241: 2015/08/25(火) 01:12:35.08 ID:4gI1NaPN0

242: 2015/08/25(火) 01:14:14.61 ID:4gI1NaPN0
1177

--東の王国--

……ぱからっ、ぱからっ

ハイ「ふぅ、確かこっちの方であってる、はずなんですが……」

キバ「あ、ハイちゃーん」

ハイ「あ、キバさん。こんにちわー。久しぶりですー」

キバ「お久しぶりー。ユニちゃんも久しぶりだねー」

ユニコーン「ひひん」

キバ「今日はどうしたの? 配達?」

ハイ「はい、配達です。これ、キバさんと魔法使いさんに」

そう言ってハイは手紙を渡す。

キバ「あ、そうか。そろそろなんだ……」

ハイ「はい……あの、魔法使いさんどうしてますか? ちゃんと働いてます?」

キバ「ん、だめ。一時は魔法王国で講師勤めてたんだけど……あの性格でしょ?」

ハイ「あ、はは……」

キバ「で問題起こしてクビになって、それ以来ふさぎ込んじゃってさぁ。今は私がパートで食いつないでるけど、子供達も大きくなるし、早く新しい仕事についてもらいたいわ」

ハイ「ははは……大変ですねぇ……」

キバ「笑い事かなー? ハイちゃんもそろそろお婿さん探さないとまずいんじゃないのー?」

ハイ「」

キバ「あ、ごめんなさい」

243: 2015/08/25(火) 01:16:02.45 ID:4gI1NaPN0
1178

--街道--

ぱからぱから

ハイ「ぶつぶつぶつぶつ」

ユニコーン「ひ、ひひん?」

ハイ「う、う……そ、そんなことは言われなくたってわーかってますよっ! こちとらもう三十なんですからぁあ」

泣き崩れてユニコーンにもたれかかるハイ。

ハイ「仕方ないじゃないですかぁ! 私はやることでいっぱいだったんですから……」

ユニコーン「ひひん?」

ハイ「あ、違いますよ、そこ右です。後侍さんにも渡さなきゃですから」

ユニコーン「ひひーん」

ハイ「ぐすん……もう男なら誰でもよくなって来た感はありますね」

ユニコーン「ひひん!?」

ハイ「まぁ誰でもって言いますけどある程度顔はよくてある程度収入はよくてやさしい人じゃなきゃ駄目ですけどね」

ユニコーン「ひ、ひひーん……」

244: 2015/08/25(火) 01:18:58.99 ID:4gI1NaPN0
1179

--東の王国--

侍「やや! よく来てくれたでござるよハイ殿!」

ハイ「ノー! ハグは駄目です! はいこれ、レン先輩からのお手紙です」

侍「もーつれないでござるなぁハイ殿は」

ハイ「侍さんももう少し東の三強である自覚を持ってください! こんな所で私なんかといちゃいちゃしてるところ誰かに見られたらことですよ!」

侍「なんかではござらん。ハイ殿は素敵な女性でござる」

ハイ「ぴゃっ!?」

侍「それに英雄の中の英雄でござる。釣り合わないというのであればむしろ拙者のせいでござるよ」

ハイ「……奥さんの耳に入るってことを言いたかったんですけど」

侍「お手紙ご苦労でござった」

ハイ「まぁもう見られちゃったんですけどね」

通信師「……」

侍「……」

通信師「去勢」

245: 2015/08/25(火) 01:20:02.43 ID:4gI1NaPN0
1180

--東の王国--

侍「そうだハイ殿、もう一つ伝えておかねばならないことがあったでござるよ」

ハイ「はい?」

侍「以前ハイ殿が調べていた出自についてでござる」

ハイ「――え」

侍「いや、結局どこの出身なのかはわからなかったでござるが、一つ手がかりを見つけたのでござる」

ハイ「てが、かり?」

侍(かり……)「さよう、実はハイ殿は、双子だったでござる」

ハイ「……ビィのことですか?」

侍「違うでござるよ。双子の弟がいるらしいのでござる」

ハイ「……」

侍「……乱世ー!!」

通信師「言いたかっただけだろーーー!」

246: 2015/08/25(火) 01:20:55.64 ID:4gI1NaPN0
1181

--砂漠--

ぱからっぱからっ

ハイ「私に双子の弟……そんなの、いるのかな?」

ぱからっぱからっ

ハイ「……家族、か。なんか、いいな」

にへっと笑うハイ。

ハイ「優しい子だと、いいな。落ち着きが無くても人のことを思って行動できる優しい子……」

……おぉおおおん

ハイ「ん?」

おおおおおおおおおおおん!!

まっちょ奴隷「ひゃっはー!!」

奴隷王「いけー! ぶっとばせー!!」

ぶおおおおおおおおおおん!!

砂上船で暴れまくる奴隷王とその支配下たち。

ハイ「何あのマッドマックス……あんなのが家族だったら終わりだなー」

ぱからっぱからっ

247: 2015/08/25(火) 01:23:31.47 ID:4gI1NaPN0
1182

--砂漠の風、アジト--

鬼姫「やーお久しぶりっすハイちゃーん。お元気でしたっすかー?」

姫「姫繋がりで姫ちゃんもいるよっ! いるよっ!?」

ハイ「皆さんお久しぶりです。お変わりないようで」

姫ちゃーん、と姫とスキンシップを取るハイ。

ハイ「姫ちゃんはなんでここにいるんですか?」

姫「あのね!? 参謀長が忙しいから邪魔だって言ってね!? ここにつれてこられたの!!!!」

ハイ「……なる」

鬼姫「あー、例のことっすかこの手紙。了解でっす。ちゃんと遅れずにいきますっす」

ハイ「よろしくです」

鬼姫「しかし……無事でよかったすよ」

ハイ「はい?」

鬼姫「最近ここらを荒らしまくる暴走族みたいなのが現れたっす。魔度魔苦巣とかいう」

ハイ(絶対さっきのやつらだ……)「ん? ここらへん砂漠の風のなわばりだと思うんですけど、野放しにしておいていいんですか?」

鬼姫「やー……痛いところつかれたっす。実はこいつら中々手ごわくって手間取ってるっすよ」

ハイ「鬼姫さんが手間取るレベルなんですか!? こわ……」

鬼姫「首領以外雑魚みたいなんすけど、その首領がちょっと厄介で、職業がまさかのレベルらしいっす。あたしはまだ遠目に見ただけなんで部下の情報なんすけど」

ハイ「え」

248: 2015/08/25(火) 01:26:52.25 ID:4gI1NaPN0
1183

--北の王国--

忍隊長「では私はこれで」

ハイ「あ、護衛ありがとうでした。鬼姫さんや皆さんによろしくお伝えください」

忍隊長「承知しました。では」

しゅばっ!

ハイは見えなくなるまで手を振って忍隊長を見送った。

ハイ(……でも、レベル使い、か……もしかして……いやいやそんなわけないよね。さぁ仕事仕事!)

召喚士「ようこそ北の王国へでやんす」

ハイ「うわぁああ!?」

どしゃっ!

ユニコーンから転げ落ちるハイ。

召喚士「そんなに驚かなくてもいいのにでやんすよ。ハイちゃんが門の近くに来てるのを見つけたから飛んでやってきたのにでやんす」

ハイ「あ……すいません久しぶりでびっくりしちゃって。あはは」

差し出された手を掴むハイ。

召喚士「そうでやんすよね? そうでやんすよ。久しぶりで会いたかったのはこっちもなんでやんすよ!」

ハイ(え、そんなことは言ってない)

召喚士「聞いてくださいやんすハイちゃん! 実はあれからまだオイラ達の後継者が現れないでやんすよ! オイラと人形師は一体いつまで三強で頑張ればいいのでやんすか! 早く南の王国なんかでのんびり余生を過ごしたいというのにっ!!」

ハイ「あはは……」

召喚士「射王も五柱なんてものに入っちゃうからまた一人減って大変なのでやんすよ! 羨ましいでやんす五柱! 聞いてるでやんすかハイちゃん! あ、ハイちゃんうちの国に来るといいのでやんすよ、そんで三強やるといいのでやんす。今なら洗剤とかつけるでやんすから」

ハイ「い、いえ遠慮しておきます。それに私、レベル4無くなっちゃったし戦力には……あ、はいこれ! 手紙です! ではっ!」

ぱからっ!

召喚士「あ、待つでやんすよハーいーちゃーーーーんーーーーーーーー……」

249: 2015/08/25(火) 01:28:37.60 ID:4gI1NaPN0
1184

--北の王国--

ハイ(あー危ない危ない。召喚士さんの話につき合わされるとどんどん仕事遅くなっちゃうからなぁ……後は……)

ぱからっぱからっ

秘書「? あら、ハイ。久しぶりですね。元気でしたか?」

ハイ「!? 秘書さん!? 何でここに!?」

ユニコーン「ひひーーーん!」

秘書「いえ、国同士の技術協力の一環です。具体的には秘密ですが」

ハイ「あ、無理に聞こうとは思ってないので。あの、これ秘書さんに渡そうと思ってたんです」

すっ

秘書「あらこれは……やっと、ですね」

ハイ「はい! やっとです!」

秘書「わかりました……では仕事をちゃっちゃと終わらせて向かいます」

ハイ「はい。私もさっさと仕事終わらせちゃいます。それでは失礼します」

秘書「あ、待ちなさい」

ハイ「え?」

秘書「飴です、持って行きなさい。少し、疲労が見えましたから……気をつけて」

ハイ「あ、ありがとうございます」

250: 2015/08/25(火) 01:29:20.51 ID:4gI1NaPN0
1185

--草原--

ぱからっぱからっ!

ユニコーン「ひひーん!」

ハイ「ユニちゃん本当早くなったよね。おかげで随分移動が楽になっちゃった。あ、はい、ユニちゃんも飴」

ユニコーン「ひひーん!」

まさかの鼻にいれるハイ。

ユニコーン「ごえっ!!」

ハイ「後は……っと、あそこにはどうやっていくんだっけ?」

ぱからっぱからっ

ハイ「! あそこだ! 行くよ! ユニちゃん!」

ユニコーン「ぶひ、ひ、ひひーーーん!!」

だっ!!

251: 2015/08/25(火) 01:31:01.05 ID:4gI1NaPN0
1186

--失われた王国--

かぽっかぽっかぽっ……

ハイ「!」

シャーマン「結界を突破した感覚がしたから誰かと思えば、ハイじゃないか。久しぶりだな」

ハイ「どうもー。勇者さん達いますか?」

シャーマン「いるよ。いつものところだ」

ハイ「ありがとうございます」

シャーマン「で、何の用だ?」

ハイ「これです」

ハイはちらりとその手紙を見せる。

シャーマン「…・・・なるほど」

252: 2015/08/25(火) 01:33:12.70 ID:4gI1NaPN0
1187

--失われた王国--

しゃっ、しゃっ

白ワニ「あー、背中気持ちいい、ありがとうね勇者」

勇者「気にしないでお母さん。ん?」

かぽっ……

ハイ「お久しぶりです勇者さん。白ワニさん」

勇者「ハイ! 久しぶり! 何年ぶりかしら!」

ハイ「二年ぶり、くらいなんですけど……」

ハイは勇者の頭の天辺からつま先までじっくりと見る。

ハイ「……あ、あれ?」

勇者「あはは。みんなから驚かれるのよ」

ざっ

ミイラ「ふん、これが自然なのだ」

勇者「お父さん」

ハイ「あ、お久しぶりです」

ミイラ「あぁ……」

がしっ

白ワニ「あら?」

ミイラは白ワニを抱えてどっかに行ってしまう。

ハイ「……私嫌われてるんでしょうか」

勇者「気にしないで。誰にでもああだから。きっと自分のやったことがことだけに、どう接していいのかわからないのよ」

ハイ「そんな……」

勇者「……来て、盗賊にも会ってあげて」

253: 2015/08/25(火) 01:34:31.54 ID:4gI1NaPN0
1188

--失われた王国--

ざっ、ざっ

ハイ「とーぞくさん?」

盗賊「!? ハイちゃん! ハイちゃんじゃないか!」

畑仕事をしていた盗賊は鍬を放り投げてハイ目掛けて走ってくる。

ヴン

カブト「……投げちゃあ危ないだろ?」

時を止めたカブトは、鍬を掴んで盗賊の首筋に当てる。

盗賊「は、はい……すいません」

勇者「全く、もういい歳なのにいつまでたっても子供みたいなんだから」

盗賊「やー、すまんすまん……で、ハイちゃん、何しに来たんだい? もしかして……」

ハイ「はい。そのもしかしてです」

盗賊「!? 俺の養女になってくれる決心がついたんだね!? やったー!!」

ゴゴッ!!

勇者とカブトの拳が盗賊の顔面と後頭部を陥没させる。

盗賊「ごめん回復魔法頼める?」

254: 2015/08/25(火) 01:38:15.46 ID:4gI1NaPN0
1189

--失われた王国--

ハイからもらった手紙を読む盗賊達。

盗賊「……やー……やっと、か」

勇者「もう、でもあるわ。長かったけど、短かったもの」

盗賊「そう、だな」

ハイ「……ですね」

カブト「……」

無言で頷いているカブト。

盗賊「でも、俺も関わりたかったなぁ。適材適所ってのはわかるんだけどさぁ」

ハイ「それ私もです。あんなこと言っちゃったのにこの有様ですから」

笑いあう盗賊とハイ。

ハイ「――っと……私まだ行かなきゃならないところがあったんです。名残惜しいですが失礼しますね」

盗賊「あ、待った。これもって来なよ」

そういう盗賊は笹で包んだおにぎりと竹で出来た水筒を渡す。

ハイ「あ、ありがとうございます」

盗賊「荷物になっちゃうかもしれないけどさ、美味しいから。どうせ携帯食とかしか食べてないんでしょ?」

ハイ「ぎく」

勇者「これも携帯食だけどね」

盗賊「ち、違う! なんていうか愛のこもってないぱさぱさしたやつのことを言いたかったんだ!」

ハイ「これ愛篭ってるんですか?」

盗賊「いっぱい」

ハイ「勇者さん浮気してますよ?」

255: 2015/08/25(火) 01:40:13.56 ID:4gI1NaPN0
1190

--失われた王国--

ハイ「ではー」

ぱからっぱからっ

ぼっこぼこの顔で手を振る盗賊。

盗賊「はー……やっと、だな」

勇者「もう、だね」

盗賊「……ふふ」

勇者「……えへへ」

盗賊「しっかしやっぱ驚いてたなハイちゃん。勇者の体見て」

勇者「そりゃあ、ね」

くるりと回る勇者。
勇者の体は、成長していた。外見年齢で言えば17歳前後と言ったところか。

勇者「……あの戦いで魔王の呪縛も解けた、からかな? 詳しいことはわからないけど、ただの人間に戻っちゃった」

盗賊「ただの、って。それが幸せなことなんだぞ?」

勇者「知ってる。私幸せだよ? これで盗賊と一緒に老いて氏ねるからね」

そう言って勇者は笑う。

盗賊「あぁ――後は、娘だな」

勇者「うん!」

256: 2015/08/25(火) 01:42:19.37 ID:4gI1NaPN0
1191

--失われた王国--

赤姫「ハイめ……私達には挨拶せずに行っちゃった……」

トリガー「見ればわかる、忙しそうだった。なら仕方ないさ」

椅子に座っている赤姫に紅茶が入ったカップを置くトリガー。

こと

赤姫「……」

スッ……

トリガー「……」

赤姫「……なぁトリガー」

トリガー「なんだい赤姫」

赤姫「一つ、聞きたいことがあるんだ。あの三年前の戦いのことでだ」

トリガー「僕に答えられることならなんでも」

赤姫「あの時だ。トリガーが哀を、勇者達が愛を募集したあの時。なぜトリガーは愛が集まりきる前に攻撃しなかったんだ?」

トリガー「……」

赤姫「そもそもトリガーは更に力を集める必要が無かったんだ。自分の持ってるエネルギーだけで全てを無に返すことができた。それをしなかったのはやはり……トリガーは勇者に倒されることを望んでいたのか?」

赤姫は一冊の本をトリガーに突きつける。
タイトルはブリキの魔王と五人の勇者。

トリガー「――それは、僕には答えられないな」

赤姫「トリガー」

トリガー「ただ僕なら……愛と戦ってみたくなったのかも、と、考えるかもね」

赤姫「……」

トリガー「愛には勝てないと知っていても」

257: 2015/08/25(火) 01:44:02.46 ID:4gI1NaPN0
1192

--荒野--

びゅうおおおおおおおお……

ハイ「……ここですよ、ユニちゃん」

ユニコーン「ひひーん」

ぱからっぱからっ……すたっ

ハイ「……お久しぶりです。前来たのは三年くらい、前、ですかね……ご無沙汰でした」

ハイは岩に向かって話しかけている。
その岩には、ユー、と書かれていた。

ハイ「……やー……いざ面と向かうと、言葉が出てきませんね。岩なのに……あ、そうだ盗賊さんからもらったおにぎりお供えしましょうかね。んしょっと」

ハイは荷物からおにぎりを取り出し、一つを岩に備える。

ハイ「一つは私のです。も一つはユニちゃんのです」

ユニコーン「ひひん♪」

もぐもぐ

ハイ「あ、ほんとだ、美味しい……」

258: 2015/08/25(火) 01:46:58.89 ID:4gI1NaPN0
1193

--荒野--

びゅうおおおおおおおお……

ハイ「……あの後、探し回ったんですからね? いっぱい、いっっっぱい探したんですからね? この星の隅々まで、大気圏を越えて宇宙にまで行って……それでも、どこにもユーさんはいなくて……別れの挨拶もしないでいなくなるなんて、本当にユーさんらしいです」

サッ

ハイは岩の埃を払う。

ハイ「……みんなは力を使い果たして……なんて言ってますが、私は違うと思うんです。ユーさんは役目を果たしたから、元の世界に帰っただけなんですよね? ユーさんの成り立ちを知ってるから、私にはわかるんです」

ユニコーン「ひひん……」

ハイ「あれから大変だったんですよ? えっと、暗黒森林がただのバザー会場になったり、賢帝さんがあれをちょんぎったり……えっと、えーーっと」

はぁ、とため息をつくハイ。

ハイ「……思えば色んなことがありました。たくさんの困難がありました。何度も諦めようかと思いました。……本当何度心が折れかけたか……」

びゅおおお……

ハイ「でも、いつも貴方は支えてくれましたね。本っ当に感謝しています。今まで、ずっと見守ってくれて、ありがとう……」

そう言ってハイはユーの墓に手紙を置いた。

ハイ「……これ凄いこと書いてあるんだけど、手紙じゃ、読めないかな?」

こほん
と咳払いしたハイ。

ハイ「――ツインテ先輩達が帰ってきます。レンさんや研究員さん達が中心になって三年間頑張ってくれたんです。星の核の代替物を作ったとかで。それで今、核になったツインテ先輩達と交換しているんです。そしてついに明後日、ツインテ先輩達が地上に現れます」

スッ

ハイは立ち上がりユニコーンの手綱を握る。

ハイ「……では、ユーさん。またどこかでお会いしましょう」

259: 2015/08/25(火) 01:47:28.19 ID:4gI1NaPN0
1194

--  --

そして

260: 2015/08/25(火) 01:48:54.94 ID:4gI1NaPN0
1195

--失われた王国--

赤姫「……おい、さすがに今日まで寝坊とか私でも引くぞ」

勇者「だ、だよねぇ!? ほら! 起きろって言ってんのに盗賊がもぉ!」

盗賊「むにゃむにゃ」

トリガー「……ねぇ、本当に僕も行かなきゃ駄目なのかな……」

勇者、赤姫「「駄目に決まってるでしょ!?」」

トリガー「……はい」

勇者「ほら盗賊これ来て! 早く!」

盗賊「んー……」

ぼりぼり

トリガー「やれやれ、大変そうなことで」

盗賊「……」

トリガー「……? なんだい?」

盗賊「――バッドは置いてけよ?」

トリガー「」

盗賊「……」

トリガー「……そんなものはもう切り捨てたさ」

盗賊「……そうかい」

勇者「ほ、ら! 話しこんでないで出発するよ!」

赤姫「トリガーも!」

盗賊、トリガー「「あっ、はい」」

261: 2015/08/25(火) 01:50:09.32 ID:4gI1NaPN0
1196

--空--

グリフォン「急行します!」

びゅおおおおおお!!

