432: 2013/09/10(火) 00:26:07.33 ID:n7bHaAYI0

433: 2013/09/10(火) 00:26:56.10 ID:n7bHaAYI0
181

--ライン10、Bサイド--

ゴゴゴゴゴゴ……

十代目「……」

ウェンディゴ「……」

大地が揺れている中、二人は静かに睨みあっている。

ウェンディゴ(ひー。強力な魔力だ……こんなの人が持てる魔力の量じゃねぇーし……)

びりびりびり!!

十代目「……いくぞ」

ドンッ!!
ボゴォッ!!

十代目が踏み込むとそのパワーで大地が崩壊する。が、すぐさま石が寄り集まって十代目に堅固な足場を提供する。

434: 2013/09/10(火) 00:28:13.55 ID:n7bHaAYI0
182

--ライン10、Bサイド--

ひゅん!

ウェンディゴ(はやっ!?)

ヂっ!!

スピードに自信を持つウェンディゴでさえ、十代目の攻撃を辛うじて避けるのが精一杯だった。

ウェンディゴ(俺のアイデンティティー涙目!)

ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぃ!!

十代目「はぁああぁ!!」

ブレーキをかけ、再び飛んでくる十代目。

ウェンディゴ(でもまだなんとかなるか、なっ!)「風属性範囲攻撃魔法レベル4!!」

びゅおおおおお!!

荒れ狂う強力な竜巻がウェンディゴの掌から放たれる。

ぼっ

ウェンディゴ「!?」

しかし十代目は、それをあっさりと突破する。

435: 2013/09/10(火) 00:29:23.39 ID:n7bHaAYI0
183

--ライン10、Bサイド--

どしゃあぁあ!!

ウェンディゴ「ぐあぁっ!?」

そして豆腐でも切るかのようにウェンディゴの左腕を切断した。

ずざざー!!

十代目(いける! だが奴に逃げられないためにも、ここはダメ押しだ!)

十代目は右足で大地に陣を描く。

キィィィイン!!

ウェンディゴ「づっ!! 魔法陣か!!」

十代目「供給要請、ステータス一段階上昇!」

ドンッ!!

十代目の魔力は更に増大する。

436: 2013/09/10(火) 00:30:14.51 ID:n7bHaAYI0
184

--ライン10、Bサイド--

バチッ!! バチバチッ!!!!

ウェンディゴ「ひ、ひぃ~……魔族超えてるだろそれ……」

十代目(ぐっ……魔力の不可で全身が千切れそうだ……!! さっさと……ケリを付ける!!)

ドンッッッッ!!!!

ウェンディゴ「」

まるで時を止めてワープしてきたかのような十代目の攻撃に、さすがのウェンディゴも反応できず、

ズガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ウェンディゴ「ぐはぁああああああ!!」

斬撃をもろに食らってしまう。

十代目「!」

ウェンディゴ「しょ、衝撃波でこれかよ……空間設置魔法罠、ディフェンスタイプ」

ぶぅん

しかし無傷。不可視の状態でウェンディゴの周りに浮いていた魔力の盾が自動で護ったのだ。

437: 2013/09/10(火) 00:31:31.63 ID:n7bHaAYI0
185

--ライン10、Bサイド--

十代目(! 今の私の斬撃を防いだだと?)

ウェンディゴ「この盾は敗れないさ。なんせ相手の攻撃力依存の防御力を発揮するんだからな」

十代目「……ならば」

ひゅん、ひゅっ、ひゅっ、ひゅひゅひゅひゅひゅひゅひゅッッ!!!!

十代目は空中を蹴った勢いで、高速移動を繰り返す。

ひゅひゅひゅひゅひゅ!!

ウェンディゴ「うおッ!? スキル、透視眼!」

ぎぃん!

スキル使用と同時にウェンディゴの左の眼窩が光る。

ひゅひゅひゅひゅひゅ!!

ウェンディゴ(眼でも追いきれないスピードだ……でも一応映像として映ってはいる……)

ウェンディゴの透視眼は、十代目の唯一の弱点である心臓を見つける。それはあまりに速く移動しているため赤い線のように見えた。

438: 2013/09/10(火) 00:32:41.90 ID:n7bHaAYI0
186

--ライン10、Bサイド--

ひゅひゅひゅひゅひゅ!!

ウェンディゴ(透視眼は弱点しか見えない……景色とかその他もろもろの情報でごまかされなければ、かろうじてやつの動きの軌道を読める!)

十代目「……」

ふぉっ
ぎぃんんんん!!

氏角からウェンディゴを切りつける十代目。

ウェンディゴ「ぐっ!! 残念、そっちにも張っといたんだなトラップ!」

しかしその刃は魔法罠に防がれてウェンディゴまで届かなかった。

十代目「……」

ぎぃん、ぎぃん、ぎぃんぎぃんぎぃんぎぃぎぃぎぃぎぃぎぃいぃぃぃぃぃんんんっっ!!

全方向から斬りつける十代目。あまりの速度に残像が無数に出現し、ウェンディゴは完全に的を絞れていない。

ウェンディゴ(!? これじゃ動きを読むとか無理!?)

十代目(こいつ、いつの間にこれほどの数の罠を……構うものか、このまま圧頃する!)

ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃん!!

439: 2013/09/10(火) 00:33:50.76 ID:n7bHaAYI0
187

--ライン10、Bサイド--

ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!

最後の一撃を振り上げに切り替えた十代目。ウェンディゴは空高く弾き飛ばされる。

ウェンディゴ(ぐはッ!……衝撃波だけでこのダメージかよ……笑え、ねぇ!)

ごごごごごごご

ウェンディゴ「!?」

ウェンディゴはぎょっとする。そしてありえないものを見るような眼で地上を見た。

ごごごごごごごご

ウェンディゴ「……うそぉ」

地上にいる十代目の魔力が、更に増大していく……。

十代目「供給要請、ステータス三段階上昇ッ!!」

ギョンッッッッッ!!!!!!

ウェンディゴ「ばっ、化け物だ……こんな魔力、魔王すら……」

魔力の密度が濃すぎるあまり、十代目の周囲は光すら到達出来ない小型のブラックホールと化している。

ごごごごごごごごご

十代目「ぎっ、ぎぎ!!」

440: 2013/09/10(火) 00:34:41.99 ID:n7bHaAYI0
188

--ライン10、Bサイド--

びちっ、ぶしっ!!

あまりの負荷に十代目の体はがくがくと振るえ、体中に切れ目が入っていく。

十代目(本当、はッ、こんな、ところ、で、つかい、たく、なかった、がッ!!)

十代目は魔力を剣に集め始める。

十代目(た、ためして、おくのもッ、悪く、は、ないっ、かッ!!)

ギィィィギギィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィイイイイイイイイイイイイン!!!!

ウェンディゴ「う、嘘だろ? あんなもん人に向かって撃つ気なのか……!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ウェンディゴの透視眼に映るものは、無い。つまりそれは、今の十代目に弱点など無いということ。

十代目「……」

圧縮に圧縮を重ね、周囲の魔力を全て剣に集約したことで、ようやく十代目の姿が目視で確認できるようになる。

441: 2013/09/10(火) 00:35:38.54 ID:n7bHaAYI0
189

--ライン10、Bサイド--

ウェンディゴ「! くそったれっ! 空間設置魔法罠、ディフェンスタイプ、3!!」

ぎゅいんぎゅいんぎゅぃーん!

ウェンディゴは鉄壁の魔法罠を三段重ねで設置した。攻撃力依存の力を持つディフェンスタイプなら、たとえどんな攻撃であろうとも耐え切るはずなのだ。
……それなのにウェンディゴは、この三つでも足りないと直感する。

十代目「……奥義」

ぼそりと呟く十代目の声が遠く離れたウェンディゴの耳に届くほど、世界は無音になっていた……。

ウェンディゴ(来るッ!!)

ざっ





十代目「勇者ぁあバスタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

きらんっ
ドギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

442: 2013/09/10(火) 00:37:47.43 ID:n7bHaAYI0
190

--ライン10、Bサイド--

ぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううう!!!!!!

ウェンディゴ「ッッ」

ウェンディゴに向かって放たれたのは眼もくらむような銀色の閃光。

ドォン、ドォン、ドォギャアアアアンン!!

ウェンディゴ「ぎゃっ!!」

二つの盾はあっさりと破壊されてしまい、最後の三つ目の盾が悲鳴をあげている。

ウェンディゴ「ぐおおおおおおぉぉっ!!」

ドギャアァアアアアアアアアアア!!

ウェンディゴ(いっ、一切軽減されていない? なんでだ!? こんなの、こんなっ!!)

ばき、ばきばきばき!!

無常にも、最後の盾にひびが入っていく。

ギギギギギギギギ、バギィン

ウェンディゴ「」

ッドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!


ォォオオオォォォンンンン…………

十代目「……」

ぱらぱら……

443: 2013/09/10(火) 00:38:53.46 ID:n7bHaAYI0
191

--ライン10、Bサイド--

ぅぅぅんんん……

極大のビームはそのまま天へと昇る。それを放った十代目は全身から血を垂れ流し、息を荒げて膝をつく。

がくっ

十代目「はぁっ! はぁっ! んくっ! はっ!!」

ぼたぼたたっ

十代目「ぐ……通常威力でもいけたな……魔王軍の偵察がこれを見ていなきゃいいんだが」

空を見上げると、雲がドーナッツのようになっている。

ぼたっ

十代目「……」

……冷静になった十代目はある疑問を持った。

しゅぅぅうぅ……

十代目「……」

それは、少し前の攻防のこと。

444: 2013/09/10(火) 00:40:32.52 ID:n7bHaAYI0
192

--ライン10、Bサイド--

十代目「そういえば、やつの罠は……攻撃を跳ね返すのではなかったか?」

鎧使いのビームをウェンディゴは跳ね返していた。それは紛れも無い事実である。あの時跳ね返された魔力は確かに鎧使いのものだった。

十代目「だが私の攻撃は一度も跳ね返ってきていない……跳ね返せるものは限定されているのか? それとも跳ね返した手段は別の……」

ぶわっ!!

十代目「!!」

空を漂う煙が全て吹き飛んだ。そしてその中心には……

ばち、ばちばちばちっ!!

十代目「ば、かな……」

ウェンディゴ「へ、へへ……」

血まみれのウェンディゴが浮いていた。そして、右腕が異常なまでに肥大化している。

445: 2013/09/10(火) 00:42:34.86 ID:n7bHaAYI0
193

--ライン10、Bサイド--

ぶしゅっ、どばぁ!!

ウェンディゴ「す、スキル、盗む!!」

十代目「!! 私の奥義を……魔力を盗んだのか!?」

ぶしゅっ!!

ウェンディゴ「がっ!! い、一部だけどな……俺に当たりそうな部分だけ……」

そう言ってウェンディゴは右腕を振りかぶる。

十代目(ぐっ! 放つ気か!? 今の私ではあれは!!)

ウェンディゴ「あんたの魔力だ、返すぜ!! ッぐっ!!」

どばしゃぁあああっ!!

しかしウェンディゴの右腕はその前に爆発してしまう。

びちゃっぼたっ……

ウェンディゴ「……ちぇ。耐え切れなかったか……まぁいいさ、目的は十分果たせただろ」

しゅたっ

ウェンディゴは地上に降り立った。

十代目「ぐ! 待て!!」

446: 2013/09/10(火) 00:45:30.33 ID:n7bHaAYI0
194

--ライン10、Bサイド--

ウェンディゴ「おいおい勘弁してくれって、あんたももうきついだろ? ここは引き分けにしておこうぜ」

十代目「仲間を殺されておいて、引き分けなどあるものか!!」

しかし十代目は前に進むことができないほど疲弊していた。

ウェンディゴ「……わりぃな、行かしてもらうわ……俺はもう二度とあいつを裏切れないんだ」

十代目「ッ」

ざっ

ウェンディゴは十代目に背を向ける。

ウェンディゴ「……そうだ、あんた達ここが最前線とかどうとか言ってたけどさ」

十代目「……?」

ウェンディゴ「ちげぇよ? 魔王はもう抜けて行っちまってるぞ」

十代目「!?」

ウェンディゴ「魔王を進行させないためのライン。結界。あんたは精霊に力を借りて奮闘し、ライン13から9まで押し上げた……。だがその力は精霊によって維持されて来たんだ。もし今精霊の数が足りてないんなら……わかるだろ?」

十代目勇者「!! くそッ!!」

ウェンディゴ「……っじゃ」

しゃっ

ウェンディゴは姿を消した。

447: 2013/09/10(火) 00:47:25.57 ID:n7bHaAYI0
195

--東の王国--

剣豪「てめぇ……」

ぽたっ、ぽたたっ

東の王「おう剣豪。遅かったな」

血だらけの剣豪は城の最上階にいる東の王の元にたどり着いた。

剣豪「これは一体、どういうことだよ……! なんで兵士が魔族と一緒に行動してやがる!!」

東の王「……見ての通りだが?」

東の王は窓の外から剣豪に視線を移す。

剣豪「……いつからだ。いつからお前は魔王軍に魂を売った」

東の王「売ったわけじゃあない。取引相手になっただけだ……そうだな。大体20年前か」

剣豪「ッ!……それほど前からやっていたことに俺は気づけなかったのか」

東の王「……特にお前の前では意識していたからな」

448: 2013/09/10(火) 00:48:26.62 ID:n7bHaAYI0
196

--東の王国--

剣豪「西の女王がお前を殺そうとしていた、って噂も」

東の王「あぁ、本当のことだ。だから先に魔族にリークした……結果は知っているな?」

剣豪「……なぜだ。一体何がお前を堕とした!!」

東の王「……俺は堕ちてなんかいない」

そう言うと、東の王は静かに右腕を上げた。

ぎぃん!

剣豪「!!」

びゅぅう!!

どがぁああああん!!

東の王の右腕の紋章が光り、レーザーが発射される。

剣豪「ちぃ!!」

剣豪はそれを回避し、そのまま東の王に詰め寄った。

ざざざざざ!!

449: 2013/09/10(火) 00:49:02.05 ID:n7bHaAYI0
197

--東の王国--

剣豪「あぁあああ!!」

東の王「っ」

東の王の左腕の紋章が光ると、今度は魔方陣が空中に出現し、

がぎぃいん!!

剣豪の刀を遮った。

ぎりぎりぎりぎり!!

東の王「……お前も老いたな。剣豪。なんて太刀筋だ」

びゅぅん!!

至近距離から放たれるレーザー、剣豪は身をひねって回避しようとするが、

どばしゃっ!!

剣豪「ッッッ!!」

完全に避けることはできず、脇腹を貫かれてしまう。

450: 2013/09/10(火) 00:50:07.81 ID:n7bHaAYI0
198

--東の王国--

剣豪「がはっ!!」

じゅじゅじゅぅ……

東の王「歳を食うにつれ、肉体系より魔法系の方が有利になっていく……これは仕方の無いことだな。見る影もない」

剣豪「うるっせぇ……」

剣豪は立ち上がれない。

剣豪「はぁ、はぁ……立派な、どこの国にも負けない凄い国を作るんじゃなかったのかよ……」

東の王「……」

剣豪「俺は……それだからお前に付いて来たんだぜ……?」

東の王「……そうだ。どこの国にも負けない凄い国を作る。その信念を曲げたことなど一度も無い」

剣豪「ふざけ、んな」

がくがく

剣豪は刀を杖代わりに立ち上がる。

剣豪「魔族に尻尾振った王が治める国の、どこがすげぇんだよ!!」

451: 2013/09/10(火) 00:52:07.23 ID:n7bHaAYI0
199

--東の王国--

東の王「……剣豪、お前は治める者がどんなものなのかわかっていない」

剣豪「なんだと……?」

東の王「この戦いは、いずれ魔王側が勝つ」

剣豪「!?」

東の王「そういう風になっているんだ。どうしようもない戦力差……軍備を強化し続けてもこれだ……かといって兵器に頼ればリセットされてしまうしな」

剣豪「? 何を言ってやがる?」

東の王「もう何をやっても勝てはしない……大勇者に大剣士に大盗賊に大魔法使いに大賢者……あの五人でさえ……駄目だったんだぞ……」

東の王の右腕が震えている。

剣豪「……それが原因か……俺達のヒーローの……あの様を見てお前は……」

東の王「あぁ……どうせ何をやっても適わないのなら、軍門に下ったほうがいい。そうすれば少なくとも、国民は生きていける」

剣豪「……」

東の王「……」

剣豪「……悪いが、俺は若いのに結構期待している」

452: 2013/09/10(火) 00:55:42.88 ID:n7bHaAYI0
200

--東の王国--

東の王「……なに? 今なんて言った?」

剣豪「……まぁ、正直たりてねぇと思うところはいっぱいあるぜ、技術だけじゃねぇ意識の問題だ。俺達の世代なら常識的にやってきたことを、あいつらはできねぇ。そしてできねぇことをなんとも思ってねぇんだ」

東の王「……」

剣豪「大事だと思うものが俺達とずれてやがる。それは無性に腹の立つこともあるけどよ……でも変わりにあいつらしかできねぇもんもある……」

東の王「……」

剣豪「そういうのを見せられた時、今の若いのなら、もしかしたらなんとかしてくれるんじゃねぇかって思っちまうんだ」

東の王「……馬鹿め……魔王に敵うものか……! やつらに敵うものか!!」

剣豪「今の若いのが無理でもいいんだ。次の世代じゃ駄目でも、またその次の世代。それでも駄目ならそのまた次の世代で……そうやって繰り返していけば、いつか解決出来る日がやってくる……かもしれねぇ」

東の王「……それまで人類が存続しているとでも思っているのか」

剣豪「絶対に存続してないってわけでもねぇだろ」

剣豪はにやりと笑って懐から小さな短剣を取り出した。

剣豪「人間はそうやって次に託していくもんだろ? お前が大勇者に託されたように」

東の王「ッ!」

剣豪「だっつうのによぉ……勝手に一人で諦めて、人類の未来決めてんじゃねーぞ!!」

ぐさっ!!

東の王「ッ!!」

盾をすり抜けて、ナイフは東の王の胸に刺さる。

じわ

東の王「そう、か……そういえば……俺のキングキラーは……お前に渡していたな」

457: 2013/09/16(月) 23:52:40.30 ID:UQqEo99R0
201

--東の王国--

魔剣使い「ぐっ……」

カトブレパス「たった一人でよくがんばった方だとは思います。でも、もうやめたほうがいいですよ」

魔剣使いはカトブレパスと対峙している。そして、魔剣使いを取り囲むようにして東の兵たちが武器を構えている。

ざざっ

魔剣使い「お前ら……一体、いつから……わが国は!」

カトブレパス「……さぁ、僕が東の王国の担当になったのは最近のことですから詳しくはわかりません」

ざっ

魔剣使いににじり寄る兵士達。

魔剣使い「……っくそ」

びゅぅん

兵士「! 消えた!」

カトブレパス「……もう一人ではどうしようもないと考えて逃げたのでしょう、彼は追わなくていいですよ。我々がやることは他にもたくさんありますから」

458: 2013/09/16(月) 23:53:37.06 ID:UQqEo99R0
202

--東の王国--

ワーウルフ「」

通信師「はぁ、はぁ、はぁ……」

符術師「……見たか、俺達なら魔族の一体くらい、どうってことねぇ……!」

ざわっ

東の王国騎士「……うっ」

騎士達は砂になって消えていくワーウルフを見て後ずさる。

符術師(つっても、三人も氏ぬはめになるとは思わなかったが……)

符術師の後ろには侍、医師、賭博師の氏体が。

通信師(相変わらず男子は情けないですね……)

ばちばちっ

通信師は雷属性による蘇生を開始しようとする。

459: 2013/09/16(月) 23:55:32.71 ID:UQqEo99R0
203

--東の王国--

ざっ

?「どうなりましたか?」

東の王国騎士「あっ!? ちょ、丁度いいところにおいでくださいました! 我々ではもうどうしていいのか……」

ざわざわ

突然の来訪に騎士達がどよめき始める。

符術師(なんだ、新手か? まさかまた魔族だなんて言うんじゃ、ない……)

ざっ

符術師「……嘘……」

ざっざっ

ざっ

?改めダーク先生「やぁ、久しぶり。随分とまぁ大きくなったね」

符術師「せ、先生!?」

通信師「う、嘘です……!」

ダーク先生「嘘じゃないさ、本人だよ」

やさしく微笑む先生。その笑顔は間違えることなく本人のもの。

460: 2013/09/16(月) 23:59:33.68 ID:UQqEo99R0
204

--東の王国--

だが、触手を生やしたその異形の姿。それは紛れも無く魔族である証……。

符術師「せ、先生……貴方まで……そちら側に行ってしまったんですか……」

ダーク先生「ごめん、でもわけがあるんだよ……まいったな、随分久しぶりだというのに言葉がでてこないや」

通信師「……」

ダーク先生「それじゃあ……ひとまず彼らを城に運んであげよう。蘇生をしないといけないからね」

通信師「! 蘇生……?」

上級騎士「よ、よろしいのですか?」

ダーク先生「うん。ワーウルフさんは君たちを危険因子と判断していたようだけど、僕はそうは思わない。今も昔も変わらず大事な生徒達だ」

符術師「……」

通信師(ど、どうしますか符術師……)

符術師(わかんねぇ……わかんねぇけど、どのみちこのままじゃ全滅するのは目に見えてるんだ……)

ざっ

ダーク先生「?」

符術師「付いて行ったら……全部話してくれますか?」

ダーク先生「……あぁ、私に答えられることならね」

そういってにこりと笑う。

461: 2013/09/17(火) 00:01:13.28 ID:kmHK0dJD0
205

--東の王国--

かつんかつんかつん

カトブレパス「あちゃー……」

玉座の間についたカトブレパスは、その部屋の惨状を見て大体を理解する。

剣豪「……ち、魔剣使いでも駄目だったか」

カトブレパス「あぁ、あの子だったら逃げ出しましたよ」

剣豪「……そうか」

東の王の氏体の前で剣豪は座っていた。
剣豪は再び刀を握ると、ふらふらと立ち上がる。

剣豪「なら、俺が倒さなくちゃなんねぇな」

カトブレパス「剣豪様。言いづらいことですが、あなたが万全の状態だとしても、僕を倒すことはできませんよ」

剣豪「……言いづらいなら……言うんじゃねぇえ!!」

ダッ!!

走り出す剣豪。

カトブレパス「……」

バンッ!!

