486: 2015/02/10(火) 02:59:14.65 ID:FfqgIQul0

487: 2015/02/10(火) 03:00:23.20 ID:FfqgIQul0
561

--???--

カツン、カツン、カツン

ビィ「たっだーいまぁー。はーぁ。疲れたわー……」

桃鳥「あらビィさん、おかえりなさいですって私思っちゃいます」

ぱたぱたと飛びながらビィを出迎える桃鳥。

ビィ「ただいまですー。桃鳥さん相変わらずメンドクサイ語尾ですねー」

ガション、ガション

銀蜘蛛「アリャ? ビィチャンジャン。オカエリーー。ドッカイッテタンデショ? ナンカオミヤゲナイノー?」

ビィ「本当なら首の一つや二つ持って帰る予定だったんですけどねぇー、中々うまくいかないものなのですね」

ぺんぺん、と銀蜘蛛の装甲を叩く。

トリガー「お帰り、ビィちゃん」

ビィ「……ただいま、トリガーさん」

488: 2015/02/10(火) 03:03:49.89 ID:FfqgIQul0
562

--空--

びゅおおぉおおおお!!

ツインテ「思ったり寒くないといいますか、あまり風が無いんですね、こんなに早く飛んでいるのに」

ハイ「多分、軽い魔力障壁が張ってあるんだと思います。今の私じゃどんなものなのか探れないのでよくわかりませんが」

ツインテ「あっ……ボクったら考えなしでしたね。もっとしっかりしないといけないのに」

そう言って恥ずかしそうに笑うツインテ。ただそれだけで周囲にいる人間の精神障壁を破壊するのだ。

ハイ(ほんと可愛い人……これはアッシュ先輩じゃなくてもころっとやられちゃいますね……かなわないなぁ)

フォーテ「( ˘ω˘)スヤァ」

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」

ヒュオォオオ

十代目「ん……ピューイ、もう少し左にそれろ、この先乱気流がある」

ピューイ「ゴシャッセー」

ツインテ「……さっきから気になってたんですけど、十代目さんはどうしてあのようなことが事前にわかるのでしょうか」

ハイ「あぁ、十代目さんは猫亜人三大希少種の一つ、『蒼天』だと聞きました。そして蒼天は自然と会話することが出来るのだとか。だからきっと今回もその能力で風に聞いたんじゃないでしょうか」

489: 2015/02/10(火) 03:07:39.94 ID:FfqgIQul0
563

--空--

ツインテ「へー、なるほど。そんな素敵な力があるなんて、やっぱり凄い方なんですね。でもハイさんも凄いです。博識なんですね」

ハイ「いえ、私は凄く無いですよ。私はやり直してるから知っているのであって博識なわけでは……ん?」

ツインテ「? どうかしました?」

ハイ「いえ、何でもありません。ただ……」


   十代目「いや……気にしなくていい。人助けは勇者の勤め。それよりもここで何があったのか詳しく教えてくれないか? 私達は最近まで前線で戦っていてこっちの情報に疎いんだ」


ハイ「……蒼天の能力で自然に聞けば、そんな情報いつでも手に入れられたはず……勇者ともあろうお人が情報収集を怠ったなんてことは無いでしょうし……」

ハイは少し不安げに小声で呟いて、十代目の背中を見つめた。

十代目「――君の口から直接聞きたくてね」

ハイ「!? あ、あれ、聞こえて……ました……?」

十代目「私は耳がよくてね」

そう言って十代目は振り返った。流し目がイケメン。

ハイ「う……なんかすいません……でも直接、とは?」

十代目「君がどのように喋るのか。どこまで本気で喋るのか。何か後ろめたいことがあれば嘘を交えるはず……そんな感じで君を見定めさせてもらった。何せ未来から来た少女というのは、私も初めてだったものでね」

490: 2015/02/10(火) 03:11:21.65 ID:FfqgIQul0
564

--空--

ビュオオオオオオ

十代目「結果的に私は君を信じることにした。君の真っ直ぐな瞳や言葉に、嘘や偽りは混ざっていなかった」

ハイ「話すだけで、わかっちゃうものなんですか?」

十代目「あぁ。私の耳は嘘に敏感なんだ」

ぴこぴこ

ハイ「はぁ……でも、信じてもらえてありがたいです。これからのことを考えれば、仲間は多いほうがいいですから」

ツインテ「ふふ、そうですね。出来ることなら全ての方と仲間になりたいです。戦いあう関係は好きじゃないですから」

ハイ「……ですね」

十代目「ん、見えてきたぞ」

十代目は地平線に浮かぶ建物を指差す。

十代目「亜人保護団体本部だ」

491: 2015/02/10(火) 03:13:39.11 ID:FfqgIQul0
565

--亜人保護団体本部--

がたごとがたごと

馬車で移動している代表達。

代表「やれやれ、僕が勝手に出てきちゃったことに運営がそろそろ気づく頃かな?」

護衛姉「です」

護衛妹「ます」

熊亜人「ぐま」

代表「はー。だよねぇ。怒ってないといいんだけどなぁみんな。大体、僕がいるからって競売がうまくいくってわけじゃないんだからさ、毎回出席を強制してくるのはどうかと思うよねぇ?」

熊亜人「……貴方には力があるのぐま。貴方の顔がそこにあるだけで、金持ち達は安心するのですぐまよ」

代表「んー……信用問題か」

……ばさっ

代表「ん?」

代表達は空を見上げる。

ピューイ「ピューーーーイ!!」

熊亜人「ロック鳥……ぐま?」

492: 2015/02/10(火) 03:15:58.77 ID:FfqgIQul0
566

--亜人保護団体本部--

がたごと……ざり

代表「ありゃりゃ。もしかして……僕が感じた悪寒はあれが原因かな?」

馬車から降りながら代表は空のロック鳥を凝視する。

ザッ

護衛姉妹が抜刀の構えを取り代表を下がらせる。

護衛姉「代表様は早く塀の中へ」

護衛妹「殿は私達にお任せを」

代表「そうだね、僕が戦場にいても役立たずのへっぽこだ。急がせてもらうよ」

熊亜人「ぐま!」

熊亜人が代表の真後ろにぴたりとつき、ガードしながら城門へと向かっていく。

護衛姉妹「「……」」

護衛姉妹もピューイから視線を外さずに後退していく。

ハイ「! あ! いました! あの馬車から降りた人! あの人です!」

493: 2015/02/10(火) 03:17:52.67 ID:FfqgIQul0
567

--亜人保護団体本部--

ダダダダダダダダダ!!

バサッ! バサッ!!

代表(中々攻撃してこないね? となると僕の命が狙いってわけじゃなさそうだね。生け捕り? それとも他の何かをご所望?)

ハイ「待ってくださーーーーーーい! 代表くーーーーーーーーーーーん!!」

護衛姉「代表」

護衛妹「君?」

大声で代表を呼ぶハイ。それにつられて熊亜人の脇の横から顔をだして確認する。

代表「……やけになれなれしく呼んでくれるね……あれは僕のクラスメイトか何かかな?」

ハイ「お話があるんですーーーー! 私達は怪しいものじゃありませーーーん!!」

代表「……いや知らない顔だ。怪しさMAXじゃないか……」

門番A「代表様、お早く!!」

がごぉん……

城門が開きその中に入っていく代表達。

ハイ「あぁ……行っちゃいました」

ツインテ「代表君、って、お知り合いなんですか?」

ハイ「はい。未来でちょっと」

494: 2015/02/10(火) 03:20:08.35 ID:FfqgIQul0
568

--亜人保護団体本部--

バサッ、バサッ……すたっ

ピューイはハイ達を地上に下ろすと十代目に顔をこすり付けた。

ピューイ「ごろろろろ」

十代目「助かった、ありがとう。ここはもうすぐ戦場になる。お前は早く離れるんだ」

ピューイ「ピューイ」

バサッ、バサッ!

ツインテ「あ、ありがとうございました! 乗り心地とてもよかったです!」

ピューイに手を振るツインテ。

ユニコーン「ひひーん」

尻尾を振るユニコーン。

ハイ「え? 今さりげなく戦場って? え?」

フォーテ「むにゃむにゃ。お姉ちゃんおしOこー」

ツインテ「え?……どうしよう、こんな所にトイレなんて……あの塀の中ならあるだろうけど……」

がごぉん

ツインテは閉められていく門を見て暫く考える。

ツインテ「……うん、貸してもらえるよう、ボク頼んでみます」

495: 2015/02/10(火) 03:22:36.77 ID:FfqgIQul0
569

--亜人保護団体本部--

ざっ、ざっ

十代目「おい、前に出るな、危ないぞ」

ツインテ「え?」

十代目「奴らはもう戦闘態勢になっている」

じゃかかっ

門番達は城門の上から銃を構えていた。

ハイ「! ちょっ! 私達戦いに来たんじゃないんです! ただお話をしに」

門番A「嘘をつけ!! 巨大なロック鳥に乗って代表様を付けねらっていたくせに!! 一体何が望みだ!?」

ハイ「いや、だからただお話をするというのが望みであって……」

門番B「しらを切りやがって……!!」

じゃかかっ!!

門番達はハイ達に狙いをつけ始める。

ハイ「ど、どうしよう……あの人たち全然話になりません」

十代目「この状況ではな。彼らは敵が多いし過敏になってるんだろう」

ツインテ「あのすいません、ボクの弟がトイレを我慢してまして、良ければ貸していただきたいのですが」

ハイ「ツインテ先輩空気読んで!!」

496: 2015/02/10(火) 03:24:08.89 ID:FfqgIQul0
570

--亜人保護団体本部--

門番A「黙れ!! 去れ!! 去らないと言うのなら……」

バンッ! チュゥン!

ツインテ「いたっ!」

門番が放った銃弾はツインテの右腕をかすめた。

ぽたっ

ツインテの右腕から血が滴り落ちる。

門番A「次は頭に当てるぞ!! これは脅しではない!!」

十代目「……やはり話し合いでは解決しないか」

十代目が剣を抜こうと柄に手を伸ばしたその時、

フォーテ「ね ぇ 、 な に や っ て る の ? ? ? ?」

門番A「!!??」

目を見開いたフォーテが、真横から門番の顔を覗き込んでいた。

497: 2015/02/10(火) 03:26:18.52 ID:FfqgIQul0
571

--亜人保護団体本部--

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……

門番B「な、なんだこいつ! 一体いつの間に!!」

フォーテ「今お姉ちゃんを傷つけたよね? よね? よねぇえ!? お姉ちゃんを、傷つける者はぁ……」

ズズズズズズズズズ!!

フォーテを中心にして闇が急速に広がっていく。

フォーテ「――皆頃しなんだよっ」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

門番A「ひ、ひいいいいいいいい!!」

門番B「あひゃあわああああああ!!」

ガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

堅牢な城壁が暴れ狂う氏者の腕によっていとも容易く破壊されていく。

ドガァアアンン!!

ツインテ「! フォーテちゃん駄目っ!!」

フォーテ「許さない、絶対に許さないからっ!!!!」

おぞましい魔力を纏ったフォーテは我を忘れて攻撃し続ける。

ハイ「っていうか門開いちゃったし」

498: 2015/02/10(火) 03:28:30.72 ID:FfqgIQul0
572

--亜人保護団体本部、主塔--

ドガァアン、ドガガガアアアン!!

賢帝「んっもぉう!! 一体これは何事よぉ! 最っ悪な目覚めぇ……」

ギィ

寝巻き姿の賢帝が自室のドアを開けて教団員達にどなりつける。

教団員「け、賢帝様! それが、何者かがここに攻め込んできたとのことでして!」

賢帝「なぁんですってぇ……? そんなバカなことをする奴はどこのどいつよ。ありえないわっ!」

どがぁん!!

賢帝は壁に穴をあけて、破壊音のする方を凝視した。

賢帝「んー……?」


フォーテ「呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる」


ぶつぶつと呟きながら大量の氏者の腕を繰り出して暴れまわっているフォーテの姿が見えた。

賢帝「……あの子私より強くねー?」

499: 2015/02/10(火) 03:29:45.87 ID:FfqgIQul0
573

--亜人保護団体本部--

ドガァアアン!! ドガガァアアン!!

フォーテ「あ は は は は は は は は は!!」

ツインテ「ふぉ、フォーテちゃん!! ボクの言うことを聞いてっ!!」

ハイ「駄目です……こうなったフォーテさんを止められる人なんてこの世にいるんでしょうか……」

十代目「……」

ダンッ!!

十代目は跳躍し、フォーテに接近する。

しゅばばっ!!

フォーテに接近するもの全てが敵とみなされて、氏者の腕が十代目を襲うのだが、

ずばばっ!!

十代目「っ」

それを全て空中で切り伏せる。

500: 2015/02/10(火) 03:32:49.95 ID:FfqgIQul0
574

--亜人保護団体本部--

十代目「やれやれ、手間のかかるお子様だな」

ぼう

十代目の左手に青い炎が灯る。

十代目「火属性浄化魔法、レベル4」

ぼぉおおおおおぉぉおう!!

ハイ「えっ!?」

ごおおおおおおおお!!

炎に包まれるフォーテ。

フォーテ「……あれ?」

それはフォーテの身を焦がしたかと思いきや、全くの無傷。

ツインテ「あれは浄化の炎……バッドステータスを無効化する火属性の魔法……凄い、モンスターの使役に、剣術。それに治療行為まで……色んなことが出来るんですね十代目さん……!」

ハイ「激昂や混乱状態を治したってことですか……いやでもあのフォーテさんの精神を立て直すっていうのは簡単じゃないですよね。そもそも私達じゃ近づくことすら……あ、でもユーさんなら近づけますかね?」

後ろを振り返ったハイ。しかしそこには誰もいなかった。

ハイ「……あれ? そういえば……いつから見てなかったっけ……」



--空--

ばっさ、ばっさ

ピューイ「ピューイ」

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」

501: 2015/02/10(火) 03:36:30.58 ID:FfqgIQul0
575

--亜人保護団体本部--

しゅぅううう……

ツインテ「こらっ! むやみやたらに暴れちゃだめですよフォーテちゃん! この程度の傷なんて、どうってことないんですから!」

フォーテ「うぅ……そんなこといったってぇ……フォーテ悪くないもん……悪いのはお姉ちゃんの言うことを無視して攻撃してきたあいつらだもんっ!!」

ぐしゅぐしゅと鼻をすすりながらフォーテは頬を膨らませる。

ハイ「フォーテさんを怒っちゃ可愛そうですよツインテ先輩。今回はフォーテさん悪くないです。話を聞いてくれないあの人たちがいけないんです」

ツインテ「は、ハイさんまでそんなことを……」

フォーテ「わぁい! フォーテ、ツインテお姉ちゃんの次くらいにハイお姉ちゃん好きっ!」

だきっ!

フォーテはハイに抱きついて顔をうずめた。

ハイ「!?……凄い……あのフォーテさんに私、なつかれてる」

ハイはおっかなびっくりでフォーテの頭をなでてみる。

フォーテ「そういえば気になってたけど、なんでフォーテ『さん』なの? フォーテちゃんて呼んでいーよ、ハイお姉ちゃんっ」

ハイ「あ……なんかラスボス級相手に恐れ多くて……いえ、では改めて……フォーテちゃん?」

フォーテ「えへへ。なぁーに?」

ハイ「なにこれ可愛い」

フォーテ「ハイお姉ちゃんなんか安心する匂いがする。お婆ちゃん家みたいな匂い」

ハイ「ッッ!?」

502: 2015/02/10(火) 03:42:13.16 ID:FfqgIQul0
576

--亜人保護団体本部--

ガシャァアン!

ハイ「!」

髭長司祭「ふんっ、やってくれるじゃねぇのよお前さん方」

細目司祭「我らに爪を立てたこと、後悔させてあげましょうか」

金歯司祭「ふははは! 久しぶりにこの槍に血を吸わせてやれるわ」

右大司教「ふしゅるるる」

左大司教「狼藉者どもめぇ……」

ザンッ!!

五人の大男が破壊された瓦礫を跳ね除けて現れた。

ハイ「!! あの人たち……読んだことがある……確か侍さん達の連携に負けたけど結構強い人たちだ」

ツインテ「う……どうにか戦わずに済む方法は無いのでしょうか……私達はお話とトイレをお借りしたいだけなのに」

フォーテ「お姉ちゃんっ! 僕がぶっとばしてきちゃおっか!?」

両手をばんじゃいしながらぴょんぴょん跳ねているフォーテ。なんか太ももとか足元の地面が濡れてる気がする。

十代目「話が出来そうな相手じゃあないな。ちょっと片付けてくる」

ざっ、ざっ、ざっ

十代目は一人で歩いていった。

ハイ「なんだろうこの人たちの緊張感の無さ」

503: 2015/02/10(火) 03:46:19.85 ID:FfqgIQul0
577

--亜人保護団体本部--

ザッ、ザッ、ザッ……

十代目「……」

髭長司祭「貴様……一人でのこのこと向かってくるとは、見かけによらず度胸あるのぉ」

細目司祭「大方謝罪でもしに来たのでしょう。ですがもう遅い。この蛮行の責任を取るには貴方達の氏でしか償えませんよっ!!」

十代目「俺がお前達に望むのは」

右大司教「ふしゅる?」

十代目「ただ歯を食いしばっててくれればいい」

左大司教「え?」

ドゴッ!!

髭長司祭「!?」

ガッ!!

細目司祭「ぽっ!?」

ズガッ!!

金歯司祭「ばっ!?」

ベキッ!!

右大司教「ふしっ!!」

ズンッ!!

左大司教「お、おごごっ……ごふっ……」

どさどさどささっ!

十代目「……舌は噛まずにすんだみたいだな」

504: 2015/02/10(火) 03:47:49.44 ID:FfqgIQul0
578

--亜人保護団体本部--

教団兵「お、おい……大司教様達が、ただのグーパンでのされたぞ!?」

団体兵「し、信じられねぇ……夢だろ、でなきゃ嘘だ……」

ざわざわ……

動揺が兵たちに広がっていく。

上位教団兵「……ひ、怯むな!! 相手はたった四人だぞ!? 数で押さえ込めばどうにかなる!! で、であえー! であえーーーーー!!」

わ……わーーーー!!

恐怖を叫びでごまかして、一斉に走り出す兵たち。

わーーーー!!

ハイ「!! ちょっ! いっぱい来ちゃったんですけど!!」

慌ててレベルアップしようとするハイ。

ツインテ「うぅ……やっぱり戦わなくちゃいけないんですね……」

悲しそうな顔をしているツインテと、

フォーテ「うんしょっ! じゃあ朝の体操がてら、ちょこーっと遊んじゃうかなーっ!」

にこにこしているフォーテ。

505: 2015/02/10(火) 03:49:40.70 ID:FfqgIQul0
579

--亜人保護団体本部--

どがぁあああぁああああんんん!!

兵達「「「うわあああああああああああああああ!!」」」

十代目「……」

団体兵「あ、あいつ剣の一振りで数十人吹っ飛ばしたぞ!? 化物だ!!」

教団兵「あれ……よくみたらあいつみたことあるような……どこで見たっけ……!? って、勇者じゃねぇか!?」



どがあああああああああああああん!!

兵達「「「うわあああああああああああああああ!!」」」

フォーテ「きゃはっ! いっきとーせーーーんっ、無敵可愛いフォーテちゃんっ!!」

教団兵「悪魔かこの口リ!?」

団体兵「可愛いけど強すぎるぞこの口リ!!」



ぽわぁあああぁああああぁあ

ツインテ「傷ついた人はボクが治しますからボクの傍に来てくださいね」

兵達「「「はぁああああああああああんん」」」

団体兵「天使だ……いや女神様だぁ……!!」

教団兵「俺……あの宗教やめてこのお方についてくことにする……オカマとかまじ誰得だし」



ハイ「……今思ったけどこのパーティ強過ぎる」

506: 2015/02/10(火) 03:55:28.90 ID:FfqgIQul0
580

--亜人保護団体本部--

ダンッ!!

賢帝「だぁれがオカマだってぇ……?」

教団兵「ひっ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

瓦礫の山の上に立っている者は、賢帝――。

ハイ「!! 五柱の賢帝……!!」

賢帝「貴方達ぃ……随分好き勝手やってくれるじゃなぁい? 悪い子ねぇん……」

十代目「……まさか本当に五柱まで関わっていたとはな」

フォーテ「ねーねー。だれあれー? ゆーめーな人ー?」

ツインテ「凄い、腕が八本もあります! お料理とかするのに便利そうです!」

ハイ(誰か私と同じ価値観持ちはいないんですかっ)

賢帝「はぁ、まったく……私のお城をこんなにしちゃって……あんたたちの目的がなんなのか知らないけどぉ……これはやりすぎじゃない?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

賢帝は全ての腕を天に向けるポーズを取った。

ハイ「く!……また五柱レベルと戦うことになっちゃうなんて……今日はついてないです!」

賢帝は一度目を閉じ、そして勢いよく開いた。

カッ!!



