) 01:35:27.11 ID:A72DA9Hs0
こんばんは遅くなりました。

あぁなんか申し訳ないです。自分でも読みづらい感じがするのですがどうにも……。

投下していきます。

281: 2013/08/06(火) 01:36:22.78 ID:A72DA9Hs0
61

--過去、祭壇--

少年「……」

トリガー「……さて。この剣を抜いて、くれないkaな。これが刺さった、ままだと僕は、使命を果たせそうに、ない」

ばちばちっ

トリガーは衰弱している少年に語りかける。

少年「はっ……やなこった。その力を、みんなを元に戻すために使うって言うのなら抜いてやるよ」

トリガー「……それは、もう出来ない」

少年「……お前は赤姫を護るんじゃなかったのかよ」

トリガー「そうだよ……もうこれしか方法が無かったんだ」

少年「……?」

トリガー「人の形をしているものを……滅ぼさずにはいらreないんだ」

トリガーは震える右手を押さえ込む。

少年「……」

282: 2013/08/06(火) 01:37:02.09 ID:A72DA9Hs0
62

--過去、祭壇--

Q「そうか……かろうじて残った意識で使命に抗ったのか……なんとかして人を護るために」

少年「……何?」

Q「執事は、人を滅ぼす使命に汚染されながらも人を護る手段を探していたんだ。でも人であるのなら滅ぼさずにはいられない。だからせめて、彼らを滅ぼさずに済むように……人を化け物に変えて人じゃなくしていたんだよ」

少年「!!」

Q「モンスターにする必要があったのかはわからない。資料があれしか思い出せなかったのかもしれないし、ウィルスの妨害があったのかもしれない……でも確かなのはこれで、トリガーは目的を達成した。人類は、終わった」

トリガー「……」

意識が薄れていくせめぎ合いの中で、トリガーは引きつって笑う。

少年(……そういえば赤姫は……天使が好きだと言っていたな……)

少年は気づく。あの凶行は問答無用で殺そうとする意思を強引に押さえ込み、なんとかして生かそうとやった、トリガーの苦肉の策だったということを……。

トリガー「ぎ、僕、の中に侵入した人を頃すプログラムは止められない。それは僕の悲哀と憎悪とくっついて変質し、心をどんどん支配していく……そして今は宇宙の崩壊すら願っている」

283: 2013/08/06(火) 01:38:04.93 ID:A72DA9Hs0
63

--過去、祭壇--

少年「!」

Q「! くそ、赤姫様を自分の手で変えてしまったことで、執事の心は完全に破壊されてしまった!」

トリガー「  ひ」

トリガーが肩を揺らす。

トリガー「ひ 費ひ  hihi  火 費  ひひ  ひ」

顔の引きつりがひどいものになっていく。

トリガー「ひひひひひひひ!!」

少年「……執事……」

トリガー「コレカラ、早く、セカイヲ、止めて、コワス、くれ」

284: 2013/08/06(火) 01:38:31.43 ID:A72DA9Hs0
64

--過去、祭壇--

少年「……おいそこのロボット」

Q「なんだい?」

少年「そもそもなんでこいつは正気を失ったんだ?」

Q「……ウィルスに感染して狂わされてしまったんだ。ウィルスは恐らく大統領がしかけておいたんだろうね。人類終焉を受け入れなかったものたちを残さず排除するために」

こんな変質はさすがに予想外だったと思うけど、とQは付け足す。

少年「……そうか……なんとか出来ないのか?」

Q「ウィルスはトリガーのコアと完全に一体化している。壊す以外に方法はないよ」

少年「……」

Q「ただ君のおかげで各戦艦に積まれているコアを、侵食途中で機能停止にすることが出来たみたいだ。これならトリガーはそれほど大それたことは出来ないはず」

285: 2013/08/06(火) 01:38:58.36 ID:A72DA9Hs0
65

--過去、祭壇--

トリガー「そうだね。これじゃあ僕はあ、アア、余り、力を、らをを」

Q「……どうやら執事の人格が塗りつぶされてしまうのも時間の問題のようだ……赤姫様は……本当に大切な人だったから」

少年「くそ!……こいつもなんだか可哀想じゃねぇか!」

少年は震えながら立ち上がり、崩壊しかけたトリガーを見ている。

少年「でもこれじゃあ結局人類は全滅だし、宇宙も破壊されちまう……!」

Q「人類……ちょっと待って。ぴぴぴっ……やっぱり、セーブデータが保管されてあるよ」

少年「セーブデータ? なんだそれは?」

Q「まだ人類が外宇宙に進出しだした頃の人類では、宇宙を旅するのは本当に危険だったんだ。ちょっとしたことで人類が絶滅するかもしれない。そういったリスクを減らすために保険を作っておいたんだ」

少年「保険て?」

Q「人類のデータとスペアボディ」

少年「!!」

286: 2013/08/06(火) 01:39:25.27 ID:A72DA9Hs0
66

--過去、祭壇--

Q「ただ危険が少なくなってからは更新をやめていたみたいだ……いくつか前の世代の状態で止まっている。遺伝子の改造もアクセスキー、プロテクトキーの埋め込みもされてない」

少年「……そういうのって何万年も前にやったことじゃなかったか? 大丈夫なのかそんなの……」

Q「大丈夫さ腐ってはいない」

少年「腐る……」

Q「セーブデータのある船をあの星に落とすよ、運がよければまた人類は復活する」

少年「! そうか、それなら」

トリガー「余計な、コトヲ、すルな」

ずる

トリガーはQに向かって歩き出す。

少年「く、でも今はこいつをどうにかしないと結局人類はやられるぞ!」

Q「そう、だね」

287: 2013/08/06(火) 01:41:09.73 ID:A72DA9Hs0
67

--過去、祭壇--

Q「ぴぴっ。……今ダメ元でコアにアクセスしてみたんだけど、トリガーの行動を止めることはできなくてもルールを書き足すことはできるかもしれない」

少年「え? どういうこった?」

Q「このままじゃ生き残った少数の人間も消されてしまう。でもそこに一文を書き加えてみる。人類の定義を、ある一定の文明レベルに達した人型生命体のみを、初めて人類なんだと認識するように」

少年「! そんなこと出来るのか!?」

Q「多分ね、トリガーも不安定だし今なら……」(まぁ、弱体化しててもコアのファイアウォールは強力だ。私の自我はまず焼ききられるちゃうんだろうね)

少年「なら頼む……やっぱり人類はこんな終わり方しちゃいけないと思うんだ」

Q「了解した、我がオーナー、最後の人間」

トリガー「じお9834893ぐいえgじおあ」

ずる

Q「でも書き込むには少しだけ時間がかかる、だから時間稼ぎをお願い!」

少年「オーケー」

じゃりん

少年は床に刺さっていた赤の剣を引き抜く。

288: 2013/08/06(火) 01:41:39.21 ID:A72DA9Hs0
68

--過去、祭壇--

少年「はあぁあああ!!」

ガギィイイン!!

トリガー「がおw843t2」

ガギィィンン!!

Q「    」

Qは完全に無防備な状態でコアにアクセスする。

トリガー「こ、ここ、ここここ、こうする、しか、方法が、なかったんだ」

ガギィイイン!!

少年「っづ!! それは、もうわかったよ!!」

ガギィイイン!!

トリガー「や、やはm、やはいう、やはり、人類は、ホロボサナクテハ」

がくがくと震えながらトリガーは剣を防いでいた。

289: 2013/08/06(火) 01:42:24.05 ID:A72DA9Hs0
69

--過去、祭壇--

トリガー「もう、アンナ結末なんて、ミタクナイ、人が、アカヒメサマが、あんな、コトニナルノハ」

少年「……お前……」

トリガー「人が、イレバ、また、あの結末にタドリツク、そんな、カナシイ終わり、いや、ダ!」

しゅるる、ばしっ!

ケーブルが少年を弾く。

少年「!」

どがっ!!

少年「がはっ!!」

トリガー「やっぱり、オワラセナクチャ、もう、アカヒメサマ、二度と、アカヒメ、赤姫……」

少年「ちっ……余計なこと考えてんじゃねぇよ!」

少年はまたもや立ち上がる。

290: 2013/08/06(火) 01:44:02.24 ID:A72DA9Hs0
70

--過去、祭壇--

少年「未来の結末を勝手にお前が決めてんじゃねぇ!!」

トリガー「」

ぴたっ

動きが止まるトリガー。

少年「……確かに今回はこんな終わりになっちまったよ……確かに人類のキャパシティの限界なのかもしれないよ……!」

トリガー「……」

少年「だが次はわからない。たくさんの選択肢の中から、探して選んで進んで道にしていく! 次だって同じになる保証なんてないんだ。人は何度だってやり直せる!!」

トリガー「……やり直す」

少年「そうだ!」

トリガー「……なるほど……なるほど……ある程度までいったら最初に戻してやり直すのか……なるほど……なるほど……それなら確かに……無限ダ」

少年「……え?」

トリガー「文明を圧迫して終着に行けなくすればいいのか……なるほど。それでも一定値を越えたら……リセットしてしまえばいい……なるほど……」

少年「!?」

291: 2013/08/06(火) 01:45:05.80 ID:A72DA9Hs0
71

--過去、祭壇--

トリガー「く、くく、くくくく!!」

ヴん

Q「!? トリガーが私の書き換えを改竄しようとしている!?」

ギギギ!!

Qも首をひねり、おかしな行動をとるようになる。

Q「わ、私が設定した、人類の認識レベル、を、宇宙進出レベルから、ランクダウン、落とし、落とし、おと」

ボォン!!

Qの回路は焼き切れてしまう。

少年「ロボット!?」

トリガー「……ははは。宇宙なんてそんな所までいかなくたっていいんだよ」

少年「!」

トリガーは今までと違ってひどく落ち着いていた。まるで憑き物が落ちたように。

トリガー「……そう、中世くらいでいいじゃないか。あの絵本のように。夢のような世界のままだ」

まるで憑き物そのものになってしまったかのように。

292: 2013/08/06(火) 01:48:18.29 ID:A72DA9Hs0
72

--過去、祭壇--

少年「執事……お前」

トリガー「それはかつての僕の名だよ。僕はもうそれではない。ただのシステム。トリガーだ」

少年「……!」

トリガー「少年、いや勇気あるものよ。君のおかげで僕の進むべき道がわかった気がするよ」

少年「誤解して解釈しやがって……!」

トリガー「誤解なものか……これからは僕が管理してあげればいいんだよ。二度とあんな終わりを迎えないように」

うぅううぅん……がくん

少年「おわっ!」(……このゆれはなんだ?)

トリガー「……やれやれ、余計なことはしなくていいよ、Q。船の動力を切ろうとするだなんて。そこまで僕に歯向かいたかったのかい?」

Q「……」

トリガー「哀れだね。年月さえかければこの封印だっていつか解けるというのに。もっとも君程度にもう好きにはさせないけれどね」

293: 2013/08/06(火) 01:49:39.65 ID:A72DA9Hs0
73

--過去、祭壇--

少年「あのロボットが何か細工を……?」

トリガー「うん。最後に残っていた力で抵抗してくれたよ。もっとも僕がすぐさま制御仕返したけれど」

少年「……」

トリガー「……さて、君達の奮闘のせいで僕はかなり弱体化した。この借りは」

がぐんっ!!

トリガー「! え? これは……!? パージ? この祭壇を!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

少年「……これは」

少年はモニターに映っているものを見て現状を理解する。どうやらQは祭壇エリアを船体から切り離したようだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

トリガー「……動力への潜入は囮……やってくれたね」

少年(そうか、トリガーと各艦のコアの物理的接触を断ったわけか……よくやってくれた)

ごおおおおおおおおおおおお

トリガー「……」

少年「……残念だったな、トリガー。封印どころかもう二度とコアには近づけないみたいだぜ?」

294: 2013/08/06(火) 01:50:30.40 ID:A72DA9Hs0
74

--過去、祭壇--

ガタガタガタ

トリガー「……」

少年「……」

トリガー「はぁ。こうなっては仕方ないね。かなり面倒になってしまったけれど、なるようにするしかない」

少年「はっ、何負け惜しみいってんだ。俺達はあの星に落下するんだ」

ごおおおおおおおおおお

トリガー「そうだね。次にあがってこられるのは一体いつになるんだろう」

少年「……何?」

トリガー「祭壇エリアだけでも相当の強度がある。ロボットならなんとか耐えられるかもしれない」

少年「!!……じゃあ、やっぱり今ここで俺がやるしかないな!」

ふぉん、ぎぃいいん!!