トリガー「やれやれ……魔王を失業しただけでこうまで威厳が落ちるものかな。これが無職というものか……」

盗賊「わかるぜ……でも今俺は無職時代に戻りたいがね」

勇者「今もそんなに働いてないくせに!?」

トリガー「……」

盗賊「……なぁ失業したなら再就職しないか?」

トリガー「え?」

盗賊「もちろん魔王にじゃないぞ? 丁度募集してんのがあんだよ」

トリガー「……」

盗賊「農家、一緒にやろ」

トリガー「……」



  勇者と魔王がアイを募集した
     
     最終部、『リクルート』


盗賊、勇者、トリガー「「「今更!?」」」

262: 2015/08/25(火) 01:51:49.30 ID:4gI1NaPN0
1197

--穴付近--

ばさっ、ばさっ

ハイ「あ、おそーい!! 何やってるんですか勇者さん達!!」

勇者「ほんっとごめんね! バカ盗賊がね!?」

盗賊「ごめんこの前買ったラノベが面白くて……」

ハイ「娘よりラノベですか!?」

勇者「ごめんごめんてハイちゃん。それで、どう、だったの?」

ハイ「……それが」

勇者「……え?」

ハイが視線をそらしながら指差す場所には……

ぽにて「あ! ままだー!」

とてとてとてとて!

勇者「……ん?」

ぽふっ!

ぽにて「おぶっ!」

ハイ「なんか……パワー使い過ぎたせいで、幼女化しちゃったらしいです……」

盗賊「幼女きたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

ミイラ「MAGOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」


263: 2015/08/25(火) 01:53:27.08 ID:4gI1NaPN0
1198

--穴付近--

あっしゅ「お、おかあさま……」

秘書「!」

秘書はしばらくがくがくと震えていたが、

だきっ!!

秘書「可愛い!!」

あっしゅ「お、おかあ、さま。くるしい……」

西の王「良かったな、秘書よ」

秘書「あ……」

秘書はアッシュと西の王の顔を交互に見つめる。

秘書「に、西の王。こんな時ではありますが、一つ伝えなきゃいけないことがあります……」

あっしゅ「!」

西の王「ん? なんだ?」

秘書「それは……」

あっしゅ「おかあ、さま」

秘書「それは……」

西の王「……」

ぎゅっ

秘書「アッシュは、私の大事な、自慢の息子です」

あっしゅ「」

西の王「……そうか。羨ましい限りだ」

264: 2015/08/25(火) 01:56:00.48 ID:4gI1NaPN0
1199

--穴付近--

ついんて「おかあ、さん」

踊子「やだー! ちょー可愛いです~~~!!」

フォーテ「ぺろぺろ! ちっちゃいお姉ちゃん超ぺろぺろ!!」

賢者「僕もぺろぺろ!」

踊子、フォーテ「「触るなパーフェクトはげ!」」

どがっ!!

わーわー

ハイ「……なるほど、犠牲も無く終わるのは無理、って、こういうことだったんですか?」

トリガー「……いや? 僕はあの時、三人の命を犠牲にしなければ星を救えないと、本気で思っていたよ?」

ハイ「……」

トリガー「だからこの程度ですんだのは、彼らの命を救ったのは、君達人の力、というわけさ」

ハイ「……どーなんですかねー」

トリガー「……なんだいその眼は」

ハイ「いーえ? 何はともあれ、先輩方も助けられて一安心です。出来れば……各魔王や、別ルートのトリガーも助けてあげたかったんですが……」

トリガー「……犠牲はつきものだよ。そんなことがわからないようじゃいつまでも一人身のようだよ?」

ハイ「」

トリガー「ごめん、おちょなんさんみたいな顔やめて……」

265: 2015/08/25(火) 01:57:43.45 ID:4gI1NaPN0
1200

--穴付近--

盗賊「やー、なんにせよ今日はめでたい日だ! 祝おう! 全員でこのままパーティだ!!」

ぽにて「きゃはーい!」

レン「そう思って既に用意はしているのにゃ」

勇者「うん、さっきからパーティ会場見えてたからね……」

ついんて「あうー?」

あっしゅ「あれ……」

ぉおおおん……

ハイ「! この不快な音は……」

ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

奴隷王「ひゃっはー! 平和な時代にこんにちわだこらぁ!!」

フォーゼ「!? 俺とキャラ被ってんぞこるぁ!」

ぶぉんぶぉん!

奴隷王「何か人がいっぱい集まってるからここにあるもん全部いただきにきた……んだぜ……」

勇者「……」

十代目「……」

亜人王「……」

フォーテ「……」

聖騎士「ぶるうるうあああああああああああああああああああああああああああ!!」

まっちょ奴隷「……大将、これ、無理っすよ。やばいっすよ戦力差」

奴隷王「……そのようだな!」

ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!

ハイ「逃げた!?」

266: 2015/08/25(火) 01:59:00.50 ID:4gI1NaPN0
1201

--穴付近--

鬼姫「あ、あいつらっすよ魔度魔苦巣」

ハイ「やっぱり!?」

侍「あ、あいつっすよハイちゃんの弟さん」

ハイ「!? 嘘ぉ!?」

……おおおぉぉおん……

勇者「……ハイ? どうする?」

ハイ「……皆さんはパーティの準備しててください。私はちょっと、しめてきます」

盗賊「ハイちゃんだけで大丈夫か?」

ハイ「いえ、聖騎士さんと亜人王さんとフォーテちゃんと十代目さん借りてきます」

レン「完全に頃す気にゃん……」

ハイ「バカは氏なねば治りません。では、行きますよ皆さん!!」

わー!!







   勇者と魔王がアイを募集した
        完

267: 2015/08/25(火) 02:00:15.70 ID:4gI1NaPN0
………
……












大いなる物語は幕を閉じた。だが、
積み重ねたものは無くならない。
彼らの生き様は皆の心にしかと刻まれた。
歴史がこれからどう進んでいくのか、それは誰にもわからない。
さぁ、次の冒険が待っている。
マントヒヒ













    募集シリーズ
      完

268: 2015/08/25(火) 02:01:22.19 ID:4gI1NaPN0
以上でこのssシリーズは完結です! 皆様長い間本当にありがとうございました!!

321: 2015/09/08(火) 02:17:44.47 ID:zHD9BNoz0
こんばんは!

というわけで、
ルート1をこっそり進めていきたいと思います。

322: 2015/09/08(火) 02:18:30.14 ID:zHD9BNoz0


--荒野--

ひゅおおおおぉぉおおおお

ズズズ……

何も無い荒野に、突如時空の裂け目が現れる。

ズズズ、すたっ

??「……」

?「……くす」

そして、そこから二人の少女が現れた。

323: 2015/09/08(火) 02:19:13.25 ID:zHD9BNoz0


--失われた王国--

ぴく

トリガー「この……反応は」

麦藁帽子を被りとうもろこしを手に持っているトリガーは、遠く離れた地で起きた何かを感じ取った。

がさがさ

盗賊「おーいトリガー、休んでる暇無いぞー? 嵐が来るみたいだから収穫を急がないと」

トリガー「……うん、わかってる」

びゅおおぉぉおおぉ

トリガー(ふぅん……こういうこともあるのか)

赤姫「……」

紅茶を飲みながら盗賊達の作業を見ていた赤姫も手を止めた。

赤姫「……なんだか嫌な感じね」

324: 2015/09/08(火) 02:19:55.14 ID:zHD9BNoz0
それから数ヵ月後……。

325: 2015/09/08(火) 02:21:49.28 ID:zHD9BNoz0


--魔法王国、ユニオン、校長室--

魔導長「よく来たなの三人ともっ。首を長くして待ってたなの」

ポニテ「ぶっすー……」

ツインテ「あ、あの、ポニテさん、態度悪い、ですよ……?」

アッシュ「ふん、来たくて来たわけじゃない」

ツインテ「アッシュ君まで……!」

勇者「……ごめんね魔導長。うちの子が勉強したくないって駄々こねちゃって……全く、実年齢だとそろそろ三十だっていうのに……」

付き添いで来ていた勇者がため息をついた。

ポニテ「だってー! ポニテ勉強したくないんだもん!! 学校ならちょっと前にレンちゃんと行ったので十分でしょ!? なんで今更学校なんかに行かなきゃいけないのさ!」

勇者「全っ然足りてない十分じゃない。ポニテ、あんたが人並みに出来ることと言ったら戦闘と食べることくらいじゃないの」

びしっ!! と指差す勇者。

勇者「これからの時代、戦闘能力だけじゃ食べていけないのよ?」

326: 2015/09/08(火) 02:23:03.89 ID:zHD9BNoz0


--校長室--

ポニテ「いーもん。適当に旦那さん見つけて養ってもらうし。なんならパパと一緒に農家やるし」

勇者「あんたみたいなの貰ってくれる人なんていやしないわ。後農家なめるんじゃありません」

ポニテ「うー!」

ばちばちと火花を散らす勇者とポニテ。

魔導長「……なんだか無理言って来てもらっちゃって悪いなの」

勇者「気にしないで魔導長。こっちとしては今回のことは渡りに船だと思ってるから」

ポニテ「ふん!」

ツインテ「ポニテさん……」

アッシュ(まぁ俺はツインテとまた一緒にいられるからいいんだけどな!)

327: 2015/09/08(火) 02:28:21.96 ID:zHD9BNoz0


--教室--

こつこつ

女人狼「――今から13年前に最終決戦と呼ばれる、人類の存亡をかけた決戦がありました」

教科書を読みながら教室を歩く女人狼。

女人狼「最後の希望である七勇者に導かれ、我々人類側は氏闘の果てに魔王を倒し、勝利しました。でも、その代償は決して軽いものではありませんでした」

こつこつ

女人狼「この星の崩壊の危機こそ避けられましたが、核が一度破壊されたせいで、世界を満たしていた魔素が大幅に減少してしまったのです。はい、ゾンビ娘さん。この魔素とは一体なんですか?」

がたっ

ゾンビ娘「はい。魔素とは自然の中にある魔力の元となるものです。それを私達は呼吸とともに体内に取り入れて魔臓器で魔力に変換し、私達が使う魔法やスキルに使用しています」

女人狼「はい、よろしいです。ではオーク太郎さん。魔素が減少したことでこの世界に何が起きましたか?」

オーク太郎「ぶひ。魔法が使いづらくなりましたぶひ」

女人狼「……まぁいいでしょう。魔素が大幅に減少したことで魔力を練りづらくなり、結果的に強力な魔法の使用が難しくなりました。そしてこの13年の間で生まれた子供達の魔力量も、徐々に減少していっています……」

こつこつ

女人狼「このままではやがて、自力で魔法を使える者はいなくなるでしょう」

328: 2015/09/08(火) 02:31:56.61 ID:zHD9BNoz0


--校長室--

魔導長「――もしこんな時に魔王、もしくはそれレベルの脅威が現れたとしたら……私達はきっと、立ち向かうことすら出来ずに滅ぼされてしまうなの……。だから私は脅威に対抗できるようにこの学校を作ったの。世界中の知識と技術を集めたこの学園、ユニオンを」

アッシュ「……それに俺達と何の関係があるんだ?」

魔導長「君達には普通の生徒としてこの学校に通って貰いたいなの。もちろん身分を隠して。君達みたいな凄い子がいるとわかれば、他の子達にもいい刺激になると思うなの」

勇者「……なるほど」

ツインテ「身分を隠して、ですか?」

魔導長「そうなの。まぁ13年前の最終決戦にいた英雄が、まさかこんな外見になってるとは思わないだろうけどね」

ツインテ達の現在の外見は大体15歳前後である。

ぱんっ

魔導長「じゃあまぁこんな感じなの。後は学園の案内はレンちゃんに任せるなの」

こんこん

レン「失礼するにゃ」

ポニテ「お、レンちゃんじゃん」

アッシュ「その格好……ちっ、まさかかつての仲間に勉学を教えられるというのか……?」

ツインテ「レンさん、五日ぶりですね」

レン「久しぶりにゃツインテ。しかしいつ見てもツインテは可愛いのにゃ」

329: 2015/09/08(火) 02:33:06.30 ID:zHD9BNoz0


--教室--

きーんこーんかーんこーん

女人狼「はい、では一時間目はここまでです。各自予習復習を忘れないように。それにしても……遅いですね」

女人狼は時計を確認する。

キマ「はいはいはーい! 先生ー、先週話してた転入生は今日来るんじゃないんですかー?」

女人狼「そう、なんですが、何か手違いでもあったのでしょうか。あら?」

窓の外から中庭を見た女人狼はツインテ達の姿を確認する。

女人狼「……どうやらその転入生達は今校内を見学中のようですね」

キマ「嘘ー!? どれどれー!?」

だだだだ!

ゾンビ娘「三人……いますね」

オーク太郎「丁度同じくらいの年頃ぶひ」

キマ「ねーねー、全員このクラスなんですか!?」

女人狼「はい、そうですよ。全員このE組に来ます」

イバ「ちっ」

教室の隅で机に突っ伏している男子生徒が舌打ちする。

330: 2015/09/08(火) 02:35:28.81 ID:zHD9BNoz0


--教室--

きーんこーんかーんこーん

レン「二時間目は作成の時間にゃ。でもまず転入生を紹介するにゃ。入るにゃ」

がららー

ポニテ「うおー! この子達がクラスメイト? やっほー! ポニテだよー! みんなよろしくねー!!」

アッシュ「あんなにぶーぶー言ってたくせにノリノリかよ」

ツインテ「あはは……」

レン「えっと、左から大食らいのポニテに陰険なアッシュ、そして世界一可愛いツインテにゃ。みんな仲良くしてやってにゃ。特にツインテ」

ポニテ、アッシュ「「おい!?」」

レン「あ、でもツインテと仲良くし過ぎたらキレるのでよろしくにゃ」

ざわ

ゾンビ娘「え、ツインテって、もしかして中央王国の王女様……?」

オーク太郎「!! そういえばあの気品ある顔! 見たことある気がするぶひ!!」

ツインテ「あ、い、いや、その、ボクは……」

アッシュ「……ただの同姓同名だ。一国の王女がこんなところに来るわけないだろうが」

レン「こんな所っておい」

331: 2015/09/08(火) 02:38:13.82 ID:zHD9BNoz0


--教室--

ツインテ(……そうだ、公式ではボクは女の子ってことになぜかなってしまってるし、ここでそれを逆手に取ればごまかせるかも!)「み、みなさん! ボクはツインテ王女と何の関係ありません……その証拠に、ボクは男の子ですから!!」

ゾンビ娘「……」

オーク太郎「……」

イバ「……」

キマ「……いや、それはないっしょー」

ツインテ「ぐ……男子らしく短パンはいてきたのにまるで信用されてないです……」

ポニテ「まぁ無理だよね」

アッシュ「可愛いもん太ももぴちぴちだし」

ぱんぱん

レン「はいはいみんな、ツインテちゃんはツインテ王女となんの関係も無いにゃ。わかったにゃね? わかったらこの話はおしまいにゃ」

オーク太郎「いやでもあの可愛さを見間違えるとは到底思えないぶひ……」

レン「はい今後このことについて喋ったものは内申点下げるにゃー。オーク太郎君マイナス一点ー」

オーク太郎「えぇ!?」

332: 2015/09/08(火) 02:40:28.91 ID:zHD9BNoz0
10

--教室--

かっ、かかっ、かっ

レン「では、この錬金術用語で言うエーテルとは一体何か。はい、ツインテ。答えるにゃ」

ツインテ「え!? え、えっと……ご、ごめんなさい、まだ習ってないところなのでわからないです……」

レン「そうだったにゃーー! ごめんなのはこっちにゃツインテ! これはこちらの不手際なのにゃ! 内申点+10点!」

オーク太郎「えっ!?」

アッシュ「ひいきが過ぎる!」

レン「はい次、ポニテ答えてみるにゃ」

ポニテ「えっ!? 今それは私達にはまだ早いってことで決着がついたんじゃないの!?」

レン「はい口答えしたので極潰しポニテは-200点にゃ」

ポニテ「ひどい! ひどすぎるよレンちゃん! 持ち点どんなことになってるの!?」

がぁん!

ゴーレムがポニテの頭を叩く。

ポニテ「痛い!? 体罰まで!?」

レン「教師に向かってちゃん付きとはどういうことにゃ。-2点」

ツインテ(ちゃん付けの方が軽いんだ……)

イバ「……」

333: 2015/09/08(火) 02:42:40.71 ID:zHD9BNoz0
11

--教室--

きーんこーんかーんこーん

レン「じゃあ今日はここまで。起立」

ゾンビ娘「礼、ありがとうございました」

ありがとうございましたー

レン「じゃあツインテ達、お昼に食堂でにゃ」

がらららっ

アッシュ(がばがばじゃねぇか。隠す気ねぇな……)

ひょこっ

キマ「ねーねー君達ー。どっから来たのー? なんだかレン先生と仲よさげだったけど、知り合いだったりするの?」

八重歯を見せて笑う少女、キマがツインテ達に話しかけてきた。

ツインテ「あ、はい……そうですね、昔、近くに住んでいたもので……」

キマ「ん? 三人とも?」

ポニテ「えっと……うん。かな……?」

冷や汗を垂らしながら対応する二人。

アッシュ「……」

キマ「へー。この時期に三人同時に転入ってだけでも珍しいのに、三人とも知り合いなんだ?」

ツインテ「あ、はは……」

334: 2015/09/08(火) 02:44:26.41 ID:zHD9BNoz0
12

--教室--

きーんこーんかーんこーん

キマ「ありゃ、もう休み時間終わっちゃった。じゃあまた後でお話しようねポニテー!」

ポニテ「おっけー!」

ツインテ(10分でめっちゃ仲良くなってる……)

がららら

調教師「おやようございます皆さん、あら?」

教室に入ってきた調教師がツインテ達に気付いた。

調教師「あ、そういうことでしたね。お久しぶりですツインテ様、お元気でしたか?」

調教師は跪いてツインテを拝んだ。

ゾンビ娘「!?」

オーク太郎「ツインテ、様?」

ツインテ「ちょっ、ちょーー!」

ポニテ(え、私達のこと内緒にしとくっていうやつ教師陣に行き渡ってないの?)

