1: 2015/07/14(火) 03:25:49.69 ID:WEOGsgg60

5: 2015/07/21(火) 03:58:01.41 ID:efNyxpm00
1001

--対ウェイトレス領域--

ボロッ……

召喚士「あーあ、魔王人形もウェイトレスと一緒に砂になっちまったでやんす。戦力になると思ったのに」

鷲男「じょ、冗談じゃありませんよ! あんなのをコントロールするなんてとてもとても!」

人形師「確かに我々には手のあまるものでしたねぇ。人間、身の丈にあったことをしないと待ってるものは自滅ですよぉ」

召喚士「……で、やんすな。なら仕方ないでやんす」



ビィ「召喚士さん達、みーっけです★」

鷲男、調教師「「!?」」

まるでワープでもしてきたかのようにビィがその場に現れた。

召喚士「この娘っ子はおいら達らしく」

人形師「自分達らしいやり方でやりましょうかねぇ」

ボッ

しかし召喚士と人形師は予想していたとでもいうかのように、瞬時に攻撃に移った。

どがぁあああああああああああああああああああん!!

6: 2015/07/21(火) 03:59:11.37 ID:efNyxpm00
1002

--対ウェイトレス領域--

ビィ「……っとぉ」(見てたのに気づいてたの? いや、この人達そこまで優れたもの持ってなかったはず……)

ぼしゅぅうう……

黒い煙が辺りを包んでいく。

ビィ(めくらまし……確かにネクロマンサーの索敵能力は高くない)

召喚士「全くとんでもないお譲ちゃんでやんす。先ほどの火の攻撃、君がやったでやんすね?」

人形師「恐ろしいですねぇ。どいつもこいつも化物で本当にやになっちゃいますよぉ」

ビィ(んー、声が反響して場所が特定できないな。吹き飛ばしちゃえばすぐにわかるけど……それじゃあ面白くないよねぇ★)

召喚士「おかげさまで温存なんてしてる余裕なんてないのでやんす。計画をぶっ壊した分とくと味わえでやんす」

人形師「1000回以上同じ戦場で戦ってきた者同士が持てるパーティスキル」

召喚士、人形師「「盟友!!」」

ドンッ!!

ビィ「……おやおや?」

7: 2015/07/21(火) 03:59:42.49 ID:efNyxpm00
1003

--対ウェイトレス領域--

ぼっ!!

五頭巨象「ぱおおおおおおおん!!」

超蠍「ぎしゃああああああああ!!」

サイクロプス「おんぎゃあああ!!」

ビィ「!」

煙を吹き飛ばして現れたのは三体の巨大なモンスター。

サイクロプス「ぐごぎゃああああ!!」

ズズーーーーン!!

そしてサイクロプスが拳を振り下ろし、大地を砕く。

ビィ(大型モンスターを三体同時に召喚? やりますねー召喚士さん。でも)

五頭巨象「ぱおおおおおおおおおおおおおお!!」

どぎゃっ!!

突進してきた五頭巨象に魔力を込めた拳を叩きこむビィ。

五頭巨象「ぱ、おぉ、おおおおおおおおん」

ずずずーーーん!

ビィ「今更こんなの通用しませんよ?」

ドギャッ! ドゴッ!!

続けて超蠍とサイクロプスを共に一撃で沈めた。

8: 2015/07/21(火) 04:00:59.72 ID:efNyxpm00
1004

--対ウェイトレス領域--

シャッ!

ビィ「!」

ジャック「ぁおqw38t0jdl」

ビィ「人形ですか……? 頚動脈をねらったみたいですが、その程度のナイフで切れるとでも?」

ぼふっ!!

陸王もこもこ「オア283ghぁkらwれおhじゃぺろhgk!!」

どぎゃっあああああああああああああ!!

今度は巨大な陸王もこもこがビィに襲い掛かる。

フォンフォン!!

巨大な鉤爪を振り回す陸王もこもこ。

がしっ!

ビィ「だから、こんなのは全部一緒なんですよ。ちっちゃい人形だろうがおっきな動物だろうがー」

ざくっ!

ジャック「3うとうぇいぐじゃおうぃjg」

ビィ「」

ジャックのナイフがビィの太ももに突き刺さる。

9: 2015/07/21(火) 04:02:26.23 ID:efNyxpm00
1005

--対ウェイトレス領域--

ビィ(ナイフが、刺さった……? 今の私に?)

召喚士「おいら達を甘く見たでやんすね?」

人形師「我々なんかに傷をつけられるとは思わなかったでしょう? でも人は戦いの中で必ず隙を作るものなんですよぉ」

陸王もこもこ「あおあいうぇrごあいwごあい!!」

どどどどど!!

ビィ「確かに、ちょっと遊び過ぎちゃったかもしれませんねぇー」

ザンッ!!

ビィは手刀で接近する陸王もこもこの首を刎ねた。

ブンッ

ビィ「これからはもう少し魔力の強度をあげておきます★ もう何も通しませんよ?」

キラン

その時、また煙の中で何かが光る。

ビィ「また次の召喚獣? それともお人形さんの方ですかぁ?」

ダッ

現れたのは、

ビィ「!!」

赤き絶壁――

魔王勇者「ああああああああああああああああああ!!」

ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

10: 2015/07/21(火) 04:04:00.13 ID:efNyxpm00
1006

--対ウェイトレス領域--

召喚士(っし! 入ったでやんす!)

人形師(さすがに魔王の一撃は痛かろうですよぉ!)

ビィ「……あぁ、そういえばこのルートだと召喚士さんの幻想召喚、変わるんですよね。レアケースだったから驚いちゃいました」

魔王勇者「!」

確かに魔王勇者の剣はビィを捕らえた。だが、ビィには傷一つ無い。

ビィ「自分の眼で見た魔王の恐怖。そりゃあ昔話より強烈ですよね。自分の中の最強が入れ替わったとしてもおかしくない★」

召喚士(……あれでノーダメ? うーん、さっきのはラッキーパンチだったようでやんすね)

人形師(駄目で元々ぉ、ならこれはどうですかぁ!)

シュルル!!

人形師は糸を操り、ビィに向かって攻撃する。

ビィ「……くす。いいですよ。最後まで、しっかり付き合ってあげます」

魔王勇者「……」

ボロッ

魔王勇者は既にビィによって砂に変えられていた。

16: 2015/07/21(火) 20:21:53.92 ID:efNyxpm00
1007

--対ビィ領域--

ヒュオオオオオ

カブト「――で、どうする気だ。奴は一体誰がどうやって倒す?」

盗賊「うぅん。困った、ねぇ……」

勇者「正直かなり厳しいと思うわ。今の戦力では特に」

ユー「……」

ハイ「……」

俯いたまま顔をあげようとしないハイ。視点は定まらず、小刻みに震えていた。

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

ハイ「!!」

ビクッ!

オオオオオオオオオオオオオン……

少し距離の離れた場所で巨大な火柱が上がった。それは誰かがビィの犠牲になった証。

盗賊「んー……ビィちゃんめ。残った俺達の仲間を少しずつ頃していってやがるよ……」

ハイ「ッl」

17: 2015/07/21(火) 20:23:06.13 ID:efNyxpm00
1008

--対ビィ領域--

勇者「時間が経てば経つほど不利になるわ……早いとこ動かないと本当に何も出来なくなる」

スッ

そう言って勇者は大剣を持って立ち上がる。

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

今度は別の場所で巨大な氷の柱が出現する。

カブト「ッ! 奴め、やりたい放題か。魔王ではなく、ただの人間がここまで脅威になるとは……」

ハイ「……」

ハイは少しだけ口を開き、

ハイ「……もう、無理かもしれません」

と小さな声で呟いた。

18: 2015/07/21(火) 20:26:15.69 ID:efNyxpm00
1009

--荒野--

ザッ……

ビィ「侍先輩ー、みーっけっ★」

通信師「!!」

侍「ふー……他の者達と合流しようとしていた矢先にそちらから来るとは……ビィちゃん殿、少しばかりせっかちさんでござるよ」

賭博師「俺らだけでも集まれたのは偶然か? それとも君が何か仕組んだ?」

ビィ「いーえ? 私は何もしていませんよ。それにしても偶然だなんて言葉、貴方らしくないですね。確率を操る賭博師さん★」

通信師「……はぁ、出会っちゃったなら仕方ありませんね……戦うしか、無い!」

医師「出来てせいぜい時間稼ぎ……ですかね。でも……ただ氏んでやるつもりはないですよ」

符術師「小指の爪くらいは引き千切ってやる!! 覚悟しな!!」

ビィ「くすくすくす……黄金世代の皆さんかぁ。皆さんは私を楽しませてくれるのかな?」

ビィは両手に持っている召喚士と虎男の頭部を放り投げた。

ドチャッ

侍(やれやれ……ツインテ殿、アッシュ殿、ポニテ殿、レン殿、そしてハイ殿……後は頼んだでござる)

19: 2015/07/21(火) 20:28:04.97 ID:efNyxpm00
1010

--対ビィ領域--

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

遠くの地で巨大な放電が発生する。

ハイ「!」

びくっ!

カブト「……何? 今なんと言った、ハイ」

雷のことなど意に介さず、カブトはハイに先ほどの台詞について問いただした。

ふるふる

ハイ「……い、今のビィは、とんでもない力を持っています。勇者因子は効かないし、フォーテちゃんの力でも敵わなかった……その上ビィには何万回も繰り返したことで手に入れた、未来の情報を持っている……」

ゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

遠くの地で大地が隆起する。

勇者(! あの場所は……)

ハイ「た、ただでさえ勝ち目が薄い敵なのに、その上どんどん仲間が、消されていく……こんなの、無理ゲーじゃないですか……!」

盗賊「ハイちゃん……」

ハイ「……ッ」

ざり

ハイは地面の砂を握り締める。

ハイ「今回も、駄目、だったっ!」

20: 2015/07/21(火) 20:32:00.37 ID:efNyxpm00
1011

--対ビィ領域--

ドンッ!

ハイ「やり直したのに!……全部捨てて、やり直したのに……っ!! わ、私が、どこかで間違えたから……!」

ドンッ! ドンッ!!

地面を叩くハイ。血が滲んでもハイは叩き続けた。

ザッ

勇者「――それでも、私は諦め無いわ」

ハイ「」

すたすた

勇者は先ほど大地が隆起した場所に向かって歩き始めた。

勇者「絶望的なのはわかってる。奇跡が起きないこともわかってる。でも諦めたく無いのよ……私の大事な人たちが殺されるっていうのに、それを黙って見てなんていられない……!」

勇者は速度強化魔法を自分にかけ、走り出した。

ドンッ! 

21: 2015/07/21(火) 20:37:11.75 ID:efNyxpm00
1012

--対ビィ領域--

盗賊「あ、おい! 勇者一人で行くの!? 作戦とかそういうのいいの!?」

ひゅううううぅうううう……

盗賊「……もう。人の話聞かないんだから」

ぎりっ……

ハイ「わ……私だって」

ぎりっ!

ハイ「私だって、皆さんが氏んじゃうのは、やですよ!!」

ぽた、ぽたたっ

ハイは大粒の涙をこぼした。

ハイ「ひっ、ひっ! し、しかも、皆さんを……皆さんを頃してるのは私なんですよっ!? 私がいなければ、こんなことにならなかったのに……!! もう、何をしたらいいのか、どうやって償えばいいのか……わからない!!」

ぽろぽろ

盗賊「……ハイちゃん」(そんな風には見えなかったけど、ハイちゃんの精神はとっくに限界に来てたんだな……今までの時空を越えた旅で色々抱えている所に、別ルートとはいえ、仲間を虐頃している自分を見させられてるんだ……精神に来ないわけがない)

カブト「……」

22: 2015/07/21(火) 20:40:37.82 ID:efNyxpm00
1013

--河岸--

ザッ

ビィ「あれあれー? ヤミさん結局そっち側についちゃうんですか? いいんですか? トリガーが黙ってないですよー?」

ヤミ「黙れ……俺は俺の意思で動く。貴様らの仲間などごめんだ。俺はこいつらを守ると決めたのだ!!」

ビィ「」

ビィは驚いたような顔をした後、

ビィ「くすくす。おっかしいんだー★ 人喰いの吸血鬼さんが人間側につくんですかぁ? くすくす。大体そっちにいったところで居場所なんて無いと思いますよ……?」

ブラ「あります! ヤミ様の帰ってくる場所は私達の所です! 例え過去でどうしようもない過ちを犯していたとしても、それは昔のヤミ様で今のヤミ様ありません! 後悔しましたし償いもします!! ヤミ様はあなたたち魔王とは違う!!」

ビィ「……過ちは過ちですよ? どれだけ人が変わったからって、どれだけその後いいことをしたからって……まぁいいです」

ぼっ!!

ブラ「」

ヤミ「!? ブラ!!!!」

ビィの放つ魔力弾がブラの胸部を吹き飛ばした。

ビィ「どうせ結局全部仲良く氏ぬだけなんですから★」

23: 2015/07/21(火) 20:44:23.74 ID:efNyxpm00
1014

--対ビィ領域--

盗賊「その、なんていうか君じゃないから君の気持ちを完全に理解することはできないんだけど責任と不安でいっぱいいっぱいになってるのはわかるというか、えっと、その」

ハイ「ぐす……あ」

ぴたりとハイの動きが止まる。

盗賊「ん? どうかした? ハイちゃん」

ハイ「ありました……まだ……終わらせない方法が、一つだけ、ありました」

盗賊「! さすがハイちゃんだ! 絶望しててもなんだかんだ思考を巡らせてる! それはなんだい!? 俺達はどうしたらいいんだ!? 教えておくれ!!」

ハイ「……」

ハイは少しだけ顔をあげる。

ハイ「……ビィは、ずっとループしてるって、言ってました」

盗賊「うんうん言ってたね。それで? それが攻略の糸口になるのかな?」

ハイ「なら――私も、ループしたらいいんです」

盗賊「……ん……」

ハイの瞳に光は宿っていなかった。

24: 2015/07/21(火) 20:46:23.70 ID:efNyxpm00
1015

--対ビィ領域--

盗賊「あー……えっと……そのぉ」

ハイ「あ、あぁ、良かった……。そうだ、そうですよ。ビィがループしてるのなら私にだって出来るはず……! あは! 良かった。まだ終わらない。まだハッピーエンドになる可能性が残ってるっ!」

ハイは泣きながら笑った。

盗賊「んー……それは、確かに一つの手ではあるけど……」

ハイ「わ、私頑張りますから! 次こそきっと皆さんを救ってみます! だ、だから、ループする方法を今から探さなくちゃ!」

ユー「」

ぱんっ!!

ハイ「」

盗賊「! ユー君!」

ユー「……」

ユーがハイの頬を叩いた。

25: 2015/07/21(火) 20:48:09.61 ID:efNyxpm00
1016

--草原--

どぐしゃあぁああ!!

鎧使い「ごぼっ!!……じゅ……じゅう、だい、め……」

上半身だけとなった鎧使いは、空に手を伸ばそうとして力尽きた。

ぱたっ

ビィ「ふんふんふーん★ 全くもって順調ですねー。というか皆さん弱すぎて少々やりごたえが……おや? おやおやこの反応は?」

ビィは鎧使いに近づいていき、鎧を破壊する。

バキバキバキ!

ビィ「――わぁお。こんなところにありましたか、十代目が回収していた魔王の骨。これがあれば……いやいや。とりあえず回収しておきましょうかねー★」

ぴくっ

ブオン!!

背後からビィに斬撃を放つ勇者。しかしそれはかわされてしまう。

勇者「! やっぱりかわされたか!」

ビィ「あれぇ? 勇者さんじゃないですか。なんでこんなところにいるんでしょう? もしかして」

ドギャッ!!

勇者「ッ!!」

ビィは杖で勇者を殴る。

ビィ「わざわざ殺されに来ちゃいました?」

26: 2015/07/21(火) 20:49:12.10 ID:efNyxpm00
1017

--草原--

ズザザーーーーー!!

勇者「がはっ!……く」(手加減、してくれてるせいかな? なんとか受け止められた……)

ぶらん

勇者(……両腕とアバラ6本いっちゃったけど、ね)

きゅいぃーん

勇者は即座に回復魔法をかけ走り出した。

ダダダダダダダダッ!!

ビィ「? 姿を見せるだけ見せて走り去っちゃう……? やですわー、それ、もろ罠に誘い込もうとしてるじゃないですかー……でも、楽しそうですね」

ザッ

ビィ「いいですよ。楽しませてください鬼ごっこ。捕まったら氏亡ですけど★」

27: 2015/07/21(火) 20:50:50.75 ID:efNyxpm00
1018

--対ビィ領域--

ハイ「――ユーさん……?」

ハイは叩かれた右の頬に手を当ててユーの顔を見る。

ユー「~~~~~~~~!!!!」

ハイ「!」

ユーは今までに無い形相で、声に出せずともその思いを伝えようとしていた。

がしっ!

ハイ「いたっ」

ハイの肩を力強く掴み、何かを訴えている。

ハイ「ゆ、ユーさん痛い、痛いです」

カブト「……その男が言わんとしていることは俺でもわかる」

ハイ「……え」

カブト「確かに現状はどうしようもないほど絶望的だ。大局的に見ればお前の案が一番現実的かもしれん」

盗賊「……」

カブト「だが今を生きている俺達はどうなる……お前は次に行くだけだ。しかし俺達には今しかないんだ。次のために全てを諦めろと、お前は言うのか?」

ハイ「――」

28: 2015/07/21(火) 20:51:33.32 ID:efNyxpm00
1019

--草原--

ずる、ずる……

勇者「はーっ、はーっ、はー……」

右腕と左足を失った勇者は地面を這って進んでいる。

勇者(あと、少し、もう少し、で!)

ずる、ずる!

ビィ「あれあれ? もう限界ですか勇者さん? まぁ大分頑張った方ですよ★ さすがは勇者さん、誇ってくれていいんですよー」

くい

勇者「っ」

ビィは勇者の右足を掴むと、

ぶちちちっ!!

勇者「!!」

蟻の手足をむしるかのように引き千切った。

29: 2015/07/21(火) 20:52:24.54 ID:efNyxpm00
1020

--草原--

ぶしゅー!!

勇者「ぐっ!! っつ……!」

ビィ「で? この後はどうするんですか? 何か計画があったんですよね? でなきゃあんな軽はずみなことしませんよね? どうです? 望んだ場所までこれましたかー?」

どくどくどくどく

ビィ「それとも貴女の頑張りは全て無駄に終わっちゃいました?」

勇者「はぁ、はぁ……ふふ……」

汗を垂らしながら笑う勇者。

勇者「……えぇ、おかげさまで来れたわ」



ビィ「!」

ズバッ!!

ビィの背後から現れ、その背中を切り裂いたのは、秘書。

ビィ「何っ!?」

秘書「――その根性、少しだけ見直しましたよ、勇者」

勇者「貴女に褒められるなんて、ね」

30: 2015/07/21(火) 20:53:32.39 ID:efNyxpm00
1021

--草原--

ぼたっぼたぼた……ぼたたっ!

ビィ「う、そ……」

ビィの背中から夥しいほどの血が流れ出る。

ビィ「この私が、こんな傷を!?」

ズババッ!!

ビィ「ギャッ!?」

秘書の追撃がビィを切り刻む。

勇者「お前は魔王にならなかったからこそ私達勇者の力が通用しなかった。でもそれなら今のお前はなんだ?」

ぶしゅーーー!

千切れかかった左腕から血が噴出するビィ。

ビィ「ぐ、ぐそっ! ならレベルアップして対応するまでです!! じょっ」

秘書「もう遅い!!」

ズンッッ!!

ビィ「あっ、ぎ!」

秘書のナイフが心臓を貫いた。

勇者「そう、今のお前はただの強い人間だ。それなら」

秘書「私の敵じゃない」

ビィ「!!」

31: 2015/07/21(火) 20:55:41.33 ID:efNyxpm00
1022

--草原--

ビィ「そ、んな、ば、かな!」

ビィは胸に突き刺さったナイフを引き抜こうとするのだが、

秘書「貴女の魂のあり方は不快です。消えてしまいなさい!!」

ふぉんふぉんふぉん、ずばしゃあぁあああああああ!!

止めとばかりに、秘書は、ビィを五つの肉塊に分解した。

ぶしゃあああああああああああああああああああああああああああ!!

勇者(うわぁ、フラッシュバック)

ぼどぼどぼどっ!

ビィ「あ、う……う、うそ! やだ……こんな……こんな! やだ、や……痛い……いた……いです……」

どくどくどくどくどく……

ビィ「こんな、こんなこと、で……」

ビィは痙攣を繰り返した後、一切動かなくなった。

ど、くん……

勇者「――確認した、ビィは完全に氏んだわ」

秘書「当たり前です。私が頃しで失敗するはずがありません」

32: 2015/07/21(火) 20:57:35.26 ID:efNyxpm00
1023

--草原--

勇者「ふー……なんとかなって、よかった……」

秘書「! ちょっと貴女」

がばっ!

