259: 2013/10/20(日) 21:53:56 ID:LTZ6xAAk


前回:
第5話 忍び寄る闇

第6話 淫されていく想い

~客船~
勇者「僧侶さん、魔法使いちゃんは?」

僧侶「図書室で魔法医学の勉強中です」カチャカチャ

勇者「そうなんだ。この間の天使のことだけど、やっぱり魔法使いちゃんには次の街に残ってもらうほうがいいと思う?」

僧侶「それなら、一緒に行くことに決まったじゃないですか」

僧侶「天使は魔法使いちゃんのことが気に入っているようですし、私たち三人を指名しています。別行動は良くない結果を招く気がします」

勇者「やっぱりそうかな……」
魔法の世界
257: 2013/10/20(日) 00:43:52 ID:LTZ6xAAk
ようやく終わりました。
支援などのレス、ありがとうございます。


物語は折り返して、次から後半。
いよいよ南極圏、南の大地に上陸です。


ちなみに天使から受け取ったパズルは、『ワンダーパズル』というものです。

260: 2013/10/20(日) 22:20:06 ID:LTZ6xAAk
勇者「ところで、何をやってるの?」

僧侶「ペントミノを直方体に積上げています。よし、出来た!」カチャカチャ

勇者「ほんと、僧侶さんはいつも楽しそうだな」

僧侶「そう見えますか? 私だって、いろいろ悩みがあるんですよ」

勇者「たとえば?」

僧侶「そうですねえ……」

僧侶「……」

僧侶「勇者さま、一緒にペントミノ牧場を考えませんか。ピースを柵に見立てて、一番大きな牧場を作るのです」

勇者「今、ごまかした?」

僧侶「そんなことないですよ。私たちがこの世界の中で、いつも幸せに過ごせたら良いなと思って言いました」カチャカチャ

勇者「そうだね。そのためにも、南の調査を早く終わらせないとな」

僧侶「ふふっ、そうですね」

261: 2013/10/20(日) 22:29:31 ID:LTZ6xAAk

~南の都~
勇者「やっと南の大地に到着したなあ」

魔法使い「船旅も楽しかったです。ここって確か、魔術の研究が盛んな都ですよね」

勇者「そうだよ。きっと色んな書物が置いてあるんじゃないかな」

魔法使い「うわぁ、楽しみです。何冊か買って、村に送ってもらうことって出来ますかねえ」

勇者「お店の人に聞いてごらん」

魔法使い「はいっ」

262: 2013/10/20(日) 22:55:46 ID:LTZ6xAAk
僧侶「ところで、ここは白夜温泉が有名だそうですよ。その温かいお湯で育った鮮魚が、とても美味しいらしいです」

