266: 2014/04/14(月) 23:10:10.23 ID:x5zmNrzq0

267: 2014/04/14(月) 23:12:21.70 ID:x5zmNrzq0
761

--  --

かつて東の町に竜頃しと呼ばれた男がいた。

強靭な肉体を持ち、最強の生命体である竜種を、ただの魔力を込めた拳で殴り頃す漢……。



彼には二人の息子がいた。

長男は、後に五柱の一角となる聖騎士。

そして次男は、大勇者と呼ばれ、世界を救うことになる、脳筋……。

268: 2014/04/14(月) 23:13:11.12 ID:x5zmNrzq0
762

--失われた王国、中央広場--

竜子「おらぁっ!」

ドゴォッ!

氷の魔力を纏った拳が脳筋にヒットする。

脳筋「うぉっ?」

パキパキ

竜子「このパワー馬鹿が……。氷結だ、そのまんま凍っちまいやがれ!!」

パキパ……じゅ

竜子「! 氷が溶けるだと!? くそ、そういや火属性も使えたんだったな勇者様は!!」

脳筋「いや、ただ俺の筋肉が熱いだけさ」

むきむきっ!
じゅおおおおおおおおおおおおおおおっ!

変化師「……」

鬼姫「……ちょっと、何立たせてるっすか!」

269: 2014/04/14(月) 23:14:13.22 ID:x5zmNrzq0
763

--失われた王国、中央広場--

変化師「す、スキル、身体変化、竜口!」

竜子「スキル、竜拳!!」

ドガガァン!

左右から同時に攻撃する二人。

脳筋「……竜か」

ズガン!!

変化師「!?」

竜子「げほ!?」

脳筋「若い頃に親父達とよく狩ったなー」

脳筋の拳が二人を吹き飛ばす。

270: 2014/04/14(月) 23:15:59.26 ID:x5zmNrzq0
764

--失われた王国、外れ--

ひゅうぉおおおぉぉぉおお

魔法使い「………………」

ぴちゃ
ぴちゃちゃ

ニンフ「まさか……たったの一人で魔族二人と渡り合うなんて~……」

カトブレパス「さすがだよ。魔法使い君。だが僕らはほぼノーダメ、君は瀕氏だ。勝ち目なんて無いんだよ」

魔法使いはボロボロになって立っている。

魔法使い「……」

カトブレパス「このままむざむざ氏ぬのは嫌だろう? だから、さぁ、君もこっちに来るんだ。今度はずっと一緒にパーティを組もう」

カトブレパスは手をさし伸ばした。

魔法使い「……ふ」

ニンフ「?」

魔法使い「でゅ、でゅふwwwwwwwwwwwwwwwwwwwでゅふふふふふふふふふふふふふwwwwwwwwww」

271: 2014/04/14(月) 23:18:02.14 ID:x5zmNrzq0
765

--失われた王国、外れ--

魔法使い「でゅふーーーーーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwちょwwおまwwwwうぇwwwwwwwwwwwwwwwww」

魔法使い突如大爆笑。

ニンフ「……なんです~? この気持ち悪い笑い方~」

カトブレパス「えーっと……昔の魔法使い君の笑い方だ……」

若干引き気味の二人。

魔法使い「お前らwwww笑わすんじゃねぇよwwwww」

ニンフ「……癇に障るんでやめてもらえます~? それ~」

魔法使い「むwざwむwざw氏ぬのが嫌とかwwwwwばあーーーーかじゃねぇの?wwwwww俺らはもう、一度氏んでんだよwwwwwいまさら氏ぬのなんか怖くネェwwww」

カトブレパス「……」

魔法使い「ひーーwwひーーww」

魔法使いは腹を抱えて笑い転げている。

カトブレパス「魔法使い君……」

魔法使い「寝ぼけるな。そちら側になどいくものか」

272: 2014/04/14(月) 23:19:18.23 ID:x5zmNrzq0
766

--失われた王国、外れ--

ぎぃん、バチイイイイイ!!

ニンフ「ギャッ!?」

魔法使いから放たれた雷がニンフを焦がす。

カトブレパス「!? ばかな! 無詠唱魔法で魔族にダメージを与えるだなんて!!」

魔法使い「はっ」

びりびりぃ

魔法使いは自分の上着を破り捨てる。

カトブレパス「!! その紋章は……まさか!」

魔法使いの上半身に隈なく描かれた紋章。それは紋章魔法の刺青である。

魔法使い「油断して近づいてきてくれてありがとうよぉ!」

ばちっ!!

カトブレパス「がっ!?」

今度はカトブレパスを雷が直撃する。

273: 2014/04/14(月) 23:20:32.58 ID:x5zmNrzq0
767

--失われた王国、外れ--

カトブレパス「ッぐ……紋章魔法……そんなものまで手に入れていたのか……! だがこの火力、先ほどまでと違うのはなぜ?」

ニンフ「うー……感電して動きづらいですね~、えっ!」

ダンッ!

ニンフが踏み込んで蹴りを放つ。

ぼっ!

魔法使い「」

ひゅん!!

しかしその蹴りを魔法使いはかわした。

ニンフ「なっ!? インファイターでも無い奴が私の攻撃を!?」

ばちばちっ

カトブレパス「違う! それも紋章魔法だ! 魔法使い君は色々な魔法の術式を書き込んでいる!!」

魔法使いは、紋章魔法で移動速度上昇を自身にかけていた。

魔法使い「天才ですからwwwwwww」

274: 2014/04/14(月) 23:22:35.13 ID:x5zmNrzq0
768

--失われた王国、外れ--

ドゴッ!!

ニンフ「ぐっ!」

魔法使いの拳がニンフを捉える。

ズザザー!!

ニンフ「……魔法使い如きの格闘技で、魔族にダメージが通るですって~?」

ぽたっ

ニンフの口から血がたれている。

カトブレパス「おかしい……魔力が明らかに増えている……なぜだ……?」

魔法使い「ふひひwww貴様らにはわかるまーーーーーーーーーーーいwwwwww」

バチバチバチ!!

カトブレパス「……もしかしてその笑いが関係しているのかな?」

魔法使い「……」

カトブレパス「思い返せばその笑いをし始めてからだし……その笑いが魔力を高める役割をはたしていたりして……」

魔法使い「あんたのような勘のいい人は嫌いだよ」

275: 2014/04/14(月) 23:23:53.33 ID:x5zmNrzq0
769

--失われた王国、外れ--

ニンフ「ふん……いくらちょっとくらいパワーアップしたからって、私達魔族二人に勝てると思ってるんですか……? 大体そんなのが出来るなら追い詰められる前にさっさとやればよかったじゃないですか~」

魔法使い「こっちにもwwこっちのww事情があんだよww」

カトブレパス「……」

ぎょろ

その時カトブレパスの眼球が動く。

カトブレパス「! ニンフさん! 上です!」

ニンフ「!」

しゅん、どがぁあっ!!

ニンフ「ッ!!」

キバ「ちぇっ、外しちゃったかー」

魔法使い「うぇwwww遅過ぎwww俺wwwもう半氏wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwぷぎゃ」

キバ「ごめんねー魔法使いー。でももうモンスター片付けたからさ。あとは」

ざっ

キバ「こいつら倒して中央広場に行くだけだよ」

ニンフ「……」

276: 2014/04/14(月) 23:27:27.18 ID:x5zmNrzq0
770

--失われた王国、中央広場--

ひゅーーん、どがぁあん! どごおん!

軍師「……あれ?」

通信師「? どうかしました? 軍師さん」

どがぁああん!! どがどがぁあん!!

脳筋「ははははは!!」

鬼姫「くっそ、この筋肉ダルマ!!」

軍師は戦場を見渡す。

軍師「……銀蜘蛛との戦いに向かわせたはずの魔導長と射王が戻ってきているだぜぃ?」

通信師「え」

どがぁあん!

通信師も魔導長達の姿を確認する。

通信師「! そういえば……いつの間に……」

軍師「銀蜘蛛との戦いが終わって加勢に来たのかだぜぃ? テンテン達はどうなっただぜぃ?」

通信師「今通信してみます。……ん……駄目です、なぜか電波が乱れていて……」

ドオオオォオオオォオオオォオオォオオオォオオオオォオオンッッッッッ!!