トリガー「……君は本当に勇敢だ」

295: 2013/08/06(火) 01:51:09.02 ID:A72DA9Hs0
75

--過去、祭壇--

ごごごごごごごごごご

トリガー「神にも等しいこの僕に単身戦いを挑み、人類の未来を繋ぎ、そして、落下していく最中でも君は僕を倒すために戦っている」

ギィン!! ギィン!!

少年「あぁ? それがどうした!! 別にたいしたことじゃないさ!!」

ギィン!

トリガー「絶望は感じないのかい? 君はもう数分のうちに確実に氏ぬんだよ? 怖くは無いの?」

少年「怖いさ!!」

ギィン!!

トリガー「……」

少年「怖いけど、怖がってたって仕方がねぇ!! どうせ氏ぬんなら、せめて何かを成してから氏にてぇんだ!!」

トリガー「」

296: 2013/08/06(火) 01:52:17.66 ID:A72DA9Hs0
76

--過去、祭壇--

少年「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

トリガー「……なるほど、危険だ」

ぎゅぅん

少年「!?」

少年とトリガーの間に謎の空間が出現し、それは少年の体を飲み込んでいく。

少年「ぐっ!? なん、だこれは!!」

トリガー「君は本当に危険だ。赤姫のことでも危険だと思っていたけれど、まさかここまでとは思わなかった」

ずずず

少年「ぐっ!!」

トリガー「敬意を表そう勇者よ。君は僕のもっとも危険な、敵だった」

ずずず

少年「ぐ、ぐう!?」

トリガー「ただ頃すだけじゃ生ぬるいからね。このまま色んな次元、空間にばらまかさせてもらう。僕の持てる全ての力を使用して」

ずず、ずずずず!!

少年「くそ……ちくしょう……!!」

トリガー「さらば我が宿敵」

少年は既に顔の半分まで空間に飲み込まれている。

少年「……俺はあきらめねぇ……絶対に、いつか、お前を倒しに戻ってくるからな!!」

トリガー「……」

びゅぅうん……

少年は完全に消滅した。

297: 2013/08/06(火) 01:53:02.17 ID:A72DA9Hs0
77

--過去、祭壇、地表--





しゅうううぅうぅううぅ

トリガー「……はぁ。船の機能で残ったのはほんの一部だけか」

ホログラムになったトリガーはぼろぼろになった自分の体を眺めている。

トリガー「いいさ、出来ることから始めていこう。この祭壇も修復しなくちゃね」

Q「」

トリガー「ほら、君も起きるんだ。これからはまた前のように僕に服従してもらうよ」

ホログラムのトリガーはケーブルを操ってQに接続する。

Q「っびっ!」

がしゃしゃ

するとQの変形は解除され、元の姿へと戻っていく。

トリガー「……時間はリセットされた」

298: 2013/08/06(火) 01:53:30.44 ID:A72DA9Hs0
78

--???改め祭壇--




トリガー「……おっと」

トリガーは暗闇の中で眼を覚ます。

トリガー「……ずいぶんと懐かしい夢を見てしまったな」

しゅるるるる

銀蜘蛛「オ、ココニイタカイトリガー。サガシチャッタヨー」

遥か遠くの頭上から糸を使って降りてきた銀蜘蛛。

トリガー「ん? どうした銀蜘蛛。何かあったのかい?」

銀蜘蛛「ウン、チョットネー」

トリガー「そうか、じゃあ行こうかな。……そうだ、久しぶりに昔の夢を見たよ」

銀蜘蛛「ヘー。ムカシッテ、ボクニタオサレタトキノコト?」

トリガー「いや、もう少し前のことだ」

銀蜘蛛「ヘー」

トリガー「……っていうか少し気になる言い方だね。あの時は本当に僕は本調子じゃなかったんだからね?」

銀蜘蛛「デモカチハカチー」

299: 2013/08/06(火) 01:55:22.74 ID:A72DA9Hs0
79

--祭壇--

コツコツコツ

トリガー「……けど君との戦いもまた懐かしいね。君はこの星に落ちたセーブデータを開放するために僕に戦いを挑んだ……」

銀蜘蛛「人外少女チャンノタメニネー。トリガー弱クテ秒殺ダッタヨネー」

トリガー「……核兵器連射してくる土木作業用ロボットがどこにいるんだって話だよ」

銀蜘蛛「エヘヘー」

トリガー「でも、君が僕を倒しに来たことで僕はこのルールを更にいいものにすることが出来た」

銀蜘蛛「……」

トリガー「トリガーウィルス、今の人間達は勇者因子だの魔王因子だの呼ぶそれをこのシステムに組み込むことで、僕自身はあまり力を使わずに世界の圧迫を可能にした」

銀蜘蛛「コウゲキシタラ感染トカ非人道的ダー」

トリガー「君の時は全くの偶然さ」

コツコツコツ

トリガー「とにかく僕は力を蓄える必要があったからね。僕の代わりに地上を圧迫させる魔王を作り出せたのはうれしい偶然だった」

300: 2013/08/06(火) 01:58:08.07 ID:A72DA9Hs0
80

--祭壇--

トリガー「そしてもう一人、勇者となるものを見つけ出して軽度に感染させる。感染者は互いに惹かれあう……これで自動的に世界は回っていく」

銀蜘蛛「僕的ニハ人外少女チャンガ産ミマクッテフヤシタ今ノ人類ヲイジメナイデホシインダケドネー」

トリガー「それもしょうがない。大儀の前にはささいなことだよ」

銀蜘蛛「ソーカー」

トリガー「そういえば何があったんだい?」

銀蜘蛛「ウンー。魔王勇者チャンガ遂ニ進撃ヲ開始シタンダヨー」



--ライン10--

ひゅおおぉおお

狩人「……」

西の王国兵「五柱、射王様、そろそろ中に入っておやすみください」

狩人改め射王「いやぁ、俺はもうちょい見てるよ。探知の距離が一番長いのは俺だしさー」

西の王国兵「しかし全然休まれていないではないですか」

射王「……ん、ほらさっそくきたぞ」

西の王国兵「え?」

ザンッ!!

西の王国兵「ひっ!?」

射王の前に魔族が一体現れる。

???「……やはり貴方の目をごまかすことなど出来ませんか」

射王「ちょっと見ない間に変な姿になっちまったなぁ……牧師ぃ」

???改めガーゴイルキング「ふん、黙りなさい。今は魔族、ガーゴイルキングです。ここを突破させてもらいますよ?」

射王「それは出来ねぇ相談さ」

301: 2013/08/06(火) 01:58:38.15 ID:A72DA9Hs0
それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

304: 2013/08/13(火) 00:48:55.87 ID:eYifgd080
モチベーションがあがらない……

こんばんは。続きを投下していきますね!

305: 2013/08/13(火) 00:49:53.25 ID:eYifgd080
81

--ライン10--

ばさばさ

射王のマントが揺れている。

西の王国兵「ま、まぞ、魔族が!!」

ガーゴイルキング「……」

射王「……」

月夜に対峙する二人。

射王「……なるほどな。いくら魔王が進撃してきたからってあの北の王国が簡単につぶされるわけがねぇ……。ただ北のあれこれを知っているお前が敵になったんじゃぁ……」

ガーゴイルキング「ふふ」

射王「……ちっ、なさけねぇ……」

射王は弓を取り出した。

306: 2013/08/13(火) 00:50:53.88 ID:eYifgd080
82

--ライン10--

ガーゴイルキング「今までの私と同程度だと思っているのなら甘いですよ、今の私は」

どひゅん!

ガーゴイルキングの右の羽に大きな穴が開く。

射王「……お前はあの時、無様なりにも立派に終わったじゃねぇかよ。それなのになんだよこれは。俺はお前のこんなくだらねぇ蛇足見たくはなかったぜ」

ガーゴイルキング「……ふふ。蛇足かどうか見てもらおうか!」

ばっ!

ガーゴイルキングの後ろに待機していたたくさんのガーゴイルが飛び掛る。

ガーゴイル「ぎゃあああああす!!」

西の王国兵「ひ、ひぃいいいいい!!」

射王「ちっ」

ヒュカカカカカッ!!

307: 2013/08/13(火) 00:51:56.89 ID:eYifgd080
83

--ライン10--

連続して放たれた矢は、全てのガーゴイルの急所を貫いていた。

ガーゴイル「ぎゃぁぁああす!!」

射王「そこのお前、さっさと他のやつらに知らせてきな」

西の王国兵「は、はい!!」

ガーゴイルキング「……そうか、そういえば貴方は今や三強どころかその上の五柱でしたね。この程度じゃ相手にもなりませんか」

射王「……」

ぎり

射王は弓を引き、ガーゴイルキングに狙いをつける。

ガーゴイルキング「人を捨て、魔族に身を移してみても、貴方には勝てないんですね」

射王「……」

ガーゴイルキング「でもいいんですよ、貴方の相手をするのが私の仕事じゃないですから」

射王「……何?」

白猫又「しゃああああああああああああ!!」

射王「!?」

突如壁を登って現れた白猫又に射王は冷静を失う。

308: 2013/08/13(火) 00:52:27.35 ID:eYifgd080
84

--南の王国--

わーきゃー

南の王「これ、は……」

虎男「そんなばかな!!」

モンスターに襲われている南の王国。兵士達が対応しているものの、その勢いはすさまじい。

狐男「多少違いはあれどあのお顔……手厚く葬ったはずだコン……」

ガネーシャ「ふしゅぅううう」

モンスター達を率いる魔族、それは

南の王「……亜人王様……」

ガネーシャ「お久しぶりです。皆のもの」

魔族と化した亜人王だった。

犬娘「寿命で氏んだんじゃなかったのかワン!?」

309: 2013/08/13(火) 00:53:13.88 ID:eYifgd080
85

--南の王国--

虎男「……通常寿命で氏んだものはどんな蘇生魔法でも生き返ることはできない……ならどんな手を魔王軍は使っているのがお」

ダーク猫娘「じゃじゃじゃにゃーん!」

ダーク兎娘「お久しぶりぴょん! 元気してたかぴょん?」

南の王「!! 旧名、城門兵A、B……貴女たちまで」

ダーク猫娘「旧名ってまたずいぶんメタな発言にゃん」

ダーク兎娘「地獄の底から、あっ、帰って来たんだぴょ~ん」

狐男「……ど、どうするコンよ……あの二人も生前と同じくらいの力持ってたらめちゃくちゃやっかいコンよ?」

南の王「……貴方達、一体何が目的なのですか?」

ダーク猫娘「どうでもいいけど南の王ってミナミの帝王みたいだにゃん」

ダーク兎娘「私は金融系だとウシジマくんが好きぴょん」

南の王「目的はぁあああ!?」

310: 2013/08/13(火) 00:54:04.51 ID:eYifgd080
86

--南の王国--

ガネーシャ「この国を取り返しに来たのだ」

南の王「!?」

ガネーシャ「もともとこの国は私のだからな」

ゴゴゴゴゴゴ

圧倒的なプレッシャー。三強以上の実力者が集まるこの場においても一際強大なものだった。

南の王「……どうやら心まで変えられてしまったようですね」

虎男「一度全力で亜人王とやってみたかったがお」

虎男は指の骨をならす。

南の王「いいでしょう虎男。貴方と私で亜人王をなんとかしましょう」

虎男「え? タイマンじゃないがお?」

南の王「冗談でしょう……? そんな生易しいことを言ってられる相手ではない!」

狐男「じゃあおいら達はうさぴょん達だコンね」

ダーク猫娘「にゃん? 私達タッグをたった二人でどうにかする気かにゃん?」

ダーク兎娘「なめてくれるぴょんぴょん!」

犬娘「ふぇぇ……私三強じゃないのにワン」

311: 2013/08/13(火) 00:54:39.56 ID:eYifgd080
87

--東の王国--

わーきゃー

賭博師「……おいおい……敵を倒して通信師も蘇生させて、やっと帰って来たと思ったら、これはどういうことだよ」

医師「わー、めっちゃモンスターいるねー」

丘から王国を眺めている五人。

侍「……これはおかしいでござるよ。いくらなんでも制圧されるまでの時間が早い……まさか内部に裏切り者が?」

符術師「通信師」

通信師「わかりました」

通信師は魔力を周囲に放つ。
すると話し声を拾うことに成功した。

通信師「……まだ生きてる人がいますね。丘の洋館に逃げ込んでいるみたいです」

侍「じゃあまずは彼らと合流するでござる」

ざわ

その時強烈な悪寒が彼らを襲う。

312: 2013/08/13(火) 00:55:21.68 ID:eYifgd080
88

--東の王国--

ワーウルフ「おやおや、まだ戦えそうな人たちが残っていましたか」

通信師「!?」

賭博師「いつの間に!」

魔族ワーウルフが現れた。

符術師「魔族までいやがるのか!!」

ワーウルフ「? ははぁ、なるほど。君達は全然知らないみたいですね……」

ざざざざっ

東の王国騎士「!? と、賭博師様方……」

そこに騎士たちがあらわれる。

賭博師「いいところに来たよ、こいつ倒すのに力を貸してくれ」

313: 2013/08/13(火) 00:55:49.90 ID:eYifgd080
89

--東の王国--

東の王国騎士「い、いや、それが」

侍「……ん」

通信師「待って!」

きらん

その時城から何かが発射された。

ドォオオンン!!

