601: 2013/11/20(水) 21:19:44 ID:2TBePBMs
前回:第9話 心をさらけ出して
第10話 終末のパズル
1
~極北の地~
調査団A「よし、結界に入るぞ!」
調査団B「あ、あぁ。この光の世界にあるのは、希望なのか絶望なのか……」
調査団A「そりゃあ、光だから希望だろうよ」
調査団B「そうだな」
魔道師C「ま、待て! この結界を越えるな!」
602: 2013/11/20(水) 21:23:39 ID:2TBePBMs
調査団A「ぐああぁぁぁぁぁっっ!!」
調査団B「足が、脚があっ!」
魔道師D「治癒魔法!」
魔道師C「な、何という莫大なエネルギーなんだ。これは光属性の攻撃魔法だ!」
調査団B「ぜぇぜぇ……。攻撃魔法だって?! こんなに巨大なものが放たれると、世界はどうなるんだ」
魔道師C「分からない。だから結界が必要なのかもしれない」
魔道師D「極南が闇に覆われている理由は、もしやこの魔法のためなのか……」
調査団B「足が、脚があっ!」
魔道師D「治癒魔法!」
魔道師C「な、何という莫大なエネルギーなんだ。これは光属性の攻撃魔法だ!」
調査団B「ぜぇぜぇ……。攻撃魔法だって?! こんなに巨大なものが放たれると、世界はどうなるんだ」
魔道師C「分からない。だから結界が必要なのかもしれない」
魔道師D「極南が闇に覆われている理由は、もしやこの魔法のためなのか……」
603: 2013/11/20(水) 22:06:55 ID:2TBePBMs
2
~極南の地~
魔法使い「これが魔女さんが見たハノイの塔ですね」
僧侶「うわぁ、本当にハノイの塔の原典だよ! こっそり持って帰りたいです!」
勇者「いやいや、無理だから。二枚あった結界には入れたけど、この結界のせいで触れないし」
僧侶「でも支柱はダイヤで、円盤は純金なんですよ。ものすごく価値が高い代物です」
魔法使い「僧侶さん、とりあえず今は残り時間を計りましょうよ」
僧侶「はぁ、そうだね」
~極南の地~
魔法使い「これが魔女さんが見たハノイの塔ですね」
僧侶「うわぁ、本当にハノイの塔の原典だよ! こっそり持って帰りたいです!」
勇者「いやいや、無理だから。二枚あった結界には入れたけど、この結界のせいで触れないし」
僧侶「でも支柱はダイヤで、円盤は純金なんですよ。ものすごく価値が高い代物です」
魔法使い「僧侶さん、とりあえず今は残り時間を計りましょうよ」
僧侶「はぁ、そうだね」
604: 2013/11/20(水) 22:14:16 ID:2TBePBMs
勇者「でもどうやって時間を計るの?」
魔法使い「ハノイの塔は、その最小手順をメルセンヌ数で表すことが出来ます」
勇者「メルセンヌ数?」
魔法使い「メルセンヌ数は『2のn乗-1』で表せる数のことで、例えば3枚ならば『7』になります」
勇者「ふうん……」
魔法使い「ハノイの塔は64枚だから、メルセンヌ数は約1844京6744兆です。一枚一秒で動いているので、完成まで約5845億年かかることになります」
勇者「5845億年?! 気が遠くなるな……」
魔法使い「それが終末までの時間なので、まだまだ余裕があると思いますよ」
魔法使い「ハノイの塔は、その最小手順をメルセンヌ数で表すことが出来ます」
勇者「メルセンヌ数?」
魔法使い「メルセンヌ数は『2のn乗-1』で表せる数のことで、例えば3枚ならば『7』になります」
勇者「ふうん……」
魔法使い「ハノイの塔は64枚だから、メルセンヌ数は約1844京6744兆です。一枚一秒で動いているので、完成まで約5845億年かかることになります」
勇者「5845億年?! 気が遠くなるな……」
魔法使い「それが終末までの時間なので、まだまだ余裕があると思いますよ」
605: 2013/11/20(水) 22:29:47 ID:2TBePBMs
魔法使い「では、移動が終わっている枚数を数えませんか?」
勇者「一枚、二枚、三枚……」
魔法使い「揃っている枚数は、48枚ですね」
勇者「そうだね、48枚だ。つまり、残りは16枚か」
魔法使い「16枚で計算すると、最小手順は、えっと……65535手になります」
勇者「一枚、二枚、三枚……」
魔法使い「揃っている枚数は、48枚ですね」
勇者「そうだね、48枚だ。つまり、残りは16枚か」
魔法使い「16枚で計算すると、最小手順は、えっと……65535手になります」
606: 2013/11/20(水) 22:36:49 ID:2TBePBMs
勇者「もう万単位なんだ。というか、計算早いなぁ」
魔法使い「暗算は得意です♪ えっと、一時間は3600秒だから、残り時間は約18時間ですね」
僧侶「魔法使いちゃん、もう手数が進んでいるし、半日の猶予しかないと思ったほうがいいんじゃない?」
魔法使い「じゃあ、世界の終末まで、あと半日です」
僧侶「つまり、秋分点を通過したときに、ハノイの塔が完成して終末を迎えるのね」
魔法使い「えっ?!」
勇者「えっ……」
魔法使い「暗算は得意です♪ えっと、一時間は3600秒だから、残り時間は約18時間ですね」
僧侶「魔法使いちゃん、もう手数が進んでいるし、半日の猶予しかないと思ったほうがいいんじゃない?」
魔法使い「じゃあ、世界の終末まで、あと半日です」
僧侶「つまり、秋分点を通過したときに、ハノイの塔が完成して終末を迎えるのね」
魔法使い「えっ?!」
勇者「えっ……」
607: 2013/11/20(水) 22:41:51 ID:2TBePBMs
魔法使い「きょ、今日が世界の終末なの!?」
僧侶「もうすぐ完成するって聞いてたけど、本当にもうすぐじゃないですか!」アセアセ
勇者「闇を取り払うって、どうすればいいんだよ」
魔法使い「勇者さま、あそこを見てください。何だか、空がキラキラしていませんか?」
勇者「確かに」
僧侶「時間がありませんし、行ってみましょう。そこに光があるなら、私たちは行かなければなりません」
勇者「そうだな。二人ともこれが最後の戦いだ。心してかかろう!」
僧侶・魔法使い「はいっ!」
僧侶「もうすぐ完成するって聞いてたけど、本当にもうすぐじゃないですか!」アセアセ
勇者「闇を取り払うって、どうすればいいんだよ」
魔法使い「勇者さま、あそこを見てください。何だか、空がキラキラしていませんか?」
勇者「確かに」
僧侶「時間がありませんし、行ってみましょう。そこに光があるなら、私たちは行かなければなりません」
勇者「そうだな。二人ともこれが最後の戦いだ。心してかかろう!」
僧侶・魔法使い「はいっ!」
608: 2013/11/21(木) 19:12:02 ID:KzVkae5Q
3
勇者「何だろう、この天まで届きそうな塔は……」
魔法使い「このてっぺんから、キラキラした光が出ているように見えますよね」
僧侶「もしかして、勇者さまが言っていたアレじゃないですか?」
勇者「極北の地に、光が集められているかもしれないって話か」
僧侶「はい。この建造物に白夜の光が集められていて、極北に送られているのではないでしょうか」
勇者「ということは、これを破壊すれば闇を取り払うことが出来るという訳か」
僧侶「確証はありませんが、そうだと思います」
勇者「何だろう、この天まで届きそうな塔は……」
魔法使い「このてっぺんから、キラキラした光が出ているように見えますよね」
僧侶「もしかして、勇者さまが言っていたアレじゃないですか?」
勇者「極北の地に、光が集められているかもしれないって話か」
僧侶「はい。この建造物に白夜の光が集められていて、極北に送られているのではないでしょうか」
勇者「ということは、これを破壊すれば闇を取り払うことが出来るという訳か」
僧侶「確証はありませんが、そうだと思います」
609: 2013/11/21(木) 19:28:19 ID:KzVkae5Q
勇者「じゃあ、世界の終末が迫っているし、とりあえず倒してみよう」
魔法使い「分かりました。爆発魔法!!」
ドオォォォンッ!
魔法使い「少し穴が開いたくらいでは、びくともしないですね……」
勇者「やっぱり、柱があるから無理だな」
魔法使い「分かりました。爆発魔法!!」
ドオォォォンッ!