アッシュ(あえて自分達側からばらしていくのか)

キマ「……」

335: 2015/09/08(火) 02:46:28.91 ID:zHD9BNoz0
13

--教室--

きーんこーんかーんこーん

調教師「それでは終わりにします。起立」

ゾンビ娘「礼、ありがとうございました」

ありがとうございましたー

調教師「それではツインテ様、恐れながらお先に失礼いたします」

ツインテ「あ、はは……」

どたどたどたどた!

キマ「どゆことー!? なんで調教師先生、ツインテちゃんのこと様つけて呼んでたのー!?」

ツインテ「え、えっと、その、これは……あ、遊び! 遊びなんですよそういう! 昔そういう、その……」

キマ「? そういうことができるくらい仲良いんだ?」

ツインテ「は、はい!」

キマ「また昔近くに住んでたの?」

ツインテ「は、はい!」

キマ「……レン先生は北の王国出身で調教師先生は黄金の王国だよね? 二人と家が近かったって、ありえないよね? どういうこと?」

ツインテ「」

アッシュ(いかん、ツインテの処理能力を超える一手だ!)

ポニテ「ひ、引越しが多くてね! ははは!」

キマ「あー、引越しかー!」

ツインテ「そ、そうなんですよ、うち引越しが多くて」

キマ「三人とも同じように引越ししまくってたってこと?」

ポニテ「……うん」

アッシュ(うんじゃねぇよ)

336: 2015/09/08(火) 02:47:54.60 ID:zHD9BNoz0
14

--教室--

きーんこーんかーんこーん

キマ「あ、次は……じゃあ、三人とも、これ終わったら一緒に昼ごはん食べようね!」

たたたたー

ポニテ「く……昼休みずっと質問攻めされたら隠し切れないかもしれない……」

アッシュ「全部バカ教師共のせいだ。俺達のせいじゃない。もうばらしちまおうぜ」

ツインテ「あはは……」

がらら

ツインテ「あ」

魔法使い「……」

ドアから入ってきたのは魔法使いだった。魔法使いはツインテ達を一瞥すると教卓まで歩いていき、

魔法使い「授業を始める」

と言った。

アッシュ(よし、やっとまともな奴が来た!)

ポニテ(っていうか教師陣全員知り合いパターンなの?)

キマ「……」

イバ「……」

337: 2015/09/08(火) 02:49:40.33 ID:zHD9BNoz0
15

--教室--

魔法使い「――であるからして、今や欠陥属性どころか雷、氷属性のものすら出生が確認されていない」

アッシュ(スキル、テレパシーもどき)

ぱりっ

ポニテ(お? なんか来たぞ?)

アッシュ(ツインテ、ポニテ、授業が終わり次第ダッシュで食堂まで行くぞ。これ以上あの女に根掘り葉掘り聞かれては心が休まらない)

ツインテ(あはは……です、ね)

ポニテ(どっかで三人で嘘固めとかないといけないねー。了解だよー)

ばちっ

魔法使い「俺の授業中にお喋りか?」

アッシュ「!」

アッシュのスキルは魔法使いによってかき消されてしまう。

魔法使い「俺の授業中は私語厳禁だ。それが例え、大気を震わさないものだとしてもな」

アッシュ「う、うぐぅ……」

338: 2015/09/08(火) 02:50:36.82 ID:zHD9BNoz0
16

--教室--

きーんこーん

魔法使い「授業はここまでだ」

とんとん

魔法使いは教科書を持つとさっさと出て行ってしまう。

がらっ

アッシュ(よし!)

キマ「ねー! ツインテ達ー、ごは」

アッシュ「風属性移動速度上昇魔法、レベル2!」

ぼっぼっぼっ

アッシュは自分とツインテとポニテに魔法をかけ、

どひゅん!

キマ「……ん?」

一瞬で教室から走りさった。

ゾンビ娘「! 強化魔法を三人同時に!?」

339: 2015/09/08(火) 02:54:36.73 ID:zHD9BNoz0
17

--廊下--

ダダダダダ!

アッシュ「ふん、今のがきんちょはろくに魔法を使えないと聞く! ならこの速度に追いついてこれるものはいまい!」

ポニテ「自慢げに逃げたことを語っとる……」

ツインテ「昼休み終わったらまた話聞きにきちゃいますけどね……」

ジッ

キマ「スキル、雷動」

どひゅん!!

アッシュ「!?」

アッシュ達を抜きさって目の前に現れたキマ。

ばちばちっ

キマ「もー、速いってば三人ともー。よっぽどおなか空いてたんだね。でもだめだよ廊下は走っちゃ!」

アッシュ(……もちろん全力で走ってたわけじゃ無かったが……最近のガキにしてはやるな)

キマ「……にしても、アッシュ君て、凄いね……魔法の展開速度、効果、両方とも凄かった! なんていうかやりなれてる感じ?」

アッシュ「……実戦で使ってたからな」

キマ「実戦? 何の?」

アッシュ「ん……さ、サーカスでだ」

340: 2015/09/08(火) 02:57:14.02 ID:zHD9BNoz0
18

--食堂--

がやがや

キマ「へー! 三人ともサーカスで働いてた時期があったんだー!? あ、だから色んな地域に行ったことがあるんだ? そこで先生達と出会ったとか?」

アッシュ「そ、そういうことだ」

ポニテ(アッシュ君……とっさにしては中々いい嘘だったよ!)

ツインテ(これでこの件は納得してくれたでしょうか……)

キマ「はー。でも世界中を旅してきたんだー? いいなー。キマもしたいなー冒険してみたいなー」

キマはアップルパイを食べながら窓の外を見ている。

ツインテ「キマさんもきっと出来ますよ」

ツインテが言う。

ツインテ「まずはこの学園を卒業してからになりますが、頼りになる仲間と一緒ならきっとどこにでもいけます。ボクでさえ出来たんですから」

ポニテ「……ツインテちゃん」

アッシュ「ふん」

キマ「うーん……でも許してくれなさそうなんだよなー。主におやじがー」

ツインテ「キマさんのお父さん、がですか?」

キマ「うん、うちのおやじめっちゃ頑固だから。ツインテちゃん達も見てわかったでしょ? おやじ無口だし私達のこと子供扱いばっかするんだよ。今は何にも出来ないんだから、素直に学業のことだけ考えてろって。まじむかつくよー」

アッシュ「……見てわかった? どういうことだ、俺達が知ってる人物なのか?」

キマ「ん? あぁ言って無かったっけ。私とイバのおやじ、さっきの先生の魔法使いなんだよ」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「え」」」

341: 2015/09/08(火) 02:59:16.06 ID:zHD9BNoz0
19

--食堂--

ツインテ(魔法使いさんの、娘さん……?)

アッシュ(そういえば子供が生まれたとか、そんなことを風の噂で聞いたような)

ポニテ(私のパパママのかつての仲間、の子供か……そう考えると同学年でおかしくないね)

アッシュ「ん? イバ、っていうのは誰だ?」

キマ「同じクラスにいたでしょ? やる気なさげな男子。あれが私の双子の弟」

イバ「双子の兄だ」

ツインテ「!?」

かつかつかつ

カツ丼を持ったまま隣を通り過ぎるイバ。

キマ「何言ってるの! 私がお姉ちゃんなんだから! 戸籍にだってそう書いてあるし!」

イバ「俺は認めてねぇ」

キマ「むー……!」

イバは離れた席に一人で座るとカツ丼を食べ始めた。

ツインテ「双子、ですか」

342: 2015/09/08(火) 03:04:16.33 ID:zHD9BNoz0
20

--食堂--

こつ……

キマ「そうなんだけど……性格も外見も全然私達似てないんだよ? イバはいつも無気力でやなことばっか言って来るし、ほんと嫌い」

ツインテ「そんな……姉弟なのにそんなこと言っちゃ駄目ですよ」

こつこつ

キマ「そんなこと言ったって仕方ないもん……。それより明日はゾンビ娘ちゃんとオーク太郎君も呼んで一緒にご飯食べようね? 同じクラスメイト同士、早く仲良くならないとだよ!」

こつ

ツインテ「そうですね。ボク達も早く皆さんのことを知りたいですし」

こつ……

?「――隣、座ってもいいかな?」

ツインテ「……!?」

キマ「あ、どうぞどうぞ空いてますからー……って、あれ? また見たことないお顔だ」

?「今日からこの学園に転入することになってね。E組に」

キマ「嘘ぉ!? 私達のクラスに!? 転入生三人だけじゃなかったんだ!?」

?「うん、よろしく頼むよ」

スッ

そう言って手を差し出した。

キマ「うん、こちらこそー!」

?「君達も、よろしく」

アッシュ「……ッ」

ポニテ「……あれー……?」

少女は頭部に羊のような巻き角が生えていた。
その姿、その振る舞い、その話し方……性別という違いさえ無ければまるで……

ツインテ「トリ、ガー……」

?改めメリガー「……メリガーだ。よろしく」

343: 2015/09/08(火) 03:05:10.38 ID:zHD9BNoz0
というわけでその後の短編です。またのんびり書いていきたいと思います。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

351: 2015/09/16(水) 02:00:57.52 ID:6NJ2ChRr0
遅くなりました、投下していきます。

352: 2015/09/16(水) 02:02:12.23 ID:6NJ2ChRr0
21

--グラウンド--

ざわざわ

女人狼「えー、急ですがもう一組の新入生を紹介します」

ツインテ「……」

女人狼に紹介されたのは二人の少女。



--過去、食堂--

ツインテ「メリ、ガー……?」

メリガー「そう。女トリガーだからメリガー。わかりやすい名前だろう?」

緊張しているツインテと、不敵な笑みを浮かべているメリガー。

キマ「ん? ん? もしかして……みんなって、メリガーちゃんと知り合いだったりするの!?」

アッシュ「いや……他人の空似だったようだ」(この世界のトリガーじゃあないな)

ポニテ「あはは、知人によく似ててねー。うちで農業してるお手伝いさんにー」

353: 2015/09/16(水) 02:03:02.99 ID:6NJ2ChRr0
22

--過去、食堂--

メリガー「へぇ、僕が農業? 選択肢が違うとこうまで変わるのか。興味深いね」

キマ「え? 僕? 選択肢?」

ツインテ「……」

メリガーの雰囲気はかつてのトリガーに酷似している。

ツインテ「メリガー、さん。貴女は何のためにここへ」

かつん

??「メリガー、勝手に出歩かないでもらおうか」

アッシュ「!」

メリガー「あー……ごめんごめん。ちょっと気になった人たちがいてさ。挨拶しておこうとね」

??「全く、好き勝手出歩かれるこっちの身にもなってみろ」

メリガー「ごめんよ、女騎士」

354: 2015/09/16(水) 02:06:19.37 ID:6NJ2ChRr0
23

--過去、食堂--

??改め女騎士「はぁ……」

鎧を身に纏った金髪ロングの少女は、困ったようにため息をついた。

ツインテ(この人はメリガーさんのお連れさんでしょうか? 綺麗な人……)

ポニテ「? あれ?」

アッシュ「おいお前それはなんだ?」

アッシュは女騎士が腰に差している剣を指差して言った。

女騎士「? 見ての通り剣だが?」

アッシュ「そんなことはわかっている。この学校への武器の持ち込みは禁止のはずだが?」

女騎士「あぁ……そういうことか。それなら特別に許可を貰っているから気にしないでくれ」

アッシュ「特別な許可だと……?」

女騎士「あぁ……しかしおかしな規則だな。目に見える武器だけを取り上げた所で、なんの意味も持たないというのに」

アッシュ「……何?」

女騎士「そうだろう? 我々が用いる魔法は、この剣に勝るとも劣らない武器になりうるものだ。もし危険だからという理由で武器を取り上げるのなら、魔法も同じように封印せねばならないはずだ……こんな穴だらけのルールに何の意味があるのか疑問が生じる」

アッシュ「……ルールはルールだ。それにここは食堂だ、武器を持って食事をする気か? その剣は預けて来い」

女騎士「……悪いがこの剣を手放すことは出来ない」

バチッ

ツインテ「あわわ……なぜか喧嘩モードに!?」

キマ「ちょ、ちょっと二人とも!? 冷静になろーよー!」

355: 2015/09/16(水) 02:07:39.71 ID:6NJ2ChRr0
24

--過去、食堂--

アッシュ「……」

女騎士「……」

メリガー「やれやれ、仕方ないね。じゃあ僕達は席を外そうかな」

がた

メリガー「……また後で」

かつかつかつかつ

二人は食堂から出て行った。

アッシュ「……」

キマ「ちょっとーアッシュくーん? なんかぴりぴりしすぎじゃない?」

アッシュ「うるさい……お前は知らないからそんなことが言えるんだ」

ポニテ「アッシュ君!」

アッシュ「あのトリガーが、連れて来た奴なんだぞ」

アッシュの拳は震えていた。

ツインテ(アッシュ君は今、あえて戦いに持ち込もうとしてた……)

356: 2015/09/16(水) 02:09:04.16 ID:6NJ2ChRr0
25

--グラウンド--

女騎士「私の名前は女騎士だ。前いた場所との環境の違いに少々戸惑っている。色々と不慣れな部分があると思うが、そこは多めに見て欲しい。よろしく頼む」

ぱちぱちぱちぱち

ツインテ「……」(確かにこの人もこの世界の人じゃない……)

女人狼「ではメリガーさんと女騎士さん、次の時間は近接戦闘の授業ですが大丈夫ですか?」

ポニテ(トリガーがたった一人一緒に連れて来た存在……)

女騎士「大丈夫だ、問題ない」

メリガー「僕は準備してないから今日は休ませてもらおうかな」

きーんこーんかーんこーん

すたすたすた

槍兵「ふあぁ……おー餓鬼どもー授業の時間だぜぇ……あり?」

ツインテ「あ、槍兵さんだ……」

槍兵(そういやそんな話を魔導長が言ってたっけか……)「あー、新入生だな、話は聞いてるぞ。俺のことは知ってると思うが近接戦闘担当の槍兵だ。よろしくな」

ツインテ「あ、よろしくお願いします」

アッシュ(ようやくまともな奴が来たか)

357: 2015/09/16(水) 02:11:20.26 ID:6NJ2ChRr0
26

--グラウンド--

槍兵「っと、準備体操は終わったし、じゃあとりあえず新入りどもの力を見ておこうか。お前らも見たいだろ?」

キマ「! 見たい! ポニテ達の実力!」

オーク太郎「見たい! ツインテちゃん達が汗塗れになっているところを!」

ツインテ「ひぇ」

アッシュ「……俺も知りたい相手がいる」

アッシュはすました顔をしている女騎士を見る。

槍兵「んじゃ新入生達は組み手だ。殺さないなら全力でやっていいぞー、危なそうなら俺が止めるけど」

ツインテ「な、なんて物騒な……」

槍兵「ちょい前なら氏ぬまで戦え、っていうところなんだがな、最近は蘇生の成功率が低くなっちまったからなぁ」

ゾンビ娘「それ以前に蘇生魔法の使い手はもはや希少ですからね」

ツインテ(そうなんだ)

358: 2015/09/16(水) 02:14:50.72 ID:6NJ2ChRr0
27

--グラウンド--

ザッ

アッシュ「さっき出来なかったからな。俺はお前とやりたい」

女騎士「ほう……」

ポニテ「あ、アッシュ君たらいきなり女の子に向かってやりたいだなんて!!」

キマ「ぷぷぷー! 最っ低ー!」

ポニテとキマがにやにやと笑っている。

アッシュ「うるせぇぞポニテ!」

ポニテ(っと、茶化すのはこれくらいにしておこうかな。女騎士ちゃんの実力が知りたいのは私もだしね……)

キマ「ねぇねぇポニテ! 組み手私とやらない?」

ポニテ「え、キマちゃんと? 新入生同士だけでやるんじゃないの?」

とポニテは槍兵の顔を見る。

槍兵「別にそんなこと言ってねぇぞ。一人休みみたいだしな、どのみち人数はあまるだろ」

ひらひらと手を振るメリガー。

ポニテ「そっかぁ。うん、いいよキマちゃん! やろっか!」

槍兵「手加減したれよ」

と槍兵はぼそりと呟いた。

359: 2015/09/16(水) 02:15:47.39 ID:6NJ2ChRr0
28

--グラウンド--

ツインテ「あれ?……ボクはどうしましょう……」

槍兵「どうする? 俺とやるか?」

ツインテ「う……なんか友達がいないから先生と組んでる感が凄いのでやめときます……」

槍兵「……」

ゾンビ娘「では私がお相手しましょう」

槍兵「ん、委員長か。よしツインテはゾンビ娘とだ」

ザッ

ゾンビ娘「よろしくお願いします、ツインテさん」

ツインテ「あ、よ、よろしくお願いします」

ぎゅ

ゾンビ娘が差し出した手を握るツインテ。その手は冷たかった。

オーク太郎「僕達はだべってりゃいいだけだから楽ぶひね」

イバ「だりー……」

360: 2015/09/16(水) 02:16:35.21 ID:6NJ2ChRr0
29

--グラウンド--

女騎士「武器はいいのか? 実技用の武器を貸し出してるのだろう?」

アッシュ「使い慣れてない武器を使うくらいなら無い方がましだ」

女騎士「ほう」(なるほど、戦い慣れてるな)

ざり

女騎士「正々堂々を尊ぶ私だが、そうまで言うのなら手加減はしない」

ずららっ

女騎士は剣を引き抜いた。

女騎士「師範、開始の合図を」

槍兵「俺は先生だ。んじゃ行くぞ、試合ー開始」

ドンッ!!

開始の合図とともに走り出すアッシュ。

アッシュ「毒属性生成魔法、レベル3」

ぎゅちちっ!

女騎士(一瞬でナイフを作り上げた?)

ドギィイイン!!