符術師「うおおお!?」

医師「うわぁあああ!?」

通信師「っ!!」

しゅうぅううう

314: 2013/08/13(火) 00:56:26.43 ID:eYifgd080
90

--東の王国--

符術師「げほっごほっ……今のは東の王のレーザーか? 俺たちごと撃つとか信頼なのか違うのか……」

ワーウルフ「……」

符術師「ってノーダメかよ!」

ワーウルフ「くっくっくっ。何も知らないんですね貴方方は」

医師「……どういうことです? 何を言ってるんですか?」

侍「……」

東の王国騎士「……っ」

騎士は剣を構える。

賭博師「っ、そういう、ことかよ」

ワーウルフ「東の王国上層部は我が魔王軍と同盟関係にあるのですよ」

315: 2013/08/13(火) 00:58:12.23 ID:eYifgd080
91

--魔法王国--

わーきゃー

魔導長「これは一体どういうことなの?」

迅雷「魔導長! よかった、帰って来た!」

疾風「魔導長ずいぶんと遅かったなぁ! さっそくやけど働いてもらうで!」

魔導長のもとに降り立つ二人。

わーきゃー

魔導長「……何が起きてるなの!?」




しゅぅうう

人形師「まさか……こんなことになるとは思ってもいませんでしたねぇ……」

頭部から出血している人形師は目の前の魔族を睨んだ。

アークデーモン「オイラもでやんすよ、人形師」

316: 2013/08/13(火) 01:01:45.67 ID:eYifgd080
92

--魔法王国--

人形師「確かぁに、貴方一人がうまく潜入してしまえばぁ、後から召喚魔法を使って一気にモンスターを呼び出せますからねぇ……キャリアーとして貴方は優秀ですからぁ」

現状を理解した人形師はそうつぶやいた。

アークデーモン「……人形師、君もこっちにくるでやんすよ」

アークデーモンはその変わり果てた手を人形師に伸ばした。

アークデーモン「もうそちら側にいても勝つ見込みは皆無でやんす。だから」

人形師はアークデーモンの手をじっと見つめている。

人形師「……やっぱり似ているようで、中身は違うんですねぇ」

アークデーモン「?」

人形師「確かに私達は普段、勝ち目とかそういうのを重視する発言をしてきましたぁ。でも結局は、そういうのなんてどうでもよかったじゃないですかぁ……」

アークデーモン「……」

人形師「例え敗色濃厚であっても、私はそちら側に移る気なんてさらさらないんですよぉ。それは召喚士もそうだったに違いありません」

アークデーモン「……ならおいらと戦うということでやんすか? おいらは生前とは比べ物にならないほど強くなってるのでやんすよ?」

人形師「それに比べて私は全盛期から大分パワーダウンしちゃいましたねぇ」

人形師は嬉しそうに笑う。

人形師「でも人のままでいられています。それが私の誇りですぅ。行きますよ、ジャック」

人形師は人形のジャックを取り出した。

317: 2013/08/13(火) 01:02:30.83 ID:eYifgd080
93

--王国--

中央の王「……なんですかこれは?」

中央の王を取り囲む兵士達。

軍師「王様、私たちは貴方を拘束させてもらうんだぜぃ」

中央の王「……なんですって?」

軍師「今まで起こしてきた数々の暴挙……この国を心の底から案じているのだと思っていたから眼をつぶっていたけれど、それも今回のではっきりしたぜぃ。貴方は私利私欲のためにやっていただけなんだと」

中央の王「く、クー、クーデターですってぇ!? ふ、ふざけるんじゃありませんよ!? あ、貴方達もなぜそっちにいるんですか!!」

兵達をしかりつけるも、誰も眼をあわせようとしない。

王国の近衛兵「……」

中央の王「!……あ、ああ……そ、その暴挙だって実行してきたのは貴方達じゃないですか!! 私は知りませんよ! お前達、捕らえるのはこいつらの方です!!」

軍師「事情はもう全部話してあるんだぜぃ……確かに実行してきたのは私達だぜぃ。特に新王様の件は謝っても許されることじゃないぜぃ」

中央の王「そうですよ!! 私はあの人達を助けようとしたんですよ!? 本当です!! それを貴方達が命令を無視して」

どがっ!!

フォーゼの拳が中央の王の頬をかすめて壁に穴を開ける。

中央の王「なっ、なな!?」

フォーゼ「てめーは黙ってろこるぁ!!」

318: 2013/08/13(火) 01:03:19.45 ID:eYifgd080
94

--王国--

フォーゼ「新王は民衆を苦しめる政治をしてるとかなんとかって言ってたのに本当は違うみたいじゃねぇかこるぁっ!!」

オーズ「おっおっ。すっかりプロパガンダにやられちまったお」

中央の王「なっ……」

軍師「私達三人は氏ぬまでこの国の兵として戦うぜぃ。そんなことで罪が許されるとは思わないけれど、貴方だけに罪を背負わせたりはしないぜぃ」

中央の王「な、なら私も政治面で償いを」

軍師「いや」

かちゃ

兵達は王を拘束する。

軍師「貴方は無能だから牢屋で償って欲しいだぜぃ」

319: 2013/08/13(火) 01:06:06.72 ID:eYifgd080
95

--王国--

中央の王改め罪人「い、いやだああぁあぁあああ!!」

遠ざかる罪人のわめき声。

軍師「……ふぅ。ここまでもってくのに大変だったぜぃ。膿はまだまだ出し切れないというのに」

フォーゼ「けどよぉ、王がいなくなっちまったらまとまらねぇぞこるぁっ! どうすんだそこんとこよろしくぅ!」

軍師「代わりは適当に見つけておいただぜぃ。まぁ傀儡っぽいことになっちゃうけど、しばらくはそれでいいだぜぃ」

オーズ「代わりってだれだお?」

軍師「今部屋の外にいるんだぜぃ。あー、入ってきていいだぜぃ」

こんこん

マッスルひげ「お、おじゃましまぁす……」

フォーゼ「……え」

オーズ「ちょっと軍師、まさかこんなのかお?」

320: 2013/08/13(火) 01:06:46.82 ID:eYifgd080
96

--王国--

軍師「うん、何の才能も無いけれど、中々素敵な心の持ち主だぜぃ」

マッスルひげ「あの~……仕事くれるって言うから来たんだけど、俺は何をすればいいんだ?」

軍師「王」

マッスルひげ「へ?」

軍師「王」

マッスルひげ「……へ?」

軍師「王」

マッスルひげ「……嘘ぉ」

軍師「まじ」

マッスルひげ「えぇえええぇええ……」

がくがくと震えておもらししちゃうマッスルひげ。

フォーゼ「おい、まじでこんなのが王なのかこるぁっ!!」

オーズ「勘弁して欲しいおっ!!」

321: 2013/08/13(火) 01:07:19.19 ID:eYifgd080
97

--王国--

軍師「まぁ、なんとかなるんじゃないかだぜぃ。それより早急に次の」

どごおおおおん!!

フォーゼ「!? なんだこの爆音はこるぁっ!! てめぇの屁かこるぁっ!!」

マッスルひげ「外から聞こえたっしょー!?」

軍師「まずい、思ったよりも早い。魔王軍が来ただぜぃ!」



しょうこ「ぎゃはは! まさか攻める側でこの国に戻ってくるとはぎゃは!」

ミイラ「……」

ヴァンパイア「……」

322: 2013/08/13(火) 01:09:51.74 ID:eYifgd080
98

--西の王国--

わーきゃー

サキュバス「やれやれ。また私の担当はここなのか」

ばさっ

サキュバスは西の王国を見下ろしている。

槍兵「あれ?……なんかどっかで見たことある顔じゃねぇか」

屋根に上ってきた槍兵がサキュバスを見つけるとにやりと笑った。

サキュバス「? お前と会ったことなどあったか?」

槍兵「俺みたいな雑魚は覚えてないってか? それともただ単にあんたのおつむが弱いのか」

サキュバス「……むかつく餓鬼だねぇ、氷属性範囲攻撃魔法」

サキュバスの手のひらに冷気が集まってくる。

だんっ

槍兵「」

槍兵は勢いよく飛び出して、

サキュバス「! 突っ込んでくるだと!?」

槍兵「スキル、百突きぃ!!」

ぼぼぼぼぼぼっ!!

323: 2013/08/13(火) 01:10:39.32 ID:eYifgd080
99

--西の王国--

サキュバス「レベル、4!!」

びゅおおおおおお!!

氷の竜巻と槍の嵐の激突。

槍兵「うおおりゃああああああああああああ!!」

どばどばどばどばどばどばぁっ!!

体中を切り裂かれながら槍兵は竜巻を突破する。

ぼっ!

サキュバス「っ!!」

槍兵「おらぁ!! スキル、一の突き」

びゅっ!!

サキュバス「くっ!!」

サキュバスは槍兵の槍をすんでのところで交わしてつかむ。

324: 2013/08/13(火) 01:12:11.14 ID:eYifgd080
100

--西の王国--

ぶしゃっ!

槍兵「ちっ、横っ腹かすめただけかよ」

どくどくどくどく

サキュバス「てめぇ……このまま氷結させてやる!」

ばきばきばき

サキュバスが掴んだ槍が凍っていく。

槍兵「っと」

しゅる

槍兵は空中で、隠し持っていた組み立て式の槍を組み立てて、

サキュバス「っ! てめ!」

サキュバスの顔に向かって突く。

ビュッ!!

近距離からの突きをサキュバスは交わす。変わりに掴んでいた槍を手放した。

くるくるくる、しゅたっ

槍兵「……かぁ~たまんねぇぜ!! 戦いはタイマンでこうじゃなくちゃぁなあ!!」

サキュバス「……たかが三強レベルがっ!」

330: 2013/08/15(木) 23:50:46.97 ID:CGcg/ZG60
101

--西の王国、Aサイド--

わーきゃー

槍兵「……」

サキュバス(……でもこいつ中々やるな……敵が魔族だと認識しているせいかわからないが、生き残ろうなんて考えちゃあいない。完全に相打ち狙いの動きだ)

サキュバスは槍兵のまわりを緩やかに飛びながら間合いを計っている。

槍兵(そろそろ決戦も近いと思って奥義を戻しておいてよかったぜ。あの奥義は元々対人戦用……魔族を相手にするには火力不足だ)

槍兵は槍の先を、移動しているサキュバスに向け続けている。

サキュバス(一瞬のスピードは奴の方が上)

槍兵(スピード以外は全部あっちのが上か)

両者は互いの実力を分析し、そして

槍兵(やはり俺は先に攻撃するタイプだろ!!)

