207: 2013/11/29(金) 02:21:21 ID:Y9gVCng2
【進撃の巨人】ベルトルト「今度こそ故郷に帰る」【前編】
******
アニ(痛い、痛い)パシュッ
アニ(体中が痛い)ヒュン
アニ(でも…もう引き返せない)タッ
アニ(…ライナー、ベル…)
アニ(ごめんね)パシュッ
******
アルミン「! 煙弾…撤退だ…」
ジャン「何だ…終わったのか…?」
コニー「帰れる!やった!」
ライナー(アニはどうなった…一刻も早くアイツの無事を確かめねぇと…)
ライナー「おい、ベル… !!」
208: 2013/11/29(金) 02:22:29 ID:Y9gVCng2
ベルトルト「ッ…」ギリッ
ライナー(何だ、この表情は…ユミルを見て…アニを心配してるっつーよりも…)
ユミル「……」
ライナー(ユミルを憎んでる、みたいだ)
******
アニ(私は違う、頃したくて頃してるわけじゃない)パシュッ
アニ(何かを得る為に何かを犠牲にしなきゃならないのなら)ギュルルルル
グンタ「……」ヒュンッ
アニ「……」ビュンッ
グンタ「ん!リヴァイ兵長…」
アニ「……」ジャギ
グンタ「…イヤ違う…誰だ?」
209: 2013/11/29(金) 02:23:08 ID:Y9gVCng2
アニ「―――!」ザシュッ
グンタ「!!」ブシュ
エレン「ん!?…グンタさん!?」
グンタ「」ドゴォッ
エレン「え?ちょっと、どうし―――」
グンタ「」ブラン
エレン「!!」
オルオ「エレン止まるな!進め!!」ガシッ
アニ(何を犠牲にしてでも)
ペトラ「誰だ!!」
エルド「エレンを守れ!!」
アニ(私たちは帰るんだ)ヒュンッ
210: 2013/11/29(金) 02:23:41 ID:Y9gVCng2
オルオ「女型の中身か!?それとも複数いるのか!?」
アニ(アイツらの為なら私は―――)スゥッ
エレン「女型が!?そんな…どうして!!」
アニ(何だってしてやる!)カッ
アニ「」ドォッ…
エルド「やはりか!!…来るぞ!!女型の巨人だ!!」
******
クリスタ「ユミル!」パシュッ
ユミル「おぉ、クリスタ。私から離れてどこに行ってたんだ?」
クリスタ「違う班なんだから当然じゃない!大丈夫?怪我とかしてない?」
ユミル「私はいいんだよ。お前は大丈夫なのか?」
クリスタ「ちょっと手を擦りむいちゃっただけ。大丈夫だよ」
211: 2013/11/29(金) 02:24:59 ID:Y9gVCng2
ユミル「そりゃ大変だ、見せてみろ」スッ
ユミル「赤くなっちまってるな。舐めて治してやろうか?」
クリスタ「もう、ユミル!今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
ユミル「冗談だって」
クリスタ「全く…あれ、ライナー?」
ライナー「! よ、よぉクリスタ。無事だったみたいだな」
クリスタ「ライナーも、無事で良かった」
ライナー「っ」ドキッ
ライナー「そ、そういえば撤退命令が出たな」
クリスタ「うん…森の外に出て、馬の所まで戻らないと…あ…」
ユミル「どうした?」
クリスタ「その…ベルトルト、何かあったの?」
ベルトルト「!」
ライナー「…何でだ?」
212: 2013/11/29(金) 02:25:32 ID:Y9gVCng2
クリスタ「だってベルトルト…何だか恐い顔してる」
ベルトルト「そ、そんなことないよ!ね、ライナー!」
ライナー「あぁ、当然だ!」
クリスタ「そっか、なら良いんだけど…」
ユミル「ベルトルさんは巨人に囲まれてたから恐がってたんだよ」
ベルトルト「っ…」
ベルトルト(誰のせいだと思ってるんだ!…いや、待てよ…)
クリスタ「ユミルッ」
ユミル「へいへい、すみませんでしたーっと」
ライナー「お前ら、ここは壁の外なんだからもう少し緊張感を持て!」
クリスタ「ご、ごめんなさいっ」
213: 2013/11/29(金) 02:26:03 ID:Y9gVCng2
ベルトルト(…ユミルの弱みがクリスタだとしたら…クリスタを…)
クリスタ「さ、行こう?」
ユミル「あぁ」
ベルトルト(…クリスタを使えば…ユミルを脅すことくらいなら、出来るかもしれない…)
ライナー「…ベルトルト?」
ベルトルト「…あぁ、ライナー。分かってるよ…戻ろう」
ライナー「あ…あぁ…」
ベルトルト(それが駄目なら…最悪…ユミルを―――…)
******
216: 2013/11/30(土) 02:37:35 ID:Yccrl3pM
******
エレン「我が班の勝利を信じてます!!ご武運を!!」ビュンッ ゴォォォ
アニ(! エレン!)ダンッ
エルド「おぉぉぉぉ!!」ゴォッ
アニ(チッ、邪魔!)ブン
エルド「グッ!」キュルルル
アニ(速い…!)
アニ(今までの奴らと全然違う!さすがエレンの護衛役って所か…!)
ペトラ「ふんっ!」パシュッ
オルオ「グゥ!!」ゴオォォ
エレン「え!?」
アニ「!!」ザシュッ
アニ(目をやられた!?何も見えない!)ドォッ
アニ(とにかくうなじを守らないと…!!)
217: 2013/11/30(土) 02:38:05 ID:Yccrl3pM
******
エレン「我が班の勝利を信じてます!!ご武運を!!」ビュンッ ゴォォォ
アニ(! エレン!)ダンッ
エルド「おぉぉぉぉ!!」ゴォッ
アニ(チッ、邪魔!)ブン
エルド「グッ!」キュルルル
アニ(速い…!)
アニ(今までの奴らと全然違う!さすがエレンの護衛役って所か…!)
ペトラ「ふんっ!」パシュッ
オルオ「グゥ!!」ゴオォォ
エレン「え!?」
アニ「!!」ザシュッ
アニ(目をやられた!?何も見えない!)ドォッ
アニ(とにかくうなじを守らないと…!!)
218: 2013/11/30(土) 02:38:35 ID:Yccrl3pM
エルド(今頃す!!)
ペトラ(ここで惨めに氏ね!!)
オルオ(クソ女型に報いを!!)
アニ(…エレンを捕まえられれば、それで良かった)ザクッ
アニ(穏便になんて無理だって分かってたさ、でも)ブシュッ
アニ(少しくらい、希望を持たせてくれたって、良かったじゃないか)ザンッ
エルド「腕が落ちた!」
アニ(あぁ、もう)
エルド「次は首だ!!」パシュッ
アニ(最悪、だよ)
*****
219: 2013/11/30(土) 02:39:11 ID:Yccrl3pM
ベルトルト「……」ヒュンッ
ベルトルト(…正直今なら、殺せる)
ユミル「……」パシュゥッ
ベルトルト(僕に背を向けて、無防備な今なら…)
ベルトルト(ここは壁外だ…誰が氏んでも仕方がないんだ)グッ
ベルトルト(彼女の足にでもアンカーを突き刺して下に叩き落とせば…彼女は巨人の餌だ)
ベルトルト(誰も…不思議になんか思わない…)チャキッ
220: 2013/11/30(土) 02:40:02 ID:Yccrl3pM
******
エルド「」
アニ(殺らなきゃ、殺られる)ブチッ
ペトラ「エルド!!」
アニ(それがこの世界)
ペトラ「な…何でよ!まだ目が見えるわけがない!!まだ、30秒も経ってない!!」
アニ(そうだろう?)ドッ ドッ
オルオ「ペトラ!早く体勢を直せ!!」
ペトラ「ッ…!!」
オルオ「ペトラ!!早くしろ!!」
アニ(アンタたちだってそうだろう?)ブチュッ
ペトラ「」ズリィッ
221: 2013/11/30(土) 02:40:41 ID:Yccrl3pM
オルオ「……オイ」カッ
オルオ「氏ね」ギュルルルルル
アニ「……」カンッ ビキビキ
オルオ「…何故だ…刃が通らねぇ…」バギィッ
エレン「こいつを」ギュルルル
アニ(…ねぇ、エレン)
エレン「頃す!!」ガリッ
アニ(アンタが言ってたことだろう?)
ガァァァァァアアア!!!!!!
222: 2013/11/30(土) 02:41:21 ID:Yccrl3pM
******
ベルトルト(何者なのかなんてもうどうでもいい、君は)
ベルトルト(君は僕の大事な人を危険にさらしたんだ)
ベルトルト(もしかしたら…今回アニはここで殺されてしまうかもしれない)
ベルトルト(今回も見逃してもらえる保障なんてない)ヒュンッ
ベルトルト(君なんかどうなったって構わない。だって君は本当に三年前に初対面なんだから)
ベルトルト(…僕にしか、出来ないことなんだ…)
******
223: 2013/11/30(土) 02:41:52 ID:Yccrl3pM
アニ(相変わらず力任せなんだね)スッ
エレン「オアェ!!」
アニ(私が教えてやったことはなんだったんだい?)
エレン「オアエア!ガァッ、オグアァ!!」
アニ(対人格闘準首席?笑わせるんじゃないよ)
エレン「ガアッ、オ、オオグェッ!ガアァァ!!」
アニ(今のアンタは昔と同じ)
アニ(感情に身を任せてるただのガキだ!!)パチッ
エレン「!!」
アニ「」ガバッ パシッ
224: 2013/11/30(土) 02:42:30 ID:Yccrl3pM
******
ユミル(…隠してるつもりだったら大きな間違いだ)チラッ
ベルトルト「……」
ユミル(ここまではっきり殺気を向けられて気付かないほどマヌケだとでも思われてんのかね)ヒュンッ
ユミル(…こんな感情をぶつけられるってことは、確実に気付いたな…)
ユミル(カッ、ハハ…悪かったなベルトルさん。でもまだいいだろ?)
ユミル(ここで女型が氏ぬことはねぇんだからさ)
クリスタ「……!!」ギョッ
クリスタ(何で…ユミルは笑っているの…!?)
******
225: 2013/11/30(土) 02:43:39 ID:Yccrl3pM
アニ(アンタと私の決定的な違いは、巨人をコントロール出来るかどうか)
エレン「…ア…」
アニ(そして、覚悟の違いってヤツだ)ビュンッ
エレン「!!」ブチブチ
エレン「―――ッ」ズゥウゥンッ
アニ(悪いねエレン)パカッ
アニ(一緒に来てもらうよ)バグッ ブチブチ
ミカサ「―――エレン!!」ゴォォォッ
アニ(! ミカサ…でも一足遅かったね)ズゥンッ
アニ(エレンはもらって行くから)ドドドッ
ミカサ「待って…エレン…行かないで…!!」
228: 2013/11/30(土) 17:26:51 ID:KDp3TBNw
******
クリスタ「あれ…ミカサは…?」キョロキョロ
サシャ「そ、それが…いつの間にかいなくなってて…」
ベルトルト「…」
ベルトルト(エレンを助けに行ったのか…今回も、失敗したのか…)
ベルトルト(…いや、アニに責任はない。悪いのは)
ユミル「まぁミカサのことは心配ねぇだろ。ほっておこうぜ」
コニー「確かにミカサは桁違いに強ぇからなー」
ベルトルト「……」
サシャ「!?」バッ
ライナー「ん?どうかしたのか?」
サシャ「…ッ」ガルルル
アルミン「サシャ?」
ハンジ「全員揃ってるかい!?」ギュルルルッ スタッ
229: 2013/11/30(土) 17:27:31 ID:KDp3TBNw
ジャン「分隊長!?」
アルミン「何かあったんですか!?」
ハンジ「まず、女型を取り逃がした!自分の体を巨人に食わせて、脱出したんだ!」
ライナー「!」
ライナー(つまりアニは逃げられたのか…!!良かった…)ホッ
ハンジ「そしてもう一つ…こっちの方が大問題なんだけどね…」
ハンジ「…エレンが女型に連れ去られた」
コニー「何だって!?」
ベルトルト「!!」
アルミン「そんな…どうしてですか!?」
ハンジ「どうやら、リヴァイ班に奇襲をかけたみたいなんだ。エレンも巨人になって応戦したんだけど…」
ハンジ「…女型の方が一枚上手だったよ」
サシャ「あの声は、その時の…!!」
クリスタ「! ミカサは!?」
230: 2013/11/30(土) 17:28:05 ID:KDp3TBNw
ベルトルト(そうだ、確かミカサとリヴァイ兵長にアニがやられたんだ…!!)
ベルトルト(ミカサが向かってるってことは、今回もその状況になっているはずだ…)
ベルトルト(…最悪、アニが無事なら…)
ジャン「そ、そうです!ミカサはどうしたんですか!?」
ハンジ「…それが…女型に追いついたミカサとリヴァイが交戦したんだけど…」
ハンジ「取り逃がしてしまったんだ」
ベルトルト「!!」
ライナー「!!」
ユミル「…!?」
ハンジ「リヴァイは足を負傷して、ミカサは気絶してしまっている…まさかここまで追い詰められるなんてね」
231: 2013/11/30(土) 17:28:44 ID:KDp3TBNw
******
ミカサ「返せ!!」ゴォォォッ バシュッ
アニ(化け物か猛獣か!?何なんだ、ミカサの勢いは!!)ドドドッドドドッ
アニ(うなじを守りながら逃げるのが精一杯だよ…!)ドンッ
ミカサ「ガァッ!!」グルンッ ブンッ
アニ(!!)キンッ
ミカサ「クッ…何故!?刃が…通らない!!」
アニ(訓練兵だった時よりも強くなってる…いや、エレンがこっちにいるから…!)
ミカサ「……絶対、絶対に…エレンは…生きてる」シャッ
ミカサ「どこにいたってその女頃して…体中かっさばいて、その汚い所から出してあげる」キン
ミカサ「ごめんね、エレン…もう少しだけ待ってて」ヒュッ
アニ(本当に、怖い女だよ…アンタは!!)ブンッ ドォッ
ミカサ「クッ!」ヒュッ
234: 2013/12/01(日) 04:01:50 ID:MdFLeBGE
アニ(今の内に!)ドドッ
ミカサ「待て!!」ゴォッ
ミカサ「!?」バシッ
リヴァイ「同じだ。一旦離れろ」
ミカサ「……ッ!!」
アニ(…ミカサが…追ってこない…?いや、間合いを変えずに追って来てる…!)
アニ(厄介だね…いや、次ミカサが仕掛けてきた時が勝負だ…)
アニ(アンタにだけは、手加減も情けもしてやれないよ)
ミカサ「」ギュルィィィッ!!
アニ(来た!!)
235: 2013/12/01(日) 04:02:23 ID:MdFLeBGE
リヴァイ「」ヒュンッ
アニ(!? しまった、もう一人…!?ミカサは囮!?)グルン
リヴァイ「ッ」ビュッ ギュルルルルル ビシュッビシュッ
アニ(速すぎる…!ミカサなんて比じゃないくらい…!)
アニ(硬化が間に合わない!!)
リヴァイ「―――!」ブチュッ ズボッ
アニ(!? 両目…潰された…!?傷が深すぎる!!)ヨロ
アニ(これが、人類最強…!!想像以上の強さじゃないか…!! !?)ザシュッ ザシュッ ブヂィッ
アニ(足の腱を切られた!くそ、崩れる…!)ズンッ
アニ(駄目だ、駄目だ…このままじゃ…やられる…!!)ダランッ
ミカサ(うなじが…!!)
アニ(片目と…腕の修復を最優先して…!!
ミカサ(狙える!疲弊してる!きっと動けない…)ドクッ ドクンッ
ミカサ(殺せる)パシュッ
236: 2013/12/01(日) 04:03:02 ID:MdFLeBGE
アニ(ミカサ…やっぱり来たね…)ピクッ
リヴァイ「!」タンッ
リヴァイ「よせ!!」ドォッ
ミカサ(元々お前が…お前がちゃんとエレンを守っていれば!!)キッ
ミカサ「!」ゴォッ
アニ「」ボッ
ミカサ「!?」
ミカサ(腕…!?いつの間に修復を!?ダメ、間に合わな―――)
リヴァイ「―――……!!」ガンッ
237: 2013/12/01(日) 04:03:34 ID:MdFLeBGE
リヴァイ「…!!」ビキッ
ミカサ「!! 兵ちょ…」
アニ「ッ」ブンッ
ミカサ「アァッ!!」バギィッ
リヴァイ「グッ…!!」ガシッ
アニ(足の修復…間に合って…!!)
リヴァイ(顎の腱を切っちまえば…!!)ビュンッ
アニ(!! 間に合った!!)ダッ
リヴァイ「待て!!」
ミカサ「…ぅ…」ブラン
リヴァイ「…クソッ…!」
238: 2013/12/01(日) 04:04:33 ID:MdFLeBGE
******
ジャン「俺達はどうしたらいいですか!?」
ベルトルト(…アニが…成功した…!?よ、し…良し…!)バッ
ライナー「…!」
ライナー(この場を凌いだら、予定していた合流場所へ向かう…!)
ライナー(そうすれば、俺達は帰れるんだ!!)
ユミル「…ッ…」
クリスタ「…ユミル…?」
ハンジ「とりあえず何人か私と一緒に付近の捜索、残りの新兵たちは待機!」
ハンジ「アルミンと…あと、そこの体が大きい二人」
ライナー「俺達ですか?」
ベルトルト(チャンスだ…!隙を見てアニと合流すれば!)
ベルトルト「ハッ!分かりました!」
ハンジ「うん、じゃあ行くよ!」パシュッ
アルミン「はい!」パシュッ
ジャン「俺達はどうしたらいいですか!?」
ベルトルト(…アニが…成功した…!?よ、し…良し…!)バッ
ライナー「…!」
ライナー(この場を凌いだら、予定していた合流場所へ向かう…!)
ライナー(そうすれば、俺達は帰れるんだ!!)
ユミル「…ッ…」
クリスタ「…ユミル…?」
ハンジ「とりあえず何人か私と一緒に付近の捜索、残りの新兵たちは待機!」
ハンジ「アルミンと…あと、そこの体が大きい二人」
ライナー「俺達ですか?」
ベルトルト(チャンスだ…!隙を見てアニと合流すれば!)
ベルトルト「ハッ!分かりました!」
ハンジ「うん、じゃあ行くよ!」パシュッ
アルミン「はい!」パシュッ
239: 2013/12/01(日) 04:05:50 ID:MdFLeBGE
ライナー「…ベルトルト」
ベルトルト「あぁ、行こう、ライナー」
ユミル「……」グッ
サシャ「え…ユミル…?」
ユミル「…悪い、ちょっと腹痛ぇ」パシュッ
クリスタ「ちょっ…!ユミル!待機だよ!?」
ベルトルト「!?」
ベルトルト(あんな慌てた表情のユミルなんて…初めて見た…!)
ベルトルト(…嫌な予感がする…!!)
ベルトルト「…ライナー、悪いんだけど、先に合流地点へ向かって」ボソボソ
ライナー「なっ…!?お前はどうするつもりだ…!?」ボソッ
ベルトルト「僕は…」チラッ
ユミル「」ギュルルルル ヒュンッ
ベルトルト「やらなきゃいけないことがある」
241: 2013/12/02(月) 02:11:52 ID:gmwh.zQo
******
アニ(ハッ…ハァッ…)
アニ(巨大樹の森の南西…ここか…)ドシン
アニ(早く離れないと追手が来る…ライナーとベルはまだ…?)
アニ(さすがにエレンをこのまま咥えたままはちょっと、ね…)
アニ(…これで、帰れるんだ…お父さん…)
アニ(もう少し…もう少しだから…)
ガサッ
アニ(! ライナー?それともベル?)バッ
242: 2013/12/02(月) 02:12:58 ID:gmwh.zQo
******
ベルトルト(クソッ!)ヒュンッ
ユミル「」パシュッ ギュルルル
ベルトルト(速い…!この森の中、何でこんなに速く動けるんだ!?)カッ
ベルトルト(ガスを噴かし過ぎているわけじゃない…!樹と樹を上手く利用してるのか…!?)ギュルル
ベルトルト(付いて行くのが精一杯だなんて!訓練でこんな動きしたことなかったのに!!)
ユミル「―――ッ!!」パシュッ
ベルトルト(何でこんな実力があるのに、上位にいないんだ!)
ベルトルト(何で実力を隠して…!何で生き残れる道を選ばないで…!!)イラッ
ユミル「―――おいベルトルさん!!」バシュッ
ベルトルト「!?」
ユミル「付いて来てるのは分かってんだよ!!」ダンッ
ベルトルト「―――ッ…」ギリッ
243: 2013/12/02(月) 02:13:51 ID:gmwh.zQo
ベルトルト「君は待機のはずだ!勝手な行動を取らないで戻りなよ!」ヒュンッ
ユミル「お前こそ分隊長と捜索だろ!?」バッ
ベルトルト「僕はいいんだ… !?」
ベルトルト(待て…ユミルはどこに行く気だ…!?)
ベルトルト(兵団からも離れて、誰もいないような所へ向かって…)
ベルトルト(こっちは…南西…!?)
ユミル「ッ…」ビュンッ
ベルトルト「待っ…ユミル、待って!!」
ユミル「―――」ガサッ
244: 2013/12/02(月) 02:14:48 ID:gmwh.zQo
*****
アニ「……!!」
ユミル「…ハッ…よぉ…」
ユミウ「いつまでもこんな所にいたら、削がれちまうぜ?」
アニ(ユミル!?何でここに!?)
ベルトルト「待て、ユミル!!」ガサッ
アニ(ベル!!)
ベルトルト(アニ…!無事で良かった、けど…!)