361: 2015/09/16(水) 02:17:16.77 ID:6NJ2ChRr0
30

--グラウンド--

ギンギンギンギィイイン!!

女騎士(っ、毒属性でよくもここまで硬度を維持できるものだ……よっぽど器用なんだろう、な!)

ギィン!

アッシュ(俺の斬撃を全て弾き返した!? く!)

ギギギギギギギギギギギギギギィン!!

アッシュ(こう、なれば、スキル、人頃し!)

ぎゅるん!!

女騎士「」

女騎士のタイミングを破壊し、予測不能の斬撃を放つ。

ズバシャアアアア!!

362: 2015/09/16(水) 02:18:38.79 ID:6NJ2ChRr0
31

--グラウンド--

キマ「何アレ……すっご……」

ポニテ(アッシュ君ガチやん……隠し通す気皆無やん)

ポニテとキマはアッシュ達の戦いを眺めている。

キマ「えへへ。あっちばっか見てちゃだめだね。じゃあやろっかポニテちゃん!」

ポニテ「そうだね!」

槍兵「はいじゃあこっちも試合開始ー」

キマ「いきなりいっくぞー! 雷属性全身強化魔法、レベル2!」

バチチッ!!

ポニテ「!」

キマの体は電撃を纏った。

キマ「そりゃー!」

ダンッ!!

ポニテ(わ、はや!)

ドガァアン!! ババチッ!!

キマの電撃を帯びた肘鉄がポニテの脇腹に命中する。

363: 2015/09/16(水) 02:19:25.51 ID:6NJ2ChRr0
32

--グラウンド--

どがぁあん!!

キマ「……わ、わぁ! ごめんポニテちゃん! アッシュ君達の戦いがあまりに凄かったからつい力入っちゃった! 大丈夫!?」

ぱんぱんっ

ポニテ「うん、大丈夫! キマちゃんやるねー! いい一撃だったよー!」

キマ「……あれ? 無傷?」

ポニテは立ち上がって埃を払う。

ポニテ(雷属性の格闘タイプか……面白い!)

ぼっ!

キマ「!」

ポニテは両拳に炎を纏う。

ポニテ「ならば私は火属性の格闘スタイルだ!」

364: 2015/09/16(水) 02:20:16.36 ID:6NJ2ChRr0
33

--グラウンド--

ガガッガガガガッ!!

キマ(!! ポニテちゃん、強い! 攻撃は重いし防御は硬い、反応も速いし判断もいい!)

ポニテ(戦いの無い時代に産まれてここまで動けるもんなんだ? 魔力が弱まった影響も感じさせないくらいのパワーだし!)

どがぁっ!!

キマ「!」

ポニテ「!」

二人の拳が同時にお互いの顔にヒットする。

ばばっ!

キマ「へへっ! やったなー? スキル、雷動!」

ぎゅん!

ポニテ「!」

しゅばっ

ポニテの後ろに一瞬で回りこんだキマは回転蹴りを放った。

どぎゃっ!

365: 2015/09/16(水) 02:21:11.83 ID:6NJ2ChRr0
34

--グラウンド--

どがっ! どががが!

ぎんぎんぎぎん!

ゾンビ娘「……どっちも凄い戦いですね」

ツインテ「えぇ、本当に……」

ゾンビ娘「では私達もそろそろ」

ツインテ「あ、はい」

ゾンビ娘「……」

ツインテ「……」

見詰め合う二人。

槍兵「おーいどうしたよ二人とも。とっくに開始の合図だしただろうが」

ゾンビ娘「いえ、私は回復タイプなのでツインテさんが仕掛けてくるのを待ってるんです」

ツインテ「ぼ、ボクも自分から行くのは苦手なので、その……」

ゾンビ娘「……」

ツインテ「……」

槍兵(平和だなぁ……)

366: 2015/09/16(水) 02:22:33.88 ID:6NJ2ChRr0
35

--グラウンド--

ががっ、ががががっ!

キマ(な、なんだろうこの感覚。上手いこと誘導されてるような感じ? なんだか数段上の実力者と戦ってるみた、い……!)

ポニテ(そういえば雷動ってメイドさんのスキルだよね? もしかしてヤミ君たちとも関係があるのかな?)

がががっ!

キマ(っ! なら……ちょっと本気だしちゃおうかな)

ズズ

ポニテ「!」

キマ「スキル、吸け!!」

イバ「やめろキマッッ!!」

びくっ!

キマがスキルを使おうとした瞬間、その戦いを見ていたイバが怒鳴って止める。

キマ「う……」

ズズ……

キマの力が収まっていく。

367: 2015/09/16(水) 02:23:33.90 ID:6NJ2ChRr0
36

--グラウンド--

ゾンビ娘「もしや……ツインテさんも回復タイプなのですか?」

ツインテ「は、はい!」

ゾンビ娘「弱りましたね……一応格闘術もそこそこ訓練していますが、自分から向かっていくのは得意ではありませんし……」

ツインテ「あはは……」

ゾンビ娘「ではこうしましょう。二組の試合で傷ついた彼らの治療で勝負するというのは?」

ツインテ「! いいですね、平和で! そうしましょう!」

ぽん、と手を叩くツインテ。

槍兵「組み手の意味とは……」

ズガァアアアアアン!

ゾンビ娘「っと、さっそく片方の試合が終わったようですね」

368: 2015/09/16(水) 02:24:41.91 ID:6NJ2ChRr0
37

--グラウンド--

しゅううぅう……

ポニテ「あははー! 私の勝ちだね、キマちゃん!」

キマ「うぐー、悔しい!!」

二人の服はボロボロになっている。

キマ(くー。あそこで吸血鬼化出来てたら負けなかったのにー……イバのバカー、変なところだけ石頭なんだから!)

ポニテ(やーびっくりしたなー。でも久しぶりに面白い戦いできてポニテちゃん満足!)

すたすたすた

ポニテ「やっほーツインテちゃん、そっちの組み手も終わったのー?」

ツインテ「いえ……私達は治療で戦うことになって」

ポニテ「なんじゃそりゃ」

ツインテ「それよりも、アレ見てください」

ポニテ「アレ?」

ツインテが指差す先には……

ポニテ「――え?」

369: 2015/09/16(水) 02:25:50.23 ID:6NJ2ChRr0
38

--グラウンド--

アッシュ「はっ、はっ、はっ……! ぐっ!」

女騎士「いやはや恐れ入った……まさかそんな隠し玉を持っていようとはね」

アッシュの首元に突きつけられる女騎士の剣。

アッシュ「俺が、負けた……だと?」

女騎士「善戦だったが、今度は武器を持った君と戦いたい」

シャララ

女騎士は剣を鞘にしまった。

ポニテ「……え? あの対人に関して最強クラスのアッシュ君が、負けた?」

ツインテ「え、えぇ……人頃しは使ってなかったんでしょうか」

槍兵「使ってたぜ、しっかりとな」

ツインテ、ポニテ「「!?」」

槍兵「その上で負けたんだあいつは。完璧にな」

370: 2015/09/16(水) 02:29:07.83 ID:6NJ2ChRr0
39

--グラウンド--

メリガー「まぁ無理も無い話さ」

ベンチに座って戦いを眺めていたメリガーが喋り始める。

メリガー「そこの少年は対人特効のスキルを持っていたんだろうけど、女騎士はそれの上位互換を持っているからね」

アッシュ「!?」

メリガー「彼女固有のスキル、屈殺……その効果は、ある特定種を除いた全存在に対して特効を持つ能力だ。それには無論、人も含まれる」

ツインテ「! そんな凄まじいスキルが……」

キマ「?? 何言ってるのかさっぱりだー?」

メリガー「対人と対人で戦えば、勝敗は素のスペック次第となる。が、女騎士はその点でも優れているからね。少年が敗れるのも当然というわけさ」

女騎士「やれやれ、全部披露する気か。今日は饒舌だなメリガー」

ポニテ(……確かに……この人、すんごい強い感じがしてる。まるで十代目さんやママみたいな……)

371: 2015/09/16(水) 02:32:21.04 ID:6NJ2ChRr0
40

--グラウンド--

ツインテ(あのトリガーがたった一人しか護衛を連れてこなかったのは、女騎士さんだけいれば十分だということなんでしょうか……)

女騎士「ふう、しかし久しぶりだなこんなに汗をかいたのは。まさか人同士の戦いでこうも魂が揺さぶられるとは思わなかった」

アッシュ「っ!」

さわやかな女騎士とくやしさから顔を歪ませるアッシュ。

とてとてとて

オーク太郎「女騎士ちゃんお疲れ様だぶひ。かっこよかったぶひよ。良かったらこのタオル使うぶひ」

女騎士「あぁこれはすまない、ありがたく使わせていただ…………え」

がくがくがくがくがくがくがくがくがくがく!!

オーク太郎「? どうしたぶひ?」

女騎士「ばっばばばばっ、ばかな!? なななななぜこんなところに、お、おおっおっオークがいるんんんあぁああああああ!?」

ぶわっ!

全身から汗を撒き散らして動揺する女騎士。

アッシュ「え」

オーク太郎「最初からいたぶひ。ってか失礼ぶひ、人種差別ぶひよ?」

オーク太郎は女騎士に近づいていく。

女騎士「お、おお、んオーーク!!」

ばっりぃいいいん!!

女騎士の鎧がなぜかぶっ壊れて服がびりびりに破けてしまった。

ポニテ「」

どさっ

女騎士「くっ…殺せ!」

いつの間にか女騎士は鎖でつながれていたという。

メリガー「……屈殺が効かない特定種ってのはもうわかったかな?」

372: 2015/09/16(水) 02:34:24.68 ID:6NJ2ChRr0
今回は送れちゃってごめんなさい……。


あと10年後が知りたいキャラがいたら教えてください。そいつらも話にからませますので。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

382: 2015/09/22(火) 02:34:58.60 ID:EgQ9qPzF0
41

--寮、食堂--

女騎士「くっ……まさかこんなことが起こりうるとは……幸先が悪いな」

ジャージ姿でトレイを持っている女騎士は、忌々しそうに遠くにいるオーク太郎を睨んでいる。

オーク太郎「……めっちゃ睨まれてるぶひ。僕何かしたぶひ? はぁはぁ」

イバ「喜んでんじゃねーよ」

ツインテ「女騎士さんはオークさんが苦手なんですか?」

女騎士「苦手なんてものでは無い。天敵だ」

ツインテ「て、天敵……?」

女騎士「話せば長くなるので今は割愛するが、私の世界では……」

がちむち「おぉツインテちゃん! 久しぶりだな、元気してたか!?」

マッスルひげ「俺たちゃ校長から話を聞いてからずっとこの日を楽しみにしてたんだ!」

屈強な男「さぁさぁ俺達の漢飯、食ってくんな!」

ポニテ「おじちゃん達……ここで再就職したんだ? 相変わらずツインテちゃんのこと好きねー」

キマ「え!? 寮監さん達とも知り合いなの!? どんだけー!?」

383: 2015/09/22(火) 02:36:08.72 ID:EgQ9qPzF0
42

--寮、食堂--

女騎士「」

からんからーん

突然女騎士がトレイを落としてしまう。

アッシュ「? おい、どうかしたのか? 震えてるぞ」

女騎士「あ、脂ぎった、男……あ、あぁ、あぁあああああああああああああああああああああ!!」

ばっりーん!

アッシュ「!?」

ツインテ「え……!?」

またしても女騎士の服がびりびりに破れ散り、どこからともなく現れた鎖が女騎士の手足を縛った。

がっしーーん

女騎士「くっころーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

屈強な男「……なんだこの危ないお譲ちゃん……」

384: 2015/09/22(火) 02:37:18.00 ID:EgQ9qPzF0
43

--寮、食堂--

ツインテ「と、とりあえずこれを!」

ツインテは上着を脱いで女騎士にかけた。

女騎士「くっ、無念……!」

唐突に舌を噛み切ろうとする女騎士。

アッシュ「いやいやいやいやいや」

がっ!

咄嗟に口に手を入れるアッシュ。

がぶり

アッシュ「ッ……おいこれはどういうことだメリガー。説明しろ」

メリガー「うん……まぁこれも屈殺のデメリットだよね」

肉団子を自分の皿に取りながら語るメリガー。

ポニテ「? 特定種がどうとかって奴?」

メリガー「うん。もうこの際だから全部言っちゃうけど、女騎士はオークとか蛮族とか脂ぎった臭そうな男は駄目なんだよね」

女騎士「もががもがが」

アッシュ「俺の指ごと噛み切ろうとするのやめてくれ」

がちむち達は自分の腋の臭いを確認している。

385: 2015/09/22(火) 02:39:25.74 ID:EgQ9qPzF0
44

--寮、食堂--

カチャカチャ

女騎士「くっ、一度ならず二度までも……屈辱だ」

女騎士はとても悔しそうな顔で食卓についている。

アッシュ「……なんだかとても難儀な能力だな」

ポニテ「あの三馬鹿おじちゃん達にも勝てないとか正直やばいよ。戦闘力5の雑魚だよ」

ツインテ「二人とも、そんな言い方したら駄目ですよ」

アッシュ「しかしあれだな、俺が女騎士に勝てなかったのは俺がイケメンだという証明にほかならない。イケメンとは罪なものだ……」

ポニテ「でたでたアッシュ君のナルシスト」

ツインテ「自慢はよくありませんよ?」

アッシュ「ゴメンツインテ」(……しかし、不思議だな。このメリガーというやつは。そんなにおいそれと女騎士の秘密を俺達にばらしても構わないのか? たった一人だけ連れて来た戦力なんだろう……?)

ずずー

メリガーは美味しそうに味噌汁を飲んでいる。

ばたーん!

レン「ツインテー! レンと一緒にご飯食べるにゃー!」

386: 2015/09/22(火) 02:42:01.65 ID:EgQ9qPzF0
45

--寮、食堂--

すりすりすりすり

レン「えへへーツインテー、ツインテー」

ツインテにべったりくっついているレン。

ツインテ「ちょ、レンさ……先生。引っ付き過ぎです。ご飯食べられないですよぉ」

レン「大丈夫にゃあ、レンが食べさせてあげるにゃあ」

じー

キマ「……本当に仲いいんだねーレン先生とツインテちゃん……ちょっとやばいくらいに」

レン「そりゃそうにゃー。レンとツインテは将来を誓い合った仲なのにゃー」

キマ「えっ!? って、女の子同士じゃだめですよそれー、あはははー」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

ツインテ「へ、変な噂たっちゃうからやめてください……先生と生徒がこんなことしてるってだけでもまずいんですよ?」

レン「にゃ、にゃあ……つ、ツインテに嫌われることだけはしたくないのにゃ……大人しくするのにゃあ」

そっとツインテから離れるレン。

ばたん

錬金術師弟子「あ、レン先生ここでしたか! 今日は研究発表の打ち合わせがあるって言ったじゃないですか! のんびりご飯なんて食べてる暇ないんですよ!!」

レン「げっ」

だだだだだがしっ

レン「うぅ……また明日にゃツインテー」

首根っこを捕まれてずるずると引きずられていくレン。

ポニテ「……何しに来たんだレンちゃん……」

387: 2015/09/22(火) 02:44:03.34 ID:EgQ9qPzF0
46

--寮、食堂--

カチャカチャ

ポニテ「しっかし、せっかく綺麗で強そうな鎧だったのにもったいなかったねー。ばらばらになっちゃってさー」

女騎士「気にすることは無い。あれは後三時間もすれば自己修復が終わるはずだ」

ポニテ「へ……?」

メリガー「所謂魔法武器の一つだ。女騎士の鎧は生きた鎧、非情に強力な防御能力を持ち、更に再生能力まで備えている」

ツインテ(魔法武器……今まで見たことがあるのは魔剣使いさんの魔剣と斧女さんの魔斧……くらいかな)

アッシュ「……」

メリガー「なんで、って顔してるね。アッシュ」

メリガーはにやにやとアッシュの顔を覗き込んでいる。

メリガー「少しだけど、僕がこの世界でやったことはもう知ってる。君が警戒するのはなんら不思議なものではない」

アッシュ「!」

キマ「? やったこと?」

388: 2015/09/22(火) 02:47:39.29 ID:EgQ9qPzF0
47

--寮、食堂--

メリガー「ならもう一つ言っておこうかな。彼女の持つ剣は聖剣と呼ばれるものでね。振るうだけで凄まじい力を発する。それは先ほど君も味わったと思うけど」

女騎士「やれやれ、人の秘密を全部言う気かメリガー……」

やれやれとため息をついて女騎士はナイフとフォークでたくわんを口に運ぶ。

メリガー「そしてそれにはリスクが伴う。そのリスクとは、聖剣と彼女の魂がリンクしていることだ」

ツインテ「リンク……?」

メリガー「あぁ。言わばこの剣は彼女の命そのものなんだよ」

アッシュ「!?」

女騎士「……完全に破壊されれば私も氏ぬ。真っ二つに折れたくらいじゃ氏にはしないが、かなりのダメージを受けることになる。ゆえに手放せないのだ」

ツインテ(だからさっき……)

メリガー「どうだろう? 僕達の強みと弱点を包み隠さず喋ったんだ。そろそろ警戒を解いて仲良くしてくれないかな?」

アッシュ「……」

ツインテ「アッシュ君」

アッシュ「――目的を、まだ聞いていない」

メリガー「……」

アッシュ「なぜこの世界に来たのか、その理由を聞けないうちは無理だ」

キマ(何言ってんだろうこの人たち。中二病かな)

389: 2015/09/22(火) 02:50:41.74 ID:EgQ9qPzF0
48

--寮、食堂--

メリガー「……」

アッシュ「言えないのか? ならやはり……」

女騎士「我が世界を……救うためだ」

ポニテ「え? 我が世界って、どういうこと?」

メリガー「……」

女騎士「それは……」

マッスルひげ「おいこら、食堂にこんなもの持ち込んじゃだめだろうが」



女騎士「え……」

マッスルひげは女騎士が腰に差していた剣を手に取った。

マッスルひげ「いいか? 食事をする場所にこんな無粋なものを持ち込んじゃだめだ。育ちが知れるぞ?」

女騎士「……」

マッスルひげ「……おいなんとか言って」

ばっきーん!!