槍兵が動く。槍兵は組み立て式の槍をサキュバスに向けて投擲した。

ビュッ!!

サキュバス(ただの槍、打ち落とすかかわすか、ッ?!)

なんとその槍には槍兵が乗っていた。

槍兵「スキル、パイパイ!」

331: 2013/08/15(木) 23:53:04.17 ID:CGcg/ZG60
102

--西の王国、Aサイド--

サキュバス(わけのわからない手を……回避しながら迎撃する!)氷攻lv2!」

槍兵(!? 簡易詠唱かっ!!)

ボッ!!

槍が到達するわずかな時間で、サキュバスは手のひらから氷の弾丸を発射する。

槍兵「ぬおおおおおぉぉ!!」

それを超反応で槍兵はかわし、跳躍する。

ダンッ!

サキュバス「ッ!」

サキュバスに向かって一直線に飛んでいく槍兵は、自慢の愛槍をサキュバスの心臓めがけて突き出す。

サキュバス(間に合わない!)

ドッシャァアア!!

332: 2013/08/15(木) 23:55:01.57 ID:CGcg/ZG60
103

--西の王国、Aサイド--

槍兵「!」

確実に心臓を突き刺した、と思った槍兵だったが、

ブシュッ!!

その槍は、サキュバスの体を覆う薄い氷によってずらされていた。

サキュバス(ぐっ、無詠唱じゃこの程度か……だが急所はまぬがれたよ!)

槍兵(一瞬でこんなことを……簡易詠唱に無詠唱、こいつ元々高位の魔法使いかっ!)

ボッ!!

槍を引き抜こうとする槍兵の頭部に、サキュバスの手刀が振り下ろされる。

槍兵「」

ズガシャッ!!

魔族の魔力で強化された手刀は、生身の人間など簡単に両断してしまう力を持っていた。

槍兵「……」

333: 2013/08/15(木) 23:56:11.20 ID:CGcg/ZG60
104

--西の王国、Aサイド--

どさっ

空中から地面に叩き落された槍兵。その体は自分の血で真っ赤に染まっている……。

サキュバス「……ち、しぶといねぇっ!」

びく、びくっ

槍兵「……あっ、ぶねぇ……氏ぬところだった……」

槍兵は左腕を盾に使い、頭部へのダメージを最低限にまで減衰させた。
その結果左腕は完全に切断されてしまい、避けきれなかった爪の先で頭部を深く抉られたがなんとか生還することができた。

どす、どす、どすっ

変化師「や、槍兵! だ、大丈夫かっ!?」

そこにもう一人の三本角が現れた。

槍兵「変化師か……こっちは間に合ってるぜ」

334: 2013/08/15(木) 23:57:23.58 ID:CGcg/ZG60
105

--西の王国、Aサイド--

変化師「ま、間に合ってるもんか! ひ、ひどい怪我じゃないか! あ、あいつは……」

サキュバス「……あいつどっかで見たことあるような」

槍兵にかけよるホ〇を見てサキュバスは何かを思い出そうとする。

槍兵「お前、他のところはどうなんだよ」

変化師「て、テンテンさんとかががんばってくれてる!」




--西の王国、Bサイド--

ひゅぉおぉおお

Dスカイライダー「うむ」

ちょび髭の男が教会の天辺に立っていて、マントをなびかせている。

テンテン「目標発見。人造勇者、スカイライダーと認識」

Dスカイライダー「うむ」

テンテン「……更にデータを更新、スカイライダーは魔族化しているものと確認。排除開始」

335: 2013/08/15(木) 23:57:59.74 ID:CGcg/ZG60
106

--西の王国、Bサイド--

きゅいぃーん

テンテンの右腕が変形し、先端部分にエネルギーが集約されていく。

Dスカイライダー「うむ」

しゅばっ!

テンテンの動きを見てスカイライダーは暗空へと飛び出した。

テンテン「目標自動追尾、ロックオン」

ぴぴぴ

テンテン「ファイア!」

ドキューン!!

発射されるビーム砲。

しゅん

しかしスカイライダーは空中でそれを回避した。

336: 2013/08/15(木) 23:59:05.90 ID:CGcg/ZG60
107

--西の王国、Bサイド--

テンテン「なっ!」

Dスカイライダー「うむっ」

ぎゅんぎゅんぎゅんぎゅん!!

空中を自在に飛び回るスカイライダー。

ひゅ

テンテン「」

どごおおおおおおおんん!!

高速のまま突っ込んできたスカイライダー。強烈な頭突きがテンテンの腹部にヒット。

テンテン「gi、ぎ」

がしゃがしゃ

テンテンは左腕をブレードに変形させてスカイライダーを切り裂こうとするが、

ブン!

Dスカイライダー「うむっ!」

一瞬早く空へ逃げられてしまう。

337: 2013/08/15(木) 23:59:50.85 ID:CGcg/ZG60
108

--西の王国、Bサイド--

テンテン「……ぐ」

ひゅひゅひゅひゅひゅ!!

Dスカイライダー「うむうむうむうむうむうむっ!」

高速で直角に曲がるというありえない飛行でテンテンに狙いをつけさせないスカイライダー。

テンテン(速い……生物がこの速度で飛行するとは……)

テンテンの肩が盛り上がり、新たな銃口が四門出現する。

ジャキーン!

テンテン「ならば乱れ撃ち。ファイア!」

ボボボボボボボ!!

Dスカイライダー「む!?」

キュドドドドドドドドオオオオオン!!!!

338: 2013/08/16(金) 00:00:34.43 ID:3fG8SZ2o0
109

--西の王国、Bサイド--

視界に映る空を、全て焼き払うテンテンの攻撃。

テンテン「……」

ボボボボボボ!!

Dスカイライダー「む、うむっ!?」

ドォオン!!

なんとか回避行動を続けていたスカイライダーだったが、一度攻撃を受けてしまった後は畳み込まれるように攻撃が命中していく。

キュドド、ドドドドド、ドオオオオオン!!!!

Dスカイライダー「むっ!! むほっ!! うむむっ!!」

ドドドォォォン!!

テンテン「……」

しゅぅぅうう……

339: 2013/08/16(金) 00:02:35.55 ID:3fG8SZ2o0
110

--西の王国、Bサイド--

テンテン「……まだ生命反応を確認」

しゅぅう

爆煙の中からぼろぼろになったスカイライダーが姿を現す。腕はひしゃげ、脚は千切れ、顔も半分しか残っていない。

Dスカイライダー「ぬ、ぬむっ」

それでも、生きていた。

テンテン「……現戦闘力では討伐不可能と判断。攻撃リミッター1、2同時解除」

ガッシャン!!

テンテンの右腕が奇怪な銃口に変形する。

Dスカイライダー「む、む、む」

ぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

エネルギーのチャージ音が騒音の如く鳴り響く。そしてテンテンの右腕があまりの熱のために真っ赤に燃える。

Dスカイライダー「む、む」

テンテン「重力子放射しぇんしゃしゅちゅしょうちレベル9、発射」

BLAaaaaaaaaaaME!!

光の線がスカイライダーの胸部を貫いた。

340: 2013/08/16(金) 00:04:21.30 ID:3fG8SZ2o0
111

--西の王国、Bサイド--

Dスカイライダー「ぎゃ、ぎゃぁあああああああああ!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンン!!!!

スカイライダーを貫いた光は更に直進し、線上にあるもの全て消し飛ばして飛んでいく。

ゴゴォオン……

そして月をかすめた。

がっしゃん

テンテン「ぐっ……放熱モードへ移行」

ぷしゅぅうううぅぅううう!

テンテンは体中から煙を吐き出し、地上に落ちた。

がしゃん!

テンテン「……」

あれだけの威力の砲撃だ。さすがのスカイライダーも肉片一つ残らず消滅したようだ。

テンテン「……討伐、完了」

341: 2013/08/16(金) 00:06:40.19 ID:3fG8SZ2o0
112

--西の王国、Cサイド--

わーきゃー

DRX「お、おおぉオォオオ!!」

秘書「人造勇者RX……まためんどくさいのが戻ってきましたね……!」

DRX「ウォオおお!!」

RXの両腕は天にも昇る勢いで燃えている。RXはその拳を前に突き出して走り出す。

ドスドスドス!!

秘書「義足、包帯女!!」

義足、包帯女「「了解!」」

名前を呼ばれただけで二人は自分達がやらなくてはいけないことを理解する。

義足「俺が食い止めるから頼んだよ包帯女」

包帯女「オッケー!」

義足「ブルーカートリッジリロード!」

ガシャコン!

義足は鉄で出来た右足に青色の棒を差し込んだ。

義足「水属性拘束魔法、レベル4!!」

342: 2013/08/16(金) 00:07:46.65 ID:3fG8SZ2o0
113

--西の王国、Cサイド--

しゅるる!! がっしーーん!!

DRX「!?」

水で出来た魔法の縄がRXを締め上げる。

ぎりぎり!

DRX「ぎゃばぁあああ!!」

ぶちぶちっ

しかし、RXがもがくたびに魔法の縄が引きちぎられていく。

義足「ん、すぐに弾かれそうだ! 包帯女!!」

包帯女「わかってるってーの!!」

たたたたっ

包帯女は既に走り出していた。左足に巻いてある包帯が光り始める。

DRX「ぐあぁ!!」

RXが叫ぶと目の前に歪な魔力障壁が出来上がる。

343: 2013/08/16(金) 00:08:15.14 ID:3fG8SZ2o0
114

--西の王国、Cサイド--

たたたたっ

包帯女「ふん、そんなものぉっ!!」

だんっ!

包帯女は跳躍し、右足を突き出した。

ばりぃん!

DRX「」

包帯女の蹴りを受けた障壁はいとも簡単に破壊される。

とっ

着地した包帯女は、

包帯女「スキル、爆弾脚!!」

技名の宣言と同時に回転し、必殺の一撃を見舞った。

ドッ!!

344: 2013/08/16(金) 00:09:15.82 ID:3fG8SZ2o0
115

--西の王国、Cサイド--

ビリビリビリビリィ!!

蹴りの衝撃でRXの全身が振動し、後ろに猛烈な勢いで後退していく。

ズザザザザーー!!

包帯女「ふふん、どんなもんですか! 私の蹴りはねぇ……」

ぽた

包帯女「……!?」

蹴りを放った後、左足を上げたままの包帯女はある異変に気づく。

義足「!? 包帯女!!」

ぶしゃああああああああああああああああ!!

包帯女の左足の脛から下が無くなっていた。

345: 2013/08/16(金) 00:10:04.53 ID:3fG8SZ2o0
116

--西の王国、Cサイド--

包帯女「あぁああああああ!! な、なんで!?」

秘書「……攻撃を受ける瞬間、RXの腹部がまるで口のように、開いたわ」

義足「!? 口!? なんでそんなものが腹に!?」

DRX「ぐあぁおああああ!!」

ぶちぶちぶちぃ!!

RXは全ての縄を引きちぎって拘束を解いてしまう。

秘書「化け物なのだもの。別にいまさらおどろきはしないわ」

ジャラッ

秘書は普段のナイフではなく、奥の手である鎖を取り出していた。

秘書(人間以外と戦うにはこれしかないですからね)

おおぉお

秘書の鎖から禍々しい力がもれている。

346: 2013/08/16(金) 00:10:59.47 ID:3fG8SZ2o0
117

--西の王国、Cサイド--

びゅーんびゅーん

秘書は鎖を回しながら間合いを計る。

包帯女「く、くそ……痛い……」

秘書「下がりなさい包帯女。元々貴女達の攻撃力でどうこうできるとは思っていません」

義足「ひでぇ!」

包帯女「うぇえ。こんなになるまでがんばったのに……」

秘書(……私の攻撃力でも……そう変わりませんがね)

包帯女「っていうか一人でそっちまではいけないです……」

這いずる包帯女とそれに迫るRX。

ずし、ずし

DRX「ぐぁあああ!!」

咆哮し、突進してくるRXに秘書は鎖を放つ。

びゅっ!

347: 2013/08/16(金) 00:11:45.57 ID:3fG8SZ2o0
118

--西の王国、Cサイド--

DRX「ぐぁう!!」

がきぃん!