軍師「!? テンテン達が飛んでいった方からすごい爆発が!」

通信師「なに、あの雲……」

277: 2014/04/14(月) 23:31:40.82 ID:x5zmNrzq0
771

--失われた王国、中央広場--

トリガー「相打ち、か」

ウェイトレス「何々? どうかしたー?」

ぎぃいん!!

トリガーに斬りかかろうとする勇者の剣を、ウェイトレスの蹴りが弾く。

勇者「くっ!!」(全力で勇者スラッシュを放った反動で、いまいち体にキレが無い!)

トリガー「銀蜘蛛が逝ったよ。機械兵士達と相討ちだった」

ウェイトレス「あらま」

トリガー「それにしても……随分遠くでやってくれたからよかったものの、もう少し近かったら全部台無しだったね。あの馬鹿、追い詰められたからって全部ぶっ放そうとしてたよ」

ウェイトレス「それは……怖いなー……」

ぎぃんぎぃいん!!

勇者(なんの話をしている……銀蜘蛛……?)

ぎぃん!

勇者(いやまて、それじゃおかしい!! ならなんで)

魔導長「」

射王「」

勇者(あの二人が敵を倒す前に戻ってきているんだ……?)

ウェイトレス「気づいちゃったかな?」

勇者「!! しま」

ガヅン!!

勇者の胸部を矢が貫いた。

ポニテ「!? ママ!?」

278: 2014/04/14(月) 23:32:37.08 ID:x5zmNrzq0
772

--失われた王国、中央広場--

勇者「」

通信師「……え」

元賢帝「ちょっと、フレンドリーファイア!? なにやってんのよぉお!」

射王「……」

矢を放った射王は無表情。

参謀長「! 違う! 射線が脳筋を狙ったものじゃない!!」

どっ

勇者は膝をつく。

ウェイトレス「私の予習してたんじゃないの? 勇者」

赤姫「っ! しまった……」

魔導長「全力、全開」

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

魔導長は飛び上がって全ての魔力を一点に集約する。

踊子「でますか~星光破壊砲~」

賢者「いや……まってくれ、魔導長さん、こちらに向けてないか?」

魔剣使い「!!」

魔導長「奥義、星光破壊砲」

かっ



ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

279: 2014/04/14(月) 23:34:11.77 ID:x5zmNrzq0
773

--失われた王国、中央広場--

しゅううぅうう……

元賢帝「あ、あんたたちさっきから、おかしいわよ……」

賢者「うっ……」

とっさに張った、護皇、元賢帝、賢者、踊子による多重障壁。だがそれで全ての威力を軽減できるはずもなかった。

熊亜人「ぐ……」

変化師「うぐ……」

しゅうぅうう

脳筋「おいおい、仲間割れか? せっかく楽しめてたのに」

脳筋はがっかりした表情で辺りを見回す。
誰もが大ダメージで満足に立ち上がることも出来ない。

勇者「……うかつだった……あの二人はとっくにあんたに……」

勇者は回復魔法をかけようとするのだが効果が現れない。

勇者(回復不能攻撃……!)

ウェイトレス「そう、私のスキル。ココロノイト。あの二人が飛び立つ瞬間、一瞬の隙をついて操っちゃったのさ」

勇者「……!!」

ウェイトレス「まぁ私の力だけじゃないんだけどね。脳筋の常時発動スキル、脳みそ筋にくん。目の前の戦闘以外のことには意識を割きづらくなるスキル。これが無かったらいくら私でも操れなかっただろうし」

勇者(く、それのせいで今まで不思議に思わなかったのか……!)

280: 2014/04/14(月) 23:34:43.78 ID:x5zmNrzq0
774

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「トリガー。もういいんじゃない? 勇者もこんなだし、さっさと目的果たしちゃおうよ」

ウェイトレスが見えない糸で勇者を縛り上げる。

びしっ!

勇者「ぐ!」

アッシュ「ツインテ、ポニテ、レン、ハイ! お前らはポニテの母親の所にいけ!」

ツインテ「え?」

ポニテ「言われなくてもいくけど!」

ハイ「アッシュ先輩はどちらに?」

アッシュ「俺は」

ざざざざざ!!

脳筋「ん?」

ぎぃいいいいいいいいいん!!

アッシュのナイフが脳筋の指で止められる。

アッシュ「俺は、こいつを倒す」

脳筋「……ほう」

281: 2014/04/14(月) 23:35:47.61 ID:x5zmNrzq0
775

--失われた王国、中央広場--

だだだだだ!

ウェイトレス「あらま。なんか突っ込んできちゃってるよ。なら」

しゅん!

魔導長「」

射王「」

二人の五柱がハイ達の前に現れる。

ウェイトレス「せっかくだしこの子らに相手を頼んじゃおうかな」

レン「! 魔導長にお兄ちゃん……」

ハイ「操られてるんです……! 容赦なく倒すしかないですよ!」

レン「ッ! レンは魔力の使いすぎで全力出せないにゃ! だから同じく奥義を放ったばかりの魔導長の相手をするにゃ!」

ポニテ「オーケー! 私は射王さんをやるよ! 奥義、SOF!!」

ぼおっ!!

炎の塊になったポニテは射王に突っ込んだ。

ハイ「ツインテ先輩! ポニテ先輩のサポートお願いします!」

ツインテ「は、はい!」

282: 2014/04/14(月) 23:36:53.92 ID:x5zmNrzq0
776

--失われた王国、中央広場--

だだだだだだ!

ハイ「レン先輩は私のサポートよろしくお願いします!」

レン「わかったにゃ!」

ガキン!

ハイはパイルバンカーを構える。

魔導長「無属性拘束魔法、レベル4」

しゅるる、びしぃ!!

ハイ「きゃっ! っく! レン先輩!」

レン「さっそくとか、猫使いが荒いにゃ! 練成、封印解除のボトル!」

ばしゃぁ!

レンが乳白色の液体の入ったボトルをハイにぶちまけると拘束魔法が消滅する。

魔導長「!」

ぬる

ハイ「た、助かりました……けど……ビジュアル的に……」

283: 2014/04/14(月) 23:38:55.05 ID:x5zmNrzq0
777

--失われた王国、中央広場--

ぼっ、ぼぼぼっ!

射王の放つ矢がことごとくポニテの急所を狙い撃つ。だが、

ぼおおおおおおおおおお!!

ポニテ「炎に、矢なんか効かないんだから!!」

ふぉん、どがああああああああああああああああああああああん!!

炎の大剣を振るポニテ。

射王「ッ!」

ぼぼっ

避けながらも矢を放つ射王。

ポニテ「だから効かないってーの!」

頭部を貫かれたポニテ。再生しきるまで視覚が機能していないそのわずかな合間に、

射王「スキル、効果付与、破魔」

どぱっ!

ポニテ「!?」

避けられない一撃。
その矢がポニテを貫くと、ポニテは爆発四散。下痢めいて飛び散った。

ツインテ「ワザマエ!」

284: 2014/04/14(月) 23:40:41.40 ID:x5zmNrzq0
778

--失われた王国、中央広場--

ツインテ「って、そんなこと言ってる場合じゃない! 水属性魔力供給レベル4!!」

ぎゅいいいいん!!

ポニテ「ぶはっ!! し、氏ぬかとおもったよ……! さすが五柱……物理技が効かない相手への対処法まであるんだね」

ツインテ「はい、油断しちゃ駄目ですよ。なんていったってあの人はレンさんのお兄さんなんですから……」

射王「……」

ポニテ「だね……ほんとなら、レンちゃんが倒したかっただろうね」

ツインテ「……え?」

ポニテ「ごめんね、私が倒しちゃうから!!」

ぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

ツインテ「あつっ!? ものすごい熱量ですっ!」

ポニテ「矢も弓も物質なんだもん、媒介を溶かしちゃえば変なスキルをつけることも出来ないよね?」

じゅうぅう

射王「……」

元々射王は遠距離からの狙撃を得意としている。狩人、弓兵の職業は防御が薄いのが世の常。

射王「……」

広範囲攻撃に対する防御方法は、無い。

どんっ!

ポニテ「せい!!」

ポニテが跳躍し、巨大な炎の大剣で射王をぶったたいた。

どがぁああああああああああああああああああああああああああん!!

285: 2014/04/14(月) 23:42:37.31 ID:x5zmNrzq0
779

--失われた王国、中央広場--

ぴるるるるる

レン「ハイ! 魔導長に接近するにゃ! 魔導長はハイの接近戦に対応できないにゃ!」

ハイ「はいっ!……でも空飛ばれると接近できないっていうか……」

レン「足場はレンが作るにゃ! 練成!」

ばしっ!