秘書は勇者を抱えて起こす。
勇者もまた甚大なダメージを受けていた。

秘書「こんなに無茶をして……まだトリガーとの戦いが残っているのを忘れたのですか? こんなの、段取りが違うじゃない」

勇者「仕方ない、でしょ……はぁ、はぁ……今勝たなきゃ、次は望めないんだから…・・・へへ」

秘書「それはそうですが……? 何がおかしいんです? 気持ち悪い」

勇者「昔と……少しだけ状況が似てるけど、今は左手があるな、って」

ぐっ

勇者は左手を動かして笑う。

33: 2015/07/21(火) 21:00:18.20 ID:efNyxpm00
1024

--草原--

秘書「はぁ……とうとう脳に血がいかなくなりましたか。危ない状態ですね、待っててください。すぐに回復魔法を使える者の所に……」

ずる……

秘書「……」

秘書が、止まる。

秘書「――馬鹿な」

ビィ「くすくす。相変わらずいい腕です秘書さん★」

バッ!!

秘書が振り返ると、ビィは何事も無かったかのように元の姿でにやにやと笑っていた。

ビィ「くすくす。お忘れですか? 私はネクロマンサーです。ネクロマンサーの魔法の中には、氏体となった自分を自分で操るものがあるんですよー★」

勇者「!」

秘書「ッ!」

グッ!

ビィ「ナイフを握ってももう無駄ですよ★ 貴女の力は、氏者には通じないんですから★★★」

34: 2015/07/21(火) 21:03:52.10 ID:efNyxpm00
1025

--対ビィ領域--

ユー「……」

ごしごし

泣き止んだハイは涙を拭いて顔をあげる。

ハイ「……す、すみませんでした。カブトさんの言う通りです。私、取り乱してしまって……それに自分勝手で、失礼なことを言ってしまって……」

盗賊「い、いやいやそんなに気にしなくてもいいさ。誰だってこんな状況なら悪いことばっか考えちゃうんだから。だから落ち込まないでハイちゃん。な?……ほらー、義兄さんも優しい言葉かけたげてよぉ。義兄さん表情硬いから誤解されちゃうんですよ?」

カブト「だ、誰が義兄さんだ!」

ユー「……」

ユーはまだ力強くハイの瞳を見つめている。その瞳は、

諦めるな。最後まで頑張れ

と語っているように見える。

ハイ「……はい、泣き言を言ってしまってすみませんでしたユーさん。私も、諦めないで最後の最後まで抗ってみます!」

ユー「!……!」

ユーはその台詞に満足したのか親指を立て、ハイの頭をなでた。

どちっ

盗賊「」

ごろごろ……

カブト「!!!!」

ビィ「へぇ。まだ頑張るんだ? えらい! えらいぞぉーハイちゃん。その意気だ! 頑張れー私っ★」

ハイ「」

突如ビィが姿を現し、何かをハイの目の前に放ってよこした。
それは

ごろ

ビィ「あ、それそこで落ちてたんだけど、よかったらどうぞ★ え、私の分? いいのいいの、私はもういっぱい集めちゃったからさっ!」

勇者の生首だった。

ハイ「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

35: 2015/07/21(火) 21:04:40.49 ID:efNyxpm00
1026

--対ビィ領域--

バッ!!

盗賊「」

カブト「」

ユー「」

ハイの叫び声をきっかけに、三人が激昂とともに駆け出した。

盗賊「て、めええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」

ビィ「くす」

が、

ずぎゃ!!

一撃でカブトの首を刎ね、

どずん!!!

ニ撃目で盗賊の心臓を握りつぶし、

ぎょしゃ!!

三撃目でユーの頭部を破壊した。

ハイ「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あああああ、あああ、あああああああああああああああああああああああ!!」

ビィ「……残っ念★ これでハイちゃんの仲間ー……みーんな氏んじゃったねっ★」

ぶしゃああああああああああああああ!!

三人の血を全身で浴びるハイ。

36: 2015/07/21(火) 21:05:30.23 ID:efNyxpm00
1027

--対ビィ領域--

ハイ「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

バッバッ!!

狂乱し、自分の体についた血を拭おうとするハイ。

ビィ「くすくすくすくす。大事な仲間の血だよ? そんな扱い方ひどいと思うなぁ」

がしっ

ハイ「!」

ビィはハイの顎を掴んで顔を近づけた。

ハイ「あ、う!」

ビィ「さっきしてた話……じつはちょびっと聞こえてたんだよねぇ。今回駄目ならループすればいいや、ってやつ」

ハイ「あ、ああぁ、あああ」

ビィはにこりと笑い、そして

ビィ「ばっかじゃないの」

ベギギッ!

ハイ「!!」

ハイの右足を踏み潰した。

37: 2015/07/21(火) 21:06:50.36 ID:efNyxpm00
1028

--対ビィ領域--

ハイ「あ、あぁああああああ~!!!!」

ビィ「あれがどれだけ苦しいものなのか、ハイちゃんは何にもわかっちゃいないんだねそうだよね」

ス……ゴジャッ!!

ハイ「ぎっっっ!!」

ビィ「バカ。バカバカ。本っ当にバカ。バカの王様だよハイちゃんってさー」

ドチャッ!! ズジャッ!! べジャッ!

ハイ「ぎゃっ! あぎっ!! ひぃっ!!」

ビィ「……最初はみんなを助けるためだー、って、勇んでループを望んだんだったよねー。もちろん、それが出来たのは偶然でバグみたいなもんだったんだけど、その時は本当に嬉しかったんだよねぇ」

どごっ!

ハイ「げっ!」

顔面を蹴られたハイは顔を抑えて蹲る。

38: 2015/07/21(火) 21:08:37.85 ID:efNyxpm00
1029

--対ビィ領域--

ビィ「私には何度もチャンスが与えられた。それはそれはとても凄いこと★ 駄目な私でもきっといつかは世界を救えるはず★ だって私は勝つまでやめるつもりはないんだから★ それならいつかは夢見た未来に必ず行くことが出来るっ★」

ごっ!! がっ!! どごっ!! ずごっ!! べきっ!! ばきばきぃっ!!

ハイ「っ! がっ! げぁ!! がはっ! あぁっあ!!」

ビィ「だから何度も何度も私はループした。世界中の色んなコトを覚えて、傾向と対策もばっちりにして、何度も何度も氏ぬ気で挑んだ★」

ごすっ…………ごすっ! がすっ! どごっ! ばきっ!! ぶじゅっ!!

ハイ「ぎゃっ!!……あ……あっ! ああ……あ」

ビィ「でもね」

どぽっ……

ビィ「何百回挑んでも、みんなが氏ぬルートしか無かったの」

39: 2015/07/21(火) 21:10:44.45 ID:efNyxpm00
1030

--対ビィ領域--

ハイ「ひゅー、ひゅー、ひゅー……」

ビィ「色んな戦法を試した。色んな人に頭を下げて協力を頼んだ。色んな魔法やスキルも覚えた。必要とあらば邪魔になる人を頃したりもしたし、あえて傍観に徹したこともあった。裏切った振りして魔王側についたり、ばれて拷問の末魔族に改造されたこともあった★」

ハイ「ひゅー、ひゅー……あ、あぁ……」

ビィ「でも私は諦めなかったよ? なんでって? 当たり前じゃないですか……だって大好きなみんなのためだもの。何千回も何万回も何億回も何兆回も繰り返して頑張ったのになんでだよっ!!」

どぎゃっ!!

ハイ「ッ!!!!」

どぽっ……ばつんっ!

ビィ「はぁ、はぁ、はぁ……簡単なことだったんだよ……これは無限のチャンスじゃなくて終わらない悪夢だったんだ……私達が勝つ可能性なんて……最初から存在してなかったんです……」

ぬちゃ、びろろろろ……

ハイ「ひぃ……い」

ビィ「私がやっていたのは当たりが無いくじを永遠とやっているだけだったんだ」

40: 2015/07/21(火) 21:12:25.04 ID:efNyxpm00
1031

--対ビィ領域--

ハイ「あ、あ、あ……」

ビィ「そのことに気づいてしまった私の心は折れちゃった★ もう何をやっても駄目ー。降参降参ー。はいもう無理ですー。ぎぶあっぷー」

ハイ「はっ……はっ……は」

ビィ「でも、終わらなかったんだよ。心は折れたのに。もう、繰り返したくないのにこの悪夢は私の意志じゃやめられなかった……って、おーい、まだ氏んじゃ駄目だよー? はい、回復魔法レベル1」

ぱぁあ

ハイ「っ……はっ! はっ、はっ、はっ!」

ビィ「終わらなかったんだよこんなのがずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとさぁあああああああ!!!!」

グサッグサッグサッ!

ハイ「ぎっあああああああああああああああああああああああ!!」

41: 2015/07/21(火) 21:15:10.89 ID:efNyxpm00
1032

--対ビィ領域--

どくどくどくどくどくどく……

ビィ「なんでこんなに辛くて苦しいことが終わらないの? もうやだよ。大好きな仲間が氏ぬ所なんてもう見たくない」

ぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっぐさっ

ハイ「ひっ、ひぃ、ああ、ああああ!!」

ビィ「私は必氏に考えた。どうやったらこの地獄から抜け出せるのか。抜け出せるためならなんだってやるのに、って」

ぼっ ぼおおおおおおおおおお

ハイ「っ!! ~~あ~~!!」

ビィ「そしたらわかっちゃったんだ。ね、ゲームだと思ってみて? ゲームってさ、全クリを目指すものでしょ? メインストーリーをクリアしたくらいじゃ、そのゲームはまだまだ終わりじゃないんだよね★ ……っと、はい、回復魔法かけたげる」

ぱぁあ

ハイ「あ、あ゛ぁ……ひっ!」

ビィ「……多分私はまだ回収してないエンドがあるんだ。だからこのループは終わらないんだ。このループを一刻も早く終わらせるためには、自分から回収しにいかなきゃ、って、思ったの★」

ずるるるるるる、ぶじゃじゃっ

ハイ「あ、ぁあ、あ……」

ビィ「どうせ実りもしない希望なんてあるだけ無駄なのに……その糞みたいな希望の数だけ私は苦しめさせられることになるんだ……そんな希望いらない。だから私は、私の手で、全ての私(可能性)を頃すことにしたの」

ハイ「あ、あ、あ、あ、あ、あ」

42: 2015/07/21(火) 21:18:00.41 ID:efNyxpm00
1033

--対ビィ領域--

ハイ「あ  あ  あ  あ」

びく、びくん

ビィ「さぁ、このルートでの私。君ももう終わり。私は次に行くよ。次の私を頃しに」

ビィの人差し指がハイの額にふれた。

ビィ「……もしかしたら君はこれで解放されちゃうのかもね……。私これだけ繰り返してきたけれど、何度もループしてる私に出会ったことないんだぁ★」

ずぶ

ハイ「あ、あ……」

ずぶぷっ……

ハイの額にビィの指が埋没していく。

ビィ「さよなら」

                                        ぽっ

ビィ「……? 何これ……光ってる……雪?」

その時ビィの人差し指に光る何かが落ちてきた。
空を見上げると、小さな光は辺り一帯に降っているのがわかる。

ビィ「暖かい光り……これ……なぜか懐かしい」

43: 2015/07/21(火) 21:20:44.57 ID:efNyxpm00
1034

--対ビィ領域--

ぱら、ぱらぱら……

ハイ「つ……つい、ん……て、せん……ぱい」

ビィ「……助けを求めても無駄だよハイちゃん。あの塔に入った場合、87%の確率で二度と出てこないんだから★ もし出てこれても戦えない状態だったり人数が欠けてる確率が残りの13%。つまり、一度たりとも先輩達が間に合うことは無かったの★ これは変えようの無い100%の出来事……★」

ハイ「あ、しゅ……せ、んぱ、い。ぽに、て、せ、んぱい」

ビィ「……この程度で精神に異常をきたすとか、どれだけ弱いのハイちゃん……。私が君の何億倍辛い思いをしてきたか……幸せだねハイちゃん。いっそ私もそうなれたら楽だったのに★」

ぎりっ

ビィ「――本当はもうちょっと私の辛さを分かち合ってもらいたかったけど、もうあまり時間が無いからね。名残惜しいけど、これで」

ハイ「先輩」

ビィ「……? 今、普通に喋れて」

ひゅっ

ビィ「!? え!?」

ハイの姿が一瞬で消えた。

ビィ「何が起きて……こんなことは今までに一度も」
    


 「俺達の後輩に、なんてことしやがる」



ビィ「!?」

44: 2015/07/21(火) 21:22:28.93 ID:efNyxpm00
1035

--対ビィ領域--

ビィ「!! この声は……嘘、間に合うわけが無いんですよ……? だって、絶対に」


 「ハイちゃんのことだけじゃない。パパやママ……他にも色んな人たちをよくも……ひどいよ!」


ビィ「う、嘘! ありえない!! こんなの絶対に!! 私が知らないことなんて起こるはずが無いのに!!」


 「でも……貴女も悲しい人です」


ビィ「! そこか! 火属性攻撃魔法レベル3!!」

どぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

振り向き様にビィは極大の火属性魔法を放った。

どじゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!

ビィ「!? わ、私の魔法が、防がれて!? そんな、馬鹿な!!」

もくもくもく……

ツインテ「だから貴女も、救ってあげます。ビィさん」

ビィ「!!!!」

45: 2015/07/21(火) 21:24:56.22 ID:efNyxpm00
1036

--対ビィ領域--

しゅぅうぅう……

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

水蒸気の中から現れたのはツインテ、ポニテ。そしてハイを抱きかかえているアッシュ。

ハイ「先輩、方……」

アッシュ「よく一人で頑張ったなハイ。遅くなってすまなかった」

ポニテ「ほんとだよ。ゲームオーバーぎりぎりみたいな世界になってるじゃん。間に合ってよかったー!」

ツインテ「でも、もう大丈夫ですよ。後はボク達に任せてください」

ツインテはにっこりと微笑んだ。

ビィ「三人で多重障壁魔法を張ったから防げた……? いやそれでも今のを防いだのはおかしいでしょ、私のレベル3だよ? ありえない!……結局勇者の力も発現してないし、どうやったら今みたいなことが出来るのっ!?」

ハイ「!……ほ、本当だ。先輩方からは勇者の力が、感じられない……塔での修行は失敗、だったんですか?」

46: 2015/07/21(火) 21:26:30.66 ID:efNyxpm00
1037

--対ビィ領域--

アッシュ「いや成功だ。それも完璧にな」

ハイ「……はい!?」

ポニテ「まぁ見てたらわかるよ。いや、今までの私達を見てくれてたならわかるよ」

ツインテ「ふふ。そういうことですね」

ハイ「は、はぁ……」

三人はこの状況だと言うのに涼しい顔をしている。

ビィ「……はぁ。はは、はははは! なんだ、そうなんだ? 驚かさないでくださいよ。やだなぁもう。さっきのもそこのユーさんが氏ぬ前になんか残しておいたからとかそういうことなんでしょ? あははっ! そんな余裕ぶっちゃって、なんですか? 余裕が無さ過ぎて開き直っちゃった口ですか!?」

予想外の出来事に直面し焦りが隠せないビィ。

アッシュ「ビィ」

ビィ「!」

名前を呼ばれただけでびくりと反応するビィ。

ビィ「……なんですかぁ先輩★」

アッシュ「お前のルートでは俺達は助けにいけなかったんだろう? すまなかったな」

ビィ「」

47: 2015/07/21(火) 21:28:02.69 ID:efNyxpm00
1038

--対ビィ領域--

ビィ「は、はぁ!? いきなり、何言ってるんですか……? 意味がわかりませんよ……★」

アッシュ「ハイ。もう体は大丈夫なはずだ。立てるな?」

ハイ「え? あっ、いつの間に……!」

ツインテ「ふふ。皆さんももう大丈夫なはずです」

ビィ「!?」

バッ!!

勇者「う、ん……」

盗賊「むにゃむにゃ」

ビィ「嘘……」

ビィが振り向くと頃したはずの人たちが皆生き返っていた。

ビィ「!! さっきの光……あれは蘇生と回復魔法だったんですか……!?」

アッシュ「ほら遠くに行ってろハイ。せっかく元に戻ったのに巻き込まれたらまた治療しなくちゃならねぇからな」

ざっ

ハイ「で、でも私達全員で挑んでも無理だった相手なんですよ!? お言葉ですが、ゆ、勇者の力も持たない先輩達じゃ!!」

ツインテ「くす。大丈夫ですよハイさん。ボク達は」

ポニテ「勇者だから」

ハイ「!!??」

48: 2015/07/21(火) 21:29:07.39 ID:efNyxpm00
1039

--対ビィ領域--

ぱんっ

アッシュ「っし、じゃあやるか」

ポニテ「うん。修行の成果を……私達の今までの旅の成果を見せてあげないとね!」

ツインテ「はい。ボクも頑張ります」

そういうと三人は手を合わせて円になる。

盗賊「! やべぇ勇者! UFO呼び出すやつだあれ!」

勇者「今度ばかりはそのシリアスキラー切っとけ!!」

ぎり

ビィ(ありえない……ありえないありえないありえないありえないありえないこんなの今までに一度だって無かったんだ絶対に今回だって失敗するのに失敗しなきゃだめなのにじゃなきゃなんのために今まで私は苦難を受け続けてたのだっておかしいたった一度失敗したくらいのあいつがあいつだけがこんなルートなんて絶対におかしい!!)



ツインテ「――禁術魔法」

ポニテ「改良型っ!」

アッシュ「三位一体……!!」

ぼっ!!!!

49: 2015/07/21(火) 21:31:01.50 ID:efNyxpm00
1040

--対ビィ領域--

ぎゅるるるるるるるるるるるる!!

ハイ「!! 先輩達の体が、混ざり合っていく……!?」

カブト「! あれは禁術・融合の亜種か!? バカめ!! あれは溶け合って二度と同じものには戻らない最悪の魔法だぞ!!」

ぎゅるるるるるるるるるるるる!!

盗賊「……いや、まぁ大丈夫でしょ義兄さん」

勇者「えぇ……あの三人なら、きっと大丈夫。お互いのことを心の底から理解して、様々な困難を共に乗り越えてきたあの三人なら」

ぎゅる、ぎゅるるるるるるるるるるるるるる!!

ビィ「嘘だ……こんなの、絶対に!!」





   ポニテ「あ、そうだ!! いいこと思いついちゃった」

   ポニテは嬉しそうに顔を綻ばせる。

   アッシュ「この三人とも勇者だと言うのであれば……」

   ポニテ「私達三人で競争しようよ!!」

   ツインテ「……?」

   アッシュ「俺らの中で一番最初に魔王を倒したやつが……」

   ポニテ「誰が魔王を倒せるか♪ それで、倒した人が」

   ツインテ「……え?」

   アッシュ、ポニテ「「真の勇者だ!!」」





ゴゴゴゴゴゴゴ!!……ばち、ばちばちばちぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!



灰色の髪の毛は三つの束に分けられている。



ばちばち、ばちっ!!



背中から展開された触手は羽のように揺れている。



しゅぅうう……

  

両手には赤と紫の剣をそれぞれ持っている。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ…… 



他を圧倒する凄まじい力を放つその者の名は、

勇者「一人では勇者になれなくても、三人なら、きっとなれる」

ばんっ!!

?????「真勇者、参上」

58: 2015/07/28(火) 00:32:50.55 ID:3EnmWfst0
1041

--対ビィ領域--

ばちっ! ばちばちっ!!

?????改め真勇者「……」

ごごごごごごご……

盗賊「う、おおお? 何もしてないのに凄いパワーを感じる!! 一体どうなってんだ!?」

勇者「これで、勇者が五人揃ったわ!」(でも……あれ? 予想してたのと違う。何この圧力……三人が融合すれば強くなるとは思ったけど……まさかここまで凄いなんて)

ビィ「ふ、ふふふ★ 確かに勇者因子を感じます……本当に勇者になれた、ってことですかぁ先輩方。良かったですねぇ★」

真勇者「……」

ビィ「だからって……今の私に勝てると思ってるんですかああああああああああああああああああああ!?」

ドンッ!!

ビィが全力で真勇者に突っ込んでいく。

ビィ「はあああああああああああああああああああああ!!」

そして莫大な魔力をこめた拳を突き出した。

59: 2015/07/28(火) 00:34:56.28 ID:3EnmWfst0
1042

--過去、修練の塔、九階--

ばしゅん!