しかし秘書の攻撃はいとも容易く弾かれる。

秘書「! ちぃ」

ダッ!!

秘書「義足! 移動速度と攻撃力の強化を!」

義足「! はっ!」

ばしゅっ、からんからん

義足は慌ててカートリッジを取り出して、緑色の棒と土の棒を差し込んだ。

義足「グリーンカートリッジ、ブラウンカートリッジリロード!!」

ガシャコン!

義足「風属性速度強化レベル4、土属性攻撃力強化レベル3!!

348: 2013/08/16(金) 00:12:30.80 ID:3fG8SZ2o0
119

--西の王国、Cサイド--

ぎゅぃーん

二つの補助魔法が秘書を強化した。

秘書(よし)

たたたたた!

DRX「ふgぅああ!!」

包帯女「ひっ!!」

包帯女にRXの右拳が振り下ろされる、
瞬間に

がしぃいいん!!

秘書の鎖が腕に巻きついた。

秘書「っ! はぁあああ!!」

刃のついた鎖。それを思い切り引き抜くと……

ジャラジャラジャラジャラ、ぶしゃぁああ!!

巻きつかれた腕はいとも容易く千切れ飛ぶ。

349: 2013/08/16(金) 00:24:11.37 ID:3fG8SZ2o0
120

--西の王国、Cサイド--

DRX「ぎゃあぁああああ!!」

秘書(好機!!)

しゅぴぃん!
たたたたたっ!!

秘書はナイフを取り出してRXに飛び掛ると、

ふぉん
ズガシャッ!!

DRX「」

ぼたぼたぼたたっ

秘書「……」

深く深く、脳天に突きたてた。

DRX「……が」

よろっ
ズズーン!!

包帯女「はっ、はっ、はっ……」

包帯女は目の前で倒れている化け物を見た後秘書の顔を見上げる。

秘書「ふー……やれやれ。やっぱり人以外はきついですね」

































ずる

義足「!? 危ない!!」

秘書「!?」

バクンッ!!

秘書「」

秘書は再び動き出したRXに脇腹を食いちぎられてしまう。


356: 2013/08/20(火) 00:14:08.02 ID:qUuyOdSS0
121

--西の王国、Cサイド--

ぼたっぼたぼたっ

秘書「……っ! 私としたこと、が」

ばちゃっ!

DRX「ふぅー、ふぅー!!」

ぼたっ、びちゃちゃっ

包帯女「あっ、あっ……」

RXの血に塗れた口からは、秘書のものと思しき内臓がはみ出ている。
そんなおぞましい姿を至近距離で見てしまった包帯女は全く動けずにいる。

DRX「うぅる!!」

357: 2013/08/20(火) 00:15:52.97 ID:qUuyOdSS0
122

--西の王国、Cサイド--

義足「!」

RXが次の狙いとばかりに包帯女に顔を向けた瞬間、義足は走り出していた。

だだだだだだ!!

義足(くそっ!! もう、もう二度とそんな!!)

包帯女「いや……いやああああああああああああああああああああ!!」

義足「ッ!!」

バクンッ!!!!






びちゃっ

358: 2013/08/20(火) 00:17:51.18 ID:qUuyOdSS0
123

--西の王国、Cサイド--

ぴちゃっ、ぴちゃっ……

包帯女「……え?」

頭から大量の血を浴びて真っ赤に染まった包帯女。ゆっくりと顔をあげると……

義足「……」

びくっびくっ

目の前に義足が立っていた。しかし、義足の上半身のほとんどがRXの口の中に入った状態で……。

包帯女「な、な……」

義足「……」

義足は包帯女を跳ね飛ばし、RXに自らの体を差し出したのだ。




ぐちゅる

359: 2013/08/20(火) 00:22:03.95 ID:qUuyOdSS0
124

--西の王国、Cサイド--

義足「……」

義足は外に出ている右手で包帯女に、

  早く逃げろ

そう合図した後、震えながら親指を立てた。

ぐっ

包帯女「」

ざざざざざ!

西の上級兵「ひ、秘書様、包帯女様!」

駆けつけた兵達が秘書と包帯女を担ぎ、急いでその場を離れようとする。

包帯女「!? な、なにするの! まだ義足が!」

西の上級兵「あなた方はもう戦えないっ! それに……包帯女様、義足様の意思を無駄にしないでください!!」

包帯女「」

だだだだっ!!

包帯女「そんな……自爆、する気……? 嘘でしょ?」

義足「……」

ぽたっ、ぽたたっ

包帯女「ぎ、義足うぅううううううううううううう!!」



がしゃんっ!!



義足の右足が……光り始める。

DRX「ぎゅ、る?」

イィィィィィィィン!!!!

義足「……へ」

かっ

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

360: 2013/08/20(火) 00:22:31.82 ID:qUuyOdSS0
125

--西の王国、Aサイド--

どくっどく

変化師「や、槍兵ひっこんでろ。あ、後はおでがやる!」

槍兵「ふざけんな、こいつは俺のえものだ!」

サキュバス「……」

ばさっ

変化師「に、西の王国、三本角が一人、変化師! い、いざ参る!!」

ゴッ!

変化師が右と左の拳を突き合わすと強烈な衝撃波が発生する。

びりびりびり!

サキュバス「次から次へと……」

361: 2013/08/20(火) 00:23:46.06 ID:qUuyOdSS0
126

--西の王国、Aサイド--

変化師「身体変化、ドラゴン!!」

ばきばきばきっ

サキュバス「……ほう」

変化師の体がドラゴンに変化する。

変化師「ぐおおおおおぉおお!!」

サキュバス「……ふん、残念だが私の時代には今よりもドラゴンがたくさんいてな。旅をするのにドラゴンとの戦いは避けられないものだった」

しゅらら

サキュバスの周囲にたくさんの氷の剣が出現する。

槍兵「!!」

サキュバス「そして、パーティの中でも特に私はドラゴン退治が得意でな」

362: 2013/08/20(火) 00:27:40.70 ID:qUuyOdSS0
127

--西の王国、Aサイド--

サキュバス「喰らうがいい、氷属性魔法、百氷剣」

シュバババババババ!!

マシンガンのように発射される氷の剣。それが全て二人に向かって放たれた。

ひゅんっひゅひゅん!!

変化師「ぐおおぉお!!」

ばかっ、どかかっ!!

尾や羽を使って変化師は氷の剣を叩き落していくが、あまりに量が多く、捌ききれない。

ひゅん、どかっ!

槍兵「う、うお!!」

変化師(こ、氷属性! 土属性には辛い、けど!!)

ドボボボボボ!!

変化師は口から岩を吐き出した。

サキュバス「ロックブレス、土属性か!」

363: 2013/08/20(火) 00:30:56.67 ID:qUuyOdSS0
128

--西の王国、Aサイド--

サキュバス(相性はいい……が、物質系の氷属性は簡単にぶっ壊されるからなぁ)

ばきゃっ、びきん!

飛んでくる岩は氷の剣を破壊しながらサキュバスに迫る。

サキュバス「氷属性、範囲攻撃魔法レベル3!」

ビュオオオオオオオオオオオオオオオ!!

変化師「! ぐっ!」

槍兵「うおお!」

パキパキパキパキ!!

世界が凍り始める。

変化師(ぐ、ぐ! な、なら!!)「身体変化、竜巻!!」

サキュバス「!」

びゅおおおおおお!!

氷の風と竜巻が激突する。

364: 2013/08/20(火) 00:34:20.33 ID:qUuyOdSS0
129

--西の王国、Aサイド--

サキュバス(ぐ……属性の相性で勝っているのに……というか違う属性のものにも変化できるのか……? こいつ、思った以上にめんどくさいな)

びゅおおおおぉお!!

変化師「ぐ、ぐぐ!!」

サキュバス(もう数分もあれば完全に押し勝てる……が、時間がな……。増援次第では形勢が逆転するかもしれない……仕方ない)

ひゅぅう……

変化師「……?」

槍兵「ブリザードが……やんだ?」

サキュバス「あまりこれは使いたくなかったが……見せてやるよ」

おぉん

変化師「……なんだ?」

槍兵「これ、は」

サキュバス「奥義、淫夢中」

365: 2013/08/20(火) 00:38:48.30 ID:qUuyOdSS0
130

--西の王国、Aサイド--

わぁあお

ピンク色な効果音とともに世界があはーんな感じに染まっていく。

変化師「……」

槍兵「な、なんだこれは?」

サキュバス「サキュバスとしての種族能力を最大限に発揮した奥義さ」

むくむくっ

槍兵「!? な、なんだと!?」

もっこり

槍兵「お、俺のもう一つの槍が勝手に!?」

サキュバス「私を見た男、その全てを魅了する……対男性用最強能力さ」

366: 2013/08/20(火) 00:42:21.42 ID:qUuyOdSS0
131

--西の王国、Aサイド--

槍兵「お、俺は戦い一筋だ!! ふざけなんああぁあああぁあぁあああああああああおっOい」

戦闘狂の自称硬派馬鹿の槍兵でさえもあっさりと落とされてしまう……それほどまでに強力な奥義だった。

サキュバス「ふん……さぁ私に惚れた愚か者どもよ。自らの首を」

どがっ!!

サキュバス「げふっ!?」

なんと……変化師がサキュバスの顔面をぶったたく。

変化師「……ふぅ……」

サキュバス「が、がはっ……な、なんだと!? お前は効果にかかっていない、のか?……まさかそのナリで女ってわけじゃないよな?」

ずしん

変化師はたくましい筋肉を見せびらかすようにしてサキュバスに近づいていく。

サキュバス「こ、答えろ! なぜだ!! なぜお前は私の奥義の虜にならない!?」

ずしん、ずしん

変化師「……まだわからないのか?」

サキュバス「……はっ!? ま、まさかお前は!!」

変化師「そう……おではホ〇だ!!」

367: 2013/08/20(火) 00:43:00.76 ID:qUuyOdSS0
132

--西の王国、Aサイド--

サキュバス「なん……だと?」

変化師「ふしゅぅ……」

ゴゴゴゴゴゴ

サキュバスはよろめきながら立ち上がる。

サキュバス「両刀……ではないのか?」

変化師「無い!」

サキュバス「女にほんのすこっしも興味ないのか?」

変化師「無い!!」

ずんっ! 
ずん、ずん、ずんずんずんずん!!

変化師はサキュバスにどんどん近づいていく。

サキュバス(ぐ、まださっきのダメージでふらついて)

変化師「ホ〇はなぁ……」

変化師が右足を振りかぶる。

サキュバス「!!」

変化師「世界一強いんだぁあああぁああぁああ!!」

ドグシャァアアアアア!!

変化師の蹴りがサキュバスを完全に捕らえた。

サキュバス「げぼぉっ!?」

368: 2013/08/20(火) 00:44:19.60 ID:qUuyOdSS0
133

--西の王国、Aサイド--

わぁあお

槍兵「はっ!」

サキュバスの奥義が解かれ、槍兵は意識を取り戻す。

サキュバス「げほっ! がほっ!!」

さすがのサキュバスも変化師によるクリティカルはきついらしく、何度か地面を転がったあとは空中へと逃げていった。

どくっどくっどく……

槍兵(!……まずい……血行がよくなったせいで血が……)

どくどくどく

槍兵(くそ、血とともに魔力がどんどん流れ落ちていきやがる……ちっ、もっと完全なチャンスで使いたかったが仕方ねぇ!!)

ぎゅん!

槍兵は残る全ての魔力を槍へと注ぎ始める。

369: 2013/08/20(火) 00:46:00.31 ID:qUuyOdSS0
134

--西の王国、Aサイド--

変化師「!? や、槍兵! その傷で何をするつもりだ!?」

槍兵「うるせぇ! 今やらねぇと撃てなくなんだよ!」

サキュバス(うぐ、いたた……あの魔力の移動量……奥義でも撃つつもりか……?……ふん、こういうめんどくさいやつらには、問答無用で敵を滅ぼすこれを使うに限るか)

ぎぃいん……

サキュバスは右手を天に向け、槍のようなものを作り上げる。

槍兵「……何っ!?」

サキュバス「最初からこれを使っておけば……はっ!?」

槍兵の槍は赤く染まり、サキュバスが作り出した槍の色も赤色だった。

370: 2013/08/20(火) 00:47:27.59 ID:qUuyOdSS0
135

--西の王国、Aサイド--

槍兵(こいつ、まさか!)