どぉんどぉんっどおおおおおん!!

魔導長「!」

無数の柱が地上からせり上がっていく。

ハイ「すごい……これなら確かに駆け上がれそうです!」

とっ、とっ、とっ!

ハイはぐんぐん魔導長に近づいていく。

魔導長「無属性魔法障壁魔法レベル4」

ばしぃいん!

ハイ「はああああああああああああああああああ!!」

どぎいいいいいいいいいいいいいいいん!!

ハイのパイルバンカーが魔導長の魔法障壁と激突する。

ギギギギッギギイギギイイイイイイイイン!!

レン「っ! さすがの硬さにゃ……これは抜けないかにゃ……!」

ハイ「まだです! ユニちゃん!」

ドギャルルルルルル!!

魔導長「!?」

レン「先端が、ドリル回転!?」

ぎゃぎゃぎゃ、どぎゃあああああああああああああああああん!!

魔導長「」

ハイ「……すみません、魔導長さん」

ズバシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

286: 2014/04/14(月) 23:45:41.98 ID:x5zmNrzq0
780

--失われた王国、中央広場--

ひゅひゅひゅひゅひゅん!!

脳筋「! ほぉ、やるじゃないか!」

脳筋の攻撃を軽やかにかわすアッシュのフットワーク。

脳筋「足は速いしいい眼も持っている。加えてこれは……タイミングをずらしているのか?」

アッシュ「ちっ! 何が脳筋だ。ちっと戦っただけで全部見透かしてんじゃねぇぞ!」

脳筋「ははは。ふんっ」

ぼっ!

アッシュを捕らえられないと判断した脳筋は空を叩き、衝撃波で吹き飛ばすことにした。

アッシュ「ぐお!?」

ぼふううう!

脳筋「食らえ、オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

体勢を崩したアッシュにラッシュをかける脳筋。

ふぉ

アッシュ「……まったく、俺の相手はいつも最強クラスのやつばかりだな」

どがああああああああああああああああああああああああん!!!!

脳筋のラッシュがアッシュに叩き込まれ……

脳筋「……む? いない?」

すと

脳筋の後ろにアッシュが降り立つ。

脳筋「!?」

しゃん

アッシュ「……だが俺にはこれがある」

アッシュの眼はいつの間にか裏返っている。
スキル、人頃し。

ぽたっ

アッシュ「最強の勇者様だろうが、人は人……人ならば俺の敵じゃない。そう。お母様の力が宿るこの眼にはな」

ぶしゅ

脳筋の硬い皮膚が切り裂かれていて、心臓の部分からじわじわと血が滲み始める。

脳筋「……まいったなー……まさかそんなナイフで、やられる、なんて、ね」

アッシュ「失せろ最強」

脳筋「天晴れ」

ずずぅううん

294: 2014/04/22(火) 03:20:59.33 ID:8/5pvIVa0
超おそくなりました。投下します。

295: 2014/04/22(火) 03:22:14.26 ID:8/5pvIVa0
781

--失われた王国、中央広場--

ずずぅううん

トリガー「なるほど……勇者化させたのはこれが狙いだったわけか……あの暗殺者の女の子と同じ能力持ちとは……」

沈む脳筋を見ながらトリガーは呟いた。

トリガー「これが切り札」

アッシュ「……」

ウェイトレス「ふっふっふっー。だがまだ甘いなー、少年」

しかしウェイトレスは高笑い。

ウェイトレス「そんな的確に急所に攻撃なんて、普段ならまだしも今は出来ないんだよねー。なぜなら脳みそ筋にくんの効果は精密動作性も下げちゃうんだから!」

ボロ

しかし、静かに砂になっていく脳筋。

ウェイトレス「あ、あれ?」

296: 2014/04/22(火) 03:22:52.86 ID:8/5pvIVa0
782

--失われた王国、中央広場--

しゅぴぃん

アッシュはナイフについた血をはらう。

アッシュ「ふん、自慢じゃないが不安でしょうがなかったんでな」

ざっ、ざっ、ざっ、ざっ

アッシュはウェイトレスに向かっていく。

ウェイトレス「不安、だったから……?」

アッシュ「念のため17回斬っといた」

ウェイトレス「!!」

ポニテ(ほんと自慢じゃなさすぎて……)

レン(用心とビビりは紙一重にゃ)

297: 2014/04/22(火) 03:23:19.67 ID:8/5pvIVa0
783

--失われた王国、中央広場--

トリガー「……ふむ」

トリガーは静かに目を閉じる。

トリガー「はぁ、まいったね。予想外だ」

そして、あのトリガーがため息をついた。

トリガー「ヤミは帰ってこないし魔王勇者は戦意喪失。モンスターも魔族もやって来ない。残る戦力は……」

ウェイトレス「あ、もしかして私だけ?」

トリガー「ってことになるね」

自分を指さすウェイトレスに頷くトリガー。

ウェイトレス「あっちゃ~……。随分やられちゃったねー」

その時、

ざざっ!!

298: 2014/04/22(火) 03:23:46.01 ID:8/5pvIVa0
784

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「おろ?」

?「じゃんじゃじゃーん! 皆さま方、おまっとうさんやでー!」

??「ふん」

中央広場に駆けつけた影が二つ。

ハイ「っ! まさかこのタイミングで敵の増援!?」

咄嗟に身構えるハイ。

賢者「……いや、違うよ。あの人達は味方だよ」

踊子「そうですよ~。勇者さんを倒すために作られた、小汚ない人造勇者さん達です~」

?「や、やな説明の仕方するな自分……まぁ全否定はでけへん、って小汚ないってどゆことや!」

びしぃっ!

一人ツッコミする片方の影。

勇者「影月……それに、カブトお兄ちゃん」

299: 2014/04/22(火) 03:24:24.20 ID:8/5pvIVa0
785

--失われた王国、中央広場--

?改め影月「ま、それはおいといて。外のモンスターどもはわいらがぜーんぶぶったおしたで!」

治った両腕で腕組みをしているのは影月。

??改めカブト「残るは……貴様らだけだ。トリガー」

自慢のポーズを決めているのはカブト。

侍「残る魔王は後一体……」

トリガー「……」

ハイ(追い風! こっちは戦力が増えて向こうは後が無い……この流れなら、いけるかもしれない!)

300: 2014/04/22(火) 03:25:19.14 ID:8/5pvIVa0
786

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「わぉ……。絶対絶命ってやつ? どうするのトリガー?」

トリガー「どうするの、って……」

人類の残った全ての戦力が中央広場に集結している。

ツインテ「魔導長さん達の蘇生完了しました! スキルの効果も解除成功です!」

魔導長「うぅ……五柱のくせに情け無くて氏にたいなの」

射王「あぁ。その借りはしっかり返さないとな」

ザン!

ツインテ「あと皆さんの体力回復しときました!」

賢者「うちの子マジ有能!」

ザザン!

トリガー達を囲む人々……。

勇者「! ついに」

赤姫「ついに、追い込んだ」

301: 2014/04/22(火) 03:28:01.75 ID:8/5pvIVa0
787

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「と、トリガー! まずいんじゃないのこれ……」

ウェイトレスは自分達を囲む人たちを見ながら汗を垂らす。

トリガー「だからさっきから困ってるって……」

アッシュ「これで、終わりだ。諸悪の根源よ」

ポニテ「あ、そういえば魔王を最初に倒した人が勇者だ、っていう約束してたよね、それが今なんじゃない!?」

ツインテ「うわ、凄い懐かしい……四年くらい前のことな気がします」

ざわざわ

レン(みんなの心に力が戻ってきたにゃ……! やはり人間は群れるものなのにゃ!!)

ハイ「さぁ皆さん、今まで犠牲になった皆さんの頑張りを無駄にしないために……ここで彼らを倒しましょう!」

トリガー「……」

シャン

勇者が大剣を構える。

勇者「トリガー……覚悟は、いいわね?」

302: 2014/04/22(火) 03:29:00.82 ID:8/5pvIVa0
788

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「あ、う……」

がくがくと震えるウェイトレスは瞳に涙を浮かべている。

魔王勇者「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」

魔王勇者は何かを呟き続けている。

ウェンディゴ「くそ……十代目との一戦で随分力もがれたからな……今の俺でどこまでやれるのか……」

ウェンディゴは魔王勇者を庇うようにして立っている。

アッシュ(魔王勇者もさっさと処理しておきたいが、傍に魔族がいる……さすがに無用心には近づけん。なら)

シュッ!!

