203: 2014/06/27(金) 20:18:53.54 ID:AjAqnLUAO


前回はこちら

~1日の始まり~

『多摩は猫じゃないにゃ』

「……んー?」

『さっさと起きるにゃ』

「多摩君の……声?」

『起きなきゃイタズラするにゃ』

「何で、目覚ましが多摩君の声に……?」

『起きてください、ご主人様』

「っ!? 今の漣君!?」

『――なーんて、言うわけないでしょ? さっさと起きやがりなさい、クソご主人様』

「どうしてかな、こう呼ばれた方が落ち着く」

『起きないなら鮭寄越すクマ』

「あはは、球磨君は何時も通り――」

『鮭が無いなら提督でもいいクマ』

「じゃないなぁ……。何かに酔ってるのを録音でもしたのかな?」

『コラバカ球磨! 何さらっと爆弾発言しやがってんですか!』

『録音止めるにゃ!』

「――うーん、どういう意図でこの目覚まし作ったんだろ?」



 目覚まし音声の編集ミスが後日発覚。説得(物理)の後、録音データは破棄されました。

(あの目覚まし、起きやすかったんだけどなぁ)
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録

207: 2014/06/28(土) 15:14:27.27 ID:8e/6w9oAO
~引き出し二番目の右奥~

「ふぅ、今日も疲れ――多摩君、部屋間違えてるよ? っていうか鍵かかってたはずだよね?」

「にゃー?」

「首傾げるの可愛いけど、引き出し漁るのは流石にダメだよ。第一、面白い物は入って――」

「にゃー!」

「えっ、ちょっ、うわっ!?」

「ふにゃー」

「急に飛び付いてきたら危ないよ多摩君、頭打っちゃうかもしれないし。それに、さっきからにゃーしか言ってないけど大丈夫?」

「らいじょぶにゃ、もんらいにゃい」

「うん、大丈夫じゃないね。またお酒入りのチョコでも食べちゃったのかなぁ……」

「これ、らめたにゃ」

「ん? それって……前に買ったマタタビの粉?」

「とってもいー気分にゃ」

「前にマタタビでは酔わないって言ってなかった?」

「……お前、おいしそーに見えてきたにゃ」

「何度も言ってるけど、舐めるのもかじるのも禁止だからね」

「ケチにゃやつにはこうにゃ」

「あははははっ! 脇、やめ、それ、弱いからっ!」

「――もう、我慢出来にゃいにゃ」

「えっ? あの、多摩君? かっ、顔が近いよ?」

「いたらきますにゃ」

「き、キスとかはお互いもっと親密な関係になってからが僕は望ましいと――」

 ――はむ、ちゅうぅぅぅぅ。

「首!? 多摩君キツく吸い付きすぎ痛い痛い痛いっ! 歯で噛むのはもっと痛いってば!?」

「――ぷはっ、あんまり美味しくはにゃかったにゃ」

「いたたたた……そりゃ魚じゃないから僕は美味しくないよ……」

「満足したにゃ、今日は部屋戻るにゃ」

「結局何しに来たのさ多摩君……まだ酔ってるんでしょ? 部屋まで送ろうか?」

「大丈夫にゃ、問題にゃい」

「そっか、じゃあまた明日ね」




(今日のはマタタビのせいってシラを切り通すにゃ、アイツは多摩のにゃ)

 翌日、鍵の無断使用と提督の首に付けたキスマークの代償として、多摩の夕飯は魚の骨だけとなった。

208: 2014/06/28(土) 17:52:36.59 ID:8e/6w9oAO
~一言で終わった過去、一言を伝えたい今~

「漣はどうして口悪いのにゃ?」

「それ、球磨もちょっと気になってたクマ」

「……つまんねー話ですから、言いたくねーです」

「漣だってアイツに好かれたいと思ってるはずにゃ、その気持ちはよく分かるにゃ」

「話してくれたら、力になれるかもしれないクマ」

「私がクソご主人様に好かれたら、困るんじゃねぇですか?」

「それはそれにゃ」

「これはこれクマ」

「はぁ……多摩といい、球磨といい、クソご主人様といい、ここにはお人好ししか居ないんですかねぇ」

「アイツ程お人好しじゃないにゃ」

「普通なら三人ともとっくにお払い箱だと思うクマ」

「――お払い箱にされたから、私はこの口調になったんですよ」

「……漣、他の鎮守府に居たのにゃ?」

「居ましたよ。初期艦で配属されてその日のうちに、“ふざける艦娘など使いたくない”って見限られて、一度も出撃や遠征すらさせてもらえないまま、再度軍司令部に預けられるハメになりましたがね……」