勇者「――と、まぁ。こんなものね。どう? 見てみた感想は」

ツインテ「え、えっと、勇者さんが……分裂しましたね」

アッシュ「なるほど、確かに面白い魔法ではある。それを俺達が身に付けたらいいんだな?」

ポニテ「でもマ……わ、私達がそれを習得したら3×5で14体になるのは数的に凄いと思うんだけどさ」

ツインテ「ポニテさん15です……」

ポニテ「でも、正直分割しただけじゃ魔王に立ち向かえる気がしないんだけど……」

勇者「ちっちっちっ。この魔法の本質を見なきゃだめだよ三人とも」

ツインテ「本質、ですか?」

勇者「そう。これは分離と融合の性質を持つ魔法なんだ。自分の体をプログラミングされた人格に五つに分離し、そしてその後元の私にちゃんと戻るように融合する、というものなの」

ポニテ「ほえ?」

勇者「これを逆に考えると、三つの違う存在を一つに融合させることが出来、その後、元の三人に分離させることも出来る、というわけなのよ」

アッシュ「!!?? ツインテと!! 融合!! ですかっっっ!!!???」

勇者(凄いうれしそう……)

ポニテ(きもい)

ツインテ(嫌なのかな……)

60: 2015/07/28(火) 00:36:13.51 ID:3EnmWfst0
1043

--過去、修練の塔、九階--

アッシュ「つまり! それは!! つつつ、ツインテと! 融合しちゃう魔法なんだなっ!?」

ポニテ(駄目だこいつツインテちゃんと融合することしか頭にないよ)

勇者「正確には三人だけど、飲み込みいいね君」

少し呆れ顔の勇者。

ポニテ「しかし融合かぁ……そんな手段があるとは思わなかった。けど本当にそれで強くなれるの?」

勇者「単純に強くなれるわ。ただそれがどこまで強く慣れるかは君達次第だけど」

ツインテ「ボク達、次第……」

勇者「まぁ最低でも既存の勇者レベルの実力にはなれると思うわ」

ポニテ「最低でも!?」

勇者(私の見立てだともっと凄いことになると思うけどね)「よし、じゃあさっそく始めていくわ。時間無いんでしょ?」

ツインテ「は、はい。ボク頑張ります!」

アッシュ「頑張っちゃうだなんてそんな/////」

勇者(イケメンなんだけど内面が少し盗賊に似てる気がする……)

61: 2015/07/28(火) 00:38:58.23 ID:3EnmWfst0
1044

--過去、修練の塔、九階--

きぃん!! ばしゅうううううううううううう……

勇者「う、うそ……一回目で成功しちゃった!?」

真勇者「……」

真勇者はうっすらと瞼を開いた。

勇者「いい? 今三人の人格が混ざり合っていると思うけど、自分のことを忘れちゃだめよ? 完全に溶けて元に戻れなくなっちゃうから」

真勇者「……ぐ、ぐ……」

勇者「本来なら問答無用で混ざり合って溶けてしまう魔法なの。でも貴方達ならなんとかなるはずよ。お互いのことを心の底から理解して、様々な困難を共に乗り越えてきた三人なら!」

真勇者「ぐ!!」

勇者「それに加えてアッシュ君の保存の力が三人を……あ、あれ? 思ったより難儀してるみたいね? 一度分離しなさい!」

真勇者「う、ぐぅ!!」

勇者「早く! 戻れなくなるわよ!」

真勇者「あ、あぁ……!」

勇者(失敗した!?)

真勇者「あ、アッシュ君が、離れようとしないん、です」

勇者「……アッシューーーーーー!!」

真勇者「心の中で、お尻、触られてるような、気がします」

勇者「アーーーーッシューーー!!!!」

62: 2015/07/28(火) 00:42:04.20 ID:3EnmWfst0
1045

--過去、修練の塔、九階--

ばしゅんっ!

ツインテ「はぁ、はぁ!」

アッシュ「ふーっ、ふーっ!」

ポニテ「ぜひー、ぜひー!」

勇者「お疲れ様。これで5回目の成功ね。最初はどうなることかと思ったけれど、大分使いこなせるようになったわね。最後のはうまく混ざれてたと思うよ」

ポニテ「さ、最初からうまくいってたんだよ! アッシュ君が足を引っ張るから!」

アッシュ「だ、だってさ……」

ツインテ「あはは……」

勇者「うん。よし。じゃあ修行はここでおしまいかな」

ぱんっ

勇者は手を叩く。

ポニテ「え……」

勇者「九代目勇者の名において融合の魔法をマスターしたものとみなす。さぁ、急いで現実世界にお帰り」

アッシュ「ふぅ……そうだな。時間も押している。これだけやれるようになれば、もう不安は無い」

アッシュの顔は自信に満ちていた。

ツインテ「そう、ですね。ボク達ならきっと魔王でも倒せちゃいますよ」

ツインテの顔に不安は無い。

アッシュ「言うようになったじゃないかツインテ……喜ばしいことだ」

ポニテ「……」

63: 2015/07/28(火) 00:44:42.10 ID:3EnmWfst0
1046

--過去、修練の塔、九階--

勇者「さぁみんな。あの門が帰り道だよ」

スッ

勇者は門を指差した。

アッシュ「ふむ。世話になった。あんたのおかげで俺はとてもいい思いを……げふん! じゃあ行くぞみんな」

すたすたすた

ツインテ「あ……」(ポニテさん、いいんですか?)

ポニテ「……」

ポニテはもじもじとしていたのだが、一度勇者の方に振り返り、

ポニテ「じゃ、じゃあ……また……未来で!」

ダッ!

一瞬だけ手を振って駆け出した。

勇者「待って」

ぴた

勇者「名前、なんて言うの?」

ポニテ「……え?」

勇者「君だけ名前聞いて無いから」

64: 2015/07/28(火) 00:45:54.07 ID:3EnmWfst0
1047

--過去、修練の塔、九階--

ポニテ「あ、えっと……その、ポニテ……」

勇者「ポニテ、か。なるほどね。二人がその名を呼んでいるのは知ってたんだけどさ、愛称とかかもしれなかったし確認しておきたかったのよ」

ポニテ「う、うん……じゃ」

勇者「へぇポニテか」

すた

ポニテは門に向かって進んでいく。

勇者「ちょっと変わってるけど……いい名前。名前付けるの、盗賊に任せて良かったな」

ポニテ「」

ポニテは、ゆっくりと振り向いた。

勇者「頑張りなさいね、ポニテ。私の娘なんだから」

ポニテ「」

65: 2015/07/28(火) 00:47:08.72 ID:3EnmWfst0
1048

--過去、修練の塔、九階--



ポニテは踵を返す。

ポニテ「ま……ママ……気づいて、たの?」

ざっ

勇者「うん」

ざっ、ざっ

ポニテ「だ、だって私、そんな、娘だってわかるようなの、何も、無いのに……特徴とか、受け継いでるのか怪しいし、だって……」

ポニテの声は震え、瞳は涙で滲んでいる。

勇者「――わかるよ。大事な子供のことだもん」

ポニテ「」

ぽろ、ぽろぽろぽろ

ポニテ「ママー!!!!」

だっ、がばっ!!

体格差も考えずに勇者に飛びつくポニテ。

ポニテ「うわぁああぁああぁあああん!! ママーーーー!!」

勇者「よしよし、おっきくなっちゃってもー」

ぷよん

二つの意味で涙を溢す勇者だった。

66: 2015/07/28(火) 00:48:13.00 ID:3EnmWfst0
1049

--過去、修練の塔、九階--

ポニテ「うぐー。えぐっ、ぐすっ。びえー」

アッシュ「ち……汚い顔だ。これで顔を拭け」



アッシュはツインテLOVEと書かれたハンカチをポニテに渡す。

ポニテ「ぐずっ、ありがどあっじゅぐんー」

ちーん

アッシュ「お約束だな!」

勇者「じゃあ……これで本当にお別れ」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

勇者「未来を頼んだよ三人とも」

勇者は笑う。

ツインテ「はい」

アッシュ「おう」

ポニテ「任せてママ!」

67: 2015/07/28(火) 00:49:06.10 ID:3EnmWfst0
1050

--対ビィ領域--

ビィ「」

しゅぅううう……!!

ハイ「う、そ……」

ビィの魔力を込めた拳を真勇者は右に持つ剣の柄で軽々と受け止めていた。

ぎしっ

真勇者「どうした? こんなものか?」

ビィ「!! この程度の攻撃を受け止めたくらいでいい気にならないで下さいよ先輩ッいいいいいい!!」

ババッ!!

ビィは一瞬で距離を取り、

ぼっ!!

巨大な魔力球を両手に作り出す。

魔導長「!? ちょっ! しゃれにならないなの!!」

ビィ「火属性対単体攻撃魔法、レベル4&雷属性対単体攻撃魔法、レベル4!! レベル1であの威力だったんですよ? これがどれだけやばいかわかりますよねぇ!?」

真勇者「……」

68: 2015/07/28(火) 00:50:40.87 ID:3EnmWfst0
1051

--対ビィ領域--

ゴゴゴゴゴ……

勇者「まずいわ! あのバカみたいな魔力……下手な受け方をしたらこの星ごと持っていかれる!」

盗賊「まじで!?」

勇者「避けたら終わり、相殺させてもその時の爆発で終わり……あの子達ちゃんとわかってるのかしら!」

真勇者「……」

ぼけー

しかし真勇者は眠そうな顔をしていた。

勇者「あ……やばい」

カブト「く!? 精神が混ざり過ぎて意識がはっきりしていないんだ!」

ビィ「くす。なんだ、さっきのは偶然か……★ まぁなんでもいいですよ、氏んでくださるなら、ねっ!!」

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ビィは真勇者に向けて魔力砲を放った。

ハイ「!? しまっ」

69: 2015/07/28(火) 00:52:14.74 ID:3EnmWfst0
1052

--対ビィ領域--

真勇者「!」

バシィイイイイイイイイイイイン…………

真勇者は接近する魔力砲撃を剣の一振りで上空へと吹き飛ばした。

ビィ「!? 剣で、弾いた!?」

しゅうぅううう

そしてそれは暗黒の宇宙へと消え去った。

真勇者「……終わりか?」

ビィ「!」

ダッ!!

ビィ「はあああああああああああああああ!!」

ビィは激昂し、杖を振りかぶる。

ガギィイイイイイイイイイイイイイン!! 

ビィ「あっりえないでしょう!? 先輩方はぁ! ずっと役に立たなくてェ、私のレベルアップくらいでしか役に立てなかったんですよぉ!? それが、おかしいじゃない、ですかっ!! なんで!! なんでぇえ!!!!」

ガガッドガッガガギィイイイイイイイイイイン!!

盗賊「ぐぅおおお!?」

ビリビリビリビリ!!

勇者「くっ! 衝撃波でこっちが吹き飛びそうだわ!」

70: 2015/07/28(火) 00:54:03.01 ID:3EnmWfst0
1053

--対ビィ領域--

ドガァアアアアアアアアン!!

盗賊「ぐおぅ! 地形が変わるなんて優しいもんじゃねぇ!」

フォン

ビィ(……速いし硬い……ありえないくらいのスペックです。確かに三体融合ならかなりのパワーアップでしょうよ……でもこれは!!)

ドギイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

ビィ(!? 前腕で防がれた!?)

真勇者「……銀蜘蛛の絶対的な防御力の秘密は、その表面の特殊な加工にあった」

ビィ「!」

バッ!

一度離れ、追撃を放つビィ。

ギガァアアアアアン!!

しかし、今度は脇腹に入ったというのに真勇者は無傷だった。

真勇者「機械になることは出来ないが、凹凸なら魔力で再現できる。アッシュの器用さがあれば」

ビィ「!!」

71: 2015/07/28(火) 00:55:20.77 ID:3EnmWfst0
1054

--対ビィ領域--

ビィ(銀蜘蛛の特性をまねた、ってこと?)「……! 六属性複合攻撃力強化魔法レベル4!!」

ぼきゅっ!!

ビィは魔力を一点に集中させる。

びききききききいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

ビィ「――なら、これでも防げますかぁ!?」

真勇者「防ぐ必要は無い」

ぼひゅっ!!

ビィの杖は真勇者の体を素通りしてしまう。

ビィ「なっ!」

真勇者「余にはポニテの霊化の力もあるのだから」

シュババッ!!

今度は真勇者が細い触手を伸ばし、ビィの体をがんじがらめにしてしまう。

ビッシィいい!!

真勇者「そしてこれはウェイトレスの糸操技術……もうわかるだろ? 余は全ての力を託された存在なのだ」

ビィ「ッ!!」

72: 2015/07/28(火) 00:56:27.14 ID:3EnmWfst0
1055

--対ビィ領域--

ぎしっぎししっ

ビィ「ッ!!」

真勇者「仲間が身を挺して時間を稼いでくれたおかげで余はここに立っている」

ビィ「……」

真勇者「先人達が力を貸してくれたおかげで余はお前に立ち向かえる」

ビィ「……ッ」

真勇者「みんなが支えてきてくれたおかげで……ここまで来れた。これが人の和だ。一人のお前に勝ち目は無いぞ、ビィ」

ビィ「ふ、ざけるな……」

ギシッ!

真勇者「……」

ビィ「ふざけるなあああああああああああああああああ!!」

ドバアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

カブト「あいつ、魔力を全身から放出して無理やり糸を吹き飛ばした!」

ビィ「はぁ、はぁ――だから、何?」

73: 2015/07/28(火) 00:59:07.88 ID:3EnmWfst0
1056

--対ビィ領域--

真勇者「……」

ビィ「人の和? はい……? 他人なんて所詮駒でしかないんだよ……仲間なんて信用できないんだよ……!」

ゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「う、この期に及んで更に魔力が増幅するだと?」

ビィ「すぐ氏ぬ癖に……簡単に氏ねる癖に……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ビィ「私はどうやっても、いつになっても、なにがあっても、氏ね無いのにぃいいいいいいい!!」

ばりばりばりっ!!

ビィ「一緒に生きられない癖に、仲間なんてどうでもいい! 仲間なんているものかああああああああ!!」

ハイ「……っ」

どろり

ビィが血の涙を流す。するとそれがビィの全身を覆っていった。

真勇者「!」

ずぐっ……

そしてビィは手刀で自分の胸部を貫いた。

ビィ「最終条件、達成……レベル4、アークエネミー」

ズズズズズズズズズズズ!!

ハイ「!!」

ビィ「バッドエンド直行の、絶望のフラグをおっ立ててやるッッッ!!」

74: 2015/07/28(火) 01:01:08.04 ID:3EnmWfst0
1057

--対ビィ領域--

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

勇者「ここで魔王化!? 真勇者は勇者因子を持っている。余計勝ち目が無くなるのになぜ……?」

ハイ「違います。確かに勇者から受けるダメージは増大しますが、火力そのものはさっきより更にあがります」

勇者「ッ! まさか」

ハイ「……相打ち覚悟で、壊すつもりです。全てを」

ビィ「……」

ガッシャーン

杖の形になっていたバイコーンが変形し、パイルバンカーになる。

ハイ「正直……スケールが違い過ぎます。もう彼女の力はどこまでのことが出来るのか……わかりません」

ビィ「さ亜、ファ意ナるバトル堕よ。先輩方ッ★」

きらん

ハイ「……あれは……」

75: 2015/07/28(火) 01:02:55.25 ID:3EnmWfst0
1058

--対ビィ領域--

ビィ「はああああああああああaあああaaaああああああああああああ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアン!!

真勇者「ッ」

瞬間移動に近い速度で繰り出されるビィの攻撃、真勇者はそれに反応して防ごうとするのだが左腕が吹き飛ばされてしまう。

ぶぶちぃ!

ビィ「アハハハは! さすガのゆウ者様モ、こレハきつゐィ……!? アハハハは葉ッ!!」

ドガァアンギィガアアアンン!! ズガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

盗賊「う、すげぇ……俺の眼でも追いきれないくらいの速さで動いてやがる……」

ぎゅるるる

ビィ「!」

真勇者「超再生。桃鳥のこの力もツインテがいれば再現できる」

ビィ「だっ、蚊ッ、ラっ」

ズズズ

ビィ「どオ氏たぁあぁaaaァアアアアアアアあアアアアアアアア!!!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ビィは左手から極大の魔力砲を放つ。

魔法使い「おいおい……無詠唱であの威力かよ……デュクシwwww」

キバ「笑ってる場合!? 上から打たれたんだよ!? 地表に当たれば……」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

真勇者は避けることなくそれを受け止めた。

ビリビリビリビリッ!!

真勇者「ッ!」

76: 2015/07/28(火) 01:04:15.21 ID:3EnmWfst0
1059

--対ビィ領域--

ビィ「氏ねッ! しねっ! シネッ! しネっ! シネシネシネ視ね氏ねしねしね氏ねしねシネ市ねェエエエエエエエエエエ!!」

ずぅんん!!

真勇者「くっ!」

ズズズズズズズズズズズ!!

ビィ「止メだ! 六属性複合対単体攻撃魔法、レベル5!」

ぽう

勇者「!!」

レン「!?」

盗賊「まじ!?」

ブゥウウウゥゥウウウウウウウウウン……

ハイ「うそ……あれを、撃たれたら負ける! 真勇者先輩ッ!!」

真勇者「!」

ドギャァアアアアン!!

真勇者は魔力砲を吹き飛ばした後、宙に浮くビィを見た。

ギュギュギュギュギュギュ……

ビィ「あはッ★ もウ遅イ……出来ちャっタ★」

ビィが構えるパイルバンカーの先端部分に、ピンポン玉程度の大きさの黒い球体があった。

スッ

真勇者は静かに剣を構える。

77: 2015/07/28(火) 01:05:40.73 ID:3EnmWfst0
1060

--対ビィ領域--

勇者「ッ! 盗賊! 少しでも加勢するわよ! 今ならビィも動けないはず!」

盗賊「まじかい。俺が手を貸しても意味がなさそうな気がするが……やらないわけにはいかねぇか」

ハイ「待ってください!」

勇者「ハイ……? 待ってる時間なんて無いわ!」

ハイ「真勇者先輩が……任せろって、言ってる気がします」

勇者「……え」

スッ

真勇者「火に加え水」

ぴちょん

真勇者は火の剣に水属性を加えた。

真勇者「更に土、風」

どっ、ひゅる

真勇者「雷、氷」

ばりっ、きぃん

盗賊「六属性を迎え撃つには六属性ってことか……?」

勇者「……」

真勇者「――そして、毒」

じゅる

盗賊「!?」

真勇者は左手に持っていた剣をその剣と合わせた。

78: 2015/07/28(火) 01:07:54.26 ID:3EnmWfst0
1061

--対ビィ領域--

ギギギッギギギギギギギギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

ビィ「は、ハァ!? 欠陥属性を、マぜたぁア?」

バチバチバチバチバヂヂヂヂイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

その剣は、

勇者「凄い……なんて剣……」

十代目「……あぁ。美しい」

盗賊「あー、そっか。そういえば勇者ってのは欠陥属性も使おうと思えば使えるんだっけ。なるほど盲点だったわ」

勇者「……違うわ盗賊。あれは勇者でも真勇者にしか出来ないことよ」

盗賊「ん? お前らは出来ないのか?」

勇者「うん。確かに私達も欠陥属性を使えるわ。けど決して使いこなせるわけじゃない。そんな半端な力をあれに組み込んでも形を維持できないわ」

盗賊「……」

バチバチバチッ……イィイイイイイン

勇者「欠陥属性も使いこなせるあの子達だからこそ――あの剣は、七色に輝くのよ」

真勇者「――七属性複合攻撃魔法、虹色剣!」

キイイイイイイイイイイン……

ハイ「七つの属性が一切反発し合っていない……まるで、音色みたいです」

79: 2015/07/28(火) 01:09:09.20 ID:3EnmWfst0
1062

--対ビィ領域--

ビィ「……ッ!! た、たカガ一色増えタ所デェなん堕ってイウのサッ!! 食ウウゥぅラえエエエえエエ!!」

ドッッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

真勇者「……はぁっ!」

しんっ

ビィ「」

真勇者の一振りは

どばぁ!!

ビィ「   」

遠く離れたビィの魔法と、、

ビィ「                             ぎ」

ビィを切り裂いた。

ずばああん!!

ビィ「ッッッぎゃあああああアアアアアアアアあああああああああああ嗚呼アア嗚呼!!!!」

どっがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

魔力の爆発は時空の歪みの中に吸い込まれて消滅した。

80: 2015/07/28(火) 01:10:06.36 ID:3EnmWfst0
1063

--対ビィ領域--

ひゅるるるるるる……どちゃっ! ぱらぱらっ……

ハイ「ひ、一振りでビィを……」

どすんっ!

フォーテ「さすがお姉ちゃんだねっ!! 凄いやっ!! 綺麗なだけじゃなくて最強なんだっ!! あはっ!!」

ハイと腕を組み、目をきらきらさせて真勇者を眺めているフォーテ。

ハイ「ふぉ、フォーテちゃんいつの間に……」

どちゃっ!

ハイ「!」

ビィ「ぐ……」

そして、ビィがハイの目の前に振ってきた。

ビィ「が、ぐ……」

ぼろ……

ハイ「……ッ」

ビィはもう、消滅しかけている。

81: 2015/07/28(火) 01:11:13.65 ID:3EnmWfst0
1064

--対ビィ領域--

ビィ「はぁ、はぁ……マタ、まヶタ……? 魔タ、黒星ナノ? 黒星、黒星……ずっと、永遠に……あ、アァaa……★」

ぼろろっ……

手足のつま先から砂となり消えていくビィ。

ビィ「マた、私、ダケ……ワタし……」

ビィは血の涙を流しながら震えている。腕に力を込めて体を起こそうとするのだが、

ぼろっ! どさっ!

腕が砕けて倒れてしまう。

からん、からん……

ビィ「!」

ハイ「!」

その時、ビィの目の前に一枚のメダルが振ってきた。

ビィ「あ、ああ、亜アァ亜ああ……!」

ずる、ずるる……

それを見たビィは這ってメダルに近づいていく。

82: 2015/07/28(火) 01:12:20.15 ID:3EnmWfst0
1065

--対ビィ領域--

真勇者「……」

ずる、ずる

ハイ「それ、は……」

フォーテ「? ハイお姉ちゃん?」

ぽたっ

フォーテはハイが涙を流しているのに気づく。

ずる、ずる……

ビィ「私ノ、宝、モノ……大事ナ、ダイジな……a!」

ずる、ぼろぼろっ

体中が崩れていくのも構わずにビィは必氏に進む。

ビィ「大事ナ、ダイジ……」

ハイ「ッ」

たっ!