剣豪「」

だが……すぐさま頭部を吹き飛ばされてしまう。

カトブレパス「……東の王国掌握完了、ですね」

462: 2013/09/17(火) 00:02:02.97 ID:kmHK0dJD0
206

--南の王国--

ひゅおおおぉぉぉおおおお

氏体が横たわる町をモンスター達が歩いている。

デカキリン「きゅえぇーー」

ずしん、ずしん


南の王国も、東の王国とほぼ同じ時間に……

ダーク亜人王「……南の王国、掌握完了」

南の王「」

虎男「」

狐男「」

犬娘「」

魔王軍の手によって陥落していた。

463: 2013/09/17(火) 00:02:57.61 ID:kmHK0dJD0
207

--王国、Aサイド--

ダーク絵師「ぎゃはは!! そぉーれっ!!」

ダーク絵師が空中に槍を描くと、それは増殖していき、

ずずずずず

中央兵士「!! 空が、槍で埋め尽くされている!?」

ダーク絵師「いっけーぎゃはぁ!!」

ひゅうううぅうううぅううぅううう!!

国全体に雨のように降り注ぐ槍。

ひゅうううドスドスドスス!!

中央市民「ぎゃああああああああ!!」

中央女性「いぎっ!!」

中央男性「ぐあぁっ!?」

わーきゃー!!

どしゅっどぼっどずずっ!!

464: 2013/09/17(火) 00:03:32.10 ID:kmHK0dJD0
208

--王国、Aサイド--

フォーゼ「っざっけてんじゃねぇーこるぁっ!!」

ダーク絵師「!」

教会の天辺にいる絵師に向かってフォーゼは跳躍する。

どひゅん!!

そしてフォーゼは右拳を絵師にたたき付けた。

フォーゼ「どるぁっ!!」

ゴンッ!!

ダーク絵師「ぎゃはは!! きたな脳筋!」

フォーゼ「!?」

フォーゼの拳は、いつ描いたのかもわからない盾によって防がれている。

びきっ

465: 2013/09/17(火) 00:04:46.39 ID:kmHK0dJD0
209

--王国、Aサイド--

ダーク絵師「……?」

びきびきびき

徐々に盾にひびが入っていく。

フォーゼ「この程度で俺の拳が止められるとでも思ってんのかぁ……?」

びきびきびき、どがぁあん!!

ダーク絵師「げぶっ!?」

盾を破壊し、そのまま絵師の顔面を殴りぬくフォーゼ。

ひゅんっ、どがぁあん!!

その勢いのままダーク絵師は民家に突っ込んでいった。

フォーゼ「おい軍師ぃ! このまま決める、許可をくれぇい!!」

フォーゼは城に向かって大声で叫ぶと、軍師が城の窓から現れて手をふった。

軍師「魔殺モード、発動!!」

ぎゅりり

466: 2013/09/17(火) 00:06:47.29 ID:kmHK0dJD0
210

--王国、Aサイド--

ダーク絵師「!」

しゅぅぅううう

フォーゼ「……ふぅ」

全身を真っ赤に発光させているフォーゼ。それを見た絵師は危機感を覚える。

ダーク絵師「そいつは……私を殴り頃したやつぎゃはね?」

がらがらがら

ダーク絵師はがれきを跳ね除けて立ち上がる。
が、

どがぁっ!!

ダーク絵師「えっ」

絵師が構える間もなくフォーゼが飛び込んできて、絵師の腹部を強打した。

ダーク絵師「がっ、はっ!!」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!

空中に浮かせてからの連打。絵師は逃げることも防ぐことも出来ない。

ダーク絵師(な、い、いくら、なんでも、ご、これは、おかしい)

467: 2013/09/17(火) 00:07:35.26 ID:kmHK0dJD0
211

--王国、Aサイド--

フォーゼ「おらおらおらおらおらおらぁあ!!」

どがががっ!!

ダーク絵師「ぐふぅ!?」

屋根を突き抜けた二人、フォーゼは踵落としで更に追撃を加えた。

どっがぁああああん!!

ダーク絵師(確かに、あの時も圧倒的だった……でもここまでの差は……はっ!?)

絵師は気づく、自分から少しずつ力が失われていっていることに。
そして

フォーゼ「うおおおおぉぉおおおおるるるるっるうるぁあああああ!!」

ドッがあああああああああああああああああああん!!

……フォーゼの力が少しずつあがっていることに。

ダーク絵師(魔族、魔王から力を奪ってるってことぎゃは!? それなら私達の完全なる)

どがぁああん!!

フォーゼの拳が絵師の胸部を貫いた。

ダーク絵師「天、て、き」

468: 2013/09/17(火) 00:09:01.26 ID:kmHK0dJD0
212

--王国、Aサイド--

ざあああぁああ

フォーゼによって倒された絵師は、静かに砂になっていく……。

フォーゼ「……ち、まさか同じ相手に二度もこれを使うことになるなんてよぉ」

ダーク絵師「あ、あぁ、あ……」

ダーク絵師はうつろな表情で空を見上げた。

フォーゼ「……」

砂になって消えていく腕を伸ばす。

ダーク絵師「つ、つい、んて……」

ざぁっ

そして、絵師は完全に消えてしまう。

フォーゼ「……くそっ! 胸糞悪い!!」


ばさっ


???「ほう、これが今のこの国の三強か」

フォーゼ「!?」

ドカカカカッ!!

フォーゼ「がっ!?」

フォーゼは上から降ってきた無数の血の剣によって貫かれてしまう。

469: 2013/09/17(火) 00:10:13.39 ID:kmHK0dJD0
213

--王国、Aサイド--

フォーゼ「!……お前がここにいるってことは精鋭騎士たちはみんなやられちまった、ってことかこるぁ!?」

フォーゼが見上げるとそこには、魔族ヴァンパイアの姿があった。

ばさっ

???改めダーク大賢者「あぁ、私を食い止めることすら出来ない雑魚達だったよ。あんなのがこの国を護る兵士達とはな……まったく嘆かわしい」

ずきゅん

フォーゼ「ぎっ!?」

ダーク大賢者「なんとなく、ではあるが作りがお前、人造勇者に似ているな? 新型か?」

ずきゅん! ずきゅん!!

フォーゼ(ぐっ!! こいつ、俺から力を吸い上げてやがる!?)

ダーク大賢者「魔殺モード。正直厄介な力だが、エネルギードレインは吸血鬼の十八番だ。このままお前より先に吸い尽くしてやる」

470: 2013/09/17(火) 00:10:47.21 ID:kmHK0dJD0
214

--王国、Aサイド--

フォーゼ「! っざけんなぁ!!」

ばきばきばきっ!!

ダーク大賢者「!」

フォーゼは自分に刺さっている剣を全て折り砕く。

フォーゼ「へへっ……吸い上げ合戦なんてまどろっこしぃんだよぉ! 男は黙って、拳で勝負だこるぁっ!!」

だっ!!

フォーゼが踏み込むも、

ダーク大賢者「遅い」

ダギャシャッ!!

ダーク大賢者の水の魔法で押し返されてしまう。

フォーゼ「ぶほっ!?」

471: 2013/09/17(火) 00:11:41.80 ID:kmHK0dJD0
215

--王国、Aサイド--

ごおおおおおおおおおおおおおおおお

フォーゼ「ごはっ!?」(こいつ!? この威力、レベル4魔法を無詠唱でぶっぱなしただと!?)

ざっばぁあああああああああああん!!

フォーゼは赤い色の水に押し流されていくが、なんとか民家に捕まって脱出する。

ざぱっ!!

フォーゼ「ぶはぁっ、はぁっ! くそ、どこだあいつは!」

ダーク大賢者「ここだが?」

大賢者はすでにフォーゼの後ろにいた。

フォーゼ「なっ!?」

ばさっ!!

振り向くよりも速く、ヴァンパイアの放つ無数の蝙蝠が一斉に起爆する。

ドゴオオオン!!

472: 2013/09/17(火) 00:12:45.57 ID:kmHK0dJD0
216

--王国、Bサイド--

オーズ「ぐう……」

ダーク王様「その程度か」

ミイラ姿の王様は剣を構えてオーズに問う。
オーズも既に魔殺モードになっている。なのに王様に手も足も出ない……。

オーズ(氏んだ兵士から剣を奪ってから、強さが段違いだお……こいつ生前はどんな奴だったんだお……)

びゅっ!!

オーズ「!? くっ!!」

じゅぱああっ!!

生半可な攻撃では傷つくことのないオーズの腕が、いとも簡単に切り裂かれる。

オーズ「おっおっ!!」

ダーク王様「鈍らだ。こんな剣じゃあだめだ。あの大剣が恋しい……そうだ、城に置いて来た。取りにもどろう」


473: 2013/09/17(火) 00:13:49.43 ID:kmHK0dJD0
217

--王国、Bサイド--

ひゅんひゅん!

王様はオーズを無視して城へと向かっていく。

オーズ「!! かっちーん! こんな屈辱初めてだおっ!! まてー!!」

どんっ!!

オーズも王様を追って民家の上に登る。

たたたたたたた!!

ダーク王様「……追ってきたか。しばらくの間だが生かしてやるつもりだったのに」

オーズ「うおおおおりゃああああああ!!」

オーズは跳躍し、とび膝蹴りを放つ。

ダーク王様「スキル、乱刃」

ふぉっ

王様がちょちょい、っと空中で剣を振るうと、

ズババババッ!!

オーズ「!?」

無数の斬撃がオーズを切り裂いた。

474: 2013/09/17(火) 00:15:18.47 ID:kmHK0dJD0
218

--王国、Bサイド--

オーズ「ぎゃっ!!」

ダンッ!!

体勢を崩し屋根の上から落ちそうになるところに、

ダーク王様「スキル、地烈」

どっ

王様は足元の屋根を粉砕する。

どがぁあああん!!

その衝撃でオーズは空中に放り出されてしまう。

ダーク王様「スキル、空断ち」

びょっ!!

そこに追撃の飛ぶ斬撃がオーズを襲う。

ずばしゃぁ!!

オーズ「ぎゃっ!!」(ま、魔殺モードで力を少しずつ奪っているはずなのに、なんで、こんな!!)

ダーク王様「今私は純粋な剣技だけで戦っている。かつてのように、な」

止めを刺さんとばかりに王様は跳躍する。

ダーク王様「スキル、一の突き」

しゅっ、ずばぁあ!!

王様の剣は、

オーズ「」

オーズの心臓を串刺した。

475: 2013/09/17(火) 00:16:26.90 ID:kmHK0dJD0
219

--王国、Bサイド--

どしゃっ

オーズ「」

心臓を破壊されたオーズの魔殺モードは止まる。

どくどくどくっ……

ダーク王様「……なまくらだ。こうまでしなければ倒せないとは……大剣さえあれば最初の一撃で終わっているというのに」

くるっ

再び城の方に向き直るとそこには。

ざっ

X「……ここから先へはいかせん」

アマゾン「きー、きー!! 再び参上だきー!!」

人造勇者の二人が立っていた。

ダーク王様「人造勇者……なぜきさまらがここに……」

X「しれたこと。我らは正義の使者だ。悪あるところに自然と現れる」

476: 2013/09/17(火) 00:19:17.21 ID:kmHK0dJD0
220

--王国--

そして城にももう一人の人造勇者が現れていた。

シン「お手伝いしますよ。私の力を使えば貴方の力を十二分に生かせるはずです」

軍師(脱走した人造勇者?! いや……これはありがたい!!)「ありがとうだぜぇ。ぜひお願いするんだぜ」(でもこいつ顔超きめぇだぜぇ)

シン(……テレパシーで聞こえてるんですよねぇ……)



--王国、Bサイド--

ドシュドシュドシュドシュドシュ!!

X「がっ!? な、にっ……」

アマゾン「そんなっ!!」

ずばしゃぁあああああああああああ!!

ダーク王様「……寝ぼけたことを……」

一瞬で王様に切り裂かれる人造勇者の二人。

ダーク王様「お前らをそんな体にするよう指示したのは誰だと思っているんだ……お前らのスペックは完全にわかっている」

X「づっ……こうも簡単に俺の体を斬るとは……さすが元三大剣士の一人なだけはある」

Xは立ち上がり再び戦闘態勢に。

X「次はこうはいかんぞ」

ぱきぃん

ダーク王様「!……なまくらめ……」

王様の持つ剣は折れていた。



ひゅぅううぅ

……彼らを遠方から眺めているものがいる。

吟遊詩人「久々に帰ってきたら……これだもんなぁ。どうしようかな」

479: 2013/09/23(月) 23:10:50.23 ID:PAUroAvP0
こんばんは。三連休どうでしたか??

それでは投下していきます!

480: 2013/09/23(月) 23:11:18.09 ID:PAUroAvP0
221

--王国、Bサイド--

X「さぁ獲物が無いぞ? どうする魔族」

Xはダーク王様との距離を詰め、格闘戦を始めた。

ダーク王様「ぐ」

Xはボクシングの構えから拳を突き出す。

ドガガガガッ!!

ダーク王様「っ、ぐっ!!」

素手で応戦するも、さすがに分が悪く王様は押されていく。

X「ふんっ!!」

ドガッ!!

ダーク王様「ぐおっ!!」

Xのハイキックをまともに受けた王様は民家に叩きつけられた。

どごおおぉおん!

481: 2013/09/23(月) 23:12:14.22 ID:PAUroAvP0
222

--王国、Bサイド--

アマゾン「一人でやっちゃうきー!? さすがXさんだきー!」

X「アマゾン、結界は頼んだぞ!! 火属性攻撃力上昇魔法、レベル4!!」

ぼぉお!!

Xの右の拳が炎に包まれる。

X「風属性攻撃力上昇魔法、レベル4!!」

Xの左の拳が風を纏う。

がららら

ダーク王様「づ……何か剣を手に入れなければ……ぬ!」

瓦礫から這い出てきた王様は大炎と竜巻を目撃する。

X「奥義、大炎嵐」

ドガァアアアアアアアアアアン!!

482: 2013/09/23(月) 23:13:29.39 ID:PAUroAvP0
223

--王国、Bサイド--

ごおおおぉおおんん!!

荒れ狂う炎が王国の町すら焼き尽くそうとする。

アマゾン「水属性封印魔法・結界レベル4だきー!!」

かかかかん!!

アマゾンが魔法を唱えると周囲四箇所に水で出来た壁が出現する。

アマゾン「ふー、これで周りには被害がいかないと思うきー」

ごおおぉおぉ

X「遅いぞアマゾン、あと少しで町を焼き払うところだった」

アマゾン「そんなこと言うんなら結界張った後に奥義ぶっぱして欲しいきー……」

X「……ふん」

ごおおぉおおぉ

X「……恐らくこれでも倒せていないだろう。が、結界が張られた今、外から援軍が入ってくることはない」

483: 2013/09/23(月) 23:14:31.50 ID:PAUroAvP0
224

--王国、Bサイド--

ダーク大賢者「この程度で結界だと? 随分とふざけたことを言う」

X「!?」

二人が上を見上げると、大賢者が黒い翼を広げて飛んできていた。

アマゾン「もう一人の魔族かきー!?」

ダーク大賢者「水属性妨害魔法・解除レベル4」

ぱきぃいいぃん!!

X「!?」

アマゾン「お、おれっちの結界がいともあっさりと……」

X「……単純にお前より数段上の魔法使いということだ」

アマゾン「単純にショック」

ダーク大賢者「今助けるぞ、王よ。水属性回復魔法、レベル4」

ずぎゅううううん!!

青い閃光が炎の中を走り、中にいる王様を探し当てる。

ダーク王様「……」

484: 2013/09/23(月) 23:15:13.38 ID:PAUroAvP0
225

--王国、Bサイド--

ごごごご

ダーク王様「大儀だ、大賢者」

ぶわぁ!

炎の中から無傷の王様が現れる。

X「くっ……」

ざっ、ざっ、ざっ

ダーク王様「いや、見誤った。いくらお前らのことを知っているとはいえ、見くびっていたようだ」

アマゾン「う、魔族二体はちょっときついんじゃきー……」

ダーク王様「お前達だってあれから鍛えているだろうにな。ふははは」

ざっ、ざっ、ざっ

485: 2013/09/23(月) 23:15:39.62 ID:PAUroAvP0
226

--王国、Bサイド--

ダーク大賢者「王、これを」

ひゅんひゅんひゅん
ぱしっ!

大賢者は血で出来た大剣を王様に投げる。

ダーク王様「ふむ……あれじゃあないのか。まぁ先ほどのものよりは随分とましだがな」

しゃん!

X「」

アマゾン「」

握った大剣を王様が一振り、すると

ズばばばばばばばばばばばばばばば!!

国が縦に別れてしまう。

486: 2013/09/23(月) 23:17:27.85 ID:PAUroAvP0
227

--王国--

どどどどどど

軍師「な、なんて力だぜぃ! 剣を持ったら戦闘力が跳ね上がったぜぃ!?」

シン「ど、どうするんですか軍師さん! いくら貴方の力でも……!」

軍師「っ! 全力で指揮したオーズとフォーゼですらあいつらには勝てなかった……Xとアマゾンとシンが増えた今でも……
駒がもう一つ足りないだぜぃ!」

ざんっ!!

吟遊詩人「呼びましたか~? ららら」

軍師「!?」

衝撃で揺れる中、窓から一人の人間が入ってくる。

シン「貴方! ……見たことありますね、確か元王国の三騎士の一人……」

軍師「吟遊、詩人……戻ってきただぜぃ……?」

吟遊詩人「……追い出されたのをいいことにそのままツインテのところに行こうかとおもったんだけどね~」

ぽろん

吟遊詩人「まぁ今はそんなこといいんだよ。どうだい軍師。僕がいても敵わないかい?」

軍師「! ……後方支援か……出来れば遠距離攻撃型、せめて近距離アタッカーが欲しいところだったんだけど……いや……
君が力を貸してくれるなら、必ず勝って見せるだぜぇい!!」

487: 2013/09/23(月) 23:18:55.79 ID:PAUroAvP0
228

--王国、Bサイド--

ギョギョギョギョギョン!!

X「なんて剣筋だ……まるで見えやしない」

アマゾン「ぜっ、ぜっ、ぜっ……」

ダーク王様「まがい物じゃここいらが関の山か」

ダーク大賢者「くっく、ちゃんとした剣があれば王に敵うものか。たとえ二人がかりでもな」

X「……ッ」

アマゾン「き、厳しいきー……絶対絶命だきー」

ぴょん

ばった「派、は、他、して、ソウ、かな?」

ダーク王様「? 喋るバッタ……だと?」

X「……ふ、ようやく勝てる作戦が決まったか軍師!」

バッタ「あ、あー……あぁ、行くよ、反撃開始だ!!」

488: 2013/09/23(月) 23:19:51.98 ID:PAUroAvP0
229

--王国、Bサイド--

バッタ達「「「ら~らら~ら~」」」

アマゾン「国中のバッタが歌ってるきー」



--王国--

吟遊詩人「ららら~奥義、英雄歌」



--王国、Bサイド--

どん!!

X「!! この、パワーは!!」

アマゾン「す、すごい!! 力があふれ出てくるキー!!」

王国中位騎士「わ、我々も、か?」

ダーク王様「なんだこの歌は……耳障りな」

ダーク大賢者「……」

489: 2013/09/23(月) 23:21:52.43 ID:PAUroAvP0
230

--王国--

吟遊詩人(僕のこの奥義を聞いた者、全員のステータスを五段階上昇させる。ま、三分間だけなんだけどね)

軍師(シンのテレパシーバッタを使って国中に効果を広めた。このまま総力を結集して決めるだぜぃ!!)「シン、指示出し用のバッタはどいつだぜ!」

シン「配置は完了してますよ! 地図の上にそれぞれおいてあります!」(吟遊詩人+軍師のWバックアップ……これならい
ける!!)



--王国、Bサイド--

ダーク王様「だからなんだと言うのだっ!」

ぼっ

王様はXに向かって大剣を振り下ろす。

がしっ!!

ダーク王様「ぬ! 食い止めた!?」

X「……悔しいがまともにやっても俺じゃあお前達に勝てないようだ……」

びき、びききっ!

X「だから、お前達には俺達全員で勝負を挑む!!」

490: 2013/09/23(月) 23:23:27.96 ID:PAUroAvP0
231

--王国、Bサイド--

ダーク王様「はぁあああ!!」

ぎぎぎぎぎぎぃん!!

X(見える! さっきまで見えなかった剣筋が!!)

どがしゃぁあ!!

ダーク王様「っっっ!!」

全ての剣撃を弾き、そのまま王様の頭部をぶん殴る。

どぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃああああ!!

ダーク大賢者「ッ! この歌、そういうことか!! ならば、発声機能封印魔法!!」

ぶぅううん!!


--王国--

軍師「  」(しまった!! 封印魔法か!!)

吟遊詩人(く、対処がはやい。半分しか歌えなかったね~……効力はおよそ一分半、それだけで倒せるのかな~?)

491: 2013/09/23(月) 23:24:00.99 ID:PAUroAvP0
232

--王国、Bサイド--

ダーク王様「よくやった、大賢者」

ひゅぉ

がぎぃいいいん!!

X「!」

ダーク王様「パワーダウンしたな? どうやら歌だけじゃなかったらしいな、後方支援は!」

X「 」(くっ! だがさっきよりかは戦える! ここからは心の戦いだ!!)



--王国--

シン(え? テレパシーで歌と指示送り続けられないんですか?)

軍師(……)

吟遊詩人(……)

492: 2013/09/23(月) 23:25:07.91 ID:PAUroAvP0
233

--王国、Bサイド--









しゅぅううぅ……

ダーク王様「……ちっ……あの、大剣が、あれ、ば……な……」

ダーク大賢者「……王……また……護れ、なか……」

ざぁああ……

魔族となった二人は砂になって消えていく。

ダーク王様「……白……ゆ」

ざぁ

X「はっ、はっ、はっ……勝った」

アマゾン「つ、強かった……でもこれでとりあえずは」

どがぁああああん!!

アマゾン「……え?」

アマゾンは……下水道から道路を突き破って現れた白ワニによって下半身を食いちぎられてしまう。

ダーク白ワニ「ぐあぁああああぁあああああ!!」

X「!? な、まだいたのか!?」

493: 2013/09/23(月) 23:26:09.23 ID:PAUroAvP0
234

--黄金王国--

わーきゃー!

ワーム「ぎょろぼぼぼぼぼっ!!」

茶肌兵士「わ、た、たすけっ」

ドガァアアン!!

茶肌弓兵「ぐっ!! な、なぜだ! なぜモンスターがここまで強いのだ!?」

ばきばきばきばき

巨大なワーム一匹に翻弄されている黄金王国の兵達。

ニンフ「うっふっふ~当たり前です~。魔王が本腰を入れたときのモンスターは~、正真正銘の、本物の化け物ですよ~?」

どがぁああん!!