魔法使い「少し穴が開いたくらいでは、びくともしないですね……」
勇者「やっぱり、柱があるから無理だな」
610: 2013/11/21(木) 19:37:30 ID:KzVkae5Q
魔法使い「ところで、この柱は何で出来ているのでしょうか?」
僧侶「見たことがない素材だね」
勇者「金属なら、僧侶さんの魔法で壊せるだろ」
僧侶「私はあくまでも、拘束具を破壊することが目的だから……。こんなに巨大な建造物だと、私では無理です」
勇者「そうか……」
僧侶「見たことがない素材だね」
勇者「金属なら、僧侶さんの魔法で壊せるだろ」
僧侶「私はあくまでも、拘束具を破壊することが目的だから……。こんなに巨大な建造物だと、私では無理です」
勇者「そうか……」
611: 2013/11/21(木) 20:20:24 ID:KzVkae5Q
魔法使い「勇者さま、この中に入ってみますか?」
僧侶「入って大丈夫なのかな。これは兵器かもしれないですよ」
魔法使い「そっか……。じゃあ、何としてでも倒したいですね」
魔法使いちゃんがそう言ったとき、
一面が眩しい光に包まれた。
勇者「な、なんだ?!」
僧侶「入って大丈夫なのかな。これは兵器かもしれないですよ」
魔法使い「そっか……。じゃあ、何としてでも倒したいですね」
魔法使いちゃんがそう言ったとき、
一面が眩しい光に包まれた。
勇者「な、なんだ?!」
612: 2013/11/21(木) 20:22:12 ID:KzVkae5Q
??「よく来たな、女神に選ばれし人間よ」
勇者「!! お前が世界への侵入者か」
??「侵入者だと? 我はこの世界の造物主だ。世界を創造し、生命を誕生させたもの。この世界の理を統べるものだ」
勇者「造物主……、まさか神なのか?!」
造物主「いかにも」
僧侶「じゃあ、天使のメッセージの本当の意味は――」
勇者「!! お前が世界への侵入者か」
??「侵入者だと? 我はこの世界の造物主だ。世界を創造し、生命を誕生させたもの。この世界の理を統べるものだ」
勇者「造物主……、まさか神なのか?!」
造物主「いかにも」
僧侶「じゃあ、天使のメッセージの本当の意味は――」
613: 2013/11/21(木) 20:25:21 ID:KzVkae5Q
以前、天使から受け取ったメッセージは、ポリオミノ系のパズルだった。
ポリオミノにとって、枠は世界を表している。
そして、神の遺産であるペントミノは、
『神様は世界を破壊して創りかえることが出来る』ことを示すパズルでもある。
つまり、天使のメッセージは、世界への侵入者の排除を依頼するものではなかった。
神様が世界に干渉していることを示し、干渉前の状態に戻すことを依頼するものだったのだ。
ポリオミノにとって、枠は世界を表している。
そして、神の遺産であるペントミノは、
『神様は世界を破壊して創りかえることが出来る』ことを示すパズルでもある。
つまり、天使のメッセージは、世界への侵入者の排除を依頼するものではなかった。
神様が世界に干渉していることを示し、干渉前の状態に戻すことを依頼するものだったのだ。
614: 2013/11/21(木) 21:57:46 ID:KzVkae5Q
魔法使い「か、神様がどうしてこんなことを……」
造物主「人間よ、この世界は美しいか?」
勇者「う、美しい?」
造物主「そうだ。人間は同族で争い、同じ過ちを繰り返す。見かねた我々が罰を与えたが、それでも人の心は変わらなかった」
造物主「国と国が争い、人と人とが頃しあう。あまつさえ、少人数で編成された部隊の仲間すら信頼できず、人は頃しあうのだ。お前たちのように」
魔法使い「それは……」
造物主「人間よ、この世界は美しいか?」
勇者「う、美しい?」
造物主「そうだ。人間は同族で争い、同じ過ちを繰り返す。見かねた我々が罰を与えたが、それでも人の心は変わらなかった」
造物主「国と国が争い、人と人とが頃しあう。あまつさえ、少人数で編成された部隊の仲間すら信頼できず、人は頃しあうのだ。お前たちのように」
魔法使い「それは……」
615: 2013/11/21(木) 22:02:50 ID:KzVkae5Q
造物主「そんな人間の世界が、美しいと言えるのか!」
勇者「美しいに決まっている。もし美しくないと言うのなら、そのような世界を創造した神様の責任だ」
魔法使い「勇者さま、その一言は……」
造物主「そうだな。それもまた、真実であろう。罪を赦された者よ、お前たちに世界を見せてやろう」
その言葉と同時、五種類の正多面体が出現した。
勇者「美しいに決まっている。もし美しくないと言うのなら、そのような世界を創造した神様の責任だ」
魔法使い「勇者さま、その一言は……」
造物主「そうだな。それもまた、真実であろう。罪を赦された者よ、お前たちに世界を見せてやろう」
その言葉と同時、五種類の正多面体が出現した。
616: 2013/11/21(木) 22:50:24 ID:KzVkae5Q
造物主「プラトンの立体、これが世界だ」
魔法使い「これらが、世界そのものなんですか?」
造物主「正四面体は『火』、正六面体は『土』、正八面体は『風』、正二十面体は『水』。それぞれが四大元素を象徴し、世界を充たしている」
造物主「そして、正十二面体が第五元素『エーテル』。これが宇宙を形成して、世界の基盤となっているのだ」
魔法使い「それが世界なんですね」
勇者「でもそれが、さっきの話とどう繋がるんだ」
魔法使い「これらが、世界そのものなんですか?」
造物主「正四面体は『火』、正六面体は『土』、正八面体は『風』、正二十面体は『水』。それぞれが四大元素を象徴し、世界を充たしている」
造物主「そして、正十二面体が第五元素『エーテル』。これが宇宙を形成して、世界の基盤となっているのだ」
魔法使い「それが世界なんですね」
勇者「でもそれが、さっきの話とどう繋がるんだ」
617: 2013/11/21(木) 22:52:23 ID:KzVkae5Q
造物主「それでは、正六面体のキューブを使おうか。この調和が取れた大地は、人間を作ったことで醜く変化し始めた」
正六面体はルービックキューブのように分割されていて、それぞれの面が回転を始めた。
色が混ざり、バラバラになっていく。
造物主「人間は争い、頃しあう。その度に、世界が汚染されていく。世界の調和を図ったが、それでもバラバラになる」
造物主「どうすれば世界を揃えることが出来る。調和を取ることが出来るのだ」
造物主「女神に選ばれた者よ、このキューブを戻してみせよ」
勇者(天使が言っていたのは、生きる価値があることを示すこと。神を倒すことではない。今はこのパズルを解くしかないのか)
正六面体はルービックキューブのように分割されていて、それぞれの面が回転を始めた。
色が混ざり、バラバラになっていく。
造物主「人間は争い、頃しあう。その度に、世界が汚染されていく。世界の調和を図ったが、それでもバラバラになる」
造物主「どうすれば世界を揃えることが出来る。調和を取ることが出来るのだ」
造物主「女神に選ばれた者よ、このキューブを戻してみせよ」
勇者(天使が言っていたのは、生きる価値があることを示すこと。神を倒すことではない。今はこのパズルを解くしかないのか)
618: 2013/11/21(木) 22:59:59 ID:KzVkae5Q
勇者「僧侶さんは、こういうパズルが得意だよね」
僧侶「神様直々のパズルです。ぜひ、挑戦させてください」
カシャカシャ……
僧侶「うぅん。一面揃えるのは出来たけど、二段目を揃えようとするとバラバラになっちゃいますね……」
造物主「このように、調和を乱すのは簡単だ。しかし一度乱れてしまえば、それを戻すことは容易ではない――」
僧侶「神様直々のパズルです。ぜひ、挑戦させてください」
カシャカシャ……
僧侶「うぅん。一面揃えるのは出来たけど、二段目を揃えようとするとバラバラになっちゃいますね……」
造物主「このように、調和を乱すのは簡単だ。しかし一度乱れてしまえば、それを戻すことは容易ではない――」
619: 2013/11/21(木) 23:01:47 ID:KzVkae5Q
魔法使い「僧侶さん、上段を回転させてこうすれば、このキューブが二段目に移動しますよ」
僧侶「あっ、ほんとだ。これを四回繰り返せば、二段目も完成しそうだね」
カシャカシャ……
僧侶「よしっ、出来たぁ! あと一段!!」
僧侶「あっ、ほんとだ。これを四回繰り返せば、二段目も完成しそうだね」
カシャカシャ……
僧侶「よしっ、出来たぁ! あと一段!!」
620: 2013/11/21(木) 23:16:01 ID:KzVkae5Q
僧侶「……だめだぁ」カシャカシャ
魔法使い「まったく分からないですね……」
勇者「どこをどのように動かしたか、メモすれば良いんじゃない?」
僧侶「そうですね。メモをしながら、試行錯誤してみます」
造物主「どうだ、戻せぬであろう。揃ったように見えても、結局は乱雑になり、世界の秩序を破壊する」
僧侶「……」
造物主「それがお前たち人間なのだ。我々が過去二回、人類のあり方を見直す機会を与えたが、それも結局は――」
僧侶「すみません、静かにしてください。うるさいです」カシャカシャ
造物主「ぐぬぬ……」
魔法使い「まったく分からないですね……」
勇者「どこをどのように動かしたか、メモすれば良いんじゃない?」
僧侶「そうですね。メモをしながら、試行錯誤してみます」
造物主「どうだ、戻せぬであろう。揃ったように見えても、結局は乱雑になり、世界の秩序を破壊する」
僧侶「……」
造物主「それがお前たち人間なのだ。我々が過去二回、人類のあり方を見直す機会を与えたが、それも結局は――」