女騎士「がはっ!?」

マッスルひげ「うぇえ!? こ、この剣勝手に折れたぞ!?」

マッスルひげが触ったせいで剣は真っ二つに折れてしまう。女騎士は盛大に吐血。

ポニテ「お、女騎士ちゃーーーーーん!?」

床に倒れる女騎士。そして当然のように衣服は破れていた。

アッシュ「生きんのハードモード過ぎんだろ!」

390: 2015/09/22(火) 02:51:32.20 ID:EgQ9qPzF0
49

--寮、105号室--

ぎぃ、ばたん

ツインテ「やれやれ大変でしたね」

アッシュ「あぁ全く……転校初日からとんでもない日だ……」

ツインテ「女騎士さん、あの後医師さんに介抱されてましたが……大丈夫だったんでしょうか」

アッシュ「さぁな」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ツインテ「あ、ボク達の荷物、届いてますね」

アッシュ「あぁ……」

391: 2015/09/22(火) 02:52:32.60 ID:EgQ9qPzF0
50

--寮、106号室--

ポニテ「はぁはぁはぁはぁ!!」

キマ「ポニテー、なぜ部屋につくなり涎垂らしながら壁に耳をつけてるのさー」

ポニテ「だって、だって!! ついに、ついにこの時が来たんだよ!!」

キマ「えー? 何言ってるか全然わかりませーん。っていうか、ツインテちゃんがなんで男のアッシュ君と一緒の部屋なのかなー。問題じゃないー?」

ポニテ「いやぁ、それがねぇ」



--寮、105号室--

アッシュ「……」

アッシュは一人ベッドの上に座って瞑想している。

しゃわー

アッシュ「……」

シャワーの音を聞くアッシュはどこかそわそわしている。

392: 2015/09/22(火) 02:54:38.36 ID:EgQ9qPzF0
51

--寮、105号室--

キュッ……

アッシュ「!」

きぃ、ぱたん

アッシュ「……」

ぎぃ……

ツインテ「ふぅ、いいお湯でした。お先にいただいちゃいました」

アッシュ「お、おおお、おう!」

バスタオルで髪の毛を拭きながら風呂上りツインテが現れた。

アッシュ(ぱ、パジャマ姿もどう見てもおにゃにょこ……)

ぽたぽたと鼻血を垂らすアッシュ。

ツインテ「あれ? 大丈夫ですかアッシュ君。鼻血出てますけど……」

393: 2015/09/22(火) 02:55:58.78 ID:EgQ9qPzF0
52

--寮、105号室--

アッシュ「あ、いや! これはなんでもない! なんでもないから気にするな! な!」

ツインテ「? そうですか?」

アッシュ(く、わかっていようともやはり可愛い! なぜ、なぜこんな可愛い子が)



--寮、106号室--

キマ「え……う、嘘、でしょ? だって、だって!」

ポニテ「嘘じゃないよ。ツインテちゃんは正真正銘、男の子だよ」

ポニテはそう言って再び壁に耳をつけた。

ポニテ(あの全てが溶け合って一つになった時、私達の間に秘密なんて何も無くなったんだ。信じがたいことだけど、ツインテちゃんは男の子だった。そして……)



--寮、105号室--

ツインテ「……」

アッシュ「じゃ、じゃあ俺も、シャワー浴びてくる」

ツインテ「――もしかして、ボクのせい、ですか?」

アッシュ「え?」

ツインテ「その、鼻血」


--寮、106号室--

ポニテ(アッシュ君の想いも、全て伝わってしまった……だから、やばいのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)

キャーキャー言いながら壁に顔をこすり付けるポニテ。

394: 2015/09/22(火) 02:57:28.22 ID:EgQ9qPzF0
53

--寮、105号室--

アッシュ「い、いや、これはその、これは、だな!」

ツインテ「ボクのこと……好き、だったんですよね?」

アッシュ「!?」

ベッドの端に座って髪を拭いているツインテは、少しだけ振り返ってアッシュを見た。

ツインテ「もしかして……今でも、好きでいてくれてるんですか?」

アッシュ「!!……っう……」

ダカダンッチャーラーラーラーラーラーラー(月9の主題歌っぽい音楽が流れ出す)

ツインテ「ボク……男の子、なんですよ?」

チャーラーラーラーラーラーラー

395: 2015/09/22(火) 02:58:58.17 ID:EgQ9qPzF0
54

--寮、105号室--

アッシュ「お、お……お、俺は、俺が好き、なのは、その……」

ツインテ「……」

心なしかツインテの瞳は潤んでいる。

アッシュ「ツインテは、ツインテだから、性別なんか……関係無い、わけで……」

ツインテ「……」

スッ

アッシュは、一歩足を前に踏み出した。



--寮、106号室--

ポニテ「ま、まじで!? まじでまじで!?」

キマ「ポニテきもーい」



--寮、105号室--

ぎしっ……

ツインテ「……」

アッシュ「だから、男だったと、しても!」

396: 2015/09/22(火) 03:01:14.31 ID:EgQ9qPzF0
55

--寮、105号室--

ばんっ!!

鬼姫「やっほーっす!! アッシュ君聞いて聞いてーー? あたしコロシアムで優勝しちゃったっすー! てへぺろー!!」

ツインテ、アッシュ「「!?」」

いきなりドアを開けて入ってきた鬼姫にびっくりする二人。

鬼姫「ほら見て見てトロフィーっす! 一番にアッシュ君に見てもらおうと思って西の王国から走ってきたんすよー!? おかげで汗臭いっすけどー!」

アッシュ「お、お、お前なんでいきなりっ! っていうかなんで俺の場所がわかったんだ!」

鬼姫「だって鬼姫ちゃんには地獄感覚シリーズがあるっすからね!」

ツインテ「……」

すっ

ツインテは二人の横をすり抜けてドアの所まで歩いていく。

すたすたすた

アッシュ「つ、ツインテ?」

ツインテ「……積もる話もあるでしょうから、ボクは席を外しますね」

にっこりと笑うツインテ。

ツインテ「ごゆっくり……」

アッシュ「」

ぱたん

アッシュ「ツインテ……?」

鬼姫「? どしたっすか?」


--寮、106号室--

ポニテ「あのバカ鬼!!」

だんっ!!

397: 2015/09/22(火) 03:02:52.22 ID:EgQ9qPzF0
56

--寮、屋上--

ひゅうぅうう

ツインテ「……」

がくっ

ツインテ「……ボクも……何してたんだか……」

真っ赤な顔を隠してしゃがみ込むツインテ。

398: 2015/09/22(火) 03:05:47.06 ID:EgQ9qPzF0
57

--研究室--

錬金術師弟子「……どうでしょうか?」

義足「いいね……さすがレンちゃんの研究チームだ。もうここまで形になっているとは思わなかった。魔力発動外部装置」

義足はグローブを眺めながら言う。

レン「義足の研究があったからこその成果にゃ。レン達はただそれを改良したに過ぎないのにゃ」

そう言ってレンは義足の義足を指差した。

義足「謙遜するなよレンちゃん。これは俺のこれより全然凄いものだ……俺の義足もこっちのやつに代えたいくらいさ」

レン「そう言ってもらえると頑張ったかいがあるにゃ……けど、研究員が生きていたならもっと早く、もっといいものが出来上がっていたのににゃ……」

義足「……彼は決して許されないようなことを沢山してきたんだ、恨みを持っているものも大勢いたことだろう。あの最後は……因果応報だ……まだ犯人は捕まってないんだっけ?」

レン「英雄頃しなら数年前からハイ達が追ってるにゃ」

義足「そうか……それならいつか解決するだろう。っと、重い話になってしまった。今日は素晴らしい日だというのにな。さぁ飲もうレンちゃん。いい店を取ってあるんだ。あ、そこの君も来たらいい」

錬金術師弟子「あ、はい! ありがとうございます!」

399: 2015/09/22(火) 03:06:53.35 ID:EgQ9qPzF0
58

--ジャングル--

じゃぷ、じゃぷ……

フードを被ったニ人組がジャングルの沼地を行く。

ずる……

?「ん……? 何かいるぞ! 気をつけろ!」

ばしゃっ!

アナコンダ「しゃああああああああああああああ!!」

??「!」

突如沼から飛び出してきたアナコンダが後ろを歩いていた女性に襲いかかった。

ガウガウガウーーン!!

女性は咄嗟に銃を抜いて応戦するも、アナコンダの分厚い皮の前ではほとんど意味をなさない。

アナコンダ「っしゃああああ!!」

?「へっ! 一瞬ひるみゃあ十分間に合う、ぜっ!!」

どがっ!!

前を歩いていた女性が割って入り、彼女の拳がアナコンダの頭をぶっ叩いた。

アナコンダ「しゃ、じゃあぁああああ!!」

ばしゃーーーん

?「っうし、丁度いいや。こいつを晩飯にしようぜ、ハイ」

??改めハイ「そうしようか、竜子ちゃん」

400: 2015/09/22(火) 03:08:09.46 ID:EgQ9qPzF0
59

--ジャングル--

ばちばち……

?改め竜子「むぐっ……かってぇなこいつ……味は悪くねぇけど……火通しすぎたか?」

ハイ「……」

竜子「ハイ、どした? 噛み切れないか?」

ハイ「あ、いや、大丈夫です。ちょっと考え事してただけだから。あむ……うわ、かたっ」

竜子「……」

がさごそ

斧女「ここにいたんですか。探しましたよ?」

傭兵「もうなんか食べてる! いいなぁ!」

ユニコーン「ひひん」

鳥や果物を手に持ってジャングルから現れた斧女達。

竜子「おっせーぞお前ら……これ食わせてやるから早くそれ食わせろ」

401: 2015/09/22(火) 03:10:16.20 ID:EgQ9qPzF0
60

--ジャングル--

ぱちぱち

傭兵「あちっ! あちちっ! 竜子姉さんこれ熱いし硬い! これ本当は食えないっしょ!?」

竜子「文句言うな食えるっつーの。コレ全部お前のだから残すなよ!」

傭兵「嘘っしょ!? 無理ですってこれ、俺の体積よりでかいじゃないっすかー!」

ぎゃーぎゃー騒いでる竜子と傭兵。

斧女「ハイ? どうかしましたか?」

ハイ「……いえ、ちょっと」

竜子「あぐっ。お、やっぱり鳥はうめー。ほれハイ、食え! 美味いぞ、んっ!」

半ば強引に鳥の足を押し付ける竜子。

ハイ「あ、ありがとう竜子ちゃん」

傭兵「……どうかしたんすか? ハイ姉さん」

ハイ「いえ……」

ハイは鳥の足を受け取った。

ハイ「……結局人間て、守る価値が無かったのかもって、思っちゃって」

406: 2015/09/29(火) 02:37:38.04 ID:BDSmkPTf0
61

--ジャングル--

ぱちばち

斧女「……」

傭兵「え、あ、あの……」

気まずい雰囲気を察した傭兵がおろおろとする。

竜子「……人を頃したからって、頭のねじはずれちまったのかハイ?」

ハイ「!」

傭兵「え……?」

斧女「ちょっ、竜子さん、その言い方はひどいと思います」

竜子「うるせー! たかが十数人頃したくらいで気が滅入って自分を見失ってんじゃねぇぞバカハイ。さっきの言葉には……失望したぞ」

ハイ「……ッ……ごめん……」

竜子は荒々しく肉を噛み千切る。

竜子「いいか? 私らは暴徒を鎮圧したに過ぎない。それだけだ。任務なんだ。気に病むな」

斧女「……」

竜子「お前が守った人間達だろ? 守った奴がそんなこと言ってどうするんだよ……今大事なことは、この事件を一刻も早く解決することだろう?」

ハイ「……ごめん、竜子ちゃん」

407: 2015/09/29(火) 02:38:18.98 ID:BDSmkPTf0
62

--ジャングル--

ぱちぱち……

四人はそれぞれ寝袋の中に入って睡眠をとっている。

ハイ「……ぐす」

斧女「……」(この二年間、私達は人間の闇を見すぎてしまった……特にハイさんは、今まで人を頃すような生き方をしてこなかっただけに、反動が大きいのでしょうね……)

がさごそ

斧女は寝袋から抜け出して近くの川へ行こうとする。

ゴーレム「も?」

斧女「しっ、少し歩いてくるだけです。見張りをしっかり頼みましたよ」

見張り用のゴーレムと会話し、みんなを起こさないように静かに移動する斧女。

たしたし

斧女(それにしても……今回の事件は異常過ぎる……)

408: 2015/09/29(火) 02:40:58.80 ID:BDSmkPTf0
63

--教室--

女人狼「では今回はこのユニオンについて勉強していきましょう。皆さんは既に知っていることと思いますが、ユニオンとは、魔導長校長先生が世界平和のために設立した組織の名称であり、この学校の名前でもあり、私達が住むこの町の名でもあります」

アッシュ(知っている。お母様はとんでもないものを作り上げる気だと言っていたな。世界のパワーバランスを壊しかねない、と)

女人狼「ユニオンは世界の中心に位置しており、ありとあらゆる知識や技術が集まる場所です。完全に中立の立場ですが、世界平和に害無す存在には容赦しません」

ポニテ(来るときに見たけど、この町は色んな王国の特徴があったね。東とか北の民族的なものも売ってたし)

女人狼「世界平和のためにユニオンが作り出した特別部隊があります。その名はガーディアン。世界各地に派遣されるガーディアンに所属しているのは歴戦の勇士達です。有名なところでは十代目さんが所属しています」

おおー、と生徒達から声があがる。

ツインテ(あの戦いで勇者の力を失ったのに今でも頑張ってらっしゃるんだ……凄い……)

409: 2015/09/29(火) 02:42:47.36 ID:BDSmkPTf0
64

--校長室--

ぼりぼりぼり

魔導長「あ、この煎餅とっても美味しいなの。お土産ありがとうなの!」

姫「でしょー? えへへ、持ってきて良かったー!」

参謀長「姫様、そちらの方達にもお渡しするべきですよ」

姫様「あ、ごめん! もちろんみんなにあげるつもりだったんだよ? はい!」

鬼姫「わーありがとうっすー!」

代表「僕は結構」

ぼりぼりぼり

魔導長「で、手紙を読んでここにきてくれたっていうことは、つまり……」

姫様「うん! すっごい素敵な話だと思ったよ! 私達も参加したい!」

鬼姫「あたしも賛成っすー。お仲間に加えてくださいなー」

代表「まぁ僕に拒否権無いですからね」

三人の顔を見る魔導長。

魔導長「……嬉しいなの。みんなが一緒になってくれたらユニオンはもっと素敵なことが出来るなの!」

参謀長(ユニオンの核である魔法王国に、我が黄金王国、それに砂漠の風と亜人保護団体が加わるとなれば……世界最大規模の団体が出来上がる。それを誰に舵取りさせるつもりなのかな、魔導長)

ばたん

賢者「はぁ、はぁ……すみません遅れました」

参謀長(!? 王国の、賢者……だと?)

410: 2015/09/29(火) 02:44:48.26 ID:BDSmkPTf0
65

--校長室--

魔導長「へ……あ、いえ、ようこそおいでくださいましたなの。どうぞお席に」

賢者「いやぁかたじけない。ふー……」

どさ

参謀長(小国である魔法王国や黄金王国が集うのとはわけが違う……あの王国の王がなぜこんな所に……?)

魔導長「……賢者さん、それでどういったご用件ですなの?」

賢者「はい、この手紙、読ませていただきました」

ぱらり

賢者は胸ポケットから手紙を取り出した。

魔導長「それは……」

賢者「世界中の知識を集め、世界中の力を纏め、世界を守るための組織……あなたの考えたプランはとても素晴らしいものだと思いました」

参謀長(まさか)

賢者「ので、我が王国も、ユニオンの一部として世界に貢献したいと考えています」

参謀長「!?」

魔導長「あ、はは……いやぁ……大変嬉しい申し出なんですが、正直……そう言ってくれるとは思っていませんでした、なの」

参謀長(じゃあなんで手紙出したんだよ)

411: 2015/09/29(火) 02:48:16.62 ID:BDSmkPTf0
66

--校長室--

魔導長「だって五大国の、しかもあの中央王国ですから……ですが、いいのですか?」

賢者「といいますと?」

魔導長「ユニオンには、王という概念がありません。人々が考え、人々が動かしていくんです。つまりユニオンの一部となるということは貴方の王位は……」

賢者「そのことですか。はい、承知しています。私が王位から退くだけで民が豊かになる可能性がある……安いものです」

魔導長「」

参謀長(確かに最終決戦移行、人口が減った王国は衰退を始めている。あの巨大な国を回しきれなくなっているんだ……それをユニオン加入でどうにか出来れば、ということか)

魔導長(これだけの集まりだ、広い土地が欲しい。だから王国にも条件付で土地を貸してもらえないかと思ってたけど……まさか王位を捨てる覚悟でここに来るなんて……)

ぎゅ

魔導長「ありがとうございます賢者さん。その申し出に感謝いたします! ぜひ賢者さんには重要なポストについていただいて」

賢者「え、いや私は失われた王国に行こうかと思っているので」

魔導長「へ」

412: 2015/09/29(火) 02:50:16.55 ID:BDSmkPTf0
67

--校長室--

魔導長「失われた王国……つまり、表舞台から姿を消す、という意味ですなの?」

参謀長(脱落者の受け皿……表に居場所が無くなった者達の土地、か……)

賢者「はい。私は前の時代の人間です。これからの世界は若者達が作るべきだと思いましてね。私は引退しようかと」

魔導長「そう、ですか……いや、人様の覚悟をどうこう言うつもりはないですなの。ですが、少し寂しくなりますなの」

賢者「はっはっはっ」

参謀長(後は他人任せとはちょっと無責任過ぎやしないか……まぁいいか。それこそ他人の都合だ。何にせよ、これでユニオンは強力な存在となる)

ぼりぼり

姫「姫ちゃんむずいことよくわかんないからお煎餅食べる」

鬼姫「鬼姫ちゃんもー」

413: 2015/09/29(火) 02:51:05.10 ID:BDSmkPTf0
68

--北の王国--

ぼろっ

召喚士「ここも、でやんすか」

北の王「……深刻やなぁ、土地の衰弱が」

北の王は土を手にとって調べている。

召喚士「元々北の王国の国土は寒くてやせた土地ばっかだったでやんす。魔力を使った魔力農法で今までなんとかなってきたでやんすが……」

北の王「魔力が枯渇し始めている今となっちゃあ、それもうまくいかんなぁ……」

召喚士「どうするでやんす? 北の王」

北の王「……今度の集会でちっと言ってみるわぁ……でないと」

どさっ

北の王「この国の未来があかん」

414: 2015/09/29(火) 02:54:40.40 ID:BDSmkPTf0
69

--東の王国--

東の憲兵「こらー! 待てー!!」

盗人「はぁ! はぁ! はぁ! あいてっ!!」

どさっ!