ダーク実験体「やれやれ。クソ旦那。お礼参りにきちゃった」

研究者「あ、あ~……お、お久しぶりですねぇ、マイワイフ~……」

姫「姫ちゃん今起きたよ! 起きたらすごいことになってた!!」

参謀長「今やばいからちょっと黙っててね!」

姫「今バカってゆった!?」

参謀長「言ってねーよバカ!!」

494: 2013/09/23(月) 23:26:53.82 ID:PAUroAvP0
235

--砂漠の風--

どぉんどぉん!!

弓女「そんな! お、お前は……」

盾兵「……その姿……そっち側に行ってしまったのか……?」

ダーク弓女「えぇ。もう私はこちら側です……ごめんなさいね」



どおおおおん!!

鬼姫「っ! なんで親父が生きてるっすか!?」

どぉおおおん!!

ダーク鬼亜人「ふははっ!! お前の成長した姿が見たくてな!!」

495: 2013/09/23(月) 23:28:18.76 ID:PAUroAvP0
236

--風の大谷--

聖騎士「ぶるるるるるぁぁああ!! 」

ダーク龍騎「くっくっく!! 貴方とは一度戦って見たかったのだ!!」

ばさっ!

竜に乗る龍騎は聖騎士を追って空を行く。

びゅおおおお!!

ダーククウガ「はぁあ!!」

ダークアギト「ぬおおお!!」

どぉん!! どがぁあん!!

聖騎士「哀れな勇者もどきがぁああ三人ぃぃんんかぁああああ?」

ダーク龍騎「豪勢な戦力だろ!? 悔しいがお前には三人でぶつかるのが得策だと判断した!!」

聖騎士「……豪勢?」

ばちばちばちいいいいいいいい!!

ダーク龍騎「ひっ!!」

聖騎士の纏う魔力を感じ、ダーク竜騎士は顔を引きつらせる。

聖騎士「我はなぁ……たった三人だけかとぉ、言っておるのだぁああああ!! スキルぅぅ、大っ雷っ槍おおおおおおおおおおお!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

496: 2013/09/23(月) 23:28:54.78 ID:PAUroAvP0
237

--魔法王国--

ダークJ「ぐっふっふー。全部踏み潰してやるー」

ずずぅん!!

竜子「……なんで私も戦いに参加しなくちゃいけないんだよ。無理やり谷からつれて来たくせに」

魔導長「つべこべいわないの。戦わないと氏んじゃうよ」

竜子「……くそ!! あとでなんか美味いもん食わせろよ!!」

びきびきびきびき!!

竜子「……ん?」

ごごごごごごごご

魔法王国戦士「ひ、ひぃ!! う、嘘だ、うそだぁあああ」

じゅわあ!!

竜子「蒸発、した? ……それにあのシルエット……」

ざしゃっ、ざしゃっ

魔導長「……魔王軍め、随分めんどくさいのまで復活させたみたいなの……」

迅雷「……災厄……」

竜子「おとう、さん……?」

ダーク竜亜人「ふしゅるるる……」

497: 2013/09/23(月) 23:30:02.77 ID:PAUroAvP0
238

--???--

ごぼぼ

暗い部屋の中でツインテは体育座りをしながらフォーテの入っている容器を見ている。

ツインテ「……」

トリガー「危ないところだったね。もう少し助けるのが遅かったら、フォーテは本当に魔王になってしまうところだった……
あれくらいの戦力なら何とかなると思ったのに計算外だ。カブトには逃げられてしまったしね」

フォーテ「……」

トリガー「ね、ツインテ。話があるんだけれど」

ツインテ「……なんですか?」

トリガー「フォーテに、氏なれたくないでしょ?」

ツインテ「!! あ、当たり前です!! フォーテちゃんはボクの大事な弟なんですから!! 何言ってるんですか!!」

トリガー「ふふ、だよね。心優しいツインテちゃんならそう言うと思っていたよ」

ツインテ「何が……言いたいんですか?」

トリガー「……このまま行けばフォーテはもう一度戦いの場に出向かなくてはならなくなる。でも、出向けば……」


  次は、体が持たないかもね

498: 2013/09/23(月) 23:31:30.85 ID:PAUroAvP0
239

--???--

ツインテ「!!」

トリガー「僕としても失いたくないんだ。フォーテは僕らのジョーカーだからね。でもそれでもやらなきゃいけないことがほかにあるんだよ」

ツインテ「な、何をすれば、フォーテちゃんは戦わずにすむんですか?」

トリガー「……残る勇者因子覚醒候補を倒すんだ。そうすれば世界平和が実現する。フォーテは最後まで戦わずにすむだろう」

ツインテ「!! 勇者因子……覚醒候補?」

トリガー「そうだ。勇者の危険さは前に説明したよね?」

ツインテ「……はい」

トリガー「なら、理解してくれるよね?」

ツインテ「…………はい」

トリガー「なら、ここにあるリストのメンバーを倒してきてくれるね?」

ぺらっ

ツインテ「はい……え?」

……

499: 2013/09/23(月) 23:34:53.09 ID:PAUroAvP0
240

--荒れ果てた地--

そして、三日後。



ひゅうぅううう

アッシュ「ふぅ……久々の通常世界だ。随分懐かしい気がするぞ」

ポニテ「だねー。今思うと妖精の世界に行ってからうOこしか食ってなかった気がする。何かおいしいもの食べに行こう!」

レン「他のものもしっかり食ってたにゃ。相変わらず忘れっぽいにゃポニテは」

ハイ「あの、それより皆さん? その前に気になることあるんじゃないでしょうか?」

ひゅぅううう

アッシュ「……俺も実は気にはなっていた」

ポニテ「はいはいはーい! 私も気になってたよ!」

レン「レンもにゃ」

ハイ「そうですか、よかったです。実は私だけなんじゃないかと思ってました」

ひゅうぅうう

ハイ「これ……世界滅んでますよね?」



ざっ

ツインテ「……皆さん」

アッシュ「!? つ、ツインテ!? なぜここに!!」

ポニテ「あーツインテちゃん!! 久しぶりだねぇー!!」

レン「にゃにゃーーー!!??」

ハイ「ツインテ……さん?」

ユニコーン「ひひん」

妖精郷から出てきた四人と一匹の前にツインテが現れる。

アッシュ「お前……まさか一人で逃げてきたのか?」

ツインテ「……ごめんなさい、ごめんなさい皆さん……」

ツインテはぼろぼろと涙をこぼす。

アッシュ「!! ちょっ!? い、いきなり何泣いてるんだ!?」

ツインテ「ごめんなさい……皆さん。氏んで、下さい」

506: 2013/09/30(月) 23:01:54.01 ID:KjZBRHdv0
241

--荒れ果てた地--

ひゅうぅううぅ

ツインテ「……」

アッシュ「……な、何を、言い出すんだ、ツインテ」

ポニテ「……レンちゃん」

レン「わかってるにゃ。二番機ゴーレム」

ずるるる

レンが呼び出したゴーレムの額には2の文字が書かれていた。

レン「ダメージ履歴、回復履歴参照」

ぴかー

ゴーレムの眼が光り、ツインテの体を調べていく。

ツインテ「……」

2ゴーレム「ごごっ」

レン「!……変装でも、洗脳ってわけでも……無いみたいにゃ」

507: 2013/09/30(月) 23:03:49.51 ID:KjZBRHdv0
242

--荒れ果てた地--

アッシュ「せ、洗脳じゃないなら今は錯乱しているだけだ、あ、ああああのツインテが、そんなこと言うはずがないっ!! だ、だだ大体前見たときは自閉症に近かったんだ、だ、だから!!」

ツインテ「洗脳じゃないことがわかって貰えたと思います……なら、ボクの本気をわかってもらえましたか?」

アッシュ「ふぉびょっ!?」

ポニテ「……ツインテちゃん、どうして? なんで私達が氏ななくちゃならないの? 私達の知るツインテちゃんならそんなこと絶対に言わないよ……」

ポニテは冷静に問う。

レン「……ツインテ」

ツインテ「し、仕方ないん、です……皆さんは、勇者候補だから……だから倒さなくちゃいけないんです」

ツインテは涙を拭いてまっすぐアッシュ達を見た。

アッシュ「あぶぶぶぶ」

ハイ「あぁ! アッシュ先輩が泡吹いてます!」

508: 2013/09/30(月) 23:04:26.70 ID:KjZBRHdv0
243

--荒れ果てた地--

ポニテ「勇者候補だから? なるほど、フォーテちゃんに何か吹き込まれちゃったみたいだね」

ぼっ!!

レン「!? ポニテ!?」

ポニテの全身から炎が噴出した。それはポニテが本気で戦闘態勢に入ったということ。

レン「何をする気にゃ!? あれはツインテにゃ!」

ポニテ「ツインテちゃんだからだよ。アッシュ君もレンちゃんも心を乱されすぎ。もうツインテちゃんはとっくに」

ずずず

ツインテ「」

ポニテ「攻撃態勢に入ってるんだよ!!」

どがぁあああああああああああああああん!!

509: 2013/09/30(月) 23:05:48.18 ID:KjZBRHdv0
244

--荒れ果てた地--

どがどがぁあああん!!

地面を砕き、地下から大量の水が吹き出した。

アッシュ「あばばばば」

ハイ「あ、アッシュ先輩泡吹いてる場合じゃないですよー!」

レン「づっ!! つ、ツインテ! やめるにゃ!! なんでツインテとレン達が戦わなくちゃならないのにゃ!!」

どがぁん! どががぁあん!!

ツインテ「……ごめんなさい」

しゅるるっ

ツインテの背中から出現した、魔力でできた無数の触手が伸びる。

レン「!!……くっ! 土属性防御魔法、レベル4!!」

どきぃいいいいん!!

ポニテ「そう。攻撃する意思を持てないなら、せめて防御はしっかりしてね」

ユニコーン「ひひーん」

510: 2013/09/30(月) 23:07:45.53 ID:KjZBRHdv0
245

--荒れ果てた地--

ポニテ「火属性武器生成魔法、ブラッドセイバー!!」

ブォン!!

ポニテが魔法を唱えると、赤く光る剣が二振り出現する。

ポニテ「はぁあああああ!!」

だだだだだだ!!

そしてツインテに向かって駆けていく。

ツインテ「っ、水属性防御魔法、レベル2」

ばしゃしゃしゃしゃ!!

それを見たツインテは、自身の周りを囲む、水の壁を出現させた。

ポニテ「その程度の防御なんて、今の私なら簡単に蒸発できるんだよ!」

しゅっ!

切り裂こうとしたポニテ。
だがその壁を触手が一足先に突き破った。

ポニテ「!?」

がぎぃん!!

ポニテ(めくらましだったのか!)「はっ!?」

ぎゅるぎゅるぎゅる

触手の先端は回転している。

511: 2013/09/30(月) 23:10:42.72 ID:KjZBRHdv0
246

--荒れ果てた地--

ぱしゃっ

ツインテ「……ち、久々のシャバだっつーのに、こんなことをしなくちゃなんねーなんてよぉ」

水が消える。そこに立っていたのは髪型がストレートになったツインテ。

レン「人格を、変えたにゃ?」

ツインテ「お前らのことは別に嫌いじゃなかったけどよ……そういうことだ」

ぎゅりりりりりりいぃぃ!!

ツインテの触手が高速で回転していく。

ポニテ「はぁああ!!」

ぎぃん!! ぎぎぃいん!!

ポニテは迫る触手を全て叩き落としていくのだが、だんだんと後退させられてしまう。

ポニテ(この程度のスピードとパワーなのに押されてる? 私の動きが鈍る部分に打ち込まれてるの?)

がぎぃん、ぎがぁん!!

アッシュ「あびゅびゅびゅびゅ」

ハイ「自分の泡で窒息しかけてる!?」

512: 2013/09/30(月) 23:12:21.13 ID:KjZBRHdv0
247

--荒れ果てた地--

ぎぃん! ぎぎぃん!!

レン「やめるにゃツインテ! レン達は敵じゃないにゃ! お願いにゃ、目を覚ましてにゃ!!」

悲痛なレンの叫び。目元にはうっすらと涙が。

ツインテ「……」

ポニテ(! ナイスレンちゃん! 一瞬だけどツインテちゃんの集中力が散漫になった!)

ぼっ!!

ポニテは足の裏で炎を爆発させた。

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

ツインテ「!?」

ジェット噴射のように飛んでいくポニテ。そして

ポニテ「やああああああああああああああ!!」

ズギィイイイイン!!

ポニテは両手の剣で、ツインテを斬った。

513: 2013/09/30(月) 23:14:01.04 ID:KjZBRHdv0
248

--荒れ果てた地--

レン「なんてことを!!」

ポニテ「レンちゃん! 拘束魔法かけて!」

レン「え?」

ぃぃぃいいん……

ツインテ「……」

いつの間にかツインテの髪留めは再び装着されていて、ストレートだった髪にウェーブがかかっている。

ポニテ「いつの間に、いや、それよりもなんで無傷……レンちゃん、早く!!」

レン「!」

レンは拘束魔法をツインテに向けて放つ。

しゅるるる!!

気だるそうに立っているツインテはぼそりと呟いた。

ツインテ「私は……盾……どんな攻撃も……利かない」

しゅるしゅるしゅる

ツインテを拘束するために伸びていた魔法の糸がツインテに絡み付いていく。
しかし

ぶちぶちぶちぃ!!

締め付ける前にぼろぼろと崩れていった。

514: 2013/09/30(月) 23:14:45.14 ID:KjZBRHdv0
249

--荒れ果てた地--

ポニテ(これはあの時のツインテちゃん……ツインテちゃんが心を閉ざした姿だと思ったけど)

レン(これも別の人格! そして恐らくは防御タイプの……)

ぱきぃん!

再び髪留めが吹き飛んでストレートに。

ツインテ「ち、油断しちまったぜ。三対一で来られてたら本気でやばかったかもな……」

ごごごごご

ポニテ、レン「「!?」」

ツインテの真上に巨大な水の球体が出現する。そしてそれは触手で支えられていた。

ポニテ(あれに込められた魔力、やばい!)

レン「ポニテ、こっちにゃ!!」

レンは巨大なゴーレムを作り出しながらポニテを呼んだ。

515: 2013/09/30(月) 23:15:22.66 ID:KjZBRHdv0
250

--荒れ果てた地--

ポニテ「ッ!」

ポニテはレンのもとへと駆ける。

ダッ!!

めきめきめき

巨大なゴーレムは腕を盾のように変形させてツインテからの攻撃に身構えた。

きゅいぃぃいいい!!

ツインテ「……水属性範囲殲滅攻撃魔法、レベル4」

どっ!!

ツインテの合図とともに水の球が大爆発を起こし、辺り一体を押し流していく。

ざっぱぁあああああん!!

ポニテ「ッッ!!」

レン「にゃっ!!」

アッシュ「ぶくぶくぶく」

ハイ「きゃああああああああああああ!!」

ざばばーー!!

516: 2013/09/30(月) 23:19:03.41 ID:KjZBRHdv0
251

--荒れ果てた地--

ざばーー!!

大ゴーレム「ご、ごご!!」

ぼろ、ぼろろっ

レン「耐えるにゃ!! もう少しにゃ!!」

ざばーー!!

ポニテ「……私もまだ甘かった。手加減なんてしてる相手じゃないのにね」

すっ

レン「え、ポニテ?」

ぶぅん

ポニテの体が赤く光り始める。

レン「!? まさか、奥義を使う気かにゃ!?」

ポニテ「うん。私の属性じゃツインテちゃんと相性が悪いし、並大抵の攻撃じゃツインテちゃんにはきかない」

ぼっぼっぼっ

ポニテ「ならこれしか」

どがぁああん!!

ポニテ、レン「「!?」」

その瞬間、大ゴーレムがばらばらに壊されてしまう。

ひゅんひゅん

触手の鞭によって。

ツインテ「やっほー、久しぶりだねっ☆」

517: 2013/09/30(月) 23:20:02.23 ID:KjZBRHdv0
252

--荒れ果てた地--

レン「その髪型は」

ツインテはサイドテールに変わっていた。

ひゅんひゅん

鞭が音を鳴らしている。

ツインテ「うふっ」

ぼぼぼぼっ!!

ツインテが振るった鞭がポニテ達を襲う。

ドガガガガーーン!!



アッシュ「うーん、おぱんちゅむにゃむにゃ」

ハイ「起きてー!!」

518: 2013/09/30(月) 23:21:18.87 ID:KjZBRHdv0
253

--荒れ果てた地--

どがぁあ、どががぁあ、どががががあああああん!!

ぱら、ぱらぱら

ツインテ「……っと、調子にのって攻撃しすぎちゃった。瓦礫であの子達がどこにいるのかわからないや」

ツインテは辺りをきょろきょろと見回している。



もぞ

レン「大丈夫かにゃ? ポニテ」

レンは小声でポニテに話しかける。

ポニテ「う……一発貰っちゃった……くぅ、痛い……」

ポニテとレンは瓦礫に隠れて様子を伺っている。

ツインテ「どこかなどこかなー?」

レン「……いくらなんでも、あれはおかしすぎるにゃ」

ポニテ「そうだね。ツインテちゃんが強すぎる」

ツインテ「どーこっかなー?」

519: 2013/09/30(月) 23:22:22.34 ID:KjZBRHdv0
254

--荒れ果てた地--

レン「ポニテはなんでツインテがあんなに強いと思うにゃ?」

ポニテ「ん……あの右腕が関係していることは間違いないと思う」

レン「そうにゃね。アレからは何か嫌な力を感じるにゃ」

ポニテ「うん。でもそれだけじゃ無い気がするよ」



ツインテ「みーつっけたっ!」

ポニテ、レン「「!?」」

ドガガガァアン!!

ポニテ「づっっ!!」

鞭がポニテを打ち据える。

レン「ポニテ!!」

ツインテ「忘れちゃったの? 私は情報戦に特化してるんだよ? 索敵だって思いのまま~」

レン「はっ!!」

レンが空を見上げると、そこには天使の輪のような大きなわっかが浮かんでいた。

520: 2013/09/30(月) 23:23:39.20 ID:KjZBRHdv0
255

--荒れ果てた地--

レン「くっ、ばればれだったって言うことかにゃ!」

ツインテ「そうだよー? 隠し事は無しでいこーぜっ!」

ひゅんひゅん

レン「……ツインテ。頼むにゃ。もうやめてにゃ」

レンは懇願する。

ツインテ「……それは……出来ないよ」

ざっ

ポニテ「はぁー!!」

ツインテ「! っうわ!」

フォン!!

ツインテ「わー、驚いた。私の攻撃をモロに受けて耐えてるなんて。昔は一撃で倒せたのにね」

ポニテ「そう……だね」

ポニテは血だらけになりながらツインテと対峙している。

ツインテ「……」

521: 2013/09/30(月) 23:26:08.41 ID:KjZBRHdv0
256

--荒れ果てた地--

ツインテ「二人ともすごく、強くなったんだね。昔も結構強かったけど、危うさが取れた強さになってる。三強になったと言われても信じられるほどに」

ポニテ「えへへ……修行したからね。でも不思議なんだよね。私達もかなり強くなったと思ってるのに、ツインテちゃん一人に勝てないんだよ。なんでかな?」

ツインテ「……私は別に一人じゃないよ? この体の中に複数の人格がいる。私は一人で一パーティなんだ」

レン「!……」

ツインテ「気づかされたんだ。私達はたった一人でも戦うことが出来るように、生み出されたんだってことを」

ひゅんひゅん

ポニテ「一人じゃないのはわかったけど、それだけじゃ納得できない、なっ!!」

ぼっ!!

ポニテの剣がツインテを襲う。
のだが、

すかっ

ツインテ「早い斬撃だね。普通なら即氏だよ」

ツインテはするりとかわし、そして

どがががぁあん!!

ポニテ「ッづっ!!!!」

ツインテ「! 二発受けても耐えるの? すっごぉい……」

522: 2013/09/30(月) 23:26:56.65 ID:KjZBRHdv0
257

--荒れ果てた地--

レン「ツインテ、もうやめるにゃ!! 土属性攻撃魔法、レベル2!!」

どごおおおん!!

レンが魔法を使うと地面が隆起してツインテを襲う。

ひゅひゅっ

しかしツインテはそれを軽やかに交わして岩の上に立つ。

すたっ

ツインテ「今の……本気の攻撃じゃなかったね。まだ、私と戦う気にならないの?」

レン「っ……」

ツインテ「……」

ぱきぃん

ツインテのリボンが最初の状態に戻る。美しいツインテールに。

523: 2013/09/30(月) 23:28:37.31 ID:KjZBRHdv0
258

--荒れ果てた地--

ツインテ「……ポニテさん、レンさん。諦めて、氏んでいただけませんか?」

レン「!!」

ポニテ「私達は氏なないよ、それに諦めたりもしない!」

ツインテ「……」

ツインテは少し悲しそうに顔を歪めた。

ツインテ「……ボクの回復魔法は、絶対回復領域から溢れ出たものなんです。つまり、奥義の性質を受け付いでます」

レン「……?」

ツインテ「ボクの奥義、絶対回復領域は、治療するたびにその人の情報を得ることが出来るんです」

ポニテ「!?」

ツインテ「絶対回復領域は治療だけが目的じゃない。戦法とか癖や動き方も自動的に学習してしまうんです」

ポニテ「……」

ツインテ「今の二人なら言ってること……わかりますよね? そして、ボクが今まで、いったいどれだけ皆さんを治療してきたか……」

ごごごごご

ツインテ「奥義、絶対回復領域」

びゅううん

ツインテの魔力が辺りを覆っていく。

524: 2013/09/30(月) 23:31:23.60 ID:KjZBRHdv0
259

--荒れ果てた地--

ポニテ(暖かい魔力……でも)

レン(何か、混ざってるような)

ツインテ「……あ、そうそう」

すかっ!

アッシュ「!?」

後ろから飛びついてきたアッシュをさらりと交わすツインテ。

ツインテ「皆さんの体の中には微量ながらボクの魔力が混在しています。そしてそのせいで、皆さんがどこにいようとわかってしまうんです」

アッシュ「く!」

ざざっ!

ポニテ「お、アッシュ君やっときたね」

レン「いまさらきたところでだけどにゃ。ツインテは……対レン達戦闘では最強に近いことが判明したとこにゃ」

アッシュ「まじか……」

ひゅおおおお

ツインテ「……この結果は……本当に残念です」

うぅん……

ツインテは絶対回復領域を解除した。

アッシュ(解除、した?)

ポニテ(ならなんのために発動した?)