僧侶「すみません、静かにしてください。うるさいです」カシャカシャ
造物主「ぐぬぬ……」
621: 2013/11/21(木) 23:42:53 ID:KzVkae5Q
魔法使い「僧侶さん、このパターンはどうでしょうか?」
僧侶「それいいね。角を三ヶ所、入れ替えながら向きを替えられるんだ。ということは、十字架を作れば良いんだね」
カシャカシャ……
僧侶「よしっ、あとは側面を入れ替えるだけだ!」
勇者「ここを半回転させて、上を回してみたらどうなるだろ」
僧侶「それだと、揃えた場所がバラバラになってしまいます。いや、こうすれば反対側と辻褄を合わせられるから――」
僧侶「それいいね。角を三ヶ所、入れ替えながら向きを替えられるんだ。ということは、十字架を作れば良いんだね」
カシャカシャ……
僧侶「よしっ、あとは側面を入れ替えるだけだ!」
勇者「ここを半回転させて、上を回してみたらどうなるだろ」
僧侶「それだと、揃えた場所がバラバラになってしまいます。いや、こうすれば反対側と辻褄を合わせられるから――」
622: 2013/11/21(木) 23:43:50 ID:KzVkae5Q
魔法使い「!! 僧侶さん、さっきの所を逆に回してみてください」
僧侶「あっ、揃った! やったね、魔法使いちゃん!」
魔法使い「はいっ! 面白いパズルでしたね」
僧侶「そうだよね。つい時間を忘れちゃったよ」
勇者「神よ、パズルを揃えたぞ!」
僧侶「あっ、揃った! やったね、魔法使いちゃん!」
魔法使い「はいっ! 面白いパズルでしたね」
僧侶「そうだよね。つい時間を忘れちゃったよ」
勇者「神よ、パズルを揃えたぞ!」
623: 2013/11/22(金) 21:05:05 ID:46PFJEYg
造物主「そ、揃えただと?!」
勇者「例え神様が不可能だと言っても、僕たち人間は協力して困難を乗り越えることが出来るんだ!」
造物主「そしてまた、同じことを繰り返すのであろう。お前たち人間は、秩序を保つことが出来ない」
僧侶「そんなことはありません」
造物主「戦争の歴史が、それを物語っておる。そのキューブパズルを揃えても、容易にバラバラになるであろう」
僧侶「バラバラになっても、また揃えれば良いんです!」
造物主「その度に精霊たちが傷付き、世界が破壊されていると、なぜ分からんのだ」
僧侶「それは……」
造物主「世界の秩序を乱さない方法が、一つだけある。今から、それを教えてやろう」
勇者「例え神様が不可能だと言っても、僕たち人間は協力して困難を乗り越えることが出来るんだ!」
造物主「そしてまた、同じことを繰り返すのであろう。お前たち人間は、秩序を保つことが出来ない」
僧侶「そんなことはありません」
造物主「戦争の歴史が、それを物語っておる。そのキューブパズルを揃えても、容易にバラバラになるであろう」
僧侶「バラバラになっても、また揃えれば良いんです!」
造物主「その度に精霊たちが傷付き、世界が破壊されていると、なぜ分からんのだ」
僧侶「それは……」
造物主「世界の秩序を乱さない方法が、一つだけある。今から、それを教えてやろう」
624: 2013/11/22(金) 21:11:15 ID:46PFJEYg
僧侶「……!!」
正六面体、六色のキューブパズル。
その表面が闇に包まれ、黒一色になった。
造物主「こうすれば、どんなに回転しても秩序が乱れることはない。どんなに回しても、黒なのだからな。そう思わんか?」
勇者「それはまさか、世界中の人類を滅ぼすということか!」
僧侶「そんなの間違っています!」
造物主「乱れることのない秩序。精霊たちが傷付く事のない世界こそ、美しい世界のあり方だ!」
正六面体、六色のキューブパズル。
その表面が闇に包まれ、黒一色になった。
造物主「こうすれば、どんなに回転しても秩序が乱れることはない。どんなに回しても、黒なのだからな。そう思わんか?」
勇者「それはまさか、世界中の人類を滅ぼすということか!」
僧侶「そんなの間違っています!」
造物主「乱れることのない秩序。精霊たちが傷付く事のない世界こそ、美しい世界のあり方だ!」
625: 2013/11/22(金) 21:48:54 ID:46PFJEYg
僧侶「神様、見てください。これは天使に貰った、正十二面体の立体パズルです」
僧侶「この形状は宇宙を表していますよね。見ての通り、まったく揃っていません。でも、すごく芸術的で美しいじゃないですか!」
僧侶「確かに、揃っているほうが美しいかもしれません。だけどパズルは、解く過程のすべてが美しいのです」
僧侶「人間もパズルと同じです。パズルを揃えて完成させることは、人で言えば氏ぬことかもしれません。ならば、パズルを解く過程は生きることです」
僧侶「生きることは、それだけで素晴らしいことなんです!」
僧侶「この形状は宇宙を表していますよね。見ての通り、まったく揃っていません。でも、すごく芸術的で美しいじゃないですか!」
僧侶「確かに、揃っているほうが美しいかもしれません。だけどパズルは、解く過程のすべてが美しいのです」
僧侶「人間もパズルと同じです。パズルを揃えて完成させることは、人で言えば氏ぬことかもしれません。ならば、パズルを解く過程は生きることです」
僧侶「生きることは、それだけで素晴らしいことなんです!」
626: 2013/11/22(金) 22:02:49 ID:46PFJEYg
魔法使い「私はこの旅で、色んな経験をしました。僧侶さんには命の大切さを教えてもらい、勇者さまに会って恋と絆を知りました」
魔法使い「砂漠の都と港町では人々の生活に触れて、命を守ることや努力することを学びました。魔法医学を通じて、人体の神秘に触れることも出来ました」
魔法使い「砂漠の都と港町では人々の生活に触れて、命を守ることや努力することを学びました。魔法医学を通じて、人体の神秘に触れることも出来ました」
627: 2013/11/22(金) 22:04:58 ID:46PFJEYg
魔法使い「でもそれだけではなくて、人の醜さも知りました。男女が交わることは、幸せなことばかりではないこと。嫉妬に狂い、己の欲望のために人を傷つけ殺せること。そして、どんな人でも残忍になれることを知りました」
魔法使い「確かに戦争の歴史があるように、人は愚かなのかもしれません」
魔法使い「だけど私たちはお互いを信じて絆を深め、精神感応を乗り越えました。世界中の人々も、目標のために協力しあっています」
魔法使い「人は努力して、成長していけるんです!」
魔法使い「確かに戦争の歴史があるように、人は愚かなのかもしれません」
魔法使い「だけど私たちはお互いを信じて絆を深め、精神感応を乗り越えました。世界中の人々も、目標のために協力しあっています」
魔法使い「人は努力して、成長していけるんです!」
628: 2013/11/22(金) 22:28:55 ID:46PFJEYg
勇者「極南の村の精神感応を、僕たちは乗り越えた。あれを仕掛けたのが神様ならば、僕たちの絆は神様でも壊せない! それでも、僕たち人間に生きる価値がないと言えるのか!」
造物主「さすが我の試練に耐え、ここまで来ただけはあるな」
造物主「調和の取れた世界には及ばぬが、それをも美しく見せて成長していこうとする人間がいる限り、まだまだ未来の可能性が残されているのかもしれんな」
勇者「そうだ! いくら神様とはいえ、成長の機会を一方的に奪うことは許されるのか」
造物主「さすが我の試練に耐え、ここまで来ただけはあるな」
造物主「調和の取れた世界には及ばぬが、それをも美しく見せて成長していこうとする人間がいる限り、まだまだ未来の可能性が残されているのかもしれんな」
勇者「そうだ! いくら神様とはいえ、成長の機会を一方的に奪うことは許されるのか」
629: 2013/11/22(金) 22:52:27 ID:46PFJEYg
造物主「我は二度、世界の調和を図った。それが、大洪水と魔族の投入だ」
魔法使い「大洪水と魔族?!」
造物主「大洪水で世界を初期化した後、人間は新技術によりバベルの塔を建造した。それは契約違反であり、我は罰として言語を多様化させた」
造物主「そして魔族の投入は、魔法という新技術を獲得した人間に対しての戒めだった。その戦いで人間は、ノアとその息子たちへの祝福を満たしつつ、言語を共通化することに成功した」
造物主「思い返せば、やはり人間は成長しているのかもしれないな」
魔法使い「そうです。人は努力し、成長しています! より良い世界を作るために、助け合っています!」
造物主「よし、分かった。お前たちにチャンスをやろう。ハノイの完成より早く、この世界の終焉を止めて見せよ」
魔法使い「大洪水と魔族?!」
造物主「大洪水で世界を初期化した後、人間は新技術によりバベルの塔を建造した。それは契約違反であり、我は罰として言語を多様化させた」
造物主「そして魔族の投入は、魔法という新技術を獲得した人間に対しての戒めだった。その戦いで人間は、ノアとその息子たちへの祝福を満たしつつ、言語を共通化することに成功した」
造物主「思い返せば、やはり人間は成長しているのかもしれないな」
魔法使い「そうです。人は努力し、成長しています! より良い世界を作るために、助け合っています!」
造物主「よし、分かった。お前たちにチャンスをやろう。ハノイの完成より早く、この世界の終焉を止めて見せよ」
630: 2013/11/22(金) 23:54:45 ID:46PFJEYg
4
勇者「世界の終焉を止める?」
造物主「あと数時間もすれば、極北に集められた光が極南へと撃ち放たれ、世界は終焉を迎えるであろう。すべての生命は絶え、そして新たな世界が創造される」