魔法使い「白夜……。そういえば、昨日は夜でも明るかったです」

僧侶「ここは南極圏だしね。夏も終わりが近いし、この辺りはもうすぐ日が沈むようになるんじゃないかな」

魔法使い「そして秋から、ここは極夜ですよね。どうして、こんな場所で魔術の研究をするのでしょうか?」

僧侶「昔は呪術的な現象だと思っていたから、その名残だと思うよ」

263: 2013/10/20(日) 23:04:01 ID:LTZ6xAAk
魔法使い「なるほど……。言われてみれば、呪術的なものを感じる気がします」

僧侶「皆既日食なども、呪術的な現象だと信じられていたよね」

魔法使い「いや、そうじゃなくて本当に感じるんです」

僧侶「そうなんだ。でも、魔術の研究が盛んな都だしね」

魔法使い「それもそっか」

勇者「僧侶さん。白夜温泉と魚料理は、あの旅館が良いみたいだね」

僧侶「そうですね、そこに泊まりましょう。お魚、楽しみです♪」

264: 2013/10/20(日) 23:13:46 ID:LTZ6xAAk

~宿~
僧侶「魔法使いちゃん、見てみて。この窓、南向きだから白夜を満喫できそうだよ。遮光カーテンも付いてるし、観光客のニーズに応えた間取りだよね」

魔法使い「ですね~。日が沈まないときに来られて良かったです」

勇者「今後の予定なんだけど、二人とも良いかな?」

僧侶・魔法使い「はい」

勇者「明日はこの国の王様に会いに行くから、二人は自由行動。明後日はみんなで、買出しをしようと思う」

僧侶「分かりました」

魔法使い「了解です!」

勇者「じゃあ、今から観光に行こうか」

魔法使い「今日のうちに、本屋さんと雑貨屋さんを見つけておきたいです」ルンルン

265: 2013/10/20(日) 23:34:41 ID:LTZ6xAAk

~街~
勇者「この街は24時間営業の店が多いんだな」

僧侶「やっぱり明るいからじゃないですか?」

勇者「そういう土地柄だもんな。うちの近所でも、そういう店があったらいいのに」

魔法使い「勇者さま、雑貨屋さんがありましたよ」

店主「お嬢ちゃん、いらっしゃい。魔道具や民芸品など幅広く取り揃えているよ」

魔法使い「色んな知恵の輪が置いてありますね。あっ! 九連環ですよ、これ」

僧侶「どれどれ? ほんとだ。神の遺産も売ってるんだ。触っても良いですか?」

店主「見本なら大丈夫だよ」

僧侶「ありがとうございます」カチャカチャ

266: 2013/10/20(日) 23:51:29 ID:LTZ6xAAk
勇者「僧侶さん、神の遺産ってことは、何か意味があるの?」

僧侶「前から三番目の輪を外すためには、この二番目の輪を利用しないと外せないですよね」

勇者「そうだね」

僧侶「そして四番目の輪を外すためには、三番目の輪を利用しないといけない。後は、この手順の繰り返しです」

僧侶「というわけで、九連環は献身や協調性の大切さを教えてくれるパズルなんです」

勇者「ふぅん」

僧侶「私たちも、大切な人のために何が出来るのか。それを考えられる人になりたいですね」

勇者「大切な人か……」

267: 2013/10/21(月) 00:04:46 ID:XhUo2.6o
魔法使い「僧侶さん、僧侶さん! このお店、チリ人の輪やキャストパズルもありますよ!」

僧侶「すごいっ、このお店は難関な知恵の輪の宝庫だね」

魔法使い「ねえねえ、これは何でしょうか?」

店主「その知恵の輪は、チャレンジ知恵の輪だよ。その砂時計が落ちるまでに紐を外せたら、商品を一つ3割引きにします」

魔法使い「何でも安くしてもらえるんですか?! 頑張ります!」

268: 2013/10/21(月) 00:16:44 ID:XhUo2.6o
僧侶「針金の先端を輪にして、その輪を通るように針金を曲げて、もう一方の先端も同じように輪にして『8の字』みたいな形にしたものですね」

僧侶「それに付属している紐の輪を、針金から外せばいいのですか?」

店主「そうだよ」

僧侶「……。でもこれ、インチキですよね?」

店主「!! な、何を根拠に!」

269: 2013/10/21(月) 00:21:01 ID:XhUo2.6o
僧侶「8の字知恵の輪は、両端の輪で閉じる場所によって2種類作れます。これは、外せない作り方です」

店主「それに気付いたところで、お客に損はないだろ。ちょっとした遊び心じゃないか」

僧侶「インチキだと認めましたね」ニコッ

魔法使い「インチキパズルの紐を外すには、結び目をほどくしかありません」

店主「!!」

魔法使い「砂時計が落ちるまでに、紐を外すことが出来ました」ルンルン

僧侶「ちゃんとサービスしてくださいね♪」

店主「お嬢ちゃんたちには負けたよ……」

270: 2013/10/21(月) 00:30:36 ID:XhUo2.6o
勇者「おっ、割引きしてもらえるんだ。ところで、このチリ人の輪って、どうやって外すの?」