ツインテ「……魔力暴発、レベル4」

ぼっ

525: 2013/09/30(月) 23:33:16.31 ID:KjZBRHdv0
260

--荒れ果てた地--

アッシュ「なっ、んだ、と!?」

どぐしゃぁ!!

ポニテ「うっ! 精霊化が、まにあ!」

ぼぉん!!

レン「つ、ついん、て!!」

ばしゃぁあ!!

ツインテ「……」

びしゃびしゃびしゃっ!!

三人はツインテの手によって、内側から爆発してしまう。

ツインテ「……ごめんなさい……ごめんなさい皆さん」

ツインテの頬を涙が伝う。



  「なるほど、かなり厄介な力のようですね」

ざっ

ツインテ「!」

ぺしゃ

振り向くツインテの額に泥でできた小さな玉がぶつかる。

ツインテ「……?」

  「条件達成、レベルアップ」

ユニコーン「ひひーん」

ざっ、ざっ

  「レベル2、騎士!!」

ざんっ!!

ツインテ「……貴女は……」

ハイ「でも、私には利かないですよ? 私ツインテ先輩に治療してもらったこと、ありませんから」

531: 2013/10/07(月) 23:16:20.88 ID:2Y9dvAdn0
261

--荒れ果てた地--

ざっ

ツインテ「……ボクの仕事は勇者候補の抹殺です……貴女には関係ありません。だからこの場から去って下さい……」

ハイ「関係ありますよ」

ツインテ「!?」

ユニコーン「ひひーん!」

ぱからぱからっ

ハイは近寄ってきたユニコーンの頭をなで、ユニコーンに跨った。

ハイ「だって……アッシュさん達は、私の大事な仲間ですから。殺されて見過ごすわけにはいきません」

ツインテ「っ! そ、そんなのボクだって!!」

ハイ「ツインテ先輩、貴女は今、私達の敵なんですよね?」

ツインテ「!」

ハイ「ぶれてると、負けちゃいますよ?」

ダカラッ!!

ハイは槍を構えて走りだした。

532: 2013/10/07(月) 23:19:24.89 ID:2Y9dvAdn0
262

--荒れ果てた地--

だからっだからっ!

ハイ(さっきツインテ先輩が言ってたこと、あれがもし本当なら……回復魔法をかけられただけで勝敗が決してしまう)

ツインテ「ボクは……戦いたくないのに!!」

ばしゃっ!

向かってくるハイを見据え、ツインテは大きな水の壁を作った。

だからっだからっ!

ハイ(水の壁? こんなに薄いのに何の意味が……ん……もしかしたら突っ込んだ瞬間、攻撃魔法に変換する気なのかな? かすり傷一つでも付けられたらコンボが決まっちゃうもんね……)

だからっだからっ!!

ハイは迂回してツインテを狙うことにした。
だが、

ツインテ「水属性範囲攻撃魔法、レベル1!」

ばっしゃぁあん!!

ハイ「!!」

変えた進路の先を見抜いていたかのようにツインテの攻撃魔法が叩き込まれた。

533: 2013/10/07(月) 23:21:00.03 ID:2Y9dvAdn0
263

--荒れ果てた地--

ハイ「ぶっ!?」(なんでここを通るってわかって!?)

ツインテ(壁はほんの少しだけ左に寄せて作りました。避けて通るなら、少しでも空いてる方を自然に選択しちゃいますよね)

どばっしゃああーーん!!

ユニコーン「ひひーん!!」

びしびしっ

水がハイとユニコーンの体に傷を付ける。

ハイ「しまっ!?」

ツインテ「……終わりです。ごめんなさい。奥義、絶対回復領域」

びゅうぅん

ツインテの奥義が辺り一体を覆った。

ツインテ「回復して、暴発させます」

534: 2013/10/07(月) 23:22:33.57 ID:2Y9dvAdn0
264

--荒れ果てた地--

ぴちゃ

ハイ「……」

ツインテ「……」

ハイ「……」

ツインテ「……あれ? 回復、できない?」

ハイはびしょびしょに濡れたまま地面にぺたんこ座りをしている。

ハイ「すでに条件を達成していたのでレベルアップさせてもらいました」

ツインテ「……へ?」

ハイ「レベルアップ3、賢者」

泥まみれになっていたのでわからなかったが、よく見ると少しハイの衣装がHになっていた。

ツインテ「はわわ!?」

ハイ「賢者への条件は味方一人の体力が三割を切ったら、です。この状態だとろくに攻撃はできませんが……」

ツインテ「くっ……先に自分で治してたんですか。ボクが絶対回復領域を発動させる前に……!」

ハイ「これなら負けることもないかな?」

535: 2013/10/07(月) 23:24:21.08 ID:2Y9dvAdn0
265

--荒れ果てた地--

ツインテ「な、ならまた傷をつけるだけです!!」

ツインテは触手を出そうとするのだが、上手くいかない。

ツインテ(しまった、改良した絶対回復領域は攻撃行動まで戻してしまう……く)

びゅぅん

ハイ「あれ? 解いてしまったんですか?」

ツインテ「……」

ハイ「ならばスキル、観察眼」

ギン!

ハイの両目がぺかーっと光る。

ハイ「……さっきから気になっていましたが、どうもその右腕、嫌な力を流し込んでるみたいですね。洗脳ではないけれど、闇に堕ちやすくしている要因のような……」

ぴちゃ

ハイは立ち上がり髪を払う。

ハイ「ならその右腕、引き千切っちゃいます!」

536: 2013/10/07(月) 23:25:21.75 ID:2Y9dvAdn0
266

--荒れ果てた地--

にゅる

ツインテは触手を展開する。

ツインテ「これは、フォーテちゃんからもらった大事な腕なんです……そんなこと、させない!!」

ハイ「……ツインテ先輩のことは旅の道中で何度も聞かせてもらいました。だから」

ぶん

ハイの姿がカウガールへと変貌する。

ハイ「今の貴女がまともじゃないことくらい、新参の私でもわかるんですよ!!」

がががががががががが!!!!

ハイの両手の拳銃が火を吹いた。

どちゅどちゅっ!!

ツインテ「あきゃっ!?」

ツインテは防御魔法を出そうとしたのだが間に合わず、両太ももに弾丸を受けてしまう。

ハイ(いける! レベル3なら三強レベル!! ツインテ先輩を圧倒できる!!)

537: 2013/10/07(月) 23:28:26.87 ID:2Y9dvAdn0
267

--風の大谷--

しゅぅうう

聖騎士「このぉおぉお程度かぁあ……」

竜人モードの聖騎士が屍の山に立つ。この場にいる全てのモンスター、全ての裏切り者、全ての魔族が徒党を組んで挑んでも、この男たった一人に勝てなかったのだ。

ダーク龍騎「こ、これが五柱最強の男……!!」

しゅぅうう

最後に残った魔族、龍騎ももはや砂となり、風に散る運命である。

ぼろぼろ……

ダーク龍騎「そして人類、最強の男……か……ふ、ふはは、ふははははは!!」

ぼろぼろぼろっ

ひゅぅうう

聖騎士「笑ってぇえぇ……逝くかぁあぁ……」

聖騎士は倒したモンスターの心臓を握りつぶし、生き血を食らう。

ざっ、ざっ

聖騎士「……ぬ? まだぁ……生きておるものがぁあ、おったかぁ……」

足音のする後ろに振り返る。するとそこには、

ざっ

魔王勇者「竜を頃し、その返り血を浴び続けたことで自らを竜と変えた男……か」

聖騎士「!? 貴様ッ、魔王うううううううううううぅぅぅぅ!!」

538: 2013/10/07(月) 23:30:24.33 ID:2Y9dvAdn0
268

--風の大谷--

ひゅぉおおぉおお

ざっ

魔王勇者「……」

聖騎士「驚いたぞぉ……まさか魔王が直々ぃぃ……我の元に来ぅぅるぅぅとはなぁぁ」

魔王勇者「最初からこのつもりだったのだ。お前を倒すために魔族を送り込むなど、無駄に犠牲を増やすだけだ」

聖騎士「こぉおれはおかしなことを言うぅ……先ほどぉのやつらはぁ、お前のめいれぇえええい、で……ここに来ていたぞぉ……?」

魔王勇者「彼らはお前と戦いたがっていた。手駒の無意味な喪失は好ましく無いことだが……下僕の願いも聞けないでは王とは呼べないからな」

聖騎士「……」

魔王勇者「これを使え」

そう言って魔王勇者は懐から回復アイテムを取り出し聖騎士に投げた。

ぱしっ

聖騎士「……どういう、つもりだぁあ?」

魔王勇者「他意は無い。全力を知りたいだけだ」

539: 2013/10/07(月) 23:33:04.65 ID:2Y9dvAdn0
269

--風の大谷--

魔王勇者「音に聞こえた人類最強を相手にして、私がどこまで化け物になってしまったのか、な」

びきっ!!

聖騎士「ふざぁあけたことをぬかすぅ……小娘がぁ。……我がぁぁ、この程度のおゆうぅううぎぃでぇえ……疲れるとでも思ったのかぁあ……?」

魔王勇者「三割くらい損耗していると思うが?」

びききっ!!

魔王勇者「勿体無い。まぁいい。それなら使いたくなった時に言え。代えはもってきてある」

聖騎士「ぶるるるるるるぁああああああああああああああああああああ!!!!」

どんっ!!

聖騎士が大地を蹴ると、まるで大爆発でも起ったかのように全てが吹き飛んでいく。

聖騎士「っだあああああああああああああああああああああああん!!」

どがぁああああああああああああああああああああああああああん!!

聖騎士の右拳が魔王勇者の絶壁を打つ。するとその衝撃波が魔王勇者の後方に伝わって全てを破壊する風の渦となった。

ごごごごっごおごごごごごごごっごごごごっご!!!!

魔王勇者「」

聖騎士の前と後ろは世紀末である。

540: 2013/10/07(月) 23:34:13.40 ID:2Y9dvAdn0
270

--風の大谷--

しゅぅうう……

聖騎士「ぬ、ぬぅ……!?」

魔王勇者「中々いいパンチだったな。だがレディーの胸元を弄るとは高潔ではないな」

聖騎士「な、なんと固い絶壁なのだぁあああ!! こんなに硬いおっOいは初めてだぁああああああああああああああああ!!」

魔王勇者「よし頃す」

どぐしゃぁあ!!

聖騎士「うぐぼっ!?」

魔王勇者の膝蹴りが竜騎士の腹部を打つ。

聖騎士(わ、我の、防皮をいともたやすくだとぉ!?)

ぎゅん!!

聖騎士は衝撃で空中に飛ばされる。そしてそれを魔王勇者が追った。

541: 2013/10/07(月) 23:34:49.19 ID:2Y9dvAdn0
271

--風の大谷--

聖騎士「んんなあぁああああああああぁああああああいい!!」

ばっ!!

聖騎士は空中で体勢を整えて魔王勇者の追撃に備える。

ひゅん

ぱあん!!

魔王勇者の右ストレート。それを聖騎士は片手で受け止めた。

聖騎士「ふん、この程度の攻撃では」

ばぁあああん!!

聖騎士「!?」

完全に受け止めたはずの魔王勇者の拳、しかしその衝撃は聖騎士の肩にまで伝わり、盛大に爆発した。

聖騎士「なっ、に!?」

魔王勇者「この程度、とは?」

542: 2013/10/07(月) 23:35:37.82 ID:2Y9dvAdn0
272

--風の大谷--

聖騎士「こおおおののおおお!!」

聖騎士は回し蹴りを魔王勇者に放つ。

どぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃああああああ!!

とてつもない一撃に空間が揺れ、遠くに飛んでいた鳥の群れが地上へと落ちていく。

だというのに。

ぶしっ!!

聖騎士「!? わ、我の右足が!?」

聖騎士の右足の踵が粉砕されていた。

魔王勇者「己の強大な攻撃力にやられたか。これでは」

聖騎士「こおおおおおおおおれほどまでに胸が薄いとはぁあああああああああああああああ!!」

ずんっ!!

聖騎士「ごばっ!?」

魔王勇者「……いいだろう、お望み通りぶっ頃してやるッ!!」

涙目だった。

543: 2013/10/07(月) 23:36:13.98 ID:2Y9dvAdn0
273

--風の大谷--

ひゅん、どがぁあああああああああん!!

聖騎士「ぐぅうう……」

地面に落下した聖騎士。既に再生していた手足でしっかりと受身を取っていた。

聖騎士「我の攻撃が通じぬとはぁ……この程度の火力でだめならぁばぁ、我が渾身の奥義を持って挑むしかぁ、ないなぁ!!」

……ぅん

聖騎士「……なんだ? 世界が暗く」

魔王勇者「……」

ズズズズズズ……

聖騎士「な、なんだ……この悪寒はぁ……」

闇が渦を作り、その中心にいる魔王勇者に集まっていく。
禍々しくも幻想的な光景。

魔王勇者「奥の手があるのだろ? 先に使わせてやる」

魔王勇者が掌を天に掲げると、漆黒の大剣が出現する。

544: 2013/10/07(月) 23:37:57.12 ID:2Y9dvAdn0
274

--風の大谷--

聖騎士「ふ、ふざけおってぇえええ!!」

強大な魔力は重力すら狂わせ、地面に転がる石や瓦礫やモンスターの氏骸などが空に浮かび始める。

聖騎士「ならあぁぁあああああばあぁ、見せてぇえやるぅぅぅ!! 我がっっ奥義をおおおおお!!」

ばっ!!

聖騎士は両手を魔王勇者へと向けた。

ばちっ、ばちばちいぃぃぃいいいい!!

魔王勇者「!」

聖騎士の掌に、魔力で出来た球体が出現する。その魔力たるや、今現在魔力を集めている魔王勇者以上!!

魔王勇者「……驚いたな。さすが勇者を超えし者……まさかこれほどの奥の手を持っていようとは」

ばりっばりばりばりいい!!

雷の玉がぴんぽん玉レベルにまで圧縮されると、更に魔力を追加、何重にも何重にもその工程を重ねていく。

ばりっ、ばりりっりいいい!!!!

天と地に強大な存在が二つできたことで世界は荒れ狂う。浮かび上がったいくつかは地上に落ち、いくつかは二人の間をぐるぐると飛び回っている。

545: 2013/10/07(月) 23:39:08.98 ID:2Y9dvAdn0
275

--風の大谷--

聖騎士「か~○~」

魔王勇者「?」

呪文を口にしながら聖騎士は腕を引いていく。

聖騎士「○~め~」

まるで伏字が○子のよう。

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!

圧倒的な破壊力を持った玉が眼もくらむ閃光を放つ。

聖騎士「奥義ぃぃ、竜魂乙砲ぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!

魔王勇者「」

どがあああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

546: 2013/10/07(月) 23:41:01.95 ID:2Y9dvAdn0
276

--風の大谷--

どぉおおおおおん!!

ちゅどおおおおおん!!

攻撃の余波で次々と地上が破壊されていく。

聖騎士「防ぐこともせんとはぁあああ!! 直撃ぃぃぃだぁああああああ!!」

ひょどおおおんん!!

どおおおおおんん!!

荒れ狂う雷の砲撃は、攻撃対象だけではなく、周囲一帯の全てを破壊した。

しゅぅううぅううう……

ばちっ、ばちばちっ

聖騎士「ふぅうぅうう……」

びりっびりっ……

さすがの聖騎士も、このとてつもない威力の奥義を放つと反動があるらしく、動くことができない。

547: 2013/10/07(月) 23:42:03.64 ID:2Y9dvAdn0
277

--風の大谷--

すっ

聖騎士「……なんだぁあ?」

すっ、すっ

再び……物体が空中に浮いていく……。

聖騎士「!? なっ、まぁさぁああかあああああ!!」

ぶわっ!!

魔王勇者「……」

なんと、空中には全くの無傷の魔王勇者が浮遊していた。

聖騎士「な、なん……だとぉ……」

魔王勇者「いい攻撃だった。単純な威力で言えば……魔族達を一度に百体ほど消し去ってしまえるかもしれないね」

そう、涼しい顔で魔王勇者は呟く。

聖騎士「あれを、受けて……ノーダメージ……だというのか……」

548: 2013/10/07(月) 23:42:47.61 ID:2Y9dvAdn0
278

--風の大谷--

ゴゴゴゴゴ

魔王勇者「だって、魔王は勇者以外からはダメージを受けないし」

ぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

今度は魔王勇者が持つ大剣が強力な波動を放つ。

ぎょぎょぎょっぎょぎょぎょ!!

魔王勇者「今度は、私の番……」

ぎぎぎっぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!

邪悪なる闇の渦が大剣に引き寄せられていく。

聖騎士「あ、ぐぅ!!」

全ての命ある者が恐怖する最悪な力。あの星でさえ怯えている。

ごごごごごごごごご

闇は大剣と一体化し、超大な剣となった。

魔王勇者「受けよ、我が奥義」

聖騎士「な……な……」

魔王勇者「魔王スラッシュ」

聖騎士「なんたるチイイイィィィトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

549: 2013/10/07(月) 23:44:14.91 ID:2Y9dvAdn0
279

--荒れ果てた地--

ズズゥウウン……

ハイ「!!」

ツインテ「!? この力は……」

遥か遠くの地にて強大な魔力の衝突を感じ、手を止める二人。

ハイ(一体どれだけの化け物同士が戦っているんでしょうか……この世界チートだらけです)

ちゃき

ハイはツインテの頭部に拳銃を構えた。

ハイ「さて、その腕を外させてもらいます。あなたはきっと自分が何をしているのかわかっていないんです」

ツインテ「……わかっていない?……わかってます、全部わかってます!! わかってないのは貴方達の方です!!」

ハイ「……はい?」

ツインテ「わかってないからこんなことをするんです! 勇者は滅ぼさなきゃいけないんです!! たとえ……それが大事な人たちだとしても!!」

ハイ「……それはなぜですか?」

ツインテは涙を零しながら叫ぶ。

ツインテ「魔王は……星の魔力を管理する存在なんです! そして勇者は、星から必要以上に魔力を奪う……だから星が悲鳴をあげているんです!! このままでは星ごと氏んでしまう!!」

550: 2013/10/07(月) 23:51:13.13 ID:2Y9dvAdn0
280

--荒れ果てた地--

ハイ「魔力の……管理者……? 魔王がですか?」

ツインテ「はい……」

ハイ「それは誰の言葉ですか?」

ツインテ「……知り合いの言葉です」

ハイ「私はそれは精霊の仕事だと聞いて育ちましたが……。しかしそれがもし本当だとしても、人を攻撃してくるのであれば倒すしかないじゃないですか」

ツインテ「……」

ハイ「魔力を吸い上げるのだって、魔王がいるからしなくちゃいけないんですよ。自分達の身を守るために。卵が先か鶏が先か……どちらが本当の原因なのか私にはわかりません」

ツインテ「ま、魔王は人を攻撃したくなんて、ないんです……本当は……」

ツインテは虚ろな瞳でハイを見る。

ハイ「もしかすると……ツインテ先輩の方が正しいのかもしれません……」

ツインテ「!」

ハイ「でも結局の所、私にはどっちが正しいのかなんて判断できません」

ツインテ「!?」

そして、ハイは笑う。

ハイ「なので、どうせ私にはわからない話なんだから、私は仲間を守る生き方を選びたいと思います」

かちゃ、ばきゅーーん!!

ツインテ「あぐっ!」

ハイの拳銃はツインテの右肩を撃ち、右腕を吹き飛ばした。

どっ

右腕は遠く離れた場所で魚のようにビチビチと跳ねている。

ハイ「ふっ。スキル、効果付与・切断。……どうです? 夢から、覚めましたか?」

556: 2013/10/14(月) 17:52:31.07 ID:yc6L+5g70
281

--荒れ果てた地--

ツインテ「う……」

どくどくどくっ

腕の切断面から大量の血が流れていっている。それを見たハイは、

ハイ「っと、ルートチェンジ」

バシュ

再び賢者に変身し、ツインテに回復魔法をかけた。傷口を塞ぐレベルの回復魔法で。

ぱあぁあぁ

ツインテ「う…………ボク……は」

ハイ「気分はどうですか? ツインテ先輩」

557: 2013/10/14(月) 17:55:05.66 ID:yc6L+5g70
282

--荒れ果てた地--

ツインテ「……はい……だいじょう、ぶ」

何度か目を擦ったあと、ツインテは突然青ざめた。

ツインテ「うっ……!」

がたがた

ハイ「え? あ、まだ痛かったですか!? あの腕まで再生しないように手加減したんですが……もしかして不完全でした?」

ツインテ「違い、ます……」

左腕で自分の顔を隠すツインテ。

ツインテ「違うんです……! ボクは……ボクは……一体なんてことを……!……よりによって皆さんを手にかけるだなんてっ!」

ぼろぼろと涙を零すツインテ。

ハイ「……よしっ、そう思えるのならもう正常ですね」

対照的にハイは笑う。

ハイ「初めまし……じゃないですね。私達はあまり好ましく無い出会いをしていたんでした……。あの時はどうもすいませんでした」

ぺこり

ツインテ「え、え? なんで貴女が謝るんですか??」

ハイ「ツインテ先輩がいない間にこのパーティに入れて貰ったハイと申します。若輩者ですが、これからよろしくお願いしますね、ツインテ先輩」

558: 2013/10/14(月) 17:56:17.87 ID:yc6L+5g70
283

--退路--

数人の兵士と十代目を乗せた馬車が、荒れ地を駆け抜けていく。

ガタゴトガタゴトガタゴトガタゴト!!

臨時上位兵「守れー!! なんとしても十代目様だけは守るのだぁ!! 追跡してくる魔族のくそったれ共は、全部皆頃しにしてやれ!!」

うおー!

馬車に追随する馬に乗った兵士達。彼らは迫るモンスター達を次々と、槍や弓、拳や魔法で撃退していく。

グリフォン「ぎゅるるるらぁ!!」

ばさばさばさー!

護衛中位兵「ひっ!? がぁー!!」

無数のグリフォン達が一部の兵士達を襲う。

ぐちゅっ! ぶしゅっう!!

護衛中位兵「た、たすけっ、ひっ!!」

だからっだからっ!