僧侶「そんな……。本当に世界を壊して、創りかえるだなんて――」
造物主「それが嫌なら、お前たちは制限時間内にパズルを解き、未来を獲得せよ」
僧侶「パズルとは、この建造物をどのように壊すかという事ですか?」
造物主「そうだ。この塔は二つの目的のために、遥か昔に建造されたバベルの塔を移転し改修したものだ」
勇者「世界の終焉を止める?」
造物主「あと数時間もすれば、極北に集められた光が極南へと撃ち放たれ、世界は終焉を迎えるであろう。すべての生命は絶え、そして新たな世界が創造される」
僧侶「そんな……。本当に世界を壊して、創りかえるだなんて――」
造物主「それが嫌なら、お前たちは制限時間内にパズルを解き、未来を獲得せよ」
僧侶「パズルとは、この建造物をどのように壊すかという事ですか?」
造物主「そうだ。この塔は二つの目的のために、遥か昔に建造されたバベルの塔を移転し改修したものだ」
631: 2013/11/22(金) 23:56:56 ID:46PFJEYg
僧侶「二つの目的?」
造物主「魔術で塔内に光を取り込み、収束させた地磁気に乗せて、極北まで飛ばすこと。そしてその光を再び誘導し、世界を貫くことが目的だ」
僧侶「つまり、この塔はトリック系のパズルなんですね」
魔法使い「トリック系か……」
造物主「では、このバベルの塔を破壊し、過去の罪を清算せよ」
造物主「魔術で塔内に光を取り込み、収束させた地磁気に乗せて、極北まで飛ばすこと。そしてその光を再び誘導し、世界を貫くことが目的だ」
僧侶「つまり、この塔はトリック系のパズルなんですね」
魔法使い「トリック系か……」
造物主「では、このバベルの塔を破壊し、過去の罪を清算せよ」
632: 2013/11/23(土) 22:08:49 ID:GtdB5uHw
勇者「魔法使いちゃん、ハノイの塔の残り時間は?」
魔法使い「多分、5時間くらいです。少し前に見たときは、限りなく15段に近かったみたいですね」
勇者「あと5時間か……。土精霊で砂に変えるってのは、どうだろう?」
魔法使い「外壁を砂に変えても、柱があるので倒れないですよ」
勇者「じゃあ、極南の村で天使が見せてくれた、空から隕石が降ってくる魔法は?」
魔法使い「今の私では、とても難しいです。精緻に落とすためには、高度な技術と膨大な魔力が必要ですから」
魔法使い「多分、5時間くらいです。少し前に見たときは、限りなく15段に近かったみたいですね」
勇者「あと5時間か……。土精霊で砂に変えるってのは、どうだろう?」
魔法使い「外壁を砂に変えても、柱があるので倒れないですよ」
勇者「じゃあ、極南の村で天使が見せてくれた、空から隕石が降ってくる魔法は?」
魔法使い「今の私では、とても難しいです。精緻に落とすためには、高度な技術と膨大な魔力が必要ですから」
633: 2013/11/23(土) 22:40:54 ID:GtdB5uHw
勇者「そうか……。僧侶さん、何とか柱を魔法で壊せないかな」
僧侶「未知の材料なので、壊すのは難しいです」
勇者「こんな太い柱は斬れないし、手詰まりか……」
僧侶「とりあえず、この塔の中がどうなっているのか調べましょう」
勇者「でも、この中に入るのは危険じゃないか?」
僧侶「中というか、私が調べるのは骨組みです」
僧侶「未知の材料なので、壊すのは難しいです」
勇者「こんな太い柱は斬れないし、手詰まりか……」
僧侶「とりあえず、この塔の中がどうなっているのか調べましょう」
勇者「でも、この中に入るのは危険じゃないか?」
僧侶「中というか、私が調べるのは骨組みです」
634: 2013/11/23(土) 22:42:08 ID:GtdB5uHw
勇者「骨組み?」
僧侶「はい。トリック系のパズルは、内部構造を推量しなければ解けませんから」
勇者「外壁があるのに、そんなことが出来るの?」
僧侶「解毒魔法を応用すれば、調べるだけなら出来ると思います。それでは、ぐるっと一周してきます」
勇者「分かった。気をつけて行ってきてね」
僧侶「はいっ」トテトテ
僧侶「はい。トリック系のパズルは、内部構造を推量しなければ解けませんから」
勇者「外壁があるのに、そんなことが出来るの?」
僧侶「解毒魔法を応用すれば、調べるだけなら出来ると思います。それでは、ぐるっと一周してきます」
勇者「分かった。気をつけて行ってきてね」
僧侶「はいっ」トテトテ
635: 2013/11/23(土) 22:57:16 ID:GtdB5uHw
魔法使い「あっ、そうだ。神様に質問があります」
造物主「バベルの塔の壊し方なら教えんぞ」
魔法使い「いえ……。どうして、ハノイの塔を作ったのですか? 終末を前提として世界を創造したのですか?」
造物主「愚問だな。パズルは解くために創造するものであろう。人間も誕生すれば、明確な最期がある。この世界とて同じことだ」
魔法使い「それはそうかもしれませんが、何だか腑に落ちないのです」
造物主「バベルの塔の壊し方なら教えんぞ」
魔法使い「いえ……。どうして、ハノイの塔を作ったのですか? 終末を前提として世界を創造したのですか?」
造物主「愚問だな。パズルは解くために創造するものであろう。人間も誕生すれば、明確な最期がある。この世界とて同じことだ」
魔法使い「それはそうかもしれませんが、何だか腑に落ちないのです」
636: 2013/11/23(土) 22:57:49 ID:GtdB5uHw
造物主「腑に落ちないだと?」
魔法使い「バベルの塔を破壊すれば、終末を止めることが出来るのですよね。だけど終末を止めると、ハノイの塔が完成しないという事になります」
造物主「それがどうした」
魔法使い「ハノイの塔が完成しないならば、『パズルは解くために創造するものだ』という発言が誤っていることになります」
魔法使い「バベルの塔を破壊すれば、終末を止めることが出来るのですよね。だけど終末を止めると、ハノイの塔が完成しないという事になります」
造物主「それがどうした」
魔法使い「ハノイの塔が完成しないならば、『パズルは解くために創造するものだ』という発言が誤っていることになります」
637: 2013/11/23(土) 23:33:54 ID:GtdB5uHw
勇者「魔法使いちゃん、それはどういうことなんだ?」
魔法使い「つまり、この二つの塔はジレンマなのです」
勇者「ジレンマ?」
魔法使い「そうです。どちらか一方を解くと、もう一方のパズルを完成させることが出来ませんよね。それでは、パズルとして成立しません」
勇者「じゃあ、このバベルの塔は破壊することが出来ないということか……」
魔法使い「それは分かりません。恐らく、壊す方法は必ずあると思います」
魔法使い「つまり、この二つの塔はジレンマなのです」
勇者「ジレンマ?」
魔法使い「そうです。どちらか一方を解くと、もう一方のパズルを完成させることが出来ませんよね。それでは、パズルとして成立しません」
勇者「じゃあ、このバベルの塔は破壊することが出来ないということか……」
魔法使い「それは分かりません。恐らく、壊す方法は必ずあると思います」
638: 2013/11/23(土) 23:42:18 ID:GtdB5uHw
勇者「それで終末が止まるなら、別に良いじゃないか」
魔法使い「でも神様は、『パズルは解くために創造するものだ』と言いつつ、解くことが出来ないパズルを創造してしまいました。私は、それが気になります」
勇者「つまり、バベルの塔を壊しても終末が止まらない可能性もある訳か」
魔法使い「はい。本当に世界の理を統べることが出来るのなら、等しく解くことが出来るように作り直すべきなんです」
魔法使い「でも神様は、『パズルは解くために創造するものだ』と言いつつ、解くことが出来ないパズルを創造してしまいました。私は、それが気になります」
勇者「つまり、バベルの塔を壊しても終末が止まらない可能性もある訳か」
魔法使い「はい。本当に世界の理を統べることが出来るのなら、等しく解くことが出来るように作り直すべきなんです」
639: 2013/11/24(日) 00:03:00 ID:XA4gwgFg
造物主「なるほど、このような形で切り崩しに来たか。実に面白い娘だ」
魔法使い「ハノイの塔に終末時計としての役割がなければ、パズルは成立します。それに、世界の破壊をやめてください」
造物主「どうやら、論拠があるようだな」
魔法使い「15パズルが示していたドーナツ世界と、ハノイの塔が示す世界の終末は矛盾しています」
造物主「矛盾しているだと?」
魔法使い「ドーナツ世界は形状を歪めることを示唆しているのであって、破壊を示唆するものではありません。両方のパズルが発動したとき、世界はどうなるのですか!」
魔法使い「ハノイの塔に終末時計としての役割がなければ、パズルは成立します。それに、世界の破壊をやめてください」
造物主「どうやら、論拠があるようだな」
魔法使い「15パズルが示していたドーナツ世界と、ハノイの塔が示す世界の終末は矛盾しています」
造物主「矛盾しているだと?」
魔法使い「ドーナツ世界は形状を歪めることを示唆しているのであって、破壊を示唆するものではありません。両方のパズルが発動したとき、世界はどうなるのですか!」
640: 2013/11/24(日) 00:17:28 ID:XA4gwgFg
造物主「15パズルなどは、すべて女神がヒントとしてばら撒いたものだ。したがって、実態と違っていたとしても、矛盾は発生しない」
魔法使い「ただのヒント?」
勇者「なるほど……。だから、魔力が込められていたのか。パズルが発見されやすいように」
造物主「ジレンマだろうが矛盾だろうが、バベルの塔を破壊しなければこの世界は終焉を迎える。娘よ、それが真実だ」