僧侶「すみません、知らないです。それは、とても難しい知恵の輪なんです。馬蹄パズルと同じように、抜け道があるのだと思いますよ」

勇者「抜け道か。そういう感じには見えないけどなあ」

魔法使い「リングが中にあるように見えて、実は同時に外でもあるんですよね」

勇者「中にあるように見えて、実は外にある……か」

僧侶「そうです。主観が絶対ではないことが分かりますよね」

勇者「どうしても、この知恵の輪だけは外したいっ!」

僧侶「勇者さまも、パズルの楽しさが分かってきましたね♪ ここは良いものが多いので、買って帰りましょうよ」

271: 2013/10/21(月) 00:37:26 ID:XhUo2.6o
店主「ありがとうございます。一つだけ3割引きにしますよ!」

僧侶「安い知恵の輪で、割引特約を使う訳ないじゃないですか。もちろん、魔道具を見てから考えます」

店主「そ、そうですな。お買い物をお楽しみくださいませ」

魔法使い「僧侶さん、魔封じの腕輪や賢者の石なんて高級品がありますよ!」

僧侶「その賢者の石は、純度が低い中クラス品ですよ」

魔法使い「そうなんですね。見分けがつかないです」

僧侶「さっきのパズルのことがあるから、魔道具選びは慎重にね」

魔法使い「は~いっ」

店主「……」

272: 2013/10/21(月) 21:56:35 ID:XhUo2.6o
僧侶「勇者さま、この転移の羽を魔法使いちゃんに買いませんか?」

勇者「転移の羽?」

僧侶「魔力を解放すると、一度行ったことのある場所に転移することができる魔道具です。これを西の村に行けるように設定しておけば、魔法使いちゃんだけは無事に帰すことが出来ます」

僧侶「天使とのこともあるし、絶対に必要だと思います」

勇者「そうだね」

魔法使い「良いのですか?! だってそれ、ものすごく高級な魔道具ですよ」

273: 2013/10/21(月) 22:05:59 ID:XhUo2.6o
勇者「僕たちにとって、魔法使いちゃんの無事が一番重要なことだからね。砂漠の富豪さんの報酬があるし、一つくらいなら大丈夫だよ」

魔法使い「ありがとうございます」

店主「そ、それを安く買うとはお目が高い……」アセアセ

勇者「ははっ、サービス助かるよ。じゃあ、転移の羽と知恵の輪で」

店主「ありがとうございました」


僧侶「とても良い買い物をしましたね~。浮いたお金で、白夜まんじゅうを食べませんか?」ルンルン

勇者「そうだね。あの喫茶店に寄っていこうか」

274: 2013/10/21(月) 22:12:36 ID:XhUo2.6o

~宿・夜~
僧侶「温泉育ちのお魚、美味しかったです」

勇者「メインの鍋をポン酢で食べるのが、あっさりしてて良かったね」

魔法使い「から揚げも美味しかったですよ」

勇者「ところで、明日はどうするか決めたの?」

魔法使い「魔術師の街というだけあって、本屋さんや図書館が充実していたので入り浸ります」

僧侶「転移配送サービスも手頃だったし、行きたい喫茶店もあります。明日が楽しみだね」ルンルン

魔法使い「日が沈まないから、明日って感覚があまりしないですけど」

僧侶「そうだね。今夜は太陽がぐる~っと地平線を回るところを見ていようかな」

魔法使い「私も一度見てみたいです!」

275: 2013/10/21(月) 22:15:30 ID:XhUo2.6o
僧侶「じゃあ、先に温泉に行きましょうか。ここは白夜にちなんで混浴だそうですよ」

勇者(混浴だと?)

魔法使い「混浴って、複数の源泉が混ざっているんですか?」

僧侶「どうなんだろ? とりあえず、露天風呂って書いてあるし楽しみだよ~」

魔法使い「露天風呂って、確か景色を見ながら温泉に入れるんでしたよね」

僧侶「そうそう。それでは勇者さま、お風呂に行ってきます」

魔法使い「行ってきます♪」

勇者(こ、これはチャンスだ!)