賢帝「――降参するわ。命だけは助けてちょうだい」

教団兵「……え」

ハイ「……冷静に考えたらそうなりますよね」

ぴょんっ

フォーテ「ねーねー、気持ち悪いおじちゃん! おじちゃん有名なの? 強い? フォーテとちょっと遊んでみる?」

オオオオオオオオオオ

氏者の腕が闇からはみ出して賢帝の頬をなでる。

賢帝「ちょ、ちょっ! 私は降参するっていってるのよ! やめてちょうだい! その禍々しいの近づけないでちょうだい!!」

フォーテ「じゃあ僕からでいい?」

賢帝「聞いてちょうだい!?」



--巣--

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」




516: 2015/02/17(火) 02:01:45.64 ID:f6EaV68p0
581

--亜人保護団体本部--

ぺちぺち

賢帝「だからぁー。ちょっと聞いてるの代表ちゃんー。聞こえてるんでしょー? 返事しなさいよー。いい? もう何もかも無意味だって言ってるのよぉ。だからあなたたちも降参して出てきて頂戴ー」

主塔に向かって訴える賢帝。その頬をぺちぺちと氏者の手が触れる。

フォーテ「ぜんぜんでてこないねーっ。もしかしておじちゃん、説得できるとか言ってたの嘘だったのっ? 嘘……だったの……?」

スゥ……

フォーテの瞳から光が消えていく。

賢帝「!? ちょまっ……こるぁああ代表でてこいやあぁあああ!! もう1秒間で772回も氏にたくないんじゃぼけぇえええええええ!!」

ハイ「何したの」



--亜人保護団体本部、主塔--

えぇぇぇぇぇ……

代表「まずいことになったね……なんだかわからないうちにほぼ壊滅状態じゃないか」

窓からその様子を見ている代表。

熊亜人「どうしますぐま?」

代表「……仕方ないね。計画を前倒しにする。残った人員を飛行船に集めておくれ」

517: 2015/02/17(火) 02:07:57.63 ID:f6EaV68p0
582

--亜人保護団体本部--

ギィ……ザッ!!

護衛姉「……」

護衛妹「……」

賢帝「やぁっと出てきたわね、んもぉ……でもあなたたち、降参するような顔つきじゃないわね……」

護衛姉「当たり前だ。私達は代表様の刀……」

チャキッ

護衛妹「我が身可愛さで降参するような思考は持っていない……」

しゅぴぃん!!

護衛姉妹「「無法者共め……私達が氏ぬまで相手をしてやる。かかってくるがいい」」

護衛姉妹が抜刀して刀を交差する。

護衛姉妹「「氏など、恐れはしない!」」

フォーテ「へー」

フォーテは新しいおもちゃを見つけたように笑った。

518: 2015/02/17(火) 02:10:53.55 ID:f6EaV68p0
583

--亜人保護団体本部--

護衛姉「うわぁあん! うわぁあん!」

フォーテ「ね、ね! どっちの腕もいでいい?? どっちからがいい?? こっちのお姉ちゃんに決めさせてあげるっ!!」

護衛妹「やめてよぉー! こんなひどいのやめたげてよぉー!!」

氏者の腕に束縛されてる護衛姉の前で絶望の表情の護衛妹。

ツインテ「こらフォーテちゃん! 命を粗末にしちゃいけないって言ったでしょっ!?」

フォーテ「!? ち、違うよお姉ちゃん僕命を粗末になんて、してないよ……こ、頃したりしないもん? ただこの手足をちぎって花占いしようとしてただけで……ほらツインテお姉ちゃんも占い好きでしょっ!? 一緒にやろ!?」

ツインテ「ボク花占いなんてしたことないです!」

賢帝「……ねぇ、なんなのあの子。どうやったらあんな化物産まれるのよ……」

ハイ「あはは……」

519: 2015/02/17(火) 02:13:06.65 ID:f6EaV68p0
584

--亜人保護団体本部--

護衛姉「ぐすっ、ひくっ……」

護衛妹「よかった……よかったよお姉ちゃあぁあん」

開放されて泣きながら抱き合う二人。

賢帝「氏など、恐れはしない!(キリッ)。って言ってたくせに、だらしないわねぇ」

護衛姉「だってだってぇ!!」

護衛妹「びえええーーー!!」

賢帝「あぁはいはいわかったわかったよ。……正直規格外過ぎて精神の安定から崩壊しちゃうのよね。わかるわよ、私もそうだったし」

泣きつかれた賢帝はうっとおしそうに払う。

護衛姉(……でも)

護衛妹(代表様の居場所だけは絶対に隠し通す……!)

フォーテ「で、代表って人どこにいるの?」

護衛姉「は、はい!! 主塔の秘密の地下通路から隠し倉庫に向かってます!」

護衛妹「わかりにくいだろうから私達が案内します! だから血管に溶けた鉄を流し込むのだけはやめてください!!」

ツインテ「……そんなことしてたの?」

フォーテ「げ、幻覚見せただけだよっ!? 実際は……ちょ、チョコだったからっ!」

520: 2015/02/17(火) 02:14:55.64 ID:f6EaV68p0
585

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

コツコツコツコツコツ

ズゥン……! ぱらぱらっ

代表「……熊亜人君」

熊亜人「はいぐま」

代表「あの二人で止められると思うかい?」

熊亜人「……無理だと、思うぐま」

代表「……だよねぇ。僕もそう思ってたんだよね。どうしようか?」

ズゥン!!

熊亜人「代表様」

代表「ん?」

熊亜人「先に行ってほしいぐま」

コツ……

代表「……君がいないと計画が全部おじゃんなのはわかってるよね?」

熊亜人「わかってるぐま。かたをつけたらすぐに追いかけますぐま」

代表「……ここで使うんだね」

熊亜人「……」

代表「……わかった、よろしく頼んだよ」

521: 2015/02/17(火) 02:16:54.15 ID:f6EaV68p0
586

--亜人保護団体本部、秘密の地下通路--

コツコツコツコツコツ

……ゴゥン、ゴゥン

ツインテ「? 何か音がしますね? 何の音なんでしょう」

護衛姉(良かった、出発されたんですね代表様)

護衛妹(でも今からでもこの人たちなら追いつける……なら)

十代目「やられたな。時間稼ぎか」

護衛姉妹「「!?」」

ハイ「え?」

十代目「スムーズに道を選んでいるように見せていたが、かなりジグザグに移動していたからな」

ハイ「でも、ほとんど一本道でしたよね?」

十代目「見える道はな。正解の道はどこかに隠し扉でもあったんだろう」

護衛姉妹「「!!」」

フォーテ「それ、本当……?」

護衛姉妹「「ごめんなさい!!!!!!!!」」

522: 2015/02/17(火) 02:18:23.07 ID:f6EaV68p0
587

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

ギィ……

ハイ「あ」

熊亜人「待っていたぐまよ」

どささっ

護衛姉「す、すいません……」

護衛妹「この程度しか時間を稼げず……」

隠し倉庫に着くなり倒れこむ護衛姉妹。

熊亜人「いや、よくやったぐま」

賢帝(本当よね……。心を折られたはずなのに、それでもちゃんと時間稼ぎをし続けたわこの子達)

熊亜人「後は……」

スッ

熊亜人は王冠の形をした魔王の骨を取り出した。

護衛姉「……」

護衛妹「……」

熊亜人「俺に任せるぐま」

523: 2015/02/17(火) 02:20:29.83 ID:f6EaV68p0
588

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

魔王の骨は制御不能の力。それを使って戦うということは……

護衛姉(私達にはもう、巻き添えにならないようにこの場を離れる力は残っていません)

護衛妹(ならせめて、邪魔にならないように。)

護衛姉妹は何も言わず目を閉じた。

十代目「ん、あのアイテム……まさか」

ハイ「あ、あれ魔王の骨ですよ! 気をつけてください!」

熊亜人、護衛姉、護衛妹「「「!?」」」

ツインテ「魔王の骨……伝説のアイテムの一つの……」

フォーテ「あー、本当だー。それっぽい力感じるー」

十代目(……あれから滲み出す力を見れば大体の見当はつく。だが一目で判断するとは……未来帰りは一味違うな)

524: 2015/02/17(火) 02:22:32.76 ID:f6EaV68p0
589

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

熊亜人(何もかもばれているようぐま……でも我々も今まで目標のために積み上げてきたんだぐま……簡単に諦めるわけには、いかない!!)

ガッ!

熊亜人は王冠を被る。

熊亜人「ぐっ、ぐあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ばりばりばりばりぃいいい!!

賢帝「!? な、なによこの力……こんな力があったなんて私聞いてないわよ!? きもちわるいっ!」

ズズズズズ……

真っ黒い靄が熊亜人の体を覆っていく。

ハイ「擬似魔王化です、気をつけてください皆さん!!」

十代目「……魔王の力か……ならば手を抜いている余裕は無いな。最初から全力で行かせてもらう」

ぎぃん!!

賢帝「!?」

十代目が剣に魔力を纏わせる。

ぶわっ!!

ハイ「きゃっ!?」

その力で吹き飛ばされそうになるハイ達。

525: 2015/02/17(火) 02:24:42.64 ID:f6EaV68p0
590

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

賢帝「ひっ!?」(あのフォーテって子も化物だけど、このイケメンちゃんも!)

十代目「奥義――勇者バスター」

ヴォン、ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaアアアアアアアア!!

熊亜人「ナッ」

極太の銀色の光の帯が熊亜人を薙ぎ払った。

ドガガドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ(これ、ウェンディゴさんにぶっ放したやつか……実際に目の当たりにするとおっそろしい威力です……)

前方にあったもの全てを吹き飛ばす十代目の強烈な一撃……。

ぱらぱら……

護衛姉「あ、あ……」

護衛妹「う、そ……」

しゅぅうう……かららん

熊亜人「……」

ヤムチャポーズで床に倒れている熊亜人。

526: 2015/02/17(火) 02:27:00.92 ID:f6EaV68p0
591

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

護衛姉「私達の、切り札が……一撃……」

護衛妹「私達の、人生の全てが……あっさり……」

護衛姉妹はぽろぽろと涙を零している。

ハイ(擬似とはいえ、擬似魔王も魔王。普通に勇者の特効効いちゃうんだよね……あんなに侍さん達が苦戦した相手だっていうのに……)

たっ

フォーテ「僕も撃つー! おうぎー、暗黒滅殺呪壊砲ー」

ちゅどどっばっかどぎゃめぎゃずどばこーーーん!

護衛姉、妹「!?」

熊亜人「ぐまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

ハイ「なんで決着ついてたのに撃ったの!? そしてフォーテちゃんの奥義初お披露目!?」

527: 2015/02/17(火) 02:27:31.47 ID:f6EaV68p0
592

--飛行船--

ごぅんごぅんごぅん

代表「……」

……どぉぉおぉおぉん

巨大な爆発の後衝撃で揺れる飛行船。

ぎしぎしぎしぎしぎぎぎいい!!

代表「……っ!……おいおい、大丈夫なんだろうね熊亜人君……」

代表は操縦室の窓から外を見る。

ユー「……」

代表「……」

そこには全裸のユーが張り付いていた。

528: 2015/02/17(火) 02:28:14.89 ID:f6EaV68p0
593

--亜人保護団体本部、近辺--

しゅぅううう……

ハイ「あ、ユーさん」

ユー「……」

よっ、と手をあげるユー。

ハイ「追いついてきてたんですね。……もしかしてこれ、落としたのユーさんだったりします?」

ユーはこくりと頷く。

代表「……」

墜落した飛行船を見てがっくりとうな垂れている代表。

ハイ「なんだろう……。なんだか今回は全面的に代表君に同情しちゃう」

529: 2015/02/17(火) 02:31:53.17 ID:f6EaV68p0
594

--亜人保護団体本部、近辺--

しゅぅうう……

代表「……で、君たちは一体何が目的なのかな? 何でも言ってくれ。もう僕たちに抵抗する力は無い。はぁ……」

さすがの代表もショックを隠しきれず、顔を手で押さえたまま顔をあげられない。

ハイ「えっと……代表君と、お話しがしたかっただけなんですけどね」

にっこりすまいるハイちゃん。

代表「……は、はぁ!?」

ハイ「それだけだったのに気づけば亜人保護団体と変な巨大宗教、いっぺんに壊滅させちゃいました。あはは、チートって怖いですね!」

目は氏んでるハイ。

賢帝「ひ、人が汗水たらして必氏に積み上げてきたものをなんだと思ってるのかしら……恐ろしい子!!」

ハイ「私だってそう思いますよ。私をこの人たちと同じように考えるのはやめてください。――では毎度おなじみの説明タイムに突入します」

530: 2015/02/17(火) 02:35:16.35 ID:f6EaV68p0
595

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「……」

ハイ「――と、いうわけなんですけど」(何度も説明してきたからさすがに慣れてきましたね)

代表「時間旅行……ありえるのかな。信じられないねぇ……」

代表はそう言って眉間を押さえる。

代表「でも……あまりに出来過ぎてる感はある。君みたいな普通っぽそうな子がこれだけの傑物を率いているのもおかしな話だし」

ハイ「あはは……」

ハイは笑うしかない。

ハイ「で、どうでしょう? 信じてもらえますか?」

代表「――正直なところを言うと、僕に選択肢があるように思えないな。育て上げた組織を完璧にぶっ壊されてこの状況だからね。完全にぶちのめした後で俺の言うこと聞けや、ってのと何も変わらないでしょこれ」

代表は煙のあがる本部を眺めている。

ハイ(……そりゃそうだね!)

代表「信じる信じないなんてそもそも関係あるのかな? 僕たちは言わば捕虜だ。僕たちのことは勝った君らが好きに使うがいいさ」

ハイ「……そういうのを望んでるわけじゃ無いんですよ代表君」

531: 2015/02/17(火) 02:40:17.02 ID:f6EaV68p0
596

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「……そういうのではない? ならどうしろって? 数分前に会ったばかりの君の言うことを心から納得して、自分の意思で力を貸せって、そう言うのかい?」

ハイ「出来れば、それにこしたことは無いですけど……そこまでは望んでるわけじゃないですけど」

代表(……この子は他の面子と違ってあくまで普通だ。僕の独裁者の言でいくらでもペースを掴むことが出来そうだ……時間はかかるだろうけど、この子をうまく操れればまた立て直せるかもしれない。まだ逆転の目は)

ハイ「でも友達を捕虜とか、そんな風に扱いたくないんですよ」

代表「――は――?」

思わぬフレーズにあっけにとられる代表。

代表(あ、あー……そういえば言ってたな、未来で僕と友人関係だったって……いやいやでもそれは未来の僕との話だろ? 今の僕には全く関係無いことじゃないか。君と一緒に過ごした記憶は僕には皆無。僕の中では君は初めて会った赤の他人なんだ)

ハイ「……」

代表(……それでも……一方通行でも友達として思ってたい、ってこと……?)

代表の脳裏に竜子が過ぎる。

532: 2015/02/17(火) 02:43:02.89 ID:f6EaV68p0
597

--亜人保護団体本部、近辺--

わーわー!!

代表「!」

話をしている代表達の後ろで人だかりが出来ていた。その中心にいるのはツインテ。

ツインテ「怪我をしている人は他にもいませんかー!? ボクでよければ治療させてくださいー!」

団体構成員「女神だ……こんな、罪深い私達にまで……このような慈悲を……!」

団体魔法使い「心が、洗われるようだ……」

人々は泣きながらツインテを拝んでいる。

代表「おいおいなんて顔だよ……まるで憑き物が取れたようじゃないか……」

ぱぁあああぁああ

回復魔法を発動するツインテの姿は、まるで光り輝く女神のよう。

ハイ「……止めようの無い復讐の連鎖。それを止めたかったんですよね、代表君は」

代表「!」

533: 2015/02/17(火) 02:44:28.46 ID:f6EaV68p0
598

--亜人保護団体本部、近辺--

わー、わー

ハイ「家族を亜人に殺されて悲しみに囚われた可哀想な人達……そんな彼らを代表君は見捨てることが出来なかった」

代表「……いきなりなんの話やら」

ハイ「……でも復讐は復讐を呼ぶ。誰かが連鎖を断ち切らなくちゃいけない」

十代目「……」

ハイ「代表君が考えてる方法が正しいのか……それはわからない。でも、私は否定します。氏をもって決着とするのは、私好きじゃない」

わーわー!

団体構成員「ツインテ様ぁ!!」

フォーテ「お姉ちゃんに触ったら頃すからねっ!?」

わーきゃー!

代表「……」

ハイ「ツインテ先輩の回復魔法には浄化の力が宿っているんだと思います。人々の心から負の感情を取り除いて、無限のやさしさで包み込む……きっと、悲しみも憎しみも和らぐんじゃないでしょうか」

代表「……」

ハイ「……それで問題の解決になるわけじゃないけど……でも全員を頃してしまうより、いいと思わない?」

代表「……」

534: 2015/02/17(火) 02:48:59.18 ID:f6EaV68p0
599

--亜人保護団体本部、近辺--

ハイ「代表君の力はそんな悲しいことに使うものじゃないと思うよ。もっと他に素敵な……だから……その……」

代表「……」

ハイ(う……駄目だ。やっぱり私、誰かを説得とか無理だ……)

代表「……」

代表はただじっとその光景を眺めていた。

代表「……どうやら、僕を必要としなくなったようだね」

ハイ「……え?」

代表は背伸びをする。

代表「んー……。何も無くなっちゃったな」

代表は困ったように頭をかいた。

ハイ「えっと、代表君……」

代表「……僕は無能だ。部下がいなけりゃご飯さえ作れやしない。戦闘なんてからっきしさ。剣も振ったこと無い……それでも僕に、何かやれることがあるのかい?」

ハイ「!……はい、あります」

ハイは笑う。

代表「……そうかい。じゃあ人類の危機だというし、やれるだけのことはさせてもらうよ」

ハイ「……はい!」

代表「拒否権もなさそうだしね」

535: 2015/02/17(火) 02:51:48.59 ID:f6EaV68p0
600

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「――で、これからのプランは具体的にあるのかな?」

ハイ「はい。これからレンさんと会ってもらって超魔法陣の書き換え作業をしたいと思ってます」

代表「魔法陣のことまでご存知か……いやはや参ったね。ん、書き換える……? それは……あぁ、いいや。どうせ僕が聞いてもわからないだろうし。僕は指図する人間であって魔法陣に関してはよくわからない。そういうのは担当してた人に聞くのが一番だ」

ハイ「担当してたのって」

代表「あの群れの中のどなたかさ」

わーきゃー!

ツインテを拝む人の群れを指差した。

ハイ「あー……」

代表「で? 他にやることは?」

ハイ「あ、はい。後は竜子ちゃんにも仲間になってもらう、くらいかな?」

代表「……なるほど。彼女らを説得しにいくだけならそんなに人員はいらないだろうね。チート級が何人もいるし」




--竜骸の渓谷--

ひゅおおおぉぉおお

竜子「へぶしゅっ!!……ぐすっ……なんだろう。なんか凄く嫌な予感がする」

543: 2015/02/24(火) 03:58:46.75 ID:gF2HwH/i0
601

--亜人保護団体本部、近辺--

わいわいがやがや

ハイ「――では話もまとまったことですし、さっそくですが私達は竜骸の渓谷に出発したいと思います。皆さん準備をお願いしますね」

代表「やれやれ……じゃあ急いで準備しますかね、よっこらせ」

ツインテ「あの……」

ハイ「?」

すたすた

ツインテ「ハイさん。少しお話があるんですけれど……」

ハイ「はい? どうかしましたかツインテさん?」

ツインテ「すいません、自分から付いていくと言ったのにあれなんですけど……一旦パーティから離脱させていただきたいんです」

ハイ「へ? ど、どうかしたんですか?」

ツインテ「実は、フォーテちゃんのことが心配なんです」

ハイ「フォーテ、ちゃん?」

遠くからフォーテを見つめる二人。

544: 2015/02/24(火) 04:00:03.28 ID:gF2HwH/i0
602

--亜人保護団体本部、近辺--

ツインテ「フォーテちゃん、随分無理してるんだと思います。それを表に出さないようにしてるだけで……」

ハイ「あ」

その時ハイは思い出した。


 --薄暗い洞穴--

 フォーテ「がはっ!!ぎ、がががあああああ!!」

 蝙蝠が飛び交う洞窟の中でフォーテは血を吐きもがき苦しんでいた。

 ???「何度見ても可哀そうコン……効果が効果だけに代償が大きいコン」

 ??「狐娘、薬草を取ってきてください。あれが終わったら飲ませてあげるんですから」

 ???改め狐娘「お、わかったコン」

 ????「わしらも何かすることあるアル?花師」

 ??改め花師「えっと、そうですね。風水師と占星術師は水を汲んで来てください」

 ????改め風水師「わかったあるー」

 ?????改め占星術師「わかったのよ」

 フォーテ「えへ、えへへ……お姉ちゃんに歯、もらっちゃった……えへへ!!げぼっ!!」

 花師(……呪術……恐ろしい力ですね。今回の代価は2週間の断食と3日間の激痛……普通なら肉体もそうですが、まず精神が持たないで

しょうに)

 フォーテ「あぁああお姉ちゃんんんんんっっ!!」



ハイ(そうだ……フォーテちゃんにはあの強大な力の代償があったんだ……!)

545: 2015/02/24(火) 04:03:48.79 ID:gF2HwH/i0
603

--亜人保護団体本部、近辺--

ハイ(でも、おかしいです……私たちとの戦闘とビィとの戦闘、そしてここでの戦闘……つまり短時間で三連戦したことになるわけで)

ツインテ「ボクの、せいだと思うんです」

ハイの思考を読み取ったかのように呟くツインテ。

ハイ(!……そうか……ツインテ先輩を守るために……無理したんだ)

それでも普段通りに振舞うフォーテ。よく見ると氏者の腕にもたれかかっていることが多かった。

ハイ「……すいませんでしたツインテ先輩。フォーテちゃんのことに全然気づいてあげられなかった……」

ツインテ「そんな……ハイさんが気にすることなんてありませんよ」

ハイ「いえ……わかりました、ツインテ先輩はフォーテちゃんとしばらくここで休んでいてください。それまでに私はやれることをやってきます」

ユー「……」

ユーが後ろでサムズアップ。

ハイ「いつの間にいたんですかユーさん」

546: 2015/02/24(火) 04:06:34.27 ID:gF2HwH/i0
604

--亜人保護団体本部、近辺--

ざり

代表「やぁお待たせした。ここも最後だと思うと持って行くものが多くなってしまってね」

ハイ「もー、遅いでしょ代表君。もしかして逃げ出したんじゃないかと思ったくらいです」

代表「僕だけ逃げても行くところがないさ。で、渓谷に行くのはこのメンバーかい?」

代表はハイ、ユー、十代目の顔を順に見ていく。

代表「4人か。パーティにもう一枠空いているけどそれはいいのかい?」

ハイ「いえ、もう一人連れて行きたい人がいます。頼りになる仲間は多いほうがいいですから」

代表「ほう。それは誰かな?」

ハイ「十代目さん」

十代目「了解した」

すたすたすた
ずるずる

賢帝「……はいはい行けばいいんでしょ行けばぁ。んもぉ、こうなりゃどこにだって行ってあげるわよぉ!」

十代目に首根っこを捕まれて引きずられてきたのは賢帝。

ハイ「回復役が抜けちゃったのでその補充です。賢者の帝、ツインテ先輩の穴を埋めるのにこれ以上の人はいないでしょう」

代表「……なるほどね」

十代目「私も回復できる」←声が小さくて聞こえない。

547: 2015/02/24(火) 04:08:13.53 ID:gF2HwH/i0
605

--亜人保護団体本部、近辺--

ざっ、ざっ、ざっ……

フォーテ「……お姉ちゃん」

ツインテ「ん? なぁに?」

フォーテ「本当に……付いていかなくていいの?」

ツインテ「うん。久しぶりに動いたから少し疲れちゃいました。ボクはここでゆっくりアッシュ君たちを待とうと思います」

フォーテ「……」

ツインテ「フォーテちゃんも休もう? よく頑張ったね」

ツインテが優しくフォーテの頭をなでる。

フォーテ「お姉ちゃん……ごぷっ」

ぼたたっ!