「漣は良い奴クマ! 料理美味しいクマ! 仕事もきっちりやるクマ!」

「まぁ初日にふざけた私も悪かったんですよ。――ただ、それだけの理由で捨てられたってのが無性にイラついて、とことん悪態吐くようになっちまったんです。結局、半年ぐらい拒否られ続けて、もういっそ解体されないかなーって思ってた矢先、ここのクソご主人様に初期艦に選ばれたんです」

「アイツ、何で漣を選んだのにゃ?」

「“吹雪君は元気が良すぎて無理。電君は怯えらそうだから無理。叢雲君は睨まれそうだから無理。五月雨君はドジっ娘にトラウマがあるから無理”、消去法で私を選びやがったそうです」

「提督、情けないクマ……」

「――でも、着任早々クソご主人様って呼んでも、罵声を浴びせても、困って笑うか向こうが謝りやがったんです。書類のミスを指摘したら、“ありがとう”って言いやがったんです。私が解体されるのを、たった三日一緒に居ただけで“寂しい”って言いやがったんです」

「アイツ、プライドとかそういうの皆無にゃ」

「畑耕してる方が似合ってるクマ」

「正直、解体されずに済んだ時、ちょっと嬉しく思っちまったんですよね……」

「その時から惚れてたなら多摩達より先にゃ」

「ビックリクマ」

「――ってことなんで、大人しく譲ってくれませんかねー?」

「断るにゃ」

「断固拒否クマ」

214: 2014/06/28(土) 18:15:26.29 ID:8e/6w9oAO
~三人からのお・ね・が・い~

「お前の言うことなら何でも聞いてやるにゃ」

「クソご主人様の食べたい料理何でも作ります」

「もっとアルバイトして楽させてやるクマ」

「だから」

「絶対に」

「「「艦娘を増やしたいなんて二度と言わないと誓えっ!」」」

「わ、分かったから、言わないから、海に簀巻きで投げ込むのだけはやめて!?」




 仲間が増えたら楽しいよねと言っただけでこんなことになった為、提督は二度とこの話題には触れなくなったとさ。

(そもそも野良艦娘でも居ない限り増やしようが無いんだけどなぁ今って……)

217: 2014/06/28(土) 18:55:53.23 ID:8e/6w9oAO
~焼き芋~

「落ち葉とアルミホイルと新聞紙っと」

「何してるにゃ?」

「さつま芋貰ったから、焼き芋しよ――」

「漣と球磨呼んでくるにゃ!」

「反応早いなー……」

 ――数十分後。

「焼けたよー」

「早く、早く食べたいにゃ!」

「アッチィクマァァァ!」

「そりゃ直に触りゃそうなりますよ……」

「はい、軍手と新聞紙」

「あ、ありがとだクマ」

「焼き芋好きなんですよねー」

「……熱々は無理にゃ、冷まして欲しいにゃ」

「多摩君のは僕が冷ましてあげるから、ちょっと待ってね」

「ホクホクで美味いクマー」

「うーん、コレなら幾らでも食べれちまいますよ。……クソご主人様は多摩のを冷ますのに大変そうですね。ほら、口開けやがって下さい」

「いいの? じゃあちょっと貰うね――うん、甘くて美味しい」

「ずるいクマー……」

「早いもん勝ちです」

「……そろそろ多摩にも食べさせて欲しいにゃ」

「もう大丈夫かな? はい、多摩君どうぞ」

「ありがとにゃ――んにゃーとっても甘いにゃ」

(多摩もあーんしてもらうとかずるいクマ……)

(便利ですねぇ猫舌……)

「じゃあ僕も食べようかな」

「球磨が食べさせてやるクマ」

「え? いや、自分で食べられるから大丈夫――」

「食ーべーるークーマー!」

「ちょっと球磨君!? 冷まさずに口に入れられたら――あっふぅぅぅっ!? みず、水はっ!?」

「今全部多摩が飲みやがってます」

(キスしたら飲ませてやるにゃ)