カブト「!! ハイ油断するな! 魔王はそうなっても危険だ!」

たたっ

ハイは駆け寄り、メダルを拾った。

ハイ「そんなに、これが……大事なんですか?」

83: 2015/07/28(火) 01:13:37.02 ID:3EnmWfst0
1066

--対ビィ領域--

ビィ「大、じ! カエして! KAえしいいてえ!」

ハイ「はい……」

すっ

ハイはビィの顔の目の前にメダルを置いてやる。

ビィ「ダイジ、大事……たかラ、物……」

ビィはそれが手元に来ると、安心したように表情を崩す。

ハイ「……」

それを見てハイはぽろぽろと涙を零す。

真勇者「……」

ハイ「……仲間なんてどうでもいい、なんて……嘘、だったんですよね……」

ビィ「タカら、宝……」

ハイ「私達がレベルアップをするには、心から信頼できるパーティメンバーがいなきゃ出来ないんです……道具としか見れないような相手がパーティにいても無理なんです。貴女は……自分の気持ちに気づかなかったんですか?」

ビィ「だい、ジ……ジ、じじ……」

ハイ「――そんなわけ、無いですよね」

84: 2015/07/28(火) 01:15:26.27 ID:3EnmWfst0
1067

--対ビィ領域--

ぼろぼろ……

ハイ「ビィ……ありがとうございました」

ビィ「……ジ?」

ハイ「貴女の存在が、きっと最後のフラグだったんです」

ビィ「……」

ハイ「きっとハッピーエンドへの道をこじ開けるには、数えきれないほどの挫折と努力を積み重ねた貴女が私達の敵として現れなければいけなかったんだと思うんです」

ビィ「!!」

朦朧としていたビィの瞳が大きく見開かれる。

ハイ「ビィが、多分、最後の条件、なのかと」

ビィ「う……そ」

ぼろっ……

85: 2015/07/28(火) 01:18:13.69 ID:3EnmWfst0
1068

--対ビィ領域--

ハイ「最初に貴女の襲撃にあったことで私は身構えることが出来ました。修練の塔に入るのも何かを感じて躊躇しました」

ビィ「……」

ハイ「それのおかげで先輩方は急いで修行を終えてきてくれたんだと思うんです。直前まで一緒にいた私達が、いつまでたっても入ってこない……それはきっと、外でトラブルが起きたからだ、と、思ってくれたはずです」

ビィ「」

真勇者「……」

ハイ「結果先輩達は、一度も間に合わなかったと言った貴女の見てきたものを狂わせた……貴女が間に合わせたんです」

ビィ「そんな……嘘……」

ビィはハイの顔を見上げる。

ビィ(確かに、最初に、接触した時にハイを、殺さなかったケースは、少ない……で、も、それが……こんな、こと、に……繋がる、なんて……)

ぼろっ……

ビィ「あ、は」

ハイ「ビィ……」

ビィ「あはははは、ははははは……!」

ぼろっ……

86: 2015/07/28(火) 01:19:30.49 ID:3EnmWfst0
1069

--対ビィ領域--

ビィ「まるで、私、ピ工口じゃないですか……」

すっ

ハイはしゃがんで、残ったビィの腕にそっと触れた。

ハイ「……ピ工口なんかじゃない。貴女が今までずっと頑張って来てくれたから、このルートが生まれたんです」

ビィ「」

ハイ「感謝します。そして、お疲れ様でした……!」

かぽっ、かぽっ

バイコーン「ぶひるん……」

パイルバンカーから元の姿に戻ったバイコーンがビィに近づいていく。

ぺろっ

そしてビィの顔を舐めた。

ビィ「バイ、ちゃん」

87: 2015/07/28(火) 01:21:30.60 ID:3EnmWfst0
1070

--過去--

ざぁあああああああああ

ビィ「……ごめんねユニちゃん。私もう汚れちゃいました……だからあなたに、二度と乗ることができない」

血まみれになって寂しげに笑っているビィ。

ユニコーン「……」

かぽっ、かぽっ

ユニコーンは、ビィが虐頃した氏体の破けた腹に自分の顔を突っ込んだ。

ビィ「!? 何してるの!! やめなさい! そんな不浄なものに触れちゃ駄目! こらっ!」

がしっ!!

ビィはあわててユニコーンを連れ戻そうとするのだが、ユニコーンは言うことをきかない。

ビィ「駄目! 駄目駄目!! あ……」

ずるる……

ユニコーンの毛並みが頭部から順に真っ黒に染まっていく。

ビィ「あ、あぁあ!! そんな、堕ちてしまった……!」

ぺたん

ユニコーン改めバイコーン「ぶひるん」

ビィ「あなたは……綺麗なままでいいのに……あなたまで、汚くならなくて良かったのに……っ」

でも

ビィ「」

それじゃあ君のことを乗せてあげられないから

ビィ「」

確かにビィにはそう聞こえた。

88: 2015/07/28(火) 01:22:33.62 ID:3EnmWfst0
1071

--対ビィ領域--

ぼろ……どく……

バイコーン「ぶひるん」

ぺろぺろ

ビィ「ふ、ふふ……バイちゃん、くすぐったい、です」

ハイ「! これって……」

ビィの体の大半は砂となって消えた。が、

どくどく……

ハイ「砂……じゃ、ない。血が、出てる……」

どくどくどく……

ビィ「ふん……ハイ……」

ハイ「……はい?」

ビィ「貴女も、負けちゃえばいいんです」

ビィはにっこりと笑って、

がく

息を引き取った。

ハイ「……」

ハイが大事にしていたメダルは、

ハイ「……負けませんよ。貴女の頑張りを、無駄に出来ないですから」

牛乳瓶の蓋になった。

89: 2015/07/28(火) 01:24:38.32 ID:3EnmWfst0
1072

--対ビィ領域--

ひゅぅうぅううぅぅう

勇者(……魔王、魔族の氏は砂となって消えるさだめ……でもビィは最後に、人間に戻ったのね)

ハイ「……」

ハイはビィに手を合わせている。

勇者(絶望……しなかったのね)

ぺろん

ハイ「わっ」

バイコーンはハイの顔を舐めている。

ハイ「やめてくださいユニ……あ、えっと……」

バイコーン「ぶひるん」

ざっ

調教師「最後の戦いに力を貸す、って言ってます」

賭博師「はー、やれやれ。やっとおっかないの倒せたみたいね。みんなも少しずつここに向かってきてるよ」

賭博師たちがハイ達と合流した。

ハイ「力を、貸してくれるんですか?」

バイコーン「ぶひるん」

ハイ「……ありがとう、ございます!」

かぽ、かぽっ!

ユニコーン「ぶるるっ!」

ハイ「あ、ユニちゃん。今までどこいってたんですか」

90: 2015/07/28(火) 01:27:05.69 ID:3EnmWfst0
1073

--対ビィ領域--

盗賊「んー……」

がりがり

盗賊「悲しい敵だったなぁ。せっかく強い相手を倒したってのに、全然嬉しくねぇもん」

勇者「そうね。でも気を抜けないわ。なにしろ次は……」

トリガー「そう、僕が相手だからね」

全員「!?」

ひゅうううぅううううううう……

ハイ「! 来ましたね、トリガー!」

トリガー「うん。そろそろ出番だと思ってね。来させてもらったよ」

ふよふよと宙に浮いているトリガー。その態度からは焦りも気負いも一切感じられない。

トリガー「やれやれ、大分計算違いだよほんと。ビィちゃんの勝ち負け自体はどっちでもよかったんだけどさ、やっかいな敵を増やしてくれちゃうわ……」

トリガーはちらりと真勇者を見る。

トリガー「最後の最後で絶望をやめて魔王の骨が完成しなくなるわ……」

トリガーは牛乳瓶の蓋を見る。

トリガー「はぁ……余計なことしかしてくれなかったよビィちゃんは」

ハイ「」

がし

ハイ「トリガーーーーー!!」

ハイは地面に落ちている石を掴み、トリガーに向かって投げた。

すかっ

トリガー「当たらないさ。まだホログラムだもの」

91: 2015/07/28(火) 01:28:18.81 ID:3EnmWfst0
1074

--対ビィ領域--

トリガー「まぁ、魔王の骨を回収してくれたことはよかったかな」

トリガーがビィの氏体に目をやると、

ふわっ

ハイ「!」

ビィが集めた魔王の骨が浮遊する。

トリガー「二代目の王冠」

ぽう

トリガー「三代目のナイフ、四代目の腕輪、五代目のペンダント、六代目の杖……」

ヤミ「……」

トリガー「そっか。これ未完成だった。君が半分だけ氏んでみせるとか器用なことしてくれたせいでね」

トリガーとヤミは無言で見詰め合っている。

トリガー「続いて七代目の目玉、九代目の石版、そして十代目のワニの剥製」

勇者「! 別ルートの私から、奪ったのか!」

トリガー「そうだよ。そのために呼び寄せたようなものだから」

92: 2015/07/28(火) 01:29:35.23 ID:3EnmWfst0
1075

--対ビィ領域--

トリガー「更に別ルートの魔王達が持っていた8個がこちら」

ハイ「!!!!」

トリガー「本当ならこの世界の魔王の骨が10個あれば良かったんだけどね。別ルートから呼び出したものは、ルートを使った僕が動かなくなったら消滅してしまうのだから」

ハイ「……!」

スっ

カブト「KAGEROU!!」

ドンッ!!

時の止まった世界でカブトは跳躍し、魔王の骨を8個奪う。

カブト「魔王の骨の破壊は不可能。そんなことは既に試している! だが、このまま渡すわけにはいかない!!」

どくん

カブト「……何?」

どくん、どくん

時の止まった世界で魔王の骨が脈動する。

ぐちゃり

そして魔王の骨が溶け合い混ざり始める。

93: 2015/07/28(火) 01:31:09.19 ID:3EnmWfst0
1076

--対ビィ領域--

カブト「!?」

ばしゅんっ!

盗賊「魔王の骨が消えた!? そうか、義兄さんのせいだね!」

勇者「お兄ちゃん!」

カブト「ぐっ!!」

ぐねぐねぐねぐね!!

カブトの腕の中で魔王の骨はうねっている。

トリガー「もう無駄さ。今更ね。手を離したほうがいいよ? 君もそれに取り込まれちゃうから」

ばしゅっ!!

カブト「!?」

魔王の骨はトリガーの下へと飛んでいく。

トリガー「さぁ人類の皆さん、悪あがきはよしなね。もう終わりなんだ」

ぐちゃっ!!

残る魔王の骨も融合する。

ぐちゃぐちゃぐちゃっ!!

トリガー「僕のヨリシロが出来上がるよ」

94: 2015/07/28(火) 01:33:32.67 ID:3EnmWfst0
1077

--対ビィ領域--

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ「」

トリガー「」

真勇者「ふむ……確かに硬いな」

蠢く魔王の骨の集合体を切りつけた真勇者。

トリガー「……やめて欲しいな。魔王の骨は傷つかないとはいえ、これは大事なものなんだ。これで僕は世界を救済し……あれ? 赤姫を助ける、だっけ?」

ハイ「!……やっぱり……」

ざり

赤姫「トリガー」

そこへ現れたのは、赤姫。

トリガー「赤姫……やぁ、お久しぶり。何か用かな?」

赤姫「トリガー……貴方を解放しに来たわ」

トリガー「解放? さて、何のことだかよくわからないな」

赤姫「貴方がわからなくても関係ない。覚えておいて。私は諦めない女になったのよ」

トリガー「……」

ずぷ

トリガーの姿が魔王の骨の中へと入っていく。

95: 2015/07/28(火) 01:34:33.11 ID:3EnmWfst0
1078

--過去--

勇者「トリガーの弱点?」

ハイ「はい。弱点、と言えなければ突破口と言いますか……」

盗賊「いや何でもいいさ、あのトリガーが相手なんだ。なんでも気づいたことがあるなら言ってくれ」

ハイ「私が未来から来た、ってことは皆さんに説明した通りです。で、私は未来であるssを読みました」

十代目「この世界のことが書かれていたもののことだろう?」

ハイ「はい。それはQさんというロボットが書いていたものだったので、もしかしたら勘違いで書いている部分もあるのかな、ってたまに感じてたことがあるんです」

勇者「それは?」

ハイ「トリガーの言ってることがおかしいんです」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

盗賊「いつもじゃね?」

96: 2015/07/28(火) 01:36:16.94 ID:3EnmWfst0
1079

--過去--

ハイ「そ、そういうことじゃないんです! そりゃあ、どこまで建前と本音を使い分けていたのかわかりません。でも、前と後で言ってることが違うなって思う箇所が多かったんです」

盗賊「人間ならよくあることだよ」

赤姫「それは壊れたロボットだからじゃないか?」

ハイ「っ。それを言ったらそうなんですけど……でもあの話を一気に見た私はなぜか気になってしまって……そんな時に決定的だったのが未来でトリガーに会った時でした」

十代目「ふむ」

ハイ「彼は私達の戦いの後のことを語りました。でもその中でおかしいことを言っていたんです」



  トリガー「ツインテは名も無き治療員団の初代医院長に。アッシュは新王国の王として世界を安定させ、ポニテは妖精や精霊達との駆け足になった。レンは魔法学校を復活させたし、君は新設された騎士団の隊長となって戦った……」



勇者「……それの何がおかしいの?」

ハイ「ツインテさんの話があるのがいけないんです。だってツインテさん……最終決戦で呪いの槍を受けて、氏んでいるんですから」

盗賊「!!」

97: 2015/07/28(火) 01:41:04.92 ID:3EnmWfst0
1080

--過去--

盗賊「つまり、どゆことだってばよ?」

ハイ「それから私、無い頭を振り絞って考えました。ユーさんと相談したりもしました」



ユーは静に親指を立てている。

盗賊「あれ無視?」

ハイ「そして一つの仮説を立てたんです。ルートとは、別ルートとの間に道を作り、干渉することが出来る能力である。のであれば、あちらからの干渉も許してしまうのでは、と。それがトリガーに悪影響を及ぼしているんじゃないか……」

赤姫「……ほう」

ハイ「ルートはエネルギーの消費が激しいとユーさんが言ってました。でもそれでもトリガーはあまりにもルートを使用したがらなかった。後一回だとか、何らかの制限を自分に課していました。なぜなのか……それは、ルートを使う度に別ルートのトリガーの意識が自分の中に流れ込んできてしまって、自分の意識や記憶と混同してしまうからなんじゃないか……」

盗賊「! つまり……自分でも何がなんだかわからない、ってこと?」

盗賊は真面目な顔でそう言った。

ハイ「まぁ、はい。そんな感じです」

勇者「……」



   トリガー「……僕は氏を選んだ古代種達が作った、人類の最後の希望の鐘」

   勇者「よく……わからない」

   トリガー「この循環でも人類の発展が止められないような不測の事態が発生した時、僕は魔王の意志で人類をリセットするよう、プログラムされている」



勇者(確かにあの時からおかしいと思ってた。なんで氏を選んだ人たちが、人々をわざわざ抑制するシステムなんか作ったのかって……)

十代目「……」

勇者「……でもごめん、もしそれが真実だったとしてもトリガーの弱点になりえないわ」

ハイ「え」

勇者「だって、何を考えているのかわからない相手の方がよっぽど戦いづらいもの」


106: 2015/08/04(火) 02:31:47.29 ID:yZb09nBN0
1081

--対ビィ領域改め、対トリガー領域--

ごぽん

トリガー「……」

オオオオオオオオ……

トリガー(憎悪、絶望……ありとあらゆる負の感情が渦巻いている。それもそのはずか、これはそれらを溜めるものなんだからね)

トリガーは融合した魔王の骨の中に頭まで入っていく。

ずぷん……

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

トリガー(凄まじいね。さすが勇者達の感情だ。やはり最高だ)

ぐ、ぐぐぐ

トリガーの角が少しずつ肥大化していく。



  目を覚ました時は全てが燃えていた。
  サーカス会場は潰れ、団員は千切れて、団長は貼り付けられていて。

  ゴオォオウ

  人の氏体の山の上に誰かが立っている。

  トリガー「……君の心の声が聞こえた」

  勇者「あ、あう……う」

  男の子はまっすぐにこちらを見ていた。
  男の子の頭の角は心なしか大きくなっているように見える。

  トリガー「……」

107: 2015/08/04(火) 02:32:55.87 ID:yZb09nBN0
1082

--対トリガー領域--

ググ、グググ!

トリガー(負の感情はこの世最強のエネルギー……)

ギギッギギギ

トリガーの角は憎悪を吸って巨大化し続ける。そしてとうとうその大きさはトリガーの身長を超えてしまった。

トリガー(僕は、それを吸って元の僕に戻る)

バギン!!



勇者「――さぁ今のうちに最後の準備だ」

ぎごぎごぎごぎご

蠢く魔王の骨を外から見ている勇者達。

ハイ「あの……準備もいいんですが、変形中の今叩く、ってわけにはいかないんでしょうか?」

赤姫「さすがにトリガーも無防備ではない。超強力な防御壁を張っている。下手な攻撃をすればこちら側が全滅しかねないレベルのをな」

ハイ「……ならやめておきましょう。ごめんなさい、レベル1状態だとそれすらわからなくて」

十代目「完成するのを待てばいい。元より不意打ちは好まない」

ユー「……」



真勇者「なら、さっそくハイをレベル4にまで持っていく」

チャキ

ハイ「え」

108: 2015/08/04(火) 02:33:35.94 ID:yZb09nBN0
1083

--対トリガー領域--

ズババッ!!

ハイ「」

勇者「」

十代目「」

ユー「」

真勇者が二本の剣で、自分を含めて五人同時に両断する。

シュイーン

そしてすぐさまくっつけた。

ハイ「……!? あれもう!? 攻撃と回復はやっ! さ、最終条件達成、レベル4、勇者!」

ドンッ!!

勇者(斬られた瞬間わからなかった)

十代目(気づいた時には繋がっていた……)

ユー「……」


109: 2015/08/04(火) 02:34:29.77 ID:yZb09nBN0
1084

--対トリガー領域--

レン「……」

それを作業しながら見ているレン。

レン(まぁ、仕方の無いことにゃけど、ハイは彼らのこともパーティと認めたってことにゃよね、レベルアップ出来てるってことは……ちっとむかつくのにゃ……)

ぷー、っと頬を膨らませるレンだった。

ばちばちっ!!

ハイ「……! レベルアップ完了です、勇者さん!」

勇者「よし、これで勇者が五人揃ったわ。勇者だけのパーティ、完成ね」

ザンッ!!

十代目「ふ。本来なら絶対にありえないパーティ、か」

勇者←イレギュラー
十代目←正統な勇者
ハイ←イレギュラー
ユー←イレギュラー
真勇者←イレギュラー

十代目「……あれ?」

110: 2015/08/04(火) 02:35:18.13 ID:yZb09nBN0
1085

--対トリガー領域--

ぱからっぱからっ

ユニコーン「ひひーん」

バイコーン「ぶひひーん」

ダッ!!

ユニコーンとバイコーンがハイに向かって跳躍、そしてパイルバンカーへと変形していく。

ギュルルルル、ガッシーーーーン!!

ハイは右腕にユニコーンを、左腕にバイコーンを装備した。

ハイ「ユニちゃん、バイちゃん……どうか私に力を貸してください」

盗賊「ダブルパイルバンカー!!……なんだそのロマンがロマンを積んでる武装」

秘書(小回りきかなさそうですね)

111: 2015/08/04(火) 02:35:57.24 ID:yZb09nBN0
1086

--対トリガー領域--

ぎちごちぐちげちッ!

魔王の骨の動きが激しくなっていく。

勇者「……そろそろトリガーの方も終わりそうね。みんな、覚悟はいい?」

ハイ「はい!」

十代目「あぁ」



真勇者「問題ない」

勇者「よし。じゃあ……最初から全力でいくわよ。私達のこの戦いで、未来の全てが決まるのだから……」

スッ

がしぃーーーん!

勇者達は各々の武器を重ね合わせた。

レン「こっちもゴーレムの配置完了にゃ。いつでもいけるのにゃ」

112: 2015/08/04(火) 02:36:26.91 ID:yZb09nBN0
1087

--対トリガー領域--

ズズズズ

トリガー「ヤレヤレ……準備万全ミタイダネ」

勇者「えぇ、おかげさまで……そっちも気分良さそうじゃない」

トリガー「ソリャアァネェ。ドレダケコノトキヲマッタコトカ……イヤァナガカッタ」

ぐに……ぐにぐにぐにぐに!!

魔王の骨は一気に形を成していく。

しゅぅううう……

ハイ「これが……トリガーのヨリシロ……」

トリガー「……」

トリガーは実体を手に入れた。その姿は、角の生えた巨大な赤子……。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

トリガー「さぁ――最終決戦といこうか。人類、いや、勇者諸君」

113: 2015/08/04(火) 02:37:57.23 ID:yZb09nBN0
1088

--対トリガー領域--

トリガー「行くよ。そぉら」

ぽぽぽぽぽぽぽぽ

トリガーは周囲に強力なエネルギーフィールドを張り巡らせた。

勇者「リーダースキル、勇者の陣!」

ドギィイイン!!

トリガー「勇者の陣……? はて、初耳だ。なんだいそれは?」

赤姫「――パーティ全員が勇者である時のみ発動するリーダースキルだ。効果は強力だが本来なら実現しえないリーダースキル……だがこの日のために拵えたのだ。トリガー、お前を救うために」

トリガー「……へぇ。それはそれは、楽しみだね……」

ぎょごごごごごごご!