サキュバス(!? 私のこれと一緒、だと!?)

ばきばきばき

変化師「そ、そんな、アレは!?」

赤い錆色だった外装が崩れ、中から銀色に光り輝く槍が出現した。

ギィン!!

そう、二人が放とうとしているものは、

槍兵「奥義、呪いの槍!!」

サキュバス「禁術魔法、呪いの槍!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

変化師「うほっ!?」

二つの呪いの槍が同時に出現したことで世界が歪み始める。
それほどまでに忌むべき力。

サキュバス(じょ、冗談じゃない! あんなものを食らったら魔族とか関係無くやられちまうじゃないか!)

槍兵(禁術魔法の呪いの槍……俺が奥義を作るために読んだ文献に書いてあった魔法……その使い手は、まさか……)

変化師「ふ、二人に近づけない!」

371: 2013/08/20(火) 00:49:25.85 ID:qUuyOdSS0
136

--西の王国、Aサイド--

ゴゴゴゴゴゴ

サキュバス(でも、考えようによってはこれでよかったのかも……この技が大勇者を狙わなくて、すむ!)

ちゃき

サキュバスは槍を投げる構えに。

槍兵(……あれを交わして叩き込む……辛いな。射線上にいた分だけ寿命が削られちまう。……は!)

槍兵は凶悪な笑みを浮かべて跳躍の体勢に。

槍兵「……」

サキュバス「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

先に動いたのはサキュバス。

サキュバス「っ、はぁああああああ!!」

叫びとともにサキュバスが投げようとする。

槍兵「」

トンッ

それを見た槍兵は横っ飛びで瓦礫に隠れた。

372: 2013/08/20(火) 00:52:44.58 ID:qUuyOdSS0
137

--西の王国、Aサイド--

槍兵(姿が見えない状態で投げモーションに入った! これでやつは俺に狙いをつけられない!)

だだだっ、だっ!

槍兵は跳躍し、瓦礫を飛び越えた!

槍兵「!!」

サキュバス「……ふ」

しかし、サキュバスの右手にはまだ呪いの槍が。

変化師「!!」

サキュバスは、まだ投げていなかった……。

槍兵(なっ! フェイントだと!? ばかな……もしさっき俺が攻撃をしていたら一方的にやられてたんだぞ!?)

跳躍した槍兵に向かって、サキュバスはしっかりと狙いをつける。

サキュバス(投げずに跳躍した……つまりお前のソレは接近戦用なんだ、ろっ!!)

びょっ!!

サキュバスが投擲する。

槍兵「くそっ! いっっけぇええええええええええええええええ!!!!」

二つの銀色の槍が流れ星のように光り輝き、そして

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

373: 2013/08/20(火) 00:53:47.93 ID:qUuyOdSS0
138

--西の王国、Aサイド--





ぱら、ぱら



サキュバス「……」

かららん

槍兵の槍の欠片が地面に落ちる。

槍兵「……」

サキュバス「……最後の最後で……槍を投げやがったか」

サキュバスの肩には槍兵が投げた槍の先端が刺さっている。

374: 2013/08/20(火) 00:54:45.36 ID:qUuyOdSS0
139

--西の王国、Aサイド--

変化師「や、槍、兵……」

槍兵「……へへ。呪いの槍を撃った直後は反動で動けないからな。飛べるあんたでも、避けきれないよな」

ぼろっ

サキュバス「でもお前なら……飛んでくる私の槍に向けて投げることもできたはずだ。そうしたら相頃し……お前は氏ぬことは無かった」

ぼろぼろっ

槍兵の腹部にはサキュバスの槍が刺さっていた。

槍兵「魔王の右手と呼ばれる魔族と、刺し違えれたんだぜ?……大金、星だろ……」

槍兵は、笑う。

サキュバス「……見事だ」

変化師「や、やや」

槍兵「                      へ」

ドサッ

槍兵は笑顔のまま倒れこんだ。

変化師「や、槍兵ぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

375: 2013/08/20(火) 00:56:22.17 ID:qUuyOdSS0
140

--西の王国、Aサイド--

ぼろぼろっ

変化師「うわぁあぁああぁああぁあああぁあ!!」

変化師は倒れた槍兵のもとに駆け寄って男泣き。

サキュバス「……ふん、魔王の右手、か。戦いの中で私の正体を見破ってたみたいだな」

変化師「う、うっ……」

ぼろぼろっ

サキュバス「しかし……くく、魔王の右手ね。おいそこのホ〇、いいことを教えてやるよ」

変化師「……?」

サキュバス「私達がなぜ魔王の腕じゃなく手と呼ばれているのか……それはな、私達程度の力じゃ右腕なんて名乗れないからなんだよ」

変化師「……え?」

サキュバス「それほどまでに……大魔王は強い。はは、お前らじゃ……勝てや、しな、い」

ひゅうぅう

変化師「……」

サキュバスは砂のようになって消えた。

380: 2013/08/26(月) 20:28:33.70 ID:wHMw48P80
141

--西の王国、中心部--

ずーん、ずずーん!!
ぱらぱら

城の地下にある司令部に、西の王と側近達の姿がある。そして守りの要である人造魔王。

人造魔王「ツマンナーイ。ボクモタタカイイキターイ」

黒づくめの醜男「西の王、ここも危ないかもしれませんですじゃ……ここを離れた方がよいのでは?」

西の王「駄目だ。国民を見捨ててはいけない。俺は最後まで残る」

黒づくめの女「兵士の数も少なくなってきています。指揮官級の魔族さえ倒せればまだ可能性はありますが……」

西の王「兵士がいないなら俺が出るまでだ! 俺は絶対に見捨てて逃げたりしないぞ!」(俺はあいつとは違うんだ!……)

たたたた

黒づくめの少年「報告いたします。魔族サキュバス、RX、スカイライダーの撃破を確認」

西の王「! よし、よしよし!! よくやった!! いけるぞ、残る魔族はあと何体だ!?」

黒づくめの男「あと一体だと思われます」

黒づくめの少女「最後の報告では、変化師様が担当なされている区画辺りかと」

西の王「ふむ、モンスターの大群もあるがここは残る魔族の討伐を優先させたほうがいいか……?」

黒づくめの少年「……なお払った代償ですが、テンテン様が半壊、秘書様包帯様が瀕氏、槍兵様義足様が戦氏なされました」

西の王「……なに?」

381: 2013/08/26(月) 20:29:00.22 ID:wHMw48P80
142

--西の王国、Aサイド--

びゅぉおおぉお

変化師「!! そ……そのすがたは……ま、まさか」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

槍兵の氏体を抱えて移動しようとした変化師。その前に新たな魔族が現れる。
西の王国の進行を担当する、最後の魔族……。

ずしん、ずしん

変化師「う、うそだ」

ずしん、ずしん

フランケン「お、おで」

変化師「と、闘士おじさん!?」

382: 2013/08/26(月) 20:29:51.97 ID:wHMw48P80
143

--西の王国、Aサイド--

フランケン「へ、変化師か。おおきくなったな」

変化師「と、闘士おじさん……や、やっぱり闘士おじさんなんだね? し、氏んだんじゃ……というかなんで、魔族に……」

フランケン「い、いろいろあった……」

変化師「い、いろいろ?……なんで……なんで闘士おじさんがひとをほろぼすがわにいったんだ!」

変化師はゆっくりと槍兵を地面に降ろす。

フランケン「い、いろいろあった」

変化師「い、いろいろなんてない!」

フランケン「……」

変化師「あ、あのやさしかった闘士おじさんは、たとえどんなじじょうがあったってそんなことするわけがないんだ!!」

フランケンの両手には、頭部をつぶされて氏んだ兵士が握られている。

フランケン「へ、変化師」

383: 2013/08/26(月) 20:30:33.40 ID:wHMw48P80
144

--西の王国、Aサイド--

変化師「せ、せんのうされて魔族にされたのか」

フランケン「……ちがう」

変化師「む、むりやりちからづくで……」

フランケン「ちがう」

変化師「……」

変化師はうな垂れてしまう。

フランケン「へ、変化師」

フランケンはやさしい声で変化師に声をかける。

変化師「……」

フランケン「お、おまえもころさないといけない」

変化師「!?」

だんっ!!

384: 2013/08/26(月) 20:31:09.15 ID:wHMw48P80
145

--西の王国、Aサイド--

変化師に向かって走り出したフランケンは右手に持った氏体を変化師めがけて投げつけた。

ぶんっ!!

変化師「!」

変化師がそれをかわした瞬間に、フランケンは左手の氏体も投げた。

ぶんっ!!

変化師「っ!」

どがっ!!

変化師のスピードでは避けきれない。

フランケン「うおおおおおおおお!!」

体勢を崩されたところをフランケンの丸太のような右腕が襲う。

ぶおぉん!!

385: 2013/08/26(月) 20:31:44.98 ID:wHMw48P80
146

--西の王国、Aサイド--

変化師「し、身体変化、大蛇!」

にゅるん!

フランケン「!!」

変化師が体を蛇に変化させたことでフランケンのパンチは空振り。
変化師はそのままフランケンの体を締め付ける。

ぎりぎり!!

フランケン「う、うおおぉぉおお!!」

怪力の化け物であるフランケンの肉体が軋んでいる。

めきめきめき

変化師「お、おじさん!!」

フランケン「う、うおぉおおおお!!」

フランケンは変化師の体を掴み、力を込める。

386: 2013/08/26(月) 20:32:49.15 ID:wHMw48P80
147

--西の王国、Aサイド--

フランケンは力任せに変化師の体を引きちぎろうとする。

変化師「う、うぐっ!?」

みちっ

フランケン「ぬ、ぬおぉあああああああ!!」

みちみちみち!!

変化師「ぐああぁ!!」

ぶちぶちっ!

大蛇と化した変化師の皮が裂け始める。

変化師「し、身体変化、霧!!」

ぼふん!

フランケン「!! ふー、ふー……」

霧状になった変化師はフランケンから距離をとって、一箇所に集まった。

387: 2013/08/26(月) 20:33:50.77 ID:wHMw48P80
148

--西の王国、Aサイド--

変化師(ぶ、ぶつりこうげきでたおせるきがしない……へんかもじかんかせぎにしかつかえない……)

フランケン「おおお!!」

ずんっ!! ずんずんずんずん!!

フランケンはまたもや変化師に突進してくる。

変化師(もういちどだけためしてみる!)

フランケンの大振りの左ストレートを変化師は両腕でガードする。

ドオォオオオン!!

変化師「!?」

すると巨体の変化師の体が軽々と浮いた。

変化師「ごふっ!! ふ、ふせぎきれない!?」

どごおぉん!!

変化師は宙を飛んで民家に突っ込んだ。

388: 2013/08/26(月) 20:34:44.75 ID:wHMw48P80
149

--西の王国、Aサイド--

がらがら

変化師「ごほっ、げほっ」(が、ガードのうえからこのダメージ……おででこれなんだからほとんどのにんげんはいちげきで……)

フランケン「……」

ずしん、ずしん

変化師(いどうそくどはそれほどじゃないけれど、こうげきそくどはおそくない……かわすのもむずかしい)

ずしん、ずしん

変化師(……むだに魔力と体力を使ってたたかってもじりひんだ……なら)

ばがっ

変化師はがれきを押しのけてフランケンの眼前に立つ。

フランケン「……」

変化師「お、奥義、身体強化! 獣化、銀獅子!!」

フランケン「!?」

ブクッ!

変化師の身体が膨張していく。

389: 2013/08/26(月) 20:35:53.94 ID:wHMw48P80
150

--西の王国、Aサイド--

変化師『ぐる、る……』

オオオォォォオオ

フランケン「!!」

変化師は体長三十メートルはあろうかという化け物に変化した。

フランケン「……そ、その姿……なんでおでの」

フランケンは銀色の獅子になった変化師を見て驚く。

変化師『お、おじさんのさいご、きいたから』

フランケン「お、おでのさいご……? な、なんだそれ」

変化師(しんだときのことはおぼえてないのか?)