魔法使い「……分かりました」
魔法使い「ただのヒント?」
勇者「なるほど……。だから、魔力が込められていたのか。パズルが発見されやすいように」
造物主「ジレンマだろうが矛盾だろうが、バベルの塔を破壊しなければこの世界は終焉を迎える。娘よ、それが真実だ」
魔法使い「……分かりました」
641: 2013/11/24(日) 00:23:05 ID:XA4gwgFg
5
僧侶「はぁはぁ……、ものすごく疲れたぁ」
勇者「僧侶さん、おかえり」
僧侶「ただいまです……」
魔法使い「僧侶さん、お帰りなさい。バベルの塔とハノイの塔のジレンマを追及してみたけど、取り付く島がなかったです……」
僧侶「そうなんだ。残念だったね」
僧侶「はぁはぁ……、ものすごく疲れたぁ」
勇者「僧侶さん、おかえり」
僧侶「ただいまです……」
魔法使い「僧侶さん、お帰りなさい。バベルの塔とハノイの塔のジレンマを追及してみたけど、取り付く島がなかったです……」
僧侶「そうなんだ。残念だったね」
642: 2013/11/24(日) 00:23:51 ID:XA4gwgFg
勇者「それで、内部構造は分かったの?」
僧侶「高層階は分からないけど、土台周辺の構造なら何とか……。まず、この建造物は円筒形をしています。入り口はありませんでした」
魔法使い「トリック系のパズルなら、入り口がないのは想定内ですね」
僧侶「そうだね。骨組みは鉄柱が2本と、未知の素材の柱が等間隔に何本も立っていました。そして鉄柱を始点と終点にして、何本もの鉄材を繋いで、C字環が作られていました」
勇者「その骨組みを、外壁が固めているのか」
僧侶「はい。恐らく未知の素材の柱が、重要な魔道具なのだと思います」
僧侶「高層階は分からないけど、土台周辺の構造なら何とか……。まず、この建造物は円筒形をしています。入り口はありませんでした」
魔法使い「トリック系のパズルなら、入り口がないのは想定内ですね」
僧侶「そうだね。骨組みは鉄柱が2本と、未知の素材の柱が等間隔に何本も立っていました。そして鉄柱を始点と終点にして、何本もの鉄材を繋いで、C字環が作られていました」
勇者「その骨組みを、外壁が固めているのか」
僧侶「はい。恐らく未知の素材の柱が、重要な魔道具なのだと思います」
643: 2013/11/24(日) 00:25:52 ID:XA4gwgFg
勇者「巨大な魔道具か。それで、中の空間には何があるの?」
僧侶「さすがに、そこまでは……。でもこれがパズルである以上は、この情報の中に破壊する手がかりがあるはずです」
魔法使い「勇者さま、内部は空洞だと思います。少し穴を覗いてみたけど、キラキラした光が上っていくのが見えるだけでした」
僧侶「魔法使いちゃん、中は危ないって言ったでしょ。治癒魔法……」
魔法使い「ごめんなさい」
勇者「とりあえず、C字環の切れ目に行ってみよう。そこが攻略の糸口だと思う」
僧侶「そうですね」
僧侶「さすがに、そこまでは……。でもこれがパズルである以上は、この情報の中に破壊する手がかりがあるはずです」
魔法使い「勇者さま、内部は空洞だと思います。少し穴を覗いてみたけど、キラキラした光が上っていくのが見えるだけでした」
僧侶「魔法使いちゃん、中は危ないって言ったでしょ。治癒魔法……」
魔法使い「ごめんなさい」
勇者「とりあえず、C字環の切れ目に行ってみよう。そこが攻略の糸口だと思う」
僧侶「そうですね」
644: 2013/11/24(日) 19:51:44 ID:XA4gwgFg
・・・
・・・・・・
僧侶「ここです」
勇者「魔法使いちゃん、穴を開けて確かめてみて。爆発魔法は破片が飛び散るから、砂に変える方針で」
魔法使い「はい、土精霊召喚!」
勇者「本当に、切れ目になっているんだ」
魔法使い「そうみたいですね」
勇者「鉄柱が上まで続いているから、C字環が連なっているのかもしれない。問題は、どうやって土台を破壊するかだけど――」
魔法使い「あっ!!」
勇者「どうしたの?」
魔法使い「電撃魔法です!」
・・・・・・
僧侶「ここです」
勇者「魔法使いちゃん、穴を開けて確かめてみて。爆発魔法は破片が飛び散るから、砂に変える方針で」
魔法使い「はい、土精霊召喚!」
勇者「本当に、切れ目になっているんだ」
魔法使い「そうみたいですね」
勇者「鉄柱が上まで続いているから、C字環が連なっているのかもしれない。問題は、どうやって土台を破壊するかだけど――」
魔法使い「あっ!!」
勇者「どうしたの?」
魔法使い「電撃魔法です!」
645: 2013/11/24(日) 20:13:04 ID:XA4gwgFg
魔法使い「勇者さまは、電撃魔法を使えましたよね」
勇者「正確には、電撃をまとった魔法剣だけど」
魔法使い「その電撃魔法は、無理やり電流を流す魔法ですよねえ!」
勇者「それはそうだけど、それがどうかしたの?」
魔法使い「研究論文で読んだのですが、この状況ではフレミングの左手の法則が使えるんです!」
勇者「正確には、電撃をまとった魔法剣だけど」
魔法使い「その電撃魔法は、無理やり電流を流す魔法ですよねえ!」
勇者「それはそうだけど、それがどうかしたの?」
魔法使い「研究論文で読んだのですが、この状況ではフレミングの左手の法則が使えるんです!」
646: 2013/11/24(日) 20:29:25 ID:XA4gwgFg
勇者「何、そのフレミングって?」
魔法使い「この塔の内部は光を極北に飛ばすために、磁界の向きが真上になっていますよね。そして、水平方向に設置されているC字環に電流を流すと、右ねじの法則で垂直方向に磁界の渦が発生します」
勇者「う、うん……」
魔法使い「すると、磁界の渦の方向によって、磁界が強まる場所と弱まる場所が出来ることになります」
勇者「そっか……、そうなるね」
魔法使い「その磁界の強弱がC字環に作用して、その力に押されて動くのです。それが、フレミングの左手の法則です」
魔法使い「この塔の内部は光を極北に飛ばすために、磁界の向きが真上になっていますよね。そして、水平方向に設置されているC字環に電流を流すと、右ねじの法則で垂直方向に磁界の渦が発生します」
勇者「う、うん……」
魔法使い「すると、磁界の渦の方向によって、磁界が強まる場所と弱まる場所が出来ることになります」
勇者「そっか……、そうなるね」
魔法使い「その磁界の強弱がC字環に作用して、その力に押されて動くのです。それが、フレミングの左手の法則です」
647: 2013/11/24(日) 20:39:41 ID:XA4gwgFg
勇者「なるほど……。それでバベルの塔を壊せるの?」
魔法使い「試す価値はあると思います。C字環に反時計回りの電流を流してやれば、外向きの力が働きます」
勇者「えっと……、その親指が外側を向いているから、塔を壊せるのか」
魔法使い「はい。C字環が外壁を壊して、すべて崩落するはずです」
勇者「そうなんだ。おおっ、おおぉぉっ!」
魔法使い「つまり、電撃魔法でバベルの塔を破壊できます!」
魔法使い「試す価値はあると思います。C字環に反時計回りの電流を流してやれば、外向きの力が働きます」
勇者「えっと……、その親指が外側を向いているから、塔を壊せるのか」
魔法使い「はい。C字環が外壁を壊して、すべて崩落するはずです」
勇者「そうなんだ。おおっ、おおぉぉっ!」
魔法使い「つまり、電撃魔法でバベルの塔を破壊できます!」
648: 2013/11/24(日) 20:54:02 ID:XA4gwgFg
僧侶「でも問題は、勇者さまの魔力ですよね。この塔を破壊しようと思えば、それだけ大きな魔力が必要になります」
勇者「そうだよな……」
魔法使い「私のネックレスを使えば、魔力を補えます」
僧侶「だったら、私の装身具も使ってもらいましょう。蘇生魔法を宿したものが残っているので、生体エネルギーの強化に使ってください」
勇者「じゃあ、この魔道具を使って、全力で放てば良いのかな」
魔法使い「そうです。勇者さま、頑張ってください!」
僧侶「勇者さま……。私と勇者さまの幸せのために、魔法使いちゃんの未来のためにお願いします」
勇者「二人の気持ち、受け取ったよ。ありがとう。こっちの方向でいいんだよね」
魔法使い「はいっ!」
勇者「そうだよな……」
魔法使い「私のネックレスを使えば、魔力を補えます」
僧侶「だったら、私の装身具も使ってもらいましょう。蘇生魔法を宿したものが残っているので、生体エネルギーの強化に使ってください」
勇者「じゃあ、この魔道具を使って、全力で放てば良いのかな」
魔法使い「そうです。勇者さま、頑張ってください!」
僧侶「勇者さま……。私と勇者さまの幸せのために、魔法使いちゃんの未来のためにお願いします」
勇者「二人の気持ち、受け取ったよ。ありがとう。こっちの方向でいいんだよね」
魔法使い「はいっ!」
649: 2013/11/24(日) 22:50:55 ID:XA4gwgFg
勇者「はあぁぁぁっ……、やってやる!」
蘇生魔法の装身具が崩れ、エメラルドが緑色に淡く輝いた。
全身が興奮して高ぶり、力がみなぎってくる。
勇者「神速・雷光剣っ!!」
刀身が光を纏い、小規模な放電を繰り返す。
そして激しい爆音とともに、電撃が鉄柱へと放たれた。
蘇生魔法の装身具が崩れ、エメラルドが緑色に淡く輝いた。
全身が興奮して高ぶり、力がみなぎってくる。
勇者「神速・雷光剣っ!!」
刀身が光を纏い、小規模な放電を繰り返す。
そして激しい爆音とともに、電撃が鉄柱へと放たれた。
650: 2013/11/24(日) 22:52:35 ID:XA4gwgFg
ドゴゴゴオオォォンッッ!!
鉄柱からC字環へと伝導し、電撃が塔全体を駆け巡る。
激しい電流が強力な磁界を発生させ、骨格が呻き声をあげた。
C字環の継ぎ目が外れ、強大な力が鉄材を押し飛ばす。
そして外壁を突き破り、崩落の連鎖反応が発生した。
眼前をC字環だった物が飛んでいく。
そして天高くから、無数の瓦礫が降ってきた。
鉄柱からC字環へと伝導し、電撃が塔全体を駆け巡る。
激しい電流が強力な磁界を発生させ、骨格が呻き声をあげた。
C字環の継ぎ目が外れ、強大な力が鉄材を押し飛ばす。
そして外壁を突き破り、崩落の連鎖反応が発生した。
眼前をC字環だった物が飛んでいく。
そして天高くから、無数の瓦礫が降ってきた。
651: 2013/11/24(日) 23:15:36 ID:XA4gwgFg
魔法使い「土精霊、風精霊召喚!!」
降り注ぐ外壁と地面を変形させて、巨大な傘を作った。
その上に、次々と瓦礫が降り注ぐ。
傘に瓦礫が降り積もれば、その重みに耐えられないかもしれない。
だから砂に分解して、塔の中心へと風で吹き飛ばす。
ドスッ
一本の鉄材が、岩石の傘を貫いた。
降り注ぐ外壁と地面を変形させて、巨大な傘を作った。
その上に、次々と瓦礫が降り注ぐ。
傘に瓦礫が降り積もれば、その重みに耐えられないかもしれない。
だから砂に分解して、塔の中心へと風で吹き飛ばす。
ドスッ
一本の鉄材が、岩石の傘を貫いた。
652: 2013/11/24(日) 23:20:58 ID:XA4gwgFg
魔法使い「きゃあっ!!」
ドスッドスッ
まるで雨のように、何本もの鉄材が降ってきた。
C字環が吹き飛んだことで、固定されていた鉄柱が外れたのだ。
どうしよう……。
こんなものが直撃すると、一溜まりもない。
僧侶「魔法使いちゃん、一緒に頑張りましょ! 防御魔法!」
ドスッドスッ
まるで雨のように、何本もの鉄材が降ってきた。
C字環が吹き飛んだことで、固定されていた鉄柱が外れたのだ。
どうしよう……。
こんなものが直撃すると、一溜まりもない。
僧侶「魔法使いちゃん、一緒に頑張りましょ! 防御魔法!」
653: 2013/11/24(日) 23:31:13 ID:XA4gwgFg
僧侶さんが、防御魔法で傘を強化してくれた。
降り注ぐ鉄柱を受け止め、その鉄柱でさらに傘を強化する。
しかし、降り積もる瓦礫に耐え切れず、ひびが入り始めた。
魔法使い「だめっ、もう魔力が足りない……」
勇者「大丈夫だよ」
エメラルドのネックレスを、首に掛けてもらった。
これで魔力を補うことが出来る。
魔法使い「勇者さま、ありがとうございます。土精霊!」
土精霊の使役を強め、傘の補修を行う。
それに呼応して、ネックレスが淡く輝き、魔力を放つ。
しかし限界を超えたせいか、エメラルドが割れてしまった。
降り注ぐ鉄柱を受け止め、その鉄柱でさらに傘を強化する。
しかし、降り積もる瓦礫に耐え切れず、ひびが入り始めた。
魔法使い「だめっ、もう魔力が足りない……」
勇者「大丈夫だよ」
エメラルドのネックレスを、首に掛けてもらった。
これで魔力を補うことが出来る。
魔法使い「勇者さま、ありがとうございます。土精霊!」
土精霊の使役を強め、傘の補修を行う。
それに呼応して、ネックレスが淡く輝き、魔力を放つ。
しかし限界を超えたせいか、エメラルドが割れてしまった。
654: 2013/11/24(日) 23:39:38 ID:XA4gwgFg
魔法使い「ああっ、エメラルドが……」
勇者「魔法使いちゃん、傘が崩落しないように柱を! それと、出口の確保」
魔法使い「そ、そんな余力は! えっと……」
水精霊の装身具を解放し、凍結魔法を発動させた。
大気中の水分が凍結し、何本もの氷の柱が傘を支える。
さらに、火精霊と風精霊の装身具も解放した。
爆発魔法が発動し、積もった瓦礫を吹き飛ばす。
そして、この出口を塞がれないように、突風を巻き起こした。
勇者「魔法使いちゃん、傘が崩落しないように柱を! それと、出口の確保」
魔法使い「そ、そんな余力は! えっと……」
水精霊の装身具を解放し、凍結魔法を発動させた。
大気中の水分が凍結し、何本もの氷の柱が傘を支える。
さらに、火精霊と風精霊の装身具も解放した。
爆発魔法が発動し、積もった瓦礫を吹き飛ばす。
そして、この出口を塞がれないように、突風を巻き起こした。
655: 2013/11/24(日) 23:47:00 ID:XA4gwgFg
僧侶さんも私も、すべての魔道具と装身具を使い切った。
もう私たちには余力がない。
魔法使い「お願い! 早く終わって!!」
風が吹き荒れる音が弱くなってきた。
それと同時、降り積もる瓦礫の音が大きくなる。
土精霊の分解も追いついていない。
僧侶「魔法使いちゃん、もう少し! もう少しだから」
魔法使い「はいっ……」
傘を支える圧力で、氷柱が溶け始めている。
もう傘の崩落が近い。
やがて、
すべての音が聞こえなくなった。
もう私たちには余力がない。
魔法使い「お願い! 早く終わって!!」
風が吹き荒れる音が弱くなってきた。
それと同時、降り積もる瓦礫の音が大きくなる。
土精霊の分解も追いついていない。
僧侶「魔法使いちゃん、もう少し! もう少しだから」
魔法使い「はいっ……」
傘を支える圧力で、氷柱が溶け始めている。
もう傘の崩落が近い。
やがて、
すべての音が聞こえなくなった。
656: 2013/11/24(日) 23:58:57 ID:XA4gwgFg
魔法使い「音がやんだ?」
勇者「どうやら、崩落が終わったみたいだな」
僧侶「やった……、やりましたね!」
魔法使い「勇者さま、バベルの塔を破壊しましたっ!!」
勇者「よしっ!! 二人とも、よく頑張ったね」
僧侶・魔法使い「はいっ!!」
みんなで手を取り合えば、出来ないことはない。
一人では不可能なことも、手を取り合えば成し遂げることが出来るのだ!
バベルの塔の崩落が終わったとき、瓦礫の山には一本の道が出来ていた。
勇者「どうやら、崩落が終わったみたいだな」
僧侶「やった……、やりましたね!」
魔法使い「勇者さま、バベルの塔を破壊しましたっ!!」
勇者「よしっ!! 二人とも、よく頑張ったね」
僧侶・魔法使い「はいっ!!」
みんなで手を取り合えば、出来ないことはない。
一人では不可能なことも、手を取り合えば成し遂げることが出来るのだ!
バベルの塔の崩落が終わったとき、瓦礫の山には一本の道が出来ていた。
657: 2013/11/25(月) 22:03:54 ID:TiILGySs
6
~極北の地~
調査団A「お、おいっ。結界の様子がおかしいぞ」
魔道師D「ひ、光が空に昇っていく」
調査団B「いよいよ、地に放たれるということか……」
魔道師C「いや、違う。エネルギーが拡散している」
ピカッッ……
ドオォォォン!!
魔道師D「伏せろぉぉっ!!」
~極北の地~
調査団A「お、おいっ。結界の様子がおかしいぞ」
魔道師D「ひ、光が空に昇っていく」
調査団B「いよいよ、地に放たれるということか……」
魔道師C「いや、違う。エネルギーが拡散している」
ピカッッ……
ドオォォォン!!
魔道師D「伏せろぉぉっ!!」
658: 2013/11/25(月) 22:05:17 ID:TiILGySs
・・・
・・・・・・
調査団B「いててて、何が起こったんだ」
魔道師D「全体回復魔法!」
調査団A「光が……、結界が消えたぞ」
魔道師C「もしかして、極南で魔王を倒したのか?」
調査団A「そうだと良いがな。内部調査を行い、城に戻ろう」
BCD「了解っ!」
・・・・・・
調査団B「いててて、何が起こったんだ」
魔道師D「全体回復魔法!」
調査団A「光が……、結界が消えたぞ」
魔道師C「もしかして、極南で魔王を倒したのか?」
調査団A「そうだと良いがな。内部調査を行い、城に戻ろう」
BCD「了解っ!」
659: 2013/11/25(月) 22:18:33 ID:TiILGySs
7
~極南の地~
??「勇者よ、お見事です」
勇者「あなたは?」
女神「私は女神です。仲間と力を合わせ、よくぞ神が定めし終焉を打ち破ってくれました。とても感謝しています」
勇者「……はい。女神さまよりそのような言葉をいただけるとは、身に余る光栄です」
女神「あなたたち二人も、よく頑張ってくれました。改めて、人間の強さを知ることが出来ました」
僧侶・魔法使い「は、はいっ」
~極南の地~
??「勇者よ、お見事です」
勇者「あなたは?」
女神「私は女神です。仲間と力を合わせ、よくぞ神が定めし終焉を打ち破ってくれました。とても感謝しています」
勇者「……はい。女神さまよりそのような言葉をいただけるとは、身に余る光栄です」
女神「あなたたち二人も、よく頑張ってくれました。改めて、人間の強さを知ることが出来ました」
僧侶・魔法使い「は、はいっ」
660: 2013/11/25(月) 22:24:33 ID:TiILGySs
造物主「女神よ、人間はお前の言う通り、愚かなだけの生物ではなかった。力を合わせ、常に成長している」
女神「主よ、やっと分かってくれましたね」
造物主「そうだな。このような者がいれば、人間は世界の秩序を保ち、前に進むことが出来るだろう」
女神「では、終焉を破棄されるのですね」
造物主「そう伝令しろ。この者たちは、我の試練を乗り越えたのだからな」
女神「主よ、やっと分かってくれましたね」
造物主「そうだな。このような者がいれば、人間は世界の秩序を保ち、前に進むことが出来るだろう」
女神「では、終焉を破棄されるのですね」
造物主「そう伝令しろ。この者たちは、我の試練を乗り越えたのだからな」
661: 2013/11/25(月) 22:35:30 ID:TiILGySs
魔法使い「あの……、まだ終わっていません」
造物主「終わっていないだと?」
魔法使い「はいっ。ハノイの塔を完成させなければなりません」
造物主「それはもう良い。終焉への刻は止まったのだ」
魔法使い「いいえ、神様はおっしゃいました」
『パズルは解くために創造するものだ』、と――。
魔法使い「だから、解くことが出来ないパズルを存在させるわけにはいきません」
造物主「終わっていないだと?」
魔法使い「はいっ。ハノイの塔を完成させなければなりません」
造物主「それはもう良い。終焉への刻は止まったのだ」
魔法使い「いいえ、神様はおっしゃいました」
『パズルは解くために創造するものだ』、と――。
魔法使い「だから、解くことが出来ないパズルを存在させるわけにはいきません」
662: 2013/11/25(月) 22:39:10 ID:TiILGySs
僧侶「そうだね。約5845億年もの歳月を重ねて、ようやく完成が見えているんです。解いてあげましょう!」
勇者「おいおい、待てよ。ハノイの塔は終末時計なんだろ。それをもう一度動かしたら、どんな危険があるか分からないじゃないか」
魔法使い「だからこそ、完成させなければならないのです」
勇者「神様がいいと言ってるんだ、その必要はないんじゃないか?」
魔法使い「次に神様がハノイの塔を動かしたとき、残り時間はもう僅かしかありませんよね。そのとき、人々はどうしたら良いのですか?」
勇者「くっ……、そうだな。今、解かなければならないのか」
勇者「おいおい、待てよ。ハノイの塔は終末時計なんだろ。それをもう一度動かしたら、どんな危険があるか分からないじゃないか」
魔法使い「だからこそ、完成させなければならないのです」
勇者「神様がいいと言ってるんだ、その必要はないんじゃないか?」
魔法使い「次に神様がハノイの塔を動かしたとき、残り時間はもう僅かしかありませんよね。そのとき、人々はどうしたら良いのですか?」
勇者「くっ……、そうだな。今、解かなければならないのか」
663: 2013/11/25(月) 22:54:26 ID:TiILGySs
造物主「面白い、やってみせよ。ハノイの塔が完成したとき、世界は砕け終焉を迎えるであろう」
女神「ちょ、ちょっと! そんなこと、勝手に決めないでくださいよ!」
造物主「女神よ、お前はお前が選んだ者を信じることが出来ぬのか?」
女神「それは……」
造物主「ならば、問題なかろう」
女神「……承知いたしました」
女神「ちょ、ちょっと! そんなこと、勝手に決めないでくださいよ!」
造物主「女神よ、お前はお前が選んだ者を信じることが出来ぬのか?」
女神「それは……」
造物主「ならば、問題なかろう」
女神「……承知いたしました」
664: 2013/11/25(月) 22:55:36 ID:TiILGySs
勇者「とりあえず、残り時間を調べよう。ハノイの塔は、自動で解かれているしな」
魔法使い「残り枚数は、あと12段。つまり、終末まで一時間ちょっとです」
勇者「あと一時間か。二人のこと、信じているから」
僧侶「はい、任せてください!」
魔法使い「頑張ります!」
魔法使い「残り枚数は、あと12段。つまり、終末まで一時間ちょっとです」
勇者「あと一時間か。二人のこと、信じているから」
僧侶「はい、任せてください!」
魔法使い「頑張ります!」
665: 2013/11/25(月) 23:08:52 ID:TiILGySs
魔法使い「神様。ハノイの塔が完成すれば、世界が終焉を迎えるんですよね」
造物主「それが、そのパズルの特性だ」
魔法使い「では、私からのお願いです。プラトンの立体を、すべて出してください。五つで世界になるのですよね?」
造物主「そうだ。必要だというならば、用意してやろう」
魔法使い「ありがとうございます」
僧侶「次は、私からのお願いです。本当に世界の理を統べることが出来るのならば、私たちにそれを証明してください」
造物主「証明してほしいだと?」
僧侶「この世界が滅びると、私たちは真実を確認することが出来ません。ハノイの塔で世界が終焉を迎えるならば、その仮想世界を壊してみせてください」
造物主「それが、そのパズルの特性だ」
魔法使い「では、私からのお願いです。プラトンの立体を、すべて出してください。五つで世界になるのですよね?」
造物主「そうだ。必要だというならば、用意してやろう」
魔法使い「ありがとうございます」
僧侶「次は、私からのお願いです。本当に世界の理を統べることが出来るのならば、私たちにそれを証明してください」
造物主「証明してほしいだと?」
僧侶「この世界が滅びると、私たちは真実を確認することが出来ません。ハノイの塔で世界が終焉を迎えるならば、その仮想世界を壊してみせてください」
666: 2013/11/25(月) 23:13:10 ID:TiILGySs
造物主「それが、バベルの塔とハノイの塔のジレンマに対する答えか」
魔法使い「はい。それ以外に、両方のパズルを解く方法はありません」
造物主「この世界が破壊の運命から免れるために、別の世界を犠牲にするわけだな」
僧侶「命は命で繋がっています。その正多面体が犠牲だというなら、私たちはそれを無価値なものにするつもりはありません」
魔法使い「そうです。私はこの世界を、絶対に価値あるものにしてみせます!」
造物主「その言葉に偽りはないな。それでは証明してみせよう。我が世界を統べることが出来ることを――」
魔法使い「はい。それ以外に、両方のパズルを解く方法はありません」
造物主「この世界が破壊の運命から免れるために、別の世界を犠牲にするわけだな」
僧侶「命は命で繋がっています。その正多面体が犠牲だというなら、私たちはそれを無価値なものにするつもりはありません」
魔法使い「そうです。私はこの世界を、絶対に価値あるものにしてみせます!」
造物主「その言葉に偽りはないな。それでは証明してみせよう。我が世界を統べることが出来ることを――」
667: 2013/11/25(月) 23:24:56 ID:TiILGySs
ハノイの塔の結界内に、五種類のプラトンの立体が配置された。
火土風水と宇宙。
仮想世界に囲まれ、ハノイの円盤が時を刻む。
カタカタカタ……。
一枚。
そして、また一枚。
終末へのカウントが刻まれていく。
火土風水と宇宙。
仮想世界に囲まれ、ハノイの円盤が時を刻む。
カタカタカタ……。
一枚。
そして、また一枚。
終末へのカウントが刻まれていく。
668: 2013/11/25(月) 23:42:55 ID:TiILGySs
そして一時間後、
ハノイの塔が完成して、仮想世界が砕け散った。
魔力が解放されて、闇に消えていく。
その魔力に、私は愕然とした。
この立体は、ただの模型ではなかったの?!
本当に、これが世界だったの?
たった今、
私は世界を滅ぼしたのだ――。
ハノイの塔が完成して、仮想世界が砕け散った。
魔力が解放されて、闇に消えていく。
その魔力に、私は愕然とした。
この立体は、ただの模型ではなかったの?!
本当に、これが世界だったの?
たった今、
私は世界を滅ぼしたのだ――。
669: 2013/11/26(火) 18:10:56 ID:daNnlRAU
8
造物主「女神に選ばれし者よ、よくやり遂げた。ハノイを動かすという傲慢な選択も、転じれば勇気ある選択か」
魔法使い「あの……。さっきの立体は、まさか本当に……」
造物主「娘よ、我が模型だと言えば安心するのか?」
魔法使い「それは……」
造物主「女神に選ばれし者よ、よくやり遂げた。ハノイを動かすという傲慢な選択も、転じれば勇気ある選択か」
魔法使い「あの……。さっきの立体は、まさか本当に……」
造物主「娘よ、我が模型だと言えば安心するのか?」
魔法使い「それは……」
670: 2013/11/26(火) 18:16:20 ID:daNnlRAU
造物主「お前は誓ったはずだ。この世界を価値あるものにする、と」
魔法使い「……はい」
造物主「ならば、その覚悟と決意を我に魅せてくれないか。一つの世界を犠牲にしてまで得た、お前たちの未来を」
魔法使い「!! は、はいっ!」
造物主「それでは、我は再び静観しよう。お前たち人間が導き出す、この世界の答え。見届けさせてもらうぞ」
その言葉と同時、一帯が光に包まれた。
その光が消えたときには、神様がいなくなっていた。
魔法使い「……はい」
造物主「ならば、その覚悟と決意を我に魅せてくれないか。一つの世界を犠牲にしてまで得た、お前たちの未来を」
魔法使い「!! は、はいっ!」
造物主「それでは、我は再び静観しよう。お前たち人間が導き出す、この世界の答え。見届けさせてもらうぞ」
その言葉と同時、一帯が光に包まれた。
その光が消えたときには、神様がいなくなっていた。
671: 2013/11/26(火) 18:40:28 ID:daNnlRAU
勇者「お疲れさま。よくやったよ、二人とも」
僧侶「終わりましたね。もうヘトヘトです」
魔法使い「……、勇者さま」
勇者「魔法使いちゃん?」
魔法使い「私はハノイの塔を完成させて、世界を一つ滅ぼしてしまいました。だから私は、より良い未来を築くために頑張りたいです」
勇者「そうだね。でも、一人で背負う必要はないからね。みんなで協力しないと、出来ないことだから」
僧侶「魔法使いちゃん。これからも、私たちと一緒に頑張ろうね」
魔法使い「はいっ。勇者さま、僧侶さん、これからもお願いします!」
僧侶「終わりましたね。もうヘトヘトです」
魔法使い「……、勇者さま」
勇者「魔法使いちゃん?」
魔法使い「私はハノイの塔を完成させて、世界を一つ滅ぼしてしまいました。だから私は、より良い未来を築くために頑張りたいです」
勇者「そうだね。でも、一人で背負う必要はないからね。みんなで協力しないと、出来ないことだから」
僧侶「魔法使いちゃん。これからも、私たちと一緒に頑張ろうね」
魔法使い「はいっ。勇者さま、僧侶さん、これからもお願いします!」
672: 2013/11/26(火) 18:53:48 ID:daNnlRAU
僧侶「それじゃあ、魔法使いちゃん。帰りに、賢者さんのお墓に報告しましょうか」
魔法使い「はい、もちろんです。賢者さんや亡くなった方に報告をしたいです」
女神「そのことについて、私は謝罪しなければなりません。村の方々のみならず、数多の者が私の加護を受け、犠牲になってしまいました。本当に申し訳ないと思っています」
勇者「それは……」
女神「先日、極南の村にて弔ったと報告を受けました。来世では、彼らに祝福があることでしょう」
女神「それをもって、謝罪に代えさせてもらいたいと思います」
僧侶「そう……なんですね」
魔法使い「良かったです」
魔法使い「はい、もちろんです。賢者さんや亡くなった方に報告をしたいです」
女神「そのことについて、私は謝罪しなければなりません。村の方々のみならず、数多の者が私の加護を受け、犠牲になってしまいました。本当に申し訳ないと思っています」
勇者「それは……」
女神「先日、極南の村にて弔ったと報告を受けました。来世では、彼らに祝福があることでしょう」
女神「それをもって、謝罪に代えさせてもらいたいと思います」
僧侶「そう……なんですね」
魔法使い「良かったです」
673: 2013/11/26(火) 19:26:02 ID:daNnlRAU
女神「あなたたちが困難を乗り越え、成し遂げてくれたことに心から敬意を表します」
女神「その来たる人生に、女神の祝福があることを約束しましょう。正しき道を歩み、前に進みなさい」
勇者「身に余る光栄です、ありがとうございます!」
僧侶「ありがとうございます」
魔法使い「女神さま、私をここまで導いてくれてありがとうございました」
女神「それでは、あなたたちに祝福された未来を――」
温かく優しい光に包まれる。
その光が消えると、女神さまがいなくなっていた。
勇者「僕たちも帰ろうか。魔女さんが待ってるし、報告すべきことが山ほどある」
僧侶・魔法使い「はいっ、勇者さまっ!」
女神「その来たる人生に、女神の祝福があることを約束しましょう。正しき道を歩み、前に進みなさい」
勇者「身に余る光栄です、ありがとうございます!」
僧侶「ありがとうございます」
魔法使い「女神さま、私をここまで導いてくれてありがとうございました」
女神「それでは、あなたたちに祝福された未来を――」
温かく優しい光に包まれる。
その光が消えると、女神さまがいなくなっていた。
勇者「僕たちも帰ろうか。魔女さんが待ってるし、報告すべきことが山ほどある」
僧侶・魔法使い「はいっ、勇者さまっ!」
674: 2013/11/26(火) 19:28:01 ID:daNnlRAU
第10話 おわり
(プラトンの立体)
・キューブパズル
(構造推測系パズル)
・バベルの塔
・ハノイの塔
(プラトンの立体)
・キューブパズル
(構造推測系パズル)
・バベルの塔
・ハノイの塔
675: 2013/11/26(火) 19:38:45 ID:daNnlRAU
今回はここまでです。
最終決戦なので、パズルSSの本領を発揮しました!
熱いバトルを期待していた方は、すみませんでした。
パズルネタは、プラトンの立体。
四大元素と宇宙を象徴しているので、勇者SSにぴったりな立体パズルです。
土属性の正六面体パズル『ルービックキューブ』は、絶対に外せないネタですね。(笑)
ちなみに、
正二十面体パズル『Eitan's Star』は、なんと1万円の高級品です。
という訳で、
次回は起承転結でいう『結』。
世界も救ったし、ついにエピローグです。
最終決戦なので、パズルSSの本領を発揮しました!
熱いバトルを期待していた方は、すみませんでした。
パズルネタは、プラトンの立体。
四大元素と宇宙を象徴しているので、勇者SSにぴったりな立体パズルです。
土属性の正六面体パズル『ルービックキューブ』は、絶対に外せないネタですね。(笑)
ちなみに、
正二十面体パズル『Eitan's Star』は、なんと1万円の高級品です。
という訳で、
次回は起承転結でいう『結』。
世界も救ったし、ついにエピローグです。
次回:最終話 私たちの幸せ
引用: 勇者「ドーナツの世界?!」
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