アニ「ッ…」グッ
ユミル「悪いな女型さんよぉ…その口の中のヤツを返してはくんねぇか?」
アニ(エレンがどこにいるか知ってる…!?)
ユミル「別にお前に危害を加えるつもりはねぇ。その氏に急ぎ野郎を返してくれりゃいいんだ」
245: 2013/12/02(月) 02:16:02 ID:gmwh.zQo
ベルトルト「…ユミル…君は一体何なんだよ…!」
ユミル「……」
ベルトルト「…僕の企画紙をすり替えたのも君だね?」
アニ(企画紙をすり替えた…!?どういうことか良く分からないけど…)
アニ(ユミルは、敵!!)ググッ
ユミル「…」ニヤッ
アニ(!?)
ユミル「」パシュッ ヒュン
ベルトルト(なっ…僕の背後に…!?)バッ
ユミル「動くんじゃねぇ!」チャキッ
ベルトルト「!!」
アニ(ベル!!)
ユミル「一歩でも動いてみろ…コイツの首、斬り落とす」カチャッ
246: 2013/12/02(月) 02:16:46 ID:gmwh.zQo
ベルトルト「……ッ…」
アニ(クッ…)ググッ
ユミル「…もう一度言う、エレンを返せ」
ベルトルト「…ユミル、君は何か勘違いをしていないか?どうして僕を頃すことが、エレンを取り戻すことになるの?」
ベルトルト「まるで僕と女型が…仲間みたいじゃないか」
アニ「……」
ユミル「そう言ってんだよ」チャキ
ベルトルト「は…!?」
ベルトルト(当てずっぽう!?いや違う…ユミルのこの表情は本気だ…!!)
ベルトルト(アニ、僕のことはいいから…!だからエレンを連れて、早く…!!)チラッ
アニ「ッ…」
ユミル「なぁ、女型さんよぉ!!別にお前らの正体を兵団に言うつもりはねぇ!エレンを連れ去ったって構わねぇ!」
アニ(何を言ってるんだ!?言ってることが無茶苦茶じゃないか!)
247: 2013/12/02(月) 02:17:28 ID:gmwh.zQo
ユミル「でもな…今、今だけは駄目だ…!」ジャギィッ
ベルトルト(刃が、首筋に…!!)ゾクッ
ユミル「今ソイツを連れてかれるわけにはいかねぇんだよ!!」
アニ(エレンを連れて行かなゃ、何のためにここまでしてきたのか分からなくなっちまう…!!)
アニ(でも、でも…!)
ベルトルト「……っ」
ユミル「…返せよ…でなきゃ、」グッ
ユミル「コイツの首…再生出来なくなるまでズタズタにするぞ」
アニ(ベル…!)
ベルトルト(アニ、アニ…!!アニ…!!)タラッ
ユミル「決めろ!その口からエレンを出すか、コイツの首が離れるのを目の前で見るか!」グイッ
254: 2013/12/03(火) 00:49:09 ID:J7RzcyXs
アニ(ベルを選べばエレンを手放さなきゃならないし…エレンを選べばベルが氏ぬ…)
アニ(どうする…ベルの再生能力にかけて、二人とも潰す気で行くか…)
ベルトルト(僕ごと攻撃するのが一番だけど…他の兵士が来るまでに僕が再生しきる自信がない…)
ベルトルト(僕のことはいいから…アニとライナーだけでも…)
ベルトルト(二人だけでも……い、やだ…)
ベルトルト(何のために僕は戻って来たんだ!せっかく前と違う状況になれたのに!)
ベルトルト(三人で帰りたい…!!僕は、僕は…!!)
アニ(…早くしないと…他の兵士が来ちまう…!)
ベルトルト(アニと一緒に帰りたい!!)
ユミル「……」ハァ
ユミル「…埒があかねぇな。この手だけは使いたくなかったが…」ガサゴソ
ユミル「よ…っと!」バシュッ
255: 2013/12/03(火) 00:50:01 ID:J7RzcyXs
ベルトルト「なっ…煙弾…!?」
アニ(そんなことしたら、余計に時間がなくなる!おまけに…)
ベルトルト(僕たちが一緒にいる所を見られたら弁解の余地もない!)
ユミル「変なことは考えんなよ…お前が私を蹴り抜くよりも先に、首を落とす」カチャ
ベルトルト「ッ…」
ユミル「もう一度言う。私は別にお前らの正体をバラす気はねぇし、頃したくもない」
ユミル「ただ今…この場でソイツを連れて行くのは止めてくれって言ってんだよ」
アニ(……ッ…)ググッ
ベルトルト「ユ、ユミル…君は…」
ユミル「時間がねぇんだ…なぁ、頼むよ」
ユミル「 」
アニ(!?)パカッ
エレン「」ドロッ
256: 2013/12/03(火) 00:50:49 ID:J7RzcyXs
ベルトルト「! エレン!!」
アニ(ごめん、ベル…!でも私、アンタを氏なせることなんか出来ない!)
ユミル「よーしいい子だ…そのまま北の方に逃げな」
ベルトルト「北…!?」
ユミル「そっちに行きゃ調査兵団より先にカラネスに戻れる。どうせこの混乱じゃ簡単には戻れねぇしな」
アニ(クソッ…!)ダダッ
ベルトルト「あ…!!」
ユミル「お前はまだ動くな、ベルトルさん。…いくらお前だって、今のままじゃアイツにゃ追いつけねぇだろ?」
ユミル「あぁ…むしろ今の方が追いつけるか?」
ベルトルト「き…君の目的はなんだ…」
ユミル「あ?」
ベルトルト「エレンを取り戻す…それは兵士として間違ってない行動だと思う…けど、」
ベルトルト「どうして女型を逃がしたの…!?」
257: 2013/12/03(火) 00:51:49 ID:J7RzcyXs
ユミル「何だ、逃がしてほしくなかったのか?」
ベルトルト「そういうことじゃなくて!」
ユミル「悪いがマトモにやって勝てるとは思わない。これが一番手っ取り早い方法だったんだ」
ベルトルト「…君は、何を知っているの…?」
ユミル「…さぁな、何も分からねぇよ」カチャッ
ベルトルト(ようやく離れた…!今彼女を頃してしまえば…!)グッ
ユミル「止めとけよ。そんなもん使ったら、巨人にやられたって言い訳は出来ないぜ」
ベルトルト「!」
ユミル「エレンはここに置いて行く。なに、心配しなくてもすぐに誰かが見つけてくれる」
ベルトルト「…君は僕の質問に何一つ答えていない」
ユミル「答える必要性を感じない。…ま、どうしてもって言うなら、ヒントをやろう」
258: 2013/12/03(火) 00:52:23 ID:J7RzcyXs
ベルトルト「ヒント…?」
ユミル「ベルトルさん。アンタには無理だ」
ベルトルト「無理…!?一体何のことだよ!」
ユミル「戻るぞ。お前は私の前を行け。後ろから斬りかかられたら一溜まりもないからな」
ベルトルト「ッ…僕は君を…絶対に許さない!」パシュッ
ユミル「……」
ユミル「…許さない、ね」
ユミル「その言葉、何度目だったかな」パシュッ
259: 2013/12/03(火) 00:53:22 ID:J7RzcyXs
******
アニ(くそっ…くそ!!)ダダダッ
アニ(何であそこにユミルが現れるの!?それどころじゃない、あの口ぶりは…!)
アニ(まるで私とベルの正体を知ってるみたいだった!)
アニ(いや、“みたい”じゃない…!確実に知ってる!)
ユミル『時間がねぇんだ…なぁ、頼むよ』
ユミル『アニ』
アニ(知ってて黙ってたんだ、知ってて逃がしたんだ!!)ドドドッ
アニ(私は何のためにッ…こんなに人を頃したの…!!)
******
260: 2013/12/03(火) 00:54:34 ID:J7RzcyXs
ガラガラガラ ドドドッ
エレン「……!!」ハッ
アルミン「エレン!」
エレン「…?は…?」
アルミン「良かった、目を覚ましたんだね…!大丈夫!?意識はしっかりしてる!?」
エレン「あ、あぁ…一体…」
ミカサ「エレン!!」
エレン「ミカサ… 女型は!?」
アルミン「それが…逃がしてしまったんだ…」
エレン「何…で?みんな…一体…作戦は…?」
ミカサ「…失敗した…今は、休んで」
エレン「…これは…?また、お前に助けてもらったのか…?」
ミカサ「…それは違う」
エレン「は?どういうことだよ…」
261: 2013/12/03(火) 00:55:21 ID:J7RzcyXs
アルミン「ミカサとリヴァイ兵長がエレンの奪還に一度は失敗してしまったんだ」
ミカア「でも、その後別の場所から信煙弾があがった…らしい」
エレン「らしいって…」
ミカサ「…意識を失っていた…情けないことに…」
アルミン「ミカサは悪くないよ!…それで、その場所に向かってみたら、エレンが倒れていたんだ」
エレン「は!?何だよそれ…訳がわかんねぇよ…!」
ハンジ「誰かが君を助けたみたいなんだ」ヒョコッ
エレン「ハンジさん!?」
ハンジ「私たちが着いた時には、女型の姿も別の人間の姿もなかった…一体誰がどうやって君を助けたかは分からないんだ」
ミカサ「エレン。…もう、壁に着くから…」
クリスタ「もうユミル!本当に心配させないでよね!!」
262: 2013/12/03(火) 00:56:03 ID:J7RzcyXs
ユミル「悪かったって言ってんだろ?そうデカい声出すなよ」
クリスタ「ユミルが勝手なことするからでしょ!?」
ユミル「へーへー。すみませんでしたね女神様」
クリスタ「ユミルー!」
ライナー「…お前の言っていることが、本当だとは思えない」
ベルトルト「…でも、彼女がそう言ったのは事実なんだ…」
ライナー「じゃあ一体いつ知られたんだ?」
ベルトルト「そんなの僕にだって分からない…分からないけど…」
ライナ-「…とにかく、今はアイツが心配だ」
ベルトルト「うん…」
263: 2013/12/03(火) 00:56:56 ID:J7RzcyXs
ベルトルト(結局、エレンを手に入れることは出来なかった…)
ベルトルト(違う状況になっても、結果は変わらない)
ベルトルト(…この結果の原因を、取り除くしか…ない)
ベルトルト(でもユミルは危険すぎる…実力が全く読めない)
ベルトルト(だったら…)チラ
クリスタ「でも、無事で良かった…」
ユミル「お前を残して氏ぬわけねぇだろ?だから帰ったら結婚しような」
クリスタ「もう!」
ベルトルト(クリスタを先に…)
267: 2013/12/04(水) 02:14:16 ID:E8PfE9xE
*****
翌日・立体機動訓練
ベルトルト(変わらなかったと言うことは…多分明日の朝、僕たちはウォール・ローゼの南に移動させられる…)
ベルトルト(やるなら今日の訓練中だ、クリスタを…頃すのは…)
ベルトルト(引っかかるのはユミルの言葉だ。“今”エレンを連れて行かれるわけにはいかないって…)
ベルトルト(あの時じゃなきゃいいみたいな口ぶりだった。何でだ?)
ベルトルト(あの時…巨大樹の森で連れ去られるのは何かいけない理由でもあったのか?)
ベルトルト(とにかく彼女は敵だ。そして僕たちはもう…ウトガルドを避けられない所まで来てしまった)
クリスタ「…ル、トルト…」
ベルトルト(ウトガルドで生き残った後だ、問題は…ミカサを何としてでも止めないと…)
クリスタ「ベルトルトッ!」
ベルトルト「え、え!?」
268: 2013/12/04(水) 02:15:00 ID:E8PfE9xE
クリスタ「もう、どうしたの?どこか具合でも悪いの?」
ベルトルト「え…クリスタ…?」
クリスタ「次、ベルトルトの番だよ?後ろ詰まっちゃってるから、早く行かなきゃ」
ベルトルト「そ、そうだね、ごめん…」
クリスタ「具合悪いなら無理しない方がいいよ?…昨日も、大変だったんだから…」
ベルトルト「え!」
クリスタ「壁外調査の時、どっか行っちゃったユミルを連れて帰ってきてくれたでしょ?」
ベルトルト「あ…」
ベルトルト(そうか、クリスタにはそう見えたのか…ん?待てよ…)
ベルトルト(…これは使えるかもしれない…)
ベルトルト「…ねぇ、クリスタ。言われてみれば少し目が回るような気がするんだ」
ベルトルト「僕ちょっと医務室に行きたいんだけど…上官に言っておいてもらえないかな?」
269: 2013/12/04(水) 02:15:32 ID:E8PfE9xE
クリスタ「やっぱり…ねぇ、もし迷惑じゃなかったら付き添おうか?」
ベルトルト「そんな、悪いよ。訓練の方が大事だろう?」
クリスタ「ううん、だって顔色悪いもん…!待ってて、上官方に言ってくるから…」タッ
ベルトルト(…まさかこんなに上手く行くなんて…)
ベルトルト(…ごめんねクリスタ。君に恨みはないんだ…ごめんね…)
******
医務室
クリスタ「大丈夫?ふらついたりしない?」
ベルトルト「大丈夫だよ。ごめんねクリスタ、訓練を中断させちゃって…」
クリスタ「私のことは気にしないで!私なんかより、ベルトルトの方が強いんだから…」
クリスタ「早く良くなって、頑張らなくちゃね!」
270: 2013/12/04(水) 02:16:10 ID:E8PfE9xE
ベルトルト「……うん、そうだね」
ベルトルト(そうだよ。僕が頑張らなきゃいけないんだ)
クリスタ「それにしても医務官が出ちゃってるなんて…えっと、何か薬とかあるかな…?」
クリスタ「待ってて、今捜してくるから!」タタタッ
ベルトルト「……」
ベルトルト(何て無防備な背中なんだろう。きっと人を疑うなんてしてこなかったんだろうな…)
ベルトルト(…自分を偽ることもなく、仲間を騙したりしない…)
ベルトルト(ねぇ、どうして君はこんな所に来たの?)
ベルトルト(どうして君にユミルが執着するのかも分からない)
クリスタ「えっと…どこかな…」ガサゴソ
ベルトルト(でもきっと君がいなくなれば)スッ
ベルトルト(ユミルも消えてくれるんじゃないかなって、思うんだよ)カチャッ
ベルトルト(だから―――クリスタ)スゥゥゥ
ベルトルト(氏んでくれないか)
271: 2013/12/04(水) 02:16:52 ID:E8PfE9xE
ヌッ
ベルトルト「!?」グッ
クリスタ「あった!薬あったよ!」クルッ
クリスタ「え…?あれ…?」
ライナー「よぉ、クリスタ」
ベルトルト「ッ…!?」
クリスタ「ライナー…?一体どうしたの!?もしかしてライナーもどこか悪いの…!?」
ライナー「いや、俺はコイツの様子を見に来たんだ。俺の分の訓練は終わったからな」
クリスタ「そうなんだ…」ホッ
ベルトルト「ラ、ライナー…」
ライナー「あとクリスタ。ユミルが捜してたぞ。ペアが欲しいんだそうだ」
クリスタ「で、でも…」
272: 2013/12/04(水) 02:17:40 ID:E8PfE9xE
ライナー「コイツのことは任せてくれ。薬を飲ませるくらいでいいんだろう?」
ベルトルト「…ッ」
クリスタ「…うん、そうね!ライナーがいれば安心だもんね!」ニッコリ
ライナー「あぁ、だからクリスタは訓練に戻れ」
クリスタ「ありがとうライナー。…じゃあベルトルト、お大事にねっ」ニコ
クリスタ「」ガラガラ ピシャン
ライナー「……」
ベルトルト「……」
ライナー「…ベルトルト、お前今、クリスタに何をしようとしていた?」
ベルトルト「…どうして君がここに来たの?」
ライナー「お前がクリスタと医務室に向かっているのが見えた。…お前の雰囲気が明らかにおかしかったから、すまないが後を尾けさせてもらった」
ライナー「覗いてみたらお前がブレードを抜いているのが見えたからな。…何故クリスタを殺そうとした?」
ベルトルト「クリスタがいなくなれば、ユミルだっていなくなると思ったんだ!」
273: 2013/12/04(水) 02:18:13 ID:E8PfE9xE
ライナー「クリスタはウォール教に関わりがある!もしエレンが“座標”でなかった場合、確実にクリスタが必要になる!」
ライナー「もしユミルがお前の言う通り企画紙をすり替えたとしよう、だが」
ライナー「アイツはどうやってその情報を得たんだ」
ベルトルト「そんなのっ…分かるわけないじゃないか…」
ライナー「俺たちの正体に気付いていたら、何故それを明かそうとしない?」
ベルトルト「分からないよ!分からないから、怖いんじゃないか!」
ライナー「落ち着けベルトルト!」
ベルトルト「でも絶対にアイツは僕たちの敵だ!アイツだけは殺さなきゃ、殺さなきゃいけないんだ!」
ライナー「…少し頭を冷やせ。今のお前は冷静じゃない」
ベルトルト「どうして僕の話を信じてくれないの!?ユミルがいたら、僕たちは絶対に帰れないんだ!」
ベルトルト「アイツさえ、アイツさえいなければっ…!!」ボロボロ
274: 2013/12/04(水) 02:19:13 ID:E8PfE9xE
ライナー「……」
ベルトルト「…ねぇライナー…教えてよ…どうしてクリスタを助けたの…?」
ライナー「……」
ベルトルト「クリスタを助けたのは、戦士の君なの…?それとも…」
ベルトルト「彼女を好きになってしまった、兵士の君なの…?」
ライナー「……俺は先に戻る、落ち着いたら戻ってこい」ガラ
ベルトルト「ねぇ、ライナー…!」
ライナー「ベルトルト。…すまない」ピシャッ
ベルトルト「……っ…ぅ…」
ベルトルト「行かないで…ッ…僕を一人にしないでッ…」
ベルトルト「誰か、誰か…僕を、助けてくれ……」ズルズル
277: 2013/12/05(木) 00:47:24 ID:TUVrQHCM
******
憲兵団兵舎
アニ(……)カサッ
アニ(“数日中に調査兵団が接触してきたら必ず逃げろ”…か)
アニ(これはベルの字だね。わざわざ気にしてくれてたんだ…)
アニ(…ユミルは、私たちのことをバラしたのかな…)
アニ(でももしそうだとしたら、既にベルもライナーも…私も拘束されてるはずだ)
アニ(それがないってことは、本当にユミルは何も言っていないのか…?)
アニ(…本当に、昔から不気味な女だよ…アイツは…)
アニ(そう言えば昔エレンの立体機動装置を壊した時、私に突っかかってきたのはユミルだったっけ…)
アニ(あれはもしかして私を試してたの?だとしたら…)
アニ(ユミルは最初から…私達の正体を知っていたってこと…?)
******
278: 2013/12/05(木) 00:49:53 ID:TUVrQHCM
朝・調査兵団兵舎
ナナバ「クリスタ、ユミル、いるかい?」トントン
ユミル「…」ガチャッ
ナナバ「おはよう。起床時間より大分早いけど…ユミルは起きていたの?」
ユミル「おはようございます。偶然、少し前に目が覚めたんですよ」
ナナバ「そう。クリスタはまだ寝ているみたいだね?」
ユミル「アイツ、朝にはかなり弱いんです。起こすの大変なんですから」
ナナバ「ふふっ、可愛くていいじゃないかと言いたい所だけど…起こしてくれないかな?」
ユミル「…理由を聞かせていただきたいのですが」
ナナバ「何、大したことじゃないよ。今日の訓練の内容が変更になっただけさ」
ユミル「…」
ナナバ「と言うより…104期の君たちは、本日は非番となった」
ユミル「…また随分と急ですね」
279: 2013/12/05(木) 00:50:25 ID:TUVrQHCM
ナナバ「先日の壁外調査の疲れが残っているんじゃないかって、団長の配慮だよ」
ユミル「で?どこに行くんです?」
ナナバ「ウォール・ローゼの南だ。そこに調査兵団の慰安所がある」
ナナバ「少しエルミハ区から遠いから、早めに出発した方がいいと思ってね」
ユミル「そうですか…分かりました。クリスタを起こしてきます」クルッ
ナナバ「ありがとう。あ、そうだユミル」
ユミル「…何ですか?」
ナナバ「装備はしなくて構わない。私服でいいよ。戦闘服と装置は別途持っていくから」
ユミル「……」
ナナバ「そんな怖い顔しないでよ、これも団長の指示なんだ。今日一日君たちが訓練とか忘れられるようにってね」
ユミル「…分かりました。準備が整い次第、整列します」バタン
ナナバ「…ふぅ。…君たちには悪いけど、これも人類の為なんだ」
280: 2013/12/05(木) 00:57:25 ID:JaCzomos
******
ライナー「明らかに不自然すぎる」
ベルトルト(これから僕たちはウトガルドへ向かうことになる。そこで…)
ベルトルト(巨人と戦うことになるんだ。でも、考えてみたらおかしすぎる)
ベルトルト(一体誰がローゼを破壊したんだ?普通の巨人は硬化能力なんて使えないはずだし…)
ベルトルト(壁を破ることが出来るのは、僕とライナーだけなのに…)
ライナー「急に非番になるわ、装備は着けるなだとか…おかしいだろ」
ベルトルト(もし昨日クリスタを頃すことに成功していたら、この状況も変わっていたのかな…)
ベルトルト(…ライナーは…)
ライナー「まぁ、上官方の命令は絶対だからな、兵士としては従わざるを得んだろう」
ベルトルト「…ライナー、僕達は戦士だろ?何度言わせるの?」
ライナー「あ…あぁ、すまん」
ベルトルト(きっと昨日僕を止めたのは…兵士のライナーだったんじゃないかなって思う)
ベルトルト(僕達はたくさん人を頃してしまったじゃないか…今更クリスタぐらい…)ズキッ
ベルトルト(あれ…?僕…いつからこんな風に考えるようになってしまったのかな…)
281: 2013/12/05(木) 00:59:35 ID:JaCzomos
******
ストヘス区
アニ(…エレン達が今日…この区を通る…王都に向かうために…)
アニ(“流されるような弱いヤツでも”…か)
アニ(…人間に思われたかった、の)
アルミン「アニ」ボソッ
アニ「……!」
アニ(今の声は…)クルッ スタスタ
アルミン「……」
アニ「アルミン…」
アルミン「やぁ…もう…すっかり憲兵団だね」
アニ(調査兵団のヤツが接触してきたら…必ず、逃げろ…)
アニ(近い内に来るって覚悟はしてたけど…まさかアルミンとはね)
282: 2013/12/05(木) 01:03:01 ID:JaCzomos
アニ「」チラッ
アニ(頭の傷はもう癒えたの…?いや、私達とは違うんだ。髪で見えないだけ)
アニ(…でも、生きてて良かった)
アニ(アルミンは…私を捕まえに来たんだろうね)
アルミン「アニ…」
アニ(そんな装備をして…)
アルミン「エレンを逃がすことに協力してくれないかな?」
アニ「!?」
アニ(協力…!?違う、これは罠だ…!)