「ちょっろ一番近い水道まで行っれくる」

「ごめんクマー次はちゃんとふーふーするクマーだから食べるクマー」

「残念でしたねぇ多摩」

「分かってたにゃ、アイツにそんな度胸無いにゃ……」




 芋を食べて溜まったモノは、各自部屋で放出してから、執務室へと戻りました。

224: 2014/06/29(日) 11:38:03.34 ID:vIlG+LNAO
~冷えてきた~

「さ、寒いにゃ……」

「海目の前だし余計に寒いクマ……」

「秋になったばかりでこれは厳しいですね……」

「あはは、皆寒いの苦手なんだね」

「何でお前平気なのにゃ」

「きっとあの服だクマ。脱がせるクマ!」

「クソご主人様脱がすとか誰得ですか……」

「そう言いながら漣も席を立ってるにゃ」

「確かに一人だけ平気そうなのはムカつきますんでね」

「別に服は関係無いよ。元々寒い場所に住んでたから、このぐらいは平気ってだけ。――でも、皆がそんなに寒いって思うなら、ちょっと何か対策を考えないといけないかもね」

225: 2014/06/29(日) 11:38:36.24 ID:vIlG+LNAO
~新聞紙と段ボールとプチプチ~

「これで寒さはある程度凌げるかな?」

「暖かいけどカッコ悪いにゃ」

「新聞紙温いクマ」

「奇抜なファッションでなかなか素敵――な訳ねぇでしょうが!」

「痛っ!? 漣君、消しゴム投げないでよ」

「もうちょっと他に何か対策を考えやがりなさい! 新聞紙にくるまったままじゃ買い物にも行けやしませんよ!」

「そう言われても、お金無いし……」

「何とかするにゃ」

「何とかするクマ」

「うーん……じゃあちょっとまた商店街の人とかに頼んでみるよ」

 ――翌日。

「暖かいにゃ、でもコレでどうしろって言うにゃ」

「球磨はコレ好きだクマ」

「クーソーごー主ー人ー様ー?」

「あ、暖かいでしょ……?」

「えぇ暖かいですよ、暖かいですとも――着ぐるみじゃ仕事も何も出来ませんがねぇ!」

「それ着て一週間生活してくれたら服屋の主人が服をくれるそうだから我慢してー!」




 一週間後、ちゃんと秋冬物の古着をゲットし、三人は寒さから解放されました。

(中にメイド服とブルマとナース服なんかが混じってやがるのは何でですかねぇ……?)

228: 2014/06/29(日) 18:08:32.10 ID:vIlG+LNAO
~大雨~

 ――畑。

「雨も風もキツ過ぎるにゃ!」

「飛ばされるクマー!」

「何とか二人ともそのまま抑えてて!」

「クソご主人様ー! ちょっと私も限界です!」

「もう少しだから待って――よし! 皆、中に戻るよ!」

 ――執務室。

「ず、ずぶ濡れにゃ……くしゅん!」

「ハックション! うぅ、冷えたクマ……」

「な、何も言えねぇ……」

「ごめんね三人とも、あのままだと畑がダメになりそうだったから……」

「ご飯の為にゃ、仕方ないにゃ」

「でも、流石に服は着替えたいクマ」

「意義無しです」

「うん、ついでにお風呂入ってきなよ」

「覗いちゃダメにゃ」

「来たらローリングクマサンダーアタックを久しぶりにお見舞いするクマ」

「変Oご主人様って呼んでやります」

「僕は覗きなんてしないし、冷えたままは身体に悪いから早く行きなよ。僕はここで待ってるから」

 ――1時間後。

「ヘタレにゃ」

「ヘタレクマ」

「ヘタレご主人様」

「何で僕怒られてるの!?」

230: 2014/06/30(月) 13:54:16.05 ID:miSLO2sAO
~給料一月分~

「提督、コレ使うクマ」

「封筒?――お金!? いやいや球磨君、必氏に働いて貯めたんなら、自分で使うべきだよ」

「いいんだクマ。使って欲しいんだクマ」

「うーん……でもねぇ……あっそうだ、何かして欲しい事はある? やっぱりただ貰うわけにはいかないし、出来ることなら何でもするよ?」

「……欲しいクマ」

「?」

「頭、撫でて欲しいクマ」

「へ? もっと何か他に無いの?」

「球磨は頭が撫でて欲しいんだクマ、早くするクマ」

「う、うん。コレでいい?」

「クマァ……」

(幸せクマ……)

「えっと、どのぐらいしてればいいのかな?」

「一時間クマ」

「一時間か……うん、分かったよ」

(頑張った甲斐あったクマ。来月も頑張って頭撫でさせるクマ!)




 球磨がキラキラ状態になりました。

234: 2014/06/30(月) 19:25:22.36 ID:miSLO2sAO
~多摩を構うにゃ~

「――あの、多摩君?」

「何にゃ」

「そこ、執務机だよ?」

「それがどうしたにゃ」

「えっと、仕事がしたいんだけど」

「後にするにゃ」

「後じゃちょっとダメかなぁ……じゃあ、そっちの机使うことにするよ」

「――にゃ」

「……多摩君?」

「だから何にゃ」

「何でこっちに来たの?」

「そういう気分になったにゃ」

「そういう気分になっちゃったかぁ……どうしたら、仕事させてくれるの?」

「頭撫でるにゃ」

「球磨君にも撫でてって言われたんだけど、頭を撫でられたら何か良いことでもあるの?」

「いいからさっさと撫でるにゃ」

「先に聞くけど、どのぐらい?」

「二時間にゃ」

(これ、今日中に書かなきゃいけないんだけどなぁ……でも、多摩君の頭を撫でられるなら頑張ろっかな)

「髪、ふわふわだね多摩君」

「にゃー……ふにゃー……」

(コレ何か凄く良いにゃ、気持ち良いにゃ)

(可愛いなぁ多摩君)




(爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ!)

235: 2014/06/30(月) 19:28:36.42 ID:miSLO2sAO
~言えない、言えた~

「クソご主人様!」

「な、何かな?」

「ん!」

「下向いてどうしたの? 床に何か落としたの?」

「んっ!」

「漣君? ちゃんと言ってくれなきゃ分からな――痛っ!?」

「察しやがりなさい! このニブチン! 朴念仁! 柔順! 唐変木! 物好き! バカ!」

「脛蹴るのはやめて! 痛いっ! 痛いってば!?」

「私だけしてくれないとか何でですか! 嫌がらせですか! 口悪いクソガキはやっぱり嫌いってことですか!?」

「お、落ち着いて漣君。何で泣いてるの? 僕また何かしちゃった?」

「何もしてくれやがらないから言ってんですよ!」

「えぇー……」

「嫌いなら……嫌いならそう言いやがればいいじゃないですかぁ……」

「――ごめん、嫌だったら殴り飛ばしてね?」

「・・・・・・?」

(抱き締められてる? クソご主人様に? えっ? ここ天国ですか?)

「僕が昔泣いてた時は、こうやってよく親に抱き締めらたんだよ。僕は漣君の親とかじゃないし、全然頼り無いかもだけど、今はコレで泣き止んでくれないかな」





「――ありがとうございます、ご主人様」

242: 2014/06/30(月) 23:26:45.95 ID:miSLO2sAO
~キラ付けか、なら問題ない~

「提督殿、また来たでありま――異常無し、馬に蹴られる前に帰るであります」

「ちょっと待ったあきつ丸さん! コレは違うよ!?」

「ならば強要しているのでありますか? それなら詳しく話を聞くであります」

「いや、彼女達からお願いされてこの状況なんだけどね?」

「頭撫でさせてるにゃ、コレで作業効率アップにゃ」

「アルバイトで仕事がはかどるクマー」

「仲間外れにされんのは癪なんで、抱き着いてます」

「ふむ、いわゆるキラ付けというヤツでありますか。やはり異常無しであります」

「無いには無いんですけど……こんなの報告書には書きません、よね?」

「心配御無用であります。こういう話は大好きな方なので、今回は気合いを入れてありのままを書くであります」

「心配しか無いんですが!?」

「手が止まってるにゃ、罰として十分延長にゃ」

「早くなでなでするクマー」

「動きやがらないで下さい、この位置が一番落ち着くんです」

「やはりお邪魔のようであります。それではまた」

「あきつ丸さん!? さっきの冗談ですよね!? あきつ丸さぁーん!?」

「うるさいにゃ、いいからはやく撫でるにゃ」

「バイトに遅れるクマー」

(コレはもっとギュッとしがみついてもいいってことですね)




 後日、何故か元帥から“これからも精進するように”という一文と共に、金一封が鎮守府に贈られてきました。

249: 2014/07/01(火) 12:29:37.55 ID:QSbwxHUAO
~ちょっと豪華に~

「秋刀魚にゃ!」

「栗ご飯だクマ!」

「極めつけは松茸ですよ、松茸!」

「元帥にお礼の手紙を書かないとね。そもそも金一封が贈られてきた理由が不明だし、何て書けばいいのか分からないけど……」

「あのあきつ丸さんを憲兵のアルバイトとして雇うぐらいですから、相当な変わり者なんじゃないですかねー松茸ウマー」

「適当に感謝の気持ちでも書いて出しときゃいいにゃ。漣、大根おろしとポン酢欲しいにゃ」

「コレでちょっと暫くは生活楽になるクマ、甘くて美味いクマー」

「冬に向けての準備もコレで出来そうだね」

「新しい苗木とかも買うにゃ」

「インナーの数が心許ないんで、それの補充もちょっとしたいですねぇ……」

「漣は別に小さいから気にしなくてもぉっ!? ヴォーッ!」

「ご飯食べてる時に床を転げ回るんじゃないにゃ」

(漣君のローキック、痛いんだよなぁ……)

(私だって少しは膨らんで来たんですよ!)

254: 2014/07/01(火) 20:08:09.10 ID:QSbwxHUAO
~出張?~

「クソご主人様居ないとやる気出ねーです……」

「多摩はどうしたクマ?」

「クソご主人様のベッドで丸くなりやがってますよー……」

「球磨も夜はお邪魔するクマ」

「私もそうします」

「球磨! 漣!」

「どうしやがりましたー?」

「提督の秘密でも見付けたクマ?」

「こっ、コレ見るにゃ!」

「? 女の人の写真ですね、コレがどうかしやがりましたか?」

「手紙が横に置いてあったにゃ! それお見合い写真にゃ!」

「……多摩、今なんて言ったクマ?」

「だ・か・ら、お見合い写真にゃ!」

「――球磨、多摩、鎮守府全体の施錠をしてきやがって下さい。私は商店街の方と、念のためにあきつ丸さんに事情を説明しておきます」

「了解にゃ」

「分かったクマ」

「出張と偽って実家で見合い……へーそういうことしやがりますか……」




(((何がなんでも邪魔してやる!)))

255: 2014/07/01(火) 20:09:23.60 ID:QSbwxHUAO
~四人で~

「いい加減許してくれないかな? 僕だって見合いなんてしたくなかったんだよ?」

「何で黙って行きやがったんですかねー?」

「いくら断るだけとはいえ、多摩君に見合いに行くなんて知られるのはちょっと申し訳なくて……」

「球磨達にも申し訳ないと思うクマ! 見合いなんか電話で断りゃ良かったんだクマ!」

「そういう訳にもいかなかったんだよ、既に見合いの席がセッティングされちゃってたし……」

「二度と見合いが来ないよう丁寧にご両親には挨拶したにゃ。コレでもう問題にゃい」

「うん、アレだけ見合いの席で派手に暴れられたら、流石にもう実家も見合い話は持って来ないかなー……」

(孫の顔を見せろって今度は言われたけど……)

「それじゃあ簀巻きで吊るすのはコレぐらいにして」

「嘘を吐いていた分の埋め合わせをしてもらうクマ」

「今日は四人で寝るにゃ」

「えっ!? あの、それはいくら何でもいろいろとまずくないかな?」

「断るなら憲兵に突き出すにゃ」

「斬新な脅しだねー……」

「いいから一緒に寝るクマ」

「まだ嫌だとかぬかしやがるなら脛蹴りますよ?」

「僕も一応男なんだけど?」

「どうせ何もして来ないにゃ」

「それに、四人で寝れば暖かいクマ」

「暖房いらずです」

「……はぁ、分かったよ。その代わり、手が身体に触れたりしても怒らないでね?」

「大丈夫にゃ、問題にゃい」

「オッケーだクマ」

「今更何言いやがってんですか」

(……今日から僕、夜寝れるかなぁ……)




 お腹に漣、向かい合わせで多摩、背中に球磨という形に落ち着きました。

(僕は落ち着けないんだけど!?)

259: 2014/07/01(火) 23:29:18.56 ID:QSbwxHUAO
~毎夜~

「――痛っ!?」

「鮪……美味いにゃ……」

(また多摩君は鮪食べる夢見てるんだね、寝顔可愛いなぁ)

「んー……逃がさないクマー……」

(球磨君は背中に擦りついてるし、夢で鮭でも捕まえてるのかな?)

「ご主人様ー……ふへへ……」

(漣君も何か幸せそうな顔してるね。僕なんかに抱き着いて落ち着いてくれるのは嬉しいなぁ)

「――ただ、こんな可愛い子達に囲まれて寝ろって無茶じゃないかなぁ……そもそも、警戒心ゼロって女の子としてダメだよね、うん」

「すにゃー……」

「クー……」

「すー……」

(……やっぱり可愛いなぁ)




 寝顔を見るだけで幸福感を得られる提督。彼を警戒しろという方が、無理な話である。

267: 2014/07/02(水) 14:05:17.50 ID:jq8hZkgAO
~ラッキースOベ?~

(……? 何か柔らかいモノが手の中に――っ!?)

「んにゃー……」

(どうしよう多摩君の胸触ってる柔らかい幸せいやそうじゃなくて早く手を離さないといやでも多摩君に腕が掴まれてて無理に引き剥がそうとしたら起きちゃうだろうしだからといってこのままはダメだよねどうしようどうしようどうしよう!)

「――にゃ?」

「あっ」

(起きた、終わった、色々終わった……)

「……何でお前、多摩の胸触ってるのにゃ?」

「あの、聞いて? わざとじゃなくて起きたらこうなっててね? 決して触ろうと思って触ったわけじゃ――」

「多摩はまだ眠いにゃ、触りたいなら起きない程度にするにゃ……」

「へ? いや、あの、多摩君?」

「何にゃ……眠いって言ってるにゃ……」

「僕を簀巻きで海に放り込まないの?」

「下らない事聞くんじゃないにゃ、もう寝るにゃ」

「あっ、うん、お休み」

(――っていやいやいやいや胸触ったままなんだけど!? 僕どうすればいいの!?)

「すー……にゃー……」

(よし、意識を違う方向に逸らそう。背中には球磨君の柔らかい胸が当たってて漣君はこっちを冷ややかな視線で――ん?)

「お、おはよう、漣君……」

「――覚悟は、いいですかねぇ?」

「あっ、はい」




 漣の一発により提督が絶叫し、四人共しっかりと目が覚めました。

(触るだけで揉まれなかったにゃ)

(まだ寝たかったクマ)

(そのうち私だって二人ぐらいには大きく……)

(やっぱり四人で寝るの無理があるんじゃないかなぁ……)

276: 2014/07/02(水) 19:55:39.10 ID:jq8hZkgAO
~髪が伸びてきた~

「そういえば多摩君、髪伸びてきてない?」

「秋と冬は寒いにゃ、少し長い方が暖かいにゃ」

「そっか、冬毛に生え変わるわけじゃないもんね」

「猫じゃないから当然にゃ」

「でも前髪はちょっと鬱陶しくない?」

「……確かに、ちょっと鬱陶しいにゃ」

「散髪行きたいならお金出すよ」

「他人に髪触られるの好きじゃないにゃ」

「アレ? 僕、頭撫でる時に結構触ってた気がするんだけど……」

「他人って言ったにゃ、お前は特別だからいいんだにゃ」

「特別なの? そう言われるとちょっと嬉しいなぁ」

(こう言ってもコイツはどうせ多摩に自分からは触らないんだろうにゃ……)

「ふっふっふー、妹が困っているようだからお姉ちゃんが助けてあげるクマ!」

「お引き取り願うにゃ」

「遠慮しなくていいクマ。球磨が多摩の髪切ってあげるクマー」

「球磨君、話聞いてたの?」

「廊下歩いてたら聞こえてきたクマ。だからノープロブレムクマ」

「じゃあ切ってあげてくれるかな。球磨君器用だし、多摩君も安心でしょ?」

「全く安心出来ないにゃ」

「えぇー……」

「いいから多摩はこっち来るクマー」

「ちょっ、離すにゃ! 球磨に切られるぐらいなら自分で切るにゃ!」

「遠慮しなくていいクマ、可愛く切ってあげるクマ」

「やーめーるーにゃー!」

(……大丈夫、だよね?)




 無事に切り揃えてもらえたものの、“あっ”とか“ぐげっ”とか聞こえてきたこともあり、多摩は二度と球磨には髪を触らせなくなりました。

「漣ー髪切らせて欲しいクマー」

「ストップ、近付きやがったら撃ちます」

(球磨君が飽きるまで僕も逃げようかな……)

277: 2014/07/02(水) 19:56:36.97 ID:jq8hZkgAO
~中古ゲーム(SFCのいた〇ト2)を皆でプレイ~

「多摩がこのエリアは独占にゃ」

「そう簡単にはさせませんよ、五倍で買います」

「あっ、漣やめるにゃ!」

「球磨はのんびり便乗しながら株で儲けるクマー」

「僕は目の中からいつになったら出られるのかなぁ……」

「よし、79番引いたにゃ。コレでまた買い戻すにゃ」

「くっ……こうなったら増資で一気に株の値段上げて対抗してやります」

「77番引いたクマ、5株ずつもらえるクマー」

「1・2・3・4・5。また目から出られなかったかぁ……でも、独占出来ちゃったし良かったかな」

「地味にあそこ危ないにゃ……」

「今飛んだらかなりヤバいですね……」

「ってそんなこと言ってたら球磨が飛ばされたクマー!」

「あっ、球磨君いらっしゃい」

「帰るクマ、次で絶対に帰るクマー!」




 ――ゲームは楽しく、仲良くやりましょう。

「さぁご主人様、取り引きです」

「単装砲突き付けながらは取り引きって言わないよ!?」

(球磨がジュース飲みに行ってる間に代わりに操作してやるにゃ)

「あっ、コラ多摩! 球磨の順番だクマ! 勝手にやっちゃダメクマー!」

278: 2014/07/02(水) 19:57:02.03 ID:jq8hZkgAO
~勝者と敗者~

「一位は多摩にゃ」

「二位は私ですね」

「三位は球磨だクマ」

「三人とも、リアル交渉は無しだよ……」

「言い訳は聞きたくないにゃ、負けたんだから素直に言うこと聞くにゃ」

「さーてと、何をしてもらいましょうかねぇ」

「悩むクマ」

「で、出来れば簡単な罰ゲームがいいかなぁ……」

「分かったにゃ」

「簡単な、ですね?」

「シンプルなやつにするクマ」

(え、笑みが怖い……)

279: 2014/07/02(水) 19:59:17.53 ID:jq8hZkgAO
~多摩からの罰ゲーム~

「一分間多摩を抱っこするにゃ」

「抱っこすればいいの? 良かった……何されるのかとビクビクしてたよ」

「ほら、早くするにゃ」

「うん、分かったよ」

(――ってスムーズに受け入れちゃったけど、身体密着するんだよなぁ……感触とか意識しないように気をつけないと……)

「――落としたらもう一分追加にするから気をつけるにゃよ?」

「へっ? それどういうこぉっ!?」

 ――れろれろ。

「ちょっ、多摩君、耳舐めるのは、流石にぃっ!?」

「気合い入れるにゃ、落ちそうにゃ」

「今耳にフーッてしなかった!?」

「したにゃ、罰ゲームなんだから当然にゃ」

(予想以上にキツいよこの罰ゲーム!)

「因みに今ブラ着けてないにゃ」

「あー! あー! 聞ーこーえーなーいー!」

 ――れろ。

「ひぅっ!?」

(コレ、結構クセになりそうにゃ)




 一分後、力尽きて使い物にならない提督が出来上がりました。

「こりゃ私達は明日ですね」

「楽しみにしとくクマ」

280: 2014/07/02(水) 20:00:07.37 ID:jq8hZkgAO
~漣からの罰ゲーム~

「お……お手柔らかに……」

(何かプルプル震えて小動物みたいですねぇ……)

「安心しやがって下さい。私は多摩みたいな事はしませんから」

「ほ、ホントに?」

「えぇ、簡単なものを考えました」

「どういう罰ゲームなのかな?」

「四十秒間、私に好きって言い続けて下さい」

「……えっと、罰ゲームだよね?」

「はい、拒否権はありやがりませんからね?」

「あー、うん。分かってるよ」

「じゃあ始めやがって下さい」

「料理上手な漣君が好き。憎まれ口叩きながら真面目な漣君が好き。ウサギのぬいぐるみ抱き締めて幸せそうな漣君が好き。それから――」

「ストップストップストー―――ップ! 何ですかその前半部分! 私を悶氏させやがる気ですか!?」

「いや、ただ好きって言うのも失礼かなって思って」

「こんなん四十秒も続けられたらこっちの身が持ちませんよ! 二十秒にしやがって下さい!」

「漣君がそれでいいならいいけど……じゃあ、続けるね? たまに見せてくれる笑顔が好き、僕なんかと一緒に安心してくれるところが好き――」

(何ですかコレ何ですかコレ! 私のが罰ゲームみたいな感じになってやがんですけどぉぉぉぉっ!?)




 二十秒後、あまりの恥ずかしさに脛に強烈な一撃を喰らわせて逃げる漣の姿があった。

(た、立てない……コレが罰ゲームだよ絶対……)

281: 2014/07/02(水) 20:01:08.33 ID:jq8hZkgAO
~球磨からの罰ゲーム~

「立てないし、球磨君のはまた明日にしてくれない?」

「立たなくていいクマ」

「立たなくていいって、今度は何をやらされるの……?」

「髪、梳いて欲しいクマ」

「本当に、それだけ?」

「二十秒じゃあんまり何もしてもらえないクマ。それに、誰かに梳いてもらうのちょっと憧れてたクマ」

「……うん、分かった。櫛を貸してもらえるかな?」

「お願いするクマ」

「――多摩君もだけど、球磨君も綺麗な髪だよね」

「そう言ってもらえると嬉しいクマ。結構手入れ大変なんだクマ」

「いつまでも触ってたくなるね、二十秒じゃちょっと名残惜しくなりそうだよ」

「別に球磨は二十秒でやめてもらわなくてもいいクマ。むしろ続けて――」

「フシャー!」

「痛ったぁぁぁぁ!?」

「さっさと離れるにゃ二人とも」

「何するクマ! 邪魔するなんて酷いクマ!」

「二十秒って約束にゃ、それ以上は許さないにゃ」

「少しは融通利かすクマッ!」

「約束は約束にゃ!」

「あの、二人とも喧嘩しないで、ね? 喧嘩やめてくれたら二人とも髪梳いてあげ痛っ!?」

「二人? 今二人って言いやがりませんでした?」

「も、戻ってきたんだね漣君……」

「私も梳いて下さいませんかねー? ご・主・人・様?」

「あはははは……はい」

(罰ゲーム関係無くなってるよね、とか言い出せそうにないなぁ……)




 この後腱鞘炎になりそうな程髪を梳くハメになり、提督は書類が二日ほど書けなくなりましたとさ。

(う、腕が……)

(次も一位目指すにゃ)

(気持ち良かったですねー……)

(また髪梳いてもらいたいクマ)

284: 2014/07/02(水) 20:33:09.05 ID:jq8hZkgAO
~皆が冷たい?~

「漣君、この書類なんだけど」

「……」

「あの、漣君?」

「……」

「ごめん、忙しいんだね。後にするよ」

(……すっごく胸が痛みやがるんですけど、コレ)




「多摩君、一緒に柿食べない?」

「いらないにゃ」

「柿、嫌い?」

「……」

「うん、分かった。次からは違うものにするね」

(……柿食べたいにゃ)




「球磨君、一緒にゲームでも――」

「忙しいクマ、後にして欲しいクマ」

「……うん、邪魔してごめん。じゃあね」

(……ゲーム一緒にしたかったクマ)




「――で、アイツの様子はどうにゃ?」

「ちょっと冷たくして更に気を引こう作戦、うまくいったクマ?」

「いや、それがですねぇ……」
(嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた……)

「何にゃ、あの負のオーラの塊みたいにゃの……」

「目が氏んでるクマ……」

「ご主人様の豆腐メンタルじゃ耐えきれないみたいなんで、この作戦は失敗ですねー……」

「とりあえずアレどうにかするにゃ」

「見るに堪えないクマ」




 この後提督が元に戻るまで、一週間かかりました。

285: 2014/07/02(水) 21:17:14.93 ID:jq8hZkgAO
すいません、明日はちょっと無理になりました……

次の更新は多分明後日になります……

286: 2014/07/02(水) 21:42:16.23 ID:IHEamaVZo
了解

287: 2014/07/02(水) 21:53:17.46 ID:JFAhxurNo



引用: 【艦これ】多摩「こんな鎮守府すぐに出ていくにゃ!」