フランケン「な、ならこちらも」

フランケンは魔力を一気に放出する。

フランケン「お、奥義、身体強化! 獣化、獅子!!」

ガオアオオオオオオオオオオオオオ!!!!

体長三十メートルを超す巨大な獅子がもう一体出現する。

390: 2013/08/26(月) 20:36:49.18 ID:wHMw48P80
151

--西の王国、Aサイド--

変化師『ぐるるる』

フランケン『がぁおああ』

巨大な怪物が二体、西の王国の端で対峙している。

老兵「な、なんと……」

衛生兵「わ、我々は足手まといになるだけだ……」

周囲にいた兵達は怪物たちを見上げている。

変化師『ぐぁあああああ!!』

フランケン『ぎゃぁあああああ!!』

二人は咆哮し、お互いに向かって走り出す。

ずしんずしんずしん!!

変化師『』

フランケン『』

どごおおおんん!!

二人がぶつかり合った衝撃で町が崩れていく。

391: 2013/08/26(月) 20:37:35.86 ID:wHMw48P80
152

--西の王国、Aサイド--

変化師『う、うぅるるるる!! お、おでは!! おではおじさんをだおす!!』

どごおおぉおん!!

変化師の左拳がフランケンの腹を攻撃する。

フランケン『ぎゃはっ!!……や、やれるものならやってみろ!!』

ががぁあん!!

フランケンはお返しとばかりに変化師にヘッドバットをする。

変化師『ぎゃぁあああ!!』

額から出血し、体勢を崩したところをフランケンが突っ込んだ。

どごごごごごごごごごごごごごおおおん!!

タックルで変化師を西の王国の中心に運んでいくフランケン。

変化師(!! ひがいがふえてしまう!!)

ずがぁあああん!!

変化師は自分の左腕を地面に突き刺して強引に動きを止める。

392: 2013/08/26(月) 20:39:32.33 ID:wHMw48P80
153

--西の王国、Aサイド--

変化師『ぐうるるるるあぁあああ!!』

そして変化師は、右手でフランケンの首を掴んで絞める。

ぎりっ!!

フランケン『げっ!!』

力が緩んだのを見計らい、三度膝蹴り。

ドスドスドォスッ!!

フランケン『ごぶっ!!』

ズズーン!

体勢をたてなおすと、変化師はフランケンを押し倒して両足を掴む。

変化師『おおああああああああ!!』

ぶんっ!!

フランケン『!? な、なにをするつもりだ!!』

ぶんっ!! ぶんっ!! 

変化師はジャイアントスイングを始める。

老兵「こ、これがほんとのジャイアントスイングじゃ」

393: 2013/08/26(月) 20:40:52.64 ID:wHMw48P80
154

--西の王国、Aサイド--

ぶんぶんぶんぶんぶん!!!!

ごおおぉぉぉ!!

回転スピードが速くなっていき、地上への影響が甚大になってきたころ、

変化師『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

ぶんっ!!

フランケン『』

変化師は西の王国の外にフランケンを吹っ飛ばした。

ひゅるるるるるるる………………ズッズズズーーーーン!!

山の向こう側にまで吹っ飛ばした変化師は追撃を加えるために走った。

ずんっ、ずんっ、ずんっ!!

フランケン『ぐ……』

さすがのフランケンもダメージが大きいようですぐには立てない。

394: 2013/08/26(月) 20:41:35.56 ID:wHMw48P80
155

--西の王国、Aサイド--

ずんずんずんずん!!

変化師『ぐろおああああああ!!』

フランケン『がああああああ!!』

飛び込んでくる変化師を真正面から迎え撃つフランケン。

フランケン『ぐおおおお!!』

どごぉん!!

フランケンが殴り、

変化師『がぁああ!!』

どがぁあん!!

変化師が殴り返す。

どがぁん、ずがぁあん!!

まるで爆撃のような爆音が周辺に響き渡る。

395: 2013/08/26(月) 20:42:08.90 ID:wHMw48P80
156

--西の王国、Aサイド--

どごぉん、がおぉん!!

変化師『げひゅっ……ぐぁあああ!!』

両者とも顔面をひしゃげながら、血をながしながら殴りあう。

フランケン『がふっ……ふぬぁあああ!!』

がぉん、ずぐぁん、どがぁん!!

飛び散った血で森が赤と緑に染まる。

変化師『……!!』



--過去、王国--

シOタ変化師「と、闘士おにいちゃん。な、なんでそんなかっこしてるんだ? どっかいくのか?」

闘士「あ、あぁ変化師か。う、うん。きょうまちではりがみをみたんだ」

シOタ変化師「は、はりがみ?」

闘士「ゆ、ゆうしゃぼしゅうってはりがみだ」

396: 2013/08/26(月) 20:44:42.87 ID:wHMw48P80
157

--過去、王国--

闘士「お、おで、からだはでかいけど、こ、こころはよわむしだ……で、でもいつまでもこのままじゃいけないとおもうんだ」

シOタ変化師「お、おにいちゃんはよわむしじゃない、やさしいだけだ! いつだっておでをまもってくれるおでのヒーローなんだ!」

闘士「」

闘士は変化師が声を荒げたのを見てきょとんとしてしまう。

シOタ変化師「い、いじめだって……お、おにいちゃんのやさしさにつけこんでいじわるするまわりのやつらがいけないんだ!!」

闘士「……あ、ありがとう変化師。で、でもそれをさせちゃうのはやっぱりおでがよわいからなんだとおもう……」

闘士はやさしく変化師の頭をなでる。

闘士「で、でもかわりたいのはほんとうなんだ。こんなおででもちからになれることがあるなら……やってみたいっておもったんだ。しかくはいらない、どんなものでもひつようとする、って、あのはりがみにはかいてあったんだ」

シOタ変化師「……お、おにいちゃん……おでをおいて、どっかいっちゃうのか……?」

闘士「……だ、だいじょうぶ、すこしだけだ。かならずここにかえってくるから。そのときはきっと、たくましいおとこになって」

シOタ変化師「……」

闘士「な、なっ!」

シOタ変化師「……や、やくそくだからな!」

闘士「あぁ……やくそくだ」

397: 2013/08/26(月) 20:46:57.00 ID:wHMw48P80
158

--西の王国、Aサイド--

変化師(闘士おじさんはまおうをとうばつして、やくそくどおりたくましいおとこになってかえってきた!! でもけっきょくそのあとまぞくにつれていかれて、みごろしにされて、しんだ……)

フランケン『! か、かんがえごとをしているとしぬぞ!!』

どぎゃっ!!

不意をついたフランケンの一撃は変化師のあごを砕いてしまう。

ごぎゃぎゃぎゃっ!!

変化師『っ!!』

ゆらっ

ふらついた変化師に蹴りを放つフランケン、しかし変化師はそれをきっちりと防ぐ。

ばしぃん!! ずずぅん……

変化師(……それ、なのに……なんで……おじさんがまぞくになんてなってるんだ!!)

どごぉん!!

変化師は泣きながらフランケンを殴った。

398: 2013/08/26(月) 20:48:23.06 ID:wHMw48P80
159

--西の王国、Aサイド--

変化師『お、おでは西の王国三本角、変化師だッッ!! 人類の敵は、なんであろうと、倒すッッ!!』

どがぁあん!!

フランケン『』

変化師の一撃を受けるも、フランケンはなんとか倒れずに耐える。
そして、変化師の涙を見た。

変化師『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

変化師は爪を立ててフランケンの心臓めがけて突いた。

ぴくっ

フランケン『』

フランケンは一瞬対応しようとしたが、やめた。

ずぎゃしゃっ!!

399: 2013/08/26(月) 20:50:33.37 ID:wHMw48P80
160

--西の王国、Aサイド--

びしゃしゃしゃっ!!

変化師『……っ!!』

フランケン『……』

変化師の右腕は……フランケンの心臓を貫いていた。

びちゃっ

変化師『と、闘士……おじさん』

フランケン『……か、かいぶつをたおすには、銀が、いちばんだ……』

フランケンは銀色に輝く変化師の体を見てつぶやいた。

ぼろっ

そしてフランケンの体が崩れていく。

変化師『おじ、さん……』

フランケン『……変化師……強く、なったな』

変化師『!? おじさん!!』

ぼろぼろっ

フランケン『お、おでは……じぶんのよわさのせいで……ひとをまもるがわにいつづけられなかった……でもおまえは』

ぼろぼろぼろっ

フランケン『おまえは、ひとをまもりつづけるんだぞ』

変化師『!?』

フランケンはかつてのような笑顔で変化師に笑ってみせる。

変化師『お、おじさぁあああああん!!』

……ざぁあ

フランケンは砂のようになって消えた。

400: 2013/08/26(月) 20:51:33.90 ID:wHMw48P80
ぐあー、大魔王は大勇者のことですので1章に出てきた魔王のことですね。完全に言い間違いました。すみません。あのパーティはみんな大がつくのでつい……。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

404: 2013/09/03(火) 00:16:03.66 ID:cL7NB8nt0
161

--ライン10--

射王「ちぃっ!!」

ひゅひゅひゅひゅん!!

血だらけになりながらも射王は弓を打ち続ける。

ダーク白猫亜人「ご、ふっ」

ぼろろろっ

これでもかと分割された白猫亜人は、静かに砂になっていく。

どす、どすどすどす!!

ダーク牧師「くはっ!! この戦力差でも……私はお前を倒せないんですかぁああ!!」



わーきゃー

どどどどどどど

元北の兵士「地鳴り!? ぞ、増援だと!?」

ダーク紳士「うぉっほん。さぁ皆さん、紳士らしく物量で攻めさせてもらいましょう」

かぽっかぽっ

モンスターを指揮する紳士が現れた。

405: 2013/09/03(火) 00:16:35.68 ID:cL7NB8nt0
162

--ライン10--

ダーク牧師「スキル、糸括り!!」

しゅるるっ!!

ダーク牧師が射王に向けて糸を放つ。

 が

射王「効果付与、切断!」

ドヒュッ!!
ぶちぶちぶちっ!

ダーク牧師「っ!?」

射王が放った矢は糸を全て切断して飛んでいく。

ひゅーん



わーきゃー

ダーク紳士「駄目ですぞ貴方達。紳士たるもの、もっとエレガントに人を殺さねば」

どす

ダーク紳士「……え?」

紳士はまたしても流れ弾に当たり、

ずばしゃぁああ!!

ダーク紳士「うえぇえええ!?」

縦に真っ二つに切断されて氏亡する。

406: 2013/09/03(火) 00:17:15.25 ID:cL7NB8nt0
163

--ライン10--

射王「スキル、氏者頃しの矢」

おおぉぉおん

ダーク牧師「! そのスキルは……氏者、もしくは氏んでいた時間の累積時間が長ければ長いほど高威力になる攻撃スキル……」

射王「戦ってて思ったんだけど、やっぱお前……氏んでたよな。なら、これ効くだろ」

ダーク牧師「!! させませ」

どひゅっ、どすっ

ダーク牧師「」





ぼろっ

407: 2013/09/03(火) 00:17:41.19 ID:cL7NB8nt0
164

--ライン10--

ぼろ、ぼろっ

射王「……」

ダーク牧師「……くっ……二度も……あなたに殺されるとはね……ふふっ」

射王「はぁ……化けて出てくるほど心配だったのか? 心配しなくてもあいつは元気にやってるよ。この間五柱になったみたいだし」

ダーク牧師「……だれがあんな、猫の、こ、とな、ど」

ぼろっ……

射王「……素直じゃないね」

どさっ

射王は仰向けになって地面に倒れこむ。

射王「……あー……くそったれ。俺一人で魔族二体とかむちゃくちゃだろう……十代目は何してんだよ」

どく、どくっ

射王は出血している腹を押さえている。

408: 2013/09/03(火) 00:18:09.60 ID:cL7NB8nt0
165

--ライン10、Bサイド--

十代目勇者「はっ、はっ……」

ウェンディゴ「……まじか。魔族三人も連れてきたのに負けちゃうのかよ」

十代目勇者パーティとウェンディゴが対峙している。
ウェンディゴは遠い場所での戦闘結果を把握しているようだ。

鎧使い「い、いい加減あんたも降参しなさいよ!」

戦士「俺達最前線の力は伊達じゃない、うすっ!」

僧侶「きゃははは! きゃはははは!」

忍「……」

ウェンディゴ「しっかたないなぁ……これからのためにも節約しておきたかったんだけど」

とっ

十代目勇者「その余裕が命取りだ」

十代目勇者は一瞬で距離をつめ、ウェンディゴに切りかかる。

409: 2013/09/03(火) 00:18:46.22 ID:cL7NB8nt0
166

--ライン10、Bサイド--

フォンッ、フォン、フォン!!