アニ「……逃がすって?どこに?王政の命令に逆らって…この壁の中の、どこに逃げるの?」
アニ(私を捕まえる為の罠…でもどうしてこんなわざわざ回りくどい真似をするんだ…?)
アルミン「時間を作って、その間に審議会勢力をひっくり返すだけの材料を揃える。…必ず!」
アニ「ひっくり返す材料…?そんなに都合のいい何かがあるの…?根拠は?」
283: 2013/12/05(木) 01:03:36 ID:JaCzomos
アニ(もしかしてアルミンは…まだ確信を持っていない?)
アニ(ユミルが本当に喋ってなかったら、アルミンは推測でここまで辿り着いたってこと?)
アルミン「…ごめん、言えない…」
アニ「……!」
アニ(時間稼ぎの言い訳…危険すぎる…逃げなきゃ…)
アニ「悪いけど…話にならないよ…」
アニ(一刻も早く、ここから逃げないと…!)
アニ「黙っといてやるから勝手に頑張んな」ザッ
アルミン「アニ!お願いだ、このままじゃ…エレンは殺される!」
アニ(…あぁ、私の気のせいかな…)
アルミン「説得力が無いことは分かってる…でも…」
アルミン「それでも…もう大きな賭けをするしか…無いんだ…ッ」
アニ(…ベルみたい。説明できないことを、分かってもらおうとしていたベルに…)
284: 2013/12/05(木) 01:04:47 ID:JaCzomos
アニ(アイツは一体何を隠していたんだろうね…きっと私達にも話せないことだったのかな…)
アニ(…ねぇ、ベル)
アニ「あんたさ…私がそんな良い人に見えるの?」
アニ(アンタは一体、何を見ていたの?)
アルミン「良い人か…それは…その言い方は僕はあまり好きじゃないんだ。だってそれって」
アルミン「自分にとって都合の良い人のことを、そう呼んでいるだけのような気がするから」
アニ「……」
アルミン「全ての人にとって都合の良い人なんていないと思う。誰かの役に立っても、他の誰かにとっては悪い人になるかもしれないし…」
アニ(私達は、誰の役に立っているのかな)
アニ(誰の役にも立っていなかったら…)
285: 2013/12/05(木) 01:06:15 ID:JaCzomos
アルミン「だから…アニがこの話に乗ってくれなかったら」
アニ(私は何のために…こんな世界を生きてきたのかな)
アルミン「アニは僕にとって悪い人になるね」
アニ「……」
アルミン「……」
アニ(最近のベルは、アンタみたいな目をするよ)
アニ(誰かを信じているように見えて、本当は疑っている目)
アニ「いいよ」
アニ(アンタの覚悟を、受け入れる)
アニ「…乗った」スッ
286: 2013/12/05(木) 01:06:47 ID:JaCzomos
******
ウォール・ローゼ南
ナナバ「本当に、あの子達の中に…アニ・レオンハートの共謀者が…?」
ミケ「さぁ…どうだろうな。だが、無視出来る確率ではない」
クリスタ「ビショップをこっちに動かした方がいいんじゃないかな?」
ライナー「だがそうしたらキングががら空きになってしまうぞ」
クリスタ「それならルークをこう動かせば…」コトッ
コニー「ワケ分かんねぇ…何でお前らこんなの出来るんだよ」
ユミル「お前が馬鹿すぎるんだよ」
コニー「うっせぇよブス!そういうお前は知ってんのかよ!?」
ユミル「ハッ」フゥ
コニー「ムカつくなオイ!」
ベルトルト「……」カタッ
287: 2013/12/05(木) 01:07:27 ID:JaCzomos
ライナー「うお、そこに来たか…どうするかな…」
サシャ「お腹が空きました…」
ユミル「お前は朝かなり食ってただろうが。もう少し我慢しろ」
サシャ「うぅぅ…」グゥゥゥ
クリスタ「ど、どうしようライナー…」
ライナー「これは難しいな…」
ベルトルト「もう降参したらどうかな」
ライナー「いや、まだだ!」ウウン
コニー「あーあ。…こっからだと俺の村が近いんだぜ」
サシャ「私の故郷も近いですねー」
コニー「ウォール・ローゼの南区まで来てんのに、なーんで帰っちゃ駄目なんだよ…」
クリスタ「こういうのはやっぱりアルミンが得意なんだろうね…」ムムム
ライナー「あぁ、アイツは頭いいからな」
288: 2013/12/05(木) 01:08:31 ID:JaCzomos
ユミル「……」
ベルトルト「……」
コニー「だから村に帰って見返してやんのさ。ちょっとだけでいい…俺が生きている内に」
ライナー「」ズキッ
ライナー「コニー。お前が本気なら協力するぞ」
コニー「え?」
ユミル「……」スッ
ベルトルト「え、ちょっと…!」
ユミル「簡単じゃねぇか、こんなの」カタッ
ユミル「がら空きのクイーンをポーンが攻撃して」カタンッ
ベルトルト「!?」
ベルトルト(がら空きのクイーン…!?)
ユミル「ルークがキングに届く。なぁ、ベルトルさん」
289: 2013/12/05(木) 01:17:49 ID:JaCzomos
ライナー「みんなワケが分からなくて困惑してる。呑気にくつろいでんのはお前らだけだよ」
ユミル「これで、チェックメイトだ」
ベルトルト「……ッ」ギリッ
ライナー「いっそ抜け出して上官の反応でも伺いたい気分だ」
サシャ「ん…?」ピクッ ペタン
サシャ「!! あれ!?」ガバッ
ユミル「!」
ベルトルト「!!」
サシャ「足音みたいな地鳴りが聞こえます!!」
ベルトルト(来た…来てしまった…!)
ライナー「何言ってんだサシャ…ここに巨人がいるって言いたいんなら、そりゃ…ウォール・ローゼが破壊されたってことだぞ?」
ライナー(俺達がここにいるのに…一体どういうことなんだ…!?)
サシャ「本当です!確かに足音が!」
290: 2013/12/05(木) 01:18:23 ID:JaCzomos
ナナバ「」ガンッ
ナナバ「全員いるか?」ガチャッ
クリスタ「ナナバさん!?」
ナナバ「500m南方より巨人が多数接近。こっちに向かって歩いて来てる」
ナナバ「君たちに戦闘服を着せてるヒマは無い。ただちに馬に乗り…付近の民家や集落を走り回って避難させなさい。いいね?」
コニー「南方…から?」
サシャ「…あ…」
ライナー「壁が…壊されたってことなのか…?」
ベルトルト(この謎だけは、予測さえも出来ない…僕達以外に壁を壊すことが出来る巨人がいたのか?)
ベルトルト(でもそうしたら、そいつは知性を持っているってことになるけど…)
ベルトルト(…もし、壁が壊されていなかったら…)
291: 2013/12/05(木) 01:19:18 ID:JaCzomos
ナナバ「さぁ!動いて!!ぼけっとしてられるのも生きてる間だけだよ!」
ガタッ ドタバタドタドタッ
ベルトルト「……」チラッ
ベルトルト(兵士が女王を追い詰めて…塔が、王を取る…)
ベルトルト(こうなったのは運命なの?それとも…まさか君は…)
ユミル「……」バタバタッ
ベルトルト(…僕と同じで…この先を知っているの…!?)
297: 2013/12/06(金) 01:11:14 ID:gJUgPLLY
******
アニ(信じたかった自分がいたのかもしれない)
アニ「全く…傷付くよ。一体いつから…アルミン、アンタは私をそんな目で見るようになったの?」
アルミン「アニ…何で、マルコの立体機動装置を持ってたの?」
アニ(あぁ…そうか。アルミンはずっと気付いていたんだね…)
アニ(私があの巨人を頃したって、分かってたんだ)
アニ(でも、良かった。気付いたのがアルミンで。…気付いたのが、私に対してだけで)
アルミン「…でも…アニだってあの時…僕を殺さなかったから、今…こんなことになっているじゃないか」
アニ「……あぁ、心底思うよ。まさかアンタにここまで追い詰められるなんてね」
アニ(嘘)
アニ「あの時…何で…だろうね」
298: 2013/12/06(金) 01:11:49 ID:gJUgPLLY
アニ(殺さなかったんじゃなくて、殺せなかったって分かってるくせに)
アニ(たった三年一緒に生活して来てただけじゃないか。こんな…こんな人間を…)
アニ(仲間だと、少しでも思ってしまったから…)
アニ(私があの時、故郷よりも情に流されてしまったから…ごめん、ライナー、ベル…)
アニ「私は…戦士に成り損ねた」
アニ(きっと私は、誰かに止めてほしかったんだ。いけないことだって言ってほしくて)
アニ(自分で止めることの出来ない…流されるだけしか出来なかった子供だったから…)
ミカサ「もういい」バサ
ミカサ「これ以上聞いてられない。不毛…」シャッ
299: 2013/12/06(金) 01:12:22 ID:gJUgPLLY
アニ(ようやく)
ミカサ「もう一度ズタズタに削いでやる。女型の巨人」
アニ(私を助けてくれるんだね)ニィッ
アニ「アルミン…私がアンタの…良い人で良かったね。ひとまずアンタは賭けに勝った…」
アニ「…でも、私が賭けたのはここからだから」
******
ミケ「誰か…この地域に詳しい者はいるか!?」
サシャ「は…はい!北の森に故郷があります!その辺りの地形は知ってます!」
サシャ「あとコニーも…!!」
コニー「……ッ…」
サシャ「コニー!?」
コニー「南に俺の村があります…巨人が…来た方向に…」
コニー「近くの村を案内出来ます、その後…俺の村に行かせてください…」
300: 2013/12/06(金) 01:13:04 ID:gJUgPLLY
ライナー「……っ」
ベルトルト(確かコニーの村には、“動けない巨人”がいた…)
ベルトルト(もし前と同じで壁が壊されていないんだったら、多分ラガコ村の人たちが…)
コニー「そりゃ…もう行った所でもう、無駄でしょうけど…けど…」
コニー「行かなきゃいけないんです…」
ミケ「分かった…南班の案内は任せたぞ」
ライナー「コニー、俺も行く」
コニー「! 多分…南が一番危険だ。巨人がいっぱいいる…」
ライナー「何言ってんだ、さっき抜け出しに加担すると言っただろ」
301: 2013/12/06(金) 01:13:37 ID:gJUgPLLY
ベルトルト(…やっぱり君は…)
ライナー「お前はどうする?ベルトルト」
ベルトルト「……」
ライナー「強いてるわけじゃない…だが、人数が必要だ」
ベルトルト(戦士と兵士の境が曖昧になって来ている。訓練兵の時よりもずっと…)
ベルトルト(もう、監視するとかいう状況じゃないのかな…)
ベルトルト「もちろん、僕も行くよ」
302: 2013/12/06(金) 01:14:31 ID:gJUgPLLY
******
西班
ドドドッ ドドドッ
ユミル「……」チラッ
クリスタ「……」
ユミル(クソ、このままじゃまたあのクソみてぇな城に行っちまう…)
ユミル(巨人共を倒すだけならなんとかなるが…今回はワケが違う)
ユミル(ベルトルさんがどう行動するか読めねぇ…それに、どうしても腑に落ちない部分がある)
ユミル(私を敵視するのは仕方がない。訓練兵の時からアイツに違和感を持って接してたからな)
ユミル(だが、どうしてアイツは私の正体について何も言わない?もし本当に私と同じなら、知らないハズがない)
ユミル(ワケ分かんねぇ…!!いや、変なことは考えるな、今は…)
ナナバ「よし、このまま南下しよう」
303: 2013/12/06(金) 01:15:17 ID:gJUgPLLY
ユミル「…私とクリスタは戦闘装備が無いんですよ?これより南には巨人がうじゃうじゃいるはず…」
ユミル「私達は奴らのおやつになる可能性が高い」
ユミル「私とクリスタを前線から一旦引かせてください」
ユミル(ま、無理だろうが…運よく引かせてもらえたら、クリスタだけでも逃がせれば…)
クリスタ「…!ユミル!?」
ナナバ「ダメだ」
ユミル(ほらな)
ナナバ「何が起きるか分からないんだ。連絡要員は一人でも確保しておきたい」
ナナバ「兵士を選んだ以上は覚悟してくれ。この初期対応に全てが懸かっている」
クリスタ「ユミル…私はここで最善を尽くしたい。だって、私は自分で調査兵団を選んだんだから…」
ユミル「……」
304: 2013/12/06(金) 01:15:47 ID:gJUgPLLY
クリスタ「でも…あなたはそうじゃないでしょ?あの時…調査兵団を選んだのは、私が…」
ユミル「私が!?はっ!?私の為にとでも言いたいのか!?」
ユミル(やめてくれクリスタ)
クリスタ「じゃあ何で今ここにいるの?理由がないなら今すぐ逃げてよ…」
ユミル(そんな顔で私を見ないでくれ、話せるわけがないじゃないか)
ユミル(きっとそれを知ったら、お前は全力で私を止めるじゃないか)
ユミル(…なぁ…私は、私は…)
クリスタ「何で…私にそこまでするの…?」
ユミル「……」
クリスタ「私の…生まれた家と関係ある?」
ユミル「あぁ、ある」
クリスタ「……」
305: 2013/12/06(金) 01:16:20 ID:gJUgPLLY
ユミル「クリスタ…安心してくれよ」
ユミル(お前に何一つ真実を言えない私だけど)
ユミル「私がここにいるのは、全て自分の為なんだ」
ユミル(これだけは本当だから)
クリスタ「……そっか」
ユミル(―――あぁ)
クリスタ「良かった…」
ユミル(お前の笑顔が見たいのに、それを壊すのはいつも私なんだ)
ユミル(今度こそ、今度こそお前を守るから…だから、)
ユミル(お前だけは笑っていてくれ―――ヒストリア)
308: 2013/12/07(土) 01:57:44 ID:VH0x/Ycs
******
南班・ラガコ村
コニー「嘘だろ…誰か…!?誰かいないか!?」
コニー「俺だ!コニーだ!!帰って来たぞ!!」
シーン
コニー「俺の家…!」ドドドッ
コニー「父ちゃん…母ちゃん…サニー…マーティン…!!」
ライナー「…!!巨人が、コニーの家に…!?」
コニー「……!?」
ライナー「コニー、下がれ!!」ガシッ
コニー「お、俺の…俺の家だ…俺の…」
309: 2013/12/07(土) 01:58:20 ID:VH0x/Ycs
ゲルガー「お前らは下がってろ!」ドドドッ
リーネ「周囲を警戒しろ!」ドドドッ
ゲルガー「…!?待て、コイツ…動けないのか!?」
リーネ「あの手足では…無理だろう!」
ライナー「……」
コニー「……」
ゲルガー「じゃ、じゃあ…コイツ、どうやってここまで来たんだ!?」
ベルトルト(恐らくあの巨人は…コニーの家の誰かがなってしまった姿だ…)
ベルトルト(あの手足で動けないから調査兵団に殺されずに済んだのか…)
ライナー「コニー!生存者はいたか!?」タッタッタ
コニー「……いない」
ベルトルト(…巨人の姿でも生きているだけマシと思うか、…思えるはずがない)
310: 2013/12/07(土) 01:58:52 ID:VH0x/Ycs
コニー「いねぇよ…もう、おしまいだ…どこにも……ねぇんだよ」
コニー「俺の故郷はもうどこにも…なくなっちまった…」
ライナー「……」
ベルトルト「…」ピクッ
ライナー「」ガシッ
ベルトルト「……」
ベルトルト(君は罪悪感を感じているの?…それとも、純粋に慰めようとしているの?)
ベルトルト(ライナー…君は、兵士でいる時間が大分増えたんだね)
ベルトルト(同情して、一体どうなるっていうの…?僕達がしてしまったことが、消えるわけじゃないのに)
ゲルガー「オイ…何か妙だぞ。誰か、氏体を見たか?」
コニー「……」
ライナー「…いいえ」
ベルトルト「見てません」
311: 2013/12/07(土) 01:59:24 ID:VH0x/Ycs
ゲルガー「そんなことがあるのか?巨人が一滴の血も残さずに集落を壊滅させるなんてことが…」
リーネ「全員逃げたんだよ!巨人に食われて一切痕跡が残らないなんてありえないよ!
リーネ「誰も食われてないってことだ…家族も、村の人も…きっと巨人を発見したのが早かったんだ!」
コニー「…! そうか…そう、ですよね!?」
リーネ「あぁ…だから皆何時間も前にここを出たんだよ。既にウォール・シーナの内側にいるんじゃないかな?」チラ
ゲルガー「……」
ベルトルト(馬に乗らないで逃げても、助かる可能性なんて低い…分かってるのに)
ベルトルト(…優しい人たちなんだな…)
ゲルガー「松明はもう揃ったな。これより壁の破壊箇所を特定しに行く。出発するぞ」
コニー「……はい」タタッ カッ
「オ…アエリ…」
312: 2013/12/07(土) 01:59:56 ID:VH0x/Ycs
コニー「!」ドクンッ
コニー「……」ドクンッ
コニー「……っ!」ドクンッ
コニー「…は…今…」ドクン
ライナー「!! オイ、コニー!急げ、ゲルガー達に遅れちまうぞ!」ドンッ
コニー「ライナー…聞いたか!?今アイツが―――」
ライナー「俺には何も聞こえてない!とにかく喋ってないで今は…任務に集中しろ!!」
コニー「なんか…なんか…アイツさぁ…ありえないんだけど…」
コニー「なんか、母ちゃんに…」
ライナー「コニー!お前は今がどんな状況か分かってんのか!?今の俺達の働きが何十万人もの命に直接影響してんだぞ!!」
ライナー「それともそんなあり得ない妄想でもしてる方が大事なのか!?」
コニー「…!」
ライナー「考えるなら今避難してるお前の家族のことだろ!!兵士なら今最善を尽くせ!!」
ベルトルト「……!」
313: 2013/12/07(土) 02:01:14 ID:VH0x/Ycs
コニー「!」ドクンッ
コニー「……」ドクンッ
コニー「……っ!」ドクンッ
コニー「…は…今…」ドクン
ライナー「!! オイ、コニー!急げ、ゲルガー達に遅れちまうぞ!」ドンッ
コニー「ライナー…聞いたか!?今アイツが―――」
ライナー「俺には何も聞こえてない!とにかく喋ってないで今は…任務に集中しろ!!」
コニー「なんか…なんか…アイツさぁ…ありえないんだけど…」
コニー「なんか、母ちゃんに…」
ライナー「コニー!お前は今がどんな状況か分かってんのか!?今の俺達の働きが何十万人もの命に直接影響してんだぞ!!」
ライナー「それともそんなあり得ない妄想でもしてる方が大事なのか!?」
コニー「…!」
ライナー「考えるなら今避難してるお前の家族のことだろ!!兵士なら今最善を尽くせ!!」
ベルトルト「……!」
314: 2013/12/07(土) 02:01:56 ID:VH0x/Ycs
コニー「……あぁ……そうだ…その通りだ!」ダダッ
ライナー「……」
ベルトルト(君は本当に、すごいと思う)
ベルトルト(コニーにわざと冷たい言葉をかけて、気を逸らせようとしていた)
ベルトルト(…ねぇ、ライナー…“兵士”の君にとっては、僕はどうでもいいのかな…)
ベルトルト(君は兵士じゃなくて戦士じゃないか。…僕の、大切な仲間じゃないか…)ギュッ
ベルトルト(…僕はまたおかしくなってしまった君を見る為に、戻ってきたわけじゃないのに…)
******
夜・ウトガルド城
ゲルガー「まさか、お互いに穴を見てねぇとはな…」
ナナバ「うん…とにかく、それは明日だよ。今は」チラッ
ゲルガー「お前達新兵はしっかり休んでおけよ…」
315: 2013/12/07(土) 02:03:30 ID:VH0x/Ycs
ゲルガー「日が沈んで結構経ってるからもう動ける巨人はいないと思うが…我々が交代で見張りをする。出発するのは日の出の四時間前からだ」
クリスタ「あの…もし、本当に壁が壊されていないとするなら…巨人は、どこから侵入してきているのでしょうか…?」
ゲルガー「それを突き止めるのは明日の仕事だ。今は体を休めることに努めろ」
クリスタ「…もしかしたら、当初想定した程のことにはなってないんじゃ…ないでしょうか…何と言うか…その…」
ゲルガー「あぁ…確かに巨人が少ないようだ。壁が本当に壊されたにしちゃあな」
ナナバ「私達が巨人を見たのは、最初に発見した時だけだ」
ユミル(…と、すると…今回発生した巨人共の正体は…)
ユミル「コニー…お前の村はどうだった」
コニー「壊滅した。巨人に…踏み潰された後だった…」
ユミル(…やっぱり、か…チクショウ…)
コニー「でも誰も食われてない。皆上手く逃げたみたいで、それだけは…良かったんだけど」
ユミル「村は壊滅したって言わなかったか?」
ユミル(壊滅…壊滅って言っていいんだろうな…どうやら、あの厄介なヤツがいるみたいだな…)
316: 2013/12/07(土) 02:04:10 ID:VH0x/Ycs
ユミル(コニーの村の連中を巨人にしたってことか…ったく趣味悪ぃ…)
コニー「そんでよぉ…ソイツが何だか…母ちゃんに似てたんだ…ありゃ一体さ」
ライナー「コニー…まだ言ってんのか。お前は―――」
ユミル「バッカじゃねーの」
ベルトルト「!」
ライナー「!」
ユミル「ダハハハハ…お前の母ちゃん巨人だったのかよコニー!?じゃあ…何でお前はチビなんだよ!?オイ!?」
ベルトルト(え、ユミル…!?)