一番最初に動いたのはアッシュ。

ウェイトレス「!?」

狙うはウェイトレス。

303: 2014/04/22(火) 03:29:47.49 ID:8/5pvIVa0
789

--失われた王国、中央広場--

ざざざざざざ!!!!

ウェイトレス「な、なめんなよー!?」

迎撃しようと回し蹴りを放つウェイトレス。

ぼっ

しかしそれがアッシュには当たらない。

ウェイトレス「!? タイミングが狂わされて!!」

ズバッ!!

そして踏み込んだアッシュのナイフがウェイトレスの右腕を切り裂いた。

ぶしゅっ、どさっ

ウェイトレス「ッ!……」

アッシュ「ダルマだ」

ドシュドシュドシュドシュドシュ!!

ウェイトレス「がっ!!??」

ウェイトレスの四肢は全て切断される。

304: 2014/04/22(火) 03:31:02.93 ID:8/5pvIVa0
790

--失われた王国、中央広場--

どさどささっ

ポニテ「う、うおぉ……あざやか……あんだけ手間取った歴代勇者の一人をあっさりと倒しちゃうなんて。割り込むことすら出来なかったよ!」

レン「おかしいにゃ。アッシュが役に立つなんて天変地異の前触れにゃ!!」

ツインテ「れ、レンさんさすがにひどいですよ!」

ハイ「勇者キラーすぎる……かっこいいですアッシュ先輩! 私も頃してください!」

危ない発言のハイちゃん。

ウェイトレス「あ……あ……」

どくどくどく

切断面から夥しい量の血が流れていく。

トリガー「……」

ウェンディゴ(!? あのウェイトレスさんまでやられちまった!? くそ、本当にどうする気なんだトリガー!)

305: 2014/04/22(火) 03:31:35.34 ID:8/5pvIVa0
791

--失われた王国、ライブ会場--

ヤミ「で、貴様は何をする気なんだ?」

ブラ「ヤミ様の洗脳を、歌で治します」

ヤミ「……何?」

メイド「戦いではどうやってもヤミ様に適いませんでございます」

ベースを担ぐメイド。

番犬「だからこそ、出来ることをやらせてもらうバウ」

ドラムの前に立つ番犬。

ヤミ「……狂ったか。そんなふざけたことに我が付き合うと思っているのか!」

どんっ!!

ヤミが放つ威圧がブラ達を襲う。

306: 2014/04/22(火) 03:32:10.74 ID:8/5pvIVa0
792

--失われた王国、中央広場--

ブラ「んっ!!」

メイド「ぐっ……!!」

番犬「相変わらずの、威力バウ……でも」

番犬はスティックを咥えて叩く。

ダララン!!

メイド「私達は、ヤミ様に戻っていただくためなら!!」

メイドが演奏を始める。

ヤミ「何!? こいつら俺の威圧の中で……」

がくがく

ブラ「で、では一曲目……聞いてください」

ヤミ「!? バカな!? ただの人間が俺の威圧に耐えているだと!?」

307: 2014/04/22(火) 03:34:38.40 ID:8/5pvIVa0
793

--失われた王国、中央広場--

じゃかじゃかじゃかじゃん

メイド「ヤミ様の言う通り、ブラはただの人間でございます……ほんの少し小突くだけで息絶える脆弱な生物でございます。でもブラには成し遂げなければならないものがある。だからこそ彼女は『聖』の位についた!!」

番犬「五柱の一席、『聖』。聖騎士が亡くなり空席となったその座についたのは彼女なのだバウ!! 聖母、ブラの歌声を聞くがいいバウ!!」

ブラ「トリイアングラー!」

ズンッ

ブラ「♪~~~~~~~!!」

ブラが歌う。

ヤミ「!!……な、んだ、これ、は」

ブラ「♪~~~~~~~!!」

ブラの歌声が失われた王国全体に響く。

ヤミ「ぐ……こんなもの初めて聞いたはずなのに……なぜだ……なぜかどこかで、聞いたことが」

ブラ「♪~~~~~~~!!」

308: 2014/04/22(火) 03:35:28.41 ID:8/5pvIVa0
794

--失われた王国、中央広場--

ずんどこずんどこずんどこ

メイド(効いてるでございます……! 魔力を乗せた歌……ブラならヤミ様の心の闇をきっと!)

番犬(吹き飛ばせるバウ!!)

ブラ「♪~~~~~~~!!」

ヤミ「うっぐ!!」

頭を抱えてしゃがみ込むヤミ。
そして覚えの無い記憶が脳内を駆け巡る。

ヤミ「剣の町、館、吸血鬼……なんだ、なんだこれは……」

ブラ(ヤミ様、お願い!! 戻ってきてください!!)「♪~~~~~~~!!」

ヤミ()

309: 2014/04/22(火) 03:36:30.39 ID:8/5pvIVa0
795

--失われた王国、中央広場--

ドガン!!

ウェンディゴ「ごほっ!!」

ずざーーー!!

射王「ふぅ……」

魔導長「弱っていたとはいえさすが魔族なの」

元賢帝「五柱四人がかりでないと安全に倒せないなんて、いやぁねぇ」

護皇「でもこれで、敵に戦えるのがいなくなったぜよ」

トリガー「……」

ウェイトレス「そんな……こんな、こんなことって……」

アッシュ(ん? まだ生きている? 最初の一撃が致命傷になってないってことか……?)

すら

アッシュは再びウェイトレスに近づいていく。

ウェイトレス「……じゃあ」

ウェイトレスは呟く。

アッシュ「?」

ウェイトレス「じゃあ全部私が倒しちゃうしかないじゃない!」









ハイ「……はい?」

310: 2014/04/22(火) 03:37:34.87 ID:8/5pvIVa0
796

--失われた王国、中央広場--

しゅる

アッシュ「!?」

見えない糸による攻撃をアッシュはかろうじて避ける。

アッシュ「な、まだこんな力がのこって」

ドブズン!!!!

アッシュ「……あ?」

アッシュの腹部を大きな剣が貫通していた。

ぽたっ、ぽたたっ

銀蜘蛛?「イェーイ、ギングモ、イッキゲキハー」

剣は後ろにいた銀蜘蛛の前足から飛び出ている。

勇者「!?」

アッシュ「!? き、きさま」

しゅるしゅるしゅるしゅる

ウェイトレスの体と四肢が縫われて繋がっていく。

311: 2014/04/22(火) 03:39:18.33 ID:8/5pvIVa0
797

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「よっと。なーんちゃってね、どう? 迫真の演技だったかなー?」

トリガー「どうだろうね。君はちょっと意地が悪いよね」

ウェイトレス「えー? そんなちょっとしたお茶目じゃないのさー」

お茶らけるウェイトレス。

ポニテ「え、銀蜘蛛って……あの魔王の?」

レン「いつの間に出てきたにゃ!? っていうかアッシュが!」

ツインテ「そうでした! アッシュ君、今助けます!!」

ばさっ!

桃鳥?「それは駄目ですって私思っちゃってます」

その時桃鳥が急に現れ、ツインテ達の行く手を遮った。

ハイ「!? あ、あなたは先ほど私達が倒したはずじゃ!!」

312: 2014/04/22(火) 03:39:51.62 ID:8/5pvIVa0
798

--失われた王国、中央広場--

勇者「ろくに動かないから使えないのだとばかり思っていたが……」

赤姫「最悪だ……」

魔導長「魔王が復活したなの!? ッ! とりあえず攻撃を再開なの!! 無属性攻」

ぼおおおおおおおん!!