276: 2013/10/21(月) 22:18:02 ID:XhUo2.6o

~宿・温泉~
魔法使い「もう夜なのに明るいって、本当に不思議ですよね~。何だか、神秘的です」

僧侶「さっきから、そればっかりだね。ところで魔法使いちゃん、今日もいい?」

魔法使い「はい」

僧侶「もうちょっと抱き寄せるね」ぎゅっ

魔法使い「……// じゃあ、軽く風魔法いきます」シュッ

僧侶「うぅん、分かりにくいな。外だし、一発ドカンと決めてくれない?」

277: 2013/10/21(月) 22:22:30 ID:XhUo2.6o
魔法使い「じゃあ、水精霊と風精霊であの雲を散らします」

僧侶「地味だけど、すごいんだよね?」

魔法使い「はい。では、いきます!」


ボォォンッ


僧侶「おおっ、すごい!! これって、天気を操れるんじゃないの?」

魔法使い「天気を操ろうと思ったら、魔力が空っぽになっても無理ですよぉ」

僧侶「局地的なら行けるんじゃないかな。じゃあ、最後に継続的な魔法よろしく」

魔法使い「風精霊さん、涼しい風をお願いします」ソヨソヨ

278: 2013/10/21(月) 22:24:53 ID:XhUo2.6o
僧侶「やっぱり、脳が魔法の発動に関わっているみたいね」

僧侶「客船で何人か調査してみたけど、魔法を使える人と使えない人は脳の使い方に微妙な違いがあるみたい」

魔法使い「そうなんですか?」

僧侶「何て言うのかな、魔法を少しでも使える人には、一箇所だけ不自然な部位があるの」

魔法使い「不自然?」

279: 2013/10/21(月) 22:32:53 ID:XhUo2.6o
僧侶「魔法を使おうとすると脳がとても活発になるんだけど、そのときに魔力が収束されて、そのまま消えてしまう場所があるの」

魔法使い「それが世界の扉じゃないですか」

僧侶「私もそう思う。だけどね、そこから先が問題なのよ」

魔法使い「問題って何ですか?」

僧侶「その部位を破壊しても、魔法を使うことができることが確認されているの」

魔法使い「そっか。堕天使しか使った事例がないし、それで研究が止まっちゃったのですね」

280: 2013/10/21(月) 22:37:06 ID:XhUo2.6o
僧侶「あのとき天使が、『魔法のエネルギーをどうやって調達しているんだろうね』って言ってたでしょ。それってつまり、ヘクソミノが示す別世界から調達しているんじゃないかな」