ユミル「えぇ?コニー…!?お前そりゃあ…辻褄が合わねぇじゃねぇか!!お前馬鹿だって知ってたけど…」
317: 2013/12/07(土) 02:05:32 ID:VH0x/Ycs
ユミル「こりゃあ逆に天才なんじゃねぇか!?なぁ!?ダッハハハハハ!!」
ライナー(コイツ、わざとか…!)
コニー「あぁ…もううるせぇな…馬鹿らしくなってきた…」ガシガシ
ユミル「つまりその説が正しければお前の父ちゃんも巨人なんじゃねぇの?じゃねぇと…ほら?できねぇだろ?」
コニー「うるせぇぇ!!クソ女、もう寝ろ!!」
ベルトルト(分かってて、誤魔化した…何でそんなことをしたんだ…?)
ベルトルト(そんなことするような人に見えないのに…)
318: 2013/12/07(土) 02:06:09 ID:VH0x/Ycs
******
ユミル「……」モゾッ
ユミル(…皆、寝てるな…)カタッ
ユミル(ゲルガーが持ってた酒…あれには壁内にはない言葉が使われていた…)
ユミル(とすると、恐らく他の所にもあるはずだ…)カツン カツン
ライナー「……」
ライナー「……」モゾッ
ベルトルト「…ライナー…」ボソッ
ライナー「…俺が様子を見てくる。お前ほど敵視はされてないからな…」
ベルトルト「うん……」
319: 2013/12/07(土) 02:06:49 ID:VH0x/Ycs
ユミル(チッ…蝋燭だけじゃ暗くてよく見えないな…)ガサゴソ
ライナー「ユミル…何してんだ?」コツッ
ユミル「何だよライナー…夜這いか?驚いたな…女の方に興味があるようには見えなかったんだが…」
ライナー「あぁ…お前も男の方に興味があるようには見えんな」
ユミル「ハッ…」
ライナー(ベルトルトの言葉を信じるなら、ユミルは俺達の正体を知っている)
ライナー(だが…何だこの落ち着きようは…巨人が身近に潜んでいたってことだぞ?)
ライナー(全く気にしていないどころか、関係ないとでも言うようだ)
ユミル「…オイ、閉めろよ。灯りが漏れるだろ?」
ライナー「あ、あぁ」バタン
ユミル「……」ガサゴソ
ライナー(俺達の正体を知ってて、何故こんな対応が取れるんだ…)
320: 2013/12/07(土) 02:08:33 ID:VH0x/Ycs
ライナー(…もし、全部がこんな人間ばかりだったら…)
ライナー(…馬鹿馬鹿しい。何を考えているんだ俺は)
ユミル「用がねぇなら戻れよ」
ライナー「お前は何をしているんだ?」
ユミル「…私はこうやって、腹の足しになりそうなもんを漁ってんのさ。多分これが最後の晩餐になるぜ」
ライナー「…コニーの村の件だが…お前、わざとはぐらかしたよな?」
ユミル「…」
ライナー「出来ればその調子で続けてほしい…アイツが、家族のことで余計な心配をしねぇように…」
ユミル「何の話かは知らねぇが…なぁライナー。お前、後悔してることってあるか?」
ライナー「は?」
ユミル「悔やんでも悔やみきれねぇってもの、何かあるか」
ライナー「…あぁ」
ユミル「私にもある」
321: 2013/12/07(土) 02:10:22 ID:VH0x/Ycs
ライナー「珍しいな。お前がそんな話をするなんて」
ユミル「お前にしか頼めないんだ」
ライナー「……?」
ユミル「お前の側にいるヤツから、決して目を離すな」
ライナー「!? 俺の側…ベルトルトのことか!?」
ユミル「さぁな。人気者のライナーさんの周りには色んなヤツらがいるからな」
ライナー「オイ…ユミル、どういうことだ」
ユミル「おっ…こりゃいけそうだ」
ライナー「話をはぐらかすな!」
ユミル「鰊は好みじゃねぇが…」
ライナー(“にしん”…?)
ユミル「……!」
ユミル(待て、何で鰊がここに…それにこの文字、さっきのヤツと同じじゃねぇか…!)
322: 2013/12/07(土) 02:11:18 ID:VH0x/Ycs
ライナー「…他にもあるか?見せてくれ」
ユミル(…巨人であるライナーに…この文字は読めるのか…?試してみるか)
ユミル「……ほらよ」
ライナー「こりゃ缶詰か?……!!」
ユミル「……」ゴソゴソ
ライナー「…何だ?この文字は?俺には読めない」
ライナー「“にしん”って書いてあるのか…?お前…よく、この文字が読めたな…ユミル…」
ユミル(……どうやらその反応は、読めるが知らないって感じだな……)
ライナー(この文字は…いや、まさかそんな…そんなハズは…!!)
リーネ「全員起きろ!!」
ユミル「!」
ライナー「!?」
リーネ「屋上に来てくれ!全員すぐにだ!!」
326: 2013/12/08(日) 02:55:57 ID:KRrHkmbs
クリスタ「ユミル!!」
ユミル「クリスタ!無事か!?」タタッ
クリスタ「う、うん…でも、巨人が…!!」
リーネ「月明かりが出てきて…気付いたら…!」
ゲルガー「何でだよ!?何でまだ動いてんだ!?日没からかなり時間が経ってるのに!?」
クリスタ「どうなって…いるの…?」
ユミル(ラガコ村の連中か…無理矢理巨人にさせられたからか…歪な姿のヤツが多いな…)
ユミル(チッ…あの猿野郎…)
コニー「オイ…!あれを見ろ!!」
ライナー「…!」
コニー「でけぇ…何だ…アイツは…」
ベルトルト「…!?」
327: 2013/12/08(日) 02:56:45 ID:KRrHkmbs
ベルトルト(何だ、あの猿みたいな巨人は…!?)
ベルトルト(ユミル以来初めてだ…、前の世界にいない存在に出会ったのは…!!)
ベルトルト(…待てよ…まさかあの巨人…故郷の皆が言ってた…!!)
コニー「巨人…?って言うか…何かありゃあ獣じぇねぇか…なぁ?」
ユミル「……」
ライナー(アイツは…アイツの元へエレンを連れて行けば…!)
ベルトルト(何でここで現れたんだ…?…まさか…)
コニー「……あ……」
ベルトルト(このウトガルドで…前の世界と違うことが起こるって言うのか…?)
コニー「あいつ、壁の方に…」
ドォォオオンッ
クリスタ「きゃあっ!!」ズルッ
ユミル「クリスタ!」ガシッ
リーネ「うッ…!!」ビリビリ
328: 2013/12/08(日) 02:57:22 ID:KRrHkmbs
ゲルガー「オイ!?オイオイ…オイオイオイオイ…何、入って来てんだよ…ふざけんじゃ…ねぇ…!!」
ゲルガー「ふざけんじゃねぇぞ!!酒も飲めねぇじゃねぇか俺は!!てめぇらの為によぉ!!」シャッ
リーネ「ゲルガー!」
ナナバ「新兵、下がっているんだよ。ここからは…立体機動装置の出番だ」シャッ
ゲルガー「行くぞ!!」バッ
******
コニー「クソッ…クソ!!」
ライナー「落ち着けコニー、今は慌てても仕方が無いだろう!」
コニー「分かってる…分かってる、そんなことッ…!!」
リーネ「…!!」ヒュンッ
リーネ「遅かった…扉が、もう壊された!!」
クリスタ「! そ、そんな!」
リーネ「巨人が塔に入って来てる!急いで中に入ってバリケードを作って!急いで!!」
329: 2013/12/08(日) 02:58:06 ID:KRrHkmbs
リーネ「屋内では立体機動装置が使い物にならない、防げなかった時は…最悪、この屋上まで逃げてきて!」
リーネ「でも、それも必ず助けてやれるってことじゃないからね?私達も生きているか分からないから…」
ベルトルト「……」
リーネ「まだ何体いるか…ガスや刃が保つかどうか…先が見えない。でもやることはいつもと同じさ」
リーネ「生きてる内に最善を尽くせ!いいね!?」
「了解!!」ダッ
ライナー「巨人がどこまで来てるか見てくる!」ガコッ
ライナー「お前らは板でも棒でも何でもいい!かき集めて持ってきてくれ!!」ダダダッ
ベルトルト(! まずい!!)
クリスタ「ライナー!」
コニー「オ、オイ…!!」
ベルトルト「待てよライナー!!待つんだ!!」ダダッ
コニー「!」
330: 2013/12/08(日) 02:58:39 ID:KRrHkmbs
ライナー(俺が行かねぇと、コイツらに危険が及んじまう!!)バタンッ
コニー「ライナー…!訓練でも本番でも変わらねぇのかよ…」
ベルトルト(違う、今のライナーは明らかに“兵士”だ!このままじゃ、ライナーが危険だ!!)
コニー「真っ先に一番危険な役回りを引き受けやがって…アイツには敵わねぇな…」
ベルトルト「…あぁ…悪いクセだ…!!」
ベルトルト(誰か身近な人に危険が迫ると兵士になる…それが同期なら尚更だ…)
ベルトルト(僕に危険が迫っても、ライナーは絶対に僕を守ろうとする。でもそれは…)
ベルトルト(戦士としてだと信じていいんだよね!?ライナー…!!)
ライナー(まだ下か…?)
ライナー(施錠したとは言え、こんな古い木の扉なんて簡単に破られるだろうな…)
ライナー(クソ…どうやって巨人を防げばいいんだ…)
331: 2013/12/08(日) 02:59:10 ID:KRrHkmbs
ライナー(最悪俺とベルトルトだけなら、巨人になっちまえば簡単に逃げられる、だがそういうわけにもいかないしな…)
ライナー(…アイツらを、氏なせたくねぇんだ)ガコンッ
ライナー(せめてここで巨人を食い止めねぇと…)ギィィィ
巨人「」ニタァァ
ライナー「!!」バンッ
ライナー「クソッ!」ガコンッ ドォォンッ
ライナー「うおッ…!!」ビリビリ
ライナー(分かっちゃいるが、なんつー力だ…!!)
ライナー「ここだぁぁ!!何でもいいから持って来い!!」バキィッ
ライナー「…!?腕が、扉を貫通しやがった…!!うそだろ…!?」
ライナー(これじゃあ全然保たねぇ…!)ドクンッ バキバギィッ
ライナー(このままじゃ…俺はここで…ここか?俺の最後はここなのか…?)
ライナー(俺が人間としていられるのは…ここまでなのか…!?)
332: 2013/12/08(日) 02:59:59 ID:KRrHkmbs
『ライナー!!逃げろ!!』
『!?』ドンッ
『早く!!』
『―――ベリック!!』
ライナー(いいや…違うだろ…!!ここじゃねぇだろ…!?)
ライナー「フンッ!!」バッ
巨人「」バキバギィッ
ベルトルト「ライナー!!」
ライナー(絶対に…帰るんだ)
ベルトルト「ぁぁぁあア!!」ブンッ
ライナー(俺達の、故郷に…!!)
333: 2013/12/08(日) 03:00:30 ID:KRrHkmbs
ベルトルト「ッ!!」ドスッ
ライナー「ベルトルト!」ガシッ
ベルトルト「ライナー、無事か!?」グググッ
ライナー「あぁ…」
ライナー(そうだ、俺は…俺はあの時誓ったんだ…!!)
ライナー(どんなことをしても、絶対に!!)
ライナー「ベルトルト…」
ベルトルト「!」
ライナー「生き延びて帰るぞ…絶対に、俺達の故郷にな!」
ベルトルト(! ライナー、君は…今の君は戦士なんだね…!)
ベルトルト「あ…あぁ…!帰ろう!!」
ベルトルト(僕はその為に戻って来たんだ!君と、アニと一緒に故郷に帰る為に!)
コニー「ライナー!ベルトルト!!」ガラガラ
ライナー・ベルトルト「!?」
334: 2013/12/08(日) 03:02:26 ID:KRrHkmbs
ライナー「オイ…それ…大砲じゃねぇか…火薬は!?…砲弾は!?」
ユミル「そんなもんねぇよ!!これごとくれてやる!!」
コニー「そこをどけ!!」
ライナー「クッ!」バッ
ベルトルト(何を…まさか!!)バッ
ユミル・コニー「ウォラぁ!!」バンッ ガラガラガラ
ガラガラ バギィッ
ドォォォン
ベルトルト(大砲で巨人を押し潰すなんて…!何て無茶をするんだ…!!
ライナー「上手く…言ったみてぇだな…奇跡的に…」
335: 2013/12/08(日) 03:03:06 ID:KRrHkmbs
ユミル「あぁ…ありゃ起き上がれねぇだろ。アイツのサイズじゃな」
コニー「…どうする?こんなナイフしかねぇけど…うなじ削いでみるか?」
ライナー「やめとけ。掴まれただけでも重傷だ」
ベルトルト(…巨人の侵攻がやけに早い気がする…どうしてだ…?)
ベルトルト(前はもう少し遅かったはずだ…やっぱり、今回のウトガルドは何かが違う…)
ベルトルト(この…先に進んでしまったらもう、元には戻れないような…そんな嫌な空気だ…)
ベルトルト(でも、進むしかないんだ…この先に何が待っていたとしても…)
ベルトルト(…僕はもう、取り返しのつかないことをしてしまったのだから)
336: 2013/12/08(日) 03:06:08 ID:KRrHkmbs
>>334
誤 ライナー「上手く…言ったみてぇだな…奇跡的に…」
正 ライナー「上手く…いったみてぇだな…奇跡的に…」
昨日も重複投稿してましたが気付きませんでした
いつもレスくださってありがとうございます、レス頂ける度ドキドキしています
あと文字だけで戦闘シーンって難しい、また明日来ます
338: 2013/12/09(月) 23:38:50 ID:WCD0f5Ko
クリスタ「と、とりあえず上の階まで撤退しよう!入ってきたのが一体だけとは限らないし…」
ユミル「そうだな…確か貯蔵庫に木の板があったはずだ。それで扉を塞げば何とかなるだろ」
コニー「良し、そうと決まったら早くしねぇと…」パキッ
コニー「!?」バッ
巨人「」グアッ
ライナー「コニー!!」バッ ドンッ
ベルトルト「ラッ…!!」
ライナー「グゥッ!!」ガブッ
ベルトルト「ライナー!!」
クリスタ「ラ…!!」ダッ
ユミル「お前は行くな!!」バッ
ライナー(ッ、腕が…!!)パキッ
ライナー「う、おおおぉぉぉおおお!!」ガバッ
339: 2013/12/09(月) 23:40:04 ID:WCD0f5Ko
ユミル「オ、オイ!?」
ライナー「っ…」ダン ダン
ユミル「ライナー、お前まさか…ソイツごと飛び降りる気か!?」
ライナー「これしか無ぇだろ!」バッ
コニー「待て!!」ドスッ
コニー「コイツの顎の筋肉を切っちまえば…!!」ググ
巨人「」パカッ
コニー「放した…!!」
ライナー「……っ」バッ
ユミル「くそっ!」ダダッ
ベルトルト「っ」ダダッ
巨人「」ムクッ
ユミル「お…ちやがれこの野郎!!」ドガッ
ベルトルト「ッ!」グイッ
340: 2013/12/09(月) 23:40:40 ID:WCD0f5Ko
巨人「」ヒュルルルル
ベルトルト「ライナー!大丈夫か!?」バッ
ライナー「あ、あぁ…何とかな…」
ユミル「ぼさっとすんな!クリスタ、ライナーのこと見ててやれ!」
クリスタ「う、うん!」
ユミル「コニーとベルトルさんは板取りに行くぞ!早くしろ!!」ダダッ
コニー「わ、分かってるっつうの!!」ダダッ
ベルトルト「ライナー、動いちゃダメだからね!」ダダッ
ユミル「……」チラッ
ユミル(おかしい…もしベルトルさんが本当にこれを体験してるなら、ライナーがこんな傷を負うことはなかったはずだ…)
ユミル(どうやら今回のウトガルドは…ベルトルさんにとってもおかしい状況みたいだな…)
ユミル(クソッ…このままだとまずい…!)
341: 2013/12/09(月) 23:41:36 ID:WCD0f5Ko
******
トントントンッ
コニー「次入ってきたらどうする?もう…あんな都合よく勝てたりしねぇぞ…」
ベルトルト「あぁ。…僕もそう思う」チラ
クリスタ「お酒があって良かった…」キュポン
クリスタ「少し沁みると思うけど」トポトポ
ライナー「うッ」
クリスタ「ごめん!…ごめんね」
ライナー「だ、大丈夫だ」
クリスタ「多分…骨折してるよね?」
ライナー「あぁ…ついてねぇことにな」
クリスタ「あとは添え木と包帯が…そうだ…」スッ ビリビリ
ライナー「クリスタ、それはお前のスカートじゃないか…!破って良かったのか…?」
クリスタ「他に見当たらないし、こんな汚い布しか無くてごめん…」
342: 2013/12/09(月) 23:42:49 ID:WCD0f5Ko
ライナー(自分を犠牲にしてまで俺を…なんていい子なんだ…)
ライナー「イヤ…助かる…」
ライナー(結婚しよ)
コニー「大丈夫か?ライナー…」
ライナー「あぁ…まぁな」
ユミル「……あのさクリスタ。私も手を擦りむいちゃってさ」
コニー「は?そんくらいツバつけとけ」
ユミル(このクソチビ)
コニー「ライナー、さっきはすまなかった。俺…お前に助けられてばっかだな…いつか借り返さねぇと…」
ライナー「……」
ライナー「別に…そりゃあ普通のことだろ…兵士なんだからよ…」
ベルトルト「……」
コニー「どうかな…あんな迷いなく自分の命を懸けたりするのって…ちょっと俺には自信ねぇぞ…」
ベルトルト「……」
343: 2013/12/09(月) 23:43:25 ID:WCD0f5Ko
コニー「なぁ、ベルトルト。ライナーって昔っからこうなのか?」
ベルトルト「……」
ベルトルト(あぁ)
ベルトルト「イイヤ。昔のライナーは…戦士だった。今は違う」
ライナー「……」
ライナー「何だそりゃ?戦士ってなんのことだよ?」
ベルトルト(君は、もう兵士じゃないか)
ユミル「……」
ユミル「とりあえず…使えそうなものは集めようぜ。氏ぬ時に後悔しなくていいようにな」
ユミル「まぁ私らの命の大半は―――よっと」ガッ
ユミル「上官方の腕っぷしに懸かっているんだがな…おぉ…」
ユミル「さすが調査兵団。他の兵士とはワケが違うってことか」
ユミル(ま、それでも…あの猿野郎には敵わないんだろうけどな…)チラッ
344: 2013/12/09(月) 23:43:59 ID:WCD0f5Ko
ユミル(! あの野郎、また…!!)
ユミル「全員下がれ!!」バッ
クリスタ「きゃぁっ!」
ベルトルト「なっ…!!」
ヒュルルルル ドォォン
ナナバ「リーネ!!ヘニング!!」
クリスタ「なっ…何!?今のは!?」
コニー「何か飛んできやがった!!」
ユミル(チッ…随分好き放題やってくれるじゃねぇか…!!)
ライナー「とにかく屋上へ向かうぞ!」ダッ
コニー「おい、無茶すんなライナー!!」ダダッ
クリスタ「ユ、ユミル、私たちも…!」タッ
ユミル「……」
345: 2013/12/09(月) 23:44:32 ID:WCD0f5Ko
クリスタ「早く!」タタタッ
ユミル「あぁ、今行っ…」ガッ
ユミル「!? …オイ、何のつもりだ?」
ベルトルト「…ユミル…君はあの巨人を知ってるの?」
ユミル「……」
ベルトルト「答えろよ」
ユミル「今はそれどころじゃねぇだろ。装備もない、…お前の親友のライナーも大怪我だ」
ユミル「先走んねぇよう見張ってた方がいいんじゃねぇの…かっ」バシッ
ベルトルト「ッ…ユミル!君は…!!」
ユミル「早く行くぞ、急げ!」ダダダッ
ベルトルト「君は、…君は、僕と同じなの…?」
******
346: 2013/12/09(月) 23:45:09 ID:WCD0f5Ko
コニー「今のは!?」タッタッタ
ゲルガー「駄目だ…二人とも、即氏だ」
ナナバ「……」
ゲルガー「気を付けろ…壁の方角から岩が飛んできて、そいつにやられた」
クリスタ「そんな…壁の方…?」
コニー「アイツだ!」ダッ
コニー「一体だけ壁の方に歩いていった…あの獣の巨人の仕業に―――うぉ!!」
コニー「巨人多数接近…!さっきの倍以上の数は…!!」
ゲルガー「何だと…!?」
ナナバ「巨人が作戦行動でも取ってるみたいなタイミングだね…」
ナナバ「まるで最初から…遊ばれてるような気分だ…」
347: 2013/12/09(月) 23:47:54 ID:WCD0f5Ko
******
コニー「何でコイツら…夜なのに動けるんだよ…!」
クリスタ「どこも壁なんか壊されてなかったのに…何で…どこから入ってきたの…?」
ユミル「今はそんなこと考えても仕方ないだろ…とにかく今は、生き延びることだけを考えろ」
クリスタ「そんな…」
ベルトルト「ライナー…傷はどうだ?」
ライナー「あぁ、最悪だが…何てことはない」
ベルトルト(多分、ゲルガーさんとナナバさんもここで殺されてしまうはずだ)
ベルトルト(でもすぐに調査兵団が助けに来る…そうしたら)チラッ
ライナー「…」
ベルトルト(ライナーもあの猿の巨人のことは知っているはずだ。アイツの所にエレンを連れて行けば…)
ベルトルト(今回はユミルの妨害もないと思うし…“今じゃなければいい”って、ユミルは言ってた)
ユミル「……」
348: 2013/12/09(月) 23:48:56 ID:WCD0f5Ko
ベルトルト(もし君が僕と同じ…ここに戻ってきた存在だとしたら、君は一体どこから戻って来たんだ?)