護衛騎士「くっ……奴は見捨てろ、もう間に合わん!」

559: 2013/10/14(月) 17:57:13.89 ID:yc6L+5g70
284

--退路--

だからっだからっ

臨時上位兵「くっ……本陣を捨てて逃げたまではいいが、この調子で王国まで逃げきれるか……?」

もそっ

十代目「私が出よう、づっ!!」

立ち上がったのもつかの間、すぐにバランスを崩して倒れてしまう。

どさっ

臨時上位兵「! 無理をしてはいけない! 貴方には……これからも戦い続けて貰わねばならないのだから」

十代目「だが兵士達を見頃しには……っ」

護衛騎士「ぎゃああああああああ!!」

馬車の外から断末魔が聞こえる。

560: 2013/10/14(月) 17:58:35.66 ID:yc6L+5g70
285

--退路--

だからっ、だからっ

臨時上位兵「……見頃しに、してください」

十代目「!」

臨時上位兵「我らの代わりなど捨てるほどいます……ですが貴方の代わりだけはいないんだ……!」

臨時中位兵「……」

臨時上位兵「貴方は我ら人類の最後の希望……貴方がいなくては魔王を倒すことができない……無理をするのはその時だ、その時になったら氏ぬまで戦って貰う!!」

汗と血と涙で彩られた気迫ある表情で叫ぶ。

十代目「……わかった」

十代目は再び元の位置で腰を下ろす。

護衛隊長「きっ、北の王国ばんざあああああいい!! ぎゃはっ!!」

兵士達の叫びを聞きながら……。

ガタゴトガタゴトガタゴト!!

561: 2013/10/14(月) 17:59:44.13 ID:yc6L+5g70
286

--退路--

ダカラッダカラッダカラッダカラッダカラッダカラッ

護衛下位兵「静かですね……モンスター達の追撃が止んだ……?」

護衛上位兵「……変だな……まぁいい、どのみち注意して進むだけだ。気を抜くな」

護衛下位兵「はい!」

ダカラッダカラッ

ひひ

ダカラッダカラッ

ひひひ

護衛上位兵「……ん? 今お前なんか喋ったか?」

ダカラッダカラッ

護衛下位兵「いいえ? 何か聞こえたんですか?」

ダカラッダカラッ

護衛上位兵「……いや、気のせいだったようだ」

















「キノセイジャナイヨ」

562: 2013/10/14(月) 18:00:49.52 ID:yc6L+5g70
287

--退路--

護衛上位、下位兵「「!?」」

ズズズズズズ……

護衛上位兵「な、なんだこれは!? 闇が……広がっていく!!」

オオォオォオオォオォ……

大地から、水辺から、空から、無数の氏者の腕が生えてくる。

護衛上位兵「な、なんだこれは……俺は夢でも見ているのか……?」

護衛下位兵「……それとも俺達が知らぬ間に地獄に迷い混んでしまったのか……」

オオォオォ……

血みどろの腕が、風に吹かれる草原のように揺れている。

臨時上位兵「何が起こっているんだ……全員警戒体制!」

がたっ

十代目「! 奴が……来る!」

ガシッ!

護衛下位兵「……へ?」

足を氏者の腕に捕まれる護衛下位兵。

563: 2013/10/14(月) 18:01:57.00 ID:yc6L+5g70
288

--退路--

ズル!

護衛下位兵「お、おわぁあぁあぁあぁ!!」

馬「ひひぃーーん!!」

ずぷん……

護衛上位兵「!? 下位兵!? どこへいった下位兵!!」

護衛下位兵は、馬ごと闇の中に引きずり込まれて行った……。

オオォオォ……

護衛上位兵「っ……」

十代目「……」

ひひひひひ

オオォオォ……ひひひひ……

護衛上位兵「な、なんだ、魔族か!? 俺がこの程度で怯むと思うのか!? 来るなら恋!!」

「ならいくね」

ブシュッ!

護衛上位兵「……え?」

ブシッ、ブチチッ!!

上位兵の腹部が内側から無理やりこじ開けられていく。

護衛上位兵「あっ、あがっ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ああああああああああ」

564: 2013/10/14(月) 18:02:59.54 ID:yc6L+5g70
289

--退路--

みちちっ、びちっ!!

護衛上位兵「ひ、ひ、ひぃぎぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

ドバシャー!

臨時上位兵「!?」

ばしゃしゃしゃしゃ

赤い色のシャワーが馬車にかかる。

フォーテ「じゃんじゃじゃーん! ガチキチヤンデレシスコン見た目幼女男の娘、フォーテちゃん!! さんっじょう!!」

上位兵の腹部の中から登場したフォーテは、血まみれのまま萌えポーズを取った。

ガタゴトガタゴトガタゴト!!

臨時上位兵「な、なんだあいつは……人間の、女の子?」

十代目「そう見えるか?」

すらぁっ

十代目は剣を抜いて構える。

臨時上位兵「いや……中身はひどいもんだ。ひどいもんが詰まってやがる」

565: 2013/10/14(月) 18:04:25.96 ID:yc6L+5g70
290

--退路--

フォーテ「うるさいよ、おじしゃんっ」

どちゅちゅっ!!

臨時上位兵「ごぶっ!?」

闇から生えてきた腕が臨時上位兵の腹部を貫いた。そして闇の中へと沈めていく。

ずぷっ

十代目「今助ける!!」

ダッ!

臨時上位兵「い、いい!」

ぱしっ!

伸ばした手を払いのける上位兵。

十代目「なっ!?」

臨時上位兵「あ、貴方は、自分が生き残ることだけを、考えて、くれ」

オオォオォォオオォ

フォーテ「……」

臨時上位兵「こ、この先、俺の息子が生き残っていくには、それしかない、から、な」

ずぷん……

十代目「……」

566: 2013/10/14(月) 18:06:42.79 ID:yc6L+5g70
291

--退路--

十代目「……」

だからっだからっだからっ

フォーテ「ん? あれれれー? やっぱり弱体化してるー? 前ほどではなくなっちゃったみたいだねっ」

フォーテは十代目の体を、上から下まで観察している。

フォーテ「フォーテちゃんがっかりっ」

ドンッ!!

十代目の魔力が一気に膨らんで、乗っていた馬車が吹き飛んだ。

十代目「供給要請……ステータス一段階上昇!」

ぐっ

十代目は剣を振り上げて

フォーテ「がっかりっ、って、言ったでしょ? カーズ」

ぎゅぅううん

十代目「!?」

フォーテ「あははっ、残念だったねぇ!! 強化と弱体の効果を逆転させる呪いかけちゃったっ!」

オォオォオォ!!

そして地上の氏者の腕が十代目にラッシュをかける。

567: 2013/10/14(月) 18:09:50.21 ID:yc6L+5g70
292

--???--

腹黒「えぇ、彼一人に全滅させられていたと思いますよ」

腹黒は何を当たり前のことを、とでも言うかのような表情で話を続ける。

腹黒「十代目勇者はかなりシンプルかつ高水準な勇者です。星から力を吸い上げる力も歴代の勇者と比べて最高レベル、先に精霊を倒して無かったら正直危なかったです」

むしゃむしゃ

脳筋「ん? 精霊を倒しておく必要ってあったのか?」

大きなおにぎりをほお張りながら脳筋は質問する。

腹黒「何を言ってるんですか、ありまくりですよ。なにせこの世界の魔力は精霊達が管理しているんですから。精霊がいなくなったことで魔力の総量が激減、彼が吸い上げられる力も少なくなってしまった……。もし精霊が健在だったのなら、今の5~10倍は戦闘力があがりますよ彼は」

脳筋「まじか! ……一度ガチOコでやってみてぇなぁ……オレわくわくすっぞ!」

腹黒「初撃で氏んじゃいますよ、魔王なら(本当脳みそ筋肉だなこいつ)」



こつ、こつ、こつ

トリガー「そう、彼が勇者で君が魔王である限り、それは必然だ」

脳筋「お、トリガー。準備とやらは終わったのか?」

トリガー「いや? だがもうすぐだよ。それが終われば君達の出番だ」

腹黒「……」

トリガー「魔王では勇者には勝てない。魔王は勇者以外じゃ倒せない。けれど……」

脳筋「……」

トリガー「勇者を頃すことは、誰でもできる」

568: 2013/10/14(月) 18:11:55.93 ID:yc6L+5g70
293

--???--

トリガー「と言ってもあれだけの強さを持つ十代目だ、生半可な戦力じゃ勝つことは出来ないだろう……だからこそのフォーテの出番なんだ」



--退路--

フォーテ「あは、あはははははは!!」

ぴちゃ、ぴちゃちゃっ

十代目「ぐぼっ!!」

氏者の腕に貫かれた十代目はそのまま崖に貼り付けられている。

フォーテ「ねぇ、もうおしまいなの? フォーテ、もっと遊びたいのに」

十代目「ぐ、ぐっ!!」



トリガー「我らのジョーカー・フォーテなら、相性抜きに勇者を殺せるだろう」

569: 2013/10/14(月) 18:15:03.41 ID:yc6L+5g70
294

--???--

腹黒「ですがフォーテの体は……」

トリガー「そうだね。呪魔法の代償でボロボロだ。もう何度も戦うことは出来ないだろう……。僕が与えた力の断片から、擬似とはいえ魔王化までしてしまったしね」

腹黒「擬似魔王化で本当によかった。完全に魔王化していたらさすがの私でも戻せませんでしたよ。……それに戻す際にかなりの負荷をかけてしまいました。下手をしたら今回の戦いが最後になるでしょう」

脳筋「……」

トリガー「一度でいいんだよ。十代目を、勇者さえフォーテが倒してしまえば、もう僕達を倒せるものは存在しなくなる」



--退路--

十代目(供給申請の効果が薄い……呪いをかけられ反転されたのに、この程度しか弱体化していない……良しと捕らえるべきか悪しと捕らえるべきか)

オォォオォォ

十代目(何にせよ、私は何が何でも生き残らねばならない!!)

ぶちちっ!!

フォーテ「!」

十代目は氏者の腕を引き千切って地面に落下する。

どすっ

フォーテ「驚いた、まだそんな力が残ってたんだねっ。連戦につぐ連戦で体力も魔力も仲間さえも失って、ちょーボロボロなくせにっ」

十代目「それはお前もだろう?」

570: 2013/10/14(月) 18:16:27.65 ID:yc6L+5g70
295

--退路--

フォーテ「……」

十代目「呪魔法は強力な代償を払って発動させる魔法だ。少し使っただけで精神と肉体に異常が出る危険な禁術……それをこれだけ使って大丈夫なはずがない」

フォーテ「……うるさいよ猫ちゃん」

十代目「体はどれだけ動く? ずっとその腕に乗っているところを見ると、もう歩けないんじゃないのか?」

フォーテ「う、うるさいっていってるじゃん!」

十代目「……魔王や魔族ならまだしも、そこまでして私を頃したい理由はなんだ……ただの人間である君が、なぜ」

フォーテ「……」

オオォオオォオォォ

氏者の腕が十代目に迫っていく。

フォーテ「お姉ちゃんと、永遠に生きるんだ」

十代目「……何?」

フォーテ「君を殺せば永遠の世界を僕達にくれるって、トリガーが言ったんだ」

571: 2013/10/14(月) 18:20:18.71 ID:yc6L+5g70
296

--退路--

十代目「バカな……そんな言葉を、信じたのか?」

フォーテ「……信じたよ。僕にはそれしかないんだから」

オオォォオオォォオォ

フォーテ「生まれた時から知ってた。この世界はバッドエンドの後の世界だってことを。だからどんなに頑張ったってハッピーエンドにはならないんだよ……」

だからせめてお姉ちゃんに殺されたかったのに、とフォーテは呟く。
一緒に生きる選択肢なんて知らなければよかったのに、とフォーテは呟く。

十代目「そんなことは無い……人は努力すればより良い未来を掴むことが出来る! 最悪の着地だって防ぐことが出来るんだ」

フォーテ「……」

それをフォーテは悲しそうな表情で聞いていた。

フォーテ「そう……そうまで言うんなら……」

オオォオォオ……

十代目「……」



    僕との戦いでバッドエンドにならないように、生き残って見せてよ



オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

四方八方から氏者の腕が十代目に襲いかかる!

十代目(何を言っても聞く耳持たない、か……なら)

ぎぃんん!!

十代目の剣が六色の光に包まれる。

十代目「奥義を使わせてもらう!!」

572: 2013/10/14(月) 18:21:02.40 ID:yc6L+5g70
297

--退路--

フォーテ「ルート」




亜9ウェ47尾が9w;絵尾tヴぁmsrhなsぺおcろえ
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pse9rby m;sぽうm0えb9p4v
えろぐいspろgkそfg

ズズズズズ……

1、十だい芽は、見ずかraその首をはねる。蘇生不可。
11、重堕いめは、水殻租の9尾ヲ羽る。蘇生不可。
111、ジュ宇多伊メ歯、身ズから疎野九尾をは寝る。蘇生不可。





十代目「」

十代目が一歩も踏み出すことなく勝負がついた……。
十代目はこの能力を知っているわけではない。だが、直感で終わりを覚悟した。

573: 2013/10/14(月) 18:21:42.87 ID:yc6L+5g70
298

--退路--

111111111111111111111111111111111111111111111

十代目「……たった」

フォーテ「?」

十代目「たった一人の人間も救えないで、何が勇者だ……」

フォーテ「!?」

十代目「……すまない、少年」

ぐぐぐ

十代目は剣を振りかぶり、そして

ズバッ!!

フォーテ「……」

ごろっ

自らの首をはねた。

フォーテ「……………………ほら、やっぱりバッドエンドからは逃れられない」

フォーテは血の涙を流し、その場に倒れこんだ。

574: 2013/10/14(月) 18:24:19.86 ID:yc6L+5g70
299

--荒れ果てた地--

ひゅぅううう

ツインテ「……」

ハイ「ほら、皆さんに言うことがあるんじゃありませんか?」

あの後ハイとツインテは全員を蘇生した。
そして今、ツインテの前には三人が立っている。

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

ツインテ「あ、あの、み、皆さん……その……えっと……」

見ているのが哀れになるほどツインテは狼狽している。

ツインテ「ほ、本当にごめんなさい!!……たとえどんな理由があったって、皆さんを頃すなんてことはあってはならないのに……!」

アッシュ(ギャグで氏んだことはあるけどな)

ポニテ(場面が違えば挨拶みたいなもんだよね、この世界では)

レン「ツインテ……」

ツインテ「皆さんにはひどいことをしてしまいました……このことは償えるとは思いません……でもやれることならなんでもします!」

アッシュ「ん? 今何でもするって言ったよね?」

レン「黙れにゃっ!!」

すっ

ポニテ「ツインテちゃん……謝るのは私達の方だよ。あの時助けるって手を差し伸べられなかった……ツインテちゃんがこんなになるまで助けてあげられなかった」

むぎゅっ

ツインテ「ぽ、ポニテさん!? そ、それはポニテさん達のせいじゃないです!! 全部ボクがふがいないばかりに……!」

アッシュ「おっほん……ツインテ、悪いが俺達はお前から謝罪の言葉が聞きたいんじゃない」

ツインテ「!」

レン「アッシュ!? 何を言い出すにゃ!!」

アッシュ「お前なんかに謝ってもらう必要も無い」

ツインテ「……!!」

575: 2013/10/14(月) 18:35:17.38 ID:yc6L+5g70
300

--荒れ果てた地--

ハイ「ちょっ、アッシュ先輩!?」

アッシュ「ポニテの言う通り、謝るのならむしろ俺らの方だ……」

ツインテ「あっ、あ」

アッシュ「だが今お前は魔王の手先だ。そんなやつに謝罪なんてしたくない」

ツインテ「っ」

アッシュ「お前は今どっちなんだ? 俺達のところに帰って来たのか? それともまだそっち側にいるつもりなのか?」

ツインテ「ぼ、ボクは……ボクは……」

アッシュ「俺達の……仲間のところに戻ってくる意思はあるのか?」 

ツインテ「……うっ……」

アッシュ「……なら、謝罪よりもほかに言うべきことがあるんじゃないのか?」

ツインテ「」

ポニテ「……」

ツインテ「え、で、でも」

レン「戻って、来てくれるんにゃよね? ツインテ……」

ツインテ「……また……このパーティに……入れて貰えるんですか……?」

アッシュ「当たり前だ」

ポニテ「当たり前だよ」

レン「当たり前にゃ!」

ハイ「……です」

ぶわっ

ツインテ「……ありがとう、ございます……皆さん……」

ハイ(……はぁ、よかった)

ツインテ「皆さん、ただいま!!」

ツインテがなかまにもどった!!







ずずず

  「やれやれ、やっぱり失敗しちゃったのね」

ツインテ「!? この声は!?」

ポニテ「!?」

魔王勇者「……残念だよ、ツインテ」

アッシュ「!? 闇の空間から出現した!? いやそれよりもこのプレッシャー!! まさか!!」

レン「生まれて始めての感覚にゃ……!! これほどのパワー……つまりこいつは」

ダッ!!

ハイ「!! ポニテさん!! 近づいちゃ駄目です!! それは」

ポニテ「い、生きて、たんだね」

魔王勇者「……」

ポニテ「ママ!!」

585: 2013/10/21(月) 18:39:31.61 ID:31sHtyqZ0
301

--荒れ果てた地--

アッシュ「な、なん……だと……?」

レン「この人が……ポニテのママ……にゃ?」

魔王勇者「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

アッシュ「いや……どっからどうみても口リじゃねぇか」

レン「ポニテの妹っていうならまだわからなくも無いにゃが……」

ハイ「えっ? えっ? えっ?」

アッシュ「だがまぁ……似ている部分があるのは事実だ」

レン「……挨拶だけでもしておくかにゃ」

ざっ

魔王勇者「?」

アッシュ「いつも娘さんをお世話してます、アッシュと言います」

レン「同じくにゃ。初めまして、五柱の一角、ものつくり帝のレンと言いますにゃ」

ハイ(挨拶はじめたー)

586: 2013/10/21(月) 18:42:54.36 ID:31sHtyqZ0
302

--荒れ果てた地--

ポニテ「ママ、今まで一体どこにいたの? 私ずっと探してたんだよ? それに、なにその鎧……なんだか」

オオォオォ

ポニテは魔王勇者の纏う黒い鎧から不安を感じる。

ハイ「ポニテ先輩……その人本当に、ポニテ先輩のお母さんなんですか?」

ツインテ「ごくっ」

ポニテ「そうだよ? 私のママは凄く若く見えるんだ! 昔でさえ姉妹みたいに見られてたんだから!!」

嬉しそうにはしゃぐポニテ。

ハイ「……でも、その力……とてもこちら側の存在とは思えないんですけど……」

魔王勇者「……」

ゴゴゴゴゴゴ

ポニテ「な、何を言ってるの!? 失礼だよハイちゃん!! 私のママは正義の人なんだから!! そうだ、ねぇツインテちゃん、ママのこと知ってるみたいだったけれどどこで会ってたの!? 知ってたのなら早く教えてくれたらよかったのに!!」

びくっ

ツインテは震えながら言葉を紡ぐ。

ツインテ「ぽ、ポニテさんのお母さんだとは知りませんでした……だ、だってその人は……現魔王さん……なんですから」

アッシュ「!? 何っ!?」

レン「!!」

ツインテ「ま、まさかお二人がそんな関係だったなんて……」

ポニテ「な、なにを、言って……ち、違うよね? ママ……ママは魔王なんかじゃ無いよね?」

魔王勇者「さっきからお前は何を言ってるの?」

587: 2013/10/21(月) 18:44:27.71 ID:31sHtyqZ0
303

--荒れ果てた地--

ぎぃゆぅん

魔王勇者の人差し指に魔力が集約される。

アッシュ「!? 逃げろポニテ!! その魔力、冗談じゃすまされないぞ!!」

ポニテ「ま、ママ!? どうしたの!? あ、危ないよ……私だよ、ママの娘、ポニテだよ!!」

魔王勇者「私はお前など知らない」

ポニテ「」

魔王勇者「そもそも私には娘などいない」

ポニテ「…………え」

ハイ「逃げてくださいポニテ先輩!!」

ぼっ

人差し指から発射された小さな小さな魔力の弾丸。
それは、ポニテの肌にふわりと着弾し、

ポニテ「……マ」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!


















半径十キロ以内の全てを吹き飛ばした。

588: 2013/10/21(月) 18:45:25.24 ID:31sHtyqZ0
304

--荒れ果てた地--






しゅぅうう……

魔王勇者「……」

どさっ

アッシュ「げほっごほっ!」

魔王勇者「へぇ。あれを耐えた?……なるほど、多重属性防御障壁、か」

ブゥウウン

ハイ(水、氷、土の三種属性による障壁魔法重ねがけ……異なる属性を重ねると通常の何倍もの防御力を発揮する……)

ツインテ(はずなのに……軽減しか、出来なかった)

レン(冗談じゃないにゃ……無詠唱でこの威力……)

ぱりぃん

ダメージを軽減することは出来たが、防御障壁は完全に破壊されてしまう。

ぽたっ、ぽたたっ

ツインテ(強力な防御魔法の上からこのダメージ……)

魔王勇者に一番近い位置にいたポニテは、

ポニテ「ま……ま」

下半身が無かった。

589: 2013/10/21(月) 18:46:01.60 ID:31sHtyqZ0
305

--荒れ果てた地--

ツインテ「ポニテさん!!」

しゅる

ツインテは触手を使ってポニテを回収する。

ツインテ「! ……ひどい……」

ポニテの千切れた下半身はどこを探しても無い。それはすなわち……

アッシュ「ばかな! ポニテ!!」

ハイ「……消滅……させられた……? それじゃポニテ先輩は、もう」

ツインテ「そん……な……やっと、お母さんに会えたのに」

ぼっぼっ

レン「! ツインテ! 魔力供給にゃ! ポニテに魔力供給するにゃ!」

ツインテ「……え?」

590: 2013/10/21(月) 18:46:32.44 ID:31sHtyqZ0
306

--荒れ果てた地--

アッシュ「……回復魔法じゃないのか……?」

レン「いいから早く!!」

ツインテ「わ、わかりました! 魔力供給レベル4!!」

ぽぅう

ハイ(魔力供給……? 一体なぜ……あ)

しゅぅう

アッシュ「!? 足が、生えてきた!?」

レン「とっさに精霊化してたみたいにゃ……精霊状態なら体は魔力で出来てるからこれでいいのにゃ」

ツインテ「よ、よかった……!」

ざっ

魔王勇者「私のこと、無視してて大丈夫なの?」

アッシュ「っ! ツインテ! ポニテのことは頼んだぞ!! スキル、人頃し!!」

アッシュの右目が裏返る。

アッシュ「更にスキル、反転、魔殺モード!!」

ぼぅっ!!

アッシュの右目が真っ赤に燃えている。

591: 2013/10/21(月) 18:47:13.68 ID:31sHtyqZ0
307

--荒れ果てた地--

アッシュ「あんたが本当にポニテの母親なのか俺にはわからないが……」

すらぁ

アッシュはナイフを抜いた。

アッシュ「今の攻撃……俺らの敵と認識する理由としては十分過ぎる!!」

ひゅん!!