フォーテの口から大量の血があふれ出す。

ツインテ「……奥義、絶対回復領域」

ぱぁあああ

フォーテ「げほっごほっ!!……あ……暖かい……がはっ!!」

ツインテ(っ! せめて、痛みを和らげてあげることしか……!)

ずるる

ツインテ「?」

そのときフォーテの影が揺らめいて、そこから四人の人間が現れた。

どさどさどささっ

花師「……む? ここは……」

548: 2015/02/24(火) 04:09:53.98 ID:gF2HwH/i0
606

--???--

ビィ「……」

かちゃり

ビィは一人テラスで紅茶を飲んでいる。

ウェイトレス「おっす! ビィ、だっけ? ここ邪魔するよー」

ビィ「えぇ、構いませんよウェイトレスさん」

ぎっ

ウェイトレスは向かいの椅子に座った。

ウェイトレス「へー。やっぱ私のことも知ってるんだねー。あ、これ私が焼いたクッキーなんだけどどう? 美味しいよ?」

ビィ「すいません。食べたいのはやまやまなんですけど、今お腹一杯なんですよぉ」

ウェイトレス「そーなの? それでもクッキーくらいなら大したことないでしょーよ? ほらほら」

ビィ「ダイエット中ですのでー」

茶肌「……」

脳筋「……」

その二人のやり取りを影に隠れて観察している二人。

549: 2015/02/24(火) 04:11:39.80 ID:gF2HwH/i0
607

--???--

ウェイトレス「ぶー……じゃあ仕方ない、全部私一人で食べちゃおーっと」

ビィ「どうぞどうぞ★」

にこやかに笑うビィは紅茶をすする。

ウェイトレス「……うーん」

そんなビィを見てウェイトレスは頭をひねった。

ウェイトレス「ビィは切り札になる存在だ、ってトリガーが言ってたけど……ぱっと見、弱そう」

脳筋(おい、さすがに暴言だろ!)

ウェイトレス「千年くらい生きてきた私の、もの凄い洞察力をもってしてもわからない。頭がきれる、ってわけでも無さそうだし」

茶肌(キャットファイト!? キャットファイトやるの!?)

ビィ「あはは★ 相変わらずストレートですねウェイトレスさんは。久々ですその質問も」

ウェイトレス(久々……?)

ビィ「……」

ビィは一瞬だけ考えるようにして、

ビィ「そうですね。じゃあちょっとゲームでもしてみませんか? それで大体のことは納得してくれると思いますよ」

550: 2015/02/24(火) 04:13:34.14 ID:gF2HwH/i0
608

--???--

ウェイトレス「ゲーム?」

ビィ「はい。お察しの通り、私には皆さんのような突出した武力も知力も無いです。それでも切り札として成立する……ということを納得してもらうために」(確かめたいこともあるしね)

ウェイトレス「ほー。面白いじゃない。で? 一体何のゲームでビィの価値を証明してくれるのさ」

ビィ「どんなことでも言い当てて見せます★」

ウェイトレス「……ん?」

ビィ「なんでもいいですよ。今夜の夕食はなんなのか、貴方の魔王の骨はどんなものなのか、柱に隠れている脳筋さんの下着の色はなんなのか。どんなことでも言い当てます」

脳筋「びくっ」

ウェイトレス「……本当になんでもいいの?」

ビィ「えぇ、なーんでも構わないです」

ウェイトレス「ふむふむ。じゃーあー」

ウェイトレスはビィが飲んで空になった紅茶のカップを手に取った。

ウェイトレス「これを今から床に落としてみようと思います。それでいくつに割れるでしょーか」

551: 2015/02/24(火) 04:15:25.78 ID:gF2HwH/i0
609

--???--

脳筋(あいつ……精神看破でも索敵でも絶対にわからないことを聞いてきやがった……)

茶肌(今現在の情報ではわからないこと。そんなもの、わかるなら、予言)

ウェイトレス「あ、もちろん答えるのは私が落とす前ね? 落とし方とかも一切教えません。さー、いーくつだ」

ビィ「全部で11に割れます。細かくなり過ぎると数えるのが大変だろうから、2mm以下になったものはカウントしないということで」

脳筋、茶肌「「即答!?」」

ウェイトレス「……ほぉう! いいだろう。じゃあ、やってみよっかね!!」

ぶぉん!!

ウェイトレスは、振りかぶった。

ウェイトレス「おおおおおおおおおおりゃあああああああああああああああああああ!!」

脳筋「それは落とすとは言わない!! 叩きつけるやんけーーー!!」

茶肌「卑怯!!」

ぱりぃぃぃん!!

552: 2015/02/24(火) 04:18:07.96 ID:gF2HwH/i0
610

--???--

ウェイトレス「く、くく……くっくっくっ……粉々だぜ。粉砕だぜ。こいつぁーどう見ても11分割なんて代物じゃないぜ!」

ビィ「じゃあ数えて見て下さい」

そう言ってビィはもう一つのカップに紅茶を注ぎ始める。

ウェイトレス「うん? 負け惜しみかな? こんなの数えなくたってわかるでしょ? こなっごななんだよーん?」

ビィ「粉々ですね。でも2mm以下のはカウントしないって言いました」

ウェイトレス「……」

ウェイトレスは足元に散らばったカップの破片を見る。

ビィ「それ以下の小ささになると分子の数とか言い出したことがありますからねウェイトレスさんは。だから2mm以下は無しにしたんですよ」

ウェイトレス「いや、でもさすがにこの量で……」

スッ

ビィ「定規です。使っちゃってください」

ウェイトレス「……」

553: 2015/02/24(火) 04:20:11.88 ID:gF2HwH/i0
611

--???--

ウェイトレス「……11個だった」

ビィ「そうでしたか」(……やっぱり今回も想定範囲の世界か……残念)

すっ

ビィは何事も無かったかのように紅茶を飲む。

ウェイトレス「ど、どうしてわかったのさ……私は数字を聞いてからも対応を変えられたんだ。なのに……」

ビィ「それは……全部知っちゃってるからですよ。全部のパターンを」

ウェイトレス「……へぇ……千年程度の経験値じゃわからないわけだ……」

ビィ「あは★ 凡人ですから。それくらいしないと皆さんと渡り合えないんですよねぇ」

ニィ

ビィは笑う。その何気ない笑顔にウェイトレスは恐怖を感じた。

554: 2015/02/24(火) 04:21:25.67 ID:gF2HwH/i0
612

--竜骸の渓谷--

しゅうぅううう……

ハイ「――というわけで力を貸して欲しいんです竜子ちゃん。この世界のために一緒に戦いましょう!」

竜子「なるほどなー……って、いきなりテリトリーに入ってきて全員ぶっ倒して長々と説明しておいて一緒に戦おうとかざけんなぁああああああああああ!」

火竜亜人「ぐすん」

賢帝「ほらほら、治してあげるからこっちにいらっしゃいな」

風竜亜人「だ、騙されませんよ!? あれだけ凶悪な攻撃をしておいて!! 氏ぬかと思いましたよ!!」

賢帝「何よぉ、聞く耳持たずでいきなり攻撃してきたのは貴方達の方じゃないのよぉ。それにちゃんと手加減してるわ。言いがかりはよして頂戴」

風竜亜人(最初に侵入してきたのはそっちでしょうに……そして絶対手加減してなかった……)

ハイ「相手を話し合いの席につかせるには武力を行使しなきゃ駄目だってことを学びました」

目が笑ってないハイだった。

555: 2015/02/24(火) 04:24:05.24 ID:gF2HwH/i0
613

--竜骸の渓谷--

竜子「とにかくだ。未来から来たとか意味わかんねぇし、私とお前が未来で親友だったとかわけわかんねぇし、そんなたわごとを信じてやる気はねぇ!!」

ハイ「あれ、全然話が好転するように思えませんね……どっかで間違っちゃったのかな」

竜子「いいからお前らこっから出て行け。そんで二度と入ってくんな。……私らは人間と馴れ合うつもりはねぇ!! 出て行かないって言うんなら、今度は氏ぬまで抗ってやるからな!!」

十代目「……完敗したくせに」

竜子「るせぇえ!!」

代表「はぁ、全く駄目だね君は。そんな喋り方で信じてくれるのは、よっぽど察しがいい人間か疑うことを知らない無垢な人間だけさ。ただのバカにも通用しない。最初から説得は僕に任せてくれたらよかったのに」

竜子「! てめぇ代表……」

ぎり

竜子は拳を握り締めた。

代表「はいはい久しぶりだね竜子ちゃん。少し僕とお話をしようか」

その様子を後ろから観察している十代目。

十代目(……恐ろしい手腕だった。この男が戦闘を指示しなければ、ここまで楽には終われ無かったはず……必要以上に苦しみを与えず、敵味方双方に氏者を出さない。戦闘が泥沼になる前に見事にスパッと終わらせた……)

賢帝(竜亜人がわんさかいるところに突っ込むって聞いた時はさすがの私もおしまいだと思ったわぁ……普通なら勇者がいたって厳しいもの……それをたったの四人で数十人の竜亜人を制圧させてみちゃうんだもの……さすがは私が手を組みたいと思った唯一の男ぉん)

ハイ「……わかりました、代表君にお任せします」

556: 2015/02/24(火) 04:26:32.78 ID:gF2HwH/i0
614

--竜骸の渓谷--

竜子「お前と話すことは何も無い……帰れ」

代表「そう邪険にしないでくれよ。僕たちは十年来の友達だろ?」

竜子「――私に人間の友達などいない」

ハイ「え? 私達三人は友達ですよ? むしろそれを飛び越しての親友です。本当に困ってることがあるなら遠慮しないで言い合えるほどの!」

代表「話がこじれるからどっか行っててくれないかな!」

しゅん、と落ち込んだハイはとぼとぼと歩いていく。

代表「……話の腰を折るのがうまい子だ」

竜子「……話は終わりだ」

すっ

竜子は立ち上がった代表を睨みつけた。

竜子「こっちからは二度と関わらない。だからお前らもこれ以上関わらないと約束しろ」

代表「……」

睨む竜子の瞳をじっと見つめている代表。

代表「――竜子ちゃん、君のお父さんの氏の真相について知りたくは無いかい?」

557: 2015/02/24(火) 04:28:01.67 ID:gF2HwH/i0
615

--竜骸の渓谷--

竜子「」

フリーズする竜子。

竜子「……でまかせだろ」

代表「スキル、約束」

ぶぅん

代表は魔力で手錠を作り上げて自分につけた。

ガチャっ

代表「約束だ。僕は嘘をつかない」

竜子「なっ!? お前なんで自分に!?」

代表「これで嘘をつけば僕は氏ぬ。とういことは、僕が生きているのなら嘘はついてないということになるよね?」

竜子「……っ」

代表「改めて言おう。僕は君のお父さんの氏の真相について知ってる。知りたくは無いかな?」

竜子「……」

代表の手錠はぴくりとも動かなかった。

558: 2015/02/24(火) 04:28:27.56 ID:gF2HwH/i0
616

--竜骸の渓谷、はずれ--

ざく、ざく

ハイ「はぁ……役立たずの烙印を押されてしまいました。駄目ですねこんなのじゃ」

はぁ、とハイは一人ため息をついた。

かぽかぽかぽ

ユニコーン「ひひん」

ハイ「ユニちゃん、心配しに来てくれたんですか?」

ユニコーン「ぶひるん」

ハイ「……優しいですね」

ユー「……」

ハイ「あ、ユーさんもいたんですね。ってかその格好、寒くないんでしょうか」

ビシッ!! とサムズアップするユー。

559: 2015/02/24(火) 04:30:17.54 ID:gF2HwH/i0
617

--竜骸の渓谷、はずれ--

ハイ「え? 私は十分役に立ってる。だから元気をだせ、って?」

こくこくと頷くユー。

ハイ「あ、いや……実は私のテンションがあまりあがらないように見えちゃうのは、そのことが原因じゃあ無いんです」

ユー「?」

ハイ「……もう一人の私のことを考えていたんです」

ユー「……」

ハイ「何度考えてみても、あの私は……色々とありえないんです……」

ユニコーン「ひひん……」

ハイ「そりゃ私は自分のことを知り尽くしてるわけじゃないですよ。私は凡人でなんの取りえもないし、全然魅力なんてないです。そんな自分に興味を持つことなんて出来ませんから、実際自分のことなんて他人のこと以上にわかりません」

ハイは話続ける。

ハイ「でもだからこそ異常なんです。あの別ルートの私は……影が薄くない!」

ユー「……」

思わぬ発言を聞いて真顔のまま固まってしまうユー。

560: 2015/02/24(火) 04:33:22.27 ID:gF2HwH/i0
618

--竜骸の渓谷--

竜子「……」

代表「――と言うのが僕が団体構成員達を使って集めた情報の全てなわけだ」

竜子「……」

竜子は目線を泳がしている。信じていいものか迷っているのだが、代表の手錠を見る度に代表の言葉を否定できなくなっていく。

竜子「……お前の情報が合っている保証は……ッ、いや……辻褄は合うな……」

代表「……僕が今までの人生の大半をかけて手に入れた情報だからね。僕も色々検証してみたけど、多分これが真実だ」

竜子「じゃあ……あれは最初から仕組まれてたってのか……クソッ!!――話はわかった。だが今更お前らと手を組むことはできねぇ。私は人間どもから迫害を受けたのは事実だし、私が……先生を頃したのも事実だ」

代表「わかってる。お互いやな過去を背負ってるんだ。綺麗さっぱり水に流せなんて言うつもりは無い」

竜子「……それがわかってるなら」

代表「だから――全部背負って前に進んでみないか」

スッ

代表は右手を差し出した。

代表「……一緒に」

561: 2015/02/24(火) 04:38:28.02 ID:gF2HwH/i0
619

--竜骸の渓谷--

代表「間違えたまま人生が終わっちゃうのは嫌じゃないかい? 煮え切らないのは君が最も嫌いなことじゃないかな?」

竜子「……」

代表「裏から操られたままってのも気に食わないでしょ? 一泡ふかしてやろうとは思わない? そして何よりこの世界が無くなっちゃうのは君にとっても都合が悪いものだ」

竜子「ッ……」

代表「今は……仲間になれなくてもいい。いきなりは無理だなんてことはわかってる。でも利害関係が一致してる今、同盟にはなれるだろ?」

代表は右腕を伸ばす。

竜子「う……」

代表「友達を前提に同盟からはじめましょう。手始めに世界を救うのだ」

代表の手をしばらくの間見つめている竜子。

竜子「――あのハイって言うやつの言うことを全部信じることが前提の話だぞ? お前は、本当に信じたのか?」

代表「……僕のことを心の底から頼れる友達、って感じで接してくるんだ。僕からしたら初めて会った人なのにね」

はぁとため息を付く代表。

代表「でも僕は……僕を本気で友達だと思っている人の言うことは、信じたいと思ってしまった」

竜子「……」

562: 2015/02/24(火) 04:40:11.40 ID:gF2HwH/i0
620

--竜骸の渓谷、はずれ--

ひゅおおおお

ハイ「戦闘能力を見てもそうです。いくら弱っていたとはいえ、私なんかがフォーテさんやユーさんを相手どって、余裕綽々に勝っちゃうなんてこと、ありえないんです。どんな戦法を思いついたとしても、普通なら押さえ込まれちゃうんです。でももしそんなことがありえるとするのなら……」

ひゅおおぉお

ハイ「……数百、数千、数万回にも及ぶ試行錯誤と実体験……影薄い系主人公と言われる私の影が、あまりの密度に濃くなってしまうほどの人生の積み重ね……そういうのが必要なんだと私は思うんです」

ユーは真面目な顔でハイの話を聞いている。

ハイ「ビィは恐らく、バッドエンドになってしまった私なんです。私と同じように未来からやり直しに戻ってきたのに、運命に抗えず再度失敗してしまった……」

ひゅおぉぉおおおおおおおおおおおおお

ハイ「そしてどういうわけだか……永遠にバッドエンドを繰り返すことになってしまったんでしょう」

575: 2015/03/03(火) 03:29:55.71 ID:g6IsnIll0
621

--黄金王国--

てっててって
がらがら

姫「! あ、いた参謀長!」

参謀長「……なんです姫? 私は今忙しいんですが」

膨大な資料に目を通している参謀長の後ろでぴょんぴょん跳ねている姫。

姫「大変なんだよ! みんな忙しいっていって姫ちゃんを全く構ってくれないの!! これは異常事態だよ!! 非情事態だよ!!」

参謀長「そりゃ私がみんなにやるべきことを指示しましたからね。時間が無いこの状況下、姫様になんて鎌ってられませんよ」

姫「なんてって言った!?……ま、まぁいいや。だからね? 賢い姫ちゃんは一番暇そうな参謀長と遊んでやろうと思ってここに参上しました!」

参謀長「一番忙しいです私。さよなら」

姫「さよならって言った!? うー……参謀長ー、あそぼうーよー。姫は寂しいと氏んじゃうらしいよー? ねー、ねーえー」

参謀長「すいませんが本当に無理です」

参謀長は姫の方を見ようともせず、悪そうな顔で笑っている。

姫「ふえ? 何か面白いことでもあったの?」

参謀長「はい。とても面白いことを思いつきました……」

576: 2015/03/03(火) 03:32:00.69 ID:g6IsnIll0
622

--東の王国、近辺--

ハイ「見えてきましたね、次なる目的地の東の王国が」

十代目「……しかし思い切ったな。中々の決断力だ、ハイ」

ユニコーン「ひひん」

ユー「……」

代表「いやー、改めて見ると……いくらなんでも無謀じゃないかい……?」

竜子「……くそ。なんで私がこんなことに……」

賢帝「本当よぉん。私はいつまで使われ続けるのかしらねぇん」

ハイの後ろをぶつくさ言いながらも付いてくる五人。

ハイ(なんだかちょっと三蔵法師にでもなった気分ですね)「仕方ないじゃないですか、今は時間と人員がいくらあっても足りない状況なんですから。削れるところは削らないとです」

代表「……で、それで」

魔剣使い「……」

ドォン!!

ハイ達を待ち受けていたのは、魔剣使いを筆頭にした数百人の兵士達。

代表「削ったのが東の王国攻略の人員ですか……」

竜子「おかしいだろ……jk」

577: 2015/03/03(火) 03:35:00.08 ID:g6IsnIll0
623

--東の王国、近辺--

魔剣使い「止まってください」

ぴたっ

魔剣使いがハイ達に喋りかける。

魔剣使い「――貴方方は我が国に一体何のようがあって来られたのでしょうか? その目的をお聞かせ願いたい」

十代目(……大軍で来たのならいざしらず)

賢帝(こんな少人数の私らを迎え撃つようにして待ち構えてるだなんてやっぱり……)

代表(こっちの情報を知ってるみたいだね。知った上でこの行動……ってことは)

ハイ「はい」

ざっ

ハイは一歩前へ出る。

ハイ「申し訳ないんですけど、この国をぶっ壊しに来ました」

満面の笑顔のハイだった。

魔剣使い「……!」

竜子「あー……それ言っちまうのか」

代表(この子もなんだかんだ壊れてる気がする)

578: 2015/03/03(火) 03:37:26.08 ID:g6IsnIll0
624

--東の王国、近辺--

ざわざわ

ハイの宣言を聞いた兵士達が動揺し、ざわついている。

東の兵「あの話は本当だったのか……」

東の重兵「まさか十代目様まで加担していようとは!」

ざわざわ!!

魔剣使い「……例え今のが冗談だったとしても……この状況下でそんなことを口にされてしまっては、我々としては無視できませんよ?」

ハイ「すいません、冗談じゃなくて、本気の本気なんです」

竜子「……ち」

代表「仕方ない、ね」

ザンッ!!

後ろの竜子達が戦闘態勢に入る。

579: 2015/03/03(火) 03:39:29.66 ID:g6IsnIll0
625

--東の王国、近辺--

魔剣使い「――そう、ですか。なら」

スッ

魔剣使いが右腕を上げると、それを見た兵達が各々の武器を構えた。

魔剣使い「――倒させていただく」

東の兵隊長「ってーーー!!」

ドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュ!!

兵達は一斉に弓を引き、矢を放った。

ハイ「賢帝さん」

賢帝「はいはい。もうなんでもやったげるわよぉーう。火属性範囲防御魔法、レベル3」

ボッ!!

賢帝は、ハイ達全員を覆う、巨大なドーム状の炎の膜を作り出した。

ドジュジュジュジュジュッ!!