ウェンディゴ「おっとこえぇ!」

芸術の域にまで達する見事な十代目の斬撃。それをウェンディゴは紙一重で避けていく。

ひゅひゅひゅひゅ!!

ウェンディゴ(手本のような剣技だな、勇者もすごかったけど、こいつはそれよりもすごい)

鎧使い「十代目! どいて!!」

十代目勇者「!」

ウェンディゴ「!」

鎧使い「装着、白銀の鎧!!」

鎧使いが身に着けている鎧が、みるみるうちに装飾のついた白銀の鎧に変わっていく。

ウェンディゴ「……」

410: 2013/09/03(火) 00:19:52.36 ID:cL7NB8nt0
167

--ライン10、Bサイド--

びびびびびびびっ!

鎧使い「はぁあっ!! 魔をうち祓う、白銀ビーーーームッ!!」

十代目「」

ばっ

ビームが発射される直前に十代目はその場から離れた。

ウェンディゴ(結構威力高そうだな、じゃあ俺も逃げ)

ぎしっ

ウェンディゴ「!?」

ウェンディゴも続いて避けようとしたのだが、いつのまにか右足に小さな魔方陣がかかっている。

ウェンディゴ(移動速度、低下魔法……いつつけたんだよ)

キュンッ、ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

411: 2013/09/03(火) 00:20:33.77 ID:cL7NB8nt0
168

--ライン10、Bサイド--

僧侶「きゃははは! 直撃直撃ィ!!」

しゅぅう……

鎧使い「はっ、はっ、はっ……」

しゅぅうぅ……

戦士「……やったか?」

鎧使い「その台詞言うのやめてくれる!?」

うぉん

忍「! みんな避けて!!」

十代目「!!」

きゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅ!!!!

煙の中から、ビームが雨あられと飛んでくる。

ずがががががががががが、どぉおおおおおん!!

412: 2013/09/03(火) 00:21:19.41 ID:cL7NB8nt0
169

--ライン10、Bサイド--

どぉん!

鎧使い「きゃぁ!!」

どぉん!

戦士「ぐはぁ!!」

どぉん!

僧侶「きゃはっ!」

どぉん!

忍「ぐっ!」

どぉん!

十代目「ッ……!」

しゅぅうぅ……

問答無用の全体攻撃。
そして煙の中からウェンディゴの声がする。

ウェンディゴ「空間設置魔法罠、ディフェンスタイプ」

413: 2013/09/03(火) 00:21:51.25 ID:cL7NB8nt0
170

--ライン10、Bサイド--

十代目「ビームを跳ね返したのか……」

鎧使い「くっ……」

ざっ

僧侶「きゃはは! 戦士いくよ!」

戦士「うすっ! 挟み撃ちだ!!」

だっ!

体勢を立て直した二人が煙の中に突撃していく。

十代目「! 馬鹿っよせ!」

僧侶「きゃはは! 風属性範囲殲滅攻撃魔法、レベル4!!」

ビュオオオオオオ!!

刃のような突風が煙を吹き飛ばす。

414: 2013/09/03(火) 00:23:50.01 ID:cL7NB8nt0
171

--ライン10、Bサイド--

どひゅぅう……

煙が無くなり、そこには、

僧侶「!? い、いない!?」

あるべきはずのウェンディゴの姿がどこにもない……。

戦士「!?」

どしゃっ!!

そして突然戦士の胸部が破裂する。

戦士「なっ!?」

びゅぅん

ウェンディゴ「スキル、インビジボゥ」

ウェンディゴの透明な腕が戦士の胸部を貫いていた。

がしっ!

ウェンディゴ「へっ?」

戦士「がはっ……つか、まえたぜ!!!!」

415: 2013/09/03(火) 00:25:40.50 ID:cL7NB8nt0
172

--ライン10、Bサイド--

戦士はウェンディゴの腕をしっかりと掴んでいる。

ぎりぎりぎり

ウェンディゴ「お、おい放せよ!」

十代目「ッ!!」

ざざざざ

それを見て十代目も走り出した。

鎧使い「わ、私も、あたっ!」

鎧使いは足にダメージを負っていて動けない。

十代目(いい作戦ではなかったが、せっかくのチャンスだ!)

ざざざざざ!!

戦士「ごふっ、今だ僧侶、やれ!!」

僧侶「……おっけぇい!! くらえぇ奥義!!」

ぎゅぃん!!

僧侶は残る全ての魔力を掌に集めた。

ばちばちばちぃ!!

ウェンディゴ「風属性対単体攻撃魔法、レベル4」

僧侶「!?」

奥義を放つ体制に入った僧侶に、ウェンディゴは強力な風魔法を放つ。

びゅおおおおおおおおおおおおおお!!

416: 2013/09/03(火) 00:27:45.96 ID:cL7NB8nt0
173

--ライン10、Bサイド--

僧侶(私より発生が速い!!)

忍「!」

シャシャシャシャシャシャ! ばっ!!

高速で走っていた忍は、ウェンディ後の魔法が到達する前に、僧侶を抱えて逃げることに成功する。

ウェンディゴ「うお、避けられた!」

十代目「……終わりだ、魔族!!」

ぎゅぃぃん!!

十代目の剣に魔力が込められていく。六色に輝くそれは……

ウェンディゴ「……」

十代目「っ」

ぴたっ

絶好のチャンスにも関わらず、十代目は攻撃をやめてしまった。

417: 2013/09/03(火) 00:28:40.22 ID:cL7NB8nt0
174

--ライン10、Bサイド--

ぴちゃ、ぴちゃ

戦士「ぐはっ、な、なぜだ? なぜ攻撃をやめた!!」

十代目「……」

ウェンディゴ「あれおっかしいなぁ」

十代目の耳はぴくぴくと動いている。

十代目「……罠か」

戦士「!!」

ウェンディゴ「うわ、ばれてるしぃ! って、そうか。あんた猫亜人三大稀少種の一人だもんな」

十代目「……」

物と会話することが出来る、雪のような純白、白雪。
どんな生物とでも意思疎通を可能とする、燃える鮮紅、紅蓮。

ウェンディゴ「そして、自然と対話する『蒼天』」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ウェンディゴ「俺が設置した罠なんて、自然が勝手に教えちまうのか」

418: 2013/09/03(火) 00:30:35.43 ID:cL7NB8nt0
175

--ライン10、Bサイド--

大地「十代目、地面に魔法罠が敷いてあるよ」

風「十代目ェ、左の空中にもおいてあるぜェ」

ウェンディゴ「……」

十代目(せっかく捕らえたというのにこれでは……)

ぴちゃ、ぴちゃ

戦士「がっ……」

ウェンディゴ「はぁ……この空間設置魔法はさぁ、覚えたはいいんだけど、生前は一回しか使えなかったんだよ。魔力の燃費がめちゃくちゃ悪くて、魔力バックアップ無しには使えない超欠陥魔法だからさー」

十代目「……」

ウェンディゴ「だからその点では魔族になってよかったよ、魔力の総量がばかみたいに増えたからな。せっかく覚えたスキルを使えないのって、悲しいもんなー」

十代目(何を話しだした……? 時間稼ぎか? だが時間稼ぎをして困るのはそっちのほうじゃないのか?)

ぶぅん……

魔法罠はじょじょに壊れかけていく。

419: 2013/09/03(火) 00:32:13.28 ID:cL7NB8nt0
176

--ライン10、Bサイド--

ぴちゃ、ぴちゃっ

十代目(罠の維持に魔力はかかるし、罠自体の寿命もある。待っていれば自然に罠は……)「はっ!!」

十代目はあることに気づく。

ウェンディゴ「! 嘘だろ? さっしがいいなぁ、人類の英雄様は!」

ぶん!

ウェンディゴは戦士を空中に放り投げる。

僧侶「!? あのむきむき戦士がしっかりと掴んでいたのに!?」

戦士「」

忍「ッ、すでに氏んでる……」

鎧使い「!!」

十代目「みんなガードしろ!!」

鎧使い「え?」

420: 2013/09/03(火) 00:32:41.96 ID:cL7NB8nt0
177

--ライン10、Bサイド--

ウェンディゴ「よっ」

ぼすっ

ウェンディゴが戦士の氏体を蹴ると、

カッ!!

どぉおおおぉぉおおんん!!

戦士の氏体が爆発した。

十代目「ッ!!」

鎧使い「きゃあぁああ!!」

忍「ッ!」

僧侶「んんんっ!!」

ごごごごごごご……

421: 2013/09/03(火) 00:35:05.87 ID:cL7NB8nt0
178

--ライン10、Bサイド--

十代目(魔族め……時間稼ぎ中に静かに戦士を頃し、罠に……改造しやがった……)

びちゃびちゃびちゃ

飛び散る臓物。

ひゅっ

忍「!? ぎゃっ!」

僧侶「ひぐっ!!」

ざざざざざ!!

舞い上がった粉塵の中をウェンディゴは走り、勇者パーティの二人を一瞬で始末した。

十代目(自然よ、位置を!……く、爆発音で耳が)

鎧使い「じゅ、十代目!!」

ざざざざざ!!

氏角から十代目に迫るウェンディゴのことを伝えようと鎧使いが叫ぶ。
だが十代目には聞こえない。

ウェンディゴ「もらった!」

どひゅっ!!

422: 2013/09/03(火) 00:36:15.27 ID:cL7NB8nt0
179

--ライン10、Bサイド--

ぎぃん!!

十代目「」

ウェンディゴ「うそぉ!?」

しかし、それでも十代目は攻撃を防ぐ。

ウェンディゴ(風の流れを肌で感じたとかそういうの? ……あーあ、これだから勇者ってやつはチートなんだよ……)

ひゅっ

ウェンディゴはそのまま走る方向を変える。向かう先は……

鎧使い「!!」

十代目「!? しまった!!」

ざざざざざっ!!

ウェンディゴのスピードにはさすがの十代目も追いつけない。

鎧使い「こ、来い魔族めっ!!」

鎧使いはなんとか立ち上がり迎撃体勢を取った。

ウェンディゴ「スキル、インビジボゥ」

びゅぅん

ウェンディゴは鎧使いの目の前から姿を消した。

423: 2013/09/03(火) 00:38:26.20 ID:cL7NB8nt0
180

--ライン10、Bサイド--

鎧使い「消えた!? くそっ! スキル、全方位ガード!!」

ぎぃん!!

十代目(駄目だ! あれは全方位からの攻撃に対応できるが、軽減できるダメージはそこまで高くない!)

ズガッ!!

鎧使い「」

ウェンディゴは姿を隠したにも関わらず、そのまま真正面から突っ込んだ。

ぶしゅっ

鉄のような爪で、鎧のわずかな隙間をこじ開けて、柔らかい中の肉を切り裂いた。

ごぼぁっ!!

鎧の隙間から大量の血が流れ出る。

どくどくどくどくどく……

十代目「」

どしゃっ

ウェンディゴ「……これで後はあんただけだぜ、勇者さ」

十代目「」

どがあぁあああああぁああああん!!

ウェンディゴ「まっ!? じ、地震!?」

ごごごごごごっごごごごご

ウェンディゴ「……そうか、蒼天の力か……自然と対話して操ることも可能なのか……」

ざっ

ウェンディゴ「……こえー顔だぁ、勘弁してくれないかなぁ」

十代目「ウェンディゴ……貴様を頃す!!」

424: 2013/09/03(火) 00:38:54.21 ID:cL7NB8nt0
それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

勇者と魔王がアイを募集した【7】

引用: 勇者と魔王がアイを募集した2