アッシュは風のように走る。

魔王勇者「……少し遊んでみるか」

ぎぃん!!

アッシュのナイフを人差し指で止める魔王勇者。

アッシュ「なっ!?……く、おおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギン!!!!

超高速の連続斬撃。

魔王勇者「早いな。ウェンディゴより早いかもしれない」

それを涼しい顔で全て防ぐ魔王勇者。もちろん人差し指しか使っていない。

ギィンッ!!

アッシュ(そんな……俺は、強くなったはずなのに)

魔王勇者「? 何? もう終わり?」

592: 2013/10/21(月) 18:47:53.53 ID:31sHtyqZ0
308

--荒れ果てた地--

レン「アッシュ!!」

ハイ「アッシュ先輩! どいてください!!」

アッシュ「!!」

声に反応して振り向くと、後方でハイとレンが大砲を構えていた。

しゅばっ!!

アッシュがその場から離れると、

魔王勇者「?」

ハイ「ユニコーンバスタアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

レン「七番機、ファイア!!」

二つの大砲が火を吹いた。

ドギョアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

593: 2013/10/21(月) 18:49:26.71 ID:31sHtyqZ0
309

--荒れ果てた地--

ドグォッォオオオオオオン!!

ポニテ「う、ん……」

ツインテ「! 気づきましたか!? よかった……!」

ツインテは泣きながらポニテに抱きついた。

しゅたっ

その二人の傍に着地するアッシュ。

アッシュ「おい、ポニテ! あれは本当にお前の母親なのか!? あの圧倒的な戦闘力……あの嫌な感覚……やっぱりあれは」

ポニテ「はっ!」

がばっ!

ポニテは飛び起きて爆炎の中心を見る。

ゴゴゴゴゴ

レン「……ハイ、どう思うにゃ? 倒せたと思うかにゃ?」

ハイ「無理……だと思います」

……ざしゃ

594: 2013/10/21(月) 18:50:55.92 ID:31sHtyqZ0
310

--荒れ果てた地--

ざしゃ、ざしゃ

ポニテ「!」

魔王勇者「中々いい攻撃だった。並の魔族なら一たまりもないな」

ケロっとした表情で現れた魔王勇者。それを見たレンは恐怖を感じ、

レン「っ!! はぁああ!!」

ドギュウーーー!!

二射目を放つ。

ぺしっ、ドゴオオオオン!!

それを埃でも払うかのように弾く魔王勇者。彼女の歩みを一コンマたりとも遅らせることは出来なかった。

レン「……っ!!」

がしゃっ

レンは大砲を手放して地面にしゃがみこむ。
そして大砲はゴーレムの形に戻った。
今のやりとりだけで、レンの心が折れた証拠だった。

595: 2013/10/21(月) 18:52:13.84 ID:31sHtyqZ0
311

--荒れ果てた地--

魔王勇者「終わり?」

ハイ「……」

ツインテ「っ、っ……」

アッシュ「ちっ……」

ポニテ「あ、う……」

レン「つよ、すぎる……」

圧倒的過ぎる力を目の当たりにし、五人は動けなくなってしまう。
全員、三強レベルに匹敵する実力者だ。それだからこそ、とても埋めることの出来ない実力差に気づいてしまう……。

魔王勇者「……終わりか。なんだ、この程度なら最初から私が出向けばよかったな」

ざっ

びくっ!!

魔王勇者が一歩前に進んだけで、五人は飛び跳ねるように後退する。

魔王勇者「……ふふ」

596: 2013/10/21(月) 18:53:20.06 ID:31sHtyqZ0
312

--荒れ果てた地--

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ「!!」

にらみ合うようにして立っていたハイ達だったが、その沈黙を破るかのように、空から砲撃が降ってきた。

魔王勇者「……なん、」

ドガドガドガッドガドガガガガガガドガアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

アッシュ「うおっ!?」

爆撃。魔力による強力な連続攻撃がスコールのように魔王勇者を攻める。

ゥゥウン……

ハイ「げほっ! い、一体だれが」

上空には、

魔導長「はっ、はっ、はっ!……ふぅ……」

元賢帝「まったく、私がこんなことを手伝わなきゃならないなんて」

射王「……」

レン「五柱!!」

597: 2013/10/21(月) 18:54:45.79 ID:31sHtyqZ0
313

--荒れ果てた地--

しゅぅうう……

魔王勇者「……あぁ、亡国の生き残りがいたっけ」

魔導長「私達はしぶといなの……例え帰る場所を完膚なきまでに壊されちゃったとしてもね」

アッシュ「帰る……場所?」

魔王勇者「? なんだ? 知らなかったのか?……そうか。妖精郷は時間の流れが違うんだったね」

レン「何を言ってるんだにゃ?」

がくがくがく

震えだすツインテ。

ハイ「ツインテ先輩? どうかしました? もしや流れ弾が!?」

ツインテ「そう、だった……そうだった」

ハイ「?」

魔導長「魔王軍による全王国同時侵攻。魔族30体を使用した大掛かりな殲滅戦……それが三日前まで行われてたなの」

アッシュ「!? 魔族30体だと!? そんな戦力……」

魔王勇者「そう。そして五日間にも渡る大戦争のうち、勝利したのは我らだ」

ハイ「」

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

魔王勇者「世界で生き残っている人間は、もはや三桁もいないだろう」

598: 2013/10/21(月) 18:55:19.01 ID:31sHtyqZ0
314

--荒れ果てた地--

アッシュ「そん、な……」

どさっ

膝から崩れ落ちるアッシュ。

ツインテ「ごめんなさいごめんなさい……ボクは……なんでそれを見てるだけだったんだろう……!」

レン「れ、レン達は、もう、負けて、た?」

ポニテ「もう何がなんだかわからないよぉ!! なんでそんなことになっちゃってるのぉ!? なんで、なんでママが魔王になってるのよぉ!!」

ハイ「……」

崩れ落ちる四人の中、一人ハイだけが心折れずに立っていた。

ハイ「……皆さん諦めちゃだめですよ。まだ私達が生きてるじゃないですか……!」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

もう、誰も立ち上がれない。

599: 2013/10/21(月) 18:56:23.72 ID:31sHtyqZ0
315

--荒れ果てた地--

魔王勇者「国も滅ぼされ、今代の勇者さえ殺されたというのに……人は本当に悪あがきが好きだな」

魔導長「!……人が生きている限り、希望は残るなの!!」

魔王勇者「へぇ。ならどうするの? 四代目勇者の子孫にして、現最高クラスの攻撃魔法の使い手さん。そのお前の攻撃でさえ私を傷つけることが出来ないというのに」

魔導長「そう、ね」

しゃっ

魔王勇者「!」

すたっ

魔導長の魔力の上に乗っていた射王は、話の途中で飛び降りてハイ達の所に。

射王「逃げるぞ」

射王は座り込んでいるツインテ達の腕を掴んで強引に立ち上がらせる。

レン「しゃ、射王お兄ちゃん」

射王「ほーけてる状況じゃねぇぞ。しっかりしやがれ」

魔王勇者「……逃がすわけないでしょ」

ぎゅぃぃん

また魔王勇者の掌に魔力が込められていく。

600: 2013/10/21(月) 18:57:05.23 ID:31sHtyqZ0
316

--荒れ果てた地--

どがぁああぁあん!!

それを魔導長が射撃する。

魔王勇者「っ……」

魔導長「絶対無敵の魔王様が一体何を恐れているなの? あんな子供の五人やそこら、逃がしたって問題ないはずなの」

魔王勇者「……」

魔導長「なーんて……やっぱり怖いのね。勇者に覚醒するかもしれないあの子達が」

魔王勇者「……」

元賢帝「はぁ、あまり煽るのはやめて頂戴よぉ。これから戦うのが怖くなるじゃないのぉ」

魔導長「うるさいなの。最後くらいかっこよく決めてなの」

元賢帝「……わたしはかっこいいんじゃなくて綺麗の方がいいわん」

魔王勇者「」

ずず

魔王勇者が黒いもやに包まれていく。

魔王勇者「目障りよ。蝿が」

601: 2013/10/21(月) 18:57:55.73 ID:31sHtyqZ0
317

--荒れ果てた地--

仮面「うきゅー?」

妖精郷の入り口があった場所から、もそもそと現れた仮面を被った幼女。
幼女は頭の埃を両手で払いのけながらきょろきょろと周りを見渡している。

ドオォオン!

そして少し離れた場所でとてつもない戦闘が行われているのに気づく。

602: 2013/10/21(月) 18:58:52.22 ID:31sHtyqZ0
318

--荒れ果てた地--

ザザザザザ!!

アッシュ「はっ、はっ、はっ!!」

ハイ「どこに逃げるつもりですか? さっきの話が本当なら逃げる場所なんてどこにも……」

射王「生き残ったやつらが作った隠れ里だ。そこまで百キロくらいあるが休憩無しで行くぞ」

レン「……」

ザザザザザ!!

射王「……レン、お前も五柱になったんだろ? しゃきっとしろしゃきっと」

レン「こんな状況じゃ、しゃきっとなんてできないにゃ……」

ポニテ「世界は……もう滅んでたなんて……」

射王「……こんな状況だからこそしゃきっとすんだよ。ほら背筋伸ばせや」

アッシュ「……」

射王「……お前達に全てを託して、人類最強レベルの二人が時間稼ぎしてんだぞ。それなのにお前らがこんなんじゃ浮かばれないだろうが」

ツインテ「!? 浮かばれ……え」

射王「あぁ……まぁ氏ぬだろうな」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ「!?」

突如、後方で真っ黒な炎の柱が上がる。
強力な魔力同士が衝突したのだ。そして……

ゴゴゴゴゴゴゴ……

603: 2013/10/21(月) 18:59:20.70 ID:31sHtyqZ0
319

--荒れ果てた地--

ザザザザザ!!

射王「……おいおいまじかよ。まさかもうか?」

ひゅんっ

アッシュ「! 何か飛んできたぞ!!」

どかっ!!

ハイ達はかろうじてかわし、地面に激突したそれを凝視した。

ツインテ「……!?」

ポニテ「ひっ!?」

それは……ぐちゃぐちゃに潰れた魔導長の首だった。

魔王勇者「時間稼ぎなんて、出来るはずがないのに」

射王「ッ!!」

背後からの声に超速で反応し、矢を放つ射王。

射王「効果付与、貫通!!」

ドキュッ!!

魔王勇者「うるさい」

ばしっ

魔王勇者は蝿でも叩き落すかのように矢を破壊し、追撃の体勢に移った射王の首をねじ切った。

ごきっ、ぶちっ!
ぶしゃーーーーーーーーーー

604: 2013/10/21(月) 18:59:50.96 ID:31sHtyqZ0
320

--荒れ果てた地--

ごろんごろん……

ツインテ「ひっ、ひっ、ひっ!!」

ぐしゃっ!!

射王の生首を踏み砕く魔王勇者。
ハイ達を絶望に落とす演出というわけではない、ただ単に進行方向にあったから踏んだだけだった。

魔王勇者「……守ってくれる人、いなくなっちゃったね」

アッシュ「ぐ、ぐぐ……」

あのアッシュがガタガタと震えている。

ツインテ「い、いやあああああああああああああああ!!」

びゅぅん!!

無意識に放つ絶対回復領域。

魔王勇者「じゃま」

ばきぃいん!!

それも魔王勇者が息を吹きかけるだけで解除されてしまう。

レン「あっ、あっ……もう……終わりにゃ」

605: 2013/10/21(月) 19:00:19.29 ID:31sHtyqZ0
321

--荒れ果てた地--

魔王勇者「チェック、メイト」

ギュアワワワワワ!!

魔王勇者が翳す右手に魔力が集約されていく。もはや何も感じない。ハイ達の感覚器官では、そこにどれほどの魔力が込められているのかすら測定できない。

ズズズ

魔王勇者「? なんだ、気が早いなトリガーは」

突然、魔王勇者の背後に闇が広がり始め、そこから無数の魔族が出現する。

ズズズ

赤鬼「ふしゅるるるぅ」

青竜人「んぶるるぁあぁあ」

ゴゴゴゴゴゴゴ……

アッシュ「ま、魔族が……こんなに……」

ポニテ「! 知ってる人に似た人がちらほら、いる……」

魔王勇者「……そりゃそうよ。なにせ全ての国を落としたからね。どう? 圧巻でしょ? 千体の魔族なんて、滅多に見れるものじゃないよ」

レン「う、うぅ……」

魔王勇者「これで地表に残る全ての人間を一掃する……よかったねあんた達は。魔族じゃなくて魔王である私に始末して貰えるなんてさ」

ギュゥイイイイイイイン!!

606: 2013/10/21(月) 19:00:48.03 ID:31sHtyqZ0
322

--荒れ果てた地--

剣魔人「斬っていいのか? あれ」

雷獣「待ちましょう。魔王が決着をつけるようですから」

風獣「うちもやりたかったわ~。魔導長とも戦いたかったし……なぁ雷獣ちゃん?」

ゴゴゴゴゴ

千体の魔族達は観客のようにハイ達の処刑を眺めている。

ツインテ(駄目だ……逃げる場所なんて、どこにもない……フォーテちゃんも、きっと……)

ツインテの瞳から涙が零れ落ちる。

アッシュ(くそ……こんな攻撃……防げるわけがない)

からん

アッシュはナイフを落とす。

ポニテ「なんでよぉ、うぅ、ママァ……!」

泣きじゃくるポニテ。

レン(せめて……ツインテと一緒に……)

光を失ったレンの瞳。

ハイ「……」

絶望に染まっていくその状況で、

ハイ「み、皆さん!! 頼みがあります!!」

ハイが叫んだ。

ハイ「私を信じて氏んでください!!!!」

607: 2013/10/21(月) 19:02:18.97 ID:31sHtyqZ0
323

--荒れ果てた地--

ツインテ「えっ」

アッシュ「……は?」

ポニテ「ぐすっ、うぅっ!」

レン「何……言ってるにゃ? 言われなくてももうすぐ氏ぬにゃ……」

ハイ「違うんです!! 最後にあがくためなんです!! 最後まで諦めないためなんですッ!!」

イィィイイイン

魔王勇者「……何を言ってるのかわからないけど……もう終わりだから」

ハイ「!?」

掌の魔力が臨界点を迎える。

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

魔王勇者「じゃあ……」

ポニテ「……やめて……やめてよママ……助けてよッ、ママアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

魔王勇者は、一切の迷い無く、ハイ達に向けて魔力砲を放った。

ツインテ「」

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

ハイ「く、そ」







































             「もちろん、助けるよ」

608: 2013/10/21(月) 19:02:49.66 ID:31sHtyqZ0
324

--荒れ果てた地--

フォンッ
ギャギャギャギャッギャギャギャギャッギャギャギャギャギャギャギャ!!

魔王勇者「!?」

突如現れた赤い閃光が魔王勇者と五人の間に割って入り、

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

いともたやすく魔力砲を両断した。

魔王勇者「!!?? な、にっ!?」

タッ!

そして

            ズバァン!! ギャギャギャギャッ!!

             魔族A「ぎゃっ!?」

             魔族B「ぐはっ!!」


    ギャギャギャギャッ!!

    魔族C「ッ!!」

    魔族D「いぎゅっ!?」

超高速で移動する赤い閃光。手に持った大剣で逃げ惑う魔族達を切り刻んでいく……。

                 ギャギャギャギャッ!!
                            ギャギャギャギャギャギャギャッ!!

                 魔族E「ひぎっ!?」

                            魔族F「あぎゃああ!?」


                     ギャギャギャギャッ!!
        ギャギャギャギャギャギャギャッ!!
                                   ギャギャギャギャッ!!
              ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャッ!!!!


魔王勇者「」

それは瞬く間に千の魔族を切り伏せた……。

ドサドサドサドサドササッ!!

魔王勇者「ば、ばかな……こんな……こんなこと出来るやつがいるわけ……」

ドオオオオン!!

魔王勇者の背後で大爆発を起こす魔族達……。

ざっ!

そして……赤い閃光が魔王勇者の眼前に降り立った。

609: 2013/10/21(月) 19:03:20.46 ID:31sHtyqZ0
325

--荒れ果てた地--

カランカラン

赤い閃光が付けていた仮面が落ちる。

魔王勇者「ッ!? な、なに!? なん……で、その顔はっ!!」

ざぁあああ

少女の赤い髪の毛が風に流れる。

ツインテ「えっ……」

少女は赤い鎧を身に纏っている。

アッシュ「なん、だと」

少女の赤いマントが靡いている。

レン「これは……」

少女は身の丈に合わない大剣を握っている。

ハイ「う、そ」

少女の胸は究極の絶壁である。

ポニテ「え、え……え?」







           勇者「勇者、参上」

619: 2013/10/29(火) 00:23:16.82 ID:w3GeNpTR0
326

--荒れ果てた地--

ツインテ「お、同じ顔が……」

アッシュ「二人……?」

ポニテ「ま、ママが分裂!?」

レン「双子かな?(すっとぼけ)」

ハイ「は、はいー?」

ひゅううぅ

魔王勇者「お、お前は……一体……」

ざっ

勇者「退きなさい、別ルートの私」

ハイ「……」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

ハイ、ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン「「「ッ!?」」」

620: 2013/10/29(火) 00:23:43.14 ID:w3GeNpTR0
327

--荒れ果てた地--

魔王勇者「なん……だと……? な、何を言っている!」

勇者の言葉を聞いた魔王勇者は戸惑っている。

勇者「そう……貴女、何も知らないんだ。自分が別ルートから召還されたことを」

魔王勇者「ふ、ふざけるな! わけのわからない戯言ばかりッ!! 揺さぶりをかけるつもりだな!?」

ひゅおぉぉお

魔王勇者は自分でも気づかないうちに、少しずつ下がっている。

勇者「トリガーは選択肢<ルート>を操る」

魔王勇者「!?」

ハイ「る、ルート……? どこかで聞いたような」

アッシュ「ルートって……あれか? フォーテが前俺達に使ってきた」

ポニテ「……どうしようもない強制力を感じたよ……まるで抗えぬ運命のような」

621: 2013/10/29(火) 00:24:29.94 ID:w3GeNpTR0
228

--荒れ果てた地--

魔王勇者「……ええぃ、偽物の戯言など信じられるか! お前はこの私の手で!!」

魔王勇者が黒い大剣を振りかぶる。

ずずず

トリガー「そこまでにしよう。魔王勇者」

魔王勇者「ッ!?」

そこに、絶妙のタイミングでトリガーが現れた。

勇者「……久しぶりね、トリガー」

しかしトリガーを確認出来るのは勇者と魔王勇者のみ。

アッシュ(トリガー……? 誰かが現れたのか? 何も見えんが)

ざっ

ハイ達は見えない相手に対して身構えた。

622: 2013/10/29(火) 00:25:24.40 ID:w3GeNpTR0
229

--荒れ果てた地--

トリガー「久しぶり……やれやれ、とっくに氏んでしまったものかと思っていたよ。一体どうやって今まで僕の目を欺き続

けることが出来たのかな?」

勇者「これよ」

からっ

勇者は仮面を拾い上げる。

勇者「姿隠しの仮面。これを付けている最中は姿がランダムで変化し、いかなる探知でも見つけられなくなる」

トリガー「なるほど……そんなものもあったか……」

魔王勇者「と、トリガー! これはどういうことなんだ! 私に説明しろ!」

トリガー「うん、もちろんするよ。だが一旦引いてからだ。今回でほぼすべての魔族を失ってしまったし、それに彼女は君
にとって最悪に相性が悪い」

魔王勇者「……私に愛称が良い?……つまりそれは」

トリガー「彼女は先代の勇者だ。そして紛れもなく勇者の力を有している」

623: 2013/10/29(火) 00:26:39.24 ID:w3GeNpTR0
230

--荒れ果てた地--

魔王勇者「!?」

トリガー「どうやって維持しているのかはわからないけどね……さぁ、帰ろう。彼女が見逃してくれるというのだから」

魔王勇者「……っ」

ズズズ

闇の扉が再び開く。

すっ

魔王勇者「……」

トリガー「? さぁ、魔王勇者」

魔王勇者「……お前は」

勇者「……」

魔王勇者「お前は必ず、私が斬る!」

勇者「……えぇ、私もよ」

トリガー「……」

ズズズ……

トリガー達は闇の中へと消える。

624: 2013/10/29(火) 00:27:05.91 ID:w3GeNpTR0
231

--荒れ果てた地--

しぃーん

勇者「……ふぅ」

どさどさどさっ!!

勇者「? ……ふふっ、緊張しちゃった?」

一斉に地面に倒れ混む五人。

アッシュ「はっ、はっ、はっ!……し、氏ぬかと……本気で氏ぬかと思った……!!」

ツインテ「ボクたち……まだ生きてますよね……?」

レン「生き、てるにゃ……! 生還にゃツインテ!」

ハイ「うぅ……ごりごり精神削られました……」

ポニテ「……」

ハイ「ポニテ先輩?」

ポニテ「……う」

ぽろぽろと涙を流し始めるポニテ。

625: 2013/10/29(火) 00:27:53.08 ID:w3GeNpTR0
232

--荒れ果てた地--

ハイ「ぽ、ポニテ先輩」

ポニテ「うっ、うぅ、うぅう!!」

涙で一杯になった瞳でポニテは勇者を見ている。

ざんっ

勇者は大剣を地面に突き刺し、両手を広げた。

勇者「……おいで?」

ポニテ「うっ……うわぁあぁあぁあん!!」

だっ! だだだだだだだっ!!

ポニテは泣きながら勇者の平らな胸に飛び込んだ。

がばっ!