東の兵隊長「!! 矢が焼きつくされている……これが五柱の力なのか!」

ハイ「では皆さん、先ほど説明したプランで行動開始です!」

十代目、賢帝、代表、竜子「「「おう!」」」

おー、と腕をあげるユー。

580: 2015/03/03(火) 03:43:09.96 ID:g6IsnIll0
626

--竜骸の渓谷、過去--

ハイ「――という感じでして、もし何周分もの経験がビィにあるとするなら、私の次の行動だって簡単に予測できちゃうと思うんです。あの襲撃の時みたいに……」

自分の考えを語るハイにみんなは真剣な顔で耳を傾けている。

ハイ「こうなってくると、私が未来からもって来た情報がどこまで役に立つのかわからない状況になってしまいました……いえ、むしろそれが足を引っ張る可能性すらある……。だから私は、ビィの予測を裏切るような行動を取り続けなくてはいけないと思います。ここからは、先の読み合い合戦になるでしょう」

竜子「……」

ハイ「だから、今は少しでも戦力が欲しい。貴女の力が必要なんです。どうか、竜子ちゃんの力を私達に貸していただけませんか?」

ハイは深々と頭を下げた。

竜子「……くそ……断る……なんて言える状況じゃないじゃねぇか……。いいか? こう見えて私だってな」

竜子が仲間になった。

ハイ「! やったー! 竜子ちゃんが仲間になりましたよー!」

竜子「!? ちょいまて!? 私はまだ仲間になるだなんて一言も言ってないぞ!? 今のなんだ!?」


581: 2015/03/03(火) 03:43:58.10 ID:g6IsnIll0
627

--竜骸の渓谷、過去--

竜子「――だー! もういいよ! 仲間でもへちまでもなんでもなってやるよ!! バカッ!」

ハイ「へちまはどうでもいいですけど、やりました! 改めてよろしくおねがいしますね、竜子ちゃん」

竜子「ふん。で? 敵さんの予測を裏切るって、具体的にはどうするんだよ?」

ハイ「えっとですね。普段の私なら絶対に考え付かないだろうし、絶対にやらないだろうことをしようと思うんです」

十代目「というと?」

ハイ「はい。東の王国を滅ぼそうと思うんです」

ユー「……」

十代目「……」

賢帝「……」

代表「……」

竜子「どういうこと……」

582: 2015/03/03(火) 03:44:40.53 ID:g6IsnIll0
628

--東の王国、近辺--

東の兵隊長「魔法使い部隊! 放て!!」

ひゅるるるるる、どぉがぁああああん!! どがががぁああん!!

ハイ「ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーーーん!!」

だからっだからっだからっだからっ!!

ハイはユニコーンに跨って戦場を駆ける。

ビッ!!

ハイ「ッ!」

一本の矢がハイの腕をかすめて飛んでいく。

ハイ「条件達成、レベル2、盾兵!!」

ぼしゅうん!!

ハイは一瞬で鎧と大盾を装着するとそのまま駆けていく。

583: 2015/03/03(火) 03:46:36.04 ID:g6IsnIll0
629

--東の王国、近辺--

魔剣使い「……」

ガイン! ガキガキィン!

矢や魔法を弾きながら突進するハイとユニコーン。

だからっだからっだからっだからっだからっ!!

魔剣使い「そのまま突っ込んでくるつもりですか……魔剣!」

ヴぃん!!

魔剣使いの握る魔剣が怪しく光ったと思うと次の瞬間、

ぱっ

ハイ「!」

その姿が消える。

ハイ(うわ、本当に見えないし何にも探知出来ない!)

シュッ

魔剣使い(頃しはしません。貴方方には聞きたいことがある。でも、後悔はしてもらいますよ)

魔剣使いは跳躍し、ハイへと切りかかった。

がきぃいいん!!

その見えない魔剣使いの斬撃を、駆け寄った十代目が弾く。

魔剣使い(!? この人)

十代目「お前の位置は、自然が教えてくれる」

584: 2015/03/03(火) 03:47:56.11 ID:g6IsnIll0
630

--東の王国、近辺--

とすっ

土『おう十代目ー。やっこさんこっちに着地したぜー』

さささっ

風『今ここを通ったわ十代目。気をつけて、今度は本気で斬りかかってくるみたい』

魔剣使い(先ほどがまぐれなのか、これで見極める!)

ガギィイイイイイイイイイイン!

魔剣使い(防がれた! やっぱり完全にばれて)

シュッ!!

魔剣使い「ぐっ!?」

ビッ!!

十代目は剣を弾くだけで無く、追撃で魔剣使いの首を狙おうとした。

魔剣使い(あと少し……体をそらすのが遅かったら……)

魔剣使いは左手で自分の首を触る。

魔剣使い「……」

ヴぃん

魔剣使いは魔剣の効果を止めて姿を現した。

585: 2015/03/03(火) 03:48:35.31 ID:g6IsnIll0
631

--東の王国、近辺--

だからっだからっだからっだからっ!!

ハイ「はあああああああああああああああああああ!!」

東の兵隊長「陣形を乱すな! たかが一人だ!! 止めるぞ!!」

兵達「「「おおおっ!!」」」

賢帝「邪魔はさせないってーのっ!! 火属性範囲攻撃魔法、レベル4!!」

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

東の駆兵「うわっ!! 熱い!!」

ユー「……」

ズバズバズバズバババッ!!

東の髭兵「ぐっ!? この半裸の剣士めちゃくちゃ強いぞ!! おおおおおおおおおおお!!」

ガァアン!!

東の髭兵の大斧がユーを斬りつけた。が、

ミシッ

東の髭兵「!? 左の甲で防いだだと!? なんて硬さだ!!」

ズバッ!!

そしてユーの返しの一撃で髭を剃られてしまう。

東の髭兵「マンマ……ミーア……」

586: 2015/03/03(火) 03:49:30.47 ID:g6IsnIll0
632

--東の王国、近辺--

どごおおん! どごおおおおん!!

ハイ「ユニちゃん! あそこです! あそこ駆け上がってください!……え? 無理? 高過ぎる? そこをなんとかがんばってくださいよ、私とユニちゃんの仲じゃないですか!」

ユニコーン「ぶひるんっ!!」

首を大きく左右に振るうユニコーン。

竜子「なら私に任せな」

ザンッ!!

驚異的なジャンプ力で追いついてきた竜子は掌に氷の魔力を発生させる。

竜子「氷属性範囲攻撃魔法、レベル2!!」

ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

東の老兵「ぎゃああああああ!!」

カッチーーーーン!!

竜子が放った魔法は城壁を越えるように作られた氷の道となる。

ハイ「さすがです竜子ちゃん! やっぱり頼りになりますね!」

竜子「……ふんっ」

嬉しかったのか、竜子は氷の道に細工をして、階段のような段差を作ってやる。


587: 2015/03/03(火) 03:50:00.98 ID:g6IsnIll0
633

--東の王国、近辺--

ガギィン! ギギィン!!

十代目(中々の太刀筋だ。よほどいい師匠がいるんだろう。だが)

ズバッ!!

魔剣使い「ぎっ!?」

十代目の剣が魔剣使いの腹部をなぞった。

ぶしゅっ、ぽたっ!

魔剣使い「いたたっ……よかったそこまで深くはないですね」

十代目「この程度なら私の敵じゃない。大人しく倒れてもらおうか」

魔剣使い「……ふ」

ぴく

その時十代目は異変に気づく。

十代目(……今奴の動きが一瞬早くなったように感じられたが……気のせいか?)

588: 2015/03/03(火) 03:51:00.91 ID:g6IsnIll0
634

--東の王国、近辺--

魔剣使い「はあああああああああ!!」

ギギギギギギン!! ズギィン!!

十代目「これで、終わりだ!!」

ズカッ

十代目の剣は宙を斬り、

十代目「何!?」

ズバッ!!

代わりに魔剣使いの剣が十代目の脇腹を斬りつけた。

十代目「がっ!?」

魔剣使い「もういっ、ちょう!!」

ズバババッ!!

十代目「ッ!!」

589: 2015/03/03(火) 03:52:03.36 ID:g6IsnIll0
635

--東の王国、近辺--

ひゅるるる、どおおん!!

賢帝「ちょっと十代目ちゃんっ!? 大丈夫なの!?」

ぼたたたっ

十代目「……あぁ……」

魔剣使い(焦ったせいか浅かったか……この人の的確な防御のせいっていうのもあるんだろうけど……まだまだ未熟だ)

十代目は千切れかけた左腕を舐めた。

十代目「スキル、ぺろぺろ」

じゅっ

魔剣使い(応急処置か。手を使わずに出来るのはいいですね。毒とかつけられてたらおしまいですけど)

十代目「……」

土『おいどうしたんだ十代目。なぜ奴への攻撃を外したんだ?』

風『そうよ。あの子、普通の動きしかしてないわよ?』

十代目「なるほど……」

十代目は目を瞑った。

十代目(サブリミナルか)

590: 2015/03/03(火) 03:54:29.88 ID:g6IsnIll0
636

--東の王国、近辺--

魔剣使い(目を瞑った……ばれたかな?)

魔剣使いは小刻みに魔剣の能力を付けたり切ったりを繰り返していた。それによって人では理解出来ないほどの速さで、姿が消えたり現していることになる。

十代目(知らない間に脳を狂わされていたか)

視覚に頼る者のアンチ、それが魔剣使いだった。

魔剣使い(目を瞑られたら仕方ない……)

十代目「……」

ギギギギィン!!

魔剣使い(この人は見えなくても僕の位置を正確に把握してくる……。ならば、剣技と気迫で上回るのみ!!)

ギギィン!!

魔剣使い「はああああああああああああああああああああああ!!」

ギギンッ!! ギン

十代目の剣が魔剣使いの剣の軌道を最小限の力で逸らし、

スパッ

魔剣使いの剣を持つ右手首を刎ねた。

591: 2015/03/03(火) 03:55:53.69 ID:g6IsnIll0
637

--東の王国、近辺--

魔剣使い「」

パシッ

しかし魔剣使いは一切動揺せず空中の魔剣を左手で掴み、

ドスッ!!

十代目の首元に突き刺した。

十代目「!! ぐっ!!」

魔剣使い「っ、甘いですね、それで勝ったつもりですか!!」

ズブッ、ズググググッ!!

慌てて魔剣の刃を掴む十代目。だが少しずつその刀身が十代目の体の中に埋没していく。

ブシュッ! ブシュシュッ!!

十代目「がっっ!!」

魔剣使い「あの聖騎士様を倒したと聞いていたのにっ、この程度なのですか……っ? それとも」

ブシュッ

魔剣使い「――私如きでは、本気を出していただけないのですか?」

魔剣使いの表情が曇る。

592: 2015/03/03(火) 03:56:52.65 ID:g6IsnIll0
638

--東の王国、近辺--

ズボッ

魔剣使いは、剣を引き抜いた。

ぽたぽたぽた……

十代目「げほっ、ごほっ!!」

ぼたたたっ! ぼたっ!

魔剣使い「……残念です。十代目さん」

魔剣使いは斬られた自分の右手首を拾う。

十代目「……いや、私は本気だった……と言っても、信じてもらえないだろうか」

魔剣使い「……そうですね」

魔剣使いは薬を取り出して右手首の断面に塗ると、それを右腕にくっつけた。

ぬちゃっ

魔剣使い「っ……」

ぐぐ……

早くも指が動き始める。

593: 2015/03/03(火) 03:58:34.12 ID:g6IsnIll0
639

--東の王国、近辺--

ぽたぽた

十代目「……君の気迫は凄まじかった。国を守るために全てを投げ打ったあの覚悟……見事だった。それが確かに私を超えたから、ああなったんだ」

魔剣使い「……そうだと、いいのですがね」

チャキッ

魔剣使いはまだ震える右手で魔剣を握る。

魔剣使い「……しっ!」

ガキイイイイン!!

魔剣使いが斬り込み、十代目がそれを受ける。

魔剣使い「貴方方の目的は、なんですか!?」

ギィン!

魔剣使い「ただ無意味にこんなことをする方では無いと、存じています! 何か、意味があるのでしょう!?」

ギギィン!!

十代目「それは……この国を、救うためだ」

594: 2015/03/03(火) 04:08:16.42 ID:g6IsnIll0
640

--東の王国、近辺--

ひゅるるるる、どぉおん!! どかぁあんん!!

魔剣使い「この国を、救う……?」

十代目「あぁ……この国は、魔王側と癒着している現状を知っているか?」

魔剣使い「!……魔王、ですって……?」

十代目「わからなくも無い話だ。この国の王は、絶対に勝てないと考える相手に立ち向かうことをせず、その手下に成り下がることで多くの人々の命を救おうとしたのだ……王という立場ならば、それは妙案かもしれない」

十代目は剣を構えた。

十代目「だが今世界は大きく変わろうとしている。人類全てが協力して魔王を倒そうと動き出しているんだ……恐らくこれがラストチャンス。足並みを崩されては困る」

魔剣使い「……」

魔剣使いは思い出していた。東の王の側近達のことを。彼らは亜人と言い張っていたが、それは……

十代目「そして……東の王国が共に手をとる仲間となるのであれば、絶対に勝てない相手にも勝てるかもしれないんだ。……この国のためにも、人類のためにも……この国を一度破壊し、愚かな幻想から救わなくてはならない」

魔剣使い「……」

スッ

魔剣使い「……私が守ろうとするものと、貴方の言葉……どちらが正しいのか、次の一振りにかけましょう」

ザッ!

魔剣使いは構える。

十代目「……よかろう」

スッ

十代目も構えた。

ひゅるるるるる……

十代目「……」

魔剣使い「……」

どど
ズバッ!!

おおおおおおおおんんん!!

魔法の着弾を合図に斬りこんだ二人。

ぽたっ……

十代目「……」

魔剣使い「……東の王国を……頼みました」

ぶしゅっ!!

十代目「承知した」

魔剣使いは血を流して地面に倒れた。

601: 2015/03/10(火) 03:42:07.70 ID:U2WX8vfN0
641

--東の王国、近辺--

十代目「はっ、はっ、はっ……」

ぼたぼたぼたっ

十代目は傷口に手を当てて回復魔法をかける。

すぅーっ

十代目「手ごわかった。若いのにいい剣士だな」

どご、どぉおおん!!

賢帝「ちょっとぉ、十代目ちゃん!? たった一人にかまけてないで私をっ、手伝いなさいよぉ!! さすがの私もこの人数はきっついのよぉ!!」

どががぁああん!!

言いながらレベル4魔法を捌く賢帝。

十代目「ああわかった、今そっちに……?」

ぴたっ

十代目(……)

602: 2015/03/10(火) 03:43:04.94 ID:U2WX8vfN0
642

--東の王国、近辺--

バッ!

十代目は遥か後方に視線を向ける。

十代目(……なぜ俺は、こんな大事な闘いで供給要請をせずに戦った……? 騎士道でも振りかざしたつもりか……?)

ヴン!

十代目は索敵範囲を広げる。

十代目(一キロ……二キロ……三キロ以内にもいない……?)



--草原--

ひゅうううううぅ

腹黒「ん……やれやれ気づかれましたか。噂どおり中々勘が鋭いようですね」

十代目がいる場所から二十キロ離れた場所で、椅子に座って優雅にコーヒーを飲んでいる腹黒。

腹黒「そのまま大人しく(ゴミ同士削りあってくれればよかったのによぉ)」


603: 2015/03/10(火) 03:44:33.53 ID:U2WX8vfN0
643

--東の王国、近辺--

十代目(いた……!! くっ、それほどまで遠くにいるとは……!)

ダッ!!

十代目は駆け出した。

ダダダダダダだ!!

十代目(精神干渉の魔法……それも超々遠距離から誰にも気づかれることなく……こいつは間違いない、魔王の一角、腹黒!!)



--草原--

腹黒「ふふふ、来ますよね? 来ちゃいますよねぇ貴方方勇者は。そりゃそうだ。魔王を野放しになんてとんでもない」



--東の王国、近辺--

ぼぉん!!

十代目「!?」

十代目が踏んだ地面が爆発し、十代目を吹き飛ばした。

十代目「ぐっ!? これは、罠魔法、か!?」

604: 2015/03/10(火) 03:45:59.70 ID:U2WX8vfN0
644

--草原--

腹黒「爆発系罠魔法、地雷。これが中々いい出来なんですよ。四代目魔王を倒した時のことを思い出しますねぇ」



--東の王国、近辺--

ドォンドォンドドドオォオン!!

十代目「がはっ!?」

土『おい十代目! こっちは危険だ! 遠回りで行け!』

十代目「……駄目だ、安全な道を選べば奴のところにはたどり着けない。そう仕組まれているはずだ」

ドォン!!

土『……! ならせめて直撃は避けろよ!』

十代目「踏まなくとも範囲に入っただけで爆発するようになっている……同じことだ」

ピョロロロロロ……

十代目「……?」

十代目の上空を巨大な鳥のモンスターが飛んでいる。そしてそれは無数の何かを落としていった。

どさ、どさどささ!!

十代目「!?」

近隣の少年「いたた……あれ? ここどこ?」

近隣の少女「うああああ! 足いたい、いたいよぉお!!」

十代目「子供……?」

605: 2015/03/10(火) 03:47:01.98 ID:U2WX8vfN0
645

--草原--

腹黒「カーニバル」

ぱちんっ

腹黒が指を鳴らした。



--東の王国、近辺--

近隣の少年「猫のお兄ちゃん、ここどこ?」

近隣の少女「うああああん! うあああああん!!」

十代目(こんな危険な場所に子供達を……己魔王め!!)「捕まれ! 話をしている暇は無い、ここから離れるぞ!!」

十代目が少年達に手を伸ばしたその瞬間。

ぼこっ

十代目「」

近隣の少年「あ、あれ?」

少年の体が膨れ上がり、そして

ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!

606: 2015/03/10(火) 03:49:02.08 ID:U2WX8vfN0
646

--東の王国、城壁--

だからっ、だからっ、だからっ!!

ハイ「ユニちゃん急いで! 皆さんが時間を稼いでくれているうちに!」

ユニコーン「ひひーーん!!」

だかっっ!!

ユニコーンは跳躍し、東の王国の城壁を飛び越えた。

ハイ「見えた! 東の王国の城!!」

符術師「っとー、ここまでだぜお姉ちゃん達。不法入国はいけないねぇ!」

ハイ、竜子「「!!」」

城壁の内側に張り付いていた符術師が、真下から弓で狙いをつけていた。

ハイ「符術師さん!?」

符術師(!)

ドシュッ!!

竜子「私が弾く!」

ドガッ!!

竜子の拳が符術師の矢を叩き折った。

符術師「残念、それ爆発するぜ?」

竜子「な」

ドゴオオオオオオオオオオン!!

607: 2015/03/10(火) 03:50:22.23 ID:U2WX8vfN0
647

--東の王国、城壁--

ユニコーン「ぶひひぃいーーーん!」

ぼふっ!

爆煙の中から錐揉み状態で飛び出したユニコーン。

符術師(あれ? ユニコーンだけ? 他の氏体は?)

ビスビスッ!

符術師「ぎっ!?」

符術師の太ももを銃弾が貫通する。

ハイ「条件達成、レベル3、銃士!」

符術師「こんな、飛び道具が! くそ煙で視界を塞いじまったのがあだに!」

パキパキパキ!!

符術師「!!」

いてつく風が煙を吹き飛ばし、中から竜子達が現れた。

竜子「今のは、ちっとだけ効いたよ。だからこれは、お返しだ!」

符術師「ぐっ!! ほぼ無傷じゃねーか!」

バキキーーーーーン!!

608: 2015/03/10(火) 03:52:27.79 ID:U2WX8vfN0
648

--東の王国--

符術師「」

かきーん

竜子の攻撃を受けて氷像になってしまった符術師。

ハイ「ほらユニちゃん、気絶してないで起きてください! また走ってもらうんですから! 時間無いんですよ!?」

ぺちぺち

ユニコーン「ひ、ひひん……」

竜子「……意外とお前、どエスだよね」

すたすたすた

代表「おや、まだこんな所にいたのか。いや、丁度良かったというべきか」

ハイ「本当に歩いてきた……」

竜子「あの戦場を一人で無傷で歩いてくるとか……どうやったんだこいつ」

代表「まぁいいじゃないか。さて行こうか。こっからは簡単じゃないからね」

ハイ「今までも簡単じゃないですけどね」

609: 2015/03/10(火) 03:55:21.41 ID:U2WX8vfN0
649

--東の王国、城--

通信師「――さらりと城壁の中に入られてしまいました。しかも魔剣士と符術師がやられたようです」

東の王「ふむ……芳しく無いな」

通信師「……でもなぜ彼らがこの王国に襲撃をかけたのでしょうか。本当にこの国の財宝を狙ってのことなんでしょうか。私はいまいち納得がいきません」

東の王「……」

ギィ、コツコツ……

ある館の主「なにやらお困りのご様子ですな。我々が手を貸しましょうか? 東の王様」

ドアを開けて白髪の老人が現れる。

通信師「何者ですか。作戦司令部に部外者が入ることは許されませんよ」

東の王「よい。あの者は私の知り合いだ。……下がれ通信師」

通信師「っ!? 私に、下がれと言ったのですか……? 私がいなくては今戦っている兵達に命令を伝達できなくなりますが……」

東の王「構わぬ。しばらくこの者と二人だけで話をしたいのだ。下がってくれ通信師」

通信師「……東の王様……あなたは……」

ある館の主「ほっほっ。よいではありませんか東の王様。いい機会です。全部話してしまいましょうよ」

東の王「黙れ……」

610: 2015/03/10(火) 03:57:07.32 ID:U2WX8vfN0
650

--東の王国、城--

ある館の主「ほっほっほっ……」

老人が笑うと、

みぢっ

その口は耳まで裂けた。

通信師「!? お前人間ではないな!?」

ズグッ!!