魔導長が杖に魔力を集めた瞬間に暴発を引き起こした。

魔導長「きゃあああああ!!??」

腹黒?「駄目ですよ、そんなみえみえの大技なんて。実戦じゃ使えませんよ?」

ハイ「!?」

ざざっ

茶肌?「……」

ヤミ?「……」

ウジ虫?「……」

ウェイトレスの周りに、次々と倒したはずの魔王達が現れる。

313: 2014/04/22(火) 03:40:27.95 ID:8/5pvIVa0
799

--失われた王国、中央広場--

ウェイトレス「さぁあて、と。やっと私の出番だね」

ウェイトレスはくるくると回っている。

ツインテ「これは、一体、ど、どういうことなんですか!? さっき戦って魔王さん達がまた……!」

勇者「……あの時は説明できなかったけど……こいつは人形師系の勇者なのよ。しかも」

赤姫「……奴が操る人形は、歴代の勇者達だ」

ツインテ「」

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

ハイ「……はい?」

314: 2014/04/22(火) 03:45:18.26 ID:8/5pvIVa0
800

--崩壊した失われた王国、中央広場--










しゅぅうううぅうううぅうう

瓦礫の山の中で立っているウェイトレス。

その周りにあるのは無数の氏体。

ガラ

軍師「か、関係無かったんだぜぃ……こいつの、前では……今までの、戦いなんて」

参謀長「ち……。魔王達はチートばかりだとわかっていたつもりでしたが……こいつは、次元が違う」

元賢帝「どんなに追い詰めたとしても、最後にこいつが残っているなら同じことなのね……」

ツインテ「み、皆さん、今回復を」

ツインテが魔法を使おうとしたが、

どすっ

ツインテ「……」

そのツインテを槍が貫く。

茶肌?「……」

茶肌の持つ、呪いの槍が。

319: 2014/04/29(火) 02:23:29.09 ID:0h35YNwn0
801

--崩壊した失われた王国、中央広場--

勇者「!!」

しゅぅうう……

ツインテ「あ、れ……?」

茶肌?「……」

アッシュ「ば、ばかな! ばかな!! ツインテェ!!」

ぼろ

ツインテの体が……静かに崩れていく。

ポニテ「つ、ツインテちゃん絶対回復領域を! 早く!!」

ボロボロ……

レン「の、呪いの槍は……寿命を削るのにゃ……そして寿命は……寿命だけはどんな魔法をやっても……元に戻せない……のにゃ」

レンはひきつった表情で涙を溢れさせている。

ハイ「ツインテ先輩!!」

320: 2014/04/29(火) 02:24:30.76 ID:0h35YNwn0
802

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ダダダダ!

ハイはツインテに駆け寄ろうとする。

ハイ「ッ!」

ボロ

ツインテ「……ごめんなさい皆さん。最後の最後まで、僕、役に立てなくて……」

アッシュ「ツイ――」

ツインテは申し訳なさそうに笑った。

ドーン! ドガーン!!

ウェイトレス「ほれほれー! 抵抗しないとあっさり氏んじゃうぞー?」

周囲では残る戦力が魔王人形によって殲滅されている。

321: 2014/04/29(火) 02:25:09.31 ID:0h35YNwn0
803

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ずる

下半身が無くなったツインテは槍から外れて地面に落下した。

ハイ「ツインテ先輩!!!!」

懸命に手を伸ばすハイ。だが、

ツインテ「皆さん……どうか最後まで、諦めないでくださいね?」

ハイが触れる直前で

ボッ

ハイ「ッ」

ツインテは

アッシュ「」

ポニテ「う、あ」

レン「……」

消滅した。

322: 2014/04/29(火) 02:25:59.10 ID:0h35YNwn0
804

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ばしゅ

それと同じくしてハイのレベルアップが解かれる。
パーティメンバーが一人いなくなったため、レベル4の条件を満たさなくなったのだ。

アッシュ「ば……かな」

ポニテ「嘘だ……ツインテちゃんが……嘘だぁ……」

レン「にゃあぁあぁあぁあぁ!! にゃあぁあぁあぁあぁ!!!!」

ハイ「ツインテ……先輩……」

ざざっ

ハイは何も無い地面をまさぐっている。

ハイ「そんな……こんなあっけなく……嘘……」

茶肌?「……」

チャキ

茶肌の槍が、ハイを次の目標とした。

323: 2014/04/29(火) 02:27:46.14 ID:0h35YNwn0
805

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ドーン! ズガガーン!

元賢帝「くそっ、たれええええええええええええ!!」

ひゅひゅひゅひゅん!!

蝿男?「ひひひ」

元賢帝の全ての攻撃がかわされる。

トリガー「ふふ、シリーズ1~6のラスボスを同時に相手にする感覚はどうだい? これはかの大勇者でさえ味わったことが無いからね」

ウェイトレス「あ、そういえばそうだね。あの時は各個撃破されちゃったからなー」

ドオオオン!!

影月「!?」

脳筋の拳が影月に直撃し、

グッパオォン!!

影月の肉片が粉々に飛び散った。

324: 2014/04/29(火) 02:28:44.58 ID:0h35YNwn0
806

--崩壊した失われた王国、中央広場--

トリガー「……そういえばさっき君たち面白いことを言っていたね。総戦力の三割をつぎ込んで銀蜘蛛を倒すとかどうとか」

通信師「!……テレパシーも傍受されていたのか……」

トリガー「そういう言い方をするならば、このウェイトレスは……そうだね、僕の魔王軍の総戦力の『約五割』ってことになるね」

魔導長「」

どごおおおおん!!

元賢帝「そん、な……たった、たった一人で」

射王「ち……これほどまでに犠牲を払って来たっていうのに……」

姫「人類の90%を犠牲にしてやっと追い込んだと思ったのに……!」

護皇「やっと、折り返し地点、っていうことかぜよ……」

325: 2014/04/29(火) 02:29:26.34 ID:0h35YNwn0
807

--崩壊した失われた王国、中央広場--

どぉん! どごおぉん!!

踊子「くっ、そぉ!!」

ボロボロになった踊子がドリルキックを放つも、

びしっ!

腹黒?「無策で宙に飛び上がるなんて、少しよくない戦法ですよ?(単細胞レベルのバカだな!)」

腹黒の拘束魔法によって封じ込められてしまう。



ざっ

脳筋?「さぁ、リターンマッチといこうか。あの時は色々あって楽しめなかったからな。今度こそ、ちゃんとした戦いに……」

ひゅっ

勇者「ッ! くっ!」

キン! ガガキン!

勇者と脳筋が斬り合い、打ち合う。

326: 2014/04/29(火) 02:30:00.85 ID:0h35YNwn0
808

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ボボボッ、ビュッ!

勇者「!」

脳筋の攻撃がかすり、占師にもらった懐中時計がすっ飛んでいく。

カン、カラン!

勇者(つーっ……、魔力を大量に失った今の状態で脳筋の相手は……!)

キン!

勇者(きつ過ぎる!)

脳筋?「隙あり!」

ボボッ!

勇者「!? しまっ!!」

一瞬の油断。
避けられぬコースに脳筋の拳が飛んでくる。

327: 2014/04/29(火) 02:31:34.82 ID:0h35YNwn0
809

--崩壊した失われた王国、中央広場--

カブト「KAGEROU!!」

ドンォオン!

脳筋の拳が勇者に触れる直前でカブトのKAGEROUが発動し、時が止まった。
時の止まった世界、動くことが出来るのはカブトのみ。

カブト「勇者……お前だけは、氏なせない……!」

ババッ!

カブト「……」

カブトは勇者を抱えて移動させると、すぐに元の位置に戻ってくる。

カブト「脳筋め……この時間停止中に少しでもダメージを与えておく!」

ズギャッ!!

328: 2014/04/29(火) 02:33:34.53 ID:0h35YNwn0
810

--崩壊した失われた王国、中央広場--

カブト「!? がっ!?」

ぼたっ、ぼたっ

攻撃をしようとしたカブトの胸部を氏者の腕が貫いた。

トリガー「残念だったね。僕にこれはもう効かないんだよ」

カブト「!?」

静止した時の中をトリガーが平然と歩いている。

トリガー「さっきも披露したのに同じ手を……あ、そういえば君は見てなかったんだっけ? あれ」

ズルル

カブト「ぐ!、くそ……!」

!ンオォンド

時が再び動きだす。

329: 2014/04/29(火) 02:35:27.32 ID:0h35YNwn0
811

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ぼたたっ

勇者「え……ッ!?」

脳筋の拳の代わりに勇者の目の前にあったものは、血塗れになったカブトだった。

脳筋「うお!? 消えた!?」

カブト「ぐ………………」

ぼたぼたぼたっ

勇者「お兄ちゃん!?……時を止めた、のね」

カブト「お……おばあちゃんが……言っ……て」

ずる、どさ

勇者「」

カブトはそのまま倒れ、二度と動くことが無かった。

勇者「ッ!……」

トリガー「……さぁ、どんどん戦力が消えていくよ?」

330: 2014/04/29(火) 02:36:56.63 ID:0h35YNwn0
812

--崩壊した失われた王国、中央広場--

銀蜘蛛?「バキューン!」

ビスビスッ!