ポニテ「うわぁあぁあぁあん!! うわぁあぁあぁあん!! 怖かったよぉ! 寂しかったよぉ!!」

626: 2013/10/29(火) 00:28:57.35 ID:w3GeNpTR0
233

--荒れ果てた地--

勇者「よしよし……随分大きくなったのに、相変わらず甘えん坊のままだねポニテは」

ポニテ「仕方ないよぉ! うわぁあぁあぁあん!!」

幼児体型の勇者に、子供のように泣きつき甘えるポニテだった。

ツインテ「ポニテさん……ぐすっ」

ツインテもついついもらい泣き。

アッシュ「……ふん、両親を探す目的で旅を始めたとも言っていたしな。今日くらいは泣くのを許可してやる……」

ずびっ

ハイ「……くすっ、アッシュ先輩が誰よりも泣いてるんですがそれは」

レン「しかも偽者とはいえ、やっと会えたと思った母親に殺されかけたんだにゃ。今はぐちゃぐちゃな気持ちのはずにゃ」

ポニテ「うわぁあぁあぁあん!! うわぁあぁあぁあん!!」

勇者「……しかし……随分たわわに実ったわね」

勇者もなんだか泣きそうだった。

627: 2013/10/29(火) 00:29:54.03 ID:w3GeNpTR0
234

--荒れ果てた地--

勇者「さて、もう大体のことは話の流れでわかったと思うけど、私がポニテの母にして先代の九代目勇者です。よろしくね」

アッシュ「アッシュだ。いつも娘さんのお世話してます」

ツインテ「アッシュ君ッ!? ……あ、ツインテです。ポニテさんにはよくしてもらっています。いつもポニテさんに助けて貰ってばかりで……」

レン「五柱のレンにゃ。ポニテとは仲良くさせてもらってますにゃ」

ハイ「私、中央郵便局所属……じゃなかった。ハイです。ポニテ先輩には……いつもおっOい揉まれてます」

ポニテ「も、もうみんなったら! なんだか恥ずかしいなぁ!!」

てれてれしてるポニちゃん。

ハイ(あれ? ささやかな密告が理解されない……?)

628: 2013/10/29(火) 00:31:06.41 ID:w3GeNpTR0
235

--荒れ果てた地--

勇者「うん、自己紹介どうも。でもみんなのことは調べてあるからそれなりに知ってるわ。なので……さっそく移動しましょう。あまり時間がないのよ」

そういうと勇者はハイ達に背を向けて、バラバラに散らばる魔導長達を視認する。

勇者「ふむ……範囲選択、火属性蘇生魔法レベル4」

ぼっ ぼぼぼっ

勇者の掌から無数の火の玉が飛んでいく。それは散らばった魔導長達の肉片のところに行ったかと思うと、一箇所に集まって合体する。

アッシュ「む」

三つの大きな火の玉が出来上がり、その中から無傷の魔導長達が現れた。

ツインテ「ひ、火属性で蘇生を? 水じゃなくてですか?」

勇者「うん。汚染されている可能性があったからね。疑わしい時は浄化の力を持つ火属性での蘇生の方が楽なのよ」

ツインテ「な、なるほど」(知らなかった)

Qw0(ぼくも)

629: 2013/10/29(火) 00:32:40.84 ID:w3GeNpTR0
236

--荒れ果てた地--

魔導長「う、うん……?」

次々に元の姿で復活する三人。

魔導長「あれ? 私氏んだはずじゃ? なの」

ツインテ「あ、気が付きましたか? ……これ、コートどうぞ」

魔導長達はマッパだった。

ハイ「それで行くって、どこにですか?」

ハイが勇者に質問する。

勇者「私達が集めた最後の戦力が集う場所よ。ほんとは……全員助けられれば良かったんだけどね」

勇者は困ったように笑いながら言う。

ハイ「最後の……戦力……?」

ひゅおおぉお

風が、吹く。

勇者「そう。そしてこれで揃った……これより人類の反撃を開始する」












   勇者と魔王がアイを募集した
      第三部
       リベリオン

630: 2013/10/29(火) 00:33:43.74 ID:w3GeNpTR0
237

--???--

魔王勇者「い、一体どういうことなんだ!! あいつ、私と同じ顔だったぞ!!」

トリガー「落ち着くんだ、魔王勇者」

魔王勇者「しかもあいつ、私のことを、別ルートの私だとか!」

トリガー「落ち着いて。大丈夫、君の心配するようなことなんてないんだから」

トリガーは魔王勇者の頭に手を置くも、

ばしっ!!

払いのけられてしまう。

トリガー「……」

魔王勇者「はっ! はっ! はっ!!」

トリガー(やれやれ、相変わらず君は精神が弱いな……)

631: 2013/10/29(火) 00:34:37.91 ID:w3GeNpTR0
238

--???--

すたすた

カトブレパス「どう、したんですか? 魔王勇者さんに何かあったんですか?」

騒ぎを聞きつれて中からカトブレパスが現れる。

トリガー「なんでもないよ。ただちょっとした誤算があったんだ」

カトブレパス「誤算?」

トリガー「君が心配するようなことじゃないよ。それより彼女を見てあげていて欲しい。今は不安定だからね」

魔王勇者「ふーっ! ふーっ!」

カトブレパス「わ、わかりました」

魔王勇者「私は、私、うぅ、どこ、どこいるのよ盗賊ぅ!」

トリガー「……性急に手を打たないといけないね」

632: 2013/10/29(火) 00:35:41.70 ID:w3GeNpTR0
239

--???--

トリガー「そういえば君が連れてきた人間、今はどこにいる?」

カトブレパス「あぁ、彼らなら腹黒さんが魔族に改造しようとさっき地下室に」

トリガー「いけない」

びゅぅん

トリガーは一瞬で姿を消した。

カトブレパス「……一体何が起きているんだ?」

カトブレパスは震えている魔王勇者の肩を抱く。



トリガー「……彼らならもしかしたら……」

闇の中を移動するトリガーは呟く。

633: 2013/10/29(火) 00:36:59.51 ID:w3GeNpTR0
240

--???--

ずずず

トリガー「腹黒」

腹黒「わっ! ……いきなり出てこないで下さいよ……驚くじゃないですか……(びっくりするだろうがくそっ!!)」

トリガー「彼らの魔族化は中止だ」

腹黒「……なんですって?」

トリガー「ちょっと予想外の自体に陥ってね。彼らを魔族化させないほうが都合がいいんだ」

腹黒「ふむ……何か策があるのなら、私はかまいませんが……」

そういって腹黒は機械を操作する。すると五つのカプセルが同時に開いていく。

ぷしゅー

トリガー「おはよう君達。君達にちょっと仕事をしてもらいたいんだ」

びしゃっ

カプセルの中から現れた五人。

賭博師「……」

符術師「……」

通信師「……」

医師「……」

トリガー「勇者候補を、倒してきて欲しい」

侍「……」

643: 2013/11/05(火) 03:19:49.62 ID:mkErDMZ60
241

--???--

侍「――勇者候補……とは、一体誰でござる?」

トリガー「わざわざ名前を言う必要があるかな? 君なら見当がついていると思うんだけど?」

侍「……」

通信師「侍?」

ぎり

侍は静かに拳を握りしめている。

トリガー「さぁ、善は急げだ。これ以上面倒ごとはごめんだからね……さっそくやってもらうよ」

侍「……」

644: 2013/11/05(火) 03:20:27.59 ID:mkErDMZ60
242

--荒れ果てた地--

勇者「ぴゅーい! おいでグリフォン」

勇者の呼ぶ声に反応し、天空から巨大なグリフォンが飛んでくる。

ゴオオオオオオオバサッ

グリフォン「イエス、マムッ!」

バサァっ!!

アッシュ「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」

ツインテ「きゃああああスカートが!!」

というか風で飛ばされるツインテ。

アッシュ「ついいんてぇええええええええええええ」

グリフォン「サー、イエスマム!! 何の用でありますか!!」

勇者「私達を失われた王国まで運んでちょうだい」

グリフォン「サー、イエスマム!!」

グリフォンはハイ達を手で掴んで背中に乗せると飛び立った。

645: 2013/11/05(火) 03:21:12.19 ID:mkErDMZ60
243

--空--

バサッバサッ

アッシュ「こんな強力なモンスターまで手なずけているのか。これが勇者になる者の実力……」

レン「純粋な戦闘能力もとんでもなかったしにゃ」

ポニテ「グリフォン久しぶりー! 元気だったー!?」

グリフォン「イエス!」

ポニテがグリフォンの頭をなでると、グリフォンは嬉しそうに鳴く。

ポニテ「よかった……一度家に戻ったけどグリフォンの姿無かったから心配だったんだよね」

ツインテ「ポニテさんこんなに大きなモンスターさん飼っていたんですか」

ポニテ「うん。家を出る前の話だけどね!」

勇者「……」

646: 2013/11/05(火) 03:24:09.79 ID:mkErDMZ60
244

--空--

びゅおおおおぉ

魔導長「あの、貴女はもしや」

勇者「ん? 私?」

グリフォンと並走している魔導長が勇者に喋りかける。

魔導長「貴方は……先代の勇者……なの?」

勇者「知ってるんだ? そうよ。今はどっちかというと主婦っていうほうが近い気がするけど」

そう言って勇者は笑う。

魔導長「……」

勇者「……あぁ、私のことってちゃんと伝わって無いんだよね?」

魔導長「……なの」

勇者「私はサキュバスとかって言われてるんだっけ? 人類に反旗を翻した存在。そういう風に聞いてたら、私の言うことなんて信じられないかな?」

魔導長「なの……なんだけど、その体でサキュバス……つまり性的な誘惑は難しいと思うなの。だから政府から聞かされた情報より、貴女の言うことを信じてみようと思うなの」

勇者「いや私サキュバスだから」

魔導長「え」

勇者は涙ぐんでいる。

647: 2013/11/05(火) 03:24:44.34 ID:mkErDMZ60
245

--空--

ずずず……

勇者「!」

ポニテ「あ、そういえばママ、」

勇者「しっ」

ポニテ「え?」

……

ポニテ「ママ? どうかしたの?」

勇者「もう手を打ってきた……? よっぽど都合が悪いのかしらね」

ポニテ「?」

勇者「来た!!」

ドギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!

強力なレーザー攻撃が雲の下から照射された。

648: 2013/11/05(火) 03:25:53.11 ID:mkErDMZ60
246

--空--

アッシュ「っ!?」

ポニテ「きゃああああああああああああ!?」

グリフォン「羽かすった!!」

ごごごごごごごごご

銀蜘蛛「アリ? ハズシチッタ」

桃鳥「もうちょっとで直撃だったのにって、私思っちゃったりしてます」

ばふぉっ

雲から姿を現したのは蜘蛛型の機械兵器と桃色の毛を持つ鳥亜人の少女。

ツインテ「! あの人たち!!」

アッシュ「知ってるのか!? ツインテ!!」

ツインテ「はい……でも、そういえばなんで、だろう……あの時は何の疑問を持たなかったけれど、これは、どう考えてもおかしい……」

ポニテ「な、なに? 何か情報があるなら教えてツインテちゃん!」

ツインテ「あのお二人は……ボクが魔王勇者さんのところにいた時に一緒にいた人たちです……そしてあの人たちは」

勇者「……」

ツインテ「二代目魔王、銀蜘蛛さんと、三代目魔王、桃鳥さんです」

ハイ、アッシュ、ポニテ、レン「「「!?」」」

649: 2013/11/05(火) 03:29:51.74 ID:mkErDMZ60
247

--空--

びゅおおぉおお

魔導長「それは……どういうことなの?」

勇者「言葉のままの通りよ。言ったでしょ、トリガーはルートを操るのよ。その力は自由自在のなんでもあり。魔王が勇者に倒されなかった、なんていう別ルートを作ってそこから引っ張りだしてくる……そんなことも可能なのよ」

魔導長「!? ちょ、ちょっと待つなの……それはさすがに、チート過ぎるっていうか、勝ち目が」

勇者「ある」

勇者は、さも当然ように言い切った。

勇者「勇者や、人が生きている限りチャンスはある」

ズラァッ

そう言うと、勇者は大剣を抜いた。

勇者「グリフォン、この子達をお願いね」

グリフォン「!!……サー、イエス、マムッ!!」

ポニテ「ママっ!? どうする気!?」

勇者「私があの二人と戦うわ。その間に行って」

650: 2013/11/05(火) 03:30:48.66 ID:mkErDMZ60
248

--空--

ポニテ「! や、やだ!!」

ツインテ「! ポニテさん」

ポニテ「やだよ!! また離れ離れなんてやだ!!」

勇者「……しょうがないでしょ? グリフォンに乗って逃げ切ることなんて出来ない。誰かが足止めしないといけないのよ。聞き分けのないこと言わないで」

ポニテ「みんなで戦えばいいじゃない!! いくらママが強いからって、魔王が二人なんて、そんなの無理だよ!!」

銀蜘蛛「ヨクワカラナイケドチャンス?」

桃鳥「うてーうてー!」

勇者「!」

どぎゅああああああああああああああああ!!

銀蜘蛛の大砲が火を吹いた。

勇者「ちっ!」

ばっ!

勇者は飛び降りてビームを切り裂いた。

ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!

651: 2013/11/05(火) 03:31:39.67 ID:mkErDMZ60
249

--空--

勇者「行きなさい! 魔導長、引率頼んだわよ! 風属性、飛行能力付加魔法!」

ぼぅう!!

勇者は自身に魔法をかける。

魔導長「私も空飛べるなの、私も協力するなの!」

勇者「いらないわ、魔王相手じゃ足手まといなだけよ!」

魔導長「うぐっ……わ、わかったなの」

おそらく人生で初めて足手まといといわれた魔導長。

ポニテ「私も残る!!」

魔導長「……拘束魔法、レベル4」

ばしぃん!!

ポニテ「あうっ!」

ポニテの全身を魔力の紐が押さえつける。

ポニテ「じゃ、邪魔しないでよ魔導長お姉ちゃん!!」

652: 2013/11/05(火) 03:32:49.87 ID:mkErDMZ60
250

--空--

ポニテが魔力を使って紐を千切ろうとするも、

ぴっ

アッシュのナイフがポニテの腕をわずかに切る。

アッシュ「毒属性魔法、麻痺麻痺」

びりりっ

ポニテ「うっ」

どさっ

全身が痺れ、ポニテはそのまま倒れこんでしまう。

ポニテ「なん、で」

アッシュ「はぁ……自分の母親なんだろ? 信じてやれよ」

ポニテ「」

魔導長(ふーん? 拘束されてるとはいえ、あのポニテが反応することさえ出来ないなんて。中々やるなの)

ポニテ「う、うぅ……」

ばささっ!!

グリフォンは全速力で離脱する。

653: 2013/11/05(火) 03:33:19.73 ID:mkErDMZ60
251

--空--

銀蜘蛛「キミガユウシャチャン? マオウユウシャチャンソックリー!」

桃鳥「ルートが違うだけで同一人物ですからーって、私思っちゃったりしてます」

勇者「……」

フォン

勇者は剣を構える。

勇者「先手」

ひゅっ!!

勇者「必勝!!」

ドギイィイイイイイイイイイイイイン!!!!

大剣が銀蜘蛛に当たる。も、

銀蜘蛛「イチチ」

勇者「っ!」

銀蜘蛛の表面には小さな傷が一つ付いただけ。

勇者「さすが、歴代勇者の中でも最も硬いとされるだけはあるわね」

654: 2013/11/05(火) 03:34:35.51 ID:mkErDMZ60
252

--空--

銀蜘蛛「ボクハ、カタイダケジャナイヨー!」

がぱっ

銀蜘蛛の背中のカタパルトが開き、

ばしゅばしゅばしゅばしゅっ!!

大量の小型ミサイルが発射された。

勇者「ッ」

ひゅおおおおおおおおおおお!!

すぐに距離をとる勇者に迫るミサイル。

勇者「雷属性範囲殲滅攻撃魔法、レベル4!!」

ビシャシャシャシャアアアーーン!!

勇者の右の掌から放たれた雷が全てのミサイルを撃墜していく。

ドンドンドォオオオン!!

勇者「風属性範囲攻撃魔法、レベル4!!」

そして続けざまに風の魔法を放ち、爆煙を吹き飛ばす。

ドシュン!

勇者「」

しかしそれも一手遅く、レーザーが勇者の右腕を吹き飛ばした。

655: 2013/11/05(火) 03:36:41.19 ID:mkErDMZ60
253

--空--

勇者「っ」

ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん
ぱしっ

勇者は自分の右腕を回収し、その身に再びくっつけた。

勇者「水属性回復魔法、レベル4」

しゅわわ

傷口は一瞬でふさがる。

桃鳥「なるほどなるほど。焼き焦げて消滅した細胞の部分は魔力で代用したんですね? 随分おもしろい回復方法しちゃうんですねー」

勇者「! 冷静に観察とは余裕があるみたいだが、水属性対単体攻撃魔法、レベル4!!」

ドボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

桃鳥「ぷあっ!」

強烈な水流が桃鳥に直撃し、桃鳥の四肢は引きちぎられてしまう。

勇者「二体一だからといって、私は」

ぶしゃっ!!

勇者「!?」

攻撃した時の氏角から、勇者の左足にアンカーが打ち込まれる。

銀蜘蛛「ツーカマエタッ」

656: 2013/11/05(火) 03:37:42.54 ID:mkErDMZ60
254

--空--

バリバリバリバリバリバリ!!

勇者「がっ!?」

そして電流を流される。

勇者「づっ!!」

勇者はケーブルを切断しようと大剣を振りかぶのだが、

桃鳥「駄目ですよ。そのままじっとしてて欲しいなーって、私思っちゃったりしてます」

ぎゅっ

感電している勇者の腕を桃鳥が掴む。

勇者「! 瞬間、再生か……」

いつのまにか桃鳥の四肢は復活している。そして同じく感電しているというのに、桃鳥は一切怯んでいない。

勇者「歴代勇者の中で最も回復能力に優れている勇者、か」

657: 2013/11/05(火) 03:39:15.28 ID:mkErDMZ60
255

--空--

ばさっばさっ

ポニテ「うぅう……ママ大丈夫かなぁ」

ぐすぐすと泣いているポニテとよしよしと頭をなでているハイ。

ハイ「泣き止んでくださいポニテ先輩。ポニテ先輩のお母様はめちゃくちゃ強かったんですからきっと大丈夫ですよ」

ポニテ「うぅ……ぐすん」

アッシュ「全く……世話の焼けるやつだ」

ツインテ「仕方ないですよアッシュ君。それだけずっと心配だったんです」

レン「おっきくなっても子供なんだからにゃーポニテは。学園にいた時もよくレンのベッドにもぐりこんできたものにゃ」

ポニテ「う、うーるーさーいー!」

びゅおおおおぉ

魔導長(緊張感無い5人なの……それにしても初めて見たけど、これがポニテ達のパーティ……)

魔導長は五人の顔をそれぞれチェックする。

魔導長(……うん、中々いいパーティなの)

658: 2013/11/05(火) 03:40:11.68 ID:mkErDMZ60
256

--空--

元賢帝「ん! ちょっとちょっと、何かくるわよぉ!」

射王「……来るな……しかも、強いぞ」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

D鷲男「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

それは魔族化した鷲男……。

魔導長「速い!」

どがぁあああああん!!

鷲男はそのまま突っ込んできて、見えない壁に激突する。

D鷲男「む!?」

ぎぃいいいいん

元賢帝「わたしの魔力障壁は簡単には突破できないわよぉん」

魔導長、射王「ナイスオカマ」

元賢帝「オカマ言うんじゃねぇえ!!」

659: 2013/11/05(火) 03:41:22.28 ID:mkErDMZ60
257

--空--

もぞもぞ

アッシュ「! まった、アイツの羽の中に何か紛れ込んでるぞ!!」

元賢帝「!!」

ニンフ「にぃ~ドリルキック」

ドガァアアアアアン!!

鷲男の羽の中から現れたのはニンフ。そして一撃で障壁を破壊してみせる。

賢帝「わたしの障壁を蹴りの一発で!?……やるじゃない」

ニンフ「勇者候補みっーけっ~……じゃあ、さよならぁ~」

ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる!!!

ニンフは空中で高速で回転し始めて小規模の竜巻を引き起こす。

グリフォン「ぐ、うぐおおおお!?」

魔導長「く! 今助けるなの!」

カトブレパス「いえいえ、貴女は僕達の相手をお願いしますよ」

魔導長「!?」

鷲男の羽の中から更に現れたのはカトブレパスだった。

660: 2013/11/05(火) 03:41:50.30 ID:mkErDMZ60
258

--空--

どおおおおぉおおおんん!!

魔導長「ぐあっ!!」(しまった、今のは痛いなの!)

どぉん、どごおおおんん!!

アッシュ「うおぉお!?」

ポニテ「うわ、わわわ!!」

グリフォンの上で行われている戦闘。そのせいで

グリフォン「ぐぅ……」

グリフォンは気絶し、

ひゅぅ……

ツインテ「あ、あぁ、お、落ち」

ハイ「は、はいぃ!? 落ちちゃいますぅ!!」

ひゅうううううううううううううううう!!

ハイ達は落下した。

661: 2013/11/05(火) 03:42:35.83 ID:mkErDMZ60
259

--空--

ひゅうううううううううううううううう!!

射王「しまった! 魔導長、足場くれ!」

魔導長「う、うんなの!」

D鷲男「助けには行かせません!!」

どがぁあ!!

魔導長「ぐぅ!!」

ニンフ「貴方達三人はこのまま空中で私達の相手してくださいね~」

賢帝「これ、まずいわね……」



ひゅうううううううううううううううう!!

ツインテ「どうしますか!? ボクが絶対回復領域だせばなんとかなると思いますけど!」

アッシュ「む、そうだな。とりあえず俺には何もできん」

ハイ「私も何も策はありませぇえええんんんん」

レン「レンがなんとかするにゃ。高速練成、」

ぼぅん

レンは巨大なおっOいを練成した。

ツインテ「……」

アッシュ「激突するにゃ!」

662: 2013/11/05(火) 03:43:55.57 ID:mkErDMZ60
260

--空--

ぼんよよぉーん

ハイ「……助かり、ました?」

ユニコーン「ひひーん」

アッシュ「あぁ。やはりおっOいは偉大だなぁ」

ポニテ「まさかおっOいに命を救われるとは思わなかったなぁ」

レン「おっOいをなめたら氏ぬにゃ」

ツインテ「ははは……グリフォンさんも無事みたいですし、よかった」

ざっ

 「はっはっはっ。相変わらずでござるな」

ツインテ「!? あな、たは!!」

ハイ達の落下地点には、

サム「お久しぶりでござる。ツインテ殿」

ツインテ「サムさん!! それに皆さんも」

賭博師「よぉ、ツインテ様」

通信師「……」

符術師「ん」

医師「お久しぶりです」

ツインテ「よかった皆さんも生きてたんですね!」

ちゃき

アッシュ「……」

サム達の姿を確認したアッシュは、無言でナイフを抜く。

ツインテ「あ、アッシュ君? なんで臨戦態勢に?」

アッシュ「……東の王国は壊滅したんだろ? ならこいつらは」

サム「……察しがよ過ぎるでござるなぁアッシュ殿は。そうでござる。拙者達は……アッシュ殿達を始末しに来たのでござる」

670: 2013/11/12(火) 17:07:10.62 ID:x+AYmlJn0
261

--氏の砂漠--

ひゅぅううぅうう

ツインテ「! そ、そんな、嘘です! そんな、サム、さんが……」

侍「嘘じゃないでござる」

ざっ

レン「……ふむ……人質でもいるのかにゃ?」

賭博師「おー、察しがいいねぇ猫ちゃん。早い話がまぁ、そういうこったな」

符術師「東の王国民丸々人質に取られている。お前らを始末しないと彼らの命の保証がないんだ」

ポニテ「……」

通信師「……今更どうこう話をする必要もないでしょう? さぁ、やりましょうか」

ハイ「!」

侍「命をかけた……パーティ戦を!!」

黄金世代パーティがあらわれた!!