ハイ「! 凄い! 全ステータスがかなり強化されている! 私が私じゃないみたいです!」

十代目「ぶっつけ本番で調整できなかったが……確かにこれは凄いな」

トリガー「ちょっとくらい強くなった所で無意味なのに……無駄ながんばりだよ」

ぱきゅーーーーん

トリガーが掌をかざすと、漆黒のエネルギーが収束していく。

ギュボボボボボボボ

勇者(あ、まずい)

ハイ(あれ? 簡単に作ってるけど……)

レン「!? 宇宙王もこもこの一撃並みのやばさを感じるのにゃけど、気のせい……?」

114: 2015/08/04(火) 02:38:26.58 ID:yZb09nBN0
1089

--対トリガー領域--

トリガー「気のせいかどうか、味わってみるといいよ」



勇者「!? 全員、防御障壁!!」

どぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

ユー「っ!!」

ビリビリビリビリビリビリ!!

盗賊「やっべぇなこれ! 当たったらまじ! まじ!」

レン「あ、あの一撃を五人で完全に防ぎきれてることも凄いにゃ……あれ? 1、2、3……三人?」

シュンッ!!

トリガー「! 攻撃をすり抜けてきたの?」

トリガーの後ろに回りこんでいたハイと十代目は

十代目「はぁ!」

どがぁん!

ハイ「やぁ!!」

どぎゃああん!!

各々の武器でトリガーに攻撃する。

115: 2015/08/04(火) 02:39:05.69 ID:yZb09nBN0
1090

--対トリガー領域--

トリガー「……驚いたよ。あれを三人で受け止めたっていうのかい? 大した防御力だ。人間の出せる域じゃない」(いや……それもそうだけど、この子達、息ぴったり過ぎだね)

ちらっ

もこもこ「むむむむー」

通信師「……」

トリガー(なるほど、もこもこネットワークと通信師の援護で意思疎通を高速化してるのか)「ふ、何が全員防御障壁だよ」

勇者(う、速攻でばれたかしらね)

ハイ(それより私達の攻撃でダメージ受けてる気がしないんですけど……)

十代目(気にするな、想定内だ。次)

シュバッ!!

勇者「はああああああああ!!」

ガギィイイン!!

勇者が跳躍しトリガーに斬りかかるも、そのフィールドによって防がれた。

116: 2015/08/04(火) 02:40:06.96 ID:yZb09nBN0
1091

--対トリガー領域--

勇者「はぁあああ!!!!」

ギギギギギギギギギギギギン!!

トリガー(手数だけ……じゃない。的確に、ほんの少しだけ弱まった場所を斬りつけている。伊達に20年も勇者やってないね)「でも」

ドッギイイイイイイイイイイイイイイイン!!

勇者「!!」

エネルギーフィールドが炸裂し、勇者が吹き飛ばされる。

盗賊「!」

トリガー「その程度じゃ敗れな」

フォン

ドギャシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

トリガー「!!」

真勇者「……」

弾かれた勇者の後ろから、真勇者が七色の魔力を放った。それはトリガーのフィールドを突破し、トリガーにダメージを与える。

トリガー「ぐ、君達は……ざ、ざ」

117: 2015/08/04(火) 02:41:16.90 ID:yZb09nBN0
1092

--対トリガー領域--

だだだだっだだだっだだっだん!

踊子「ふぅ、スキル、飛行能力付与の舞! さぁ皆さん~好き勝手やりまくっちゃってくださいな~」

いぃん

十代目(! 飛行能力か。感謝する)

勇者(踊子、助かるわ)

しゅいーん!

四人は空を自由に飛び交った。

トリガー「目障りだね……落ちてもらうよ」

きぃいいいん!!

レン「!! さっきのやつを全方位に撃つつもりかにゃ!?」

ユー「!!」

ダッ!!

それを見たユーはレイピアを構え、トリガーに向かっていく。

118: 2015/08/04(火) 02:42:32.94 ID:yZb09nBN0
1093

--対トリガー領域--

賢者「ッ!」

スッ……

賢者「……く、どうやら魔力暴発は効かないみたいです。試してはみたんですが……」

シャーマン「おいバカもの、あんなの暴発させたら地上が吹き飛ぶだろうが……しかし効かないとこを見るとやはり魔力では無いようだの」

賢帝「みたいねぇん。てゆうか、魔力だとか魔力じゃないとかもうどうでもいいの。化物共のインフレがひど過ぎてついていけないわぁ……」

代表「だね。僕らでは束になっても敵わない……魔力供給でせめてものバックアップといこう」

ごぅんごぅんごぅん

円陣になっているゴーレムの中心にいるレン。

レン(……ここにいる全員の魔力を届けるにゃ。だから、頼むにゃ。勝ってにゃ!!)


どぎゃああああああああああああん!!

トリガー「! 僕が攻撃を宇宙に向けて放った……? なるほど、使ったね? ルート」

ユー「……!!」

ギギギギギィン!!

ユーはトリガーに斬撃を叩き込む。

トリガー「君は昔も今も、僕の邪魔ばかりするね。   ざ」

119: 2015/08/04(火) 02:44:30.66 ID:yZb09nBN0
1094

--対トリガー領域--

ハイ(しかし、ほんっと硬いですね。防御シールドに全振りですか? 全然通りません!)

真勇者(まるで大事な何かを守っているかのようだ)

ユー(……)

勇者(もしくは何かを……みんな、前にハイちゃんが言ってた仮説のこと覚えてる?)

十代目(トリガーが狂っている、という話か?)

勇者(その話の後のことよ。もしかしたらがあるかもしれないから、そのことを頭の隅に置いておいて)

ハイ(はい!)

十代目(なるほど、了解した)

ぎぎぃいいいん!!

トリガー「また、テレパシーで会話かい? いいよ、どうせ君達人類はこのまま全滅するんだ、今のうちに好きなだけお喋りするといい」

どぎゃあああああああああああああああん!!

そしてさらりと放つ魔力弾を真勇者がなんとか弾く。

真勇者「ぐ、弾くので精一杯だ……」

トリガー「愚かな人類……やはり僕が管理しなくちゃならないんだよ。愚かなゴブリン。誰からも殺されないために」

ハイ「……」

120: 2015/08/04(火) 02:45:39.22 ID:yZb09nBN0
1095

--対トリガー領域--

きゅーんどがぁあぁぁああん!!

トリガー「っ、君達だってモンスターにはなりたくないだろう? でも殺さないためには仕方無かったんだ。そうでもしなくちゃいけなかったんだ。僕が僕から護るためにはがっ」

ドドドドドン!!

トリガーの直上から魔力弾を当てたハイ。

バッ!

十代目「いいぞ、追い討ちをかける。六属性複合攻撃魔法、レベル3!」

きぃいいん

勇者「六属性複合攻撃魔法、レベル4!」

どぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

二人の魔力砲がトリガーに命中する。

どごおおおおん!!

トリガー「ぐっ、ざっ……邪魔をして欲しくないなぁ……。僕はこの力で赤姫を元に戻したいんだよ。天使からワニに、絵本は書かれていたんだ、外宇宙によって」

赤姫「……」

ひゅーん、どがどがどがぁああああん!!

トリガー「っづ……やはり蛇足なだけだ。人類は全て絶滅させておかなきゃならないね。だって人は大切な物なんだから」

ハイ(……トリガーに攻撃を与える度に言ってることがころころ変わってる……やっぱり、トリガーあなたは……)

121: 2015/08/04(火) 02:46:50.26 ID:yZb09nBN0
1096

--対トリガー領域--

ドゴオオオオオオン!!

トリガー「ッ! 僕は、赤姫のために人類を滅ぼしてモンスターに管理させるために別ルートから人類を護るんだ……その為には王の子供が憎悪で勇者なんだァアl!」

真勇者(余達の攻撃がそれほど効いているとは思えないが、行動が緩慢になってきた……今の動きなら最大の一撃を与えられる!)

ダッ!!

トリガー「その程度の攻撃で僕をリセットするつもなのかい?……げ、げげ……ろ」

ハイ「ッ!?」

ドギャギャギャギャギャギャ!!

トリガーが放つ黒い光弾を全てかわした真勇者は二つの剣を強く握り、

ぎゅ

真勇者「トリガー覚悟!! スキル、X斬り!!」

ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

トリガー「あは、                      gに、にげ」

ハイ「!! 真勇者先輩離れて下さいっ!!」

真勇者「ッ」

ズギャシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

真勇者の斬撃は、誰も傷つけられなかったトリガーの防御を破った。

122: 2015/08/04(火) 02:48:09.38 ID:yZb09nBN0
1097

--対トリガー領域--

ばぎ

ハイ「あ、あれ?」

ばき、ばきききききき!!

全身にひびが入っていくトリガー。

真勇者(? ハイはああ言っていたが、離れる必要は無かった。これで……ッ?!)

ばきっ……

トリガー「に、にgえ、るん、d……」

トリガーは痙攣を始め。赤姫に手を伸ばす。

トリガー「に、にに、に……逃げ、ろ!」

そして叫んだ。

勇者「!?」

ゴゴゴゴゴゴ……

???「……やれやれ、随分と耐えてくれたものだこのポンコツめ。ロボット風情が人の邪魔などしおって」

その謎の声はトリガーの中から聞こえてきた。

ハイ「!!」

123: 2015/08/04(火) 02:50:00.01 ID:yZb09nBN0
1098

--過去--

勇者「――だって、何を考えているのかわからない相手の方がよっぽど戦いづらいもの」

ハイ「……まぁ、そうかもしれません……」

十代目「……」

勇者「……でも、有益な情報だったわ。精神にがたが来ているなら付け入る隙もあるはず」

赤姫「ふむ……」

赤姫は一人何かを考えている。

勇者「どうしたの? 赤姫」

赤姫「いや、な。そこまで追い詰められるほどになるまでルートを使わなきゃいけなかった場面というのが、今までに存在していなかったような気がしてな」

十代目「ならルートの危険性を知らなかったのではないか?」

赤姫「いやそれはない。あの時トリガーは一瞬だが全知全能に近い存在になったのだ。別次元との接触の怖さを知らなかったとは思えない」

ハイ「……だとすると」

ハイは汗をたらしながら喋る。

ハイ「あえてそれをやらせている人物がいるのかもしれません……」

124: 2015/08/04(火) 02:51:11.26 ID:yZb09nBN0
1099

--過去--

勇者「あえて、トリガーにやらせている……?」

ハイ「はい」

勇者「待ってハイ。あのトリガーにそんなことを強要できる人物なんかいやしないわ。それにやらせるメリットが考えられない」

ハイ「――一人だけ、いるんです。あのssを見た私しか気づけなかったのかもしれませんが」

勇者「……?」

ハイ「メリットはこうです。その人はある時トリガーの中に進入しました。その人はトリガーの思想に影響を与えることは出来たけれど、完全に支配することは出来なかった。それどころか逆にトリガーに押さえ込まれてしまった」

赤姫「……!」

ユー「……」

ハイ「その人はトリガーを完全に操るために精神を揺さぶろうとしたんです。トリガーの精神が壊れてしまえばトリガーを乗っ取って自分の目的を果たすことが出来るから」

赤姫「嘘よ……」

勇者「……そいつの名は?」

ハイ「その人の名前は」

125: 2015/08/04(火) 02:51:57.66 ID:yZb09nBN0
1100

--対トリガー領域--

ばぎ!

トリガーの体の中から二つの腕が飛び出し、左右に開いていく。

ばぎぎぎぎぎぎ!!

???「全く馬鹿なことをしたものだ……こんなことなら最初から自分の手でやるべきだった」

トリガー「こん、な、こと、に、な」

ばぎん!!

トリガー「」

トリガーを破壊し、中から飛び出した者は、

勇者(誰?)

十代目(誰だ?)

真勇者(誰だ)

ハイ「……!」

ユー「……」

赤姫「お」

???「ん?」

赤姫「お父、様」

???改め大統領「おお……久しいな我が娘よ」

132: 2015/08/11(火) 01:38:46.43 ID:MIsJG4mK0
遅れました。それでは投下していきます。

133: 2015/08/11(火) 01:40:06.59 ID:MIsJG4mK0
1101

--対トリガー領域--

ズシャッ!

地面に着地する大統領。

大統領「……」

ゴゴゴゴゴ

赤姫「……まさか、ハイが言っていた通りになるなんて……!」

ハイ「ということはやはりこの人は……大統領、さん?」

大統領「ほう、この時代でも私のことを知っているものがいるのか……ふ、なんてな。全てのことはトリガーを通じて知っている」

盗賊「角の生えた髭のおっさん……? こいつが例の?」

ハイ「皆さん構えて下さい。彼が、全ての元凶です!!」

バッ!!

大統領「……元凶とは随分な言い草だな。まぁ君達からしたら私が最大の敵であるということは否定しないがな」

余裕の笑みを見せる大統領。

赤姫「……お父様」

大統領「……赤姫よ。お前には失望したぞ。せっかくの大役だというのに役割を放棄するとはな……こうなっては親の責任だ。私がお前に代わって、人という種を終わらせるとしよう」

ハイ、盗賊、真勇者「「「!!」」」

134: 2015/08/11(火) 01:41:33.74 ID:MIsJG4mK0
1102

--対トリガー領域--

赤姫「どうして……どうしてです? なぜそこまでして人を滅ぼさなくてはならないのですか、お父様……!」

大統領「なぜ?――極めて簡単なことだよ赤姫。それは、どんなものでも完結することで輝くからだ」

赤姫「……え? 完結……?」

予想外の返答に、赤姫は動揺してしまう。

大統領「そうだ。どんな素晴らしい作品であれ、未完で終わればそれはもはやゴミだ。完結しない作品に価値など無い」

赤姫「……」

大統領「そして蛇足な引き伸ばしも等しく価値が無い。いいところですぱっと終わるべきなのだ。それが作品のためでもある」

赤姫「……お父様は……人類そのものが作品だと、おっしゃるのですか?」

大統領「あぁそうだ。だから私は人と言う素晴らしい作品を完結させてやりたいのだ。これ以上の発展を望めなくなったこの種を、晩節を汚す前に盛大に終わらせてやる……つもりだったのだ……」

大統領は手で顔を覆った。

大統領「……だが計画は失敗し、この有様だ……もはや随分と蛇足が続いてしまった……」

ズッ

大統領の体から謎のエネルギーがあふれ出していく。

大統領「――それも仕方が無いと割り切ろう。素晴らしい作品ほど終わり際を見誤るものだとしてな。では諸君」

ゴッ

大統領「終わりたまえ」

135: 2015/08/11(火) 01:43:08.41 ID:MIsJG4mK0
1103

--対トリガー領域--

ダッ!!

ハイ、勇者、真勇者、十代目、ユーの五人が一斉に大統領に飛び掛った。

大統領「ほう、私の話を聞いておいてまだ抗おうというのか。人類の汚点どもめ」

どががぁああああ!!

五人の攻撃を両腕で防ぐ大統領。

勇者「!……当たり前でしょ? あんたみたいな考え方に賛同できる人間がいるものか!」

大統領「ふん、ほとんどが賛成だったのだぞ。お前達のようなまがいものとは違う、成熟した心を持った愛すべき本当の人間達だったからな」

ハイ「! 私達も人間です!」

大統領「」

ドゴッ!!

大統領の殴打によって吹き飛ばされたハイ。

ハイ「げぶっ!?」

大統領「ふざけるなよまがいものめ……! 我ら人類に成りすます寄生虫め!」

ドガガガガッ!!

勇者「がっ!」

真勇者「ぐっ!?」

十代目「がはっ!」

ユー「!」

今度は残る四人に神速の打撃を加えて吹き飛ばした。

大統領「……お前達と話すことなど何も無い。ただ終われ」

136: 2015/08/11(火) 01:44:11.84 ID:MIsJG4mK0
1104

--対トリガー領域--

フォンッ!

勇者「!」

吹き飛ばされている最中の勇者の目の前に瞬間移動してくる大統領。

大統領「ふん!」

ドンッ!!

勇者「ッ!!」

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

大統領は追撃を加え勇者を大地にたたきつけた。

勇者「がふッ!!」

大統領「我が娘の姿を真似たものよ、安らかに終われ」

大統領はエネルギー弾を勇者に向けて放った。

ドギャアアアアアアアアアアアアアアン!!

137: 2015/08/11(火) 01:46:16.77 ID:MIsJG4mK0
1105

--対トリガー領域--

しゅぅうう……

勇者「ぐっ……!」

大統領「む? まだ息の根があるのか?」

ユー「!!」

ガギィイン!!

大統領「ぬう? はるか地平のかなたに吹き飛ばしたつもりだったが……」

ユーが大統領を後ろから斬りかかった。だが大統領の体は無傷。

大統領「はっ!」

ドガンッ!!

今度は振り向き様に裏拳を放つ大統領。しかしユーはそれをレイピアで防いだ。

ビリビリビリッ!!

大統領「……ほっ!」

ドンッドドドン!!

ユー「!!」

だが続けざまに繰り出される打撃技に耐え切れず、後方へと吹っ飛んだ。

138: 2015/08/11(火) 01:47:56.60 ID:MIsJG4mK0
1106

--対トリガー領域、後方支援所--

ヒュンッ、ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ユー「……!」

飛ばされた場所は盗賊やフォーテ達がいる後方支援所。

しゅぅうううう……

盗賊「げほっごほっ! おいおい、大丈夫かよユー君。ほら手」

駆け寄って手を差し伸べる盗賊。

ユー「ッ……」

ぐい

フォーテ「あそこまで桁違いだと何度も使わざるを得ないよね、ユーお兄ちゃん」

ユー「!……」

盗賊「? 何のお話?」

こつん

フォーテはユーと自分の額をくっつけた。

盗賊「何そのご褒美!?」

フォーテ「僕の力も残り少ないけど、これ、全部ユーお兄ちゃんに託すねっ。これで、お姉ちゃん達を守ってあげて!」

ぶぅうん……

ユー「……」

ユーは力強く親指を立てた。

139: 2015/08/11(火) 01:49:09.72 ID:MIsJG4mK0
1107

--対トリガー領域--

十代目「はぁあああ!!」

ヒュンッ!

大統領「? お前もか。変だな……ふんっ」

ドゴォッ!!

十代目「ぐふぅ!!」

ダダダダダッ!

真勇者「はぁ!!」

ザキィイイイン!!

真勇者の斬撃が大統領の二の腕を切り裂いた。

ぶしゅっ!

大統領「! ほぉ。お前は少しはやるようだな」

真勇者「せい!!」

ギギ、ギギギギギッギギン!!

真勇者の超高速の斬撃を素手で捌いていく大統領。

ドンッ!!

そして掌から発射されたエネルギー波によって真勇者は吹き飛ばされる。

140: 2015/08/11(火) 01:52:44.62 ID:MIsJG4mK0
1108

--対トリガー領域--

大統領「ふははは、これがカラテだ」

ざざざーーー!!

大統領「! またか。また踏みとどまった……」

ダダダダダダ!! 

ユー「ッ!」

ガキィンッ!

大統領「……お前か。お前だな? お前が、私の攻撃に何かしてるな……?」

ぎり、ぎりりりりり!!



--対トリガー領域、後方支援所--

盗賊「すっげぇ戦いだ……今までと比べてあんまり派手さはないけど、一発一発が必殺の一撃だって、俺でも見てわかるぜ……」

フォーテ「変なおじちゃんでもそれがわかるんだ? そうだよ、あれはもうフォーテ達では踏み込めない世界……」

賢帝(フォーテちゃんが言うと重さが違うわねぇん……)

ガガガガァアアン!!

フォーテ「ちなみにあの一つ一つの攻防、毎回ユーお兄ちゃんがルートを使って最低限にまでダメージを減少させてるんだよ」

盗賊「!? 毎回!?」

フォーテ「そう……そしてルートを使っても攻撃を避けることができないんだ……ルートの力の大本は向こうだからね」

盗賊(……そうか、さっき渡していたのはルートの力か)

141: 2015/08/11(火) 01:54:36.83 ID:MIsJG4mK0
1109

--対トリガー領域--

ハイ「ユーさん!」

ユー「!」

チュギィン!

大統領から一旦離れ、距離を取るユー。

ハイ「行きます! 奥義!」

そして挟み撃ちの形から、

ユー「奥義、勇者ラッシュ」

ハイ「ダブル勇者ショット!!」

大統領に向かって奥義を放った。

ドギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

大統領「子供だましだ!」

ぶわっ!

ハイ「!?」

大統領は二人の攻撃を全く意にも介さず、一直線にハイに向かって行って、

ドゴオォン!!

ハイを殴りつけた。

142: 2015/08/11(火) 01:56:43.87 ID:MIsJG4mK0
1110

--対トリガー領域--

十代目「ぐっ……」(全戦士の力だけじゃない、自然からも力を吸い取っているというのに……この様か……)

勇者(まずい……あれだけの魔王の骨を吸ったあいつは、もはや魔王なんて超えた存在だ……)

赤姫「お父様……いえ、貴方はもう、お父様じゃない……魔王を超えし魔王……超魔王」

大統領改め超魔王「魔王? 心外だぞ我が娘よ。私はただのどこにでもいる人間だ」

ドンッ!!

ユー「!」

十代目「ぐあッ!」

超魔王がエネルギーを解放するだけで、斬りかかろうとしたユーと十代目は吹き飛ばされてしまう。

ずざーー!