ベルトルト(僕の前の世界にユミルという存在はいなかった。もしあの猿の巨人が、)
ベルトルト(君が現れたことによって出てきたとすれば…君も必要な存在ってことなのか?)ドォォンッ
ベルトルト「!」
クリスタ「ナナバさんっ!!」
コニー「やべぇ、ゲルガーさんも…捕まった!!」
ライナー「ッ…!」
クリスタ「うっ…こんな、こんな…!」ガシッ
クリスタ「ッ!!」ブンッ
ユミル「よせクリスタ」ガッ
ユミル「もう塔が崩れそうなんだ。落ちてしまうぞ」
クリスタ「で…でも…私たちの身代わりに…ナナバさんが…ゲルガーさんが…」
コニー「あぁ…クソが…なぁ、このままここで塔が崩されてただ食われるのを待つしかねぇのか…?」
349: 2013/12/09(月) 23:50:36 ID:WCD0f5Ko
ベルトルト(…おかしい…)
コニー「…ねぇのか…もう何も…もう…」
ベルトルト(そろそろ調査兵団が来たっておかしくないはずだ…何で来ない…!?)
コニー「何か!!やることはねぇのかよ!?クソッ!クソッ!クソッ!!」ガンッ
ベルトルト(…まさか…来ないのか…?…そうだ、この世界では前と違うことがずっと起こって来たじゃないか…!)
ベルトルト(どうして来るなんて思ってしまったんだ…!?)
コニー「せめて…何かこう、意味が欲しかったよな…任務も中途半端なまんま、全滅なんて…」
ベルトルト(…どうにかして、ここを生き延びないと…何か、何かないか!?)キョロキョロ
クリスタ「私も…戦いたい。何か、武器があればいいのに…」
ベルトルト(武器!?そ、そうだ…確か!!)バッ
クリスタ「そしたら一緒に戦って氏ねるのに…」
ベルトルト「っ」ダッ
ライナー「ベル…!?」
350: 2013/12/09(月) 23:51:31 ID:WCD0f5Ko
ユミル「クリスタ…お前、まだそんなこと言ってんのかよ?」
クリスタ「え…?」
ユミル「彼らの氏を利用するな。あの上官方はお前の自殺の口実になるために氏んだんじゃねぇよ」
クリスタ「…! そんな…そんなつもりは…」
ユミル「お前はコニーや上官方とは違うだろ!」
ユミル「本気で氏にたくないって思ってない…いつも、どうやって氏んだら褒めてもらえるのかばっかり考えてただろ?」
クリスタ「そ…そんなこと…」
ユミル「クリスタ」ガシッ
ユミル(もうどうすることも出来ない)
ユミル(こうするしか…ない)
ユミル「ッ…多分、これが最後になるから…」
ユミル(お前が私を“人間”として見てくれる、のは)
351: 2013/12/09(月) 23:52:11 ID:WCD0f5Ko
ユミル「…クリスタ。私は…お前をずっと、ずっと…」
クリスタ「…ユミル…?」
ユミル「……ッ」グッ
クリスタ「ユミル…ねぇ…ユミル…?」
ライナー「…陽が、出て来たな…」
コニー「最後に…陽を拝めるとはなぁ…」
ユミル「ッ…コニー!」バッ
クリスタ「!」
コニー「うわっ…何だよ…?」
ユミル「ナイフを貸してくれ」
コニー「? ほらよ」スッ
ユミル「あんがとよ」ペチ
352: 2013/12/09(月) 23:52:43 ID:WCD0f5Ko
コニー「…何に使うんだよ、それ…」
ユミル「まぁ…そりゃ、これで戦うんだよ」
ライナー「オイ…ユミル、何するつもりだ…?」
ユミル「さぁな。自分でもよく分からん」
クリスタ「……ユ…」
ユミル「クリスタ…お前の生き方に口出しする権利は私に無い」
ユミル「だからこれはただの…私の願望なんだがな」
ユミル「お前、胸張って生きろよ」
クリスタ「え…」
ベルトルト「待って!!」
353: 2013/12/09(月) 23:53:17 ID:WCD0f5Ko
ユミル「!?」
クリスタ「!!」
コニー「ベ、ベルトルト…」
ライナー「お前…その格好…何で、立体機動装置を…」
ユミル(まさか…!)バッ
ユミル(やっぱり!ヘニングの装置か!!)
ベルトルト「…僕がやる」
ライナー「お前…何を言っているんだ!こんな中に飛び込んで行って無事で済むと思っているのか!?」ガシッ
ベルトルト「思うわけないじゃないか!!」
ライナー「ッ!」
ベルトルト「じゃあどうやってここから生き延びるの!?他に方法があるって言うのか!?」
コニー「にしても無茶だ!最後まで助けを待つってことって出来るだろ!?」
ユミル「…それは絶望的だ。だいぶ衝撃を受けてるからな…そんなに長く保たねぇよ…」
354: 2013/12/09(月) 23:54:11 ID:WCD0f5Ko
クリスタ「で、でもベルトルトも…氏んじゃうかもしれない…っ」
ベルトルト「…時間稼ぎくらいには、なるかもしれないだろ…」
ライナー「お前一人で行かせるわけにはいかん!俺も…」
ベルトルト「その腕で何言ってんだよ…!ダメだよライナー…約束したじゃないか…」
ベルトルト「生きて故郷に帰るって…」
ライナー「ベルトルト…お前も一緒にって言葉が、抜けてんじゃねぇか…!」
コニー「そ、そうだぜ…お前だけ犠牲になんて、出来るわけねぇだろ!」
ベルトルト「ホント…僕も何やってるんだろうって、本気で思うよ…」
ベルトルト「こんな、こんなことするつもり…無かったのに…」
ユミル「だったらしなきゃいい」
ベルトルト「!?」
コニー「ユミル…!?」
ユミル「自分から氏に急ぐような真似すんじゃねぇ、エレンじゃあるまいし」
ライナー「ユミル、お前…ッ!」グッ
355: 2013/12/09(月) 23:55:15 ID:WCD0f5Ko
ユミル「なぁベルトルさん…お前、何の為にここにいるんだ?」
ベルトルト「え…?」
ユミル「こんな所で巨人のエサになる為か?良いカッコして華々しく散る為か?違うだろ」
ユミル「生きて、お前の言う“故郷”とやらに帰る為じゃなかったのか?」
ベルトルト「っ…」
ユミル「どんな無様でもいい。どんな汚い手を使ったっていい。誰に軽蔑されたっていい」
ユミル「でなきゃ何の為にここに来たのか…分かんねぇだろ」
ベルトルト「! ユミル、やっぱり君は…!!」
ユミル「生きろよ、ベルトルさん」ダッ
クリスタ「ユミル!?待って!!」バッ
ユミル「ッ…」ダッダッダッ
ベルトルト「ユミル!!」
356: 2013/12/09(月) 23:56:01 ID:WCD0f5Ko
ユミル「」バッ
ユミル(私は自分の為に、お前を助けようとしてきた)
ユミル(何度も何度も何度も何度も)
ユミル(お前がいたから、私はここまでやってこれた―――だが)
ユミル(アイツは違う、アイツの周りに本当の“味方”はいなかった)
ユミル(孤独だっただろ、辛かっただろ)
ユミル(―――それだけで、終わらせたくねぇんだよ)カッ
ユミル「ギャァァァァアアアア!!!!!!」バッ
クリスタ「!?」
コニー「なっ…」
ライナー「…!!」
ベルトルト「ッ!?」
357: 2013/12/09(月) 23:56:49 ID:WCD0f5Ko
グイッ ブチィィッ
アァァァ!! ガブッ ビリィィ
コニー「ウソだろ…ユミルまで…巨人に…」
クリスタ「ユミル……」
ライナー「…あ…」
ベルトルト(嘘だ)
ライナー「あの巨人は…」
ベルトルト(君が、あの巨人だったなんて)
ライナー「あの時の……」
ベルトルト(誰か、嘘だって言ってくれ)
362: 2013/12/11(水) 01:37:26 ID:JlEb0dzQ
コニー「ア、アイツ…巨人相手に…戦ってやがるのか…?」
クリスタ「そ、んな…」ドォォンッ
コニー「うおっ!!」グラ
クリスタ「あっ!」グラッ
コニー「ク、クリスタ!!」
ライナー「」ガシッ
クリスタ「あ…ありがとう、ライナー…」
ライナー「……」ググッ
クリスタ「いっ!いたた!ライナー、足っ…!」
コニー「ライナー!?もう良いって!放せよ足!オイ!?」
ライナー「ハッ!」バッ
ライナー「すまん…」
クリスタ「ううん、助かった…」
363: 2013/12/11(水) 01:38:02 ID:JlEb0dzQ
ライナー「…クリスタ…お前は知ってたのか?ユミルが…巨人だったって…」
ベルトルト(どうしてユミルは…このウトガルド城に来たんだ?)
ベルトルト(彼女の頭なら、ここを回避することだって出来たんじゃないのか…?)
ベルトルト(これじゃまるで…自ら正体を現すために、ここに来たみたいじゃないか…)
ベルトルト(こんな、こんなこと…ないよ…)
クリスタ「知らなかった…いつも近くにいたのに…こんな…こんなことって…」
ギィィァァアア バシュッ
クリスタ「……」
クリスタ「信じられないよ…三年間ずっと一緒にいたのに、何なの一体…あれが…ユミルだって言うの…?」
クリスタ「嘘だ…」
クリスタ「―――嫌だ…」
ライナー「…つまりアイツは、この世界の謎の一端を知ってたんだな」
364: 2013/12/11(水) 01:38:44 ID:JlEb0dzQ
ライナー(ベリックを食った巨人が…こんな近くにいただなんて…)
ライナー(どうして俺はベルトルトの言葉を軽視してしまったんだ、ベルトルトがユミルを疑った時に)
ライナー(あの時に…頃しておけば…)
ライナー「全く…気が付かなかったよ…」
ベルトルト(じゃあ…彼女は知っていたのか…?彼女がベリックを食ったってことを…)
ベルトルト(僕達の仲間のベリックを、食ったって…)
ベルトルト(知ってて…知っていたくせに、ずっと僕達の邪魔をしていたの…?)
ベルトルト「なん…で…」ギリッ
コニー「でもさぁ、アイツ…巨人の力を知ってた風だったぞ?エレンとは違って…」
コニー「アイツは…どっちなんだ…」
クリスタ「!? どっちって?ユミルが人類の敵かもしれないって言うの?」
ベルトルト(大体、何でユミルは戻って来たんだ!?何か理由があったって言うのか!?)
ベルトルト(いつも飄々として、人を馬鹿にして、邪魔ばかりしてきて…)
365: 2013/12/11(水) 01:40:03 ID:JlEb0dzQ
コニー「あぁ…考えてみりゃ、アイツはどんな状況でも我関せずって涼しい顔してたぜ」
コニー「そりゃあこんな力を隠し持っていたんだもんな」
コニー「何考えてんのか分かったもんじゃねぇよ…」
クリスタ「……」
ベルトルト(どうしてユミルは…世界をやり直しているんだ…?)
ベルトルト「…一体…ユミルの目的は何なんだ…」
クリスタ「……ッ…」
ビシュッ ダンッ
アァァアアア ブチブチィッ ガッ
ユミル「!」
クリスタ「あ…!」
ライナー「! ユミルが引きずり降ろされた…!」
クリスタ「!! …ユミル!」
366: 2013/12/11(水) 01:40:47 ID:JlEb0dzQ
ググッ ガブッ バリィィ
ブチブチッ ガシッ グググッ…
コニー「塔にしがみ付いて何とかなってるけど…数が多すぎる…」
ユミル「ッ…」ズズズッ ピキッ
クリスタ「……!」
ユミル(クリスタ…チクショウ、何度見ても、その目だけは慣れねぇなぁ…)
ユミル(私が怖いか?化け物だと罵られても構わない)
ユミル(私はどうなったって構わない―――だから)パッ
クリスタ「な!?」
コニー「ア…アイツ…手を放した!?」
コニー「何だ…!?まさか…塔の損傷を気にしてるのか!?」
ベルトルト「!」
ベルトルト(まさか、君は…)
クリスタ「…そうだよ」
クリスタ「巨人の力を自分一人で逃げる為に使うことも出来たはず…」
367: 2013/12/11(水) 01:41:19 ID:JlEb0dzQ
クリスタ「あの体の大きさじゃ、ここの巨人全てを倒すことなんて出来ないよ…なのに…今ここでユミルが戦っているのは…」
ベルトルト(クリスタを守る為だけに、戻って来たっていうのか…!?)
クリスタ「私達を…命懸けで守ろうとしてるから」
ライナー「あ…!?まずいぞアイツ!このままじゃ…!」
ベルトルト(君の今までの行動全ては、クリスタを守る為だけにやってきたというのか…!?)
クリスタ「何でよ…ユミル…ッ」バッ
クリスタ「氏ぬなユミル!!こんな所で氏ぬな!!」
ユミル「!!」
クリスタ「何いい人ぶってんだよ!!そんなにかっこよく氏にたいのかバカ!!」
コニー「オイ!」ガシッ
クリスタ「性根が腐り切ってるのに今更天国に行けるとでも思ってるのか、このアホ!!」
ユミル(…ったく…あの甘ちゃんは…)
クリスタ「自分の為に生きろよ!!こんな塔を守って氏ぬくらいなら…」
368: 2013/12/11(水) 01:41:51 ID:JlEb0dzQ
ユミル(自分のことは棚に上げやがって…いい根性してやがるよ、本当に)
クリスタ「もう、こんなもんぶっ壊せ!!」
ユミル(だからこそ私は…お前を必ず守り抜くって決めたんだけどな!!)ガッ
クリスタ「!」
ユミル(女神様のご神託だ…ありがたくぶっ壊させてもらうぜ!!)バコッ ブンッ バキィィッ
ライナー「オ…オイ!アイツ…本当に壊しやがった!?」ゴゴゴゴゴ
クリスタ「いいぞユミル!!」
ベルトルト(無茶苦茶だ…!僕やライナーはともかく、クリスタとコニーが危険すぎる!!)
ベルトルト(これが…これが君の覚悟だって言うの!?)
ユミル「」ゴォッ
クリスタ「……!」
ユミル「イキタカ ツカアレ」
369: 2013/12/11(水) 01:42:21 ID:JlEb0dzQ
クリスタ「…ッ、ユミル!」ガシッ
コニー「どうなってんだよチクショォ!!」ガシッ
ライナー(今はこうする以外に生き延びる方法はない!)ガシッ
ベルトルト(ユミル、君は…!)ガシッ
ゴゴゴゴゴゴ
ドドドォォォォン……
******
コニー「…信じらんねぇ…巨人共を塔の下敷きにしようだなんて…何っつーこと考えんだよ…」
ライナー「グッ…」
ベルトルト「ゴホッ…ライナー、大丈夫…!?」
ライナー「あ、あぁ…生きてるよ…」
370: 2013/12/11(水) 01:42:53 ID:JlEb0dzQ
クリスタ「けほっ…」
ユミル「……」
クリスタ「ユミル…!」
ベルトルト(何とか助かった…さすがにもう、調査兵団も来るだろ…)
ベルトルト(そうしたら、エレンを…エレンとユミルを…)ゴゴゴゴゴ
ベルトルト「!?」
クリスタ「え…!?」
巨人「」ボコッ
巨人「」ガラガラ
コニー「巨人が…起き上がってくるぞオイ!」
クリスタ「そんな…」
ユミル「」ダッ
コニー「オイ!ブス!!早くとどめ刺せよ!」
ユミル(お前に言われなくても…!!)ガブッ ブチブチ
371: 2013/12/11(水) 01:43:52 ID:JlEb0dzQ
巨人「」ガシッ
ユミル「!」ブンッ
ユミル(や、べぇ)ガンッ
コニー「オイ…オイ…まずいぞ…」
巨人「」バリバリィッ
巨人「」ガブッ
ユミル(クソッ…動けねぇ…!!痛ぇ…チクショウ…!!)
ベルトルト(このままだと、ユミルが食われる…!どうしたらいい…!?)
コニー「ユミルが…食い尽くされる…!」
クリスタ「あぁっ…そんな…そんな…!!」
ベルトルト(今マトモに攻撃出来るのは僕だけだ、行かなきゃ…!助けに行かないと…!!)
ベルトルト(……え)
クリスタ「ユミル!!」ダダッ
コニー「クリスタ!」
372: 2013/12/11(水) 01:44:24 ID:JlEb0dzQ
ベルトルト(何で今…僕は、ユミルを助けるなんて思ってしまったんだ…?)
クリスタ「待ってよ…ユミル…!まだ、話したいことあるから…!」
ユミル(頭がぼんやりしてきやがった…あぁ、クソったれ…)ブチブチッ
クリスタ「まだ!」
ユミル(泣くな…クリスタ…大丈夫だから…)
クリスタ「私の本当の名前!!教えてないでしょ!!」
巨人「」ヌッ
ライナー「! クリスタ!」
クリスタ「……っあ」
巨人「」ヌ
クリスタ「待ってよ、まだ…」
373: 2013/12/11(水) 01:45:30 ID:JlEb0dzQ
ギュルルルッ ザクッ
ミカサ「ッ」タンッ
クリスタ「……!」
クリスタ「ミカサ!?」
コニー「お…お前、何で…!?」
ベルトルト(どうして、どうしてだよ…どうして…!)
ミカサ「クリスタ…皆も下がって」
ミカサ「後は私達に任せて」
ベルトルト(どうして!!)
******
374: 2013/12/11(水) 01:46:18 ID:JlEb0dzQ
アルミン「まさか…ユミルが!?」
ライナー「ベルトルト」ボソッ
ベルトルト「…分かってる、ライナー。今が勝負所だ」ボソッ
ベルトルト「…ねぇ、ライナー」
ライナー「分かっている。…ユミルのことだろう?」
クリスタ「ユミル…」
ユミル(…ほらな…大丈夫だっただろ…?ちょっと体中痛いけどな…)
ユミル(本当にお前は…優しいな…)
クリスタ「私の名前…ヒストリアって言うの…」
ユミル(―――あぁ)
ユミル(知ってたよ。ずっとずっと、昔から)スゥッ
ベルトルト「あぁ。…彼女も、連れて行く」
377: 2013/12/12(木) 01:55:20 ID:F27kRM7Y
ベルトルト(ただ問題は一つ…ミカサだ)
ベルトルト(前の世界―――僕はここで氏んだ、ミカサに首を斬り落とされて)ブルッ
ベルトルト(前みたいに馬鹿正直に言ったら、恐らく二の舞だ。僕はまた、氏ぬ)
ベルトルト(僕は…僕は、この先に進めるのだろうか…)
ベルトルト(恐い。エレンを連れ去るのが…この先へ進むのが恐い)
クリスタ「ユミルは我々人類の味方です!ユミルを良く知る私に言わせれば、彼女は見た目よりずっと単純なんです!」
ハンジ「そうか…あぁ、もちろん彼女とは友好な関係を築きたいよ」
ベルトルト(やらなくちゃいけないことなのに…この為に僕はずっと前に進んできたのに)
ベルトルト(…恐い、恐い、恐い…)チラ
378: 2013/12/12(木) 01:55:53 ID:F27kRM7Y
ハンジ「ユミルはどう?」
モブリット「依然昏睡したままです。出血が止まって、傷口から蒸気のようなものが出ていますが…」
ユミル「」スゥ
ベルトルト(ユミル…君はどうして先へ進めたの?)
ベルトルト(氏ぬかもしれないあの状況で…どうして巨人になれたの?)
ベルトルト(クリスタを守る為なら君は、自分さえも犠牲に出来るというの?)
ベルトルト(分からない…分からないよ、ユミル…)
ライナー「ッ…イテテ…」
エレン「大丈夫かライナー?」
ライナー「大丈夫じゃねぇな。巨人に腕を噛み砕かれたんだ…本当にまいった…」
ライナー「もうダメかと…」
エレン「……」
ベルトルト(……ん?)
379: 2013/12/12(木) 01:56:27 ID:F27kRM7Y
エレン「お前程強くても…そうなっちまうんだな…」
ライナー「何言ってんだ…こんなのもう二回目だぞ。なぁ?アルミン」
アルミン「え?」
ベルトルト(何だ、今のは…)
ライナー「一度は巨人の手の中にすっぽり収まっちまったこともあるんだ」
アルミン「あぁ…あの時…」
ライナー「既にもう二回も氏にかけた。このペースじゃあの世まであっという間だ」
ベルトルト(エレンの態度が、一瞬だけどおかしかったような気がする…何だ…?)