魔法使い「だとしたら、転移魔法の範疇に入りますよね。魔力が収束して脳が消費しているのではなくて、魔力を使って別世界に干渉しているんだから」

僧侶「転移魔法か……。ありがと、サクッと勉強してみるよ」

魔法使い「やっぱり封印魔法は難しいのですね。魔法医学を極めるのでさえ大変なのに、さらに転移魔法まで覚えないといけないんだから」

僧侶「そう考えると、天使の知識は人間を軽く超えてるんだなって畏怖しちゃうね」

魔法使い「はい……、すごいです」

281: 2013/10/22(火) 20:21:25 ID:BNWysf3o

勇者「ふうん、二人はお風呂でそんな話をしているんだ」

僧侶「!!」
魔法使い「きゃあああぁぁぁっ!!」

僧侶「あわわ// ゆ、勇者さま、ここは女湯ですよ」

勇者「いやいや、僧侶さん。自分で混浴だと言ってたじゃないですか。ほら、あそこ見て」

僧侶「だ、脱衣所が繋がってます!!」

282: 2013/10/22(火) 20:29:40 ID:BNWysf3o
魔法使い「じゃ、じゃあ混浴というのは……」

勇者「白夜にちなんで昼と夜の区別がない、つまり男と女の区別がないという意味だと思うけど」

魔法使い「ええぇぇっ! い、いつから居たんですか?!」

勇者「雲を消す辺りから。魔法の研究をしているみたいだったし、邪魔したら悪いなって思って……」

僧侶「というか、知ってましたよね?」

勇者「ははっ、ま、まさかぁ。二人がいて、びっくりしたよ」アセアセ

283: 2013/10/22(火) 20:44:13 ID:BNWysf3o
魔法使い「うぅ、もういいです。私の裸をたくさん見ましたよね? 見ましたよねえ!」

勇者「それは……、見ました。ご、ごめんなさい」

魔法使い「じゃ、じゃあ、勇者さまの裸も見せてください//」チラッ

勇者「ええっ!!」
僧侶「いやいやいや。魔法使いちゃん、それは駄目ですっ」

魔法使い「魔法医学の勉強で、殿方の身体構造と生体エネルギーの分布が図解では理解できなくて……。そ、それで勇者さまなら//」

僧侶「ちゃんと理解すれば、裸にならなくても読み取れるようになるんだけど。実技研修のたびに、みんなに裸になってもらう訳にはいかないでしょ」

284: 2013/10/22(火) 20:52:22 ID:BNWysf3o
魔法使い「それはそうですけど、殿方のことが全然分からないです」

僧侶「あっ、そうか……。そのための、基礎知識が身に付いていないのか」

魔法使い「僧侶さんがお風呂で私を抱き寄せるのは、魔力分布を詳しく把握するためですよね。それと同じで……」

僧侶「はいはい、分かったから。私も最初は理解できなかったし、見たほうが手っ取り早いのは確かだよね」

魔法使い「はい、そうですよね//」

僧侶「でも、生体エネルギーの分布は読めるようになったの?」

魔法使い「それはもう完璧です」ブイッ

285: 2013/10/22(火) 21:18:49 ID:BNWysf3o
僧侶「えっ、魔法医学の勉強を始めてまだ一ヶ月でしょ。じゃあ、もしかして回復魔法のステップに入ってるの?」

魔法使い「はい。軽い創傷はもう治せるようになりました。でも血管の処理が難しくて、上手く出来ないときもあるけど……」

僧侶「すごいじゃない! 血管と血液の理解は回復魔法の基礎だから、まずはそこをしっかりね」

魔法使い「はい」

286: 2013/10/22(火) 21:25:10 ID:BNWysf3o
僧侶「それが出来るようになったら、次のステップかな」

魔法使い「まだまだ先は長いですね」

僧侶「いやいや、一ヶ月で回復魔法も出来るって、すごいことだと思う。そこまで出来ているなら、殿方の身体構造を見ておかないと性差が出てきたときに苦労するかも……」

魔法使い「ですよね//」

僧侶「本当は駄目だけど、あ……あくまでも学問のためだから、今回だけは特別に許可をして、許してあげるんですからね」

287: 2013/10/22(火) 21:59:03 ID:BNWysf3o
勇者「あれっ、許しちゃうんだ……」

僧侶「さっきの話、聞いてましたよね?」

勇者「それは、まあ」

僧侶「変な意味じゃなくて、魔法医学の実技研修のために、男性モデルになってくださいとお願いしているだけですから。他のお客さんが来る前に、さくっとやりましょう!」

魔法使い「恥ずかしいけど、勇者さまなら信じられます。協力してください//」

288: 2013/10/22(火) 22:04:22 ID:BNWysf3o
勇者「分かったよ。魔法使いちゃんがずっと頑張っているのは知ってるし、そのモデルって何をすればいいの?」

魔法使い「あ、洗い場に移動してください。大鏡が一枚あるので、その前にお願いします//」


勇者「こ、ここで良いかな?」

魔法使い「あわわ、本当に亀さんの頭みたいです// べ、勉強、勉強!」マジマジ

僧侶「魔法使いちゃん、焦らずに落ち着いてやれば大丈夫だから」

魔法使い「はい。ちょっと抱きつきます」ギュッ

勇者(身体が柔らかい……。いや、無心無心!)

289: 2013/10/22(火) 22:34:52 ID:BNWysf3o
魔法使い「やっぱり、骨格や筋肉量が女性とは違いますね」

勇者「そりゃあ、いつも鍛えているから」

魔法使い「身体付き以外に内分泌も違うし、ここも……」

勇者「まだ終わらないのかな?」

魔法使い「あの、今は基本的な身体構造を確認しているだけで……。殿方の身体構造は、男性器と生殖細胞の確認が中心になります」

勇者「そ、そうなんだ……」

僧侶(やっぱり、許すんじゃなかった。これを既成事実にしたくない……)