構えようとした通信師だったが、それより一瞬早く老人の長い爪が腹部を貫通する。

通信師「がはっ!?」

ある館の主「遊びはもう終わりなのですよ。ほっほっほっ」

ぎちぎちと姿がピ工口のように変貌していく老人。

東の王「貴様ッ、我が国の民に手を出すなと言ったはずだ!!」

ある館の主改めピ工口「ほっほっほっ、いーいじゃぁありませんかぁ? 秘密なんて抱えておくもんじゃありませんよ、ぱぱっとさらけだしてしまいましょうよ」

ぼたぼたぼたっ

通信師「ま、まぞ、く……! 東の王様……貴方は、なんてものと手を組んで……!」

611: 2015/03/10(火) 03:58:40.66 ID:U2WX8vfN0
651

--東の王国、城--

ごり

ピ工口は通信師の頭部を踏みつける。

通信師「うっ!」

ピ工口「取引相手に向かってなんてもの、とは……口の利き方がなっていないお嬢さんだ……これは躾が必要ですかな?」

びきっ!

通信師「ぐっ!?」

東の王「手を出すなと言っている」

ヴン

東の王は紋章が刻まれた右腕をピ工口に向けた。

ピ工口「……おやおや……長年のビジネスパートナーに対して随分じゃあありませんか。ほっほっ……こんなのはほんのジョークですよぉ。そんな怒らないで」

スッ

ピ工口は通信師の頭から足をどける。

ピ工口「しかし……あまり強気にでてもらっては困りますねぇ東の王様? 忘れてしまいましたか? 貴方の大事な国民と、第二王子の命は我々次第だということを」

東の王「……!」

通信師(第二……王子?)

612: 2015/03/10(火) 03:59:16.11 ID:U2WX8vfN0
652

--東の王国、城壁--

どがああああああああああああああん!!

東の最上級兵「く、くそおおお!! 城壁をぶち破られた!! 誰かそいつをとめてくれええーー!!」

ユー「……」

ダダダダダダ!!

迫る兵士達をちぎっては投げちぎっては投げのユー。

シュンッ!

ユー「!」

そこに三人の兵士が現れ、ユーに襲い掛かる。

三強予備兵剣士「はぁあああ!!」

ザギイイイイイイイイイイン!!

三強予備兵槍兵「ちぇいやあああああああああ!!」

ガギイイイイイイイイイイン!!

三強予備兵魔法使い「火属性攻撃魔法レベル3!」

ボオオオオオオオオオオオオオオン!!

東の最上級兵「!! 予備兵ズ!!」

613: 2015/03/10(火) 04:01:05.03 ID:U2WX8vfN0
653

--東の王国、城壁--

しゅううううううううう……

三強予備兵剣士「……僕達の同時攻撃を簡単に捌くなんて……さすがは腕に自信アリみたいですね。これは骨が折れそうだ」

ちゃきっ

三強予備兵槍兵「――私が氏ぬ気で動きを止めるわ。その隙に超火力でお願い」

三強予備兵魔法使い「了解であります」

ユー「……」

ジリジリ……

ユー「……」

ぴくっ

三強予備兵槍兵「はああああああああああ!!」

ボッ!!

間合いを計り、魔力を乗せて突く予備兵。

バギィイイン!!

その槍を右手のレイピアの一撃で粉砕するユー。

三強予備兵槍兵「!?」

ズバッ!!

そして左手のレイピアで予備兵を切り裂いた。

三強予備兵槍兵「ぎゃはっ!?」

614: 2015/03/10(火) 04:03:11.05 ID:U2WX8vfN0
654

--東の王国、城壁--

三強予備兵剣士「! よくも!!」

ガガガガガガァアン!!

一気に間合いを詰めてきた剣士の乱れ切り。だがその全てを華麗に捌いてしまうユー。

ズバッ!!

三強予備兵剣士「ッ! ぐ」

ズバババッ!!

三強予備兵剣士「---ッ!」

槍兵に続いて剣士も切り裂いた。

ドシャッ!

三強予備兵魔法使い「そ、そんなであります……あの二人がほんの数秒で……」

ユー「……」

ぴっ

ユーはレイピアについた血を払い、魔法使いに視線を向ける。

三強予備兵魔法使い「……ぐっ!! 二人の仇! とらせてもらうであります!!」

??「やめとけ」

615: 2015/03/10(火) 04:05:26.46 ID:U2WX8vfN0
655

--東の王国、城壁--

ざんっ

そこに隻腕の剣士が現れた。

三強予備兵魔法使い「け、剣豪様……」

??改め剣豪「そいつはお前達の手に負える相手じゃねぇよ。最初の斬りあいでわかっただろうが」

三強予備兵魔法使い「う……ッ」

ざっ、ざっ

剣豪「後は俺に任せな」

すらぁ

剣豪は鞘から刀を引き抜いた。

剣豪「せっかくの仕事がパァになったところでよ、退屈してたんだ。お前で退屈を紛らすことができればいいんだがなぁ」

ユー「……」

ズッ!

ユーはしっかりと構えを取った。

616: 2015/03/10(火) 04:07:01.65 ID:U2WX8vfN0
656

--東の王国、城壁--

剣豪「行くぜ……」

ダッ!

ユー「」

神速の踏み込みと斬撃。その刀はユーの首を狙って動いた。

ガギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

剣豪「ほう、簡単に防ぐもんだなぁ。中々見所あるじゃねぇか」

ユー「……!」

ユーは二本のレイピアで剣豪の攻撃を防いだ。が、

ガクガクガクガク

その両腕は衝撃に震えている。

チギィン!! ギンギンギギギギィン!!

剣豪「ははははっ!!」

剣豪の乱れ切りを受けるユーだったが足がもつれて後ろに飛んだ。

ダンッ!

剣豪「逃がさん」

ヒュッ、ズバッ!!

風の刃がユーの左腕を斬り付けた。

617: 2015/03/10(火) 04:08:17.87 ID:U2WX8vfN0
657

--東の王国、城壁--

どくどくどく……

ユー「……」

めきっ!

ユーは筋肉に力をこめて出血を止める。

剣豪「……いいね……実にいいぞ。小細工無しの真っ向勝負を楽しめそうだ……。俺は、お前みたいな敵を望んでいたああああああああ!」

ダッ!!

ユー「!」

ダッ!!

剣豪が走り出すとユーも同じように駆ける。

ダダダダダダ!!

剣豪「はあああああああああ!!」

ガギィイイイイイイイイン!! ギイイン! ギイギイイイイイン!!

ユー「!」

ギィン!!

剣豪「ぬっ!?」

ユーの一撃が剣豪の刀を弾く。

618: 2015/03/10(火) 04:11:11.86 ID:U2WX8vfN0
658

--東の王国、城壁--

剣豪(わからねぇなぁ……こいつは受けの剣が上手い。なのになんだってレイピアなんて使ってんだ。もっと適したもんがありそうだが)

ボボッ!!

剣豪「っとぉ!」

ユーの突きを紙一重で交わす剣豪。

剣豪「甘いぜ攻撃がみえみえだ! 狙いが素直すぎるんだよ!」

ユー「――!!」

ギィン! ギンギィン!!

剣豪「おらおらおらおらああああああああ!!」

ユーの防御をすり抜けた剣豪。そして剣豪が必殺の構えを取った。

ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!

剣豪「!?」

ユー「!?」

ぱらぱら……

三強予備兵魔法使い「な、なんでありますか!?」

城の最上階が突如爆発し、斬り合っていた二人は動きを止める。

剣豪「なんだ……いきなりどうしやがった?」

ユー「……?」

619: 2015/03/10(火) 04:13:19.58 ID:U2WX8vfN0
659

--東の王国、城壁--

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ピ工口「……」


剣豪「ち、あのてっぺんにいるのは……魔族じゃねぇか……! どういうことだ! お前らが手引きしたのか?」

睨まれたユーは首を左右に振る。

剣豪「……嘘じゃねぇみたいだ……いや、そもそも堂々と外から来たんなら俺でもわかる。つーことは」

剣豪は剥き出しになった王の間に立っている魔族と東の王を睨む。

剣豪「……考えたくねぇな。でもそういうことなんだな、東の王」

ざっ、ざっ、ざっ

剣豪はユーに背を向けて城へ向かっていく。

三強予備兵魔法使い「け、剣豪様……!? どうされるのですか!?……我々はどうすればいいのでありますか!?」

剣豪「兵士を出来るだけかき集めて来い。この際侵入者は無視でいい、あっちの方が重要だ。俺らはあの魔族の対処にあたる」

620: 2015/03/10(火) 04:16:34.54 ID:U2WX8vfN0
660

--東の王国--

だからっ、だからっ、だからっ!

ハイ「! 見てくださいあれ!」

城の天辺を指差すハイ。

代表「……驚いた。本当に魔族がいるよ……。しかしなんで堂々と姿を現したのかね?」

竜子「ふん、知ったことか。これは私らにとって都合がいい。みんなの見ている前でぶちのめす。それだけだ」

ユニコーンの背にはハイと竜子が乗っている。背に乗ることが出来ない代表はユニコーンの腹にしがみついていた。

だからっ、だからっ、だからっ!

ハイ(あれは……私の知っている情報の中にはいなかった魔族……どんな戦闘方法をとってくるのかわからない……)

ハイは一筋の汗を垂らす。

ハイ(でも、負けられない!)

633: 2015/03/16(月) 23:52:49.13 ID:4qwxR3rH0
661

--???、過去--

ビィ「正直腹黒さんは魔王化のせいで弱体化しちゃってますよねー★」

腹黒「……」

目を閉じて紅茶を飲んでいる腹黒に話しかけるビィ。

ビィ「一度、腹黒さんが存命している段階で、魔王の力を封印したことがあるんですよ。北の王国襲撃を無視して。でも今にして思えばそれが一番ひどい結果になりました」

トリガー「一番ひどい結果っていうのはどんなのかな?」

ビィ「はい、魔王の皆さんを勇者にしてから三日後に人類が全滅しました。勇者化した腹黒さんの極悪細菌魔法で」

ウェイトレス「……細菌て」

壁に背を預けて話を聞いているウェイトレス。

トリガー「なんだか……情緒も何も無いね。核とかもあれだけどさ」

じーっと腹黒を見るトリガーとウェイトレス。

腹黒「なんですか……今の私には関係の無い話でしょう?」

634: 2015/03/16(月) 23:55:07.39 ID:4qwxR3rH0
662

--???、過去--

ビィ「もう本っ当に最悪でしたね。薬も回復魔法も効かないし、何を媒介にして感染させてるのかもわからなかったですし。治療しようとしたものからばったばったと倒れていく恐るべき感染スピード……完全に打つ手無しでしたねー」

腹黒「……で、一体何が言いたいんですか貴女は?」

ビィ「いえね、いくら魔王化で思考が狂わされているとはいえ、もうちょっと人間だった時と同じような戦い方をしてもらいたいなぁ、って思うわけですよ。戦法が単純になり過ぎです。なんでいきなり前線に出ちゃったりしてるんですか」

腹黒(いつの話だよ、俺出てねぇし……)

トリガー「確かに一理ある。彼ほど魔王化がマイナスに働いたもの者はいないかもしれないね。彼は卑劣だけど、卑劣であるがゆえに隙が無かった。目的のために一切手段を選ばないド畜生だけれど、終わってみれば最小限の犠牲で多大な成果を勝ち取ってきていた。魔王を無傷で倒した勇者は長い歴史の中で彼だけだ」

腹黒(喧嘩売ってんのかな……)

ウェイトレス「あぁ、わかるかも。絶対性格わるいよねーあいつ」

腹黒「(#^ω^)ピキピキ」

635: 2015/03/16(月) 23:56:37.63 ID:4qwxR3rH0
663

--???、過去--

ビィ(そろそろかな?)「はーあぁ。あの見事なアウトレンジ殺法は味方になると見れないんですかねぇ。敵の時だけ強くて味方になると微妙、みたいなパターンなんでしょうか。まぁ、いくら凄い人でも魔王化しちゃったらろくにものを考えられないバカになっちゃうんでしょうけどー」

ウェイトレス「あれ? それ私らもバカにされてない?」

がたんっ!

腹黒は勢いよく立ち上がった。

腹黒「……いいでしょうビィさん。そこまで言うのなら見せてやりましょう……。私の知性が衰えていないということを!」

ビィ(やーん。かんたーん★)



--東の王国、近辺--

どがぁああん!!

十代目「がはっ!!」

人間爆弾と地雷により一方的に嬲られている十代目。

十代目(どういう、ことだ……最短距離で進んでいるというのに奴との距離が縮まらない……!)

636: 2015/03/16(月) 23:57:33.48 ID:4qwxR3rH0
664

--草原--

腹黒「ふん、それみたことですか。私が本気を出せばこんなものですよ。トリガーが恐れていた勇者でさえも……ふっ。土属性地形変更魔法レベル4、雷属性妨害魔法レベル4」

ごごご、ぴぃーーーん

腹黒は器用にも、両手で何種類もの魔法を同時に操っていた。



--東の王国、近辺--

ゴゴゴゴゴ

十代目「! 地形を動かされているのか!? たどり着けないのはこのせい……ぐ、耳鳴りも強烈になってきた。眩暈がする……」



--草原--

腹黒「土属性重力制御魔法レベル4、水属性拘束魔法レベル4、臭属性攻撃魔法レベル4、風属性速度低下魔法レベル4、毒、麻痺、眠り、混乱、激昂、衰弱etcetc……」

強力な魔法を雨霰と打ち込む腹黒。

637: 2015/03/16(月) 23:58:34.53 ID:4qwxR3rH0
665

--東の王国、近辺--

ドゴォン、ドドゴオオオンン!!

賢帝「モブの癖に中々やるじゃないのよあんたたちぃ……持って帰りたいぐらいだわ……」

賢帝は若い兵士達を見て舌なめずり。

賢帝「って、十代目ちゃぁあん! あんた一体何をやってるのよ! 早く手伝ってって言ってるでしょぉうう!?」

振り返る賢帝。

十代目「」

賢帝「!? じゅ、十代目ちゃん!?」

十代目は賢帝の真後ろに倒れていた。

賢帝「ボロボロじゃないのよ! 一体誰に!」

十代目「……賢帝……? そうか……私はこんな所まで戻されていたのか」

638: 2015/03/17(火) 00:00:24.84 ID:8Pa2GbVw0
666

--草原--

腹黒「無事合流できたみたいですね、いい位置です。セッティング完了」

ギギギギギギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

凶悪な魔力が腹黒の両手に集まっていく。

腹黒「では、フィナーレといきましょうか。六属性複合攻撃魔法」

キーーーーン

六色の玉を中心として力の渦が発生し、周囲の色が反転していく。

腹黒「レベル4」

ドギャッ!



--東の王国、近辺--

ゆらっ

東の剣長「ぬ、なんだ今の光は」

……ゴゴゴゴゴゴ……

遥か遠くから接近する何かが地面を揺らしている。

賢帝「!……ちょっと、しゃれにならないわよこれ……!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!



--草原--

腹黒「東の王国ごと消え去りなさい」

639: 2015/03/17(火) 00:01:56.70 ID:8Pa2GbVw0
667

--東の王国、近辺--

賢帝「火属性防御魔法レベル3、身体強化魔法レベル4!!」

ギィン!!

東の剣長「ば、ばかな……こんな魔法が、あんなに巨大な!!」

迫る黒い太陽に怯える兵士達。

賢帝「あんた達、力を貸しなさい! このままだと東の王国もただじゃすまないわよ!……いや、綺麗さっぱり無くなっちゃうわ!」

東の槍長「!……だ、だれが敵の言うことなど真に受けるか! どうせあれもお前らが仕組んだことだろう!?」

賢帝「んなわけないでしょう!? だいたい今は敵とか味方とかどうでもいいでしょ!? 見てわかんないの? このままじゃ氏ぬわよ私達!!」

賢帝の魔力と気迫が兵士達を圧倒する。

東の弓長「し、しかし我々が集まったところであれは……あまりに強大すぎる……」

賢帝「ちりも積もればなんとやらよぉ! ほら、来るわよ!! 諦めることよりやれることを考えなさいッッ!!」

ドッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

賢帝「」

ガラガラガラ!!

衝突時の衝撃波で後方にある城壁が半壊する。

賢帝(いったぁ……受け止めただけで腕二本やられたわ……ふふ、笑っちゃうわもう)

640: 2015/03/17(火) 00:03:04.13 ID:8Pa2GbVw0
668

--東の王国、近辺--

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

強力な魔力の干渉で重力は狂い、全ての色がめちゃくちゃに書き換えられていく。

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

賢帝「ふっ、うぅう!!」

ズズズズズズズ!!

少しずつ後退していく賢帝。

賢帝(これは、本当にきついわ……私の奥義の何倍の火力だっての)

ブシュッ!!

賢帝の足が地面に埋まり、太ももが弾けた。

東の剣長「っ……」

それを見ていた兵士達は頷き合い、そして

ガシィッ!!

賢帝「!」

東の剣長「――我らにも、手伝わせてくだされ!」

東の槍長「う、うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

賢帝「……遅いのよバカぁっ!! 後でチューしてやるんだから」

641: 2015/03/17(火) 00:04:24.28 ID:8Pa2GbVw0
669

--東の王国、近辺--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

東の剣長「ぬ、おおおおおお!!」

賢帝(……とは言ったものの、やっぱり数がいればなんとかなるってもんでも無さそう……万事、きゅう、す)

ザザザザザザザザッ!

ユー「!」

その時後方から走ってくるユーの姿が。

シャリシャリン!

ユーは走りながらレイピアを構えると、

ユー「奥義、勇者ラッシュ」

ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

奥義を放った。幾千の光の筋が、賢帝の防御魔法ごと六色魔法を吹き飛ばす。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

642: 2015/03/17(火) 00:05:33.30 ID:8Pa2GbVw0
670

--東の王国、近辺--

ユー「……」

しゅぅうう……

賢帝「ゆ、ユーちゃん……貴方も大概凄いのね……げほっ」

ユー「……」

ガクッ

しかし奥義を撃った反動からか、地面に膝をつく。



--草原--

腹黒「む? 私の魔法攻撃を防ぎましたか……弾き返せるほどの実力者がいたようには思えませんでしたが……まぁいいでしょう」

腹黒は顔色一つ変えずに先ほどと同じようなポーズを取る。

腹黒「二発目を撃てば」

キイイイイイイイイイイイイイイイン!!

643: 2015/03/17(火) 00:07:32.36 ID:8Pa2GbVw0
671

--東の王国、近辺--

賢帝、ユー「「!?」」

東の剣長「ば、かな……また先ほどと同規模の魔力が……」

へた

兵士達は地面に座り込んでしまう。

賢帝「じょ、冗談じゃないわよ!!」(腕は全部おしゃかだってのに! 魔力ももう残り少ないのよ!?)



賢帝「? な、何よ十代目ちゃん」

地面に付していた十代目は賢帝の足を掴んでいる。

十代目「私を回復させてくれ……奴は私達勇者でしか倒せない……」

賢帝「……簡単に言ってくれるわねぇ。私もあまり魔力残って無いのよ? こんな場所で魔力すっからかんになったら、ここの兵士達に何されちゃうかわからないわ」

そう言って笑う賢帝は十代目に回復魔法をかけた。

東の剣長「……今はそういうことをしている場合じゃないってことくらい我々にもわかりますよ。おい、手伝ってやれ」

東の魔長「はい」

ぽあああ

東の魔長が十代目に回復魔法を重ねがけする。

十代目「……ぐ」

東の剣長「命がけで東の王国を守ってくれたんだ。貴方達が悪い人なわけがない……でも話を後で聞かせてください」

賢帝「……いいわよベッドの中でね……」

644: 2015/03/17(火) 00:08:51.09 ID:8Pa2GbVw0
672

--草原--

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

腹黒「六属性複合攻撃魔法、レベル……ん?」

ドオオオオオオオオオオオン!!

魔法を放とうとした瞬間に、腹黒は後ろから攻撃を受ける。

腹黒「……誰です?(俺様の索敵を掻い潜ってきやがっただと……?)」

ひゅおぉおおおおおぉぉ……

風にマフラーをなびかせている二人組みが立っていた。

???「どうやらあの話は本当だったようだな……」

??「ふん、わいは最初から疑ってなんか無かったけどなぁ」

そこに立っていたのはカブトと影月。

腹黒「……まがい物さん達ですか」

???改めカブト「ここで退場してもらうぞ。魔王」

??改め影月「こいつと組むのは嫌なんやけど、まぁそんなことも言ってられへんわな」

ドドドドドゴオオオン!!

カブトと影月のキックが腹黒を吹き飛ばした。

645: 2015/03/17(火) 00:10:25.82 ID:8Pa2GbVw0
673

--草原--

ドゴオオオオオオン!!

腹黒「ふん、その程度の攻撃、ほぼノーダメージですよ?」

影月は服についた埃を払う余裕を見せる。

カブト「……ほぼノーダメージ? ということは攻撃は入るんだな?」

腹黒「!」

影月「ほっほー、これまた情報通りやな。こいつは正規の魔王じゃないから無敵設定は搭載されてへん!!」

腹黒「……」

ドゴオオオオン!!

影月のパンチを魔法障壁で受け止める腹黒。

影月「……ち」(だからなんだってんだ何が言いてぇんだ、あぁん? 攻撃が通るなら勝てるってか?? 二人がかりなら倒せるってか?? この俺様をよぉ!!)

バリバリバリバリバリバリィ!!

影月「うわ無詠唱でこんな雷だしよったでこいつ! なんや、魔法使い君のことを思い出してまうわ」

ひゅっ

カブト「ふっ」

ドギャッ!!

真後ろに現れたカブトの一撃が魔法障壁を貫いた。

腹黒「ぐっ!?」

646: 2015/03/17(火) 00:11:11.49 ID:8Pa2GbVw0
674

--草原--

腹黒(こいつ、これか、突然消えて現れた……これを使って俺の索敵範囲外から入ってきやがったのか!)

影月「余所見しとると危ないでっせ?」

ドガガガガガガガガガガ!!