転んだ盗人を捕まえる東の憲兵。

東の憲兵「大人しくしろこの馬鹿者!……む」

盗人「くそ! 離しやがれ!!」

じたばたじたばた

東の憲兵「またか……」



--東の王国、塔--

その様子を塔の窓から眺めている魔剣使い。

魔剣使い「……」

学術師範「どうかしましたか? 魔剣使い殿」

魔剣使い「いや、また物取りが出たようで」

学術師範「またですか……困り者ですね、あの避難民達には」

魔剣使い「……避難民のせいと決まったわけでは」

学術師範「いえそうに違いないですよ。最終決戦の時にこの国に避難しに来たまではいいが、迷惑にもそのまま居ついてしまった者達……一生懸命働いてくれるのならばなんの文句も無いのですが……この国に馴染もうとせず犯罪ばかり……治安が悪化する一方だ」

魔剣使い「……」

学術師範「人道的がどうとか言う前に追い出してしまうべきでしたな」

415: 2015/09/29(火) 02:57:36.33 ID:BDSmkPTf0
70

--西の王国--

義足「あははは! やった! ついに成功したぞ! わははは!」

施設の中を駆けまわる義足。

ガチャリ

包帯女「うぃーす義足ー。飯持ってきてやったぞー、ってうわ!?」

がばっ!

扉を開けて入ってきた包帯女に抱きつく義足。

包帯女「ちょ!? おおおおま、一体何を!?」

義足「聞いてくれ包帯女! ついに出来たんだ!!」

包帯女「あ?」

義足「この前魔法王国で……あぁ今はユニオンか? で、そこで研究発表を行ってきたんだけど、色々参考になるものがあってさ」

包帯女「ん……?」

義足「帰ってきてからずっといじくってたんだ。そして今日ついに! これを完成させることが出来たんだ!!」

ぼっぼっぼっ

包帯女「……なんこれ」

義足「蒸気機関さ!」

包帯女「……だからなんそれ」

義足「魔力が枯渇した後の世界を支配する力さ!!」

包帯女「……なんか機械っぽいけど、すっごいちゃっちいっていうか、テンテンを見た後だとガラクタにしか見えないっていうか」

義足「」

包帯女「あ、ごめん……」

422: 2015/10/06(火) 01:55:37.13 ID:3JwcXkF20
71

--ユニオン--

ひゅうううぅう

賭博師「わりぃな調教師。親父が倒れちまったから東の王国に戻らなきゃならなくなった……」

調教師「え……」

賭博師「親父がいなくなったら、跡を次ぐのは俺じゃなくて弟だ。でもあいつ一人で国を背負えるとは思えないんだ……だから俺が支えてやらないと」

そう言って賭博師は手紙を見せた。それは弟から賭博師に当てた手紙だった。

調教師「……わかりました。そういうことであれば私もついていきます。貴方とならどこへでも」

賭博師「さんきゅーな。でもお前は駄目だ」

ぽん

賭博師は調教師の肩に手を置いた。

調教師「え……」

賭博師「だって、教え子がいるってーのに中途半端に投げ出しちゃ駄目だろう? それにお前にはツインテ様や姫ちゃん様についていて欲しいんだ」

423: 2015/10/06(火) 01:59:23.20 ID:3JwcXkF20
72

--ユニオン--

調教師「っ……ですがご主人様、ユニオンに身を置くものは他の国の政治に関わってはならないというルールがあります。だからご主人様がそちらに行ってしまったら、我々は……」

賭博師「……スパイだと疑われるから、今後は気軽に会えないかもしれないな」

調教師「……」

賭博師「ま、そこは魔導長さんに上手く頼み込んでみるさ。同じ釜の飯を食った仲だ、ある程度はわかってくれるはず」

調教師「ですが……」

賭博師「……そんな顔するな。俺達がそれぞれ違う陣営に所属することで生まれるメリットもある。俺とお前がいる陣営……つまり東の王国とユニオンが仲良くしやすくなるだろ?」

調教師「……」

つー

調教師は無言で涙を流す。

賭博師「またさ、会いに来るから」

調教師「はい……どうかお体に気をつけて……」

424: 2015/10/06(火) 02:02:49.22 ID:3JwcXkF20
73

--宇宙、母艦--

びこーんびこーん

テンテン「……」

テンテンは母艦の窓から寂しそうに地球を眺めている。

ウーノ「本当に、よろしかったのですか?」

テンテン「……何がだ?」

ウーノ「親しくしていたご友人がいたのでしょう? これからの人類のためにと、行き過ぎた科学技術を全て回収したその真意は理解できます。でも貴方自身まで身を隠す必要があったのでしょうか……」

テンテン「私達もオーバーテクノロジーだ。人の傍にいれば確実になんらかの影響が出てしまう」

コンコンと自分の頭を叩くテンテン。

ドゥーエ「まぁ……私は別にいーけどさー。地上のみんなとはお別れだけど、お姉ちゃん達とは一緒だしー」

トーレ「……」

テンテン「……そう悲観するな。彼らが発展し、自力でここに来れるようになれば、また会える」

ウーノ「……そうですね。彼らの何世代後になるかはわかりませんが……」

テンテン「……それに、この流れはまずい気がするんだ」

ウーノ「え?」

425: 2015/10/06(火) 02:05:07.58 ID:3JwcXkF20
74

--王国--

賢者「そうか……やっぱりそうなるか」

軍師「はいだぜぃ……すみませんだぜぃ」

賢者「民を思っての決断だと、理解してくれているんだろう?」

軍師「もちろんですだぜぃ。民を第一に考える賢者様のお考えは素晴らしいと思うだぜぃ。でも王国としての文化や歴史が終わってしまうのが我々には耐えられないんだぜぃ……我々は、王国を守るためにこの体になったのだから……」

賢者「……そうか」

踊子(まぁ議会でも荒れに荒れましたからねぇこの話題~。なんの犠牲も無しに決着着くわけないですよね~)

賢者「……これからどうするつもりなんだ? あてはあるのかい?」

軍師「とりあえず……世界中を三人で見て回ろうかと思っているだぜぃ。自分達の生きる道を、自分達で探したいのだぜぃ」

賢者「そうか……」

すっ

賢者は立ち上がり、手を差し出した。

軍師「……お世話になりましたぜぃ。あの時のことは、本当に申し訳ないだぜぃ」

ぐっ

賢者「あれは仕方ないことだったんだよ、気にしないで。今までこの国のために、ありがとうね」

軍師「……だぜぃ」

軍師、オーズ、フォーゼが下野した。

426: 2015/10/06(火) 02:06:54.07 ID:3JwcXkF20
75

--教室--

キーンコーンカーンコーン

女人狼「それでは今日はここまでです。では委員長、号令を」

ゾンビ娘「はい。起立、礼」

ありがとうございましたー

どてっ

ポニテ「うげー……授業無理ー勉強嫌いーもうやだーお菓子食べたいー」

机に突っ伏してむくれるポニテ。

ツインテ「そうですか? ボクは皆さんとお勉強できて楽しいですけど」

ポニテ「ぶー、ツインテちゃんは優秀だからそう思うんだよー。さては勉強できない人の気持ちがわからないなー?」

ツインテ「ボクだってそんなに出来るわけでは……」

アッシュ「……」

ポニテ「てか気に食わないのはアッシュ君だよ! なんだよこの前の小テスト満点て! 脳筋だと思ってたのに!」

アッシュ「失礼な奴だな。俺は戦闘でも頭を使って戦っているつもりだぞ? 勉強も戦闘とさほど変わらん、パターンを見つけてしまえば全貌が見えてくる」

ポニテ「それ歴史の暗記物とかにも当てはまるのー?」

427: 2015/10/06(火) 02:10:08.68 ID:3JwcXkF20
76

--教室--

がやがや

キマ「ねーねーポニテ達ー、移動しなくていいの? 次体育だよ?」

がたっ!

ポニテ「体育! そうだ、次は私が給食の次に好きな体育だった!! 急いで着替えなきゃー!」

ポニテは体操着袋を持って立ち上がる。

ツインテ「そうですね、ボク達も早く着替えちゃいましょう」

そういって上着に手をかけるツインテ。

キマ「ちょっ、わーーーー!! 何やってるのよツインテちゃん!? 女子は女子用の更衣室があるんだからそっちで着替えなきゃ駄目じゃない!!」

ツインテ「え……でもボク男の子なので」

にっこり笑うツインテ。

キマ「はうっ! かわいいっ!!……って、まだ言ってるの!? こんなに可愛い子が男の子なわけないでしょ!? さぁ早く立って!!」

ツインテ「え、あの!」

ポニテ(どうしよう……これ。どうしたらいいんだろ。信じられないけど、私達はもう真実知っちゃってるしなぁ……)

アッシュ(ツインテは、男!……だが男子が見ている前で着替えさせるわけにはいかないのもまた事実!! あぁ、見せてたまるのものか、あの玉肌を!!)

ぽたぽた

ポニテ「アッシュ君鼻血」

428: 2015/10/06(火) 02:12:23.34 ID:3JwcXkF20
77

--教室--

とことこ

オーク太郎「別にいいじゃないブヒかぁ君達。本人が男の子だって言ってるんブヒからさぁ」

キマ「オーク太郎! あんたツインテちゃんの裸が見たいだけでしょ!? 汚らわしい、この豚野郎!!」

オーク太郎「まさかクラスメイトにそこまで言われるとは思わなかったブヒ」

頬を染めるオーク太郎。

女騎士「そうだぞツインテ。女子なら女子らしく女子部屋で着替えるべきだ。わけのわからないことを言ってみんなを困らせるのは感心せんぞ」

アッシュ「……」

大事な部分は鎖で隠れているものの、素っ裸で壁に繋がれている女騎士がカッコイイ声で言った。

オーク太郎「まぁ痴女はほっといて」

女騎士「くっころ!」

オーク太郎「人を外見で判断するのは良くないことブヒよ。君達はちゃんとツインテちゃんの性別を確認したんブヒか? 憶測でものを言っているのならばそれは、差別と変わらないブヒ」

アッシュ「まさかの正論!」

429: 2015/10/06(火) 02:15:18.44 ID:3JwcXkF20
78

--教室--

キマ「え、確認、って……だって……」

じーっとツインテの股間を見るキマ。

さっ

キマ「……普通、人の股間なんて、見ないよね……?」

ポニテ「え? まぁ、そうかな?」

ツインテ「当たり前です!」

オーク太郎「ツインテちゃん」

ぽん

オーク太郎はツインテの肩に優しく手を乗せる。

オーク太郎「さぁツインテちゃん? 自分が男だと言い張るのなら、おちOちんをみんなに見せて証明するブヒよ」

全員「「「!!??」」」

ツインテ「な、なななななに、何を言ってるんですかぁあああああああ!? ひ、人にあ、あそこを見せるなんて、そんなの変Oさんじゃないですかっ!!」

オーク太郎「ブヒヒヒ、誤解を生んだツインテちゃんが悪いんブヒよぉ! なーに、気兼ねすることなんてないブヒ。生えてようが生えていまいが、僕にとっちゃあどっちもご褒……げふげふん。さぁ勢いよくいってみようかぁ……さぁ、さぁさぁさぁ!!」

ツインテ「た、たすけてーーー!!」

ドゴオオオオオオオオン!

ポニテとキマのダブルエルボーがオーク太郎の後頭部を直撃し、床に叩き付けた。

しゅぅうううう

ポニテ「さいってー」

キマ「しね豚」

430: 2015/10/06(火) 02:18:06.43 ID:3JwcXkF20
79

--教室--

オーク太郎「それが氏なないんブヒなぁ……」

ゆらり

ポニテ「!?」(え!? 今私思わず手加減無しでやっちゃったんだけど!?)

メリガー「ほう、あの豚君もレアスキル保有者だったか……」

女騎士「なんだと!? それは一体どういうことなんだ!? 説明しろ、メリガーーー!!」

ゴゴゴゴゴゴ

オーク太郎「ブヒヒ……レアスキル、超ドM体質!……攻撃を受けるとその数値分の体力が回復すると同時に、攻撃力や防御力などの各種ステータスが強化されるんだブヒッヒッヒッ」

アッシュ「無敵じゃねぇか!」

ポニテ「どうやったら勝てんだこれ!」

431: 2015/10/06(火) 02:19:24.91 ID:3JwcXkF20
80

--教室--

バツン

その時ツインテのリボンが弾け飛んだ。

アッシュ「! この演出は!!」

ポニテ「久々の!?」

ガシッ!!

オーク太郎「……ぶひ?」

メギギギギギギギ!!

アイアンクローを決められるオーク太郎。

オーク太郎「ぶ、ぶひっ!?」

ツインテ「……てめぇ……調子こいてんな?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

キマ(え、何コレ!? なんかツインテちゃんが一気にヤンキーみたいに!?)

オーク太郎(何コレ!? あのおしとやかなツインテちゃんからは想像もできない行動ブヒ!! でも……これはこれでありブヒ!)

ぐしゃっ!

オーク太郎「ぶひょっ!?」

ぽたぽた!!……べちょ

ツインテのアイアンクローがオーク太郎の頭部を握りつぶし、教室中に脳みそが飛び散った。

432: 2015/10/06(火) 02:20:24.63 ID:3JwcXkF20
81

--教室--

オーク太郎「ぼ、暴力には屈しない、屈しないブヒよぉ! はぁはぁ!」

アッシュ(な!? 瞬間再生だとぉ!?)

ポニテ(もはやドMとかそういうレベルの話じゃない!!)

ツインテ「てめぇ……中々面白い体質してるじゃねぇかよ。え? 豚公ー」

ぎゅるり

ツインテはドリル型の触手を展開する。

ちゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!

オーク太郎「ぶっひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

ツインテ「痛みを回復に? ぶっ壊されても瞬時に回復? はっ、じゃあお前……無限に食える豚肉ってことじゃねぇーか!!」

アッシュ(いやちょっとそれは……)

ポニテ(さすがに亜人種は無理ってゆーか……)←何食わぬ顔

ツインテ「はっはぁー! 喜べてめーら! 今日は豚肉食い放題だーーーー!」

きーんこーんかーんこーん

キマ「あ、授業始まった」

433: 2015/10/06(火) 02:21:09.56 ID:3JwcXkF20
82

--体育館--

槍兵「あれ……? なんでお前らだけなの? 他のやつらは?」

ゾンビ娘「おかしいですわね……ちょっと確認してきます」

イバ「先生ー、今日はもう休講にしよーぜ」

槍兵「……先生悲しいぞぉ」

434: 2015/10/06(火) 02:23:12.49 ID:3JwcXkF20
83

--体育館--

槍兵「やっと集まったかお前らは……」

ツインテ「ち、なんで俺が餓鬼のままごとに付き合わなきゃなんねーんだよ」

ジャージ姿のツインテが耳をほじりながらぼやく。

ツインテ「ん? おー、久しぶりじゃねぇか槍兵。元気してたか? お?」

どかっ

挨拶代わりに槍兵のケツを蹴るツインテ。

槍兵「……ツインテ。先生のお尻は蹴るもんじゃないぞ?」

ツインテ「あー?」

アッシュ「すまん、槍兵……先生。気にしないでくれ。頼むからそのまま進めてくれ」

ポニテ「ツインテちゃんにも色々あるお年頃なんだよ」

槍兵「……まぁいいや、じゃあさっそくだが時間も押してることだし始めようか」

??「先生ー、いつになったら始まるんですか?」

アッシュ「む?」

ザンッ!

槍兵の後ろにいたのは九人の学生達。
先頭に立っているのは褐色肌の少年。

槍兵「あぁすまんな。やみ」

435: 2015/10/06(火) 02:24:55.70 ID:3JwcXkF20
84

--体育館--

??改めやみ「別に先生に謝られるようなことじゃないです。でも時間は有限ですからね、やるならさっさとやりたいじゃないですか」

キマ「げ、やみだ……」

ポニテ「え? やみって……あぁ、ブラちゃんの子供かぁ!! いつの間にか大きくなってー! むぐっ!」

アッシュがポニテの口を塞ぐ。

アッシュ(これ以上説明がめんどくさくなるような言動は慎め!)

キマ「え? 今ブラちゃんって……もしかしてブラおばさんのこと知ってるの!?」

アッシュ「あ、あぁ、えーと……いや? 今のはちOちんブラブラって言っただけだ。だよな? ポニテ?」

ポニテ(よりによってそんな言い訳やだよ!)

女騎士「知り合いなのか? キマ」

キマ「まぁ……家族ぐるみの関係だから知り合いっていうか……でも」

やみ「久しぶりだな、キマ、イバ」

イバ「……」

キマ「私は、あいつ好きくない。っていうか、A組自体がめっちゃ嫌い」

女騎士「A組……?」

キマ「通称エリート組。私達のこと見下してんのよ」

436: 2015/10/06(火) 02:27:49.85 ID:3JwcXkF20
85

--体育館--

キマ「もー先生ーどういうことー? なんでA組がいんのー?」

槍兵「今日はA組と合同で体育をしようと思ってな。お前らもたまには他の組と遊びたいだろ?」

キマ「やだー! どうせやるならBとかCとかD組とがいいーーー!!」

槍兵「お前……高校生にもなってわがまま言うんじゃないよ。しかも向こうに聞こえるようにさ……」

くすくすくす

やみ「ま、実力差を考えればそう思ってしまうのも無理ないことだよキマ。でも大丈夫さ、何やるにせよちゃんと手加減してレベルを合わせてやるからさ。な?」

あははははと笑うA組連中。

キマ「むっかー! ほら見たでしょ!? 自分達が優秀だからってあーなんだよ!? むかつく! まじむかっ!」

ポニテ「あはは、はしたないよキマちゃん、あんなこと言われたくらいで取り乱しちゃったらさ。たかだか15,6年程度しか生きてない子供のいうことで一々怒ってちゃ大人げないよ?」

アッシュ「あぁ全くだポニテ。これくらいで腹を立てては向こうの思う壺だ。まぁだが口の利き方がなっちゃいないのは事実、人生の先輩として社会の厳しさをガキに教えてやるのもやぶさかではない。屋上へ行こうぜ、久しぶりにキレちまったよ」

青筋を立てている二人。

イバ(お前らだって高校生じゃん)

槍兵(そういや見た目これだけど実年齢30くらいだしなこいつら)

437: 2015/10/06(火) 02:32:00.02 ID:3JwcXkF20
86

--体育館--

やみ「で? 何をやるんです? 槍兵先生」

槍兵「ん? ドッジボールだ」

ポニテ「ってもうドッジボールの時点で仲良く出来るわけないじゃんバカー!! 最初から憎しみ合わせるつもりの球技選択だろ駄目槍男ー!!」

槍兵「あっはっはっ。たまには感情むき出しで暴れまくってぶつかり合え。若いうちはそういうのも必要だと思うぞ」

キマ「うっせーオヤジー!」

槍兵「口悪っ!」

アッシュ「……ふ。だがチャンスと言えばチャンスだ。俺達の実力を奴らの体に直接教え込んでやれる」

ポニテ「! なるほど……アッシュ君、悪い顔してますなぁ」

アッシュ「ふはは真顔なんだけど?」

ゾンビ娘「仕方ありませんね……あまり乗り気ではありませんが、これも成績に入るんですよね?」

槍兵「もちろん入るぞ。勝った方には中間テストに20点+してやるよ」

ゾンビ娘「では――やるしか無いですね」

とことことこ

オーク太郎「あのーアッシュ君、ポニテちゃん」

アッシュ「なんだ豚野郎」

ポニテ「何豚太郎君」

オーク太郎「オーク太郎ブヒよ。それよりあれ見るブヒ」

ポニテ「ん?」

ツインテ「……」

いつの間にかツインテの髪型はウェーブになっており、体育館の隅で静かに体育座りをしていた。

オーク太郎「なんかさっきまた感じ変わっちゃったブヒ。ツインテちゃん大丈夫ブヒか?」

アッシュ「うん、外野やってもらおう」

438: 2015/10/06(火) 02:33:29.95 ID:3JwcXkF20
87

--体育館--

わーわー

やみ「さぁて始めますか」

蜂娘「やみ……ジャンプボールは私にやらせて……」

やみ「構わないよ。よろしくね蜂娘」

ブーン

ポニテ「よぉーし、ジャンプボールは私やるから!」

腕まくりして前にでようとするポニテの肩を掴んで止める。

アッシュ「下がってろポニテ、俺がやる」

ポニテ「にゃんだと!?」

アッシュ「瞬発力なら俺のほうがある、だろ?」

ポニテ「っ……ぐぅ!」

キマ(あれ? あのポニテが簡単に引いちゃうんだ? つまりそれだけアッシュ君の実力を認めてる感じか)

槍兵「よし、じゃあ始めるぞー。あ、掛け声とかわからんからいっせーので投げるからな」

439: 2015/10/06(火) 02:35:04.10 ID:3JwcXkF20
88

--体育館--

槍兵「ほいじゃいっ、せーの、せっ!」

ひょい

槍兵が投げたボールに飛びつく二人。

ぱしっ!