超魔王「……だが魔王とは人を滅ぼす者の名……人の歴史を滅ぼす身である私は、確かに魔王と呼ぶにふさわしいのかもしれないな……いいだろう、甘んじてその名、貰い受けよう」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

超魔王「私は超魔王だ。かかってこい勇者どもよ」

143: 2015/08/11(火) 01:58:08.39 ID:MIsJG4mK0
1111

--対トリガー領域改め対超魔王領域--

勇者「はぁっ!」

ハイ「やー!」

十代目「だぁあ!!」

ユー「!」

ぎぎぎぎぃいん!!

四人同時に超魔王に切りかかるもその全てを簡単に防がれてしまう。

ギギギィン! ギギギイィン!!

超魔王「む?」

しかし四人は攻撃を続ける。お互いのことを知り尽くしたような完璧なタイミングでの連続連携攻撃。

ギギギ、ギギギギギギギギギ、ギギギギギギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

超魔王「む、こいつら……」

スッ

勇者「奥義、勇者スラッシュ!!」

ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

そして一瞬の隙をついて勇者が奥義を放った。

144: 2015/08/11(火) 02:00:16.32 ID:MIsJG4mK0
1112

--対超魔王領域--

ぽた、ぽたぽた

超魔王「む……」

超魔王の体には確かに切り傷が。

十代目(入った!)

ハイ(入りました! やっぱり私達の力が全く効かないわけじゃない!!)

ぽた、ぽた……

超魔王「……やってくれるなトリガー。お前が勇者と魔王の設定を施した理由が今わかったぞ」

ユー「!」

超魔王「お前は自分自信を破壊してもらいたかったのだな……そして、万が一に私が表に出てきた時のための保険でもあった……」

しゅるるる!! ぎしっ!

真勇者「ウェイトレスの糸!」

真勇者は隙を見逃さず超魔王を捕縛する。

真勇者「叩き込め!!」

十代目「! 奥義、勇者バスターーーーーーー!!」

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ゼロ距離から放たれるmap奥義。

ビリビリビリビリビリビリ!!!!

超魔王「ふん」

がしっ!

十代目「!?」

だが超魔王は奥義を受け続けながらも、平然と十代目の顎を掴んだ。

ばぎゃっ!

145: 2015/08/11(火) 02:01:29.09 ID:MIsJG4mK0
1113

--対超魔王領域--

十代目「ッ!? げっ」

顎を握りつぶされる十代目。

超魔王「魔王には勇者の攻撃が効く……それがなんだ。弱点でも作ったつもりだろう。 しかしもはやそれは、些細なことよ」

きぃいいいん!

顎をつかんだ掌にエネルギーを集める超魔王。

ハイ「! 離してください!!」

ズガァアン!!

パイルバンカーを顔に叩き込むハイ。だが超魔王は微動だにしない。

勇者「はぁ!」

ギィン! ズギィン! ギギィンガァアン!!

ユー「!!」

ズギャギャギャギャギャギャアアアン!!

勇者とユーの連撃ですら超魔王は無反応。

ドギャーーーーーーー!!

そして放たれる光弾。十代目の頭部は消え去った。

146: 2015/08/11(火) 02:02:56.98 ID:MIsJG4mK0
1114

--対超魔王領域--

真勇者「! 絶対回復領域!」

ぶぅううん!

勇者(真勇者がいれば殺されたってすぐ蘇生できる。でも)

ハイ(仲間が一人でも氏んでしまうと)

ぶぅぅん

残りの四人のステータスが下がってしまった。

十代目(勇者が五人揃っている時のみ使えるリーダースキルと、十代目がやっていた自然からのバックアップが一時的に切れてしまった!)

超魔王「なるほど、全員で全員を補っているのか。ならば」

じゅる

十代目が完全に蘇生した瞬間に、

ズギャッ!!

今度は勇者の頭部が叩き潰されてしまう。

超魔王「一人ずつ潰していくか。蘇生が間に合わなくなるのはいつになる?」

147: 2015/08/11(火) 02:03:46.79 ID:MIsJG4mK0
1115

--対超魔王領域、後方支援所--

フォーテ「! 即氏攻撃を防げなかった!? そんな、ルートがもう弱まってきている……ユーお兄ちゃん、もう限界なの……?」



--対超魔王領域--

ガガガガガァァン! ズギャッ!!

真勇者「く、今度はハイか!」

しゅぅいいいん

超魔王「む? ははは、なんだこれは。私まで回復させているじゃないか。間抜けめ」

ギギィン! 

超魔王「うるさいぞ?」

どぎゃっ!!

抗っていたユーも顔面を砕かれる。

真勇者「あぁ、これはそういう類の術だからな」

ひゅん!

超魔王「?」

す、ずぎゃぁあああん!

超魔王「ぬ!?」

正面から向かっていった真勇者が超魔王を切り裂いた。

148: 2015/08/11(火) 02:05:32.66 ID:MIsJG4mK0
1116

--対超魔王領域--

ぶしゅっ!

勇者(! 今当たり前のように超魔王の防御を読んで攻撃した!)

超魔王「……そうか、お前のそれには相手の癖を読み取る力があったのだったか」

真勇者(今こいつのダメージ履歴を見た。こいつが受け切れなかった攻撃の角度とパターンを、もこもこネットワークにあげたぞ)

きゅいぃん

ハイ「! ユーさんが復活しました! これで、なんとか立て直せましたね……!」

ざっ!!

五人の勇者が再び超魔王の前に立つ。

超魔王「……なるほどな」

顎に手をやり何かに一人納得している超魔王に、

真勇者「――七属性複合攻撃魔法、虹色剣!」

ひゅ、ずばあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

真勇者は虹色剣を叩き込んだ。

149: 2015/08/11(火) 02:08:32.67 ID:MIsJG4mK0
1117

--対超魔王領域--

ずばっしゃあああああああああああああ!!

ハイ(! やった、超魔王を両断しました!! ってゆうか真勇者先輩、頭一つ抜けてるどころの強さじゃないです!)

勇者(……これで終わりだなんておもっちゃいないわ、でもこの流れならいける……!! 確実にダメージは与えられているもの!!)

超魔王「……理解した」

じゅるる!

超魔王の切断面から紫色の粘液が飛び出し、二つに分かれた胴体をくっつけた。

じゅるる、ぴた

超魔王「理解した。お前達は少々だが厄介であることを。私の方が圧倒的に強いのにも関わらず、何か嫌な流れを感じる」

勇者(ふふ、気付いた? こっちは主人公補正持ちが全員集合してるのよ? 多少の無茶なら押して通れる!)

超魔王「――なので、だ」

ぎゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん

超魔王は両の掌にエネルギーを溜め始めた。

超魔王「手っ取り早くいかせてもらうことにした」

ハイ(超エネルギー弾!? 防御を!!)

ボシュッ

勇者「……え?」

超魔王が放った二つのエネルギー弾は、

……オオオオオオォォォン

ハイ「……今、どこに、放ちました……?」

……オオォオン

超魔王「……星の中枢だ」

150: 2015/08/11(火) 02:10:04.03 ID:MIsJG4mK0
1118

--対超魔王領域--

どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

ハイ「!」

ユー「!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオゴゴゴゴッゴ!!!!

凄まじい揺れが地上にいる全員を襲う。

真勇者「ぐ! こいつ、星を攻撃しやがった!」

十代目「ぐああっ!! 星が、星が苦しんでいる声が、断末魔が!!」

自然の声が聞こえる十代目は絶叫に苛まれている。

ゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴ……!!

超魔王「ふふふ、ははははははは! どうだ、せめてもの贈り物だ。偽りのお前らにはもったいないくらいの贈り物だ。最後にどでかい花火が見られるのだからな」

真勇者「! 貴様ぁあ!!」

ひゅん、ざぎぃいんん!!

超魔王「――もはやお前らは終わっているのだ」

どんっ!

超魔王は真勇者を突き飛ばすと、

ふわっ

宙に浮いた。

……ゴゴゴゴ……

超魔王「星は、今氏んだ」

151: 2015/08/11(火) 02:11:07.74 ID:MIsJG4mK0
1119

--対超魔王領域--

超魔王「せめてもの慈悲だ。最後は自分の好きな者の所に行って氏ぬがいい」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

ハイ「ま、待て」

超魔王「残り時間は後五分程度だ。急げよ?」

しゅいーん

そして超魔王は飛んで行ってしまう。

勇者「」

ハイ「……」

十代目「……く」

ユー「……」

真勇者「こんな……こんな幕切れだと……?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

五人は呆然と立ち尽くしていた。

152: 2015/08/11(火) 02:14:54.32 ID:MIsJG4mK0
1120

--対超魔王領域--

盗賊「……実を言うと地球はもうだめです。突然こんなこと言ってごめんね。でも本当です」

びくっ!?

驚くハイ達。いつのまにか盗賊が五人の傍にまで来ていた。

盗賊「よっ」

勇者「ば、ばか……こんな時まで何言ってんのよ……! あんた空気読みなさいよ……ネタなんて言ってる場合じゃないのよ……」

盗賊「読めない字だってあるのにそんな高等なもの俺に読めるわけないだろ。ほらほら元気だせよみんな、落ち込んだってしょうがないじゃない?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

大地は隆起し、火山からはマグマが流れ出している。

ハイ「っ……」

勇者「……ごめん……駄目だった……みんなに助けてもらって、頑張ったつもりだったんだけど……」

勇者は涙ぐむ。

盗賊「ごめん? 謝る必要なんかねぇよ! 俺らが出来ないから代わりにやってもらってんだもん。駄目だった? そいつはまだ早いぜ。まだ何もかも終わって無いだろ?」

勇者「え……?」

盗賊「星くらいなんとかなるだろ」

盗賊はしわの増えた顔で笑った。

ハイ「」

真勇者「」

盗賊「だぁかぁらぁ、とりあえず君らは君らが出来ることをやってくれ」

ビシッ!

盗賊は天を指差す。それは超魔王が飛んで行った先を指している。

盗賊「――魔王を倒すのはお前らの役割だぜ、俺の憧れだった勇者さん達よぉ?」

157: 2015/08/18(火) 03:49:01.24 ID:Lr0fBnHB0
こんばんは! 遅くなりました……

追いついたカキコありがとうございます! もうすぐ終わりですが最後までよろしくお願いします。
それでは投下していきます。

158: 2015/08/18(火) 03:50:11.90 ID:Lr0fBnHB0
1121

--対超魔王領域--

ゴゴゴゴゴゴ

勇者「……」

盗賊「……」

しばし無言で見つめあう二人。

勇者「……そうね。わかった、行くわ」

勇者は……困ったように笑った。

盗賊「――おう、こっちは俺達に任せて行ってこい。祝賀パーティーの準備して待ってるからな」

勇者「うん……行こう、みんな。まだ終わりじゃないよ」

ハイ「……ですね。もう諦めるのは飽きましたし、不完全燃焼です」

十代目「そうだな……やれるだけのことはやるか」

ユー「……」

b

真勇者「……」

勇者(踊子、飛行能力付加、もう一回頼むわ)

踊子(!……よーし、了解ですよ~! 私史上最大の舞を見せてあげます~!!)

159: 2015/08/18(火) 03:52:01.51 ID:Lr0fBnHB0
1122

--対超魔王領域--

ドンッ! どひゅううううううん……

盗賊「……行った、か」

きらん

飛んでいく勇者達を見上げる盗賊。

ズズズ……

そこに闇が現れる。

フォーテ「でも、任せろって言ったって……なんとかする方法、あるの? おじちゃん」

盗賊「んー……」

盗賊は困ったように笑って汗をたらす。

盗賊「……やれるだけのことやっとかないと気持ち悪いだろ? 例え9回裏に100点差だとしてもさ」

フォーテ「……」

盗賊は全てを悟ったかのような、疲れた表情をしていた。

……ざり

盗賊「ん?……!? お前は!!」

160: 2015/08/18(火) 03:53:17.95 ID:Lr0fBnHB0
1123

--大気圏--

ヒュオオオオオ……

超魔王「む?」

ドヒュウーーーーーー!!

下方から接近する七色の魔法を避ける超魔王。

超魔王「……お前ら……」

ゴオオオオオ……

超魔王は追ってくる五人の勇者を視認した。

超魔王「……既に終わった存在だと言うのに、まだあがくつもりか!」

勇者「当たり前よ! はぁあ!」

ドキィン! ドドガキィン!!

次々に超魔王に接近し斬り付ける勇者達。

超魔王「っ、もうお前達に勝利はないのだぞ? 例え私を倒したとしても、お前らが帰る場所は既に無いのだ!」

161: 2015/08/18(火) 03:54:07.96 ID:Lr0fBnHB0
1124

--大気圏--

勇者「」

ズバッ!!

超魔王「む」

ぴっ

勇者の大剣が超魔王の腕を切り裂いた。

勇者「――だから、どうしたの!?」

ハイ「はぁあああ!!」

ドガァアアン!! ドガガァアン!! ドガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイのパイルバンカーがラッシュのように放たれる。

ハイ「――それでも、貴方を倒さなきゃならないんですっ!」

十代目「ちえぇい!!」

ズバン、ズババン!!

超魔王「ッ」

十代目「それが、勇者の責務なのだ……!」

超魔王「――だとしたら愚かな存在だ」

きゅぼ

無数のエネルギー弾が超魔王の周りに出現する。

超魔王「消えろ」

勇者「!」

ドボガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

162: 2015/08/18(火) 03:56:57.36 ID:Lr0fBnHB0
1125

--大気圏--

しゅぅううう

超魔王「!」

ばちっ、ばちばち!

真勇者とユーが張った魔法障壁が、超魔王の攻撃から全員を守っていた。

真勇者「……お前を倒すことを信じてくれている仲間がいるのだ……そしてその仲間が、任せろと言ったのだ。余らは仲間に信じられている限り戦う。そして仲間を信じて戦い、勝つ!」

ユー「ッッッ!」

シュンっ!

超魔王「っちぃ!」

ドギィイイン!!

迫るユーの攻撃を防ぐ超魔王。

ユー「……今こそ、終わらせる時だ、魔王」

163: 2015/08/18(火) 03:57:56.37 ID:Lr0fBnHB0
1126

--対超魔王領域--

ドォン……ドガァアアン……

斧女「凄い……あんな高いところで戦っている……」

研究員「魔力は宇宙空間でも自在に動けるように作られたものらしいですからねー。むしろホームグラウンドなのかもしれないですよー」

ズガァアアアン……

参謀長「研究員、星を治す手段を思いつきましたか?」

研究員「さすがにこの短時間ではー……何分、考えたことすらなかったことですからー」

参謀長「……ですね。私もです」

弓女「……」

熊亜人「……」

筋隊長「……」

ドガァアアン……

人々はただただ天空での戦いを見上げている。

164: 2015/08/18(火) 03:58:34.46 ID:Lr0fBnHB0
1127

--大気圏--

ドガァアアアアアアアアアアアアン!!

超魔王「ッ」(どうしたことだ……? 少しずつ奴らの動きが良くなっていく……)

勇者「はぁっ!!」

ヒュヒュッ、ズバアァアン!

超魔王「グッ!」

勇者の大剣が超魔王の右足を切り落とす。

真勇者(明らかに奴の動きが鈍くなっている……奴の使う力が魔力じゃないことが原因か……?)

ドガァン! ズギャアン! ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン!!

超魔王「がっ、ぎっ!!」

真勇者の高速コンボが超魔王を切り刻む。

超魔王「目障りな、むしけらどもがぁあああ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアウ!!

超魔王は凶悪なエネルギー砲を勇者達に向けて放つも、

真勇者「逆転バリアー!」

ずる

超魔王「」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

跳ね返されてしまう。

165: 2015/08/18(火) 03:59:37.40 ID:Lr0fBnHB0
1128

--大気圏--

超魔王「こんなものを跳ね返されたところでぇ!」

ボッ!

真勇者「魔王は自分の攻撃では傷つかない。それは既に知っているぞ!」

ズギャアアアアアッ!!

超魔王「ぎっ!?」

超速で突進してきた真勇者は、両手の剣で超魔王を串刺しにしたまま飛んで行く。

キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

ハイ「! 真勇者先輩! どこへ!?」

イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

真勇者が向かった先は、月。

真勇者「このまま、叩きつける!」

超魔王「串刺し、だと!? うじむしの、分際でぇ!!」

キィン

超魔王は両手に巨大なエネルギー弾を作り出し、真勇者に向けて放つ。

ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

それとほぼ同時に二人は月の表面に突っ込んだ。

166: 2015/08/18(火) 04:01:30.78 ID:Lr0fBnHB0
1129

--対超魔王領域--

ゴゴゴゴゴ……

盗賊「ほら手を休めるな! 自分に出来ることを考えて行動していけ!」

わーわー

レン「! レンなら、何か出来るかもしれないにゃ!」

盗賊「駄目だ! レンちゃんは今まで通り勇者達に魔力を供給し続けてくれ。星がなんとかなっても魔王を倒せなかったらどの道終わりなんだ」

参謀長(……とはいえそれでは我々は魔力を吸い上げられている状態……これで星までどうにかするというのはあまりに……)

魔導長「無謀なの。でも、だからこそ燃えるなのっ」

いつの間にか隣にいた魔導長は満面の笑顔。

参謀長「……ですか」

参謀長もつられてにやりと笑う。

竜子「っってー! そういうおっさんが何にもしてねーじゃねーか!!」

盗賊「え、俺に出来ることなんてあるの!?」

魔法使い「ぷぎゃーーーーwwwww星乙ーーーーーwwwww」

キバ「あ、戻った」


167: 2015/08/18(火) 04:02:47.01 ID:Lr0fBnHB0
1130

--宇宙--

超魔王「……」

砕けた月から離れた宇宙空間に超魔王が漂っている。

超魔王「ぬ……なぜだ、なぜこうまで手間取ってしまうのだ」

右の掌を閉じて開く。

超魔王「力の差は歴然だというのに……む」

そして超魔王の目の前に巨大な宇宙船が現れた。

超魔王「我らが母艦……! やっとたどり着けたか……そうだ、これさえ手に入ればもはやどうでもいい……」

超魔王が宇宙船に接触すると、

どがぁああん!

外壁を破壊し、中へと進入していく。

超魔王「懐かしい……あの頃のままよ……!」

168: 2015/08/18(火) 04:03:49.22 ID:Lr0fBnHB0
1131

--宇宙--

ハイ「真勇者先輩! 真勇者先輩! 大丈夫ですか!?」

真勇者「!」

目を開く真勇者。

ハイ「良かった……体は治っているのに中々目を覚まさないから心配しました……!」

勇者「真勇者、超魔王はどこ?」

真勇者「!……わからぬ。月に叩き付けた所までは覚えているのだが、その直ぐ後に余は粉々にされてしまったからな……」

勇者「違う、探して欲しいのよ。ツインテのサイドテールの力なら超魔王を探すことが出来るでしょ?」

真勇者「! なるほど……」

そういうと真勇者は無数のリングを作りだし、宇宙空間にばら撒いた。

ひゅばっ!

真勇者「どうも持っているスキルが多過ぎると何を使えたかわからなくなる傾向があるな……」

ハイ「何ですその贅沢な悩み……」

169: 2015/08/18(火) 04:06:42.24 ID:Lr0fBnHB0
1132

--母艦--

プシュー

超魔王「ふぅ、この玉座も久しぶりだな。また座ることになろうとは思わなかったが……」

超魔王は積もった埃を払い、玉座に腰掛けた。

超魔王「……接続開始」

……ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

超魔王の右腕が変形しメインコンピューターに接続される。

超魔王「まずは全艦にエネルギーを回すか。それから掌握、、を、づっ!?」

ガクガクと超魔王の足が震えだす。

超魔王「な、ん、だ、こ、れ、は」

……クスクスクスクスクス

超魔王「だ、れ、だ、、、い、や、こ、の、こ、え、は」

一切身動きが取れなくなった超魔王の体の中から、その笑い声は聞こえてきた。

???「……この船を掌握するためには力を解放しなくてはならない。でもその程度のリソースの割き方では貴方を乗っ取れ無いと思っていた。だが、それに加えて勇者達から損害を受けていたならば……」

超魔王「お、ま、え、は、つ、ぶ、し、た、は、ず」

???「僕が乗っ取るチャンスが生まれるだろうと思っていた。そう、僕は勇者達を信じていたのさ。魔王でありながらね」

ぎぎ、ぎぎぎぎぎぎ!!