魔導長「う……な、の……」

どさ

魔導長が氏亡した。


桃鳥?「これでもう、再生できないですよね?」

ボボボボボ

元賢帝「ちくしょお……この私が、女の子に、やられるなんて」

どさ

元賢帝が氏亡した。


茶肌?「お前、中々、強い、戦士、だった」

シャリン

射王「……」

どさ

射王が氏亡した。


腹黒?「中々楽しい戦いでしたよ(け、長引かせやがって)」

ばちっ

護皇「…………無念、ぜよ……」

どさ

護皇が氏亡した。

331: 2014/04/29(火) 02:37:22.79 ID:0h35YNwn0
813

--崩壊した失われた王国、中央広場--

鬼姫が氏亡した。
竜子が氏亡した。
変化師が氏亡した。
護衛姉妹が氏亡した。
シャーマンが氏亡した。
魔剣使いが氏亡した。
侍が氏亡した。
符術師が氏亡した。
通信師が氏亡した。
賭博師が氏亡した。
医師が氏亡した。

332: 2014/04/29(火) 02:37:49.35 ID:0h35YNwn0
814

--崩壊した失われた王国、中央広場--

影月が氏亡した。
シンが氏亡した。
アマゾンが氏亡した。
姫が氏亡した。
参謀長が氏亡した。
軍師が氏亡した。
代表が氏亡した。
研究員が氏亡した。
包帯女が氏亡した。

333: 2014/04/29(火) 02:39:05.43 ID:0h35YNwn0
815

--失われた王国、ライブ会場--

メイドが氏亡した。
ちびメイドが氏亡した。
番犬が氏亡した。

ブラ「や、ヤミ、様……」

ヤミ「……」

ヤミはブラの首を掴んで持ち上げている。

やみ「ままをいじめるなぁああ!!」

やみはヤミの足をぽかぽかと殴り続けているのだが、効果はまったくない。

ブラ「やっぱり……私達の力だけじゃ、ごほっ! ヤミ様の心を震わすことは、できなかった……のですね」

ブラは一筋の涙を流し、氏亡した。

やみ「うわぁああん! ままー!!」

334: 2014/04/29(火) 02:42:05.95 ID:0h35YNwn0
816

--崩壊した失われた王国、中央広場--

シャシャシャシャシャ!!

ポニテ「! アッシュ君後ろ!!」

アッシュ「え……」

蝿男?「ぶーん!」

どしゃ!!!!

レン「!? も、もう嫌にゃあああああああああああ!! アッシュまで、アッシュまで氏んじゃう!!」

ぼたっ

西の王「……ごふ」

アッシュ「!? おま……西の、王……」

西の王「……」

西の王は蝿男からの攻撃を、盾となってアッシュを護ったのだった。

蝿男?「ひ、ひひ、無駄なことを……氏ぬまでの時間が少し増えただけじゃないか、ひひひ」

アッシュ「何をやってるんだ! アンタは!!」

西の王「黙れ、逃げろ……この戦いは、もやは勝てるものではない」

335: 2014/04/29(火) 02:43:11.14 ID:0h35YNwn0
817

--崩壊した失われた王国、中央広場--

アッシュ「ッ!……今更逃げたところで、一緒だ……万全とはいえないまでも、最後のチャンスだったんだ……仲間も氏んだ……ツインテも氏んだ……もう、希望は、無い」

西の王「……」

じゃりん

西の王はツインソードを抜く。

西の王「あきら、めるな……」

アッシュ「……?」

西の王「生きているうちは、諦めるな……諦めるのは、氏んでからにしろ!」

ドン!!

西の王はアッシュを突き飛ばし、武器を構えた。

蝿男?「ひ、ひひ。賞味期限の切れたおっさんが」

脳筋?「お前、たった一人で俺らと戦う気なのか?」

西の王「げふっ」

西の王は吐血する。

アッシュ「む、無茶だ……」

336: 2014/04/29(火) 02:44:52.33 ID:0h35YNwn0
818

--崩壊した失われた王国、中央広場--

銀蜘蛛?「ソウ、逃ゲ場ナンテ、モウコノチジョウノドコニモ存在シナイ」

桃鳥?「さっさと諦めちゃった方が絶対楽ですよー?」

茶肌?「……」

腹黒?「あがくというのは、可能性がある者だけが行うべき行為です」

魔王人形たちがアッシュ達を取り囲んでいる。

脳筋?「その勇気は賞賛に値する……」

ばきばき、ぶしゃっ!

西の王「……ッ!!……!」

……アッシュ達の目の前で西の王はひねり殺される。

アッシュ「……」

ポニテ「う……」

レン「……」

ハイ「ま、まだ可能性が……可能性……が」

ハイは落ちている懐中時計を無意識のうちに拾って握り締める。

ハイ「ま……だ……」

つー

ハイ達は、


諦めた。

337: 2014/04/29(火) 02:45:26.11 ID:0h35YNwn0
819

--崩壊した失われた王国、中央広場--

勇者「はっ、はっ、はっ……」

血まみれになり、もはや立つこともままならない勇者。

ウェイトレス「一人で随分がんばったじゃーん。勇者、あんたやっぱり強いよ」

トリガー「うん。最後にふさわしい戦いだった……よくぞここまで耐えたね」

勇者「はっ、はっ……」

トリガー「敬意を表して、最後は僕の手で引導を渡してあげるよ」

赤姫「ま、待て! トリガー!!」

どぎゃ!!!!

勇者「」

トリガー「対勇者因子。完全な勇者である君には、これ以上ないほど有効だ」

氏者の腕が勇者の腹部を貫通する。

338: 2014/04/29(火) 02:47:54.56 ID:0h35YNwn0
820

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ドスドスドスドス!!

続いて右手左手右足左足も貫かれ、持ち上げられてしまう勇者。

トリガー「あぁ……この時を……一体どれだけ待ち望んだか……」

トリガーは勇者の左手の指輪に触れた。

勇者「う……ぐ」

トリガー「ほら、君の魔王の骨もあるよ」

トリガーは盗賊の心臓を見せ付ける。

勇者「……!」

トリガー「さぁ……遂に君が本物の魔王になる番だ」

する        

かーーーん

トリガーは勇者がつけている指輪を外し、放り捨てた。

勇者「」

ぎち

勇者につなぎ止めていた指輪が外された。
それはすなわち……。

びき、びききっ!!

勇者の体から闇が染み出してくる。

じゅる、じゅるるる

トリガー「さぁ、さぁさぁさぁ!! 見せてくれ!!」

勇者「ふ」

しかしその時、勇者は笑った。
魔王へと変貌していくその瞬間に。

勇者「これを、待ってたわ」

345: 2014/05/01(木) 18:07:00.81 ID:10/LEKMC0
821

--崩壊した失われた王国、中央広場--

オオオオオオオオ

トリガー「これを待っていた……? 絶望し過ぎて氏を望んでいたということなのかな?」

勇者「いいえ……違うわ」

勇者の体を、黒い靄のようなものが覆っていく。

賢者「あ、あの時と一緒だ……あの戦争の時と」

踊子「勇者、さん」

グシャ!

賢者と踊子は銀蜘蛛に踏み潰されてしまう。

勇者「ッ!!……く!」

オオオオオオオオ

勇者の鎧が漆黒に染まる。

346: 2014/05/01(木) 18:08:07.59 ID:10/LEKMC0
822

--崩壊した失われた王国、中央広場--

トリガー「違うだって……? 君の魔力はもうからっぽのはずだろ? 体力も限界。仲間もいない……。君に残された手なんてもう何も無いはずだ」

勇者「」

ぎし、みちちっ!

勇者は氏者の腕を引きちぎろうとしている。

勇者「う、っく!」

ぼたぼたと傷口から血がたれていく。

トリガー「だから無駄なんだって。君の力じゃ」

ぶちっ!

トリガー「!? 何……?」

しゅううううううううううううううううう!!

勇者の体から魔力が吹き出した。

トリガー「な! ありえない……君の魔力は既に……はっ!」

一旦距離を置こうとするトリガー。

勇者「そうよ……魔力変換、レベル4!」

ぼっ!!

しかし勇者はそれを追う。自分の体を魔力に変えながら……。

347: 2014/05/01(木) 18:09:33.85 ID:10/LEKMC0
823

--崩壊した失われた王国、中央広場--

トリガー「回復手段はもう無いというのに……特攻とはね」

勇者「咄嗟に考えたにしてはいい策だと思わない? トリガー!」

ボッ!!