蜂娘(! 速い!)

一瞬早くボールを手にしたのはアッシュ。

蜂娘(なら)

ちょん

完全に遅れた蜂娘はボールを抱え込もうとするアッシュの手にかすかに触れた。

アッシュ「!」

ダンッ!

着地する二人。

アッシュ「……」

蜂娘(悪いけど……この時間はずっと麻痺っててもらうよ……)

とろり

蜂娘の爪から何かの液が垂れた。

アッシュ「……なるほど、なんでもありってことか」

蜂娘「……あれ?」

やみ「!」(蜂娘の毒を受けたはずじゃ……?)

アッシュ「悪いが、毒は効かないぜ?」

ドシュッ!!

蜂女「!」

アッシュが投げたボールをかろうじて蜂娘はかわすが、

どかっ!

後ろにいた男子にヒットしてしまう。

440: 2015/10/06(火) 02:36:06.17 ID:3JwcXkF20
89

--体育館--

ポニテ「ひゅー! アッシュ君かっーくいいーー!」

キマ「うお! A組からボール取っただけじゃなくあっさり一人倒しちゃった!?」

アッシュ「……」

キマ「あれ? ボールは?」



やみ「ここさ」

どかっ!!

オーク太郎「ぶひー!」

てんてんてん!

槍兵「はいオーク太郎アウトー」

キマ「え? え? え?」

アッシュ「あいつめ……味方に当たったボールが地面に落ちる前に回収しやがった」

ポニテ「結構速く動くねー。あれも多分メイドさんのスキルだよね」

ゾンビ娘(え、この二人見えてたの?)

441: 2015/10/06(火) 02:37:27.13 ID:3JwcXkF20
90

--体育館--

アッシュ「ポニテ、ボールを渡せ」

ポニテ「仕方ないなぁ、はいよ」

ぱしっ

アッシュ「……」

じゅるり

アッシュはボールの表面に毒を塗りたくった。

アッシュ「さぁこれで、捕球自体ができない、ぞ!」

ボッ!

やみ「あおーーーーーーーーーーん!」

ぶわっ!

アッシュが塗った毒が弾け飛んだ。

アッシュ「!」

ぱしっ

やみ「捕球? 簡単だけど?」

アッシュ(遠吠えか……あれは魔力を遠ざける力があった)

ポニテ(番犬ちゃんの!!)

槍兵「あぁ、ちなみに言っておくがこいつを知らない新入生諸君。やみは次世代最強だから」

445: 2015/10/13(火) 02:48:34.81 ID:L1mEbGyP0
遅れました。それでは投下していきます。

446: 2015/10/13(火) 02:49:14.06 ID:L1mEbGyP0
91

--体育館--

わーわー

ポニテ「うーん、みんなで球技やるのも楽しいもんだねー!」

アッシュ「まぁ、たまには新鮮でいいな」

やみ「はぁはぁ……」(あいつら……全然当たらない……ってか疲れてない)

蜂娘(他のやつらは全員外野においやったのに……しぶとい……)

キマ「あの二人、すごー!」

イバ「……」

オーク太郎「A組の猛攻に耐え続けてるぶひ……ダメージ的には僕も大丈夫なんぶひが」

槍兵「おーいお前ら後五分で授業終わるぞー。もし決着つかなかったらチャイムが鳴るまでに内野が多かった方の勝ちな」

ポニテ「ありゃま。このままだとうちらの負けだねアッシュ君」

アッシュ「だな。仕方ない少しだけ本気出してやるか」

キマ「何その格好いい台詞!!」

447: 2015/10/13(火) 02:50:51.65 ID:L1mEbGyP0
92

--体育館--

蜂娘「なんだと……? E組のくせに、生意気……!」

ぼっ!

ポニテ「じゃあ私が取るよー!」

やみ(ばかめ、蜂娘の超回転を込めたボールが簡単に取れるものか)

ぎゃりぎゃりぎゃりいいいいいいいいいいん!! しゅぅうう……

蜂娘「!」

やみ「なっ」

ポニテ「あててー、手の皮向けちゃったよ……」

やみ(あっさり、取りやがった……)

アッシュ「よくやった、そら貸せ」

ポニテ「えー? 私取ったんだよー? いいとこどりするのー?」

アッシュ「そうだ、ほら早く」

ポニテ「むー……」

ぽい

ポニテはむくれながら両手の修復に入る。

アッシュ「さて、と」

アッシュは軽く構え、やみに向けて投げた。

448: 2015/10/13(火) 02:51:39.29 ID:L1mEbGyP0
93

--体育館--

ふわっ

やみ(なんだこれは、一体どんな球がくるかと思えば山なりボールじゃないか)

やみはそれを取ろうと手を伸ばす。だが、

ぼす、てんてんてん……

やみ「――え」

蜂娘「!? や、やみ!? なんでそんな簡単なボールを!?」

やみは捕球に失敗してしまう。

やみ「な、え!?」

ポニテ(ノーアクションで発動してタイミング壊しちゃうこれ、やっぱりチートだよね。球技やればいいのに)

449: 2015/10/13(火) 02:52:55.33 ID:L1mEbGyP0
94

--体育館--

バシッ!!

A組女子「あう!」

キマ「! 学年三位まで倒した! 後一人だ!!」

オーク太郎「いや、これはもう終わりぶひよ」

キマ「え?」

オーク太郎「今のでコート内の人数は2対1。それに加えてボールは今アッシュ君が持ってるぶひ。そして残り時間は1分くらい」

ゾンビ娘「内と外でボールを回していれば勝利ですね」

オーク太郎「そういうことですぶひ」

女騎士「お、オークの癖に解説するだと……!!」

オーク太郎「偏見も甚だしいぶひよ……」

キマ「でも……あのエリートのA組に落ちこぼれの私達が勝っちゃうなんて、凄い……!」

450: 2015/10/13(火) 02:54:51.50 ID:L1mEbGyP0
95

--体育館--

A組女子「うそ……私達が負けちゃうの? あのE組に!?」

A組男子「E組に負けるだなんて、親になんて言ったらいいんだ……」

やみ「……」

アッシュ「今日まで知らなかったがひどい言われようなんだな我がクラスは」

ポニテ「でも格上って言われてる人たちをぶっ倒すのはなんであれ、気持ちがいいもんだよねー」

蜂娘「……どうした? 来ないのか?」

蜂娘は捕球の構えを取っている。

蜂娘「このまま時間切れで終わっていいのか……? ちゃんと決着をつけたいと思わないのか?」

キマ「へーんだ! 勝てばいいのよ勝てばー! 二人ともー! 気にしないでボール回しでいいよー!」

オーク太郎「ぶひひひ! そうぶひよ、欲しいのは勝ったという結果だけ。僕らがどれだけ活躍したかとかどうでもいいぶひ!」

ゾンビ娘「……ほとんど役に立てなかったですからね私達」

女騎士「くっ! せめて近くにオークがいなければ私は!!」

メリガー「なんにせよもう後三十秒ほどかな」

451: 2015/10/13(火) 02:56:22.38 ID:L1mEbGyP0
96

--体育館--

アッシュ「ほれポニテ、投げていいぞ」

ぽん

ポニテ「え? わーい、最後譲ってくれるの? ならー、今までのこと許してあげよっかなー!」

キマ「!? ちょっ、もうちょっとで終わりなんだからパス回しでいいじゃん!」

アッシュ「駄目だ、完璧に勝つ」

キマ「ちょー!? もし取られて反撃されたら!」

アッシュ「俺達E組は、A組に完全勝利するんだ」

キマ「」

オーク太郎「ぶひっ!」

ポニテ「ほー……そこまで言うかアッシュ君。じゃあ、このポニテちゃんも全力で投げちゃおかな」

みしっ

蜂娘「え?」

ポニテが魔力を込めると空間にひびが入ったような音がした。

452: 2015/10/13(火) 02:58:37.39 ID:L1mEbGyP0
97

--体育館--

ポニテ「そぉー、れっ!」

どぎゅんっ!!

蜂娘「!?」

どぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!

蜂娘「がっ」

受け止めようとした蜂娘は、そのまま外野まで吹っ飛んでいった。

どがーーーん!!

やみ「」

キマ「」

蜂娘「げ、げほ……」

イバ「……氏んだんじゃねぇか?」

きーんこーんかーんこーん

槍兵「ほい、じゃあE組の勝利だ。負けたA組は後片付けしてから教室に戻るよーに」

やみ「っ!? 何事も無かったかのように……ぐ」

オーク太郎「ぶひ? そんな特典が。これは嬉しい誤算だぶひ」

さりげなく倒れた蜂娘の傍でしゃがみ込むオーク太郎。

453: 2015/10/13(火) 03:01:47.61 ID:L1mEbGyP0
98

--教室--

キマ「っっかっったーーー! わはーい!」

ゾンビ娘「キマさん、うるさいですよ。もう少し静かにお願いします」

キマ「でもでもA組に勝ったんだよ!? 委員長は嬉しくないの?」

ゾンビ娘「それは……嬉しいですけど、少々複雑な気持ちといいますか」

キマ「なーにごちゃごちゃ言ってるんだね、素直に勝利を喜びなさいよ!」

オーク太郎「全くキマちゃんのA組コンプレックスは激し過ぎるぶひ。いくらA組を落とされたからって」

キマ「な、何をー? 今頃他のクラスだって噂してるに決まってる。これは世紀の大勝利なのよ!? 喜んで何が悪いの!」

わいわい

アッシュ「……」

ポニテ「なんてゆーか……平和だねぇ……」

アッシュ「こんなことで一喜一憂とは羨ましいな」

ポニテ「うん、私は本気で羨ましいよ。アホなことで心の底から笑えなくなっちゃったもん、最近」

アッシュ「……これは驚いた。お前はいつまでも昔と変わらないものだと思っていたぞ」

ポニテ「ねー、私もそう思ってたよ。歳は取りたくないねー」

アッシュ「……」

ツインテ「……ボク達はまだ十分若いですよ」

ぽんっと二人の肩に手を乗せて微笑むツインテ。

アッシュ(あ、元に戻ってる)

454: 2015/10/13(火) 03:03:25.78 ID:L1mEbGyP0
99

--教室--

メリガー「面白い見世物だったね。やー、この世界は平和だ平和だ」

女騎士「うむ。若人が青春の汗を流して人生を謳歌している。いい世界だ」

アッシュ「……なぁメリガー。お前の目的は何だ? そろそろ話したらどうだ?」

メリガー「うーん……ここじゃあちょっと言いづらいかなぁ」

ぱしーん

アッシュ(スキル、テレパシー。これならどうだ?)

ポニテ(うえ!? アッシュ君いつのまにそんな……あぁ、保存か)

ツインテ(自分が受けた魔法やスキルを一時的に自分の中に保存しておくアッシュ君の特性……)

アッシュ(一度使ったら無くなるがな。で、どうだ? 誰にも邪魔されずに語れるようにしてやったぞ)

メリガー(ふむ……そうだね。ここまでしてもらって悪いし、じゃあ話しちゃおうかな)

女騎士(……)

メリガー(それについてはまず、僕達のルートについて話しておかなきゃならないね)

455: 2015/10/13(火) 03:05:37.37 ID:L1mEbGyP0
100

--教室--

メリガー(僕達のルート。そうだね、仮にこの世界をAルートとして、僕達がいた世界をZルートとしようか。Zルートはね、今滅びの道を辿りつつあるんだ)

アッシュ(……お前が滅ぼそうとしているんじゃないのか?)

メリガー(やだな、そんなことあるわけないじゃないか。僕はね、かなり早い段階から人間側に付いたトリガーなんだよ)

ポニテ(へー。でも本当かなー?)

女騎士(彼女の言っていることは本当だ。我々はメリガーの庇護の下、長い間平和を享受してきた。言わば彼女は守り神のようなものなんだ)

ツインテ(人側についたトリガー……ということは、魔王が存在しない世界、ということになるんですか?)

メリガー(いやいるんだなこれが。ただし魔力管理機関としての存在だけどね)

アッシュ(魔力管理機関? なんだそれは)

メリガー(君達が使う魔力。これは感情にかなり影響されるものなんだ。特に負の感情ほど魔力に力を与えてしまうというのはもう知っているかな?)

ツインテ(一応は)

456: 2015/10/13(火) 03:10:47.91 ID:L1mEbGyP0
101

--教室--

メリガー(実はこれを何も考えなしに使い続けるとね、世界中に悪意の魔力が蔓延していってしまうんだよ。魔力を使えば使うほど世界が汚れていく。それを防ぐために浄化装置である魔力管理機関が必要となるのさ)

ツインテ(そうだったんですか……この世界で言うと、精霊様達がそれに当たるんでしょうか?)

メリガー(かな? 多分魔王にもやらせていたと思うけどね)

アッシュ(……)

メリガー(話を戻そう。僕はね、ずっと人間の味方をしてきたんだ。でも、いつも人間達は滅びの道を探り当ててしまうんだよ)

女騎士(五年ほど前に、ある国が魔王を利用して兵器を開発しようとした。それが引き金となって世界中の色々なバランスがドミノ倒し敵に崩れてしまったんだ。そのせいで今、Zルートは世界大戦の真っ只中にある)

ツインテ(世界、大戦……?)

メリガー(人頃しの祭典さ。僕を作った元々の人類もそんな歴史を持っていた。不思議だね……歴史は繰り返してしまうんだよ。何も知らないはずなのに、結局同じような道を辿ってしまうんだ)

女騎士(……メリガーが言うには、今のZルートの世界も、過去に何度か世界大戦で滅びたという……そして今回の戦いは星の許容を越える可能性がある、と)

ツインテ(!!)

メリガー(だから僕は人類を救う手がかりを得るために別ルートを旅することにしたんだ。でもこの世界も似ている……この世界を取り巻く嫌な流れ……きっとこの世界も、近いうちに世界大戦が始まる)

457: 2015/10/13(火) 03:14:37.00 ID:L1mEbGyP0
102

--ユニオン、会議場--

魔導長「では次の議題に移らせていただきますなの。っと、北の王様?」

北の王「ちょっとよろしいでっしゃろか?」

北の王は手を上げて魔導長に尋ねる。

魔導長「どうぞなの」

北の王「もうしわけない。いや、我が国のことなんですがね? 昨今の魔力不足のせいで畑が痩せ細ってしまってるんですわ。うちは元々寂しい土地ですし、これから冬がきます。今の状態だと食料に不安があるんですわ……」

魔導長「なるほど。それは大変なの。では全体で助け合って行きましょうなの。足りない分の食料は話し合ってみんなで援助させていただきますなの」

北の王「あぁありがとうございますありがとうございます、その申し出、心より感謝いたします……でも心苦しいのですが、それとは別に土地を少し割譲してはいただけないでっしゃろか」

魔導長「土地、なの?」

北の王「はいな。備えあれば憂い無し、って言いますやろ? いざと言う時のために凍らない土地と港が欲しいんです。やはり自分の所の食くらい、自分でなんとかしたいんですわ」

西の王(……当然の考えだな。自分達の胃袋をずっと捕まれている状態ではまともに外交など出来まい。だが……)

魔導長「近い港、と言うと……隣接しているのは東の王国ですなの」

魔導長はちらっと新東の王の顔を見る。

新東の王「……事情は把握しました。心中お察し申し上げます」

北の王「お、おぉ! では」

新東の王「支援はもちろんさせていただきます。ですが、我が国としても領土を失うわけにはいかないのです」

458: 2015/10/13(火) 03:17:32.74 ID:L1mEbGyP0
103

--ユニオン、会議場--

北の王「し、新東の王……」

新東の王「すみませんが……今は国内のことで手一杯なのです。領土のことでは相談に乗ることができません。食料支援はなんとかしますので……」

鷲男「無理を言ってはなりませんよ北の王殿。いきなり領土を分けろと言っても、それは簡単な話ではありません。しかし心配することは無いですよ、あの最終決戦で生まれた我らの絆の力。助け合って行こうではありませんか」

魔導長「……ですなの。北の王様もそれでいいなの?」

北の王「えぇ……いきなりとんでもないことを言ってしまいました。申し訳ないです。支援感謝いたします」

すとっ

北の王(……東の王国からあぶれた奴が北の王国の国境付近で暴れまわってることをカードにもっと強く出るべきだったか? いや、今の流れはそういう流れではないわな……)

西の王(しかし……一気に力をつけてきたな、ユニオン。各国の王が集まる話し合いの場で議長を務めるようになるとは……これではないがしろにできんぞ……)

鷲男(ユニオン……まさか王国まで飲み込むとは思わなかったが……さてどうなることか)

魔導長「では続いて、邪風について話し合いたいと思います」

459: 2015/10/13(火) 03:18:48.85 ID:L1mEbGyP0
104

--砂漠の町--

不審な男「ぎゃる、ぎゃるるるるるっる!!」

ハイ「! またですか!?」

口から泡を吹き、視線の定まらない不気味な男はありったけの力を込めてハイに殴りかかった。

ふぉん

ハイ「ッ!」

しかしハイがかわしたことで男の拳は岩に命中、

どがぁあああん!!