ライナー「自分で選んだ道だが、兵士をやるってのはどうも…」
ベルトルト(…そうだよ、どうして前の時…ミカサはあんなに反応が早かったんだ…!?)
ベルトルト(いくらミカサだからって、あの動きは前もって僕達の正体を知ってなきゃ出来ないはずだ…)
ベルトルト(……まさか!)
ライナー「体より先に心が削られるみてぇだ…」
380: 2013/12/12(木) 01:57:04 ID:F27kRM7Y
ベルトルト(今のライナーは兵士の状態だ、このままじゃ、)
ライナー「まぁ…壁を塞がねぇことには…しんどいだのと言ってる暇もねぇか」
エレン「あぁ…お前達二人の故郷も遠退いちまうばかりだからな…」
ベルトルト(彼らにこれ以上の確信を与えてしまうかもしれない!)
エレン「何とかここで踏みとどまらねぇと…」
ベルトルト「そうだよ…ライナー!」
ライナー「!」
ベルトルト「故郷だ!帰ろう!」
ベルトルト(多少大げさでもいい、今はライナーを戦士に戻さないと…!)
ベルトルト「もう帰れるじゃないか…今まで苦労してきたことに比べれば、後少しのことだよ」
ライナー「…そうか…!後もう一息の所まで来ているんだったな」
エレン「は?何言ってんだ、お前ら」
ハンジ「皆いるかい?…ユミルの件はひとまず後だ。壁の修復作戦を再開しよう」
381: 2013/12/12(木) 01:57:43 ID:F27kRM7Y
ハンジ「しかし…現場はもっと巨人だらけだと思ってたんだが…」
ミカサ「! あれは…ハンネスさん」
ハンジ「駐屯兵団先遣隊だ。穴の位置を知らせに来たんだ」
ベルトルト「ライナー…この騒ぎに乗じてエレンを連れ去ろう」
ライナー「何だと?」
ベルトルト「いきなり巨人化して、そのまま連れて行くんだ」
ライナー「…そんな闇討ちみたいな真似…」
ベルトルト「もうここまで来てしまったんだ…!後には戻れない、それに」チラッ
ライナー「…?」
ベルトルト「…多分、僕達の正体に気付いている、と思う」
ライナー「な…!?…何故そう言える」
ベルトルト「確信は持てないよ。でも、さっきエレンが君を見る目が、明らかにおかしかったような気がするんだ」
ライナー「……なら、尚更だ」ダッ
ベルトルト「ちょ…!待ってライナー…!」
382: 2013/12/12(木) 01:58:20 ID:F27kRM7Y
エレン「穴が開いてなかった…?何だよ一体…」
アルミン「どういうことだろう…」
ライナー「エレン」
エレン「?」
アルミン「この五年間に無かったことが、こんなに一度に起こるなんて…」
ベルトルト(待ってくれ…この流れはマズい!!)
ベルトルト「ライ…」
ライナー「話があるんだが」
エレン「…?何だよ」
ベルトルト(駄目だ、これじゃ…これじゃ前と何も変わらないじゃないか!)
ベルトルト(せめて…!せめてミカサから離れておかないと…!!)
ベルトルト「エ、エレン…ちょっと、来てもらってもいいかな?」
エレン「……あぁ」
ミカサ「……」
383: 2013/12/12(木) 01:58:55 ID:F27kRM7Y
エレン「…オイ、何だよ話って」
ベルトルト「……エレン、その…ね」
ライナー「俺達は五年前…壁を破壊して、人類への攻撃を始めた」
ベルトルト(待ってライナーいきなりすぎる!)
ライナー「俺が鎧の巨人で、コイツが超大型巨人ってヤツだ」
ベルトルト(まずい!ミカサは…!)チラ
ベルトルト「!!」ゾクッ
ミカサ「」ジッ
ベルトルト(や、っぱり、見てる)
ベルトルト(気付かれていたんだ、やっぱり…!どうして、何で…!?)
エレン「は…?何言ってんだお前…」
ベルトルト「な……何を言っているんだライナー」
ベルトルト(見てる、ミカサが、こっちを)
ベルトルト(このままじゃ…殺され、る…!)
384: 2013/12/12(木) 01:59:30 ID:F27kRM7Y
ライナー「俺達の目的は、この人類全てに消えてもらうことだったんだ。だが…そうする必要はなくなった」
ベルトルト(ヘニングさんのブレードの残りは…!)チラ
ベルトルト(…嘘、だろ…あと一枚…?)
ライナー「エレン…お前が俺達と一緒に来てくれるなら、俺達はもう壁を壊したりしなくていいんだ。分かるだろ?」
エレン「は!?」
ベルトルト(初撃は防げるかもしれない、でも、その次は…!?)
ベルトルト(ライナーを庇って…ブレードが保つのか!?ミカサの斬撃に…!?)
エレン「イヤ待て!全然分かんねぇぞ!」
ライナー「だから俺達と一緒に来てくれって言ってんだよ。急な話しですまんが今からだ」
ベルトルト(無理だ…すぐに消耗するのが関の山だ…!)
エレン「今から!?どこに行くんだよ!?」
ライナー「そりゃ言えん…だが、まぁ…俺達の故郷ってヤツだな」
385: 2013/12/12(木) 02:00:08 ID:F27kRM7Y
ベルトルト(君が卑怯なことを嫌うのは知ってた、知ってたよ、だけど!)
ベルトルト(どうして嫌でも出来ないんだよ君は!)
ライナー「で?どうなんだよエレン」
エレン「え?」
ライナー「悪い話じゃないだろ?一先ず危機が去るんだからな」
エレン「うーん…どうだろうな…」チラッ
ミカサ「……」
ベルトルト(!! 今、ミカサに目線を合わせた…!)
ベルトルト(どうする!?ここから生き延びて、エレンを連れて行く方法…何か、何かないか!?)
アルミン「おーい、行くよー?」ブンブン
ベルトルト(駄目だ考えがまとまらない!一旦引きたい…!これじゃ殺される以外に何も先がない!)
エレン「お前さぁ…疲れてんだよ。なぁ?ベルトルトこうなってもおかしくねぇくらい大変だったんだろ?」
386: 2013/12/12(木) 02:00:42 ID:F27kRM7Y
ベルトルト「…!?」
ベルトルト(これはチャンスだ!ここで一旦引いて、考え直せれば…!)
ベルトルト「あ……あぁ、そうだよ!ライナーは疲れてるんだ!」
ベルトルト(よし、これで少しは時間が……)
ベルトルト(……いいの?これで…)
エレン「大体なぁ、お前が人類を頃しまくった“鎧の巨人”なら、何でそんな相談を俺にしなくちゃなんねぇんだ」
エレン「そんなこと言われて、俺がはい行きますって頷くわけがねぇだろ」
ベルトルト(これで一体何が変わるって言うんだ)
ベルトルト(僕は…何の為に戻って来たんだ…)
ユミル『なぁベルトルさん…お前、何の為にここにいるんだ?』
387: 2013/12/12(木) 02:01:19 ID:F27kRM7Y
ユミル『こんな所で巨人のエサになる為か?良いカッコして華々しく散る為か?違うだろ』
ベルトルト(…そうだよ…)
ベルトルト「」チラ
ユミル『生きて、お前の言う“故郷”とやらに帰る為じゃなかったのか?』
ライナー「そうか…その通りだよな…何を、考えているんだ俺は…本当におかしくなっちまったか?」
ベルトルト(大丈夫、ライナー…君はおかしくなんかなっていない)
エレン「とにかく街へ行くぞ」ザッ
ライナー「きっと…ここに長く居過ぎてしまったんだな。馬鹿な奴らに囲まれて…三年も暮らしたせいだ」
ベルトルト(あぁ、そうだ。僕達は、彼らに肩入れしすぎてしまっていたんだ)
ベルトルト(…皆といる時だけは…僕は、“人間”でいられたのかな…)
ライナー「俺達はガキで…何一つ知らなかったんだよ。こんな奴らがいるなんて知らずにいれば…」
ライナー「俺は…こんな半端なクソ野郎にならずに済んだのに…」
388: 2013/12/12(木) 02:02:19 ID:F27kRM7Y
ユミル『どんな無様でもいい。どんな汚い手を使ったっていい。誰に軽蔑されたっていい』
ベルトルト(…あぁ、そうだ、そうだね…)
ライナー「もう俺には…何が正しいことなのか分からん…」シュル
ベルトルト(ユミル、君はとても残酷で)
ライナー「ただ…俺がすべきことは自分のした行いや選択した結果に対し」シュル
ベルトルト(とても、強いね)スッ
ライナー「戦士として…最後まで責任を果たすことだ…」シュゥゥゥウウ
エレン「……!」
ベルトルト「エレン」トンッ
エレン「なっ…!」グラッ
ベルトルト「ごめん」
シャッ
ザクッ
ユミル『でなきゃ何の為にここに来たのか…分かんねぇだろ』
389: 2013/12/12(木) 02:03:41 ID:F27kRM7Y
ライナー「!?」
ミカサ「! エレン!!」ダッ
エレン「ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァアアア゙ア゙!?」ブシュゥッ
ライナー(エレンの両腕を…斬り落とした…!?)
ミカサ「―――お前らぁッ!!」ドォッ シャッ
エレン「グゥッ…!ミ、カサ…!!」ズル
ライナー「!!」グッ
ライナー「―――!」ザグゥッ
ベルトルト(ライナーの右腕が…!!まずい、僕もガードしないとっ…!)バッ
ミカサ「ッ!!」ヒュンッ ブンッ
ベルトルト「っ、ぁあ!」ザグッ
ベルトルト(首にっ…ブレードが…!)ブシュッ
ベルトルト(こんな、こんなこんな!!)
ベルトルト(エレンの腕を落とせたのに!!せっかく、せっかく上手く行ったのに!!)
390: 2013/12/12(木) 02:04:12 ID:F27kRM7Y
ライナー「うッ…あ!!」ボドッ
ベルトルト「あぁ!?あぁぁぁぁあ!!」ビュッ
ベルトルト(殺される!!また―――また!!)
ベルトルト「わぁぁあああああ!!」
ライナー(! ベルトルト…!ベルトルト!!)ダッ
エレン「ッ、グウゥッ…!」シュゥゥゥ
ミカサ「エレン!!逃げて!!」
ベルトルト(氏ぬ、殺される、また、また僕は、ここで)
ベルトルト(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、もう氏ぬのは嫌だ、僕は、僕は僕は僕は)
ライナー「―――オラァッ!!」ドッ
391: 2013/12/12(木) 02:04:47 ID:F27kRM7Y
ミカサ「なっ…!?」グラッ
ベルトルト「!?」
ライナー「ベルトルト!!」
ベルトルト(な、何で…前は…ライナーは、助けに来なかったのに…)
ベルトルト(僕は…生きている…?)
ベルトルト(そうだよ、まだ、氏ねないんだ…)グラッ
ベルトルト(まだ僕は…氏ねない!)
ベルトルト「ライナー…やるんだな…!?今…ここで!!」グッ
ライナー「あぁ!!勝負は今!!ここで決める!!」グッ
ベルトルト(そうだ、僕達は今度こそ…故郷へ帰るんだ!!)
カッ!!
396: 2013/12/13(金) 01:53:32 ID:2aG9dg4Q
調査兵「なっ、何だ今の衝撃―――わぁぁぁああ!!」
アルミン「超大型巨人に…鎧の巨人…!!やっぱり…!!」
ミカサ「クッ…!衝撃が…!」ググッ
クリスタ「うっ、うぅっ…!!」ググッ
ベルトルト(さすがにこの短期間では回復しきってないか…!上半身作るだけでやっとだ…!)
エレン「ぐっ…クソ…!!やっぱり、お前ら…!!」シュウゥゥ
ベルトルト(僕の考えが正しければ、多分エレンは…)
ベルトルト(―――ユミル!!)バッ
ユミル「」ガシィッ
クリスタ「!! ユミル!!」
397: 2013/12/13(金) 01:54:03 ID:2aG9dg4Q
ライナー(悪いなエレン!)グイッ
エレン「!!」ガッ
アルミン「なッ…エレン!!」
ハンジ「まずい、エレンが鎧に捕まった!!」
ライナー(このまま一緒に来てもらうぜ!!)ズザザザザザ
エレン「くそっ…本当に…本当にお前らが…!!」シュウゥゥゥ
エレン(あの三年間は、全部嘘だったって言うのか!?)
エレン(お前らが楽しそうに笑ってたのも…あの時見た、湖のことも…)
エレン(全部…全部…!!)シュウゥゥゥ
ベルトルト『エレン…ごめん』
エレン(お前のその“ごめん”は、俺の腕を斬り落としたことに対してだけなのか…!?)
エレン「ライナー…!ベルトルト…!」
エレン「このッ…裏切りもんがあぁぁああああ!!!!」グッ
398: 2013/12/13(金) 01:54:42 ID:2aG9dg4Q
エレン(―――な)
ミカサ「!! 何故…!」
アルミン「エレンが、巨人になれない…!?」
ベルトルト「……」
エレン「なっ…んでだよ!!クソッ…何でだ!?」グッ グッ
ハンジ「巨人になるには強い目的意識が必要なはずだ…!」
ミカサ「まさか、アニの時みたいに躊躇っている…!?」
アルミン「いや違う!今のエレンは目的意識がはっきりしているはずだ!」
ライナー(…ベルトルトがエレンの腕を落としたのは…こういうことか…)チラッ
エレン「どうして…!今、今俺がコイツらをやらなくちゃなんねぇのに…!!」
ベルトルト(ライナー!)
ライナー(すまねぇなエレン。…これが、俺達とお前の違いだ)パカッ
399: 2013/12/13(金) 01:55:28 ID:2aG9dg4Q
エレン「なっ…!!」
ライナー(しばらく、おとなしくしててもらうぞ!)バグッ
エレン「!!」
ミカサ「エレン!!…ライナァァァァア!!」パシュッ ギュンッ
アルミン「待ってミカサ!迂闊に行動したら駄目だ!!」
ミカサ(待っててエレン…!!今すぐその汚い所から出してあげるから!!)ギュルルルル ブンッ
ライナー「」キンッ
ミカサ「くっ…刃が通らない…!!」
ミカサ(あのチビみたいに光速で削ろうとしても…コイツは全身が鎧…!!)
ミカサ(アニの時の手は使えない…っ…)
調査兵「全員一気に超大型へ斬りかかれ!!」パシュッ
調査兵「人類の仇そのものだ!!躊躇うな!!」パシュッ
400: 2013/12/13(金) 01:56:02 ID:2aG9dg4Q
ベルトルト(くっ…やっぱり速い…!)
ベルトルト(でもここまで来たんだ…!こんな所で、やられるわけにはいかない!!)
ベルトルト「」バカッ
クリスタ「あッ―――…!!」
ベルトルト「」バグゥッ
クリスタ「ユミルが…食べられた……!!」
クリスタ「嫌ッ…なんで、どうして、ベルトルト!!」
ハンジ「今だ!!全員で削り取れ!!」
ベルトルト「―――ッ!!」ボッ ゴォォォォォオ
クリスタ「え!?」
ハンジ「総員一旦引け!!」
調査兵「熱っ!」
ベルトルト(はぁっ…はぁ…!!くそ、やっぱり体力使う…!)
ベルトルト(ライナー…!早くこっちに来てくれ!)
401: 2013/12/13(金) 01:56:35 ID:2aG9dg4Q
調査兵「水持って来い!」
ハンジ「また消えるつもりか!?」
アルミン「いえ!様子が変です!以前なら一瞬で消えましたが、今は骨格を保ったままロウソクのように熱を発し続けています」
アルミン「このままあの蒸気で身を守られたら…立体機動の攻撃が出来ません!」
アルミン「鎧の巨人の方も、ミカサや兵士たちが攻撃を続けていますが…傷一つ、まだ…!ど、どうすれば…!」
ハンジ「…どうもしない、待つんだ」
ハンジ「いつまで体を燃やし続けていられるのか見物だが、いずれ彼は出てくる」
ハンジ「待ち構えてそこを狙うまでだ」
ハンジ「私は鎧の巨人の所へ向かう!アルミンも一緒に!!」バッ
アルミン「は、はい!!」バッ
ミカサ(エレンを助けなきゃいけないのに…!!硬い!!)キンッ
402: 2013/12/13(金) 01:57:08 ID:2aG9dg4Q
調査兵「何故コイツは俺達に攻撃をしかけてこない!?ただ防御しているだけじゃないか!」
ミカサ「ライナー…」
ミカサ(どうして私はあの時、二人の首を刎ねられなかったの…?)
ミカサ(…情なんて…そんなの…)
ミカサ(エレンを守る。その為なら私は、誰であろうと倒す!)パシュッ
調査兵「アッカーマン!先走るな!!」
ミカサ「はぁぁッ!!」ギュルルル
ライナー(ミカサ…お前は相変わらず怖い女だ)
ライナー(正直エレンを連れて行く為の一番の障害はお前だ)
ライナー(だから、俺達は考えた。お前の行動を塞ぐ方法を)ダッ
調査兵「なっ…鎧が逃げる!?」
ミカサ「待て!!」パシュッ ギュルルル
403: 2013/12/13(金) 01:57:56 ID:2aG9dg4Q
アルミン「! ハンジ分隊長!!」
ハンジ「鎧の巨人が…自らこっちに向かって来ている…!?」
ハンジ(こちらに攻撃も仕掛けず、一体何をするつもりだ!?)
ベルトルト「」ピクッ
クリスタ「え…!?」
ベルトルト「」グラッ
クリスタ「…そ、そんな…まさか…!!」
ベルトルト「」バキバキバキ
クリスタ「ベルトルトが…落ちる…!」
ベルトルト「」ヒュゥゥゥ
ハンジ「待て、あれは…ミカサ!?」
アルミン「鎧の巨人を追撃してるのか!?」
コニー「―――上だ!!避けろぉぉぉおお!!!」
404: 2013/12/13(金) 01:58:36 ID:2aG9dg4Q
アルミン「!?」
ハンジ「!!」
ミカサ「!?」
ベルトルト「」ドンッ
ジュゥゥゥゥ
ゴオォォォォォォ
アルミン「うわぁぁぁあ!!」グンッ
ミカサ「―――!!」ゴォッ
ハンジ「な―――!!」ドォッ
ベルトルト(よし…上手く行った…!!)
ライナー(馬鹿みてぇに熱い…!が、これしか方法がないんだ!!)
ベルトルト(僕の蒸気に耐えられるのはライナーだけだ…生身の人間じゃ、衝撃で飛ばされる!)
ベルトルト(しばらく動けないはずだ!この隙に…!)グッ
ベルトルト「…グ、はぁっ!」グイッ
405: 2013/12/13(金) 01:59:09 ID:2aG9dg4Q
ベルトルト「ハッ…ユミル…」
ユミル「……」
ベルトルト「…悪いけど、君にも一緒に来てもらう。君には聞きたいことが山ほどあるんだ」パシュッ
ライナー「」ザクッ
ライナー(行くぞ、ベルトルト)クイ
ベルトルト「あぁ、分かってるよライナー」グッ
ライナー「」ダダッ
ベルトルト(もう少し、もう少しだ…!)
ユミル「……」スッ
ユミル(…やっぱり、こうなっちまったか…)
ユミル(もう―――終わりだな)
406: 2013/12/13(金) 01:59:45 ID:2aG9dg4Q
******
小規模な巨大樹の森
ライナー「ガッ…ハァ…はぁ…」
ベルトルト「ライナー…大丈夫…?」
ライナー「あぁ、とりあえずはな…」
エレン「うっ…」
ライナー「…アイツ、散々口の中蹴りまくってくれたからよ…まだ変な感じがするぜ…」
ベルトルト「今はまだ気を失っているけど、起きたらどうなるのかな…」
ライナー「その時になってみなきゃ分からん。…ベルトルト」
ベルトルト「何?」
ライナー「エレンの腕を斬り落としたのは…巨人化させない為だったんだな」
407: 2013/12/13(金) 02:01:29 ID:2aG9dg4Q
ベルトルト「…うん。エレンが巨人になってからまだそんなに経ってない」
ベルトルト「両腕の欠損っていう大幅な修復が必要になれば、自ずとエネルギーはそれを優先させる」
ベルトルト「巨人化までエネルギーが回らない…って思って」
ライナー「万が一巨人化しても、力は落ちてるだろうしな…俺もミカサに右手落とされた時は、どうなることかと思ったが…」
ライナー「…経験の差ってやつか。あんま素直には喜べんな」
ベルトルト「そうだね…」
ライナー「…一つ聞きたい。お前は、ユミルの正体を知っていたのか?」
ベルトルト「…ううん、知らなかった。ウトガルドで初めて知った」
ライナー「じゃあ何故お前はユミルを敵視していた?」
ベルトルト「それは、壁外調査の時ユミルに邪魔をされたから…それがなければ、こんな追い込まれることはなかったんだ…」
ライナー「…だが俺には分からん。何故、ユミルは企画紙をすり替えることが出来たんだ?」
ベルトルト「それは…!」
408: 2013/12/13(金) 02:02:25 ID:2aG9dg4Q
ライナー「それは?」
ベルトルト「それ、は」
ベルトルト(信じてもらえるわけがない。…この世界をやり直しているからだ、なんて)
ライナー「おい、ベルトルト」
ユミル「よせよライナー」
ライナー「!?」
ベルトルト「ユミル…!?」
ユミル「あー、何か体ベタベタする気がする。何か拭くもんとか持ってないか?」
ライナー「…あるわけがないだろう」
ユミル「だよなぁ」
ベルトルト「…君は、この状況に驚いてないんだね」
ユミル「この状況?私の片手片足が無い上にいつの間に森にいてしかもお前らとエレンしかいなくてエレンが気絶しちまってるこの状況か?」
409: 2013/12/13(金) 02:02:55 ID:2aG9dg4Q
ベルトルト「…丁寧な説明をありがとう」
ユミル「どういたしまして。さてライナー、本題だ。種明かししてやるよ」
ライナー「っ…お前、よくそんな態度が取れるな!?」
ユミル「元々こんな態度だ。…ベルトルさん」
ベルトルト「!」
ユミル「エレンをライナーの所へ持って行け。で…お前だけこっちに来い」
ベルトルト「……!」
ライナー「何だと…!?そんなこと出来るはずないだろ!」
ユミル「悪いなライナー、お前にはまだ早い。おとなしくエレンに子守唄でも歌ってやれよ」
ライナー「貴様…!」
ベルトルト「…分かったユミル、言う通りにしよう」
ライナー「ベルトルト!?」
410: 2013/12/13(金) 02:04:53 ID:2aG9dg4Q
ベルトルト「ライナー。…僕は、彼女の話を聞かなきゃいけないんだ」
ベルトルト「その為に僕は…彼女を連れてきた」
ユミル「……」
ライナー「ベルトルト…お前…」
ベルトルト「頼むライナー…僕は知りたいんだ」
ベルトルト「ユミルは一体、何者なのかって」
ライナー「…分かった。だが、決して無茶はするな」
ライナー「油断するな。アイツは…俺達の敵だ」
ユミル「……」
ベルトルト「……あぁ」
411: 2013/12/13(金) 02:06:57 ID:2aG9dg4Q
今夜はここまでです
そろそろ終わりに向かいます、分岐してるようでしてない気がする
レスありがとうございます、また明日来ます
415: 2013/12/14(土) 03:16:45 ID:LPTIOau.