勇者は魔力で漆黒の大剣を作り上げる。

腹黒?「!! まずいですよ! 急いでトリガーを護らないと!」

ダッ!!

桃鳥?「え? え?」

勇者「はああああああああああああああ!!」

ぼっ、ぼぼっ!

勇者の体が少しずつ消滅していく。それは自身を推進力として使っているからに他ならない。

トリガー「……君に消えられたら困るんだけどね、おとなしくしていてくれないかな?」

オオオオオオオオオオオオオオオ!!

トリガーは氏者の腕で勇者を押さえつけようとするも、

ズババッ!!

勇者「――それに対勇者因子はあっても、勇者因子は無いんでしょ?」

ズバババッ!!

トリガー「!?」

ズバババババッ!!

勇者「今の私は、勇者じゃないんだから!」

348: 2014/05/01(木) 18:11:57.53 ID:10/LEKMC0
824

--崩壊した失われた王国、中央広場--

トリガー(……。勇者のままでは僕にダメージを与えられない。だからわざと君は……魔王化したのか……!)

フォン、ズバッ!!

トリガー(魔力も使い切ることで、僕を完全に油断させ……)

逃げるトリガー。
援護に向かっている魔王達。
だがそれよりも一手だけ、

トリガー「僕が一人で近づいてくるようにしたのか!」

勇者「終わりよ、トリガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

バンッ!!

勇者の大剣が倍以上に膨れ上がる。

勇者「奥義、魔王スラッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッシュウウウウウ!!」

フォッ

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

トリガー「ぐ!」

ブチブチブチブチブチィィィイ!!

防御に回した氏者の腕が全て断ち切られ、その黒の刃は



トリガー「」

トリガーに直撃する。

349: 2014/05/01(木) 18:13:48.06 ID:10/LEKMC0
825

--崩壊した失われた王国、中央広場--

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

銀蜘蛛?「クッソーーー!!」

腹黒?「ち、魔力暴発レベル4!」

ドォオン!!

勇者「ぎゃっ!!」

勇者の魔力化した左足が吹き飛んだ。

脳筋?「指パッチン、百連撃!!」

ボボボボボボボボボボボボボッ!!

強烈な風圧の弾丸が勇者の体に無数の穴を空ける。

勇者「あ、ぐッ!!」

トリガー「……」

ぶしゅ! ぶしゃしゃっ!!

勇者の体がボロボロと崩れていく。
だが、

勇者「こ……この手だけは、放さない!!」

血のようなものを吐き出しながら、勇者は大剣を更に強く握った。

350: 2014/05/01(木) 18:15:12.95 ID:10/LEKMC0
826

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

トリガー「……まいったね。魔王を統べる僕が……まさか魔王の力で……」

ブシュ! ぶしっ! ビキキッ!!

トリガーの体全体にひびが入っていく。

勇者「……ッ!!」

赤姫「――」

ウェイトレス「こ、こら! 何を諦めたようなこと言ってるのさトリガー! あと少し、私達がそこに行くまでふんばれ馬鹿!!」

集まってきた魔王達が勇者の剣を弾こうとするのだが、

トリガー「――見事な一手だったよ、勇者。でも次は、こうはいかないよ」

ズシャ

銀蜘蛛?「」

桃鳥?「」

茶肌?「」

腹黒?「」

蝿男?「」

ウェイトレス「」

脳筋?「」

トリガーが、

トリガー「……」

両断された。

どがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんん!!

351: 2014/05/01(木) 18:16:09.61 ID:10/LEKMC0
827

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ハイ「!」

アッシュ「……まさか」

ポニテ「ママ……勝った……の?」

レン「あの状態、から……一人で?」

ぱき、ぱきぱきぱき……

トリガーの体が砕けて消滅していく。

勇者「はぁっ、はっ、はっ、はっ……」

ぱきぱきぱき

脳筋?「うお……まじで消えてってる……」

ウェイトレス「う、嘘でしょー? 勝ち確だったのに!? ほんのちょっとの油断のせいで!?」

茶肌?「……土壇場での判断力、想像もつかない、思考の外からの一手……勇者はそれを、やってのけた」

桃鳥?「……はぁ~……キングが前線に出るといいことがありませんって、私思っちゃってます」

腹黒?「……ファック!」

352: 2014/05/01(木) 18:17:54.83 ID:10/LEKMC0
828

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ぱきぱき

銀蜘蛛?「……」

銀蜘蛛は振り返って勇者を見る。

銀蜘蛛?「オメデトウ……勇者チャン。君ノ勇気ノ勝利ミタイダ」

ガチンガチン

銀蜘蛛は両腕のアームで拍手でもするかのようにガチガチと鳴らしている。

勇者「はぁ、はぁ……」

脳筋?「確かに……あの状況に陥りながらも最後まで諦めなかった……素晴らしい精神力だ。あの頃の面影も無い」

ぱちぱちぱち……ぱちぱちぱちぱちぱち!

魔王達は勇者を賞賛する。

しゅぅううううう……

そして、主を失った魔王達もまた消滅し始めた。

353: 2014/05/01(木) 18:20:54.29 ID:10/LEKMC0
829

--崩壊した失われた王国、中央広場--

赤姫「トリガーがいなくなれば、ルートから生じたものはルートに戻る……」

しゅうううぅう

勇者「はぁ……はぁ」

脳筋「だが勇者よ、お前の魔王化はもう止まらない所まで来ている」

勇者「ハァ……ハa」

ぽたっ

勇者「」

ずりゅうるり!!

ハイ「! 勇者さんの頭部から角が……!」

以前と同じように、否、以前よりも大きな角が生えていた。

脳筋「全身を魔力に変換し、そのまま消滅するつもりだったのかもしれないが……魔王の再生能力ならば簡単に復元してしまうだろう……。

勇者「」

脳筋「これからお前は……お前が望む未来のために、大事な決断をしなくてはならない」

ゆshあ「hあ……はあ……」

しゅうぅう

脳筋「……それを見届けることが出来ないのは心残りだな……さらばだ、下水道の少女よ」

ぱきーーーーーん!

全ての魔王が、消滅した。

ポニテ「ま、ママ……」

否、

ゆう、しゃ「あ、アァアアアああアaaaaaaaaaaaaaア!!」

一人の魔王を除いて……。

354: 2014/05/01(木) 18:25:50.34 ID:10/LEKMC0
830

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ポニテ「ママ!!」

レン「ぽ、ポニテ! 危ないにゃ!!」

がしっ!

レンは飛び出したポニテの腕を掴む。

ポニテ「は、放して! ママが、ママが!!」

アッシュ「おいおい……いまだに勝ったのかどうなのか疑心暗鬼なんだが……これはどういった展開だ? まだ終わっちゃいないってことなのか?……」

yuusha「うああaaaaaあああああああああaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

ドクン、ドクン!

盗賊の心臓が勇者と融合を始めている。

ハイ「あ、赤姫様! どうにか出来ないんですか!? このままじゃ勇者さんが!」

赤姫「……」

ハイ「赤姫様!!」

赤姫「……完全なる魔王化を止める方法は……一つしかない」

ポニテ「何!? それは何!? 早く教えてっ!! ママが苦しんでるんだからッッ!!」

アッシュ「……ち」

見当がついたアッシュは眼を背けた。

ゆうしゃ「aaaaaaaaaaaaaaa!!」

赤姫「……まだあいつに人間らしさが残っている間に……『頃す』」

ポニテ「!?」

355: 2014/05/01(木) 18:28:23.92 ID:10/LEKMC0
831

--崩壊した失われた王国、中央広場--

ハイ「」

レン「そんにゃ……」

アッシュ「やっぱりそうか……」

ゆうsha「あ、ggggがあううううう!!」

苦しむ勇者は血を振りまきながら、少しずつ姿が変わっていく……。

ポニテ「う、そだ」

赤姫「……嘘じゃない」

ポニテ「うそだ」

すた

ポニテは地面に倒れこむ。

ポニテ「嘘だ……そんなの嘘だ……まだ……助かる手段がどこかに……きっと」

ハイ「ポニテ先輩……」

赤姫「……正直な所……もう完全に駄目だと思っていた……。その絶望の状況を、あいつは一人でなんとかして見せた」

赤姫は悲しげな表情で勇者を見ている。

赤姫「紛れも無い勇者だ……。出来ることなら私だって助けてやりたい……だが、それはもう、かなわない」

ポニテ「かなう!!」

ハイ「……赤姫様、あの指輪をもう一度つけても駄目なんですか……?」

赤姫「既にあれは……押さえこめるレベルを超えている」

ハイ「……」

356: 2014/05/01(木) 18:31:07.64 ID:10/LEKMC0
832

--崩壊した失われた王国、中央広場--

赤姫「――問答している場合じゃないぞ。このままでは再び魔王が出現する。そうなったらもうなすすべは無い……。全てを犠牲にして手に入れたせっかくのチャンスを、無駄にするのか……?」