290: 2013/10/22(火) 22:39:42 ID:BNWysf3o
魔法使い「勇者さま、鏡のほうを向いてください。あの、触りますね」さわさわ

勇者「さすがに触られると……」

魔法使い「あっ、ここで反応して大きくなるんだ」にぎにぎ

僧侶「ねえ、勇者さま。今なら興奮しやすいように、私の身体を許しますよ」ムニュッ

勇者「えっ、僧侶さん、それって……」

僧侶「……はい。興奮することが、男性モデルの役目です//」

勇者「いやいや、うれしいけど冗談だろ」

魔法使い「うれしいなら問題ないですよね//」

291: 2013/10/22(火) 23:10:35 ID:BNWysf3o
僧侶「別に我慢しなくても良いんですよ。触りたくありませんか?」

勇者「じゃ、じゃあ」

僧侶「あぅ//」

魔法使い「硬くなりました// こんなに早くて複雑な反応なんですね」

勇者「ヤバい、気持ちいい……」

292: 2013/10/22(火) 23:25:14 ID:BNWysf3o
僧侶「魔法使いちゃん。殿方の生体エネルギーの分布が、性的な興奮でどう変化していくのかよく覚えておいてね」

魔法使い「は、はいっ」

僧侶「もちろん、全身の反応もすべて読み取るのよ」

魔法使い「勇者さま、もう少し抱き締めます」ギュッ


298: 2013/10/23(水) 22:58:24 ID:46UAt9kY

僧侶「勇者さま、お疲れさまでした。身体が冷えるし、私たちは湯船に戻りましょう」

勇者「そうだね。僧侶さん、このあと二人で出かけて続きをしませんか?」さわさわ

僧侶「う~ん、すみません。今夜はちょっと無理です。それに身体を許したのは学問のためですから、勘違いしないでくださいね」

勇者「そっか……」

僧侶「でも、もう良いかなと思いはじめています。だから、少し考えさせてください。私には、とても大切なことなので――」

299: 2013/10/23(水) 23:07:58 ID:46UAt9kY
僧侶「ところで勇者さま、魔法使いちゃんの手でしましたよねえ」

勇者「あれは不可抗力というか……」

僧侶「それが目的だったので怒っていません。魔法使いちゃんは、勇者さまなら信じられると言いましたよね」

勇者「……ああ」

僧侶「どうか、それを裏切らないであげてください。特に今回のことで、彼女を利用したりしないよう、お願いします」

勇者「分かってるよ。魔法使いちゃんは妹みたいなものだし、さっきのことは割り切るつもりだから」

僧侶「そうなんですね……」

300: 2013/10/23(水) 23:37:31 ID:46UAt9kY
勇者「ふと思ったんだけど、魔法使いちゃんって、僧侶さんから見てどうなの?」

僧侶「きっと、すごい賢者になりますよ。まだ身体構造は理解してないけど、もう的確に把握できているみたいです。一ヶ月で出来ることではありません」

勇者「そうなんだ。僧侶さんは、どれくらいかかったの?」

僧侶「私は12歳から勉強をはじめて、半年くらいかな。私が魔法使いちゃんと同じ歳のときは、怒られてばっかりでしたよ」

勇者「今の僧侶さんからは、想像出来ないね」

僧侶「でもそういう時期があって、今の私があるんです。厳しかった先生に感謝しています」

勇者「でも僧侶さんって、どうして賢者を目指さないの?」

僧侶「人の命について、深く知りたかったからです。だから――」

301: 2013/10/23(水) 23:47:05 ID:46UAt9kY
魔法使い「勇者さまぁ//」ジャブジャブ

勇者「どうしたの?」

魔法使い「今日は協力してくれてありがとうございました。殿方の性がこんなにも精巧で複雑だなんて、全然思ってなかったです。すごく勉強になりました!」

勇者「それは良かったね。応援してるから、勉強頑張って」

魔法使い「はいっ! あの、気持ちよかったですか?」

勇者「そういうことは聞かない」

魔法使い「ふふっ、私は全部お見通しですよ//」

勇者「なっ……、女の子はそういうことも言わない!」

魔法使い「えへへ//」

302: 2013/10/24(木) 00:20:19 ID:Uu9qq1KE
魔法使い「あの、僧侶さん。手伝ってくれてありがとうございました。勇気を出してお願いして、本当に良かったです」