超魔王の体が変化していく。

超魔王「き、さ、ま」

???「貴方があの時僕を破壊してくれたおかげだよ。今の僕に不要な人格を全て切り捨てて、方向性を同じくする僕達だけで構成し直すことが出来たのだから……」

ブヅン

超魔王「ぎっ!?」

???「――さらばだ、人類の王。ラスボスには僕こそふさわしい」

超魔王の意識は完全に消え去った。

170: 2015/08/18(火) 04:08:14.46 ID:Lr0fBnHB0
1133

--対超魔王領域--

ゴゴゴゴゴ

赤姫「……」

どごおおおおん

赤姫はただ氏にゆく大地を眺めていた。

だだだ

盗賊「あ、いた赤姫ちゃん! ちょっとこいつのこと頼む!」

赤姫「? この期に及んで私に何をさせようと……!? な、なぜお前が!!」

盗賊が連れてきたのは、

トリガー「……」

盗賊「トリガーが変身した赤ちゃんの奴、あれがぶっ壊された残骸が残ってただろ? そしたらさっき物音がしてさ、見てみたらこれよ」

赤姫「トリ、ガー……」

トリガー「……赤姫、話は後だ。この星を救いたいんだろう? なら僕にはその手立てがある」

赤姫「!? え……?」

トリガー「疑うのも無理は無いことだと思う。でも嘘なんかじゃないんだ。僕は、人を救いたい」

171: 2015/08/18(火) 04:09:35.05 ID:Lr0fBnHB0
1134

--宇宙--

シューン……

真勇者「反応はここのようだが……ん? あれ、か?」

ハイ「! なんです……? 巨大な……鉄の竜……?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

ユー「!」

その巨大な体は今もなお変形を繰り返している最中だった。

ユー「ッ!」

それを見たユーは焦りを感じ、一人飛び出して行った。

???「――やれやれ、相変わらず君は一直線だね」

勇者「!! この声は……」

???「もうちまちまと君達とやるつもりは無いよ。一撃だ。一撃で決着をつけようじゃないか」

その聞きなれた声は……

ハイ「……トリ、ガー?」

???「うん、僕だよ」

巨大な竜の頭部が勇者達に向いた。

172: 2015/08/18(火) 04:11:50.28 ID:Lr0fBnHB0
1135

--対超魔王領域--

トリガー「時間が無いから手短に言うけど、星を救うのは簡単な話だ。星の核が壊されたのなら、もう一度星の核を作ればいい」

盗賊「え、まじ? そんなことも出来るの? それで何もかも元通りなの?」

赤姫「そんなわけあるか! 大体簡単に作ると言うが、そんなもの直ぐに作れるわけがない……」

トリガー「作れるさ。まずはそうだな、星の中枢へと至る道を作ろう。それだけが今の僕らに出来ることだ……」

赤姫「……」

トリガー「……信用出来ない、よね。ならば少しだけ語るよ」

トリガーは宇宙を見つめながら喋りだした。

トリガー「僕がルートによって人格と記憶がぐちゃぐちゃに入り乱れている状態になっていたのは知っているよね。それが大統領の策略だったことも」

赤姫「……」

トリガー「そしてあの時僕の精神の均衡は完全に破壊され、押さえつけていた大統領が表に出てきてしまった。でもそれを望んでいたものがいるのさ」

ぎりっ

トリガー「僕の負の側面達だ……彼らは、邪魔な僕を切り離すチャンスをずっと待っていた」

173: 2015/08/18(火) 04:12:54.92 ID:Lr0fBnHB0
1136

--宇宙--

ゴゴゴゴゴ……

臓物がよせあつまったような醜い胴体と四対の手足。

ばさ、ばさ……

星を覆うかのような巨大な二対の羽と十六個の巨大な眼球を持つドラゴンの頭部。それが今のトリガーの姿だった。

???「くすくすくす。大統領に植え付けられた意思だったけれど、今ではこれは大切な僕の意志なんだ。誰かに滅ぼさせたりしない。人類は、この僕が滅ぼさなくちゃならないんだ」

ゴゴゴゴゴゴゴ

???「さぁ、ラストバトルだ。抗えるなら抗って見せなよ、勇者達?」

ゴゴォーーーン

鐘のような音とともにトリガーの口が開いていく。

ハイ「魔王、トリガー……わかりました、ならば私達の全てを、ぶつけます!」

ザンッ!!

勇者達が各々の武器を構えた。

???改め魔王トリガー「――ならば君達のこれまでの全てが無駄だったんだと、教えてあげるよ」

174: 2015/08/18(火) 04:14:56.18 ID:Lr0fBnHB0
1137

--宇宙--

ぎぎ、ぎぎぎぎいぃいいいいん……

トリガーの口の中でエネルギーが収束していく。

ハイ(!!……予想はしてましたけど……怖い……ありえないほどのエネルギーです……)

パイルバンカーを持つ手が震えるハイ。

十代目(この分だと軽々と星を消し飛ばしてしまいそうだな……)

剣を持つ手に力が入る十代目。

勇者(あの星にある全ての魔力を集めても……きっと敵わないわね)

困ったように笑う勇者。

ユー「……」

ただ無言でその時を待つユー。

真勇者「……まず一つだトリガー、お前には否定を一つぶつけてやる」

魔王トリガー「……何?」

ハイ「え?」

真勇者「お前は前にこの世最強のエネルギーは負の感情だと言っていたな? だが、それは違う」

真勇者は星に手をかざす。

真勇者「最強のエネルギー、それは、愛だ!」

175: 2015/08/18(火) 04:17:36.46 ID:Lr0fBnHB0
1138

--宇宙--

魔王トリガー「」

勇者「」

ユー「」

十代目「」

ハイ「……え? いきなり何を言い出したんですか……?」

さすがにフリーズする面々。

真勇者「考えてみろ。負の感情をエネルギーに変えることが出来るのなら、愛だって力に変えられるはずだ。両方とも強い感情エネルギーなのだから」

勇者「!……なるほど。確かにありえるわ……何よりトリガーに皮肉が利いてていいかも」(それに駄目でもポニテの魔力変換炉なら魔力に変換できそうだし)

ハイ「……え!? 何がですか!? 本当に、え? どうするつもりなんですか!?」

不適に笑う勇者と真勇者。

勇者、真勇者「「ありったけの愛を集めてトリガーにぶつける」」

魔王トリガー「」

ハイ「は、はいいいいいいいいいい!?」

176: 2015/08/18(火) 04:18:47.60 ID:Lr0fBnHB0
1139

--宇宙--

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王トリガー「ふ、ふふふ……嘘でしょ? そんな思いつきを、最後の最終決戦に使うつもりなのかい?」

勇者「……」

真勇者「……」

十代目「……どの道魔力だけじゃ足りないしな。もうなんでも試すしかなさそうだ……」

ある意味諦めた感じの十代目。

ユー「……」



ハイ「……はぁ、もういいです。私は皆さんに任せます……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王トリガー「……おいおい、最後だよ? 本当にそんなんでいいの? こっちとしてもガチでやりたいんだけど」

勇者「私達は本気よトリガー」

真勇者「あぁ、愛の偉大さを知るがいい」

177: 2015/08/18(火) 04:21:45.67 ID:Lr0fBnHB0
1140

--宇宙--

魔王トリガー「……そうかい、わかったよ。ならば僕もこうしよう」

ズズズズズ……!

ハイ「! なっ!? 更にエネルギーが上がった!?」

魔王トリガー「……今その星がどんなことになっているのか、わからないわけじゃないだろう? 崩壊する直前の星だ、天変地異のオンパレードさ。数多くの人たちが嘆き、悲しみ、苦しんでいるんだよ」

勇者「! 負の感情……更にそれを集めているのね……!」

ズズズズ……

魔王トリガー「君達が愛を募るというのなら、僕は哀を募るとしよう。君達は、皮肉にも人の力によって滅ぼされるんだ」

ズズズズズズ!!

更に強大に、凶悪になっていくトリガーのエネルギー弾。

勇者(1140

--宇宙--

魔王トリガー「……そうかい、わかったよ。ならば僕もこうしよう」

ズズズズズ……!

ハイ「! なっ!? 更にエネルギーが上がった!?」

魔王トリガー「……今その星がどんなことになっているのか知らないわけじゃないだろう? 崩壊する直前の星だ。天変地異のオンパレード、き

っと数多くの人たちが嘆き、悲しみ、苦しんでいることだろう」

勇者「! 負の感情……」

ズズズズ……

魔王トリガー「君達が愛を募るというのなら、僕は哀を募るとしよう。君達は、人の力によって滅ぼされるんだ」

ズズズズズズ!!

更に強大に、凶悪になっていくトリガーのエネルギー弾。

勇者(……盗賊、聞こえてたわよね?)



--対超魔王領域--

盗賊(え、うん、聞いてたけどさ……本気?)



--宇宙--

勇者(もちろん本気よ。ラブ&ピース。愛は世界を救うんでしょ? さぁ、ありったけの愛を私達に集めて!!)

勇者は満面の笑顔で大剣を構えた。



--対超魔王領域--

盗賊「……」

フォーテ「……らぶ?」

盗賊「……えーと……そういうことらしいです、皆さん。愛を、どうやって送るのかわからないけど、送りましょう?」

みんな「「「え、えー……」」」

ゴゴゴゴゴゴ

ハイ「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王トリガー「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者と魔王がアイを募集した。

196: 2015/08/24(月) 22:03:55.43 ID:uvkg5TO10
1141

--対超魔王領域--

ゴゴゴ……

盗賊「ふぅ……星もどうにかしなきゃならないってのにさぁ……こりゃ更に急いでやるしかないみたいだ。通信師ちゃん、聞いてた?」

通信師(はい、聞いていました。なので盗賊さんが言いたいことはわかってます。でも……私の力じゃ広範囲過ぎて厳しいですよ……)

ズズズ……

その時通信師の下に闇が広がり、そこからひょっこりフォーテが顔を出した。

フォーテ「それ、フォーテが手伝えばできることっ?」

通信師「!……フォーテちゃん……でき、出来ます!」

盗賊「よっし! じゃあお願いするよ、あとトリガー! 中枢へ至る道ってのはどうしたらいいよ!」

トリガー「魔導長と魔法使いがいればなんとかなるかな。それは僕達だけで受け持つから心配しなくていいよ」

盗賊「そうか。じゃあトリガー達は別行動だ。よろしくな!」

魔法使い「うぇー……?」

魔導長「了解なの。最後の大仕事、やったるなのっ!」

魔法使い「……ファーーーーwww」

197: 2015/08/24(月) 22:05:01.80 ID:uvkg5TO10
1142

--避難区域--

ドゴオオオオン!!

ヒューーードガアアァアアン!!

東の負傷兵「うぅ! もう、おしまいだ……まさか、まさか星が無くなっちまうなんて……ちくしょぉ! やっぱり人は魔王には勝てなかったんだあぁ!」

わーきゃー!! どどどどどどどど!!

???「盗賊……」

パニックを起こしている民衆の中に、一人落ち着いて空を見上げている老齢の女性がいた。

ザザッ

盗賊(……あー、あー。テステス。もう喋っていいのよね?)

突如盗賊の声がテレパシーとなってみんなの心に届いた。

???「……!?」

通信師(いいですよ)

盗賊(うむ。あのー、すいませんー。わたくし盗賊と言うものなんですがぁ。えぇーちょっと皆様にお願いがありましてね……?)

ざわ、ざわ……

盗賊(皆さんもご存知の通り、現在魔王との最終決戦中なわけなんですが、ちょっーとばかし分が悪いんですよ。具体的に言うと勇者達は負けかけてるしこの星は爆発しかけてます)

198: 2015/08/24(月) 22:05:41.72 ID:uvkg5TO10
1143

--避難区域--

ざわ、ざわざわ

西の避難民「な、なんだこいつ……この非常時に間の抜けた喋り方しやがって!! ふざけてんのか!」

東の避難民「そうだそうだ!」

北の避難民「大体お前らがしっかりしないからこんなことになったんだ!! どう責任とってくれるんだ!!」

わーきゃー!

盗賊(うっ)



--宇宙--

ゴゴゴゴ

魔王トリガー「ふふ……この世界に満ちる負の感情がわかるかい? どんどん溜まっていくよ……。そっちはまだ大して集まってないみたいだけどね」

ハイ「ッ!」

魔王トリガー「さぁ、もっとだ人間達よ。集え負の力。世界を憎悪と悲哀で埋め尽くすんだ!!」

ズヌゥウウ!!

魔王トリガーは何かの波動を星に放った。

199: 2015/08/24(月) 22:06:37.26 ID:uvkg5TO10
1144

--対超魔王領域--

盗賊「ぐぅ……こいつら、てんで人の話を聞きやがらねぇでやんの。なんてやつらだ!」

賢者「盗賊君……今みんなは不安と恐怖に支配されています。言葉を選ばなくては逆効果ですよ」

盗賊「そうは言っても俺ビジネスマナー受けてないし……」

踊子「社会不適合者~」

うぅうん……

フォーテ「ん? 何か空から降ってきたよ?」

通信師「え……?」

それは呪いに精通したフォーテにしか感知できないほど微弱な力の波。

フォーテ「……これは負の感情を増幅させる力だ。僕達なら何の問題も無いけど、抵抗力の無いただの人間達が受けるとまずいよっ」

200: 2015/08/24(月) 22:08:14.28 ID:uvkg5TO10
1145

--避難区域--

西の避難民「ち、ちくしょう……! 全部、全部お前らのせいだぁ!!」

うぉーーー!!

突如暴徒と化す避難民達。

わーきゃー!!



--対超魔王領域--

符術師「うお、まじかよあいつら! くそ、あっちにはろくに戦えるやつがいねぇ! 暴動止めらんないぞ!!」

剣豪「おい東の王。お前がやってやれ。王の言ならいくらか正常に戻してやれるんじゃねぇのか?」

東の王「……確かに王の言ならある程度コントロールは出来るだろうな」

盗賊「まじですか! じゃあお願いします東の王様!」

東の王「だが、王の言では人々を説得することしか出来ない。王の言葉では愛を生み出すことは出来ないのだ」

盗賊「ッ」

東の王「――ここはお前の役目だ、盗賊」

201: 2015/08/24(月) 22:10:12.84 ID:uvkg5TO10
1146

--避難区域--

北の避難民「どうせ、どうせ何もかも終わっちまうんなら最後くらい好き勝手してやる!!」

わーきゃー!!

???「……およしよ! みっともない!」

北の避難民「っだよ、なんだばばぁ! 口出すんじゃねぇよ! 関係ねぇだろ!!」

???「まだ戦ってる人たちがいるってのになんだい情け無いッ!! 赤ちゃんみたいにぴーぴーぴーぴー! それが大の男のすることかいッ!?」

ビリビリビリッ!!

北の避難民(な……なんだこの圧倒的な母ちゃん力(パワー)は……)

氏んだ母にしかられた時のことを思い出して尻込みする北の避難民。

スッ

老婆は天空を指差した。

???「……あそこで今も戦っている人たちがいる。でもそれは自分のために戦っているのかい……? 違うよ! 私達みんなのために戦ってくれてるんだろ!? あんたらに非難する資格があんのかい!?」

北の避難民「ぐ……」

ざわ、ざわ……



--対超魔王領域--

盗賊「? あれ? 勝手に暴動が治まりかけてるんだけど」

202: 2015/08/24(月) 22:12:34.02 ID:uvkg5TO10
1147

--避難区域--

ざわ、ざわ……

???「……あの子達さっき、何かお願いがあるとか言ってただろ? 聞いてやってくれよ……それが最後になるのならなおのことさ……」

ざわざわ

周囲の人たちが暴れている人たちを見ている。

北の避難民「……ッ……すまん……」

ざわざわ

その老婆の言葉が波のように伝わっていって、ついには暴動が治まってしまった。

???「……」(やれやれ全く……手のかかる子だよあの子は……まだ私に助けられるかね)

ざざっ、ざー

盗賊(あ、騒ぐの終わった? もう喋っていいかな?)

イラッ!!

まとまりかけてた避難民達の心は逆に一つになったという。

???改め盗賊の母(あ、のバカ息子……!)

203: 2015/08/24(月) 22:15:51.16 ID:uvkg5TO10
1148

--避難区域--

盗賊(やー、何分学が無いもんで、色々みんなの神経逆撫でする発言しちゃうかもしれないけど、そこはごめん流してくれ。今本当に時間が無いんだ。だから簡潔に説明していくよ)

ざわざわ

盗賊(あ、一つ注意しておくと、今、魔王が負の感情を集めてる。だからみんなに暴れまくられると俺達がどんどん不利になっちゃうんだ。気をつけてくれ)

じろっ

北の避難民「……ぐ、わ、悪かったよ」

周囲の人達に睨まれてばつが悪そうにしている。

盗賊(でもそれとは逆に、勇者達は今、愛を募集してるんだ。この愛ってのが抽象的でよくわからないんだけど、家族や仲間を大切に思う、そういう気持ちでいいんだと思う。それをあそこで戦ってるあいつらに、少しだけわけてやって欲しいんだ)

ざわざわ……

盗賊(確かに危うい状況だけど、まだ終わっちゃいないんだ。星についても、何とかできる可能性を見つけた)

おぉ、と、一部で歓声があがる。

盗賊(……大体もし終わっちゃうにしても、一矢むくいた方がいいよな? それに誰かを憎んで氏ぬよりは、誰かを愛しながら氏んだ方が気持ちいいと思うんだよ)

ざわざわきもちいいざわ……

盗賊(あ、気持ちいいで思い出したけど、今上で戦ってるメンツの中に俺の嫁さんと娘がいるんだけどね? 嫁さん極度の貧Oなのに娘が巨Oに育ってくれてね?)

……ひゅーん、どがぁああああん!!

空から火と七色の魔力砲を打ち込まれて氏亡する盗賊。


--宇宙--

勇者「あっのバカ! 人前で何を言ってんのよ!!」

真勇者「……」

十代目「貴重な魔力が……」

ハイ「精密射撃すぎるんですがそれは」

204: 2015/08/24(月) 22:16:51.52 ID:uvkg5TO10
1149

--避難区域--

しゅぅう……

盗賊(……というわけでだ、俺達だけじゃ魔王を倒せない)

どういうわけだざわ

盗賊(だから――自分の愛する人を守りたいなら力を貸してくれ! 償いっていうかお礼っていうか、ともかくこれが終わったら、俺が出来ることならなんでもしますから!! だから頼むよ!)

ん?ざわ……

南の避難民「……」

南の避難民幼女「ぱぱぁ……」

南の避難民「……」

南の避難民は、自分の手を握り締めている娘を見たあと、その手を強く握りしめた。

ぎゅ

205: 2015/08/24(月) 22:18:35.75 ID:uvkg5TO10
1150

--各地--

ゴゴゴゴゴ

盗賊の母「盗賊……」

盗賊の母は手を合わせ目を瞑って祈る。

秘書「……アッシュ」

神父「この声……あの時のよく氏ぬ子か……大きくなったようですね……」

西の王「……ふんっ」

料理屋「あいつめ……知らない間に随分差ぁつけられちまったな」

サキュバス「負けたら承知しないよ、ど貧O」

ワーウルフ「……私達の時代もこうだったならと、考えてしまいますね」

ミイラ「え? 貧Oって、え? ちょっとまって?」

白ワニ「あらまぁ! そんなことになっていたの!?」

ヴァンパイア「気付いておらんかったのか……?」

グリフォン「イエス、マムッ!」

D城門兵A、D城門兵B「「カットインラブ注入!」」

D亜人王「……」←見てない振り

鷲男「……」

東の王「……ふ」

北の王「たのんますー! まじたのんますー!!」

召喚士「ここまでやっといて負けるのは嫌でやんす! 最後はハッピーエンドがいいのでやんす!」

人形師「ほっほっほっ」

剣豪「ち……最後の戦での役回りがこれかよ。武人らしくねぇなぁ」

206: 2015/08/24(月) 22:20:13.21 ID:uvkg5TO10
1151

--各地--

がちむち「頑張れお譲ちゃん達ー!! 俺らがついてるからなーー!!」

マッスルひげ「ツインテちゃーん! ツインテちゃーーーんんん!!」

屈強な男「ツインテちゃーん! ツ、ツーっ、ツイイーッ!! ツイーッ!!」

マスター「……頑張ってください」

村のおばさん「あらいやだ!」

射王「ふぁあぁあ……」

ナビ子『いえぇーい!』

メイド「……」

番犬「ばうっ!」

ちびメイド「ございますっ!」

ヤミ「……」

やみ「……?」

ブラ「ツインテちゃん……頑張って」

魔剣使い「どうかっ……!」

果物屋「メロン」

符術師「負けんなよー! 絶対いけるぞーーー!!」

通信師「耳元でうるさいです符術師」

占師「おやおや」

包帯女「ツインテ、アッシュ、ポニテ!」

義足「負けないさ、あの子等なら」

テンテン「……えぇ、そうですね」

207: 2015/08/24(月) 22:21:07.51 ID:uvkg5TO10
1152

--各地--

太男「貧Oってもしかして……」

細男「大男も思いましたか? まさかあの時の貧Oでは!?」

中男「ひーんーにゅーうー」

研究員「さー、どうなりますかねー」

ペガサス「J・クロフォードデース!」

人造魔王(あんま出番無かったナー……)

賭博師「ツインテ様……」

調教師「どうか……女神の力で」

盾男「ツインテちゃんはぁはぁ!」

弓女、斧女「「きっも!」」

実況「さぁさぁさぁ人類の最後のあがきとなるのか! それともこれが未来への一歩となるのか!! どう思いますか解説さん!」

解説「もう五分たったっしょ」

ウーノ「機械の祈りに意味があるかわかりませんが……」

ドゥーエ「ロボットにだって愛はあるよ!」

トーレ「十代目様……」

ウーノ、ドゥーエ「「え」」

208: 2015/08/24(月) 22:22:37.35 ID:uvkg5TO10
1153

--各地--

受付嬢(あの時の……頑張って……!)

鬼姫「ぶちのめすっすよ! あたしのアッシュくーーーん!」

変化師「あ、アッシュはおでも狙ってる……ライバルだな」

宿の店主「皆さん……頑張って!! 無事に帰ってきてくださいね!」

義賊「行くぞ、応援フォーメーション!」

義賊右「サー」

義賊左「イエッサー」

疾風「もし駄目でも恨むだけや! 気を張ってしっかりやり!」

迅雷「う、恨んじゃだめだよ」

いちばぁ「じっちゃの分までがんばるんじゃぞ」

給仕(あのダースの子か……)

黒づくめの集団「「「……」」」

槍兵「……なんか宗教みてぇだな」

伊達男「こいつはぁ素敵だ……」

ほくろ通行人「たいこ叩きます」

占隊長(やっぱ盗賊さんかっこいいかも……)

忍隊長「……ニンッ!」

筋隊長「レベルを上げて筋肉で殴ればいけーーる!」

蜂隊長「ぶーん」

鯱隊長「ぴちぴち、ぴち……」

209: 2015/08/24(月) 22:24:17.74 ID:uvkg5TO10
1154

--各地--

シノビ「……」

護皇「やれやれぜよ」

侍「ツインテ殿、アッシュ殿、ポニテ殿、ハイ殿……」

東の憲兵「また君は!! こんな時に何を膨らませとるんだ!!」

医師(知らないふり知らないふり……)

監獄長「いやぁ立派な刀ですねぇ!」

大臣(も、もしかしたら恩赦があるかもしれない……?)

包帯犬亜人「お姉ちゃん……」

宿男「ひーっひっひっ」

市松人形「……ニィ」

ぴっち『え、今ぴっち達中に入ってないのに笑ったっぴ……?』

ぱっち『こわ……ものほんっぱ……』

僧侶「きゃはは! 実は」

絵師「ぎゃはは! 姉妹です!」

戦士「う、うす……」(今そんな発言しなくても)

210: 2015/08/24(月) 22:24:48.50 ID:uvkg5TO10
1155

--各地--

吟遊詩人「それでは愛を歌にのせて~」

狐男「こーん」

犬亜人「わーん」

虎男「が、がおー……」

軍師「ブレーメンかな?」

狐娘(兄貴バカやってんなぁ)

フォーテ「お姉ちゃん……」

花師「フォーテちゃんのお姉さん頑張ってください」

風水師「やったれあるー!」

占星術師「星はまだ終わって無いって言ってるのよ」

聖騎士「ぶるあぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

おばちゃん達「「アラララアラアラアラアラアラアラアラアラアラアラ」」

211: 2015/08/24(月) 22:25:59.69 ID:uvkg5TO10
1156

--各地--

姫「姫ちゃんも応援するよーー!」

参謀長「えぇ、初めて役に立てそうなのでがんばってください」

たんぽぽ星人「ひでぇ……」

突撃長「このおいぼれの最後の命、全て応援で使い切って見せますぞ!」

潜入長「やめれ」

族長「サンボウッ!」

もこもこ達「「「もきゅー!」」」

北の老兵「あの者達を愛さずにはおれんよ……」

北の兵長「おいじいちゃん顔近いぞ。あっちだあっち」

商人「あの時はありがとうなー!」

悪役(うお、あの時のやつじゃん、近づかないどこ)

眼鏡学生「レン先生ー!」

筋肉学生「ファイトだぞー!!」

ヤモリ学生「ふんっ」

チャラ学生「くそ、さっさと勝っちまえ!」

大カバ亜人「いやー! 今戦ってるハイっちゅうのはわしの部下なんだぎゃっ! 凄いみゃ?」

召使「うるさいです近寄らないで下さい」

212: 2015/08/24(月) 22:26:57.20 ID:uvkg5TO10
1157

--各地--

右審査員「じー」

中審査員「じー」

左審査員「じー」

競売警備長「猫ちゃん頼んだぜぇい……?」

紳士金持ち「お……お……おぱんちゅ」

まっちょ奴隷「お、おい大将。あんたはやんなくていいのか? なんかみんなやってやすぜ?」

奴隷王「……」

亜人保護団体幹部達「おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい! おっOい!」

代表「え、何言ってるんですかこの人達……」

護衛姉妹「「……」」

熊亜人「先ほどスキルかけてたがお?」

鎧使い「ま、全く私がいないと駄目なんだからっ! 仕方が無いから応援してあげる! 勝ちなさいよ? 十代目ッ!」

右大司教「ふしゅるるる」

左大司教「愛ゆえに……」

賢帝「氏ぬのはゴメンだわ。だから勝って頂戴」

Q「……」

土の精霊「モグ」

ケンタウロス「負けたら承知しないよ」

D先生「……」

竜子「ハイ……負けんなよ」

213: 2015/08/24(月) 22:27:49.14 ID:uvkg5TO10
1158

--各地--

賢者「ツインテちゃん……勇者さん……みんな……」

踊子「大丈夫でーすよ~あなた。きっとあの子らならやってくれますって~」

レン「それもそうにゃ。いつだって、どんなに困難な時だって、私達はなんとかしてきたのにゃ」



--草葉の陰--

?「お、おで」



--各地--

後誰残ってるか覚えてないので人造勇者一同。

カブト「!?」

影月「いいんか!? それでいいんか!?」

キバ「最低……」

一号「実は生きてたよわし」

214: 2015/08/24(月) 22:28:39.21 ID:uvkg5TO10
1159

--穴--

しゅぅうう……

トリガー「ご苦労二人とも。これで穴は出来た。後は彼らを待つだけさ」

魔導長「ふぅ、つっかれたーなの。星中にひびがはいってたからやりやすかったけど」

魔法使い「でwもwこれであいつら勝てなかったら意味なしwwwwwpgrwwwwww」



--各地--

ゴゴゴゴ

赤姫「……さぁ、私達に出来ることは、全てやったよ……」

215: 2015/08/24(月) 22:30:01.67 ID:uvkg5TO10
1160

--宇宙--

ゴゴゴゴゴゴ……

魔王トリガー「……!」

ハイ「――人と人の繋がりって、凄いですよね。盗賊さん達やツインテさん達が歩んできた人生があったから、今や全ての人たちが手を結んでいるんです」

ゴゴゴゴゴゴ……

ハイ「本当に凄い……これが、私達の物語です。私達の、力です!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

魔王トリガー「……ばかな」

ハイ達の下に集まった愛は、トリガーのエネルギーの数百倍もの大きさになっていた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

ハイ「……無駄なものなんて、何も無い。全部、大切なものなんですよ」

216: 2015/08/24(月) 22:31:07.92 ID:uvkg5TO10
1161

--宇宙--

勇者「……見ろトリガー! この星の光を! お前達が絶望した時代とは違う! 今彼らは心の底から明日を望んでいるんだ! 簡単に命を手放したりしない、人は未来を欲しているんだッ!」

魔王トリガー「……」

トリガーはかつての人類を思い出す。全てを悟ったかのように、なんでもないかのように氏を選択した人類を。

真勇者「……所詮お前が使うのは負の力。それでは愛には遠く及ばない」

トリガー「……」

キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!

愛のエネルギーは無色となり、恒星以上に輝きだした。



--各地--

イイイイイイイイイイイイイイイン

盗賊「おー、綺麗綺麗。六色七色を経て無色へと至る、か」

踊子「うるせーですよ違う意味でのむしょく~」

217: 2015/08/24(月) 22:31:49.93 ID:uvkg5TO10
1162

--宇宙--

魔王トリガー「……なら見せてみるがいいよ、その愛の力とやらをさぁ!」

きゅいいいい、ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

魔王トリガーは負の力が込められたエネルギー弾を放つ。

勇者「行くよ、みんな!」

ハイ「はい!」

真勇者「あぁ」

ユー、十代目「「始終奥義……」」

ぎゅるるるるる

五人の力によって無色のエネルギーが巨大な剣の形になった。

ゴゴゴゴゴゴ!

ハイ、勇者、真勇者「募集剣ッ!」

ブンッ!!

魔王トリガー「!」

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

218: 2015/08/24(月) 22:35:12.46 ID:uvkg5TO10
1163

--宇宙--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

募集剣と負のエネルギー弾が激突した時の衝撃波が星を襲う。



--各地--

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

レン「にゃぁあ!!」

ビリビリビリ!!

盗賊「こんなに離れてるのにこの衝撃波……頑張れよ、勇者! ポニテ!」



--宇宙--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

勇者「っく、ぐぅ!!」

ハイ「凄い、パワー、です!」

真勇者「だがそれでも勝たねばならん……!」

十代目「あぁ、負けられないんだ!」

ユー「!」

ググ、ググ……

魔王トリガー「ははは、愛ってのは見せかけだけなのかな? どうやら押し切れそうだよ」

グググググ!!





   「執事」

魔王トリガー「」

その時赤姫がトリガーの脳裏を過ぎる

魔王トリガー「」



ハイ「! 愛の力が増えた!? い、今です皆さん!!」

ズッ

ハイ、勇者、真勇者、十代目、ユー「「「はぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」」

魔王トリガー「!……………………ふ」

ドギャッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

募集剣はエネルギー弾を切り裂き、魔王トリガーへ到達する。

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

ハイ、勇者、真勇者、十代目、ユー「「「いけえええええええええええええええええ!!!!」」」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

トリガー「……ちぇ……やっぱり、愛は……邪魔だ、ね」

カッ

219: 2015/08/24(月) 22:36:25.53 ID:uvkg5TO10
1164

--各地--

……ッドォォオオン!……

盗賊「! なんかすっげぇ爆発したけど、どっち、だ!?」

レン「ツインテ達に、決まってるにゃ……決まってるのにゃ!!」

賢者「……ッ」

踊子「大丈夫ですよ~……あの子達を信じましょう~」

震えている賢者と踊子の手。

フォーテ「……飛び散ったエネルギーが僕の索敵を邪魔してよくわかんないっ!」

竜子「ハイ!」

代表「ハイちゃん!」

……うぅう

盗賊「……?」

うううううぅううう!!

ぼっ!

雲を突き破って落下してきたのは、

きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

真勇者「ッ!」

220: 2015/08/24(月) 22:37:26.37 ID:uvkg5TO10
1165

--各地--

盗賊「やった! 勝ったんだな!? そして真っ先にパパの所に!? おいで! スピード落としてからおいでー!」

賢者「ばっ、盗賊君! あれ僕の子供あるんですからね! 抜け駆けはだめですよ!」

きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

盗賊、賢者「「……いや、ここへ来てその加速はおかしい……」」

しゅぽっ!!

盗賊「ひぃっ!?……あ、あれ?」

真勇者は更に加速して、魔法使い達が掘った穴へと入っていった。

賢者「ん……?」

盗賊「……!? トリガー! てめぇ!!」

トリガー「――ご察しの通りだよ。今、真勇者だけに、この世界の守り方をテレパシーで教えた」

賢者、踊子、レン「「「!?」」」

トリガー「だって、彼らしか無理だからね」

221: 2015/08/24(月) 22:38:39.96 ID:uvkg5TO10
1166

--各地--

きいいいん! ずだんっ!!

その真勇者を追うようにハイ、勇者、十代目が空から降りてくる。

ハイ「はぁ、はぁ!! し、真勇者先輩はどこです!?」

勇者「あの子、戦いが終わったらいきなり! すごく深刻な顔してた!」

盗賊「い、いきなりきてその穴の中にすっぽりと入っちゃった! どうしよう!?」

あわわあわわ

赤姫「トリガー!……皆でやれることじゃないのか……?」

トリガー「……無理だよ。犠牲も無く終わるのはね」

盗賊、勇者「「!?」」

トリガー「……これしか無いんだ。無論邪魔もされるだろうことはわかっていた。だから内緒にしてたのさ」

盗賊「トリガー!」

通信師「と、とりあえず、魔王との戦いは、勝った、んですよね?」

ハイ「え? あ、はい。それは、勝ちましたけど」

通信師「……き、聞きました皆さんーーーー!」



--各地--

わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

222: 2015/08/24(月) 22:39:22.83 ID:uvkg5TO10
1167

--穴--

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

どんどん星の中核へと潜っていく真勇者。

真勇者「……!」




--過去、宇宙--

しゅぅううう……

ハイ「はっ、はぁ、はぁ、はぁ……」

勇者「んぐっ、はぁ、はぁ……」

十代目「やった、のか……?」

うぅうう……

真勇者「どうやら、そのようだな」

ユー「……」



ハイ「」

ぼろっ

ハイ「やった、やったよ、ビィ……」

真勇者「……」

――ツ

トリガー(真勇者、とか言ったね。聞こえるかな? 僕のテレパシー)

真勇者(! トリガー!?)

223: 2015/08/24(月) 22:41:35.08 ID:uvkg5TO10
1168

--過去、宇宙--

トリガー(あぁ僕だよ。あ、でも気にしないでくれ。そっちの僕は完全に倒されたよ。僕は地上で分離したもう一つの、性質の違うトリガーだと思って欲しい)

真勇者「……」

トリガー(敵意は無いよ。それより急いで君に伝えることがあるんだ。それは、世界の守り方だ)

真勇者(……何?)

トリガー(この星を守りたいなら僕の言う通りにするんだ。時間はもう無いからね。いいかい?――)

真勇者「……!」

ハイ「えぐっ、ぐすっ! ふぐぅ!」

勇者「ほらほらハイちゃん、もうそんなに泣かないで? 下に戻ってからいっぱい泣こう?」

そういう勇者の眼にも涙が。

十代目「そうだな。さすがに今日は、疲れた。もう何もできん」

ユー「……」

ユーがジェスチャーで星のことは大丈夫なのか? と伝える。

勇者「えぇ。私の自慢のバカに任せてきたんだもん。きっと何か考え付いてるわ。駄目なら……駄目でも頑張ったもの」

真勇者「……」

勇者「真勇者、貴方もお疲れ。さぁみんなで」

ぎゅんっ!!

勇者「え、ちょっ!?」

ハイ「!? 真勇者さん!?」

突如降下した真勇者を追って三人も地球へ降下する。

ユー「……」

しかしユーだけは宇宙空間に残った。

ユー「……役目は、終わった。後は……」

ぼろっ……

ユーの体が光の粒となっていく。

224: 2015/08/24(月) 22:42:53.72 ID:uvkg5TO10
1169

--穴--

じゅぅうう……

真勇者「! スキル、精霊化!」

ぼしゅっ!

服が熱さで溶け始めたので真勇者は霊体に変化し、更に下を目指す。



--各地--

北の避難民「やったあああああああああああああああああああああああ!!」

わーきゃー!!

北の避難民「ごめんな婆さんさっきは! あんたの言う通りにしてよかったよほんと! さっきは情けなくてごめん!!」

盗賊の母「なぁにいいよ……それにしても、よくやったねぇほんと」

わーきゃー!

人々は歓喜の声をあげている。

ゴゴゴゴゴ

北の避難民「……あ、魔王は倒しても星は……あ、いや星もなんとかなるっていってたよな!? そうなんだよな!?」

ざざっ

通信師(お、お伝えします。今、星を治すために、ある人たちが星の内部に向かいました)

ざわざわ

通信師(えっと、ある人物によるとこれで星は元通りになるらしいのですが……)

ざわざわ

通信師(その人たちは……戻って来れない、そうです)

ざわ!

225: 2015/08/24(月) 22:44:26.01 ID:uvkg5TO10
1170

--穴--

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

真勇者「……」

ざざっ

トリガー「手順はさっき伝えた通りだけど、もし不安ならいつでも聞いてね。出来る限りのことをするつもりさ」

真勇者「!……なるほど、これが噂に聞いた勇者にのみ見えるトリガーというやつか。いつの間に来たんだ?」

トリガー「勇者に会うのに距離は関係ないのさ……さて、少し黙るとするよ。君も心の整理が必要だろうからね」

真勇者「へぇ……驚いたな。あの話に聞いてたトリガーが優しさを見せるとはな」

トリガー「僕はやさしいさ。君達の味方なんだから」

真勇者「……」

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

真勇者(……やれやれ。なんとか魔王を倒せはしたが……こうなるとはな……)

真勇者は静かに眼を瞑った。

226: 2015/08/24(月) 22:48:25.22 ID:uvkg5TO10
1171

--真勇者、心の中--

ツインテ「や、やりましたね、皆さん! ついに魔王を倒して完全勝利? です!」

アッシュ「あぁ」

ポニテ「そうだね……」

少しぎこちない三人。

ツインテ「あ……さすがに……この終わり方は、予想してません、でしたよね?」

無理して笑うツインテだったが、次第に頬が引きつっていく。

アッシュ「……」

ポニテ「……うん」

ツインテ「でも……ボクの命でこの世界を救えるのなら、それは、とても、恐れ、多いな、って。み、皆さんを、巻き込んでしまう、のは、心苦しい、んですが」

ぼろ、ぼろぼろ

ポニテ「ッ」

ポニテはツインテを抱きしめた。

ツインテ「みな、皆さん、いい人達でした……だからっ、氏んで欲しくないんです……だから、ボクは……」

ぼろぼろっ

アッシュ「あぁ……! わかってる! 俺も一緒だ!」

ポニテ「心苦しいだなんて水臭いよツインテちゃん。だって真勇者の意思はみんなの意思なんだよ? 私だって望んでやってるんだから……ね?」

ぼろぼろ

アッシュ「行こう、三人で……俺達三人なら、星でも救えるということを証明してやろう!!」

ツインテ、ポニテ「「うんっ!!」」

227: 2015/08/24(月) 22:49:42.59 ID:uvkg5TO10
1172

--穴--

ゴオオオオオオオオオオオオオオ

トリガー「……もうすぐ最深部だ。心の準備は出来たかい?」

真勇者「……無論だ」

ざ、ざざ

通信師(き、聞こえますか? 聞こえますか? 真勇者さん)

降下する真勇者の心にテレパシーが届く。

真勇者(あぁ聞こえるぞ。どうした? 何か上でトラブルでも起きたか?)

通信師(いえ、それ、が――で、――ね)

真勇者(……もうすぐテレパシー範囲の外か……)

通信師(皆さん、に事情を説明、しま――た、そし―ら)

真勇者(……?)




















   「「「頑張れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

!!」」」

びくっ

真勇者「!?」

228: 2015/08/24(月) 22:52:21.63 ID:uvkg5TO10
1173

--穴--
  
  「ありがとおおおおおおおおおおおお!!」

            「頑張れー!」

   「すまねぇ! 若いのに全部おしつけちまって!!」
  
                   「帰ってきてくれ! 絶対だ!!」

      「ありがとう! 本当にありがとう!!」

 「ごめんねえー!」

   「ツインテちゃーん! 愛を送るからー!! これもエネルギーに変えてくれー!」

                   「うわああああああああああ好きだあああああああああああああああ!!」

 「あいがとぉー」

                 「ごめん! 星を頼むよー!!」

      「代わりになれたらよかったんだけどねぇ……」
 
   「無事帰ってきてねーーーーー!!」

わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


真勇者「」

切れかけていたテレパシーだったが、驚くほどのボリュームで人々の声が真勇者の心に届いた。

  ハイ「バカ! 先輩達のバカーーっ!! なんで私を置いていったんですか!? やっぱり私じゃ頼りにならないからですか!? ひどいです!! 仲間はずれにしないで下さいよぉー!! うわぁああああん!」

真勇者「ハイ……」

  盗賊「……ごめん、かける言葉が見つからない……うえぇえ……」

真勇者「パパ……」

  賢者「ツインテ……帰って来るんだぞ。待ってるからな!」

  踊子「ですよ~? 一日でも早く帰ってこないと、この人の頭の毛ゼロになっちゃいますからね~」

真勇者「は……情け無い、みんな涙声じゃないか」

  秘書「……誇りに思います………………ッ」

真勇者「お母様……」

  勇者「……しっかりやんなさい。そしてちゃんと帰ってきなさい」 

真勇者「……ッ……帰り、たいけど、それは、無理だ」

  ハイ「先輩方のことだから心配してませんがっ! 絶対諦めないでくださいねッ!? 絶対に、何年かけても、私達が助けに行きますからッッ!!」

真勇者「」

229: 2015/08/24(月) 22:55:29.93 ID:uvkg5TO10
1174

--穴--

  ハイ「方法がなくても探し出します! 絶対無茶でも助けます!! だからっ……!……だから、それまで……頑張ってください……」

真勇者「……」

  ハイ「土産話、いっぱい、聞かせて、もらいますからね……」

通信師(……聞こえ、まし、た、か? みな、さ――あな、――) 

づづ、づーーー

真勇者「……」

そして、とうとうテレパシーの射程範囲外へ来てしまう。

真勇者「……あぁ、待ってる」

ゴゴゴゴゴ……



--コア--

真勇者「……」

トリガー「着いたね。ふう、どうやらギリギリだったみたいだ。さぁ時間はないよ?」

ゴゴゴゴゴ

真勇者「……」

キッ!

真勇者「あぁ!!」

バババッ!!

凄まじい熱の中を真勇者は軽やかに動いていく。

真勇者「はぁああ!!」

そして真勇者は魔力で出来た糸で一部を縫い合わせる。

真勇者「……三人だから寂しくは無い。が、待ってるぞ、ハイ」

真勇者はその身の全てをエネルギーに変えていく。

ゴゴゴゴゴゴゴ……




230: 2015/08/24(月) 22:56:17.60 ID:uvkg5TO10
1175

--コア--























ゴォン……

231: 2015/08/24(月) 22:57:04.39 ID:uvkg5TO10
1176

--三年後--
















ぱからっ

232: 2015/08/24(月) 22:58:37.14 ID:uvkg5TO10
すいません、インターバル入ります。
もしかしたら明日とかになってしまうかもわかりませんが、少し休憩ください。最後なのにすいません!

勇者と魔王がアイを募集した【18】

引用: 勇者と魔王がアイを募集したFINAL幕