赤姫は苦しんでいる勇者を見つめている。

赤姫「魔王のいない世界。作るなら、今だ」

ポニテ「うっ、うぅ……」



泣いているポニテのもとに、

ずる、ずる

足を引きずるようにして、

ゆうshあ「亜……あ……」

レン「ひっ!?」

勇者がやってくる。

yしゃ「ポニテ、なんde、なiteる、ノ?」

異形化の進んだ体で……

ずる、ずる

ポニテ「ま、ま……」

ゆsっ「泣き虫、ネ……そンナンじゃ、駄目yおポニテ。貴方たち歯、コレから世界を元にモドシテいく使命ガあるンだから」

ワニのような手で勇者はポニテの顔にそっと触れる。

ポニテ「ママ……」

ゆうしゃ「残ってる人口ハ、100人チョッとシカイナイ……これkらガアナタタチの、本当ノ戦い……」

357: 2014/05/01(木) 18:34:24.56 ID:10/LEKMC0
833

--崩壊した失われた王国、中央広場--

yuu者「イママデ以上に、大変な戦いが、あるカモシれ無い……でも、モウ私達は助ケテ、アゲラレナイん堕よ? これkラは、貴方たちダケで進まなくちゃイケナイの」

ポニテ「すん、すん……」

勇者「最後二、アナタタチの成長した姿を見せて、頂戴……私ヲ安心サセテ頂戴……」

アッシュ「ッ」

レン「ポニテのママさん……」

ハイ「う、うあぁあっ……」

勇者「――さぁ、ミンナ、武器をもって……これが……君達に最後にしてあゲラれるこ戸だ。君達を……勇者にしテアげる」

そう言って、異形化の進んだ顔で勇者は笑う。

ポニテ「う、うぅ……!!」

ポニテはボロボロと涙を零す。

チャキ……

ポニテ「ママ……ママ……」

アッシュ「……」

チャキ

レン「……」

チャキ

ハイ「……ッ」

チャキ

勇者「赤姫、後はお願いね」

赤姫「……あぁ」



ポニテ「う……う、うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

358: 2014/05/01(木) 18:34:52.90 ID:10/LEKMC0
834

-- --



















359: 2014/05/01(木) 18:35:24.11 ID:10/LEKMC0
835

--新王国--







そして八年後……。







360: 2014/05/01(木) 18:36:00.86 ID:10/LEKMC0
836

--新王国--

ばたん

新大臣「アッシュ国王! 大変であります!」

アッシュ「……どうした騒がしい」

机で執務をこなしているアッシュは新大臣を睨む。

新大臣「それが南方のモンスターの様子がおかしいとのことです。明らかにここを目指して進軍しているとか……」

アッシュ「南方か……丁度あいつらもそっちにいたな。ならばポニテ討伐隊長に向かわせろ。奴なら一人でどうにでもなる」

新大臣「はっ! 直ぐに伝書鳥を放ちます!」

ばたん

レン「やれやれ、父親の真似事は大変そうにゃね」

アッシュ「ふん……慣れないことだがな。それでも俺達がやっていかなくちゃならないんだ……」

361: 2014/05/01(木) 18:37:32.85 ID:10/LEKMC0
837

--南方砂漠--

ぴいーぴー

ポニテ「ん?」

ばさばさっ

ハイ「あ、軍の伝書鳥ですね」

ポニテ「なんだろ……また追加の命令かな?」

ポニテは伝書鳥から手紙を受け取り餌を与えた。

ばさっばさっばさっ

ハイ「なんて来たんですかポニテ先輩?」

がさ

ポニテ「どれどれ? むー……なんか南方のモンスター達の様子が変なんだってさ。それを討伐してこいってー」

ハイ「なるほど……アッシュ先輩はほんと人使いが荒いですねー。じゃあ、さっと行ってぱっと終わらせちゃいましょうか。よいしょっ、と」

ハイは荷物をユニコーンに乗せる。

ポニテ「ううん、規模的に私一人でなんとかなりそうだよ。だから私一人で行く。ハイちゃんとはここで一旦別行動ね」

ハイ「え、大丈夫ですか?……まぁ、ポニテ先輩が負ける所なんて想像できないですけど」

ポニテ「そーそー、だーいじょうぶだってー! それよりハイちゃんに命令ね、合流するまでに西方方面にある魔王の骨の欠片の情報、ちゃんと仕入れておいてね」

ハイ「うわっ……そういう下調べが一番疲れるんですよ……?」

ポニテ「へへへ、知ってる。というわけでじゃーね! ばいばーい!」

ぼぼぼっ

ポニテは自身を火の魔力に変えて飛んでいってしまう。

ハイ「うぅ……上司はいつの時代もいいものではないです……」

362: 2014/05/01(木) 18:38:43.11 ID:10/LEKMC0
838

--南方砂漠--

ざっ、ざっ

ハイ「はぁ……どっかで冷たい水が飲みたいですねぇ……このままじゃ干からびちゃいます……ねぇ、ユニちゃん?」

ユニコーン「ひひーん」

ぱからっぱからっ

ハイ「……」

じゃら

ハイは懐中時計を取り出して、握りしめた。

ハイ「あの時砕け散った魔王の骨の回収……あれから何年も探しているけど成果は中々得られませんね……」

ユニコーン「ひひん」

ぱからっぱからっ

ハイ「魔王が現れる可能性は一つだって残しちゃいけない……それがあの戦いで生き残った私達の責任……」

ぱからっぱからっ……ぴくっ

ユニコーン「! ひひん!」

ハイ「え? 嫌なが感じがする?……まさか!」

363: 2014/05/01(木) 18:40:00.10 ID:10/LEKMC0
839

--南方砂漠--

馬「ぶるるるっ!」

がらがらがらがら……

壊された馬車の脇に二人の人間の姿が。

商人「う、ぐ……ま、前にもこんなことが……」

奴隷王「ほほう……これがあの伝説の秘宝か……」

奴隷王は赤黒い何かの欠片を太陽にすかしてみている。

奴隷王「力を感じる……くくっ! これがあれば、俺はもっとつよくなれる!!」

それを遠くから見ているハイ。

ハイ「また強盗ですか……。すっかりこの辺りの治安も悪くなりました……なんてぼやいても仕方がありませんね。さぁ、いきますよ、ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!!」

ぱからっ、ぱからっ、ぱからっ!!

ハイ「勇者さん達の意思を受け継いだということを、証明するために!!」










  勇者と魔王がアイを募集した
   第三部、リベリオン
       完

364: 2014/05/01(木) 18:40:53.52 ID:10/LEKMC0


--大宮駅--

『三番線に電車が到着します。危険ですので、白線の内側にお下がり下さい』

ハイ「」

ハイは目をぱちくりとさせている。

ぷあぁーーーーん

きききぃーーーー

ハイ(あ……今ぼーっとしてた……あれ? 今……何考えてたんだっけ?)

ぷしゅー

『大宮ー、大宮ー』

ハイ(何か懐かしいことだったような気がするんだけど……って、今はそんなこと考えてちゃ駄目ですね。今日の単語テストの勉強しなくちゃ)

ハイは電車に乗り込むと単語帳を取り出した。

ぱら

ハイ(recruitmentは……募集)

『ドアが閉まります』

ぷしゅー







  勇者と魔王がアイを募集した
     
     最終部、『』

365: 2014/05/01(木) 18:43:10.24 ID:10/LEKMC0
とういわけで(三部)最後の投下でした。

これにて最後の最後の話に突入します。どうか最後までお付き合いしてもらえたらと思います……。

それでは皆さん良いゴールデンウィークを。
(来週は来れない可能性が微レ存……)

366: 2014/05/01(木) 18:44:51.91 ID:l+Vlob5To

引用: 勇者と魔王がアイを募集したFINAL