僧侶「今回は、特別に許してあげただけだからね」

魔法使い「……分かっています。それと僧侶さんの身体反応は、やっぱり私と同じなんですね」

僧侶「えっ、そんなことまでしてたの?!」

魔法使い「背中がずっと触れていたので、ついでに……。二人同時はちょっと疲れました」

僧侶「そうなんだ……」

勇者「というか、さらっとすごいことを言ったような」

魔法使い「わ、私だって、そういう気分になるときがあります//」

勇者「そう……だよね」

303: 2013/10/24(木) 00:23:58 ID:Uu9qq1KE
僧侶「それは良いけど、O液のほうはどうしたの?」

魔法使い「バッチリです! そういえば、流そうとしたら固まりました。勇者さまがいつも部屋でなさるのは、流しにくいからなんですね」

勇者「えっ、あぁ、うん……」

僧侶「たんぱく質は熱に弱いの。後で一緒に、さっきの復習をしましょうね。ちゃんと理解すれば、身体構造や神経作用が飛躍的に分かるようになるから」

魔法使い「はいっ、お願いします。人の身体って、すごく面白いです!」

304: 2013/10/24(木) 19:55:22 ID:Uu9qq1KE

勇者「じゃあ、僕は先に戻ってるから」ジャブ

魔法使い「勇者さま……。ここは混浴だし、明日から一緒に入りませんか」

勇者「いやいや、さすがにそれは……」

魔法使い(勇者さまが一人で入っているときに、知らない女の人がいたら……)

僧侶「あの……、知らない殿方に声を掛けられたら怖いし、勇者さまに居てほしいです」

勇者「まあ、そこまで言うなら……」チラッ

305: 2013/10/24(木) 20:10:27 ID:Uu9qq1KE
魔法使い「わわっ、勇者さまがまた//」

僧侶「えっ」
勇者「あっ!」ジャブ

魔法使い「さっき出したのに//」

勇者「はは……」

魔法使い「一緒に入って興奮させて、ずっと我慢させるのは申し訳ないです」

勇者「心配しなくても大丈夫だから」


306: 2013/10/24(木) 20:19:09 ID:Uu9qq1KE
僧侶「じゃあ、今夜から勇者さまの更衣室を広げてあげましょうか」

魔法使い「それでどうするんですか?」

僧侶「私たちが部屋にいても、一人でしやすくなるでしょ」

魔法使い「あっ、そうですね。それなら、勇者さまがいつでも出来ますね」

勇者「僕は、二人がいたら気になるんだけど……」

307: 2013/10/24(木) 20:34:09 ID:Uu9qq1KE
僧侶「私たちは一緒にお風呂に入ったのですよ。もう今さらじゃないですか」

勇者「それもそうだな」

僧侶「だから私たちの関係に合わせて、部屋の間取りも工夫しましょうよ」

魔法使い「そうです。いつでも出来るようになれば、時間の使い方も変わりますよ」

勇者「じゃあ、部屋に戻ったら頼むよ」

魔法使い「はい、任せてください//」

309: 2013/10/24(木) 22:49:46 ID:Uu9qq1KE
10
~部屋・深夜~
魔法使い「――つまり回復魔法は、自然回復しない創傷は治せないということですか?」