腹黒「がっ!」

影月のラッシュが腹黒に叩き込まれる。

影月「おらおらおらおらおらおらぁ!!」

腹黒「げっ、ぐっぶ!」

影月「血反吐吐いてもらうでぇ! 魔王さんよぉ!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

影月の強烈なアッパーが腹黒の体を宙に浮かす。

カブト「ダブル」

影月「人造勇者キック」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

647: 2015/03/17(火) 00:13:59.09 ID:8Pa2GbVw0
675

--草原--

腹黒「」

ひゅるるる、どしゃっ!

血を撒き散らし、地面にたたきつけられた腹黒。

腹黒「げはっ!」

ぼたぼた……

影月「ふん、魔王化のせいでステータスは軒並みパワーアップしとるが、それだけやな。わいら二人がかりはちと大げさだったかもしれん」

カブト「……」

ザッ、ザッ、ザッ

腹黒「……」

カブト「……」

腹黒「……確かにあのいけすかねぇ小娘の言う通りかもしれねぇな……」

腹黒は甲で血を拭う。

影月「なんやこいつ。口調が変わりよったで。ド突きまわされて自分のキャラわからんくなったんか?」

カブト「……」

腹黒「確かに俺の思考は鈍っている……この程度のことに気づくまでにこれほどまでに時間を……ははっ、ははははは……!」

腹黒はげらげらと笑っている。

影月「ぶっ壊れたか……?」

648: 2015/03/17(火) 00:14:45.12 ID:8Pa2GbVw0
676

--草原--

カブト「……! 影月」

影月「なんやなんやカブトさん。いや、みなまでいわんでもわかっとる。もう哀れで仕方ないから終わりにしてやれっていうんやろ? わいも丁度そう考えて」

カブト「逃げるぞ!!」

影月「へ?」

ユン

カブトが手を伸ばした瞬間、

腹黒「――時属性魔法」

影月の後ろに腹黒が現れた。

影月「!?」

振り返って迎撃しようとする影月だったが、

腹黒「コレは元々俺が作った属性じゃないか」

ボンッ!

影月の頭部が吹き飛んだ。

649: 2015/03/17(火) 00:15:50.33 ID:8Pa2GbVw0
677

--草原--

カブト「影月……!」

腹黒「栄枯盛衰……いつまでも全盛期のままでいられないのはわかっちゃいたが……」

ピッ

腹黒はカブトに自分の血を飛ばした。

カブト「KAGEROU!!」

ブゥン!!

カブトは時を止めて腹黒から離れようとする。

ザザザッ!

腹黒「こんな気持ちを味合わなくちゃいけないくらいなら、凡夫でよかったぜ」

カブト「!?」

停止した時の中を腹黒が追ってくる。

カブト(こいつ!!)

腹黒「水属性範囲攻撃魔法レベル4」

バッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

カブト「!」

ザバーーーン!!

濁流の如き一撃に飲み込まれてしまうカブト。

650: 2015/03/17(火) 00:16:41.39 ID:8Pa2GbVw0
678

--草原--

ボゴン

カブト「がぼごぼっ!」

腹黒「スキル、生体爆弾」

カブト「!?」

ボッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

腹黒「その水の中には既に俺の血を混ぜておいた」

ぼどぼどぼどぼど!

カブトの体がばらばらになって地面に落ちる。

腹黒「時は動き出す」

651: 2015/03/17(火) 00:18:36.08 ID:8Pa2GbVw0
679

--草原--

びちゃっ……

腹黒「……べっ。殴られたのなんて久々ですね。あいつ、以来だ」

血を吐きながら腹黒は氏体になった二人を眺めている。

腹黒「この程度の奴らに……くそ、とんだ失態だ……」

ざっ

そしてそこに、

ざんっ!!

十代目「やっと、会えたな、魔王」

ユー「……」

十代目とユーが現れた。

腹黒「……はぁ……次から次へとめんどくさいですねぇ」

腹黒は苛立ちながら十代目達を睨む。

腹黒「この二人は私に接近するための囮だった、ってわけですか?」

十代目「……さぁな」

ジャリン

十代目は剣で斬り付けた。

652: 2015/03/17(火) 00:20:37.53 ID:8Pa2GbVw0
680

--草原--

ギギギギギギギ!!

しかし十代目の剣は腹黒の魔法障壁を破れない。

腹黒「お前達程度の罠にかかっていたっていうのか? ありえるのか? そんなことが?」

フォンッ

ユー「ッ!」

ズバシャーー!!

腹黒「!?」

ユーの一撃が腹黒の体をいとも容易く斬り裂いた。

腹黒「!? この、力は!! ぐううう……まさかお前も、勇者の力を!?」

ズバズバッ!!

ユーの力ない斬撃が腹黒を刻んでいく。

腹黒「ばっ、ばかなっ!! 勇者が二人、二人も! 二人も勇者の接近を許してしまったのか!?」

659: 2015/03/24(火) 04:35:44.28 ID:eTzK2S8d0
681

--東の王国--

ゴゴゴゴゴ……

ハイ「凄まじい衝撃でしたね、先ほどの攻撃……」

代表「全くね。誰かがどうにかしてくれたからよかったけど……あれは氏を覚悟したよ」

竜子「あれにはさすがに私もびくったな」

ピ工口「……」

ちーん

ぼっこぼこにされて倒れているピ工口。

ハイ「っていうか竜子ちゃんやっぱり強いです。魔族を単騎で倒しちゃいますか」

竜子「くく、竜亜人なめんな?」

ピ工口「見せ場すら作れないとは……ぐす」

通信師(援軍ですか?……っていうわりにはどこかで見たような顔がちらりほらり……)

660: 2015/03/24(火) 04:37:01.60 ID:eTzK2S8d0
682

--東の王国--

竜子「……」(しかしこいつ)

竜子は代表を見る。

竜子(今の闘いで私はこいつの指図を受けていたわけじゃねぇ。でもいつもより良く動けた気がする……もしかしてこいつは後ろにいるだけで仲間を強化できんのか?)

ダダダダッ!

剣豪「む?」

そこに兵士を引き連れた剣豪が現れる。

剣豪「む……」

一切の加減無くぼこぼこにされたピ工口とハイ達を確認すると、口を開いた。

剣豪「……あれ? もう終わっちゃってる?」

竜子「うん」

661: 2015/03/24(火) 04:38:51.73 ID:eTzK2S8d0
683

--東の王国--

剣豪「ちっ、せっかく来たのにこれかよ。じゃあ後は……」

東の王「……」

剣豪は東の王に向き直る。

剣豪「お前とお話タイムだ」

ざっ、ざっ

ハイ(……竜子ちゃんとピ工口の戦いは接戦じゃあ無かった。でも、全く介入できないレベルの戦闘だったわけでもなかったのに)

代表(なのに手出しをしてこなかったね王様は)

ざっ

東の王「……」

剣豪「――こいつは、お前の仲間なのか? 東の王よ」

剣豪は刀の切っ先でピ工口を指した。

東の王「……」

662: 2015/03/24(火) 04:40:42.04 ID:eTzK2S8d0
684

--東の王国--

ピ工口「ひ、ひひ! 言って差し上げなさいな東の王様ぁ! 貴方は息子と民を守るために国を売ったのだとぉ!」

ぷすっ

ピ工口「あひっ!?」

ピ工口の鼻を刺す剣豪。

剣豪「民はわかるが息子……? あぁ……大事故起こして行方不明になった第二王子か……」(人質っつーことか)

東の王「……ピ工口を倒したところで無駄なことだ。どうせ世界は奴らに支配されている。ここにもすぐにやつらが押し寄せてくるだろう」

ピ工口「そ、その通り! 貴方方も我々のしもべになりなさいな。さすれば魔王様の庇護の下、繁栄を約束しましょうぞ!」

竜子「こいつ結構しぶといな」

がんっ!!

ピ工口「おごふっ!? ちょっ、ま、待ちなさい! 第二王子の命がどうなってもいいのですかな!?」

ぴたっ

竜子の拳が止まる。

竜子「……まぁ……知らない奴だし」

どごぉっ!!

ピ工口「ぴえっ!?」

代表「おいおいおいおい無茶するもんじゃないよー」

663: 2015/03/24(火) 04:42:50.98 ID:eTzK2S8d0
685

--東の王国--

代表(こっちもそろそろ動くか)

ぱちぱち

代表は目配せで通信師に合図する。

通信師(……しばらくぶりに会ったと思ったら……スキル、テレパシー)

ぱしぃーん

通信師(お久しぶりです代表。貴方の悪名はかねがね……)

代表(あはは。お久しぶりだね通信師、元気してた?)

通信師(で、なんです? 何か用事があるのでしょう?)

代表(うん。君の能力で第二王子の探査を頼みたいんだよね)

通信師(バカにしないでください。貴方達がここに飛び込んできた時からすでにやってます)

代表(ほう、さすが黄金世代の通信師だ。でもいくらなんでも東の王国全土を索敵することはできないと思うんだけど。妨害魔法もあるだろうしね。通信師は第二王子が監禁されてそうな場所の目星がついているのかな?)

通信師(……)

664: 2015/03/24(火) 04:46:07.80 ID:eTzK2S8d0
686

--東の王国--

代表(そうだ、情報は妨害してる? 今このピ工口がぼこられてる光景を外に漏らしたくないなぁ。多分この魔族にも仲間がいるだろうからさ)

通信師(当たり前じゃないですか……とっくのとうにジャミング済みですよ。ここの情報は一切漏れてません!)

代表(一切?)

通信師(一切!)

代表(音波も?)

通信師(音波もです!)

代表(ふむ。素晴らしい手際だね。間違いなくこのピ工口は仲間に信号を送ったりしてるはず。いつでもどこでも第二王子に何か出来なきゃ人質の意味が無いからね。その通信手段をすぐに絶ったのはいいことだよ)

通信師(ふん、上から目線ですね。私は今東の三強という立場なんですよ? 侮らないで欲しいものです)

代表(ごめんごめん。でも完全シャットダウンはまずいかもね。こいつから全く信号が送られなくなった場合でも第二王子を頃す計画になってるかもしれないから)

通信師(……)

代表(ピ工口は何らかの信号送ってると思うから、その波長をコピーして君がなりすまして発信しちゃおうか。もちろんこいつにジャミングはかけたままでね。それで反応があれば逆探知できるよね)

通信師(……わ、わかってましたよ)

665: 2015/03/24(火) 04:47:39.72 ID:eTzK2S8d0
687

--東の王国--

通信師(く……魔族のテレパシーの波長をコピーしろとか、簡単に言ってくれちゃって……こんなの初めてやるっつーの! でも見てなさい。どんなに難しくてもやってみせるんだから!)

代表(あ、そうそう)

通信師(何よ!? 今必氏に波長を分析してるんだから話しかけないで!)

代表(ならテレパシー解除したらいいのに……。まぁ、これは勘に過ぎないから適当に聞いて欲しいんだけどさ、ハイちゃんからの話を聞く限りじゃあ、洋館の地下とか怪しいと思うんだ、そこらへんは調べたりしたかな?)

通信師(勘!? 貴方ねぇ……………………いた)

代表(お、いたか。よしよし、じゃあ近くの兵士達にテレパシー送って助け出してもらって)

通信師「もー!! なんかむかつくアンタ!!」

剣豪「びくっ!?」

666: 2015/03/24(火) 04:50:30.77 ID:eTzK2S8d0
688

--東の王国--

剣豪「やれやれお前もわからんやつだな。なんでこいつらにひれ伏した? 人間を信じなかった? 息子を人質に取られたとか、それだけで魔王側につく男じゃないだろう?」

東の王「……ふ、俺を知ったような口だな。俺がいつから魔王側についていたのか気づかなかったわりに」

剣豪「知るか。俺は身内は疑わねぇ」

東の王「」

東の王は固まる。

剣豪「まぁ、もはやお前が何を思ってそっち側に行っちまったのかはどうでもいいや。重要なのはこれからだ……一つ賭けをしようぜ、東の王」

東の王「……何?」

剣豪「簡単な賭けだ。先ほどから随分でけぇ力が戦ってるみたいだ。人間側と魔王側の闘いだろうよ」

ハイ(! 気づいてましたか)

剣豪「俺は人間側が勝つ方に賭ける。お前はもちろん魔王側に賭ける」

東の王「……賭けるものは何だ」

剣豪「俺が負けたらお前と同じように魔王側についてやる。どんな汚い仕事でもやってやるよ。だが俺が勝てばお前はこいつらと縁を切れ」

667: 2015/03/24(火) 04:51:35.30 ID:eTzK2S8d0
689

--東の王国--

東の王「……俺がその賭けを受ける必要はあるのか?」

剣豪「そりゃあるだろう。この場の戦力差見てわからねぇのか? 今この場においては人間側が優勢なんだぜ? 受けるしかねぇだろ」

東の王「……ふ、そうか」

東の王は半壊した玉座に座る。

東の王「いいだろう。受けよう」

ピ工口「!? ちょ、ちょっと東の王様ぁ? 正気ですか? 我らの同盟を賭けに使うだなんて、随分自分勝手じゃないですか。第二王子がむごっ!?」

ピ工口の口に竜子ががれきを突っ込んだ。

竜子「お前うるさい。タフなのはわかったからちょい黙ってろ」

ピ工口「むごー!?」

ハイ(ひどいな竜子ちゃん)

代表(ほんとそう)

668: 2015/03/24(火) 04:53:36.71 ID:eTzK2S8d0
690

--東の王国--

ハイ「でも剣豪さん、よくわかりましたね。魔王側と戦ってる人がいるってこと」

剣豪(俺の名前をさらりと?)「簡単だろ。さっき馬鹿でかい魔力砲がこの国に向かってぶっぱなされた。あんな魔力を扱えるのは魔王側のやつしかいねぇ……そんでそれがこの国に届かなかったってことは、防いだやつがいるって話だ」

剣豪はがれきの上に腰を下ろした。

剣豪「まぁうちのやつらじゃあねぇわな。うちのも中々実力ついてきたがぁ、あれには対抗できる気がしねぇ……もしかしてお前らの仲間がやったのか?」

ハイ「はい。多分そうだと思います」

剣豪「……お前ら何しにここに来たんだよ。討ち入りにしちゃぁよくわかんねぇぞ」

ハイ「そうですね。では……はぁ、さすがにもうめんどくさいですね。何度も何度もあれを説明するのは……代表君、もう事情はわかってると思うので、貴方に説明任せちゃっていいですか?」

代表「ん? 僕がするのかい?」(ナイスパスハイちゃん。まぁ独裁者の言は聞かないだろうけど、話術でなんとかやってみるよ)

ジジッ

通信師(波長のコピー完了……兵士達も配置についたみたいです。第二王子奪還作戦開始!)

669: 2015/03/24(火) 04:54:21.48 ID:eTzK2S8d0
691

--草原--

十代目「はぁ、はぁ、はぁ……」

ぼたっ、ぼたぼたぼた

ユー「……」

腹黒「く、そ……これだけ斬られまくったのに、返り血一つ浴びてないっていうのか……?」

腹黒は血まみれで膝をついている。

十代目「お前の能力は聞いているからな」(しかしアウトレンジは長距離魔法でなぶり頃し、近づけば血を撒いて爆殺……厄介この上ないな)

ぼたっ、ぼたぼた

十代目(だからこそ、ここで始末しておきたい!)

ユー「……!」

ユーは残る魔力を右手のレイピアに込める。

十代目「ああああああああああ!!」

十代目も剣に魔力を纏わせた。

670: 2015/03/24(火) 04:55:37.42 ID:eTzK2S8d0
692

--草原--

腹黒「お、お前らなんぞに……この私が負けるものかああああああああああああああ!!」

ぎゅいいいいいん!!

腹黒も対抗して魔力を溜めようとするのだが、

十代目「奥義! 勇者バスター(弱)!!」

ユー「!」

ボッ!!

二人の放つ攻撃の方が僅かに速い。

ドギャッ!!

腹黒「!? ご、ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

ギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

十代目(づっ! 残りの魔力量では押し切れんか、く、やむをえん!)「魔力供給要請!」

ドンッ!!

十代目は更に大地から魔力を吸い上げた。

びしびしっ!!

十代目の体にひびが入っていく。

671: 2015/03/24(火) 04:56:03.66 ID:eTzK2S8d0
693

--草原--

十代目「お、おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ユー「!!!!」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

腹黒「そ、そそそ、そ」

びしっ

ユー達の攻撃が、腹黒の耐久値を完全に上回った。

腹黒「そんなばかなああああああああああああああああああああ!!」

どがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

腹黒の体はぼろぼろと崩れていき、完全に消滅した。

ぼふっ!!

十代目「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」

ユー「……っ」

どさり

全てを出し尽くした十代目達も地面に倒れこんでしまう。

672: 2015/03/24(火) 04:57:49.10 ID:eTzK2S8d0
694

--草原--

しゅううううう

十代目「はーっ、はーっ……かなり無理をしてしまったが……これで、勝ちだな」

ユー「……」



ごろりっ

十代目は仰向けになって空を見上げた。すると、

ぴかっ

十代目「……ん?」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

十代目「ガッ!?」

空から六属性攻撃魔法が降り注いだ。

十代目「!!!! ぐ……」



--草原の果て--

ばちばち……

腹黒「やー……危ない危ない。油断していたら、もしかしたら負けていたかもしれませんね」

十代目達から離れること約五キロ地点、立っていたのは、腹黒。

腹黒「念のために、自分を分けておいて正解でしたね」

673: 2015/03/24(火) 04:58:38.62 ID:eTzK2S8d0
695

--草原の果て--

腹黒「しかし半分のリソースとはいえ、まさか突破されてしまうとは。あの小娘が言っていたように少々思考が鈍っているのかもしれませんね」

腹黒はまた巨大な魔力を練り上げる。

腹黒「しかし鈍っても私です。万が一に備えて分身を作っておいたこの私。抜かりなど無いのですよ!」

どごおおおおおおおおおおおおおおん!!

腹黒「っ!?」

その腹黒を魔力砲撃が襲った。

腹黒「ど、どこからです? 今の私を攻撃できるものなど!!」



--魔法王国、上空--

魔導長「第一射着弾なの。誤差修正、次は、全力全開なの!!」

普段使っているのよりも大きな杖を持ち、いくつもの魔法陣を展開している魔導長が狙いを定めていた。

674: 2015/03/24(火) 04:59:45.11 ID:eTzK2S8d0
696

--魔法王国、過去--

魔導長「――それは本当なの? 黄金王国の参謀長さん」

参謀長「はい。にわかには信じられないでしょうけど」

魔導長「……少し前に可愛い教え子から似たような内容の手紙をもらったの……最初はついに頭がいっちゃったのかとおもったけど……」

魔導長は参謀長の顔を観察する。

魔導長「貴方はつまらない嘘はつかないしなの」

参謀長「理解して貰えるのならありがたい。ではこれを」

そういって参謀長は布に包まれた大きな杖を渡した。

魔導長「杖?……これは、魔杖……」

参謀長「えぇ。研究員が貴女用に改造したスペシャルな杖です。これを貴女にさしあげます」

魔導長「……こんなものを渡して何が目的なの?」

参謀長「数日後に東の王国でいざこざが起きます。そこできっと魔王側が誰かを送り込んでくると思います。そいつを貴女に倒して欲しいのです」


675: 2015/03/24(火) 05:00:41.65 ID:eTzK2S8d0
697

--魔法王国、過去--

魔導長「! 魔王側!?」

参謀長「えぇ。魔王側が誰を送り込んでくるかは確定してませんが、まぁこいつかこいつかこいつでしょうね。それぞれの対策手段をこの紙に書いておきましたので、魔杖のスコープで敵がどいつなのか確認したらこの紙通りに対応していください。ま、十中八九こいつでしょうけど」

そう言って見せたのは腹黒の特徴が書かれた紙。



--草原の果て--

ばしっ! ばしししっ!!

腹黒「!? これは結界か!? 魔法を封じる結界を魔力球にして撃ち込んだのか……?! く、誰だこんな手の込んだまねを!!」



--魔法王国、過去--

魔導長「……でも、もしその話が本当だとしたら、私の魔法でも撃ちぬけるか心配なの」

参謀長「大丈夫ですよ。その杖は無属性の攻撃力を二倍にする特性に改造されてます。それに私のこの護符を使えばなんなくいけるはずですよ」



--魔法王国、上空--

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

魔導長が圧縮している魔力球の数は七つ。

676: 2015/03/24(火) 05:02:07.16 ID:eTzK2S8d0
698

--草原の果て--

腹黒「くそっ!! ふざけやがって! この俺をなめるなぁあ!!」

びしししししっ!!

腹黒はなんとか結界を破壊しようとするのだが、中々壊すことができない。



--魔法王国、過去--

参謀長「この腹黒を視認してもすぐに攻撃しちゃだめです。こいつは保険をかけて分身をどこかに隠しているでしょうから」

魔導長「分身?」

参謀長「えぇ、私でも保険をかけますから当然でしょう。まぁ、私にはそこまでの能力が無いのでマネ出来ませんが、もし伝説の魔法使いである彼だったならば。30個ぐらいの分身を作り出しておくんじゃないでしょうかね。そして戦場に送るのは20個程度、後は戦場に出さずに様子見って所ですか」

魔導長「……」

参謀長「でも今の彼なら一体分身を作ったら満足しちゃうんじゃないでしょうかねぇ。老いるのも嫌ですが、化物になるのも考えものです」



--魔法王国、上空--

ばぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢ!!

七つの魔力球が互いに干渉し合い、強烈なスパークが発生する。

魔導長「レベル5魔法を連発するようなら……二分割で間違いないなの!」

677: 2015/03/24(火) 05:02:39.55 ID:eTzK2S8d0
699

--魔法王国、上空--

ぎゅごごごごごごごごごごごごごごごごご!!