671: 2013/11/12(火) 17:08:24.38 ID:x+AYmlJn0
262

--氏の砂漠--

アッシュ「! パーティ戦!!」

ポニテ「あれ!? 何気に初めてじゃない!?」

レン「南の王国周辺で修行し始めてから一度もやってないにゃねそういえば」

ハイ「私はそれは知りませんが、妖精郷での特訓の成果を発揮したいとおもいます!」

ツインテ「……」

アッシュ「あ……そういえばツインテとは三年前から連携取ってないぞ……」

ハイ「それを言うなら……私なんてツインテ先輩と一緒に戦うの初めてですからね」

ツインテ「ぼ、ボクが皆さんに合わせます。元々大それたことはできないのでサポートを……」

侍「もう準備いい?」

672: 2013/11/12(火) 17:09:20.53 ID:x+AYmlJn0
263

--氏の砂漠--

侍「それじゃあ……」

侍は刀の柄に手を伸ばし、腰を落とす。

アッシュ「!」

さっ

アッシュはそれに呼応するかのように一番前に出る。

侍「……」

アッシュ「……」

しばしにらみ合い、間合いを計り……そして

ぎぃぃいいん!!

侍が踏み込んだ瞬間にアッシュも飛び出す。

侍「!」

アッシュ「ッ」

ギリギリギリ!!

そして刀とナイフが鍔競り合う。

674: 2013/11/12(火) 17:13:10.65 ID:x+AYmlJn0
264

--氏の砂漠--

ポニテ「あの速度で打ち合うにはアッシュ君じゃなきゃ無理そうだね」

ジャリン!

ポニテは血と炎で構成された二つの剣を生成し援護に向かう。

ぎりぎりっ!

アッシュ「……変だな。今は本気で斬りに行ったんだぜ? お前……前より反応速度あがってやがるな?」

侍「ふふ……」

はらり

アッシュ「!!」

侍の目を覆っていた包帯が取れる。そして侍は目を見開く。

侍「まことにひどい話でござるよ。望みもしないのに、勝手に体をいじくられて全盛期の体にさせられてしまったのでござる」

アッシュ「!! お前、目も!?」

ツインテ「!! スピードは互角みたいですけど、今のサムさんは全盛期……じゃ、じゃあアッシュ君でも」

レン「早合点するにゃツインテ」

ツインテ「え?」

ぎりぎりぎりっ

レン「アッシュはこの三年間で本当に強くなったのにゃ。ツインテを助けるために」

ツインテ「っ」

レン「それにアッシュはまだ移動速度強化魔法を使っていないにゃ。魔法を使えない侍なんかとはわけが違うのにゃ!」

675: 2013/11/12(火) 17:15:16.00 ID:x+AYmlJn0
265

--氏の砂漠--

アッシュ(そうは言ってもな、侍は最後のほうはほとんど目が見えなくなってたから、その補助のために心眼を編み出した。それが今は眼も完璧な状態だ……心眼がついてるだけ全盛期より強い!!)

ざっ!!

アッシュ「移動速度上昇魔法、レベル4!」

ひゅおっ!!

侍「!?」

侍の目の前から一瞬で姿を消したアッシュ。

ぎぃん!!

目では追えないその攻撃を侍は弾く。

アッシュ(やはり心眼には反応される……! だがな、俺にはお前以上の速度と、お前に教わった技術があるんだよ!!)

侍「!」

相手のわずかな隙を見逃さずに放たれる必殺の一撃、それをタイミングを崩した状態で連続で放つ。

ぎぎぎ、ぎぎぎぎぃんん!!!!

しかしそれすらも不可思議な動きの刀が受け止める。

アッシュ「なっ!」

侍「……アッシュ殿……いい攻撃でござった。でも個人戦じゃないのでござる。これは、パーティ戦なのでござるよ」

ばちっ

通信師「雷属性補助、反応速度上昇レベル4」

侍の体から電気が迸る。

676: 2013/11/12(火) 17:16:33.46 ID:x+AYmlJn0
266

--氏の砂漠--

アッシュ(雷属性の補助魔法! くっ!)

レン「その通りにゃアッシュ! 下がるにゃ!!」

ゴーレム「んごっ!!」

ずごごごごごご!!

レンの足元から七体のゴーレムが出現する。それらは壁をつくるようにスクラムし前進する。

符術師「! 新五柱の猫ちゃんか。スキル、ドロー!」

ポニテ「させないよ! 符術師のおねーちゃんは私が相手だー!!」

ぼっ!!

ポニテの全身が燃え上がり、符術師めがけて突っ込んだ。

ぎゅん!!

通信師(侍)

すっ

侍「わかって、ござる!」

ズバァアン!!

ポニテ「ッ!!」

ポニテの進路を塞ぐように侍が現れてポニテを斬る。

677: 2013/11/12(火) 17:18:10.88 ID:x+AYmlJn0
267

--氏の砂漠--

ポニテ「づっ!!」

ぼたたっ!

侍「ポニテ殿、それじゃ結局シングルと変わらないでござるよ? ポニテ殿達の実力からしたら一人一体処理していくほうがやりやすいのかもしれんでござる、が」

ポニテ「せ、精霊化!!」

侍「スキル、斬魔」

ズバァアン!!

斬撃を受け、瞬時に全身を魔力に変換したポニテ。
物理を無効化し、傷の修復も容易な魔力体……だがそれすらも侍は斬る。

ポニテ「いっ!?」

魔力が斬られたことで、左半身が消し飛んだ。

ツインテ「!! ポニテさん!! 水属性回復、じゃなかった、魔力供給レベル4!!」

きゅいいいいん!!

ポニテ「ぷはっ!! 助かった……!」

ぴるる!

一度ゴーレムの後ろにまで下がるポニテ。

侍「……うかつに一人で突っ込んだら氏んじゃうんでござるよ」

678: 2013/11/12(火) 17:19:24.23 ID:x+AYmlJn0
268

--氏の砂漠--

賭博師「もっと周りを見ないとな。一人じゃ適わない相手でも、力を合わせれば案外なんとかなるもんだぜ?」

ツインテ「……」

符術師「お前らのそれはどっちかというと魔族の戦い方なんだよ。固体スペックの高さでただ圧倒してるだけ。チームプレーしてるようでワンマンプレーなんだよ」

アッシュ「な、なんだと……?」

通信師「いくら練習でコンビネーションを高めても、結局は自分にとってやりやすいものばかり選んじゃうようじゃ、この先は勝てませんよ」

ポニテ「うぐ」

医師「確かに。私達に勝てないんじゃ、魔王討伐なんて到底無理ですね」

レン「っ……」

ハイ(……なんだろうこのよくある感じ)

侍「フルバックアップ状態+スキル孤軍奮闘を合わせた今の拙者の戦闘能力は魔族すら超えるでござるよ。気を引き締めてかかるでござる!」

ぶぉん

侍が軽く振った一振りで、

ずばばばばばばばば!!

地面が抉れる……。

679: 2013/11/12(火) 17:20:44.05 ID:x+AYmlJn0
269

--氏の砂漠--

ひゅおおぉぉおお

侍「……」

ポニテ「……驚いた……三年前より全然動きのキレが違うや。あの時でさえもう全盛期じゃなかったんだね」

レン「詐欺にゃ。全盛期に近い状態を保ってるとか昔言ってたくせに」

侍「それは……自分的には、ってやつでござるから。正直ここまで違うとは自分でも思ってなかったでござる。歳取るって嫌ね」

通信師「……」

アッシュ(……まぁ元も子も無いんだけどよ、ぶっちゃけ倒すだけなら簡単なんだよな。スキル人頃し使えば)

びくっ、っと黄金世代の五人が反応する。

アッシュ(いくら強くても相手が人なら一方的にいけるわけだし。……でもそれじゃ駄目ってことなんだよな。この先このスキルはほとんど役に立たないだろうから)

こくこく、っと五人は頷く。

アッシュ(こいつらも何か教えたいらしいし……仕方ねぇ、付き合うか……って心の声もテレパシーで全部筒抜けなんだろ?)

通信師「うん」

680: 2013/11/12(火) 17:21:17.20 ID:x+AYmlJn0
270

--氏の砂漠--

アッシュ「ち……じゃあもっかい最初からだ最初から。おいハイ!」

ハイ「はいっ!」

アッシュ「さっさとレベルアップするぞ! 騎士じゃ大振り過ぎてあの動きに対応できん、盾の方だ!」

ハイ「あ、はい!」

さくっ

アッシュのナイフがハイの腕を軽く削る。

ハイ「ファーストダメージ、条件達成レベルアップ! レベル2、盾兵!」

どんっ!!

ハイの姿が盾兵へと変貌する。

侍「! これは……?」

通信師「超レア職業、レベル!?」

681: 2013/11/12(火) 17:22:54.70 ID:x+AYmlJn0
271

--氏の砂漠--

賭博師「さ、さすがだぜツインテ様……最後の一人にこんな隠し玉を仲間に入れるなんてよぉ」

ツインテ(いやボクが知らない間に加入されてましたけども)

符術師「戦況に応じて職業を変えられるのなら、どんな職業よりもオールラウンダーだな」

チャキ

侍「よし、じゃあ再開するでござるよ!!」

ダッ!!

アッシュ「ハイ! 侍は俺とお前で食い止めるぞ!」

ハイ「はい!」

がぎぃん!!

ポニテ「……」

それを後ろから見ているポニテ。後衛の符術師たちのことにもしっかり目をやっている。

符術師(今度は無闇につっこんでこないか……自分が仲間の中で一番強いとわかってるくせに前線で戦えないのは辛いんだろうな。でもそれでいいのさ)

通信師(今までノリで戦う相手選んでたみたいですね。相性がいいやつと戦うのは基本中の基本なのに)

682: 2013/11/12(火) 17:25:15.00 ID:x+AYmlJn0
272

--氏の砂漠--

がぎぃん、がぎがぎぃん!!

侍「全力中の全力でアッシュ殿達と戦えるなんて、拙者心より感動しているでござるよ!!」

がぎぃいいいん!!

アッシュ「!!」(なんて、打ち込みだ! 風の砂漠で修行してた時もえげつねぇと思ってたけど、今のこいつとは比べ物にならねぇ……キレも力も何もかも違う!)

レン(フルバックアップって言ってたにゃ。なら賭博師の運補正、医師の観察眼による洞察力、通信師による反応速度上昇とかかにゃ? まずいにゃ、こっちも全力でアッシュ達をバックアップしないと!!)

侍「スキル、乱刃」

ずばばばば!!

無数の斬撃がアッシュを襲う!

ばっ!

ハイ「ユニコーンシールド!」

侍「!」

間に割って入ったハイ。
そして傘の盾ではなく、ユニコーンを変形させた盾でその攻撃を受け止める。

ばきぃん!

盾に刀が触れた瞬間、それは侍に返された。

ひゅひゅひゅ!!

683: 2013/11/12(火) 17:26:57.73 ID:x+AYmlJn0
273

--氏の砂漠--

侍「!」

ひゅひゅひゅ

跳ね返されたことで一瞬驚いた侍だったが、それらも軽々と避けてしまう。

ハイ(見たか! ユニちゃんシールドで跳ね返せないものなんて多分ないんだから!)

アッシュ「すまん助かった」

ハイ「あ、は、はい……」

褒められただけで顔が赤くなるハイちゃん。

賭博師(まぁ今は俺がリーダーだから簡単には致命傷にならないとは思うけどよ。でも気を抜いたら一発でやられると思うぜ。ツインテ様達も中々いい構成になってるし)

通信師(そうですね。前衛のアッシュとハイが接近戦を捌いて、中衛ポニテが後衛の守りと前衛の補助を、後衛のレンとツインテがサポート……特にツインテの莫大な魔力ならではの常時回復と魔力供給は強力無比ですね)

符術師(あぁ。全員がダメージだの魔力消費だのを無視してやれる……やっぱ潰すならツインテからだな)

侍(でもツインテ殿自動蘇生持ちらしいでござるのよ)

医師(なにそのチート)

684: 2013/11/12(火) 17:29:18.09 ID:x+AYmlJn0
274

--氏の砂漠--

ぎぎぃん! ががががぁん!!

賭博師(俺も一応全員の行動成功値あげて役に立ってるんだけどね。褒めてくれてもいいよ?)

符術師「サポートカード、攻撃力上昇!」

符術師は賭博師を無視して引いたカードを侍に投げる。

ポニテ「させない!」

ぼっ!!

符術師「む……」

ぱら……

カードは一瞬で焼け焦げてしまう。

符術師(火かぁ……カードは簡単に焼かれちまうからなぁ。……てかあいつちゃんとサポートを妨害してきてるじゃねぇか)

医師(ん、嫌な感じがしますよ。観察眼で見てるんですが、ポニテちゃんは何か強力な攻撃の準備段階に入ってるみたいです)

通信師(なるほど、黙ってサポートだけやるような玉じゃありませんからね。まぁそれも中衛後衛の華です)

侍(ちなみにポニテ殿の最大火力なら一撃で全員氏んじゃう可能性があるでござるよ)

賭博師(マジで? 俺の運でも駄目?)

侍(一撃っちゃ一撃だけど、にどげりみたいな連続性のある攻撃でござるよ。その都度運チェックでござろ?)

賭博師(うーん。じゃあ……きつい……)

符術師(ほんと微妙にしか役に立たないなお前!)

685: 2013/11/12(火) 17:32:13.32 ID:x+AYmlJn0
275

--氏の砂漠--

レン「練成盾! 練成槍! 練成移動力強化ブーツ!」

がががががが!!

レンはゴーレムを操るだけでなく、アイテムの練成を間の空くことなく続けている。

レン(恐ろしいにゃ……ひっきりなしに補助をかけ続けないと一気に均衡が崩れるにゃ! ここまで補助がきついものとは思わなかったにゃ!!)

ぽわわぁん

レン(回復……けどまぁ、相変わらずレンのツインテは化け物にゃ。レン達と違って三年間のブランクがあるから単体戦闘能力は低いけど、補助なら一級品にゃ!)

がぎぃん!! ががぎぃん!!

通信師(ゴーレムはスクラムを組んでるだけ? あれには何の意味があるの?)

符術師(よし、俺にリーダー権寄越せ。俺のリーダースキルを見せてやる)

侍(む、乱戦に持ち込むでござるか? 近接格闘は拙者以外じゃ瞬殺されるでござるよ?)

符術師(うるせぇなさすがにわかってるよ。どういう反応するか見てやるだけだよ)

賭博師(OK。リーダーチェンジする)

符術師「うし……」

ばっ

符術師はありったけのカードを用意し、その全てを投げた。

ポニテ「!?」

686: 2013/11/12(火) 17:33:47.47 ID:x+AYmlJn0
276

--氏の砂漠--

ぶわっ

レン「!」

ポニテ(いっぺんにこんなに!? でも符術師は一枚ずつ起動させていくしか使う方法が無かったはずだけど)

ぼっ!!

ポニテの体から炎が伸びてカードを焼いていく。が、その全てを焼けるわけではない。

ぱらぱら

アッシュ「気をつけろ! 何かやってくるぞ!」

侍「ほらほら拙者との戦いに集中するでござるよ!」

ぎぃん!!

そしてその一枚がツインテの傍に落ちる。

ぽん

侍「」

アッシュ「!?」

ハイ「!?」

すると一瞬で侍の姿がアッシュ達の前から消えうせ、ツインテの傍に現れた。

ポニテ「なっ」

レン「!!」

侍「すまないでござる。スキル、仮氏の力」

ずばぁん!!

687: 2013/11/12(火) 17:36:41.42 ID:x+AYmlJn0
277

--氏の砂漠--

どさっ

アッシュ「つ、ツインテーー!!」

符術師「……俺のリーダースキルはな、パーティメンバーを好きな札の所にワープさせることができるんだ。こういう奇襲してくるやつにも対策考えとかないとだめだぜ?」

侍に斬られたツインテはそのまま血を流して倒れこんだまま。

どくどくどくどく

レン「……」

ポニテ「! 回復、しない!? なんで!?」

医師「仮氏の力は魔力の流れを一時的に完全に止めてしまうスキル。たとえ自動蘇生スキル持ちであっても、魔力の動き無しでは蘇生できません」

符術師「なんだ、案外うまくいっちまったな……大事なサポートが無くなったならこれで」

アッシュ「!」

ぎぃん!!

前衛の侍がいなくなったことで、アッシュは一気に距離をつめて賭博師に斬りかかるも、またワープしてきた侍に防がれてしまう。

賭博師「おっとあぶねぇあぶねぇ……助かったぜ侍」

ギリギリギリ……

侍「……随分と面妖な感触でござった……レン殿か……」

賭博師「あ?」

ぼろっ

レン「魔力の流れを断つ……それならそうにゃね。偽装も解けちゃうにゃね」

賭博師「!?」

ツインテの体はぼろぼろと崩れ始め、ただの土くれと化した。

レン「にや」

688: 2013/11/12(火) 17:39:35.92 ID:x+AYmlJn0
278

--氏の砂漠--

通信師「なっ、あれは、ゴーレム?! いつのまにすりかえて……」

アッシュ「ハイ、今だ!」

ハイ「ッハイ!!」

鍔競り合うアッシュと侍に、突進しながら姿を変えていくハイ。

ぱぁん!

そして騎士になったハイは槍を突き出す。

ハイ「はあああああああああああああああああ!!」

ずぷうん!!

侍「」

ぽたっぽたたっ

ハイの槍は、アッシュごと侍を貫いた。

アッシュ「……へっ!」

侍「がはっ!? ばか、な!!」

がぎぃん!

侍はアッシュのナイフを弾いて距離を取る。

ぼたた、ぼたっ

侍「ぐっ……なぜ……なぜでござる……前に言ったでござろう……? 仲間を犠牲にした戦術で勝って何の価値があると!! なんでまたそんな戦術を使うのでござるッ!!」

アッシュ「犠牲? 何を言ってんだ」

しゅぅう

アッシュの傷は瞬時に塞がる。

アッシュ「俺は犠牲になんてなってねぇだろ」

侍「!?」

アッシュ「仲間の力を知ってるからこそ出来る戦法だ。これは俺なりの……仲間を信じてるってやつだ」

侍「!……」

689: 2013/11/12(火) 17:43:50.39 ID:x+AYmlJn0
279

--氏の砂漠--

医師「侍! 今治します!!」

ばがぁあん!!

侍に医師が駆け寄ろうとするのだが、その近くにいたゴーレムが突如爆発する。
そして

ツインテ「じゃっじゃじゃーん! ツインテちゃんのおいしいとこどりー!」

サイドテールのツインテが現れて鞭を振るった。

侍(! ゴーレムの中に、隠れて!?)

通信師(! 私のテレパシーが利かないように探知対策までされていた!?)

どがががががぁあん!!

医師「っっがっ!!」

ツインテの鞭は医師を一撃で絶命させた。

どさっ……

侍「……」

賭博師(くっ! やばいぞ回復役がやられておまけに侍が重症だ!)

符術師(ちっ!)「ファイナルドロー!!」

通信師(……負け、ですね)

符術師「召喚! 来い、デッドラ!!」

アッシュ「スキル、人頃し」

アッシュの右目が裏返る。

アッシュ「更にスキル、反転、魔殺モード」

侍「……ふ」

デッドラ「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ずばあああああああああああああああん!!!!

降臨した竜種デッドラ。それをアッシュは一撃で仕留める。

ずっずぅううん!!

符術師「! ばかな!! スキルで強化した竜種を一撃で!?」

アッシュ(俺、かっこいい……)

690: 2013/11/12(火) 17:50:20.36 ID:x+AYmlJn0
280

--氏の砂漠--

符術師「……」

アッシュ「どうする? まだやるか?」

侍「……ふ。負けで……ござる」

そういって侍は刀をしまい、地面に座り込んだ。

侍「なるほど。仲間を信じていればこその戦略でござるか……あのアッシュ殿が……」

負けた侍はなぜか少し嬉しそうだった。

賭博師「……俺ほとんどなんもしてないな……ツインテ様が絶対回復領域使ってきたら活躍できたのに……」

ツインテ「あ、あれからちょっと調べたんですけど、賭博師さんの奥義は空間設置系の魔法、奥義を上塗りできるみたいでしたから……今回は使用をひかえました」

と、ツインテールに戻ったツインテは言う。

通信師「……さぁ貴方達、早く私達を頃しなさい」

ポニテ「!? な、なんでよ! 別に私達はお姉ちゃん達を頃すつもりなんて!」

ハイ「最初から……氏ぬつもりで来たんですか?」

レン「……」

賭博師「まー……な。俺らが戦い挑んでもあの魔王達には勝てないし。かといってやつらの言う通りにしなかったらたくさんの人々が殺されちまう……かもしれんからな」

符術師「なら、お前らと戦って氏ぬしかないだろ」

ツインテ「!!」

アッシュ「……だがお前らが目的を果たせなかったら、どのみち国民は始末されちまうんじゃ?」

侍「それはどうだろうでござる。やつらは拙者らを使うためにそう言ってただけで頃す気は無いと思うのでござるよ。まぁ時
がくれば魔族に変えられてしまうのでござろうが」

 「その通りですよ。やれやれ、やっぱり殺せませんでしたか(この役立たずどもが)」

アッシュ「!?」

侍「!!」

ずずず

闇が突如出現し、中から一人の眼鏡をかけた男が歩いてくる。

こつ、こつ、こつ

??「結局のところ、私達が直接行くほうが一番てっとり早いんですよ。トリガーも何を考えているのやら」

ツインテ「はら、ぐろ……さん」

??改め腹黒「第四勇者にして第五魔王、腹黒です。お見知りおきを(カスどもが!)」

691: 2013/11/12(火) 17:53:12.13 ID:x+AYmlJn0
あ!
番号なんかめちゃくちゃ間違えてる!!

直さないと……

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

692: 2013/11/12(火) 17:55:17.79 ID:x+AYmlJn0
あ、応援ありがとうございます!

勇者と魔王がアイを募集した【8】

引用: 勇者と魔王がアイを募集した2