僧侶「そうです。回復魔法は自然治癒力を加速させる魔法なんです。だから、瀕氏の重傷や破裂した内臓は治せません」

魔法使い「そうなると、治癒魔法や蘇生魔法が必要なんですね」

僧侶「そうそう。治癒魔法は生体エネルギーを増幅させて、自然回復を超えた治癒をする魔法。蘇生魔法は失った生体エネルギーを取り戻して、身体機能を再生させる魔法なの」

310: 2013/10/24(木) 22:52:11 ID:Uu9qq1KE
魔法使い「蘇生魔法は、生き返らせる魔法じゃないんですか?」

僧侶「その生き返らせるというのが、そもそも間違っているの。生体エネルギーを取り戻せる身体でなければ、生きていられないでしょ」

魔法使い「そうですね……」

僧侶「欠損した身体の修復はさらに高度な魔法だし、蘇生魔法があっても人の命は一つしかないということは忘れないでね」

魔法使い「はいっ」

僧侶「じゃあ、勉強はこれでお仕舞い。白夜を見ながら、もう休みましょ」

311: 2013/10/24(木) 23:11:41 ID:Uu9qq1KE
魔法使い「太陽がちょうど真南に来ていますよ。もう真夜中ですね」

僧侶「太陽が南中して夜中っていうのも、不思議だよね」

魔法使い「はい」

僧侶「勇者さま、チリ人の輪は外れそうですか?」

勇者「んっ? 勉強終わったんだ。さっきから同じことの繰り返しで、外れる気がしないよ」カチャカチャ

僧侶「少し休んで、みんなで白夜を見ませんか? いい眺めですよ」

勇者「そうだな」

312: 2013/10/24(木) 23:27:52 ID:Uu9qq1KE
魔法使い「勇者さま、見てください。太陽が沈まずに、円を描くようにして動いてますよ」

勇者「実際に見てみると、白夜って幻想的なんだな」

魔法使い「はい。みんなで見られてうれしいです♪」

勇者「そうだね。良い思い出になりそうだね」

魔法使い「あの、勇者さま……。私たちは今、太陽が描く円の中にいるのでしょうか? それとも、円の外にいるのでしょうか?」

勇者「もしかして、なぞなぞ?」

魔法使い「いえ、そういう訳じゃないです」

勇者「普通に考えたら、ここは円の中だよね」

313: 2013/10/24(木) 23:38:43 ID:Uu9qq1KE
魔法使い「円の中か……」

勇者「それがどうしたの?」

魔法使い「円の中にいるなら、私たちの絆は外れないですよね。あのお店にあった、インチキな知恵の輪と同じです」

勇者「魔法使いちゃん、それは少し違うかな」

魔法使い「えっ、何がですか?」

勇者「僕たちは知恵の輪と同じ。中にいるように見えて、実は外にいるんだよ」

魔法使い「外……ですか?」

勇者「だから絆を深めあって、固く結びつくことが大切なんだ。そうしないと、絆がバラバラになってしまうから」

魔法使い「そっか、知恵の輪なんだ……」

314: 2013/10/24(木) 23:49:21 ID:Uu9qq1KE
僧侶「外せないから言い訳ですか? ふふっ」

勇者「良いことを言ってるんだから、茶化すなよ。というか、僧侶さんも外せないんだろ?」

僧侶「九連環なら外せます」

魔法使い「あの……。知恵の輪を外した後は、また元に戻しますよね。いつか別れることになっても、私は勇者さまや僧侶さんと一緒にいたいです」

僧侶「大丈夫だよ。魔法使いちゃんは、私たちの大切な仲間だから。私たちの関係が変わったとしても、それだけは変わらないよ」

315: 2013/10/25(金) 00:14:43 ID:NkEvtqMw
魔法使い「はぁ……。今の会話に反応しないなんて、鈍いですねえ。それなら明日、露天風呂でたくさん誘惑しちゃいます//」

僧侶「それは駄目です! 勇者さまは私が……」

勇者「僧侶さん。それって、もう身体を許して――」

僧侶「ろ……、露天風呂は、そんなことをする場所ではありません!」

勇者「だよね……」

僧侶「せっかく更衣室を広くしたんだし、そちらでなさってください」プイッ

魔法使い「あらら、怒らせちゃいましたね」

勇者「まあ、いつものことだから」


僧侶(いつものこと……か。やっぱり勇者さまは、したいだけなのかな。それとも――)

魔法使い「……」

316: 2013/10/25(金) 00:22:01 ID:NkEvtqMw
第6話 おわり

(知恵の輪)
・チャイニーズリング(九連環)
・チリ人の輪

・キャストパズル

(不可能知恵の輪)
・タオ


次回:第7話 幸せはどこにある



引用: 勇者「ドーナツの世界?!」