******
ベルトルト「ユミル。君の言う通り、エレンは移動させた」
ライナー「……」
ユミル「あぁ、これでいい。…ライナーが睨んでくるのがちょっと気になるがな」
ベルトルト「それは我慢してほしい」
ユミル「分かってるよ。―――さぁ、ベルトルさん。本題だ」
ユミル「お前は、一体何を知りたいんだ?」
ユミル「ただし全部ってのは無しだ。自分で何も考えず、ただ相手の言葉を待つだけなんてガキにだって出来る」
ベルトルト「…あぁ、分かっている」
ベルトルト「ユミル…君は、この世界をやり直しているの?」
416: 2013/12/14(土) 03:17:16 ID:LPTIOau.
ユミル「…あぁ」
ベルトルト「……やっぱり、そうだったのか」
ユミル「……」
ベルトルト「一度目?」
ユミル「いいや、違う」
ベルトルト「…君は、一体どれだけ繰り返してきたの?」
ユミル「…さぁ。もう覚えてねぇな。何十回、何百回…ま、そんなのどうだっていいじゃねぇか」
ベルトルト「…一つ、聞いてもいい?」
ユミル「何だ」
ベルトルト「繰り返してきた世界に、人類が勝利した世界はあった?」
417: 2013/12/14(土) 03:18:08 ID:LPTIOau.
ユミル「…」
ユミル「たった、一度だけ」
ベルトルト「!」
ユミル「勝利っつーか…和解した世界なら、あったよ」
ベルトルト「! 和解…!?じゃ、じゃあもしかしてその世界では…!」
ユミル「あぁ。その世界ではお前ら巨人は生き残って、人類も巨人に怯えなくて済むようになった」
ベルトルト(その世界は、きっと僕が望んでいた世界だ…!)
ベルトルト(三人で故郷に帰る、一番欲しかった世界…!)
ベルトルト(…いや、ちょっと待って…だったら、何で…)
ベルトルト「…どうして君は、その世界を捨てたの?」
ユミル「…多分、その世界は今まで経験してきた中じゃ最もハッピーエンドに近くて」
ユミル「最もクソみてぇな世界だった」ギリッ
418: 2013/12/14(土) 03:18:46 ID:LPTIOau.
ベルトルト「え…!?」
ユミル「人類にとっても巨人にとっても最良だったその世界には―――」
ユミル「クリスタだけがいなかった」
ベルトルト「! 何、で」
ユミル「全ては、巨大樹の森が原因だった」
ベルトルト(巨大樹の森…壁外調査の時か)
ユミル「あそこで人類はまんまとエレンを連れ去られた。が…お前らはエレンが座標っていう確信を、その時は持てなかったんだ」
ベルトルト(じゃああの時、ユミルに邪魔をされていなかったら…僕たちは帰れていたの…?)
ベルトルト(もしも成功していたら…僕たちは…)
ユミル「そこで目を付けたのが、クリスタだ。アイツは壁の秘密を喋ることの出来る人間だったからな」
ベルトルト「ま、待って…!だからって、僕たちがクリスタを頃すはずがないじゃないか!」
419: 2013/12/14(土) 03:19:22 ID:LPTIOau.
ユミル「……お前が、それを言うのか?」キッ
ベルトルト「…!」
ユミル「訓練の時…アイツを連れ出してどうしようとしてたんだ?えぇ?オイ」
ベルトルト「そ、れは…!」
ユミル「とっさにライナーを嗾けなかったらと思うと…ゾッとするよ」
ベルトルト(やっぱりあの時ライナーが来たのも、偶然じゃなかったのか…!)
ベルトルト(ユミルは一体、どこまで分かって、知って、行動してるっていうんだ!)
ユミル「…話を元に戻そう。ま、さすがにお前らはクリスタを犠牲にすることは躊躇っていたが…」
ユミル「皮肉にも、クリスタ自身がそれを望んじまった」
ユミル「私と引き換えにエレンを返して」
ユミル「そして、これ以上壁を攻撃しないで」
ユミル「…随分幼稚で、お粗末な発想だ。だがお前らは、その条件を飲んだ」
420: 2013/12/14(土) 03:20:01 ID:LPTIOau.
ベルトルト「っ…」
ユミル「そこから先は知らん。アイツは私の制止を振り切って、お前らの所へ行った」
ユミル「私があの世界で最後に見たのは…アイツが壁から飛び降りる姿だったよ」
ベルトルト「そんな…だから君は…あの時、エレンを連れ去られるわけにはいかなかったのか…!」
ユミル「あぁ」
ベルトルト「僕の企画紙に細工をしたのも…」
ユミル「私だ」
ベルトルト「そん…な…じゃ、じゃあどうして“エレンの正しい配置”をそれに書いたんだ!」
ユミル「少しは自分で考えたのか?」
ベルトルト「考えたよ!でも、分からなかった…!正確な情報を教える必要なんてないじゃないか!」
421: 2013/12/14(土) 03:20:32 ID:LPTIOau.
ユミル「お前、馬鹿だろ?」
ベルトルト「な!」
ユミル「お前が世界をやり直しているなら、お前は確実にエレンの正確な位置を知っているはずだ」
ユミル「おそらく、前の世界のアニにでも聞いてな」
ベルトルト「…!」
ユミル「つまりお前の頭の中には、“エレンの位置は中央後列”という情報が既に出来上がっている」
ユミル「そして、企画紙には“偽りの情報”が記載されていると、知っていた」
ユミル「その状況で不意に正確な情報を渡されたら、どうだ?」
ベルトルト「…その情報を、信じていいのか分からなくなる…」
ユミル「人間ってのは面白いもんでな。嘘を吐かれると思っている時に、正しいと分かっている情報を渡されても、素直に信じられねぇもんなんだ」
ユミル「この情報は正確なのだろうか―――まさか自分は、嵌められているんじゃないか…ってな」ニィ
422: 2013/12/14(土) 03:21:16 ID:LPTIOau.
ベルトルト「…それを余計に信じ込ませるのが…君の発言ってわけか」
ユミル「さーて…どうかな?」
ベルトルト「もし君の企画紙に僕と違う情報が書いてあれば、僕は渡された情報を正確なものだと思っていたはずだ」
ベルトルト「エレンの正確な位置を知ってる一般兵は、僕だけのはずだから」
ベルトルト「…君は本当に、恐い」
ベルトルト「“他の人に聞かない方がいい、巨人の仲間だって疑われる”」
ベルトルト「…そう言って、君は僕が他の人に聞くのを止めたんだ」
ベルトルト「疑われたくない僕の心理を利用して」
ユミル「…やっぱ頭いいな、ベルトルさん。さすが三位様だ」
ベルトルト「君はいつから、僕のことに気付いていたんだ!?」
ユミル「最初から」
ベルトルト「は…?…え…最初から…?」
ユミル「最初から、おかしいとは思っていたさ。その時はまだ確信は持てなかったけどな」
427: 2013/12/16(月) 01:44:07 ID:d8G6H3.M
ベルトルト「何で…そんな、疑われるようなことなんて…」
ユミル「入団式の日、お前…教官に走らされたろ?」
ベルトルト「う、うん…」
ユミル「その時にな―――あれ、って思ったんだよ」
ユミル「極力目立つことを避けてたコイツが、どうして今回に限ってこんなことになってるんだ、ってな」
ユミル「その時は正直ただの疑問だったさ。だが、エレンの装備が壊れた時にも同じことを思った」
ユミル「…私が経験してきた世界の中で、エレンの装備が壊れたのは、今回を含めて二回あった」
ベルトルト「二回…!?…まさか、僕以外にエレンの装備を壊した人がいるって言うの…!?」
ユミル「あの位置は整備項目にも乗ってねぇ。…あの位置に目を付けるってことは、よっぽど勘がいいか」
ユミル「装備を熟知しているかだ。どこを壊せば最小限に的確にジャンク品になるか良く分かってる」
ベルトルト「ま、まさか…一度目は…君が…!?」
ユミル「いいや。…まぁ、おおよその見当は付いてるけどな」
ユミル(エレンが開拓地に行って得をする人物…全く、恐い女だよ、本当に)
428: 2013/12/16(月) 01:44:41 ID:d8G6H3.M
ユミル「そうして調査兵団へ入団するって…お前は自分から言い出した」
ベルトルト「……」
ユミル「今まで自分の意志を見せなかったお前が、今回に限って」
ユミル「あの時のライナーの反応は、寝首をかかれたみたいだったよ。ま、見てて面白かったけどな」
ユミル「アニの調査兵団行きに着いて行かず、こっちに来た理由―――それは一つしかねぇ」チラ
ライナー「……」
ユミル「ライナーの監視―――そして、エレンの監視だ」
ライナー「…オイ、何でこっちを見ている」
ユミル「ちゃんと寝かし付けてるか見てたんだよ、いいからこっち見んな」
ベルトルト「で、でもそれだけじゃ確信なんて持てるわけないじゃないか!」
ベルトルト「僕は君に疑われるような行動を取った覚えはない!」
ユミル「大声出すんじゃねぇよ、うるせぇな」
ユミル「いいかベルトルさん―――お前は何度、先を変えようとした?」
429: 2013/12/16(月) 01:45:19 ID:d8G6H3.M
ベルトルト「え…?」
ユミル「お前はトロスト区の時、サシャとコニーにアドバイスをしたらしいな?」
ベルトルト「…あ、あぁ…」
ユミル「それだよ、確信に変わったのは」
ベルトルト「!?」
ユミル「アイツらがその作戦を実行した時な…失敗しなかったことがなかったんだよ」
ベルトルト「! そんな…!」
ユミル「その度にミカサとアニに助けられて来た…だがな、ベルトルさん」
ユミル「そんな事をしなくたって、アニはこれまでヘマをして正体がバレたことなんざ一度もない」
ベルトルト「っ…今までがそうでも、今回は分からないだろ!?」
ベルトルト「僕は…僕は少しでも、アニに危険が及んで欲しくなかったんだ!」
ユミル「だったらエレンの装備を壊したのは誰だ?」
ベルトルト「それはッ…!」
ユミル「クリスタを尾けてたウォール教の連中に気付いたのは誰だ?」
ベルトルト「……ッ…」
430: 2013/12/16(月) 01:45:49 ID:d8G6H3.M
ユミル「壁外調査でエレンを連れ去ろうとしたのは誰だ!?」
ベルトルト「や、めろ」
ユミル「アニも、ライナーも信じることが出来なかったのは誰だ!?」
ベルトルト「ち、違う!僕は…!」
ユミル「なぁ、言ってみろよ…お前はこの世界で…自分が手を汚したことがあったか?」
ベルトルト「ッ…君に何が分かるんだ!?僕は、シガンシナの壁を壊した!!」
ベルトルト「僕のせいで何万もの人が氏んだ!!エレンのお母さんだって…僕が…!!」
ベルトルト「僕が、頃した…!」
ユミル「間接的には」
ベルトルト「は…!?」
ユミル「あの時氏んだヤツは、九割九分巨人に食わたのが原因だ。エレンの母親だって…食われて氏んだ」
ベルトルト「ッ」
ユミル「直接手を汚したことがあるかって聞いてんだよ、私は」
ベルトルト「それは…!」
431: 2013/12/16(月) 01:47:38 ID:d8G6H3.M
ユミル「先を変えなきゃ、僕がやらなきゃ。僕にしか出来ない、あぁ立派な考えだよ」
ユミル「だがな、お前は結局覚悟なんざしてなかったんだ」
ユミル「私がアニに、エレンとお前の命のどっちか迫ったことがあったな」
ベルトルト「あぁ」
ユミル「どうして、自分を犠牲にするって考えには至らなかったんだ?」
ベルトルト「そんなことっ…出来るわけないじゃないか!」
ベルトルト「僕達は三人で故郷に帰るって約束してたんだ!だ、だから…だから僕は…!」
ユミル「アニに氏ぬかもしれない役割をやらせたのにか?」
ベルトルト「じゃあ他にどうすれば良かったんだよ!?」
ユミル「お前はそれを考えたのか?」
ベルトルト「え?」
ユミル「壁外調査までにエレンを連れ去る方法だってあったはずだ。なのにお前は何故、壁外調査まで待った?」
ユミル「答えは簡単だ。お前の過ごした世界が、そうだったからだ」
ベルトルト「!」
432: 2013/12/16(月) 01:48:17 ID:d8G6H3.M
ユミル「お前は世界を変えるとか言っておきながら、結局変える為の行動を取ってこなかった」
ベルトルト「そんな、そんなことない!僕は何度も変えようとした!壁外調査の時はっ…君が企画紙をすり替えたりしなければ!」
ユミル「私のせいだって言いたいのか?」
ベルトルト「そうだよ!」
ユミル「…だから私は…お前のことが大っ嫌いだったんだよ…!」ギリッ
ベルトルト「は!?」
ユミル「いい加減にしやがれこの馬鹿野郎が!」グッ
ベルトルト「ぐっ…放せよ、何をするんだ!?」
ライナー「ベルトルト!」グッ
ユミル「テメェは来んなっつってんだろ!」
ライナー「そうは行くか!」
ベルトルト「ライナーっ…僕は大丈夫だからそっちにいて…!」
ライナー「だが!」
ベルトルト「いいから!」
433: 2013/12/16(月) 01:49:00 ID:d8G6H3.M
ユミル「アイツを助ける為に、私はどんなことでもしてきた!どれだけ汚い手でも、軽蔑される手段でも…!」
ユミル「私を軽蔑するのが、クリスタであってもだ!!」
ベルトルト「…ッ」
ユミル「それでも私はやった!それがアイツの―――私の為になるならと、どんなことでもしてきた!」
ユミル「結果を後悔しても、過程を後悔したことなんざねぇ!それが最良だと信じていたからだ!」グッ
ユミル「ああすりゃ良かった、こうすりゃ良かった、そんなのいくらだって言える、でもな!」
ユミル「言った所で…結果は変わらねぇんだよ…っ」
ユミル「…私は自分を信じている。自分の行動に覚悟を持っている」
ユミル「こんな命、どうなったって構わない。でもクリスタは駄目だ」
ベルトルト「どう、して…」
ユミル「クリスタは…アイツは、私を見つけてくれた」
ユミル「私が巨人であっても、アイツは私を信じてくれた」
ユミル「私はそれに応えたい。アイツの為に、私の為に」
ユミル「だがお前は何だ?どうしてお前自身さえ信じなかった?」
434: 2013/12/16(月) 01:49:41 ID:d8G6H3.M
ベルトルト「そんなこと、ない…!」
ユミル「胸張って、自信持ってそう言えんのか?」
ベルトルト「ッ…」
ユミル「お前はお前を信じられなかった、アニが右翼から攻めてきたのが良い証拠だ!」
ユミル「覚悟のねぇヤツに…クリスタは殺させない。あった所でそうはさせないけどな…」
ベルトルト「覚悟…僕は…!」
ユミル「ライナーやアニの言葉や状況で一喜一憂してたのは誰だ?ライナーよりも精神不安定だったのはどこのどいつだ?」
ユミル「自分も信じられず、他人も信じない…そんなお前に、世界を変えるなんて出来るわけがない…」
ユミル「…お前は所詮、ナイトにはなれないと思っていたんだよ…」
ベルトルト「…ナイト…?」
ユミル「がら空きのクイーンをポーンが攻撃して、ルークがキングに届く」
ベルトルト「あの時の…チェス…?」
ユミル「お前はあれを防ぐ手段があった。…チェックメイトと思わされていたのは、お前だ」
435: 2013/12/16(月) 01:50:37 ID:d8G6H3.M
ベルトルト「そんな方法、なかったハズだ!」
ユミル「…お前、どうやら相当視野が狭いらしいな。精神的にも物理的にも」
ユミル「どうして、ナイトを使わなかった?」
ベルトルト「ナイト…!?」
ユミル「ポーンがクイーンを取るのは避けられなかったが、キングだけは違う」
ユミル「次の手でルークとキングの間に、ナイトが置けたはずだ」
ユミル「ナイトを犠牲にすら、キングだけは守れたんだ」
ユミル「なのにどうしてそれをしなかったか、答えは簡単だ」
ユミル「…お前には、ナイトを犠牲にする度胸がなかったんだ。何だかんだ使い勝手のいい駒だからな」
ベルトルト「詭弁だしっ…自分勝手だ…!」
ユミル「そうだよ」
ベルトルト「!?」
ユミル「詭弁だし自分勝手だし最低な手段しか使わないさ。でも、それが一番の選択だと信じている」
ユミル「言っただろ?誰に軽蔑されても構わないってな」
436: 2013/12/16(月) 01:51:24 ID:d8G6H3.M
ベルトルト「……じゃあ、君がウトガルドで正体を見せたのも、君の覚悟ってこと?」
ユミル「……」
ベルトルト「君は知っていたんだろ!?君が巨人になった後、クリスタがどういう反応を見せるのかも、」
ベルトルト「ベリックを食ったのが君自身であるってことも!」
ユミル「…あぁ、知ってた」
ベルトルト「先は見えてたんだろ…ッ、だったら何で、それを避けようとしなかった…!」
ベルトルト「君ならウトガルドでの戦闘を回避することだって出来たんじゃないのか!?」
ユミル「……」
ベルトルト「答えろよ!」
ユミル「…一つ、教えてやるよ。もしそれを避けてたら、お前は今ここにいない」
ベルトルト「!?」
ユミル「あそこからウトガルドを避けることは出来なかったし、巨人が迫ってくるのを止めることも出来ない」
ユミル「唯一出来たとすれば…クリスタを連れて逃げることぐらいだった」
ベルトルト(それって…まさか…)
ベルトルト「まさか君は…僕達を救うために巨人になった、とでも言う気…!?」
441: 2013/12/18(水) 00:46:27 ID:TIz7emIY
ユミル「……さぁな」
ベルトルト「は…?何だよ、それ…何だよ…」
ベルトルト「わざわざ僕達を助けたって言うのか!?どうしてだよ…!?」
ユミル「……」
ベルトルト「僕達を助けなければ、今この瞬間君はクリスタの所にいれただろ!?」
ベルトルト「あそこで僕達を頃してしまえば…それで済んだじゃないか…」
ユミル「…さぁな、私にもよく分からねぇよ」
ユミル「ただあの時…お前が、初めて自分から行動したように見えてな」
ベルトルト「!?」
ユミル「ヘニングの装備を身に着けて、今にも氏にそうな顔して…」
ユミル「泣き出したいのも、逃げ出したいのも全部我慢したような顔して」
ユミル「真っ直ぐこっちを見てたお前を…何でだろうな、氏なせたくないって思っちまったんだよ」
442: 2013/12/18(水) 00:47:01 ID:TIz7emIY
ベルトルト「え…?」
ユミル「コイツはこの世界で独りぼっちだったんだと思っちまったんだ…ガラでもねぇ」ガシガシ
ユミル「…私がクリスタの為以外に行動するのは、今回が最後だ」
ベルトルト「ユミル、君は…」
ユミル「長話は終わりだ、ベルトルさん」スクッ
ベルトルト「! ま、待って…!まだ聞きたいことがあるんだ!」
ユミル「何だよ、時間ねぇんだ」
ベルトルト「どうしたら世界をやり直せる!?どうしたら…僕は君になれるんだ!?」
ユミル「……」
ユミル「……私になろうとなんてするんじゃねぇよ」
ベルトルト「っ…」
443: 2013/12/18(水) 00:47:44 ID:TIz7emIY
ユミル「世界をやり直すなんて考えるな。次があるなんて思うな」
ユミル「その瞬間は誰にでも平等に訪れて、誰にも同じく過ぎていく」
ユミル「覚悟を決めて、その瞬間を必氏に生きたヤツにだけ次があるんだ」
ベルトルト「……ッそんなの…」
ユミル「…ヒントだけやる。強い意志を持って、アイツに殺されろ」
ベルトルト「アイツ…?」
ユミル「アイツの腕の刻印は…呪術、ってヤツなのかな。良く分からねぇが」
ベルトルト「え、アイツって…ミカサのこと!?」
ユミル「アイツに自覚はねぇし、アイツ自身は世界をやり直したりはしてねぇ、が…今まで私は、アイツに殺され続けてきた」
ベルトルト(確かに僕もミカサに殺された…でも、そんなことが…そんなおとぎ話みたいなことが…)
ベルトルト(ミカサに殺されれば世界をやり直せる?まさかエレンが座標だったのは…ミカサに関係があったって言うのか…?)