--草原の果て--

腹黒「はっ!? く、くそ、狙ってやがる……くそ! くそくそくそ!! 一体誰がこんなまねをおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



--魔法王国、上空--

魔導長「あんたの子孫なの」

バヂッ

魔導長「――奥義、神星光破壊砲」


ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

678: 2015/03/24(火) 05:03:20.65 ID:eTzK2S8d0
700

--東の王国--

じじっ

通信師「! 東の王様、第二王子は無事助け出しました」

ピ工口「ふぇ!? ふ、ふふぉふぁ!!」

東の王「……」

……ズズゥン……

そして地響きが城にまで到達する。

剣豪「……東の王」

東の王「あぁ……」

剣豪「賭けは、俺の勝ちみたいだぜ」

東の王「……あぁ」

東の王は困ったように、

東の王「そのようだな」

笑った。

693: 2015/04/28(火) 02:44:25.27 ID:2kZh58720
701

--東の王国--

むくり

ユー「……」

ぽりぽりと頭をかきながら起き上がるユー。

ユー「……」

辺りを見回すが、ユーはなぜ自分がこんな所にいるのかわからない。

ガタン

ベッドから降りようとして転んでしまうユー。

がちゃっ

ハイ「あ、ユーさん! 目が覚めたんですか!?」

ユー「……?」

扉を開けて入ってきたハイは、近づいてユーに肩を貸す。

ハイ「良かった。一ヶ月も目を覚まさなかったもので心配しましたよ」

ユー「……!?」

694: 2015/04/28(火) 02:48:45.48 ID:2kZh58720
702

--東の王国--

むしゃりむしゃりばくばくむしゃむしゃ!!

ハイ「凄い食べっぷりですね……。まぁ一ヶ月何も食べて無かったんだから当然ですか」

しゃりしゃり

ハイは剥いたりんごをお皿に載せる。

ハイ「……お体の方は大丈夫ですか? やはり色々と無理をされてるみたいですね」

ユー「……」

ハイ「知り合ってからずっと私のサポートをしてくれてましたし、魔王クラスとの連戦に度重なるルートの使用……無理がこない方がおかしいというものです……」

ユー「……」



ユーは気にするなとばかりにサムズアップ。

ハイ「そうもいきませんけど……はい」

ハイは困ったように笑うしかない。

それよりこの一ヶ月間に起きたことを教えて欲しいとユーはジェスチャーでハイに伝えた。

695: 2015/04/28(火) 02:53:24.81 ID:2kZh58720
703

--東の王国--

ハイ「さてどこから話すべきでしょうか……あ、そうですね、ではユーさん達が戦っていた腹黒さんについてからにしましょう」

ユー「!」

その時ユーは思い出した。十代目と共に腹黒と戦闘したのだが、最終的に策にはまり敗北してしまったことを。

ハイ「ま、私達がこうして生きていることからわかるように、勝ったのは私達です。腹黒さんは援軍の皆さんが倒してくれました。ユーさんと十代目さんが追い込んでくれたおかげですね」

援軍? とユーが聞きたげな顔をする。

ハイ「はい、実は盗賊さん達が色々裏でやってくれていたんです。私達が代表君や竜子ちゃん達を説得してる間に、人造勇者さんや魔法王国の人たちと話をつけてくださっていたんです。それで私達の助けになるようにと援軍が来てくれたわけです」

ふむふむと頷くユー。

ハイ「……っと、ユーさんが一番気になっているのは魔王達の動向ですよね?」

こくりと頷くユー。

ハイ「実は……おかしいことにあれから魔王達は一切動いていないんです」

ユー「!」

ハイ「ユーさんは倒れてしまうし、絶好の機会だったはずなんですが……逆に不気味で仕方ないんです」

ユー「……」

ハイ「私が知っている前回とはもう完全に違う流れになっています。この流れがもし、ビィによる人類の必敗パターンなのだとしたら……」

ユー「……」

ハイ「あ、あは……そんな暗くなるようなことばかり話していても仕方ないですね。行きましょう。他の人たちにもユーさんの顔を見せてあげなくちゃ」

696: 2015/04/28(火) 02:56:18.85 ID:2kZh58720
704

--東の王国--

がちゃり

ユー「!」

盗賊「おー! 起きてきたかユーくん。久しぶり! 覚えてるかな?」

勇者「! 彼が始まりの勇者……」

赤姫「……」

ツインテ「あ、ユーさん。体の方は大丈夫なんですか?」

ぱたぱたと近寄ってきて上目遣いで心配そうな顔のツインテ。

フォーテ「気遣うお姉ちゃんの慈愛の深さには女神もびっくりだよね!!」

ポニテ「むしゃむしゃ」

アッシュ「……揃ったか。てか食いながらやるなポニテ」

部屋の中にはくつろいで人狼をやっている盗賊達がいた。

ユー「くつろぎ過ぎやろ」

ハイ「喋った!?」

697: 2015/04/28(火) 02:59:08.38 ID:2kZh58720
705

--東の王国--

盗賊「やー、でもこれで本格的に計画を練ることが出来るね。ユー君は我らの戦いに必要不可欠な存在だから」

勇者「別に今までだってちゃんと練ってたけど……って、あーっ! 私また殺されてる! ひどい! なんでいつも私からなの!?」

狼に殺されて半泣き状態の勇者。

盗賊「狼からしたら美味しそうに見えたんだろうなぁきっと。じゅるり」

赤姫(盗賊吊るそうぜ)

ツインテ・こくり

アッシュ・こくり

ポニテ・こくり

ユー「……」

ハイ「あはは……すいませんユーさん、この一ヶ月間あまりに平和だったもので……」

赤姫「じゃあ盗賊チェック」

ぺらり

赤姫「! 狂人かよ!」

698: 2015/04/28(火) 03:00:37.14 ID:2kZh58720
706

--東の王国--

ぎぃ、がちゃ

レン「はー、やーっと終わったにゃー。ハイー、ご飯お願いにゃー、もうお腹がぺこちゃんにゃ……あれ? もう起き上がって大丈夫なのかにゃ? ユー」

そこにくたびれたレンが現れる。

ハイ「先ほど目を覚まされたんですよ。今ご飯作りますね」

ツインテ「あ、ボクも手伝います」

ツインテは立ち上がって台所へと向かう。

アッシュ「……今回はここまでだな。ノーゲームということで……ツインテはなんだったんだ?」

ぺらり

アッシュ「! ツインテが狼かよ!」

ポニテ「可愛らしい顔して中身は狼……恐ろしい娘ッ!」

699: 2015/04/28(火) 03:03:29.04 ID:2kZh58720
707

--東の王国--

トントントントン

アッシュ「そういえば入ってくるなり終わったとか言ってたな? 例の作業が終わったのか?」

レン「そうにゃよ。マントルに書いた魔法陣。今日で全て書き換え終わったにゃ。ってか今朝出かけるときに今日で終わるだろうって話をしたはずにゃ」

勇者「よくやったわ。予想より随分時間はかかったけれど、これでやっと修行に移れる」

レン「か、完成させるだけならいつでもできたのにゃ。ただ時間に余裕があったからいいもんにしようとじっくり時間をかけたせいでこうなったのにゃ。で、修行ってなんにゃ?」

勇者「えぇ、貴方達のために作っておいた修行の場所、修練の塔に入ってもらうわ」

盗賊「あ、あー……そういえばそんなの作ってたなぁ」

赤姫(完全に忘れてたなこいつ)

ポニテ「修練の塔? それなんなのママー」

勇者「文字通り修行の場所よ。入ればわかるわ」

レン「あー……レンの作業が終わるまで待ってたってことはレンも入ることになるんにゃね。ご飯食べてからでもいいにゃ?」

701: 2015/04/28(火) 03:08:15.79 ID:2kZh58720
708

--東の王国--

レン「むしゃむしゃ。ツインテとハイの料理はとってもおいしーにゃぁ」

ツインテ「ありがとうレンちゃん。まだたくさんあるからおかわりしてね」

フォーテ「フォーテも! フォーテもお姉ちゃんの料理食べるのっ!」

ツインテ「フォーテちゃんはさっきみんなと一緒に食べたでしょ? そんなに食べてたら夕飯食べれなくなっちゃうよ」

アッシュ(その理屈だとこの時間に食ってるレンはどうなるんだろうってことがどうでもいいくらいエプロン姿のツインテ可愛いな)

ポニテ「むしゃむしゃ」

そして当たり前のように食ってる歩にて。

ハイ「ではちょっといいですか? 少しミーティングがしたいです」

勇者「その話はここにいるメンバーだけでいいの? 東の王とかは?」

ハイ「この話は今ここにいるメンバーだけで大丈夫です。もう軍師さん達や一部にはお伝えしたこと話ですから」

アッシュ「ふむ。聞こう、話せ」

ツインテのエプロン姿をちらっちら見ているアッシュ。

フォーテ「」

それをおちょなんさんばりの凄まじい形相で睨んでるフォーテ。

702: 2015/04/28(火) 03:24:30.78 ID:2kZh58720
709

--東の王国--

ハイ「はい。話は、なぜこんなにも長い期間魔王側が攻めてこないのかってことについてです。一ヶ月前の戦いでトリガーは腹黒さんを送り込んできました。とんでもなく強い相手だったようですが、それでもユーさん達の活躍により腹黒さんを倒すことに成功しました。とはいえ一時的にこちらの勇者二人が行動不能に陥りました。本来ならその隙に次々と魔王を送り込んで来てもいいはずですよね?……でもしてこなかった」

アッシュ「簡単だ。捨て駒だったんだろう、奴は」

ハイ「はい。私や軍師さん達もその意見でした。魔王を一体使ってまで、私達がどう対応するのか見定めたかったんだと思います」

ポニテ「魔王が捨て駒とか……豪勢な使い方するねー」

ハイ「前回(アイ募三部)の戦いではトリガーは魔王を捨て駒にするような行動をとりませんでした。と考えると腹黒さんを送り込んできたのは別ルートの私、ビィってことになると思います。ビィは、何度も繰り返して戦い抜いた実績があるようです。そのループの中で、最も対応に困ったのが腹黒さんなんだと思います」

盗賊「対応に困る……それは……人間的にってことかい?」

ぱかん!

勇者に殴られる盗賊。

ハイ「……戦闘でです。で、それに我々がどう対応したか……それさえわかれば、今後こちらの動きが最後まで読めてしまうのかもしれないんです」

ツインテ「!!」

アッシュ「……数え切れないほど繰り返した戦いの記憶か……。確かにそれでこちらの行動が全て読めるようになるんなら安い対価だ」

ポニテ「なんで全部の魔王で突っ込んでこないのかって思ったけど、なるほどね。下手に全魔王で突っ込むより断然勝率高いもんね」

ハイ「はい。ぶっちゃけ全部で来られても最後私ら勝ちましたしね勇者さんの機転で」

勇者「///」

てれてれしてる勇者。

盗賊「ループ前の勇者だからお前ではないんだぞ貧ちゃん?」

703: 2015/04/28(火) 03:28:59.16 ID:2kZh58720
710

--東の王国--

レン「腹黒の件はわかったにゃ。で、こんなに長い間何も仕掛けてこないことについては、何か感づいたことでもあるのかにゃ?」

ハイ「それなんですが……私達が腹黒さんに犠牲無く勝ったからだと思います」

勇者「確かに私達側に氏者は一人も出なかったわ。もちろん奇跡的にだけど」

※この場合の氏者というのは蘇生不能にまで陥ることを言っています。

ツインテ「奇跡でもなんでも完全勝利してしまった。だから警戒してるってことですか? 魔王側が?」

ハイ「そこまでは……わからないです。でも、この期間は何か意味があるんだと思うんです。でないと対魔王魔法陣の完成やその他もろもろの私達の準備を黙って見ているわけがない」

勇者「その通りだと思うわ。ビィか、あるいはトリガーのなんらかの思惑なんでしょう」

ポニテ「でも……もしこっちの動きが全部わかっちゃってるんだったら……私達がこれからやることも全部通用しないんじゃ……?」

ハイ「かもしれません……実は一ヶ月くらい前からそのことを軍師さんと参謀長さんと代表君に話したんです。そしてこちらも相手の裏をかくべく、これからのことを三人にシミュレーションしてもらってるんです」

フォーテ「しみゅれーしょん?」

ハイ「はい。トリガー陣営がこれから行うであろう手を片っ端から、詰め将棋のように」

704: 2015/04/28(火) 03:32:35.90 ID:2kZh58720
711

--東の王国、地下--

参謀長「だぁからぁ! 銀蜘蛛がここに来た場合はその防御力と質量兵器を使って攻めてくるわけだからぁ!」

代表「いやいやそもそもおかしいでしょう。聞いた通りの情報ならここは銀蜘蛛じゃなくてヤミを使った方がいいわけです。あれは氏なないんですから」

軍師「ぐごー……」

参謀長、代表「「寝るな!!」」

すぱぁん!!

竜子「おら飯もってきてやったぞ。うわくさっ! すっぱこの部屋!!」



--東の王国--

勇者「シミュレーション……膨大な時間がかかってるわね。そしていまだに討論してるみたいだし……使い道あるのかしら」

ハイ「時間によって考えることも推移してますから……なので何が言いたいかって言うと、私達はこれから敵の裏をかき続けなくちゃいけないってことです。まぁ、裏をかこうと思っていること事態が敵の思惑通りなのかもしれませんが……」

盗賊「ふむ……しっかり考えた作戦だろうとなかろうと、どちらにせよ敵に全部ばれてるかもしんないなら、なんも考えないで戦ったほうが時間はぶけていいよね」

赤姫(なんでこいつは最後まで抗おうとしてる人の努力がわからないのか)

705: 2015/04/28(火) 03:34:18.12 ID:2kZh58720
712

--東の王国--

勇者「言いたいことはわかった。ならなおのこと急がなくちゃね」

そういって勇者は立ち上がる。

勇者「ポニテ、ツインテ、アッシュ、レン、そしてハイ。これから貴方達には修練の塔に入ってもらう」

ハイ「さっき言ってた修練の塔、ですか。そこでこれから修行を?」

勇者「えぇ。ま、ぶっちゃければ精神と時の部屋みたいなそんな感じの塔よ」

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((ぶっちゃけ過ぎている!)))

勇者「裏をかくにせよ何にせよ、まずはそこでのパワーアップは必要だわ。でないと完全勝利は無理なのよ」

ハイ(勇者さんがそこまで言うなんて……一体どんな精神と時の部屋なんだ)

盗賊(俺そんな凄いもの作るの手伝った記憶無いんだけど……)

フォーテ「っていうかフォーテの名前がそこに無いんだけど!? フォーテもお姉ちゃんと一緒にパワーアップしたいしたい!!」

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((それ以上強くなってどうすんの!)))

706: 2015/04/28(火) 03:35:41.74 ID:2kZh58720
713

--東の王国、廊下--

すたすたすたすた

鬼姫「お、みんなでどこ行くっスかー? ピクニックスか?」

何かのモンスターの手足をむしゃむしゃしながら歩いている鬼姫とすれ違う。

アッシュ「違う、これから修行に行くんだ」

ポニテ「てかピクニックって」

鬼姫「えー!? 修行いいなー! あたしも修行行きたいっスー。アッシュ君と一緒に修行したいっスよー」

アッシュの腕に自分の腕を絡める鬼姫。

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン(((あんたもう最強クラスじゃん!)))

ハイ(あ、アッシュ先輩に近い……)

聖騎士「ぶるぅぁああああ……修行ぉだとぉぉ……? この我もぉ、まぁぜぇるがぁあいいいいいいいいいいい!!!!」

窓に張り付いてぶるぅあぁああ言ってる聖騎士。

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((ツッコミが間に合わない!)))

707: 2015/04/28(火) 03:38:56.67 ID:2kZh58720
714

--東の王国、外--

勇者「修行バカばっかいるからとにかくここを離れるわよ。ぴゅーーい」

ばさっばさっ!

グリフォン「サーイエッサー! お久しぶりであります教官殿!!」

ばさー!

空からグリフォンが舞い降りる。

ポニテ「おっひさー!」

勇者「ではこの子達を失われた王国まで届けてくるわ。その間の留守しっかり頼むわよ、盗賊」

盗賊「あぁ、任せとけ。ここにはユー君とか五柱とかフォーテちゃんとか凄いのいっぱいいるからな! 彼らならきっと大丈夫だ!」

勇者「人任せにするなよ」

完全に他人事な盗賊だった。

勇者「……じゃあ、行って来るから」

盗賊「おう、心配すんな。しっかりやってこい」

ばさっ、ばさっ、ばさっ!!

フォーテ「うえぇええええ!! お姉ちゃんが行っちゃうよおおおおおおおおおお!!」

地面が漆黒の闇へと変わり、盗賊が少しずつ地面に埋まっていく。

708: 2015/04/28(火) 03:42:06.67 ID:2kZh58720
715

--空--

ばさっばさっ!

ハイ(しかし修練の塔、か……確か前の時に一度だけ名前を聞いたような気がするけど、どんな場所かわからないからな……でも勇者さんがここまで自信満々に言うくらいなんだからきっと凄いところなんだよね? そんな場所で先輩達が修行を積んだら魔王側もただじゃすまないと思うんだけど……妨害は無いみたい……もしかして、何度繰り返してもこの修練の塔のイベントは発生しなかったのかな?)

ハイはグリフォンの背中で考えている。

ハイ(……ありえるかも。特別なイベントとイベントが偶然合わさることで発生するようなイベントだったとしたら。例え何度繰り返しても取りこぼしちゃうイベントとか……)

びゅごおおおおお!!

勇者「風属性移動速度上昇魔法レベル4」

アッシュ「やるな。さすが先代勇者……移動速度上昇魔法レベル4!」

グリフォンに魔法をかけあってどんどん飛行スピードを速めている二人。

ギュン!!

グリフォン「ぎゃふぁっ! か、風で息ができないで、あります!」

ポニテ「羽ばたくの止めろよ」

レン「っていうか今までアッシュがかけてた移動速度上昇魔法って、もしかして毒属性なのかにゃ? 毒のスピードアップってどういうことなのかにゃ?」

ハイ「ど、ドーピングもほら、一種の毒みたいなところあるじゃないですか。だから多分……それかと」

※アッシュの補助魔法は無属性でやってます。

709: 2015/04/28(火) 03:43:36.12 ID:2kZh58720
716

--失われた王国、入り口--

ばさっばさっ

占師「ほっほっ。やってきたねぇみんな。待っておったよ」

失われた王国に着くと出てきたのは占師。

ポニテ「おばあちゃん、やっほー!」

占師「はいはいやっほー」

ぱんぱんぱん

ポニテ、占師「「いぇーい!」」

と手を合わせる二人。

トサッ

占師「おーおー、勇者ちゃんもやっほー」

勇者「いきなりだけどお婆ちゃん、時間が無いの。さっそく修練の塔を使わせて頂戴」

占師「ほっほっ、わかってるよ。さぁみんなついてきなさい」

……ざり

ハイ「?」

その時ハイは何かの物音を感じて背後を見た。

ハイ(気のせい……かな?)

710: 2015/04/28(火) 03:45:13.66 ID:2kZh58720
717

--失われた王国、修練の塔入り口--

占師「ほっほっ。ついたついた」

ひゅおおおおおお

ツインテ「これが……修練の塔……」

アッシュ「なんだかデザインが……」

ポニテ「芸術が爆発しそう……」

レン「ぱくりにゃ」

ふよふよふよ

ぴっち『お、ツインテ様達だっぴ。やっと来たのかっぴ』

ツインテ「あっ、ぴっちちゃん! お久しぶりです!」

ぱっち『ぱっちもいるっぱ。お久しぶりっぱツインテ様』

ふよふよふよ


レン「修練の塔の周りに妖精がいっぱい飛んでるにゃ。これも修行に必要なのかにゃ?」

占師「うむ。時間に関することをするには妖精の力を借りるのが一番だからねぇ」

711: 2015/04/28(火) 03:46:53.12 ID:2kZh58720
718

--失われた王国、修練の塔入り口--

ポニテ「時間に関する……? わー、なんだか本格的にそれっぽい! 部屋の中の一年が外の一日相当になりそう!!」

ハイ(……あれ?……妖精は確か時間を遅める方、だったよね? つまりそれはどちらかというと部屋の中の一日が外の一年になる浦島方式だったような)

占師「気づいたかね運命の子よ」

占師はそっとハイの肩に手を置いた。

占師「だがきっとハイちゃんが考えていることとも違うよ。これは時間を早めたり遅くしたりするもんじゃないんだ。時間旅行の一種なのさ」

ハイ「時間、旅行……?」

占師「そうさ。そこでみんなは確実に強くなる。あの人らの修行を受ければ、ね。さ、時間がもったいないよ。入った入った」

占師は入り口を指差す。

占師「行ってらっしゃいみんな。そしてそこで、誰が5人目の勇者なのか、答えを出しておいで」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「」」」

占師「修行が終わる頃にはきっと、答えがでてるはずだから」

712: 2015/04/28(火) 03:49:17.89 ID:2kZh58720
719

--失われた王国、修練の塔入り口--

ツインテ(勇……者)

アッシュ(……俺としたことがすっかり忘れていた)

ポニテ(私達そういや、誰が勇者になるか勝負しながら旅してたんだったっけ……)

三人はお互いの顔を見つめあった。

ハイ(! 世界を救うには五人の勇者が必要……確かそんな話をしていましたね)

ハイは勇者の顔を見る。

ハイ(勇者の力を持つのは、勇者さん、十代目さん、ユーさん、そして僭越ながら私……つまり後一人足りない……)

ハイはツインテ達を見る。

ハイ(後一人がここにいる……そうか、確かに修練の塔は必要なはずだ……最後の一人を見つけるために……勇者が五人集まらないとバッドエンドを覆せないって、そう言ってましたもんね)

アッシュ「……ふん、今更だな。俺は……この中の誰が勇者であろうと構わん」

首を鳴らしながらアッシュが入っていく。

ツインテ「……そうですね。でも……修行怖くないといいんですが……」

おどおどと入っていくツインテ。

ポニテ「……五年ぶりくらいの最初の設定思い出した気がするよー、なっつかしー……まぁいいや! 行って来るね! ママ! お婆ちゃん!」

手を振りながら入っていくポニテ。

713: 2015/04/28(火) 03:52:45.97 ID:2kZh58720
720

--失われた王国、修練の塔入り口--

レン「なるほど、そういうことなのにゃ……こうなりゃなんとしてもレンの力でツインテを勇者にしないとにゃ」

   ぴしっ

ハイ「」

どんっ

レン「ぶっ! 何立ち止まってるのにゃハイ。さっさと塔の中に入って欲しいのにゃ」

勇者「? どうしたのハイ。後は貴女達だけよ?」

その時になって、ようやくハイは気づいた。

ハイ「し、しまった……これ、だったんだ」

勇者「?」

バッ!

ハイは後ろを振り返る。

ハイ「!」

すると失われた王国の入り口辺りに一匹のガーゴイルがいるのを見つけた。

ガーゴイル「……にや」

ハイ「勇者さん!! 急いで東の王国へ戻りましょう!!」

勇者「!? ちょ、何を言ってるのハイちゃん! 貴女はここで修行をつけるのが先」

ハイ「ビィは、ずっとこの時を待ってたんですよ!! ビィはループの中で修練の塔に入ったことがあるんです!!」

勇者「……え?」

ハイ「ビィは勇者候補の三人がいなくなるのを待っていたんです!!」



--東の王国、近隣--

ダーク牧師「情報来ました。どうやら修練の塔とやらに三人が入ったようです」

ビィ「オッケーでーす。あそこは一度入ったら簡単にはでてこれないですからねぇ。ではでは~……」

ビィの後ろには

銀蜘蛛「」

桃鳥「」

茶肌「」

ヤミ「」

蝿男「」

ウェイトレス「」

脳筋「」

ザンッ!!!!

魔王が勢ぞろい。

ビィ「ラストバトル~始めちゃいましょうか★」

724: 2015/05/12(火) 04:08:29.65 ID:z91gI7+v0
721

--東の王国--

ドォン!! ドゴオォオン!! パラパラ……

参謀長「……どうやら来たようですね」

軍師「そのようだぜぃ」

代表「ふ……勇者さん達が出かけて手薄になったこのタイミングでの襲撃……」

三人はくいっと眼鏡をあげる。

参謀長、軍師、代表「「「予想通り!!!!」」」

バンッ!!

隈を作った三人は一斉に立ち上がり、作戦会議室から外に出た。

軍師「プラン55発動だぜぇい!!」

725: 2015/05/12(火) 04:09:41.70 ID:z91gI7+v0
722

--東の王国、A--

ドォオン!! ドドドオンン!!

ダーク牧師「ふははは! どうです?……三強などとうに凌駕したこの最強の力!!」

ガーゴイル1「ぐぎゃああああーーー!!」

ガーゴイル2「ぎゃぐがあああああ!!」

モンスターを指揮するダーク牧師と、それに対峙する完全装備の兵士達。

東兵士「魔族やモンスター共をここで食い止めろ!! 人々に指一本でも触れさせるなーーー!!」

南兵士「おうとも!! 我らの武芸見せてやる!!」

わー!! わー!!

ダーク亜人王「多国籍軍ですか……人種の差を乗り越え手を取り合う……美しい光景だ。だが」

ずんっ!! ドガーーーーン!!

北兵士「がわーっ!?」

ダーク亜人王が四股を踏むとそれだけで数十人の兵士達が吹き飛んだ。

ダーク亜人王「――もう遅い。今更遅い! お前達には氏しか残されていないのだ!!」

726: 2015/05/12(火) 04:10:54.26 ID:z91gI7+v0
723

--東の王国、A--

??「そいつはどうかな!」

ザシャアァア!!

ダーク亜人王「! 貴方は……」

ダーク亜人王の硬い肌を槍がなでた。

槍兵「ちっ、傷一つつかねぇかよ。本気でやったんだがなぁ……」

虎男「亜人王……様」

ざんっ!

西兵士「!! 三強方が来て下さった!! 皆、ここが踏ん張り時だぞーー!!!」

おおおーーー!!

影月「……やれやれぇ、これまた骨の折れそうな相手やっちゃな。わいの人生いっつもこんなんやで」

ぽろん

吟遊詩人「皆も皆で大変なはず。文句ばかりじゃいけないですよ~」

影月「まぁ……そうやな」

ダーク牧師「……魔族化した私達を、たったこれだけの人数で止められるとおもっているのですか? はっ! 笑わせてくれる。メインディッシュの前に、遊ばせてもらうとしますかぁ!」

727: 2015/05/12(火) 04:11:24.27 ID:z91gI7+v0
724

--東の王国、B--

オオオオオオオオオオオオオ……

ケンタウロス「……うーん、ちょーっと……分が悪い、かな……」

ダーク鬼亜人「……」

ダーク先生「確かにコレは……厳しいね」

B地点で三体の亜人を待ち構えていたのは、

フォーテ「あはははっ! きたきたーっ、三人もきたー! これなら僕の準備運動にもってこいだねっ!……せめて僕の体温まるまでは壊れないでねっ……?」

邪悪な笑みを浮かべるフォーテ。

ケンタウロス「退却を提案するわ」

ダーク鬼亜人、ダーク先生「「異議なし!」」

728: 2015/05/12(火) 04:12:28.33 ID:z91gI7+v0
725

--失われた王国、修練の塔入り口--

ひゅおおおおお……

勇者「……ポニテ達三人がいなくなるのを、待っていた……」

勇者はハイの言葉を口に出して繰り返した後、

バッ!

勇者「雷属性攻撃魔法、レベル3!」

バシィィィィィー!!

ガーゴイル「!」

背後の物陰に隠れているガーゴイルに向けて魔法を放った。

ばりばりばりばりばりーーー!!

ガーゴイル「ぐ、ぐぎゃああああああああああああああ!!」

どすん、ぷすぷすしゅぅーー……

勇者「……確かにあの三人は私達の切り札となる存在だけど……でもトリガーがそこまであの子達を警戒するものかしら。いなくなるのを待たずに攻めてくるんじゃ……」

ハイ「前回もトリガーはツインテ先輩達のことを警戒していました。なにせ、あの魔王になった勇者さんを直接送り込んできたんですから」

勇者「!……ハイちゃん、なぜそれを今言うの?」

ハイ「え?」

勇者「その情報をなぜ今まで黙っていたの? ハイちゃんらしくもない……」

ハイ「……あ」

729: 2015/05/12(火) 04:14:36.77 ID:z91gI7+v0
726

--失われた王国、修練の塔入り口--

ハイ「あ、あれ? 確かに、なんで? 私……」

勇者「!……そういうことか。グリフォン!」

ばさばさー!

グリフォン「イエス! マム!!」

勇者(……私達全員の思考が少しずつ狂わされてる……腹黒の捨石作戦には他にも狙いがあったということか……あいつが氏んだ時に思考撹乱系の魔法が発動するようにしかけられていたんだ……)

バッ!!

勇者はグリフォンに飛び乗った。

勇者(大体私達が本拠地として計画していたのはこの失われた王国だったのに……なんで、東の王国なんかにしてしまったんだろう……!!)

ハイ「ゆ、勇者さん」

レン「なにやらピンチっぽいにゃね」

勇者(どうする……ハイちゃん達を連れて行くべきか否か。出来ることならハイちゃん達にもパワーアップして欲しい。けど)

ハイ「勇者さん、私達も連れてってください!」

レン「!」

ハイ「とても嫌な予感がします……今私達が行かなきゃ全てが終わってしまうような……」

勇者「ハイちゃん……」

ハイ「パワーアップも何もかも世界が残っていてこそです! 滅ぼされた後に修行を終えたって何も残りません!」

勇者「!」

ハイ「それに……ビィを倒せるのは、多分私だけです」

勇者「……」

ハイの真っ直ぐな瞳を見た勇者は迷わなかった。

勇者「……わかった。乗って」

勇者はハイ達に手を伸ばす。

ハイ「はい!」

730: 2015/05/12(火) 04:15:35.02 ID:z91gI7+v0
727

--東の王国、A--

ダーク亜人王「ぬうううううううううううううあっ!!」

ドオオオオオオオオオオン!!

ダーク亜人王の掌底打ちを交わした槍兵、しかしその攻撃は後ろの城壁へと命中し、

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

槍兵「! おいおい嘘だろ……?」

虎男「!! 城壁が破壊された……がお」

影月「……やー、めちゃくちゃ硬いわいでも、あれはさすがに受けたくないでぇ……」

ひゅんひゅん!! ききん!!

雨のように降り注ぐ矢の援護射撃、だがダーク亜人王に傷一つつけることもできない。

吟遊詩人「歌で威力は強化しているんだが……きついね」

731: 2015/05/12(火) 04:17:54.48 ID:z91gI7+v0
728

--東の王国、近隣--

どおおん! どごごおおおん!!

モンスターと人間達の戦争を遠くから見物している魔王達。

桃鳥「たーまやー。うふふ。中々楽しい見世物だな、って、私思っちゃいます」

銀蜘蛛「イーヨネーーー、ハヤクボクモマザリタイヨオォー」

脳筋「はっはっはっ。あの中には強い奴がいるんだろうなぁ」

ゴオオオオオオオオ!!

その時脳筋の眼に飛び込んできたのは東の王国の上空で竜騎士達を先導し、モンスターを撃退している聖騎士の姿。

脳筋「……いたなぁ、とびっきり強いのが」

ヤミ「……」

ウェイトレス「? どうかしたの? ヤミ君」

何かを考えるようにしているヤミに話しかけるウェイトレス。

ヤミ「……数万体のモンスターと数十人の魔族からなる我らが軍団が相手だと言うのに、人間共は戦力を出し渋っている気がしてな」

ウェイトレス「ほう……」

ウェイトレスは目を細めて東の王国を見る。

ウェイトレス「確かに。ギリギリおし止めておける程度の戦力しか出されてないかも。私達が直ぐ傍に控えてるからそれに備えてるのかな?」

ヤミ「ふっ……」

ヤミは笑う。

ヤミ「それは浅はかにもほどがある」

ウェイトレス「ばっかだねぇ……そんなんじゃすぐ終わっちゃうのに」

732: 2015/05/12(火) 04:18:51.17 ID:z91gI7+v0
729

--東の王国、A--

どがががががぁああん!!

槍兵「ちぃ! おい、大丈夫か虎男!」

虎男「ぐ……問題ないがお……」

槍兵「問題ないわけあるかよ! もろに受けちまって!」

ダーク牧師「仲間の心配とは余裕ですねぇ!!」

槍兵「!」

ガーゴイル「ぎゅるるるあああああああああああ!!」

サッ!!

槍兵は繰り出されたガーゴイルの攻撃をすんでのところで避けた。

ダーク牧師(……妙ですね……なぜかあちらさん、攻撃らしい攻撃をしてこない……?)

どがぁああん!!

ダーク亜人王(何か他に狙いがあるのか?)「むんっ!!」

ドガガガガガガアアアアアアアアアアン!!

影月「ぐほっ!? つ、つーーー!! 堪忍してぇや! ごっついったいわー!」

733: 2015/05/12(火) 04:20:01.84 ID:z91gI7+v0
730

--東の王国、B--

フォーテ「え? おじちゃんがあの災厄の鬼亜人なの? なーんだ。この程度だったのかぁ。がっかりー!」

ダーク鬼亜人「……」

フォーテは闇から生やした氏者の腕で魔族達を捕らえていた。

ケンタウロス「……魔族が三体がかりだというのに……本物の化物か……」

オオオオオオオオオオオオオオオ

フォーテ「結局準備体操にもならなかったなぁ。ふぁああぁあ」

フォーテは退屈そうにあくびをする。

ダーク先生(? 止めを刺さないのか?)

フォーテ「むにゃむにゃ……これ以上遊んじゃったら氏んじゃうし、早く始めてくれないかなー」

フォーテは頬を膨らませた。

734: 2015/05/12(火) 04:21:02.59 ID:z91gI7+v0
731

--東の王国、C--

ぴぃいいん……

参謀長率いる沢山の兵士達が、青色に光る魔法陣を囲んでいる。

参謀長「――では、準備はよろしいですか?」

通信師「はい。いつでもいけます」

魔導長「こっちも大丈夫なの」

兵士達も皆頷く。

参謀長「……了解です。それでは、『魔族化解除魔法、発動!!』」

ヴン!!



--東の王国、A--

ズンッ……!!

ダーク亜人王「」

ダーク牧師「……な、んだ……この感覚は……?」

……しゅうう

槍兵「いててっ……ふぅ……やっと始まったみたいだな」

735: 2015/05/12(火) 04:22:45.43 ID:z91gI7+v0
732

--東の王国、B--

ぎぎぎ……

ケンタウロス「!! あ、頭ん中がかき回される!!」

ダーク先生「だ、だだだ、だが……ふ、不思議な感覚です……」

しゅうぅうう……

フォーテ(おわー。邪気が消えていく……魔族を味方に引きずり込んじゃうなんて、面白いことを考え付く人がいたもんだよねーっ)



--東の王国、C--

ばちっ、ばちちっ

参謀長「ふう……」

魔導長「手ごたえはあったけど、様子はどうなの?」

通信師「今調べています。少々お待ちを……」

通信師は耳に手を当てて探っている。

736: 2015/05/12(火) 04:24:44.77 ID:z91gI7+v0
733

--東の王国、A--

ダーク亜人王「ぐ、うぐ……!!」

ずんっ、ずずんっ!!

亜人王は頭を抱えながら暴れていた。

虎男「亜人王様!! どうかお気を確かにがお!! 貴方はとてもお強い方がお!! 魔王の呪縛など簡単に振り払ってしまえるがお!!」

たたっ

亜人王に駆け寄る虎男。

しゅうううぅううう

ダーク亜人王「ぐ!……この……ふざ、けたまね、をおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

虎男「!!」

亜人王は咆哮し、腕を振り上げた。

ぶおん!!

槍兵「あぶねえ避けろ!!」

影月「あかん! まにあわへん!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!








虎男「……はっ……はっ……」

しゅぅうう……

ダーク亜人王「ふー、ふー……よくも……よくも魔王どもめ!」

亜人王の拳は地面をたたき砕いていた。

槍兵「……ち。なんだよ、驚かしやがって」

ダーク亜人王改め、亜人王「……すまなかった虎男……魔王どもに利用された不甲斐ない私を許しておくれ」

虎男「あ、亜人王様!!」



--東の王国、C--

通信師「……成功です! 魔族化した皆さんは解放されました!!」

737: 2015/05/12(火) 04:25:40.92 ID:z91gI7+v0
734

--東の王国、C--

わーわー!!

疾風「ふー……とりあえずひと段落やんな」

魔導長「……」

魔導長は椅子にこしかける参謀長をじっと見つめていた。

魔導長(魔族に変えられてしまったのなら、戻してしまえばいいだなんて……いくら準備期間があったからっておいそれと出来ることじゃないの)

魔導長は水の入ったコップを手に歩み寄っていく。

魔導長「はい。どうぞなの」

参謀長「あぁ、どうも。やれやれ、歳を取ると魔力の捻出も中々骨が折れます」

魔導長から渡された水を飲む参謀長。

魔導長「またまたー。全然若い外見してるなの。お父さん」

参謀長「いやいや、これでも相当歳をくって……え?」

738: 2015/05/12(火) 04:27:55.25 ID:z91gI7+v0
735

--東の王国、A--

しゅうう……

ダーク牧師改め牧師「く……こんな形で利用されるなんて……屈辱です」

魔族達はすっかり正気に戻っているようだった。

槍兵「いや、しかしこりゃすげぇな……あの魔族が丸々俺らの仲間になっちまうなんて……」

槍兵は強力な力を発している魔族達を見て言った。

吟遊詩人「仲間になるというよりは、元の心を取り戻した、というべきかな~」

亜人王「……奴らの呪縛から解き放ってくれて礼を言う。姿こそ元には戻らないが、贅沢は言っていられない」

虎男「亜人王様……!」

ドスンドスン!

オルトロス「ぐああああああああああああああ!!」

そこに兵士数名を咥えたオルトロスが現れた。

槍兵「! っと、どうにかなったのは魔族だけでモンスターはそのままだ! 気を抜くなよお前ら!」

亜人王「私に任せろっっ!!」

どがあああああああああん!!

オルトロス「げひゅん!?」

亜人王の一撃で絶命し、崩れ落ちるオルトロス。

ずずずうーーーん。

槍兵「う、お……ワンパンかい……」

亜人王「これからは、共に戦おうぞ、人の子らよ!!」

739: 2015/05/12(火) 04:30:41.13 ID:z91gI7+v0
736

--東の王国、近隣--

ずずーーん、どかーーーん

ウェイトレス「……」

桃鳥「ありゃ……魔族が奪われちゃいました……完全に形勢逆転しちゃってます」

蝿男「ひ、ひひ! お、面白いことを考え付く奴が、い、いるなぁあ」

ビィ「くすくす」

それを見てなおにやにやしているビィ。

ウェイトレス「……ビィ、あんた最初からこれわかってたの?」

ビィ「はい。わかってました★ ぜーんぶっ」

ウェイトレス「……だったら何か対抗策を打ったり出来たんじゃないの? せっかく作った魔族が全部あっち側に戻っちゃったのは少し痛いんじゃない?」

ビィ「そんなことないですよ。魔王である皆さんさえいれば何の問題も無いのです。全て私のプラン通りですよ」

桃鳥「! うおー、凄いですー。これすらもプラン通りだったのですかー! さすがと言わざるを得ません」

ビィ「えぇ、全ては……磐石なバッドエンドのために」

ウェイトレス「……」

740: 2015/05/12(火) 04:31:29.77 ID:z91gI7+v0
737

--東の王国、B--

どかーん! どかかーーーん!!

ケンタウロス「よくも今までこきつかってくれたねぇ魔王共!!」

バルルルルル!!

ゴブリン「ぎゃーーーーー!!」

モンスター達を一掃していく元魔族達。

鎧兵士「うーむ……圧巻だ」

弓兵士「楽ちんだ」

どかーんどかかーん!!

フォーテ「こらこら気を抜いちゃだめーっだよ? おじちゃん達ー。本当の戦いはこれからなんだからさっ」

弓兵士「お、おうすまんフォーテちゃん。確かに油断しておった。肝に銘じるよ」

フォーテ「……」

フォーテは頬杖をつきながらビィ達がいる方向を見ていた。

フォーテ(さーて、もうすぐかな? うふふ……楽しみだなぁ)

フォーテの下で闇が蠢いている。

741: 2015/05/12(火) 04:33:33.44 ID:z91gI7+v0
738

--修練の塔、一階--

ぴちょーん

ツインテ「う、うぅん……」

ポニテ「あ、ツインテちゃん起きた? おはよー!」

ツインテ「ポニテさんおはようございます……ここは」

ポニテ「忘れちゃった? 修練の塔だよ?」

ツインテ「! そ、そうでしたすみません、ボク頭が回ってなくて……あれ? なんでボク気を失って……」

アッシュ「時間の流れとやらに飲まれたんだろう。俺らも差はあれど気を失っていた」

ツインテ「アッシュ君……」

ツインテはきょろきょろと辺りを見回した。

ツインテ(……不思議な場所)

ツインテ達がいる一本の道以外は、全てジャングルのような原始的な場所だった。

アッシュ「……しかし来んな」

ツインテ「え?」

アッシュ「レンやハイだ。俺達がここに着てから随分と時間が経っている。なのにまだきやしない」

ポニテ「……外で何か不足の事態が起きたのかもね」

アッシュ「……だな」

742: 2015/05/12(火) 04:35:30.02 ID:z91gI7+v0
739

--修練の塔、一階--

ツインテ「不測の事態、って……?」

アッシュ「わからん。だが、悠長に構えていていいはずがない。時間は有限だ。あいつらを置いて進むか待つか。選ばなくてはな」

ポニテ「私は……進んだ方がいいと思う。何かトラブルが起きてるんなら、さっさと強くなってとっとと帰還するのが一番だよ。出口は無いみたいなんだし」

アッシュ「珍しく意見が合うな。俺も同感だ。ただでさえここは時間の流れが掴めん。ぼーっとしてると何もかも手遅れになる可能性がある」

アッシュとポニテはツインテの顔を見る。

ツインテ「……ですね。ボクもそう思います。もしかしたら仲間と合流できないのも修行の一環なのかもしれませんしね」

アッシュ、ポニテ「「……それは考えていなかった」」

なるほどと頷くアッシュとポニテ。

アッシュ「……しかしこの三人パーティか。懐かしいな」

ポニテ「ふふっ、だね。私達の原点だよね」

ツインテ「……はい」

ツインテは立ち上がってアッシュ達の傍へ歩いていく。

ツインテ「……でも懐かしんでばかりもいられません。行きましょう。アッシュ君、ポニテさん」

アッシュ「おう」

ポニテ「うん」

ざっ!

743: 2015/05/12(火) 04:37:24.59 ID:z91gI7+v0
740

--修練の塔、一階--

ぎっ、ぎいぃいい……

鉄で出来た扉を開くツインテ達。

???「ヤァ、キミタチガソウナンダネ」

ツインテ「!?」

そこにいたのは……

???改め銀蜘蛛「マッテタヨー。ミライノユウシャノタマゴタチー」

アッシュ「こいつ……魔王の一人の銀蜘蛛か!?」

シャッ!!

瞬時に戦闘モードに入るアッシュ。

ポニテ「待って待ってアッシュ君。あれから魔王の気配はしないって」

アッシュ「何?……本当だ」

銀蜘蛛「魔王ダナンテ、失礼シチャウナーマッタク」

ドシン、ドシン

銀蜘蛛はゆっくりとツインテ達の方へと歩いていく。

銀蜘蛛「ボクハ銀蜘蛛。約束二従ッテ、君達二稽古ヲツケテアゲルカラネッ」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「……え?」」」

744: 2015/05/12(火) 04:37:45.88 ID:z91gI7+v0
それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。

勇者と魔王がアイを募集した【16】

引用: 勇者と魔王がアイを募集したFINAL+