男は自分の右腕もろとも岩を砕いた。

ぼたっぽたっ

竜子「完全にいかれてやがる。ハイ、出来ないならどいてろ! 私がやる!」

ハイ「ッ! 殺さない、手は……?」

バッ!

飛び掛る男。

竜子「ねぇよ!!」

どぐしゃあああああああああああああああ!!

竜子の拳が男の胸部を貫いた。

不審な男「ぎしゃああああああああああああ!!」

竜子「!? まだ生きて」

ズパッ

その時男の首が飛んだ。

460: 2015/10/13(火) 03:20:19.41 ID:L1mEbGyP0
105

--砂漠の町--

どさっ、ぶしゅーーーー

護衛姉「危ないところでしたね」

ひゅひゅっ、ちん

護衛姉は刀を振って血をはらった後鞘へと収める。

斧女「護衛姉妹! やっと合流ですか、待っていましたよ」

護衛妹「すみません、色々と調べたいことが多かったので」

ハイ「……」

ハイは男の氏体から目を離せずにいる。

護衛妹「……蘇生は無駄ですよ、ハイ。彼も最悪のドラッグ、デビルを使用しています」

ハイ「ッ」

竜子「……しっかしめんどくせぇもんを作ったもんだぜ……本人の意識をぷっつんさせて操るくそったれな薬物……しかも解毒や解除の魔法でどうにかできねぇからぶっ頃すしか止める方法がねぇなんてよぉ……!」

どんっ

竜子は地面を叩く。

461: 2015/10/13(火) 03:24:03.43 ID:L1mEbGyP0
106

--砂漠の町--

こそこそ

傭兵「あ、あの、終わりました?」

竜子「あっ! てめー何隠れてんだ!! 一体何のために高い金払って雇ったと思ってんだぼけっ!!」

傭兵「えぇえ!? 俺の仕事は主に道案内っすよ!? 俺悪くないです!」

竜子「うるせー! 殴らせろ! むしゃくしゃしてんだ!」

傭兵「氏にますって! 竜子さんバカ力なんですから!」

わーぎゃー!

護衛姉「誰です? あれ」

斧女「貴女達二人に偵察を頼んだ後に雇った傭兵君です。ここまでの道案内を頼みました」

護衛妹「……部外者を巻き込むのは関心しません。彼のためにも、機密のためにも」

斧女「ユニオンの紹介ですからそこは安心だと思います。さて」

ざっ、ざっ、ざっ

斧女は傭兵の所へと歩いていく。

斧女「傭兵君、約束のお金です。ここまでありがとう」

じゃらっ

傭兵「え? 契約だと東の丘までですよ? まだかなり遠いですけど、ここでいいんですか?」

斧女「いいんです。ここからの旅はいっそう危険なものとなるでしょう。だから貴方は先に帰りなさい」

竜子「……ふん、元々この二人が合流するまでって計画だったんだよ。だからお前の仕事は終わり……っとにもうハイ! いい加減しゃきっとしやがれ」

ぐいっ

ハイの腕を掴んで強引に立たせる竜子。

462: 2015/10/13(火) 03:27:37.85 ID:L1mEbGyP0
107

--砂漠の町--

傭兵「ではお気をつけてー!!」

竜子「おう! お前も気をつけろよなー! 次会ったら絶対殴るかんなー!」

傭兵「ははは……」

手を振って分かれるハイ達と傭兵。

ひゅおぉおぉおぉぉおお

傭兵「……」




--砂漠--

ざっ、ざっ、ざっ

竜子「はあっ!? おいおい、東の王までやられたってのか!?」

護衛姉「はい。表向きは病気で倒れたということになっていますが、確かです。まだ東の王が氏んだことは外には漏れていません」

斧女「名のある人物だけでも、研究員に賢帝に東の王……まさかこんな大事件になるとは」

ハイ「……ッ……私のせいだ」

護衛妹「ハイ、いいえ、貴女のせいではないです。まさかこんなことになるとは誰も予想がつかなかったはず」

ハイ「いえ私のせいです!! 私が、あの時非情になりきれていたら……」

竜子「……バカ言え、あの面子で取り逃したんだ。それだけ奴は一筋縄じゃいかないってことだろ」

ハイ「奴隷王……」

463: 2015/10/13(火) 03:29:20.95 ID:L1mEbGyP0
108

--赤の山、邪風本拠地--

伝達係「ご報告いたします! 今傭兵からテレパシーによる連絡が届きました」

王の間では四人の男女がテーブルを囲んでいた。

奴隷王「おう。やつはなんだって?」

伝達係「はっ! 現在捜査隊を尾行中、目標は予定通りのルートを進行、とのことです!」

青狼将軍「奴隷王様、どういたします?」

黄太将軍「ふふ、あっしに任せていただければすぐに片付けますよぉ」

赤薔薇将軍「相手は歴戦の英雄達なのでしょう? 貴方一人で片付けられるのかしらぁん」

黄太将軍「なぁんだとぉ!?」

奴隷王「うるせぇい」

ぴたっ

奴隷王「まだ泳がせておけと伝えろ。いいな」

伝達係「は、はっ!」

奴隷王「くっくっ。バカかお前ら……せっかく楽しい戦争を始めるんだ。まだ準備が整っていないうちに始めちゃ早いだろうがよ。なぁ」

奴隷王は後ろを振り向く。
そこには貼り付けにされた人造魔王がいた。

464: 2015/10/13(火) 03:30:42.57 ID:L1mEbGyP0
109

--ユニオン、会議場--

魔導長「奴隷王が作り上げた悪の組織、邪風。ここに新たに、賢帝さんが率いていた教団の残党が加わりました」

西の王「! 亜人保護団体と砂漠の風の構成員も大分参加したと聞くが、それが本当なら今やその規模はかなりものになるな」

鬼姫「てへへー。面目ないっすー。好きなところに行っていいとあたしが言ったばっかりにー」

北の王(しれっとこの会議に参加してるし)

鬼姫「しかし早い所潰した方がいいと思うっすよ、あれかなり危険っす。そのうち手がつけられなくなるっすよ」

魔導長「わかってるなの。そのためにガーディアンチームを派遣しているなの……皆さん、邪風はかなり危険な組織なの、ぜひ皆さんのお力も借りたいなの」

鷲男「われわれにとっても脅威です。喜んで協力させていただきますよ」

西の王「同感です」

北の王「はいな」

新東の王「……了解です」

465: 2015/10/13(火) 03:31:41.70 ID:L1mEbGyP0
110

--寮、屋上--

メリガー「どうやらこの世界でもことは起きそうだね」

女騎士「……結局こうなるのか」

メリガー「Zルートを救う手がかりがあるかと期待したのが間違いだったかもしれないね。人は同じような歴史を作るように出来ているんだ……」

女騎士「……この世界の人はいい人達ばかりだ。出来ることなら我らと同じ道を歩んで欲しくない」

メリガー「やれやれ、自分の世界も大変だっていうのに……君は全くお人よしだね」

女騎士「メリガーに似たのだ」

メリガー「……僕はお人よしなんかじゃないさ。ただの臆病者だ」

ぎぃ

オーク太郎「あ、お風呂空いたブヒよ二人とも」

女騎士「己オーーーーク!!」

ばっりぃいいいいん!!

オーク太郎「……ここ脱衣所じゃないブヒよ?」

474: 2015/10/19(月) 21:39:52.02 ID:aatYBLIb0
111

--教室--

キマ「んもー、すっごい気分いい! 今日も登校中にみんなから噂話されちゃってんだぜ! えへ! あいつらA組に勝ったんだってよー、って!」

にまにましながらポニテにくっつくキマ。

ポニテ「そんなに凄いことなんだ? ただドッジボールで勝っただけなのにー」

キマ「ドッジボールとはいえ勝利は勝利! A組は最強の集団でね、この一年間、全ての分野で頂点を取り続けてきたんだよ。そして何かある度に他のクラスは見下されてきたんだ……だからこそ、他のクラスの子達からしたらA組に一泡吹かせた私たちは勇者みたいなもんなんだよ!」

ポニテ「ふーん?」

キマ「鼻ほじるな!」

ツインテ「凄いんですね、A組の皆さん。でも、本当にどの分野でも勝てなかったんですか?」

キマ「うぐ……そりゃあねぇ。あいつら才能あるし勉強しまくりで頭もいいしルックスいいし、悔しいけど性格以外は完璧なのさ……」

アッシュ「だがお前ら双子の方が強いだろ」

キマ「……え?」

イバ「……」

シーンと教室が静まり返る。

475: 2015/10/19(月) 21:41:00.82 ID:aatYBLIb0
112

--教室--

ゾンビ娘「……」

ポニテ「だよねー、私も思ったー。あれだけ戦えるキマちゃんがA組の子達に簡単に負けるとは思えない」

キマ「……まぁ吸血鬼化を使えれば、結構マシに戦えるのかもしれないけど……」

イバ「……俺達はまだ使いこなせないんだ」

ポニテ「あー……」

アッシュ(無くてもいい線いくとおもうがな)

キマ「きっとおやじの血が混ざったからだなー、上手く制御できないの」

ツインテ「へ?」

キマ「だってママは滅多にやらないけど、吸血鬼化を使いこなしてるもん。だから多分おやじのせいなんだよ」

アッシュ「おいおい魔法使い……先生、のせいって、そりゃないだろ」

キマ「あるもん。だってあの人本当駄目駄目だし! 家にいてもずーっと無口だし魔法もろくに使わないし! 昔は凄かったとかお母さんは言うけどさ、それ絶対嘘に決まってるもん!」

ポニテ(可哀想だな魔法使いおじちゃん……)

476: 2015/10/19(月) 21:43:26.44 ID:aatYBLIb0
113

--教室--

ツインテ「あまりお父さんのことを悪く言うもんじゃないですよキマちゃん。魔法使いさ……先生、は本当に凄い活躍をされたんですから」

キマ「凄い、活躍?」

ツインテ「はい。あの人の戦いぶりを見てきたボク達が保証します」

キマ「……見てきた、って、ツインテちゃん達の年齢でそれおかしくない?」

ツインテ「あ……」

アッシュ「と、とにかく、自分の親をそんな風に言うもんじゃない。ここまで育ててもらったんだ、親には感謝しないといかんぞ」

キマ「むー、説教くさーい」

ポニテ「まぁまぁ。じゃあ元の話に戻すと、A組に勝てなかったのは実力のせいじゃなくて、A組には勝てないって思い込んでるせいだったんじゃないのかなって、そういうことよー」

ポニテはキマに後ろから抱きついた。

ツインテ「です。お二人だけじゃなく、ゾンビ娘さんもオーク太郎君も、A組のみなさんと比べて劣っているなんてことは無いと思いますよ」

にっこりと笑うツインテ。

ゾンビ娘「そ、そう言ってもらえるのは、嬉しいです……」

オーク太郎「やっぱりツインテちゃんいい娘ぶひ……娶りたい……」

アッシュ「殺そ」

477: 2015/10/19(月) 21:44:30.93 ID:aatYBLIb0
114

--教室--

すたすたすた
べしっ

キマ「あいた!」

イバ「身内の悪口を外で言ってんじゃねぇ。だせぇぞ」

キマ「なっ!?」

すたすたすた

イバはそのまま教室を出て行ってしまう。

キマ「あ、次の授業移動か……って叩くんじゃないよバカ弟ー!!」

がたたた、たったったっー!

ポニテ「やれやれ……なんというか、ほほえましいね。兄弟ってさ」

アッシュ「面倒くさいだけだろ、俺は一人っ子でよかったと思っている」

ポニテ「憧れたりしない? 私めっちゃするんだけど」

アッシュ「しない」

ツインテ「兄弟、か……」

478: 2015/10/19(月) 21:45:50.33 ID:aatYBLIb0
115

--監獄、第100層--

かつーん、かつーん

後輩看守「うぅ……まさか配属された初日に最下層まで来させられるだなんて思っても見なかった……」

先輩看守「なんだお前、びびってるのか? だらしない奴だな」

後輩看守「だ、だって100層ですよ!? 地上の光が一切入らない暗黒の場所! そこに収監されているのは最悪の犯罪者共!! 俺なんて近づいただけで氏ぬ自信ありますよ!? いやだぁ、食われて氏ぬのだけは嫌だぁ!!」

先輩看守「ばかやろー、囚人は魔力を封じる檻の中だぞ? どうやってお前を食うんだよ」

後輩看守「……やつらにかかれば鉄格子なんて簡単にぶっ壊せちゃいそうじゃないですかぁ……こえーよーまだ氏にたくねーよー……」

先輩看守「はぁ……そんなんじゃこれからやっていけないぞ?」

ガチャ、ギィ……

後輩看守「うわ! 地獄の蓋が開いた!? もうおしまいだー!!」

先輩看守(うるっさ)「おい、食事の時間だぞお前ら」

……

しかし返事は無い。
囚人達は、

フォーテ「天にまします我らがツインテおねーちゃんよ……」

囚人共「「「さーいかわ」」」

祈りをささげていた。

479: 2015/10/19(月) 21:47:33.48 ID:aatYBLIb0
116

--監獄、第100層--

フォーテ「……ん、食事が来たみたいだよおじちゃん達っ。ご飯にしようか」

にっこりと笑うフォーテ。

ざわざわざわ

囚人達は祈るのをやめ看守達の方を向く。

後輩看守「どどどどっきーーーん!? な、なんすかあの超美人!!?? なんでこんな地獄の入り口に女神がいるんすか!?」

先輩看守「うるさい黙って食事を運べ、ほら」

後輩看守「や、やー……たまげたなぁ……」

デカ囚人「おらさっさとよこせやボケぇぇえ!!」

ガァアン!!

鉄格子に体当たりする囚人。

後輩看守「ひ、ひいっぃい!? 他の囚人は想像通りだぁ!?」

先輩看守「お預け食らえば犬でも吼える。ちゃっちゃと運ぶぞ」

フォーテ「くんくん。今日はシチューかっ。僕シチュー大好きっ」

480: 2015/10/19(月) 21:48:11.60 ID:aatYBLIb0
117

--監獄、第100層--

後輩看守「は、はい、どうぞ!」

すっ

フォーテ「ありがとうっお兄ちゃんっ」

後輩看守「ずきゅーーん!?」

美しく育ったフォーテに微笑まれるだけで後輩看守はめろめろになってしまう。

刺青囚人「てっめぇフォーテちゃんに色目使ってんじゃねぇぞこらぁああ!!」

ガァアン!!

後輩看守「うひぃぃいい!?」

ずるっ

驚いた看守は足を滑らせてしまう。

オオオオオオオオオオ

ぽすっ

後輩看守「うひっ!!……あ、あれ? 痛くない?」

地面にたたきつけられると思った後輩看守だったが、自分の体を氏者の腕が受け止めてくれていたことに気付く。

481: 2015/10/19(月) 21:49:04.59 ID:aatYBLIb0
118

--監獄、第100層--

後輩看守「え、え……? 何コレ?」

先輩看守「おいフォーテ、魔力を使っちゃいけないと言っただろう」

フォーテ「えへへ、ごめんねっ、だってこのお兄ちゃんが転んじゃいそうだったからさっ」

すとん

氏者の腕が後輩看守を地面に下ろしてやる。
そしてバイバイと手を振って闇の中へと消えていった。

後輩看守「え……魔力? 魔力って、この檻にいる間は使えないんじゃ?」

先輩看守「こいつは規格外なのさ」

こわもて囚人「どぅるるるるぁああああ!! てめぇ助けてもらっといてどんな言い草じゃくそがぁあああ!!」

ガァアン!!

先輩看守「ふん、転ばせとけばよかったのさ。さてフォーテ、飯を食いながら聞いて欲しい」

フォーテ「何かな?」

先輩看守「少し面倒な事件が起きた。よってお前の力を借りることとなった」

カリアゲ囚人「それが人にものを頼む態度かなすびぃいいいいい!!」

ガァアン!!

フォーテ「くすっ。いいよっ! それが僕の贖罪だからねっ!」

482: 2015/10/19(月) 21:51:20.88 ID:aatYBLIb0
119

--運動場--

ガガッゴッ!

女騎士「ふむ、この間に比べればいい動きだ。この短期間で合わせられるようになるとは驚きだぞ」

ドカッ!!

アッシュ「ぐはっ!!」

ズザザー

ポニテ「嘘ー……人頃し発動したアッシュ君が武器ももたない女騎士ちゃんに一方的にぼこられてる……」

ツインテ「しかもあれ全然本気じゃないですよね……」

アッシュ「ぐぅ! やればやるほど力量差を感じるばかりだ!!」

ダンッ!

女騎士「何恥じることは無い。アッシュ、君はその歳のわりには素晴らしい動きだ。この私が保証しよう、君はいい戦士になれる」

アッシュ「くっそ上から目線じゃねぇか!」

キマ「ねぇねぇポニテー、ツインテちゃんー見てみてー」

ポニテ「ん?」

ツインテ「どうしました?」

オーク太郎「……」

そこにはリアカーに乗せられたオーク太郎が。

キマ「これからこの豚野郎を使って実験します! 少しずつこいつが女騎士ちゃんに近づいていったらどういう反応を見せるのか! どの距離からバッリーンっていくのか!! それを調べてみたいと思います!」

ポニテ「キマちゃん結構えぐいね」

オーク太郎「いやまったく」

483: 2015/10/19(月) 21:55:14.92 ID:aatYBLIb0
120

--運動場--

キマ「では15メートルから」

ずずず

キマ「どう?」

女騎士はすました顔で談笑している。

ポニテ「いやーさすがにこの距離なら変化ないでしょー」

キマ「そっか。じゃあ一気に10メートルだ!」

ずずず
ぴっ

ポニテ「あ、スカートの端っこが少し破れてスリットみたいになってきた」

ツインテ「本人気付いて無いのに服に影響でちゃうんですね」

キマ「では8メートル」

ぷっ、ぴりり

ポニテ「うお、長袖だったのに半そでになっちゃったよ!」

キマ「まだ服にしか影響ないか……それ! 5メートルだ!」

びりっ、びりり

ポニテ「……本人は気付いてないのかすっごいお上品そうな顔してるけど服は相当破けてきたね。鎖もスタンバイ始めてる」

ツインテ「なんで気付かないんでしょうか……」

キマ「じゃあ4メ」

ビリビリビリーバリーイイイイイイーン!!

女騎士「く、くっころおおーーーーーー!?」

キマ「よし、四メートルか!」

ポニテ「半径四メートル以内に近づかれたらアウトなのか……」

ツインテ(教室内どうやって過ごしてるんだろうか)

484: 2015/10/19(月) 21:55:55.85 ID:aatYBLIb0
それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら気軽に書きこんでおいてください。

勇者と魔王がアイを募集した【完結】

引用: 勇者と魔王がアイを募集したFINAL幕