ユミル「…あぁ、そうだ。ずっと気になってたことがあるんだ」
444: 2013/12/18(水) 00:48:14 ID:TIz7emIY
ユミル「どうしてお前は、私の正体を知らなかったんだ?」
ベルトルト「それは…僕の前の世界に…君が、いなかったから…」
ユミル「! …そうか…」
ベルトルト「君には…この世界で、出会ったんだ…」
ユミル(私がいない世界、か…はっ、皮肉なもんだな)
ユミル「……私は、お前らの故郷の正確な位置を知らねぇ、だから、聞き流してくれて構わない」
ユミル「ここを出たら、すぐに故郷へ帰るか、ストヘス区へ向かえ」
ベルトルト「ストヘス区…!?」
ユミル「そこの地下に…アニがいるはずだ」
ベルトルト「アニが!?まさか…捕まったのか…!?」
ユミル「多分な。ストヘス区の地下収容所に、アニが結晶化して…お前らを待ってる」
ベルトルト「そ、そんな…っ、アニが…!」
445: 2013/12/18(水) 00:48:50 ID:TIz7emIY
ユミル「アニを助けに行くかはお前ら次第だ。…オイ、ライナー!」
ベルトルト「ユ、ユミル!?」
ライナー「何だ、いきなり!」
ユミル「今すぐ出発しろ!エレンが目を覚ましたらお前らは逃げられなくなる!」
ベルトルト「な…!?それってどういうことだ!」
ライナー「説明しろ、ユミル!」
ユミル「んな時間ねぇんだよ!あっちを見やがれ!」
ライナー「あ…あれは、信煙弾!?調査兵団か!?」
ベルトルト「嘘だろ…こんな、早く…!?」
ユミル「お前らは故郷とやらに帰るんだろ…!?それでいいんだ」クル
ライナー「待て、お前はどうするつもりだ!?」
ユミル「さぁな、お前らには関係ねぇだろ」
446: 2013/12/18(水) 00:49:26 ID:TIz7emIY
ベルトルト「待ってユミル!まさか…君は!」
ユミル「私が言ったことを信じるかどうかはお前次第だ。でも、私は言ったぜ」
ベルトルト「え…」
ユミル「…じゃあなベルトルさん。お別れだ」トンッ
ベルトルト「な―――!?」
ライナー「ベルトルト!」
ベルトルト「ぐっ…!」パシュッ ギュルルル
ユミル「とっとと行けよ、逃げられなくなる前に」
ライナー「待てユミル!」
ユミル「あんま大声出すとエレンが起きちまうぜ!図体のデカいガキなんだからよ、ソイツは!」
ライナー「―――ッ、クソ!」パシュッ ギュルルルル
ベルトルト「ライナー、待って!まだ、まだユミルが!」
ライナー「今は調査兵団から逃げ切るのが先だ!最悪エレンがいれば、俺達は帰れるんだぞ!」
447: 2013/12/18(水) 00:50:01 ID:TIz7emIY
ベルトルト「分かってる!そんなこと分かってる―――でも!」
ユミル「……」
ベルトルト「ユミル!!」
ユミル「振り返るな、ベルトルさん。お前は――繰り返すな」
ユミル「こんな最低で、残酷で、救いのねぇ世界なんて」
ライナー「ベルトルト!」グッ
ベルトルト「! 離してくれライナー!僕はッ…僕はまだやらなきゃいけないことが…!!」
ライナー「いい加減にしろ!俺達は何のためにここまでやってきたんだ!?」
ライナー「ここで立ち止まるわけにはいかないだろう!」キュルルルル
ベルトルト「離してくれ、ユミル!ユミル!!」
ベルトルト(信煙弾と―――ユミルがだんだんと遠ざかっていく)
ベルトルト(僕達に背を向けたユミルが、振り向くことはなかった)
ベルトルト(少しだけ見えた彼女の横顔は、相変わらず僕の大嫌いな不敵な笑みを浮かべていて、)
ベルトルト(彼女はこれからも孤独な世界を生きるのかと思うと―――少しだけ、苦しくなった)
448: 2013/12/18(水) 00:51:23 ID:TIz7emIY
ユミル「…あーあ、ようやく行ったか」
ユミル「ったく、私もヤキが回っちまったかな」
ユミル「えー…っと…おー、随分な大人数じゃねぇか、ミカサに、アルミンに、ジャンにコニー…」
ユミル「…それに、ヒストリア、か」
ユミル「ヒストリア攫って逃げちまうかなぁ。二人きりで、ヒストリア守って、壁の外で生きてもいいかな」
ユミル「…それだと満足な生活させてやれねぇな、駄目だ。アイツらの故郷なんて行っちまったら、私は殺されちまうしな」
ユミル「ヒストリアを一人ぼっちには…させたくないしな」フッ
ユミル「私のいない世界…か…もしかしたらそれこそが、」
ユミル「……まぁ、いい。そんなこと考えたって仕方ねぇさ」
ユミル「…無事に故郷に帰れるといいな、ベルトルさん」
ユミル「…さぁ、時間だ。行くとするか」スッ
449: 2013/12/18(水) 00:52:07 ID:TIz7emIY
ダダダッ ダダダッ
クリスタ「ユミルー!!」
アルミン「先走っちゃ駄目だクリスタ!」
ジャン「あの氏に急ぎ野郎はどこだ!?」
コニー「! オイ、ユミル!無事か!?」
ミカサ「エレンは!?」
ユミル(とうとうこの時が来ちまったか…まぁ、仕方ねぇ)
ミカサ「ユミル…エレンはどこ…!?」
ユミル(ヒストリアに最悪なものを見せちまうことになるが…ごめんなヒストリア、どうやら私は…随分弱いらしい)
ユミル「エレンなら、あの二人と一緒に行っちまったよ」
アルミン「何だって…!?」
クリスタ「ユミルは、ユミルは二人から逃げて来たんでしょ!?」
ユミル(お前が氏ぬのを見るくらいなら…私は、この選択肢を選ぶ)スッ
ユミル「いいや違う。私は――お前らを足止めする為にここにいるんだ」
450: 2013/12/18(水) 00:52:45 ID:TIz7emIY
コニー「は…?…オイ、ユミル…お前、まさか…」
ミカサ「……ユミルは、私達の、敵?」
クリスタ「な、何を言ってるのミカサ!ユミル!違うよね!?あなたは、敵なんかじゃないよね!?」
ユミル「いいや、クリスタ。その通りだよ」
クリスタ「!そん、な…」
ユミル(ごめんな、クリスタ。お前を守りきれなかった私を、許してくれ)
ジャン「つまんねぇ冗談言ってんじゃねぇよ!」
ユミル(次は―――次こそ、お前を守り抜いてみせるから)グッ
アルミン「!! 止めるんだ、ユミル!」
ユミル(だから少しだけ…さよならだ、ヒストリア)ガリッ カッ!!
コニー「ウワァッ!」
アルミン「これが…ユミルの巨人の姿…!?」
ジャン「ホントに…お前まで巨人だったのかよ…」
451: 2013/12/18(水) 00:53:15 ID:TIz7emIY
ミカサ「…貴方を殺さなきゃ、エレンに辿り着かないってことで、いいの?」チャキッ
クリスタ「ま、待ってミカサ!やめて!!」
ミカサ「さっき私は躊躇ってしまった。情に流されて…あの二人を仕留めきれなかった。だから、エレンは連れて行かれた」
クリスタ「止めて!!きっと何かわけがあるんでしょ!?ねぇ、ユミル!!」
ユミル「」グッ
ジャン「…話し合う余地は、ねぇってことかよ…クソが…!!」
ミカサ「…今度は躊躇わない。例え…貴方であっても」パシュッ ギュルルルル
クリスタ「待って、ミカサ!!止めて、お願い…!!」
ミカサ「私は、必ずエレンを取り戻す!!」ブンッ
クリスタ「止めてぇぇぇえええええ!!!!」
ユミル(お前にばっか辛い思いさせて…ごめんな、ヒストリア…)
ユミル(今度こそ…お前を……)
456: 2013/12/19(木) 00:55:41 ID:H2SFOi6g
******
エレン「ん……」ゴソ
ライナー「…起きたか、エレン」
エレン「!? テメェ…!ここは、どこだ!?」
ベルトルト「…今、僕達の故郷に向かっている所だ」
エレン「なっ!?ふざけんな!ミカサやアルミン…皆はどうした!?」
ライナー「アイツらは…今頃躍起になって俺達を捜しているだろう」
エレン「チクショウッ…!くそ、この縄を解け!!」ジタバタ
ライナー「それは出来ない、お前に暴れられたら厄介だからな」
エレン「ライナー…!ベルトルト…!お前ら、ずっと俺達のこと騙してたのか!?なぁ、オイ!」
457: 2013/12/19(木) 00:56:37 ID:H2SFOi6g
ベルトルト「…エレン。すまなかった」
エレン「は…!?何だよ、それ…お前、それ本気で言ってるのか…?」
ベルトルト「…あぁ。僕達が帰る為には、エレン。君が必要だったんだ」
エレン「俺が必要!?ワケ分かんねぇよ!離せ、離せってば!」
ライナー「ば、馬鹿暴れるな!!落ちたらどうする!?」
エレン「ここはどこだ!?」
ベルトルト「壁外だ。…もう随分壁からは離れてるけどね」
エレン「な…!」
ライナー「ここでお前を離しても…正直壁には帰れないだろう。途中で巨人共の餌になって終わりだ」
エレン「ッ…それでも俺は帰らなきゃならないんだ!アイツらの所に!!」
458: 2013/12/19(木) 00:57:12 ID:H2SFOi6g
ベルトルト「…ねぇ、エレン。アニはどうしたの?」
エレン「は!?」
ベルトルト「アニは…君達に捕まったの?」
エレン「…あぁ、そうだ!でも結晶みたいのなのに引きこもっちまったよ…!」
ベルトルト「…そうか、良かった」
エレン「は?良かったって…」
ベルトルト「アニは生きているんだろう?なら、良かった」
ベルトルト(ユミルの言ったことは本当だったんだ…本当に、良かった…)
ベルトルト(…本当にこれで、良かったのかな…)
ベルトルト(! そう言えば…)
ベルトルト「ねぇ、ライナー…どうしてあの時、僕を助けられたの?」
459: 2013/12/19(木) 00:57:43 ID:H2SFOi6g
ライナー「は?あの時?」
ベルトルト「…ミカサに殺されそうになった時だよ」
ライナー「…あぁ、あれは……忠告されてたんだ、アイツに」
ベルトルト「忠告?アイツって?」
ライナー「俺の傍にいるヤツから…目を離すなって」
ベルトルト「!?」
ライナー「アイツは最悪なことをしたが…その忠告のおかげで、お前を殺されずに済んだ」
ライナー「それだけは…礼を言いたいと思うさ」
ベルトルト(まさか…ユミルが、こうなることまで見越して…)
ベルトルト(…世界を繰り返して、その経験で…)
エレン「何の話だよ!お前らの故郷に付いて行く理由が俺にはねぇ!」
ライナー「用が済んだら…帰してやることは出来ないかもしれないが、悪いようにはしない」
エレン「だったら今ここで解放しろ!」
460: 2013/12/19(木) 00:58:17 ID:H2SFOi6g
ユミル『……私になろうとなんてするんじゃねぇよ』
ベルトルト(彼女は…またこの世界をやり直すのだろうか)
ベルトルト(この残酷で、救いのない世界を)
ライナー「それは出来ない。悪いがこのまま一緒に来てもらうぞ」
エレン「ふざけんなっ…!両腕が回復したら、絶対にここから逃げ切ってやる!」
エレン「お前らの思い通りになんかさせねぇ…!俺は、俺は必ず巨人共を駆逐してやる!」
ユミル『世界をやり直すなんて考えるな。次があるなんて思うな』
エレン「お前らを…俺は絶対に許さねぇ!!」
ユミル『その瞬間は誰にでも平等に訪れて、誰にも同じく過ぎていく』
ベルトルト「…別に、許してもらおうなんて思ってないよ」
461: 2013/12/19(木) 00:58:57 ID:H2SFOi6g
エレン「!」
ベルトルト「どんなに最低でも、卑怯でも、姑息でも…それが最善だと思ったらやり遂げる」
ベルトルト「そうしなきゃ、この世界を生きてなんかいけない」
ライナー「ベルトルト…」
エレン「何だよそれ…そんなの、お前の都合じゃねぇか!」
ベルトルト「そうだよ!」
ライナー「!?」
ベルトルト「誰もが他人の為に生きるなんて出来ないんだ!結局自分の為に生きて、自分の為に氏んで行くんだ!」
ベルトルト「彼女だって…!」
エレン「彼女…?」
ライナー「ベルトルト、お前まさか…アイツのことを言っているのか?」
462: 2013/12/19(木) 00:59:35 ID:H2SFOi6g
ベルトルト「僕は、覚悟ってものを知った」
ベルトルト「僕は必ず故郷に帰る。そう誓って、ここに来た」
ライナー「……」
ベルトルト「僕の邪魔をした最低な人がいた!でもその人は…僕のことを信じてくれたかもしれないんだ!」
ベルトルト「絶対に故郷に帰れ、彼女は…僕を、助けてくれたのかもしれないんだ…」
エレン「彼女って…誰だよ…?」
ベルトルト「僕は…彼女にとって邪魔かもしれない、僕にとっても彼女は邪魔だ!でも、それでも僕は!」
ユミル『覚悟を決めて、その瞬間を必氏に生きたヤツにだけ次があるんだ』
ライナー「!? ベルトルト、お前…!」
ベルトルト「…ライナー、ごめん」タンッ
エレン「!?」
463: 2013/12/19(木) 01:00:08 ID:H2SFOi6g
ライナー「オ、オイ待て!ベルトルト!!」
ベルトルト「僕はまだ、故郷には帰れない」
ライナー「何を言っているんだ!?せっかくここまで来たのに…!!」
ベルトルト「…彼女は、僕を見つけてくれた。誰も見つけてくれなかった、僕を」
ベルトルト「今度は僕が、見つける番だ」
ライナー「ふざけるな!一緒に帰るって、約束したじゃないか!」
ベルトルト「…あぁ、でもそれはきっと、今じゃない」
ライナー「ベルトルト!!」
ベルトルト「行って、ライナー。…僕がここで調査兵団を足止めするから」
ライナー「俺も一緒に…!」
ベルトルト「駄目だ!それじゃ何の為に多くの犠牲を出したか分からないじゃないか!!」
464: 2013/12/19(木) 01:00:44 ID:H2SFOi6g
ライナー「!」
ベルトルト「大丈夫。…今度は必ず、一緒に帰るから」チャキッ
ライナー「ベル…トルト…!!」
ベルトルト「もう信煙弾がそこまで来てる!!…行ってくれ、ライナー!!」
ライナー「ッ…くそがぁぁぁ!!」パシュッ ギュルルルル
エレン「離せッ…ミカサ!アルミンー!!」
ベルトルト「…ありがとう、ライナー。…ベリックによろしくね」
ベルトルト「…さぁ、覚悟は出来たよ。分かってる、どれだけ辛い選択をしたかって」
ベルトルト「でも過程を後悔したりはしない。…やらなきゃ良かったなんて、思わない」
465: 2013/12/19(木) 01:01:14 ID:H2SFOi6g
ベルトルト「アニを助けたい、ライナーを守りたい。…三人で故郷に帰りたい」
ベルトルト「今度こそ見つけてみせる。どれだけ残酷な選択をしたって」
ベルトルト「僕はもう―――逃げない」
ベルトルト「…さぁ、ミカサ…僕を頃してくれ」
ベルトルト「でなきゃ何の為にここに来たか…分からなくなってしまう」
******
****
**
*
466: 2013/12/19(木) 01:01:48 ID:H2SFOi6g
キース「貴様は何者だ!?」
アルミン「シガンシナ区出身、アルミン・アルレルトです!!」
ユミル(またここからか…まぁ、仕方ねぇな)
ユミル(もう何度やり直しても…この光景だけは変わらないな)
ユミル(ジャンが頭突きされて、コニーが持ち上げられて、サシャが走らされる…)
ユミル(―――あぁ、でも前だけはちょっと違ったな)
ユミル(ベルトルさんが走らされてたっけ…ベルトルト・フーバーか…)
ユミル(アイツ、ちゃんと故郷とやらに帰れたかな…それならそれでいい)
ユミル(こんな世界、好き好んで繰り返したくねぇしな)
ユミル(…待ってろ、ヒストリア…今度こそお前を救ってみせる)
467: 2013/12/19(木) 01:02:20 ID:H2SFOi6g
ユミル(お前を攫ってでも、他の誰を犠牲にしても…今度こそ、必ず)
ユミル(もうお前を泣かせたりしねぇから…って、何度目だろうな、こう思ったの)
サシャ「それは…何故人は芋を食べるのか?…という話でしょうか?」
ユミル(あーあ、本当に学習しねぇなアイツ。…ま、無理な話か)
ユミル(…また、繰り返すのか…私は…)チラ
クリスタ「……」
ユミル(…巨人だった60年に比べたら、まだマシだ)
キース「余所見をする余裕があるとはな…どうやら貴様は図体だけではなく態度まででかいようだ」
ベルトルト「ハッ!!申し訳ありません!!」
ユミル「!?」ドクンッ
ユミル(ハ…え…今の、は…)
468: 2013/12/19(木) 01:02:50 ID:H2SFOi6g
キース「そんな貴様には、芋女と同じく氏ぬまで走らせてやろう。光栄に思え」
ベルトルト「ハッ!ありがとうございます!!」
ユミル(…そんな…まさか…)
ユミル「…嘘だろ…?」
クリスタ「え…!?」
キース「オイ、そこのそばかす女!!」
ユミル(!! ヤベェ!!)
ユミル「ハッ!私のことでありましょうか!!」バッ
キース「あぁそうだ…貴様だ。貴様、何故今言葉を発した…?」
469: 2013/12/19(木) 01:03:38 ID:H2SFOi6g
ユミル「…ハッ、理由は特にありません」
キース「そのふてぶてしいツラを、氏ぬ寸前まで走って歪めて来い。夕食があると思うなよ」
ユミル「ハッ!」バッ
ユミル(…何でだよ…何で…)チラ
ベルトルト「……」
******
ユミル「はっ…は…チクショウ、最悪だ…!!」タッタッタッ
サシャ「」ゼーゼー
ユミル「…オイ芋女。お前もう氏にそうじゃねぇか。あっちの端行ってぶっ倒れてこい」
サシャ「は…はいぃぃ…」フラフラ
470: 2013/12/19(木) 01:04:10 ID:H2SFOi6g
ユミル(もう少ししたら女神が助けに来てくれるからよ)
ベルトルト「……」タッタッタッ
ユミル「!?」
ユミル(いきなり併走し始めやがった!?クソ、相変わらずデケェ…!!)
ユミル「…何だよ、デカいお兄さん。そういやお前も教官にどやされてたな?」
ベルトルト「……」
ユミル「お前ももう兵舎に戻ったらどうだ?あの芋女は…」チラ
サシャ「神ぃぃぃぃいい!!」
ユミル「あの世間知らずそうなお嬢様にお恵みをもらってるぜ?」
ベルトルト「…そうだね」
471: 2013/12/19(木) 01:04:43 ID:H2SFOi6g
ユミル「…私に近寄るんじゃねぇよ、走りにくいんだよ、デカブツ」
ベルトルト「ベルトルト」
ユミル「は…?」
ベルトルト「僕の名前。ベルトルト・フーバーだ」
ユミル「…へぇ、そのベルトルさんは私に用事でもあるって言うのか?悪いが女なら他を漁ってくれ」
ベルトルト「大丈夫。僕が心に決めてるのは昔からたった一人だから」
ユミル「そういう情熱的なセリフはその女に吐いてやれ」
ベルトルト「…僕はね、君に言いたいことがあるんだ、ユミル」
ユミル「…奇遇だな。私もだ」
472: 2013/12/19(木) 01:05:21 ID:H2SFOi6g
ベルトルト「どんな卑怯で最悪で姑息でも、僕はもう躊躇わない」
ユミル「今度は助けてやると思うなよ」
ベルトルト「僕は覚悟を決めて、ここに戻ってきた」
ユミル「私はアイツを守る。誰に憎まれようが構わない」
ベルトルト「次はないと思っている。必氏に生きて、次なんて行かない」
ユミル「お前のことを利用するし、また邪魔してやる。それがアイツの未来への妨げになるなら」
ベルトルト「邪魔するなら、君であろうとそのうなじを削ぎ落す」
ユミル「やってみろ。邪魔するなら、お前であってもそのうなじ削ぎ落としてやる」
ベルトルト「僕は今度こそ必ず、故郷に帰る」
終
473: 2013/12/19(木) 01:07:18 ID:H2SFOi6g
以上です、伏線っていうかばら撒いたものは回収したはず
一か月以上お付き合い下さってありがとうございました
474: 2013/12/19(木) 01:15:24 ID:H2SFOi6g
今まで書いたやつ晒します、
気が向いたら読んでいただけたら嬉しいです
ベルトルト「僕は本当に君が嫌いだ」
アルミン「君と僕との」アニ「境界線」
クリスタ「ユミルを泣かせたい」ベルトルト「え?」
ライナー「俺がアイツで」ユミル「アイツが私で」
ユミル「私はお前を助けてやれない」
以上です
ありがとうございました
引用: ベルトルト「今度こそ故郷に帰る」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります